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はじめに

Squid-n は、Rust で実装された日本の建築構造計算一貫プログラムです。

このサイトは、Squid-n を利用する方に向けたドキュメントです。

  • アーキテクチャ:16 クレートから成る階層型構成の全体像
  • モデル入出力(ファイル形式):ネイティブの .scz 形式と ST-Bridge(.stb)形式でモデルを保存・読込・書出する入出力経路と、その対応範囲
  • モデルの編集:通り芯・断面の符号と階・架構作成ウィザード・ 立体グリッドとスナップ・階への複製
  • MCP サーバ:AI エージェントからモデル照会・解析実行・結果取得を行う MCP(Model Context Protocol)サーバのビルド・起動・ツール一覧
  • 準備計算(解析前の確認):応力解析に先立って階・剛域・断面性能・ 地震力・荷重を確定させる計算と、その確認画面の見方
  • 結果の表示(3D ビューア):変形図の表示倍率、床・二次部材の変形追従、 検定比図・モデル化図など、3D ビューアの表示仕様
  • 計算根拠(理論・出典):各計算が「何という基準・法令の、何という式で」 算定されているかを、告示・施行令の条/式番号と実装位置まで対応づけた根拠ドキュメント。 荷重・材料・断面性能・構造解析・一次設計・二次設計・部材終局耐力・免震制振の 各章を、算定項目ごとのページに分けて収録しています

ライセンスと免責事項

Squid-n は MIT License のもとで公開しているソフトウェアです。 ライセンスの全文はリポジトリの LICENSE にあります。

MIT License

Copyright (c) 2026 Hiroaki NATSUME

無保証(AS IS)

MIT License は、ソフトウェアを「現状のまま(AS IS)」提供し、明示・黙示を問わずいかなる保証も行わないことを条件としています。

THE SOFTWARE IS PROVIDED "AS IS", WITHOUT WARRANTY OF ANY KIND, EXPRESS OR IMPLIED, INCLUDING BUT NOT LIMITED TO THE WARRANTIES OF MERCHANTABILITY, FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE AND NONINFRINGEMENT.

この無保証は、Squid-n が出力する応力、変形、検定比、保有水平耐力などの計算結果にもそのまま及びます。 つまり Squid-n は、計算結果の正確性、妥当性、および特定の目的への適合性を、いずれも保証しません。 また、Squid-n の使用または使用不能によって生じたいかなる損害についても、著作権者および貢献者は責任を負いません。

本ドキュメントについても同じです。 このサイトは、各計算がどの法令・規準のどの式に基づいて算定されているかを説明するものであり、個々の建築物についてその結果が正しいことや、適法であることを保証するものではありません。

利用にあたって

Squid-n は、国土交通大臣の認定を受けた構造計算プログラム(いわゆる大臣認定プログラム)ではありません。 そのため、確認申請における認定プログラムとしての取扱い(大臣認定プログラムを用いた場合の審査の特例)は受けられません。

入力データの妥当性、モデル化の適否、そして出力された結果の検証は、いずれも利用者の責任に属します。 計算結果は、手計算や理論解、ほかのプログラムとの突合などによる利用者自身の検証を経たうえで使用してください。 設計における式の適用可否(適用範囲や前提条件)の判断も、設計者(構造設計一級建築士等)の責任に属します。

開発者向け資料

設計仕様・検証記録・開発運用ドキュメントは開発者向けのため本サイトには含めていません。 これらは dev_docs/ に集約しており、リポジトリの以下を参照してください。

リポジトリ

ソースコードは github.com/hrntsm/squid-n にあります。

ビルド・テスト・静的解析の手順はリポジトリの README.md を参照してください。

アーキテクチャ

Squid-n は 14 のクレートから成る階層型アーキテクチャで構成されています。

Layer 0: squid-n-core(基本データ構造・DOF 管理・荷重組合せ)、squid-n-math(疎行列・ソルバ)、
         squid-n-material(一軸材料履歴則)
Layer 1: squid-n-section(断面性能算定)、squid-n-load(Ai 分布・床荷重)
Layer 2: squid-n-edit(編集トランザクション)、squid-n-skeleton(スケルトン曲線)
Layer 3: squid-n-element(梁・板・パネルゾーン要素)
Layer 4: squid-n-solver(各種解析)、squid-n-io(結果 I/O)
Layer 5: squid-n-design-jp(日本仕様設計計算)
Layer 6: squid-n-job(解析前処理・解析条件・解析の純粋計算)
Layer 7: squid-n-mcp(MCP サーバ)、squid-n-app(GUI アプリケーション)

squid-n-job は GUI と MCP サーバの共通下層です。 両者は同じ解析を別々の入口から実行するため、前処理(剛域・仕口パネル)と解析条件をここに集約し、同じモデルに対して同じ結果を返すことを保証しています。

依存方向は上層から下層のみと定めているため、循環依存が生じていないかを次のコマンドで検出します。

cargo run -p xtask -- check-deps

クレート一覧

クレート役割
squid-n-core基本データ構造・DOF 管理・荷重組合せ
squid-n-math疎行列・ソルバ
squid-n-material一軸材料履歴則
squid-n-section断面性能算定
squid-n-element梁・板・パネルゾーン要素
squid-n-skeletonスケルトン曲線
squid-n-loadAi 分布・床荷重
squid-n-solver各種解析
squid-n-design-jp日本仕様設計計算
squid-n-io結果 I/O
squid-n-edit編集トランザクション
squid-n-job解析前処理・解析条件・解析の純粋計算(GUI と MCP の共通下層)
squid-n-mcpMCP サーバ
squid-n-appGUI アプリケーション

API リファレンス

各クレートの API ドキュメント(rustdoc)は、CI で cargo doc から生成され、このサイトの api/ 以下に併設されます。

モデル入出力(ファイル形式)

Squid-n は構造モデルを 2 つのファイル形式で入出力します。

形式拡張子用途往復精度
Squid-n プロジェクト.sczSquid-n ネイティブの保存形式。モデルを欠損なく保存・読込する完全一致
ST-Bridge.stb / .xml他社の一貫計算プログラムや BIM ツールとのモデル受け渡しサブセットのみ意味的一致

いずれも GUI アプリ(squid-n-app)のファイルメニューから利用でき、実装は squid-n-io クレートにあります。日常的な保存・読込は .scz他ツール連携は .stb と使い分けます。

  • 実装: .sczsquid-n-io::sczsave_scz / load_scz)、ST-Bridge は squid-n-io::stbridgeexport_stbridge / import_stbridge)。

この章の内容

MCP サーバでのモデル入力

MCP サーバ(squid-n-mcp)は起動時の第 1 引数でモデルファイルを読み込みます。現状は .scz のみに対応しており、ST-Bridge ファイルの直接指定には対応していません。ST-Bridge から取り込む場合は、いったん GUI で読み込んで .scz として保存し、その .scz を MCP サーバに渡します。詳細は MCP サーバを参照してください。

Squid-n プロジェクト形式(.scz)

Squid-n ネイティブの保存形式です。内部モデルをそのまま格納するため、保存・読込でモデルが完全一致します(ST-Bridge のようなサブセット制約はありません)。

GUI からの操作

ファイルメニューに以下の項目があります。

メニュー動作
📄 新規空モデルを開く
🏠 サンプル(門型ラーメン)内蔵のサンプルモデルを開く
📂 開く….scz プロジェクトを読み込みます。読込後、モデルは検証(validate)を通ってから差し替わります
💾 保存現在のプロジェクトを上書き保存する(保存先が未設定なら保存先を尋ねる)
💾 名前を付けて保存…保存先を指定して .scz として保存する

読み込むとそのファイルが現在のプロジェクトの保存先になり、以降の「保存」は同じファイルへ上書きします。

ファイル構造

.scz は ZIP 書庫です。manifest.jsonmodel.msgpacksettings.json は必須エントリ、 残りは任意エントリ(同梱がなければ読込側の該当項目が None になる)です。

エントリ必須内容
manifest.jsonスキーマ版、単位系、各エントリの SHA-256 ハッシュ
model.msgpack内部モデル本体(MessagePack でシリアライズ)
settings.json設計コード等の設定
preparation.msgpack-準備計算の結果(モデルに対して最新の場合のみ同梱)
results.msgpack-解析結果(静的・組合せ・固有値・増分・時刻歴・質点系など。モデルに対して最新の場合のみ同梱)
analysis_settings.msgpack-解析タブの設定値(立体時刻歴と質点系それぞれの波形パラメータ・減衰、固有値/質点系のモード数など)

内部モデルには節点・部材・断面・材料・荷重・層に加え、断面形状(SectionShape)や部材付帯情報(ハンチ・継手位置)まで含まれ、これらは保存・読込で保持されます。 時刻歴を実行すると振動荷重ケースもモデルへ入りますが、解析結果が最新でない保存では書き出しません。 開き直したときに、結果のない空ケースが残らないようにするためです。

preparation.msgpackresults.msgpack はモデルから再計算できる派生データですが、再計算が 高価なため保存して復元します。モデル編集後に再実行していない(=最新でない)場合は保存されず、 再読込後は未実行として扱われます。

analysis_settings.msgpack はモデルから導出できない独立した設定値(時刻歴の波形パラメータ・ 減衰モデル、固有値解析のモード数など)で、解析結果を生成した条件そのものです。モデルの新陳とは 無関係に、保存のたびに現在の設定値を常に同梱します。このエントリを持たないファイルを読み込んだ 場合、解析タブの設定値は変更しません(既定値のまま、または直前の値を保持します)。

質量モデルの方式(mass_method)は例外で、モデル本体(model.msgpack)が持つ値を単一情報源 とします。analysis_settings.msgpack にも同じ項目がありますが、読込後は常にモデル側の値で 上書きします。

なお、時刻歴応答解析の入力波形(CSV読込波)そのものは .scz に含まれません。波形ライブラリ (波形ライブラリ)から選んで実行した場合は、analysis_settings.msgpack にライブラリ内のファイル名と実行時点の内容の SHA-256 を記録し、開き直したときにライブラリから 自動で同じ波形を参照します。立体時刻歴と質点系は別々の選択を持ちます。ファイル選択ダイアログ (「📂 波形CSVを開いて実行…」)から一回限りで実行した場合は、波形は保存されず再現できません。

整合性・安全性

  • ハッシュ検証: 読込時に各エントリの SHA-256 を manifest.json の記載と照合し、不一致ならエラーにします。必須エントリ(model.msgpack / settings.json)が manifest に列挙されていない場合も拒否します(未検証のまま読み込ませないためです)。
  • スキーマ版チェック: 本ソフトはリリース前で後方互換を持たないため、現行スキーマ版(1)以外は拒否します。
  • 原子的な保存: 一時ファイルへ書き出して fsync した後に rename することで、電源断でファイルが破損しないようにしています。
  • ZIP 爆弾対策: 1 エントリあたりの展開サイズ上限(4 GiB)を超える書庫は拒否します。.scz は単層 zip(deflate)で展開率は理論上約 1032 倍が上限のため、絶対サイズ上限がメモリ保護として機能します。ヘッダの申告サイズは信用せず、実際の展開バイト数でも検査します。
  • 保存サイズの確認: 解析結果(時刻歴の詳細記録を含む)の直列化サイズが 512 MB を超える場合、保存時に「時刻歴の詳細記録を保存に含めますか?」の確認を表示します。除外して保存しても、層応答・ピーク値等の集計結果は保存され、詳細記録は再解析で復元できます。

ライブラリからの利用

#![allow(unused)]
fn main() {
use squid_n_io::scz::{save_scz, load_scz, SczExtras};
use std::path::Path;

// 保存: 内部モデル+任意エントリ(各バイト列は呼び出し側が事前に
// MessagePack へ直列化したもの。io 層は中身を解釈しない)→ .scz
save_scz(Path::new("model.scz"), &model, SczExtras {
    preparation: Some(&preparation_bytes),
    results: Some(&results_bytes),
    analysis_settings: Some(&analysis_settings_bytes),
})?;

// 読込: .scz → 内部モデル+同梱されていれば各任意エントリ
let contents = load_scz(Path::new("model.scz"))?;
let model = contents.model;
}

ST-Bridge 形式(.stb / .xml)

ST-Bridge(XML, 2.0 系)で読み込み・書き出しができ、他社の一貫計算プログラムや BIM ツールとモデルを受け渡すための入出力経路として機能します。

GUI からの操作

メニュー動作
📥 ST-Bridge 読込….stb(または .xml)ファイルを選び、内部モデルへ取り込みます。取り込んだモデルは検証(validate)を通ってから現在のモデルと差し替わります
📤 ST-Bridge 書出…標準 ST-Bridge 2.0.2(StbSecColumn_S 等+形鋼ライブラリ)で書き出す。BIM・他ソフト向け
  • ファイル選択ダイアログの拡張子フィルタは .stb / .xml
  • ST-Bridge 読込は .scz プロジェクトとは別系統であり、読み込んでもプロジェクトの保存先パスは設定されません(新規モデルとして開く扱い)。上書き保存するとネイティブの .scz として保存されます。
  • 書き出しは ST-Bridge 2.0.2 標準スキーマ準拠の 1 形式のみです(他ソフトとの相互運用が目的のため独自方言は用いません)。完全一致の保存にはネイティブの .scz を使います。

対応バージョン

  • ST-Bridge 2.0 系のみを受け付けます(ルート要素 ST_BRIDGEversion 属性が 2. で始まること)。
  • 1.x 系や ST-Bridge でない XML は読み込みエラーになります。
  • ファイルの文字コードは、BOM 付き UTF-8・UTF-8・Shift_JIS(Windows-31J)の順に判定します。

対応範囲(意味的往復を保証するサブセット)

読み込み・書き出しの対象は、import → export → 再 import でモデルが意味的に一致する範囲に限定しています。

分類対象内容
節点座標(X/Y/Z)、所属層
名称、標高(height)、所属節点(StbNodeIdList)。種別(kind)は書き出しのみ
材料グレード名Fc21SN400BSD345 等)。StbModel は材料テーブルを持たないため、材料は断面の strength_* グレード名で表します。取り込み時は名前から標準材料表で物性(E・ν・密度・Fc・Fy)と区分(鋼材・鉄筋・コンクリート)を一意に復元します
断面形状(鋼各種・RC・SRC・CFT)+形鋼ライブラリ(StbSecSteel)+符号(name)と階(floor)。面積・断面二次モーメント等は形状から再算定
部材柱(鉛直材)/大梁(水平材)/小梁・間柱(二次部材)/ブレース(斜材・feature_brace)。向き rotate、端部接合 condition_*、節点・断面の参照
床・壁スラブ(境界節点ループ+断面。符号・階・板厚・コンクリート材料。RC・デッキ合成 StbSecSlabDeck)、壁(境界節点ループ+厚さ+材料)。取り込み後、床板(Slab)を大梁の閉路(床領域)へ付け直します。重心が複数の床領域に入るときは面積が小さい方へ付けます。どの床領域にも入らず、水平大梁にちょうど 1 辺が全長載り自由端が 1〜2 点の版は取り付く床板へします(張り出しの正は取付き線の左側、区間は全長、荷重の出口は取付き線への分布)。それ以外の未所属の版は囲まれのまま残します。kind_slab は読みません。書き出しの StbSlab は囲まれかつ版がある床板だけ、kind_slabNORMAL 固定です(版なし・取り付きは出しません)。壁は壁版(囲まれた境界+断面)として取り込み、柱・梁が囲む壁領域へ付け直します。どの壁領域にも入らない壁版の一部は、取り付く壁版(パラペット、および構面の外へ張り出す腰壁・垂れ壁に相当)へ自動変換します(条件と既定値は 1.9 壁の断面と自重)。変換できない未所属の壁版は囲まれたまま残し、警告を出します。解析要素にならない壁版も、自重は自動で分配し地震用重量・「DL」・数量拾いへ算入します(1.5 地震用重量・層データの生成)。解析用の壁要素はモデルに残しません。書き出しは壁版から StbWall を出します(4 節点でない壁版も往復します。解析要素になるのは 4.5 壁エレメントモデル の条件を満たす囲まれた壁版だけです。取り付く壁版は往復対象外です)

要素ごとの詳細な変換状況(取り込み/書き出し/往復・備考)は、 ST-Bridge 要素別 変換状況一覧を参照してください。

非対応(対象外)

以下は ST-Bridge 2.0.2 の StbModel(幾何)スコープ外であり、入出力の対象に含まれません。 読み込み後は既定値になります。

  • 解析結果・Squid-n 独自の解析/設計属性。
  • 材料の物性値そのもの(E・ν・密度)。ST-Bridge は材料をグレード名でしか持たないため、 書き出しはグレード名のみ、読み込みは名前から標準物性を復元します(任意の物性値は往復しません)。
  • 拘束条件(支点)・質量。
  • 荷重の書き出し。ST-Bridge 2.0.2 では荷重は StbModel ではなく StbCalData/ StbAnaModels 側に属するため、幾何モデルの書き出しでは扱いません。
  • 基礎・杭・フーチング、開口、StbParapet 要素(StbWall として書いたパラペットは壁版として取り込み、条件を満たせば取り付く壁版へ変換します。4.5 壁エレメントモデル)。
  • 剛域・製作情報などの詳細属性。

読み込みでは、ファイルに StbLoadCaseStbNodalLoad があれば荷重ケースの名称と節点荷重として 取り込みます。書き出しでは出力しないため、荷重は往復しません。

通り芯(StbAxes)は往復します。平行芯はグループの原点・方向角ごと、円弧芯・放射芯・作図芯は 通り名と所属節点のみを取り込みます(通り芯)。

これら未対応の要素のうち、取り込み時にデータを欠落させるもの(部材・断面)は、 取りこぼしを無言で捨てず [ImportReport] の警告として必ず通知します(手動リストにない 新要素・ベンダー拡張も、部材グループ・断面の直属子であれば要素名で通知します。fail-loud)。 属性の単位でも同じ扱いをします(下記「属性の扱いの報告」)。

属性の扱いの報告

要素だけでなく属性の単位でも、ファイルに存在したものをどう扱ったかをすべて報告します。 取り込みの報告 [ImportReport] は attributes に、要素名・属性名ごとの出現件数と、そのうち 取り込んだ件数を持ちます。

無視リストは持ちません。 guidapp_name のように解析へ用いない属性も「取り込まなかった属性」として現れますが、 どの属性がどう扱われたかを利用者が漏れなく追えることを優先しています。 リストを持たない副次的な利点として、取り込みの実装を増やせば報告も自動的に追随するため、 一覧の更新漏れが起きません。

GUI の「ST-Bridge 読込」では、扱いの全量を下ドックの「ログ」タブへ出します。 読込直後のメッセージには「取り込まなかった属性が N 種類あります」という要約だけを出します。 実ファイルでは属性の種類が数十になり、そのまま並べると読めなくなるためです。

同じ属性でも文脈により扱いが分かれることがあります。 たとえば 1 つの断面に図形要素が複数ある場合、最初の図形だけを採るため 2 つ目以降の寸法属性は 参照しません。 このときログには「N 件中 M 件を取り込み」と出ます。

偏心(offset_*)は取り込みません。 StbColumnStbGirderoffset_start_X などの部材端の偏心は、現状では取り込みの 対象外です。属性の扱いの報告に「未取り込み」として現れるため、偏心を持つモデルを 取り込んだ場合はログで確認してください。

支点の自動設定(取り込み時)

ST-Bridge は境界条件(支点)を持たないため、支点が 1 つもないモデルを取り込んだ ときは、そのままでは解析できません。そこで取り込み時に、最下レベル(Z 最小、 許容差 1 mm)で柱脚が取り付く節点をピン支点(並進 3 自由度を拘束・回転自由)に 自動設定します(柱脚ピンの仮定。基礎の回転拘束を期待しない安全側の既定)。柱の判定は鉛直な 2 節点線材(部材軸の鉛直成分が大きい部材)で行い、 柱が取り付かず梁だけが取り付く最下レベル節点(地中梁の中間節点など)は支点にしません。 最下レベルに柱脚が特定できない場合に限り、解析可能性を優先して最下レベルの全節点を ピン支点にフォールバックします。設定した内容は [ImportReport] の通知(notes)で知らせ、 モデルタブ→境界条件で変更できます。すでに拘束を持つモデルはそのまま尊重し、何もしません。

断面の符号と階(取り込み)

ST-Bridge は断面を guid で識別しており、同じ符号の断面を階ごとに別の定義として持ちます。 そのため 1 つのファイルに name="C1"StbSecColumn_S が、floor="1"floor="2"floor="3" と 3 つ並ぶことは正常な状態です。

Squid-n の断面は符号と階の組で識別するため、この構造を そのまま取り込めます。 断面の floor 属性は文字列としてそのまま保持し、階(StbStory)への参照としては扱いません。 ST-Bridge の floor は自由文字列で、階への id 参照を持たないためです。 実際、断面の階名が 1RPHRStbStory の名称が 1FLRFLPHRFL というように 食い違うファイルや、断面の階名に対応する StbStory が存在しないファイルがあります。

符号+階が重複する断面定義は、取り込みの段階で次のように解決します。

  • 断面性能・断面形状・材料が完全に一致する定義は、1 件へ統合する。統合した件数は [ImportReport] の通知(notes)で知らせる
  • いずれかが食い違う定義は、符号へ連番を付けて(b3b3#2)別の断面として残す。 符号を変えた内容は [ImportReport] の警告で知らせる

材料も一致の判定に含めるのは、材料は断面が持ち、違う材料を割り当てるならそれは 別の断面だからです。材料だけが違う定義を 1 件へまとめると、片方の材料が無言で消えます。

食い違う定義を捨てずに残すのは、利用者が書いた断面定義を無言で消さないためです。 連番を付けた時点で符号+階は一意になるので、モデル側の制約とも矛盾しません。

階を持たない断面定義(floor 属性のない StbSecBeam_S など)が複数あり、内容も同一である場合は 1 件へ統合されます。 小梁の断面定義が同じ内容で何件も並ぶファイルは実際にあるため、この統合で断面一覧が実態に近づきます。

断面表現(書き出し)

書き出しは ST-Bridge 2.0.2 標準スキーマ準拠の 1 形式のみです。内部モデルのパラメトリック断面形状 (Section.shape)を対応する標準要素+形鋼ライブラリ(StbSecSteel)へ写像します。

内部形状書き出し先
H 形鋼・角形鋼管・鋼管・山形鋼・溝形鋼・T 形鋼形鋼ライブラリ StbSecSteelStbSecRoll-H/-BOX/StbSecPipe/-L/-C/-T)+ StbSecColumn_S / StbSecBeam_S
平鋼・中実丸鋼・リップ溝形鋼形鋼ライブラリ(StbSecRoll-FlatBar/-RoundBar/-LipC)+ StbSecColumn_S / StbSecBeam_S
非対称組立 H(上下フランジ相違)StbSecBuild-H
RC 矩形・円形StbSecColumn_RC / StbSecBeam_RC(断面の幾何 + 配筋 StbSecBarArrangement*
CFT 角形・円形StbSecColumn_CFT + 充填鋼管の StbSecSteel 参照(柱のみ)
SRC 矩形StbSecColumn_SRC / StbSecBeam_SRC(コンクリート図形+内蔵鉄骨 StbSecSteel 参照+配筋+鋼種 strength_steel
上記以外(耐震壁・形状未定義・CFT 梁・RC 円形梁)標準 ST-Bridge に対応要素がないため物性直持ちの拡張要素 StbSecRaw へフォールバック(他ソフトは解釈できないが参照部材の断面リンクは保つ)

往復(import → export → 再 import)についての注意:

  • 材料は断面のグレード名(鋼 strength_main、コンクリート strength_concrete、 内蔵鉄骨 strength_steel、主筋・せん断補強筋は配筋の strength_*)で往復します。 Squid-n も材料を断面に持つため、両者の持ち方が一致します。 日本の構造材料は規格化されており名前が物性を一意に定めるため、取り込み時に名前から標準材料表で E・ν・密度・Fc・Fy を復元します。任意の物性値(グレード名に対応しない E/ν 等)は往復しません。 部材側の id_material を持つファイル(実 ST-Bridge に多い)は、その材料を参照先の断面へ移します。 同じ断面を指す部材が別々の材料を指す場合は、最初の 1 件を採り、その件数を 取り込み報告の警告へ出します。違う材料を使う部材は断面を分けてください。
  • RC の配筋(主筋の本数・径〔単一 D_main〕・材質〔strength_main〕、帯筋・あばら筋の径・ピッチ・組数・材質、かぶり)も StbSecBarArrangement*(配筋子要素=標準名、かぶり=配置コンテナの depth_cover_*)として往復します。 ただし ST-Bridge の主筋径は D_main 単一・段別本数のみのため、X/Y で径を変えたり多段配筋にしたりは 往復しません(単一径・1 段へ丸めます)。
  • 断面の階floor 属性として書き出します。階を持たない断面は属性ごと省きます。 ST-Bridge 2.0 の floor は省略可能な xs:string なので、未設定を空文字列で書き出すと取り込み側で 「階なし」と「階が空文字列」を区別できなくなるためです。属性を省くことで、往復しても符号+階の 組が保たれます。
  • 柱・梁で共有していた断面は、書き出し時に柱用(StbSecColumn_*)と梁用(StbSecBeam_*)へ 分割されます。分割された 2 つは符号も階も同じで断面性能も一致するため、読み戻すときに 1 件へ 統合されます(符号+階の重複の解決。上記参照)。
  • RC 円形を梁として使う断面CFT 梁形状未定義断面StbSecRaw へフォールバックします。
  • id は ST-Bridge の positiveInteger(1 始まり)に合わせて出力し、取り込み時に 0 始まり連番へ正規化します。

Squid-n 固有の解析・設計属性や材料の物性値まで含めた完全一致での往復が必要な場合は .scz を使います。

ライブラリからの利用

#![allow(unused)]
fn main() {
use squid_n_io::stbridge::{import_stbridge, import_stbridge_with_report, export_stbridge};

// 読み込み: ST-Bridge XML 文字列 → 内部モデル
let xml = std::fs::read_to_string("model.stb")?;
let model = import_stbridge(&xml)?;

// 読み込み(欠落の報告つき): 未対応要素のスキップ・断面欠落・参照解決失敗などを警告として得る
let (model, report) = import_stbridge_with_report(&xml)?;
if !report.is_clean() {
    for w in &report.warnings {
        eprintln!("警告: {w}");
    }
}

// 書き出し: 内部モデル → 標準 ST-Bridge 2.0.2 XML 文字列
let xml = export_stbridge(&model)?;
std::fs::write("model.stb", xml)?;
}

取り込みの欠落を確認する: import_stbridge_with_report は [ImportReport] を返します。 基礎・杭・開口などの未対応要素、テーパ等で図形を認識できない RC/SRC 断面、 未解決の形鋼参照、存在しない節点を参照する部材が、警告として列挙されます。 床領域の付け直しでは、どの床領域にも載らない版、所属の付かない小梁、 面積が新しい床領域と合わなかった旧床領域の件数も警告します。 GUI の「ST-Bridge 読込」は警告があれば「⚠️ 取り込み時の注意」として表示します。

ST-Bridge 要素別 変換状況一覧

ST-Bridge の主要要素ごとの変換状況です。 凡例: ✅ 対応⚠️ 一部・近似❌ 非対応。 「取り込み」は他社ファイルを読めるか、「書き出し」は Squid-n が出力するか、「往復・備考」は import→export→再import での保存性と注意点を示します。

対応範囲の考え方と非対応項目の扱いは ST-Bridge 形式(.stb / .xml)を参照してください。 本表は要素の単位でまとめたものです。 属性の単位では、取り込んだファイルに存在した属性の扱いを すべて取り込み時に報告します(属性の扱いの報告)。

書き出しは ST-Bridge 2.0.2 標準スキーマ準拠の 1 形式だけで、断面の表現を選ぶモードはありません。 標準要素で表せない断面だけが、物性を直接持つ拡張要素 StbSecRaw へ落ちます。

節点・階・材料

ST-Bridge 要素取り込み書き出し往復・備考
StbNode(座標)座標は標準スキーマの大文字 X/Y/Z。書き出しの kindON_GRID 固定(所属部材から種別を決められないため)。拘束・質量は対象外
StbStory(名称・標高)取り込みでは標高(height)の昇順へ並べ替えて階を作る。階の種別(kind)は書き出しのみで、取り込みでは読まないため往復しない
StbStory/StbNodeIdList/StbNodeId(階の所属節点)標準スキーマのまま往復する
断面のグレード名(strength_mainstrength_concretestrength_steel ほか)材料の実体はこれで往復する。取り込みでは名前から標準材料一覧で E・ν・密度・Fc・Fy を復元する。区分を名前から決められない材料は物性から推定し、取り込み報告で通知する
StbMaterial(E・ν・密度・fc・fy)ST-Bridge 2.0 の StbModel は材料表を持たないため、書き出しでは出力しない。材料表を持つファイルを読んだときに物性を捨てないよう、取り込みだけ受け付ける
部材の id_material(材料参照)⚠️材料は断面が持つため、取り込みでは参照先の断面へ移す(同じ断面を指す部材が別々の材料を指す場合は最初の 1 件を採り、件数を警告へ出す)。書き出しは断面のグレード名で表す

部材

ST-Bridge 要素取り込み書き出し往復・備考
StbColumn(柱)鉛直材として往復。rotatecondition_bottom/_top を読む。端部の偏心 offset_* は対象外
StbGirder(大梁)水平材として往復。rotatecondition_start/_end を読む。端部の偏心 offset_* は対象外
StbBeam(小梁)二次部材として往復する。全体解析の対象外で、床荷重と自重は大梁への集中荷重(CMQ)として伝える。床スラブの小梁一覧には載せない。断面検定は 6.5.1 小梁の検定(二次部材経路。床領域分配の線荷重を単純梁として重ね合わせる)
StbPost(間柱)二次部材の間柱として往復。節点は id_node_bottom/_topid_node_start/_end も可)
StbBrace(ブレース)feature_brace を読み、TENSIONANDCOMPRESSION 以外は引張専用とする。両端ピンで取り込む
StbSlab(スラブ)⚠️境界節点ループ(StbNodeIdOrder のテキスト・CDATA・子要素 StbNodeId のいずれも可)+断面参照。取り込み後、大梁の閉路(床領域)へ床板(Slab)を付け直す(重心が複数床領域に入るときは面積が最小)。どの床領域にも入らず 1 辺が大梁に全長載り自由端が 1〜2 点なら取り付く床板。それ以外の未所属は囲まれのまま残し、版ありなら警告。kind_slab は読まない。書き出しは囲まれかつ版がある床板だけ(kind_slabNORMAL 固定)。仕上げ荷重・用途(積載)・分配法・取り付き・版なしは対象外
StbWall(壁)境界節点ループ+断面参照(厚さ)。id_material は断面へ移す。開口(StbOpen)は対象外。取り込み先は壁版(囲まれた WallPlate)で、解析要素は都度生成する。解析要素になるかは 4.5 壁エレメントモデル の条件で決まり、ならない壁版は荷重だけを持つ壁版として扱う。どの壁領域にも載らない壁版の一部は取り付く壁版へ自動変換する(条件は 1.9 壁の断面と自重)。書き出しは壁版から出すため、4 節点でない囲まれた壁版も往復するが、取り付く壁版は往復しない。解析要素にならない壁版も、自重は自動で分配し地震用重量・「DL」・数量拾いへ算入する(1.5 地震用重量・層データの生成)。仕上げ・増打ちの面荷重は対応する要素がないため往復せず、取り込んだ壁版では常に空になる
部材の符号(name⚠️⚠️取り込みで符号を保つのは二次部材(小梁・間柱)のみ。書き出しは C1G1BR1 のような自動命名になるため、符号は往復しない
StbFooting / StbPile / StbFoundationColumn / StbStripFooting(基礎系)取り込み時に警告
StbParapet / StbOpen(パラペット・開口)取り込み時に警告

境界節点が解決できないスラブ・壁と、頂点が 3 つに満たないスラブ・壁は、取り込まずに件数を警告へ出します。 床領域の付け直しで、どの床領域にも載らない版・所属の付かない小梁・面積照合できなかった旧床領域があるときも、件数を警告へ出します。 壁領域の付け直しで、どの壁領域にも載らず、かつ取り付く壁版へも変換できない壁版・所属の付かない間柱があるときも、件数を警告へ出します(自動変換に成功した場合は警告しません)。 断面未割当の壁版は、取り込み時に警告します(板厚と材料が決まらず自重を算定できません)。

断面 — 鋼(形鋼ライブラリ StbSecSteel

StbSecColumn_S / StbSecBeam_S / StbSecBrace_S が形鋼図形を参照します。 書き出しでは、柱の断面が StbSecColumn_S、大梁とブレースの断面が StbSecBeam_S になります。 ブレース専用の型を使わないのは、断面の内容が梁用と同じで、型を分けても情報が増えないためです。 二次部材(小梁・間柱)だけが使う断面と、どの部材からも参照されない断面は、柱用として書き出します。

形鋼要素取り込み書き出し内部形状・備考
StbSecRoll-H / StbSecBuild-HH 形鋼(SteelH)。書き出しは StbSecRoll-H
StbSecBuild-H(上下フランジ相違)非対称組立 H(SteelBuiltH)。下フランジは方言属性 B2/t2_lower。第三者は上フランジの対称 H として読む
StbSecRoll-BOX / StbSecBuild-BOX角形鋼管(SteelBox)。角部外半径 r も往復する(属性がなければ角部直角として 0)
StbSecPipe / StbSecRoll-Pipe / StbSecBuild-Pipe鋼管(SteelPipe)。書き出しは StbSecPipe
StbSecRoll-L山形鋼(SteelAngle
StbSecRoll-C溝形鋼(SteelChannel
StbSecRoll-T / StbSecBuild-TT 形鋼(SteelTee
StbSecRoll-FlatBar平鋼・鋼板(SteelFlatBar
StbSecRoll-RoundBar中実丸鋼(SteelRoundBar)。直径 D がなければ半径 R を 2 倍する
StbSecRoll-LipCリップ溝形鋼(SteelLipChannel)。幅厚比・部材ランク検定は対象外
組立断面(2L・2C・十字)・リップ Z・その他軽量形鋼形鋼参照を解決できず、断面性能ゼロの断面として警告する

鋼断面の図形参照(StbSecSteelColumn_S_SameStbSecSteelBeam_S_Straight など)は、 shapeshape_startshape_centershape_main の順に見て、最初に見つかった形鋼名を採ります。

図形参照取り込み書き出し往復・備考
一様断面(*_Same / *_Straight書き出しはこの形だけを使う
テーパ・継手(*_Taper / *_Joint ほか始端を持つ図形)⚠️始端の形鋼を採り、材長方向に一様な断面として近似する。中間・終端の形鋼は取り込まない
上記 4 つの属性をいずれも持たない図形(柱の *_NotSame など)形鋼名を取れず、断面性能ゼロの断面として警告する

断面 — RC・SRC・CFT

ST-Bridge 要素取り込み書き出し往復・備考
StbSecColumn_RC_Rect / _CircleRC 矩形・円形柱(RcRect/RcCircle)+配筋
StbSecBeam_RC_StraightRC 矩形梁+配筋。円形梁は ST-Bridge に図形がなく StbSecRaw へフォールバック
StbSecBarArrangement*(配筋)⚠️主筋(本数・径・段数)・帯筋・あばら筋・かぶりを best-effort で取り込む。詳細は下記
StbSecColumn_CFT(+充填鋼管)⚠️CFT 角形・円形(CftBox/CftPipe)。柱のみ。梁に使うと StbSecRaw
StbSecColumn_SRC / StbSecBeam_SRCSRC 矩形(SrcRect)+内蔵鉄骨(H 形鋼)+配筋+鋼種 strength_steel
StbSecRaw(物性直持ちの拡張要素)標準要素で表せない断面のフォールバック。他ソフトは解釈できないが、参照する部材の断面リンクは保たれる
RC・SRC のテーパ・ハンチ等(矩形・円形以外の図形)図形を認識できず、断面を取り込めなかったものとして警告する
StbSecFoundation_RC / StbSecPile_* / StbSecParapet_RC / StbSecOpen_RC取り込み時に警告

配筋の取り込みは、実ファイルで使われる属性名の揺れを吸収するようにしています。

  • 主筋の本数は、段別の本数(N_main_X_1stN_main_top_1st など 1〜3 段目)を合算して総本数とする
  • 段数は明示の属性があればそれを採り、なければ本数が 0 でない段を数える
  • 主筋の径は D_main などから採り、D22 のような呼び名も数値 22 として読む
  • かぶりは配筋の子要素になければ、配置コンテナ(StbSecBarArrangement*)の depth_cover_* を採る
  • 材質は主筋が strength_main、せん断補強筋が strength_bandstrength_stirrup

ST-Bridge の主筋径は D_main の 1 種類だけなので、X 方向と Y 方向で径を変えた配筋は往復しません。 書き出しでは 1 段の配筋へ丸めるため、多段配筋も段数を保てません。

断面 — スラブ・壁

ST-Bridge 要素取り込み書き出し往復・備考
StbSecSlab_RC(厚さ・符号・階・コンクリート)厚さ(depth)は図形要素(StbSecFigureSlab_RC > StbSecSlab_RC_Straight)から取る。符号 name・階 floorstrength_concrete も断面として取り込む。書き出すのは StbSlab を出した領域が参照する断面だけ(版なし・取り付きの孤立断面は出さない)
StbSecSlabDeck(デッキ合成)⚠️図形(StbSecSlabDeckStraight)からコンクリート部せいを厚さとして取る。書き出しは StbSecSlab_RC 相当
StbSecWall_RC(厚さ)⚠️取り込むのは厚さのみで、符号・階・strength_concrete は読まない。書き出しは壁版ごとに 1 件、符号は W1 のような自動命名
StbSecSlab_S(鋼スラブ)取り込み時に警告

スラブの断面は符号+階で識別するため、同じ断面を参照する床が何枚あっても断面は 1 件です。 床の自重は面荷重へ焼き込まず、断面の板厚とコンクリート材料から使うたびに算定します (床の断面と自重)。

壁の断面は厚さごとに 1 件だけ作り、符号は Wall t180 のように厚さから決めます。 壁の材料は取り込みでは StbWallid_material から解決するため、書き出した strength_concrete を読み戻す経路はなく、材料は往復しません。

荷重・その他

ST-Bridge 要素取り込み書き出し往復・備考
StbLoadCase / StbNodalLoad(荷重ケース・節点荷重)荷重ケースの名称と、節点荷重の 6 成分(fxfyfzmxmymz。欠けている成分は 0)を取り込む。荷重は StbModel(幾何)の外なので書き出さない
StbLoadCase 直下のほかの荷重要素(StbLoadMember ほか)取り込み時に警告
StbAxes > StbParallelAxes(平行芯)グループの原点・方向角、通り名・離れ・所属節点が往復(通り芯
StbAxes > 円弧芯・放射芯・作図芯⚠️通り名と所属節点のみ取り込む(幾何は保持しない)。書き出しは平行芯のみで、除いた旨を通知
拘束条件(支点)ST-Bridge の幾何スコープ外。支点を持たないモデルは取り込み時に自動設定する(下記)
質量ST-Bridge の幾何スコープ外
StbCommon書き出しのみ。プロジェクト名・アプリ名は Squid-n 固定
StbJoints接合部は扱わないため、書き出しでは空要素だけを出す

取り込み時の既定値

ファイルに属性がないときの扱いをまとめます。 解析結果に直接効く最後の 2 つは、既定を採ったことを取り込み報告の警告・通知でも知らせます。

  • 部材端の接合条件(condition_*)がない場合は剛接合(FIX)とする
  • 断面の回転角(rotate)がない場合は 0 とする
  • ブレースの feature_brace がない場合は引張専用とする
  • 断面参照(id_section)が -1 または未指定の場合は、断面を持たない部材として取り込む
  • 配筋を持たない RC・SRC 断面は、本数・径・ピッチをすべて 0 とした無筋相当の配筋で補う
  • 形鋼参照を解決できない鋼・CFT・SRC 断面は、断面性能を 0 とした断面として残す
  • 支点を 1 つも持たないモデルは、最下レベルで柱脚が付く節点をピン支点にする (支点の自動設定

波形ライブラリ

時刻歴応答解析の入力波形(CSV)を、プロジェクト(.scz)をまたいで使い回すための置き場です。

位置づけ

.scz にはモデル・解析結果・解析タブの設定値(時刻歴の波形パラメータ・減衰モデル等)を保存しますが、時刻歴の入力波形(CSV)そのものは含めません。波形ライブラリは、OS 標準のユーザーデータディレクトリ配下の専用フォルダに波形 CSV をコピーして保管し、全プロジェクトから共通の置き場として参照します。立体時刻歴と質点系は、同じライブラリから独立した選択を持ちます。

  • ディレクトリ: OS 標準のユーザーデータディレクトリ配下の squid-n/waves(Windows は %APPDATA%\squid-n\waves、macOS は ~/Library/Application Support/squid-n/waves、Linux は ~/.local/share/squid-n/waves 相当)。
  • 対応拡張子: .csv / .txt / .dat

注意(機械ローカル): ライブラリはこのマシンのユーザーデータディレクトリに置かれます。別のマシンで .scz を開いた場合や、プロジェクトファイルを他者へ渡した場合、そのマシンのライブラリに同名の波形がなければ波形を解決できません。

GUI からの操作

波形の登録

ファイルメニューの「🌊 波形を保存…」から、波形 CSV を選んでライブラリへコピーします(この操作では解析は実行しません)。ライブラリに同名の波形が既にある場合は、上書き確認ダイアログを表示します。

波形を選んで実行

工程タブ「解析」を開き、右のアイコン列から「時刻歴応答」パネルを出すと、「波形ライブラリ」のドロップダウンがあります。登録済みの波形ファイル名を一覧表示します(他のプロジェクトで登録したものも同じ一覧に表示されます)。選んで「▶ 選択した波形で実行」を押すと、時刻歴応答解析をジョブ実行します。方向(X/Y/X+Y)・dt の解釈は「📂 波形CSVを開いて実行…」(一回限りのファイル選択)と同じです。

右バー「質点系」にも同じドロップダウンがあります。ここでの選択は立体時刻歴とは独立で、.scz にも別フィールドとして保存します。質点系パネルから波形 CSV を直接開いて実行する操作はありません。

.scz との連携

「▶ 選択した波形で実行」で実行した波形のファイル名と、実行時点のファイル内容の SHA-256 は、解析タブの設定値(analysis_settings.msgpack)に同梱して保存します。プロジェクトを開き直すと、ライブラリに同名のファイルが存在する限り、この選択を自動的に復元します。

  • ライブラリにファイルが見つからない場合(削除された等)は、通知したうえで選択を解除します。
  • ファイルは見つかるが内容(SHA-256)が保存時と異なる場合(ライブラリ側で上書きされた等)は、選択は維持したうえで内容が変わっている旨を通知します。

ライブラリからの利用

#![allow(unused)]
fn main() {
use squid_n_io::wave_library::{wave_library_dir, list_wave_library, register_wave, wave_sha256};

let dir = wave_library_dir().expect("ユーザーデータディレクトリを特定できません");
let names = list_wave_library(&dir)?;          // 登録済みの波形ファイル名一覧
let name = register_wave(&dir, src_path)?;     // 波形 CSV をライブラリへコピー(同名は上書き)
let hash = wave_sha256(&dir, &name)?;          // 内容の SHA-256(16進小文字)
}

モデルの編集

本章では、構造計算そのものには入らないものの、モデルを扱ううえで必要になる編集機能に ついて紹介します。下ドックの「モデル」タブに並ぶ各テーブルのうち、節点・部材・断面・ 材料のように解析入力を直接構成するものは各解析の計算根拠から追えます。一方で、通り芯の ように識別のために持つデータは、どこにも計算根拠がないため本章で説明します。

断面についても、断面性能そのものは計算根拠から追えますが、どの断面がどれなのかを定める符号と階は 識別のために持つデータであるため本章で説明します。

あわせて、入力の手間を減らすモデル作成の支援機能も本章で扱います。架構作成ウィザードは 節点・柱・大梁・通り芯・階を一度に作り、立体グリッドのスナップは格子点に沿って部材を 引けるようにします。階への複製は、ある階で決めた断面・荷重・床割りをほかの階へ配ります。 いずれも入力を組み立てる操作であって、解析の考え方そのものを変えるものではありません。

解析への影響

通り芯・断面の符号と階は識別のためのデータで、解析結果・設計結果に影響しません。 編集しても再解析は不要で、準備計算をやり直す必要もありません。保存が必要になるだけです。

一方、モデル作成の支援機能は節点・部材・断面・荷重そのものを作るため、実行すると解析結果は 陳腐化します。実行後は準備計算と解析をやり直してください。

この章の内容

通り芯

通り芯は、日本の構造設計で各通りを識別するために付ける呼称です。「X2 通りの柱」「Y3 通りの 大梁」のように部材の位置を言い表すためのもので、構造計算には一切用いません。応力解析・ 断面算定・保有水平耐力のいずれにも入らないため、通り芯を作っても解析結果は変わりません。

通り芯は下ドックの「モデル」タブにある「通り芯」で確認・編集します。準備計算の成果では ないため、準備計算を実行しても通り芯は作られません。生成したいときは、このタブの 「柱位置から自動生成」を押してください。計算に用いないデータなので、必ずしも自動生成する 必要はなく、通り芯を持たないままモデルを解析しても差し支えありません。

計算に用いないことに合わせて、通り芯の追加・改名・自動生成は解析結果・設計結果・準備計算を 陳腐化させません。通り芯を 1 本足すたびに再解析が必要になると、識別のためのデータが解析の 手戻りを生むことになるためです。編集後は保存だけが必要になります。

通り芯の構成

通り芯は、同じ幾何規則を共有する「グループ」と、その中の 1 本ずつの「通り」の 2 段構成です。 X 方向の通りをまとめたグループ、Y 方向の通りをまとめたグループ、という持ち方をします。

グループは次の 2 種類です。

  • 平行芯:原点と方向角を持ち、各通りは原点からの符号付きの離れで位置が決まる
  • 平行芯以外:円弧芯・放射芯・作図芯。幾何は保持せず、所属節点のまとまりとしてのみ扱う

平行芯グループでは、芯線の方向が方向角 \( \theta \) の \( (\cos\theta, \sin\theta) \)、離れを測る 向きがそれを 90° 回した \( (-\sin\theta, \cos\theta) \) になります。方向角 270° のグループは 離れが +X 向きに測られるため X 方向の位置を、方向角 0° のグループは +Y 向きに測られるため Y 方向の位置を表します。

1 本の通りが持つのは、通り名・離れ・所属節点・出所の 4 つです。

所属節点と所属要素

通り芯が保持するのは所属節点だけです。所属要素は「すべての材端節点がその通りに属する 要素」として、必要になった時点で算出します。柱・梁・ブレースのような線材のほか、4 節点 すべてがその通りに属する壁も所属要素になり、一覧の「所属要素」列にはこの規則で数えた本数を 表示します。

所属節点を座標から導かずリストとして持つのは、実務では通りの位置と柱の芯が一致しない 芯ずれが普通に起こるためです。たとえば X=3000 の位置にある通りに、X=3500 に立つ柱を 所属させるモデル化があります。所属を座標から求める方式ではこの関係を表せないため、所属は リストを正とします。

自動生成の規則

「柱位置から自動生成」は、柱が立つ平面位置に X 方向・Y 方向の通り芯を作ります。既定の 判定基準は以下のとおりです。

対象とする部材

対象は柱の材端節点だけです。柱は、線材のうち両端の水平距離(XY 平面内の距離)が 1 mm 未満のものと判定します。この判定規則は、仕上げ周長式・柱脚梁せいの付加・壁領域の 構面走査と共通です。

梁・ブレース・二次部材(小梁・間柱)・壁は、通り芯を「柱が立つ位置」と定義しているため 対象にしません。斜材の頂点や小梁の交点まで通りにすると、実際には通りではない位置に多数の 通りが立ち、識別札としての役目を果たさなくなります。剛床代表節点は要素が接続しない仮想 節点のため、自然に対象から外れます。

追加先グループの決め方

追加先のグループは幾何で突き合わせます。離れを測る向きが X 軸に沿う平行芯グループが すでにあれば、そこへ通りを追加します。ない場合は、名前 X・原点 (0, 0)・方向角 270° の グループを新設します。Y 方向も同様で、新設時の方向角は 0° です。

名前ではなく幾何で突き合わせるのは、他ソフトから取り込んだファイルのグループ名が けた行張り間 のように任意であるためです。名前で探すと、同じ位置に通りが二重に立ちます。

離れはそのグループの原点・方向角で測るため、取り込んだグループの符号の規約にそのまま 従います。たとえば方向角 90° のグループでは、離れを測る向きが -X 向きになるため、X=6000 に 立つ柱の離れは -6000 になります。

まとめ方と採番

柱の平面位置を離れの昇順に並べ、許容差 1 mm でまとめて 1 本の通りにします。通りの離れは、 まとまりの先頭の値を採ります。

通り名は離れの昇順に、そのグループ内で未使用の最小の正整数 \( n \) を使って {グループ名}{n} と付けます。通り芯がないモデルであれば X1X2・… と座標の昇順に 並びます。座標が負のモデルでも同じで、X = -6000, 0, 6000 の 3 本があれば X1(-6000)X2(0)X3(6000) になります。番号が空間の順序どおりに増えないと、図面上で 位置を特定するという通り名の役目が果たせないためです。

グループ内の通りは、常に離れの昇順に並べます。

既存の通りの扱い

通り芯には自動・手動の 2 つの出所があります。自動生成が作った通りが「自動」、利用者が 作った通り・ST-Bridge から取り込んだ通り・利用者が名前を変更した通りが「手動」です。

自動生成を実行すると、「自動」の通りだけを破棄して作り直し、「手動」の通りはそのまま 残します。さらに、同じグループ内に許容差 1 mm 以内の通りがすでにあれば、その位置には 新しい通りを作りません(既存優先)。取り込んだ通り名や芯ずれした所属は自動生成では復元 できないため、既存を残すほうが情報を失いません。

通り名を変更すると、その通りの出所は「手動」に変わります。利用者が付けた名前を、次の自動 生成が機械的な番号で上書きしないようにするためです。

3D ビューでの利用

通り芯と階がそろうと、その交点を格子点とする立体グリッドを 3D ビューへ描けます。 格子点へスナップして部材を引けるため、通り芯は識別のためだけでなく、モデリングの下敷きと しても使えます(立体グリッドとスナップ)。

ST-Bridge との対応

ST-Bridge の通り芯(StbAxes)は取り込み・書き出しの両方に対応しています。

取り込みでは、平行芯(StbParallelAxes)をグループの原点・方向角ごと取り込みます。円弧芯・ 放射芯・作図芯は幾何を表す型を持たないため「平行芯以外」のグループとして扱い、通り名と所属 節点だけを取り込みます。通り芯は識別のためのデータであり、所属さえ残れば役目を果たせるため、 幾何が表せないことを理由に読み飛ばすことはしません。取り込んだ通りはすべて出所が「手動」に なり、自動生成では作り直されません。

書き出しでは、平行芯のグループだけを StbAxes として出力します。平行芯以外のグループは 幾何を保持していないため書き出せず、その旨を書き出し時に通知します。

平行芯だけで構成されたモデルであれば、グループの原点・方向角・通り名・離れ・所属節点の すべてが往復します。

断面の符号と階

本節では、断面をどう識別しているかと、断面一覧に表示される断面形状の表記について紹介します。

Squid-n の断面は、符号と階の組で識別します。 符号は C1GY2 のような断面記号で、階は 1PH1 のような階の名前です。 同じ C1 でも 1 階と 3 階で寸法が変わることは実務では普通にあるため、符号だけでは断面を一意に定められず、階を含めてはじめて 1 つの断面が定まります。

符号+階は重複できない

モデルの中に、符号と階がどちらも同じ断面が 2 つ以上あってはいけません。 一方で、断面性能が同じ断面が別の符号+階で存在するのは問題ありません。 たとえば C2 の PH1 階と C3 の PH1 階がどちらも同じ角形鋼管であってもかまわないのは、符号を分けた意図が利用者にあり、それをアプリの都合で勝手にまとめるべきではないためです。

この制約はモデル側で守られているため、断面一覧・断面作成パネルのどちらからも重複する組合せは作れません。 断面作成パネルで既存の断面と同じ符号+階を入力すると「+ 追加」ボタンが押せなくなり、理由がツールチップに出ますので、符号か階のどちらかを変えてください。

階を持たない断面もあります。 アプリ内で作成した断面や、階の指定がない ST-Bridge 断面がこれにあたり、断面一覧の「階」欄には と表示します。 この場合は符号だけが識別キーになるため、階なしの断面どうしで符号が重複することもできません。

断面一覧の表示

下ドックの「モデル」タブ→「断面」に、モデルが持つ全断面を一覧で表示します。

内容
ID内部の断面 ID。クリックするとインスペクタに断面詳細を表示する
符号断面記号
階の名前(階を持たない断面は
断面形状形状と各寸法の表記(下記。形状定義を持たない断面は
材料主材料(コンクリートまたは鋼材)。この欄で割り当てる
主筋主筋の材質。配筋を持つ断面のみ有効
せん断補強筋せん断補強筋の材質。配筋を持つ断面のみ有効
内蔵鉄骨SRC の内蔵鉄骨の鋼種。SRC 断面のみ有効
部材数この断面を割り当てられた部材・小梁・二次部材・床の数
D×B [mm]せい D × 幅 B
A [cm²]断面積
Iy / Iz [cm⁴]断面二次モーメント
J [cm⁴]ねじり定数
Asy / Asz [cm²]せん断有効断面積

断面性能の表示は cm 系です(\( A \)・\( A_s \): cm²、\( I \)・\( J \): cm⁴)。 内部では SI 単位系(N, mm)で保持しており、表示のときだけ換算しています。 せい D・幅 B のみ mm 表示なのは、実務での断面呼称に合わせるためです。

断面性能の欄は読み取り専用です。 断面形状も断面性能も断面形状の定義から導かれる結果であって入力ではないため、数値を直接書き換えられるようにすると、形状と断面性能が食い違ったモデルを作れてしまいます。 断面を作る・形状を変える・符号や階を直すのは、いずれも同じ画面の下にある断面作成パネルで行います。 この表から操作できるのは、材料 4 欄の割り当て、行の選択(インスペクタ表示)、どこからも参照されていない断面の削除の 3 つです。 「部材数」の欄は部材・小梁・二次部材に加え、その断面を割り当てた床も数えます(1.8 床の断面と自重)。 ここが 0 の断面だけが削除できるため、数え方は削除の可否とそろえています。

ナビゲータの断面一覧

左ドックのナビゲータには「断面一覧」があり、断面を階ごとにグループ化して表示します。 断面の階名が階定義(準備計算で生成される階)と一致する場合は、上階から下階の順で見出しが並び、各階に属する断面がその下に並びます。 階定義にない階名の断面は、その階名を見出しとしたグループで、階定義のグループの後に並びます。 階名がある断面は、二次部材・床から参照されていてもその階のグループに残ります。 階が未設定(空欄)の断面は、用途によってさらに分かれます。間柱・小梁・床(スラブ)のいずれかに割り当てられている断面は「二次部材」グループへ、それ以外は末尾の「(階なし)」グループへ入ります。

断面の行をクリックすると、下ドックの「モデル」タブ→「断面」一覧へ移動して、その断面の ID 行が選択状態になります。 グループの既定状態は閉じているため、見通しを保ちながら必要な階だけを開いて確認できます。

材料は断面が持つ

材料は部材ではなく断面に割り当てます。 同じ断面を使う部材はすべて同じ材料になり、違う材料を使うならそれは別の断面になります。 断面性能と材料強度が 1 か所にそろうため、断面検定・終局耐力の算定で材料の解決先が 1 つに定まります。

RC・SRC の主筋とせん断補強筋、SRC の内蔵鉄骨も、それぞれ専用の欄で材料を割り当てます。 配筋の本数・径・ピッチは断面作成パネルで、材質はこの表で指定する形になります。 断面形状から使わないとわかる欄(鋼断面の主筋など)は淡色の になり、選べません。

配筋を持つ断面で主筋・せん断補強筋の材料を割り当てないまま解析すると、 準備計算のモデル整合性チェックと解析前チェックがエラーで止めます。 降伏点 \( \sigma_y \) を既定値で埋めると、SD295 の部材で耐力を過大評価するためです。

形状定義を持たない断面(断面性能の数値直入力)は、断面形状の欄に と表示します。 この断面は幅厚比・部材ランクの判定、終局耐力の算定、スラブ協力幅による剛性増大の対象外になるため、意図した入力かどうかを確認してください。 断面作成パネルで寸法を組み立ててから「✏ 選択断面へ適用」を押すと形状を与えられるので、意図しない数値直入力であればそこで直せます。

既存断面の符号・階を直す

断面一覧の ID 欄をクリックして断面を選ぶと、断面作成パネルの「符号」「階」の欄にその断面の現在値が読み込まれます。 欄を書き換えてから「✏ 符号・階を変更」を押すと、選択中の断面へ反映されます。 変更後の符号+階が他の断面と重なる場合はボタンが押せなくなるため、先に相手側を直すか、別の値を入れてください。

同じパネルの「✏ 選択断面へ適用」は形状だけを差し替えるボタンで、符号と階は維持します。 断面の符号は部材リストや検定結果の見出しにも出るため、形状を変えたときに符号まで変わると結果の追跡ができなくなるためです。

断面形状の表記

断面形状の欄には、形状の種別と各寸法を 1 つの文字列で表します。 記号は ASCII のみを使い、接頭辞から断面の種別が読み取れるようにしています。 寸法の並びは形状ごとの実務の断面呼称に合わせているため、鋼断面はせい・幅・板厚の順、RC 矩形は幅 B・せい D の順になります。

形状表記
H 形鋼H-{H}x{B}x{tw}x{tf}H-500x250x9x16
非対称組立 H 形鋼BH-{H}x{上B}x{上tf}x{下B}x{下tf}x{tw}BH-800x300x19x400x25x12
角形鋼管BOX-{H}x{B}x{t}BOX-300x300x12
円形鋼管P-{D}x{t}P-216.3x8
山形鋼L-{A}x{B}x{t}L-75x75x9
溝形鋼CH-{H}x{B}x{tw}x{tf}CH-200x80x7.5x11
リップ溝形鋼LC-{H}x{B}x{C}x{t}LC-150x75x20x3.2
T 形鋼T-{H}x{B}x{tw}x{tf}T-100x200x8x12
平鋼FB-{B}x{t}FB-100x9
中実丸鋼RB-{D}RB-25
RC 矩形BD-{B}x{D}BD-300x600
RC 円形RD-{D}RD-600
SRC 矩形SRC-{B}x{D}+H-{h}x{b}x{tw}x{tf}SRC-500x800+H-400x200x8x13
CFT 角形CFT-BOX-{H}x{B}x{t}CFT-BOX-300x300x12
CFT 円形CFT-P-{D}x{t}CFT-P-300x9
RC 耐震壁W-t{t}W-t180
RC スラブS-t{t}S-t150

寸法の単位はすべて mm です。 整数の寸法は小数点以下を落とし、端数のある寸法はそのまま示します(300.03006.56.5)。

円形の断面は、円形鋼管が P-、中実丸鋼が RB-、RC 円形が RD- と用途で記号を分けています。 どれも断面性能の算定式も検定の扱いも別物であるため、表記の段階で見分けられるようにしています。

SRC 矩形だけは、コンクリート断面の寸法に内蔵鉄骨の寸法を + でつないでいます。 内蔵鉄骨の寸法は断面形状そのものであり、外形だけを示すと内蔵鉄骨の違う 2 断面が同じ表記になって見分けられなくなるためです。

角形鋼管の角部外半径 \( r \) は表記に含めません。 \( r \) はせん断有効断面積の補正にのみ用いる寸法で、表記に入れても断面の見分けには寄与せず列が長くなるだけだからです。 値は断面作成パネルで確認・変更できます。

表示が切り詰められたとき

断面一覧の各列は、内容が列幅を超えるとセル内で切り詰めます。 セルの内容が列からはみ出すのを許すと、その行だけ以降の列が右へずれて表全体が読みづらくなるためです。 切り詰められた内容は、そのセルにマウスカーソルを合わせるとツールチップで全文を確認できます。 列の境界はドラッグして幅を変えられるので、SRC-500x800+H-400x200x8x13 のような長い表記を常に表示したい場合は断面形状の列を広げてください。

架構作成ウィザード

架構作成ウィザードは、スパンと階高を入力するだけで整形な架構を一度に作る機能で、 ファイル > 新規(架構ウィザード)… から開きます。

日本の構造設計では、まず通り芯と階を決め、その交点に柱を立てて通りに沿って大梁を架けます。 ウィザードはその手順をそのまま入力欄にしたもので、節点を 1 つずつ置く手間を省けます。

本節では、ウィザードの入力項目と既定値、そしてそこから何が作られて何が作られないのかを 紹介します。

新規モデルを作る操作である

ウィザードは現在のモデルを置き換えます。既存モデルへ架構を足す使い方はできません。 既存の節点とどう突き合わせるかを決める必要があり、その規則を持たないためです。 既存モデルへ部材を足したい場合は、立体グリッドとスナップを 使うと通り芯と階の格子点に沿って部材を引けるため、ウィザードの代わりになります。

置き換えは undo できませんので、作りかけのモデルがある場合は先に保存してください。

入力項目と既定値

入力欄は「X 方向のスパン」「Y 方向のスパン」「階」「柱脚・大梁・床」の 4 つに分かれます。

項目既定値
X 方向のスパン6000 mm × 2(通り 3 本)
Y 方向のスパン6000 mm × 1(通り 2 本)
階高下から 4000 mm・3500 mm・3500 mm(3 階)
階名空欄(既定名で補う)。基部の床を含めて階高より 1 つ多く入力する
平面の原点(0, 0)
基部の標高0 mm
通り名の接頭辞X 方向は X、Y 方向は Y
柱脚ピン
大梁を作るON(基礎梁は常に作る)
床を作るON
床の板厚150 mm
床の用途事務室
床のコンクリートFc21

柱脚の既定はピンです。基礎梁は部材として作られるため、それによる柱脚の回転拘束は解析が 直接評価します。支点に重ねて固定を与えると、基礎そのものの回転拘束を無条件に見込むことに なるため、出発点のモデルでは見込まない側に寄せています。

スパンと階高は 1 つずつ数値を変えられるほか、「等スパン一括入力」「等階高一括入力」を使うと 本数と寸法を指定してまとめて置き換えられます。一括入力欄の既定は X 方向が 6000 mm × 2 スパン、 Y 方向が 6000 mm × 1 スパン、階が 3500 mm × 3 階です。

スパン・階高はいずれも正の値で入力してください。0 以下を許すと同じ位置に節点が重なり、 長さ 0 の部材ができて剛性行列が特異になるため、入力が正でない場合は生成の前に止めます。

階名の入力欄は床ごとに並びます。階は床であり、床の数は階高(層)の数より 1 つ多いため、 表の一番下に基部の床の行があります。基部の行には階高欄がありません。その階高は 1 つ上の床が 持つためで、名前だけを入力する行になります。GL のように付け替えたい場合は、この行の名前を 変えてください。

階名を空欄にすると、床基準の既定名で補います。下から 1F2F… となり、この規則は準備計算に よる階の初期化と共通です(階の分布)。最上階も数字で通すため、 屋根であれば RF へ付け替えてください。

階名は階ごとに違う名前にしてください。同じ名前の階があると解析前チェックが止めます。

何が作られるか

「この内容で作成」を押すと以下の 7 つが作られます。作成前に節点数・柱本数・梁本数・床枚数を 表示しますので、規模を確かめてから実行してください。

  • 節点:全格子点(X 通り × Y 通り × レベル)に 1 つずつ
  • :各格子点で上下に隣り合うレベルを結ぶ。基部から最上階まで通す
  • 基礎梁:基部レベルで、隣り合う通りの間に架ける
  • 大梁:基部より上の各レベルで、隣り合う通りの間に架ける
  • 柱脚支点:最下レベルの節点へ、選んだ支持条件(固定またはピン)を与える
  • 通り芯:X 方向・Y 方向のグループを新設し、通り名は座標の昇順に X1X2
  • :全レベルに 1 つずつ(先頭は基部の床)

基礎梁は常に作ります。日本の RC 造・S 造では基礎梁を必ず設けるため、作る/作らないの 選択肢は設けていません。「大梁を作る」を OFF にしても基礎梁は残ります。

柱は材軸が鉛直で局所座標系の基準ベクトルに鉛直方向を使えないため、柱はグローバル X 方向、 梁はグローバル Z 方向を基準ベクトルにとります。

通り芯の出所は「手動」になります。あとから「柱位置から自動生成」を実行したときに、 ウィザードが付けた通り名が機械的な番号で上書きされないようにするためです (通り芯)。

階の所属節点・剛床・地震用重量は節点と部材が決まってはじめて定まる派生値のため、 ウィザードは空のままにし、生成後の準備計算で埋めます。

柱・梁の断面と材料は作らない

ウィザードは柱・梁(基礎梁を含む)の断面と材料を割り当てません。断面は利用者が決めるものであり、 もっともらしい既定断面を割り当てると、入力し忘れたまま解析が通ってしまうためです。 断面が未割当のまま解析しようとすると、解析前チェックが「断面が未割当の部材があります」で 止め、どの部材が未割当なのかを名指しします。

材料も割り当てません。断面形状が決まらないかぎり材料だけあっても部材の剛性は決まらないため、 材料は断面とあわせて利用者が決めることになります。生成後は断面タブで断面を作り、材料を 割り当ててから部材へ割り当ててください。

床は断面とコンクリートを作る

床は解析対象の部材ではなく、解析上は荷重(自重・積載)としてのみ効く二次部材です。 板厚さえ決めれば断面が確定し、材料は自重を決める入力にすぎないため、床については 断面と材料の両方をウィザードが作ります。

床を作る設定では、板厚 150 mm の断面 S151 枚だけ作り、全階の床へ割り当てます。 床の板厚と自重は断面と材料からしか解決できず、どちらかが欠けた床は解析前チェックが 止めてしまうため、床を作るなら断面とコンクリートもあわせて作ります (床の断面と自重)。 板厚を変えて入力すれば、その値の断面を作ります。

符号は板厚を変えても S15 のままです。 符号は識別のための札なので、板厚に合わせて S20 のように付け替えたい場合は、生成後に断面タブで変更してください。

床のコンクリートは Fc18Fc60 から選べ、既定は Fc21 です。選んだグレードの材料を 1 つだけ作り、床の断面 S15 へ割り当てます。材料の規格値(ヤング係数・密度・Fc)は 材料タブのプリセットと同じもので、床の自重はこの密度から決まります (標準材料一覧)。

材料を割り当てない選択肢は設けていません。材料のない床は解析前チェックが止めるので、 選ばずに済ませてもやり直しになるだけです。別のコンクリートを使う場合は、生成後に 材料タブで差し替えてください。

床は基部を含む全レベルの通り芯の各区画(隣り合う通りで囲まれた矩形)に 1 枚ずつ作ります。 X 方向・Y 方向とも通りが 2 本以上ないと通り芯の区画ができないため、片方が 1 本のモデルでは床を 作りません。

床の用途は積載荷重のプリセットで、選んだ用途が全階の床へ入ります。用途を「なし」にすると 積載荷重が入らないため、床の積載を別途入力する場合に使います (積載荷重)。

生成後の流れ

ウィザードが作るのは架構と床割りまでですので、解析へ進むには続けて以下を行ってください。

  1. 断面タブで断面を作り、材料を割り当てる
  2. 部材へ断面を割り当てる(3D ビューで部材をクリックしても割り当てられる)
  3. 準備計算を実行する

同じ断面を階ごとに配りたい場合は、階への複製を使うと、下の階で決めた 断面を上の階へまとめて配れます。

立体グリッドとスナップ

3D ビューには、通り芯と階から導いた立体グリッドを下敷きとして描けます。 格子点へスナップして部材を引けるため、節点を 1 つずつ作らなくても架構を組み立てられます。

通り芯は識別のためのデータで構造計算には用いませんが(通り芯)、 柱・大梁を置く位置は通りと階の交点に限られるため、モデリングの下敷きとしては有用です。 計算に使わないデータであっても 3D ビューへ描くのは、この理由によります。

本節では、何を描くのか、格子点がどう決まるのか、スナップがどう働くのかを紹介します。

表示の切り替え

3D ビューの上にある「通り芯グリッド」で表示を切り替えます。既定は ON です。

このトグルは、通り芯と階の両方があるモデルにだけ表示します。どちらかが欠けると格子点が 定まらず、描く格子がないためです。構面の基準線と二重になって読みづらくなるため、構面表示 (軸組図・伏図)中も描きません(構面の表示)。

スナップの対象は、格子を描いているときだけです。構面表示中は格子を描かないため、スナップも 既存節点だけになります。正射影では別の構面の格子点が画面上で重なるため、対象にすると見ていない 構面へ節点と部材ができてしまいます。

何を描くか

各レベルの平面格子だけを描き、鉛直線は描きません。鉛直線は柱と重なる位置に引かれるため、 柱のある架構では情報が増えず線だけが増えてしまいます。

通り名は最下レベルの端にだけ添えます。全レベルに繰り返すと画面が文字だらけになり、かえって 架構が読みづらくなるためです。

格子線は部材より淡い色で描きます。架構と同じ濃さで線が重なると、どれが実在する部材なのか 判断できなくなるため、色の濃さで下敷きだと分かるようにしています。

格子点の決まり方

平面の格子線は、離れを測る向きがグローバル軸に沿う平行芯グループから取ります。 方向角 270° のグループが X 方向、方向角 0° のグループが Y 方向の格子線になります。

斜めの平行芯グループと平行芯以外のグループ(円弧芯・放射芯・作図芯)は、直交する格子として 表せないため対象にしません。これらのグループしか持たないモデルでは格子が空になるため、 トグル自体が現れません。

離れはグループの原点・方向角で測った符号付きの値なので、グローバル座標へ直してから昇順に 並べます。同じ位置に通りが複数あるモデル(取り込みで重複した通り)では、許容差 1 mm 以内の 格子線を 1 本にまとめ、通り名は先に現れたものを採ります。

鉛直方向のレベルは、基部と各階の標高です。基部はモデルの最下レベルで、格子上では GL と 呼びます。階は標高の昇順に並ぶ不変条件を持つためそのまま格子面として使えますが、基部と同じ 標高の階だけはレベルが重なってしまうため飛ばします。

格子点はこの平面の格子線と鉛直のレベルの交点すべてで、3 通り × 2 通り × 4 レベルの架構で あれば 24 個になります。

格子点へのスナップ

梁作成モードでは、クリック位置を既存節点または格子点へスナップします。どちらも許容差 10 px(画面上の距離)で判定し、許容差の内に既存節点があればそれを優先します。 同じ位置に節点を重ねて作ると、見た目では気づけない二重節点ができ、部材がつながっていない モデルになってしまうためです。

節点のない格子点を選んだ場合は部材の生成とあわせて節点も作りますが、節点の追加と部材の追加は 1 つの操作にまとめてあるため、undo 1 回で節点ごと取り消せます

格子点の座標が既存節点と1 mm 以内で一致する場合も、その既存節点を使い回します。 表示されていない節点(床・二次部材だけに使われる節点)も対象にするため、「床壁・二次部材」を 非表示にした状態で部材を引いても二重節点はできません。

始点と終点が同じ節点に解決される場合は、長さ 0 の部材ができて剛性行列が特異になるため、 何も作らずにクリックを捨てます。

グリッドの表示を OFF にしたときも、スナップの対象は既存節点だけになります。見えていない格子点が 選ばれると、意図しない位置に節点ができてしまうためです。

作られる部材の属性

スナップで作る部材は、断面が未割当・両端固定で、架構作成ウィザードが作る柱・大梁と同じ 属性を持ちます。

局所座標系の基準ベクトルは、材軸が鉛直ならグローバル X 方向、それ以外はグローバル Z 方向に とります。上下のレベルの格子点を結べば柱を引けますが、鉛直材へ Z 方向を与えると材軸と平行に なり、基準ベクトルとして働かないためです。鉛直かどうかは、両端の水平距離が 1 mm 未満かで 判定します。

断面は作成後に割り当ててください。未割当のままでは解析前チェックが止めます。

階への複製

階への複製は、ある階で決めた断面・荷重・床割り・二次部材を、ほかの階へまとめて配る機能です。 右ドックの「① 準備計算」パネルにある「階の定義」で、各行の ⧉ ボタンから開きます。

実務では下の階で断面と床を決め、上の階へ同じ設定を配ってから階ごとに差分を直すという進め方を とりますので、その「配る」操作をひとまとめにしたものです。

本節では、複製が何を意味するのか、どう突き合わせるのか、何が作られて何が消えるのかを 紹介します。

複製の意味

複製は複製元の状態をそのまま写します。複製元に「無い」という状態も写すため、複製元で 断面が未割当の部材、床が無い位置、荷重が載っていない部材については、複製先の断面が外れ、 床が削除され、荷重が取り除かれます。

この振る舞いは「既存を上書きする」で切り替えます。

既存を上書きする複製先で起きること
ON(既定)複製元の状態をそのまま写す。複製元に無いものは解除・削除する
OFF複製先が空いているところにだけ入れる。既存には触れず、削除もしない

どちらの設定でも、同じ複製を 2 回実行した結果は 1 回のときと同じです。足すだけの動きにすると 2 回目で荷重が二重になり、見た目では気づけないまま重い設計になってしまうためです。

対象の選択

複製元の階を 1 つ、複製先の階を 1 つ以上選びますので、2 階で決めた設定を 3 階・4 階・5 階へ 一度に配れます。 複製元へ配る意味はないため、複製元の階は複製先として選べないようにしています。

複製する対象は次の 4 つで、いずれも既定は OFF です。複製は削除・解除も行うため、何を配るかは 利用者が必ず選ぶ形にしています。1 つも選んでいない状態では実行ボタンを押せません。

対象内容
断面の割当部材・床・二次部材の断面。複製先の階名で断面を複製してから割り当てる
荷重手入力の節点荷重・部材荷重と、床の面荷重・用途
床の境界の形
二次部材小梁・間柱

階の判定と対応付け

階に属するかどうかは、材端節点のうちもっとも高い節点の所属階で判定します。 Squid-n の階は床基準なので、階 2F に属するのは 1FL→2FL の柱と、2FL の大梁・床になります。 判定の情報源を 1 つに保つため、複製だけ別の規則は持ちません。

節点の所属階は準備計算が付けるため、準備計算を実行していないモデルでは複製する相手を 1 つも見つけられません。その状態ではダイアログが警告を出しますので、先に準備計算を実行して ください。

複製元と複製先の突き合わせは、平面位置と階の中での高さで行います。材端・頂点それぞれに ついて、XY 座標が許容差 1 mm 以内かを見たうえで、その節点が階の中のどの高さにあるか (直下階のレベル・当該階のレベル・そのあいだ)をあわせて見ます。節点 ID では対応が取れない (階ごとに別の節点である)ため、座標で突き合わせるほかありません。

高さを見るのは、平面へ投影すると重なる部材を区別するためです。1FL→2FL のブレースと 2FL の 大梁はどちらも材端の XY が同じで、同じ構面の X ブレース 2 本も互いに区別できません。高さを 足すと、大梁は両端が当該階のレベル、ブレースは直下階と当該階になり、X ブレースは XY との 組み合わせが入れ替わるため区別できます。高さは階高に対する比で持つので、階高の違う階へも 対応が取れます。

それでも同じキーになる相手が 2 つ以上ある場合は、どちらを選ぶべきか決められないため配りません。 飛ばした件数は実行結果に出します。並び順しだいでどちらかが選ばれると、結果を予測できないためです。

複製先に相手が見つからなかった分も同じく配らず、飛ばした件数を実行結果に出します。

複製元の平面の外には手を触れない

手を触れるのは、複製元に対応する相手が見つかったものだけです。 複製元の平面の外にある 複製先の部材・床・二次部材・荷重には、上書きが ON でも触れません。

セットバックや張り出しのある建物を考えると、この線引きが効いてきます。3 階が 2 階より広い 建物で 2 階から 3 階へ床を複製した場合、2 階の平面の外にある 3 階の床は残ります。複製元に 「無い」のではなく、複製元の範囲の外にあるだけだからです。ここを区別しないと、利用者から見て 複製元と関係のない場所が消えることになります。

部材と節点は作らない

複製は部材と節点を作りません。架構そのものは架構作成ウィザードか手作業で先に用意されて いる前提で、この機能の役目は断面・荷重・床割りを配ることだからです。

床と二次部材だけは、必要な節点がそろっていれば新しく作ります。複製元にしかない床を配れないと、 床割りを配るという目的そのものが果たせなくなるためです。 囲まれた床板は版の有無ごと写します。複製元に版がなければ、複製先も版なし(断面未割当)で作ります。 取り付く床板(片持ち・バルコニー等)は複製しません。自由端に節点が無く、取付き先の節点だけでは 同じ形を復元できないためです。飛ばした件数は実行結果に出ます。

断面の複製

断面の識別は符号+階です(断面の符号と階)。そのため断面を配る ときは、複製先の階名を持つ断面を新しく作ってから割り当てます。符号は変えないため、 C1 (2F) を 3F へ配ると C1 (3F) ができます。

床と二次部材の断面も同じ規則で読み替えます。3F の床が 2F の断面を指したままにならないよう、 複製で床を作るときも複製先の階名の断面へ結び直します。すでにある床・二次部材の断面をそろえるのは 「断面の割当」が受け持ちます。

すでに同じ符号+階の断面がある場合は、寸法が違ってもそれを使い、中身は書き換えません。 断面はどの階の部材からでも参照できるため、中身を書き換えると複製の対象範囲の外にある部材まで 一斉に変わってしまうからです。上階ほど柱を細くするのは普通の設計で、C1 (2F)C1 (3F) の 寸法が違うのは符号+階という識別の設計意図そのものでもあります。

寸法・材料が複製元と違う既存断面を使う場合は、実行前の見込みでその符号+階を名指しします。 そろえたい場合は断面タブで直してください。

新しく作ることになる断面も、実行前に符号+階の一覧で確かめられます。

荷重の複製

複製するのは手入力の荷重だけです。準備計算・荷重同期が作る荷重は同期のたびに全件が 作り直されるため、複製しても次の同期で消えてしまいます。

床の面荷重と用途も「荷重」の対象で、床の境界の形は「床」の対象として分けてあるため、形だけを 配って荷重を配らない、あるいはその逆の使い方もできます。

載荷位置は材長へ合わせる

部材荷重の載荷位置は、i 端からの mm で持つ絶対位置です。同じ平面位置で突き合わせるので大梁の 材長は一致しますが、柱は階高が違えば材長も違います。そのまま写すと載荷区間が材長を超え、 等価節点力の積分が材の外まで及んで結果が誤るため、次のように扱います。

荷重複製先での扱い
全長載荷(a = 0b = 材長複製先の材長へ合わせる
部分載荷・中間集中荷重位置をそのまま写す
複製先の材長に収まらないもの配らない(件数を実行結果に出す)

外壁荷重のような全長等分布は「材長いっぱい」という意図が明確なので合わせます。一方、i 端から 2 m の位置に載る設備荷重のような部分載荷は絶対位置に意味があるため、材長比で按分すると 利用者の意図から外れます。収まらないものを縮めると区間長が黙って変わるので配りません。

なお載荷区間が材長を超える部材荷重は、複製に限らず荷重を入れたあとに節点を動かしても作れます。 モデル整合性チェックがエラーとして挙げ、 解析前チェックが解析を止めます。

実行前の見込み

実行ボタンの上には、複製したときの見込みを表示します。これはモデルを変えずに複製を一度試した 結果なので、断面が何枚増えるのか、荷重が何件載せ替わるのか、相手が見つからず飛ばされるのが 何件なのかを、実行する前にそのまま確かめられます。

削除・解除を含む場合は、その旨を強調して示します。 複製は影響が広いため、見込みを確かめて から実行してください。配れるものが 1 つもない組み合わせでは、実行ボタンを押せないように しています。

取り消し

複製は undo 1 回でまとめて元へ戻せます。削除した床も、解除した断面も戻ります。断面の追加・ 床の追加削除・荷重の載せ替えが絡み合い、個別の逆操作を組むと順序の取り違えで壊れやすいため、 逆操作はモデル全体の復元としています。

MCP サーバ

squid-n-mcp は Squid-n の構造モデルを Model Context Protocol (MCP) 経由で AI エージェントに公開するサーバです。標準入出力(stdio)をトランスポートとして動作し、接続したクライアント(Claude Code、Claude Desktop など)から次のことができます。

