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4.9 非線形梁要素のモデル化(材端集中・ファイバー・MS)

非線形解析(プッシュオーバー・時刻歴応答)では、線形の弾性ティモシェンコ梁(4.1)に代えて、部材の弾塑性挙動を表す 3 種類の梁要素モデルを用います。材端集中ばねモデルは弾性ティモシェンコ梁を土台とし、ファイバー・MS モデルは Timoshenko 適合内挿(φ 依存形状関数、4.9.2)によりせん断変形を曲げと直列に合成します(弾性状態では弾性ティモシェンコ梁と厳密一致)。

モデル化塑性化の表現N–M 相関実装
材端集中ばね部材端の回転ばね(M–θ 履歴則)降伏モーメント低減式frame/concentrated
ファイバー積分点断面のファイバー分割(平面保持)断面積分で自然に表現frame/fiber
マルチスプリング(MS)端部塑性化域を軸ばね群に置換軸ばね合力で自然に表現frame/multi_spring

各項目は「導入文(何を・どの基準で)、算定式、実装」の順で記します。

4.9.1 材端集中ばねモデル

弾性ティモシェンコ梁の両端に**回転ばね(M–θ 履歴則、2.2 節)**を直列接続し、塑性化を材端の集中回転に代表させます(構造動力学で標準的な集中ばね(one-component / two-component)モデル)。

算定式

  • 回転ばねは強軸曲げ面(要素局所系の \( r_z \) まわり。要素局所 y 軸=断面のせい方向とする規約による)に入れます。一軸曲げ(ForceRegime::UniaxialBendingShear)のモデルであり、骨格の降伏モーメント(強軸 \( Z_p \sigma_y \))・初期剛性 \( 6EI/l \)(\( I \) は強軸)も強軸で与えます。
  • 要素剛性は、可撓長(部材長から剛域を除いた長さ)で組んだ弾性ティモシェンコ梁に、端部条件(ピン・半剛)と材端回転ばねを直列に静縮約し、最後に剛域変換で節点自由度へ移して得ます(弾性梁 4.1 と同じ土台)。ばねは直列のため接合部ばねと塑性ばねの順序は結果に影響しません。
  • ばねの変形量は相対回転 \( \gamma_k = \theta_{n,k} - \theta_{b,k} \)(節点回転 − 可撓端回転)とし、履歴則 \( M_s(\gamma) \) を適用します。可撓端回転 \( \theta_b \) は内部自由度として保持し、各トライアルで両端の内部釣合い

\[ R_k = \bigl[K_{\text{flex}},\hat{\boldsymbol u}\bigr]{d_k} - M{s,k}(\gamma_k) = 0 \]

(\( d_k \) は材端回転自由度の番号、\( \hat{\boldsymbol u} \) は回転スロットを \( \theta_b \) で置き換えた可撓端変位)を要素内 Newton 反復(2 自由度連成)で解きます。履歴則は区分線形のため通常数回で収束します。固定端(節点回転 0)でも可撓部端モーメントが降伏モーメントへ達すればばねが塑性回転し、柱脚ヒンジが形成されます。

  • 復元力は弾性可撓部の \( K_{\text{flex}},\hat{\boldsymbol u} \) とばねの履歴モーメント \( M_s(\gamma) \) から経路整合に評価します(節点の回転自由度にはばねを介してモーメントが伝わるため、回転スロットはばね側の履歴力で置き換えます。内部釣合いの解では両者は一致します)。接線剛性はばねの接線 \( k_t(\gamma) \) を直列に静縮約した \( K^{*} \) を用います。
  • 履歴則は部材個別指定(増分用・時刻歴用の 2 系統、2.2.0)→ 構造種別ごとの既定表で解決します。RC/SRC/CFT 梁は武田型トリリニア、S 梁は**標準型(kinematic バイリニア)**を材端ばねに用います(増分・時刻歴共通の既定)。
  • 軸-曲げ相互作用(N–M 相関)は、現在軸力 \( N \) に応じて回転ばねの降伏モーメントを

\[ M_{\text{lim}} = M_{y0} \cdot \left(1 - \frac{|N|}{N_{\text{allow}}}\right) \]

