階への複製
階への複製は、ある階で決めた断面・荷重・床割り・二次部材を、ほかの階へまとめて配る機能です。 右ドックの「① 準備計算」パネルにある「階の定義」で、各行の ⧉ ボタンから開きます。
実務では下の階で断面と床を決め、上の階へ同じ設定を配ってから階ごとに差分を直すという進め方を とりますので、その「配る」操作をひとまとめにしたものです。
本節では、複製が何を意味するのか、どう突き合わせるのか、何が作られて何が消えるのかを 紹介します。
複製の意味
複製は複製元の状態をそのまま写します。複製元に「無い」という状態も写すため、複製元で 断面が未割当の部材、床が無い位置、荷重が載っていない部材については、複製先の断面が外れ、 床が削除され、荷重が取り除かれます。
この振る舞いは「既存を上書きする」で切り替えます。
| 既存を上書きする | 複製先で起きること |
|---|---|
| ON(既定) | 複製元の状態をそのまま写す。複製元に無いものは解除・削除する |
| OFF | 複製先が空いているところにだけ入れる。既存には触れず、削除もしない |
どちらの設定でも、同じ複製を 2 回実行した結果は 1 回のときと同じです。足すだけの動きにすると 2 回目で荷重が二重になり、見た目では気づけないまま重い設計になってしまうためです。
対象の選択
複製元の階を 1 つ、複製先の階を 1 つ以上選びますので、2 階で決めた設定を 3 階・4 階・5 階へ 一度に配れます。 複製元へ配る意味はないため、複製元の階は複製先として選べないようにしています。
複製する対象は次の 4 つで、いずれも既定は OFF です。複製は削除・解除も行うため、何を配るかは 利用者が必ず選ぶ形にしています。1 つも選んでいない状態では実行ボタンを押せません。
| 対象 | 内容 |
|---|---|
| 断面の割当 | 部材・床・二次部材の断面。複製先の階名で断面を複製してから割り当てる |
| 荷重 | 手入力の節点荷重・部材荷重と、床の面荷重・用途 |
| 床 | 床の境界の形 |
| 二次部材 | 小梁・間柱 |
階の判定と対応付け
階に属するかどうかは、材端節点のうちもっとも高い節点の所属階で判定します。
Squid-n の階は床基準なので、階 2F に属するのは 1FL→2FL の柱と、2FL の大梁・床になります。
判定の情報源を 1 つに保つため、複製だけ別の規則は持ちません。
節点の所属階は準備計算が付けるため、準備計算を実行していないモデルでは複製する相手を 1 つも見つけられません。その状態ではダイアログが警告を出しますので、先に準備計算を実行して ください。
複製元と複製先の突き合わせは、平面位置と階の中での高さで行います。材端・頂点それぞれに ついて、XY 座標が許容差 1 mm 以内かを見たうえで、その節点が階の中のどの高さにあるか (直下階のレベル・当該階のレベル・そのあいだ)をあわせて見ます。節点 ID では対応が取れない (階ごとに別の節点である)ため、座標で突き合わせるほかありません。
高さを見るのは、平面へ投影すると重なる部材を区別するためです。1FL→2FL のブレースと 2FL の 大梁はどちらも材端の XY が同じで、同じ構面の X ブレース 2 本も互いに区別できません。高さを 足すと、大梁は両端が当該階のレベル、ブレースは直下階と当該階になり、X ブレースは XY との 組み合わせが入れ替わるため区別できます。高さは階高に対する比で持つので、階高の違う階へも 対応が取れます。
それでも同じキーになる相手が 2 つ以上ある場合は、どちらを選ぶべきか決められないため配りません。 飛ばした件数は実行結果に出します。並び順しだいでどちらかが選ばれると、結果を予測できないためです。
複製先に相手が見つからなかった分も同じく配らず、飛ばした件数を実行結果に出します。
複製元の平面の外には手を触れない
手を触れるのは、複製元に対応する相手が見つかったものだけです。 複製元の平面の外にある 複製先の部材・床・二次部材・荷重には、上書きが ON でも触れません。
セットバックや張り出しのある建物を考えると、この線引きが効いてきます。3 階が 2 階より広い 建物で 2 階から 3 階へ床を複製した場合、2 階の平面の外にある 3 階の床は残ります。複製元に 「無い」のではなく、複製元の範囲の外にあるだけだからです。ここを区別しないと、利用者から見て 複製元と関係のない場所が消えることになります。