  • 構造モデル(節点・部材・断面・壁版・床板・床領域・壁領域・二次部材)の照会
  • 壁版・床板・床領域・壁領域(間柱)・未割当二次部材の編集(model_edit。Undo 可能)
  • 数量積算(コンクリート・型枠・鉄筋・鉄骨)の集計
  • 解析(線形静解析・固有値解析・増分解析(プッシュオーバー)・時刻歴応答解析・断面検定・終局検定)の非同期実行。質点系解析は対象外(GUI のみ)
  • ジョブ状態のポーリングと解析結果の取得

MCP プロトコル層(rmcp/tokio に依存する部分)はすべて Cargo の機能フラグ mcp の配下にあり、mcp は非デフォルトdefault = [])です。フラグを付けずにビルドした場合、MCP サーバ(起動バイナリ・ツール群)はビルド対象に含まれません。

この章の内容

ビルドと起動

# ビルドのみ(バイナリは target/debug/squid-n-mcp に生成される。
# --release 付きなら target/release/squid-n-mcp)
cargo build -p squid-n-mcp --features mcp

# モデルファイルを指定して起動
cargo run -p squid-n-mcp --features mcp -- model.scz

# 引数を省略すると空モデルで起動する
cargo run -p squid-n-mcp --features mcp
  • 起動時の第 1 引数(.scz パス)がモデルの読み込み元になり、省略時は空モデルで起動します。
  • 解析結果ストアのディレクトリは環境変数 SQUID_N_RESULT_DIR で指定でき、未設定の場合は OS 一時ディレクトリ配下の squid-n-mcp-results を使います。
SQUID_N_RESULT_DIR=/path/to/results cargo run -p squid-n-mcp --features mcp -- model.scz

注意: stdout は MCP の JSON-RPC トランスポートそのものです。ログや診断出力を stdout に書くと、クライアントは壊れたフレームとして接続を切断します。

よくあるエラー:

状況結果
--features mcpsquid-n-mcp 以外のクレート(例: -p squid-n-app)に付けて実行するそのクレートに mcp という機能フラグがないためビルドエラーになります
squid-n-mcp--features mcp なしでビルド/実行しようとする起動バイナリ自体が required-features = ["mcp"] でゲートされているため、バイナリが存在せず実行できません

読み込めるモデルファイルは .scz のみです。ST-Bridge ファイルから始める場合の手順は モデル入出力を参照してください。

クライアント設定例

Claude Code

claude mcp add squid-n -- /path/to/squid-n-mcp model.scz

もしくはプロジェクトの .mcp.json に登録します。

{
  "mcpServers": {
    "squid-n": {
      "command": "/path/to/squid-n-mcp",
      "args": ["model.scz"]
    }
  }
}

Claude Desktop

claude_desktop_config.json に以下のエントリを追加します。

{
  "mcpServers": {
    "squid-n": {
      "command": "/path/to/squid-n-mcp",
      "args": ["model.scz"],
      "env": {
        "SQUID_N_RESULT_DIR": "/path/to/results"
      }
    }
  }
}

ツール一覧

公開されている MCP ツールは以下の 6 個です。

model_query

節点・部材・断面・壁版・床板・床領域・壁領域・二次部材を検索します。

引数必須/任意意味
kindString必須"node"/"nodes""member"/"members"/"element"/"elements""section"/"sections""wall_plate"/"wall_plates""slab"/"slabs""floor_region"/"floor_regions""wall_region"/"wall_regions""unassigned_joist"/"unassigned_joists""unassigned_post"/"unassigned_posts""secondary_joist"/"secondary_joists" のいずれか。それ以外は空配列を返す
filterOption<String>任意各アイテムを JSON 文字列化した内容に対する部分一致フィルタ

返り値:

{ "items": [ /* 検索結果の JSON オブジェクト配列 */ ] }
  • node: { "id", "coord", "story" }
  • member/element: { "id", "kind", "nodes", "section", "material" }。部材付帯情報(ハンチ・継手位置)があれば haunch_i/haunch_jlength/depth_increase/width_increase)と jointsdistance/kind)を追加。入力モデルに保存されている部材だけを返す(壁版から都度生成する耐震壁は含まない。壁は kind=wall_plate で照会する)
  • section: { "id", "name", "area", "iy", "iz" }
  • wall_plate: { "id", "shape", "section", "opening_area", "opening_weight", "slit", "openings", "loads", "becomes_element" }slit{ "column_face": [bool, bool], "beam_face": [bool, bool] }(耐震スリット。梁際は 0 が下辺、1 が上辺)、loads は仕上げ・増打ちの面荷重 [N/mm²](躯体の自重は含まない)、becomes_element はその壁版から壁エレメントが生成されるか。shape.kind"Enclosed"boundary)または "Attached"anchorextentresolved_extent)。extent は入力値そのもので null は階高いっぱいを表し、resolved_extent は階レベルから解決した高さ(null は直上に階が無く解決できない。解析前チェックが止める)
  • slab: { "id", "shape", "section", "loads", "usage", "method", "one_way" }shape は壁版と同じく "Enclosed" / "Attached"
  • floor_region: { "id", "name", "boundary", "slab_ids", "secondary_joists" }secondary_joists は所属小梁の実体配列
  • wall_region: { "id", "name", "boundary", "wall_plate_ids", "posts" }posts は所属間柱の実体配列
  • unassigned_joist / unassigned_post: どの領域にも入らなかった二次部材の配列
  • secondary_joist: 領域内と未割当を合わせた小梁の実体配列

model_edit

モデルを編集します。GUI と同じ EditCommand と Undo 履歴を使います。引数は command キーで種別を指定する JSON オブジェクトです(トップレベルに command を置く)。{ "body": { "command": "...", ... } } という入れ子も受け付けます。

返り値:

{ "op_id": "op-1", "applied": true, "undoable": true, "summary": "..." }
  • appliedfalse のときは、参照検証などでコマンドが Noop になった(モデルは変わらない)
  • 節点・部材・荷重・断面そのものの追加削除など、下表にない EditCommand は未対応(エラー)

壁版(7)

command必須任意と既定
AddEnclosedWallPlateboundary(ちょうど 4 節点。重複不可)section(既定 null)、opening_area(既定 0)、opening_weight(既定 0
AddAttachedWallPlateanchorextent(2 要素 [mm]。省略または null で階高いっぱい。自立壁のみ)、section(既定 null)、opening_area(既定 0)、opening_weight(既定 0
DeleteWallPlateid
SetWallPlateSectionidsectionnull で未割当)
SetWallPlateAttrsidopening_area(既定 0)、opening_weight(既定 0)、openings(既定 [])、loads(仕上げ・増打ちの面荷重。既定 [])、slit{ "column_face": [bool, bool], "beam_face": [bool, bool] }。片方のキーだけでも可。既定は 4 辺とも false
SetAttachedWallPlateExtentidextent(省略または null で階高いっぱい。自立壁のみ)
SetAttachedWallPlateAnchoridanchor

囲まれた壁版の例:

{
  "command": "AddEnclosedWallPlate",
  "boundary": [0, 1, 2, 3],
  "section": null,
  "opening_area": 0.0,
  "opening_weight": 0.0
}

取付き先 anchor が線のときの形(nodes は取付き梁の 2 節点、span は梁全長に対する無次元区間):

{
  "Line": { "nodes": [0, 1], "span": [0.0, 1.0], "transfer": "Anchor" }
}

床板(8)

command必須任意と既定
AddSlabboundary(3 節点以上)loads(既定 [])、method(既定 "TriTrapezoid")、usage(既定 null)、section(既定 null
AddAttachedSlabanchorextent版仕様はフラット引数(section/loads/usage/method/one_way)か plate オブジェクト。method 未指定は "TriTrapezoid"loads 未指定は []
DeleteSlabid
SetSlabSectionidsectionnull で未割当)
SetSlabUsageidusagenull で積載荷重なし)
SetSlabOneWayidone_waynull で境界辺 0・2 が負担)
SetAttachedExtentidextent
SetAttachedAnchoridanchor

AddAttachedSlab のフラット引数の例:

{
  "command": "AddAttachedSlab",
  "anchor": { "Line": { "nodes": [0, 1], "span": [0.0, 1.0], "transfer": "Anchor" } },
  "extent": [1000.0, 1000.0],
  "section": 0
}

床領域(3)

command必須任意と既定
SetFloorRegionNameidname
SetFloorRegionSecondaryJoistsfloor_region(別名 id)、secondary_joistsSecondaryMember の配列。空にするときは []。空にすると旧所属は未割当へ移る)

secondary_joists を省略するとエラーになります(欠落を空配列とみなしてリストを消すことはしません)。SetFloorRegionJoistsSetSlabSecondaryJoistIds、およびキー secondary_joist_ids / ids は受け付けずエラーになります。

未割当二次部材(4)

command必須任意と既定
AddUnassignedJoistjoistSecondaryMember
DeleteUnassignedJoistindex
AddUnassignedPostpostSecondaryMember
DeleteUnassignedPostindex

同じ端点の小梁・間柱が既にあるときは適用されず applied: false になります。

壁領域(1)

command必須任意と既定
SetWallRegionPostswall_region(別名 id)、postsSecondaryMember の配列。空にするときは []

posts を省略するとエラーになります。壁領域の新規作成・削除は公開していません(準備計算が壁領域を作り直すため)。

床領域の新規作成・削除は公開していません(準備計算が床領域を作り直すため)。

quantity_takeoff

数量積算(コンクリート体積・型枠面積・鉄筋/鉄骨重量の概算)を集計します。

引数必須/任意意味既定値
group_byOption<String>任意"category"(部位別)/"story"(階別)/"steel"(鉄骨種類別)/"rebar"(鉄筋径別)/"detail"(明細)"category"

返り値:

{ "rows": [ /* group_by に応じた行 */ ], "totals": { "concrete_m3": .., "formwork_m2": .., "rebar_t": .., "steel_t": .., "rebar_joints": .. }, "notes": [ /* 注記 */ ] }

rows の形は group_by により異なります。

group_by行の形
category(既定){ category, concrete_m3, formwork_m2, rebar_t, steel_t, rebar_joints }
story{ story, concrete_m3, formwork_m2, rebar_t, steel_t, rebar_joints }
steel{ section, length_m, weight_t }
rebar{ dia_mm, length_m, weight_t }
detail{ elem, slab, label, story, category, structure, concrete_m3, formwork_m2, rebar_t, steel_t, rebar_joints }

数量の算定式は計算根拠 10. 数量積算を参照してください。

analysis_run

解析を非同期で実行し、ジョブを登録して job_id を即座に返します(計算完了は待ちません)。

引数必須/任意意味既定値
kindJobKind必須LinearStatic/Eigen/Pushover/TimeHistory/DesignCheck/UltimateCheck(質点系は含まれません)
load_caseOption<u32>任意LinearStatic/DesignCheck/UltimateCheck: 対象荷重ケース ID先頭の荷重ケース
n_modesOption<usize>任意Eigen: モード数3
dirOption<String>任意Pushover/TimeHistory: 加力・入力方向。"X"/"Y" 以外はエラー"X"
stepsOption<usize>任意Pushover: 最大ステップ数50
max_dispOption<f64>任意Pushover: 目標変位 [mm]。未指定なら目標層間変形角のみで判定なし
max_drift_denomOption<f64>任意Pushover: 目標最大層間変形角の分母 n(角度 1/n)。max_disp と両方指定した場合は早く達した方で終了150(max_disp 未指定時)
dtOption<f64>任意TimeHistory: サンプル波の時間刻み [s]0.01
durationOption<f64>任意TimeHistory: サンプル波の継続時間 [s]2.0
periodOption<f64>任意TimeHistory: サンプル波の周期 [s]0.5
ampOption<f64>任意TimeHistory: サンプル波の振幅 [mm/s²]1000
zOption<f64>任意荷重自動同期: 地域係数 Z(令88条)1.0
soilOption<String>任意荷重自動同期: 地盤種別。"I"/"II"/"III" 以外はエラー"II"
c0Option<f64>任意荷重自動同期: 標準せん断力係数 C00.2
ai_modeOption<String>任意荷重自動同期: Ai 算定法。"Approx"/"SemiPrecise" 以外はエラー"Approx"
design_periodOption<f64>任意荷重自動同期: 精算時の設計用基本周期 T [s]。ai_mode="SemiPrecise" かつ未指定なら EX/EY を同期しないなし

返り値:

{ "job_id": "job-0" }

kind ごとに使用するパラメータと概略処理:

kind使用パラメータ処理概要
LinearStaticload_case, z, soil, c0, ai_mode, design_period指定/先頭の荷重ケースで線形静解析(解析前に荷重自動同期)
Eigenn_modes, z, soil, c0, ai_mode, design_period固有値解析(周期・刺激係数・有効質量。解析前に荷重自動同期)
Pushoverdir, steps, max_disp, max_drift_denom(解析前同期: z, soil, c0, ai_mode, design_period増分解析(プッシュオーバー解析)。水平載荷の Ai 分布は solver 側で略算 T・Z=1・地盤 II・C0=0.2 固定。地震引数は階重量・EX/EY の同期にのみ効く。結果ストアには書かずサマリ JSON のみを返す
TimeHistorydir, dt, duration, period, amp, z, soil, c0, ai_mode, design_periodサンプル波(amp * sin(ωt) * e^{-0.3t})による時刻歴応答解析。減衰は剛性比例減衰(h=0.02、1 次固有振動数使用)固定(解析前に荷重自動同期)。結果ストアには書かずサマリ JSON のみを返す
DesignCheckload_case, z, soil, c0, ai_mode, design_period荷重ケースの線形静解析結果に対する断面検定(鋼/RC 許容応力度、危険断面位置基準)。検定条件は荷重ケース種別で決まる(地震・風は短期、それ以外は長期)。地震時短期は重力ケースを別途解析して長期内力を重ね、Q0 も算定する(重力の再解析に失敗した分は gravity_failed に件数を載せ、成功分だけで組む)。付着は Rc1999、QD は既定方式、一本部材は未対応。検定結果自体はサマリ JSON のみに入り、結果ストアには断面力のみを書く
UltimateCheckload_case, z, soil, c0, ai_mode, design_periodRC 部材の終局せん断・付着・軸余裕度、CFT 柱の軸終局検定(靭性保証型耐震設計指針)。QL・Q0 は設定しない。結果ストアには書かずサマリ JSON のみを返す

Doneresult_ref(サマリ JSON)には、解析結果に加え、前処理の注意事項があれば notices 配列が付きます。たとえば ai_mode="SemiPrecise" かつ design_period 未指定のときは EX/EY を同期せず、その旨が notices に入ります(ジョブ自体は完了します)。

analysis_status

ジョブの状態を取得します。

引数必須/任意意味
job_idString必須analysis_run が返した ID

返り値:

{ "id": "job-0", "kind": "LinearStatic", "status": { /* Queued | Running{progress} | Done{result_ref} | Failed{error} */ } }
  • status は次のいずれかの形を取ります。
    • "Queued"(ジョブ登録直後の内部状態。通常は analysis_run がすぐに実行を開始するため、ポーリングではほとんど見えません)
    • { "Running": { "progress": 0.0 } }
    • { "Done": { "result_ref": "<サマリ JSON 文字列>" } }
    • { "Failed": { "error": "<エラーメッセージ>" } }
  • job_id が存在しない場合はエラー(invalid_params)。

result_get

解析結果ストアから結果を取得します。

引数必須/任意意味
caseu32必須荷重ケース ID(Eigen の結果は case=0 固定)
kindString必須"NodalDisp"/"MemberForce"/"Modal"/"TimeHistory" のいずれか
node_idsOption<Vec<u32>>任意節点 ID での絞り込み
member_idsOption<Vec<u32>>任意部材 ID での絞り込み
step_rangeOption<Vec<u64>>任意[start, end) のちょうど 2 要素。それ以外はエラー

返り値:

{ "case": 1, "kind": "NodalDisp", "rows": [ /* 明細行 */ ], "truncated": false }

(case, kind) の組が結果ストアにない場合はエラーになります(analysis_run を先に実行する必要があります)。 各 kind の列構成は解析ジョブのフローと結果ストアを参照してください。

解析ジョブのフローと結果ストア

解析ジョブのフロー

  1. analysis_run を呼び、job_id を受け取る(この時点でジョブは Running としてバックグラウンド実行される)
  2. analysis_status(job_id)Done/Failed になるまでポーリングする
  3. Done の場合、analysis_statusresult_ref にサマリ JSON が入っている。さらに詳細な明細(節点変位・部材内力など)が必要なら result_get を呼ぶ
// 1. analysis_run(kind="LinearStatic") の返り値
{ "job_id": "job-0" }

// 2. analysis_status(job_id="job-0") の返り値(Done になった時点)
{
  "id": "job-0",
  "kind": "LinearStatic",
  "status": {
    "Done": {
      "result_ref": "{\"kind\":\"LinearStatic\",\"case\":1,\"n_nodes\":2,\"n_member_force_rows\":3,\"max_abs_disp\":1.23,\"store\":{\"case\":1,\"kinds\":[\"NodalDisp\",\"MemberForce\"]}}"
    }
  }
}

// 3. result_get(case=1, kind="NodalDisp") の返り値
{ "case": 1, "kind": "NodalDisp", "rows": [ { "node_id": 1, "ux": 0.0, "uy": 0.0, "uz": 1.23, "rx": 0.0, "ry": 0.0, "rz": 0.0 } ], "truncated": false }

Eigen ジョブの結果は結果ストアに case=0 として格納されます(実荷重ケース番号との衝突を避けるための固定値)。result_get(case=0, kind="Modal") で取得します。

結果ストアのスキーマ

result_getkind に指定できる 4 種のスキーマは以下のとおりです(すべて Arrow の UInt32/UInt64/Float64 列で構成されます)。

NodalDisp

列名
node_idUInt32
ux, uy, uzFloat64
rx, ry, rzFloat64

MemberForce

列名備考
elem_idUInt32
posFloat64評価位置(0..1 の正規化座標)
n, qy, qz, mx, my, mzFloat64部材内力(軸力・せん断・ねじり・曲げ)
列名
modeUInt32
periodFloat64
omega2Float64
part_x, part_y, part_zFloat64
eff_x, eff_y, eff_zFloat64

TimeHistory

列名
stepUInt64
timeFloat64
node_idUInt32
ux, uy, uzFloat64
rx, ry, rzFloat64

result_get が 1 回に返す行数の上限は 10,000 行です。超過分は切り詰められ、応答の truncatedtrue になります。

制約・注意点

  • モデルの読み込みは起動時引数のみ.scz ファイルパスをコマンドライン引数として渡す方法しかなく、実行中にモデルを差し替えたり読み込んだりする model.load のような MCP ツールは存在しません。保存(model.save)と計算書出力(report.export)も未公開です。
  • 編集は model_edit で壁版・床板・床領域・壁領域・未割当二次部材に限る。壁版 7 コマンド、床板 8 コマンド、床領域 3 コマンド、壁領域 1 コマンド、未割当 4 コマンドを GUI と同じ Undo 経路で適用します。節点・部材・荷重など他の編集コマンド、および実行中のモデル差し替えは公開していません。参照が不正なコマンドはエラーにせず applied: false(Noop)になります。未対応のコマンド名や必須キーの欠落はエラーになります。
  • 質点系解析は GUI の右バーからのみ実行できます。analysis_runkind には含まれません。
  • PushoverTimeHistoryUltimateCheck ジョブは結果ストアへ書き込みません。対応する結果スキーマがない、あるいはスキーマが要求する粒度(全節点×全ステップ)のデータを持たないため、結果は analysis_statusresult_ref(サマリ JSON)としてのみ得られます。
  • DesignCheck ジョブの検定結果(OK/NG・検定比)自体もサマリにのみ含まれており、結果ストアに書き込まれるのは検定の元データである MemberForce のみです。

準備計算(解析前の確認)

準備計算は、応力解析に先立って解析入力を確定させる計算です。解析を実行する前に 単独で実行でき、階の分布・剛域・断面性能・幅厚比・地震力(Ai 分布)・荷重の 集計を確認したうえで、各解析へ進めます。

準備計算は右パネル「① 準備計算」の「🛠 準備計算 実行」、または下ドック「準備計算」タブ内の 「▶ 準備計算 実行」で実行し、結果は下ドックの「準備計算」タブに表示されます。各解析 (荷重ケース・荷重組合せ)の実行時にも準備計算は自動的に最新化されるため、解析結果は常に 確認できる準備計算の内容に基づきます。

右パネルは、画面右端のアイコン列で切り替えます。一貫計算の手順は「① 準備計算」で 解析入力(地震力の算定諸元、部材のモデル化、計算条件、階の定義)を確定させ、続けて 静的解析・固有値・増分解析・時刻歴応答・質点系のいずれかを実行します。① の番号は準備計算の 見出しにだけ付け、各解析パネルは種類の名前で呼びます。

準備計算が確定させる内容

項目内容
階(層)データ各階への節点の割り付け、階高、剛床(ダイアフラム)、階の地震用重量 Wi、主要構造種別
剛域部材端の剛域長 λ・柱フェース距離(接続する直交部材のせいから算定)
ねじり解放線材(梁・柱)の i 端ねじれをピンとするモデル化の適用可否(対象外部材の抽出)
仕口パネルS 造(CFT を除く)の柱梁接合部への仕口パネルの生成と、その寸法・せん断剛性
断面性能弾性解析に用いる断面諸量(A・Iy・Iz・J・As)と使用部材数・断面が持つ材料
幅厚比鋼断面の代表最大幅厚比と、それによる部材ランク(FA〜FD)
部材剛性スラブ協力幅・合成梁・壁エレメント上下大梁による剛性の割増しと SRC/CFT 等価断面
床領域水平な大梁の閉路ごとに床領域を作り直し、床板(版)と小梁の所属を入れ直す。既存の取り付く床板は残す。取り付く床板への変換で床板が参照しなくなった旧自由端の節点のうち構造参照のないものを削除する
壁領域鉛直構面内の柱・梁の閉領域ごとに壁領域を作り直し、壁版の所属を入れ直す。解析用の壁要素はモデルに残さず、剛域算定・自重・解析の直前に壁版から都度生成する
床荷重・自重・積載スラブ荷重の梁への分配、躯体自重、用途別の積載荷重を標準荷重ケースへ集計
地震力(Ai 分布)設計用固有周期 T・Rt から αi・Ai・Ci・Qi・Pi を算定し、水平力を EX・EY へ生成
モデル整合性チェック解析を妨げる不備(支点なし・断面の未割当・断面の材料の未割当・孤立節点など)の検出。下記「モデル整合性チェック

階(層)データは剛域を除くすべての項目の前提です。階名・床レベル・階種別・地震用重量の 手入力は利用者が定めるデータであり、準備計算は書き換えません。準備計算が実行のたびに 算定し直すのは、各階への節点の割り付け・剛床・地震用重量の算定値・主要構造種別で、 節点・断面・荷重の変更がここへ反映されます。階への帰属の規則と、階が定義されていない モデルでの初期化については階の分布を参照してください。

床領域の作り直しは剛域より前に毎回走ります。手で足した床板(Slab)も、次の準備計算で 大梁の閉路(床領域)へ付け直します。取り付く床板は残します。この付け直しは取り消し(undo)の 対象ではありません。診断はモデルを書き換えず、いまの床領域の状態を見ます。 準備計算のあとに診断を開くと、付け直し後の所属で警告が出ます。

壁領域の作り直しも同じタイミングで走ります。壁版は柱・梁が囲む閉領域へ付け直し、どの壁領域にも 入らない壁版の一部は取り付く壁版へ自動変換します(条件は 1.9 壁の断面と自重)。解析用の壁要素は入力モデルには残しません。剛域の算定(壁を考慮する既定)・自重・ 応力解析は、その直前に壁版から組み立てた一時的なモデルを見ます。解析要素にするかは 4.5 壁エレメントモデル の条件で決まります。解析要素にならない壁版は荷重だけを持つ壁版として扱い、正常な状態なので診断には出しません。断面未割当の壁版だけは、板厚と材料が決まらず自重を算定できないため警告します。 取り付く壁版の自重は、取付き先が梁(線アンカー)なら取付き線への分布または両端の柱への 集中、取付き先が床領域(自立壁)なら壁が載っている床領域の床荷重へ等価な面荷重として、 それぞれ自動で分配します(1.5 地震用重量・層データの生成)。 自立壁が載る床領域は保存せず壁の位置から都度求めるため、床領域をまたぐ壁は境界で分割して配ります。未覆いが全重量の 0.1% を超える壁は診断がエラーで止めます。

地震力は荷重ケース EX・EY として確定するため、解析はこれらの荷重ケース および荷重組合せを解くことで行います(地震のための専用の解析入口はありません)。 荷重組合せは荷重ケース単体の解析結果の線形和として求めます (5.2 線形静解析)。

各項目の算定根拠は以下を参照してください。

モデル整合性チェック

準備計算はモデルの不備を検査し、結果を下ドックの「診断」タブへ重要度付きで一覧します。 対象を特定できる行はクリックすると 3D ビューでその部材・節点を選択するため、一覧から そのまま是正へ進めます。同じ不備が多数ある場合は対象 100 件までを個別に並べ、残りは 「…他 N 部材で〜」と 1 行へまとめます。

重要度は次の 3 段階です。

重要度意味
エラー解析を実行しても止まる不備。解析前に解消する
警告解析は通るが、結果が意図と異なるおそれがあるもの
情報気づきの提供。解析結果には影響しない

エラーの判定は解析前の入力チェックと同一の実装を 共有しているため、診断がエラー 0 件であることと、入力チェックを通ることは常に一致します。 準備計算の要約が「✅ 整合性チェック: 問題なし」または警告のみであれば、そのまま解析へ進めます。 逆にエラーが出ている場合は、解析を実行しても同じ内容で止まります。違いは挙げ方だけで、 入力チェックが最初の 1 件で解析を止めるのに対し、診断は不備をすべて挙げるため、 何をいくつ直せばよいかを先に把握できます。

検査する内容は次のとおりです。

  • 節点・部材の ID と配列添字の不一致、存在しない断面・材料への参照など、モデル検証で 見つかる不整合(エラー)
  • 節点・部材・支点(拘束)が 1 つもない(エラー)
  • 断面が必要な要素の断面が未割当、またはその断面に材料が未割当(エラー。別々に報告する)
  • 配筋を持つ断面(RC 矩形・RC 円形・SRC 矩形)に主筋・せん断補強筋の材料が未割当、 SRC 断面に内蔵鉄骨の材料が未割当(エラー。断面を使う部材を名指しする)
  • シェル要素の断面に板厚がない(エラー)
  • 線材の有効せん断断面積 As が 0(エラー)
  • 耐震壁と周辺架構の構造種別の食い違い(エラー)
  • 断面が未割当の床、断面の材料または板厚が定まらない床(エラー。床の自重が 算定できないため。1.8 床の断面と自重
  • 載荷区間が材長を超える部材荷重(エラー。等価節点力の積分が材の外まで及び、節点力と 固定端内力が誤るため。階への複製
  • 階名の重複(エラー。階名は階の一覧・CSV の列見出しと断面の符号+階に使われ、 同じ名前の階が 2 つあるとどの階の値なのかを判別できないため。前後の空白しか違わない 名前も同名として扱う。階の分布
  • 存在しない節点への参照、およびどの部材にも接続されていない節点(エラー)
  • 基部以外の階で、剛床マスター節点が水平方向(Ux または Uy)に拘束され、かつその階の地震用重量が正のとき(エラー)
  • 剛床(ダイアフラム)のない階(警告。階名を挙げる)
  • 空の水平力ケース(地震・風)を参照する荷重組合せ(警告)
  • 節点を共有せずに交差する水平大梁(警告。床領域の閉路検出が実際の床領域とずれるため)
  • どの床領域にも載らない囲まれた床板(警告。重心がどの大梁の閉路にも入らない版あり床板。解析は止めない)
  • 断面未割当の壁版(警告。板厚と材料が決まらず自重を算定できない。解析要素にもしない。解析は止めない)
  • 自重の行き先が決まらない壁版(エラー。境界のどの辺にも支持する柱・大梁・間柱がない囲まれた壁版。行き先のない節点荷重は解析の自由度から外れ、荷重の一覧には見えるのに解析からは消えるため止める)
  • どの床領域にも所属しない小梁・どの壁領域にも所属しない間柱(エラー。所属が決まらないと荷重の行き先も断面検定の可否も決められないため止める)
  • 荷重を流せる床の上に載っていない自立壁(エラー。自重の行き先がないため止める。壁を床領域の内側へ移すか、床板を割り当てるか、取付き先を梁の線アンカーへ変える。床領域境界の辺上 1 mm 以内は内側とみなさない。未覆いが壁の全重量の 0.1% 以下なら丸めとして無視する)
  • 荷重が定義されていない荷重ケース(情報)

剛床のない階が警告にとどまるのは、その階の水平力を階に属する節点へ質量比で直接分配して 解析を続けられるためです(1.1 地震力)。 剛床として扱うつもりの階でこの警告が出た場合は、床が張られているかを確かめてから 準備計算を実行し直してください。

基部以外で剛床マスターが水平拘束されている検査は、地震力が拘束自由度へ入って消えることを止めるためのものです。 床面に柱や大梁が取り付いていれば、マスターは水平に動ける判定になるため、このエラーは出ません。 地震用重量が 0 の階は、消える水平力も 0 であるため対象外です。

準備計算を実行するたびに診断をやり直すため、診断タブを開いていなくても件数は最新です。

先頭のモデル検証はデータの破損を見る検査で、プロジェクトファイルや ST-Bridge の 読み込み時にも同じ検証を通しているため、通常の操作では出ません。これが出た場合は モデルの参照関係そのものが壊れており、以降の検査は別の実体を指した結果を報告しかねない ため、モデル検証のエラーが出ている間は他の項目を検査せず、この 1 件だけを表示します。 表示された不整合を直せないときは、直前の編集を取り消すか、保存済みのプロジェクトファイルを 開き直してください。

仕口パネル・節点バネ・免震支承材・制振ダンパーは、断面ではなく専用の特性値から 剛性を作るため、断面と材料の未割当は検査しません (仕口パネル)。

この章の内容

準備計算タブに表示される内容を、項目ごとに次のページで説明します。

階の分布

建物概要(節点数・部材数・支点数・階数・剛床数・地盤面 GL・建物高さ \( h \)・鉄骨造高さ比 \( \alpha \)・地震用重量の総和 \( \Sigma W \)・質量モデル)と、層ごとの一覧を上から順に示します。

階と層

階は床であり、層は隣り合う 2 つの階の間です。階の一覧は基部の床から屋根の床までの 床レベル列で、先頭は必ず基部(柱脚・基礎梁のレベル)です。したがって層の数は階の数より 1 つ少なく、3 階建てなら階(床)は 1FL・2FL・3FL・RFL の 4 つ、層は 3 つになります。

法規上の「\( i \) 階」(層間変形角・層せん断力・剛性率・偏心率が対象とする範囲)は層のことです。 層と階の対応は実務の慣行に合わせています。

層の量由来
名前下端の階の階名(1FL と 2FL の間の層は「1F」)
階高上端の階の床レベル − 下端の階の床レベル
地震用重量 \( W_i \)・所属節点・階種別・主要構造種別上端の階

重量が上端の階なのは層の質量が上端の床に集中するためで、これにより最下層の層せん断力 \( Q_1 = C_1 (W_1 + W_2 + \cdots) \) が成り立ちます。基部の階に配分された重量(柱脚・基礎梁の 自重など)は地盤が直接受けるため、層の重量には算入せず、Ai 分布にも入りません。

階と剛床

階と剛床も別のものです。剛床は解析上の面内剛体拘束であり、1 つの階が剛床を持たないことも、 段差床のように 1 つの階が複数の剛床を持つこともあります。

このため、節点が階と剛床のどちらに属するかは、別々の規則で決まります。

対象帰属の規則
区間。直下階の床レベルを超え、当該階の床レベル以下にある節点
剛床床面。当該階の床レベルから 1 mm 以内にある節点

最下階(基部の床)だけは下端を含みます。基部の床の区間は基部レベルちょうどの 1 点で、 柱脚と基礎梁の節点がここに属するため、基礎伏図に柱脚・基礎梁が現れ、数量にも計上されます。

この違いは、柱を途中で分割した節点や、階高の途中に取り付く梁の節点に現れます。これらの 中間高さの節点は階に属しますが、剛床には入りません。階に属するため、その節点へ配分された 重量は階の地震用重量に算入されます。一方で面内剛体として拘束してよいのは同一床面の節点だけ であり、中間節点まで剛床に含めると、存在しない水平剛性が生じてしまいます。

段差床(同じ階に複数の床レベルがある場合)は、区間の規則により全体が同一の階に属し、 剛床は床レベルごとに分かれます。複数の剛床を持つ階の水平力は、剛床ごとの重量比で 按分します(1.1 地震力)。

基部の床にも剛床を作り、その代表節点の拘束は基部の節点が実際に水平へ動けるかで決めます。 柱脚が固定またはピンで水平拘束されている場合は、剛床を通じて代表節点へ水平剛性が写らない ため、代表節点も水平拘束とします。支点ばね(杭のばねなど)で水平に動ける場合は自由のままと して、基礎の質量が地盤ばねと連成して応答に効くようにします。代表節点には常に質量を与えます (水平拘束された基部では、その質量は応答に影響しません)。

動けるかどうかを判定する対象は、部材が接続する節点だけです。床の境界や小梁の支持点は、 床面にある以上その階の剛床に入りますが、部材が接続しないため解析の自由度を持ちません。 拘束がなくても代表節点へ剛性を写さないため、判定には数えません。1 階の床が基部にある建物で その床に小梁があると、基部の剛床は水平拘束された柱脚と拘束のない小梁支持点の混在になります。 後者まで「動ける」と数えると、代表節点の水平自由度が剛性を持たないまま残り、解析が 特異行列で止まってしまいます。

面内回転についても同じ考え方で、水平方向の並進が 1 つも動けない階では代表節点の面内回転 も拘束します。剛床の面内回転はスレーブ節点の並進を通じて剛性を受け取るため、並進が動けない 階では回転にも剛性が写らず、回転慣性だけを持つ自由度が残ってしまうからです。この自由度を 自由にしたままにすると、柱のねじり剛性しか支えがない極端に長い周期の振動モードが現れ、 固有値解析の 1 次モードを乗っ取って設計用固有周期を実際より長くしてしまいます。

階の定義と自動算定の分担

階の一覧のうち、階名・床レベル・階種別(一般 / PH / 地下)・地震用重量の手入力は 利用者が定めるデータで、準備計算は書き換えません。所属節点・剛床・地震用重量の算定値・ 主要構造種別は、節点と部材が決まってはじめて定まる派生値で、準備計算のたびに算定し直します。

ただし基部の床が定義されていない場合は、準備計算が先頭に補います。階が床レベル列であり その先頭が基部であることは、層の算定が依拠する前提だからです。これが崩れると最下層が層の 一覧から落ち、層間変形角・層せん断力が 1 層分欠けてしまいます。 このため、基部の階は床レベルを変更できず、削除もできません(階名は変更できます)。

階の削除は階の定義だけを消し、節点・部材は残します。削除した階に属していた節点は 所属を失い、次の階生成で直下階の区間へ吸収されます。その階の剛床拘束は取り除きます。

階が 1 つも定義されていないモデル(他形式からの取り込みなど)では、準備計算が節点の 標高をクラスタリング(許容差 1 mm)して階を初期化します。階名は下から 1F2F… とします。

階名が 1F から始まるのは、階名を床基準でそろえているためです。 Squid-n の階は床そのものであり、床レベルがその階の標高になります。最下レベル(基部)は 1FL であり、そこを代表する階の名前が 1F になります。ST-Bridge の階(StbStory)も 床基準(1F の高さが GL)のため、取り込んだモデルとアプリ内で作ったモデルで階名の意味が 一致します。

最上階も RF とはせず数字で通します。モデルの最上レベルが本当に屋根なのかはモデルからは 決められず、塔屋の床であることも、あとで上へ階を足すこともあるためです。屋根であれば階名を RF へ付け替えてください。 この既定名は、準備計算による初期化と架構作成ウィザードの両方で同じ規則を使います (架構作成ウィザード)。

階名は階ごとに違う名前にしてください。 階名は下の一覧・CSV の列見出しと、断面の符号+階に 使われます。同じ名前の階が 2 つあるとどの階の値なのかを判別できないため、 モデル整合性チェックがエラーとして挙げ、解析前チェックが 解析を止めます。前後の空白しか違わない名前も、表の上で区別できないため同名として扱います。

階名は利用者が定めるデータであり、2FLR のように付け替えれば、以後の準備計算でも その名前が保たれます(引き継ぎは床レベルで照合します)。

一覧の列

一覧の 1 行は 1 つのです。

内容
床レベル層の上端の階の標高 [mm](モデル座標)
階高上端の階と下端の階の標高差 [mm]
節点数上端の階に属する節点の数
剛床数上端の階に定義された剛床(ダイアフラム)の数
地震用重量 \( W_i \)層の地震用重量 [kN](固定荷重+地震用積載)
累積 \( \Sigma W_j \)当該層以上の地震用重量の合計 [kN]
構造・種別層の主要構造種別(RC / S / SRC)と階種別(一般 / PH / 地下)

剛床数が 0 の層、地震用重量が 0 の層は強調表示します。剛床のない階にも水平力は載りますが、 載荷先が剛床代表節点ではなく階の各節点になる(1.1 地震力) ため、意図した床面のモデル化になっているかを確認してください。 剛床のない階はモデル整合性チェックにも警告として並びます。 解析は止まりませんので、意図した入力であればそのまま進めてかまいません。

支点数には、階の生成が作る剛床代表節点(面外拘束を持つ仮想節点)は含めません。

主要構造種別は、その層に属する柱・梁の構造種別 (2.5 構造種別の判定)を集計して決めます。 RC を RC、S を S、鉄骨とコンクリートが一体で働く SRC・CFT を SRC とし、層に属する部材で もっとも多い種別を採ります。部材の所属は、材端節点のうちもっとも高い節点の所属階を上端と する層とします(層 \( i \) の階高区間にある柱は上端が層 \( i \) の上端の階に取り付き、 その階のレベルにある梁も層 \( i \) に属します)。種別ごとの本数が同数の場合、および断面も 材料も割り当てられていない部材だけの層は RC とします。主要構造種別は略算周期の鉄骨造高さ比 \( \alpha \)(1.1 地震力)にのみ効き、S の層が増えるほど 設計用固有周期 \( T \) が長く \( R_t \) が小さくなるため、判定が割れた場合に S を採らないことが 安全側になります。

地震力(Ai 分布)

算定諸元(設計用固有周期 \( T \) とその算定法、地盤種別と \( T_c \)、振動特性係数 \( R_t \)、 地域係数 \( Z \)、標準せん断力係数 \( C_0 \)、基部せん断力 \( Q_1 \)、ベースシア係数 \( Q_1/\Sigma W \))と、 階ごとの \( W_i \)・\( \Sigma W_j \)・\( \alpha_i \)・\( A_i \)・\( C_i \)・\( Q_i \)・\( P_i \) を示します。

\( \alpha_i \)・\( A_i \) は一般階でのみ算定するため、PH 階・地下階の欄は「—」と表示します。 \( C_i \) の欄は、一般階では層せん断力係数、PH 階では震度 \( k \)、地下階では水平震度 \( K \) を表します。

層の水平外力 \( P_i = Q_i - Q_{i+1} \) に負値が現れて 0 へクランプした場合は、警告を表示します (階の地震用重量の並びが上階ほど重くなっているなど、入力の確認が必要です)。

設計用固有周期に精算(固有値解析)を選択していて固有値解析が未実行の場合は、 Ai 分布を算定せず、固有値解析の実行を促すメッセージを表示します(略算周期へ黙って 読み替えることはしません)。

算定根拠は 1.1 地震力を参照してください。

剛域

剛域長 \( \lambda \) または柱フェース距離を持つ梁要素を一覧します。

内容
材長 \( L \)節点間距離 [mm]
\( \lambda_i \) / \( \lambda_j \)各端の剛域長 [mm]。括弧内は出所(自動/手動)
可とう長 \( L' \)\( L' = L - \lambda_i - \lambda_j \) [mm]
フェース \( i/j \)柱フェース距離 [mm](断面算定の危険断面位置の基準)
剛域比\( (\lambda_i + \lambda_j) / L \)

剛域長 \( \lambda \) は剛性計算に、フェース距離は断面算定の危険断面位置に用いる別々の量です。 剛域を設けるのはその節点に集まる柱・大梁がすべて RC/SRC のときだけです。 S 系の柱または大梁が 1 本でも集まる仕口では \( \lambda = 0 \) になります。 ですが、フェース距離は構造種別によらない幾何量のため、そのような仕口でも常に付きます。 剛域比が 0.5 を超える部材、可とう長が 0 以下になる部材は、直交部材せいの入力を 確認するため強調表示します。

剛域長には、既定で取り付く壁(柱の袖壁、梁の腰壁・垂壁)を含めた寸法を用います。 壁は入力では壁版として持ち、剛域の算定時に解析要素へ展開してから寸法を求めます。 耐震スリットを入れた辺の部材には、その部材と縁が切れているため壁の張り出しを与えません (1.9 壁の断面と自重)。 解析設定「剛域の算定で壁を考慮する」で原断面のみに切り替えられます。 フェース距離には壁を含めないため、この設定を切り替えても値は変わりません (4.1 ティモシェンコ梁要素の「壁の考慮」)。

部材端の剛域を含む立体形状は、モデル化ビュー(結果タブ「モデル化」)でも確認できます (モデル化の表示)。

算定根拠は 4.1 ティモシェンコ梁要素を参照してください。

ねじり解放

ねじり解放(i 端ねじれピン)の対象外となり、ねじり剛性 \( GJ/L \) が残っている部材を 一覧します。

既定では線材(梁要素。柱を含む)の i 端のねじれをピンとしてモデル化し、部材全長で \( M_x = 0 \) とします(日本の一貫計算の通例)。この設定は右パネル「① 準備計算」の 「部材のモデル化」にあるチェックボックス 「部材 i 端のねじりをピン(梁・柱)」 (既定 ON)で建物一律に切り替えます。OFF にすると全部材でねじり剛性を保持するため、 この一覧は空になります(「対象外」という区分自体がなくなるため)。

内容
部材部材 ID
種別柱/梁/ブレース(部材軸の鉛直成分による幾何判定)
節点判定に落ちた節点(この節点の材軸まわり回転を拘束するものがない)
理由対象外となった理由

対象外になる条件

ねじりを解放した部材は材軸まわり回転に剛性を持たなくなるため、その回転を他に拘束する ものがない節点があると全体剛性行列が特異になります。そこで、部材の両端節点それぞれに ついて材軸まわりの回転が「非平行な線材の曲げ」「線材以外の要素(壁・シェル・ばね類)」 「支点拘束」「支点ばねの回転成分」のいずれかで拘束されることを確かめ、確かめられない 部材は解放せずねじり剛性を保持します(安全側のフォールバック)。

仕口パネルはこの判定に含めません。パネルが剛性を与えるのは接合部のせん断変形角 (節点の標準 6 自由度とは別枠の追加自由度)だけで、節点の回転自由度には寄与しないため、 拘束ありとみなすと材軸まわり回転が浮いた節点を見逃してしまいます。

典型的に対象外となるのは次の場合です。

  • 大梁・柱を中間節点で分割し、その節点に直交部材が取り付かない(分割された 2 本は 一直線に並ぶため、互いのねじりでしか材軸まわりを拘束できない)
  • 片持ち梁(跳ね出し)の先端節点を持つ
  • 柱脚をピン支点(並進のみ拘束)とし、基礎梁が取り付かない

いずれも「その節点でねじれ回転が浮く」ことが理由なので、直交部材を接続する・支点で 回転を拘束する・部材を分割しない、のいずれかで解消できます。解消しない場合も解析は そのまま実行でき、当該部材だけがねじり剛性を保持します。

なお、ねじり剛性をもともと持たない部材(断面の \( J \le 0 \)、材料の \( G \le 0 \)、 トラス扱いのブレース)は、解放してもしなくても剛性が 0 で設計上の影響がないため、 この一覧には含めません。

個別の部材については、モデル化ビュー(結果タブ「モデル化」)で部材にポインタを重ねると、 解放されている場合に「ねじれ: i 端ピン(部材全長で Mx=0)」が表示されます (モデル化の表示)。

判定規則の詳細と算定根拠は 4.1 ティモシェンコ梁要素の 「4.1.3a 部材のねじり剛性の既定モデル化」を参照してください。

仕口パネル

準備計算が生成した**仕口パネル(柱梁接合部パネル)**を一覧します。

仕口パネルは柱梁接合部のせん断変形を評価するための要素で、既定で S 造(CFT を除く)の 柱梁接合部に設けられます。設けるかどうかは右パネル「① 準備計算」の「部材のモデル化」に あるチェックボックス 「仕口パネルをモデル化(柱梁接合部)」(既定 ON)で建物一律に 切り替えます。OFF にすると接合部を剛節点として扱うため、この一覧は空になります。

内容
節点接合部の節点 ID
dc [mm]柱せい方向のパネル寸法(柱断面から算定)
db [mm]梁フランジ板厚中心間距離(取り付く梁のうち最大)
tp [mm]パネル板厚
Ve [mm³]実効体積
Kxp=Kyp [kN·m/rad]パネルせん断剛性 \( G \cdot V_e \)

パネルが設けられる条件

次のすべてを満たす節点にパネルを設けます。

  • 柱が 1 本以上・梁(水平材)が 1 本以上取り付く
  • 取り付く柱・梁がすべて S 造である
  • モデル化対象の断面(H 形鋼・角形鋼管・円形鋼管)の柱があり、実効体積 \( V_e \) が正

構造種別は材料の区分で決まります(2.5 構造種別の判定)。 H 形の断面でも材料がコンクリートなら RC 造として扱われ、パネルは設けられません。

**RC・SRC の柱や梁が 1 本でも取り付く接合部は対象外です。**梁が RC であれば、柱が S でも 接合部はコンクリートが全体を拘束する RC の接合部になり、鋼部材だけの実効体積では挙動を 表せません。これらの接合部は剛域で有限寸法を評価し、検定は RC 柱梁接合部・SRC パネル ゾーンの断面算定が担います。S 造では接合部に接続する柱・梁がすべて S のとき剛域長が 0 になるので、パネルのせん断変形を明示的に評価しても二重にはなりません。

斜材(ブレース等)はパネルと連成しないため、この判定の対象外です。S 造の接合部に RC ブレースが取り付いてもパネルは設けられます。

CFT 柱の接合部もモデル化の対象外です。充填コンクリートと通しダイアフラムが接合部の せん断挙動に関与し、鋼管のみの実効体積では剛性を表せないためです。ただし断面算定は CFT も対象に含めるため、この一覧に出てこない接合部でも検定は行われます。

柱が複数取り付く節点では、実効体積 \( V_e \) が最小になる柱の諸元を採ります。剛性・ 耐力とも安全側になり、かつモデルの入力順に依らず一意に定まるためです。

一覧が空になる場合は、対象となる S 造の柱梁接合部がないか(RC/SRC の部材が混じる、 CFT 柱のみである場合を含む)、柱・梁の断面が未割当である可能性があります。 「断面性能」タブで断面の割り当てを確認してください。

モデル化の影響

パネルを設けると、接合部の節点はせん断変形角 \( \gamma_X \)・\( \gamma_Y \) の 2 自由度を追加で持ち、取り付く部材はパネル寸法分だけ離れた位置(柱フェース・梁フェース) で接合します。この 2 つは変位に逆向きに効きます。

  • 接合部がせん断変形する分だけ架構は柔らかくなる
  • パネル分のオフセットが剛域として働く分だけ架構は硬くなる

オフセットは梁が「取り付く柱せいの最大値 / 2」、柱が「取り付く梁せいの最大値 / 2」です。 剛体アーム長は剛域長とオフセットの大きい方になり、可撓長はその分だけ短くなります。 準備計算の「剛域」表では、剛域長・パネル分オフセット・フェース距離を別々の列で 確認できます。

可撓長が短くなるため、幾何剛性・せん断降伏の内法高さ・座屈長さ係数の剛度比も同じ 可撓長を用います。軸剛性・ねじり剛性は剛体アーム長に依らず節点間長で計算するため、 パネルを設けても変わりません。

増分解析・時刻歴応答解析では、パネルの降伏も考慮します。降伏耐力は柱の軸力比に応じて 各ステップで更新されるため、パネルの降伏が保有水平耐力や崩壊形に反映されます。

断面・材料の割当と表示上の扱い

仕口パネルは断面を割り当てない要素です。 せん断剛性は取り付く柱・梁の断面から求めた実効体積 \( V_e \) によるため、パネル自身が 断面を参照する必要がありません。材料は断面が持つため、断面を割り当てないパネルは材料も 持ちません。節点バネ・免震支承材・制振ダンパーも同じく、断面ではなく専用の特性値から 剛性を作るため、これらにも断面を割り当てません。

このため、断面・材料の割当を見る次の機能は、いずれもパネルを対象から除きます。

機能パネルの扱い
下ドック「診断」タブの断面未割当の警告対象外
解析前の入力チェック(断面・材料の未割当エラー)対象外
ナビゲータの部材グループ(鋼材部材 / RC部材)対象外(材種で分類しない)
3D ビューの選択ハイライト描かない

3D ビューでハイライトしないのは、パネルの節点列が「接合部の節点 + 取り付く部材の他端」 であり、材軸も輪郭も持たないためです。先頭 2 節点を結ぶ線は取り付く柱・梁そのものと同じ 線分になるので、そこへハイライトを描くと、選択していない柱・梁が選択されているように 見えてしまいます。同じ理由でクリックによる選択・ホバーの対象からも外れているため、 パネルの寸法とせん断剛性は、この準備計算「仕口パネル」タブの一覧で確認してください。

パネルは部材タブの部材一覧には種別 PanelZone の要素として並び、断面の欄と(断面から 引く)材料の欄はどちらも空欄()が正しい状態です。ナビゲータの部材グループはパネルを数えないため、鋼材部材と RC部材の合計は部材一覧の行数とは一致しません。

断面算定との関係

柱梁接合部の断面算定は、このモデル化の有無に依らず常に行います。検定する接合部の 判定はモデル化と同じで、柱・梁がすべて S 造の接合部だけが対象です。異なるのは CFT の 扱いだけで、CFT 柱の接合部はモデル化されなくても検定されます。

モデル化の有無で変わるのは設計用パネルモーメントの求め方だけです。パネルをモデル化した 節点では解析が出力するパネルせん断モーメントを、モデル化していない節点では梁端モーメント と柱せん断から組み立てた値を用います。

検定結果は結果タブ「設計」の「接合部・耐震壁の検定」表と、3D の検定比図(節点上の ひし形マーカー)で確認できます。

3D の位置はモデル化ビュー(結果タブ「モデル化」)でも確認できます (モデル化の表示)。

算定根拠は 4.6 仕口パネル(柱梁接合部パネル)を 参照してください。

断面性能

断面ごとに、符号・階・形状種別・使用部材数・せい D × 幅 B・断面積 \( A \)・断面二次モーメント \( I_y \)・\( I_z \)・ねじり定数 \( J \)・せん断有効断面積 \( A_{sy} \)・\( A_{sz} \)・断面二次半径 \( i_y = \sqrt{I_y/A} \)・\( i_z \)・材料名とヤング係数 \( E \) を示します。値は解析に用いる断面諸量 そのもの(形状定義から生成された値、またはカタログ数値の直入力)であり、この表では 再計算しません。表示は cm 系(\( A \): cm²、\( I \)・\( J \): cm⁴)です。

形状定義を持たない断面(数値の直入力)は「数値直入力」と表示します。この断面は 幅厚比・部材ランクの判定、終局耐力の算定、スラブ協力幅による剛性増大の対象外に なるため、意図した入力かどうかを確認してください。どの部材・床にも割り当てられていない 断面は、使用部材数 0 として淡色で表示します。

材料欄には、断面に割り当てた主材料の名前を示します。 材料は断面が持つため、1 つの断面が複数の材料で使われることはありません。 違う材料を割り当てるなら、それは別の断面になります。

断面は符号と階の組で識別します。 同じ符号の断面が階ごとに並ぶことがあるため、符号だけでなく階も併記しています。 階を持たない断面の階欄は と表示します。 詳細は断面の符号と階を参照してください。

算定根拠は 3.2 断面諸量(弾性)3.3 せん断有効断面積 Asを参照してください。

幅厚比

鋼断面の代表最大幅厚比と、それによる部材ランク(FA〜FD)を示します。ランクは断面形状・ 部材用途(柱/梁)・鋼種でのみ決まるため、これらが同じ部材は 1 行にまとめ、 該当部材数を添えます。

判定は保有水平耐力計算の構造特性係数 \( D_s \) に用いるものと同じです。FC は黄色、 FD は赤で強調します(\( D_s \) を不利にするため、断面寸法の入力を確認してください)。

以下は本表の対象外です。

  • 円形鋼管: 径厚比 \( D/t \) は幅厚比と座屈モードの体系が異なるため「判定不可」
  • RC・SRC 断面: 幅厚比の概念がないため対象外
  • 筋かい: 有効細長比によって種別(BA〜BC)を定めるため対象外
  • 形状定義を持たない断面: 板厚を参照できないため対象外

幅厚比表に行のない形状(溝形・T形・山形等)は、幅厚比の数値は表示しますが ランクは未判定です(\( D_s \) 算定では層の選択ランクによります。 7.3.1)。

算定根拠は 7.3 部材ランク(FA〜FD)を参照してください。

部材剛性

断面性能の表(断面単位)では表せない、部材ごとに決まる剛性の割増しと SRC/CFT の 等価断面性能を一覧します。割増しも等価換算もない部材は、表に載りません。

内容
スラブスラブ協力幅(RC 矩形梁の T 形断面)または合成梁(H 形鋼梁)による強軸曲げ剛性の増大率
壁上下梁壁エレメントモデルの上下大梁の剛性倍率(軸・曲げ・ねじり・せん断に一律)
元 \( I_y \)断面が持つ強軸の断面二次モーメント
実効 \( I_y \)等価換算・上記の割増しをすべて適用した、解析に入る強軸曲げ剛性用の値
総増大率実効 \( I_y \) / 元 \( I_y \)

断面名に「(等価換算)」が付く部材は SRC/CFT の等価断面性能を用います。行にカーソルを 合わせると、等価断面の \( A_{ax} \)・\( I_y \)・\( I_z \)・\( J \)・\( A_{sy} \)・\( A_{sz} \) を確認できます。

適用の順序は要素の構築と同じで、等価換算 → スラブ/合成梁(強軸曲げのみ)→ 壁エレメント上下大梁(一律)です。フレーム内雑壁(腰壁・垂壁・袖壁)を 周辺部材の断面性能へ算入する分は、部材ごとの断面合成であって単一の倍率では 表せないため、実効 \( I_y \) には含めません。

スラブ協力幅による増大は、梁の両端節点をともに含む床領域の外周(大梁の区画。小梁による 細分によらず常に床領域全体を表す)、またはどの床領域にも属さない床板に版があり(断面が 割り当たり板厚が正)、かつ用いる厚さ \( t \) が正のときに限ります。\( t \) はその床領域内の 床板の板厚(複数なら最大)、または帰属なし床板自身の板厚で、取れないときの控えが建物一律の 剛性計算用スラブ厚(既定 0 mm)です。版なし・取り付く床板・\( t \le 0 \) では働きません。 割増しも等価換算も生じ得ないモデル(版のある床板が 1 枚もなく建物一律のスラブ厚も 0・壁なし・ SRC/CFT 断面なし)では部材ごとの判定自体を行わないため、この表は空になります。

SRC 断面で材料に \( F_c \) が設定されておらず等価換算を算定できない場合も、軸剛性に ついてはヤング係数比の既定値による累加が働くため、その部材は表に載ります(断面名に 「(等価換算)」は付かず、実効 \( I_y \) は元 \( I_y \) と等しくなります)。

算定根拠は 3.6 SRC / CFT の等価断面性能を参照してください。

荷重集計

荷重ケースごとの節点荷重数・部材荷重数と、全体座標系での外力の合計 \( \Sigma F_x \)・\( \Sigma F_y \)・\( \Sigma F_z \) [kN] を示します。部材荷重は、集中荷重はその大きさ、 分布荷重は \( \frac{w_1 + w_2}{2}(b - a) \) を作用方向へ投影して積算します(等価節点力へ 置換する前の外力の総和であり、支点反力と釣り合います)。鉛直下向きが負のため、 重力系の荷重ケースでは \( \Sigma F_z \) が負値になります。

荷重が定義されていない荷重ケースは淡色で表示します。

算定根拠は 1.2 積載荷重1.3 床荷重の分配1.6 自重の長期応力解析への接続1.8 床の断面と自重を参照してください。

CSV 出力・プロジェクトファイルへの保存

CSV 出力

「📋 CSV をコピー」で、建物概要・階の分布・地震力(Ai 分布)・剛域・断面性能・ 幅厚比・部材剛性・荷重集計の各セクションを CSV 形式でクリップボードへコピーできます。

準備計算タブで閲覧できる「ねじり解放」「仕口パネル」は、現状 CSV には含まれません。 列構成が他セクションと異なるため、画面上での確認専用としています。

プロジェクトファイルへの保存

準備計算の結果と解析結果はプロジェクトファイル(.scz)に保存され、次に開いたときに 復元されます。解析結果には静的解析・荷重組合せ・固有値・増分解析・時刻歴応答・質点系の 各結果と断面検定の結果が含まれます。 表示中の静的ケースと、実行済みの振動荷重ケース(立体時刻歴・質点系)も保存されます。

保存されるのはモデル編集後に再実行済み(最新)のものだけで、古い状態のまま保存した 場合は同梱しないため、復元された結果は常にそのプロジェクトのモデルに対して最新です。 振動荷重ケースは時刻歴の結果と対になるため、解析結果を同梱しない保存ではモデルからも 外します。結果のない空ケースが、開き直したときに実行済みへ見えないようにするためです。 同梱されていないファイルを開いた場合、その項目は未実行の状態から始まります。

プロジェクトファイルの構造は Squid-n プロジェクト形式(.scz)を参照してください。

結果の表示(3D ビューア)

この章では、解析結果を画面に出すときの仕様をまとめます。 3D ビューアでの変形・応力などの表示計算と、左ドックのナビゲータから結果を切り替える 操作の両方を扱います。 ここでの計算はいずれも画面表示のための処理であり、解析結果(節点変位・部材応力) そのものには影響しません。

この章の内容

CMQ 図(表示モード)

3D ビューアには、大梁の C(固定端モーメント)・M(単純梁中央モーメント)・ Q(単純梁せん断)を表示する CMQ 図モードがあります(ViewMode::Cmq)。 解析の実行を必要とせず、モデル・荷重ケースの入力内容だけから毎フレーム描きます。 CMQ 図表示中は床・二次部材の変形追従メッシュを描きません (床・二次部材の変形追従)。

ソースはナビゲータ/荷重タブで選択中の荷重ケース(nav.focus_load_case)の部材荷重 (LoadCase.member)そのものです。 床荷重の分配(自立壁を床へ上乗せした等価面荷重を 含む)・梁自重・取り付く壁版の線アンカー分布・手入力の部材荷重のいずれも、そのケースに 載っていれば同じ図に重ねて表示します。柱への節点集中荷重(取り付く壁版を両端の柱へ集中させた場合等)は梁に載る 荷重ではないため表示されません。荷重ケースが未選択の場合は先頭の荷重ケースを表示します (静解析の対象決定と同じ規約)。

「DL」「LL(架構用)」「LL(地震用)」の内容は準備計算(またはいずれかの解析実行。 どちらも内部で同じ同期処理を通ります)が書き込みます。モデルを読み込んだ直後や スラブを編集した直後で準備計算をまだ一度も実行していない場合、これらのケースの CMQ図は空(部材荷重なし)のまま表示されることがあります。準備計算タブで実行すると 最新化されます(「EX」「EY」はこの制約の対象外です。水平力は常に節点荷重のみで 表され、準備計算の有無にかかわらず CMQ 図には元々何も表示されません)。

「成分:」で C/M/Q を、「軸:」で強軸(ey)・弱軸(ez)を切り替えられます(既定は強軸のみ)。 部材の局所軸が傾いている場合(斜め柱、ひねりのある断面等)、鉛直荷重でも強軸・弱軸の 両方に成分が生じうるため、荷重の作用方向を各部材の局所軸へ投影してから C/M/Q を計算します。 両軸を同時表示するときは同一スケールで重ねて描き、弱軸(ez)は強軸(ey)より半透明に 描きます(構面ビューでは強軸・弱軸の張り出し方向が同一直線上に重なるため、色だけでは 区別できないことがあります。透明度で見分けられるようにしています)。

選択中の軸に有意な荷重成分がない場合(例: 直交グリッドの部材で弱軸のみを選択した場合、 鉛直荷重はほとんど強軸側にしか投影されません)、CMQ図は空欄になり、その旨の案内を 表示します。

準備計算の CSV 出力には「ねじり解放」「仕口パネル」が含まれません。 列構成が他セクションと異なるため、画面上での確認専用としています。 詳細は CSV 出力・プロジェクトファイルへの保存 を参照してください。

変形図の表示倍率

変形図・モード形・応力図への変形重ね表示では、変位を実寸で描くと視認できない ため、拡大した変位を節点座標に加えて描画します。表示倍率 \( s \) は、自動倍率 \( s_0 \) に 手動係数 \( f \)(スライダー、既定 1.0)を掛けた \( s = f , s_0 \) とします。表示座標は 原座標 + s × 変位(並進成分) となります。

自動倍率

自動倍率 \( s_0 \) は、次の 2 つの上限の小さい方を採ります。

\[ s_0 = \min!\left( s_\text{bbox},; s_\text{beam} \right) \]

  1. 全体(バウンディングボックス)基準 \( s_\text{bbox} \): 最大並進変位が バウンディングボックス対角長の 10% で表示される倍率。 \[ s_\text{bbox} = \frac{0.1 , D}{\delta_{\max}} \]
    • \( D \): モデル全節点のバウンディングボックス対角線長
    • \( \delta_{\max} \): 全節点の並進変位成分(\( u_x, u_y, u_z \))の最大絶対値
  2. 梁スパン基準 \( s_\text{beam} \): 各梁の内部たわみ \( w \)(Hermite 変形 曲線の、変形後の両端を結ぶ弦からの最大逸脱)が、その梁のスパン \( L \) の 10% を 超えない倍率の、全梁にわたる最小値。 \[ s_\text{beam} = \min_{\text{梁}} \frac{0.1 , L}{w} \]

梁は端部 6 自由度から Hermite 3 次曲線で描く(梁の内部たわみ表示)ため、端部回転が大きい梁は 全体基準だけでは中央のふくらみがスパンに対して過大になり得ます。梁スパン基準を 併用することで、全体変形も梁のふくらみも過大にならない倍率にします。梁スパン基準は 「内部たわみ」表示が有効なときのみ用います(無効時は梁を直線で描きふくらみが生じ ないため、全体基準のみです)。

手動係数(スライダー)

自動倍率で変形が見づらい・大きすぎる場合は、「変形倍率」スライダー (自動倍率に対する 0.1〜10 倍、対数目盛、「リセット」で 1.0)で係数 \( f \) を 調整できます。採用された実効倍率 \( s \) はビュー左上に、\( f = 1 \) のとき 「変形倍率 ×N(自動)」、それ以外は「変形倍率 ×N(自動×f)」として表示します。

モード形(固有モード)も同じ自動倍率・手動係数で表示しますが、固有ベクトルの 規模は任意のため倍率の数値に物理的な意味はなく、倍率の注記は表示しません。 モード形は拘束縮約を逆変換して全節点へ展開した形状で描画し、剛床に属する 節点にはマスター自由度の剛体変位関係(面内並進+回転)に従った変位が表示されます (5.3 固有値解析)。 変形前の架構は破線(6 pt、隙間 4 pt)と高い透過(線のアルファ 90、塗りのアルファ 55)で重ねます。 基準位置からの変化を読むためです。質点モードと同じ規約です。

質点系の「質点モード」「質点時刻歴」も同じ規則(ピーク並進が対角長の 10%、時刻歴は全フレームのピーク)で倍率を定めます。 詳細は 質点系の 3D 表示 です。

梁の内部たわみ表示(内挿の切り替え)

用途に応じて全体の変形と梁の内部たわみを見分けられるように、「内部たわみ」 トグルで梁の変形の描き方を 2 通りに切り替えます。

  • ON(既定): 梁を端部 6 自由度からの Hermite 3 次曲線 (4.10 梁要素内部の変位と断面力)で描き、 床・二次部材の節点も梁の曲線に追従させる。梁の内部たわみ(部材中間のふくらみ) を確認する用途。表示倍率は梁スパン基準も併用する。
  • OFF: 梁を節点間の直線(弦)で描き、床・二次部材の追従も端点の線形補間に する。全体の変形(層間変形・架構の傾き)を素直に確認する用途。

このトグルは変形図・モード形に加えて、N/Q/M 図に変形を重ねて表示している場合 (「変形表示」有効時)にも適用され、応力図上でも梁の内部たわみ表示と直線表示を 切り替えられます。

部材線として描く要素

曲線・直線のいずれで描く場合も、部材線を描くのは材軸を持つ線材(梁・柱、 ファイバー梁、マルチスプリング梁、ブレース、節点バネ、免震支承材、ダンパー)に 限ります。壁・シェルは面要素なので材軸を持たず、境界節点を結んだ多角形として 描きます。

仕口パネルは、接合部の節点と、そこに取り付く各部材の他端とを節点列に持つ 接合部要素です。材軸を持たないため部材線としては描かず、部材のピック(選択・ ホバー)の対象からも外します。仕口パネルの検定結果は 検定比の表示のとおり節点位置のマークで示します。

応力図の表示と変形の重ね表示

表示する成分の選択

応力図はビューアの表示モード「応力図」で表示します。部材内力 \( [N, Q_y, Q_z, M_x, M_y, M_z] \) の 6 成分を「成分:」のチェックボックスで個別に ON/OFF でき、選んだ成分をすべて同時に描きます。よく使う組はプリセットボタンで 切り替えます。

プリセットON になる成分
N 図\( N \)
Q 図\( Q_y,\ Q_z \)
M 図\( M_y,\ M_z \)

既定は M 図プリセット(\( M_y,\ M_z \))です。「変形表示」「コンター」「カラーマップ」 「値を表示」の各設定は成分を切り替えても保持されます。

張り出し面は成分ごとに決まっており、強軸側(\( N,\ Q_y,\ M_x,\ M_z \))は部材局所 \( y \) 面、弱軸側(\( Q_z,\ M_y \))は局所 \( z \) 面へ出ます。曲げとせん断の対 (\( Q_y \)–\( M_z \)、\( Q_z \)–\( M_y \))が同じ面に出るため、6 成分を同時に 表示しても直交する 2 面へ分かれて重なりが減ります。成分は固定色(凡例・図の塗り・ 輪郭線・数値ラベルで共通)で区別します。

断面力の符号規約は \( Q_y = dM_z/dx \)・\( Q_z = -dM_y/dx \) で \( M_y \) だけ せん断との関係が反転しているため、「正のモーメントを引張側へ張り出す」規約 (5.2 線形静解析)を保つよう、 \( M_y \) は張り出しの符号を反転して描きます。数値ラベル・コンターの色は張り出し値 ではなく内力値そのもので決まります。

最大値・コンター凡例(kN・kN·m)

ビュー左上の凡例には、表示中の成分ごとに「色見本+成分名+最大値」を 1 行ずつ並べます。 表示単位は力が kN、モーメントが kN·m(内部単位の N・N·mm から換算)です。

コンター表示を有効にすると、各行の下にその成分のカラーバー(左端 \( -\max \)・中央 0・ 右端 \( +\max \))を添えます。同じ単位の成分は同じ max で正規化します。力グループ (kN): \( N,\ Q_y,\ Q_z \)、モーメントグループ(kN·m): \( M_x,\ M_y,\ M_z \)。 共有 max は、表示中かつ実質ゼロでない(下記「実質ゼロの成分」)同単位成分のモデル全体 最大絶対値の最大です。凡例の max・張り出し振幅・コンター色・数値ラベルの 1% 間引きは、 すべてこの共有 max を使います。\( N \) と \( M \) のように単位が異なるグループ間では 共有しません。単独成分表示時はその成分自身の max(画面を使い切る)です。コンター表示中も 輪郭線は成分固定色のままなので、色分けされた塗りの中でもどの成分の図かを判別できます。 カラーマップは Viridis(既定)・Plasma・Turbo・Jet・青-白-赤から選べます。

実質ゼロの成分(図を描かない条件)

成分の最大値が、同じ次元の成分の最大値に対して \( 10^{-9} \) 以下の比しか持たない場合は 「実質ゼロ」とみなして図を描きません。基準にする「同じ次元の成分」は、力が \( [N, Q_y, Q_z] \)、モーメントが \( [M_x, M_y, M_z] \) です。同じ次元の成分がすべて 0 の 場合も描きません。

該当するのは、モデルの性質上その成分が全部材でゼロになる場合です。既定のモデル化 (ねじり解放)で i 端ねじれをピンとした部材の \( M_x \)(部材全長で \( M_x = 0 \))や、平面フレームの \( Q_z \) が典型です。

図を描かない成分も、選択中であることが分かるよう凡例には行を残し、最大値の代わりに **「全部材ゼロ(図なし)」**と表示します。

数値の表示

「値を表示」を有効にすると、各部材の両端部と中央(\( \xi = 0,\ 0.5,\ 1.0 \))の値を、 各成分の図の輪郭上に成分固定色で描きます。表示は kN・kN·m の小数 1 桁です。 同単位グループの共有 max の 1% 未満の点はラベルを描きません(0 近傍のラベルが 重なって読めなくなるのを防ぐためで、張り出しピークが極小の部材の図自体を描かない扱いと 同じ方針です)。

変形の重ね表示

応力図の表示中に「変形表示」を有効にすると、変形図の表示倍率で変形させた節点 座標を基準に架構を描画します。応力図は変形後の材軸方向(成分ごとの 要素ローカル軸)へ張り出すため、図も変形形状に追従します。応力の値・最大値の正規化は変形の重ね 表示による影響を受けません。

さらに「内部たわみ」表示が有効なときは、梁の張り出しの基準線(張り出し量 0 の 線)を節点間の直線ではなく梁の変形後 Hermite 曲線とし、梁の描画曲線に沿って 応力図を描きます(基準線は梁の線描画と同一の曲線)。無効なときは変形後の節点間 直線を基準線とします。張り出し方向(成分ごとの局所軸)と応力値の正規化はいずれの 場合も変わりません。

耐震壁(壁エレメント)

壁エレメントの応力図は、モデル化図と同じ壁柱(上下辺中点を結ぶ仮想中央柱)を 材軸として描きます(4.5 壁エレメントモデル)。 四隅節点の先頭 2 点を結んだ下辺大梁とは一致しません。張り出し面・符号規約は線材と 同じです。壁柱の幾何を取れない壁は応力図を描きません。

床・二次部材の変形追従(表示用の変位補間)

スラブ境界・小梁支持点・二次部材(小梁・間柱)の節点のうち、主架構要素が 接続せず、拘束(剛床・剛リンク・MPC)のマスターでもない節点には解析自由度が 割り当てられず、解析結果の変位は 0 になります(零剛性自由度による特異行列を 避けるための扱いです。荷重は床荷重分配で主架構へ変換されます)。

これらの節点をそのまま描くと変形図で床・二次部材だけが原位置に残るため、 表示上は次の 2 段階で主架構の変形へ追従させます。

大梁に直付きする節点(梁の変形曲線への追従)

対象節点の座標 \( p \) を、主架構の各 2 節点要素(線材)の線分へ射影し、射影点 までの距離が最小の線分を選びます。射影点までの垂線距離がモデル寸法 (バウンディングボックス対角長)の 0.1% 以内であれば、その節点はその線材の 線上に載る(直付き)とみなします。追従に用いる変位は、線材の種別で分けます。

  • 梁(Beam)で「内部たわみ」表示が有効なとき: 変形図で梁は端部 6 自由度 からの Hermite 3 次曲線として描く (4.10 梁要素内部の変位と断面力)。 端点変位の線形補間では梁の曲線から浮いてしまうため、直付き節点の並進変位は、 その梁の Hermite 変位場を射影位置 \( t \in [0, 1] \)(線分外への射影は端点へ クランプ)で評価した値とし、節点が梁の描画曲線上に載るようにする。回転成分は 端点変位の線形補間で補う。
  • 梁以外の線材(ブレース等)、または「内部たわみ」表示が無効なとき: 端点 (\( i \), \( j \)、変位 \( u_i \), \( u_j \))の変位を射影位置 \( t \) で線形補間する(梁を直線で 描く表示に合わせ、直付き節点もその直線上に載せる)。 \[ u = (1 - t), u_i + t, u_j \]

二次部材の支持点が大梁のスパン中間に節点共有なしで載る一般的なモデルでは、 支持点が取り付く大梁の変形曲線に沿って追従します。

大梁に直付きしない二次部材節点(接続を辿る追従)

いずれの大梁の線上にも載らない二次部材(小梁・間柱)の節点(片持ちの二次部材の 先端など)は、二次部材の接続グラフを辿り、最寄りの確定節点(前段で確定した 直付きアンカー、または主架構節点)の変位へ剛体的に追従させます(節点間距離を 辺長とし、主架構に近い側から順に伝播します)。これにより、取り付き先へ連なる 二次部材を介して主架構の変形に沿って追従します。

どちらでも確定しない孤立節点(大梁にも直付きせず、二次部材でも確定節点に 到達しない床境界節点など)は、最寄り線分への射影変位でフォールバックします。

床板・壁版の多角形も変形後の位置へ載せる

床板と、解析要素にならない壁版は、境界の多角形を上で求めた変形後の節点座標から 組み立てて描きます。 取り付く床板・取り付く壁版のように自由端に節点を持たない版も、取付き先の節点が動いた後の 位置から張り出し量を積んで求めます。 周囲の梁が変形するのに版だけが元の位置に残ると、床が梁から浮いたり壁が梁を貫いたりして、 変形の読み取りを妨げるためです。

補間の限界

この補間は描画専用の近似であり、次の限界があります:

  • 小梁・二次部材自体のたわみ(支持点間の曲げ変形)は表現しない。支持点・ 接続先の変位による剛体的な追従のみである。
  • 補間ソースは線材のみのため、壁(面要素)にしか近接しない節点は最寄りの 線材から補間される。

なお、床(スラブ・小梁)と二次部材、および解析要素にならない壁版の表示は 「床壁・二次部材」トグルでまとめて非表示にできます。このとき、部材が消えた後に節点だけが空中に残ると 実在しない構造点があるように見えるため、解析対象外の節点(主架構の部材が 接続せず、床・二次部材だけが参照する節点。上記の「解析自由度を持たない節点」と 同じもの)も併せて非表示になります。非表示の節点は部材作成モードの節点ピック 対象からも外れます。

床・二次部材の表示可否は、中心線・断面表示(断面形状の押し出しソリッド)の 双方に同じ規則で適用されます。すなわち「床壁・二次部材」トグルが OFF のとき、 また主架構の図である CMQ 図の表示中は、小梁・間柱を中心線でもソリッドでも 描きません(断面表示だけがトグルを無視して小梁を描く、ということはありません)。 断面を描けなかった部材の本数を右上に注記する「断面未定義の部材 n 本」にも、 非表示の二次部材は数えません。

支持条件・剛床マークの表示

支点(拘束された節点)には、拘束されている並進自由度の方向へ軸色(X 赤/ Y 緑/Z 青)の矢印を、拘束されている回転自由度の軸まわりに円弧を描きます。支点は 変位が拘束されており動かないため、変形図でも原位置に描きます。

支点記号(矢印・円弧、支点ばね、免震マーカー)は、ツールバーの「支点」トグル (既定 ON)で切り替えます。形状・変形・応力図など立体の表示で使います。 質点モード・質点時刻歴では立体の柱脚拘束は串に関係ないので、トグルに依らず出しません。

剛床(剛床代表節点)の表示は、ツールバーの「剛床代表点」トグル(剛床がある ときのみ選択肢を表示、既定 OFF)で切り替えます。ON にすると次を描きます。

  • 面内拘束マーク: 剛床が物理的に拘束する**面内自由度(\( U_x \)・\( U_y \)・\( R_z \))**を、 支点と同じ矢印・円弧の規約で表示する。代表節点に内部で設定される鉛直・面外 回転(\( U_z \)・\( R_x \)・\( R_y \))の拘束は、面内挙動だけを扱う代表節点の剛性行列が 特異にならないようにするための数値上の処置であり、剛床の拘束条件そのものでは ないため、マークには表示しない。
  • 代表点マーカーとスレーブへの点線: 代表節点(重心に置く仮想節点)を強調 リングで示し、関連付けられたスレーブ節点へ点線を引いて所属関係を可視化する。

点線を引く相手は、剛床の縮約が実際に効く節点(解析自由度を持つ節点)に限ります。 階の生成では当該レベルに属する全節点をスレーブとして登録し、その中には スラブ境界・小梁支持点・二次部材の節点(解析自由度を持たない節点)も含まれますが、 これらは剛床の面内拘束の対象になりません(拘束行列の生成が解析自由度を持つ スレーブのみを対象とするためです)。所属関係の表示もこれに合わせます。

点線は関連節点が多いと他部材が見づらくなるため、既定は非表示(トグル OFF)に しています。

代表節点は変形図で床の変形へ追従します。面内変位(\( U_x \)・\( U_y \)・\( R_z \))は解析結果を そのまま用い、床の面内変形(水平変位・面内回転)に追従して重心マークが移動します。 鉛直変位(\( U_z \))は代表節点の数値ダミー拘束で解析上 0 に固定されるため、表示上は スレーブ節点の鉛直変位の平均で補い、変形後の床の平均標高へ載せます(描画専用の 近似で、解析結果は変更しません)。代表点マーカー・点線・面内拘束マークはいずれも 変形後座標で描くため、変形へ追従します。

検定比の表示

表示モード「検定比」では、部材検定・節点検定の結果に基づいて部材・節点を 着色します。検定結果は式別の内訳(曲げ・せん断・付着・軸+曲げ・軸・たわみ) を持つため、着色対象を切り替える「検定式フィルタ」と、部材内の各検定位置 を個別に確認できる「位置別マーカー」を備えます。

検定式フィルタ

ツールバーの「検定式:」で着色対象を選びます。

  • 最大(既定): その位置の全検定式のうち最大の検定比を対象にする。
  • 式別(曲げ/せん断/付着/軸+曲げ/軸/たわみ): 選んだ式の検定比の みを対象にする。当該式を持たない検定位置は「フィルタ対象外」として 扱われ、着色・マーカーとも描かれない。

選択肢には、現在の解析結果(部材検定・節点検定の両方)に実際に現れる式 のみが表示されます。たとえば鋼構造ブレースのみのモデルでは「軸」「軸+曲げ」 系の式しか現れないため、「たわみ」等の無関係な選択肢は出ません。

部材・節点の着色

  • 部材の色は、フィルタ適用後の値でその部材の全検定位置(材端・材中間 などの複数箇所)における最大検定比により決まる。色は検定比に応じた 連続グラデーション(コンター)で、判定基準 0.8/1.0 を境に色相が 切り替わる:
    • 検定比 0 〜 0.8: 淡緑 → 緑(良好域。余裕が小さいほど濃い緑)
    • 検定比 0.8 〜 1.0: 黄 → アンバー(注意域。1.0 に近いほど濃い)
    • 検定比 > 1.0: 赤(NG。超過。単色)
  • 良好域・注意域の中では色の濃淡そのものが検定比の大小を表すため、数値 ラベルがない部材でも余裕度の分布を色で読み取れる。判定境界(0.8/1.0) では色相が不連続に変わるため、基準をまたいだかどうかも一目で分かる。
  • 壁(面要素)は同じ配色の半透明ポリゴンで塗り、輪郭も検定比の色で描く。
  • 柱梁接合部・仕口パネル・耐震壁などの節点単位の検定は、部材の線とは 別に、対象節点上の色付きひし形(背景色の輪郭付き)で表示する。色は同じ 配色に従い、NG のマーカーは一回り大きく描く。支点記号などが重なる節点でも 見分けられるよう、部材とは別の形にしている。
  • 節点検定のマーカーは、NG の場合と「全ラベル表示」が ON の場合に検定比を 数値で添える。マーカーへポインタを重ねると、その節点の検定種別・検定比・ 判定・根拠を一覧するツールチップを表示する。
  • 検定表(「結果」タブ)のセルは、文字と背景の対比を保つため 3 段階 (緑/黄/赤)で着色する。判定レベルの粒度では 3D ビューと表の色は 一致する。
  • フィルタで選んだ式の検定比が存在しない部材・節点(式別フィルタで対象 外の場合を含む)は、検定を実施していない部材・節点と同様にグレーの まま(着色されない)。
  • Fc 未設定・配筋情報なし・断面形状不一致など入力不足で検定を実施 できなかった位置(検定不能) も同様に無着色(未検定と区別しない)。 ある部材の全検定位置が検定不能の場合、その部材はグレーのまま表示 される。