で更新します(下限 \( 0.02 \cdot M_{y0} \))。この相関はバイリニア(標準型)にのみ適用し、武田型等の骨格固定の履歴材料は対象外とします。

実装squid_n_element::frame::concentratedconcentrated/mod.rs::ConcentratedSpringBeam)が算定します。 履歴則の解決は factory::resolve_member_hysteresis、材端ばねの構築は factory::build_flexural_springs、N–M 相関の有効化は ConcentratedSpringBeam::with_mn_interaction によります。

4.9.2 ファイバーモデル

積分点(ガウス点)の断面を多数のファイバーに分割し、平面保持仮定のもとで各ファイバーが独立した履歴状態を持つ一軸材料として応答することで(構造力学のファイバーモデル)、軸力と曲げの連成(N–M 相関)を断面積分から自然に得ます。断面応答(M–φ 積分)の詳細は 3.7 節を参照してください。

算定式

  • 非線形解析で構築するファイバー要素は塑性化域考慮モデルとし、「全可撓長の弾性梁 \( K_{el} \)端部の塑性増分ヒンジ」の直列モデルとして解きます。基準長は可撓長 \( L' \) です(剛域があれば節点間長から剛域長を除いた長さ。4.9.5)。塑性化域長 \( L_p \) は部材の指定値、未指定なら断面せいの 0.5 倍(MS モデルと共通の既定。4.9.3)とし、可撓長の 45% までにクランプします。したがって塑性化を担うファイバー断面は可撓部両端の 2 断面(\( \xi = \mp 1 \)、すなわち可撓部の材端=剛域があればその剛域フェイス。4.9.5)であり、その断面の状態のみを追跡します。
  • 弾性梁 \( K_{el} \): \( B(\xi)^{\mathsf T},\mathrm{diag}(EA, EI_y, EI_z),B(\xi) \) を 2 点ガウス(\( \xi = \mp 1/\sqrt{3} \))で厳密積分し、一定せん断ひずみ場(後述)と Saint-Venant ねじり剛性を加算して組み立てます(\( EA, EI_y, EI_z \) は公称断面諸元)。弾性状態(ヒンジ回転 \( \gamma = 0 \))の要素剛性はこの \( K_{el} \) に厳密一致し、弾性ティモシェンコ梁(4.1)の剛性と一致します。
  • 塑性増分ヒンジ: 可撓部両端のファイバー断面(\( \xi = \mp 1 \)、両端×2 軸(\( \kappa_y, \kappa_z \))で最大 4 自由度)の曲率 \( \kappa \) を内部未知数とし、各トライアルで両端の内部平衡

\[ m_B = D_{\text{nom}} \cdot B(\xi_{\text{end}}) \cdot \hat{\boldsymbol u} = m_{\text{sec}}(\varepsilon_0, \kappa) \]

(\( D_{\text{nom}} = \mathrm{diag}(EA, EI_y, EI_z) \) は公称断面諸元、\( m_{\text{sec}} \) は端部断面のファイバー積分によるモーメント)を、要素内 Newton 反復(整合接線を用いた区分線形問題のため通常数回で収束)で解きます。

  • ヒンジ回転(節点回転と可撓端回転の差)は、断面の弾性線を超える塑性超過分のみを持ちます。

\[ \gamma = s \cdot L_p \cdot \left( \kappa - \frac{m_{\text{sec}}(\kappa)}{EI_{\text{sec}}} \right) \]

(\( s \) は端の向き: i 端 +1・j 端 −1)。弾性では \( \gamma = 0 \) となり、\( EI_{\text{sec}} \)(端部ファイバー断面の弾性曲げ剛性。ファイバー離散化後の値)による弾性整合が成立します。

  • 可撓端変位 \( \hat{\boldsymbol u} \) は、有効端(剛接端)の回転スロットを可撓端回転 \( \theta_b = \theta_n - \gamma \)(\( \theta_n \) は節点回転側の値)で置き換えた変位です。復元力は \( \boldsymbol f = K_{el},\hat{\boldsymbol u} \) から履歴に整合して評価します。

