モデル化の表示
表示モード「モデル化」では、各部材が解析上どの要素モデルで扱われるかを色と 記号で可視化します。形状は同じでも解析種別によって部材のモデル化(要素の 定式化)が変わるため、意図どおりのモデル化になっているか(耐震壁の側柱が面内 両端ピンか、剛床上の梁が材端集中塑性で軸力変動する柱がファイバーか、など)を 視覚的に確認する用途です。着色は要素生成と同じ判定に基づくため、実際に解析へ 渡る要素種別と一致します。
解析種別の切り替え
ツールバーの「解析種別:」で、可視化するモデル化を切り替えます。
- 静解析(弾性): 線形静解析は断面の降伏を考えないため、部材は原則すべて 弾性でモデル化される。
- 増分解析(弾塑性): 断面の降伏を考慮するため、軸力変動する部材はファイバー 要素、剛床上で軸力変動が小さい梁は材端集中塑性(材端回転ばね)としてモデル化 される。フォースレジームの自動判定は、剛床に所属する非鉛直材(梁)を材端集中 塑性、それ以外をファイバーへ振り分ける (4.9 非線形梁要素のモデル化、 5.7 増分解析(プッシュオーバー解析))。
耐震壁の側柱(面内両端ピン)は要素のトポロジに由来する解放のため、解析種別に 依らず常に側柱として表示されます (4.5 壁エレメントモデル)。
部材の着色
部材は解析モデル分類ごとの色で描きます。
- 弾性材(グレー): 断面の降伏を考慮しない弾性材。静解析の全部材、増分解析の 弾性梁など。
- 材端集中塑性(緑): 材端回転ばねで塑性化を表す。剛床上で軸力変動が小さい梁の モデル化。
- ファイバー(分布塑性)(オレンジ): 積分点断面のファイバー分割で軸-曲げ連成を 表す分布塑性モデル。軸力変動する柱などのモデル化。
- 側柱(面内両端ピン)(紫): 耐震壁の側柱。面内曲げ面のみ両端ピンとし、面外・ 軸・ねじりは通常の柱と同じ剛性を持つ。
- 壁エレメント(青): 耐震壁の壁エレメント置換モデル。後述の「エ」状で描く。
- 雑壁(暖色): 耐震壁不成立(上下辺が大梁で囲まれていない、RC 壁の板厚不足・ 開口過大・耐震スリット等)で、剛性を周辺の柱・梁へ算入するフレーム内雑壁 (4.5 壁エレメントモデル)。 破線輪郭の半透明ポリゴンで、独立した構造壁エレメントでないことを示す。 解析要素になった壁版か否かを問わず、剛性算入の対象になっている壁版をすべて描く。
- 荷重のみ(ウォームグレー): 解析要素にもならず、周辺部材への剛性算入もされない 壁版。自重だけが荷重へ流れる。雑壁と同じく破線輪郭の半透明ポリゴンで描く。 該当するのは、板厚を引けない壁版(断面未割当、または板厚のない断面)、床領域に 取り付く自立壁(周辺の柱・梁に取り付いておらず剛性を渡す相手がいない)、取付き線が 梁の全長を覆わない取り付く壁版、境界が 4 節点でない囲まれた壁版である (4.1 ティモシェンコ梁要素)。
- パネルゾーン(藍): 柱梁接合部パネル(後述)。
- トラス/軸材(ティール): 軸剛性のみのブレースなど。
- その他(淡いグレー): バネ・免震・ダンパー・シェルなど。
剛域の表示
部材端に剛域(接合部の有限寸法。可とう長 \( L' = L - \lambda_i - \lambda_j \))が設定 されている場合、その剛域長の区間を材端のバーで描きます (4.1 ティモシェンコ梁要素)。 部材色の基準線は可とう区間(剛域を除いた中央部分)に描きます。剛域長はモデルに保持 された値(自動算定は解析実行時に反映、手動指定はそのまま)を表示します。
バーは、弾性材の細いグレー線と混同しないよう、ハッチング入りのブロック (材軸に沿った矩形の輪郭+内部の斜めハッチ)として描きます。線材とは図形の種類が 異なるため、色や太さの違いに頼らずに区別できます。矩形の両端のキャップがそのまま 剛域フェイスの位置を示します。
剛域はすべての線材モデル(弾性材・材端集中塑性・ファイバー・MS)で同じ扱い (可撓長で要素を組み、可撓端を剛体アームで節点自由度へ写す)のため、表示も分類に よらず共通です。