部材中点のラベル

部材中点には検定比の数値をラベル表示します。ただし全部材に数値を出すと 3D ビュー上で文字が重なって読めなくなるため、既定では検定比 0.8 以上 (注意域以上)の部材のみにラベルを描きます。0.8 未満の部材は色の濃淡 (上記のグラデーション)だけで余裕度を示します。ツールバーの「全部材に 数値ラベル」を ON にすると、検定比によらず全部材にラベルを表示します。

フィルタ=最大のときは、その部材の最大検定比を与えた位置の支配式 (最大の内訳を持つ検定式)を「1.13 せん断」のように数値へ併記します。 フィルタ=式別のとき、および検定不能の位置しかない場合は数値のみを表示 します。NG 部材(検定比 > 1.0)は赤字・大きめのフォントで、かつ線の 太さも太くして強調します。

位置別マーカー

「位置別マーカー」トグル(既定 ON)で、部材の各検定位置(柱フェイス i端・中央・柱フェイスj端、ハンチ端・継手位置、指定位置など)に一辺 7 px の正方形マーカーを表示します。マーカーの色はその位置のフィルタ適用後の 検定比による(部材線と同じグラデーション配色)で、フィルタ対象外の位置 (検定不能の位置を含む)にはマーカーを描きません。NG の位置(フィルタ適用後の検定比 > 1.0)にはマーカーの右上に小さく数値を添えます(全位置に数値を出すと 過密になるため NG のみ)。マーカー表示中も部材中点のラベル(部材内 最大)は変わらず表示されます。

ホバーによる詳細表示

部材の近く(クリック選択と同じ 8 px の許容距離)へポインタを重ねると、 その部材の検定位置×検定式の内訳を表にしたツールチップを表示します。 1 行目に部材番号と根拠(最初の検定位置の basis。検定不能の位置のみの 場合は理由)、続く表は行に検定位置(xi の数値)、列にその部材で実際 に使われている検定式(+判定列)を持ちます。各セルはその式の検定比 ({:.2} 表示。該当式がない位置・検定不能の位置は「-」)で、1.0 超は 赤、0.8 超は黄で着色します。判定列は部材のその位置の判定(OK/NG)を 表示し、検定不能の位置は灰色で「検定不能(理由)」と表示します。

凡例

ビュー左上に次を表示します。

  • 現在のフィルタ対象・検定比の最大値・NG 件数の集計(いずれもフィルタ 適用後の値。検定不能は含みません)
  • 色の凡例: 検定比 0〜1.0 のグラデーションを示すカラーバー(目盛りは 0/0.8/1.0)と、その右に NG(> 1.0)の赤の色見本、未検定・検定不能が グレーである旨の注記
  • 数値ラベルの表示条件(「検定比 0.8 以上のみ」または「全部材」)と、 位置別マーカーの説明(マーカー ON 時のみ)
  • モデル編集後に解析結果が陳腐化している場合の注意(「モデルが編集 されています。解析を再実行してください。」)

解析結果がない場合は、検定比図の代わりに解析の実行を促す案内のみを 表示します。

検定不能の表示

Fc 未設定・配筋情報なし・断面形状不一致など、入力不足により検定式を 適用できない検定位置は「検定不能」として扱い、検定比 0・OK 相当の 偽の安全側結果としては扱いません。

  • 3D ビュー(検定比図): 未検定と同様に無着色。位置別マーカーは描かず、 ホバー詳細ツールチップの該当行には「検定不能(理由)」を表示する。
  • 検定表(「結果」タブ): 検定比セルに「-」、判定セルに灰色で 「検定不能」、根拠セルに理由(例:「RC 検定: Fc 未設定」)を表示する。 NG 件数の集計には含めない。

検定表の内訳列

「結果」タブの部材検定表には「内訳」列があり、検定式ごとの検定比を 「曲げ 0.82/せん断 1.13/付着 0.44」のように横並びで表示します(検定 不能の行は「-」)。3D ビューの検定比図と同じ配色規約で各式の値を 着色するため、表と 3D ビューで一貫して式別の状態を確認できます。節点単位の 検定表(接合部・耐震壁など)はほぼ単一式のため内訳列を持ちません。

内訳セルの各式のラベル(「曲げ 0.82」等)にポインタを重ねると、その式 固有の数値根拠(許容値・作用値・中間係数など)をツールチップで表示します。 根拠セル(basis の文字列)にも、全検定式に共通の数値根拠(断面諸元など) があればホバーで表示します(共通の根拠がない場合は表示しません)。節点単位の 検定表(接合部・耐震壁など)も同様に、根拠セルへ検定式(単一式)の数値 根拠をホバー表示します。

モデル化の表示

表示モード「モデル化」では、各部材が解析上どの要素モデルで扱われるかを色と 記号で可視化します。形状は同じでも解析種別によって部材のモデル化(要素の 定式化)が変わるため、意図どおりのモデル化になっているか(耐震壁の側柱が面内 両端ピンか、剛床上の梁が材端集中塑性で軸力変動する柱がファイバーか、など)を 視覚的に確認する用途です。着色は要素生成と同じ判定に基づくため、実際に解析へ 渡る要素種別と一致します。

解析種別の切り替え

ツールバーの「解析種別:」で、可視化するモデル化を切り替えます。

  • 静解析(弾性): 線形静解析は断面の降伏を考えないため、部材は原則すべて 弾性でモデル化される。
  • 増分解析(弾塑性): 断面の降伏を考慮するため、軸力変動する部材はファイバー 要素、剛床上で軸力変動が小さい梁は材端集中塑性(材端回転ばね)としてモデル化 される。フォースレジームの自動判定は、剛床に所属する非鉛直材(梁)を材端集中 塑性、それ以外をファイバーへ振り分ける (4.9 非線形梁要素のモデル化5.7 増分解析(プッシュオーバー解析))。

耐震壁の側柱(面内両端ピン)は要素のトポロジに由来する解放のため、解析種別に 依らず常に側柱として表示されます (4.5 壁エレメントモデル)。

部材の着色

部材は解析モデル分類ごとの色で描きます。

  • 弾性材(グレー): 断面の降伏を考慮しない弾性材。静解析の全部材、増分解析の 弾性梁など。
  • 材端集中塑性(緑): 材端回転ばねで塑性化を表す。剛床上で軸力変動が小さい梁の モデル化。
  • ファイバー(分布塑性)(オレンジ): 積分点断面のファイバー分割で軸-曲げ連成を 表す分布塑性モデル。軸力変動する柱などのモデル化。
  • 側柱(面内両端ピン)(紫): 耐震壁の側柱。面内曲げ面のみ両端ピンとし、面外・ 軸・ねじりは通常の柱と同じ剛性を持つ。
  • 壁エレメント(青): 耐震壁の壁エレメント置換モデル。後述の「エ」状で描く。
  • 雑壁(暖色): 耐震壁不成立(上下辺が大梁で囲まれていない、RC 壁の板厚不足・ 開口過大・耐震スリット等)で、剛性を周辺の柱・梁へ算入するフレーム内雑壁 (4.5 壁エレメントモデル)。 破線輪郭の半透明ポリゴンで、独立した構造壁エレメントでないことを示す。 解析要素になった壁版か否かを問わず、剛性算入の対象になっている壁版をすべて描く。
  • 荷重のみ(ウォームグレー): 解析要素にもならず、周辺部材への剛性算入もされない 壁版。自重だけが荷重へ流れる。雑壁と同じく破線輪郭の半透明ポリゴンで描く。 該当するのは、板厚を引けない壁版(断面未割当、または板厚のない断面)、床領域に 取り付く自立壁(周辺の柱・梁に取り付いておらず剛性を渡す相手がいない)、取付き線が 梁の全長を覆わない取り付く壁版、境界が 4 節点でない囲まれた壁版である (4.1 ティモシェンコ梁要素)。
  • パネルゾーン(藍): 柱梁接合部パネル(後述)。
  • トラス/軸材(ティール): 軸剛性のみのブレースなど。
  • その他(淡いグレー): バネ・免震・ダンパー・シェルなど。

剛域の表示

部材端に剛域(接合部の有限寸法。可とう長 \( L' = L - \lambda_i - \lambda_j \))が設定 されている場合、その剛域長の区間を材端のバーで描きます (4.1 ティモシェンコ梁要素)。 部材色の基準線は可とう区間(剛域を除いた中央部分)に描きます。剛域長はモデルに保持 された値(自動算定は解析実行時に反映、手動指定はそのまま)を表示します。

バーは、弾性材の細いグレー線と混同しないよう、ハッチング入りのブロック (材軸に沿った矩形の輪郭+内部の斜めハッチ)として描きます。線材とは図形の種類が 異なるため、色や太さの違いに頼らずに区別できます。矩形の両端のキャップがそのまま 剛域フェイスの位置を示します。

剛域はすべての線材モデル(弾性材・材端集中塑性・ファイバー・MS)で同じ扱い (可撓長で要素を組み、可撓端を剛体アームで節点自由度へ写す)のため、表示も分類に よらず共通です。

塑性化位置・ファイバー断面の表示

塑性化のモデル化を、その設定位置に応じて記号で示します。

  • 材端塑性ヒンジ(●): 材端集中塑性(材端回転ばね)の部材は、塑性ヒンジが集中 する材端(剛域があればそのフェイス)に塗り円を描く。ピン・半剛の端部にはヒンジを 描かない(回転が解放されヒンジが生じないため)。
  • ファイバー断面(材軸直交の短バー+3 点): ファイバー要素・MS 要素は、可撓部の 材端の積分点 \( \xi = \mp 1 \) に配置した断面のファイバー(MS では軸ばね群)だけが 塑性化を担う。その位置=**可撓部の両端(剛域があればその剛域フェイス)**に断面 記号を描く (4.9 非線形梁要素のモデル化)。 記号は剛域ブロックや他部材の記号と重ならないよう材軸方向へわずかに内側へ寄せて 描く。
  • 塑性化域 \( L_p \)(太線)/中央弾性(細線): 端部積分点の積分重みに対応する 区間(可撓部の材端から \( L_p \))を部材色の太線で、弾性のままの中央部 \( [L_p,, L'-L_p] \) を弾性色の細線で描く。\( L_p \) は部材の指定値、未指定なら断面せいの 0.5 倍(要素生成の既定と同じ)で、可撓長 \( L' \) の 45% にクランプした値を用いる。

端部接合条件の記号

線材の端部の接合条件を記号で重ねて表示します。記号は材端(剛域がある場合は剛域 フェイス)に描きます。

  • ○(端部ピン): 回転自由(Pinned)の端部。耐震壁の側柱は面内両端ピンの ため両端に描く。
  • □(端部半剛): 回転ばね(SemiRigid)の端部。

壁エレメントの「エ」状表示

耐震壁(壁エレメント成立)は、壁エレメント置換モデルの構成 (4.5 壁エレメントモデル)を 反映した「エ」状で描きます。

  • 壁柱(中央の鉛直線・青): 上下剛梁の中点を結ぶ仮想中央柱。
  • 上下の剛梁(ハッチ入りブロック): 四隅節点の並進を壁柱端へ写す剛体リンク。 剛域と同じ図形で描く。
  • 引出線(細い破線): 剛梁の端と壁の四隅節点のつながり。
  • 剛梁端のピン(○): 壁エレメントは四隅節点の回転自由度に剛性を与えないため、 剛梁の両端に○を描く。

剛梁は実要素ではなく、四隅節点の並進を壁柱端の並進・回転へ写す拘束です。壁の上辺・ 下辺には実部材である付帯梁(後述)が同じ位置にあるため、剛梁を辺の上にそのまま描くと 付帯梁が剛梁でその端部がピンであるかのように読めてしまいます。そこで剛梁は四辺とも 壁の内側へ寄せて描き、剛梁の端と四隅節点は破線の引出線でつなぎます。寄せる量は、 ズームに依らず見た目が一定になるよう画面上の距離(px)で決め、壁高さの 15% を上限とします。

自動でピンになるのは側柱であって、付帯梁ではありません。付帯梁は剛接のまま、断面性能に 倍率が乗った剛性で解析へ入ります。

壁エレメントの幾何を取れない壁は半透明ポリゴンにフォールバックします。

増分解析での降伏機構

壁エレメントの降伏機構は 2 つあり、増分解析(弾塑性)ではその両方を描きます。

  • 軸・曲げ: 壁柱の材端 \( \xi = \mp 1 \) に置いたファイバー断面が担う。端部 \( L_p \) の 区間をファイバー色の太線と断面記号で、中央の弾性区間を壁エレメント色の細線で描く。 \( L_p \) は壁長の 0.5 倍(壁高さの 45% にクランプ)で、断面せいの 0.5 倍を基準とする 柱・梁とは基準が異なる。
  • 面内せん断: 壁柱に沿わせたジグザグ(せん断ばね)で描く。終局せん断強度 \( Q_u \) で 頭打ちにする弾完全塑性のばねで、増分解析かつ \( Q_u \) を算定できる壁にのみ描く。

面内せん断の判定量は、要素が伝達する面内水平力 \( Q = \boldsymbol{p}^{T} \boldsymbol{f} \) という 1 つのスカラーです。上辺の剛梁は中間荷重を持たない剛体リンクのため、釣合いから \( Q \) は 壁柱の面内せん断力に等しく、壁柱にも中間荷重がないためこの値は材長方向に一定になります。 特定の断面の応力で判定する量ではないので、材端に記号を置かず材軸に沿わせて「壁柱が全長で 持つ性質」として描いています。

ファイバー化されるのは、耐震壁が成立し、\( Q_u \) を算定でき、コンクリート強度 \( F_c \) と 壁厚が得られる壁だけです。この条件を満たさない壁の壁柱は弾性のまま描かれます。

壁の付帯梁の表示

耐震壁の上下大梁(付帯梁)は、通常の大梁に倍率を乗じた剛性で解析へ入ります (4.5 壁エレメントモデル)。剛梁では ないため部材線そのものは分類色(弾性材・ファイバー等)のまま保ち、壁エレメント色の細い 平行線を脇に添えて付帯梁であることを示します。ホバーのツールチップにも「壁の付帯梁 (上下大梁。剛性に倍率)」と表示します。

倍率の値は剛性計算条件で変わるため図には出しません。図が示すのは「この梁がモデル化上 壁の付帯梁として認識されている」ことで、実際に乗った倍率は準備計算タブの 「部材剛性」で確認できます(部材剛性)。

仕口パネルの表示

仕口パネル(柱梁接合部パネル)がモデル化されている場合、接合部が占める領域を四角形で 描きます(4.6 仕口パネル(柱梁接合部パネル))。 四角形は幅が柱せい、高さが梁せいで、梁が取り付く構面ごとに描かれます。

同じ区間には部材側の剛域ブロック(ハッチ)も重なって描かれます。パネル分の オフセットが部材の剛域長に含まれるためで、二重に描いているわけではありません。両者は 別のことを示します。

図形示すもの
四角形(藍の半透明)この接合部にせん断変形角の自由度を持つパネル要素がある
ハッチ入りブロックその部材のこの区間が剛体アームである

材端の記号(塑性ヒンジ・ファイバー断面・ピン)は可とう区間の端、すなわち四角形の辺の 位置に描かれます。部材の可撓部がどこから始まるかを図で確認できます。

断面が求まらない接合部(柱・梁の断面が未割当など)は四角形を描けないため、接合部中心の ひし形マーカーで位置だけを示します。

仕口パネルは既定で S 造(CFT を除く)の柱梁接合部に設けられます。RC/SRC の柱や梁が 1 本でも取り付く接合部は対象外です。設けるかどうかは準備計算パネルの「部材のモデル化」で 切り替えられ、生成されたパネルの寸法・剛性は準備計算タブの「仕口パネル」で 確認できます。

凡例とホバー詳細

ビュー左上に、現在の解析種別と、モデルに現れた分類の色凡例・記号凡例(剛域と壁エレメント の剛梁・剛梁の引出線・壁の付帯梁・壁の面内せん断ばね・ピン・半剛・材端塑性ヒンジ・ ファイバー断面・塑性化域 \( L_p \) のうち実際に現れたもの)を表示します(支持条件の凡例は 左下のため重なりません)。部材の近く(8 px の許容距離)へポインタを重ねると、その部材の 解析モデル分類・端条件(i 端/j 端が剛・ピン・半剛)・剛域長・ファイバー断面の位置と 塑性化域 \( L_p \)(可撓長 \( L' \) 基準)をツールチップで表示します。

壁エレメントにポインタを重ねた場合は、壁長 \( l_w \)・壁高 \( h \) を表示します。増分解析 ではこれに加えて、壁柱の塑性化域 \( L_p \) と面内せん断の終局強度 \( Q_u \) を表示します。 ファイバー断面を組めない壁・\( Q_u \) を算定できない壁では、その機構が弾性であることを 表示します。どちらの機構で降伏するのかを個別に確認できます。

梁のねじり剛性を期待しない既定モデル化(i 端ねじれ解放。 4.1.3a)が適用されている 部材では、ツールチップに「ねじれ: i 端ピン(部材全長で Mx=0)」を併記します。 適用されない部材(柱・ブレース、および解放するとねじれ回転が拘束されない節点を 持つ梁)には表示されないため、どの梁に適用されているかを個別に確認できます。

応力図(M 図)の曲線補間

解析結果の断面力は、危険断面(評価断面)でのみ値を持ちます。既定の評価断面は 節点芯・柱フェース位置・部材中央に、指定があればハンチ端・継手位置を加えた 数点です(4.10 梁要素内部の変位・断面力の内挿)。

M 図をこの数点だけで描き、点と点を直線で結ぶと、曲げモーメントが本来もつ 曲率が失われます。たとえば等分布荷重を受ける両端固定梁では、部材中央 \( +wL^2/24 \) と端部 \( -wL^2/12 \) の間が放物線ではなく直線になります。 \( \xi=0.25 \) の値は本来 \( +wL^2/96 \)(下端引張)ですが、直線で結ぶと \( -wL^2/48 \) となり、符号まで逆になります。反曲点の位置も \( \xi=(3-\sqrt{3})/6 \approx 0.211 \) ではなく \( \xi=1/3 \) にずれます。

そこで M 図は、評価断面の値を保ったまま、区間内を 3 次エルミート補間で 曲線として描きます。

補間の根拠

断面力は材軸に沿って次の関係を満たします(断面力の符号規約は 5.2 線形静解析)。

\[ \frac{dM_z}{dx} = Q_y \]

したがって正規化座標 \( \xi = x/L \) では、各評価断面における モーメントの勾配が既知のせん断力から定まります。

\[ \frac{dM_z}{d\xi} = Q_y,L \]

区間 \( [\xi_k,\ \xi_{k+1}] \) の両端で「値 \( M_z \)」と「勾配 \( Q_y L \)」の 4 条件を与えると、3 次多項式が一意に定まります(3 次エルミート補間)。 \( t=(\xi-\xi_k)/h \)、\( h=\xi_{k+1}-\xi_k \) として

\[ M(t) = H_{00}M_k + H_{10},h,S_k + H_{01}M_{k+1} + H_{11},h,S_{k+1} \]

\[ H_{00}=2t^3-3t^2+1,\quad H_{10}=t^3-2t^2+t,\quad H_{01}=-2t^3+3t^2,\quad H_{11}=t^3-t^2 \]

ここで \( S \) は \( dM_z/d\xi \) です。

弱軸曲げ \( M_y \) も同じ補間を行います。符号規約が \( Q_z = -dM_y/dx \) と反転して いるため、図として張り出す値(\( M_y \) の符号を反転した値。 応力図の表示と変形の重ね表示)に対して \( d(-M_y)/d\xi = Q_z L \) が成り立ち、勾配には \( Q_z \) を用います。 \( N \)・\( Q_y \)・\( Q_z \)・\( M_x \) は評価断面を直線で結べば厳密なので 補間しません。

この補間は、区間内で \( M \) が 3 次以下の多項式になる場合に厳密解に一致します。

部材中間荷重\( Q \) の次数\( M \) の次数補間の結果
なし0(一定)1(直線)厳密(直線のまま)
等分布12(放物線)厳密
等変分布(三角形・台形の傾斜部)23厳密

評価断面(危険断面)の値は補間後も変わりません。したがって図は必ず 断面検定に用いた値を通ります。

中間集中荷重が評価断面上にある場合

小梁反力のように部材中央へ集中荷重が載ると、その位置で \( Q \) は不連続に 飛び、\( M \) は折れ線になります。この断面のせん断力は左側極限として 評価されるため、右側区間の左端勾配としては誤った値になります。これをそのまま 用いると、本来は直線であるべき区間に架空のふくらみが現れます。

そこで各区間について、区間内が 2 次(=等分布相当)であると仮定したときの 左端勾配

\[ S_k^{*} = 2,\frac{M_{k+1}-M_k}{h} - S_{k+1} \]

を求め、評価断面のせん断力から得た左端勾配と符号が食い違う場合は \( S_k^{*} \) を採用します。このとき補間は 2 次へ縮退し、中央集中荷重のように \( M \) が折れ線となる区間で厳密解に一致します。区間の右端勾配は常に 区間内側からの極限であるため、この補正は必要ありません。

適用範囲

  • 対象は M 図のみです。N 図は部材中間の軸荷重がなければ一定、Q 図は 等分布荷重下で 1 次となり、いずれも評価断面を直線で結べば厳密なため、 直線で描きます。
  • 対象要素は曲げ内力場をもつ線材要素(梁・柱として扱う梁要素、 ファイバー梁要素、マルチスプリング梁要素)です。軸材(ブレース)・面要素・ ばね要素は曲げ分布をもたないため補間しません。
  • 本処理は画面表示のための処理であり、解析結果(節点変位・断面力) そのものには影響しません。断面検定は評価断面の値のみを用います。

ヒンジ図の表示

表示モード「ヒンジ」では、増分解析(プッシュオーバー解析)で発生したヒンジの 位置を 3D ビュー上にマーカーで可視化します。どの部材のどちら側の材端から 塑性化が進んだか、どの端が終局に達したかを一目で確認できます。

増分解析の実行が前提です。増分解析が未実行の場合は、ヒンジ図の代わりに 解析の実行を促す案内のみを表示します。

ヒンジの集約

増分解析の結果は、閾値(ひび割れ・降伏・終局)を超過している間、同じ 部材・材端のヒンジ発生を毎ステップ記録します (5.7.1 曲げヒンジ判定(Mc・My・終局))。 ヒンジ図では、部材・材端(i端/j端)ごとにこれらを 1 件へまとめたうえで マーカーを表示します。集約後の1件は次を保持します。

  • 最高レベル: 記録されたレベルのうち最も進行したもの (ひび割れ < 降伏 < 終局)。
  • 最大塑性率: 記録された中での最大の塑性率 \( \mu \)。
  • 初出ステップ: そのヒンジが最初に記録された増分ステップ。

マーカーの表示位置と色

マーカーは各部材端(i端=elem.nodes[0] 側、j端=elem.nodes[1] 側)の近く に描きます。節点の直上に描くと同一節点に集まる複数部材のヒンジが重なって 判別できなくなるため、材軸に沿って材端から中点側へ 10% だけ寄せた位置に 塗りつぶし円で表示します。

色はヒンジレベルを表します。

  • ひび割れ: アンバー系の色の塗りつぶし円。
  • 降伏: 赤系の色の塗りつぶし円。
  • 終局: 紫系の色の塗りつぶし円。目立たせるため外周にリングを重ねて描く。

凡例とホバー詳細

ビュー左上に、レベルごとの色見本と件数(集約後の件数。ステップ間の重複は 含まない)を表示します。

部材の近く(8 px の許容距離)へポインタを重ねると、その部材にヒンジが 記録されていれば、i端・j端それぞれについて「i端: 降伏 (μ=2.31, step 12)」 のように、レベル・最大塑性率・初出ステップをツールチップで表示します。 ヒンジが記録されていない部材にはツールチップを表示しません。

ヒンジ詳細ウィンドウ

ヒンジが記録された部材をクリックすると、「ヒンジ詳細: 部材 #N」ウィンドウ (開閉・リサイズ可能)が開き、その部材のヒンジ状態を詳しく確認できます。 ウィンドウは他の表示モードへ切り替えても、閉じるまで表示されたままです。

ウィンドウの先頭には、上記と同じ i端・j端の集約ヒンジ情報(レベル・最大 塑性率・初出ステップ)を表示し、続けて採用する曲げ面(強軸 Mz/弱軸 My。 最終ステップで i端・j端のうち絶対値が大きい成分の軸を採用)を示します。 その後、部材の性質に応じて次の図を表示します。

M-θ カーブ(荷重変形カーブ)

ヒンジが記録された部材であれば常に表示します。横軸は材端回転角 \( |\theta| \)(弦からの回転、絶対値)、縦軸はその材端の曲げモーメント \( |M| \)(採用した曲げ面の成分、絶対値)で、増分解析の全ステップに渡る i端・j端それぞれの応答を折れ線で示します(ヒンジが記録されている端のみ)。 最終ステップの点をマーカーで強調します。

N-M 相関図

軸力を受ける部材(鉛直材=柱、またはファイバー要素・マルチスプリング要素・ ブレースなどファイバー系のモデル化をされた部材)にのみ表示します。上段に 3D ワイヤーフレーム、下段に採用曲げ面での 2D スライスを続けて表示します。

  • 3D ワイヤーフレーム: 断面のファイバー分割から算定した N-My-Mz 相関曲面 (軸力と 2 軸の曲げモーメントがなす 3 次元の耐力曲面)を、経線方向・周方向の 格子線で表示します。軸は My・Mz・N(引張を正)。応答経路(各ステップで i端・j端のうち合成曲げ \( \sqrt{M_y^2+M_z^2} \) が大きい方の端の \( (M_y, M_z, N) \))を、無載荷状態(原点)を始点として折れ線で重ねます。 マウス操作は左ドラッグで回転、右ドラッグで平行移動、スクロール(ピンチ)で ズームです。
  • 2D スライス: 採用曲げ面(強軸 Mz/弱軸 My)での N-M 相関曲線(正曲げ側・ 負曲げ側の 2 本)に、増分解析の各ステップの応答(採用面の端モーメントと 軸力)を経路として重ねて表示します。軸は横軸に曲げモーメント M [kN・m]、 縦軸に軸力 N [kN](圧縮を正)を取り、いわゆる P-M 相関図と同じ向きです。 応答経路は無載荷状態(原点)を始点とし、最終点をマーカーで強調します。

断面形状が未定義の部材では表示できない旨を案内します。

ファイバー断面の塑性化マップ

ファイバー定式化の部材(ファイバー梁・マルチスプリング梁)で、ヒンジが記録された ものにのみ表示します。マルチスプリング梁は端部塑性化域を粗く分割したファイバー梁と 同じ定式化のため、ファイバー梁と同様に断面内の状態を表示できます。ヒンジのある端 (i端・j端)ごとに、終局(最終確定ステップ)時点のその端に最も近いガウス点 断面を選び、断面内のファイバーを位置 (y, z) の散布図として表示します。両端に ヒンジがあれば 2 断面を横に並べます。

  • 色は材料区分を表します: コンクリート(母材格子)はグレー系、主筋 (鉄筋)は赤系、鋼材(形鋼・鋼管・内蔵鉄骨)は青系です。プロット下に色見本 の凡例を表示します。
  • 降伏状態は明度と形状で重ねて表します: 降伏比 \( |\varepsilon|/\varepsilon_{\text{ref}} \) が 1 未満のファイバーは 材料色を淡くした色(未降伏)、1 以上のファイバーは材料色そのまま+外周 リングで強調し(降伏)、さらに引張ひずみは丸、圧縮ひずみはひし形で区別 します。
  • 主筋・鋼材(点ファイバー)は、母材格子のファイバーよりやや大きい円・ ひし形で描き、視認性を高めています。
  • 見出しに断面位置(材軸位置 \( \xi \)。−1 側が i端、+1 側が j端)と、 「降伏ファイバー n/全 m」を表示します。
  • 断面の外形線を、ファイバー点より目立たない中間色の細線でファイバーの背後 に重ねて表示します。角形鋼管・鋼管・CFT など中空断面は、外側輪郭に加えて 内側輪郭(中空部の境界)も描くため、ファイバー配置が断面形状(中空か中実 か、外形寸法)と対応しているかを目視で確認できます。

データがない場合

増分解析結果に部材応答履歴(M-θ・N-M 応答経路のもとになるデータ)がない 場合(結果ファイルが本機能の追加前に生成されたものである場合など)は、 再解析すると詳細を表示できる旨を案内します。

時刻歴アニメーションの表示

表示モード「時刻歴」では、時刻歴応答解析の詳細記録(間引きされたフレーム ごとの全節点変位・部材内力)を 3D ビュー上でアニメーション再生します。 地震応答の時々刻々の変形の様子を確認できます。

時刻歴応答解析の実行が前提です。詳細記録がない場合(結果ファイルが本機能の 追加前に生成されたものである場合や、保存時に詳細記録を除外した場合など)は、 表示モードの選択肢自体に「時刻歴」が現れません。

詳細記録はプロジェクトファイル(.scz)に保存され、読み込み直後から アニメーション・部材履歴を確認できます。詳細記録はデータ量が大きい (実建物規模の解析では数百 MB 級になり得る)ため、解析結果の保存サイズが 512 MB を超える場合は、保存時に「時刻歴の詳細記録を保存に含めますか?」の 確認が表示されます。除外して保存した場合も、層応答の集計値・ピーク値などは 別に保存され、詳細記録は時刻歴応答解析の再実行で復元できます。

フレームと変形表示

詳細記録は、解析の全ステップのうち一定間隔(record_every ステップごと) で間引いた時刻のみを保持します。ビューには次のフレーム制御を表示します。

  • フレームスライダー: 0 から最終フレームまでの範囲で現在フレームを選択 します。ラベルには現在時刻 \( t \) [s] と総時間を表示します。
  • 再生/一時停止ボタン(▶/⏸): 再生中は実時間の経過に再生速度を掛けた だけフレーム時刻を進め、最終フレームに達すると先頭へ周回します。
  • 再生速度: ×0.25/×0.5/×1/×2 から選択します。

現在フレームの全節点変位は、変形図(表示モード「変形」)と同じ描画経路で 表示します。変形倍率スライダー・内部たわみ(梁の Hermite 曲線)表示の 切り替えも変形図と共通です。ただし自動倍率は、現在フレームではなく 解析全体を通じた最大変位(全ステップの絶対値最大、間引きの影響を受け ません)から 1 回だけ算定した固定値を使います。フレームを切り替えても 倍率自体は変わらないため、振幅の小さい時刻でも表示が消えたり、逆に 過大な倍率になったりしません。

モデルを編集すると、再解析するまで時刻歴モードの変形アニメーション・ 部材クリックは無効化され、「モデルが編集されています。解析を再実行して ください」と案内します(編集前後で部材の並びが変わり、別の部材の記録を 誤って表示する事態を防ぐためです)。開いている部材の履歴・検定ウィンドウ がある場合も同様に、プロット・検定を隠して同じ案内を表示します。

部材の履歴・検定ウィンドウ

時刻歴モードで部材をクリックすると、「時刻歴詳細: 部材 #N」ウィンドウ (開閉・リサイズ可能)が開きます。ウィンドウは他の表示モードへ切り替えても、 閉じるまで表示されたままです。

荷重変形関係の履歴ループ

部材の種別に応じて、次のいずれかのループ図(横軸・縦軸とも解析全フレームの 値を結んだ折れ線)を表示します。現在フレームの位置はループ上にマーカーで 示し、フレームスライダーと連動します。

  • 軸力系(ブレース・ダンパー・免震・節点ばね要素): 軸力 N [kN](引張を 正)と軸方向相対変位 \( \delta \) [mm] の関係。\( \delta \) は部材両端 の変位差(並進成分)を、未変形時の材軸方向(i端→j端の単位ベクトル)へ 射影した値です。

    免震支承・節点ばねのように部材長がほぼ 0 の要素は材軸方向が定まらない ため、代わりに要素ローカル軸の成分(軸/せん断y/せん断z)を切り替えて 表示します。免震支承は水平方向のせん断力とせん断変位の関係(局所 y 軸) を既定表示にします(免震の応答確認では水平ループが主な関心事のため)。 局所軸は免震支承が軸=鉛直・せん断=水平、それ以外(節点ばね等)は 全体座標系と同じ向きです。

  • 梁・柱: 材端モーメント M [kN・m] と材端回転角 \( \theta \) [rad] (弦からのたわみ角)の関係。強軸(Mz・θz)/弱軸(My・θy)を切り替え られ、i端・j端をそれぞれ色分けして重ねて表示します。

    \( \theta \) は、部材端の節点回転から「弦回転」(両端の並進変位差を 部材長で除した値)を差し引いた回転角です。弦回転は部材全体の剛体的な 傾き(層間変形相当)を表すため、これを差し引くことで材端そのものの 曲げ変形(たわみ角)だけを取り出します。

要素の内力が記録されていない場合(免震・ダンパー要素など、内力分布を 持たない要素定式化の場合)は、ループの代わりに記録がない旨を案内します。

最大応力に対する検定

全ステップを通じた部材内力の包絡値(各成分の絶対値最大値。符号は極値の 符号を保持)を用いて、短期の断面検定を行います。断面・材料の種別に応じて 鉄筋コンクリート・鋼・SRC・CFT のいずれかの検定式を適用し、検定位置ごとに 検定比・判定(OK/NG)・検定式別の内訳を表示します。判定色は検定比図 (検定比の表示)と同じ配色(緑=良好/黄=注意/ 赤=超過)です。

次の部材・要素は検定対象外とし、その旨を案内します。

  • 断面または材料が未設定の部材(免震・ダンパー・節点ばね要素など、 断面検定という概念自体が当てはまらない要素を含む)。
  • 壁・シェル・パネルゾーン要素(断面検定の部材種別(梁・柱・ブレース)に 当てはまらない要素)。

この検定は座屈長さを部材長(座屈長さ係数 K=1 相当)として評価する簡易的な ものです。鋼継手の欠損・一本部材指定による応力合成・地震時短期の設計用 せん断力 QD の長期内力割増などは考慮しません。また各成分(軸力・せん断力・ 曲げモーメント)の最大値はそれぞれ全ステップを通じた絶対値最大(包絡値) であり、同一時刻に生じたとは限りません。実際には同時に生じない組合せを 検定している可能性があるため、安全側ではありますが過大評価になり得ます。

線形の時刻歴応答解析では、地震動による応答成分のみを検定しており、長期 荷重(固定・積載等)との重ね合わせは含みません。非線形の時刻歴応答解析 では、長期荷重を初期状態として考慮する設定にしていた場合はその旨、 していない場合は水平力のみの結果である旨を、検定結果の上に注記します。

層応答分布グラフの表示

結果タブ「時刻歴」には、時刻歴波形(節点変位・ベースシア・層間変形角の時間 履歴)に加え、「層応答分布」の表示モードがあります。縦軸に階、横軸に応答量を 取り、地震応答が高さ方向にどう分布したかを一目で確認できます。

時刻歴応答解析の詳細記録(層応答の集計。 5.5.4 層応答の集計)の実行が 前提です。詳細記録がない場合(結果ファイルが本機能の追加前に生成されたものである 場合など)は、再実行を促す案内のみを表示します。

方向・表示項目の選択

グラフ上部で次を選択します。

  • 方向: X/Y。地震動の加振方向に関わらず、記録済みの X・Y いずれの方向の 層応答も選べます(加振していない方向の連成応答も確認できます)。
  • 表示項目:
    • 層せん断力 [kN](層量)
    • 層せん断力係数 Ci [-](層量)
    • 階加速度 [gal](階量、絶対加速度)
    • 階速度 [m/s](階量、相対速度)
    • 階変位 [mm](階量、相対変位)

層せん断力・階加速度・階速度・階変位は、解析の全ステップを通じた絶対値の 最大値をグラフに表示します。層せん断力係数 Ci は元々全ステップを通じた 定義(最大層せん断力/地震用重量)のため、そのまま表示します。

層量と階量の描き方の違い

応答量には、層(階と階の間の区間)に属する量と、階(床)に属する量の 2 種類が あり、描き方を使い分けます。

  • 層量(層せん断力・層せん断力係数): 層 \( i \) の値を、その層の下端から 上端までの区間で一定の水平線(階段状)として描きます。層区分そのものが 持つ量であることを表しています。
  • 階量(階加速度・階速度・階変位): 階 \( i \) の値を、その階の床の高さに 点として置き、隣接する点を折れ線で結びます。

縦軸の目盛りには、地盤面(GL)と各階の名称(model.stories の階名)を ラベルとして表示します。

ホバー表示

グラフ上にポインタを重ねると、最も近い層(または階)の名称と値を、選択中の 表示項目に応じた単位で下に表示します。

レポートとの関係

層応答分布グラフと同じ層応答最大値(層せん断力・層せん断力係数・階加速度・ 階速度・階変位の全ステップ絶対値最大)は、レポートタブの CSV 出力にも含まれ、 同一の集計ロジックを共有します。

構面の表示(軸組図・伏図)

通り芯 1 本、または階 1 つに属する部材だけを取り出し、その面へ正対した 2D で表示します。 3D ビューアのツールバーにある「表示範囲」で全体(3D)と切り替えます。表示モード (形状・変形・モード・応力図・CMQ 図・検定比・ヒンジ・モデル化・時刻歴)はそのまま 使えるため、3D で確認できる内容はすべて構面でも確認できます

3D ビューアの投影はもともと正射影のため、構面の法線方向へ正対させた図がそのまま 軸組図・伏図になります。透視投影のような遠近の歪みは入らず、画面上の長さの比は実寸の 比と一致します。

構面に属する部材

通り(軸組図)

節点が通り上にあるかどうかを、次のいずれかで判定します。

  • 通り芯の所属節点リストに載っている
  • そのグループでの離れが、通りの離れと 1 mm 以内で一致する

そのうえで、すべての材端節点が通り上にある要素を構面の部材とします。柱・大梁・ ブレースのほか、4 節点すべてが通り上にある壁も含まれます。

判定を 2 つの和にしているのは、片方だけでは部材が落ちるためです。所属節点リストだけで 判定すると、柱間の大梁が中間節点で複数の要素に分割されている場合に、中間節点が柱の節点 ではないため大梁が丸ごと図から消えます。座標だけで判定すると、通りの位置と柱の芯が一致 しない芯ずれの柱が消えます。落ちた部材は図の上では「描かれていない」だけで気づけない ため、両方を拾います。

階(伏図)

その階に所属する節点を階上の節点とし、すべての材端節点が階上にある要素を構面の部材と します。これに加えて、上端節点がその階に属する柱を含めます。柱は上下 2 つの階レベルに またがるため、前者の規則だけでは伏図から柱が消え、梁がどこで支持されているのか読めなく なるためです。柱の所属階は「材端節点のうちもっとも高い節点の所属階」とし、階の主要構造 種別の判定(1.1 階の分布)と同じ規則を使います。

平面図では柱は視線方向に潰れて点になるため、柱の応力図・変形図は描けません。位置を示す ためだけに含めています。

見る向き

平行芯の通りは、グループの原点と方向角から面が一意に決まります。離れを測る向きが そのまま面の法線であり、厳密に鉛直な面になります。厳密であることが重要で、法線が わずかでも傾くと階の基準線が水平にならず、床レベルが揃って見えなくなります。

平行芯以外(円弧芯・放射芯・作図芯)の通りは幾何を持たないため、所属節点群にもっとも 当てはまる平面を主成分分析(全最小二乗)で求め、その法線を使います。重心まわりの 共分散行列の最小固有値の固有ベクトルを法線に採る方法です。通常の線形回帰 (\( z = ax + by + c \) の最小二乗)は 1 つの \( (x, y) \) に 1 つの \( z \) しか対応づけ られず鉛直面を表せないため使いません。構面はほぼ常に鉛直面であり、同じ平面位置に何本も 柱が立つためです。

所属節点が一直線に並ぶ場合は平面が一意に定まらないので、その直線と鉛直軸を含む平面を 採ります。直線自体が鉛直な(1 本の柱に節点が積まれただけの)場合はさらに定まらないため、 X 方向を法線とします。

法線には向きの自由度(\( \pm \))が残り、どちらから見るかで図が左右反転します。軸組図と して読めるよう、画面の右がグローバル +X(構面内になければ +Y) になる側を選びます。 結果として、X 通りの軸組図は画面右が +Y、Y 通りの軸組図は画面右が +X、伏図は画面右が +X・上が +Y になります。画面の上は、鉛直な構面では常にグローバル Z 方向です。

応力図の張り出し方向

3D では、応力の成分ごとに部材の局所座標の面へ図を張り出します(強軸曲げ \( M_z \)・ 強軸せん断 \( Q_y \)・軸力 \( N \)・ねじり \( M_x \) はせい方向、弱軸曲げ \( M_y \)・ 弱軸せん断 \( Q_z \) は幅方向)。構面を正対で見ると、面外へ張り出す成分は視線方向に潰れて 線になり、何も読めなくなります。

そこで構面の表示では、張り出し方向を材軸に直交し、かつ構面に含まれる向きへ倒します。 倒した先の向きは「構面の法線 × 材軸」で、符号は元の張り出し方向に合わせます。元の方向が 構面に垂直で符号を決められない場合は正側へ倒します。値と図形は変えず向きだけを回すため、 読み取れる数値は 3D と同じです。どの成分の図かは、成分ごとの固定色と凡例・数値ラベルで 判別します。CMQ 図も同じ規約で倒します。

材軸が構面の法線と平行な部材(構面を貫く部材。伏図の柱がこれにあたります)は、面内に 張り出し方向を採れないため 3D と同じ向きのままです。平面上では点に潰れるため図としては 現れません。

基準線と目盛り

図単体でどの通りのどの階を見ているか判別できるよう、全体表示の 1 m 方眼の代わりに通り芯と 階の基準線を描きます。方眼と基準線を同時に出すと線が二重になって読みづらいため、構面表示 では基準線だけを描きます。

  • 軸組図: 各階の床レベルに水平線を引いて左端に階名を、構面と交差する通りの位置に鉛直線を 引いて下端に通り名を置く。構面自身のグループの通りは平行で交差しないため描かない
  • 伏図: 平行芯の各通りを平面上の直線として引き、線の端に通り名を置く

基準線を引く範囲は、構面に属する部材の外接直方体に余白(対角長の 8 %、最小 500 mm)を 加えた範囲です。この範囲から外れる通り・階の基準線は描きません。

表示範囲と操作

構面表示では、回転中心と表示倍率をその構面に属する部材だけの外接直方体から決めます。 モデル全体を基準にすると、大きな建物の 1 構面が小さく画面の端へ寄ってしまうためです。 通り・階を切り替えるたびに自動でフィットし直します。

操作は左ドラッグと右ドラッグがどちらも移動(パン)、スクロールがズームです。回転させると 正対が崩れ、構面内に描く基準線も傾いてしまうため、構面表示では回転できません。同じ理由で ViewCube も表示しません。

ホバーやクリックで選べるのは、その構面に描かれている部材・節点だけです。構面の外にある 部材は、画面上ではカーソルの近くに重なって見えても選べません。見えていない部材の情報が 出ると、いま見ている構面の情報と取り違えるためです。

通りの前後送り(◀ ▶)で、X1 から順に構面を送って確認できます。送りの順序は、通りをグループ ごとに並べたあとに階を並べた順です。

所属する部材が 1 本もない通り(ST-Bridge から取り込んだ、節点を持たない通りなど)を選ぶと 図は空になります。モデルや表示の不具合と紛れないよう、その旨を画面中央に示します。

質点系の 3D 表示

質点系解析の結果を、3D ビューア上で球(質点)と線(階間ばね)として表示します。 表示は計算結果を可視化するための処理であり、解析結果そのものには影響しません。

質点系の結果があるとき、表示モードに「質点モード」(固有値のモード形状)と「質点時刻歴」(時刻歴の再生)が加わります。 設定と実行は右バー「質点系」、表とグラフは結果タブ「質点系」です。 ナビゲータの解析結果ツリーで質点系の固有値次数を選ぶと、3D ビューアが質点モードに切り替わります (ナビゲータの解析結果ツリー)。 時刻歴の表は層間・層せん断・塑性率を X / Y / 45° / 最大で出します。 定義は 5.10 質点系解析 です。

質点の位置

各階の質点は、その層の上端床レベルに置きます。 最下層のばねは建物の基部標高から第 1 質点へつなぎます。

「骨組を重ねる」(既定オン)がオンのときは、平面位置を質量重心にします(2 次元は剛床マスター、なければ原点)。 架構のどこに質点があるかを見るためです。

オフのときは、各階の平面位置の平均へ揃えて鉛直な 1 列にします。 重心のずれと変形の横ずれが重なると、どちらによる変位か分からなくなるためです。 モード形状や時刻歴の変位は、この鉛直な基準位置からの増分として載せます。

変形の載せ方

表示倍率 \( s \) は、立体の変形図と同じく、ピーク並進がモデル対角長の 10% になる自動倍率に手動係数を掛けます。 質点時刻歴では全フレームのピークから 1 回だけ定め、振幅の小さい時刻で倍率が発散しないようにします。 質点モードは正規化した形状のため、倍率の数値に物理的な意味はなく、注記は出しません。

  • 質点モード: 固有値のモード形状に \( s \) を掛けて載せる。2 次元は加振方向の成分、3 次元は \( (U_x, U_y) \) を並進に、\( \theta_z \) を球の平面内目盛りに使う。変形前の串は破線(6 pt、隙間 4 pt)と高い透過(線のアルファ 90、塗りのアルファ 55)で重ねます。基準位置からの変化を読むためです
  • 質点時刻歴: 記録した各時刻の層変位 [mm] に \( s \) を掛けて載せる。再生の速度・スライダーは立体時刻歴と同じ操作

球の画面上の半径は、最大質量の階を 7 pt とし、\( \sqrt{m / m_{\max}} \) でスケールします(下限 4 pt)。 面積が質量に比例するようにするためです。

「骨組を重ねる」(既定オン)をオフにすると、架構・節点・床は描かず、質点とばねだけを表示します。 このとき質点の基準位置は鉛直 1 列です。 質点モード・質点時刻歴では、立体の支点記号(柱脚の矢印など)は出しません。 串の表示に関係ないためです。立体の表示ではツールバーの「支点」で切り替えます。

ナビゲータの解析結果ツリー

本節では、左ドックのナビゲータから解析結果と振動荷重ケースを切り替える操作を 説明します。 葉ノードをクリックすると結果タブへ移り、選んだ内容に対応する表示が開きます。

解析結果ツリー

結果が存在する解析種別だけがノードとして現れます。 並び順は右ドックの解析パネルと同じです (静的解析 → 固有値解析 → 増分解析 → 時刻歴応答解析 → 質点系)。 いずれの結果もないときは「(未実行)」と表示されます。

解析結果
  ├── 静的解析
  │     ├── (荷重ケース名)
  │     ├── EX / EY
  │     ├── (組合せ名)
  │     └── …
  ├── 固有値解析
  │     ├── 1次 (T=0.52 s)
  │     └── …
  ├── 増分解析
  │     ├── X方向
  │     └── Y方向
  ├── 時刻歴応答解析
  │     ├── サンプル X (線形)
  │     └── …
  └── 質点系
        ├── 固有値
        │     └── 1次 (T=… s)
        └── 時刻歴
              └── サンプル X (線形・2次元)

静的解析

静的解析の結果を順に並べたあと、荷重組合せを同列の葉として続けます。 ユーザー荷重ケースはケース名のみ、地震静的は EX / EY、組合せは組合せ名のみです。 プレフィックスを付けないのは、ナビの階層ですでに「静的解析」と分かっているためです。

固有値解析(立体)

各モード次数を N次 (T=… s) 形式で子ノードに並べます。 クリックすると 3D ビューアが、その次数のモード形に切り替わります。

増分解析

結果がある方向だけを X方向 / Y方向 として並べます。 クリックすると結果タブの増分解析パネルがその方向を表示します。

時刻歴応答解析

結果がある立体の振動ケース名を、1 ケース 1 葉で並べます。 クリックすると結果タブの時刻歴グラフが、そのケースの結果に切り替わります。

質点系

2 つの子グループを持ちます。

  • 固有値: 表示中の質点系モデルの各次数。ラベルは立体固有値と同じ N次 (T=… s) 形式
  • 時刻歴: 結果がある質点系の振動ケース名

固有値の次数をクリックすると、3D ビューアが 質点モード に切り替わり、選んだ次数の モード形を球とばねで表示します。 表とグラフの「質点系」パネルではなく 3D 側を開くのは、モード形を架構と重ねて見るためです。 表示の根拠は 質点系の 3D 表示 を参照してください。

時刻歴のケースをクリックすると、結果タブの質点系パネルがそのケースの時刻歴を表示します。

振動荷重ケース

荷重ケース(静的)の直後、部材一覧の前に 振動荷重ケース セクションがあります。 静的な荷重ケースとは別系統です。 節点荷重や部材荷重を載せる入れ物ではなく、時刻歴を実行したときの波形・加振方向・ 線形/非線形(質点系では次元も)を表します。

解析を実行したときにだけ登録されます。 未実行の空ケースは作りません。 プロジェクトへ保存するときは、解析結果が最新のときだけ振動荷重ケースも残します。 モデル編集後に未再実行のまま保存して開き直すと、ケースは「(なし)」に戻ります。

振動荷重ケース
  ├── 立体時刻歴
  │     └── サンプル X (線形)
  └── 質点系
        └── サンプル X (線形・2次元)

空のときは「(なし)」と表示されます。

ケース名

立体時刻歴: {波形名} {X|Y|X+Y} ({線形|非線形})

  • 例: サンプル X (線形)elcentro Y (非線形)
  • サンプル波の波形名は サンプル です。ライブラリ波は選択中のファイル名です

質点系: {波形名} {X|Y} ({線形|非線形}・{2次元|3次元})

  • 例: サンプル X (線形・2次元)

同名のケースを再実行した場合は、同じケースとして結果だけ置き換えます。 別名(方向や波形が違う場合)は別ケースとして残ります。 静的解析・固有値・増分解析の結果は、時刻歴の再実行では消えません。

クリック時の動作

葉ノード結果タブの表示
静的ケース / 組合せ3D/応力図(空間表示)
固有値モード(立体)3D/応力図の N 次モード形
増分解析(X/Y)増分解析パネル
時刻歴応答(ケース名)時刻歴グラフ(該当ケースの結果)
質点系・固有値3D/応力図の質点モード(N 次)
質点系・時刻歴質点系パネル(時刻歴再生)

振動荷重ケース の葉をクリックすると、インスペクタに設定(波形・方向・線形/非線形、 質点系なら次元)が読み取り専用で表示されます。 結果がある場合のみ結果タブへ切り替わり、表示がそのケースの結果になります。

結果タブ上部の「表示対象」ドロップダウンも残っており、静的ケース/荷重組合せの 切り替えに使えます。

床板・壁版の表示

本節では、3D ビューアが床板と壁版をどのような書式で描くかを紹介します。

床板と壁版は入力であって解析要素そのものではないため、実部材と一目で区別できる書式で描きます。 壁版のうち条件を満たすものは壁エレメントになりますが、床板は常に荷重を配るための版です。

色が種別を、線種が解析要素かどうかを表す

書式は 2 つの軸で決まります。色は床板が暖色、壁版と壁エレメントが青で、線種は解析要素が実線、 解析要素でない入力が破線です。 つまり暖色の破線は床板、青の破線は解析要素にならない壁版、青の実線は壁エレメントを表します。

色のほうを種別に割り当てているのは、3D の斜め視点では面の向きが読み取りにくく、水平な床と 鉛直な壁を同じ色で描くと見分けが付かなくなるためです。

破線は 6 pt・隙間 4 pt、塗りは半透明(アルファ 28)で、輪郭のアルファは 220 です。 壁エレメントの塗り(アルファ 50)より薄くしてあるため、要素になる壁版とならない壁版が隣り 合って描かれても、荷重を配るだけの版が手前に出て架構を隠すことはありません。

解析要素にならない壁版もすべて描く

壁版は入力なので、解析要素になるか否かにかかわらず描きます。 壁エレメントが生成されるのは、壁領域全体を覆う 4 節点で、かつ断面が割り当たっている壁版だけ ですが(4.5 壁エレメントモデル)、 それ以外の壁版も自重を配り、多くは周辺部材へ剛性算入されるため、入力したものが画面に出ないと 確認のしようがありません。

具体的には、次の壁版が破線で描かれます。

  • 間柱で分割された壁版
  • 壁領域の境界が 5 節点以上で、壁エレメントの定式化に載らない壁版
  • 断面がまだ割り当たっていない壁版
  • 取り付く壁版(腰壁・垂れ壁・パラペット・自立壁)

断面が未割当の壁版も描くのは、壁版タブの追加フォームでも 3D ビューアの壁作成モードでも断面は 後から選ぶ導線になっており、壁版を作った直後は必ず断面が未割当だからです。 ここで描かないでいると、壁を作ったのに画面に何も現れず、作成に失敗したように見えてしまいます。

なお、取付き先が点の取り付く壁版だけは描けません。 壁の取付き先として点は使わないため、境界の多角形を組み立てられないからです (1.9 壁の断面と自重)。

取り付く壁版の立ち上がり高さが両端で符号反転している場合は、輪郭の破線だけを描いて内部を 塗りません。 境界の 4 点が自己交差する蝶ネクタイ形になり、塗りが輪郭からはみ出すためです。 この形は自重の算定でも扱えないので(1.9)、 塗られていない壁版を見つけたら立ち上がり高さの符号を確認してください。

変形図では変形後の位置へ載せる

変形図・モード形・時刻歴では、床板も壁版も変形後の節点座標から多角形を組み立てて描きます。 詳しくは床・二次部材の変形追従を参照してください。

表示の切り替え

床板・小梁・間柱・壁版の表示は、ツールバーの「床壁・二次部材」トグルでまとめて切り替えます。 主架構だけを見たいときに、荷重を配るための入力を一度に隠せるようにするためです。 トグルと連動して非表示になる解析対象外の節点については、同じく 床・二次部材の変形追従を参照してください。

構面表示中は、囲まれた壁版の境界節点がすべてその構面にあるときだけ描きます。 境界の 1 点でも構面の外にあると、その頂点だけが構面から離れた位置へ投影され、多角形が構面から 飛び出して構面図として読めなくなるためです。 取り付く壁版のほうは、取付き先の節点が構面上にあれば描きます。

モデル化図では分類ごとの色で描く

モデル化図(モデル化の表示)だけは、本節の書式ではなく解析モデル 分類ごとの色で壁版を描きます。 要素にならない壁版が周辺部材へ剛性算入されているかどうかを、その図では読み取れる必要があるためです。

計算根拠(理論・出典)

このセクションは、Squid-n が行う各計算について、どの基準や法令のどの式で算定しているかを体系的に示します。

構造計算一貫プログラムは、応力や変形、検定比、保有水平耐力といった出力を、法令や規準に定められた根拠に基づいて算定したものだと説明できなければなりません。 このセクションは「なぜその値になるのか」、すなわち法令、規準、力学の根拠を扱います。 開発者向けの設計仕様(specs)と検証記録(V&V)はリポジトリにあります。

このセクションの読み方

各計算項目は、原則として次の順で記します。

まず導入文で、何を算定するか、そしてその根拠となる法令(建築基準法施行令)の条番号、告示番号、学会規準名、文献のページを述べます。 続いて 算定式 として、Squid-n が実装している式そのものを、定数、分岐条件、クランプ範囲まで含めて示します。 最後に 実装 で、どのクレートのどの関数が算定するかを crate::path::func の形で示し、読者がコードと照合できるようにします。

数式は原則として、実装コードに現れる記号や係数の形で記すとともに、実装への逐語的な定数の対応は、技術リードのサインオフ用チェックリストである原典照合リストと相互に参照します。

目次

#ドキュメント主な内容主な根拠
1荷重・外力固定・積載・積雪・地震力(Z・Rt・Ai・C0・T)、荷重組合せ令 82〜88 条、告 1793
2材料構成則・材料強度一軸履歴則、コンクリート/鋼の応力ひずみ、F値、許容応力度の材料基礎令 90〜91 条、令 96・98 条、告示
3断面性能断面諸量(A・I・Z・Zp)、せん断形状係数、ヤング係数、SRC/CFT 等価剛性、ファイバー断面RC 規準、各規準
4要素の定式化・剛性ティモシェンコ梁、剛域、CMQ、MITC4 シェル、壁エレメント、パネルゾーン、ばね力学(マトリクス法・FEM)
5構造解析線形静解析、固有値、幾何剛性、時刻歴(Newmark-β)、減衰、非線形解法、増分解析(プッシュオーバー)力学(数値解析法)
6一次設計(許容応力度計算)RC・S・SRC の断面検定、接合部、付着・定着、座屈長さ令 82 条、RC 規準、鋼構造規準
7二次設計(保有水平耐力計算)保有水平耐力 Qu、必要保有 Qun、Ds、部材ランク、幅厚比、剛性率 Fs、偏心率 Fe、層間変形角令 82 条の 2〜6、告 1792
8部材終局耐力RC/S/SRC/CFT の Mu・Qmu・Qsu(荒川式・塑性理論式)、耐震壁非線形、接合部終局靭性保証型指針、終局強度型指針、技術基準解説書
9免震・制振免震アイソレータ、摩擦ばね、オイル/履歴ダンパー、座屈拘束ブレース各指針
10数量積算コンクリート体積・型枠面積・鉄筋/鉄骨重量・鉄筋継手の部位別概算集計概算数量の慣用手法、JIS G 3112

法的根拠の全体像

日本の建築構造計算(許容応力度等計算と保有水平耐力計算のルート)は次の階層で規定されるため、Squid-n はこの体系に沿って計算を構成しています。

建築基準法 20条(構造耐力)
   └ 建築基準法施行令 第3章(構造強度)
       ├ 令82条         … 許容応力度等計算(応力度計算・層間変形角)
       ├ 令82条の2      … 層間変形角(1/200、緩和 1/120)
       ├ 令82条の3      … 保有水平耐力(Qu ≧ Qun = Ds·Fes·Qud)
       ├ 令82条の4      … 屋根ふき材等
       ├ 令82条の6      … 剛性率・偏心率(Fs・Fe)
       ├ 令85〜86条      … 積載荷重・積雪荷重
       ├ 令88条         … 地震力(C0・Ci・Z・Rt・Ai)
       ├ 令89〜94条      … 材料の許容応力度・材料強度(鋼・コンクリート・鉄筋等)
       └ 令96・98条      … 溶接・材料強度
   └ 告示
       ├ 昭55建告1793号  … Z(地域係数)・Rt(振動特性係数)・Ai(高さ方向分布)
       ├ 昭55建告1792号  … Ds(構造特性係数)・Fes(形状係数 Fs・Fe)
       ├ 平12建告1455号  … 積雪(区域・単位荷重・多雪区域)
       └ 平12建告1458号  … 保有水平耐力に関する基準 等

法令が直接には数値を与えない部材耐力式などは、次の学会規準や指針を根拠とします。

RC 規準:日本建築学会『鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説』。

鋼構造規準:日本建築学会『鋼構造設計規準』および『鋼構造許容応力度設計規準』。

塑性設計指針:日本建築学会『鋼構造塑性設計指針』。

靭性保証型指針:日本建築学会『鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針・同解説』。

終局強度型指針:日本建築学会『鉄筋コンクリート造建物の終局強度型耐震設計指針・同解説』。

技術基準解説書:『建築物の構造関係技術基準解説書』(国土交通省住宅局建築指導課ほか監修)。

SRC 規準:日本建築学会『鉄骨鉄筋コンクリート構造計算規準』。

CFT 指針:『コンクリート充填鋼管(CFT)構造設計・施工指針』。

このほか、規準・指針が式を直接与えない実務的取扱い(床荷重の分配、壁エレメント置換、剛床への荷重按分など)は「実務慣用」と明記し、市販の一貫構造計算プログラムとの突合による検証記録をV&Vに置きます。 製品固有の係数(免震・制振部材、高強度せん断補強筋等)は各製品の技術資料・大臣認定値(Category B)に依拠します。

出典の分類(Category A / B)

本ソフトが用いる数値や式を、原典照合リストの方針に従って次のように区分します。

Category A(法令・告示の公開値):誰でも原典(法令や告示)で照合できる値を指すため、このセクションはこれらを条番号や式番号まで明示します。

Category B(学会規準・私的規準の係数):学会規準や指針に基づく部材耐力式の係数などを指すため、出典の文献名とページを併記し、利用組織がライセンスや実測で確定すべき旨を明記します。

力学の閉形式:ティモシェンコ梁剛性、CMQ、Newmark 更新式のような教科書的な力学式を指すため、原典照合ではなく、理論解と一致するかどうかの数値 DoD で自己検証します(V&V)。

単位系・記号の凡例

内部計算は原則として SI 単位系(N, mm, N/mm²=MPa)で行います。 荒川式のように工学単位系(kgf/cm²)で導出された実験式は、単位換算(1 kgf/cm² = 0.0980665 N/mm²、1 kgf = 9.80665 N)を施してから評価します。

画面での表示単位は、量ごとに実務の慣例へ合わせて換算します(内部の値そのものは常に N-mm 系です)。

内部表示
力(軸力・せん断力・重量)NkN
モーメントN·mmkN·m
単位幅あたりモーメントN·mm/mmkN·m/m
階高・建物高さ・スパンmmm
断面寸法・鉄筋径・変位mmmm
応力度・材料強度N/mm²N/mm²
面荷重(床・雑壁)N/mm²kN/m²
断面積 A・せん断有効断面積 Asmm²cm²
断面二次モーメント I・ねじり定数 Jmm⁴cm⁴
断面係数 Z(弾性・塑性)mm³cm³
断面二次半径 immcm
バネ定数・線剛性N/mmkN/mm
粘性係数 C0(マクスウェル)N·(s/mm)^αkN·(s/mm)^α

断面性能を cm 系で示すのは、JIS 形鋼表の慣例に合わせるためです。 同じ量は、どの画面でも同じ単位で表示します。 該当する箇所は各ページで明記します。

主な記号は次のとおりです。

記号意味記号意味
F鋼材の基準強度(F 値)Fcコンクリート設計基準強度
σy / σwy主筋/せん断補強筋の降伏強度pt / pw引張鉄筋比/せん断補強筋比
E / Gヤング係数/せん断弾性係数A / I / Z / Zp断面積/断面二次モーメント/断面係数/塑性断面係数
M / Q / N曲げ/せん断力/軸力Mu / Qmu / Qsu終局曲げ耐力/曲げ終局時せん断力/終局せん断耐力
Cii 層の地震層せん断力係数Qud地震時の設計用層せん断力
Ds構造特性係数Fes形状係数(Fs·Fe)

このドキュメントは実装が依拠する根拠を説明するものであり、個々の建築物の設計における式の適用可否(適用範囲や前提条件)の判断は、設計者(構造設計一級建築士等)の責任に属します。

1. 荷重・外力

このソフトは、固定荷重、積載荷重、積雪荷重、地震力を算定するもので、地震力は建築基準法施行令 88 条および昭和 55 年建設省告示第 1793 号を根拠とします。風圧力は算定しません。風荷重を考慮する場合は、荷重ケースを種別「風荷重」で作成し、荷重を直接入力します。

各項目は「導入文(何を・どの基準で)、算定式、実装」の順で記します。(凡例

この章の内容

1.1 地震力

1.1.1 地震層せん断力係数 Ci と層せん断力 Qi

地震層せん断力係数 Ci と層せん断力 Qi は、建築基準法施行令 88 条に基づいて算定します。

\[ C_i = Z \cdot R_t \cdot A_i \cdot C_0 \]

\[ Q_i = C_i \cdot W_i \]

ここで Wi は当該層が支える部分の固定荷重と積載荷重の合計、すなわち当該層以上の累積重量を表します。

算定式

当該層以上の累積重量比:

\[ \alpha_i = W_i / W_{\text{total}} \]

\[ A_i = 1 + \left( \frac{1}{\sqrt{\alpha_i}} - \alpha_i \right) \cdot \frac{2T}{1 + 3T} \]

\[ C_i = Z \cdot R_t \cdot A_i \cdot C_0 \]

\[ Q_i = C_i \cdot \alpha_i \cdot W_{\text{total}} = C_i \cdot W_i \]

各層水平外力(最上層は \( P_i = Q_i \)):

\[ P_i = Q_i - Q_{i+1} \]

実装squid_n_load::ai::ai_distributioncrates/squid-n-load/src/ai.rs)が算定し、層せん断力は \( Q_i = C_i \cdot W_i \)(累積重量)で求めます。 pi_from_qi が Qi の差分から Pi を求め、数値誤差による微小負値(\( < -10^{-9} \cdot Q_1 \))を検出したうえで max(0) にクランプします。

Pi の載荷先:各層の水平外力 \( P_i \) は、その階の剛床(ダイアフラム)の代表節点へ載せます。 載荷先は階の剛床の数で決まります。

階の剛床\( P_i \) の載荷先
1 つその剛床の代表節点へ全量
複数(段差床など)剛床ごとの地震用重量の比で按分。重量が未算定の剛床は 0 とし、合計が 0 なら等分割
なし階に属する節点へ質点質量の比で分配。質量が未設定または合計 0 なら等分割

剛床のない階でも層せん断力の総量 \( P_i \) は保たれます(階と剛床は別のものであり、 剛床を持たない階にも法規上の層としての水平力が生じるため)。ただし載荷位置は床面の 代表点ではなく個々の節点になります。

副剛床の層せん断力係数 \( C_i \) を直接入力した剛床は、主系統の Ai 分布から除外し、 その剛床の重量に \( C_i \) を乗じた水平力を等価震度として別途作用させます。主系統の 地震用重量は、階の地震用重量から副剛床の重量を控除した値(負値は 0 に頭打ち)とします。

1.1.2 振動特性係数 Rt

振動特性係数 Rt は、昭和 55 年建設省告示第 1793 号 第 2 に基づき、地盤種別ごとの卓越周期 Tc によって 3 つに場合分けして算定します。

算定式

\[ R_t = \begin{cases} 1.0 & (T < T_c) \\ 1 - 0.2 (T/T_c - 1)^2 & (T_c \le T < 2T_c) \\ 1.6 T_c/T & (2T_c \le T) \end{cases} \]

実装squid_n_load::ai::rt(t, tc)ai.rs:25)が算定し、分岐しきい値は tc2·tc、係数は 0.21.6 です。

1.1.3 地盤種別と卓越周期 Tc

卓越周期 Tc は、昭和 55 年建設省告示第 1793 号 第 2 に基づき、第 1 種、第 2 種、第 3 種の地盤種別ごとに定めます。

算定式:第 1 種 \( T_c = 0.4\ \text{s} \)、第 2 種 0.6 s、第 3 種 0.8 s

実装squid_n_load::ai::tc_of(soil)ai.rs:35)が算定し、地盤種別は SoilClass { I, II, III } で表します。

1.1.4 高さ方向分布係数 Ai

高さ方向分布係数 Ai は、昭和 55 年建設省告示第 1793 号に基づいて算定します。

算定式

\[ A_i = 1 + \left( \frac{1}{\sqrt{\alpha_i}} - \alpha_i \right) \cdot \frac{2T}{1+3T} \]

実装ai_distributionai.rs:80)が、実装上は t_factor = 2T/(1+3T) の置き換えを用いて算定します。

重量比 αi が 0 の階の扱い:\( \alpha_i = 0 \) は「その階から上に地震用重量がない」 状態で、利用者が定義しただけでまだ部材を持たない最上階などで生じます。このとき算定式の \( 1/\sqrt{\alpha_i} \) が発散して \( A_i \) を定めようがないため、その階の \( A_i \) は 0 として扱います。支える重量が 0 である以上、層せん断力 \( Q_i = C_i \cdot \alpha_i \cdot \Sigma W \) も 0 になるのが正しく、下階の \( Q_i \) はこの階がない場合と同じ値になります。地震用重量が全階 0 のモデルでも同様に \( \alpha_i \) を 0 とし、層せん断力は全階 0 になります(この入力不備は解析前チェックが 別途エラーとして報告します)。

1.1.5 地域係数 Z

地域係数 Z は、昭和 55 年建設省告示第 1793 号 別表第 2 の地方区分ごとの Z 値に基づいて与えるもので、取り得る値は 1.0、0.9、0.8、0.7 です。

算定式:地方区分ごとに定まる定数であり、式ではなく告示別表からの読み取りによります。

入力:右パネル「① 準備計算」の「地震力の条件」で、建設地の Z を直接入力します(既定 1.0)。

1.1.6 標準せん断力係数 C0

標準せん断力係数 C0 は、令 88 条に基づき、一次設計では \( C_0 \ge 0.2 \)、保有水平耐力計算(二次設計)では \( C_0 = 1.0 \) とします。

実装:C0 は ai_distributionbuild_seismic_load_case の引数として上位から与えられます。

1.1.7 一次固有周期の略算 T

一次固有周期 T は、令 88 条および昭和 55 年建設省告示第 1793 号に基づき \( T = h(0.02 + 0.01\alpha) \) で略算します。 α は鉄骨造部分の高さ比であり、RC 造 0.02、S 造 0.03 に相当します。

算定式

\[ T = h \cdot (0.02 + 0.01 \cdot \alpha) \]

鉄骨造比(0〜1 にクランプ):

\[ \alpha = \frac{\sum(\text{S造階の階高})}{\sum(\text{全階高})} \]

階が S 造かどうかは、その階に属する柱・梁の構造種別を集計して決めます (2.5 構造種別の判定準備計算「階の分布」を参照)。

実装squid_n_load::ai::approx_t(height_m, steel_ratio)crates/squid-n-load/src/ai.rs)が算定し、鉄骨造比は squid_n_solver::statics::analysis::steel_height_ratiocrates/squid-n-solver/src/statics/analysis/seismic.rs)が求めます。

T 算定法の選択(略算/精算)

T の算定法は右パネル「① 準備計算」の「地震力の条件」で選択できます。既定は上式による略算で、固有値解析を必要とせず即座に算定できます。精算AiMode::SemiPrecise)を選択した場合は、明示的に実行した固有値解析(5.3 固有値解析)の 1 次モードの固有周期を用います(フォールバックは 0.3 s)。固有周期は加力方向(X/Y)によらないため、EX・EY 両方向の地震荷重に同じ T を用います。精算を選択して固有値解析が未実行の場合、地震荷重ケース(EX/EY)は更新されず、固有値解析の実行を促す案内が画面に表示されます。

1.1.8 塔屋(PH)階・地下階を含む地震層せん断力分布

塔屋階と地下階を含む地震層せん断力分布を算定するにあたり、地下階の地震力は建築基準法施行令 88 条 4 項(地下部分の水平震度 \( k \ge 0.1(1 - H/40)Z \))、塔屋(PH)階は技術基準解説書の局部震度法(指定震度による割増し)に基づく実務的取扱いとします。

算定式

一般階: αi の算定に PH 重量を含め地下重量は含めず、通常の Ai 分布式によります。

\[ Q_i = Z \cdot R_t \cdot A_i \cdot C_0 \cdot W_i \]

PH(塔屋)階(k は 0.5〜1.0 の指定震度、その階以上の PH 累積重量):

\[ Q_i = k \cdot \sum W_j \]

地下階(Hi は地盤面からの深さ[m]):

\[ Q_i = Q_{i+1} + K_i \cdot W_i \]

\[ K_i = 0.1 \cdot (1 - \min(H_i, 20)/40) \cdot Z \]

実装squid_n_load::ai::seismic_shear_distributionai.rs:140)が算定し、全階が一般階のときは ai_distribution に委譲して厳密に一致させ、地下階式の定数は 0.1、深さ上限は 2040 です。

1.2 積載荷重

積載荷重は室の用途に応じて定めます。建築基準法施行令 85 条 1 項は、① 床版又は小梁の計算用、 ② 大梁・柱又は基礎の計算用、③ 地震力の計算用の 3 種類を、用途ごとに使い分けることを求める (同一用途でも ①≧②≧③ の関係にあります)ため、本プログラムは用途プリセットを選ぶと、これら 3 種類の 値を計算目的に応じて自動的に用います。

  • 床版・小梁計算用:床スラブ・小梁の設計に用いる(3 種類のうちもっとも大きい)。
  • 大梁・柱・基礎計算用:長期の骨組解析(大梁・柱・基礎の設計)に用いる。
  • 地震力計算用:地震力(地震用重量)の算定に用いる(3 種類のうちもっとも小さい)。

1.2.1 用途別の積載荷重

用途プリセットの値は次表によるもので(単位 N/m²)、出典は建築基準法施行令 85 条 1 項・令別表第 1、 および国土交通省官庁営繕部「建築構造設計基準」令和 3 年度版です。後者は令 85 条を準用しつつ、 官庁施設に特有の室用途(書庫・実験室・電算室・機械室・体育館等)を追加しています。

室名等①床版・小梁計算用②大梁・柱・基礎計算用③地震力計算用備考
住宅の居室・寝室・病室1,8001,300600令 85 条による
事務室・会議室・食堂2,9001,800800令 85 条による
研究室2,9001,800800実況に応じて算定する(値は事務室に同じ)
教室2,3002,1001,100令 85 条による
百貨店・店舗の売場2,9002,4001,300令 85 条による
集会室・客席(固定席)2,9002,6001,600令 85 条による
集会室・客席(その他)3,5003,2002,100令 85 条による
廊下・玄関・階段(集会場・売場等に連絡)3,5003,2002,100令 85 条による
法務局登記書庫5,9004,9003,900法務省型鋼製書架 W 型 8 段 6 連を配置した場合
一般書庫・倉庫等7,8006,9004,900通常の階高の室に満載の書架を配置した場合
移動書架書庫・電算室空調機室・用具庫等11,80010,3007,400一般書庫の 1.5 倍程度
一般実験室(化学系)3,9002,4001,600
一般実験室(物理系)4,9003,9002,500
電算室4,9002,4001,300①は電算室用既製床の耐荷重、②③は令 85 条の店舗の売場を準用
機械室4,9002,4001,300①は機械の平均的な重量、②③は令 85 条の店舗の売場を準用
体育館・武道場等3,5003,2002,100振動等を考慮し令 85 条の劇場等(その他)を準用
自動車車庫・通路5,4003,9002,000令 85 条による
片持形式のバルコニー・庇等1,8001,300600令 85 条のバルコニーを準用
屋上広場(学校・百貨店の類を除く)1,8001,300600令 85 条の屋上広場を準用
屋上広場(学校・百貨店の類)2,9002,4001,300令 85 条の屋上広場を準用
屋上(通常人が使用しない場合)980600400
屋上(鉄骨造体育館・武道場等)98000短期荷重とする(作業荷重を考慮)。積雪荷重及び風荷重との組合せは行わない

用途を指定しない場合、積載荷重は 0 とします(固定荷重のみを考慮します)。表以外の用途は 「任意入力」を選び、①②③の 3 値を直接与えます。

単位換算:内部計算は N-mm-s 系(面荷重は N/mm²)で行うため、上表の N/m² を ×10⁻⁶ して N/mm² に換算して用います。

備考の扱い:屋上(鉄骨造体育館・武道場等)は、床版・小梁計算用のみ作業荷重を短期荷重として 見込み、大梁・柱・基礎計算用および地震力計算用は 0 とします。研究室・電算室・機械室の値は 特定の書架・機器の配置を前提とした標準値であり、実況に応じて設計者が別途算定して構いません。

1.2.2 柱の積載荷重低減(支持床数による低減)

柱の積載荷重は、建築基準法施行令 85 条 2 項に基づき、支える床の数に応じて柱および基礎の積載荷重を低減します。

算定式(低減率表):支持床数 1→1.0、2→0.95、3→0.90、4→0.85、5→0.80、6→0.75、7→0.70、8→0.65、9 以上→0.60。

実装squid_n_load::live_load::column_live_load_reductioncrates/squid-n-load/src/live_load.rs)が算定し、支持床数は floors_supported_by_column が求めます。 Model.load_cfg.live_load_reduction(既定 false。既定では低減しません)が有効なときのみ適用する想定です。

1.3 床荷重の分配(スラブ → 梁・柱)

床荷重の分配は、負担面積法と 45° 振り分けによる三角形・台形分布の力学に基づいて算定します(一貫構造計算の標準的な床荷重分配法)。 総和保存(\( \sum \text{梁・小梁・柱荷重} = w \times \text{面積} \))を全経路で満たします。

床領域は、水平な大梁が作る閉路ごとに 1 つです。床領域そのものは版の仕様を持たず、 名前と、床領域内の小梁・床板(スラブ)をまとめる単位です。 床板(スラブ)は、大梁または小梁で囲まれた版、または主架構に取り付く版(片持ち・バルコニー・ 出隅)ごとに 1 つで、断面(板厚・材料)・仕上げ荷重・室用途・分配方法を持ちます。 1 つの床領域は、床領域内が小梁でさらに細かい打設単位に分かれていれば複数の床板を持ちえます。 取り付く床板はどの床領域からも参照されない独立した床板です。

ST-Bridge の取り込み直後と、準備計算が荷重ケースを同期する前に、主架構から大梁の閉路を検出し、 既存の床領域を付け直します。付け直しは、床板の面積重心の XY が床領域の内部に入り、かつレベルが 一致することです。同じレベルとみなす Z の差は 1 mm 以内です。内部判定は辺上 1 mm 以内を 含めません。重心が複数の床領域に入るとき(中庭の内側閉路と、穴を無視した外側多角形など)は、 面積が小さい方へ付けます。面積が同じ場合は、検出順が先の床領域とします。旧床領域と新しい床領域の 面積の相対差が \( 10^{-3} \) 未満なら照合できたものとして数えます。中庭のように床板のない 閉路は、床板を持たない床領域として残します。既存の取り付く床板は消さず、そのまま残します。

どの床領域にも入らない床板は、水平大梁にちょうど 1 辺が全長載り、かつ自由端が 1 点または 2 点の ときに限り、取り付く床板へ変換します。辺の全長を覆う判定のずれは 10 mm 以内です。 張り出し量の正の向きは、取付き線の始点から終点を見て左側です。変換した取付き線の区間は 全長(無次元位置 \( [0, 1] \))です。荷重の出口は取付き線への分布です。 大梁に載る辺が 0 本または 2 本以上のとき、および自由端が 3 点以上のとき(出隅・L 形など)は、 囲まれた床板のまま残します。断面が割り当たった床板がどの床領域にも載らない場合は、 取り込み報告と診断に警告を出します。床板をモデルから落とすことはしません。 取付き線は、無次元位置 \( [t_i, t_j] \)(\( 0.0 \le t_i \lt t_j \le 1.0 \)、既定は全長 \( [0.0, 1.0] \))で表す区間だけを覆うことができます。腰壁の開口、パラペットの 途切れ、バルコニーが梁スパンの途中までしか出ていない、といった形を表すためです。 区間の範囲外は \( 0.0 \le t_i \lt t_j \le 1.0 \) を満たさないため、モデル検証が エラーとして止めます。

取り付く床板の荷重の出口は 2 通りから選びます。

  • 取付き線へ分布(既定): 区間の両端は取付き線上の座標であり、実節点とは限りません。 荷重は、その座標が載る大梁(複数の大梁にまたがっていれば、覆っているすべての大梁)へ、 区間の長さだけの分布荷重として幾何的に割り付けます。
  • 両端の柱へ集中(出隅、および壁を柱で受ける納まり): 総荷重は、区間の中点(無次元位置 \( t_{\text{mid}} = (t_i + t_j)/2 \))に集中したものとみなします。 単純梁の集中荷重の反力公式(始端の柱 \( R_i = W(1-t_{\text{mid}}) \)、 終端の柱 \( R_j = W \cdot t_{\text{mid}} \))で両端の柱へ按分し、 全長(\( t_{\text{mid}} = 0.5 \))なら半分ずつです。

荷重ケース書込時の解決とフォールバック

取付き線の部分区間は、載る大梁へ幾何的に割り付けます。 覆う大梁がない場合、荷重を落とさず両端節点へ単純梁反力として振り分けます(総和は保存します)。 この代替では分布が集中に化けるため、梁のモーメントを過小評価し得る危険側の近似です(位置もわずかにずれます)。 覆いが全長に届かない場合や被覆区間が重なる場合も割り付けず、同様に振り分けます。

取り付く床板への変換では、旧境界のうち取付き線の両端(大梁に載る辺の 2 点)だけを引き継ぎ、 自由端だった 1〜2 点は床板からもう参照されなくなります。付け直しのあと、この自由端だった 節点のうち、部材・床領域・床板・拘束・節点荷重・支点(固定・ばね)・質量・剛床マスターの いずれからも参照されなくなったものだけを削除します。階の節点一覧と通り芯は参照に数えません (構造計算に用いない表示専用のデータのため)。変換以外の理由で参照がなくなった既存節点 (利用者が別の理由で置いた節点など)は、この付け直しでは削除しません。