  • 整合接線は

\[ K^{*} = K_{el} - \bigl(K_{el}[:,\text{slots}]\cdot G\bigr)\cdot J^{-1}\cdot(D\cdot B\text{行}) \]

(\( G = \partial \theta_b/\partial \kappa \) はヒンジ回転の曲率感度、\( J \) は内部平衡のヤコビアン)です。内部変数(\( \kappa \))消去による整合接線は一般に非対称になり得るため、対称ソルバ(Cholesky)前提の全体組立に合わせて対称化して用います(復元力は消去前の厳密値のため収束解は変わりません)。

  • 軸ひずみ \( \varepsilon_0 = (\hat{\boldsymbol u} \text{ の軸方向差})/L' \) は弾性のまま断面へ渡します(軸方向の塑性変形は考慮しません)。断面はこの \( \varepsilon_0 \) と曲率 \( \kappa \) から各ファイバーのひずみを決めて積分するため、軸力と曲げの連成(N–M 相関)は断面のファイバー積分で自然に考慮されます。

  • ヒンジは剛接端(EndCondition::Fixed)のみ有効です。ピン・半剛端は材端解放(4.9.6)の内部自由度で扱い、塑性ヒンジは形成しません。

  • 塑性化域を設けない全長ファイバー積分モデル(2 点ガウス積分、\( \xi = \mp 1/\sqrt{3} \)、重み 1)も要素として構築できますが、非線形解析の要素生成では用いません。

  • ファイバーは断面形状どおりの領域に配置します(MN 相関曲面と同じ配置規則を共用)。H 形はフランジ+ウェブ、角形鋼管・鋼管は管壁のみ、CFT は管壁+充填コンクリート、RC 円形は円形領域、SRC はコンクリート+主筋+内蔵鉄骨に配置するため、中空・薄肉断面の断面積・剛性・耐力が正しく表現されます。非対称断面(山形・溝形・T 形等)は断面積重心へ座標補正します。

  • RC 断面はコンクリートファイバー格子に加え、主筋を点ファイバー(Menegotto–Pinto 鋼材)として分離配置します。主筋点の縁からの距離・多段間隔は断面検定の有効せいと同じ rc_rebar_geom 規約です(3.7 ファイバー断面)。コンクリートは \( f_c \le 60 \) で NewRC 構成則、超過で放物線モデルを用います。鋼材領域(形鋼・鋼管・内蔵鉄骨)・主筋はいずれも Menegotto–Pinto モデル(降伏後剛性比 \( b = 0.01 \))です。

ファイバー材料の既定値と強度の解決順

ファイバー断面の各領域には、次の既定の構成則・パラメータを割り当てます。 強度は表の解決順で決め、解決できないモデルは非線形解析の入力チェックが解析前に エラーで停止します(弾性で代替しません。ファイバー断面は降伏・ひび割れの進展を 追うことが目的のため、弾性代替は耐力の過大評価=危険側になります)。