塑性化位置・ファイバー断面の表示
塑性化のモデル化を、その設定位置に応じて記号で示します。
- 材端塑性ヒンジ(●): 材端集中塑性(材端回転ばね)の部材は、塑性ヒンジが集中 する材端(剛域があればそのフェイス)に塗り円を描く。ピン・半剛の端部にはヒンジを 描かない(回転が解放されヒンジが生じないため)。
- ファイバー断面(材軸直交の短バー+3 点): ファイバー要素・MS 要素は、可撓部の 材端の積分点 \( \xi = \mp 1 \) に配置した断面のファイバー(MS では軸ばね群)だけが 塑性化を担う。その位置=**可撓部の両端(剛域があればその剛域フェイス)**に断面 記号を描く (4.9 非線形梁要素のモデル化)。 記号は剛域ブロックや他部材の記号と重ならないよう材軸方向へわずかに内側へ寄せて 描く。
- 塑性化域 \( L_p \)(太線)/中央弾性(細線): 端部積分点の積分重みに対応する 区間(可撓部の材端から \( L_p \))を部材色の太線で、弾性のままの中央部 \( [L_p,, L'-L_p] \) を弾性色の細線で描く。\( L_p \) は部材の指定値、未指定なら断面せいの 0.5 倍(要素生成の既定と同じ)で、可撓長 \( L' \) の 45% にクランプした値を用いる。
端部接合条件の記号
線材の端部の接合条件を記号で重ねて表示します。記号は材端(剛域がある場合は剛域 フェイス)に描きます。
- ○(端部ピン): 回転自由(
Pinned)の端部。耐震壁の側柱は面内両端ピンの ため両端に描く。 - □(端部半剛): 回転ばね(
SemiRigid)の端部。
壁エレメントの「エ」状表示
耐震壁(壁エレメント成立)は、壁エレメント置換モデルの構成 (4.5 壁エレメントモデル)を 反映した「エ」状で描きます。
- 壁柱(中央の鉛直線・青): 上下剛梁の中点を結ぶ仮想中央柱。
- 上下の剛梁(ハッチ入りブロック): 四隅節点の並進を壁柱端へ写す剛体リンク。 剛域と同じ図形で描く。
- 引出線(細い破線): 剛梁の端と壁の四隅節点のつながり。
- 剛梁端のピン(○): 壁エレメントは四隅節点の回転自由度に剛性を与えないため、 剛梁の両端に○を描く。
剛梁は実要素ではなく、四隅節点の並進を壁柱端の並進・回転へ写す拘束です。壁の上辺・ 下辺には実部材である付帯梁(後述)が同じ位置にあるため、剛梁を辺の上にそのまま描くと 付帯梁が剛梁でその端部がピンであるかのように読めてしまいます。そこで剛梁は四辺とも 壁の内側へ寄せて描き、剛梁の端と四隅節点は破線の引出線でつなぎます。寄せる量は、 ズームに依らず見た目が一定になるよう画面上の距離(px)で決め、壁高さの 15% を上限とします。
自動でピンになるのは側柱であって、付帯梁ではありません。付帯梁は剛接のまま、断面性能に 倍率が乗った剛性で解析へ入ります。
壁エレメントの幾何を取れない壁は半透明ポリゴンにフォールバックします。
増分解析での降伏機構
壁エレメントの降伏機構は 2 つあり、増分解析(弾塑性)ではその両方を描きます。
- 軸・曲げ: 壁柱の材端 \( \xi = \mp 1 \) に置いたファイバー断面が担う。端部 \( L_p \) の 区間をファイバー色の太線と断面記号で、中央の弾性区間を壁エレメント色の細線で描く。 \( L_p \) は壁長の 0.5 倍(壁高さの 45% にクランプ)で、断面せいの 0.5 倍を基準とする 柱・梁とは基準が異なる。
- 面内せん断: 壁柱に沿わせたジグザグ(せん断ばね)で描く。終局せん断強度 \( Q_u \) で 頭打ちにする弾完全塑性のばねで、増分解析かつ \( Q_u \) を算定できる壁にのみ描く。