版があるとは、床板に断面が割り当たっており、かつその断面の板厚が正であることです (未割当や板厚 0 は版なしと同じです)。版がなければ床荷重の分配もスラブ検定も協力幅増大も 生じません。建物一律の剛性計算用スラブ厚(既定 0 mm)は、版がある床板の協力幅算定でその 床板の板厚が取れないときの厚さの控えであり、版なしをスラブありとはみなしません。 取り付く床板の荷重は取付き線(または点)へ渡し、片持ちの協力幅増大は見ません。

分配は、床板の境界の辺に対する三角形・台形(または一方向・負担面積)です。床領域内に複数の 床板があるときは、床板ごとに独立して分配します(境界辺は大梁または小梁のいずれか)。 小梁の辺へ渡った荷重は、後述の逐次伝達(1.4.2)で 主架構へ運びます。 小梁の所属は、中点が床領域の内部にあり(辺上 1 mm 以内は含めない)、 かつレベルが 1 mm 以内で一致することで決めます。中点が 0 領域または 2 領域以上に入る小梁は 所属を付けず、取り込み報告と診断に警告を出します。

算定式(主な経路)

  • 三角形・台形(TriTrapezoid): 45°振り分け。正方形は各辺三角形分布 \( w_0 = w \cdot L/2 \)。 矩形は短辺三角形・長辺台形。
  • 一方向(OneWay): 負担辺へ \( w_{\text{line}} = w \cdot \text{スパン}/2 \) の等分布。
  • 負担面積等分布換算(TributaryArea): 短辺 \( w \cdot \text{short}/4 \)、長辺 \( w \cdot (\text{short} \cdot \text{long}/2 - \text{short}^2/4)/\text{long} \)。
  • 多角形負担面積法: 200×200 格子で各セルを最近接辺へ帰属し辺荷重を算定(凸多角形で誤差 1% 未満)。
  • 片持ち・出隅: 片持ちは辺へ \( w \cdot \text{出し幅} \) の等分布(取付き線が部分区間のときは、その区間の長さ分だけ)、出隅は構造芯〜先端の矩形重量を節点集中荷重で柱へ。
  • 小梁の辺へ渡った荷重: 小梁は解析要素ではないため、単純梁の両端反力に変えて支持相手へ渡します(1.4.2)。

実装squid_n_load::floorfloor/mod.rs)が算定します。床領域単位の入口は distribute_region (床領域内の各床板を distribute_slab_w で分配する)、床板単体の入口は distribute_slab/distribute_slab_w で、形状と手法によって経路を分岐します。

1.4.1 固定端モーメント・せん断力(CMQ)

固定端モーメントとせん断力(CMQ)は、両端固定梁の固定端力の閉形式に基づいて算定し、 V&Vで総和保存と固定端値を検証しています。

算定式

等分布:

\[ C = \pm w \cdot L^2/12 \]

\[ Q = w \cdot L/2 \]

三角形:

\[ C = \pm 5 \cdot w_0 \cdot L^2/96 \]

\[ Q = w_0 \cdot L/4 \]

台形(閉形式評価):

\[ \mathrm{FEM} = \frac{1}{L^2} \int_0^L w(x) \cdot x \cdot (L - x)^2 \ dx \]

一般(非対称・剛域考慮。点・分布は閉形式、その他は合成シンプソン則):

\[ \mathrm{FEM}_i = \frac{1}{L^2} \int w(\xi) \xi (L - \xi)^2 \ d\xi \]

\[ \mathrm{FEM}_j = \frac{1}{L^2} \int w(\xi) \xi^2 (L - \xi) \ d\xi \]

\[ Q = R_0 \pm (\mathrm{FEM}_i - \mathrm{FEM}_j)/L \]

実装floor::{fem_uniform, fem_triangle, fem_trapezoid, cmq_flexible_span, cmq_with_rigid_zone}floor/mod.rs)が算定し、剛域考慮は 3 モード(剛域外力を CMQ 加算、柱へ伝達、無視)です。

1.4.2 二次部材の反力の逐次伝達

小梁・間柱(二次部材)は解析要素ではないため、受け持った荷重は単純梁の両端反力に変えて 支持相手へ渡し、支持相手が主架構(大梁)ならそこで終端して梁の中間集中荷重になります。 支持相手が別の二次部材のときは、その相手の集中荷重として渡し、主架構へ行き着くまで 同じ操作を繰り返します。 これを二次部材の反力の逐次伝達と呼びます。荷重を受けるのは あくまで大梁の側なので、大梁を交点で分割することはしません。

二次部材が受け持つ荷重は次の 4 つの重ね合わせです。

  1. 床領域分配が二次部材の材軸へ出した辺荷重(本ページ冒頭の三角形・台形などの分配則による)
  2. 解析要素にならない壁版から間柱へ配られた自重(1.6 自重の長期応力解析への接続。 長期の固定荷重にのみ算入し、積載荷重のケースには載せない)
  3. 二次部材自身の自重(\( \rho \cdot A \cdot g \times ) 鉄骨重量割増。長期の固定荷重にのみ算入し、 積載荷重のケースには載せない)
  4. その二次部材に架かる別の二次部材から渡された集中荷重

交点は常にピン受け・架けとして扱い、剛接十字(交点で曲げが連続する接合)は扱いません。 両端ピンであれば各段が静定に決まるため、逐次伝達は近似ではなく厳密解になります。一律に ピンとみなすことは、交点の曲げ連続による低減を無視するぶん架け側のモーメントとたわみを 過大に見ることになるので、安全側の扱いです。

受け側と架け側は幾何から決まります。 二次部材 B の端点が二次部材 A の内法に載っていれば B が架け側・A が受け側で(許容差 10 mm)、どちらを受け側にするかを指定する入力欄はありません。

反力の分配則は、支点まわりのモーメントのつり合いによります。鉛直荷重に対する鉛直反力の てこの腕は水平投影の距離であり、荷重の材軸上の位置は水平投影へ線形に写ります。したがって 水平投影が 0 でない限り、鉛直反力は材軸上の按分(単純梁の反力)と一致します。傾斜した 二次部材でも、部材の向きで場合分けする必要はありません。

例外は水平投影が 0 になる部材、すなわち鉛直な間柱です。このときはモーメントのつり合いが 退化して荷重が軸力として流れるため、両端への配分が不静定になり、仮定を置く必要があります。 ここでは既定で両端へ 1/2 ずつとします(水平投影が 10 mm 以下の部材をこれに当てます)。壁は 上から吊る・下で受ける・上下で分担のいずれもあり得ますが、現状これを選ぶ入力欄はありません。

荷重を流せない形は解析前チェックのエラーになります。端部がどの主架構にも二次部材にも 載っていない二次部材、支持関係が一巡している二次部材、節点を共有せずに交差している二次部材が これに当たります。いずれも荷重の行き先が決まらないため、モデル化を直す必要があります。 ただし端部の行き先が決まらない二次部材のうち、受け持つ荷重が実際に 0 のもの (断面が未割当で自重が出ず、床の分配も載らないもの)はエラーにしません。失う荷重がなく、 形だけ置かれた支持点で解析が止まるのを避けるためです。

実装squid_n_load::cascade が算定し、荷重の同期(squid-n-job::auto_loads)と 小梁の断面検定(6.5)は同じ経路を通ります (面荷重強度は用途ごとに違うため、荷重の値そのものは一致しません)。

床の中の小梁・スラブの断面検定(設計タブの「小梁・床の設計」表)は、ここで述べた荷重の分配とは別の話題です。6.5 小梁・床の断面検定を参照してください。

1.4 荷重組合せ

荷重組合せは、建築基準法施行令 82 条(標準荷重組合せ)および令 86 条(多雪区域)に基づいて設定します。 このソフトは風圧力を算定しないため、暴風の組合せ \( G + P \pm W \) は生成しません

算定式(組合せ)

  • 長期: \( G + P \)(多雪区域: \( G + P + \delta_1 \cdot S \))
  • 短期積雪: \( G + P + S \)
  • 短期地震: \( G + P \pm K \)(多雪区域: \( G + P + \delta_3 \cdot S \pm K \))
  • 積雪低減係数 既定 \( \delta_1 = 0.7 \)、\( \delta_3 = 0.35 \)

組合せ名の表記

組合せ名はわかりやすさのため、荷重ケースの直接的な名前で表示します。算定式の記号との対応は次のとおりです。

算定式の記号表示名内容
\( G \)DL固定荷重
\( P \)LL積載荷重(架構用 LL(架構用))
\( K \)EX/EY地震力(X/Y 方向)
\( S \)SL積雪荷重(方向なし)

例:\( G + P \) → DL + LL、\( G + P \pm K \) → DL + LL ± EXDL + LL ± EY、 多雪区域の \( G + P + \delta_3 \cdot S \pm K \) → DL + LL + 0.35SL ± EX など。

実装squid_n_core::load_comboload_combo.rs)の standard_combinationsSnowFactors が算定し、 長期と短期の判別は is_short_term_combo が行います。 新規モデルに用意される既定の組合せ(default_combinations)も、積雪なし・非多雪区域を指定した同じ関数で生成します。 地震(E/旧名 K)・風(W)を含むか、または S 項係数が 1.0 以上なら短期とします。 風の記号を判定に残しているのは、風荷重を含む組合せが保存データにあった場合に、 長期と誤って判定しないためです。

新規モデルの既定組合せ

新規モデルには、標準荷重ケース(DL・LL(架構用)・LL(地震用)・EX・EY)とあわせて、 次の標準荷重組合せが既定で用意されます。

  • 長期: DL + LL(\( G + P \) に相当)
  • 短期地震: DL + LL + EXDL + LL − EXDL + LL + EYDL + LL − EY(\( G + P \pm K \) に相当)

積雪や多雪区域の係数付き組合せが必要な場合は、荷重タブの「標準組合せを生成」から 上記の算定式に従って追加・再生成できます。

荷重ケースの対応付け

「種別から自動生成」は、地震について標準荷重ケース名(EX・EY)で方向を判別します。 これらは準備計算が算定して生成するため、準備計算を実行しておけば地震の組合せまで 含めて生成されます。固定(DL)・積載(LL)・積雪(SL)は荷重ケースの種別から先頭の 1 件を選びます。

風荷重は自動生成の対象外です。種別「風荷重」の荷重ケースを作っても、そのケースを 含む組合せは生成されません。荷重ケースの種別に「風荷重」があるのは、手で入力した 風荷重が長期応力解析へ混入するのを防ぐためです(種別を持たない荷重ケースは長期として 扱われます)。

1.5 地震用重量・層データの生成

地震用重量と層データは、令 88 条に基づき固定荷重と積載荷重の合計として生成します。 自重・床荷重の梁せん断力(CMoQo による Q0)を単純梁の静定反力として節点へ配分する実務的取扱いによります。

算定式(概要)

線材自重:

\[ w = \rho \cdot A_{\text{eff}} \cdot L_{\text{eff}} \cdot g \cdot \text{factor} \]

(RC/SRC 大梁は柱面間距離、RC/SRC 柱は床上面から床上面(=節点間距離)、S 梁・柱は節点間距離。RC/SRC 梁の断面積はスラブ厚分 \( b \cdot t \) を控除します: \( w_c = \gamma \cdot b(D - t) + \cdots \)。スラブ重量が構造芯間面積で別途計上されるための二重計上防止)

RC/SRC 大梁の柱面間距離は、節点間長から両端の柱フェース距離(節点から柱面までの距離。接合する直交部材のせいの半分)を差し引いた長さです。柱面の内側は柱の自重として計上されるため、その重複分を控除しています。柱フェース距離は接合関係と断面せいから一意に決まる幾何量で、剛域長(剛域)とは別の量です。剛域長を手入力で上書きしても、剛域の算定で壁を考慮する設定を変えても、柱フェース距離は変わりません。したがって自重も変わりません。直交部材が接続しない端の柱フェース距離は 0(控除なし)です。

壁・シェル自重:

\[ w = (\rho \cdot t \cdot g + w_f) \cdot (A - \text{開口}) \]

(\( w_f \) は仕上げ・増打ちの面荷重。Newell の公式で面積算定)。4 節点の耐震壁は周辺の柱梁の内法寸法で面積を評価します(芯々面積に内法係数を乗じます。上下梁は梁せいの半分、側柱は平面内の向きが特定できないため \( \min(\text{幅}, \text{せい}) \) の半分を控除する保守側の近似。控除相手の柱梁が見つからない辺・多角形壁・シェルは芯々のまま=保守側)。

解析要素にならない壁版は上記の式には算入されませんが、自重そのものは別に算定して地震用重量へ含めます。柱・梁に囲まれた壁版(間柱で分割された壁版、壁領域の一部を占める腰壁・垂れ壁など)は、境界の辺へ配ったうえで、その辺の両端節点へ半分ずつ集計します(1.6 自重の長期応力解析への接続)。矩形の壁版を左右の鉛直辺で受ける場合は上下 2 節点ずつへ 1/4 ずつとなり、壁エレメントの頂点等分配と一致します。

取り付く壁版(パラペット・構面外の腰壁・垂れ壁・自立壁)の自重も同様に別に算定して含めます(伝達規則は 1.3 床荷重の分配の「取り付く床板の荷重の出口」と同じ考え方によります)。取付き先が梁(線アンカー)の場合、取付き線への分布または取付き線両端の柱への集中のいずれかを選べます。張り出し高さ \( h_i = |\mathrm{extent}[0]| \)、\( h_j = |\mathrm{extent}[1]| \) が両端で等しいときは等分布(または区間中点での柱按分)です。異なるとき(台形)は、厚さ・密度が一様なら線荷重強度は高さに比例します。両端で立ち上がり高さの符号が反転するときは、高さ 0 の位置で折れた 2 つの三角形の和を面積とし(端点の絶対値を結んだ台形にはしません)、線アンカーの分布もそこで分割します。区間長を \( L \)、総重量を \( W \)(開口は総重量の算定で控除。開口位置は見ません)として:

\[ w_i = \frac{2 W h_i}{L(h_i + h_j)},\qquad w_j = \frac{2 W h_j}{L(h_i + h_j)} \]

(\( \int_0^L w(x)\,dx = W \))。柱へ集中する場合は、同じ台形の面積重心

\[ s = \frac{h_i + 2 h_j}{3(h_i + h_j)} \]

を区間始端からの無次元位置とし、\( t = t_i + (t_j - t_i)s \)、\( R_i = W(1-t) \)、\( R_j = W t \) で按分します。取付き先が床領域(自立壁)の場合は、壁が載っている床領域の床荷重へ等価な面荷重として上乗せします(床荷重の分配にそのまま乗るため、床板ごとの強度差は区別せず床領域内で均等に上乗せします。壁の位置情報は失われますが総重量は保存されます)。等価面荷重の強度は、床の分配と同じ平面(XY 投影)の床板面積で割って求めます。壁が載っている床領域は保存せず、壁の位置から都度求めます。壁が複数の床領域にまたがる場合は、床領域の境界で分割し、区間ごとの ∫|立ち上がり高さ| に比例して各床領域へ配ります。両端で高さが符号反転する壁は高さ 0 で折ります。荷重を流せる床(床板を持ち、その XY 投影面積が正である床領域)の上に載っていない壁は、自重の行き先がないため解析前チェックがエラーで止めます。床領域の多角形への内包は辺上 1 mm 以内を内側とみなさないため、大梁の真上に沿う壁もこのエラーになります(取付き先を梁の線アンカーへ変えてください)。交点計算の丸めと、端点が境界に触れるごく短い区間を拾わないため、未覆いが壁の全重量の 0.1% 以下ならエラーにしません(この分は等価面荷重へは載せません)。DL ケースが無いモデルでは密度から自重を直接算入し、そのとき取り付く壁版の自重も階の節点へ集計します(線アンカーは上と同じ重心按分の節点集中として総重量を保存します)。

  • 仕上げ・付加線重量を節点へ配分し、階ごとに集計
  • 剛床代表節点は慣性力重心(重量重み付き重心)に自動生成

節点の階・剛床への割り付け

階の床レベルは利用者が定義する値であり、層データの生成はこれを書き換えません。節点は 次の 2 つの規則で階と剛床へ割り付けます(階の分布)。

  • 階への帰属は区間: 直下階の床レベルを超え、当該階の床レベル以下。最下階(基部の床) だけは基部レベル(剛床代表節点を除く全節点の最小標高)そのものの点区間とし、柱脚・ 基礎梁の節点がここに属する
  • 剛床への帰属は床面: 当該階の床レベルから 1 mm 以内

中間高さの節点は階には属して重量が算入され、剛床には入りません。床面に節点がない階は 剛床を持たず、剛床代表節点も作られません。階が 1 つも定義されていないモデルでは、節点 標高を許容差 1 mm でクラスタリングして階を初期化します。基部レベルの階がない場合は、 準備計算が先頭に補います(階の分布)。

動的解析用の質点質量の設定

階の生成は、剛床代表節点(マスター)へ動的解析(固有値・時刻歴・精算固有周期)用の質点質量をあわせて設定します。質量方式(5.3 固有値解析の質量モデル)に応じて:

  • 補正質点方式(既定): 各節点の地震用重量 \( w_i \) から、解析の質量行列に部材密度の分布質量として計上される分(主架構の柱梁・壁の自重配分 \( w_{\text{self},i} \))を控除した \( \text{net}i = \max(0, w_i - w{\text{self},i}) \) を用いる(密度質量との二重計上防止。二次部材・雑壁・ダンパーの自重は分布質量に入らないため控除しない)
  • 質点のみ方式: 控除なしの全量 \( w_i \) を用いる

マスターの並進質量(水平 2 方向)と剛床面内の回転慣性は次によります(\( r_i \) は慣性力重心からの平面距離、\( g \) は重力加速度):

\[ m = \sum \text{net}_i / g, \quad J = \sum (\text{net}_i / g) \cdot r_i^2 \]

実装squid_n_load::story_genstory_gen/mod.rs)が算定し、 自重の算定規則は enumerate_self_weight に一元化して、後述の DL 荷重ケース(自重の自動同期)と共有します。 鋼材単位体積重量は \( \gamma_s = 77\ \text{kN/m}^3 \)(実務慣用値)、回転慣性重量は \( \sum W \cdot i_r^2 \) です。 なお数量積算は積算慣用値の 7.85 t/m³ を用いており(約 0.02% の系統差)、荷重・質量は一貫して 77 kN/m³ によります(分野別の慣用値の使い分け。10.1 数量積算の算定式)。

重力ケースの選択:地震用重量に算入する荷重ケースは LoadCaseKind から選択します(固定 Dead + 地震用積載 LiveSeismic。LiveSeismic がなければ Live で代用)。 自重専用ケースと骨組用積載ケースは除外します。種別未設定のモデルでは先頭ケースのみを用います。 標準構成では自重を含む「DL」と「LL(地震用)」が算入され、階の生成では密度からの自重直接算入を無効にします(generate_stories_with_optsinclude_density_self_weight = false。§1.7 参照)。

手入力の地震用重量:階の地震用重量は、上記の集計値に代えて階ごとに直接入力できます。 入力した値は準備計算で階を生成し直しても保持され、集計値より優先して Ai 分布の \( W_i \) に用います (準備計算)。

1.6 自重の長期応力解析への接続(DL 荷重ケース)

部材自重・壁自重・ダンパー自重を、固定荷重(LoadCaseKind::Dead)の標準荷重ケース「DL」の内容として自動生成し(スラブ固定荷重の分配と合算)、長期応力解析・荷重組合せへ接続します。 床(スラブ)の自重はここには含まず、床の断面の板厚と材料から算定して床荷重の分配へ乗せます(1.8 床の断面と自重)。自重の算定対象を部材・壁・ダンパーに限ることで、床の重量が両方から二重に載るのを防いでいます。 梁は自重による等分布荷重(梁自重による CMQ に相当)、柱は軸力、壁・シェルは頂点への節点荷重となります(上下とも躯体と一体なら四隅へ等分、梁際にスリットがあれば切れていない側の 2 節点へ全量。1.9 壁の断面と自重)。壁の自重そのものの算定は1.9 壁の断面と自重を参照してください。壁・シェルは解析要素(4 節点の耐震壁等。4.5 壁エレメントモデル)を持つ壁版だけが対象です。取り付く壁版の自重は、取付き先が梁(線アンカー)なら床側と同じ幾何解決の経路で「DL」ケースへ合流し、取付き先が床領域(自立壁)ならスラブ固定荷重の分配へ等価な面荷重として上乗せされます(1.5 地震用重量・層データの生成)。

1.6.1 解析要素にならない壁版の自重

どの壁版が解析要素になるかは 4.5 壁エレメントモデル が定めます。解析要素にならない柱・梁に囲まれた壁版(間柱で分割された壁版、壁領域の一部を占める腰壁・垂れ壁など)の自重は、壁版の境界の辺へ配ります

壁版は一方向版として扱います。 床板の面荷重は版に直交して作用するため、版の曲げで支持辺へ流れ、三角形・台形の分配に力学的な根拠があります。壁版の自重は版の面内(真下向き)に作用するので版の曲げは関与せず、荷重は壁版が何に留め付けられているかで流れます。したがって床の分配則をそのまま鉛直面へ移すことはしません。規則は次の 2 つだけです。

  1. 支持部材のある鉛直な辺がちょうど 2 つあるとき、自重をその 2 辺へ半分ずつ配ります(ALC 横張りのように鉛直材が受ける形)。
  2. そうでないとき、支持部材のある水平な辺のうちもっとも低いものへ全量を配ります(縦張り・腰壁の形)。

支持部材とは、その辺を材軸上に覆う柱・大梁・間柱です。柱・大梁を優先し、辺が柱・大梁に覆われていればそこで終端します。10 mm 以内に並走する間柱が主架構の荷重を奪わないようにするためで、小梁で並走する大梁を優先するのと同じ考え方です。

辺が鉛直か水平かは、水平投影の長さが 10 mm 以下なら鉛直、両端の高さの差が 10 mm 以下なら水平と判定します。辺が支持部材の材軸上にあるかの許容差も 10 mm です(1.3 床荷重の分配と同じ値です)。斜めの辺は、鉛直にも水平にも数えません。

「この間柱がこの壁を受ける」ことは、壁版を間柱の位置で分割して表明します。 床側で「床板の境界辺が小梁の材軸に載っているなら、その小梁が受ける」としているのと同じ規約で、受け手を指す入力欄はありません。壁版を分割していない壁領域では、間柱は壁の自重を受けません。

この規則が誤りうる向きは次のとおりです。鉛直辺に支持部材があり、かつ実際は下の梁で受けている壁(ALC 縦張りで、間柱は面外拘束のためだけに入っている場合など)を鉛直材受けとみなすと、鉛直材の負担を過大に見ます。間柱・柱にとっては安全側です。

一方、下の梁はその重量を受けないため、梁の曲げを過小に見ます。 間柱が受け持ったぶんは反力が中間集中荷重として下の梁へ載りますが、柱が受け持ったぶんは梁を通りません。これは壁エレメントの自重を四隅へ配る扱いと同じ性質で(柱・梁が囲む壁の重量が梁のスパン内へ載ることはありません)、一方向版として配ることで新しく生じるものではありません。梁が全量を受ける形にしたい壁は、取り付く壁版としてその梁を取付き線に指定してください。

柱が受け持つぶんは、その柱の材軸方向の分布荷重として載せます。壁の重量が柱の高さに沿って伝わる形をそのまま表すためで、支点までの釣り合いは保たれます。ただし柱の断面力として表示・検定に用いる軸力は、部材荷重の両端反力を線形に内挿した値なので、材の中間で増えていく分は現れません。柱が負担する壁の重量のうち、軸力に現れるのは半分です。これは壁エレメントの自重を四隅へ 1/4 ずつ配る扱い(壁の重量を階高の中央で上下階へ分ける)と同じ大きさです。

間柱が受け持った荷重は解析要素を経由しないため、二次部材の反力の逐次伝達が単純梁の両端反力へ変えて主架構へ運びます(1.3 床荷重の分配)。鉛直な間柱の両端配分は、既定で上下端へ 1/2 ずつです。 壁は上から吊る・下で受ける・上下で分担のいずれもあり得ますが、現状これを選ぶ入力欄はありません。

境界のどの辺にも支持する柱・大梁・間柱がない壁版は、解析前チェックがエラーで止めます。 自重の行き先が決まらないためです。行き先のない荷重を節点荷重として残すと、要素が接続しない節点への節点荷重は解析の自由度から外れるので、荷重の一覧には見えるのに解析からは消えます。

算定式:総重量は §1.6 の自重算定規則(enumerate_self_weight)と同一とし、線材は次式の等分布荷重、その他は節点荷重に変換します(総量保存)。

\[ w = \text{総重量}/\text{節点間長} \]

実装squid_n_load::self_weight::self_weight_case_contentself_weight.rs)が生成し、アプリの解析実行系(sync_gravity_load_cases_action)がスラブ分配と合算して「DL」へ冪等に同期します。 地震用重量の集計では DL(自重を含む)を重力ケースとして算入し、階の生成では密度からの自重直接算入を無効にします(generate_stories_with_optsinclude_density_self_weight = false。両方行うと二重計上になります)。DL ケースがないモデルでは、階の生成で密度から自重を直接算入します。

1.7 荷重の入力(節点荷重・部材荷重)

荷重は、荷重ケースの中に節点荷重と部材荷重として定義します。 本節では、それぞれで何を指定でき、入力した値が解析へどう入るかを説明します。

荷重の入力は、左パネルのナビゲータにある「荷重ケース」から行います。 荷重ケース・種別グループ・個別の荷重のいずれかを右クリックすると、追加・編集・削除の メニューが出ます。入力した内容は下ドックの「荷重」タブでも一覧・編集できます。

荷重ケースの構成

ナビゲータの荷重ケースは、次の 3 階層で表示します。

  1. 荷重ケース(DL・LL(架構用)・EX など)
  2. 種別グループ(節点荷重・部材荷重)
  3. 個別の荷重

種別グループを分けているのは、節点荷重が 6 成分の力とモーメントを持つのに対し、部材荷重は 載荷の形と作用方向を持つというように、指定する内容がそもそも異なるためです。

個別の荷重をクリックすると、その荷重が載っている節点・部材が 3D ビューで選択状態になります。 名称だけでは位置がわからないため、モデル上のどこに載っているかを確かめられるようにしています。

振動荷重ケースとの違い

ナビゲータには、静的な荷重ケースとは別に 振動荷重ケース があります。 時刻歴応答解析(立体)と質点系時刻歴を実行したときにだけ登録され、波形・加振方向・ 線形/非線形(質点系では次元も)を表します。 節点荷重や部材荷重を載せる入れ物ではないため、本節の荷重入力の対象外です。 ツリーの見方とクリック時の表示切替は ナビゲータの解析結果ツリー を参照してください。

節点荷重

節点荷重は、節点に作用する力とモーメントを全体座標系の 6 成分で与えます。 単位は力(Fx・Fy・Fz)が N、モーメント(Mx・My・Mz)が N·mm です。

1 つの節点に何件でも定義できます。 たとえば同じ柱頭に載る機器の重量と吊り物の重量を別々の荷重として入力し、それぞれに名称を 付けておくと、あとからどちらがどれだけを占めていたかをたどれます。 解析では、同じ節点に載る荷重をすべて加算した値を外力とします。

部材荷重

部材荷重は、載荷の形(種別)・作用方向・諸元の 3 つで指定します。 位置と長さは、部材の i 端から材軸に沿って測った距離 [mm] で与えます。

種別諸元内容
中間集中a [mm]、P [N]i 端から距離 a の位置に大きさ P の集中荷重
等分布w [N/mm]材長全体に強度 w の等分布荷重
台形a・b [mm]、w1・w2 [N/mm]区間 [a, b] に強度 w1 → w2 の線形分布荷重

既定の種別は等分布、既定の作用方向は鉛直下向き(-Z)です。 作用方向は全体座標系で指定し、鉛直下(-Z)・鉛直上(+Z)・X±・Y± から選びます。

台形では b > a となるように入力してください。 区間の長さが 0 以下の荷重は載荷位置が定まらないため、追加・更新の際にエラーになります。

荷重を載せられる部材

部材荷重を載せられるのは、2 節点の線材です。 具体的には梁・柱・ブレースと、非線形解析用の梁要素(ファイバー梁・マルチスプリング梁)が 対象になります。3D ビューでこれら以外をクリックしても選択されません。

壁・スラブのような面要素を対象から外しているのは、材軸方向という概念を持たない要素に部材 荷重を紐付けると、先頭の 2 節点を材端とみなして荷重が誤って配られるためです。 床に載る荷重は、スラブの床荷重として入力してください (1.3 床荷重の分配)。

ブレースに載せる荷重

ブレースは軸剛性のみを持つトラス要素としてモデル化するため、材軸に直交する方向の荷重を 部材として負担できません。そこで、ブレースを対象に選んだ場合は作用方向を材軸方向に 限定します。仕上げ荷重のような鉛直方向の荷重をブレースに載せたい場合も、この扱いになります。

材軸に直交する成分は、材端モーメントを生じない静定分配で両端の節点へ配ります。 配り方は単純梁の反力と同じで、合力と作用位置が保存されるため、建物の総重量や支点反力は この扱いによって変わりません(4.3 部材荷重)。

準備計算が生成する荷重との区別

荷重ケースの中身には、利用者が入力した荷重と、準備計算が生成した荷重の 2 つがあります。 準備計算が生成するのは、スラブの床荷重の分配・躯体の自重・地震力(Ai 分布)の水平力で、 標準荷重ケース DL・LL(架構用)・LL(地震用)・EX・EY へ書き込まれます。

準備計算が生成した荷重は、実行のたびに算定し直して入れ替わります。 このため編集しても次の実行で失われることになり、編集・削除はできないようにしています。 一方で利用者が入力した荷重はこの入れ替えの対象外なので、DL や EX のような自動生成の 荷重ケースへ荷重を足しても消えません

表示は次のように分けています。

  • ナビゲータの荷重ツリー:利用者が入力した荷重のみ
  • 下ドックの「荷重」タブ:両方を表示。準備計算が生成した荷重は読み取り専用
  • 準備計算タブの荷重集計:両方を合算した件数と合力

ナビゲータに準備計算の荷重を出さないのは、床荷重を分配した部材荷重が数百件に達することも あり、編集できない行の中に手入力の荷重が埋もれるためです。 準備計算が何を生成したかは、下ドックの「荷重」タブと準備計算タブで確認できます。

荷重の名称

節点荷重・部材荷重には、それぞれ名称を付けられます。 「機器荷重」「外壁の仕上げ荷重」のように書いておくと、あとからその荷重が何であったかを たどれるようになります。

名称は未入力でもかまいません。 未入力の場合は、節点荷重なら零でない成分(Fz=-10.0 など)、部材荷重なら種別と諸元 (分布 [0,6000] w1=2.50 w2=2.50 など)から作った自動ラベルを一覧に表示します。 準備計算が生成した荷重は名称を持たないため、下ドックの「荷重」タブでは「(自動計算)」と 表示します。

対象の節点・部材の選び方

荷重を追加・編集するとき、対象の節点・部材は3D ビューでクリックして選びます。 実務規模のモデルでは節点も部材も数百を超え、ID を並べた一覧からでは目的のものを選べません。

入力ダイアログの「3D で選択」を押すと、入力中の内容を保ったままダイアログが閉じ、選択待ちに 入ります。3D ビューでクリックすると対象が仮選択され、Enter で確定するとダイアログへ戻るため、 確定する前であれば何度でもクリックし直して選び直せます。 選択そのものをやめる場合は Esc を押してください。

3D ビューが表示されないタブ(結果・設計・レポート)で荷重の追加を選んだ場合は、モデルタブへ 自動的に切り替わります。節点荷重では、あらかじめ節点を選択していればそれが初期値になります。

選択待ちの間もモデルの編集や undo は行えるため、確定時に対象が存在するかを確認します。 編集の場合は、ダイアログを開いた時点の内容と一致するかも確認し、別の荷重に変わっていれば エラーとして選び直しを促します。

実装:荷重は squid_n_core::modelNodalLoadMemberLoadload.rs)が保持し、 生成元の区別を LoadSource が持ちます。編集は squid_n_editAddNodalLoadSetNodalLoadDeleteNodalLoadAddMemberLoadSetMemberLoadDeleteMemberLoad が 行います。準備計算による入れ替えは LoadCase::replace_auto_loads が扱い、生成元が自動の 荷重だけを対象にします。

1.8 床の断面と自重

本節では、床(スラブ)が持つ断面と、そこから決まる板厚・自重について紹介します。

床は断面を持ちます。 断面には符号・板厚・コンクリート材料がそろっており、床の板厚も自重もここから決まります。 柱や大梁と同じく「符号を決めて割り当てる」形へそろえることで、床の諸元を探す先が 断面 1 か所に定まります。

板厚と自重は断面から決まる

床の板厚は、割り当てた断面の板厚をそのまま用います。 自重は板厚 \( t \) と断面の主材料(コンクリート)の単位体積重量 \( \gamma \) から、 使うたびに算定します。

\[ w_{\text{自重}} = t \times \gamma \]

自重を面荷重として固定値で持たせないのは、そうすると板厚や材料を変えたときに自重が 追随せず、断面と重量が食い違ったモデルを作れてしまうためです。 床の固定荷重(DL)は、この自重に床の面荷重(仕上げ等)を足したものになります。 積載荷重は室の用途から決まるため断面には含みません(1.2 積載荷重)。

断面が未割当の床は解析前チェックで止まる

断面が未割当の床、および断面に主材料が割り当てられていない床があるモデルは、準備計算の モデル整合性チェックと解析前チェックがエラーで停止します。 床の自重が算定できないまま解析へ進むと、長期荷重が過小なまま応力が出るためです。

既定の板厚 150 mm やコンクリート Fc21 で補うことはしません。 根拠のない数値で床の重量を作ると、入力し忘れたことに気づけないまま設計が進みます。

建物一律の「剛性計算用のスラブ厚」(既定 0 mm。部材剛性)とは 別の値なので注意してください。 床の自重・検定・型枠控除に使う厚さは、その床板(スラブ)へ割り当てた断面の板厚です。 剛性計算用スラブ厚は、囲まれた床板を持つ梁の協力幅算定で、対象の床板の板厚が取れないときの 控えにだけ使います。既定の 0 は「控えが無い」であり、断面未割当の床板をスラブありとはみなしません。

床の断面を作る

床の断面は、断面作成パネルで形状に「RC スラブ」を選び、板厚を入力して作ります。 断面一覧の断面形状の欄には S-t150 のように表示されます。

床は配筋を持たないため、断面の材料欄で有効なのは主材料(コンクリート)だけで、 主筋・せん断補強筋・内蔵鉄骨の欄は淡色の になります。 床配筋は板厚とかぶり厚から算定するため、断面には配筋を持たせていません。

作った断面は、床タブの一覧の「断面」欄で床へ割り当てます。 候補に出るのは板厚を持つ断面だけです。 板厚のない断面を割り当てても自重も数量も算定できないため、選べないようにしています。

床を作る設定の架構作成ウィザードは、板厚 150 mm の断面 S15 を 1 枚だけ作り、全階の床へ 割り当てます(架構作成ウィザード)。 符号は板厚を変えても S15 のままなので、必要なら生成後に付け替えてください。 ウィザードで選んだコンクリート(既定は Fc21)も 1 つ作って断面へ割り当てるため、 生成した直後から床の自重が入ります。

ST-Bridge との対応

ST-Bridge のスラブ断面(StbSecSlab_RCStbSecSlabDeck)は、符号・階・板厚・ コンクリートのグレード名がそのまま床の断面になり、同じ断面を指す床は 1 つの断面を 共有します。 書き出しでは、囲まれた床板(Slab)が参照する断面の符号・階・板厚・材料名を出力します。 取り付く床板と断面未割当の床板は出しません。

実装

  • 床断面形状: squid_n_core::section_shape::SectionShape::RcSlab
  • 自重算定: squid_n_load::self_weight(板厚 × 主材料の単位体積重量)
  • 解析前チェック(床未割当・主材料未割当): squid_n_solver::statics::analysis::precheck
  • 数量積算での床厚参照: squid_n_design_jp::quantity

1.9 壁の断面と自重

本節では、壁版(WallPlate)が持つ断面と、そこから決まる板厚・自重、および壁版の入力に ついて紹介します。

壁の入力の正は壁版です。 壁版は断面を持ち、板厚も材料も躯体の自重もここから決まります。 床(1.8 床の断面と自重)と同じく「符号を決めて割り当てる」形へ そろえることで、壁の諸元を探す先が断面 1 か所に定まります。 躯体以外の重さ(仕上げ・増打ち)だけは、厚さで表せないため壁版が面荷重として持ちます。

解析用の壁要素は壁版から都度生成するもので、モデルには保存しません。 どの壁版が壁要素になるか、そこでどう剛性を評価するかは 4.5 壁エレメントモデルを参照してください。 本節は、要素になるかどうかに依らず壁版が共通して持つ性質を扱います。

板厚と自重は断面から決まる

壁の板厚は、割り当てた断面の板厚をそのまま用います。 躯体の自重は板厚 \( t \)・開口を控除した正味面積・断面の主材料の密度から使うたびに算定し、 仕上げ・増打ちの面荷重 \( w_f \) と、開口部(サッシ等)の重量を入力していればそれらを加えます。

\[ W = (\rho \cdot t \cdot g + w_f) \cdot (A - A_{\text{開口}}) + W_{\text{開口部}} \]

自重を固定値で持たせないのは、そうすると板厚や材料を変えたときに自重が追随せず、断面と 重量が食い違ったモデルを作れてしまうためです。

面積 \( A \) は、壁が鉛直面内にあるとは限らないため、理想平面への投影を経由せずニューエルの 公式で 3 次元のまま求めます。 開口面積が壁の面積を超える場合は、正味面積を 0 とします。

仕上げ・増打ちは面荷重として入力する

コンクリートの壁には増打ちが伴い、外装の仕上げも無視できない重さを持ちます。 これらは板厚とは別に、面荷重 \( w_f \) として壁版へ与えます(入力は kN/m²)。 断面の板厚に足し込まないのは、打ち継ぎで一体性が保証されない増打ちや、そもそも構造材で ない仕上げを構造厚に含めると、剛性と耐力を過大に見積もることになるためです。

したがって仕上げ・増打ちは重さとしてのみ効きます。 壁の面内せん断剛性、雑壁として周辺の柱梁へ算入する剛性、耐震壁の断面検定、数量積算の コンクリート体積のいずれにも入りません。

面荷重は躯体と同じ正味面積(開口を控除した面積)に乗じます。 開口部にはコンクリートも仕上げもないためです。 開口周りの見込みや額縁の重さは開口部重量で見る場所が別にあるので、面積側で二重に見ません。

床板の仕上げ荷重(1.8 床の断面と自重)と同じ形の入力で、名称と 値を組にして持たせます。

算定した自重の行き先は、壁版が解析要素になるかどうかで変わります。 1.5 地震用重量・層データの生成1.6 自重の長期応力解析への接続を参照してください。

断面が未割当の壁は警告にとどまる

断面が未割当の壁版があるモデルは、準備計算の診断と解析前チェックが警告を出します。 板厚と材料が決まらないため躯体の自重を算定できず、解析要素にもしません。 ただし壁は柱・梁だけで解析が成立する要素であり、壁版が欠けても架構は解けるため、解析は 止めません。

仕上げ・増打ちの面荷重は断面に依らないため、断面が未割当でもそのまま計上します。 入力した重さを断面の有無で落とすと、警告を見落としたときに重量が黙って減るためです。

床は断面未割当をエラーで停止する点が異なります(1.8)。 床は必ず荷重を持つ面であり、断面が無いと長期荷重が過小なまま応力が出るためです。

既定の板厚やコンクリートのグレードで補うことはしません。 根拠のない数値で壁の重量を作ると、入力し忘れたことに気づけないまま設計が進みます。

壁版を作る

壁版はモデルタブの「壁版」で編集します。 一覧には囲まれた壁版・取り付く壁版の両方が並び、断面と、取り付く壁版の取付き先・立ち上がり 高さはその場で反映されます。 開口(開口面積または個別開口の寸法)・開口部重量・仕上げ・増打ちの面荷重・耐震スリットは、 対象の壁版を選んでフォームで入力し「適用」で反映します。

囲まれた壁版・取り付く壁版は、同じタブの追加フォームから作れます。 囲まれた壁版は境界 4 節点を反時計回りに指定します。 3D ビューアの壁作成モードでも、節点を 4 点選ぶと囲まれた壁版を追加し(開口面積・開口部重量 は 0)、その直後に壁領域へ結び付けるため、そのまま解析用の壁要素の対象になります。

断面に割り当てられるのは板厚を持つ断面だけです。 板厚のない断面を割り当てても自重も数量も算定できないため、選べないようにしています。

既定値は、断面が未割当、開口面積 0 mm²、個別開口なし、開口部重量 0 N、仕上げ・増打ちの 面荷重なし(名称の既定は「仕上げ」)、耐震スリットは 4 辺とも無しです。 個別開口を 1 つ以上入力すると、開口面積の入力値は無視され、個別開口の面積和を用います。

耐震スリット

耐震スリットは、壁と周辺の柱・梁との縁を切ったことを表す指定です。 スリットは辺ごとに入れるものなので、壁版の 4 辺それぞれについて独立に指定します。

納まり切れている辺
柱際のみ柱際 2 辺
三方スリット(垂れ壁型)柱際 2 辺 + 下辺
三方スリット(腰壁型)柱際 2 辺 + 上辺
完全スリット4 辺

三方スリット壁と垂れ壁は別物です。 垂れ壁は上の梁からぶら下がる短い壁で、下端に壁そのものがありません(取り付く壁版として入力します)。 一方、下辺にスリットを入れた壁は構面いっぱいの全高の壁で、下の梁と接してはいますが縁が切れています。 形が違うので、どちらか一方では表せません。

規則は 2 つです。 剛性は、切れていない辺の部材にだけ算入します。 柱際が切れていればその柱へ袖壁として算入せず、梁際が切れていればその梁へ腰壁・垂れ壁として算入しません (4.1 ティモシェンコ梁要素)。 剛域も同じ扱いで、切れている辺には壁による張り出しを与えません。 自重は、切れていない辺へ伝えます。 上下とも一体なら四隅へ等分し、下辺だけが切れていれば全量を上辺へ、上辺だけが切れていれば全量を下辺へ 寄せます(1.6 自重の長期応力解析への接続)。 柱際のスリットは自重の行き先を変えません。柱際の鉛直辺は壁の重量を受けないためです。

耐震壁として成立するのは、4 辺すべてが躯体と一体の壁だけです (4.5 壁エレメントモデル)。 切れた辺があると、壁が負担した面内せん断を周辺の柱梁へ伝えられないためです。

上下の梁際をともに切ることはできません

上下の梁際をともに切った壁は、自重の伝達先がありません。 柱際の鉛直辺は壁の重量を受けないため、上下とも縁が切れていると重量の行き場が無くなります。 実際に作らない納まりなので、解析前チェックがエラーで止めます。

スリットを指定する辺の指し方

左右のどちらを指すかは、境界のうち標高の低い 2 節点を境界の並び順に取った順で決まります。 一覧と入力欄には、その節点番号を添えて示します。 梁際は下辺・上辺として示します。

取り付く壁版(腰壁・垂れ壁・パラペット・自立壁)は柱・梁と接する 4 辺を持たないため、この指定は ありません。

スリットを指定できるのは、境界が 4 節点の壁版だけです。 境界が 5 節点以上の壁版(上下の大梁が中間節点で分割されている場合など)では、どの辺が柱際で どの辺が梁際かを決められないためです。 そのような壁版では入力欄を無効にし、指定が残っていれば準備計算の診断が警告します。

取り付く壁版の取付き先

取り付く壁版は、柱・梁が囲む壁領域に取り付く(線)か、床領域に取り付く(自立壁)かの どちらかの取付き先を持ちます。 取付き先の種別は作成時に決め、作成後に変える場合は削除して作り直します。

取付き線の区間の既定は全長 \( [0.0, 1.0] \) です。 張り出し量は取付き線からの鉛直方向の高さ差で、符号は上向きが正、下向き(垂れ壁)が負です。

自立壁の高さは階高いっぱいにできる

自立壁は、立ち上がり高さを数値で入れるかわりに「階高」を選べます。 階高を選んだ壁は、壁の下端から直上の階レベルまでを高さとします。 壁が載るレベルは下端線分の両端の平均標高とし、直上の階レベルはそれより 1 mm を超えて 高い階レベルのうち最も低いものです。 同じレベルの階はその壁が載っている床そのものなので、「上」とは数えません。

階高は設計を進めるあいだに何度も変わります。 全高の壁を絶対寸法で書くと階高の変更に追随せず、上階とのあいだに隙間が残りますが、 数値としては何も破綻しないため、その食い違いは気づかれないまま残ります。 高さの持ち主を階レベルに寄せることで、この食い違いが起きなくなります。

階高を選べるのは自立壁だけです。 柱・梁が囲む構面いっぱいの全高の壁は、囲まれた壁版として入力してください。 囲まれた壁版の高さは境界の節点、つまり周囲の柱梁が決めるので、そもそも高さを書く欄が ありません。 取付き線に取り付く壁版で階高を許すと、階高ぶんの腰壁せいがその 1 本の梁へ丸ごと算入され、 梁の剛性を過大に、変形を過小に見ることになります。

壁の下端より上に階レベルがないと高さが決まりません。 最上階の床に立つ壁がこれにあたり、解析前チェックがエラーで止めます。 パラペットのように最上階で上へ伸ばす壁は、上端を決める階がないので立ち上がり高さを数値で 指定してください。

床領域は主架構から作り直される派生的な入力で ID が振り直されるため、自立壁が荷重を渡す 床領域は保存せず、壁の位置から都度求めます。 床領域をまたぐ壁は境界で分割して配ります。 内包判定は辺上 1 mm 以内を内側とみなしません。 荷重を流せる床の上に載っていない壁は、自重の行き先がないため解析前チェックがエラーで 止めます。 未覆いが全重量の 0.1% 以下なら丸めとして無視します。

取り付く壁版への自動変換

ST-Bridge の取り込みと、準備計算での壁領域の付け直しでは、どの壁領域にも収まらない壁版の 一部を取り付く壁版へ自動変換します。 対象は、水平な辺(上辺または下辺)がちょうど 1 つ同一レベルの大梁に全長載り、かつ自由端が 1 点または 2 点の壁版です。 その辺を取付き線とし、区間は全長にします。

辺の全長を覆う判定のずれは 10 mm 以内です。 柱沿いの鉛直辺は判定の対象にしません。 大梁に載る水平な辺が 0 本または 2 本以上のとき、および自由端が 3 点以上のとき(折れ曲がり・ L 形など)は、囲まれた壁版のまま残し、警告を出します。

層の構面内に重心が入る腰壁・垂れ壁は、壁領域へ帰属した囲まれた壁版のまま残るため、この 自動変換の対象ではありません。 自立壁は ST-Bridge から判別できる情報源がないため自動検出せず、常に手入力です。

変換で不要になった自由端の節点は削除しますが、対象は部材・領域・版・拘束・節点荷重・支点・ 質量・剛床マスターのいずれからも参照されなくなった節点だけです。

ST-Bridge との対応

StbWall は境界節点ループと厚さ・材料から壁版として取り込み、柱・梁が囲む壁領域へ 付け直します。 書き出しは壁版から StbWall を出すため、境界が 4 節点でない壁版も往復します。 取り付く壁版は往復の対象外です。

仕上げ・増打ちの面荷重は ST-Bridge に対応する要素がないため、往復では保持されません。 取り込んだ壁版の面荷重は常に空になります。

実装

  • 壁版: squid_n_core::model::WallPlate
  • 自重算定: squid_n_core::model::Model::wall_plate_self_weight (正味面積 ×〔板厚 × 密度 × 重力加速度 + 仕上げ・増打ちの面荷重〕)
  • 立ち上がり高さの解決(階高いっぱいの壁): squid_n_core::model::Model::wall_plate_extent
  • 取り付く壁版の自重分配: squid_n_load::wall_attached
  • 解析要素にならない壁版の自重分配: squid_n_load::wall_plate_load
  • 取り付く壁版への自動変換: squid_n_core::wall_region_rebuild
  • 診断(断面未割当・自重の行き先なし): squid_n_solver::statics::analysis::precheck

2. 材料構成則・材料強度

この章は、材料の応力ひずみ関係(構成則・履歴則)と、許容応力度設計や終局耐力計算の基礎となる材料強度(F 値、降伏強度、コンクリート強度)の根拠を示します。あわせて、部材が RC 造か S 造かを決める構造種別の判定規則を示します。

各項目は「導入文(何を・どの基準で)、算定式、実装」の順で記します。

この章の内容

2.1 一軸材料構成則(ファイバー断面用)

このソフトは一軸材料を UniaxialMaterial トレイト(trial/commit/revert)として実装し、ファイバー断面積分と集中ばねに用います。 塑性率算定の基点には reference_stress(鋼・鉄筋は降伏強度、コンクリートはシリンダー強度)と reference_strain を用います。降伏強度に 1e18 以上を与えた実質弾性ダミーは塑性率評価の対象外とします。

2.1.1 バイリニア鋼材(線形移動硬化)

このモデルは、弾塑性力学の線形移動硬化(kinematic hardening)に基づきますが、コード上に規準名を明示するコメントはありません。

算定式

塑性係数(降伏後接線が \( d\sigma/d\varepsilon = \text{hardening} \cdot E \) となるよう定義します):

\[ H_p = \text{hardening} \cdot E/(1 - \text{hardening}) \]

弾性予測、背応力、降伏関数:

\[ \sigma_{tr} = E \cdot (\varepsilon - \varepsilon_p) \]

\[ \alpha = H_p \cdot \varepsilon_p \]

\[ f = |\sigma_{tr} - \alpha| - f_y \]

\( f \le 0 \) のときは弾性(接線 E)とし、\( f > 0 \) のときは戻し写像により塑性ひずみと応力を更新します。

\[ \Delta\varepsilon_p = f/(E + H_p) \]

\[ \sigma = E \cdot (\varepsilon - \varepsilon_{p,\text{new}}) \]

更新後の接線は \( E \cdot H_p/(E + H_p) \) です。

実装: squid_n_material::uniaxial::Bilinearcrates/squid-n-material/src/uniaxial/bilinear.rs)が算定します。 既定硬化率は用途側で指定します。材端集中ばね等の履歴則として用います。 ファイバー断面の鋼材・主筋の既定材料は 2.1.2 の Menegotto–Pinto モデルです。

2.1.2 Menegotto–Pinto 鋼材・鉄筋モデル

このモデルは、バウシンガー効果を滑らかに表現する Menegotto & Pinto (1973) の2漸近線を 結ぶ遷移曲線を基本式とし、反転時の漸近線交点の更新則・曲率パラメータの劣化則・ 等方硬化則には Filippou, Popov & Bertero (1983, EERC 83-19) の履歴則(OpenSees Steel02 と同一のアルゴリズム)を用います。ファイバー断面の鋼材・主筋の既定材料です。 ファイバー断面は降伏進展を追うことが目的のため、鋼材・主筋の降伏点が未設定のモデルは 非線形解析の入力チェックがエラーで停止します(弾性で代替しません)。

遷移曲線(正規化形)

正規化ひずみ \( \varepsilon^\ast = (\varepsilon - \varepsilon_r)/(\varepsilon_0 - \varepsilon_r) \) (\( (\varepsilon_r,\sigma_r) \) は直前の反転点、\( (\varepsilon_0,\sigma_0) \) は現在の 分枝の漸近線交点)に対し:

\[ \sigma^\ast = b \cdot \varepsilon^\ast + (1 - b) \cdot \varepsilon^\ast/(1 + |\varepsilon^\ast|^R)^{1/R} \]

\[ \sigma = \sigma_r + (\sigma_0 - \sigma_r) \cdot \sigma^\ast \]

漸近線交点の更新(Filippou 1983 の反転則)

反転が生じるたびに、反転点 \( (\varepsilon_r,\sigma_r) \)(直前のコミット点のひずみ・応力)を 通る勾配 \( E \) の弾性直線と、載荷方向側の降伏漸近線(勾配 \( b \cdot E \)、等方硬化で シフト)との交点を新しい \( (\varepsilon_0,\sigma_0) \) とします。引張方向へ載荷を 開始する場合:

\[ \varepsilon_0 = \frac{f_y \cdot \mathrm{shft} - bE \cdot \varepsilon_y \cdot \mathrm{shft} - \sigma_r + E \cdot \varepsilon_r}{E - bE} \]

\[ \sigma_0 = f_y \cdot \mathrm{shft} + bE \cdot (\varepsilon_0 - \varepsilon_y \cdot \mathrm{shft}) \]

(\( \varepsilon_y = f_y/E \)。圧縮方向は符号を反転した対称の式です。)

曲率パラメータ R の劣化則

\[ \xi = |\varepsilon_{pl} - \varepsilon_0|/\varepsilon_y \]

(\( \varepsilon_{pl} \) は載荷方向側の履歴極値ひずみ:引張方向への分枝では経験最大ひずみ \( \varepsilon_{max} \)、圧縮方向への分枝では経験最小ひずみ \( \varepsilon_{min} \))

\[ R = \max(R_0 - a_1 \cdot \xi/(a_2 + \xi),\ 1) \]

等方硬化則

降伏漸近線を以下の shft 倍にシフトします。

\[ \mathrm{shft} = 1 + a_3 \cdot \left(\frac{\varepsilon_{max} - \varepsilon_{min}}{2 \cdot a_4 \cdot \varepsilon_y}\right)^{0.8} \]

\( a_3 = 0 \) のとき等方硬化は無効です(既定)。

既定パラメータ: \( b = 0.01,\ R_0 = 20,\ a_1 = 18.5,\ a_2 = 0.15 \)(Filippou 1983 の 推奨値)、\( a_3 = 0,\ a_4 = 1 \)(等方硬化なし)。

実装: uniaxial::MenegottoPintomenegotto_pinto.rs)が算定します。

2.1.3 コンクリート一軸履歴モデル

このモデルは、圧縮を放物線上昇からピーク、線形軟化、残留へと進め、引張を弾性からひび割れ、指数減衰(テンションスティフニング)へと進めます。 係数は AIJ 系代表値であり、コードにコメントとして記載しています。

算定式

初期接線:

\[ E_0 = 2 \cdot f_c/|\varepsilon_{c0}| \]

圧縮上昇(\( \varepsilon \ge \varepsilon_{c0} \)、\( r = \varepsilon/\varepsilon_{c0} \)):

\[ \sigma = -f_c \cdot (2r - r^2) \]

圧縮軟化(\( \varepsilon_{c0} > \varepsilon \ge \varepsilon_{cu} \)):

\[ \sigma = -f_c + \text{slope} \cdot (\varepsilon - \varepsilon_{c0}) \]

\[ \text{slope} = f_c \cdot (1 - \text{残留比})/(\varepsilon_{cu} - \varepsilon_{c0}) \]

引張(\( \varepsilon > \varepsilon_{cr} = f_t/E_0 \)、β = テンションスティフニング係数):

\[ \sigma = f_t \cdot \exp(-\beta \cdot (\varepsilon/\varepsilon_{cr} - 1)) \]

除荷・再載荷は最大経験ひずみへの原点指向割線とします。

実装: squid_n_material::uniaxial::Concretecrates/squid-n-material/src/uniaxial/concrete.rs)が算定します。 既定値は \( \varepsilon_{c0} = -0.002 \), \( \varepsilon_{cu} = -0.0035 \), テンションスティフニング 0.5, 残留比 0.0 であり、せん断は \( G_0 = E_0/(2(1+\nu)) \)(\( \nu = 0.2 \))とします。

2.1.4 NewRC コンクリート構成則(ファイバー柱の既定)

この構成則は、建設省総合技術開発プロジェクト「New RC」(鉄筋コンクリート造建築物の超軽量・超高層化技術開発)で提案されたコンクリートの応力–ひずみ曲線の有理式モデル(NewRC 式)に基づきます。 適用範囲は \( F_c \le 60 \) であり、超過時はバイリニア骨格へ切り替えます。

算定式(工学単位系 kgf/cm² で導出します。実装は \( \sigma_B = F_c[\text{N/mm}^2] \times (1/0.0980665) \) で換算します)

応力–ひずみ関係(\( X = \varepsilon_c/\varepsilon_{c0} \)):

\[ \sigma_c/\sigma_{cB} = \frac{A \cdot X + (D-1) \cdot X^2}{1 + (A-2) \cdot X + D \cdot X^2} \]

ひずみ、ヤング係数(\( k = 1.0 \)):

\[ \varepsilon_{c0} = 0.5243 \cdot \sigma_B^{1/4} \times 10^{-3} \]

\[ E_c = 4k \cdot (\sigma_B/1000)^{1/3} \times 10^5 \cdot (\gamma/2.4)^2 \]

係数(コンファインド効果なし):

\[ A = E_c \cdot \varepsilon_{c0}/\sigma_{cB} \]

\[ D = 1.50 + 1.68 \times 10^{-3} \cdot \sigma_B \]

\[ \sigma_{cB} = \sigma_B \]

引張は Ec 弾性とし、ひび割れ(\( \varepsilon_{cr} = f_t/E_c \))後は応力を保持しない脆性型とします。

圧縮包絡線の値は次のとおりです。

ひずみ応力 \( \sigma_c \)接線 \( d\sigma_c/d\varepsilon_c \)
\( \varepsilon_c = 0 \)0\( E_c \)
有理式が \( \sigma_c > 0 \) を与える範囲有理式の値有理式の微分(0 未満は 0)
有理式が \( \sigma_c \le 0 \) を与える終局域00

実装: squid_n_material::newrc::ConcreteNewRcnewrc.rs)が算定します。 除荷則は、静的解析では逆行型(Retrace、圧縮包絡線を辿る)、動的解析では原点指向型(OriginOriented)に切り替えます。

2.1.5 Mander 拘束コンクリート包絡線

このモデルは、横拘束筋(帯筋・スパイラル筋)による拘束効果を、拘束強度・拘束ひずみの 増分として評価する Mander, Priestley & Park (1988) の応力–ひずみモデルの包絡線 パラメータ算定式です。円形断面(フープ・スパイラル)と矩形断面(帯筋)のいずれにも 対応し、算定した強度・ひずみを Popovics 型の連続曲線へ渡します。

拘束強度比

有効拘束圧比 \( x = f'l/f'{co} \)(\( f'l \) は有効拘束圧、\( f'{co} \) は非拘束 圧縮強度。\( x < 0 \) は 0 とします)に対し、拘束強度比 \( k \) を:

\[ k = \frac{f'{cc}}{f'{co}} = -1.254 + 2.254\sqrt{1 + 7.94 x} - 2x \]

拘束後パラメータ

\[ f'{cc} = f'{co} \cdot k \]

\[ \varepsilon_{cc} = \varepsilon_{co}\left(1 + 5\left(k - 1\right)\right) \]

円形断面の有効拘束圧

フープ中心間径 \( d_s \)・ピッチ \( s \)(中心間)・純間隔 \( s' \)・フープ 1 本の 断面積 \( A_{sp} \)・降伏強度 \( f_{yh} \)・コア面積に対する主筋比 \( \rho_{cc} \) から:

\[ \rho_s = \frac{4 A_{sp}}{d_s,s} \]

\[ k_e = \frac{\left(1 - s'/(2 d_s)\right)^2}{1-\rho_{cc}} \quad \text{(円形フープ)}, \qquad k_e = \frac{1 - s'/(2 d_s)}{1-\rho_{cc}} \quad \text{(スパイラル)} \]

\[ f'{l,\mathrm{eff}} = k_e \cdot \frac12 \rho_s f{yh} \]

矩形断面の有効拘束圧

コア寸法 \( b_c \)(x 方向)・\( d_c \)(y 方向)、x・y 方向の脚断面積合計 \( A_{sx}, A_{sy} \)、隣接主筋間の純間隔 \( w_i \)(全周)から:

\[ \rho_x = \frac{A_{sx}}{s,d_c}, \qquad \rho_y = \frac{A_{sy}}{s,b_c} \]

\[ k_e = \frac{\left(1 - \dfrac{\sum w_i^2}{6,b_c,d_c}\right)\left(1 - \dfrac{s'}{2 b_c}\right)\left(1 - \dfrac{s'}{2 d_c}\right)}{1-\rho_{cc}} \]

\[ f'{lx,\mathrm{eff}} = k_e,\rho_x,f{yh}, \qquad f'{ly,\mathrm{eff}} = k_e,\rho_y,f{yh} \]

代表拘束圧は算術平均 \( (f'{lx,\mathrm{eff}} + f'{ly,\mathrm{eff}})/2 \) とします (Mander (1988) 本来の 2 軸拘束強度チャートを用いる代わりの簡易化です)。

Popovics 型応力–ひずみ曲線

\[ \sigma = f'{cc} \cdot \frac{x,r}{r - 1 + x^r}, \qquad x = \varepsilon/\varepsilon{cc}, \qquad r = \frac{E_c}{E_c - E_{sec}}, \qquad E_{sec} = f'{cc}/\varepsilon{cc} \]

終局圧縮ひずみ(Priestley, Seible & Calvi (1996) のエネルギー近似式)

\[ \varepsilon_{cu} = 0.004 + 1.4,\rho_s,f_{yh},\varepsilon_{su}/f'_{cc} \]

(\( \rho_s \) は横拘束筋の体積比、\( \varepsilon_{su} \) は横拘束筋の破断ひずみ。)

実装: uniaxial::mandermander.rs)が上記パラメータ算定・Popovics 曲線の評価を 行う純関数群として算定します。応力–ひずみの履歴(除荷・再載荷を含む状態遷移)は 2.1.6 の ConcreteCyclic が扱います。

2.1.6 コンクリート繰返し履歴モデル(Karsan–Jirsa 除荷)

このモデルは、圧縮包絡線(修正 Kent–Park・2.1.4 の NewRC 式・2.1.5 の Mander 曲線 から選択)に対して、除荷・再載荷を Karsan, I.D. & Jirsa, J.O. (1969) の残留塑性 ひずみ則で、引張のひび割れ開閉・剛性劣化を Yassin (1994) の規則 (OpenSees Concrete02 系のアルゴリズム)で表現します。

圧縮包絡線

修正 Kent–Park(圧縮ひずみの大きさ \( x \ge 0 \)、\( r = x/\varepsilon_{c0} \)):

\[ \sigma = -f_c \cdot (2r - r^2) \qquad (x \le \varepsilon_{c0}) \]

\[ \sigma = -f_c + \text{slope} \cdot (x - \varepsilon_{c0}), \quad \text{slope} = \frac{f_c - f_{cu}}{\varepsilon_{cu} - \varepsilon_{c0}} \qquad (\varepsilon_{c0} < x \le \varepsilon_{cu}) \]

\[ \sigma = -f_{cu} \qquad (x > \varepsilon_{cu}) \]

NewRC を選ぶ場合は 2.1.4 の有理式包絡線を、Mander を選ぶ場合は 2.1.5 の Popovics 曲線をそのまま用い、いずれも \( \varepsilon_{cu} \) 超過は \( \varepsilon_{cu} \) における曲線値を残留として保持します。

Karsan–Jirsa の残留塑性ひずみ

除荷点の圧縮ひずみの大きさを \( \varepsilon_{min} \)、\( \eta = |\varepsilon_{min}|/\varepsilon_{c0} \) として:

\[ \varepsilon_p/\varepsilon_{c0} = 0.145,\eta^2 + 0.13,\eta \qquad (\eta < 2) \]

\[ \varepsilon_p/\varepsilon_{c0} = 0.707,(\eta - 2) + 0.834 \qquad (\eta \ge 2) \]

除荷・再載荷は、包絡線上の除荷点 \( (\varepsilon_{min}, \sigma(\varepsilon_{min})) \) と 残留塑性ひずみ点 \( (\varepsilon_p, 0) \) を結ぶ割線とします。

引張(ひび割れ閉鎖点シフト)

残留塑性ひずみ点 \( \varepsilon_p \) をひび割れ閉鎖点とし、そこを原点にシフトした相対 ひずみ \( \varepsilon' = \varepsilon - \varepsilon_p \ge 0 \) 上で、弾性(勾配 \( E_0 \)) からひび割れ(\( \varepsilon_{t0} = f_t/E_0 \))を経て線形軟化(勾配 \( -E_{ts} \))へ 進める骨格とします。

\[ \sigma = E_0 \cdot \varepsilon' \qquad (\varepsilon' \le \varepsilon_{t0}) \]

\[ \sigma = f_t - E_{ts} \cdot (\varepsilon' - \varepsilon_{t0}) \qquad (\varepsilon' > \varepsilon_{t0},\ \sigma > 0) \]

引張側の除荷・再載荷は、シフト原点 \( (\varepsilon_p, 0) \) と引張側の経験極値点を結ぶ 割線とし、経験極値が進むほど除荷剛性が低下します(剛性劣化)。

実装: uniaxial::ConcreteCyclicconcrete_cyclic.rs)が算定します。

2.2 部材履歴則の設定と集中ばね履歴則

この節は、部材履歴則の設定(増分用・時刻歴用の 2 系統)と、集中ばね (one/two-component)用の M–θ 履歴則を扱います。 スケルトンは crack/yield/ultimate の 3 点で与えるトリリニア(またはバイリニア)とし、除荷則はモデルごとに異なります。

2.2.0 履歴則の設定(増分用・時刻歴用)

部材の履歴則は、増分解析(保有水平耐力計算)用時刻歴応答解析用を 部材ごとに別々に指定できます。時刻歴用が「増分と同じ」(未指定)の部材は 増分用の指定に従います。どちらも未指定(自動)の部材は、要素種別ごとの 次の既定に従います。

要素履歴則の適用先自動(増分)自動(時刻歴)
梁(材端集中ばね)材端曲げばねの M–θ 履歴RC/SRC/CFT: 武田型
S: 標準型
増分と同じ
柱等のファイバー要素・MS 要素コンクリートファイバの除荷則逆行型Karsan–Jirsa 型
耐震壁面内せん断ばねの Q–δ 履歴(4.5)
+壁柱ファイバーのコンクリート除荷則
せん断: 最大点指向型
コンクリート: 原点指向型
せん断: 最大点指向型
コンクリート: Karsan–Jirsa 型
  • ファイバー要素・MS 要素・耐震壁では、履歴則の指定をコンクリートの除荷則 として解釈します。有効な指定は逆行型・原点指向型・Karsan–Jirsa 型(2.1.6)で、 それ以外(武田型等の曲げばね用履歴)を指定した場合は自動と同じ既定に従います。 鋼材・主筋ファイバは常に Menegotto–Pinto(2.1.2)で、選択の対象外です。
  • 梁(材端集中ばね)に Karsan–Jirsa 型(M–θ 履歴でない指定)を与えた場合は 武田型として扱います。
  • 耐震壁では、履歴則の指定を面内せん断ばね(Q–δ 系として解釈できる指定: 逆行型・標準型・原点指向型・最大点指向型・武田型)と壁柱ファイバーの コンクリート除荷則(逆行型・原点指向型・Karsan–Jirsa 型)のそれぞれへ、 解釈できる範囲で適用します。どちらとしても解釈できない指定は各既定に従います。 せん断ばねの既定を最大点指向型とするのは、壁の面内せん断はひび割れの スリップ性状が強く、除荷開始剛性が初期剛性のままの移動硬化型(Masing)では 履歴ループの吸収エネルギーを過大評価するためです(4.5 節)。
  • 増分解析のファイバー既定を逆行型とするのは、単調載荷が主体で骨格追従が目的の ためです。耐震壁の壁柱のみ原点指向型を既定とします(壁はロッキングに伴う 中立軸移動で圧縮縁の除荷が本質的に生じ、逆行型では圧縮ブロックの応力が 抜けずに曲げ寄与を過大評価し、面内水平力の終局せん断強度 Qu 頭打ちを 超えてしまうため)。
  • 時刻歴応答解析のファイバー既定を Karsan–Jirsa 型とするのは、残留塑性ひずみ・ ひび割れ開閉・剛性劣化を含む履歴(2.1.6)により、繰返し載荷の履歴吸収 エネルギーの評価が原点指向型より現実的なためです。

2.2.1 履歴モデル一覧

各履歴モデルは、構造動力学で標準的に用いられる復元力特性モデルに基づきます。 武田モデル(Takeda, Sozen and Nielsen, 1970)、最大点指向型(Clough 系)、原点指向型、スリップ型、Masing 則による標準型、逆行型(Retrograde)、辻・山田モデル(TsujiYamada)、鉄骨横座屈型(SteelBuckling)を実装します。 選択肢と分岐は設計書 §7・仕様書 §5 に定義します。

算定式(各モデルの除荷則):

  • 武田モデル(Takeda / TakedaDegrading): 剛性低下型トリリニア。除荷剛性は \( K_u = K_0 \cdot |\delta_{\max}/\delta_y|^{-\alpha} \)(K0 = ひび割れ勾配 \( M_c/\theta_c \)、α = 除荷剛性低下指数)。劣化版はピーク耐力を \( \text{degradation}^n \)(n = ピーク経験回数)で低下させます。n は包絡線上のピークからの反転時に数え、単調載荷の刻み数には依存しません。
  • 原点指向型(OriginOriented): バイリニアで、除荷は原点へ向かう割線とします。
  • スリップ型(Slip): 原点付近でピンチする再載荷とします(slip_factor)。
  • 逆行型(Retrograde): 常にスケルトン上を辿り、履歴ループを持ちません。
  • 標準型(Standard): Masing 則(相似則)による除荷とし、除荷開始剛性を初期剛性 K1 とします。
  • 最大点指向型(MaxPointOriented): Clough 系のピーク指向とします。

トリリニア・バイリニアのスケルトンは、終局超過後は軟化せず終局耐力を保持します(劣化版は低下後の耐力を保持します)。

実装: squid_n_material::hysteresis::HysteresisRulecrates/squid-n-material/src/hysteresis/mod.rs)が算定します。 武田の除荷剛性は同モジュールの unloading_stiffness で「原典式 \( K_d^+ = K_0 \cdot |\delta_{\max}/\delta_{y2}|^{-\nu} \)」と明記しています。

2.2.2 辻・山田モデル(混合硬化)

このモデルは、辻・山田による混合硬化則(バイリニア骨格に β による等方硬化と移動硬化を組み合わせる弾塑性モデル)に基づきます(二重鋼管座屈補剛ブレース等に適用)。

算定式

硬化係数:

\[ H = \frac{K_1 \cdot K_2}{K_1 - K_2} \]

降伏時の移動硬化:

\[ \Delta\bar{\alpha} = (1-\beta) \cdot H \cdot \Delta\varepsilon_p \]

降伏時の等方硬化:

\[ \Delta\bar{\sigma} = \beta \cdot H \cdot \Delta\varepsilon_p \]

\( \beta = 1 \) で等方硬化、\( \beta = 0 \) で移動硬化となります。

実装: squid_n_material::hysteresis::TsujiYamadacrates/squid-n-material/src/hysteresis/tsuji_yamada.rs)が算定します。

2.2.3 鋼梁 横座屈考慮 Mu/Mp 比

この算定は、井戸田ほか (2015) による、横座屈を考慮した鉄骨梁の耐力比 Mu/Mp 評価式に基づきます。

算定式: 細長比 λb・κ(両端モーメント比)から \( M_u/M_p \) を算定します(rαΛΛc' などの多段の閉形式。結果は [0.05, 5.0] にクランプします)。 原典既定は 残留応力 \( c_{\text{res}} = 0 \)、形状係数 \( f = 1 \)、\( k_{\text{res}} = 0.3 \)、\( k_{\text{def}} = 1.0 \) です。

実装: squid_n_material::hysteresis::lateral_buckling_mu_ratiocrates/squid-n-material/src/hysteresis/steel_buckling.rs)が算定します。 除荷は孟・大井・高梨の Ramberg–Osgood モデル(\( \gamma = 5,\ \Phi = 0.5 \))を同ファイルの SteelBuckling で実装しています。

2.2.4 部材スケルトン曲線の自動算定(M–φ → M–θ)

RC 部材のトリリニアスケルトン(ひび割れ・降伏・終局)は、ファイバー断面の M–φ 数値積分から自動算定します。 軸力一定の条件で曲率を増加させ、コンクリートの引張ひび割れ・鉄筋降伏・ピークモーメントをひずみイベントで検出して折点とします。

算定式(M–φ → M–θ 変換。各成分を加算して部材端回転角とします):

  • 曲げ: \( \theta_f = \kappa_y \cdot l / 3 + (\kappa - \kappa_y) \cdot l_p \)(降伏後は塑性ヒンジ長 \( l_p \) で回転を累積。弾性域は \( \theta_f = \kappa \cdot l / 3 \))。\( l \) は反曲点距離(部材長 × 反曲点比)です。
  • せん断: \( \theta_s = M / K_s \)(\( Q = M/l \) の片持ち・逆対称近似、\( \gamma = Q/K_s \)、\( \theta_s = \gamma \cdot l \) を整理した形)。\( K_s = G \cdot A_w \)、RC 矩形断面の有効せん断断面積は \( A_w = 5/6 \cdot b \cdot D \)(ティモシェンコせん断補正)、\( G = E_0 / (2(1 + 0.2)) \)(\( E_0 = 2 f_c/|\varepsilon_{c0}| \) はコンクリートの初期接線剛性、ポアソン比 0.2 固定)です。
  • 鉄筋抜出し: \( \theta_p = \sigma_s \cdot d_b / (E_s \cdot \xi) \)。鉄筋応力 \( \sigma_s \) は曲率比から推定します(弾性域は \( \kappa/\kappa_y \cdot f_y \)、降伏後は \( f_y \) 一定)。\( \xi \) は定着区の平均結合応力係数です。

M–φ を扱う実装の使い分け:

ワークスペースには M–φ を扱う実装が 3 系統あり、役割が異なります。取り違えると解析結果の検証を誤るため、用途を守ります。

  • 本節の算定(squid-n-skeleton): RC 断面の材料構成則によるトリリニア骨格の参照実装。本番の解析経路では使わず、略算式との突合が主な用途です。
  • squid_n_section::mn_surface::m_phi: 弾完全塑性ファイバの M–φ / M–θ。GUI のヒンジ詳細表示専用です。
  • squid_n_element::frame::fiber: 非線形解析本体のファイバ定式化。解析結果を決めるのはこちらです。

3 者は塑性化域の集約規則が異なるため、同じ部材でも骨格は一致しません。表示・参照実装の骨格を解析結果の検証に流用しません。

近似とその扱い:

  • 主筋位置のコンクリートは重複計上します(主筋点ファイバとコンクリート格子が重なる分の断面積控除を省略)。影響は微小ですが、断面積をわずかに過大に数える危険側の近似です。
  • せん断変形の \( Q = M/l \) は片持ち・逆対称を仮定した近似です。実の曲げ分布がこれと異なる場合、せん断寄与の過小・過大評価がありえます(方向は一律に定まりません)。
  • 中立軸探索のニュートン法が収束しない場合、最終反復値をそのまま用います。折点が検出されなかった場合は推定曲率による補完値(ひび割れ・降伏・終局)を用います。
  • 降伏曲率が不明な場合の抜出し応力は \( f_y \) の 0.5 倍とします。
  • 汎用パス(build_member_skeleton)の折点抽出は勾配ヒューリスティックによる簡易抽出です。RC には用いず、build_rc_member_skeleton を用います。

推定・補完の係数(スイープ範囲の決定と折点未検出時の補完に用います):

  • 有効せい \( d \) は最外主筋中心までの距離、腕の長さ \( j = 7d/8 \) とします。
  • 降伏曲率推定 \( \kappa_y = \varepsilon_y/j \)(\( \varepsilon_y = f_y/E \))、終局曲率推定 \( \kappa_u = |\varepsilon_{cu}|/(D/2) \) とします。
  • スイープ上限は \( \max(3.0 \cdot \kappa_u,\ 2.0 \cdot \kappa_y,\ 10^{-4}) \) [1/mm] とします。
  • ひび割れ補完は \( (\varepsilon_{cr}/(D/2),\ 0) \)、降伏補完は \( (\kappa_y\text{推定},\ I_y \cdot E_0 \cdot \kappa_y\text{推定}) \)、終局補完は \( (\kappa_u\text{推定},\ 1.2 \cdot M_y) \) とします。
  • 汎用パスの降伏判定は、接線勾配が初期勾配の 0.3 倍を下回った点とします。

単位系: 断面寸法・位置 [mm]、面積 [mm²]、軸力 [N]、モーメント [N·mm]、スパン [mm]、曲率 [1/mm]、ひずみは無次元です。

データの順序: MemberSkeleton.points は(変形 θ、耐力 M)の昇順です。HysteresisRule::Takeda の折点(crack / yield_point / ultimate)は(耐力 M、変形 θ)の順です。

既定値:

項目既定値
RC ファイバ格子(幅 × せい)16 × 32
RC M–φ スイープのステップ数800
中立軸探索の最大反復数・相対残差許容値・有限差分 ε50 回・1e-6・1e-8(ひずみ)
曲率ゼロ判定の閾値1e-15 [1/mm]
塑性ヒンジ長断面せいの 0.5 倍
武田モデルの除荷剛性低下指数 α(外部設定。代表値)0.4〜0.5
定着区の平均結合応力係数 ξ(外部設定。代表値)8〜10
汎用パスの最大曲率・分割数・軸力探索の反復数・許容値0.01 [1/mm]・200 分割・50 回・1e-6
ShearContribution::none / PulloutContribution::noneせん断寄与なし(\( K_s = 0 \))/抜出し寄与なし(鉄筋径・剛性・係数が閾値未満で 0)
MemberSkeleton::default折点 (0, 0)・(0.01, 10.0)・(0.05, 12.0)、武田 α = 0.4

実装: squid_n_skeleton::build_rc_member_skeletoncrates/squid-n-skeleton/src/builder.rs)が算定し、M–φ → M–θ 変換は squid_n_skeleton::deformation::mphi_to_mtheta、ファイバ積分は squid_n_skeleton::fiber_model が担います。

2.3 材料強度(F値・許容応力度の基礎)

許容応力度の検定式そのものは6. 一次設計、終局耐力は8. 部材終局耐力に 記載しており、ここでは材料強度定数の根拠を示します。

材料強度定数は、建築基準法施行令 89〜91 条・96 条・98 条、および告示(鋼材の F 値等)に基づきます。 詳細な埋込値と条番号の対応は原典照合リスト 優先度2を参照します。

算定式(主要な材料強度):

  • 鋼材 F 値(令 98 条/告示): SN400/SS400 = 235(\( t \le 40 \))、SN490/SM490 = 325 ほか
  • 鉄筋降伏強度(令 90 条・JIS G3112): SD295 = 295、SD345 = 345、USD685 = 685 ほか
  • コンクリート設計基準強度 Fc(令 91 条): 許容応力度は長期 \( F_c/3 \)、短期 \( 2F_c/3 \)
  • ヤング係数比 n(Fc 区分): \( F_c \le 27 \to 15 \) / \( \le 36 \to 13 \) / \( \le 48 \to 11 \) / \( \le 60 \to 9 \) / \( \text{それ超} \to 7 \)

グレード名(SS400SD345Fc21 等)と基準強度・材料定数の対応、および プリセット材料の登録値の一覧は 2.4 標準材料(プリセット)一覧 を参照します。

実装: グレード名 → 基準強度の対応表は squid_n_core::material_gradematerial_grade.rs)に一本化します。 許容応力度は squid_n_design_jp::material_strengthcrates/squid-n-design-jp/src/material_strength/)が算定し、ヤング係数比 n は同モジュールの young_ratio_nconcrete.rs)が算定します。

鉄筋強度の未設定時の扱いは次のとおりです(詳細は 6.1.2)。

主筋は断面への材料割当が必須です。未割当のモデルは解析前チェックで停止し、断面検定も「検定不能」となります。アプリが SD345 を自動割当することはありません。

せん断補強筋は、材料未割当のとき終局耐力の \( \sigma_{wy} \) のみ SD295 相当(295 N/mm²、SHEAR_REBAR_DEFAULT_FY)を用います。

2.4 標準材料(プリセット)一覧

材料タブの「プリセット追加」から選択できる標準材料と、その登録値を示します。 プリセットにない材料は、各定数(E・ν・ρ・Fc・Fy)と区分を直接入力して登録できます。

プリセットの分類(鋼材・鉄筋・コンクリート)は、そのまま材料の区分になります。 区分は部材が RC 造か S 造かを決めるため、直接入力でも必須の入力項目です (2.5 構造種別の判定)。