領域構成則(既定)弾性係数強度の解決順
コンクリート\( f_c \le 60 \): NewRC(2.1.4、\( \gamma = 2.4 \))
\( f_c > 60 \): 放物線モデル(2.1.3、\( \varepsilon_{c0} = -0.002,\ \varepsilon_{cu} = -0.0035 \)、テンションスティフニング 0.5、残留比 0)
構成則から算定断面の主材料の \( F_c \)(未設定はエラー)
主筋Menegotto–Pinto(2.1.2、既定パラメータ)\( E = 205000 \) N/mm²(固定)断面の主筋材料の \( f_y \)(未割当・\( f_y \) 未設定はエラー)
鋼材(形鋼・鋼管・内蔵鉄骨・CFT 管壁)Menegotto–Pinto(2.1.2、既定パラメータ)断面の主材料の \( E \)SRC: 断面の内蔵鉄骨材料の名称から引く F 値(フランジ厚の板厚区分を考慮)→ 断面の主材料の \( f_y \)
その他の形状: 断面の主材料の \( f_y \)(いずれもなければエラー)
  • 引張強度は両コンクリート構成則とも既定 \( f_t = 2.0 \) N/mm² とします。
  • コンクリートの除荷則は部材ごとに増分用・時刻歴用を選択できます(2.2.0)。 自動(未指定)の既定は、増分解析=逆行型、時刻歴応答解析=Karsan–Jirsa 型 (Yassin 1994、2.1.6)です。原点指向型も選択できます。放物線モデル (\( f_c > 60 \))は逆行型に対応しないため、逆行型指定でも原点指向型で 評価します。
  • Karsan–Jirsa 型を用いる場合の骨格・引張の既定は次のとおりです: \( f_c \le 60 \) は NewRC 骨格(終局ひずみ \( \varepsilon_{cu} = 0.01 \)、 超過は \( \varepsilon_{cu} \) の曲線値を残留として保持)、\( f_c > 60 \) は 修正 Kent–Park 骨格(\( \varepsilon_{c0} = 0.002,\ \varepsilon_{cu} = 0.0035 \)、 残留 0=放物線モデルと同一)。引張は \( f_t = 2.0 \) N/mm²、 軟化勾配 \( E_{ts} = E_0/10 \)(\( E_0 \) は初期接線剛性)です。
  • Menegotto–Pinto の既定パラメータは \( b = 0.01,\ R_0 = 20,\ a_1 = 18.5,\ a_2 = 0.15,\ a_3 = 0 \)(等方硬化なし)\( ,\ a_4 = 1 \) です(2.1.2)。
  • 材料強度の割増は保有水平耐力計算(材料強度基準)でのみ適用し、鋼材文脈・RC 主筋文脈それぞれの材料グレード別割増係数を強度に乗じます。時刻歴応答解析等は割増なし(1.0)です。

ファイバー分割の既定

  • 断面形状がある場合: 目標ファイバ寸法 = 断面最大寸法 / 16(下限 1 mm)。円形・円環断面は周方向 24 分割、径方向は薄肉 2 分割・中実 8 分割。
  • 断面形状がない場合(壁エレメントの壁柱以外の矩形近似): 幅 12 × せい 20 の中実格子。
  • せん断変形は Timoshenko 適合内挿(φ 依存の曲率形状関数+一定せん断ひずみ場による変位法内挿。interdependent interpolation 系の定式化)で曲げと直列に合成します。せん断変形係数

\[ \varphi = \frac{12EI}{GA_s L^2} \]

公称断面諸元(Section の \( I \)・\( A_s \) と Material の \( E \)・\( G \))から算定して凍結するため、降伏後も内挿は弾性時の配分を保ちます(曲げの Hermite 内挿と同型の近似)。公称値を用いるのは線形解析(4.1 の弾性 Timoshenko 梁)の φ と一致させるためであり、RC 断面ではファイバーの実効初期剛性が公称値と僅かに乖離するため、φ は公称値ベースの近似となります。

  • 曲率場は回転項を \( (1 \pm 3\xi) \to (1 \pm 3\xi + \varphi) \)、全体を \( 1/(1+\varphi) \) 倍に補正します。せん断ひずみは曲げ面ごとに要素内一定の

\[ \gamma_y = \frac{\varphi_y}{2(1+\varphi_y)} \left( \theta_{z,i} + \theta_{z,j} - \frac{2,\Delta u_y}{L} \right), \qquad \gamma_z = \frac{\varphi_z}{2(1+\varphi_z)} \left( \theta_{y,i} + \theta_{y,j} + \frac{2,\Delta u_z}{L} \right) \]

(\( \Delta u \) = 端部並進差。符号は各曲げ面の曲率規約に従い面ごとに異なる点に注意してください。いずれも剛体回転で恒等的にゼロとなる客観的な測度)とし、弾性せん断剛性 \( GA_s \) を作用させます。曲率剛性とせん断剛性の和は、断面剛性が φ の算定基礎と一致する一様弾性断面で、弾性 Timoshenko 梁(4.1)の剛性と厳密に一致します(被積分関数は \( \xi \) の 2 次のため 2 点ガウスで厳密です)。