部材と節点は作らない
複製は部材と節点を作りません。架構そのものは架構作成ウィザードか手作業で先に用意されて いる前提で、この機能の役目は断面・荷重・床割りを配ることだからです。
床と二次部材だけは、必要な節点がそろっていれば新しく作ります。複製元にしかない床を配れないと、 床割りを配るという目的そのものが果たせなくなるためです。 囲まれた床板は版の有無ごと写します。複製元に版がなければ、複製先も版なし(断面未割当)で作ります。 取り付く床板(片持ち・バルコニー等)は複製しません。自由端に節点が無く、取付き先の節点だけでは 同じ形を復元できないためです。飛ばした件数は実行結果に出ます。
断面の複製
断面の識別は符号+階です(断面の符号と階)。そのため断面を配る
ときは、複製先の階名を持つ断面を新しく作ってから割り当てます。符号は変えないため、
C1 (2F) を 3F へ配ると C1 (3F) ができます。
床と二次部材の断面も同じ規則で読み替えます。3F の床が 2F の断面を指したままにならないよう、 複製で床を作るときも複製先の階名の断面へ結び直します。すでにある床・二次部材の断面をそろえるのは 「断面の割当」が受け持ちます。
すでに同じ符号+階の断面がある場合は、寸法が違ってもそれを使い、中身は書き換えません。
断面はどの階の部材からでも参照できるため、中身を書き換えると複製の対象範囲の外にある部材まで
一斉に変わってしまうからです。上階ほど柱を細くするのは普通の設計で、C1 (2F) と C1 (3F) の
寸法が違うのは符号+階という識別の設計意図そのものでもあります。
寸法・材料が複製元と違う既存断面を使う場合は、実行前の見込みでその符号+階を名指しします。 そろえたい場合は断面タブで直してください。
新しく作ることになる断面も、実行前に符号+階の一覧で確かめられます。
荷重の複製
複製するのは手入力の荷重だけです。準備計算・荷重同期が作る荷重は同期のたびに全件が 作り直されるため、複製しても次の同期で消えてしまいます。
床の面荷重と用途も「荷重」の対象で、床の境界の形は「床」の対象として分けてあるため、形だけを 配って荷重を配らない、あるいはその逆の使い方もできます。
載荷位置は材長へ合わせる
部材荷重の載荷位置は、i 端からの mm で持つ絶対位置です。同じ平面位置で突き合わせるので大梁の 材長は一致しますが、柱は階高が違えば材長も違います。そのまま写すと載荷区間が材長を超え、 等価節点力の積分が材の外まで及んで結果が誤るため、次のように扱います。
| 荷重 | 複製先での扱い |
|---|---|
全長載荷(a = 0・b = 材長) | 複製先の材長へ合わせる |
| 部分載荷・中間集中荷重 | 位置をそのまま写す |
| 複製先の材長に収まらないもの | 配らない(件数を実行結果に出す) |
外壁荷重のような全長等分布は「材長いっぱい」という意図が明確なので合わせます。一方、i 端から 2 m の位置に載る設備荷重のような部分載荷は絶対位置に意味があるため、材長比で按分すると 利用者の意図から外れます。収まらないものを縮めると区間長が黙って変わるので配りません。
なお載荷区間が材長を超える部材荷重は、複製に限らず荷重を入れたあとに節点を動かしても作れます。 モデル整合性チェックがエラーとして挙げ、 解析前チェックが解析を止めます。
実行前の見込み
実行ボタンの上には、複製したときの見込みを表示します。これはモデルを変えずに複製を一度試した 結果なので、断面が何枚増えるのか、荷重が何件載せ替わるのか、相手が見つからず飛ばされるのが 何件なのかを、実行する前にそのまま確かめられます。
削除・解除を含む場合は、その旨を強調して示します。 複製は影響が広いため、見込みを確かめて から実行してください。配れるものが 1 つもない組み合わせでは、実行ボタンを押せないように しています。
取り消し
複製は undo 1 回でまとめて元へ戻せます。削除した床も、解除した断面も戻ります。断面の追加・ 床の追加削除・荷重の載せ替えが絡み合い、個別の逆操作を組むと順序の取り違えで壊れやすいため、 逆操作はモデル全体の復元としています。