材料グレード名と基準強度の対応は H12 建告第 2464 号(JIS 規格品)および 大臣認定品の基準強度によります。

2.4.1 共通の材料定数

材料ヤング係数 E [N/mm²]ポアソン比 ν単位体積重量 [kN/m³]
鋼材・鉄筋205,0000.3γs = 77(≒7.85 t/m³)
コンクリート\( E_c = 3.35\times10^4 \cdot (\gamma/24)^2 \cdot (F_c/60)^{1/3} \)0.2単位体積重量表による(下表)
  • せん断弾性係数はいずれも \( G = E / {2(1+\nu)} \) で算定します(鋼材 G ≒ 78,846 N/mm²)。
  • コンクリートの \( E_c \) 式の γ は普通コンクリートの気乾単位体積重量 γC [kN/m³] (Fc 帯により 23.0〜24.0。下表)。
  • 質量密度は内部単位系(N-mm-s)の ton/mm³ で保持し、単位体積重量を 重力加速度 g = 9.80665 m/s² で除して導出します。

2.4.2 鋼材プリセット

基準強度 F [N/mm²] は、JIS 規格品では板厚 t による区分があります。

名称区分F(t≦40mm)F(40mm<t≦100mm)
SS400一般構造用圧延鋼材(JIS G3101)235215
SN400建築構造用圧延鋼材(JIS G3136)235215
SM400溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106)235215
SM490溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106)325295
SN490建築構造用圧延鋼材(JIS G3136)325295
BCR295建築構造用冷間ロール成形角形鋼管(大臣認定品)295
BCP235建築構造用冷間プレス成形角形鋼管(大臣認定品)235
TMCP325建築構造用 TMCP 鋼材 490N 級(大臣認定品の一般名)325325
TMCP355建築構造用 TMCP 鋼材 520N 級(同上)355355
TMCP385建築構造用 TMCP 鋼材 550N 級(同上)385385
TMCP440建築構造用 TMCP 鋼材 590N 級(同上)440440
SA440建築構造用高性能 590N/mm² 鋼材(大臣認定品)440440
LY100建築構造用低降伏点鋼材 100N 級(大臣認定品)80
LY225建築構造用低降伏点鋼材 225N 級(大臣認定品)205
  • TMCP 鋼材(HBL 等の商品名で流通する大臣認定品の一般名)は板厚 40 mm 超 100 mm 以下でも F の低減がありません。
  • プリセットの Fy には F(t≦40 mm)を登録しますが、許容応力度検定では 材料名から板厚区分込みの F を都度解決するため、板厚 40 mm 超の 断面には低減後の F が適用されます(6.1.4 参照)。
  • プリセット以外にも、SM520(355/335/325 の 3 区分)・SS490・STK400/490・ STKN400/490・STKR400/490・SNR400/490・SSC400・SWH400・BCP325 等の グレード名を材料名として登録すれば同様に F 値が解決されます (SN490BSM490YA のような JIS 種別記号付きの名称も前方一致で解決します)。
  • 保有水平耐力計算(プッシュオーバー)では、鋼材の材料強度として基準強度の 1.1 倍(590N 級の SA440・TMCP440 は 1.05 倍)、RC 主筋は 1.1 倍を用います (せん断補強筋は割増ししません)が、材料ごとに割増係数の直接入力もできます (5.7 プッシュオーバー解析 参照)。

2.4.3 鉄筋プリセット

基準強度(=規格降伏点)[N/mm²]。

名称区分基準強度
SD295異形鉄筋(JIS G3112)295
SD345異形鉄筋(JIS G3112)345
SD390異形鉄筋(JIS G3112)390
  • SD / SR に続く数値を基準強度として解決するため、プリセット外の SR235SD490 等も材料名から解決できます。
  • 鉄筋の許容応力度(径区分・せん断補強筋の上限)は 6.1.2 によります。

2.4.4 コンクリートプリセット

普通コンクリートを対象とし、γC は気乾単位体積重量(Ec 算定用)、γRC は鉄筋コンクリートの 単位体積重量(自重・質量算定用。γRC = γC + 1.0)とします。

名称Fc [N/mm²]γC [kN/m³]Ec [N/mm²]γRC [kN/m³]
Fc181823.020,59624.0
Fc212123.021,68224.0
Fc242423.022,66924.0
Fc272723.023,57724.0
Fc303023.024,41924.0
Fc333323.025,20824.0
Fc363623.025,94924.0
Fc404023.528,05824.5
Fc424223.528,51824.5
Fc454523.529,18224.5
Fc505024.031,52525.0
Fc555524.032,54225.0
Fc606024.033,50025.0
  • SRC 造(鉄骨鉄筋コンクリート)用に追加する場合は γSRC = γC + 2.0 を密度に 用います(プリセット追加時の「SRC造」指定。名称は Fc24(SRC) のようになります)。
  • Fc に続く数値を設計基準強度として解釈するため、プリセット外の Fc38 等も材料名から解決できます。
  • コンクリートの許容応力度は 6.1.1 によります。

ナビゲータの材料一覧

左ドックのナビゲータには「材料一覧」があり、材料は区分ごとにグループ化して表示します。 表示順は鋼材 → コンクリート → 鉄筋で固定し、各区分の中に材料名が並びます。 材質の行をクリックすると、下ドックの「モデル」タブ→「材料」テーブルへ移動して、その材料行が選択状態になります。 グループの既定状態は閉じているため、必要な区分だけを開いて確認できます。

実装: グレード名と規格値の対応表・プリセット一覧は squid_n_core::material_gradematerial_grade.rs)に一本化されており、 設計計算・ST-Bridge 取込・UI プリセットのいずれも同じ対応表を参照します。

2.5 構造種別の判定(RC・S・SRC・CFT)

部材が RC 造か S 造かは、剛域長の算定式・仕口パネルを設けるか・断面検定にどの式を使うか・ 略算周期・数量積算のすべてに効きます。 本節はその判定規則を示します。

判定の順序

  1. 断面形状が複合断面なら、その種別で決まる
  2. それ以外は断面が持つ主材料の区分で決まる
  3. 主材料が割り当てられていない場合だけ、断面形状の系統で補う
断面形状構造種別
SRC 矩形SRC
CFT(角形・円形)CFT
上記以外主材料の区分による(下表)
主材料の区分構造種別
鋼材S
コンクリートRC
鉄筋RC

断面に主材料が割り当てられていない部材は、断面形状の系統を既定とします。 RC 矩形・RC 円形・RC 壁は RC、形鋼・鋼管は S です。 材料を付け忘れた鋼部材を一律 RC とすると、RC の剛域が入って架構が硬くなるためです。 断面形状も割り当てられていない部材は RC とします。

断面形状ではなく材料で判定する理由

断面形状は見た目であって力学的な性質ではないため、H 形のコンクリート部材も、 矩形断面の鋼部材もありえます。 材料の区分で判定すれば、任意の材料と任意の断面の組み合わせに対して、 どの式を適用すべきかが定まります。

SRC・CFT だけを断面形状で判定するのは、これらが 1 つの材料では表せない複合断面だからです。 SRC 矩形は内蔵鉄骨の材料を断面の専用の欄に持ち、CFT は主材料の \( F_c \) を 充填コンクリートの強度として使います。

鉄筋を主材料に割り当てた断面

鉄筋は材料としては鋼ですが、これを主材料に割り当てた線材は S 造ではないため RC として扱います。 主筋・せん断補強筋は断面の専用の欄に持つため、主材料へ鉄筋を割り当てるのは入力の誤りです。 増分解析・時刻歴応答解析では入力チェックが停止して是正を促します。

材料の区分の入力

区分は材料ごとに必ず持ちます。 「材料」タブのプリセットから追加した材料は、選んだ分類(鋼材・鉄筋・コンクリート)が そのまま区分になります。 直接入力で追加する場合は、E・ν・ρ と同じく必須の入力項目です。

区分は材料一覧の「区分」列でいつでも確認・変更できます。 区分を変えると剛域長・仕口パネルの対象・断面検定の式・数量積算がまとめて変わるため、 取り込んだモデルではまずこの列を確認してください。

ST-Bridge を取り込んだ場合は、グレード名から区分を決めます (Fc21 はコンクリート、SN400B は鋼材、SD345 は鉄筋)。 ST-Bridge は材料をグレード名で表す形式で、名称が物性を一意に定めるためです。 名前から決まらない材料は物性から推定し、\( F_c \) を持つものをコンクリート、 \( F_y \) だけを持つものを鋼材、どちらもないものをコンクリートとします。 判断がつかない場合にコンクリートへ寄せるのは、RC 部材を誤って鋼材にすると 鋼の検定式で評価されて検定比が過小になるためです。 推定した材料は取り込み後の通知に名前が並ぶので、「材料」タブで確認してください。

区分と断面形状が矛盾する場合

配筋を持つ断面(RC 矩形・RC 円形)に鋼材の材料を割り当てるのは入力の誤りです。 配筋を持つ断面はコンクリート断面であり、鋼材として検定すると素の断面積で 許容応力度を評価して耐力を大きく過大評価します。 増分解析・時刻歴応答解析ではこの組み合わせも入力チェックが停止します。

ですが、形鋼の断面にコンクリートの材料を割り当てるのは誤りではありません。 H 形のコンクリート部材は成立する入力であり、断面検定・剛域・数量積算のいずれも RC として扱います。 ただし増分解析・時刻歴応答解析のファイバー断面は形鋼の板要素を鋼材ファイバとして 組み立てるため、この場合も材料に \( F_y \) が要ります。

用途ごとの扱い

4 種別をそのまま使うのは断面検定と数量積算で、他の用途はより粗い区分へまとめます。

用途まとめ方
剛域長の算定式(4.1.4S・CFT を同じ側に置く
仕口パネルの対象(4.6同上
略算周期の構造種別(1.1 地震力CFT を SRC へ寄せる
断面検定の式の選択(6 章4 種別をそのまま使う
数量積算(10.1同上

剛域と仕口パネルが S と CFT を同じ側に置くのは、いずれも接合部の剛域長が 0 になり、 接合部の有限寸法を剛域で評価しないためです。 略算周期が CFT を SRC へ寄せるのは、\( T = h(0.02 + 0.01\alpha) \) が S の階ほど長く \( R_t \) が小さくなって地震力が下がるため、鋼管にコンクリートを充填した CFT を S へ寄せないほうが安全側になるためです。

階の構造種別も部材ごとの判定を集計して決めるため、材料の区分で決まります。 H 形の断面にコンクリートの材料を割り当てた部材は、その階を RC 側に数えます。

増分解析のヒンジ式だけは断面形状を優先します

曲げひび割れ \( M_c \)・曲げ降伏 \( M_y \) の算定は、配筋を持つ断面(RC 矩形・RC 円形) であれば材料の区分に依らず RC の式を使います。 鋼の全塑性モーメント \( M_p = Z_p \sigma_y \) は配筋を無視した素の断面係数を使うため、 RC 断面へ当てると \( M_y \) が桁で過大になり、増分解析で曲げヒンジが検出されなくなるためです。

実装squid_n_core::structure_kind が判定します。 断面形状から複合断面を見分ける関数と、材料がないときの既定を返す関数は、 いずれも網羅的な分岐で書かれているため、断面形状の種類が増えたときの追随漏れは コンパイル時に検出されます。

3. 断面性能

本章では、断面諸量(断面積 A、断面二次モーメント I、断面係数 Z、塑性断面係数 Zp、ねじり定数 J、せん断有効断面積 As)、せん断形状係数、コンクリートのヤング係数、SRC/CFT の等価断面性能、およびファイバー断面の算定方法を示します。 断面公式は力学の閉形式、ヤング係数は RC 規準の Ec 式、SRC/CFT の等価剛性はヤング係数比による累加(SRC 規準の考え方)に基づきます。

各項目は「導入文(何を・どの基準で)、算定式、実装」の順で記します。

実装本体は squid_n_core::section_shapecrates/squid-n-core/src/section_shape/mod.rs)にあります。 squid_n_section::shape はこの section_shape を再エクスポートしています。

この章の内容

3.1 主要定数

定数意味根拠
N_S_EQ15.0SRC 鉄骨の等価ヤング係数比(材料から算定できない場合のフォールバック。値は暫定既定・要照合)ヤング係数比 \( n = E_s/E_c \)(式形は力学)
KAPPA_RC1.2RC のせん断形状係数 κ(\( A_s = A/\kappa \))力学(矩形断面の慣用値)
E_STEEL205000 N/mm²鋼材ヤング係数力学(材料定数)
NU_STEEL0.3鋼材ポアソン比力学(材料定数)
NU_CONCRETE0.2コンクリートポアソン比力学(材料定数)
GAMMA_CONCRETE23.0 kN/m³Ec 算定用の単位体積重量(普通コンクリートの気乾単位体積重量。値は暫定既定・要照合)RC規準(Ec 式の γ)

矩形断面のせん断有効断面積は \( \text{rect_shear_area}(A) = A \cdot 5/6 \) で算定します(せん断補正係数 \( k = 6/5 \))。

3.2 断面諸量(弾性)

各断面形状の A、I、Z、J は力学の閉形式(標準的な断面公式)で算定します。

算定式(代表例)

H 形 断面積:

\[ A = 2 \cdot B \cdot t_f + (H - 2t_f) \cdot t_w \]

H 形 強軸(\( h_w = H - 2t_f \)):

\[ I_y = \frac{B \cdot H^3 - (B - t_w) \cdot h_w^3}{12} \]

H 形 塑性断面係数:

\[ Z_p = B \cdot t_f \cdot (H - t_f) + \frac{t_w \cdot (H - 2t_f)^2}{4} \]

箱形 閉断面ねじり(Bredt):

\[ J = \frac{4 \cdot A_0^2 \cdot t}{\text{周長}} \]

円形鋼管:

\[ A = \pi (r^2 - r_i^2) \]

\[ J = \frac{\pi}{2} \cdot (r^4 - r_i^4) \]

矩形 RC(ねじりは \( J = \text{rect_torsion_j}(b, d) \)):

\[ A = b \cdot d \]

\[ I_y = \frac{b \cdot d^3}{12} \]

塑性断面係数 Zp の算定範囲

\( Z_p \) はすべての鋼断面形状について算定します。 対象は H 形・箱形・円形鋼管・組立 H 形・T 形・溝形・リップ溝形・山形・平鋼・中実丸鋼で、RC・SRC・CFT は対象外です。

H 形・箱形・円形鋼管・中実丸鋼は上記の閉形式で求めます。 それ以外は断面を水平な矩形帯へ分解し、等面積軸(断面積を上下 2 等分する水平軸)まわりに \( Z_p = \int |y - y_p| , dA \) を積分します。 等面積軸は弾性図心とは一般に一致しません。 とくに T 形や組立 H 形のような非対称断面では、両者の差が大きくなります。

\( Z_p \) を求める軸は \( I_y \) と同一です。 山形鋼の \( I_y \) は図心を通る脚に平行な軸(幾何軸)まわりで、主軸まわりではありません。 \( Z_p \) も同じ軸で定義しているため、形状係数 \( Z_p/Z_e \) が意味を持ちます。

実装section_shape::{calc_area, calc_iy, calc_iz, calc_j, plastic_modulus_strong} が算定します。 非対称断面(山形、溝形、T 形)は図心を求めて平行軸定理で合成します。

鋼材カタログ表値の扱い

カタログ断面の諸元は表値をそのまま用い、再計算しません。 CSV は cm 系のため面積は 100 倍、断面二次モーメント・ねじり定数は 10⁴ 倍して mm 系へ換算します。 幅厚比判定用の形状復元は断面名から行い、BCP 材等の末尾の角 R は無視します。 丸鋼管の幅は外径を用います。

3.2.1 矩形ねじり定数

矩形断面のねじり定数 J は、Saint-Venant のねじり理論による矩形断面の級数近似式で算定します。

算定式: \[ J = \frac{b^3 h}{16} \left[ \frac{16}{3} - 3.36 \frac{b}{h} \left( 1 - \frac{1}{12} \left( \frac{b}{h} \right)^4 \right) \right] \] (\( b = \text{短辺} \)、\( h = \text{長辺} \))。

実装section_shape::rect_torsion_j が算定します。

3.3 せん断有効断面積 As

せん断有効断面積 As は、せん断形状係数 κ による標準的な取扱いで算定します。 RC/SRC は \( A_s = A/\kappa \)(\( \kappa = 1.2 \))とします。 S 造はウェブ・フランジ断面(強軸はウェブ、弱軸はフランジ)から \( A_s = A_w/\kappa \)(\( \kappa = 1.0 \))とします。

算定式(代表例)

H 形:

\[ a_{s,y}\text{(弱軸)} = 2 \cdot B \cdot t_f \]

\[ a_{s,z}\text{(強軸)} = H \cdot t_w \]

矩形 RC:

\[ a_s = b \cdot d/1.2 \]

円形鋼管:

\[ a_s = A/2 \]

断面検定で用いる有効断面積とは別の量です

本節の \( A_s \) は要素剛性(ティモシェンコ梁のせん断剛性 \( GA_s \))に用いる値です。 鋼構造の許容応力度検定でせん断応力度 \( \tau = Q/A \) を求めるときの有効断面積は、これとは別の定義によります(6.3 鋼構造 断面検定「せん断の検定」)。 検定側はウェブの内法せいを用い、フランジのせん断応力分布も考慮するためです。

H 形では、本節が \( a_{s,z} = H t_w \)(ウェブ全せい)・\( a_{s,y} = 2 B t_f \) であるのに対し、検定側は \( A_y = t_w(H - 2 t_f) \)・\( A_z = 2 B t_f/1.5 \) となります。

As = 0 は入力エラー

線材(梁・柱・ファイバー・マルチスプリング)が参照する断面の \( A_{s,y} \)・\( A_{s,z} \) は正の値でなければならず、0 の断面を用いるモデルは解析前チェックでエラー停止します。\( A_s = 0 \) はティモシェンコ梁の \( \phi = 0 \)(せん断変形なし)となるうえ、せん断降伏の判定閾値も \( Q_y = +\infty \)(せん断では決して降伏しない)となり、入力不足が「せん断について無限に強い部材」として通ってしまうためです。

せん断変形を無視した検討を行う場合は、断面の \( A_s \) を 0 とするのではなく、部材のモデル化として十分大きな \( A_s \) を与えてください(\( \phi \to 0 \) でベルヌーイ梁に一致します)。

実装section_shape::to_section が算定します。 強軸曲げ Iy と z 方向せん断 as_z、弱軸曲げ Iz と y 方向せん断 as_y を対応させる規約に従います(P1 §4.1)。 \( A_s = 0 \) の検出は statics::analysis::precheck::precheck_model です。

3.4 コンクリートのヤング係数 Ec

コンクリートのヤング係数 Ec は、RC 規準の Ec 式で算定し、基本形は次式のとおりです。

\[ E_c = 3.35 \times 10^4 \cdot (\gamma/24)^2 \cdot (F_c/60)^{1/3} \]

算定式(\( \gamma = 23 \) kN/m³ 固定、\( F_c \le 0 \) は 0 とします):

\[ E_c = 3.35 \times 10^4 \cdot (23/24)^2 \cdot (F_c/60)^{1/3} \]

実装section_shape::concrete_young_modulus が算定します。

3.5 耐震壁のせん断形状係数 κ

側柱付き耐震壁は、壁板をウェブ・両端の側柱をフランジとする平面 I 形断面とみなし、せん断形状係数 κ を材料力学の定義(Timoshenko 梁のせん断補正係数)から厳密に算定します。

算定式

\[ \kappa = \frac{A}{I^2} \int \frac{Q(y)^2}{b(y)} , dy \]

  • \( A \): 断面積、\( I \): 断面二次モーメント
  • \( Q(y) \): 位置 \( y \) より上の断面一次モーメント
  • \( b(y) \): 位置 \( y \) における断面幅(ウェブ部は壁厚 \( t \)、フランジ部は側柱幅)

面内曲げの断面は「壁長方向を断面のせい、壁厚方向を断面の幅」とみなし、断面のせいは側柱外面間の全長 \( D \)、フランジは両端の側柱(沿壁方向せい \( d_c \)・壁直交方向幅 \( b_c \))、ウェブは壁板(せい \( D - 2 d_c \)・幅 \( t \))です。

性質

  • 一様矩形(側柱なし、または側柱幅が壁厚に等しい)では \( \kappa = 1.2 \)(= KAPPA_RC)。
  • 側柱が大きいほど \( \kappa \) は増大し、極限ではせん断断面積 \( A/\kappa \) がウェブ断面積に漸近します(I 形断面ではせん断をウェブがほぼ全負担します)。
  • せん断断面積 \( A/\kappa \) は総断面積を超えません。

実装section_shape::wall_shear_shape_factor_isection が算定しますが、退化入力(寸法が非正など)では 1.2 にフォールバックします。

3.6 SRC / CFT の等価断面性能

SRC/CFT の等価断面性能は、ヤング係数比による等価換算断面の累加(SRC 規準の考え方)で算定し、SRC は次の式により求めます。

\[ A_n = {}_{rc}A_n + {}_s A_n \cdot (n_s - 1) \]

\[ I_e = {}_{rc}I_e + {}_s I_e \cdot (n_s - 1) \]

\[ A_s = {}_{rc}A_s + {}_s A_s \cdot (n_{gs} - 1) \]

\[ J = {}_c J + ({}_s G/{}_c G) \cdot {}_s J \] CFT は SRC 柱に準じ、鋼基準の 1/n 換算で累加します。

算定式

換算係数(\( \nu_s = 0.3 \)、\( \nu_c = 0.2 \)):

\[ n_s = E_{\text{steel}}/E_c \]

\[ n_{gs} = n_s \cdot \frac{1 + \nu_c}{1 + \nu_s} \]

SRC 軸剛性用:

\[ A = b \cdot d + (n_s - 1) \cdot {}_s a \]

SRC 曲げ:

\[ I_y = \frac{b \cdot d^3}{12} + (n_s - 1) \cdot {}_s i_y \]

CFT(充填コンクリートを鋼基準へ換算):

\[ A = A_{\text{steel}} + {}_c a/n \]

\[ I_y = I_{y,\text{steel}} + {}_c i_y/n \]

実装section_shape::{src_equivalent_props, cft_equivalent_props} が算定します。 ns の暫定既定は N_S_EQ = 15 とします。

3.7 ファイバー断面(M–φ 積分)

ファイバー断面の断面力と接線剛性は、平面保持仮定に基づくファイバー断面積分(設計書 §9.2)で算定します。

算定式

ファイバーひずみ(平面保持):

\[ \varepsilon = \varepsilon_0 - \kappa_z \cdot y + \kappa_y \cdot z \]

断面力:

\[ N = \sum \sigma \cdot A \]

\[ M_y = \sum \sigma \cdot A \cdot z \]

\[ M_z = \sum (-\sigma \cdot A \cdot y) \]

  • 接線剛性 3×3 は各ファイバーの \( E_t \cdot A \)、\( E_t \cdot A \cdot y \)、\( E_t \cdot A \cdot z \) の総和として求めます

実装squid_n_section::fiber::section_responsefiber.rs)が算定し、各ファイバーは独立履歴状態を保持します(設計書 §6.3)。 ファイバーの配置は断面形状(SectionShape)に応じて mn_surface::plastic_fibers_at が生成します(H 形・箱形は板分割、鋼管・円形は円環分割、RC・SRC・CFT はコンクリート・主筋・鋼材の各領域へ配置)。形状を持たない断面は矩形分割(rect_fiber_section)です。M–φ / M–θ 曲線は mn_surface で求めます(弾完全塑性、二分法で軸力整合、\( \theta(M) = \frac{M \cdot L}{6 \cdot EI_0} + L_p \cdot \left( \varphi(M) - M/EI_0 \right) \))。

全塑性評価の既定強度

材料未割当時の全塑性評価には次の既定強度を用います(鋼材降伏 235・鉄筋降伏 345・コンクリート圧縮 24 [N/mm²]、弾性係数 205000 [N/mm²])。 コンクリートの弾性係数は RC 規準式(\( \gamma = 23 \) 固定)によります。

ファイバー配置の解像度

全塑性評価の配置は、M-N 相関用マルチファイバーと単純降伏バネには細分割(最大寸法の 1/40 目安)、M-N 相関用マルチスプリングには粗い配置(最大寸法の 1/4 目安)を用います。 鋼管・円形の円環分割は、細分割では周 48・薄肉径方向 4・中実径方向 12、粗い配置では周 8・薄肉径方向 1・中実径方向 2 です。 非対称断面(山形・溝形・T 形等)は断面積重心へ座標を平行移動し、曲げの基準軸を図心に取ります。 SRC の内蔵鉄骨とコンクリートの重複は控除せず単純累加します(鉄骨断面積は数%のため影響は軽微ですが、断面積をわずかに過大に数える危険側の近似です)。

M–N 相関曲面

剛塑性(全塑性応力分布)の支持点法で算定します。 平面保持のひずみ速度方向を単位球面上で掃引し、各方向でひずみ符号に応じた限界応力(鋼は ±fy、コンクリートは圧縮のみ)を積分した断面力が曲面上の支持点になります。 単純降伏バネは軸バネと回転バネの連成を線形相関(\( |N|/N\text{許容} + M/M\text{許容} = 1 \))で考慮し、曲面は N 軸を頂点とする双錐になります。 耐力 0 の軸があると退化するため、参照耐力には下限を設けます(軸耐力 1.0 [N]、モーメント耐力 1.0 [N·mm])。

M–φ / M–θ 曲線(ヒンジ詳細表示用)

弾完全塑性のファイバー評価で、曲率上限は最外縁ひずみが降伏ひずみの約 12 倍となる曲率とし、軸力整合は 80 回の二分法で行います。 初期剛性は最初のステップの割線とします。

RC 主筋点の配置(既定)

矩形断面の主筋点は、断面検定の有効せいと同じ squid_n_core::rc_rebar_geom の規約で置きます。

  • 縁から第 1 段中心: \( \text{かぶり} + \text{せん断補強筋径} + \text{主筋径}/2 \)
  • 段間隔: \( \text{主筋径} + \max(25,\ 1.5\cdot\text{主筋径}) \)(配筋指針のあき)
  • 円形断面の周方向主筋半径も、縁から同じ第 1 段距離を用います(多段は未対応)

4. 要素の定式化・剛性

この章では、各有限要素の剛性マトリクス、質量マトリクス、幾何剛性、内力回復の定式化をまとめます。 フレーム要素はティモシェンコ梁理論、板は MITC4 シェルによります。 剛域は RC規準の剛域規定(技術基準解説書の運用)、スラブ協力幅は RC規準 8 条、雑壁の断面性能算入は等価断面の力学(平行軸の定理)に基づきます。

各項目は「導入文(何を・どの基準で)、算定式、実装」の順で記します。

この章の内容

4.1 ティモシェンコ梁要素(12×12)

せん断変形を考慮したティモシェンコ梁理論に基づき、フレーム要素の 12×12 剛性を算定します。 力学の閉形式であり、V&Vで片持ち先端たわみ \( \delta = 0.417292 \) mm 等により検証しています。

本節では、各剛性項の値だけでなく、要素剛性マトリックスが全体としてどう組み上がるか(可撓部の raw 剛性 → 端部条件の反映 → 剛域変換 → 全体座標変換)を、実装(squid_n_element::frame::beam)に沿って示します。

各項目は「導入文(何を・どの基準で)、算定式、実装」の順で記します。

4.1.1 局所自由度と組み立ての全体像

要素は 2 節点・各節点 6 自由度の計 12 自由度をもちます。局所自由度の並びは次のとおりです(i 端・j 端の順、各端 [ux, uy, uz, rx, ry, rz])。

\[ \boldsymbol{u} = [,u_{x,i},,u_{y,i},,u_{z,i},,r_{x,i},,r_{y,i},,r_{z,i},; u_{x,j},,u_{y,j},,u_{z,j},,r_{x,j},,r_{y,j},,r_{z,j},]^{T} \]

局所座標は \( e_x \)(i→j 材軸)・\( e_y \)(強軸)・\( e_z \) の右手系で、断面主軸まわりの曲げ(\( I_y,,I_z \))が非連成となるため、raw 剛性は次の 4 つの独立ブロックに分解できます(それ以外の成分は 0)。

ブロック関与自由度(index)剛性
軸(伸縮)\( u_{x,i},,u_{x,j} \)(0, 6)\( EA/L \)
ねじり\( r_{x,i},,r_{x,j} \)(3, 9)\( GJ/L \)
強軸まわり曲げ(xy 面)\( u_{y,i},,r_{z,i},,u_{y,j},,r_{z,j} \)(1, 5, 7, 11)4×4
弱軸まわり曲げ(xz 面)\( u_{z,i},,r_{y,i},,u_{z,j},,r_{y,j} \)(2, 4, 8, 10)4×4

節点自由度の局所剛性 \( K_{\text{local}} \) は、次の 4 段で組み立てます(実装 stiffness.rs::local_stiffness)。

  1. 可撓長の raw 剛性:節点間長 \( L \) から剛域長を除いた可撓長 \( L' = L - \lambda_i - \lambda_j \) を用い、両端固定(fixed–fixed)の 12×12 raw 剛性を組みます(4.1.2)。
  2. 端部条件の反映:剛接は厳密に扱い(近似ばねを用いない)、ピン・半剛の端のみ要素端回転を内部自由度へ分離して静縮約し 12×12 に戻します(4.1.3)。線材(梁・柱)は既定で i 端のねじれも解放します(4.1.3a)。
  3. 剛域変換:可撓端の自由度を剛体アームで節点自由度へ写します(4.1.4)。
  4. 全体座標変換:\( K_{\text{global}} = R^{T} K_{\text{local}} R \)(4.1.6)。

仕口パネルを設けた接合部では、パネル分のオフセットが剛域長に含まれるため、1.〜3. に反映されます(4.1.5)。

4.1.2 可撓部の raw 剛性(両端固定・12×12)

以下の \( L \) は raw 剛性を組む長さを表し、剛域があれば可撓長 \( L' = L - \lambda_i - \lambda_j \)、なければ節点間長そのものです(軸剛性のみ 4.1.4 の補正で \( EA/L \)(節点間長基準)へ戻します)。

算定式

せん断パラメータ:

\[ \varphi_z = \frac{12 \cdot E \cdot I_z}{G \cdot A_{s,y} \cdot L^2} \]

\[ \varphi_y = \frac{12 \cdot E \cdot I_y}{G \cdot A_{s,z} \cdot L^2} \]

曲げ係数:

\[ a_z = \frac{E \cdot I_z}{(1+\varphi_z) \cdot L^3} \]

\[ a_y = \frac{E \cdot I_y}{(1+\varphi_y) \cdot L^3} \]

軸・ねじりの 2×2 ブロック(自由度 \( [,\cdot_i,,\cdot_j,] \)):

\[ K_{\text{axial}} = \frac{EA}{L}\begin{bmatrix} 1 & -1 \\ -1 & 1 \end{bmatrix}, \qquad K_{\text{tors}} = \frac{GJ}{L}\begin{bmatrix} 1 & -1 \\ -1 & 1 \end{bmatrix} \]

強軸まわり曲げ(xy 面)の 4×4 ブロック(自由度 \( [,u_{y,i},,r_{z,i},,u_{y,j},,r_{z,j},] \)):

\[ K_{xy} = \begin{bmatrix} 12 a_z & 6 a_z L & -12 a_z & 6 a_z L \\ 6 a_z L & (4+\varphi_z) a_z L^2 & -6 a_z L & (2-\varphi_z) a_z L^2 \\ -12 a_z & -6 a_z L & 12 a_z & -6 a_z L \\ 6 a_z L & (2-\varphi_z) a_z L^2 & -6 a_z L & (4+\varphi_z) a_z L^2 \end{bmatrix} \]

弱軸まわり曲げ(xz 面)の 4×4 ブロック(自由度 \( [,u_{z,i},,r_{y,i},,u_{z,j},,r_{y,j},] \))です。並進-回転結合項の符号が xy 面と逆になります(回転 \( r_y \) の向きによる規約):

\[ K_{xz} = \begin{bmatrix} 12 a_y & -6 a_y L & -12 a_y & -6 a_y L \\ -6 a_y L & (4+\varphi_y) a_y L^2 & 6 a_y L & (2-\varphi_y) a_y L^2 \\ -12 a_y & 6 a_y L & 12 a_y & 6 a_y L \\ -6 a_y L & (2-\varphi_y) a_y L^2 & 6 a_y L & (4+\varphi_y) a_y L^2 \end{bmatrix} \]

実装beam/stiffness.rs::local_stiffness_raw が算定します。 せん断有効断面積 \( A_{s,y},,A_{s,z} \) が 0 のときは、要素構築時(beam/construct.rs)に \( \text{rect_shear_area}(A) = 5A/6 \)(squid_n_core::model::rect_shear_area)へフォールバックした値が用いられます。 この raw 剛性は常に両端固定で組み、端条件(ピン・半剛)は 4.1.3 の回転ばねで与えます。

4.1.3 端部条件(剛接・ピン・半剛)の反映

部材端の剛接・ピン・半剛接を要素剛性へ反映します。剛接は厳密に扱い(近似ばねを用いない)、ピン・半剛の端だけ要素端回転を内部自由度へ分離して静縮約します。

算定式

  • 剛接(Fixed):「節点回転 = 要素端回転」を厳密に満たすため、要素端回転をそのまま節点回転自由度に残します(内部自由度・ばね不要)。raw 剛性は回転が節点自由度に乗っているので、両端剛接ならその raw 剛性そのものが要素剛性となります。
  • ピン・半剛:その端の要素端回転 \( r^{e} \) を内部自由度へ分離し、節点回転 \( r \) との間に回転ばね \( k_s \) を挟みます。

\[ \begin{bmatrix} k_s & -k_s \\ -k_s & k_s \end{bmatrix} \quad(\text{自由度 } [,r,\ r^{e},]),\qquad k_s = \begin{cases} 0 & (\text{Pinned:ピン}) \\ k_\theta & (\text{SemiRigid:半剛、} k_\theta\ \text{[N·mm/rad]}) \end{cases} \]

分離した内部回転自由度(本数 = 非剛接の回転自由度数、0〜6)を静縮約して 12×12(節点自由度のみ)へ戻します。

\[ K^{*} = K_{aa} - K_{ab} \cdot K_{bb}^{-1} \cdot K_{ba} \]

ここで \( a \) は残す 12 節点自由度、\( b \) は消去する内部回転自由度です。剛接端は \( b \) に含めない(=内部自由度を作らない)ため、全端剛接では \( b \) が空となり raw 剛性がそのまま返ります。

  • ピン(\( k_s = 0 \)):節点回転と要素端回転が完全に切れ、その端は曲げモーメントを節点へ伝えません。内部回転を消去した厳密なモーメント解放となり、当該節点回転への当要素の剛性寄与は厳密に 0 になります。
  • 剛接:内部自由度を作らないため、raw の回転剛性がそのまま節点回転へ伝わります(厳密。ペナルティ近似・チューニング係数を用いません)。
  • 半剛(\( k_s = k_\theta \)):接合部の回転剛性 \( k_\theta \) に応じて部分的にモーメントを伝えます(有限ばねは近似ではなくモデルそのものです)。

実装beam/stiffness.rs::condense_end_springs が算定します。剛接は厳密です(全端剛接では静縮約を行わず raw を返します)。

ねじり剛性を持たない部材(\( J \le 0 \) または \( G \le 0 \))の \( r_x \) は、端条件がピン・半剛でも解放しません。解放しても縮約行列 \( K_{bb} \) の対角がゼロになって特異化するだけで、モーメント解放としての意味を持たないためです(非線形梁要素 4.9.6 と同じ規則)。

4.1.3a 部材のねじり剛性の既定モデル化(i 端ねじれ解放)

床と一体になる大梁のねじり剛性は設計上期待しないため、**線材(梁要素。柱を含む)の i 端のねじれ(材軸まわり回転 \( r_x \))を既定でピン(解放)**として要素剛性を組みます。解放は 4.1.3 と同じ回転ばね \( k_s = 0 \) の静縮約で厳密に行い、結果として

  • 解放端のねじりモーメントは \( M_x = 0 \)
  • ねじりモーメントは分布ねじりがない部材では材長方向に一定

であるため、部材全長で \( M_x = 0 \)(=ねじりを負担しない)となります。

対象:2 節点の線材(梁・ファイバー梁・MS 梁・ブレース)で、梁・柱の区別はしません。壁・シェル・パネルゾーン・ばね類はねじり自由度の概念を持たないため対象外です。

設定:準備計算パネルの「部材のモデル化」にあるチェックボックス「部材 i 端のねじりをピン(梁・柱)」で建物一律に切り替えます(既定は ON)。OFF にすると全部材でねじり剛性 \( GJ/L \) を保持します。剛性が変わる設定のため、切り替えると解析結果は再計算が必要になります。

解放しない部材(特異化の回避)

ねじりを解放した部材は材軸まわり回転に剛性を持たなくなるため、その回転を他に拘束するものがない節点では全体剛性行列が特異になります。そこで、部材の両端節点それぞれについて材軸 \( e_x \) まわりの回転が次のいずれかで拘束されることを確かめ、確かめられない部材は解放しません(ねじり剛性を保持します。安全側のフォールバック)。

拘束の経路判定
非平行な線材の曲げその節点に、材軸と平行でない線材が 1 本以上接続している。線材は材軸に直交する 2 方向まわりの曲げ剛性を持つため、非平行な線材が 2 方向以上集まる節点はすべての回転軸が曲げで拘束される
線材以外の要素その節点に壁・シェル・パネルゾーン・ばね・免震・ダンパーのいずれかが接続している(回転剛性を与え得るため拘束ありとみなす)
支点拘束材軸方向の成分を持つ回転自由度(例: 材軸が X なら \( R_x \))がすべて固定されている
支点ばね上記と同じ回転成分のばね定数がすべて正である

平行な線材(一直線に続く同方向の部材)は、材軸まわりをねじりでしか拘束できず、そのねじりも同じ既定で解放され得るため、拘束の経路には数えません。

剛床(Constraint::RigidDiaphragm)も判定に含めません。剛床が拘束するのは面内 3 成分(\( U_x, U_y, R_z \))で、スレーブ節点の \( R_z \) が独立自由度でなくなる一方、その拘束はマスター節点の \( R_z \) へ集約されるだけです。「柱 1 本だけが載る剛床」ではマスターの \( R_z \) を止めるのがその柱のねじりだけになるため、剛床を「拘束あり」とみなすと特異化を見逃します。

この規則により、解放されない典型例は次のとおりです。

  • 大梁・柱を中間節点で分割し、その節点に直交部材が取り付かない場合:分割された 2 本は一直線(平行)で、他に拘束がないため両方とも解放されません。
  • 片持ち梁(跳ね出し)の先端節点を持つ部材:先端には他の部材も支点もないため解放されません。
  • 柱脚をピン支点(並進のみ拘束)とし、基礎梁が取り付かない柱:柱脚で材軸(鉛直)まわりの回転が拘束されないため解放されません。

確認方法:解放されなかった部材は、準備計算タブの「ねじり解放」に部材 ID・種別・原因となった節点の一覧として表示されます。個別の部材については、結果表示のモデル化ビューで部材にポインタを重ねると、解放されている場合に「ねじれ: i 端ピン(部材全長で Mx=0)」が表示されます。なお、ねじり剛性をもともと持たない部材(断面の \( J \le 0 \)、材料の \( G \le 0 \)、トラス扱いのブレース)は解放してもしなくても剛性が 0 のため、一覧には含めません。

実装beam/torsion.rs::{i_end_torsion_release, i_end_torsion_release_skip}(適用判定と理由)と beam/stiffness.rs::condense_end_springs(弾性梁の静縮約)・fiber::resolve_end_releases(非線形梁)です。

4.1.4 剛域

部材端の剛域を扱うため、可撓長 \( L' = L - \lambda_i - \lambda_j \) で 4.1.2〜4.1.3 の剛性を求めたうえで、可撓端の自由度を剛体アームで節点自由度へ写します。 剛域長は RC規準の剛域規定(部材フェイスから部材せいの 1/4 内側までを剛域とする取り方)に基づきます。

剛域を設ける条件

剛域を設けるのは、その節点に集まる柱・大梁がすべて RC/SRC 系のときだけです。1 本でも S・CFT 系の柱または大梁が集まる仕口では、その端の剛域長を 0 とします。S 造の仕口は剛域ではなく仕口パネル(4.1.5)でモデル化するため、剛域も与えると接合部を二重に剛く評価することになります。

構造種別(S・CFT 系か RC・SRC 系か)は2.5 構造種別の判定によります。断面形状ではなく材料の区分で決まるため、H 形のコンクリート部材は RC として扱われます。判定の対象は柱・大梁(ElementKind::Beam)で、ブレース・壁・仕口パネルと、解析要素ではない二次部材(小梁・間柱)は対象外です。

算定式(剛域長 λ)

上の条件を満たす端について(負は 0):

\[ \lambda = L_f - D/4 \]

危険断面フェイス距離(剛域を設けない端でも常に算定):

\[ \text{face} = L_f \]

  • \( L_f \) は節点から部材フェースまでの距離です。仕口部で直交する部材の最大せいの半分に、その部材に取り付く壁の張り出しを加えた値になります(下記「壁の考慮」)。壁がなければ \( L_f = D_{\text{直交}}/2 \) です。直交判定は軸内積 < 0.707(概ね 45°以上)とします。
  • \( D \) は当該部材のせいです(直交部材のせいではありません)。壁を考慮する場合は取り付く壁を含めた値になります。
  • \( L_f \) は剛域長と危険断面フェイス距離で共有します。ですが、壁を含めるのは剛域長のほうだけです(下記「壁の考慮」)。

壁の考慮

既定では、剛域長を求める \( L_f \) と \( D \) に取り付く壁を含めた寸法を用います。柱には袖壁が材軸に直交する水平方向へ、梁には腰壁・垂壁が鉛直方向へ張り出します。その分だけフェースが外側へ移り、部材せいが増します。

壁の張り出しは「壁の長さ − 部材せい/2」です。壁の長さは、柱に対しては袖壁長さ、梁に対しては腰壁・垂壁の高さを指します。いずれも構造階高・軸間距離の 1/2 の位置における包絡開口までの距離として評価し、開口がその位置を跨がない場合は壁を両側の部材で折半します。

  • 対象は現場打ちコンクリート壁で厚さ 100 mm 以上のものです。耐震壁として成立するか否かを問いません(耐震壁の板厚条件 120 mm とは別の閾値です)。
  • **耐震スリットを入れた辺の部材には、壁を算入しません。**その部材とは縁が切れているためです。柱際が切れていればその柱へ袖壁として、梁際が切れていればその梁へ腰壁・垂壁として算入しません。辺ごとに独立に効くので、柱際だけを切った壁でも梁へは算入されます。
  • **反対側の梁際が切れている壁は、上下で折半しません。**残った 1 本の梁が全高を負担します(三方スリットの壁を、その梁の垂れ壁・腰壁として扱う形です)。
  • 部材せい \( D \) は向きを持たないため、両側に取り付く壁の長さが異なる場合は長い方を基準にします。
  • 部材フェース \( L_f \) は向きを持ちます。柱の片側だけに袖壁がある場合、フェースが外側へ移るのは袖壁が張り出している側に取り付く梁だけです。反対側の梁のフェースは移りません。
  • **危険断面フェイス距離には壁を含めません。**壁の考慮は剛域の規定であり、危険断面位置は柱フェースで決まる幾何量だからです。フェイス距離は RC/SRC 梁の自重の内法長(1.5 地震用重量・層データの生成)や数量積算にも用います。ここに壁を含めると、壁の張り出し分だけ梁の自重が過小になります。

設定:解析タブの「部材のモデル化」にあるチェックボックス「剛域の算定で壁を考慮する」で建物一律に切り替えます(既定は ON)。OFF にすると部材の原断面だけで算定します。剛性が変わる設定のため、切り替えると解析結果は再計算が必要になります。

両端の剛域が重なる場合

壁の張り出しが大きい場合や短スパンの部材では、両端の剛域長の合計が材長以上になることがあります。この場合は、材長の中点から部材せいの 1/4 の距離までを剛域とします。

\[ \lambda_i = \lambda_j = \max(0,\ L/2 - D/4) \]

算定式(剛域変換)

可撓端変位 \( \boldsymbol{u}{\text{flex}} \) と節点変位 \( \boldsymbol{u}{\text{node}} \) を、材軸方向オフセット \( \lambda_i,,\lambda_j \) の剛体アームで関係づけます。

\[ \boldsymbol{u}{\text{flex}} = T_r, \boldsymbol{u}{\text{node}}, \qquad K_{\text{node}} = T_r^{T}, K_{\text{flex}}, T_r \]

\( T_r \) は単位行列に、剛体アームによる並進-回転結合の非零成分を加えたものです(それ以外は恒等)。

剛体アームの運動学 \( \boldsymbol{u}{\text{flex}} = \boldsymbol{u}{\text{node}} + \boldsymbol{\theta}_{\text{node}} \times \boldsymbol{r} \)(可撓端は i 端で節点から材軸内側へ \( \boldsymbol{r}_i = (+\lambda_i, 0, 0) \)、j 端で \( \boldsymbol{r}_j = (-\lambda_j, 0, 0) \))を成分展開すると、非零成分は次になります。

\[ (T_r){u{y,i},,r_{z,i}} = +\lambda_i,\quad (T_r){u{z,i},,r_{y,i}} = -\lambda_i,\quad (T_r){u{y,j},,r_{z,j}} = -\lambda_j,\quad (T_r){u{z,j},,r_{y,j}} = +\lambda_j \]

すなわち、可撓端の並進は「節点並進 ± アーム長 × 節点回転」で表され(例:\( u_{y,i}^{\text{flex}} = u_{y,i} + \lambda_i, r_{z,i} \))、節点回転による付加変位が剛域を通じて伝わります。剛体回転(節点回転=弦回転)では可撓端に相対たわみが生じず、内力はゼロになります。

軸・ねじりの扱い(剛域は曲げのみを剛とする):

  • 剛域は曲げ(せん断を含む)のみを剛とする方針とし、軸・ねじりは剛域で増大させません。可撓長 \( L' \) で組むと \( EA/L',\ GJ/L' \) となるため、軸断面積・ねじり定数を \( A \cdot (L'/L),\ J \cdot (L'/L) \) に補正して \( EA/L,\ GJ/L \)(いずれも節点間長基準)へ揃えます。剛域なしでは補正 1 です。
  • 剛域変換 \( T_r \) は回転・軸方向自由度に作用しないため、補正後の軸・ねじり剛性がそのまま残り、曲げ(xy・xz 面)のみが剛体アームで剛域化されます。

剛域長の解決:

  • 剛域長は負値を 0 に丸めます。自動算定では両端の合計が節点間長以上になる場合に「材長の中点から部材せいの 1/4」へ丸めますが、剛域長を手入力で上書きした結果として両端の合計が節点間長以上になった場合は、可撓長がゼロ以下で要素が剛性ゼロに退化するため剛域なしとして扱います。

実装:危険断面フェイス距離は squid_n_core::face_distance が求めます。接合関係と断面せいだけで決まる幾何量のため、剛域長とは独立に算定でき、自重・数量積算のように剛域と無関係な用途からも直接求められます。剛域長は beam/rigid_zone.rs::auto_rigid_zones が求め、剛体アームの変換 \( T_r \) と剛域長の解決を frame/rigid_arm.rs(弾性梁とファイバー梁で共有)が行います。 直交判定は \( \text{軸内積} < 0.707 \)(概ね 45°以上)とします。組立順は「可撓長で raw 剛性 → 端部ばね静縮約 → 剛域変換」とします。 非線形梁要素(ファイバー・MS)の剛域は 4.9.5 を参照してください。

4.1.5 仕口パネルの剛域長への反映

仕口パネル(柱梁接合部パネル)を設けた接合部では、部材は節点そのものではなく、パネルの面で接合します。節点から接合面までの距離は剛体アームそのものなので、剛体アーム長へ算入します

剛体アーム長は、剛域長とパネル分オフセットの大きい方とします。

\[ \lambda'_i = \max(\lambda_i,\ \lambda^{p}_i) \]

ここで \( \lambda^{p}_i \) がパネル分のオフセットで、接合部の物理的な半寸法です。

部材接合する面オフセット
はり(水平材)柱フェース柱せいの最大値 / 2
柱(鉛直材)梁フェース梁せいの最大値 / 2

剛域長 \( \lambda_i \) とパネル分オフセット \( \lambda^{p}_i \) は別々に保持します。剛域長は設計上の調整量(低減率を掛ける対象)であり、オフセットは部材配置から決まる幾何だからです。剛域長の手動指定がオフセットより大きければその値が剛体アーム長になり、小さくてもオフセットの分は確保されます。手動指定した剛域長そのものは、オフセットに上書きされることなく残ります。

準備計算の「剛域」表には、剛域長 \( \lambda_i \)・パネル分オフセット \( \lambda^{p}_i \)・危険断面フェイス距離を別々の列で表示します。

このオフセットは、断面算定の危険断面位置(4.1.4 のフェイス距離)とは独立な量として扱います。危険断面位置は設計上の評価位置であって、部材が実際にどこで接合するかとは別に定まるためです。

可撓長は \( L' = L - \lambda'_i - \lambda'_j \) となり、剛性の組み立てだけでなく、幾何剛性(4.1.7)・せん断降伏の内法高さ・座屈長さ係数 \( K \) の剛度比 \( G \)(6.3.1)も同じ可撓長を用います。4.1.4 のとおり軸・ねじり剛性は節点間長基準のままなので、パネルを設けても軸剛性・ねじり剛性は変わりません。

パネルの剛性そのもの(せん断変形角 \( \gamma_X,,\gamma_Y \) の 2 自由度と \( K_{xp} = K_{yp} = G \cdot V_e \))と、対象とする接合部の判定は 4.6 を参照してください。

実装:オフセットの算定を squid_n_core::panel_zone::panel_half_extent、モデルへの書き込みを springs/panel_gen.rs::apply_auto_panel_zones が行い、剛体アーム長を RigidZone::rigid_length_irigid_length_j が返します。

4.1.6 全体座標系への変換

局所 12×12 剛性を全体座標へ回します。フレーム要素は \( e_x = (p_j - p_i)/L \) とし、参照ベクトルを直交化して \( e_y,,e_z \) を構成します(詳細は 4.8)。

\[ K_{\text{global}} = R^{T} \cdot K_{\text{local}} \cdot R \]

\( R \) は 3×3 方向余弦を 4 ブロック並べた 12×12 のブロック対角行列です。

実装beam/behavior.rs::tangent_stiffness は全体系の 12×12 を返す契約です(シェルと同じ)。これを欠くと、局所系と全体系が一致しない部材(鉛直柱・任意方向材・非対称断面 \( I_y \ne I_z \))で組立 K が誤ります。座標変換自体は common::transformtransform.rs)です。

4.1.7 幾何剛性・整合質量

P-Δ 効果の線形化幾何剛性と Hermite 梁の一貫質量を算定します。 根拠は力学であり、V&Vで固有値・座屈傾向により検証しています。

算定式

幾何剛性 Kg(標準ビーム幾何剛性、係数 \( 6/5 \)、\( L'/10 \)、\( 2L'^2/15 \)、\( -L'^2/30 \)):

\[ c = N/L' \]

  • 幾何剛性は可撓長 \( L' \) で組み、弾性剛性と同じ剛域変換 \( T_r \)(4.1.4)を施して節点自由度へ写します。P-δ は可撓部でのみ生じ、剛域は剛体アームとして働きます。剛域なし(\( L'=L,\ T_r=I \))では全長 \( L \) の幾何剛性に一致します。軸力 \( N \) は引張正で、最後に全体座標へ回します。
  • 端部条件(ピン・半剛)は幾何剛性には反映しません(線形化 P-Δ の実務的簡略化)。

整合質量(標準整合質量、係数 156, 54, 22, 13, 4, 3):

\[ c_2 = m/420 \]

  • 質量は節点間の全長 \( L \) で組みます。剛域は剛性(曲げ)の理想化であって、部材の質量は全長にわたって物理的に存在するため、質量は全長基準が正しいです(剛域・端部ばねは反映しません)。
  • 質量は幾何断面積 \( A_{\text{mass}} \)(\( m = \rho \cdot A_{\text{mass}} \cdot L \))を用います。SRC の等価換算断面 \( A \) で質量が過大にならないよう、剛性用 \( A \) と区別します。集中質量は並進自由度に \( m/2 \) を与えます。
  • ねじれ自由度(\( \theta_x \))には、部材軸まわりの回転慣性として \( c_t = \rho J L / 6 \) を用い、両端の対角へ \( 2c_t \)、両端の連成項へ \( c_t \) を与えます。ここでの \( J \) はねじり剛性 \( GJ/L \) に用いるねじり定数であり、極二次モーメント \( I_p = I_y + I_z \) ではありません。開断面では \( J \ll I_p \) となるため、ねじれの回転慣性は小さめに評価されます。

実装beam/behavior.rs::{geometric_stiffness, mass_matrix} が算定します。

4.1.8 剛性計算上の付加(協力幅・壁エレメント上下梁・雑壁)

次の剛性補正を実装しています(可撓部 raw 剛性の断面性能側に反映します)。

  • スラブ協力幅による強軸曲げ剛性増大(RC 大梁): 対象は両端節点を境界に持つ床領域の 外周(大梁の区画。小梁による細分によらず常に床領域全体を表す)、またはどの床領域にも属さない 床板で版がある場合に限ります(版 = 断面が割り当たり板厚が正。取り付く床板は境界を持たない ため対象外で倍率 1.0、版なしは増大しません)。判定を床領域の外周で行うのは、床領域が小梁で 複数の床板へ細分されていても、床領域の外周を走る大梁の協力幅が細分によって消えないようにする ためです。隣接する平行梁との内法距離 a(軸間距離から自梁・相手梁の幅の半分ずつを控除)から片側協力幅 ba を \( a < L/2 \) で \( b_a = (0.5 - 0.6a/L) \cdot a \)、\( a \ge L/2 \) で \( b_a = 0.1L \) として求め、 T 形断面の Ie による \( (I_e/I_0) \) 倍とします。根拠は RC規準 8 条です。 厚さ \( t \) は該当する床領域内の床板の板厚(複数なら最大)、または帰属なし床板自身の板厚 です。取れないときは建物一律の剛性計算用スラブ厚(既定 0 mm)を控えにします。 \( t \le 0 \) なら増大しません。実装は beam/stiffness_factors.rs::slab_stiffness_factor です。

  • S 造合成梁の剛性(H 形鋼大梁): スラブが取り付く水平な H 形鋼梁は、 スラブを考慮した換算断面剛性 I(スラブ上端からの図心 \( g = \frac{{}_c E \cdot B \cdot t \cdot (t/2) + {}_s E \cdot {}_s A \cdot (t + {}_s H/2)}{{}_c E \cdot B \cdot t + {}_s E \cdot {}_s A} \) による)と鉄骨単独 剛性 sI の平均 \( (I + {}_s I)/2 \) を強軸剛性に採用します(各種合成構造設計指針の 完全合成梁剛性を安全側に丸めた平均法)。協力幅 B は RC 梁と共通の RC規準 8 条です。デッキ高さは 0、スラブコンクリートは Fc21 の標準仮定とします。 実装は beam/stiffness_factors.rs::composite_beam_stiffness_factor です。

  • 壁エレメントモデル上下大梁の剛性倍率: 既定 100 倍(WALL_GIRDER_STIFF_FACTOR。 壁の剛性を四隅節点へ伝えるための実務的モデル化)。

  • フレーム内雑壁(袖壁・腰壁・垂壁): 平行軸の定理で周辺部材の断面性能に合成します (compose)。せん断は \( A_s \mathrel{+=} \sum a_w/1.2 \)。「腰壁・垂壁のヤング係数は母材と同じ」 の仮定によるため、対象はコンクリート系(RC/SRC)部材のみとします(S 造部材への 無換算合成はしません)。実装は beam/stiffness_factors.rs(袖壁・腰壁処理)です。

    算入する壁の範囲は、耐震壁として成立しない壁版です(4.5 壁エレメント モデル)。柱・梁に囲まれた壁版か、取り付く壁版 (パラペット・腰壁・垂れ壁)かは問いません。同じ腰壁が入力の形によって剛性に 効いたり効かなかったりしないためです。耐震スリットのある壁も算入対象です。 切れているのは指定した辺だけなので、その辺の部材への算入だけを落とします。

    ただし、壁の取り付く長さを求めるには下辺 2 点・上辺 2 点の壁ローカル座標が要るため、 囲まれた壁版は境界がちょうど 4 節点のものだけを算入します。境界が 5 節点以上の 壁版(T 字取り付きなど)は、自重は配りますが剛性には算入しません。取り付く壁版は、 取付き線がその梁の全長を覆う場合だけ算入します(梁の一部にだけ載る壁を梁全長の 断面性能へ合成する根拠がないためです)。

    壁の取り付く長さは、袖壁なら構造階高の 1/2 の位置における包絡開口までの距離、 腰壁・垂壁なら軸間距離の 1/2 の位置における包絡開口までの距離です。位置付きの 開口がない場合の既定は、袖壁は壁長さを両側の柱で折半(\( l_w/2 \))、腰壁・垂壁は 壁高さを上下の梁で折半(\( h/2 \))です。ただし反対側の辺に主架構がない壁 (梁に載る腰壁・梁から垂れる垂壁)は折半せず、その 1 本の梁が全高を負担します。

4.2 トラス(ブレース)要素

軸剛性のみをもつブレースを次式で算定します(トラス要素の力学)。

\[ K_B = E \cdot A/L \]

軸剛性のみを持ち、曲げ・せん断・ねじりはゼロとします。

実装frame::trusstruss.rs)が算定します。

引張専用ブレースの扱い

引張専用ブレース(ElementKind::Brace { tension_only: true })は要素側では特別扱いせず、一般ブレースと同じ全剛性 \( E,A/L \) のトラス要素として扱います。圧縮側の無効化は線形応力解析の active-set 反復で実現し、計算条件 StressAnalysisCfg::tension_only_iteration で切り替えます。

  • 一括解析(既定, false:引張専用ブレースも全剛性 \( E,A/L \) のまま 1 回だけ解くため、圧縮側でも軸力を負担します。
  • active-set 反復(真の引張専用, true:各反復で圧縮側(軸伸び δ < 0)に入った引張専用ブレースの軸剛性を残留比 1e-6 まで縮小して無効化します。無効化ブレースの節点変位から求めた軸伸びが引張へ転じれば再び active に戻します。active 集合が前反復と一致した時点で収束とみなします(statics::linearsolve_tension_only_iterative)。収束後は active な引張ブレースのみが \( N = E,A/L \cdot \delta \) を負担し、圧縮ブレースの軸力はほぼ 0 となります。

4.3 部材荷重(等価節点力・固定端内力)

部材に作用する分布荷重を節点力へ変換し、固定端内力を算定します。 根拠は力学で、Hermite 形状関数による等価節点力(consistent load)と両端固定梁の固定端内力に基づきます。

算定式

等価節点力(軸は線形形状関数、曲げは Hermite 形状関数、分布荷重は 3 点 Gauss 積分):

\[ Q = \int N^T \cdot w~dx \]

固定端内力(等価節点力の符号反転):

\[ f_{FEF} = -Q \]

固定端内力に span 内力を重畳します。

ブレースの扱い

ブレースは軸剛性のみを持つトラス要素のため、曲げ・せん断・ねじりの剛性がありません。 Hermite 形状関数による等価節点力は材端モーメントを含みますが、ブレースはこれを負担できず、 節点へ外力として撒かれるだけになります。そこでブレースに限り、材軸に直交する成分を 材端モーメントを生じない静定分配(単純梁の反力と同じ配分)で両端へ配ります。

区間 [a, b] に載る分布荷重では、合力 \( R \) と i 端まわりの 1 次モーメントから両端の分担を 決めます。集中荷重 \( P \) が i 端から距離 \( a \) にある場合は、てこの原理そのものです。

\[ R_j = \frac{1}{L}\int_a^b w(s),s~ds, \qquad R_i = R - R_j \]

\[ R_j = P\frac{a}{L}, \qquad R_i = P\left(1 - \frac{a}{L}\right) \]

合力と作用位置の 1 次モーメントがともに保存されるため、建物の総重量・支点反力はこの扱いに よって変わりません。材軸方向の成分は形状関数が線形で静定分配と一致するので、配り方を 変える必要がありません。内力回復でも、ブレースには軸力以外の固定端内力を与えません (材軸直交成分は荷重ベクトル側で両端へ流し切っているためです)。

実装frame::member_loadmember_load.rs::{consistent_load_local, fixed_internal_local})が算定します。 配り方の選択は SpanLoadTransfer が表し、要素種別からの振り分けは squid_n_solverspan_load_transfer が行います。

4.4 MITC4 シェル要素

せん断ロッキングを回避する混合補間法 MITC4(Mixed Interpolation of Tensorial Components)を用い、膜・曲げ・せん断・ドリリング安定化を含む板要素の剛性を算定します。

算定式

膜、曲げ、せん断(せん断補正係数 5/6):

\[ D_m = \frac{E \cdot t}{1-\nu^2} \cdot [\cdots] \]

\[ D_b = \frac{E \cdot t^3}{12(1-\nu^2)} \cdot [\cdots] \]

\[ D_s = (5/6) \cdot G \cdot t \cdot I \]

  • MITC4 せん断補間: タイング点 A(0,+1)/B(−1,0)/C(0,−1)/D(+1,0) の共変ひずみを補間し、逆ヤコビアンで 直交座標へ射影
  • 剛性は 2×2 Gauss 積分 \( B^T \cdot D \cdot B \)、ドリリング安定化 \( \text{scale} = \gamma \cdot G \cdot t \cdot A \)(既定 \( \gamma = 10^{-3} \))

実装shell::{local_stiffness, shear_b_mitc4, add_drilling}shell/mod.rs)が算定します。 剛床時は面内成分(Ux/Uy/Rz)を無効化します。

4.5 壁エレメントモデル(耐震壁)

耐震壁を壁柱(BeamElement)と剛梁変換による 4 節点 24 自由度モデルで算定します(壁エレメント置換モデル。一貫構造計算で標準的に用いられる実務的モデル化)。

壁の入力の正は壁版(WallPlate)です(1.9 壁の断面と自重)。解析用の壁要素はモデルに保存せず、準備計算・解析・診断の直前に壁版から都度生成します。

壁要素になるのは、壁領域全体を覆う 4 節点の壁版だけです。 具体的には、柱・梁に囲まれた壁版(Enclosed)の境界節点が、その壁版が属する壁領域の境界節点と一致し、その節点数がちょうど 4 で、かつ断面が割り当てられている場合に限ります。

この条件は壁エレメントの定式化そのものから来ています。壁エレメントは下辺 2 節点・上辺 2 節点を両端ピンの剛梁で結ぶ 4 節点 24 自由度のモデルなので、次の形では前提が崩れます。

  • 壁領域の境界が 5 節点以上のとき(上下の大梁が中間節点で分割されている場合など)。剛梁は四隅しか結ばないため、中間節点が壁にめり込む向きへ動けてしまいます。
  • 壁領域が間柱で複数の壁版に分割されているとき。壁版ごとに要素を作ると、1 本の長い壁柱が複数の細い壁柱に割れ、面内剛性が実態と食い違います。

壁要素にならない壁版(間柱で分割された壁版・腰壁・垂れ壁・パラペット・自立壁・5 節点以上の壁領域内の壁版)は、荷重だけを持つ壁版として扱います。これは異常な状態ではないので、診断には出しません。自重は境界の辺へ分配します(1.6 自重の長期応力解析への接続)。剛性は、条件を満たすものだけフレーム内雑壁(袖壁・腰壁・垂壁)として周辺の柱・梁の断面性能へ算入します(条件は 4.1 ティモシェンコ梁要素)。板厚を引けない壁版、床領域に取り付く自立壁、取付き線が梁の全長を覆わない取り付く壁版は算入の相手が決まらないため、自重だけを持ちます。

取り付く壁版(パラペット・腰壁・垂れ壁・自立壁)も解析要素にはしません。耐震壁要素は柱・梁に囲まれた壁版を前提とするためです。取付き先と自重の分配は 1.9 壁の断面と自重、行き先は 1.5 地震用重量・層データの生成 を参照してください。

壁要素の幾何

節点は入力順に依らず標高 \( z \) で下辺 2 節点・上辺 2 節点に分け、上辺は下辺の一方に近い側を対応付けます。壁長 \( l_w \) は上下辺長さの平均(台形壁に対応)、壁高さ \( h \) は上下辺中点間距離とします。

耐震壁として扱う条件

耐震壁として扱うのは、上下の辺がともに大梁で囲まれた壁です。壁が負担した面内せん断は、壁エレメントの上下の剛梁を介して大梁へ伝達されるため、上下辺のいずれかに大梁がない壁は伝達先を持ちません。そのような壁はフレーム内雑壁として扱います。最下階で基礎梁をモデル化していない壁も、下辺の伝達先がないため対象外です。

左右の鉛直辺(側柱)は要求しません。側柱を持たない壁は、壁の縦筋が一様配筋であるとみなして等価引張鉄筋比を算定する正規の対象となるためです。

辺と部材の対応は節点の一致で判定します。壁エレメントの剛梁は四隅節点の並進しか伝達しないため、壁の四隅とは別の節点を使う部材は辺を構成しているとみなしません。大梁とみなすのは勾配 5% までの水平材で、曲げを伝達しないブレース(軸材)・面要素・バネは大梁として数えません。大梁として扱う要素は線材(梁・ファイバー梁・マルチスプリング梁)に限ります。

側柱として数えるのは、線材のうち梁要素だけです。側柱は面内両端ピンの要素へ差し替えて扱いますが、この差し替えに対応するのが梁要素のみのためです。ファイバー梁・マルチスプリング梁の側柱を数えてしまうと、断面を壁のせん断断面へ算入しながら柱自身も面内せん断を負担するため、面内せん断の二重計上になります。

耐震スリットが 4 辺のいずれにも無いことも、材種を問わず課します。切れた辺があると、壁が負担した面内せん断を周辺の柱梁へ伝えられないためです。

RC 壁には、上記に加えて RC 規準に由来する次の 2 条件を課します。壁厚が 120 mm 以上であること、開口周比 \( r_0 \le 0.4 \) であることです。鋼板耐震壁にはこれらを課しません。鋼板は板厚 9〜16 mm 程度で用いるため、材種を問わず 120 mm の閾値を課すとフレーム内雑壁に落ちてしまうためです。

RC 壁とみなすのは、断面形状が RC 壁形状(壁厚と壁筋比を持つ RC 壁専用の形状)であるか、または材料の区分がコンクリートである壁です。それ以外は鋼板耐震壁として扱います。

壁と周辺架構の構造種別

耐震壁とその周辺架構(上下の大梁・左右の側柱)は、構造種別をそろえてください。壁エレメントは、面内せん断を壁が負担し曲げを周辺架構が負担する置換モデルであり、壁と周辺架構は一体の耐震要素として挙動します。RC 壁に S 骨組を組み合わせた混合構造は、耐力式・剛性評価の前提が成り立たないため扱いません。

構造種別が食い違うモデルは、解析の入口で入力エラーとして停止します。許容応力度計算の剛性・断面検定にも効くため、保有水平耐力計算だけでなくすべての解析で検査します。判定には材料の区分(2.5 構造種別の判定)を用い、材料が設定されていない部材は別の入力チェックが扱うためここでは対象外とします。

算定式

壁柱の軸剛性用断面積(壁筋考慮):

\[ a = t \cdot l_w \cdot \text{rebar_factor} \]

\[ \text{rebar_factor} = 1 + (E_{\text{steel}}/E - 1) \cdot p_s \]

面内曲げ:

\[ i_z = \frac{t \cdot l_w^3}{12} \cdot \text{rebar_factor} \]

面内せん断は、壁板断面と側柱断面の和を 3.5 耐震壁のせん断形状係数 κ で除し、開口低減率を乗じます。面外せん断にも同じ開口低減率を乗じます。

剛梁変換(並進は平均、回転はレビ・チビタ記号で ω):

\[ K_{24} = A^T \cdot K_{\text{col}} \cdot A \]

面内せん断の非線形性

非線形解析では、壁の面内せん断を終局せん断強度 \( Q_u \) で頭打ちとする弾完全塑性骨格の復元力ばねとして扱います(8.4.2 耐震壁(せん断非線形トリリニア))。せん断モード(上辺 2 節点の壁面内水平並進)に沿う塑性すべり \( \gamma_p \) を導入し、変形測度 \( D = \gamma_p + Q/k_{s0} \)(\( k_{s0} = p^{\mathsf T} K_{el}, p \) は弾性モード剛性)に対する履歴ばね \( Q = M(D) \) と壁の伝達水平力が一致するよう \( \gamma_p \) を定めます。接線剛性はせん断モードの剛性を保持し、非線形は内力側のすべり補正のみで表現します(初期剛性法。曲げ機構の形成後にせん断が \( Q_u \) から除荷へ向かう角点で、剛性を除去した整合接線では大域反復が特異化するため)。

ばねの骨格は弾完全塑性(初期剛性 \( k_{s0} \)、耐力 \( Q_u \)。トリリニアのひび割れ点は弾性線上 \( Q_u/3 \) に置きバイリニア相当、終局点は降伏変形の \( 10^4 \) 倍で降伏後フラット)とし、除荷・再載荷則は履歴則の設定(2.2.0)から解決します。既定は最大点指向型(増分・時刻歴共通。壁の面内せん断はひび割れのスリップ性状が強く、除荷開始剛性が初期剛性のままの移動硬化型ではループの吸収エネルギーを過大評価するため)です。逆行型・標準型・原点指向型・武田型も選択できます。

軸・曲げの非線形性(ファイバー壁柱)

保有水平耐力計算(増分解析)では、壁柱の軸・曲げを既定でファイバー断面の弾塑性評価とします(柱の Fiber 既定と同じ扱い)。壁柱は「全長弾性梁+端部塑性増分ヒンジ」のファイバー要素(4.9.2 ファイバーモデル)とし、断面は次で構成します。

  • コンクリート: 幅 \( t \) × せい \( l_w \) の格子ファイバー(幅 4 × せい 20 分割。\( f_c \le 60 \) で NewRC 構成則、超過で放物線モデル)。除荷則は部材ごとに増分用・時刻歴用を選択でき(2.2.0)、自動(未指定)の既定は増分解析=原点指向型(壁はロッキングに伴う中立軸移動で圧縮縁の除荷が本質的に生じ、逆行型では圧縮ブロックの応力が抜けず面内水平力の \( Q_u \) 頭打ちを超えてしまうため)、時刻歴応答解析=Karsan–Jirsa 型
  • 縦筋: 壁筋比 \( p_s \) を各せい方向層へ等価分散した鋼材ファイバー(各層 \( p_s \cdot t \cdot l_w / n_d \)、Menegotto–Pinto モデル・\( E = 205000 \) N/mm²、既定 SD345(\( \sigma_y = 345 \) N/mm²)。保有水平耐力計算では主筋の材料強度割増を適用)。断面形状に壁筋比の情報がない場合の既定は \( p_s = 0.0025 \)

弾性剛性の諸元(軸・面内曲げの鉄筋剛性係数、せん断の \( \kappa \)・開口低減)は上記の弾性壁柱と同一とし、塑性化域長は \( 0.5 , l_w \)(可撓長の 45% までにクランプ)とします。これにより細長壁の曲げ降伏・N–M 相関(軸力変動による曲げ耐力の変化)が表現されます。せん断の \( Q_u \) 頭打ちは上記のとおり併用し(すべりを差し引いた変位を壁柱へ与える直列構成)、曲げ・せん断のうち先に到達した方で耐力が頭打ちになります。

許容応力度計算(弾性解析)では、軸・曲げ・せん断とも線形弾性として扱います。

\( Q_u \) の等価引張鉄筋比 \( p_{te} = 100 a_t/(t_e d) \) に用いる \( a_t \) は、付帯柱(側柱)がある壁では引張側最端の柱 1 本の主筋量、付帯柱がない壁では壁の縦筋が一様配筋であるとみなした \( a_t = p_s t_e d \)(すなわち \( p_{te} = 100 p_s \) [%])とします。

\( Q_u \) の壁横筋の降伏強度 \( \sigma_{wh} \) は、断面の「せん断補強筋」欄に割り当てた材料の \( f_y \) を用います。材料が未割当のときは規格上の最小グレードである 295 N/mm²(SD295 相当) を既定とするため、\( Q_u \) は安全側に出ます。

材料の名称が高強度せん断補強筋(SD*SR* 以外の製品名)であれば、コンクリート項の係数を \( 0.053 \to 0.068 \)、分母を \( M/(QD)+0.12 \to \sqrt{M/(QD)+0.12} \) へ切り替えます(6.1 材料の許容応力度の高強度品の判定と同じ規則です)。

鋼板耐震壁の終局せん断強度

鋼板耐震壁の面内せん断は、鋼板のせん断降伏で頭打ちとします。降伏せん断応力度には von Mises の降伏条件による純せん断の値 \( \tau_y = F/\sqrt{3} \) を用い、これを全断面 \( t \cdot l_w \) に乗じます。\( F \) には材料の降伏強度を用います。

\[ Q_y = t \cdot l_w \cdot \frac{F}{\sqrt{3}} \]

せん断座屈は考慮していません。 幅厚比が大きく補剛のない鋼板は、せん断降伏に達する前に面外へせん断座屈して耐力が頭打ちになるため、本式は座屈が生じない鋼板を前提とした危険側の評価です。増分解析の実行時には、鋼板耐震壁の枚数とあわせてその旨を注意事項として表示します。

設定不備による停止

次の設定不備がある耐震壁は、保有水平耐力計算・非線形時刻歴応答解析をエラーで停止します(代替値で補わず、弾性としても扱いません。耐力が定まらない壁は際限なく水平力を負担し保有水平耐力を過大評価するためです。5.7 増分解析「解析前の入力チェック」)。

  • 壁エレメントとして構築できない(4 節点の指定がない、節点座標が退化している)
  • 断面が設定されていない、または壁厚が \( \le 0 \)
  • 材料が設定されていない

RC 壁では、これに加えて次を検出します。

  • 材料にコンクリート強度 \( F_c \) が設定されていない、または \( F_c \le 0 \)
  • 付帯柱があるのに、その断面から主筋量を取得できない(断面形状が RC 矩形でない、主筋の本数・径が 0)
  • 付帯柱がなく、かつ壁筋比 \( p_s \) が 0
  • 上記のいずれにも該当しないが \( Q_u \) の算定結果が \( \le 0 \) となる

鋼板耐震壁では、次を検出します。

  • 材料に降伏強度 \( F \) が設定されていない、または \( F \le 0 \)
  • \( Q_y \) の算定結果が \( \le 0 \) となる

質量

壁の質量は開口面積を控除し、開口部(サッシ等)の重量を加算した値とします(節点質量からの控除規約と揃えます。1.5 地震用重量・層データの生成)。

実装wall::wall_elementwall_element.rs)が算定します。 側柱は面内両端ピンとし、wall::side_column で回転自由度を静縮約します(許容応力度計算・保有水平耐力計算のいずれでも同じ扱いです)。側柱を面内ピンとするのは、面内せん断を壁エレメントが全部負担するモデルにおいて側柱にも面内曲げ・せん断を持たせると二重計上になるためで、壁の材種によらず適用します。側柱の断面をせん断断面へ算入するのは、その側柱がピン化される場合に限ります。 耐震壁の成立判定は wall::misc_wall::wall_is_seismic が担います。この判定は一次設計の耐震壁せん断検定(6. 一次設計)でも同じ関数を用いるため、解析でのモデル化と検定の対象範囲は必ず一致します。モデル化の確認ビューでも同じ判定を用いるため、図に耐震壁として描かれる壁と解析でせん断を負担する壁も一致します。

なお剛性計算用の開口低減率は \( r_1 = 1 - 1.25 \cdot r_0 \)(\( r_0 = \sqrt{h_0 l_0/(h , l_w)} \) は開口周比)であり、複数開口は建物一律の設定(等価開口/包絡/自動判定)で単一の等価開口に統合してから適用します。開口周比の分母には本モデルと同じ \( l_w \)・\( h \) を用います。 耐力用の開口低減率 \( r_2 = 1 - \max(r_0,\ l_0/l_w,\ h_0/h) \) とは別式であり混用しません(6. 一次設計8. 部材終局耐力参照)。

4.6 仕口パネル(柱梁接合部パネル)

柱梁接合部のせん断変形を、接合部の節点に設ける仕口パネルとして評価します。仕口パネルは接合部内にある寸法 \( (B_x, B_y, D_z) \) の 6 面体で、パネルが設けられた節点はせん断変形角 \( \gamma_X \)・\( \gamma_Y \) の 2 自由度を追加で持ちます。

モデル化の対象と既定

仕口パネルのモデル化は既定で有効で、準備計算パネルの「部材のモデル化」で建物一律に切り替えます。無効にすると接合部を剛節点として扱い、パネルのせん断変形を考慮しません。

パネルを設けるのは、次のすべてを満たす節点です。

  • 柱(鉛直材)が 1 本以上・梁(水平材)が 1 本以上取り付く
  • 取り付く柱・梁がすべて S 造(CFT を含む)
  • 諸元を解決できる柱が 1 本以上あり、実効体積 \( V_e \) が正

部材の鉛直成分 \( |e_z| \) が 0.8 以上を柱、0.2 以下を梁とみなします。この範囲に入らない斜材(ブレース等)は、接合位置とパネルへの寄与が定まらないため、パネル自由度と連成させず節点で接合します。斜材は構造種別の判定対象にもしないため、S 造の接合部に RC ブレースが取り付いてもパネルは設けられます。

構造種別は2.5 構造種別の判定によります。材料の区分で決まるため、H 形の断面でも材料がコンクリートなら対象外になり、矩形断面でも材料が鋼材なら対象になります。

RC/SRC の柱・梁が 1 本でも取り付く接合部は対象外です。取り付く梁が RC であれば、柱が S であっても接合部はコンクリートが全体を拘束する RC の接合部になり、鋼部材だけの実効体積による弾性せん断パネル \( G \cdot V_e \) では挙動を表せません。これらの接合部は剛域で有限寸法を評価し、接合部の検定は RC 柱梁接合部・SRC パネルゾーンの断面算定が担います。

S 造では接合部に接続する柱・梁がすべて S のとき剛域長が 0 となるため、パネルのせん断変形を明示的に評価しても剛域と二重に評価することにはなりません。

CFT 柱の接合部はモデル化の対象外とします。CFT の接合部では充填コンクリートと通しダイアフラムが接合部のせん断挙動に関与し、鋼管のみの実効体積では剛性を表せないため、接合部を剛節点として扱います。ただし断面算定は CFT も対象に含めます(鋼管部を S 造と同じ式で評価します)。

柱断面モデル化断面算定
H 形鋼・角形鋼管・円形鋼管対象対象
CFT(角形・円形)対象外対象
RC・SRC・組立 H 形対象外対象外

上表が適用されるのは取り付く柱・梁がすべて S 造である接合部で、RC/SRC が 1 本でも混じる接合部は柱断面に依らずモデル化・断面算定とも対象外です。

パネルの剛性

パネルは部材座標系 X'-Z' 平面内と Y'-Z' 平面内でせん断モーメント \( {m_{xp}, m_{yp}} \) とせん断変形角 \( {\gamma'_x, \gamma'_y} \) を持ち、剛性は寸法とせん断弾性係数 \( G \) から定まります。

\[ \begin{Bmatrix} m_{xp} \\ m_{yp} \end{Bmatrix} = \begin{bmatrix} K_{yp} & 0 \\ 0 & K_{xp} \end{bmatrix} \begin{Bmatrix} \gamma'x \\ \gamma'y \end{Bmatrix}, \quad K{yp} = K{xp} = G \cdot V_e \]

節点の変位とパネルの変形は次式で適合させます。\( \theta \) はパネルの部材座標系が基準座標系 X-Y 平面内で回転する角度で、本実装では 0 固定(直交フレームを前提)です。

\[ \begin{Bmatrix} \gamma'_x \\ \gamma'_y \end{Bmatrix} = \begin{bmatrix} -1 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix} [T_p] \begin{Bmatrix} \gamma_X \\ \gamma_Y \end{Bmatrix}, \quad [T_p] = \begin{bmatrix} \cos\theta & \sin\theta \\ -\sin\theta & \cos\theta \end{bmatrix} \]

パネルの応力は次の変換をしたあと、節点に集められて釣り合います。

\[ \begin{Bmatrix} M_{SX} \\ M_{SY} \end{Bmatrix} = [T_p]^{\mathsf T} \begin{bmatrix} -1 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix} \begin{Bmatrix} m_{xp} \\ m_{yp} \end{Bmatrix} \]

\( K_{xp} = K_{yp} \) のとき、この一連の変換は直交変換になるため、節点座標系でのパネル剛性は \( \theta \) に依らず \( \mathrm{diag}(K, K) \) に帰着します。