  • \( GA_s \le 0 \)(せん断有効断面積が未設定等)の場合は \( \varphi = 0 \)(せん断剛直 = Euler-Bernoulli)へフォールバックするため、幾何剛性・整合質量は Euler 系の係数を用います(4.1 の弾性梁と同じ扱いです)。
  • 整合質量の質量源は、端部断面のファイバー面積の総和 \( \sum A_f \) から求める \( m = \rho \cdot \sum A_f \cdot L \) です。ねじれ自由度(\( \theta_x \))の回転慣性は与えません4.1.7 の弾性梁は \( \rho J L/6 \) を与えます)。ファイバー梁は断面をファイバーの集合として表し、ねじり定数 \( J \) を保持しないためです。集中質量を並進自由度へ \( m/2 \) ずつ与える扱いは弾性梁と同じです。

実装squid_n_element::frame::fiberfiber/mod.rs::FiberBeam)が算定します。 断面のファイバー応答は squid_n_section::fiber::section_response、塑性化域考慮モデル(弾性梁+塑性増分ヒンジの直列モデル)の構築は FiberBeam::build_plastic_zone、ヒンジ状態は HingeState、内部平衡の求解は FiberBeam::solve_hinges、ヒンジの整合接線・復元力はそれぞれ FiberBeam::hinge_tangentFiberBeam::hinge_internal_force、φ 依存 B 行列は FiberBeam::compute_b_matrix、せん断ひずみ場の剛性は FiberBeam::compute_shear_stiffness によります。 弾性 Timoshenko 梁との厳密一致・初期剛性の理論値照合・剛体回転の客観性・接線と内力の整合、および降伏後の要素剛性低下は fiber/tests.rs の回帰テストで担保します。

4.9.3 マルチスプリング(MS)モデル

部材端の塑性化領域(長さ \( L_p \)、既定は断面せいの 0.5 倍)の断面を、少数の軸方向ばね群で置換し、中央は弾性材で連結します(RC 柱・梁端部の塑性ヒンジを軸ばね群で表す MS モデル)。軸ばね群の合力が \( N \)、図心まわりの偶力が \( M \) となるため、N–M 相関を自然に表現できます。ねじりばねは別系統で付加します。

算定式

  • 端部断面のばね配置は幅方向 × せい方向 = 2 × 5 = 10 本の 2 次元配置とし、二軸曲げに対応します。
  • 実体は塑性化域考慮ファイバー要素(4.9.2 の build_plastic_zone)と同一の定式化であり、端部断面の分割数だけが粗いです(ばね = 粗いファイバー)。したがって trial/commit/rollback・チェックポイントもファイバー要素と同一機構に乗ります。
  • 妥当性は、一定軸力下の繰り返し曲げにおける N–M 相関・履歴ループがファイバー要素と整合することで担保します(相互検証。実装仕様書 P5.5 §5.1)。
  • せん断変形は 4.9.2 の Timoshenko 適合内挿と同一です(実体がファイバー要素のため定式化も共有します)。

実装squid_n_element::frame::multi_springmulti_spring.rs::MultiSpringElement)が算定します。 内部で FiberBeam::build_plastic_zone(data, model, L_p, 2, 5) を構築し、ElementBehavior の各メソッドを委譲します。

4.9.4 モデルの自動選択(ForceRegime)

ElementKind::Beam の要素は、部材の ForceRegime に基づいて非線形要素種別を選択します。

選択規則

  • ForceRegime::UniaxialBendingShear → 材端集中ばね
  • ForceRegime::AxialBendingInteract → ファイバー
  • ForceRegime::Auto → トポロジから判定します(ヒューリスティック)。剛床に所属する水平材(軸力変動が小)→ 材端集中、それ以外(柱などの鉛直材)→ ファイバー。鉛直材判定は部材軸単位ベクトルの \( |e_z| > 0.707 \)(水平から 45° 超。線形静解析の柱判定・偏心率算定と共通の規約)によります。