面内せん断の判定量は、要素が伝達する面内水平力 \( Q = \boldsymbol{p}^{T} \boldsymbol{f} \) という 1 つのスカラーです。上辺の剛梁は中間荷重を持たない剛体リンクのため、釣合いから \( Q \) は 壁柱の面内せん断力に等しく、壁柱にも中間荷重がないためこの値は材長方向に一定になります。 特定の断面の応力で判定する量ではないので、材端に記号を置かず材軸に沿わせて「壁柱が全長で 持つ性質」として描いています。
ファイバー化されるのは、耐震壁が成立し、\( Q_u \) を算定でき、コンクリート強度 \( F_c \) と 壁厚が得られる壁だけです。この条件を満たさない壁の壁柱は弾性のまま描かれます。
壁の付帯梁の表示
耐震壁の上下大梁(付帯梁)は、通常の大梁に倍率を乗じた剛性で解析へ入ります (4.5 壁エレメントモデル)。剛梁では ないため部材線そのものは分類色(弾性材・ファイバー等)のまま保ち、壁エレメント色の細い 平行線を脇に添えて付帯梁であることを示します。ホバーのツールチップにも「壁の付帯梁 (上下大梁。剛性に倍率)」と表示します。
倍率の値は剛性計算条件で変わるため図には出しません。図が示すのは「この梁がモデル化上 壁の付帯梁として認識されている」ことで、実際に乗った倍率は準備計算タブの 「部材剛性」で確認できます(部材剛性)。
仕口パネルの表示
仕口パネル(柱梁接合部パネル)がモデル化されている場合、接合部が占める領域を四角形で 描きます(4.6 仕口パネル(柱梁接合部パネル))。 四角形は幅が柱せい、高さが梁せいで、梁が取り付く構面ごとに描かれます。
同じ区間には部材側の剛域ブロック(ハッチ)も重なって描かれます。パネル分の オフセットが部材の剛域長に含まれるためで、二重に描いているわけではありません。両者は 別のことを示します。
| 図形 | 示すもの |
|---|---|
| 四角形(藍の半透明) | この接合部にせん断変形角の自由度を持つパネル要素がある |
| ハッチ入りブロック | その部材のこの区間が剛体アームである |
材端の記号(塑性ヒンジ・ファイバー断面・ピン)は可とう区間の端、すなわち四角形の辺の 位置に描かれます。部材の可撓部がどこから始まるかを図で確認できます。
断面が求まらない接合部(柱・梁の断面が未割当など)は四角形を描けないため、接合部中心の ひし形マーカーで位置だけを示します。
仕口パネルは既定で S 造(CFT を除く)の柱梁接合部に設けられます。RC/SRC の柱や梁が 1 本でも取り付く接合部は対象外です。設けるかどうかは準備計算パネルの「部材のモデル化」で 切り替えられ、生成されたパネルの寸法・剛性は準備計算タブの「仕口パネル」で 確認できます。
凡例とホバー詳細
ビュー左上に、現在の解析種別と、モデルに現れた分類の色凡例・記号凡例(剛域と壁エレメント の剛梁・剛梁の引出線・壁の付帯梁・壁の面内せん断ばね・ピン・半剛・材端塑性ヒンジ・ ファイバー断面・塑性化域 \( L_p \) のうち実際に現れたもの)を表示します(支持条件の凡例は 左下のため重なりません)。部材の近く(8 px の許容距離)へポインタを重ねると、その部材の 解析モデル分類・端条件(i 端/j 端が剛・ピン・半剛)・剛域長・ファイバー断面の位置と 塑性化域 \( L_p \)(可撓長 \( L' \) 基準)をツールチップで表示します。
壁エレメントにポインタを重ねた場合は、壁長 \( l_w \)・壁高 \( h \) を表示します。増分解析 ではこれに加えて、壁柱の塑性化域 \( L_p \) と面内せん断の終局強度 \( Q_u \) を表示します。 ファイバー断面を組めない壁・\( Q_u \) を算定できない壁では、その機構が弾性であることを 表示します。どちらの機構で降伏するのかを個別に確認できます。
梁のねじり剛性を期待しない既定モデル化(i 端ねじれ解放。 4.1.3a)が適用されている 部材では、ツールチップに「ねじれ: i 端ピン(部材全長で Mx=0)」を併記します。 適用されない部材(柱・ブレース、および解放するとねじれ回転が拘束されない節点を 持つ梁)には表示されないため、どの梁に適用されているかを個別に確認できます。