パネルの寸法と実効体積

体積 \( V_e \) は柱断面の形状から次のとおり算定します。\( d_c \) は柱せい方向のパネル寸法、\( d_b \) は梁フランジ板厚中心間距離、\( t_p \) はパネル板厚です。

柱断面\( d_c \)\( t_p \)\( V_e \)
H 形鋼せい − フランジ厚ウェブ厚\( d_c \cdot d_b \cdot t_p \)
角形鋼管・CFT 角形せい − 板厚板厚\( 2 , d_c \cdot d_b \cdot t_p \)
円形鋼管・CFT 円形外径 − 板厚板厚\( 2 , d_c \cdot d_b \cdot t_p \)

H 形柱ではウェブ厚方向の寸法を \( B_y = t_p \) と対応させたものであり、中実 6 面体の体積ではなく板厚分の実効体積になります。角形・円形はウェブ 2 枚相当として 2 倍とします。

\( d_b \) は接合部に取り付く梁のうち最大の値を採り、H 形鋼の梁は「せい − フランジ厚」、それ以外の断面は情報がないため \( 0.9 \times \) せいで近似します。

パネル板厚 \( t_p \) は次の順で解決します。

  1. 断面の「パネル板厚 tp」が入力されていればその値(ダイアフラム補強・ダブラープレートによる増厚の明示指定)
  2. 未入力なら上表のとおり柱の断面形状から算定

「パネル板厚 tp」はモデルタブの断面作成パネルで、対象の断面を選んだうえで入力します。空欄・0 は未入力を表し、断面形状からの算定値を用います。この値はモデル化と断面算定の双方で使われます。

柱が複数取り付く節点では、諸元を解決できる柱のうち実効体積 \( V_e \) が最小になる 1 本から \( d_c \)・\( t_p \)・\( G \)・基準強度 \( F \) を取ります。剛性・耐力とも安全側になり、かつモデルの入力順に依らず一意に定まります。\( V_e \) は \( d_b \) に比例するので、この選択は \( d_b \) の値によりません。

この \( V_e \) は断面検定のパネル降伏モーメントと同じ値を用いるため、剛性と耐力が同一の諸元で整合します。

部材との接合位置

パネルが設けられた節点では、部材は節点そのものではなく、パネル寸法分だけ離れた接合位置で接合します。節点の変位(せん断変形角を含む 8 成分)と部材端の変位(6 成分)は次式で適合します。

\[ {d} = {D} + [B_0]{\Phi} + [B_{tp}]{S}, \quad {\phi} = {\Phi} + [B_p]{S} \]

\[ [B_0] = \begin{bmatrix} 0 & Z_0 & -Y_0 \\ -Z_0 & 0 & X_0 \\ Y_0 & -X_0 & 0 \end{bmatrix}, \quad [B_{tp}] = \frac{1}{2}\begin{bmatrix} 0 & Z_0 \\ -Z_0 & 0 \\ -Y_0 & X_0 \end{bmatrix}, \quad [B_p] = \begin{bmatrix} \zeta & 0 \\ 0 & \zeta \\ 0 & 0 \end{bmatrix} \]

部材端の応力も同じ変換行列の転置で節点位置へ写され、パネルのせん断モーメントと釣り合います。

\[ M^p_{SX} + \sum_i M^i_{SX} = 0, \quad M^p_{SY} + \sum_i M^i_{SY} = 0 \]

係数 \( \zeta \) は部材が仕口パネルのどの面で接合するかで決まり、水平材(はり)は \( -0.5 \)、鉛直材(柱)は \( +0.5 \) とします。パネルのせん断変形角の半分ずつを、梁と柱が互いに逆向きの材端回転として受け持つことを表します。

オフセット \( {X_0, Y_0, Z_0} \) の大きさは接合部の物理的な半寸法とし、向きは節点から部材の他端へ向かう単位ベクトルとします。梁は柱フェースで、柱は梁フェースで接合します。

部材オフセットの大きさ
梁(水平材)節点に取り付く柱せいの最大値 / 2
柱(鉛直材)節点に取り付く梁せいの最大値 / 2

この寸法には断面のせい \( D \) を用います。実効体積 \( V_e \) の \( d_c \)・\( d_b \) はせん断を負担する範囲を表す量で、フランジ厚を差し引くぶん物理的な外形より小さくなるため、部材が実際に取り付く位置を表す接合位置には外形のほうを用います。

パネル分のオフセットは部材の剛体アーム長へ算入します(4.1.5)。剛体アーム \( [B_0] \) は剛域変換がそのまま担い、幾何剛性・せん断降伏の内法高さ・座屈長さ係数の剛度比も同じ可撓長を用います。剛域長とは別に保持するため、剛域の再算定でオフセットが失われることはありません。

このオフセットは、断面算定の危険断面位置とは独立に定めます。危険断面位置は設計上の評価位置であって、部材が実際にどこで接合するかとは別に定まるためです。

弾塑性

保有水平耐力計算(増分解析)・非線形時刻歴応答解析では、パネルの降伏を考慮します。骨格は次の降伏モーメントを持つバイリニア(二次勾配比 0.01)とし、履歴則は S 造部材の既定と同じ標準型(移動硬化型。Masing 則)です。

\[ {}_p M_y = \frac{V_e}{\kappa} \sqrt{1 - n^2} \cdot \frac{F}{\sqrt{3}} \]

形状係数 \( \kappa \) は断面ごとに次式によります。\( b_c \) は柱のフランジ幅(角形は柱幅)、\( t_f \) はフランジ厚です。

柱断面\( \kappa \)
H 形鋼\( \dfrac{1}{2/3 + 4 b_c t_f/(d_c t_p)} + \dfrac{1}{1 + d_c t_p/(6 b_c t_f)} \)
角形鋼管・CFT 角形\( \dfrac{1}{2/3 + 2 b_c/d_c} + \dfrac{1}{1 + d_c/(3 b_c)} \)
円形鋼管・CFT 円形\( 4/\pi \)

軸力比 \( n \) は、パネルが属する柱の各ステップの軸力から \( n = \) 圧縮軸力 \( /(F \cdot A) \) として更新します。引張軸力では耐力を低減せず \( n = 0 \) とし、\( n \) は 1.0 でクランプします。降伏耐力の下限は \( 0.02 , {}_p M_y \) とします(軸力比が 1 に近づくと接線剛性が二次勾配のみになり数値的に不安定になるため)。

柱の軸力は、材端集中ばねの N–M 相関と同じく、蓄積した節点変位から弾性軸剛性 \( EA/L \) で評価します。

パネルの基準強度 \( F \) は柱の鋼種名の前方一致(板厚 40 mm 区分)で解決し、解決できない場合は材料の降伏強度、それもない場合は 235 N/mm² とします。

質量

パネルは質量を持ちません。せん断変形角の自由度に対応する質量はなく、固有値解析では回転自由度と同じく質量を持たない方向として扱われます。

断面算定との関係

S 造パネルゾーンの断面算定(6.3.2)は、モデル化と同じ判定で対象の接合部を選びます。柱・梁がすべて S 造である接合部だけを検定し、諸元(\( d_c \)・\( t_p \)・\( d_b \)・\( V_e \)・\( \kappa \))も同じ規則で解決します。剛性と耐力が別々の諸元で算定されることはありません。

両者が異なるのは CFT 柱の扱いだけです。

接合部モデル化断面算定
柱・梁がすべて S 造(CFT を除く)行う行う
柱に CFT を含み、他はすべて S 造行わない行う
柱・梁に RC/SRC を含む行わない行わない

CFT の接合部を検定に含めるのは、鋼管部を S 造と同じ式で評価できるためです。一方 RC/SRC が混じる接合部は、S 造パネルゾーンの式が前提とする挙動から外れるため検定しません。これらの接合部は RC 柱梁接合部・SRC パネルゾーンの断面算定が担います。

**断面算定はモデル化の有無に依らず行います。**モデル化を無効にしても、上表の「断面算定」列は変わりません。変わるのは設計用パネルモーメント \( {}_p M \) の求め方だけです。

  • パネルをモデル化した節点:解析が出力するパネルせん断モーメント \( M_{SX} \)・\( M_{SY} \) のうち絶対値の大きい方
  • モデル化していない節点:梁端モーメントと柱せん断から \( {}_p M = {}_b M_L + {}_b M_R - ({}_c Q_U + {}_c Q_L) d_b/2 \) で組み立てた値

前者は節点まわりのモーメント釣り合いが解析上厳密に満たされた値です。

諸元の確認

生成された仕口パネルの寸法(\( d_c \)・\( d_b \)・\( t_p \))・実効体積 \( V_e \)・せん断剛性 \( K_{xp} \) は、準備計算タブの「仕口パネル」で確認できます。3D の位置はモデル化ビューで確認できます。

実装

  • 接合部判定・半せい: squid_n_core::panel_zonepanel_half_extentresolve_panel_joint 等)
  • 自動生成: squid_n_element::springs::panel_gen::apply_auto_panel_zones
  • S 造パネルゾーン断面算定: squid_n_design_jp::steel::panel_zone::s_panel_zone_check
  • 準備計算での一覧: squid-n-app 準備計算タブ「仕口パネル」(仕口パネル

4.7 ばね要素(免震・制振・節点ばね・支点ばね)

免震支承材、制振要素、節点ばね、支点ばねを算定します。 各特性は製品技術資料(メーカー公表値)と力学モデル(バイリニア・摩擦・マクスウェル要素)に基づきます(Category B)。

算定式

免震支承(積層ゴム)は各方向独立バイリニアとし、摩擦支承は \( Q_{\max} = \mu \cdot N \)(長期軸力)を 2 次元摩擦で射影します。歪依存は次式によります。

\[ Q_d(\gamma) = Q_{d0} \cdot C_{Qd}(\gamma) \]

\[ K_2(\gamma) = K_{2,0} \cdot C_{Kd}(\gamma) \]

マクスウェルダンパーはバネ Kd と粘性ダッシュポットの直列(後退 Euler、線形 \( \alpha = 1 \) かつリリーフなしは閉形式、それ以外はスカラー Newton)とします。ダッシュポット力は、リリーフ速度 \( V_r \) を指定しない場合は次式です。

\[ F_c = C_0 \cdot \operatorname{sign}(V) \cdot |V|^\alpha \]

リリーフ速度 \( V_r \)(オイルダンパーのバイパス弁による頭打ち特性)を指定した場合、 リリーフ後の減衰係数比 \( C_2/C_1 \) による折れ線とします。

\[ F_c = \begin{cases} C_0 \cdot \operatorname{sign}(V) \cdot |V|^\alpha & (|V| \le V_r) \ \operatorname{sign}(V) \cdot \left( C_0 \cdot V_r^\alpha + C_2 \cdot (|V| - V_r) \right) & (|V| > V_r) \end{cases} \]

ここで \( C_1 = C_0 \cdot \alpha \cdot V_r^{\alpha-1} \)(リリーフ速度における接線減衰係数)、 \( C_2 = (C_2/C_1) \cdot C_1 \) です。リリーフ点で力は連続(\( C_0 \cdot V_r^\alpha \) に一致)、 勾配は \( C_1 \) から \( C_2 \) へ不連続に低下します。

節点ばねは、局所各自由度に指定のばね剛性を独立に持つ標準的な 2 節点ばねとします(成分ごとに \( k \cdot (u_i - u_j) \))。

支点ばねは、節点に直接指定する全体座標系の並進・回転ばね(接地を仮定した 1 節点分の対角剛性)です。全体剛性の対角へ単純加算し、固定(拘束)されている自由度の値は無視します(固定支持を優先)。

\[ K_{ii} \mathrel{+}= k_i \quad (\text{節点 } i \text{ の自由な各自由度}) \]

実装springs::{isolator, damper, spring} および common::assemble(支点ばねの対角加算)が算定します。 詳細な設計式(等価剛性・等価減衰・製品別係数)は9. 免震・制振を参照してください。

4.8 座標変換

局所座標系の剛性を、力学(局所-全体座標変換)に基づき全体座標系へ変換します。

算定式

フレーム要素は \( e_x = (p_j - p_i)/L \) とし、参照ベクトルを直交化して ey・ez を構成します。剛性は次式で変換します。

\[ K_{\text{global}} = R^T \cdot K_{\text{local}} \cdot R \]

実装common::transformtransform.rs)が算定します。 ですが、シェルは規約が逆で \( K_{\text{global}} = R \cdot K_{\text{local}} \cdot R^T \) とします。

4.9 非線形梁要素のモデル化(材端集中・ファイバー・MS)

非線形解析(プッシュオーバー・時刻歴応答)では、線形の弾性ティモシェンコ梁(4.1)に代えて、部材の弾塑性挙動を表す 3 種類の梁要素モデルを用います。材端集中ばねモデルは弾性ティモシェンコ梁を土台とし、ファイバー・MS モデルは Timoshenko 適合内挿(φ 依存形状関数、4.9.2)によりせん断変形を曲げと直列に合成します(弾性状態では弾性ティモシェンコ梁と厳密一致)。

モデル化塑性化の表現N–M 相関実装
材端集中ばね部材端の回転ばね(M–θ 履歴則)降伏モーメント低減式frame/concentrated
ファイバー積分点断面のファイバー分割(平面保持)断面積分で自然に表現frame/fiber
マルチスプリング(MS)端部塑性化域を軸ばね群に置換軸ばね合力で自然に表現frame/multi_spring

各項目は「導入文(何を・どの基準で)、算定式、実装」の順で記します。

4.9.1 材端集中ばねモデル

弾性ティモシェンコ梁の両端に**回転ばね(M–θ 履歴則、2.2 節)**を直列接続し、塑性化を材端の集中回転に代表させます(構造動力学で標準的な集中ばね(one-component / two-component)モデル)。

算定式

  • 回転ばねは強軸曲げ面(要素局所系の \( r_z \) まわり。要素局所 y 軸=断面のせい方向とする規約による)に入れます。一軸曲げ(ForceRegime::UniaxialBendingShear)のモデルであり、骨格の降伏モーメント(強軸 \( Z_p \sigma_y \))・初期剛性 \( 6EI/l \)(\( I \) は強軸)も強軸で与えます。
  • 要素剛性は、可撓長(部材長から剛域を除いた長さ)で組んだ弾性ティモシェンコ梁に、端部条件(ピン・半剛)と材端回転ばねを直列に静縮約し、最後に剛域変換で節点自由度へ移して得ます(弾性梁 4.1 と同じ土台)。ばねは直列のため接合部ばねと塑性ばねの順序は結果に影響しません。
  • ばねの変形量は相対回転 \( \gamma_k = \theta_{n,k} - \theta_{b,k} \)(節点回転 − 可撓端回転)とし、履歴則 \( M_s(\gamma) \) を適用します。可撓端回転 \( \theta_b \) は内部自由度として保持し、各トライアルで両端の内部釣合い

\[ R_k = \bigl[K_{\text{flex}},\hat{\boldsymbol u}\bigr]{d_k} - M{s,k}(\gamma_k) = 0 \]

(\( d_k \) は材端回転自由度の番号、\( \hat{\boldsymbol u} \) は回転スロットを \( \theta_b \) で置き換えた可撓端変位)を要素内 Newton 反復(2 自由度連成)で解きます。履歴則は区分線形のため通常数回で収束します。固定端(節点回転 0)でも可撓部端モーメントが降伏モーメントへ達すればばねが塑性回転し、柱脚ヒンジが形成されます。

  • 復元力は弾性可撓部の \( K_{\text{flex}},\hat{\boldsymbol u} \) とばねの履歴モーメント \( M_s(\gamma) \) から経路整合に評価します(節点の回転自由度にはばねを介してモーメントが伝わるため、回転スロットはばね側の履歴力で置き換えます。内部釣合いの解では両者は一致します)。接線剛性はばねの接線 \( k_t(\gamma) \) を直列に静縮約した \( K^{*} \) を用います。
  • 履歴則は部材個別指定(増分用・時刻歴用の 2 系統、2.2.0)→ 構造種別ごとの既定表で解決します。RC/SRC/CFT 梁は武田型トリリニア、S 梁は**標準型(kinematic バイリニア)**を材端ばねに用います(増分・時刻歴共通の既定)。
  • 軸-曲げ相互作用(N–M 相関)は、現在軸力 \( N \) に応じて回転ばねの降伏モーメントを

\[ M_{\text{lim}} = M_{y0} \cdot \left(1 - \frac{|N|}{N_{\text{allow}}}\right) \]

で更新します(下限 \( 0.02 \cdot M_{y0} \))。この相関はバイリニア(標準型)にのみ適用し、武田型等の骨格固定の履歴材料は対象外とします。

実装squid_n_element::frame::concentratedconcentrated/mod.rs::ConcentratedSpringBeam)が算定します。 履歴則の解決は factory::resolve_member_hysteresis、材端ばねの構築は factory::build_flexural_springs、N–M 相関の有効化は ConcentratedSpringBeam::with_mn_interaction によります。

4.9.2 ファイバーモデル

積分点(ガウス点)の断面を多数のファイバーに分割し、平面保持仮定のもとで各ファイバーが独立した履歴状態を持つ一軸材料として応答することで(構造力学のファイバーモデル)、軸力と曲げの連成(N–M 相関)を断面積分から自然に得ます。断面応答(M–φ 積分)の詳細は 3.7 節を参照してください。

算定式

  • 非線形解析で構築するファイバー要素は塑性化域考慮モデルとし、「全可撓長の弾性梁 \( K_{el} \)端部の塑性増分ヒンジ」の直列モデルとして解きます。基準長は可撓長 \( L' \) です(剛域があれば節点間長から剛域長を除いた長さ。4.9.5)。塑性化域長 \( L_p \) は部材の指定値、未指定なら断面せいの 0.5 倍(MS モデルと共通の既定。4.9.3)とし、可撓長の 45% までにクランプします。したがって塑性化を担うファイバー断面は可撓部両端の 2 断面(\( \xi = \mp 1 \)、すなわち可撓部の材端=剛域があればその剛域フェイス。4.9.5)であり、その断面の状態のみを追跡します。
  • 弾性梁 \( K_{el} \): \( B(\xi)^{\mathsf T},\mathrm{diag}(EA, EI_y, EI_z),B(\xi) \) を 2 点ガウス(\( \xi = \mp 1/\sqrt{3} \))で厳密積分し、一定せん断ひずみ場(後述)と Saint-Venant ねじり剛性を加算して組み立てます(\( EA, EI_y, EI_z \) は公称断面諸元)。弾性状態(ヒンジ回転 \( \gamma = 0 \))の要素剛性はこの \( K_{el} \) に厳密一致し、弾性ティモシェンコ梁(4.1)の剛性と一致します。
  • 塑性増分ヒンジ: 可撓部両端のファイバー断面(\( \xi = \mp 1 \)、両端×2 軸(\( \kappa_y, \kappa_z \))で最大 4 自由度)の曲率 \( \kappa \) を内部未知数とし、各トライアルで両端の内部平衡

\[ m_B = D_{\text{nom}} \cdot B(\xi_{\text{end}}) \cdot \hat{\boldsymbol u} = m_{\text{sec}}(\varepsilon_0, \kappa) \]

(\( D_{\text{nom}} = \mathrm{diag}(EA, EI_y, EI_z) \) は公称断面諸元、\( m_{\text{sec}} \) は端部断面のファイバー積分によるモーメント)を、要素内 Newton 反復(整合接線を用いた区分線形問題のため通常数回で収束)で解きます。

  • ヒンジ回転(節点回転と可撓端回転の差)は、断面の弾性線を超える塑性超過分のみを持ちます。

\[ \gamma = s \cdot L_p \cdot \left( \kappa - \frac{m_{\text{sec}}(\kappa)}{EI_{\text{sec}}} \right) \]

(\( s \) は端の向き: i 端 +1・j 端 −1)。弾性では \( \gamma = 0 \) となり、\( EI_{\text{sec}} \)(端部ファイバー断面の弾性曲げ剛性。ファイバー離散化後の値)による弾性整合が成立します。

  • 可撓端変位 \( \hat{\boldsymbol u} \) は、有効端(剛接端)の回転スロットを可撓端回転 \( \theta_b = \theta_n - \gamma \)(\( \theta_n \) は節点回転側の値)で置き換えた変位です。復元力は \( \boldsymbol f = K_{el},\hat{\boldsymbol u} \) から履歴に整合して評価します。

  • 整合接線は

\[ K^{*} = K_{el} - \bigl(K_{el}[:,\text{slots}]\cdot G\bigr)\cdot J^{-1}\cdot(D\cdot B\text{行}) \]

(\( G = \partial \theta_b/\partial \kappa \) はヒンジ回転の曲率感度、\( J \) は内部平衡のヤコビアン)です。内部変数(\( \kappa \))消去による整合接線は一般に非対称になり得るため、対称ソルバ(Cholesky)前提の全体組立に合わせて対称化して用います(復元力は消去前の厳密値のため収束解は変わりません)。

  • 軸ひずみ \( \varepsilon_0 = (\hat{\boldsymbol u} \text{ の軸方向差})/L' \) は弾性のまま断面へ渡します(軸方向の塑性変形は考慮しません)。断面はこの \( \varepsilon_0 \) と曲率 \( \kappa \) から各ファイバーのひずみを決めて積分するため、軸力と曲げの連成(N–M 相関)は断面のファイバー積分で自然に考慮されます。

  • ヒンジは剛接端(EndCondition::Fixed)のみ有効です。ピン・半剛端は材端解放(4.9.6)の内部自由度で扱い、塑性ヒンジは形成しません。

  • 塑性化域を設けない全長ファイバー積分モデル(2 点ガウス積分、\( \xi = \mp 1/\sqrt{3} \)、重み 1)も要素として構築できますが、非線形解析の要素生成では用いません。

  • ファイバーは断面形状どおりの領域に配置します(MN 相関曲面と同じ配置規則を共用)。H 形はフランジ+ウェブ、角形鋼管・鋼管は管壁のみ、CFT は管壁+充填コンクリート、RC 円形は円形領域、SRC はコンクリート+主筋+内蔵鉄骨に配置するため、中空・薄肉断面の断面積・剛性・耐力が正しく表現されます。非対称断面(山形・溝形・T 形等)は断面積重心へ座標補正します。

  • RC 断面はコンクリートファイバー格子に加え、主筋を点ファイバー(Menegotto–Pinto 鋼材)として分離配置します。主筋点の縁からの距離・多段間隔は断面検定の有効せいと同じ rc_rebar_geom 規約です(3.7 ファイバー断面)。コンクリートは \( f_c \le 60 \) で NewRC 構成則、超過で放物線モデルを用います。鋼材領域(形鋼・鋼管・内蔵鉄骨)・主筋はいずれも Menegotto–Pinto モデル(降伏後剛性比 \( b = 0.01 \))です。

ファイバー材料の既定値と強度の解決順

ファイバー断面の各領域には、次の既定の構成則・パラメータを割り当てます。 強度は表の解決順で決め、解決できないモデルは非線形解析の入力チェックが解析前に エラーで停止します(弾性で代替しません。ファイバー断面は降伏・ひび割れの進展を 追うことが目的のため、弾性代替は耐力の過大評価=危険側になります)。

領域構成則(既定)弾性係数強度の解決順
コンクリート\( f_c \le 60 \): NewRC(2.1.4、\( \gamma = 2.4 \))
\( f_c > 60 \): 放物線モデル(2.1.3、\( \varepsilon_{c0} = -0.002,\ \varepsilon_{cu} = -0.0035 \)、テンションスティフニング 0.5、残留比 0)
構成則から算定断面の主材料の \( F_c \)(未設定はエラー)
主筋Menegotto–Pinto(2.1.2、既定パラメータ)\( E = 205000 \) N/mm²(固定)断面の主筋材料の \( f_y \)(未割当・\( f_y \) 未設定はエラー)
鋼材(形鋼・鋼管・内蔵鉄骨・CFT 管壁)Menegotto–Pinto(2.1.2、既定パラメータ)断面の主材料の \( E \)SRC: 断面の内蔵鉄骨材料の名称から引く F 値(フランジ厚の板厚区分を考慮)→ 断面の主材料の \( f_y \)
その他の形状: 断面の主材料の \( f_y \)(いずれもなければエラー)
  • 引張強度は両コンクリート構成則とも既定 \( f_t = 2.0 \) N/mm² とします。
  • コンクリートの除荷則は部材ごとに増分用・時刻歴用を選択できます(2.2.0)。 自動(未指定)の既定は、増分解析=逆行型、時刻歴応答解析=Karsan–Jirsa 型 (Yassin 1994、2.1.6)です。原点指向型も選択できます。放物線モデル (\( f_c > 60 \))は逆行型に対応しないため、逆行型指定でも原点指向型で 評価します。
  • Karsan–Jirsa 型を用いる場合の骨格・引張の既定は次のとおりです: \( f_c \le 60 \) は NewRC 骨格(終局ひずみ \( \varepsilon_{cu} = 0.01 \)、 超過は \( \varepsilon_{cu} \) の曲線値を残留として保持)、\( f_c > 60 \) は 修正 Kent–Park 骨格(\( \varepsilon_{c0} = 0.002,\ \varepsilon_{cu} = 0.0035 \)、 残留 0=放物線モデルと同一)。引張は \( f_t = 2.0 \) N/mm²、 軟化勾配 \( E_{ts} = E_0/10 \)(\( E_0 \) は初期接線剛性)です。
  • Menegotto–Pinto の既定パラメータは \( b = 0.01,\ R_0 = 20,\ a_1 = 18.5,\ a_2 = 0.15,\ a_3 = 0 \)(等方硬化なし)\( ,\ a_4 = 1 \) です(2.1.2)。
  • 材料強度の割増は保有水平耐力計算(材料強度基準)でのみ適用し、鋼材文脈・RC 主筋文脈それぞれの材料グレード別割増係数を強度に乗じます。時刻歴応答解析等は割増なし(1.0)です。

ファイバー分割の既定

  • 断面形状がある場合: 目標ファイバ寸法 = 断面最大寸法 / 16(下限 1 mm)。円形・円環断面は周方向 24 分割、径方向は薄肉 2 分割・中実 8 分割。
  • 断面形状がない場合(壁エレメントの壁柱以外の矩形近似): 幅 12 × せい 20 の中実格子。
  • せん断変形は Timoshenko 適合内挿(φ 依存の曲率形状関数+一定せん断ひずみ場による変位法内挿。interdependent interpolation 系の定式化)で曲げと直列に合成します。せん断変形係数

\[ \varphi = \frac{12EI}{GA_s L^2} \]

公称断面諸元(Section の \( I \)・\( A_s \) と Material の \( E \)・\( G \))から算定して凍結するため、降伏後も内挿は弾性時の配分を保ちます(曲げの Hermite 内挿と同型の近似)。公称値を用いるのは線形解析(4.1 の弾性 Timoshenko 梁)の φ と一致させるためであり、RC 断面ではファイバーの実効初期剛性が公称値と僅かに乖離するため、φ は公称値ベースの近似となります。

  • 曲率場は回転項を \( (1 \pm 3\xi) \to (1 \pm 3\xi + \varphi) \)、全体を \( 1/(1+\varphi) \) 倍に補正します。せん断ひずみは曲げ面ごとに要素内一定の

\[ \gamma_y = \frac{\varphi_y}{2(1+\varphi_y)} \left( \theta_{z,i} + \theta_{z,j} - \frac{2,\Delta u_y}{L} \right), \qquad \gamma_z = \frac{\varphi_z}{2(1+\varphi_z)} \left( \theta_{y,i} + \theta_{y,j} + \frac{2,\Delta u_z}{L} \right) \]

(\( \Delta u \) = 端部並進差。符号は各曲げ面の曲率規約に従い面ごとに異なる点に注意してください。いずれも剛体回転で恒等的にゼロとなる客観的な測度)とし、弾性せん断剛性 \( GA_s \) を作用させます。曲率剛性とせん断剛性の和は、断面剛性が φ の算定基礎と一致する一様弾性断面で、弾性 Timoshenko 梁(4.1)の剛性と厳密に一致します(被積分関数は \( \xi \) の 2 次のため 2 点ガウスで厳密です)。

  • \( GA_s \le 0 \)(せん断有効断面積が未設定等)の場合は \( \varphi = 0 \)(せん断剛直 = Euler-Bernoulli)へフォールバックするため、幾何剛性・整合質量は Euler 系の係数を用います(4.1 の弾性梁と同じ扱いです)。
  • 整合質量の質量源は、端部断面のファイバー面積の総和 \( \sum A_f \) から求める \( m = \rho \cdot \sum A_f \cdot L \) です。ねじれ自由度(\( \theta_x \))の回転慣性は与えません4.1.7 の弾性梁は \( \rho J L/6 \) を与えます)。ファイバー梁は断面をファイバーの集合として表し、ねじり定数 \( J \) を保持しないためです。集中質量を並進自由度へ \( m/2 \) ずつ与える扱いは弾性梁と同じです。

実装squid_n_element::frame::fiberfiber/mod.rs::FiberBeam)が算定します。 断面のファイバー応答は squid_n_section::fiber::section_response、塑性化域考慮モデル(弾性梁+塑性増分ヒンジの直列モデル)の構築は FiberBeam::build_plastic_zone、ヒンジ状態は HingeState、内部平衡の求解は FiberBeam::solve_hinges、ヒンジの整合接線・復元力はそれぞれ FiberBeam::hinge_tangentFiberBeam::hinge_internal_force、φ 依存 B 行列は FiberBeam::compute_b_matrix、せん断ひずみ場の剛性は FiberBeam::compute_shear_stiffness によります。 弾性 Timoshenko 梁との厳密一致・初期剛性の理論値照合・剛体回転の客観性・接線と内力の整合、および降伏後の要素剛性低下は fiber/tests.rs の回帰テストで担保します。

4.9.3 マルチスプリング(MS)モデル

部材端の塑性化領域(長さ \( L_p \)、既定は断面せいの 0.5 倍)の断面を、少数の軸方向ばね群で置換し、中央は弾性材で連結します(RC 柱・梁端部の塑性ヒンジを軸ばね群で表す MS モデル)。軸ばね群の合力が \( N \)、図心まわりの偶力が \( M \) となるため、N–M 相関を自然に表現できます。ねじりばねは別系統で付加します。

算定式

  • 端部断面のばね配置は幅方向 × せい方向 = 2 × 5 = 10 本の 2 次元配置とし、二軸曲げに対応します。
  • 実体は塑性化域考慮ファイバー要素(4.9.2 の build_plastic_zone)と同一の定式化であり、端部断面の分割数だけが粗いです(ばね = 粗いファイバー)。したがって trial/commit/rollback・チェックポイントもファイバー要素と同一機構に乗ります。
  • 妥当性は、一定軸力下の繰り返し曲げにおける N–M 相関・履歴ループがファイバー要素と整合することで担保します(相互検証。実装仕様書 P5.5 §5.1)。
  • せん断変形は 4.9.2 の Timoshenko 適合内挿と同一です(実体がファイバー要素のため定式化も共有します)。

実装squid_n_element::frame::multi_springmulti_spring.rs::MultiSpringElement)が算定します。 内部で FiberBeam::build_plastic_zone(data, model, L_p, 2, 5) を構築し、ElementBehavior の各メソッドを委譲します。

4.9.4 モデルの自動選択(ForceRegime)

ElementKind::Beam の要素は、部材の ForceRegime に基づいて非線形要素種別を選択します。

選択規則

  • ForceRegime::UniaxialBendingShear → 材端集中ばね
  • ForceRegime::AxialBendingInteract → ファイバー
  • ForceRegime::Auto → トポロジから判定します(ヒューリスティック)。剛床に所属する水平材(軸力変動が小)→ 材端集中、それ以外(柱などの鉛直材)→ ファイバー。鉛直材判定は部材軸単位ベクトルの \( |e_z| > 0.707 \)(水平から 45° 超。線形静解析の柱判定・偏心率算定と共通の規約)によります。

MS モデルはこの自動選択には乗らず、要素種別 ElementKind::MultiSpring を明示指定した場合にのみ用います。

線形弾性解析は常に弾性 BeamElementfactory::build_behavior)を用い、非線形解析でのみ上記の非線形要素を構築します(factory::build_nonlinear_behavior)。両者を分けるのは、Auto 判定が剛床に乗らない梁もファイバーへ振り分けるため、共通化すると線形解析の弾性梁まで非線形要素へ置き換わってしまうためです。

実装:非線形要素の生成は frame::factory::build_nonlinear_behaviorfactory/mod.rs)、ForceRegime::Auto の判定は frame::factory::resolve_force_regimefactory/regime.rs)によります。

4.9.5 非線形梁要素の剛域

ファイバーモデル・MS モデル(いずれも実体は FiberBeam)も、弾性梁(4.1.4)と同じ剛体アームで剛域を扱います。断面積分・せん断・幾何剛性を可撓長 \( L' = L - \lambda_i - \lambda_j \) で組み立て、可撓端自由度を \( T_r \) で節点自由度へ写します。

\[ \boldsymbol{u}{\text{flex}} = T_r, \boldsymbol{u}{\text{node}}, \qquad K_{\text{node}} = T_r^{T}, K_{\text{flex}}, T_r, \qquad \boldsymbol{f}{\text{node}} = T_r^{T}, \boldsymbol{f}{\text{flex}} \]

\( T_r \) の成分と剛域長の解決規則は 4.1.4 と同一です。

算定式

  • ひずみ-変位行列 \( B(\xi) \)・せん断変形係数 \( \varphi \)・一定せん断ひずみ場・弾性梁 \( K_{el} \) の積分は、いずれも \( L' \) を基準長とします。
  • 端部のファイバー断面(\( \xi = \mp 1 \)、塑性増分ヒンジを担う断面)は可撓部の材端、すなわち剛域フェイスに位置します。塑性化域 \( L_p \) も剛域フェイスから材内側へ測り、\( L' \) の 45% までにクランプします(4.9.2)。塑性ヒンジは節点位置ではなく部材フェイスに形成されます。
  • 断面ひずみは節点変位ではなく可撓端変位 \( \boldsymbol{u}_{\text{flex}} \) から評価します。剛体回転(節点回転=弦回転)では可撓端に相対たわみが生じないため、内力はゼロになります(客観性)。
  • ねじりは断面積分と連成しない独立項であり、剛体アーム変換がねじり自由度に作用しないため、弾性梁と同じく節点間長基準 \( GJ/L \) とします(剛域では増大させません)。

軸方向の扱い(弾性梁との違い)

弾性梁(4.1.4)は軸断面積を \( A \cdot (L'/L) \) に補正して軸剛性を \( EA/L \)(節点間長基準)へ戻し、剛域を曲げのみに効かせます。ファイバー要素ではこの補正を行わず、軸剛性は \( EA/L' \)(剛域を軸方向にも剛とする剛体オフセットの扱い)になります。

理由は、ファイバー断面の積分が軸力と曲げを連成させることにあります。断面は軸ひずみと曲率から各ファイバーのひずみ \( \varepsilon = \varepsilon_0 - \kappa_z, y + \kappa_y, z \) を決め、その応力を積分して \( (N, M_y, M_z) \) を同時に返します。軸成分だけを別の基準長へ補正すると、断面が返す軸力が断面のひずみ状態と整合しなくなり、N–M 相関(ファイバーモデルの要点)が崩れます。したがって軸方向は剛体アームの運動学にそのまま従わせます。

この結果、剛域をもつ部材では、ファイバー要素の弾性状態の剛性は軸自由度を除いて弾性 Timoshenko 梁と厳密に一致し、軸剛性のみ \( L/L' \) 倍だけ大きくなります。

実装:剛体アームの変換は frame::rigid_arm(弾性梁と共有)、可撓長基準の断面積分・内力・接線剛性は frame::fiber::FiberBeam によります。弾性梁との一致(軸を除く厳密一致)・剛体回転の客観性・接線と内力の整合は fiber/tests.rs の回帰テストで担保します。

4.9.6 非線形梁要素の材端条件(ピン・半剛)

ファイバーモデル・MS モデルも、弾性梁(4.1.3)と同じ定式化で材端の回転解放を扱います。剛接端は「節点回転 = 要素端回転」を厳密に満たすため内部自由度を作りません。ピン・半剛の端のみ、要素端回転を内部自由度へ分離し、節点回転との間に回転ばね \( k_s \) を挟んで静縮約します。

  • ピン: \( k_s = 0 \)(厳密なモーメント解放)
  • 半剛: \( k_s = k_\theta \)(接合部の回転剛性 [N·mm/rad])

算定式

  • 縮約は可撓長で組んだ要素剛性に対して行います。組立順は「可撓長で要素剛性 → 材端解放の静縮約 → 剛体アーム変換 → 全体座標変換」で、弾性梁(4.1.1)と同一です。縮約は \( K^{*} = K_{aa} - K_{ab} K_{bb}^{-1} K_{ba} \) により節点自由度 12 へ戻します。
  • 内部自由度 \( \boldsymbol{u}_b \)(解放した要素端回転)は状態として保持し、各ステップで内部釣合い

\[ R_k = f_{\text{elem}}[d_k] + k_{s,k},\bigl(u_{b,k} - u_{\text{flex}}[d_k]\bigr) = 0 \]

を満たすよう要素内 Newton 反復で解きます(\( d_k \) は解放した回転自由度の番号、\( \boldsymbol{f}_{\text{elem}} \) は要素内力)。弾性域では線形のため 1 反復で厳密に収束します。断面が降伏した後も内部釣合いを解き直すため、ピン端のモーメントゼロは非線形域でも保たれます

  • 解放端の節点回転が受け持つのは回転ばねのモーメントのみであり、ピン端では 0 になります。
  • ねじり剛性を持たない部材(\( J \le 0 \))の rx は、解放しても縮約行列 \( K_{bb} \) の対角がゼロになり特異化するだけでモーメント解放としての意味を持たないため、解放しません。
  • 線材(梁・柱)の i 端のねじれは、端条件が剛接でも既定で解放します(ねじり剛性を期待しないモデル化。適用判定・例外は 4.1.3a と同一で、弾性梁と非線形梁で同じ規則です)。

実装squid_n_element::frame::fiberEndRelease / resolve_end_releases(解放自由度の決定)、FiberBeam::solve_internal_dofs(内部釣合い)、FiberBeam::condense_releases(静縮約)によります。ピン端の剛性が弾性梁と(軸を除き)厳密一致すること、半剛が \( k_\theta \to \infty \) で剛接・\( \to 0 \) でピンへ漸近すること、降伏後もピン端のモーメント解放が保たれること、接線剛性が内力の勾配と一致することは fiber/tests.rs の回帰テストで担保します。

4.9.7 非線形解析での部材内力

弾塑性要素の断面内力は、部材端の復元力を材軸方向へ釣合いで分配して求めます(線形解析の内力回収 5.2 と同じ分配式)。復元力は、接線剛性 × 全変位では降伏後の内力が実際より小さく評価されるため、接線剛性と全変位の積ではなく各積分点の断面応答(ファイバーの履歴状態)から算定した値を用います。

評価断面(危険断面)は線形解析と同じ規則(節点芯・部材中央・柱フェース位置、および部材付帯情報の追加位置。6.2.3)で与え、線形解析と同じ断面で応力を比較できるようにします。

適用範囲:ファイバー・MS・弾性材・トラス(軸材)に適用します。材端集中ばねモデルは部材内力の取り出し(state_member_forces)に対応しておらず、この経路では内力を取り出しません。

実装ElementBehavior::state_member_forcescommon/behavior.rs)と、分配式を共有する beam::member_forces_from_end_forcesframe/beam/forces.rs)によります。

4.10 梁要素内部の変位・断面力の内挿

節点の解(変位)から、梁要素の**両端の間(要素内部)**の変位と断面力(内力)をどう評価するかを示します。 変位は Hermite 3 次多項式による内挿、断面力は断面の力の釣合い(切断法)と部材中間荷重の固定端内力の重ね合わせで求めます。

4.10.1 要素内部の変位(Hermite 3 次内挿)

節点変位は要素端の 6 自由度(並進・回転)として得られます。要素内部の変位場は、要素ローカル系(\( e_x \): i→j 材軸、\( e_y,,e_z \): 断面主軸)で次のように内挿します。

  • 軸方向(局所 \( x \)):線形形状関数 \( (1-\xi,\ \xi) \)
  • 曲げ 2 面(局所 \( y,,z \)):Hermite 3 次形状関数

曲げ面の内挿は、部材荷重の等価節点力(4.3)に用いる形状関数と同一であり、要素の定式化と整合します。

Hermite 3 次形状関数(\( \xi = s/L \)、i 端 \( \xi=0 \)・j 端 \( \xi=1 \)、\( L \) は節点間長):

\[ N_1 = 1 - 3\xi^2 + 2\xi^3,\qquad N_2 = L,(\xi - 2\xi^2 + \xi^3) \]

\[ N_3 = 3\xi^2 - 2\xi^3,\qquad N_4 = L,(-\xi^2 + \xi^3) \]

要素内部の局所変位場(端部並進 \( u \)・回転 \( r \) から):

\[ u_x(\xi) = (1-\xi),u_{x,i} + \xi,u_{x,j} \]

\[ u_y(\xi) = N_1,u_{y,i} + N_2,r_{z,i} + N_3,u_{y,j} + N_4,r_{z,j} \]

\[ u_z(\xi) = N_1,u_{z,i} - N_2,r_{y,i} + N_3,u_{z,j} - N_4,r_{y,j} \]

局所 \( z \) 面では回転 \( r_y \) の向きの規約により回転項の符号が反転します(4.1.2 の \( K_{xz} \) の符号規約、および 4.3 の等価節点力と一致)。

\( \xi=0,,1 \) では \( N_2=N_4=0,\ N_1=1 \) または \( N_3=1 \) となり、要素端は節点変位に厳密に一致します。回転自由度が変位場の傾きを与えるため、両端の回転差に応じて要素内部が曲線状にたわみます。

**変形図(変形形状の可視化)**は、この Hermite 曲線に沿って要素を描きます。節点間を直線で結ぶと梁の曲げたわみが表れないため、要素内部を Hermite 3 次で内挿した折れ線として表示します。要素はせん断変形を含むティモシェンコ梁(4.1)ですが、内部変位の内挿は Euler–Bernoulli の Hermite 曲線で近似します。

4.10.2 要素内部の断面力(平衡+固定端内力の重ね合わせ)

要素内部の断面力分布は、形状関数による内挿ではなく、**断面の力の釣合い(切断法)**で求めます。

  1. 端部節点力:局所剛性と局所変位から \( \boldsymbol{f} = K_{\text{local}},\boldsymbol{u} \) を求めます。
  2. 任意断面への分布:端部の内力から自由体の釣合いで各断面 \( \xi \) の \( [N, Q_y, Q_z, M_x, M_y, M_z] \) を求めます。せん断が一定の区間ではモーメントは材軸方向に線形になります(例:\( M_z(x) = M_{z,i} + Q_y,x \))。
  3. 部材中間荷重の重ね合わせ:部材にスパン荷重(分布・集中)がある場合は、両端固定梁の固定端内力(4.3 の fixed_internal_local)を各断面に重ね合わせます。これにより、剛性応答(等価節点力に対する \( K\boldsymbol{u} \))とスパン内力の和として実内力が得られます。

\[ \text{実内力}(\xi) = \underbrace{\text{(}K\boldsymbol{u}\text{ 由来の内力)}}{\text{端部からの平衡分布}} + \underbrace{\text{(両端固定梁のスパン内力)}}{\text{固定端内力の重ね合わせ}} \]

この重ね合わせにより、等分布荷重を受ける梁では曲げモーメント \( M \) が放物線、せん断力 \( Q \) が線形の正しい分布になります(中間荷重がなければ手順 2 のとおりモーメントは線形)。荷重組合せでは、各項の部材荷重を組合せ係数で倍したうえで重ね合わせます。

断面力の符号規約は 5.2 を参照してください。断面力を評価する位置(危険断面)は、節点芯・柱フェース位置・部材中央に加え、指定があればハンチ端・継手位置を含みます。評価断面の間の分布を画面上でどう描くかは応力図(M 図)の曲線補間を参照してください。

実装:要素内部変位の内挿は変形図描画(viewer)、断面力の分布は beam/forces.rs::recover_forcesmember_load::fixed_internal_local(重ね合わせ)が担います。

5. 構造解析

本章では、線形静解析、荷重組合せの重ね合わせ、固有値解析、減衰、時刻歴応答(Newmark-β)、非線形解法(Newton-Raphson / 弧長法)、増分解析(プッシュオーバー解析)、累積損傷度、質点系解析のアルゴリズム根拠を記します。 応力解析・動的解析の手法は、変位法(マトリクス法・有限要素法)と構造動力学の標準的な数値解析法に基づきます。

各項目は「導入文(何を・どの基準で)、算定式、実装」の順で記します。

決定性: 単一スレッド設定(並列スレッド数 1)では、全ソルバを CPU の単一スレッドで実行し、同一入力でビット一致を保証します(V&V 決定性テスト)。並列実行時(既定の自動を含む)はビット一致は保証されず、値一致(丸め誤差程度の差)となります(5.9 並列計算)。

この章の内容

5.1 線形代数ソルバ

構造解析の基礎となる連立一次方程式を、数値線形代数の標準手法(Cholesky LLᵀ 分解、LU 分解、前処理付き共役勾配法 PCG)で解きます。対称正定値系のソルバ選択は既定で自動(AUTO)とし、自由度規模に応じて直接法(疎 Cholesky)と反復法(PCG)を使い分けます。PCG が収束しない場合は直接法へ自動でフォールバックするため、最終的に解が得られないことはありません。

疎行列の扱い(スカイライン法との対比)

構造解析で古くから使われる疎行列の格納・求解法に、スカイライン法(バンド法・エンベロープ法)があります。スカイライン法は各列の対角から最上端の非ゼロまでの「帯」を連続配列で保持する方式で、帯の内側にあるゼロ要素も格納・演算の対象になるため、効率が節点番号付け(Cuthill–McKee 法などによるバンド幅最小化)に強く依存します。

本プログラムはスカイライン法ではなく、汎用疎行列格納と現代的な疎行列直接法を用います:

  1. 非ゼロ要素のみの格納:全体剛性行列は要素剛性の Triplet(行・列・値)として組み立て、CSC(圧縮列格納)形式へ変換します。同一位置の重複は加算マージし、帯の内側か否かに関係なく、非ゼロ要素だけを保持します。
  2. フィルイン低減オーダリング:疎 Cholesky(faer)は数値分解に先立つ記号解析(symbolic analysis)で、フィルイン(分解で新たに生じる非ゼロ)を減らす行列の並べ替えを自動で適用し、因子 \( L \) の非ゼロパターンを事前に確定します。節点番号付けの良し悪しに性能が左右されるスカイライン法と異なり、入力モデルの節点順序に依存せずフィルインが抑えられます。
  3. 記号解析と数値分解の分離:非ゼロパターンの解析(記号解析)と数値分解を分離しているため、一度 factorize すれば複数右辺(多数の荷重ケースや時刻歴の各ステップ)は前進・後退代入のみで解けます。
  4. 反復法という選択肢:PCG は行列を CSR 形式(非ゼロのみ)で保持し、因子分解を一切行わず、1 反復あたり非ゼロ数に比例するコストの疎行列ベクトル積だけで解きます。フィルインが原理的に発生しないため、直接法の分解メモリが支配的になる大規模系で有利になります。AUTO 選択(後述)では、大規模系でこの PCG を自動的に用います。

計算量の目安として、スカイライン法の分解コストは自由度数 \( n \)・平均バンド幅 \( b \) に対しおおむね \( O(n b^2) \) で帯内のゼロにも演算が及ぶのに対し、オーダリング後の疎 Cholesky は因子の非ゼロ数 \( \mathrm{nnz}(L) \) に応じたコストで済みます。立体骨組のように帯内に多くのゼロを含む系では、この差が求解時間・メモリの双方に効きます。

算定式

対称正定値の \( K \cdot u = F \) には疎 Cholesky を用い、非対称やラグランジュ乗数付き拘束では疎 LU にフォールバックします。

直接法(疎 Cholesky)では、フィルイン低減の並べ替え \( P \) を施した剛性行列を下三角行列 \( L \) へ分解し:

\[ P K P^\mathsf{T} = L L^\mathsf{T} \]

前進代入 \( L y = P F \)、後退代入 \( L^\mathsf{T} \tilde{u} = y \) の 2 段の代入計算で解 \( u = P^\mathsf{T} \tilde{u} \) を得ます。分解は 1 回で済み、右辺(荷重ケース)ごとの求解は代入計算のみを繰り返します。疎 LU も同様に \( K = L U \)(行・列の置換付き)へ分解し、前進・後退代入で解きます。

Jacobi 前処理付き PCG(内部 f32 演算)では対角前処理を次とします:

\[ d[i] = 1/a_{ii} \]

収束は \( \|r\|/\|b\| < \text{tol} \) で判定します。 反復中の内積が underflow 域(\( 10^{-30} \) 未満)に落ちた場合は停滞とみなして打ち切ります。 以降の除算が NaN・Inf になり反復が破綻するためです。 対角成分が同域の場合は Jacobi 前処理の当該成分を 1(前処理なし)とします。 右辺ノルムが同域の場合はゼロ解を返します。

直接法/反復法の自動選択(AUTO)

対称正定値系の線形静解析は、既定で AUTO ソルバを用います。しきい値は自由度数 50,000 で、1 節点あたり 6 自由度(並進 3 + 回転 3)なので、節点数に換算するとおよそ 8,300 節点(支持条件による拘束で有効自由度は減るため、実際はもう少し大きいモデル)に相当します。選択規則は次のとおりです:

  • 自由度数 \( n < 50{,}000 \)(目安: 約 8,300 節点未満):疎 Cholesky 直接法(f64 厳密解)。中小規模では分解コストが十分小さく、精度面でも直接法が有利なため。
  • 自由度数 \( n \geq 50{,}000 \)(目安: 約 8,300 節点以上):Jacobi 前処理付き PCG(tol \( 10^{-6} \)、最大 10,000 反復)を先に試みる。収束しない場合は疎 Cholesky へ自動フォールバックし、フォールバック分解は以降の右辺で再利用する。

ただし、分解の再利用が効く解析は直接法(疎 Cholesky)に固定します:

  • 線形時刻歴応答(Newmark-β): 有効剛性が全ステップ共通で、1 回の分解を全ステップの求解で再利用するため。
  • 固有値解析(部分空間反復): 同一分解を(部分空間サイズ×反復回数)回の求解で再利用するため(求解のたびに反復をやり直す PCG では分解再利用の利得が失われる。5.3 固有値解析 参照)。
  • 増分解析(プッシュオーバー)の Newton 反復・非線形時刻歴の有効剛性: 反復のたびに数値は変わるものの剛性行列の非ゼロパターンは同一のため、直接法の記号解析(フィルイン低減の並べ替えと因子パターンの確定)を初回の 1 回だけ行い、以降の反復は数値分解のみを繰り返します。反復回数の多い非線形解析では、この記号解析の再利用が支配的な効率化になります。

また、非対称やラグランジュ乗数付き拘束の系は AUTO の対象外で、疎 LU を用います。

実装squid_n_mathsparse.rs(Triplet→CSC 組立)/solver.rs/cholesky.rs/lu.rs/pcg.rs/auto.rs(AUTO 選択)、faer ライブラリ利用)が算定します。

5.2 線形静解析

変位法(有限要素法)により、部材内力と変位を求めます。

算定式

全体剛性 K_free を組立て、拘束を縮約して次を得ます:

\[ K_{\text{red}} = \text{reducer}^\mathsf{T} \cdot K_{\text{free}} \cdot \text{reducer} \]

次を解き、部材内力を behavior.recover_forces(u_elem) で回復します:

\[ u = K_{\text{red}}^{-1} \cdot F_{\text{red}} \]

実内力は、剛性応答と両端固定梁のスパン内力(fixed_internal_local)の重ね合わせとします。

線材(柱・梁・ブレース)は、剛床への所属や ForceRegime の指定に依らず、すべて 弾性要素(弾性ティモシェンコ梁・弾性トラス)で組みます(4.9.4)。したがって線材の 部材内力は全部材について出力され、応力図・断面検定の対象になります。材端集中ばね・ ファイバーといった弾塑性の梁要素は非線形解析でのみ用います。

解析前の入力チェック

解析の実行前に、モデルの静的な検証を行います。 次の不備は、何をすれば直るかを含むエラーとして扱い、解析を停止します。 断面や材料が未割当の要素を既定値で補って解析することはありません。

  • 節点・部材の ID と配列添字の不一致、存在しない断面・材料への参照など、モデル検証で見つかる不整合
  • 節点・部材・支点(拘束)が 1 つもない
  • 断面・材料が必要な要素(梁・柱・ブレース・ファイバー・マルチスプリング・シェル・壁)の断面が未割当、または材料が未割当
  • シェル要素の断面に板厚がない(線材用断面を割り当てた場合など)
  • 線材の有効せん断断面積 As が 0(3.3 せん断有効断面積 As
  • 耐震壁と周辺架構の構造種別の食い違い
  • 断面が未割当の床、断面の材料または板厚が定まらない床(1.8 床の断面と自重
  • 存在しない節点への参照(ダングリング)、およびどの部材・拘束・床にも属さない孤立節点
  • 基部以外の階で、剛床マスター節点が水平方向(Ux または Uy)に拘束され、かつその階の地震用重量が正のとき

仕口パネル・節点バネ・免震支承材・制振ダンパーは、断面や材料ではなく専用の特性値から剛性を作るため、断面と材料の未割当チェックの対象外です(仕口パネル)。

基部の床では、柱脚が固定またはピンで水平拘束されているとき、剛床マスターも水平拘束になります。 これは剛床が動けるかどうかの判定結果であり、地震用重量があってもエラーにはしません。 上階で同じ状態になるのは、床面に柱や大梁が取り付いておらず、非構造節点だけが剛床のスレーブになっているときです。 その階の地震力はマスターへ載るため、水平拘束された自由度へ入ると解析結果に現れません。 地震用重量が 0 の階は、消える水平力も 0 であるため、この検査の対象外です。

この一覧は、下ドックの「診断」タブがエラーとして挙げる項目と同じで、どちらも同じ判定を呼んでいます。 判定は解析を止めない警告も返し、剛床のない階や、断面未割当の壁版などがその例です。 入力チェックはエラーだけを見て停止するため、警告では解析は止まりません。 入力チェックは最初の 1 件で解析を止めるため、不備が複数あるモデルでは、修正と再実行を繰り返すことになります。 解析の前にまとめて洗い出したい場合は、準備計算のモデル整合性チェックを確認してください。 こちらは不備をすべて挙げ、部材や節点ごとに 3D ビューで位置を示すため、修正の順序を立ててから解析へ進めます。

実装statics::analysisanalysis/precheck.rs::model_issues)が検証します。 解析前の入力チェック(precheck_model)と診断はどちらもこれを呼びます。

部材内力の符号規約

評価断面の内力 \( [N, Q_y, Q_z, M_x, M_y, M_z] \) は、部材全長で連続な断面力 (切断法による断面の力の釣合いから定まる値)として出力します:

  • 軸力 \( N \) は引張を正とする。
  • せん断力とモーメントは \( Q_y = dM_z/dx \)・\( Q_z = -dM_y/dx \) を満たす。
  • 曲げモーメント \( M_z \) は局所 \( -y \) 側(重力方向の下向き荷重を受ける 水平梁では下端)の引張を正とする。両端固定梁の等分布荷重では端部 \( -wL^2/12 \)・中央 \( +wL^2/24 \) となる。
  • 応力図は正のモーメントを引張側(局所 \( -y \) 方向)へ張り出して描画する。 張り出しの実線と材軸の間の領域を塗りつぶす。塗りは単色のほか、値に応じた 色分け(コンター表示。カラーバー凡例付き)へ切り替えられる。コンターの カラーマップは Viridis(既定。知覚均等で色覚多様性に配慮)・Plasma・ Turbo・Jet・青-白-赤(発散型)から選択できる。

実装statics::linearlinear/mod.rs::linear_static_once)が算定します。 長期の柱軸力無効化は、断面積に AXIAL_DISABLE_FACTOR = 1e-6 を乗じて行います(一貫構造計算プログラムの実務慣行)。 柱判定は \( |e_z/L| > 0.707 \) によります。

5.2.1 荷重組合せの応答(重ね合わせ)

求解の最小単位は荷重ケース単体です。荷重組合せの応答は、荷重ケース単体の応答を 組合せ係数で倍して足し合わせて求めます(重ね合わせの原理)。

算定式

荷重組合せが荷重ケース \( L_1, L_2, \dots \) を係数 \( c_1, c_2, \dots \) で参照する場合、 節点変位 \( u \) と部材断面力 \( S \)(評価断面ごとの \( [N, Q_y, Q_z, M_x, M_y, M_z] \))は

\[ u = \sum_i c_i , u_i, \qquad S = \sum_i c_i , S_i \]

とします。ここで \( u_i, S_i \) は荷重ケース \( L_i \) 単体の応答です。

線形解析では剛性が応答に依存しないため、この線形和は荷重ベクトル \( F = \sum_i c_i F_i \) を組み立てて 1 回解いた結果と理論上一致します。部材中間荷重による スパン内力(両端固定梁の内力。上式の \( S_i \) に含まれます)も同じ係数で倍されるため、 等分布荷重を受ける梁の M の放物線分布は組合せでも保たれます。

この扱いにより、同じ荷重ケース(DL・LL・EX・EY など)を参照する荷重組合せが 何件あっても、求解は荷重ケースの数だけで済みます。GUI の「単体実行」「一括解析」は いずれもこの経路を使い、単体実行で荷重組合せを選んだ場合は、その組合せが参照する 荷重ケースを解いてから線形和を組み立てます。

実装statics::analysisanalysis/combination.rs)の Analysis::{linear_combination, linear_combination_batch, linear_static_with_combinations} が 組み立て、線形和そのものは linear::superpose_static が行います。 参照する荷重ケースが存在しない、またはその荷重ケースの解析が失敗した場合、その荷重組合せは エラーとして扱います(該当項が黙って 0 になることを避けるため)。

5.3 固有値解析

固有周期とモードを、部分空間反復法(Bathe)と一般化 Jacobi 法による射影固有値問題の求解で求めます。

質量モデル

全体質量行列 \( M \) の質量源は「部材密度による整合質量(Consistent)」と「節点集中質量(剛床マスターの質点等)」の 2 つで、その組合せはモデルの質量方式に従います:

  • 補正質点方式(既定): 部材密度による分布質量に加え、剛床マスター節点へ「地震用重量のうち分布質量として計上されない分」(床・仕上げ・積載・二次部材・雑壁など)を補正質点として与えます。階の生成がマスター質量を \( m = (W - W_{\text{frame}})/g \)(水平 2 方向)、回転慣性を \( J = \sum m_i r_i^2 \)(\( r_i \) は慣性力重心からの平面距離)で算定します。階の合計質量は地震用重量 \( W \) と一致し、部材の分布質量による鉛直・局部の振動モードも保たれます。
  • 質点のみ方式: 質量は節点集中質量のみを用い、部材密度による分布質量は算入しません(水平質点系モデル化)。剛床マスターには地震用重量の全量 \( W/g \) と回転慣性を与えるため、鉛直方向・局部の振動モードは表現されません。

質量方式は固有値解析・時刻歴応答解析・精算固有周期(Ai 分布の T 算定)で共通に適用されます。

算定式

部分空間サイズ(\( p = \text{モード数} \)):

\[ q = \min(2p, p+8) \]

反復は次の予測から射影を作り、射影一般化固有値問題を解いて更新します:

\[ K y = M x \]

\[ \bar{K} = y^\mathsf{T} K y, \bar{M} = y^\mathsf{T} M y \]

\[ x_{\text{new}} = y \cdot V \]

射影一般化固有値問題 \( \bar{K} V = \bar{M} V \Theta \) は、一般化 Jacobi 法(Bathe)により \( \bar{K} \)・\( \bar{M} \) を同時対角化して解きます。半正定値の \( \bar{M} \)(部分空間サイズが質量ランクを超える場合に必ず生じる)でも正則な合同変換のみで進むため、質量を持たない方向が混在しても数値的に安定します。求解に先立ち、両行列を \( \bar{K} \) の対角で対称スケーリング(\( S = \operatorname{diag}(1/\sqrt{\bar{K}_{ii}}) \)、合同変換のため固有値は不変)することで、並進質量と回転慣性のように単位スケールが大きく異なる質量が混在しても、質量の有無の判定が単位系に依存しません。質量を持たない方向(対角化後の質量対角成分が相対許容誤差未満の方向)には固有振動数が存在しないため解の対象から除外し、質量を持つ方向の数(質量ランク)が要求モード数に満たない場合はエラーとして通知します。

収束は \( |\theta - \theta_{\text{prev}}| < 10^{-10} \cdot \max(\theta, 1) \) で判定します。周期および固有ベクトルの M 正規化は次のとおりとします:

\[ \text{period} = 2\pi/\sqrt{\omega^2} \]

\[ \varphi^\mathsf{T} M \varphi = 1 \]

固有ベクトル \( \varphi \) は拘束縮約後の独立自由度空間で求まるため、モード形状の表示・出力にあたっては縮約を逆変換して全節点の 6 成分へ展開します。剛床などの従属自由度には、マスター自由度の剛体変位関係(面内並進+回転)に従った値が入ります。

参加係数および有効質量は次で算定します:

\[ \beta = \frac{\varphi^\mathsf{T} M r}{\varphi^\mathsf{T} M \varphi} \]

\[ M_{\text{eff}} = \frac{(\varphi^\mathsf{T} M r)^2}{\varphi^\mathsf{T} M \varphi} \]

疎行列演算と計算コスト

全体剛性行列 \( K \)・全体質量行列 \( M \) は、立体骨組ではほとんどの成分がゼロの疎行列になります(各自由度は同じ節点・隣接節点の自由度としか連成しないため)。固有値解析の反復に現れる行列演算は、この疎行列の非ゼロ要素だけを用いて計算します:

  1. 射影行列の算定:部分空間への射影 \( \bar{K} = Y^\mathsf{T} K Y \)、\( \bar{M} = Y^\mathsf{T} M Y \) は、まず疎行列ベクトル積 \( Z = K Y \)(列ごとに非ゼロ要素のみを走査。コストは非ゼロ数 \( \mathrm{nnz} \) に比例)を求め、続いて \( Y^\mathsf{T} Z \) を計算する 2 段構成とします。1 反復あたりのコストは \( O(\mathrm{nnz} \cdot q + n q^2) \)(\( n \): 自由度数、\( q \): 部分空間サイズ)で、モデル規模に対しほぼ線形にしか増えません。
  2. 固有ベクトルの M 正規化・参加係数:\( \varphi^\mathsf{T} M \varphi \) や \( \varphi^\mathsf{T} M r \) も同様に疎行列ベクトル積で算定します。
  3. 分解の再利用:反復中の \( y = K^{-1} M x \) は、解析開始時に 1 回だけ行う剛性行列の疎 Cholesky 分解(5.1 線形代数ソルバ)を(部分空間サイズ×反復回数)回の前進・後退代入で再利用します。固有値解析のソルバは、自由度規模によらず常に疎 Cholesky 直接法です。部分空間反復は同一の分解を多数回の求解で再利用する構造のため、求解のたびに反復計算をやり直す反復法(PCG)は用いません(5.1 の AUTO 選択の例外)。静解析と続けて実行する場合、静解析の準備が直接法で分解している規模(自由度 50,000 未満)ではその分解をそのまま使い回し、固有値解析のための再分解は行いません。静解析側が反復法(PCG)を選ぶ規模(自由度 50,000 以上)では、固有値解析専用に直接法で 1 回だけ分解します。

このため固有値解析の所要時間は、モデル規模(自由度数と非ゼロ数)にほぼ比例して増える程度に収まり、小規模モデルでは即座に完了します。

地震荷重(Ai 分布)との連携

地震荷重の設計用一次固有周期 T の算定法(1.1 地震力)で「精算(固有値解析)」を選択した場合は、本解析で求めた 1 次モードの固有周期を用います。固有周期は加力方向(X/Y)によらず同一のため、算定は 1 回で足ります。精算周期を使うには、解析タブで固有値解析を先に実行しておく必要があります(未実行の場合は画面に案内が表示されます)。既定の「略算」は告示の略算式 T = h(0.02+0.01α) を用いるため、固有値解析の実行は不要です。

実装dynamic::eigeneigen/mod.rs::solve_eigen / solve_eigen_with_solver)が算定します。 EIGEN_TOL = 1e-10EIGEN_MAX_ITER = 200 とし、部材の分布質量は整合質量(Consistent)で組み立てます(算入の要否は上記の質量方式に従います)。整合質量行列は要素局所系で構成し、剛性行列と同様に全体系へ変換(\( M_{\text{global}} = R^\mathsf{T} M_{\text{local}} R \))してから全体自由度へ組み込みます(軸方向と曲げ方向で係数が異なり回転不変ではないため。部材の向きに依らず同一の固有周期が得られます)。

5.4 減衰

減衰マトリクスを、質量比例、剛性比例、Rayleigh、モード別、接線剛性比例の各方式で、構造動力学の標準手法(設計書 §10.5)に準拠して構成します。

算定式

質量比例(\( a_0 = 2h\omega \)):

\[ C = a_0 \cdot M \]

剛性比例(\( a_1 = 2h/\omega \)):

\[ C = a_1 \cdot K \]

Rayleigh は減衰マトリクスを次とし、係数を次で定めます:

\[ C = a_0 \cdot M + a_1 \cdot K \]

\[ \beta_k = \frac{2(h_2\omega_2 - h_1\omega_1)}{\omega_2^2 - \omega_1^2} \]

\[ \alpha_m = \frac{2\omega_1\omega_2(h_1\omega_2 - h_2\omega_1)}{\omega_2^2 - \omega_1^2} \]

モード別:

\[ C = \sum 2h_i\omega_i(M\varphi_i)(M\varphi_i)^\mathsf{T} \]

接線剛性比例:

\[ C = (2h/\omega) \cdot K_t \]

基準振動数の求め方

剛性比例と接線剛性比例の基準は初期剛性の 1 次固有円振動数、Rayleigh は 1 次・2 次を用います。 モード別は 6 次から 1 次の順に試行し、得られた低次モードに一律の減衰比を与えます。

既定値(解析タブ・AnalysisSettings::default):

時刻歴応答解析では、次の値を既定とします。

項目既定
減衰比 \( h \)(th_damping0.02
減衰モデル(th_damping_model剛性比例(StiffnessProportional
Rayleigh の 2 次モード減衰比(th_h20.02(Rayleigh 選択時。1 次は th_damping
質点系の減衰比 \( h \)(lumped_th_damping0.02(初期剛性比例固定。立体時刻歴とは独立)

質量比例・Rayleigh・モード別・接線剛性比例・h1 一定も選択できます。時刻歴応答解析での使い方は 5.5 時刻歴応答解析 を参照してください。 質点系の減衰は初期剛性比例のみで、減衰比は右バー「質点系」の設定を使います(既定は上表。5.10 質点系解析)。

実装squid_n_solver::dynamic::dampingcrates/squid-n-solver/src/dynamic/damping.rs)が算定し、h1 一定や累積型/非累積型の減衰力評価にも対応します。減衰設定の永続化は squid_n_job::AnalysisSettingscrates/squid-n-job/src/settings.rs)です。

5.5 時刻歴応答解析

支配方程式(基盤一様加振、相対変位形式)を解きます。全体質量行列 \( M \) は固有値解析と同一の質量モデル(5.3 固有値解析の質量モデル: 部材の整合質量と剛床マスター等の節点集中質量を、モデルの質量方式に従って組み合わせる)で組み立てます。

\[ M \cdot \ddot{u} + C \cdot \dot{u} + K \cdot u = -M \cdot r \cdot \ddot{x}_g(t) \]

5.5.1 線形時刻歴(Newmark-β)

線形の時刻歴応答を Newmark-β 法で解きます。 パラメータは平均加速度法(\( \beta = 1/4, \gamma = 1/2 \)、無条件安定)と線形加速度法(\( \beta = 1/6, \gamma = 1/2 \)、条件付安定)を取り、解析は常に平均加速度法で実行します。 時間刻みによらず安定なため、波形の刻みをそのまま使えるためです。 時間刻み \( \Delta t \) は、解析設定で指定した値が正であればそれを、指定がなければ入力波形のサンプリング間隔を使います。

算定式

有効剛性(\( c_1 = 1/(\beta \Delta t^2), c_2 = \gamma/(\beta \Delta t) \)):

\[ \hat{K} = K + c_2 \cdot C + c_1 \cdot M \]

次を解き、加速度と速度を更新します:

\[ u_{n+1} = \hat{K}^{-1} \cdot p_{\text{eff}} \]

\[ a_{n+1} = c_1(u_{n+1} - u) - c_3 \cdot v - c_4 \cdot a \]

\[ v_{n+1} = v + \Delta t((1-\gamma)a + \gamma \cdot a_{n+1}) \]

初期加速度は次から求めます:

\[ M \cdot a_0 = -C \cdot v_0 - K \cdot u_0 - p(0) \]

実装dynamic::timehistorytimehistory/mod.rs::linear_time_history_with_state)が算定します。

5.5.2 非線形時刻歴(Newmark-β + Newton-Raphson)

非線形の時刻歴応答を、Newmark-β と Newton-Raphson 反復(commit/rollback)で解きます(構造動力学の標準的な非線形時刻歴解法)。 積分パラメータと時間刻みの決め方は 5.5.1 と同じで、平均加速度法(\( \beta = 1/4, \gamma = 1/2 \))を使います。

算定式

各反復で接線剛性 Kt と接線比例減衰を再構成し、有効剛性を次とします:

\[ K_{\text{eff}} = K_t + c_2 \cdot C + c_1 \cdot M \]

残差を次とします(\( f_{\text{int}} \) は要素の復元力に加え、支点ばね(Node::support_spring) の内力 \( k_i u_i \) も含みます):

\[ r = p - f_{\text{int}} - C \cdot v - M \cdot a \]

収束は \( \|r\| < \text{tol} \cdot r_{\text{ref}} \) で判定します。基準ノルム \( r_{\text{ref}} \) は 動的釣り合いの各項のノルムの最大とし、解析中の最大値に対する下限を設けます。

\( p_{\text{dyn}} \) は外力 \( p \) から長期荷重成分 \( f_0 \) を除いた地震動由来の 動的外力(\( p = p_{\text{dyn}} + f_0 \))です。\( f_0 \) を含めないのは、長期荷重が 卓越するモデルで収束判定が過度に緩まないようにするためです。

慣性力・減衰力も基準に含めるのは、地動加速度がゼロを横切る時刻で基準が消えるのを 防ぐためです。動的外力だけを基準にすると、その時刻で分母が最低値の 1 まで落ち、判定が 「残差が tol(N)を下回ること」という絶対値判定に化けます。実建物では内力・慣性力が \( 10^7 \) N 規模あります。有効剛性の線形解が持つ残差は、その条件数と計算機イプシロンに 比例して \( 10^{-1} \) N 規模になります。つまり到達できない閾値です。正弦波なら 毎周期 2 回通る時刻であり、実地震波でも頻繁に起きます。地動が 0 でも構造は動いており 慣性力・減衰力は大きいので、3 項の最大を採れば基準は消えません。

3 項の最大だけでは、応答が減衰しきった時刻で同じ破綻が戻ります。長い波形の末尾では 3 項すべてが 1 N を下回り、また床まで落ちるためです。そこで解析中に観測した力のスケールの 最大値に対する下限を設け、その 1% を切った領域では基準をそれ以上下げません。

\[ r_{\text{ref}} = \max(\|p_{\text{dyn}}\|,\ \|M \cdot a\|,\ \|C \cdot v\|,\ 0.01 \cdot r_{\text{ref,max}},\ 1) \]

応答が最大の 1% を切った領域は工学的に無視できる大きさで、そこで判定を続けても意味が ありません。実測では、最大 6.1e7 N の解析の末尾で力が 6e-4 N まで落ちたところ、履歴則が 微小振幅でチャタリングして残差が 1e-4 N から下がらなくなりました。1% はこれを収束と 認めるのに必要な余裕から定めています。応答が大きい時刻では瞬間値のほうが大きいため、 この下限は効きません。

最低値の 1 は、解析を通して一度も動いていないときに 0 除算を避けるための床です。 反復の最大回数と許容誤差 tol は解析タブ「時刻歴応答」の「Newton反復」欄で指定します (既定は最大 50 回・tol \( 10^{-6} \))。

次を解いて要素状態を更新します:

\[ \delta u = K_{\text{eff}}^{-1} \cdot r \]

反復が上限に達しても収束しなかったステップは、その時点の試行状態で確定して解析を続行し、 非収束ステップ数を結果画面に注記します。途中まで解けた応答を捨てるより、参考値として 示したうえで信頼性の低下を伝えるほうが判断材料になるためです。この場合の応答値は残差の 収束を確認できていない参考値のため、時間刻み dt を小さくするなどの見直しを検討してください。 質点系(5.5.3)も同じ扱いです。

ただし応答が発散して変位が有限値でなくなった場合は、ステップ開始状態へ戻して解析を 打ち切ります。以降のステップも結果もすべて無効になり、参考値にもならないためです。

実装timehistory/mod.rs::nonlinear_time_history_analysis が算定します。 コンクリート履歴は動的解析で原点指向型に切替え、制振要素へ set_time_step(dt) を設定します。 位相差入力(ねじれ加振)にも対応します。 非線形時刻歴の幾何剛性は考慮しません。

入力方向と位相差入力

X・Y に加え、同一波形を両方向へ同時入力する X+Y を選べます。 X+Y は同一波形をそのまま両方向へ入れる簡易仕様で、位相差や方向別の波形指定には対応しません。

位相差入力では、位相遅れ時間 \( t = (L \cdot \sin\theta)/V_s \) を求め、位相遅れ方向の並進波を基準波としてねじれ地動加速度を生成します。 \( L \) は矩形基礎長さ [m]、\( V_s \) はせん断波速度 [m/s]、\( \theta \) は入射角 [°] です(既定は \( L = 20 \)、\( V_s = 200 \)、\( \theta = 30 \))。

長期荷重の初期化

時刻歴の開始前に、長期系荷重ケース(固定・積載等、LoadCaseKind::is_long_term)の外力を 静的 Newton 反復で載荷し(7. プッシュオーバー解析の長期載荷 フェーズと同じ経路)、その変位・応力状態を時刻歴の初期条件とするオプションです(既定で有効)。 軸力に依存する部材耐力(柱の曲げ降伏 \( M_y \)・せん断降伏 \( Q_y \) の軸力項、ファイバー断面の N–M 相関)を、長期軸力を含んだ状態で評価するために用います。

長期荷重ベクトル \( f_0 \) は時刻歴を通じて一定の外力として毎ステップ加算し、動的な初期変位・ 初期速度(波形読込フォームで指定する initial_disp/initial_vel)は「長期解からの増分」として 扱います。したがって、記録される変位・部材内力は長期変位・長期応力を含む全量です。長期系荷重 ケースがないモデルでは何も行いません。このオプションは非線形時刻歴のみに適用され、線形時刻歴 (5.5.1)には適用されません(地震動による応答成分のみを扱います)。

5.5.3 質点系(串団子)非線形時刻歴

質点系(串団子)モデルの非線形時刻歴を解きます。 モデルの組み立て(2 次元/3 次元、線形の層剛性、非線形骨格)は 5.10 質点系解析 です。 2 次元の非線形時刻歴は、プッシュオーバー Q–δ を等包絡面積則でトリリニアに縮約し、せん断型串団子で Newmark 平均加速度と Newton を用い、三重対角 Thomas 法で解きます(質点系縮約の標準的な実務手法)。 3 次元では各階 \( (U_x, U_y, \theta_z) \) の密な接線剛性を Newton で解きます。ねじりばねは線形です。 層間・層せん断・塑性率は X・Y・45°・水平合成の 4 欄です(定義は 5.10)。 減衰・サンプル波の dt/継続/周期/振幅は立体時刻歴とは独立です(既定は 5.10)。

算定式

復元力は最大点指向型(Clough 系)トリリニアとし、等包絡面積則で次を解いて折点を決定します:

\[ A_{\text{tri}}(\delta_2) = A_{\text{actual}} \]

骨格の元になる層 Q–δ 曲線は、プッシュオーバーの性能曲線から抽出します。長期荷重のみを 初期載荷した状態(水平力ゼロ。7. プッシュオーバー解析の 長期載荷フェーズ)の (δ, Q) を曲線の原点として各点から差し引きます。長期荷重による層の 残留水平変形(非対称な荷重配置で生じ得る)を、水平力に対する復元力特性から切り離すためです。

減衰は初期剛性比例 \( a_1 = 2h/\omega_1 \) とします。ω1 は下記「固有値解析」の 1 次モードを 用い、固有値分解が失敗した場合(質量 0 以下の層がある等)のみ、逆反復法による概算へ フォールバックします。

各時刻ステップの Newton 反復は最大 30 回とし、収束を \( \|r\| < 10^{-6} \cdot r_{\text{ref}} \) で判定します (基準ノルム \( r_{\text{ref}} \) の取り方は 5.5.2 と同じです)。反復が上限内に収束しなかった ステップはその時点の試行状態で確定して解析を続行し、結果画面に非収束ステップ数を 警告表示します。この場合の応答値は残差の収束を確認できていない参考値のため、 時間刻み dt を小さくするなどの見直しを検討してください。

実装squid_n_solver::dynamic::lumped_masscrates/squid-n-solver/src/dynamic/lumped_mass/)が算定します。

固有値解析

串団子モデル(各層の質量・初期剛性 K1)から、せん断型の一般化固有値問題 \( K x = \omega^2 M x \) を解きます(M は対角、K はせん断型三重対角)。M が対角である ことを利用して標準固有値問題 \( A = M^{-1/2} K M^{-1/2} \) に帰着し、対称行列の固有値 分解(faer の直接解法)で解きます。

  • モード数は質点系パネルのモード数設定(既定 3。立体固有値のモード数とは独立。画面上の上限は 30)を用い、 2 次元は層数、3 次元は 3×層数を超える場合はそこまで切り詰めます。
  • 2 次元のモード形状は各層の相対変位(下層→上層)で、最上階の値を 1.0 に正規化します。 3 次元は各階 \( (U_x, U_y, \theta_z) \) を頂部水平変位のノルムで正規化します。 立体モデルの固有値解析結果(M 正規化・別の自由度空間)とは正規化基準が異なるため、モード 形状の値どうしは比較せず、周期のみを比較してください。 刺激係数と有効質量は算定しません。
  • 3 次元非線形の並進初期剛性は増分骨格の K1 です。静解析の層 Q/δ とは別に、復元力と同じ骨格から組みます。
  • 層に質量が 0 以下のものがある場合は算定できません(実体のない極端な高周波モードが 紛れ込むため)。3 次元では回転慣性 \( J \le 0 \) の階も算定できません。

5.5.4 層応答の集計(層せん断力・層せん断力係数・階加速度・階速度・階変位)

5.5.1〜5.5.2 のいずれの経路でも、応答の詳細記録として各時刻の層応答を階(model.stories、下層→上層)ごとに集計します。

層せん断力(慣性力ベース)

節点慣性力ベクトル \( f_{\text{abs}} = M \cdot \ddot{u} + \ddot{x}_g \cdot M \cdot r \) (\( \ddot{u} \) は相対加速度ベクトル、\( \ddot{x}_g \) は地動加速度、\( M \cdot \ddot{u} \) は疎行列ベクトル積)の当該方向の並進自由度成分のみを、当該層以上に属する節点について 集計し、符号を反転した値です。

\[ Q_i = -\sum_{j \geq i} \sum_{\text{dof} \in \text{階} j \text{ の並進自由度}} f_{\text{abs, dof}} \]

一貫質量行列では \( M \) が並進・回転自由度間の連成項を持ちますが、これは疎行列ベクトル積 \( M \cdot \ddot{u} \) の並進成分の中に既に正しく反映されているため、回転自由度そのものを 集計へ含める必要はありません(回転自由度の加速度に地動加速度 \( \ddot{x}_g \) を直接 加算することもしません)。どの階にも属さない節点(基礎レベルの自由節点等)の並進自由度は、 Z 座標が最も近い階(階の代表 Z=所属節点の平均 Z)に計上します。最下層の \( Q_1 \) は 全並進自由度の慣性力の総和(ベースシア)に一致します。

層せん断力係数

全時刻を通じた層せん断力の絶対値最大値を、当該層以上の地震用重量の総和で除した値です。

\[ C_i = \dfrac{\max_t |Q_i(t)|}{\sum_{j \geq i} W_j} \]