MS モデルはこの自動選択には乗らず、要素種別 ElementKind::MultiSpring を明示指定した場合にのみ用います。

線形弾性解析は常に弾性 BeamElementfactory::build_behavior)を用い、非線形解析でのみ上記の非線形要素を構築します(factory::build_nonlinear_behavior)。両者を分けるのは、Auto 判定が剛床に乗らない梁もファイバーへ振り分けるため、共通化すると線形解析の弾性梁まで非線形要素へ置き換わってしまうためです。

実装:非線形要素の生成は frame::factory::build_nonlinear_behaviorfactory/mod.rs)、ForceRegime::Auto の判定は frame::factory::resolve_force_regimefactory/regime.rs)によります。

4.9.5 非線形梁要素の剛域

ファイバーモデル・MS モデル(いずれも実体は FiberBeam)も、弾性梁(4.1.4)と同じ剛体アームで剛域を扱います。断面積分・せん断・幾何剛性を可撓長 \( L' = L - \lambda_i - \lambda_j \) で組み立て、可撓端自由度を \( T_r \) で節点自由度へ写します。

\[ \boldsymbol{u}{\text{flex}} = T_r, \boldsymbol{u}{\text{node}}, \qquad K_{\text{node}} = T_r^{T}, K_{\text{flex}}, T_r, \qquad \boldsymbol{f}{\text{node}} = T_r^{T}, \boldsymbol{f}{\text{flex}} \]

\( T_r \) の成分と剛域長の解決規則は 4.1.4 と同一です。

算定式

  • ひずみ-変位行列 \( B(\xi) \)・せん断変形係数 \( \varphi \)・一定せん断ひずみ場・弾性梁 \( K_{el} \) の積分は、いずれも \( L' \) を基準長とします。
  • 端部のファイバー断面(\( \xi = \mp 1 \)、塑性増分ヒンジを担う断面)は可撓部の材端、すなわち剛域フェイスに位置します。塑性化域 \( L_p \) も剛域フェイスから材内側へ測り、\( L' \) の 45% までにクランプします(4.9.2)。塑性ヒンジは節点位置ではなく部材フェイスに形成されます。
  • 断面ひずみは節点変位ではなく可撓端変位 \( \boldsymbol{u}_{\text{flex}} \) から評価します。剛体回転(節点回転=弦回転)では可撓端に相対たわみが生じないため、内力はゼロになります(客観性)。
  • ねじりは断面積分と連成しない独立項であり、剛体アーム変換がねじり自由度に作用しないため、弾性梁と同じく節点間長基準 \( GJ/L \) とします(剛域では増大させません)。

軸方向の扱い(弾性梁との違い)

弾性梁(4.1.4)は軸断面積を \( A \cdot (L'/L) \) に補正して軸剛性を \( EA/L \)(節点間長基準)へ戻し、剛域を曲げのみに効かせます。ファイバー要素ではこの補正を行わず、軸剛性は \( EA/L' \)(剛域を軸方向にも剛とする剛体オフセットの扱い)になります。

理由は、ファイバー断面の積分が軸力と曲げを連成させることにあります。断面は軸ひずみと曲率から各ファイバーのひずみ \( \varepsilon = \varepsilon_0 - \kappa_z, y + \kappa_y, z \) を決め、その応力を積分して \( (N, M_y, M_z) \) を同時に返します。軸成分だけを別の基準長へ補正すると、断面が返す軸力が断面のひずみ状態と整合しなくなり、N–M 相関(ファイバーモデルの要点)が崩れます。したがって軸方向は剛体アームの運動学にそのまま従わせます。

この結果、剛域をもつ部材では、ファイバー要素の弾性状態の剛性は軸自由度を除いて弾性 Timoshenko 梁と厳密に一致し、軸剛性のみ \( L/L' \) 倍だけ大きくなります。