\( W_j \) は階 \( j \) の地震用重量(5.1 地震力と同じ Story::seismic_weight)です。

階絶対加速度・階速度・階変位

階に属する節点の質量加重平均です(質量が全節点ゼロの階は単純平均)。加速度は絶対加速度(相対加速度+地動加速度)、速度・変位は相対値です。

\[ \bar{a}_i = \dfrac{\sum_{\text{dof} \in \text{階} i} m_{\text{dof}} \left( \ddot{u}_{\text{dof}} + \ddot{x}_g \right)}{\sum_{\text{dof} \in \text{階} i} m_{\text{dof}}} \]

層応答の最大値

層せん断力・階絶対加速度・階速度・階変位のいずれも、全時刻を通じた絶対値最大値 (5.5.5 の間引きに関わらず全ステップで求めた値)を別途保持します。

実装dynamic::timehistorytimehistory/recording.rs::ThRecorder)が算定します。X・Y 方向の両方を常に記録し、加振されていない方向の連成応答(ねじれ・偏心による応答等)も含みます。

5.5.5 詳細記録のフレーム間引き(record_every)

5.5.1〜5.5.2 いずれの経路でも、全節点変位・部材内力・層応答の時系列(5.5.4)は、 解析の全ステップのうち一定間隔 record_every ステップごとに間引いて保持します (最終ステップは間引きに関わらず必ず含めます)。地震波は数千〜数万ステップに及ぶため、 時系列の全量をそのまま保持するとメモリ・保存容量を圧迫することへの対処です。

record_every を指定しない場合は、記録フレーム数がおおむね 1000 になるよう次式で自動決定します(\( N \) は解析の全ステップ数)。

\[ \text{record_every} = \max\left(1, \left\lfloor N / 1000 \right\rfloor\right) \]

間引きの対象は時系列本体(各フレームの全節点変位・部材内力・層応答)のみです。 全ステップを通じた最大応答(節点変位の最大値、部材内力の包絡値、層せん断力係数 Ci、 層せん断力・階絶対加速度・階速度・階変位の絶対値最大)は間引かず、全ステップを走査して 求めます。

フレームごとの部材内力(時系列本体)は、各部材の評価断面のうち両端 2 点(材端、 最小ξ・最大ξ)のみを保持し、メモリを削減します(3D アニメーション・履歴表示は端部値の みを用いるため)。中間の評価断面(危険断面)を含む全断面の情報は、間引かない包絡値 (部材内力の最大値)側にのみ保持されます。

解析タブ「時刻歴応答」の「記録間引き」欄で record_every を指定できます (線形 Newmark-β・非線形のいずれの経路でも共通)。0 を指定すると上式による 自動決定になります。

実装timehistory/recording.rs::auto_record_every が自動決定を、 呼び出し側(GUI・非線形の NonlinearThCfg::record_every)が record_every を 明示指定できます。

5.6 非線形解法(弧長法)

荷重-変位の限界点と軟化域を追跡する方式として、円筒型弧長法(Crisfield 1981)と修正 Newton を実装しています。

現在、この方式は増分解析から選択できません。 実建物の規模のモデルで修正子の反復が収束しないためです。 増分解析の制御は荷重制御と変位制御の 2 段で構成されます(5.7 増分解析)。 本節は実装している方式の算定根拠として記します。

算定式

予測子を次とします:

\[ du_t = K^{-1} \cdot q \]

円筒拘束(\( c = (du + d\bar{u})^\mathsf{T}(du + d\bar{u}) - \Delta l^2 \))を解きます:

\[ a \cdot \delta\lambda^2 + b \cdot \delta\lambda + c = 0 \]

根選択は、前ステップとのなす角が正で小さい根を採ります。

実装nonlinear::arc_lengtharc_length.rs::ArcLengthSolver)が算定します。 既定は max_iter = 20, tol = 1e-6

5.7 増分解析(プッシュオーバー解析)

保有水平耐力を求めるため、漸増静的(プッシュオーバー)解析を行います。画面上の表記は「増分解析」です。 外力分布は Ai 分布(1. 荷重)とし、荷重制御から変位制御へと段階的に制御を切替えます。

終了目標

変位増分をどこまで押し込むかは、次の 2 つの終了目標で指定します。それぞれ独立に有効・無効を切替えられ、有効な目標のいずれかに最初に達した時点で解析を打ち切ります。

目標内容既定
目標層間変形角全層の最大層間変形角(\( \max_i |\delta_i| / h_i \)、\( h_i \) は階高=階標高の隣接差分)が指定値(1/n)に達したら終了有効(1/150)
目標変位頂部(最上階の代表節点)の加力方向変位が指定値 [mm] に達したら終了無効

両方を無効にした場合は荷重制御(λ=1、設計地震力レベル)までで終了します。 変位制御フェーズの押込み上限は、目標変位はその値を、目標層間変形角は「全層が一様に目標角へ達した場合の頂部変位」=目標角 × Σ階高を用います(最大層間変形角は平均層間変形角=頂部変位/Σ階高 以上であるため、上限到達までに必ず判定が成立します)。

終了目標の判定は、水平力を載荷するフェーズ(荷重制御・変位制御)すべてで行います。 あるフェーズで目標に達した場合、以降のフェーズへは移行しません。 長期荷重の初期載荷(λ=0)は水平力に対する応答ではないため、判定の対象外です。

増分の刻み(均等変位刻み制御)

段階制御では、性能曲線の点間隔(頂部変位軸)が全域で概ね均等になるよう増分を刻みます。 目標刻みを du =(押込み上限)/(ステップ数設定)とし、次の規則で増分を決めます。

  • 荷重制御: λ 増分を「頂部変位が du 進む見込みの量」に適応させます。増分は直近の確定ステップ間の荷重−変位勾配(初回は初期接線剛性による弾性勾配)から求めます。剛性が変化しない弾性域は粗い λ 刻みで足り、降伏が進み勾配が増すほど刻みは自動的に細かくなります。
  • 変位制御: 同じ du を頂部変位の押込み刻みに用います。

弾性勾配を推定できない場合は、荷重制御を等分割 λ 刻み(1/ステップ数)、変位制御を 10 分割とする固定刻みで解析します。 増分方式「荷重増分のみ」は常に等分割の λ 刻みです。

算定式

外力は q[a] += dir·share(Ai 分布。載荷先は1.1 地震力の「Pi の載荷先」に同じ)とし、周期は略算式によります(\( C_0 = 0.2 \), \( Z = 1.0 \), 第2種地盤):

\[ T = h(0.02 + 0.01\alpha) \]

Newton 反復は次とし(幾何剛性オプション use_kg、1 ステップあたり最大 50 回)、収束を \( \|r\| < 10^{-6} \cdot \max(\|f_{\text{ext}}\|, 1) \) で判定します:

\[ K_t \cdot \delta u = f_{\text{ext}} - f_{\text{int}} \]

保有水平耐力は次とします:

\[ Q_u = \text{性能曲線上の最大ベースシア} \]

接線剛性が特異・非正定値になったときの扱い

弾塑性の接線剛性 \( K_t \) は、降伏の進行(崩壊機構の形成・耐力劣化)によって正定値性を失うことがあります。増分解析はこれを増分が大きすぎるときの非収束と同じ扱いとし、全フェーズ(長期荷重の初期載荷・荷重制御・変位制御)で共通に次の順で対処します。

  1. 確定済みの状態から増分を半減して解き直す(最大 5 回。確定 λ・確定頂部変位を基点とした増分のみを縮めるため、単調載荷が保たれます)。
  2. それでも進めない場合はそのフェーズを打ち切り、次のフェーズ(荷重制御 → 変位制御)へ引き継ぐ。極限点近傍は変位制御の方が安定に追えるためです。
  3. 1 ステップも確定できなかった場合のみ、原因を切り分けたメッセージでエラー停止する(性能曲線が空の結果を「解析できた」として返すと、保有水平耐力を 0 と誤認させるためです)。

終了理由の記録

解析がどのように終了したか(終了目標へ到達/荷重係数上限まで載荷/押込みスケジュール完了/非収束による打ち切り/接線剛性の特異化による打ち切り)を結果へ記録します。目標へ到達しないまま非収束・特異化で打ち切られた場合、性能曲線は途中で途切れており \( Q_u \)(=性能曲線上の最大ベースシア)はその時点までの最大値です。結果画面はこの場合に警告を表示します(過小評価の可能性があるため、増分ステップ数の増加やモデルの見直しを検討してください)。

解析開始前の初期接線剛性チェック:初期(未変形・未降伏)の接線剛性を一度分解し、失敗した場合は増分を刻む前にエラー停止します。初めから特異なモデルは増分をいくら刻んでも解けないため、剛性がゼロの自由度を節点 ID と自由度成分で名指しして停止します(例: 梁だけが一直線に並ぶ節点のねじれ回転)。分解できるが対角が負の自由度がある場合は耐力劣化・機構形成として、いずれも該当しない場合は拘束不足・機構の可能性として案内します。

自由度を名指しする診断は、拘束(剛床・剛リンク・MPC)を縮約した後の接線剛性 \( K_r = T^\top K T \)(=実際に分解する行列)の対角で判定します。名指しの対象は縮約後に独立自由度として残るものだけなので、剛床・剛リンク・MPC のスレーブ自由度は挙がりません。

長期荷重の初期載荷

水平力の増分に先立ち、長期系荷重ケース(固定・積載等)の外力を載荷し、その応力状態(柱軸力・梁端モーメント)を初期条件とします。 長期応力を初期状態とすることで、軸力に依存する部材耐力(柱の曲げ降伏 \( M_y \)・せん断降伏 \( Q_y \) の軸力項、ファイバー断面の N–M 相関)が長期軸力を含んだ状態で評価されます。 長期荷重は全フェーズを通じて外力 \( f_0 + \lambda \boldsymbol{q} \) の \( f_0 \) として保持され、載荷完了状態は荷重係数 λ=0 の 1 ステップとして記録されます(ヒンジ詳細図の N-M 応答経路の始点)。 初期載荷は右パネル「増分解析」で無効化でき、長期系荷重ケースがないモデルでは何も行いません。

制御方式の切替(荷重制御 → 変位制御)

2 つの制御方式には、それぞれ釣合い経路を安定して辿れる領域があります。 増分解析は、経路の進行に合わせて有効な方式へ乗り換えることで、崩壊機構の形成域まで解析を進めます。

  • 荷重制御(λ を 0 → 1 へ増分): 構造が十分に硬い序盤。λ=1 は \( C_0 = 0.2 \) の設計地震力レベル
  • 変位制御(頂部変位を増分し λ を解く): 耐力ピーク(崩壊機構形成)の前後

荷重制御は、荷重を入力とするため耐力のピーク(極限点)を越えられません。 ピークを越えた大きさの荷重には、釣合う解がそもそも存在しないためです。

ですが、保有水平耐力の判定水準はこのピーク近傍にあります。 必要保有水平耐力 \( Q_{un} = D_s \cdot F_{es} \cdot Q_{ud} \) の \( Q_{ud} \) は標準せん断力係数 \( C_0 = 1.0 \)(大地震レベル)で算定するため、増分解析の λ に換算すると \( 5 D_s F_{es} \)、\( D_s \) が下限の 0.25 でも λ≒1.25 に相当します。 そのため、λ=1 で終わる荷重制御だけでは判定に必要な耐力域へ届きません。

また、建物が保持できない大きさの荷重を与えても、釣合い解が存在せず反復が収束しないだけで、「どこまで保持できたか=\( Q_u \)」の情報は得られません。 一方、頂部変位は崩壊機構形成の前後を通じて単調に増え続けます。 そのため、変位をパラメータに取る変位制御へ切替えることで、耐力の頭打ちと低下を釣合い経路上の応答として観測でき、\( Q_u \) をピーク値として確定できます。 健全な建物であれば、変位制御の区間でも λ は単調に増加し、荷重の低下はヒンジ形成による剛性低下が生じてはじめて現れます。

なお、頂部変位そのものが経路上で一時的に戻るスナップバックだけは、変位制御でも追えません。 その受け皿として弧長法(荷重と変位の両方を未知数のまま経路の弧長で増分する方式)を実装していますが、現在は選択できません。 実建物の規模のモデルで釣合い反復が収束しないため、有効化の導線を設けていません。 そのため現在の解析は、荷重制御と変位制御の 2 段で構成されます。

増分方式の選択(比較検証用)

増分方式は、既定の段階制御のほかに「荷重増分のみ」を選択できます(右パネル「増分解析」)。 荷重増分のみでは変位制御へ移行せず、終了目標が有効な場合は λ=1 を超えて同じ刻み dλ のまま荷重増分を継続します。 増分を半減しても収束しなくなった時点で解析を打ち切ります。 これ以上の荷重に釣合う解がない、すなわち耐力ピーク近傍に達したことを意味するためです。

荷重を入力とするため、この方式では耐力の頭打ち・低下域は追跡できません。 段階制御との結果の違い(どの λ まで釣合いが取れるか、変位制御が結果に与える影響)を確認する用途を想定しています。 保有水平耐力の判定に用いる結果は、崩壊機構の形成まで追跡できる段階制御(既定)で求めてください。 結果画面と CSV には、どちらの方式で得られた結果かを表示します。

変位制御が仮定するもの・しないもの

変位制御と聞くと、「λ=1 時点の変形形状を拡大していくため、ヒンジ発生による変形形態の変化を表現できないのではないか」という疑問が生じるかもしれません。 ですが、変位制御が拘束するのは頂部(最上階の代表節点)の加力方向変位という 1 自由度だけで、変形の形状は仮定しません。 残りの全自由度は、その時点の接線剛性(ヒンジによる剛性低下を反映した剛性)と外力 λ·q に対する釣合いから解かれます。 そのため、たとえば特定の層の柱にヒンジが入って層崩壊形へ向かう場合、同じ頂部変位の増分でも、その内訳は軟化した層の層間変位へ自動的に集中します。 この変形集中は、結果画面の層別の Q-δ 曲線(層間変位−層せん断力)で確認できます。

一方、固定しているのは外力の分布形状 q(Ai 分布)で、全フェーズを通じて λ でスケールするだけです。 ヒンジ形成により振動特性が変わると実際の地震時の慣性力分布も変わり得ますが、これには追随しません。 これは静的漸増載荷(プッシュオーバー)解析に共通の近似で、告示の保有水平耐力計算も Ai 分布による静的載荷を前提としています。

解析前の入力チェック

増分解析は、部材の終局耐力(曲げ降伏 \( M_y \)、せん断終局 \( Q_{su} \)、耐震壁の \( Q_u \))で応力を頭打ちにすることで崩壊機構を形成します。耐力を算定できない部材は弾性のまま・降伏しないまま扱われ、押し込むほど際限なく応力を負担するため、崩壊機構が形成されず保有水平耐力を過大評価します(危険側)。

そのため、次の入力不足があるモデルは、既定値で補わずに解析をエラーで停止し、該当する部材 ID と是正内容を表示します。

対象停止条件
耐震壁(壁エレメント)終局せん断強度 \( Q_u \) を算定できない(下記の一覧)
線材(梁・柱・ファイバー・マルチスプリング)断面に材料が割り当てられていない
同上主材料の区分が鉄筋(2.5 構造種別の判定。線材の主材料には鋼材かコンクリートを割り当てます)
同上(配筋を持つ断面: RC 矩形・RC 円形)主材料の区分が鋼材(鋼材として検定すると耐力を大きく過大評価します)
同上(コンクリート系断面: RC・SRC・CFT)主材料にコンクリート強度 \( F_c \) が設定されていない、または \( F_c \le 0 \)
同上(配筋を持つ断面: RC 矩形・RC 円形・SRC 矩形)主筋の材料が未割当、またはその材料に正の \( f_y \) がない
同上(鋼材断面形状: 形鋼・鋼管など)鋼材の降伏強度 \( f_y \) を解決できない(SRC は内蔵鉄骨の材料、その他は主材料。ファイバー断面は鋼材の降伏進展を追うため必須)
同上(断面形状が未設定)主材料に正のコンクリート強度 \( F_c \) も正の降伏強度 \( f_y \) も設定されていない(\( F_c \) があればコンクリート、なければ鋼材のファイバとして組み立てるため、使われる側の強度が必要)
全部材(線材)断面の有効せん断断面積 \( A_s \) が 0(3.3 せん断有効断面積 As。全解析共通の入力チェック)

\( F_c \le 0 \)・\( f_y \le 0 \) のような 0 以下の値は、未設定と同じ「耐力を算定できない」入力として扱います。

耐震壁で耐力を算定できないのは次の場合です。材種によらず次を検出します。

  • 壁エレメントとして構築できない(4 節点の指定がない、節点座標が退化している)
  • 断面が設定されていない、または壁厚が \( \le 0 \)
  • 断面に材料が割り当てられていない

RC 壁では、これに加えて次を検出します。

  • 材料にコンクリート強度 \( F_c \) が設定されていない、または \( F_c \le 0 \)
  • 付帯柱(側柱)があるのに、その断面から主筋量を取得できない(断面形状が RC 矩形でない、主筋の本数・径が 0)
  • 付帯柱がなく、かつ壁筋比 \( p_s \) が 0
  • 上記のいずれにも該当しないが \( Q_u \) の算定結果が \( \le 0 \) となる(寸法・開口の入力を確認してください)

鋼板耐震壁では、次を検出します。

  • 材料に降伏強度 \( F \) が設定されていない、または \( F \le 0 \)
  • \( Q_y \) の算定結果が \( \le 0 \) となる(板厚・壁長さの入力を確認してください)

同じチェックは非線形時刻歴応答解析にも適用します(耐力が定まらない部材を弾性のまま解析すると応答を過小評価するためです)。許容応力度計算(線形弾性解析)は部材耐力を用いないため対象外です。

実装squid_n_element::factory::{nonlinear_input_issues, ensure_nonlinear_input} が判定し、crates/squid-n-solver/src/nonlinear/pushover/driver.rscrates/squid-n-solver/src/dynamic/timehistory/nonlinear.rs が解析の冒頭で呼び出します。

材料強度(割増)

保有水平耐力計算の材料強度として、降伏強度に次の割増係数を乗じます (H12 建告第2464号の運用・各認定条件)。

用途割増係数
鋼材(材料名から鋼材グレードを解決できる材料。SS400SN490B 等)1.1
鋼材のうち 590N 級(SA440・TMCP440)1.05
RC 主筋(材質・fy 未設定時の既定値 345 N/mm² にも適用)1.1
せん断補強筋割増しない
名称から解決できない直接入力材料割増しない(下記の直接入力で指定可)
  • 材料ごとに割増係数を直接入力でき(材料タブの「割増」欄)、入力がある場合は 自動判定より優先してその値を用います。直接入力材料に割増を適用したい場合に指定します。
  • 割増はプッシュオーバー解析(部材の集中ばね・ファイバーの組み立て、 曲げヒンジ・せん断降伏の判定閾値)にのみ適用し、許容応力度計算(一次設計)・ 時刻歴応答解析には適用しません。

実装nonlinear::pushoverpushover/mod.rs::pushover_analysis_recording)が算定します。 材料強度の割増は部材組み立て(squid_n_element::factory::build_nonlinear_behaviorStrengthBasis::MaterialStrength)とヒンジ・せん断降伏閾値で適用し、係数は squid_n_core::material_grade::{material_strength_factor_steel, material_strength_factor_rebar} が算定します。 変位制御は、Ai 分布の比例荷重パターン \( \lambda \boldsymbol{q} \) を保持したまま、荷重係数 \( \lambda \) を「頂部変位 = 目標値」の拘束条件から決定します(Batoz–Dhatt の変位制御法)。各反復で釣合い残差解 \( \delta u_r = K^{-1}(\lambda \boldsymbol{q} - f_{\text{int}}) \) と荷重パターン解 \( \delta u_q = K^{-1} \boldsymbol{q} \) を解き、

\[ \delta\lambda = \frac{u_{\text{target}} - u_{\text{roof}} - \delta u_r[\text{roof}]}{\delta u_q[\text{roof}]}, \qquad \delta u = \delta u_r + \delta\lambda \cdot \delta u_q \]

として頂部変位拘束と力の釣合いを同時に満たす \( \lambda \) を定めます。収束は外力ノルム基準の相対残差(\( 10^{-6} \))と頂部変位の目標一致で判定し、収束しないステップは押込み増分を半減して再試行します。荷重制御から変位制御へ切替わっても載荷パターンは同一の Ai 分布のままであるため、荷重−変位曲線は連続で、ベースシアの低下は部材の剛性低下(ヒンジ形成・崩壊機構)によってのみ生じます。これにより解析は、設計地震力レベル(\( \lambda = 1 \))を超えて崩壊機構形成域まで押し切ることができます。 崩壊機構判定は、静的不静定次数 \( r = 3m - 3n + r_{\text{support}} \)(\( r_{\text{support}} \) は加力方向の平面内拘束自由度数)に対して降伏ヒンジ数 \( \ge r+1 \) をゲートとします。ここで \( m \)・\( n \) は、加力方向の平面骨組に関与する部材とその接続節点の数です。具体的には 2 節点の線材(梁・柱・ブレース)のうち部材軸が加力直交の水平方向へ卓越しない(軸単位ベクトルの直交水平成分の絶対値が 0.707 以下の)ものを \( m \) に数え、それらが接続する節点を \( n \)・\( r_{\text{support}} \) の集計対象とします(3 次元モデルを加力方向の平面骨組へ射影して次数式を適用する扱いで、直交方向の梁や耐震壁は算入しません)。

耐震壁の軸・曲げ

耐震壁(壁エレメントモデル)の壁柱は、柱と同様に既定でファイバー断面の弾塑性評価とします(コンクリート格子+縦筋の等価分散配置。4.5 壁エレメントモデル)。細長壁の曲げ降伏・軸力変動による N–M 相関が増分解析に反映されます。

耐震壁の面内せん断

耐震壁(壁エレメントモデル)は、面内せん断を終局せん断強度 \( Q_u \) で頭打ちとする弾完全塑性として扱う(4.5 壁エレメントモデル8.4.2 耐震壁)ため、壁が伝達する面内水平力は \( Q_u \) を超えません。\( Q_u \) を算定できない壁があるモデルは、上記「解析前の入力チェック」によりエラーで停止します。

側柱(耐震壁の鉛直辺に取り付く柱)は面内曲げ面の端部回転を静的縮約し、面内せん断を負担しません(許容応力度計算と同じ扱い)。壁のせん断断面には側柱断面を算入します。

鋼板耐震壁を含むモデルでは、面内せん断を鋼板のせん断降伏 \( Q_y = t , l_w F/\sqrt{3} \) で頭打ちとします。せん断座屈を考慮していないため、解析の実行時に対象の枚数とあわせて注意事項を表示します(4.5 壁エレメントモデル)。

5.7.1 曲げヒンジ判定(Mc・My・終局)

曲げヒンジの発生レベルを判定します。 RC 曲げひび割れ(\( \kappa = 0.56 \)、技術基準解説書 P.621-623):

\[ M_c = \kappa \cdot \sqrt{F_c} \cdot Z_e \]

RC 曲げ降伏(\( d = \text{有効せい} \)、同 P.623):

\[ M_y = 0.9 \cdot a_t \cdot \sigma_y \cdot d \]

有効せい \( d \) は引張縁から引張筋重心までの距離 \( d_t \) を用いて \( d = D - d_t \) とします。 \( d_t \) はかぶり・せん断補強筋径・主筋径・多段配筋を考慮し、RC 断面検定と同じ squid_n_core::rc_rebar_geom の規約で算定します(曲げばねの降伏モーメントも同一)。

鋼 全塑性:

\[ M_p = Z_p \cdot \sigma_y \]

算定式:\( m_{\max} \ge M_y \) かつ \( \mu \ge {} \)ULTIMATE_DUCTILITY(=4.0) のとき終局、\( M_c \le m_{\max} < M_y \) のときひび割れとします。

式の選択

配筋を持つ断面(RC 矩形・RC 円形)は、材料の区分に依らず上の RC の式を使います。 鋼の \( M_p = Z_p \sigma_y \) は配筋を無視した素の断面係数を使うため、RC 断面へ当てると \( M_y \) が桁で過大になり、曲げヒンジが検出されなくなるためです。 それ以外の断面は構造種別(2.5 構造種別の判定)で分け、 S は鋼の全塑性、複合断面(SRC・CFT)と形状を持たない断面は \( M_y = \sigma_y Z_e \)・\( M_c = \kappa \sqrt{F_c} Z_e \) の簡易値とします。 塑性断面係数 \( Z_p \) はすべての鋼断面形状(H 形・箱形・円形鋼管・組立 H 形・T 形・溝形・リップ溝形・山形・平鋼・中実丸鋼)について算定します(3.2 断面諸量)。

判定に用いる材端モーメントの位置

比較する材端モーメント \( m \) は、危険断面=剛域フェイスの値を用います。要素が返す材端力は グローバル系・節点位置のため、(1) 要素局所座標系へ回転し、(2) 剛体アームのモーメント (材端せん断 × アーム長)を差し引いて求めます(4.1.4 剛域)。 節点位置のモーメントは剛体アームぶん大きく、断面耐力 \( M_y \) と直接比較すると、剛域を持つ 部材のヒンジを過早に検出し、崩壊荷重を過小評価します(両端固定柱では \( m_{\text{node}} = Q \cdot L/2 \) となり、判定が剛域長に依存しなくなります)。 局所成分を用いることで、材軸まわりのねじりを曲げと取り違えることもありません。

材端ごとの記録

ヒンジは i 端・j 端それぞれについて判定・記録します。崩壊機構の運動学的ゲート (降伏ヒンジ数 \( \ge r+1 \))は (部材, 材端) の重複を除いて数えるため、1 部材につき モーメント最大側の 1 端しか記録しないと、両端が降伏した柱も 1 個としか数えられず、 機構が成立していても部分崩壊形と判定されます。

判定対象

曲げヒンジ・せん断降伏の判定対象は 2 節点の線材(梁・柱・ブレース)です。 耐震壁(壁エレメントモデル、4 節点)は線材の材軸(i 端 → j 端)が定義できない ため対象外とし、壁の非線形性は壁要素自身の弾塑性 (壁柱ファイバーの軸・曲げと、終局せん断強度 \( Q_u \) による面内せん断の 頭打ち。上記「耐震壁の軸・曲げ」「耐震壁の面内せん断」)で表現します。

実装pushover/hinge.rs::{member_moment_thresholds, track_hinges} が算定します。 危険断面への変換は pushover/geom.rs::member_end_forces_at_facesquid_n_element::frame::rigid_arm::to_flex_force)によります。 RC 主筋の σy は断面の主筋材料の \( f_y \) から解決します(未割当のモデルは解析前チェックで停止します)。鋼材 σy は断面の主材料の \( f_y \)、ない場合は既定 235 とします。

5.7.2 部材塑性率(ductility)の 3 方式

部材塑性率を 3 方式(基点ひずみ・重み付け平均・初降伏)で算定します。

算定式

方式(1) は基点ひずみによります。RC 引張 0.01、圧縮 0.005、鉄骨 0.01 を超えた曲率を基点とし、次とします:

\[ \mu = \kappa_{\max}/\kappa_{\text{ref}} \]

方式(2) は重み付け平均が次を満たす時点を基点とします:

\[ J_m = \frac{\sum \sigma_y \cdot A \cdot |\varepsilon| \cdot \mu_i}{\sum \sigma_y \cdot A \cdot |\varepsilon|} \ge 1.0 \]

方式(3) は初降伏によります。

実装pushover/mod.rs::compute_ductility_refs が算定します。

5.7.3 せん断降伏判定(Qy)

せん断降伏を判定します。 鋼系は次によります(von Mises):

\[ Q_y = A_s \cdot f_y/\sqrt{3} \]

RC 矩形断面は荒川 mean 式系(rc_qsu_simple、軸力を各ステップで反映)によります。せん断補強筋の \( \sigma_{wy} \) は断面のせん断補強筋材料の \( f_y \) から解決し、未割当の場合のみ SD295 相当(295 N/mm²、規格上の最小グレード)を用います。

SRC 矩形断面は、RC 部と内蔵鉄骨の累加式によります(SRC 規準の累加強度の考え方):

\[ Q_y = {}rQ{su} + {}_sA_w \cdot {}_sF/\sqrt{3} \]

  • \( {}rQ{su} \): RC 部の荒川 mean 式系。鉄骨を控除しない全断面 \( b \cdot D \) と配筋で評価し、軸力の各ステップ反映も RC 矩形と同一です。
  • \( {}_sA_w \): 内蔵鉄骨のせん断有効断面積。強軸(局所 y)はウェブ内法 \( t_w (H - 2t_f) \)、弱軸(局所 z)は上下フランジ \( 2 B t_f \)(全塑性評価のため応力分布係数による低減は行いません)。
  • \( {}_sF \): 内蔵鉄骨の基準強度。鋼種名の前方一致で当該板厚の区分から解決し、解決できない場合は 235 N/mm² とします。材料強度割増(直接入力係数優先、なければ鋼種名から判定: 鋼材 1.1・590N 級 1.05・鋼種名を解決できない場合は割増なし 1.0)を乗じます。

材料に降伏強度 \( f_y \) が設定されていても(主筋 \( \sigma_y \) の解決用など)、断面形状から精算できる RC 矩形・SRC 矩形は常に上記の式で評価します(\( f_y \) による鋼系の式 \( Q_y = A_s f_y/\sqrt{3} \) は、形状から精算できない断面のみに用います)。

SRC 矩形以外のコンクリート系断面(形状情報がない場合等)は \( Q_y = A_s \cdot 0.7\sqrt{F_c} \)(簡易慣用値)へフォールバックします。

材料強度が未入力で \( Q_y \) を算定できない部材、および有効せん断断面積 \( A_s \) が 0 の断面を用いる部材は、解析前チェックにより解析が停止します(上記「解析前の入力チェック」、3.3 せん断有効断面積 As)。

実装pushover/mod.rs::build_dir_threshold が算定します。 RC の \( \sigma_y = 345 \)(SD345)、\( \sigma_{wy} = 295 \)(SD295)は「要・原典照合」と明記します。 局所せん断を ey/ez へ射影して方向別に判定します。

5.8 累積損傷度(鉄骨梁端部)

鉄骨梁端部の累積損傷度を、レインフロー法(ASTM E1049-85 3 点法)と Miner 則を用いて算定します。

算定式

破断寿命および損傷度を次とします:

\[ N_f = (\mu/C)^{-1/\beta} \]

\[ D = \sum \text{count} \cdot (\mu/C)^{1/\beta} \]

実装damage.rs が算定します。既定は \( C = 20.0, \beta = 0.5 \)(「暫定既定・要原典照合」と明記)。

5.9 並列計算

解析の並列度(使用するスレッド数)を設定し、(1) 行列ソルバ内部の並列、(2) 荷重ケース単位の並列、(3) 非線形解析の要素ループ並列の 3 種類で解析を高速化します。既定は自動(使用可能な全コア)で速度を優先します。ですが、単一スレッド(設定値 1)を指定すると、同一入力に対するビット一致の再現性(決定性)を保証します。

並列度の設定

並列度はプロセス全体の設定(squid_n_math::parallelism)で、GUI では右パネル「① 準備計算」の「計算条件」で指定します:

設定値意味
0(既定)自動。使用可能な全コアを使う
1単一スレッド。同一入力でビット一致の再現性を保証する
n(2 以上)スレッド数を n に固定する

ソルバ内部並列では浮動小数点加算の順序が変わり得るため(加算の非結合性)、結果は単一スレッド実行とビット単位では一致しません。ただし各荷重ケースの計算はケース間で状態を共有せず独立に行われるため、値としての差は丸め誤差程度であり、工学的判断に影響しません(検証は単一スレッド解との値一致で行います)。ビット一致の再現が必要な場合(V&V・回帰試験・成果の完全再現)は 1 を指定します。なお、後述の要素ループ並列(非線形解析)はこの例外で、並列でも単一スレッド実行とビット単位で完全に一致します。

並列化の 3 種類

  1. ソルバ内部の並列(inner): 疎 Cholesky / LU の分解・求解(5.1 の線形代数ソルバ)を複数スレッドで実行することで、解析準備(全体剛性の組立と分解)を高速化します。
  2. 荷重ケース単位の並列(outer): 分解済みの剛性行列を共有し、複数の荷重ケースを並列に解きます(Analysis::linear_static_batch)。一貫計算では多数の荷重ケース(長期・地震 X/Y など)を同一の剛性で解くため、実務ワークフローでもっとも効果が大きくなります。GUI の「一括解析」は、この経路で全荷重ケースを解いたうえで、荷重組合せをその結果の線形和として組み立てます(5.2.1 荷重組合せの応答)。荷重組合せ自体は求解を伴わないため、並列化の対象は荷重ケースの数になります。
  3. 非線形解析の要素ループ並列: 非線形時刻歴応答解析・増分解析(プッシュオーバー)の反復計算で繰り返される要素単位の処理(要素状態の更新、接線剛性の組立、内力の集計)を、要素ごとに並列実行します。各要素の計算は要素間で状態を共有せず独立で、結果の集約は常に要素番号順に行うため、浮動小数点の加算順序が単一スレッド実行と完全に同一になり、結果はビット単位で一致します(ソルバ内部並列と異なり、並列化しても決定性が失われません)。効果は要素数が多いモデルほど大きく、要素数が少ない小規模モデルではスレッド化のオーバーヘッドが計算短縮を上回ることがあります。

分解(factorize)は 1 回だけ行い、各ケースは前進・後退代入と内力復元のみを行います(5.1・5.2 参照)。ケースごとの計算は荷重ベクトル組立 → 求解 → 変位展開 → 部材断面力復元の全工程が独立で、結果の格納順は入力順に固定されます。

スレッドの自動配分

ケース並列(outer)とソルバ内部並列(inner)を同時に全開にすると、合計要求スレッド数(outer × inner)がコア数を超えて奪い合いが起き、かえって遅くなります。このためバッチ解析では、総枠(設定スレッド数、自動なら全コア数)を両者へ自動配分します:

\[ \text{outer} = \min(\text{ケース数},\ \text{総枠}), \qquad \text{inner} = \max!\left(1,\ \left\lfloor \text{総枠} / \text{outer} \right\rfloor\right) \]

  • ケース数 ≥ コア数: inner = 1(全コアをケース並列に使う)
  • ケース数 < コア数: 余りコアをソルバ内部並列へ回す
  • 1 ケースのみ: ケース並列なし。設定どおりのソルバ内部並列で解く

バッチ終了後は設定値の並列度へ戻ります。

配分例(8 コアマシン、並列スレッド数 0=自動のとき)

状況ケース並列ソルバ内部並列動き
荷重ケース 16 件の一括解析81全コアをケース並列に使う。16 件は 8 スレッドへ順次割り当てられる
荷重ケース 4 件の一括解析424 ケースを同時に解き、各ケースの求解に 2 スレッドを使う
荷重ケース 3 件の一括解析32⌊8/3⌋=2。合計 6 スレッドの要求に留め、コア数の超過(奪い合い)を避ける
1 ケースのみ・単体実行8ケース並列なし。ソルバ内部並列が全コアを使う
解析準備(剛性組立+分解)・固有値・時刻歴8一括解析以外の処理はソルバ内部並列が全コアを使う

端数が出るケース(例: 3 件)では、切り捨て配分により一部のコアを割り当てませんが、超過配分してスレッドを奪い合うより速くなります(実測は後述のベンチマーク参照)。

速度の目安

同梱のベンチマーク(cargo run -p squid-n-solver --example parallel_bench --release)で、実行環境での効果を確認できます。参考値(4 コア、約 34,000 自由度・部材 15,480 の立体ラーメン):

処理単一スレッド比
荷重ケース 16 件の一括解析約 3.5〜4 倍
荷重ケース 2 件の一括解析約 1.8〜1.9 倍
解析準備(剛性組立+分解)約 1.3 倍

ケース数がコア数以上のとき並列化効率がもっとも高く、コア数までほぼ線形にスケールします。剛性組立は現状単一スレッドのため、解析準備の向上率は分解の並列化分に留まります。

実装: squid_n_math::parallelism(並列度設定・線形代数ライブラリへの反映・スレッドプール)、squid_n_solver::statics::analysis::Analysis::{linear_static_batch, linear_static_with_combinations}(ケース並列とスレッド配分)、squid_n_solver::dynamic::timehistorysquid_n_solver::nonlinear::pushover(非線形解析の要素ループ並列)、GUI は解析タブ(squid-n-app)が担当します。

5.10 質点系解析

本節では、各階を質点に縮約したせん断型モデルの固有値と時刻歴を扱います。 立体 FEM の固有値・時刻歴とは独立した解析です。

立体のモードは部材の曲げや局部変形を含むため、質点系の次数と並べて読むことはできません。 周期だけを比較してください。 曲げをばねとして分離する変種は、自由度の置き方が立体とさらに食い違うため使いません。

実行は右バー「質点系」です。 表とグラフは結果タブ「質点系」、球とばねは 3D ビューアの「質点モード」「質点時刻歴」です。

前提

設定必要な先行結果
2 次元・線形加振方向の地震静的(EX または EY)
3 次元・線形地震静的 EX と EY の両方
2 次元・非線形加振方向の増分解析
3 次元・非線形X・Y 両方の増分解析と、ねじり剛性のための EX・EY

3 次元のねじりばね(KR)は、線形・非線形のいずれでも線形ばねです。 非線形の並進だけが増分解析のトリリニアを使い、ねじりは偏心率精算の KR のままにするためです。

既定値

項目既定範囲
次元2 次元2 次元 / 3 次元
非線形オフ(線形)オン / オフ
加振・解析方向XX / Y
層並進剛性の定義層 Q/δ(EX/EY)層 Q/δ / 柱 ki。線形のときだけ使います
固有値のモード数3(立体固有値のモード数とは独立)画面は 1〜30。2 次元は層数、3 次元は 3×層数を超える指定は切り詰めます
第 1 折点の割線剛性比0.75(非線形時。増分解析の層 Q–δ をトリリニア縮約するとき)0.3〜0.95
時刻歴の減衰比 h0.02(初期剛性比例。立体時刻歴とは独立)0〜0.2
サンプル波の dt0.01 s0.001〜0.1 s
サンプル波の継続時間10 s0.1〜60 s
サンプル波の周期0.5 s0.05〜5 s
サンプル波の振幅1000 mm/s²1〜20000 mm/s²

波形はサンプル波か波形ライブラリから選びます。 立体時刻歴にある「波形 CSV を開いて実行」は、質点系パネルにはありません。 プロジェクトファイル(.scz)には設定・固有値・時刻歴結果を同梱し、波形の実体はライブラリ参照です。

サンプル波は立体時刻歴と同じ式です。

\[ \ddot{x}_g(t) = A \sin(\omega t), e^{-0.3 t},\quad \omega = 2\pi / T \]

\( A \) は振幅、\( T \) は周期、\( dt \) は刻みです。

質量

各層の質量は上端階の地震用重量 \( W \) を重力加速度で割った値です(\( m = W/g \))。 地震用重量が未算定のときは、その階の節点水平質量の合計を使います。

3 次元の回転慣性 \( J \) [t·mm²] は、上端階の剛床マスター節点の RZ 質量 \( J_0 \) を、並進質量が地震用重量と一致するよう回転半径を保って換算した値です。

\[ J = J_0 \cdot \frac{W/g}{m_0} \]

\( m_0 \) はマスターの水平質量です。 補正質点方式では \( m_0 \) が部材密度分を控除した残りなので、控除前の \( W/g \) に揃えます。 剛床がなく \( J \le 0 \) の階では 3 次元質点系を実行できません。

3 次元の質点の平面位置は質量重心です(偏心率精算と同じ重心)。 2 次元の 3D 表示では、剛床マスター(なければ原点)を代表点にします。

層並進剛性

層 Q/δ(既定、線形時)

地震静的 EX の層せん断 \( Q \) と層間変位 \( \delta \) から \( K_x = |Q|/|\delta| \)、EY から同様に \( K_y \) を算定します。 層せん断は当該層の柱せん断の合計です。 柱せん断はすでに当該層より上の水平力を含むので、層間で足し直しません。

2 次元の層間変位は、階の代表節点(剛床マスター、なければ質量最大の節点)の水平変位差です。 3 次元の層間変位は、その層の剛心の平面位置における剛床変位の上下差です。 3×3 の並進ばねは剛心位置のばねなので、\( \delta \) も剛心で取ります。 上下とも同じ平面位置で取るため、セットバックでマスターがずれても層間になります。

剛心座標とねじり剛性 KR [N·mm/rad] は、偏心率の精算と同じ柱剛性 \( k_i = Q_i/\delta_i \)(雑壁の寄与を含む)から算定します。

柱 ki(線形時)

\( K_x \)・\( K_y \)・剛心・KR をすべて柱の \( k_i \) 合計(偏心率精算と同じ)から定めます。

非線形時の並進骨格は、該当方向の増分解析の層 Q–δ を等包絡面積則でトリリニア縮約したものです(第 1 折点の割線比は上表。長期載荷点を原点とする補正は 5.5.3 と同じです)。 固有値と減衰に使う初期剛性も、この骨格の K1 です。 線形時の定義(層 Q/δ または柱 ki)は使いません。

2 次元(せん断串)

加振方向 1 本の質点列です。層間ばねはせん断型三重対角です。

算定式

固有値は

\[ K x = \omega^2 M x \]

(M は対角、K は三重対角)を標準固有値問題へ帰着して解きます。 モード形状は最上階を 1.0 に正規化します。 刺激係数と有効質量は算定しません。 立体固有値の参加係数は M 正規化に紐づく量で、質点系は縮約モデルの周期を見る解析だからです。

時刻歴は Newmark 平均加速度と Newton 反復、減衰は初期剛性比例 \( a_1 = 2h/\omega_1 \) です。 詳細は 5.5.3 です。

3 次元(Ux, Uy, θz)

各階の自由度は質量重心における並進 2 成分と鉛直軸まわり回転です。 剛心相対位置を \( r_x = X_s - X_g \)、\( r_y = Y_s - Y_g \) として、層の 3×3 剛性は次です。

算定式

\[ K = \begin{bmatrix} K_x & 0 & -K_x r_y \ 0 & K_y & K_y r_x \ -K_x r_y & K_y r_x & K_x r_y^2 + K_y r_x^2 + K_R \end{bmatrix} \]

\( K_x \)・\( K_y \) は線形なら静解析の層剛性、非線形なら増分骨格の初期剛性です。 階間は相対変位で直列につながります。 地動は加振方向(X または Y)の 1 方向です。

たとえば偏心のない 1 層では、並進の固有周期は \( T = 2\pi\sqrt{m/K} \)、ねじりの固有周期は \( T = 2\pi\sqrt{J/K_R} \) となり、上の 3×3 を対角化した結果と一致します。

非線形時、X・Y の並進ばねは各方向のトリリニア(最大点指向型)、ねじりは KR の線形ばねのままです。 3 次元のモード形状は各階 \( (U_x, U_y, \theta_z) \) で、頂部水平変位のノルムで正規化します。 刺激係数と有効質量は 2 次元と同じく算定しません。

時刻歴の方向別ピーク

時刻歴の層間・層せん断・塑性率は、X・Y・45°・最大の 4 欄で出します。 地動は X か Y の 1 方向でも、ねじりがあれば剛心位置の層間は平面内を動くためです。

層間は剛心位置の並進 \( (\delta_x,\ \delta_y) \) です。 層ばねの変形がここだからです。 層せん断は同じ位置のばね力 \( (Q_x,\ Q_y) \) です。 頂部変位のグラフは質量重心の加振方向成分です。 質点の自由度がそこだからです。

算定式

各時刻の値から、層ごとに時刻歴の最大絶対値を取ります。

層間・層せん断
X\( |\delta_x| \)、\( |Q_x| \)
Y\( |\delta_y| \)、\( |Q_y| \)
45°\( \max(|(\delta_x+\delta_y)/\sqrt{2}|,\ |(\delta_x-\delta_y)/\sqrt{2}|) \)(せん断も同じ)
最大\( \sqrt{\delta_x^2+\delta_y^2} \)、\( \sqrt{Q_x^2+Q_y^2} \)

45° は 45° と 135° の投影の大きい方です。 斜めの応答はどちらの対角にも出るためです。

塑性率は次です。 \( \delta_{1x} \)・\( \delta_{1y} \) は各方向骨格の第 1 折点変形です。

塑性率
X\( \mu_X = \delta_X / \delta_{1x} \)(\( \delta_{1x} \le 0 \) は 0)
Y\( \mu_Y = \delta_Y / \delta_{1y} \)(\( \delta_{1y} \le 0 \) は 0)
45°\( \mu_{45} = \delta_{45} / (\sqrt{2},\min(\delta_{1x},\delta_{1y})) \)
最大\( \max(\mu_X,\ \mu_Y) \)

45° の分母は、軸平行の降伏矩形 \( |\delta_x|=\delta_{1x} \)、\( |\delta_y|=\delta_{1y} \) に沿う斜め距離です。 最大の塑性率は並進ばねが経験した値の包絡です。 合成変位を \( \min(\delta_{1x},\delta_{1y}) \) で割ると、ばねが感じていない量になるため使いません。

2 次元では加振方向以外の並進は 0 です。 45° は加振方向成分の \( 1/\sqrt{2} \) になります。

3D 表示

3D ビューアの「質点モード」「質点時刻歴」で、各階の質点を球、階間ばねを線で描きます。 球の半径は質量に応じます。 「骨組を重ねる」をオフにすると、質点の基準位置は鉛直 1 列です。 質点モードでは変形前の串を破線と高い透過で重ねます。 表示倍率は立体の変形図と同じく、ピーク並進がモデル対角長の 10% になる自動倍率に手動係数を掛けます。 詳細は 質点系の 3D 表示 です。

実装:モデル生成は squid_n_job::lumped_mass、固有値・時刻歴は squid_n_solver::dynamic::lumped_mass です。 Newton 反復は最大 30 回、相対許容誤差は \( 10^{-6} \) です。

6. 一次設計(許容応力度計算)

本章は、材料の許容応力度、および RC・S・SRC・CFT 部材の断面検定(曲げ・せん断・軸力・付着・接合部・座屈長さ)の根拠をまとめます。 上位根拠は建築基準法施行令 第82条(許容応力度等計算)であり、部材の許容応力度は令第89〜91条・98条に、断面算定は各学会規準(RC規準・鋼構造設計規準)に依拠します。 6.5 小梁・床の断面検定は全体 FEM の解析結果に依らない独立した略算検定で、許容応力度の考え方は共通ですが令82条の主架構検定フローには含まれません。

各項目は「導入文(何を・どの基準で)、算定式、実装」の順で記します。

荷重継続性区分(長期/短期)の決定

許容応力度に用いる長期・短期の区分は、断面検定の対象として選んだ荷重(荷重ケース/荷重組合せ)から自動的に決まります。手動で切り替える設定はありません。

  • 荷重組合せを選んだ場合: 組合せの内容から判定します(令82条の荷重組合せ。\( G+P \) のみは長期、地震・積雪・風を含む組合せは短期)。
  • 荷重ケース単体を選んだ場合: 直前の区分を維持します(単体のケースは組合せとしての継続期間が定まらないため)。

判定結果は設計タブの「対象荷重」の右に「許容応力度: 長期/短期」として表示されます。

実装は squid_n_design_jp にあり、材料強度は material_strength/concreterebarsteelhigh_strength_hoop)が担います。 突合の全体は断面検定_参照実装照合を参照してください。

この章の内容

6.1 材料の許容応力度

6.1.1 コンクリート

コンクリートの許容応力度を建築基準法施行令 第91条に基づいて算定します。

算定式

  • 許容圧縮応力度 \( f_c \) = 長期 \( F_c/3 \)、短期 = 長期×2
  • 許容せん断応力度 \( f_s \) = 長期 \( \min(F_c/30, 0.49 + F_c/100) \)、短期 = 長期×1.5
  • 付着(異形鉄筋)\( f_a \) = 長期上端筋 \( \min(F_c/15, 0.9 + (2/75)F_c) \)、その他 \( \min(F_c/10, 1.35 + F_c/25) \)、短期×1.5
  • 軽量コンクリート 1 種・2 種は許容応力度 0.9 倍

実装material_strength::{concrete_allowable_compression, concrete_allowable_shear, concrete_allowable_bond, concrete_class_factor} が算定します。

6.1.2 鉄筋(径区分に注意)

鉄筋の許容応力度は、建築基準法施行令 第90条(表)に基づいて算定しますが、異形鉄筋の許容引張応力度には径区分がある点に注意してください。

算定式(許容引張、長期/短期)

  • SR235 = 155/235、SD295 = 195/295、SD345/390/490 は \( D \ge 29 \to 195/ \)、\( D < 29 \to 215/ \)(短期は 345/390/490)
  • USD685 = 215/685(径によらず)
  • せん断補強筋: 長期は SR235 のみ 155、他は 195。短期は基準強度(SR235 = 235、 SR295/SD295 = 295、SD345 = 345、SD390 = 390)。SD490 の短期はせん断のみ \( F = 390 \) に頭打ち

実装material_strength::{rebar_allowable_tension, rebar_allowable_shear} が算定します。

鉄筋の材料はどこで指定するか

主筋・せん断補強筋の材料は、断面の属性として指定します(断面タブの「主筋」「せん断補強筋」欄)。 断面は 4 つの材料欄を持ち、それぞれ次の役割を担います。

役割使う断面
材料主材料。コンクリート(\( F_c \))または鋼材(F 値)すべての断面
主筋主筋の材質。降伏点 \( \sigma_y \) と許容応力度に用いるRC 矩形・RC 円形・SRC 矩形・RC 壁
せん断補強筋せん断補強筋の材質。\( \sigma_{wy} \) と \( w f_t \) に用いる同上
内蔵鉄骨SRC の内蔵鉄骨の鋼種。F 値に用いるSRC 矩形

呼び名サイズ(D10D41)と本数・段数・ピッチは、材料とは別に断面の配筋欄で指定します。

材料の名称がそのままグレード名になり、そこから許容応力度の表を引きます。 降伏点 \( \sigma_y \)・\( \sigma_{wy} \) は材料に登録した \( f_y \) をそのまま用い、 名称からの推定は行いません。

  • 許容応力度の表は名称で引きます(SD345 → 令90条表の SD345 の行)
  • 主筋の \( \sigma_y \)・せん断補強筋の \( \sigma_{wy} \) は、割り当てた材料の \( f_y \) です
  • せん断補強筋の材料が未割当のとき、終局耐力の \( \sigma_{wy} \) は SD295 相当 (295 N/mm²、規格上の最小グレード)を既定とします

配筋を持つ断面で主筋・せん断補強筋の材料が未割当のモデルは、解析前チェックがエラーで停止します (5.7 増分解析「解析前の入力チェック」)。 許容応力度計算の断面検定も、材料が未割当の断面は「検定不能」として理由を返します。 既定値 345 N/mm² で補うと、SD295 の部材で耐力を過大評価するためです。

せん断補強筋に普通強度(SD*SR*)の材料を割り当てた場合は令90条の表、高強度品を割り当てた場合は製品別の認定値(6.1.3)を用います。 高強度品かどうかは材料の名称で判定します(KH785UB785KSS785SHD685SPR785MK785SBPD1275)。

実装squid_n_core::material_grade::{rebar_yield_strength, shear_rebar_yield_strength} が \( f_y \) を解決し、検定側の材質選択は material_strength::{main_rebar_grade, shear_rebar_grade, is_high_strength_shear_grade} によります。

6.1.3 高強度せん断補強筋(pw 上限)

高強度せん断補強筋の pw 上限を、各製品の大臣認定・製品技術資料の製品別 pw 上限(Category B)に基づいて定めます。

算定式(pw 上限、短期・安全確保):KH785 = \( \min(1.2\%, 1.0\% \cdot F_c/27) \)、KH685/SPR685 = \( \min(1.2\%, 1.2\% \cdot F_c/27) \)、SHD685/MK785 = 1.2% 固定、ウルボン系 = 1.0〜1.2% ほか(製品別表)。 w_ft は長期 195、短期は SBPD1275 = 585・他 590 とします。

実装material_strength::{high_strength_pw_cap, high_strength_w_ft} が算定します。

6.1.4 鋼材(F 値・許容応力度・座屈)

鋼材の F 値・許容応力度・座屈を、建築基準法施行令 第90条・98条/告示、および鋼構造設計規準 1973 に基づいて算定します。

算定式

  • F 値(板厚区分): SS400/SN400 = 235(\( t \le 40 \))/215、SN490/SM490 = 325/295 ほか (グレード別の F 値一覧は 2.4 標準材料(プリセット)一覧)。 F 値は断面に割り当てた材料の名称から前方一致で解決します(SN490BSN490 等)。 SRC の内蔵鉄骨は、断面の「内蔵鉄骨」欄の材料の名称を用います。 名称から解決できない材料(直接入力材料)は、材料に登録した Fy を基準強度として用います。 Fy も未設定の場合は F = 235 とします。
  • 許容引張 \( f_t \) = 長期 \( F/1.5 \)、短期 \( F \)、許容せん断 \( f_s \) = 長期 \( F/(1.5\sqrt{3}) \)、短期 \( F/\sqrt{3} \)
  • 圧縮(座屈考慮):

\[ \Lambda = 1500/\sqrt{F/1.5} \]

\[ \nu = 3/2 + (2/3)(\lambda/\Lambda)^2 \]

\[ \lambda \le \Lambda: f_c = F(1 - 0.4(\lambda/\Lambda)^2)/\nu \]

\[ \lambda > \Lambda: f_c = (18/65)F/(\lambda/\Lambda)^2 \]

実装material_strength::{steel_f_value, steel_ft, steel_fs, steel_fc, big_lambda} が算定します。

6.2 RC 断面検定

6.2.1 梁(RC規準13条)

RC 梁の曲げ・せん断・付着を、日本建築学会 RC規準 13条(2010年版)に基づいて検定します。

算定式

許容曲げ(中立軸 xn を弾性・ヤング係数比 n で算定):

\[ M_A = \min(M_{At}, M_{Ac}) \]

\[ M_{At} = a_t \cdot f_t \cdot j \]

\[ M_{Ac} = f_c \cdot I_{cr}/x_n \]

部材中央(正規化位置 0.5)かつ梁にスラブが取り付く場合では、正曲げの許容を次のように扱います。 「スラブが取り付く」は版がある床板(Slab)に対して判定します(版 = 断面が割り当たり板厚が正)。 囲まれた床板は、その床板が属する床領域の外周(大梁の区画。小梁による細分によらず常に区画 全体を表す。床領域内のどれか 1 枚でも版があればよい)に両端節点が含まれること、どの床領域にも 属さない床板は自身の境界節点に両端が含まれることです。取り付く床板は取付き線の両端が梁の 両端と一致すること(順不同)です。点取り付きと版なしは対象外です。 正曲げは部材座標系の \( m_z > 0 \) とし、床スラブ側が圧縮となる向きです。 このときは T 形断面の引張支配略算として \( M_A = M_{At} = a_t \cdot f_t \cdot j \) のみを用います。 負曲げではスラブが引張側になるため、長方形複筋の \( \min(M_{At}, M_{Ac}) \) を用います。

床スラブ自体の一方向検定(版のある床板の \( M \)・許容値)は、この梁の T 形断面略算とは 別の検定です。6.5.2 床(スラブ)の一方向検定を参照してください。

せん断(1.0〜2.0):

\[ \alpha = 4/(M/(Q \cdot d)+1) \]

退化時の規約: \( Q \approx 0 \) かつ \( M > 0 \) は \( M/(Q \cdot d) \to \infty \) すなわち下限 \( \alpha = 1.0 \)(割増なし)を採用します。M も Q も 0(無応力)または \( d \le 0 \) の場合も中立な \( \alpha = 1.0 \) とします。この規約は RC・SRC のせん断検定で共通です。

\[ Q_{AL} = b \cdot j \cdot (\alpha \cdot f_s + 0.5 \cdot {}_w f_t \cdot (p_w - 0.002)) \]

地震時設計用せん断:

\[ Q_D = \min(Q_{D1}, Q_{D2}) \]

\[ Q_{D1} = Q_0 + n_{\mathrm{mech}} \cdot \sum {}_B M_y/l' \]

\[ Q_{D2} = Q_L + n \cdot Q_E \]

ここで記号の意味を分けます。

  • \( Q_L \):長期せん断力(優先は Dead+地震用 Live の解析内力加算。無ければ長期組合せ)
  • \( Q_E \):地震ケース寄与のせん断力(組合せ内力から長期を差し引いた成分)
  • \( Q_0 \):両端支持とした単純梁の長期せん断力(部材荷重から算定。重力ケース集合は \( Q_L \) と同じ)

\( Q_0 \) は重力ケース(Dead と地震用 Live、なければ Live)の部材荷重から単純梁反力を算定し、ケース間は加算します。 未算定のときは \( Q_L \) で代替します。 \( n_{\mathrm{mech}} \) はメカニズム側の割増で、既定は 1.0 です。 本ソフトでは QD1 をメカニズム側、QD2 を割増 QE 側と呼びます。

実装rc::beamrc/beam.rs::beam_check)が検定し、許容せん断と地震時 QD の共通処理を rc::mod が担います。

6.2.2 柱(RC規準14条)

RC 柱の軸力+二軸曲げ+せん断を、RC規準 14条に基づいて検定します。

算定式

許容軸力:

\[ N_A = \min(f_c \cdot A_e, f_t \cdot A_e/n) \]

\[ A_e = A + (n-1) \cdot A_s \]

  • N-M 相関曲線を弾性・線形ひずみ仮定で構築する(圧縮縁・圧縮鉄筋・引張鉄筋の 3 条件の最小)
  • 二軸曲げは、矩形が \( \text{ratio} = \text{ratio}_z + \text{ratio}_y \)(線形和)、円形が \( (m_z/m_a)^2 + (m_y/m_a)^2 \)
  • せん断 \( \alpha = 4/(M/(Q \cdot d)+1) \)(1.0〜1.5)。α のせん断スパン比は加力方向ごとに 「モーメントが最大となる検定位置」の (|M|, |Q|) を採用します(強軸: |Mz|max と 対応 |Qy|、弱軸: |My|max と対応 |Qz|)。地震時設計用せん断は \( Q_{D1} = n_{\mathrm{mech}} \cdot \sum M_y / h' \)、 \( Q_{D2} = Q_L + n \cdot Q_E \) とします。

\( \sum M_y \) は柱頭・柱脚の崩壊メカニズムから定めます。

  • 各端で、加力方向に取り付く梁の降伏モーメント和と柱の降伏モーメントを比較する
  • 梁が弱い側を梁ヒンジ(寄与 \( \sum {}_B M_y/2 \))、柱が弱い側・梁無し・同値を柱ヒンジ(寄与 \( {}_c M_y \))とする
  • 上下端とも梁ヒンジになる場合は下端を柱ヒンジへ落とす(両端梁降伏は考えない)
  • 柱 My の軸力は \( N = N_L + n \cdot |N_E| \) とする(\( n \) の既定は 1.0。計算ルート連動は未実装)
  • 部分スリット壁による強制柱ヒンジは、モデル属性が無いため対象外とする
  • メカニズムが未算定のとき、または柱 My が取れない方向は、検定位置軸力の \( \sum M_y = 2 \cdot M_u \) で代替する
  • 梁 My は RC 矩形梁の略算降伏モーメントのみ算定する。SRC・円形など My が取れない梁が加力方向にあれば、その方向は端の設計軸力による \( M_{u,i}+M_{u,j} \) とする
  • 梁の加力方向割当は強軸・弱軸で排他する(45° 付近の二重算入を避ける。同点は強軸側)

実装rc::columnrc/column/mod.rs::column_check)が検定し、地震時 QD は軸力を考慮する rc_column_mu_simple が担います。メカニズムは rc::column_mechanism が算定します。

6.2.3 柱梁接合部(RC規準15条)

柱梁接合部のせん断を、RC規準 15条に基づいて検定します。

算定式

許容せん断(形状係数 \( \kappa_A \) = 十字10/T字7/ト字5/L字3):

\[ Q_{Aj} = \kappa_A \cdot (f_s - 0.5) \cdot b_j \cdot D \]

有効幅:

\[ b_j = b_b + 2 \cdot b_{ai} \]

\[ b_{ai} = \min(b_i/2, D/4) \]

設計用:

\[ Q_{dj} = \min(Q_{dj1}, Q_{dj2}) \]

\[ \xi = j/({}_c H(1 - D/L_b)) \]

\[ Q_{dj1} = \sum M_y/j \cdot (1-\xi) \]

ここで ΣMy は大梁の降伏モーメントの和(略算降伏モーメント \( 0.9 \cdot a_t \cdot \sigma_y \cdot d \)。弾性解析の梁端モーメントではない)です。

実装rc::jointrc/joint.rs::rc_joint_shear_check)が検定します。

6.2.4 付着・定着(RC規準1999/1991)

RC 梁の付着・定着を、RC規準1999(既定)/1991 に基づいて検定します。設計タブで方式を切り替えられます(既定は 1999)。

算定式(1999方式)

必要定着長:

\[ l_{db} = \sigma_t \cdot a_s/(K \cdot f_b \cdot \varphi) \]

\[ K = 0.3 \cdot (C+W)/d_b + 0.4 \]

(上限 2.5、\( C = \min(\text{あき}, 3\text{cover}, 5d_b) \))

\[ f_b = F_c/60 + 0.6 \]

(上端筋 0.8 倍、短期×1.5)。 多段配筋(2 段以上)の場合は fb に 0.6 を乗じ(RC規準1999「1段筋以外は 0.6 を乗じる」)、必要付着長さが最大となる 2 段目以降の鉄筋列で代表して検定します。

実装rc::bondrc/bond.rs::rc_beam_bond_check)が検定します。

6.2.5 構造規定・長期たわみ

RC 梁・柱の構造規定と梁の長期たわみを、平12 告示第1459号および慣行の入力チェックに基づいて扱います。

部材全体に共通する項目(構造規定・たわみ)は、危険断面のうち部材中央(正規化位置 0.5)の検定結果に一度だけ付記します。 中央は剛域の有無にかかわらず危険断面に含まれるため、フェイス位置のみを検定する架構でも見落とせません。

梁の構造規定

入力エラー(検定種別「構造規定」、検定比 > 1 で NG):

  • かぶり厚さは 30 mm 以上とする
  • あばら筋間隔は \( \min(3D/4,,300,\mathrm{mm}) \) 以下とする

警告(共通 detail に付記。検定比には載せない):

  • 主筋径は D13 以上とする
  • あばら筋間隔は \( \min(D/2,,250,\mathrm{mm}) \) 以下とする
  • せん断補強筋比は \( p_w \ge 0.2% \) とする
  • 長期の引張鉄筋断面積は \( a_t \ge \min(0.004bd,,4/3\cdot\text{必要量}) \) とする

柱の構造規定

入力エラー:

  • かぶり厚さは 30 mm 以上とする
  • 主筋全本数は長方形で 4 本以上、円形で 8 本以上とする
  • 帯筋間隔は 100 mm 以下とする

警告:

  • 最小径 / 支点間距離は、普通コンクリートで 1/15 以上、軽量で 1/10 以上とする。支点間距離は内法長さ(DesignCtx.clear_length)を優先し、無ければ節点間長さとする
  • 主筋比は \( p_g \ge 0.8% \) とする
  • せん断補強筋比は \( p_w \ge 0.2% \) とする(計算ルート未連動のためルート1/3 相当の下限のみ)。長方形柱は両方向の幅で \( p_w \) を算定し、小さい方で下限を見る
  • 短期軸応力度は \( N/A_g \ge F_c/3 \) とする。規定を満たさないとき(\( \sigma < F_c/3 \))に警告する

梁の長期たわみ

建設省告示「平12 第1459号」:

\[ \alpha \cdot \delta / L \le 1/250 \]

ここでスパン \( L \) は内法長さ(フェイス間。剛域控除後)を用います。 内法が取れないときは節点間長さで代替します。

変形増大係数 \( \alpha \) の既定は 8 です。 略算たわみは鋼梁と同じモーメント復元形で、

\[ M_0 = |M_c| + (|M_i|+|M_j|)/2 \]

\[ \delta = 5 M_0 L^2/(48 E I) - (|M_i|+|M_j|) L^2/(16 E I) \]

\( I = b D^3/12 \)(長方形断面)とします。 端部・中央の長期モーメントが揃うときのみ検定し、結果は検定種別「たわみ」に載せます。 片持ち梁の先端集中換算は対象外です。

実装rc::provisionsrc/provisions.rs)。

6.2.6 耐震壁(RC規準18条)

耐震壁のせん断を、RC規準 18条に基づいて検定します。

検定の対象は耐震壁として成立する壁だけです。上下辺が大梁で囲まれていない壁と、耐震スリットがある壁と、RC 壁のうち壁厚が 120 mm 未満・開口周比 \( r_0 > 0.4 \) のいずれかに該当する壁は、耐震壁ではないため本検定の対象外とします。成立判定は解析側と同じ関数(wall::misc_wall::wall_is_seismic4.5 壁エレメントモデル)を用いるため、解析で壁エレメントとして扱われる壁と検定の対象は必ず一致します。

算定式

コンクリート負担:

\[ Q_1 = r \cdot t \cdot l \cdot f_s \]

壁筋負担:

\[ Q_w = p_s \cdot t \cdot l_e \cdot {}_w f_t \]

側柱負担 Qc を加えた

\[ Q_2 = r \cdot (Q_w + \sum Q_c) \]

短期許容:

\[ Q_a = \max(Q_1, Q_2) \]

開口低減:

\[ r = \min(\gamma_1, \gamma_2, \gamma_3) = 1 - \max\left(\frac{l_0}{l},\ r_0,\ \frac{h_0}{h}\right),\quad r_0 = \sqrt{\frac{h_0 l_0}{h,l}} \]

\( \gamma_1 = 1 - l_0/l \)、\( \gamma_2 = 1 - r_0 \)、\( \gamma_3 = 1 - h_0/h \)。終局せん断(8.4.2)の開口低減と同一の式ですが、剛性計算用の \( r_1 = 1 - 1.25 r_0 \)(4.5 壁エレメントモデル)とは別の式です。

実装rc::wallrc/wall.rs::rc_wall_shear_check)が検定します。

6.3 鋼構造 断面検定

鋼構造の断面検定を、鋼構造設計規準・告示平13国交告第1024号に基づいて行いますが、幅厚比による断面性能の低減は考慮しません(幅厚比は部材ランク判定 (7.3 部材ランク)で別途評価します)。

算定式(梁)

軸力・曲げによる応力度:

\[ \sigma_{ax} = |N|/A,\quad \sigma_{by} = |M_z|/Z,\quad \sigma_{bz} = |M_y|/Z_{\text{弱軸}} \]

円形鋼管は強軸・弱軸の曲げモーメントを合成した \( \sigma_b \) で代表させます:

\[ \sigma_b = \sqrt{M_z^2 + M_y^2}/Z \]

軸力+二軸曲げの組合せ検定。圧縮時(\( f_c \) は座屈を考慮した許容圧縮応力度):

\[ \sigma_c/f_c + \sigma_{by}/f_b + \sigma_{bz}/f_t \le 1.0 \]

(円形鋼管は \( \sigma_c/f_c + \sigma_b/f_b \))。引張時:

\[ (\sigma_t + \sigma_{by} + \sigma_{bz})/f_t \le 1.0 \]

(円形鋼管は \( (\sigma_t + \sigma_b)/f_t \))。組合せ検定とは別に、単独曲げの検定 \( \sigma_{by}/f_b \)(円形鋼管は \( \sigma_b/f_b \) で代替)・\( \sigma_{bz}/f_t \) も行い、いずれも検定比として扱います。

許容圧縮応力度 \( f_c \) は、強軸・弱軸それぞれの座屈長さによる細長比のうち大きい方で算定します:

\[ \lambda = \max(l_{ky}/i_y,\ l_{kz}/i_z),\quad i_y = \sqrt{I_y/A},\quad i_z = \sqrt{I_z/A} \]

(\( l_{ky} \): 強軸まわり座屈長さ、\( l_{kz} \): 弱軸まわり座屈長さ。両者とも部材長のとき \( \lambda = l_k/i_{\min} \)、\( i_{\min} = \sqrt{\min(I_y, I_z)/A} \) に一致します。)

\( l_{ky}, l_{kz} \) は次の優先順位で解決します: 直接入力(部材単位、SteelDesignAttr.lk_y_direct/lk_z_direct)> 柱の自動算定(軸別座屈長さ係数 K×部材長。6.3.1 参照)> 部材長。直接入力は柱に限らず梁・ブレースでも有効であり、柱の自動算定は柱のみに適用されます。

せん断の検定

せん断応力度は \( \tau_y = |Q_y|/A_y \le f_s \)、\( \tau_z = |Q_z|/A_z \le f_s \) とし、せん断有効断面積 \( A_y, A_z \) は梁・柱共通の単一定義として断面形状ごとに次式によります:

  • H 形: \( A_y = t_w(H - 2t_f) \)、\( A_z = 2Bt_f/1.5 \)
  • 角形鋼管(角部外半径 \( r \) は断面定義時の入力値。\( r=0 \)(未入力)の場合は角部を直角とみなし \( A_y = 2t(H-2t) \)): \( r>0 \) では \( A_y = 2{t(H-2r) + \pi t(2r-t)/4} \)(\( A_z \) は \( H \) を \( B \) に置換した同式)
  • 円形鋼管: \( A_y = A_z = \pi t (D - t)/2 \)
  • その他の形状: 断面データのせん断有効断面積 \( A_{sy}, A_{sz} \) があればその値、なければ全断面積 \( A \) を用いる

この \( A_y, A_z \) は検定用の有効断面積です。 要素剛性(ティモシェンコ梁の \( GA_s \))に用いる \( a_{s,y}, a_{s,z} \)(3.3 せん断有効断面積 As)とは値が異なります。 H 形では、検定側がウェブの内法せい \( H - 2 t_f \) を用い、フランジ側を 1.5 で除する点が剛性側と異なります。

von Mises 合成

H 形は強軸側・弱軸側の 2 式のうち大きい方を検定比とします:

\[ \max\left(\dfrac{\sqrt{(\sigma_{ax}+\sigma_b')^2+3\tau_y^2}}{f_t},\ \dfrac{\sqrt{(\sigma_{ax}+\sigma_{by}+\sigma_{bz})^2+3\tau_z^2}}{f_t}\right) \]

ここで \( \sigma_b' = \sigma_{by}(H-2t_f)/H \) はウェブ端の曲げ応力度です。角形鋼管は次式によります(H 形・角形・円形以外の一般形状にも、安全側の一般化として同式を適用します):

\[ \sqrt{(\sigma_{ax}+\sigma_{by}+\sigma_{bz})^2+3\max(\tau_y,\tau_z)^2}/f_t \]

円形鋼管は中立軸位置で検定します(曲げ応力度の寄与はありません):

\[ \sqrt{\sigma_{ax}^2+3(\tau_y^2+\tau_z^2)}/f_t \]

梁の検定比は、上記の組合せ検定・単独曲げ検定・せん断検定・von Mises 合成の各比のうち最大値とします。

許容曲げ応力度 fb(横座屈、H 形の強軸のみ考慮。他形状は \( f_b = f_t \))

旧基準(鋼構造設計規準 1973 年版)と新基準(AIJ 鋼構造許容応力度設計規準 2019 年版)の 2 通りの算定式を選択できます(既定は旧基準)。

圧縮フランジの支点間距離(横座屈長さ)\( l_b \) は、次の優先順位で解決します: 直接入力(部材単位、始端・中央・終端の区間別)> 等間隔横補剛本数 \( n \) による自動算定 \( l_b = L/(n+1) \) > 部材長 \( L \)。区間別の直接入力は、評価位置に応じて始端側(部材軸方向の無次元位置 0.25 未満)・中央(0.25〜0.75)・終端側の値を用います。

旧基準:

\[ f_b = \max(f_{b1}, f_{b2}) \le f_t \]

\[ f_{b1} = F(2/3 - (4/15)(l_b/i)^2/(C \cdot \Lambda^2)) \]

\[ f_{b2} = 89000/(l_b \cdot h/A_f) \]

断面二次半径 \( i \) は、圧縮フランジと、せいが部材せいの 1/6 のウェブからなる T 形断面で算定します(ウェブ部の高さは \( \max(h/6 - t_f,\ 0) \))。上下フランジの形状が異なる組立 H 形(BH)は、どちらが圧縮側か特定できないため、上下フランジそれぞれで求めた T 形断面のうち \( i \) が小さい側を安全側として採用します。

新基準(AIJ-ASD19):

\[ M_y = F \cdot Z,\quad M_e = C\sqrt{\dfrac{\pi^4 E I_z E I_w}{l_b^4} + \dfrac{\pi^2 E I_z G J}{l_b^2}} \]

\[ \lambda_b = \sqrt{M_y/M_e},\quad {}_e\lambda_b = 1/\sqrt{0.6},\quad \nu = 3/2 + (2/3)(\lambda_b/{}_e\lambda_b)^2 \]

\[ f_b = \begin{cases} F/\nu & (\lambda_b \le {}_p\lambda_b) \\ \left(1 - 0.4\dfrac{\lambda_b - {}_p\lambda_b}{{}_e\lambda_b - {}_p\lambda_b}\right)F/\nu & ({}_p\lambda_b < \lambda_b \le {}_e\lambda_b) \\ F/(2.17\lambda_b^2) & ({}_e\lambda_b < \lambda_b) \end{cases} \]

長期の上限は \( F/1.5 \)、短期は長期の 1.5 倍(上限 \( F \))とします。塑性限界細長比 \( {}_p\lambda_b \) は、横補剛区間内で曲げモーメントが最大となる場合は 0.3、区間内で単調に変化する場合は \( 0.6+0.3(M_2/M_1) \)(\( M_2/M_1 \) は複曲率で正・単曲率で負)とします。端部モーメントの情報がない場合は安全側の 0.3 とします。

曲げねじり定数 \( I_w \) は、H 形で \( I_w = I_z (h - t_f)^2/4 \)、上下フランジの形状が異なる組立 H 形(BH)で \( I_w = h_f^2 \cdot I_u I_l/(I_u + I_l) \)(\( h_f \): 上下フランジ重心間距離、\( I_u, I_l \): 上下フランジ単独の弱軸まわり断面二次モーメント)とします。せん断弾性係数 \( G \) は材料に入力があればその値、なければ \( E/(2(1+\nu)) \) によります。サンブナンのねじり定数 \( J \) は断面性能のねじり定数を用います。

横座屈修正係数(旧基準・新基準に共通):

\[ C = 1.75 + 1.05(M_2/M_1) + 0.3(M_2/M_1)^2 \le 2.3 \]

\( M_1 \) は座屈区間両端の強軸曲げモーメントの絶対値が大きい方、\( M_2 \) は小さい方で、\( M_2/M_1 \) は複曲率(反曲点あり)で正・単曲率で負とします。自動算定では次の場合に安全側の値を用います:

  • 座屈区間中央の曲げモーメントが両端より大きい(区間内で最大となる)場合は \( C = 1.0 \)。
  • 横補剛により座屈区間 lb が部材の部分区間となる場合は、区間端モーメント比が不明なため \( C = 1.0 \)。
  • 端部モーメントの情報がない場合は \( C = 1.0 \)(もっとも不利な等曲げ分布相当)。

横座屈修正係数 C は、SteelDesignAttr.c_direct により部材単位で直接入力できます(正値。0 以下は無効入力として無視します)。入力がある場合は自動算定(上記の \( M_2/M_1 \) 式・上限 2.3・安全側の \( C=1.0 \) 規定)を行わず入力値をそのまま採用します。

断面欠損を考慮した断面係数 Z′(H 形の強軸曲げ)

継手部の欠損率 \( \beta_f \)(フランジ [%])・\( \beta_w \)(ウェブ [%])、端部スカラップによるウェブ欠損率 \( \alpha_w \) [%] が部材に入力されている場合、H 形の強軸曲げ応力度は欠損を考慮した断面係数 \( Z' \) で算定します。全断面の強軸断面二次モーメントをフランジ寄与分 \( I_f = (B H^3 - B(H-2t_f)^3)/12 \) とウェブ寄与分 \( I_w = t_w (H-2t_f)^3/12 \) に分解し:

\[ I_f' = I_f (1 - \beta_f/100),\quad I_w' = I_w (1 - \beta_w/100) \]

端部(評価位置が部材軸方向の無次元位置 0.25 以下または 0.75 以上)は、スカラップを考慮したウェブ寄与分に置き換えたうえで \( \beta_w \) も乗じます:

\[ I_w'' = \frac{t_w {(H-2t_f)(1-\alpha_w/100)}^3}{12} (1 - \beta_w/100) \]

\[ Z' = (I_f' + I_w')/(H/2) \]

(端部は \( I_w' \) を \( I_w'' \) に置き換えます。)

参考情報(検定比に含めない)

梁の検定では、次の 2 項目を検定比に含めない参考情報として併記します。

  • 大梁の必要横補剛数(保有耐力横補剛・均等間隔配置。昭55建告1791号第2・技術基準解説書): 弱軸細長比 \( \lambda_y = L/i_{\text{弱軸}} \)(\( i_{\text{弱軸}} = \sqrt{I_z/A} \))に対し、400N/mm² 級(F=235, 215)は \( \lambda_y \le 170 + 20n \)、それ以外(490N/mm² 級等)は \( \lambda_y \le 130 + 20n \) を満たす最小の補剛本数 \( n \) を求める。
  • たわみ(長期のみ): モーメント図を 2 次曲線分布(等分布荷重相当)と仮定し、単純梁中央モーメントを \( M_0 = |M_c| + (|M_L| + |M_R|)/2 \)(\( M_c \): 部材中央、\( M_L, M_R \): 両端の曲げモーメント)として

\[ S = \frac{5 M_0 l^2}{48EI} - \frac{(M_L + M_R) l^2}{16EI} \]

を算定しますが、変形制限(例: \( l/300 \))による合否判定は行わず、算定値の出力のみとします。

算定式(柱・ブレース)

柱(座屈考慮 fc):

\[ \sigma_c/f_c + \sigma_{bX}/f_{bX} + \sigma_{bY}/f_{bY} \le 1.0 \]

  • ブレース: 圧縮 \( \sigma_c/f_c \)、引張 \( \sigma_t/f_t \)

柱の \( f_{bX} \)(H 形強軸)も、梁と同じ許容曲げ応力度 fb の算定式(旧基準・新基準の選択、横座屈修正係数 C の直接入力を含む)によりますが、lb には柱の階高(ctx.length)を用います。

柱のせん断検定は、梁と同じせん断有効断面積 \( A_y \)(上記「せん断の検定」の定義)を用い、H 形・角形鋼管は強軸せん断 \( \tau = |Q_y|/A_y \)、円形鋼管(\( A_y = A_z \))とその他の形状は合成せん断 \( \tau = \sqrt{Q_y^2 + Q_z^2}/A_y \) として、von Mises 型 \( \max(\sqrt{\sigma^2+3\tau^2}/f_t,\ \tau/f_s) \) で検定します。

実装steel::{beam, column, brace, section} が検定するほか、断面欠損を考慮した Z'、および横座屈長さ lb の解決も実装しています。

6.3.1 柱の座屈長さ係数 K

柱の座屈長さ係数 K を、鋼構造塑性設計指針 式(6.65)〜(6.67)に基づいて算定します。 水平移動非拘束(sway)を前提とし、強軸まわり K_y・弱軸まわり K_z を個別に評価します。

算定式

\[ \frac{G_A \cdot G_B \cdot x^2 - 36}{6(G_A + G_B)} = \frac{x}{\tan(x)} \]

\[ x = \pi/K \]

(\( K \ge 1 \))

\[ G_a = \sum (E \cdot I_{\text{eff}}/L)_{\text{柱}}/\sum (E \cdot i_y \cdot \cos^2\theta/L)_{\text{梁}} \]

(\( a \in {y(\text{強軸}), z(\text{弱軸})} \))。ピン端・取付部材なしは \( G_a = 10 \) とします。

軸別評価

柱・梁それぞれの局所軸から、評価方向(強軸 y または弱軸 z のたわみ方向)の水平投影単位ベクトルを求め、次の重みで G を軸ごとに集計します:

  • 梁: 梁材軸の水平投影と評価方向のなす角の余弦の 2 乗 \( \cos^2\theta \) を \( E \cdot i_y/L' \) に乗じます(面内(鉛直面)曲げは強軸 \( i_y \) とする仮定を維持し、角度のみ重み付けします)。評価方向に平行な梁が節点回転をもっとも拘束し、直交する梁は寄与しません。当該節点側の梁端が \( \text{Pinned} \) の場合、その梁は節点回転を拘束しないため G の梁側の集計に算入しません(SemiRigid は剛接合とみなします)。
  • 柱(評価対象の柱自身を含む): その柱自身の強軸たわみ方向と評価方向のなす角 \( \cos^2\beta \) により、断面二次モーメントを \( I_{\text{eff}} = I_y \cdot \cos^2\beta + I_z \cdot (1-\cos^2\beta) \) へ投影します(評価対象の柱自身は \( \cos^2\beta=1 \) となり \( I_y \)(強軸側)/\( I_z \)(弱軸側)にそのまま一致します)。
  • 斜材(部材軸の鉛直成分が中間的な部材)は無視する。
  • \( L' \) は柱・梁とも剛域控除後の内法長(\( L' = \) 節点間長さ \( - \) 始端剛域長 \( - \) 終端剛域長。\( L' \le 0 \) となる場合は節点間の幾何学的長さにフォールバックする)。

評価方向の水平投影が縮退する(部材がほぼ鉛直で水平方向が定まらない)軸は、方向を区別しない評価(\( I_y \) を全部材で用いる簡略版と同じ G)にフォールバックします。方向を区別しない簡略版は、梁の結合状態(ピン接合を含む)を考慮せず、剛域による材長補正も行いません。

いずれの版も、支点(節点の境界条件)の状態・梁の遠端の結合状態は考慮しません。

実装steel::bucklingbuckling.rs::sway_buckling_ksteel_column_k_axes_with_index)が算定します。方向を区別しない簡略版は steel_column_ksteel_column_k_with_index です。

梁・ブレースの座屈長さ

梁・ブレースは座屈長さ係数 K の自動算定を行わないため、直接入力がない場合は部材長(節点間の距離。K=1 相当)を座屈長さとします。K 係数法(水平移動非拘束の骨組の剛度比)は柱のみに適用されます。

6.3.2 S 造パネルゾーン

S 造パネルゾーンを、鋼構造接合部設計指針に基づいて検定します。

算定式

\[ {}_p M_y = (V_e/\kappa) \cdot \sqrt{1 - n^2} \cdot F_y/\sqrt{3} \]

検定する接合部

取り付く柱・梁がすべて S 造(CFT を含む)である接合部を検定します。構造種別は材料の区分で決まります(2.5 構造種別の判定)。RC/SRC の柱や梁が 1 本でも取り付く接合部は、S 造パネルゾーンの式が前提とする挙動から外れるため検定しません。 これらの接合部は RC 柱梁接合部・SRC パネルゾーンの断面算定が担います。斜材(ブレース等)は この判定の対象外です。

この判定は仕口パネルのモデル化と共通で、諸元の解決規則も同じです(4.6 「対象とする接合部」)。異なるのは CFT 柱の扱いだけで、CFT の接合部はモデル化されませんが、 鋼管部を S 造と同じ式で評価できるため検定は行います。

諸元

形状係数 κ(H形/角形/円形)と実効体積 Ve4.6 仕口パネル(柱梁接合部パネル)と同じ諸元を用います。 柱が複数取り付く節点では実効体積 Ve が最小になる柱を採り、軸力比 n と基準強度 F も その柱から算定します。

設計用パネルモーメント

\( {}_p M \) は、仕口パネルをモデル化した節点では解析が 出力するパネルせん断モーメント \( M_{SX} \)・\( M_{SY} \) のうち絶対値の大きい方を、 モデル化していない節点では \( {}_p M = {}_b M_L + {}_b M_R - ({}_c Q_U + {}_c Q_L) \cdot d_b/2 \) を用います。 本検定はパネルのモデル化の有無に依らず常に行います

実装steel::panel_zonepanel_zone.rs::s_panel_zone_check)が検定します。

6.3.3 冷間成形角形鋼管柱の柱梁耐力比

冷間成形角形鋼管柱の柱梁耐力比を、2008年版「冷間成形角形鋼管の柱に用いる角形鋼管設計・施工マニュアル」に基づいて算定します。

算定式:耐力低減 νu(\( n \le 0.5: 1 - 4n^2/3 \)、\( n > 0.5: 4(1-n)/3 \))、要求値 \( \min(1.5 \cdot \sum M_{pb}, 1.3 \cdot M_{pp}) \)。

実装steel::cold_formedcold_formed.rs)が算定し、存在軸力は \( N = N_L + 1.5 \cdot N_E \) とします。

6.4 SRC / CFT 断面検定

SRC・CFT の断面検定を、SRC規準1987(累加強度式・併用せん断式)および構造規定(技術基準解説書)に基づいて行います。

算定式

SRC 梁 曲げ(鉄骨と RC の累加):

\[ M_A = {}_s M_o + {}_r M_A \]

鉄骨部:

\[ {}_s M_o = {}_s Z \cdot {}_s f_t \]

RC 部:

\[ {}_r M_A = a_t \cdot f_t \cdot j \]

SRC 梁 せん断は、鉄骨部と RC 部を弾性分担(または地震時短期の構造規定方式 sQD/rQD)と比較します。

鉄骨部:

\[ {}_s Q_A = t_w \cdot d_w \cdot {}_s f_s \]

RC 部(pw は 0.6% 上限):

\[ {}_r Q_A = \min(b \cdot {}_r j \cdot ({}_r \alpha \cdot f_s + 0.5 \cdot p_w \cdot {}_w f_t), b \cdot {}_r j \cdot (2(b'/b) \cdot f_s + p_w \cdot {}_w f_t)) \]

  • SRC 柱 N-M 相関を累加強度式で構築する(コンクリート許容応力度は鉄骨フランジ食い込み低減後 \( f_c' = f_c(1 - 15 \cdot {}_s p_c) \))、二軸曲げは線形和。RC 部 N-M 曲線は引張側アンカー \( ({}_r N_t, 0) \) を持ち、純引張耐力近傍で \( {}_r M \to 0 \) に収束する。 SRC 柱 せん断の長期は、併用式を全せん断力と比較します。

\[ Q_A = (1+\beta) \cdot b \cdot {}_r j \cdot a' \cdot f_s \]

ここで \( a' = {}_r \alpha \)(\( b'/b \ge {}_r \alpha/3 \))または \( 3b'/b \)、\( 1 \le {}_r \alpha \le 2 \)、β は鉄骨ウェブの形式と寸法による係数とします。

せん断スパン比による割増係数 \( {}_r \alpha = 4/(M/(Q \cdot d)+1) \) の算定(\( Q \approx 0 \) の退化時は下限 1.0 を採用する規約を含む)は RC 断面検定(6.2.1)と共通です。

短期は鉄骨部 sQA(強軸 \( d_w \cdot t_w \cdot {}_s f_s \)/弱軸 \( (4/3) \cdot b_f \cdot t_f \cdot {}_s f_s \))と RC 部を分担 sQD/rQD と比較します。

\[ {}_r Q_{AS1} = b \cdot {}_r j \cdot (f_s + 0.5 \cdot p_w \cdot {}_w f_t) \]

(α を含まない)

\[ {}_r Q_{AS2} = b \cdot {}_r j \cdot (2(b'/b) \cdot f_s + p_w \cdot {}_w f_t) \]

  • CFT 柱は SRC 規準を CFT 断面に適用する(相互拘束効果の強度割増しは考慮せず、非拘束・安全側とする)。せん断有効断面積は方向別(\( 2t(H-2t) \)/\( 2t(B-2t) \))とする。 CFT 柱の地震時設計用せん断:

\[ Q_D = \min(Q_{D1}, Q_{D2}) \]

\[ Q_{D1} = \sum {}_c M_y/h' \]

ここで cMy には CFT 指針(コンクリート充填鋼管構造設計指針)の N-M 相互作用による終局曲げ耐力 Mu(N)(柱分類対応)を用い、柱頭・柱脚同一断面の仮定で \( \sum {}_c M_y = 2 \cdot M_u(N) \) とします。

\[ Q_{D2} = Q_L + n \cdot Q_E \]

実装srrc::{beam, column, panel_zone}cft::mod が検定します。 SRC パネルゾーンは \( {}_c V \cdot j\delta \cdot f_s \cdot (1+\beta) \ge (h'/h)({}_B M_1 + {}_B M_2) \)。

6.5 小梁・床の断面検定

床の中の小梁とスラブの断面検定は、全体 FEM から独立して行い、設計タブの「小梁・床の設計」表に出します。表の「二次部材」列には小梁と間柱の両方が並び、間柱には「(間柱)」を付けて区別します。実際に載る荷重の分配は1.3 床荷重の分配のとおり床領域・床板の境界へ配るため、この検定は主架構の解析結果とは別に、小梁・床板それぞれを単純梁・一方向版とみなした略算です。

6.5.1 小梁の検定

対象は床領域に所属する小梁です。大梁上の小梁(両端が大梁の節点で、実 Beam 要素に なっているもの)は主架構の一部としてここでは検定しません。

この検定は曲げ・せん断・たわみだけを見て軸力を見ません。 これは「その小梁が載る床面が 1 枚の剛体で、面内力は剛床が処理している」ことを前提にしています。したがって次の二次部材は 検定の対象外とし、表には判定「未」の行として残します(表から消すと、検定されていないことに 気づけないためです)。

  • 間柱。壁版から受けるのは材軸方向の軸力で、地震時には壁の面外地震力による弱軸曲げも 受けます。軸力・面外曲げのいずれも本検定は扱いません。
  • 剛床でない床の小梁。床領域の境界節点が 1 つの剛床にすべて属していない床の小梁は、 面内力を負担するため上記の前提が成り立ちません。複数の剛床にまたがる床領域(段差床の階は 1 つの階に複数の剛床を持ちます)も、境界で相対変位が生じうるため対象外です。

なお、どの床領域にも所属しない小梁・どの壁領域にも所属しない間柱があるモデルは、 解析前チェックがエラーで止めます。 所属が決まらない二次部材は、どの床面・どの構面に 載っているかが確定しておらず、荷重の行き先も検定の可否も決められないためです。

検定荷重は1.4.2 二次部材の反力の逐次伝達が 求めたものをそのまま使うため、小梁が受け持つのは次の 3 つの重ね合わせです (壁版から配られる自重は間柱だけが受けるため、小梁には現れません)。

  1. 1.3 床荷重の分配が小梁の材軸へ出した線荷重 (等分布・線形・三角形・台形・集中)
  2. 小梁自身の自重(自重算定と同じ \( \rho A g \)。鉄骨は有効重量割増。断面または材料が ない小梁には足しません)
  3. その小梁に架かる別の二次部材から渡された集中荷重

これを単純支持梁として重ね合わせ、曲げ・せん断・たわみを求めます。

荷重の同期(解析へ渡す荷重)と断面検定は同じ経路を通るため、「解析では受け側が架け側の 反力を受けているのに、検定では受けていない」という食い違いは生じません。ただし荷重の値そのものは 一致しません。共有するのは支持関係の判定と伝達の手順であって、面荷重強度は用途ごとに違うためです。 検定では床用の面荷重(固定荷重+床用の積載荷重)を用います。

床板の境界が途中節点で分割されていても、小梁の材軸上に載る区間は全長へ合成します(両端節点の完全一致は要求しません)。部分区間の載荷も、材軸上の該当区間へ写します。大梁の材軸の方が近い辺荷重は小梁検定には載せません(10 mm 以内に並走する小梁が外周大梁の荷重を奪わないため)。同じ位置に小梁がある(材軸距離が大梁以下)場合は小梁側を優先します。1 本の辺荷重が複数の小梁材軸に載りうる場合は、端点の材軸距離が最小の 1 本だけに載せます。材軸とみなす許容差は 1.3 と同じ 10 mm です。

曲げ・せん断の最大値はスパンを 64 等分した点(端点を含む)で探します。たわみは曲率を 80 等分した台形積分で両端ピンのたわみを求め、その最大絶対値を用います。ヤング係数は小梁断面の鋼材の \( E \)(未設定時は既定 \( 205000\ \mathrm{N/mm}^2 \))です。

たわみの制限は \( \delta/L \le 1/250 \) です。

次の小梁は部材力を算定せず、表に判定「未」として残します(OK ではありません)。診断タブは理由を分けて警告します。

  • 分配から荷重が得られない(段差床・傾斜小梁・床板境界外など)
  • 同じ床領域内で、境界が材軸に載り、かつその床板の分配がその辺へ線荷重を出す床板(期待床板)の寄与が 1 枚でも欠けている(内法の片側欠落。反対側に床板がない外周は片側のまま検定する)
  • 載荷区間の合計がスパンの半分未満(既定の下限は 0.5)
  • 断面未割当、または断面係数が取れない
  • 材料が鋼材以外(本経路の曲げ検定は鋼の \( Z \) と長期 \( ft = F/1.5 \) 前提のため)
  • 支持関係が一巡しているなど、逐次伝達が荷重を流せない(解析前チェックのエラーにもなる)

期待床板が 1 枚もない材軸には、床分配の線荷重を載せません(近くの大梁・別の小梁の辺を奪わないため)。

代表等分布 \( w \) は合計荷重 / スパンです。45° 分配の辺荷重は、負担幅一様(面荷重 × 間隔)より合計・曲げ・せん断が小さくなることがあります(共有辺の矩形例では等価 \( w \) が負担幅一様の約半分)。解析の大梁伝達と同じ分配を検定に使うためです。負担幅一様は小梁の需要を過大評価しうる(安全側になりうる)近似であり、本経路はそれより低い需要を出すことがあります。

小梁の許容曲げ応力度は、鋼材の長期許容値 \( ft = F/1.5 \) です。\( F \) は材料の降伏応力 \( f_y \)(未設定時は既定 \( 235\ \mathrm{N/mm}^2 \))です。

6.5.2 床(スラブ)の一方向検定

版があり板厚が正の床板だけを検定します(版 = 断面が割り当たり板厚が正)。 囲まれた矩形は単純支持相当 \( M = wL^2/8 \)(係数 8)、取り付きは片持ち \( M = wL^2/2 \)(係数 2)です。 取り付きのスパン \( L \) は張り出し量の絶対値の大きい方(\( \max |extent| \))です。台形などで矩形寸法が取れなくても、この \( L \) が正なら検定します。 版なし・スパン非正・厚さ 0 は検定しません。

7. 二次設計(保有水平耐力計算)

本章では、建築基準法施行令 第82条の2〜6 と昭和55年建設省告示第1792号を根拠として、保有水平耐力 Qu と必要保有水平耐力 Qun の比較、構造特性係数 Ds、形状係数 Fes(剛性率 Fs と偏心率 Fe)、部材ランクと幅厚比、層間変形角について、その算定根拠を示します。

各項目は「導入文(何を・どの基準で)、算定式、実装」の順で記します。

実装は squid_n_design_jp::secondary に置いており、監査結果はP7 監査終局検定_参照実装照合を参照してください。

この章の内容

7.1 保有水平耐力の判定

建築基準法施行令 第82条の3 に基づき、各層の保有水平耐力 Qu が必要保有水平耐力 Qun を上回るか(\( Q_u \ge Q_{un} = D_s \cdot F_{es} \cdot Q_{ud} \))を判定します。

算定式

必要保有水平耐力:

\[ Q_{un} = D_s \cdot F_{es} \cdot Q_{ud} \]

  • 保有水平耐力 Qu = 各層について、プッシュオーバー性能曲線上の層別ピーク層せん断力(崩壊機構形成時の耐力)。単調載荷では機構形成後に頭打ち・劣化するため、最終点ではなく曲線全体のピークを採ります。
  • 設計用地震層せん断力 Qud = \( C_0 = 1.0 \) の Ai 分布層せん断力(ai_distribution(..., c0=1.0)
  • 層間変形角の算定に用いる層間変位は、終局状態(性能曲線最終点=最大変位時)から採ります。

実装secondary::holding_capacityholding_capacity.rs::{check_holding_capacity, qud_by_story})が判定を行い、Qu にはプッシュオーバー(5.7)の層せん断を用います。

構造特性係数 \( D_s \) は部材ランクと崩壊機構から層別に定めます(7.2 構造特性係数 Ds)。形状係数 \( F_{es} = F_s \cdot F_e \) は剛性率・偏心率から求めます(いずれも加力方向の地震時弾性層間変位に基づきます)。

7.2 構造特性係数 Ds

昭和55年建設省告示第1792号に基づき定める各階の構造特性係数 Ds は、次の 3 つの軸で決まります。

  1. 柱及びはりの部材群としての種別(A〜D)
  2. 耐力壁(RC)/筋かい(S)の部材群としての種別(A〜C)
  3. \( \beta_u \) — 耐力壁・筋かいの水平耐力の和を保有水平耐力で除した数値

部材群としての種別は、各部材の種別(RC は FA〜FD・WA〜WD、S は幅厚比区分 FA〜FD と筋かいの BA〜BC、SRC は判定比 \( N/N_0 \)・\( {}_sM_0/M_0 \) による FA〜FD と耐震壁の WA/WC)を耐力比 \( \gamma_A, \gamma_C \) で集計して定めます。個々の部材種別の判定条件、部材群としての種別の判定式、および Ds の値表は 7.3 部材ランク に示します。

代表値(耐力壁・筋かいがない純ラーメンの場合)

柱及びはりの部材群としての種別ABCD
RC 造0.300.350.400.45
S 造0.250.300.350.40

耐力壁・筋かいを有する架構では \( \beta_u \) と壁・筋かいの部材群種別に応じて Ds が増大します(7.3.47.3.5 の表)。

崩壊機構の反映

告示の Ds 表は全体崩壊形の形成を前提とするため、プッシュオーバーで判定した崩壊機構を層別に反映します。

  • 全体崩壊形: Ds 表をそのまま適用する。
  • 層崩壊形: 崩壊が生じる層の柱及びはりの部材群としての種別を 1 段階不利側(A→B→C→D、D は据え置き)へ移す。
  • 崩壊機構が未形成(部分崩壊形): 機構が確定していないため補正は行わず、Ds・必要保有水平耐力が暫定値である旨を表示する(崩壊機構の確定が必要保有水平耐力算定の前提となる)。

実装secondary::ds_group::{ds_rc, ds_steel} が告示の Ds 表を引き、member_group が耐力比 \( \gamma_A, \gamma_C \) から部材群としての種別を判定します。

7.3 部材ランク(FA〜FD)

昭和55年建設省告示第1792号と学会規準(RC 靭性、S 幅厚比)に基づき、部材ランク FA〜FD を、RC はせん断余裕度で、S は幅厚比で判定します。

算定式

  • RC 部材種別: 下記 7.3.0 の多変数表(\( h_0/D \)・\( \sigma_0/F_c \)・\( p_t \)・\( \tau_u/F_c \))で判定する。
  • S 部材種別: 下記 7.3.1 の幅厚比限界値表(部材種別・断面・部位・鋼種別)で判定する。
  • SRC 部材種別: 下記 7.3.2 の判定比(\( N/N_0 \)・\( {}_sM_0/M_0 \))と破壊モードの表で判定する。

実装secondary::ds_group が告示表による部材種別・部材群種別・Ds を、secondary::width_thickness が幅厚比を算定します。

7.3.0 RC 部材の種別

柱及びはりの種別

いずれも「せん断破壊、付着割裂破壊及び圧縮破壊その他の構造耐力上支障のある急激な耐力の低下のおそれのある破壊を生じないこと」を満たすことが前提で、これを満たさない場合は FD とします。

種別柱 \( h_0/D \)柱 \( \sigma_0/F_c \)柱 \( p_t \)柱 \( \tau_u/F_c \)はり \( \tau_u/F_c \)
FA2.5 以上0.35 以下0.8 以下0.1 以下0.15 以下
FB2.0 以上0.45 以下1.0 以下0.125 以下0.2 以下
FC0.55 以下0.15 以下
FDFA, FB 又は FC のいずれにも該当しない場合
  • \( h_0 \): 柱の内法高さ、\( D \): 加力方向の柱の断面せい
  • \( \sigma_0 \): Ds 算定時に柱の断面に生じる軸方向応力度
  • \( p_t \): 引張鉄筋比 [%]
  • \( F_c \): コンクリートの設計基準強度
  • \( \tau_u \): Ds 算定時に柱、梁の断面に生じる平均せん断応力度

本プログラムは \( \sigma_0, \tau_u \) をプッシュオーバー終局時(崩壊機構形成時)の部材応答から算定し、急激な耐力低下のおそれのある破壊はせん断先行(\( Q_{su} < Q_{mu} \))で判定します。

耐力壁の種別

「せん断破壊、その他の構造耐力上支障のある急激な耐力の低下のおそれのある破壊を生じないこと」が前提です。

種別壁式構造以外の構造の耐力壁 \( \tau_u/F_c \)壁式構造の耐力壁 \( \tau_u/F_c \)
WA0.20 以下0.1 以下
WB0.25 以下0.125 以下
WC0.15 以下
WDWA, WB, WC のいずれにも該当しない場合

本プログラムでの耐力壁の種別は、告示の表に加えて、開口低減とせん断頭打ちの到達を見て決めます。

\( \tau_u \) は、終局時の壁負担水平力 \( H \) を有効断面 \( t \cdot l_w \cdot r_2 \) で除して算定します。 開口があると壁板の有効断面が減るため、分母には耐力用開口低減率 \( r_2 \) を乗じます。 たとえば \( r_2 = 0.5 \) なら有効断面は半分になり、\( \tau_u \) は 2 倍になります。 \( r_2 \) は次の式です。

\[ r_2 = 1 - \max\left(r_0,; l_0/l_w,; h_0/h\right) \]

\[ r_0 = \sqrt{h_0 l_0 / (h l_w)} \]

開口が複数あるときは、面積等価の 1 開口へまとめてから上式へ入れます。 等価開口の幅は \( l_0 = \sum l_i \)、高さは \( h_0 = \sum(l_i h_i)/l_0 \) です。 複数開口のまとめ方は、包絡/面積等価/自動のうち、建物一律の設定に従います。 既定のまとめ方は面積等価です。 個別の開口寸法が未入力のときは低減しないため、\( r_2 = 1 \) とします。 \( r_2 = 0 \) になると有効断面が 0 になり \( \tau_u \) を求められないため、その壁は種別判定の対象から外します。 層のランクを 1 本も算定できないときは、設計タブで選んだランク(既定は FA)を使います。

「壁式構造」の列へ切り替えるかどうかは、設計タブの「壁式構造」チェックで決めます。 既定ではチェックを外した状態で、壁式構造以外の列を使います。 見るのは設計タブのチェックだけなので、階の構造種別からは自動では切り替えません。

増分解析の壁要素は、面内せん断を終局せん断強度 \( Q_u \) で頭打ちにする弾完全塑性としてモデル化します。 終局時の負担水平力が \( Q_u \) の 99 % 以上(\( H \ge 0.99, Q_u \))に達したときは、せん断が頭打ちに達したとみなし、種別を WD とします。 数値誤差を見込んで 100 % ではなく 99 % で切るため、頭打ちの直前で WA〜WC に残ることを避けます。 \( Q_u \) が 0 以下で算定できないときは、頭打ち判定を行いません。 求められない壁に脆性破壊を当てると応力度比と関係なく WD になるため、\( \tau_u/F_c \) の表だけで種別を決めます。 \( Q_u \) の算定にも、同じ \( r_2 \) を反映します(4.5 壁エレメントモデル)。

7.3.1 鋼材の幅厚比種別

鉄骨部材の種別は、板要素の幅厚比を限界値と比較して定めます(技術基準解説書「鋼材の幅厚比種別等」)。

幅厚比の計算方法

断面部位幅厚比
H 形鋼フランジ\( b/t_f \)(\( b \) はフランジ半幅 \( = B/2 \))
H 形鋼ウェブ\( (D - 2t_f)/t_w \)(内法せい)
角形鋼管(径厚比)\( B/t \)(全せい。内法ではない)
円形鋼管(径厚比)\( D/t \)(外径)

柱及びはりの種別

\( F \) は平成12年建設省告示第2464号第1に規定する基準強度 [N/mm²] です。

部材断面部位FAFBFCFD
H 形断面フランジ\( 9.5\sqrt{235/F} \)\( 12\sqrt{235/F} \)\( 15.5\sqrt{235/F} \)左記以外
H 形断面ウェブ\( 43\sqrt{235/F} \)\( 45\sqrt{235/F} \)\( 48\sqrt{235/F} \)左記以外
角形断面\( 33\sqrt{235/F} \)\( 37\sqrt{235/F} \)\( 48\sqrt{235/F} \)左記以外
円形断面\( 50(235/F) \)\( 70(235/F) \)\( 100(235/F) \)左記以外
はりH 形断面フランジ\( 9\sqrt{235/F} \)\( 11\sqrt{235/F} \)\( 15.5\sqrt{235/F} \)左記以外
はりH 形断面ウェブ\( 60\sqrt{235/F} \)\( 65\sqrt{235/F} \)\( 71\sqrt{235/F} \)左記以外

備考

  1. この表の規定は、基準強度が 205 N/mm² 以上で 375 N/mm² 以下である鋼材に限る。
  2. 基準強度が 235 N/mm² 及び 325 N/mm² 以外の炭素鋼にあっては、H 形断面及び角形断面では \( \sqrt{235/F} \) を、円形断面では \( 235/F \) を、400N 級鋼の幅厚比に乗じた値とする。

H 形断面はフランジ・ウェブの両方を判定し、不利な方(FD 寄り) を部材の種別として採用します。 角形鋼管・円形鋼管は同表に「はり」の行がないため、柱の行を準用します。

幅厚比表に行のない形状(溝形・T形・山形等)は、規範的根拠のない仮のしきい値で 自動判定することを避けるため自動判定の対象外とし、当該部材はランク未判定として 層の選択ランク(手動設定値)にフォールバックします。

角形鋼管の鋼種別限界値

冷間成形角形鋼管(BCR・BCP)及び一般構造用角形鋼管(STKR)は、鋼種ごとの限界値を用います。

鋼種FAFBFCFD
STKR400 / BCP235333748左記以外
STKR490 / BCP325273241左記以外
BCR295303443左記以外

筋かいの種別

有効細長比 \( \lambda \)筋かいの種別
(一)\( \lambda \le 495/\sqrt{F} \)BA
(二)\( 495/\sqrt{F} < \lambda \le 890/\sqrt{F} \) 又は \( 1980/\sqrt{F} \le \lambda \)BB
(三)\( 890/\sqrt{F} < \lambda < 1980/\sqrt{F} \)BC

7.3.2 SRC 部材の種別

SRC 柱の種別

鉄骨鉄筋コンクリート造の柱は、軸力比 \( N/N_0 \)・鉄骨曲げ耐力比 \( {}_sM_0/M_0 \) と破壊モードで種別を定めます(技術基準解説書 表 2.6.6-5)。

破壊モード\( N/N_0 \le 0.3 \) かつ \( {}_sM_0/M_0 \ge 0.4 \)\( N/N_0 \le 0.3 \) かつ \( {}_sM_0/M_0 < 0.4 \)\( 0.3 < N/N_0 \le 0.4 \) かつ \( {}_sM_0/M_0 \ge 0.4 \)\( 0.3 < N/N_0 \le 0.4 \) かつ \( {}_sM_0/M_0 < 0.4 \)\( N/N_0 > 0.4 \)
曲げ破壊FAFBFBFCFD
せん断破壊FBFCFCFDFD
  • \( N \): メカニズム時(プッシュオーバー終局時)に柱に生じる軸方向力(圧縮を正とし、引張の場合は 0 として扱う)
  • \( N_0 \): SRC 断面の圧縮耐力
  • \( {}_sM_0 \): 内蔵鉄骨の曲げ耐力
  • \( M_0 \): 軸力 0 とした SRC 断面の曲げ耐力
  • 破壊モード: 増分解析でせん断降伏イベントが記録された部材をせん断破壊、それ以外を曲げ破壊とする

耐力は SRC 規準の累加強度の考え方に基づく略算で評価します。

  • \( N_0 = {}_cA_c \cdot F_c + {}_sA \cdot {}_sF + a_r \cdot \sigma_y \)(コンクリートは鉄骨・主筋を控除した正味断面積 \( {}_cA_c \)、\( a_r \) は主筋全断面積)
  • \( {}_sM_0 = {}_sZ_p \cdot {}_sF \)(内蔵 H 形鋼の強軸全塑性断面係数 \( {}_sZ_p = B \cdot t_f (H - t_f) + t_w (H - 2t_f)^2 / 4 \))
  • \( M_0 = {}_sM_0 + {}_rM_0 \)(\( {}_rM_0 = 0.9 , a_t , \sigma_y , d_e \)。\( a_t \) は片側引張主筋量(せい方向主筋の 1/2)、\( d_e = D - d_t \) は有効せい)

引張縁から主筋群重心までの距離 \( d_t \) は、1 段配筋では \( \text{かぶり} + \text{せん断補強筋径} + \text{主筋径}/2 \) です。多段配筋(2 段以上)では段間のあき(主筋径の 1.5 倍と 25 mm の大きい方)を考慮した多段重心位置とし、RC 断面検定の引張有効せいと同じ規則によります。

既定値:内蔵鉄骨の基準強度 \( {}_sF \) は断面の内蔵鉄骨材料の名称から板厚区分(フランジ厚)込みで解決し、解決できない場合は 235 N/mm²(400N 級鋼相当)とします。主筋の降伏強度 \( \sigma_y \) は断面の主筋材料の \( f_y \) から解決します。主筋降伏強度またはコンクリート設計基準強度 \( F_c \) が未設定の柱は判定対象外(層の選択ランクへフォールバック)です。判定対象は SRC 矩形断面の柱で、SRC 梁は表に規定がないため判定対象外(同フォールバック)とします。

SRC 耐震壁の種別

側柱(壁と両端の節点を共有する鉛直部材)に SRC 造の柱がある耐震壁は、\( \tau_u/F_c \) の表によらず破壊モードで種別を定めます。

破壊モード種別
せん断破壊WC
それ以外WA

増分解析の壁要素は面内せん断を終局せん断強度 \( Q_u \) で頭打ちにする弾完全塑性のため、破壊モードは終局時(崩壊機構形成時)の負担水平力が \( Q_u \) に達したかどうかで判定します(達した場合をせん断破壊とします)。\( Q_u \) を算定できない壁と、終局時応答が得られない壁は判定対象外(層の選択ランクへフォールバック)です。

実装secondary::src_rank が SRC 柱の種別・判定比・SRC 耐震壁の種別を算定します。

7.3.3 部材群としての種別

層の Ds は個々の部材ではなく、部材群としての種別(A・B・C)で定めます。

部材の耐力の場合部材群としての種別
(一)\( \gamma_A \ge 0.5 \) かつ \( \gamma_C \le 0.2 \)A
(二)\( \gamma_C < 0.5 \)(部材群としての種別が A の場合を除く)B
(三)\( \gamma_C \ge 0.5 \)C
  • \( \gamma_A \): 筋かいの部材群の種別を定める場合は、種別 BA である筋かいの耐力の和をすべての筋かいの水平耐力の和で除した数値。柱及びはりの部材群の種別を定める場合は、種別 FA である柱の耐力の和を種別 FD である柱を除くすべての柱の水平耐力の和で除した数値。
  • \( \gamma_C \): 同様に、種別 BC である筋かい/種別 FC である柱について求めた数値。

7.3.4 各階の構造特性係数 Ds(RC 造)

\( \beta_u \) は耐力壁の水平耐力の和を保有水平耐力の数値で除した数値です。

耐力壁の部材群としての種別条件柱及びはりの部材群としての種別 ABCD
A\( 0 < \beta_u \le 0.3 \)0.30.350.40.45
A\( 0.3 < \beta_u \le 0.7 \)0.350.40.450.5
A\( \beta_u > 0.7 \)0.40.450.450.55
B\( 0 < \beta_u \le 0.3 \)0.350.350.40.45
B\( 0.3 < \beta_u \le 0.7 \)0.40.40.450.5
B\( \beta_u > 0.7 \)0.450.450.50.55
C\( 0 < \beta_u \le 0.3 \)0.350.350.40.45
C\( 0.3 < \beta_u \le 0.7 \)0.40.450.450.5
C\( \beta_u > 0.7 \)0.50.50.50.55
D\( 0 < \beta_u \le 0.3 \)0.40.40.450.45
D\( 0.3 < \beta_u \le 0.7 \)0.450.50.50.5
D\( \beta_u > 0.7 \)0.550.550.550.55

耐力壁がない(\( \beta_u = 0 \))純ラーメンの場合は 0.3 / 0.35 / 0.4 / 0.45 とします。

7.3.5 各階の構造特性係数 Ds(S 造)

\( \beta_u \) は筋かい(耐力壁を含む)の水平耐力の和を保有水平耐力で除した数値です。

筋かいの部材群としての種別条件柱及びはりの部材群としての種別 ABCD
A 又は \( \beta_u = 0 \)0.250.30.350.4
B\( 0 < \beta_u \le 0.3 \)0.250.30.350.4
B\( 0.3 < \beta_u \le 0.7 \)0.30.30.350.45
B\( \beta_u > 0.7 \)0.350.350.40.5
C\( 0 < \beta_u \le 0.3 \)0.30.30.350.4
C\( 0.3 < \beta_u \le 0.5 \)0.350.350.40.45
C\( \beta_u > 0.5 \)0.40.40.450.5

実装width_thickness::{max_width_thickness, s_member_rank_by_kihon} が幅厚比と種別を算定します。

本プログラムでの部材群種別・βu の算定

  • 各部材の「耐力」にはプッシュオーバー終局時に当該部材が負担する加力方向の水平力を用いることで、部材群としての種別を 7.3.3 の耐力比 \( \gamma_A, \gamma_C \) から判定します。
  • 告示の「部材群としての種別」表は A〜C のみを定義し D の判定条件を与えていないため、種別 D(FD/WD)の部材を含む層は部材群としての種別を D とします。
  • \( \beta_u \) は、当該層の耐力壁・筋かい要素が終局時に負担する水平力の和を、その層の保有水平耐力 \( Q_u \) で除して算定します。耐力壁・筋かいがない層は \( \beta_u = 0 \)(純ラーメン)となります。
  • 終局時の部材水平力が得られず耐力比を判定できない層は、当該層のもっとも不利な部材種別を部材群種別へ読み替えます。
  • 部材ランクの自動判定で、ある層のランクを 1 本も算定できない場合(幅厚比表の対象外形状・断面形状未設定・\( F_c \) 未設定など)、その層には設計タブで選択したランク(既定 FA)を適用し、該当層を設計タブに警告として表示します。選択ランクが実状より甘い場合に Ds を過小評価するためです。
  • 崩壊機構が層崩壊形と判定された層は、告示の Ds 表が全体崩壊形の形成を前提とすることを踏まえ、柱及びはりの部材群としての種別を 1 段階不利側へ移します。

7.4 形状係数 Fes(剛性率 Fs・偏心率 Fe)

7.4.1 剛性率 Rs・Fs

建築基準法施行令 第82条の6 と告示第1792号に基づき、剛性率 Rs(規定は \( R_s \ge 0.6 \))から Fs を算定します。

算定式

\[ K_s = h/\delta \]

\[ R_s = K_s/\mathrm{mean}(K_s) \]

\[ F_s = \begin{cases} 1.0 & (R_s \ge 0.6) \\ 2.0 - R_s/0.6 & (R_s < 0.6) \end{cases} \]

実装holding_capacity::{stiffness_ratios, fs} が算定し、δg は secondary::stiffness_ratio::cog_story_drifts です。 剛性率に使う層間変位は、柱の最大変位ではなく、重心位置の水平変位 δg です。 各層の δg は、上端の床レベル上の節点と下端の床レベル上の節点について、重心位置の水平変位の差として求めます。 δg は柱の層間変位とは別の量であり、中間節点は床レベルにないため平均には入れません。

7.4.2 偏心率 Re・Fe

建築基準法施行令第 82 条の 6 と告示第 1792 号に基づき、偏心率 Re から Fe を算定します。 規定は \( R_e \le 0.15 \) です。 剛心の求め方は、地震時の応力解析結果があるかどうかで分かれます。 解析結果があるときは柱の水平剛性から剛心を求め、ないときは武藤 D 値法の略算を使います。

算定式

D 値(一般階):

\[ D = a \cdot K_{c0} \]

\[ K_{c0} = 12EI_c/h^3 \]

\[ a = \bar{k}/(2+\bar{k}) \]

剛心と偏心距離:

\[ X_s = \sum(D_y \cdot x)/\sum D_y \]

\[ e_x = |X_g - X_s| \]

弾力半径:

\[ r_{ex} = \sqrt{K_R/\sum D_x} \]

\[ K_R = \sum(D_x \cdot \bar{y}^2) + \sum(D_y \cdot \bar{x}^2) \]

偏心率と Fe:

\[ R_e = e/r_e \]

\[ F_e = \begin{cases} 1.0 & (R_e \le 0.15) \\ \min(1.0 + 0.5(R_e - 0.15)/0.15, 1.5) & (R_e > 0.15) \end{cases} \]

実装holding_capacity::fe が Fe を算定します。 地震時の応力解析結果があるときは、柱の水平剛性を \( k_i = Q_i/\delta_i \) として剛心を求めます。 ここでの \( \delta_i \) は、層間変形角と同じく上下端床の変位差です。 中間節点で柱を分割するとセグメント単体の変位差は層高より短くなるため、連なりを 1 本の柱とみなします。 重心は、鉛直荷重を支持する柱の長期軸力を重みにして求めます。 引張の柱は鉛直荷重を支持しないため、重みに入れません。 この精算は secondary::eccentricity_analysis です。 応力解析結果がないときは、武藤 D 値法の略算(secondary::eccentricity)を使います。 略算でも中間節点で分割された鉛直材は連なりを 1 本の柱とみなし、層の上下端の高さを \( h \) として D 値を求めます。 セグメントの材長を \( h \) にすると \( 12EI/h^3 \) が過大になるためです。

雑壁の剛性(n 倍法)

柱・梁に囲まれていない壁も、階と階をつないでいれば層の剛性に効き、剛心を偏らせます。 これを等価な剛性要素として剛心とねじり剛性へ算入する方法が n 倍法です。 壁 1 枚の等価水平剛性 \( K_w' \) は、当該層の柱の剛性と断面積の比から求めます。

\[ K_w' = n \cdot A_w' \cdot \sum K_c / \sum A_c \]

\( A_w' \) は壁の平面長さ × 構造厚です。 構造厚は断面の板厚で、仕上げ・増打ちの面荷重(1.9 壁の断面と自重)は 重さの入力であって厚さではないため含めません。 方向別に \( K_{wx}' \)・\( K_{wy}' \) を求め、壁面内方向の方向余弦 \( (c_x, c_y) \) で \( D_x = K_{wx}' c_x^2 \)、\( D_y = K_{wy}' c_y^2 \) として、壁の平面中点に置きます。 \( \sum A_c = 0 \) の層では \( K_w' = 0 \) とします。

対象は自立壁(床領域に取り付く壁版)だけです。 腰壁・垂れ壁・パラペットは、フロア間で壁がつながっていないため層剛性に影響しません。 これらが周辺の柱梁へ及ぼす剛性は、袖壁・腰壁として部材の断面性能へ算入する経路 (4.1 ティモシェンコ梁要素)が受け持つので、 ここで等価剛性要素としても数えると二重に計上することになります。

自立壁も同じ基準で切り分け、立ち上がりが直上の階レベルに達している壁だけを対象とします。 床の上に立つ腰高のパーティションは階と階をつないでいないため、対象にしません。 断面が割り当たっておらず板厚を引けない壁も対象外です。 帰属する層は、壁の下端からその階の階高の半分だけ上がった高さがどの層に入るかで決めます。

既定値は \( n \) が未設定で、そのときは雑壁の剛性を考慮しません。

7.4.3 形状係数 Fes

形状係数 Fes は、剛性率による Fs と偏心率による Fe の積として算定します。

算定式

\[ F_{es} = F_s \cdot F_e \]

実装holding_capacity::fes が算定します。

7.5 層間変形角

建築基準法施行令第 82 条の 2 に基づき、各層の層間変形角が 1/200 以下であることを確認します。 帳壁などの変形追従性が確認できれば、1/120 まで緩和できます。

算定式

\[ \text{層間変形角} = \delta/h \le 1/200 \]

層間変位 δ には、当該層の柱の層間変位のうち最大のものを用います。 各柱の δ は、層の上端床と下端床の節点について、加力方向の水平変位差を取った値です。 中間節点で柱を分割すると、セグメント単体の変位差は層高より短くなるため、上下端を結ぶ連なりを 1 本の柱とみなします。 下端の床レベルまで辿れない連なりや、途中で鉛直材が分岐する連なりは、層の上下端を結ぶ柱として扱えないため、数えません。

実装holding_capacity::check_story_drift が判定し、層間変位の最大値は secondary::stiffness_ratio::max_column_drift です。

7.6 主軸の計算

地震力方向に対する架構の主軸を、水平力のなす仕事の極値条件から計算します(実務的手法)。

算定式

\[ \tan 2\Theta = -\frac{P^t(u_y+v_x)}{P^t(v_y-u_x)} \]

仕事 W の極値から主軸角 Θ を決定します。

実装secondary::principal_axisprincipal_axis.rs)が計算します。

8. 部材終局耐力

本章は、保有水平耐力計算、終局検定、非線形解析で用いる部材終局耐力の算定式と出典をまとめます。 対象は、曲げ Mu、曲げ終局時せん断 Qmu、終局せん断 Qsu、付着割裂 Qbu、軸終局 Nu、接合部終局、耐震壁非線形、CFT 終局です。

法令はこれらの終局耐力式を直接与えていないため、本章の各式は、日本建築学会の各指針(靭性保証型、終局強度型)および『建築物の構造関係技術基準解説書』の略算式と塑性理論式に主に依拠します(Category B)。 多くの係数には、コード上で「要・原典照合(原典照合リスト)」の申し送りが付されています。

各項目は「導入文(何を・どの基準で)、算定式、実装」の順で記します。

単位系の注意: 荒川式や耐震壁 Qc/βu などは工学単位系(kgf/cm²)で導出された実験式であるため、 実装では \( 1\ \mathrm{kgf/cm^2} = 0.0980665\ \mathrm{N/mm^2} \)、\( 1\ \mathrm{kgf} = 9.80665\ \mathrm{N} \) で換算して評価します。

この章の内容

8.1 RC 部材 略算終局耐力(曲げ・せん断)

実装本体は squid_n_core::rc_capacity にあり、design-jp はこれを再エクスポートします。 全係数に「要・原典照合」のコメントが付されています。

8.1.1 曲げ終局モーメント(梁)

引張鉄筋降伏型の梁について、AIJ 非線形解析指針等の簡易式および技術基準解説書 P.623 に基づき、曲げ終局モーメントを略算します。

算定式(\( d = \text{有効せい} \)。技術基準解説書 P.623):

\[ M_u = 0.9 \cdot a_t \cdot \sigma_y \cdot d \]

実装rc_capacity::rc_mu_simple

8.1.2 曲げ終局時せん断力(梁)

両端が曲げ降伏し反曲点が中央にあると仮定して、曲げ終局時のせん断力を略算します。

算定式

\[ Q_{mu} = \frac{2 \cdot M_u}{h_0} \]

実装rc_capacity::rc_qmu_simple

8.1.3 柱の軸力考慮終局曲げ

柱の終局曲げモーメントは、2007 年版『建築物の構造関係技術基準解説書』付録1-3 の閉形式に基づき、軸力の大小に応じて算定します(要・原典照合)。

算定式(3 分岐、\( N_{bal} = 0.4 \cdot b \cdot D \cdot F_c \)):

\( N > N_{bal} \) のとき:

\[ M_u = (0.8 \cdot a_t \cdot \sigma_y \cdot D + 0.12 \cdot b \cdot D^2 \cdot F_c) \cdot (N_{max} - N)/(N_{max} - N_{bal}) \]

\( 0 \le N \le N_{bal} \) のとき:

\[ M_u = 0.8 \cdot a_t \cdot \sigma_y \cdot D + 0.5 \cdot N \cdot D \cdot (1 - N/(b \cdot D \cdot F_c)) \]

\( N < 0 \) のとき:

\[ M_u = 0.8 \cdot a_t \cdot \sigma_y \cdot D + 0.4 \cdot N \cdot D \]

実装rc_capacity::rc_column_mu_simple。 柱の地震時設計用せん断力 \( Q_{D1} = \sum {}_c M_y/h' \) の算定に使用します。

8.1.4 終局せん断耐力(荒川 mean 式系)

梁のせん断終局耐力は、靭性保証型指針および技術基準解説書に基づき、荒川 mean 式系の略算式で算定します(要・原典照合)。

算定式:

\[ Q_{su} = \left\{ \frac{0.068\,p_t^{0.23}(F_c+18)}{M/(Q\,d_e)+0.12} + 0.85\sqrt{p_w \sigma_{wy}} + 0.1\,\sigma_0 \right\} b\,j \]

  • \( p_t = 100 \cdot a_t/(b \cdot d_e) \) [%]、\( j = 7 \cdot d_e/8 \)
  • せん断スパン比 \( M/(Q \cdot d_e) = h_0/(2d_e) \) を 1.0〜3.0 にクランプ
  • pw を 0〜0.012(1.2%)にクランプ、σ0 を 0〜0.4Fc にクランプ(引張は 0)

実装rc_capacity::rc_qsu_simple。係数は 0.068/0.23/+18/+0.12/0.85/0.1。

8.1.5 曲げ降伏時剛性低下率 αy(菅野式)

トリリニア骨格の降伏点変形を求めるため、梅村魁『鉄筋コンクリート建物の動的耐震設計法』P.106-108 に基づき、曲げ降伏時の剛性低下率 αy を菅野式で算定します。

算定式(a/D 2 分岐、[1,5] クランプ):

\( 2 \le a/D \le 5 \) のとき:

\[ \alpha_y = (0.043 + 1.635 \cdot n \cdot p_t + 0.043 \cdot (a/D)) \cdot (d/D)^2 \]

\( 1 \le a/D < 2 \) のとき:

\[ \alpha_y = (-0.0836 + 0.159 \cdot (a/D)) \cdot (d/D)^2 \]

実装rc_capacity::rc_alpha_y_sugano。 降伏点変形 \( \theta_y = \theta_e/\alpha_y \) に使用します。 非線形解析の材端曲げバネ(トリリニア骨格)にも配線されています。 RC 矩形断面の梁(水平材)は菅野式を用い、柱(菅野式は軸力項を要する)・鉄骨・SRC・CFT・情報不足時は既定値 0.3 を用います(factory::flexural_alpha_y)。

8.2 RC 終局せん断(塑性理論式・靭性指針式)

「06 終局検定」の照合のため、荒川式に加えて塑性理論式と靭性指針式を実装しています。

8.2.1 塑性理論式 Qsu(トラス+アーチ機構)

RC 部材の終局せん断耐力は、日本建築学会『靭性保証型耐震設計指針』(終局強度型設計指針、藤井・森田式系)に基づき、トラス機構とアーチ機構の累加により算定します。

算定式

\[ Q_{su} = \text{truss} + \text{arch} \]

  • \( \text{truss} = b \cdot j_t \cdot p_w \cdot \sigma_{wy} \cdot \cot\varphi \)(\( p_w \cdot \sigma_{wy} \le \nu \cdot F_c/2 \) に制約)
  • \( \text{arch} = k_1 \cdot (1 - k_2) \cdot b \cdot D \cdot \nu \cdot F_c \)
  • 有効係数 \( \nu_0 = \max(0.7 - F_c/200, 0) \)、\( \nu = \text{factor} \cdot \nu_0 \)(factor は塑性率 Rp 依存)
  • \( \cot\varphi \)(Rp 依存、1.0〜2.0)、\( k_1 = (\sqrt{(L/D)^2+1} - L/D)/2 \)、\( k_2 = \min(2p_w \cdot \sigma_{wy}/(\nu \cdot F_c), 1) \)
  • 軽量コンクリートは 0.9 倍
  • 高強度せん断補強筋ShearBar.grade が既知製品の場合、各製品の技術評定値): σwy は製品別上限(ウルボン1275/リバーボン1275 = \( \min(25F_c, 1275) \)、 UB785/KW785/KSS785 = \( \min(25F_c, 785) \)、SHD685/SPR685 = \( \min(25F_c, 685) \)、 HDC685 = 685、KH785/SPR785/MK785 = \( 25F_c \)(Fc しきい値 27.4/32.0/31.4 以上で 785))、ν0 は製品別(1275 級 \( 0.7(1.0 - F_c/140) \)、785/685 級 \( 0.7(0.7 - F_c/200) \))、pw 上限 1.2%(1275 級の柱かつ \( F_c < 27 \) は 0.8%)

実装ultimate::rc_shearrc_shear.rs::rc_shear_qsu_plastic)。高強度製品の解決は material_strength::{ultimate_hoop_sigma_wy, ultimate_hoop_nu0, ultimate_hoop_pw_cap}

8.2.2 付着割裂耐力 Qbu

付着割裂で耐力が決まる場合の Qbu は、靭性保証型指針 P.175-181 に基づき算定します。

算定式

\[ Q_{bu} = j_t \cdot \tau_{bu} \cdot \sum\varphi + k_1 \cdot (1 - k_3) \cdot b \cdot D \cdot \nu \cdot F_c \]

付着信頼強度は次によります。

\[ \tau_{bu} = \alpha_t \cdot ((0.085 \cdot b_1 + 0.10) \cdot \sqrt{F_c} + k_{st}) \]

実装ultimate::rc_shearrc_shear_qbu_bondbond_reliable_strength_deformed)。

8.2.3 靭性指針式せん断信頼強度 Vu / Vbu

せん断信頼強度 Vu は、日本建築学会『鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針・同解説』(1997) 式(6.4.1)〜(6.4.11)、付着(6.8.14)〜(6.8.16) に基づき、トラス項とアーチ項から算定します。

算定式(トラス項+アーチ項):

\[ V_u = \min(V_{u1}, V_{u2}, V_{u3}) \]

\( \tan\theta \) は L/D に応じて \( 0.9D/(2L) \)(式6.4.10)または \( (\sqrt{L^2+D^2} - L)/D \)(式6.4.11)とします。

実装ultimate::rc_shear_ductilityrc_shear_ductility.rs)。 式番号をコメントに明記しています。

8.2.4 柱の軸終局耐力

柱の軸終局耐力(Nuc/Nut)は技術基準解説書に基づき算定します。

算定式

圧縮正:

\[ N_{uc} = b \cdot D \cdot F_c \]

引張負:

\[ N_{ut} = -a_g \cdot \sigma_y \]

柱の曲げ終局モーメント Mu は構造規定式(at 式、軸力考慮)によります(8.1 参照)。

実装ultimate::rc_axial

8.3 RC 柱梁接合部 終局耐力

柱梁接合部のせん断終局耐力とパネル余裕度は、靭性保証型指針(接合部せん断 \( V_{ju} = \kappa \cdot \varphi \cdot F_j \cdot b_j \cdot D_j \)、\( F_j = 0.8 \cdot F_c^{0.7} \))に基づき算定します。

算定式

\[ V_{ju} = \kappa \cdot \varphi \cdot F_j \cdot b_j \cdot D_j \]

形状係数は κ = 十字1.0/T字・ト字0.7/L字0.4 とし、せん断力を次式とします。

\[ Q_{du} = \alpha \cdot (T + T' - Q_{cu}) \]

引張筋重心位置 dt

\( d_t \) は引張縁から主筋群重心までの距離で、梁の応力中心間距離 \( j = \frac{7}{8}(D - d_t) \) と、SRC パネルの主筋間距離 \( {}_mC_d = \text{柱幅} - 2 d_t \) に用います。 この \( d_t \) は多段配筋の段数を考慮します。 1 段配筋では \( \text{かぶり} + \text{せん断補強筋径} + \text{主筋径}/2 \) とします。 2 段以上では、段間のあき(主筋径の 1.5 倍と 25 mm の大きいほう)を考慮した多段重心位置とします。 RC 断面検定・部材ランクの引張有効せいと同じ規則です(7.3 部材ランク)。

実装ultimate::jointjoint.rs::rc_joint_ultimate)。 \( d_t \) は squid_n_core::rc_rebar_geom::rebar_tension_dt が算定します(断面検定・プッシュオーバーヒンジ・曲げばねと同一規約)。

8.4 RC 部材 非線形復元力特性

8.4.1 梁(曲げ・せん断・軸)

梁の曲げ、せん断、軸のトリリニア骨格は、技術基準解説書 P.621-623(\( M_c = \kappa \cdot \sqrt{F_c} \cdot Z_e \)、\( \kappa=0.56 \))と菅野式(剛性低下率)に基づき組み立てます。

算定式

曲げひび割れ(Fc [N/mm²]):

\[ M_c = 0.56 \cdot \sqrt{F_c} \cdot Z_e \]

せん断ひび割れ:

\[ Q_c = \frac{0.061(F_c+49)}{M/Qd+1.7} \cdot b \cdot j \]

軸:

\[ N_{ct} = 0.56 \cdot \sqrt{F_c} \cdot A_c \]

\[ N_{ut} = a_t \cdot \sigma_y \]

\[ N_{uc} = a_t \cdot \sigma_y + F_c(A_c - a_t) \]

これらからトリリニア骨格を組み立てます。

実装rc::beam_nonlinearbeam_nonlinear.rs)。

8.4.2 耐震壁(せん断非線形トリリニア)

耐震壁のせん断非線形トリリニア骨格は、技術基準解説書 P.635-639(Qc・βu)、荒川式および技術基準解説書 P.281-282(終局せん断 Qu)、RC終局強度設計資料 P.132(開口低減)に基づき組み立てます。

算定式:

  • せん断ひび割れ \( Q_c = (0.043 \cdot p_g + 0.051) \cdot F_c \cdot A_w \)(工学単位 kgf/cm²。Fc は 1 乗。 技術基準解説書 P.635-637)
  • せん断降伏時剛性低下率 \( \beta_u = 0.46 \cdot p_w \cdot \sigma_y/F_c + 0.14 \)
  • 終局せん断 \( Q_u = \{ k \cdot p_{te}^{0.23}(F_c+18)/D' + 0.85\sqrt{\sigma_{wh} \cdot p_{wh}} + 0.1\sigma_0 \} \cdot t_e \cdot j \cdot r \)。 分母 D' は \( k = 0.053 \)(既定。技術基準解説書 P.638-639)のとき \( M/(QD)+0.12 \)、 \( k = 0.068 \)(高強度せん断補強筋。同 P.281-282)のとき \( \sqrt{M/(QD)+0.12} \) (\( p_{wh} \le 1.2\% \)、\( M/QD \in [1,3] \)、\( \sigma_0 \in [0, 0.4F_c] \))
  • 開口低減 \( r = 1 - \max(r_0, l_0/l_w, h_0/h) \)、\( r_0 = \sqrt{h_0 \cdot l_0/(h \cdot l_w)} \)
  • 軽配筋の壁で式上 \( Q_c > Q_u \) となる場合はひび割れ点を Qu で頭打ちにする (バイリニア相当に縮退)

壁筋の材質は壁の断面が持ちます。 縦筋の降伏点 \( \sigma_y \)(\( \beta_u \) に用いる)は「主筋」欄、横筋の降伏点 \( \sigma_{wh} \)(\( Q_u \) に用いる)は「せん断補強筋」欄に割り当てた材料の \( f_y \) です。 どちらも未割当のときは規格上の最小グレードである 295 N/mm²(SD295 相当)を既定とします。 高強度せん断補強筋(SD*SR* 以外の製品名)を割り当てた壁は \( k = 0.068 \) の式で評価します。

実装rc::wall_nonlinearwall_nonlinear.rs)。

8.4.3 鋼梁(横座屈 Mcr/Mp)

横座屈で耐力が決まる H形鋼梁について、鋼構造塑性設計指針に基づく \( M_p = Z_p \cdot \sigma_y \) をもとに、横座屈耐力比から Mcr を算定します。

算定式

\[ x = l_b \cdot h/A_f \]

材料別のパラメータ (e1, e2, slope, tail) により 3 分岐します(SN400: 300/835/0.00075/500、SN490: 220/605/0.0010/363、一般: 70500/σy 等)。

\[ M_{cr} = \text{ratio} \cdot M_p \]

実装steel::beam_nonlinearbeam_nonlinear.rs::steel_beam_lateral_buckling_ratio)。

8.5 SRC / SRRC 梁 せん断終局(充腹・非充腹)

SRC/SRRC 梁のせん断終局耐力は、技術基準解説書(SRC 梁せん断終局)と SRC規準(SRC 梁せん断終局)に基づき、充腹と非充腹に分けて算定し、非充腹は荒川 mean 式系によります。

算定式:

  • 充腹(累加)\( Q_u = {}_r Q_u + {}_s Q_u \)。rQu(コンクリート・RC)に sQu(鉄骨ウェブ \( {}_s A_w \cdot {}_s \sigma_y/\sqrt{3} \))を累加する。 RC 部の許容せん断応力度 fs は工学単位(kgf/cm²)で定義された式を SI に換算して用いる: 技術基準解説書式 \( f_s = \min(F_c/20, (0.49 + F_c/100) \cdot 1.5) \)、 SRC規準式 \( f_s = \min(0.15 \cdot F_c, 2.21 + 0.045 \cdot F_c) \)(いずれも N/mm²)
  • 非充腹 格子材 \( Q_{su} = \{ \kappa \cdot p_t^{0.23} \cdot k_{cs} \cdot (18+F_c)/(M/Qd+0.12) + 0.85\sqrt{{}_r p_w \cdot {}_r \sigma_{wy} + 0.5 \cdot {}_s p_w \cdot {}_s \sigma_{wy}} \} \cdot b_e \cdot j \) (√ は帯板項まで全体に掛かる。\( p_t = {}_r p_t + {}_s p_t \)、\( j = 0.8D \)、\( M/Qd \in [1,3] \)、\( \kappa = 0.053 \)/高強度0.068)
  • 非充腹 ラチス材 \( Q_{su} = \{\dots\} \cdot b_e \cdot {}_r j + {}_s Q_u \)

実装srrc::beam_nonlinearbeam_nonlinear.rs)。

8.6 CFT 柱 終局耐力

CFT 柱の終局耐力は、日本建築学会『コンクリート充填鋼管(CFT)構造設計・施工指針』に基づき、柱を短柱(\( l_k \le 4D \))、中柱(\( \le 12D \))、長柱(\( > 12D \)) に分類したうえで、分類に応じて算定します。

算定式:

  • 短柱軸終局 \( N_{cu1} = {}_c A \cdot F_c + (1+\xi) \cdot {}_s A \cdot F_y \)(ξ = 円形0.27/角形0)
  • コンクリート座屈応力 \( {}_c \sigma_{cr} \)(規準化細長比 \( {}_c \lambda_1 \) の 2 分岐、\( {}_c \lambda_1 = 1 \) で連続)
  • N-M 相互作用(角形・円形の (Nu, Mu) 曲面)を用いる。中柱と長柱は座屈低減 R を乗じる。

実装ultimate::{cft, cft_nm}、統括は ultimate::mod::collect_cft_ultimate_checks

8.7 終局検定の統括

部材別のせん断、付着、軸の余裕度を統括して算定します(保有水平耐力計算における部材種別判定・余裕度検定の実務的取扱い)。 両端ヒンジは \( Q_{mu} = \text{上限強度倍率} \cdot (M_{u\text{上}} + M_{u\text{下}})/\text{内法} \) とし、余裕度 \( Q_{su}/Q_{mu}, Q_{bu}/Q_{mu} \ge 1.0 \) で OK と判定します。

算定式:部材別にせん断、付着、軸の余裕度を算定します。 梁の余裕率は長期せん断力 QL を分子から控除した \( \frac{Q_{su} - Q_L}{Q_{mu}} \)・\( \frac{Q_{bu} - Q_L}{Q_{mu}} \ge 1.0 \) とします。 ここで QL は重力ケース集合(Dead と地震用 Live、なければ Live)の解析せん断力を加算したものです。 せん断補強筋に MK785/SPR785/SPR685 を使用した部材では、控除する QL を長期荷重による単純梁せん断力 Q0 に読み替えます。 Q0 は同じ重力ケース集合の部材荷重から単純梁反力を算定し、ケース間は加算します(各製品の技術評定の規定)。 柱の 2 軸せん断余裕度は \( 1/((Q_{mx}/Q_{ux})^2 + (Q_{my}/Q_{uy})^2)^{1/2} \) とします。 曲げ Mu は at 式によります(梁は rc_mu_simple、柱は軸力を考慮した rc_column_mu_simple)。 せん断は塑性理論式(既定)または靭性指針式(6.4)を切り替えます。 接合部終局の有効幅は \( b_{ai} = \min(b_i/2, D/4) \)(許容応力度検定と同じ)。

実装ultimate::modcollect_rc_ultimate_checks)。

9. 免震・制振

本章では、免震支承材(積層ゴム、鉛プラグ入り、高減衰、すべり、転がり、球面すべり)、制振ダンパー(オイル/マクスウェル型、履歴型)、座屈拘束ブレース(BRB)の力学モデルと係数の根拠を示します。 モデルは免震・制振部材の標準的な力学モデル(バイリニア・摩擦・マクスウェル要素等)、製品別の係数は各製品の技術資料(メーカー公表値・大臣認定値)に依拠します(Category B)。

各項目は「導入文(何を・どの基準で)、算定式、実装」の順で記します。

要素剛性としての組込みは4.7 ばね要素に示し、設計計算は squid_n_design_jp::{isolator, brb} が担当します。

この章の内容

9.1 免震アイソレータ

9.1.1 マルチシア(多層積層ゴム)低減率

多層積層ゴム(マルチシア配置)の剛性および耐力の低減率を、配置の幾何(せん断ばねの方向余弦の和)に基づいて算定します。

算定式

剛性低減率:

\[ = 2/n \]

耐力低減率:

\[ = \frac{1}{\sum_{i=1}^{n/2} \left( \cos(\pi/n \cdot (i-1)) + \sin(\pi/n \cdot (i-1)) \right)} \]

実装isolator::{multi_shear_stiffness_reduction, multi_shear_strength_reduction} が算定します。

9.1.2 摩擦(すべり)支承

すべり支承の最大水平力を、クーロン摩擦則により次式で算定します(N は長期軸力、引張は 0)。

\[ Q_{max} = \mu \cdot N \]

実装isolator::friction_max_force が最大力を算定し、要素側では 2 次元摩擦として合力を Qmax に射影します(springs::isolator)。

9.1.3 鉛プラグ入り積層ゴム(LRB)統一型・歪依存

鉛プラグ入り積層ゴム(LRB)の剛性と切片荷重について、ひずみ γ への依存性と 20℃基準の温度換算を、製品技術資料の歪依存特性式(Category B)に基づいて算定します。

算定式

  • 剛性ひずみ依存係数 \( C_{Kd}(\gamma) \)(\( \gamma < 0.25:\ 0.779 \cdot \gamma^{-0.43} \)、\( 0.25 \le \gamma < 1.0:\ \gamma^{-0.25} \)、 \( 1.0 \le \gamma:\ \gamma^{-0.12} \)。第1分岐の指数は分岐点 \( \gamma = 0.25 \) での連続性から −0.43)
  • 切片荷重ひずみ依存係数 \( C_{Qd}(\gamma) \)(3 分岐)

温度換算:

\[ K_d(t) = K_{d20} \cdot \exp(-0.00271(t-20)) \]

\[ Q_d(t) = Q_{d20} \cdot \exp(-0.00879(t-20)) \]

等価水平剛性、等価粘性減衰:

\[ k_{eq} = Q_d/\delta + K_d \]

\[ H_{eq} = \frac{2}{\pi} \cdot \frac{Q_d \left( \delta - \frac{Q_d}{(\beta - 1) K_d} \right)}{k_{eq} \cdot \delta^2} \]

実装isolator::{lrb_stiffness_strain_factor, lrb_intercept_strain_factor, lrb_stiffness_at_temperature, equivalent_stiffness, equivalent_damping} が算定します。

9.1.4 転がり支承・球面すべり支承・高減衰ゴム

転がり支承、球面すべり支承、高減衰ゴムの各特性を、各製品の技術資料(ブリヂストン高減衰ゴム多項式ほか、Category B)に基づいて算定します。

算定式(代表)

転がり支承摩擦:

\[ \mu = \frac{1.2 + 7.8 \cdot P_v/P_o}{1000} \]

球面すべり支承 標準摩擦係数(MN型ほか):

\[ \mu_0 = 0.043(2.03\sigma^{-0.19} + 0.068) \]

速度依存:

\[ \mu = \mu_0(1 - 0.55 \cdot e^{-0.019|V|}) \]

  • 高減衰ゴム(ブリヂストン E6/E4): Geq・Heq・U のひずみ多項式

実装isolator::{rolling_bearing_friction, spherical_bearing_mu0_mn, spherical_bearing_mu_mn, hdr_bridgestone_e6, hdr_bridgestone_e4} が算定します。

9.1.5 支点への免震支承配置

支点(固定・ピン等で拘束された節点)へ免震支承材を配置すると、対象節点はもはや直接の 固定支点ではなく、免震支承材を介して支持される状態になります。この置き換えを次の手順で モデル化します。

  1. 対象節点と同一座標に、地盤に接地する節点(拘束=全自由度固定)を新規作成します。
  2. 接地節点と対象節点の間に、長さ 0 の免震支承材要素(節点順は「接地節点→対象節点」)を 追加します。長さ 0 の要素では、局所座標系の材軸(x 軸)を全体座標系の鉛直方向とみなします。
  3. 対象節点自身の拘束を解放します。免震支承材を介して支持されるため、対象節点はもはや 直接の固定支点ではありません。

免震支承材の水平・鉛直方向の力学特性は 9.1.1〜9.1.4 の各特性式によります。配置を取り消すと、 生成した接地節点・免震支承材要素を削除し、対象節点の拘束を元の状態へ戻します。

支点免震要素の撤去(単体削除)では、対象節点の拘束を常に固定へ戻します。 設置前の拘束(ピン等)は記録していないため復元しません。設置前と異なる拘束に戻したい場合は、撤去後に境界条件で再設定します。

実装squid_n_edit::node_member::PlaceSupportIsolator が配置を、 springs::isolator の零長要素特例が要素側の局所座標決定を行います。

9.2 制振ダンパー

制振ダンパーの復元力特性を、標準的な力学モデル(マクスウェル要素・弾塑性バイリニア)で算定します。

算定式

  • マクスウェル型(バネ Kd +粘性ダッシュポットの直列、後退 Euler)のダッシュポット力は次式によります。

\[ F_c = C_0 \cdot \mathrm{sign}(V) \cdot |V|^{\alpha} \]

オイルダンパーのバイパス弁による頭打ち特性(リリーフ)を扱う場合は、リリーフ速度 \( V_r \) とリリーフ後の減衰係数比 \( C_2/C_1 \)(\( C_1 = C_0 \cdot \alpha \cdot V_r^{\alpha-1} \)) を指定し、\( |V| > V_r \) の域を \( F_c = \mathrm{sign}(V) \cdot (C_0 \cdot V_r^{\alpha} + C_2 \cdot (|V|-V_r)) \) の折れ線(リリーフ点で力が連続、勾配が \( C_1 \to C_2 \) に低下)で近似します。 未指定の場合は全域で上式を用います。

  • 履歴型(弾塑性バイリニア、鋼材系/鉛/U形ダンパー)

制振ダンパーの諸元は、部材ごとに個別指定するほか、名前付きプリセット (Model::damper_defs)としてライブラリ化し、部材へは値をコピーして割り当てられます (プリセット自体を更新・削除しても、既に割り当て済みの部材の特性には影響しません)。

実装springs::damperMaxwellDamperElementHystereticDamperElement)が算定します。

9.3 座屈拘束ブレース(BRB)

座屈拘束ブレースの断面検定を、各製品の技術資料・大臣認定値(Category B)に基づいて算定します。 製品は JFE シビル二重鋼管座屈補剛ブレースおよび日鉄エンジニアリングアンボンドブレースを対象とし、メーカー許容値を直接使用します(座屈拘束により全断面降伏まで座屈しない製品特性のため、座屈考慮 fc は用いません)。

算定式

  • 軸力検定比 \( |N| / N_a \)(Na = 短期許容軸力、長期は /1.5
  • 座屈長さ検定比 \( L_k / \text{限界長さ} \)(\( L_k = \text{部材長} - 2 \cdot \text{端部低減} \))
  • 総合 \( \text{ratio} = \max(\text{軸力比}, \text{座屈長さ比}) \)

実装brbbrb.rs::brb_check)が算定します。

9.4 辻・山田モデル(座屈補剛ブレース履歴)

二重鋼管座屈補剛ブレース等で用いられる座屈拘束ブレースの履歴則(混合硬化)は、2.2.2 辻・山田モデルを参照してください。

10. 数量積算

本章では、建物モデルから部位別(柱・大梁・小梁・基礎梁・床・壁・ブレース)に コンクリート体積・型枠面積・鉄筋重量・鉄骨重量・鉄筋継手個所数を概算集計する 数量積算の算定根拠を、構造計算プログラムで慣用される概算数量の拾い出し規則として 示します。

構造計算モデルを唯一の入力とする概算数量であり、施工数量(鉄筋のフック・余長・ 継手長さ、開口補強筋、接合部プレート等の詳細)は対象外とします。

実装は squid_n_design_jp::quantity に置いており、 GUI は設計タブ「数量積算」(squid-n-app::quantity_view)、 CSV 出力は squid-n-app::summary::build_quantity_csv、 MCP ツールは quantity_takeoffsquid-n-mcp)から利用できます。

この章の内容

10.1 数量積算の算定式

建物モデルの部材・スラブ・壁から、部位別にコンクリート体積 [m³]・型枠面積 [m²]・ 鉄筋重量 [t]・鉄骨重量 [t]・鉄筋継手個所数を、構造計算プログラムで慣用される 概算数量の拾い出し規則により集計します。

各部位共通事項

  • 鉄筋(RC 造): フック・余長・重ね継手長さ・溶接継手長さは考慮しない。

  • 鉄骨(S 造): 鉄骨重量は次式による。

    \[ W = L \times A \times 7.85 \]

    ここで \(W\): 鉄骨重量 [t]、\(L\): 鋼材長さ [m]、\(A\): 鋼材断面積 [m²]、 7.85 t/m³: 鉄骨単位重量(積算の慣用値・固定値)。

    荷重計算(固定荷重・地震用重量)の鋼材単位体積重量 \( \gamma_s = 77\ \text{kN/m}^3 \) (質量換算 ≒7.8518 t/m³)とは分野別の慣用値として使い分けており、 両者には約 0.02% の系統差があります(仕様)。数量積算の重量はすべて 7.85 t/m³ によります。

  • SRC 造: コンクリート体積は内蔵鉄骨の体積を差し引かずに計算する。

鉄筋の長さ → 重量の換算は JIS G 3112 の単位質量(D10=0.560、D13=0.995、 D16=1.56、D19=2.25、D22=3.04、D25=3.98 kg/m …)によります。

部材の分類

モデルは部材の用途区分(柱・大梁・小梁)を明示的に持たないため、幾何条件で分類します。

部位判定
両端節点の水平距離が 1 mm 未満の線材(鉛直材)
基礎梁最下層レベル(全線材節点の最小標高 ±10 mm)にある水平梁で柱に取り付くもの
大梁柱が取り付く節点を端部に持つ水平梁
小梁柱に取り付かない水平梁、および二次部材の小梁(同じ両端を持つ実部材がある場合は線材側のみ)
床・片持ち床床領域の版(主架構が囲む領域は「床」、主架構に取り付く領域は「片持ち床」)
壁・シェル要素(3 節点以上)
ブレースElementKind::Brace

構造種別(RC/S/SRC/CFT)は2.5 構造種別の判定によります。 複合断面(SRC・CFT)は断面形状で、それ以外は材料の区分で決まります (剛域・仕口パネル・一次設計の検定器選択と同じ規則)。

柱長さ \(H\) は床上〜床上(=節点間距離。フェイス控除しません)とします。

  • コンクリート体積: \( D_x \times D_y \times H \)
  • 型枠面積: \( 2 \times (D_x + D_y) \times H \)(円形柱は \(\pi D H\))
  • 主筋: すべての柱で長さ \(H\) として算定します。X・Y 方向で鉄筋径が異なる場合も 隅の重なり合う部分は差し引きません(\(n = n_x + n_y\) 本)。
  • フープ: 一組の長さ \( n_x \times D_x + n_y \times D_y \)、 本数 \( H / \text{ピッチ} \)。一組の本数 \(n_x=n_y\) はせん断補強筋の 組数(ShearBar::legs)を用います。
  • 鉄筋継手: 柱頭・柱脚通しの主筋(=min(柱頭本数, 柱脚本数)。単一断面のため 全主筋本数)について階ごとに 1 個所、階高 7.0 m 以上は 7.0 m 毎にさらに 1 個所を加えます。
  • 鉄骨(S・SRC・CFT): 種類別(断面名別)に長さと重量 \(W = L A \times 7.85\) を 集計します。SRC は内蔵 H 形鉄骨の断面積 \( 2 B_f t_f + (H_s - 2 t_f) t_w \) を用います。CFT は鋼管重量に加えて 充填コンクリート体積(内空断面 × H)を計上します(型枠は不要)。

大梁

寸法は柱フェイス間の内法長さ \( L = L_{node} - \mathrm{face}_i - \mathrm{face}_j \) (RigidZone::face_*)によります。

  • コンクリート体積(ハンチなし): \( B \times D \times L \)

  • コンクリート体積(ハンチ付き): \[ B \times D \times L + \frac{(B+B_i)(D+D_i)}{4} L_i + \frac{(B+B_j)(D+D_j)}{4} L_j \] (ハンチ部は平均断面 × ハンチ長さで加算。ハンチ寸法は部材付帯情報 (ハンチ長 \(L_i\)・せい増分・幅増分。剛性には影響しない属性)から取得し、 ハンチ端の全幅 \(B_i = B + \Delta B\)・全せい \(D_i = D + \Delta D\) へ 換算して member::girder_concrete_volume で算定します。未入力の部材はハンチなし)

  • 型枠面積(両側スラブ厚が等しい場合): \[ \left( D' L + \frac{D_i-D}{2} L_i + \frac{D_j-D}{2} L_j \right) \times 2

    • B L + \frac{B_i-B}{2} L_i + \frac{B_j-B}{2} L_j \] 側面のせい \(D'\) はスラブの有無によりスラブ厚 \(t\) を控除します: 両側スラブ付は両面 \(D-t\)、片側スラブ付は片面 \(D\)・片面 \(D-t\)、 スラブなしは両面 \(D\)。スラブの隣接はスラブ境界辺と梁の節点対の一致で 判定します。ハンチ部の型枠は傾斜を無視し底面・側面への投影面積とします。
  • 主筋: 現状の部材モデルは全長 1 断面のため、1 断面(全断面)配筋の主筋長さで算定します。

    端部条件主筋 1 本の長さ
    外端 - 内端(タイプ 7)\( L_o + L_2 + D_c/2 \)
    両外端(タイプ 7a)\( L_o + L_2 \times 2 \)
    両内端(タイプ 8)\( L_o + D_c/2 \times 2 \)

    \(L_o\): 内法長さ、\(L_2\): 外端の定着長さ(既定 35d)、\(D_c/2\): 柱せいの 半分(フェイス距離)。端部が外端内端かは、当該節点から梁軸方向 (±45°)に連続する別の水平梁の有無で判定します。 2 断面・3 断面配筋(端部・中央の断面分割、カットオフ筋 +15d。タイプ 1〜6)は 部材が断面分割を持たないため対象外。

  • スターラップ: 一組の長さ \( 2 B + n D \)(\(n\): 一組の本数 = legs)、 本数 \( L_o / \text{ピッチ} \)。

  • 腹筋・幅止筋: 段数(入力値)がモデルにないため計上しません。

  • 鉄筋継手: 梁毎に主筋 1 本あたり 0.5 個所、梁長さ 5.0 m 以上は 5.0 m 毎に 0.5 個所を加えます(圧接個所数として集計)。

基礎梁

コンクリート・鉄筋・継手は大梁と同じですが、型枠は基礎梁用の式

\[ D' L + \frac{D_i-D}{2} L_i + \frac{D_j-D}{2} L_j + B L + (B_i-B) L_i + (B_j-B) L_j \]

(側面 1 面+底面。大梁と異なり側面の ×2 は付きません)によります。 \(D'\) はスラブ(2 重スラブ指定時の耐圧版を含む)が取り付く場合にスラブ厚を 控除したせいです。基礎フーチングはモデルに定義がないため対象外です。

小梁

  • コンクリート体積: \( B \times D \times L \)
  • 型枠面積: \( (B + 2 D) \times L \)
  • 鉄筋: 主筋重量 = 小梁コンクリート体積 × 0.8%、スターラップ重量 = 同 × 0.1% (鉄筋比 × 体積 × 鋼比重 7.85 t/m³ で重量化)

二次部材として配置した小梁・間柱は集計します。鉄骨は \( W = L A \times 7.85 \)、 RC・SRC の小梁は上表の体積・型枠、間柱は柱と同じ体積・型枠です。 同じ両端を持つ実部材の小梁があるときは線材側だけ数え、二次部材側では重複計上しません。 断面または材料が無い二次部材は集計しません。

床・片持ち床

  • 面積: 床板(スラブ)境界の多角形面積(Newell の公式)とし、床が配置されていない 部分は計算しません。
  • コンクリート体積: 面積 × 床厚としますが、デッキスラブのデッキ高さ控除は モデル未対応です。床厚は床ごとに割り当てた断面の板厚を用います (1.8 床の断面と自重)。断面が未割当の床は体積 0 と なりますが、その状態は解析前チェックがエラーで止めます。
  • 型枠面積: 面積
  • 鉄筋重量: 床コンクリート体積 × 1.0%(片持ち床・出隅も同率)

壁(耐震壁・フレーム内雑壁)

  • 寸法: 幅は柱内法距離、高さは梁内法高さ(4 節点壁は周辺柱梁の断面寸法の 半分を芯々寸法から控除。自重算定 wall_clear_area_factor と同じ規則)としたうえで、 開口部面積を控除します。開口は壁版(WallPlate)が持ち、数量拾いの直前に 組み立てる解析用壁要素の合成属性(WallAttr)経由で読みます。
  • コンクリート体積: 面積 × 壁厚
  • 型枠(壁枠)面積: 面積 × 2
  • 鉄筋: 横筋 \( (L + 2S) \times W \)、縦筋 \( (H + 2S) \times h \)。 \(S\): 定着長さ(35d)、\(W\)・\(h\): 本数。 モデルの壁配筋はせん断補強筋比 \(p_s\) のみ保持するため、本数 × 一本長さを 等価体積(横筋 \( p_s, t, H, (L+2S) \)、縦筋 \( p_s, t, L, (H+2S) \)、 仮定径 D10)に換算して算定します。開口部補強筋は考慮しません。

上記「壁」の数量は、解析要素になる壁版(条件は 4.5 壁エレメントモデル)だけが対象です。

解析要素にならない壁版(取り付く壁版〔パラペット・腰壁・垂れ壁・自立壁〕、 間柱で分割された壁版、壁領域の一部を占める腰壁・垂れ壁など)は、壁版から直接 (開口控除後の正味面積×壁厚)算定し、雑壁の区分へコンクリート体積・型枠面積を 計上します(配筋は考慮しません)。壁厚は断面から引くため、断面が割り当たっていない 壁版は数量に現れません。仕上げ・増打ちの面荷重は重さの入力であって厚さではないため、 コンクリート体積には含めません。この経路では周辺柱梁の 断面寸法の控除(内法化)を行わず、壁版の輪郭そのもの(芯々)で面積を求めます。 壁版は 取付き先や自由端を持ちうるため、四周の柱梁から内法を導く前提が成り立たないからです。 同じ壁でも、解析要素になる場合(内法)とならない場合(芯々)で数量がわずかに変わります。

ブレース

  • 長さ: 節点間距離 \( L_B = \sqrt{L^2 + H^2} \)
  • 各階・部材符号(断面名)毎に種類別の長さと重量 \( W = L_B \times A \times 7.85 \) を集計します。
  • 接合部のプレート・ボルト等は考慮しない。

算定係数の既定値(QuantityCfg

項目既定意味
anchorage_dia_factor35主筋・壁筋の定着長さ係数(L2・S = 係数 × 呼び径)
assumed_wall_bar_dia10 mm壁筋の仮定呼び径(壁は \( p_s \) のみ保持するため定着算定に使用)
joist_main_ratio0.8%小梁主筋の鉄筋比(コンクリート体積比)
joist_stirrup_ratio0.1%小梁スターラップの鉄筋比
slab_rebar_ratio1.0%床・片持ち床の鉄筋比

実装

  • 算定式(純関数): squid_n_design_jp::quantity::member
  • 鉄筋単位質量: squid_n_design_jp::quantity::rebar
  • モデル走査・集計: squid_n_design_jp::quantity::compute_quantity_takeoffQuantityCfg::default
  • GUI: squid-n-app 設計タブ「数量積算」(部位別・階別・明細・鉄骨種類別・ 鉄筋径別の切替、CSV エクスポート)
  • CSV: squid_n_app::summary::build_quantity_csv(レポート CSV にも [数量積算 *] セクションとして常時出力)
  • MCP: quantity_takeoff ツール(group_by = category / story / steel / rebar / detail