実装:剛体アームの変換は frame::rigid_arm(弾性梁と共有)、可撓長基準の断面積分・内力・接線剛性は frame::fiber::FiberBeam によります。弾性梁との一致(軸を除く厳密一致)・剛体回転の客観性・接線と内力の整合は fiber/tests.rs の回帰テストで担保します。

4.9.6 非線形梁要素の材端条件(ピン・半剛)

ファイバーモデル・MS モデルも、弾性梁(4.1.3)と同じ定式化で材端の回転解放を扱います。剛接端は「節点回転 = 要素端回転」を厳密に満たすため内部自由度を作りません。ピン・半剛の端のみ、要素端回転を内部自由度へ分離し、節点回転との間に回転ばね \( k_s \) を挟んで静縮約します。

  • ピン: \( k_s = 0 \)(厳密なモーメント解放)
  • 半剛: \( k_s = k_\theta \)(接合部の回転剛性 [N·mm/rad])

算定式

  • 縮約は可撓長で組んだ要素剛性に対して行います。組立順は「可撓長で要素剛性 → 材端解放の静縮約 → 剛体アーム変換 → 全体座標変換」で、弾性梁(4.1.1)と同一です。縮約は \( K^{*} = K_{aa} - K_{ab} K_{bb}^{-1} K_{ba} \) により節点自由度 12 へ戻します。
  • 内部自由度 \( \boldsymbol{u}_b \)(解放した要素端回転)は状態として保持し、各ステップで内部釣合い

\[ R_k = f_{\text{elem}}[d_k] + k_{s,k},\bigl(u_{b,k} - u_{\text{flex}}[d_k]\bigr) = 0 \]

を満たすよう要素内 Newton 反復で解きます(\( d_k \) は解放した回転自由度の番号、\( \boldsymbol{f}_{\text{elem}} \) は要素内力)。弾性域では線形のため 1 反復で厳密に収束します。断面が降伏した後も内部釣合いを解き直すため、ピン端のモーメントゼロは非線形域でも保たれます

  • 解放端の節点回転が受け持つのは回転ばねのモーメントのみであり、ピン端では 0 になります。
  • ねじり剛性を持たない部材(\( J \le 0 \))の rx は、解放しても縮約行列 \( K_{bb} \) の対角がゼロになり特異化するだけでモーメント解放としての意味を持たないため、解放しません。
  • 線材(梁・柱)の i 端のねじれは、端条件が剛接でも既定で解放します(ねじり剛性を期待しないモデル化。適用判定・例外は 4.1.3a と同一で、弾性梁と非線形梁で同じ規則です)。

実装squid_n_element::frame::fiberEndRelease / resolve_end_releases(解放自由度の決定)、FiberBeam::solve_internal_dofs(内部釣合い)、FiberBeam::condense_releases(静縮約)によります。ピン端の剛性が弾性梁と(軸を除き)厳密一致すること、半剛が \( k_\theta \to \infty \) で剛接・\( \to 0 \) でピンへ漸近すること、降伏後もピン端のモーメント解放が保たれること、接線剛性が内力の勾配と一致することは fiber/tests.rs の回帰テストで担保します。

4.9.7 非線形解析での部材内力

弾塑性要素の断面内力は、部材端の復元力を材軸方向へ釣合いで分配して求めます(線形解析の内力回収 5.2 と同じ分配式)。復元力は、接線剛性 × 全変位では降伏後の内力が実際より小さく評価されるため、接線剛性と全変位の積ではなく各積分点の断面応答(ファイバーの履歴状態)から算定した値を用います。

評価断面(危険断面)は線形解析と同じ規則(節点芯・部材中央・柱フェース位置、および部材付帯情報の追加位置。6.2.3)で与え、線形解析と同じ断面で応力を比較できるようにします。

適用範囲:ファイバー・MS・弾性材・トラス(軸材)に適用します。材端集中ばねモデルは部材内力の取り出し(state_member_forces)に対応しておらず、この経路では内力を取り出しません。

実装ElementBehavior::state_member_forcescommon/behavior.rs)と、分配式を共有する beam::member_forces_from_end_forcesframe/beam/forces.rs)によります。