1.5 地震用重量・層データの生成
地震用重量と層データは、令 88 条に基づき固定荷重と積載荷重の合計として生成します。 自重・床荷重の梁せん断力(CMoQo による Q0)を単純梁の静定反力として節点へ配分する実務的取扱いによります。
算定式(概要)
線材自重:
\[ w = \rho \cdot A_{\text{eff}} \cdot L_{\text{eff}} \cdot g \cdot \text{factor} \]
(RC/SRC 大梁は柱面間距離、RC/SRC 柱は床上面から床上面(=節点間距離)、S 梁・柱は節点間距離。RC/SRC 梁の断面積はスラブ厚分 \( b \cdot t \) を控除します: \( w_c = \gamma \cdot b(D - t) + \cdots \)。スラブ重量が構造芯間面積で別途計上されるための二重計上防止)
RC/SRC 大梁の柱面間距離は、節点間長から両端の柱フェース距離(節点から柱面までの距離。接合する直交部材のせいの半分)を差し引いた長さです。柱面の内側は柱の自重として計上されるため、その重複分を控除しています。柱フェース距離は接合関係と断面せいから一意に決まる幾何量で、剛域長(剛域)とは別の量です。剛域長を手入力で上書きしても、剛域の算定で壁を考慮する設定を変えても、柱フェース距離は変わりません。したがって自重も変わりません。直交部材が接続しない端の柱フェース距離は 0(控除なし)です。
壁・シェル自重:
\[ w = (\rho \cdot t \cdot g + w_f) \cdot (A - \text{開口}) \]
(\( w_f \) は仕上げ・増打ちの面荷重。Newell の公式で面積算定)。4 節点の耐震壁は周辺の柱梁の内法寸法で面積を評価します(芯々面積に内法係数を乗じます。上下梁は梁せいの半分、側柱は平面内の向きが特定できないため \( \min(\text{幅}, \text{せい}) \) の半分を控除する保守側の近似。控除相手の柱梁が見つからない辺・多角形壁・シェルは芯々のまま=保守側)。
解析要素にならない壁版は上記の式には算入されませんが、自重そのものは別に算定して地震用重量へ含めます。柱・梁に囲まれた壁版(間柱で分割された壁版、壁領域の一部を占める腰壁・垂れ壁など)は、境界の辺へ配ったうえで、その辺の両端節点へ半分ずつ集計します(1.6 自重の長期応力解析への接続)。矩形の壁版を左右の鉛直辺で受ける場合は上下 2 節点ずつへ 1/4 ずつとなり、壁エレメントの頂点等分配と一致します。
取り付く壁版(パラペット・構面外の腰壁・垂れ壁・自立壁)の自重も同様に別に算定して含めます(伝達規則は 1.3 床荷重の分配の「取り付く床板の荷重の出口」と同じ考え方によります)。取付き先が梁(線アンカー)の場合、取付き線への分布または取付き線両端の柱への集中のいずれかを選べます。張り出し高さ \( h_i = |\mathrm{extent}[0]| \)、\( h_j = |\mathrm{extent}[1]| \) が両端で等しいときは等分布(または区間中点での柱按分)です。異なるとき(台形)は、厚さ・密度が一様なら線荷重強度は高さに比例します。両端で立ち上がり高さの符号が反転するときは、高さ 0 の位置で折れた 2 つの三角形の和を面積とし(端点の絶対値を結んだ台形にはしません)、線アンカーの分布もそこで分割します。区間長を \( L \)、総重量を \( W \)(開口は総重量の算定で控除。開口位置は見ません)として:
\[ w_i = \frac{2 W h_i}{L(h_i + h_j)},\qquad w_j = \frac{2 W h_j}{L(h_i + h_j)} \]
(\( \int_0^L w(x)\,dx = W \))。柱へ集中する場合は、同じ台形の面積重心
\[ s = \frac{h_i + 2 h_j}{3(h_i + h_j)} \]
を区間始端からの無次元位置とし、\( t = t_i + (t_j - t_i)s \)、\( R_i = W(1-t) \)、\( R_j = W t \) で按分します。取付き先が床領域(自立壁)の場合は、壁が載っている床領域の床荷重へ等価な面荷重として上乗せします(床荷重の分配にそのまま乗るため、床板ごとの強度差は区別せず床領域内で均等に上乗せします。壁の位置情報は失われますが総重量は保存されます)。等価面荷重の強度は、床の分配と同じ平面(XY 投影)の床板面積で割って求めます。壁が載っている床領域は保存せず、壁の位置から都度求めます。壁が複数の床領域にまたがる場合は、床領域の境界で分割し、区間ごとの ∫|立ち上がり高さ| に比例して各床領域へ配ります。両端で高さが符号反転する壁は高さ 0 で折ります。荷重を流せる床(床板を持ち、その XY 投影面積が正である床領域)の上に載っていない壁は、自重の行き先がないため解析前チェックがエラーで止めます。床領域の多角形への内包は辺上 1 mm 以内を内側とみなさないため、大梁の真上に沿う壁もこのエラーになります(取付き先を梁の線アンカーへ変えてください)。交点計算の丸めと、端点が境界に触れるごく短い区間を拾わないため、未覆いが壁の全重量の 0.1% 以下ならエラーにしません(この分は等価面荷重へは載せません)。DL ケースが無いモデルでは密度から自重を直接算入し、そのとき取り付く壁版の自重も階の節点へ集計します(線アンカーは上と同じ重心按分の節点集中として総重量を保存します)。
- 仕上げ・付加線重量を節点へ配分し、階ごとに集計
- 剛床代表節点は慣性力重心(重量重み付き重心)に自動生成
節点の階・剛床への割り付け
階の床レベルは利用者が定義する値であり、層データの生成はこれを書き換えません。節点は 次の 2 つの規則で階と剛床へ割り付けます(階の分布)。
- 階への帰属は区間: 直下階の床レベルを超え、当該階の床レベル以下。最下階(基部の床) だけは基部レベル(剛床代表節点を除く全節点の最小標高)そのものの点区間とし、柱脚・ 基礎梁の節点がここに属する
- 剛床への帰属は床面: 当該階の床レベルから 1 mm 以内
中間高さの節点は階には属して重量が算入され、剛床には入りません。床面に節点がない階は 剛床を持たず、剛床代表節点も作られません。階が 1 つも定義されていないモデルでは、節点 標高を許容差 1 mm でクラスタリングして階を初期化します。基部レベルの階がない場合は、 準備計算が先頭に補います(階の分布)。
動的解析用の質点質量の設定
階の生成は、剛床代表節点(マスター)へ動的解析(固有値・時刻歴・精算固有周期)用の質点質量をあわせて設定します。質量方式(5.3 固有値解析の質量モデル)に応じて:
- 補正質点方式(既定): 各節点の地震用重量 \( w_i \) から、解析の質量行列に部材密度の分布質量として計上される分(主架構の柱梁・壁の自重配分 \( w_{\text{self},i} \))を控除した \( \text{net}i = \max(0, w_i - w{\text{self},i}) \) を用いる(密度質量との二重計上防止。二次部材・雑壁・ダンパーの自重は分布質量に入らないため控除しない)
- 質点のみ方式: 控除なしの全量 \( w_i \) を用いる
マスターの並進質量(水平 2 方向)と剛床面内の回転慣性は次によります(\( r_i \) は慣性力重心からの平面距離、\( g \) は重力加速度):
\[ m = \sum \text{net}_i / g, \quad J = \sum (\text{net}_i / g) \cdot r_i^2 \]
実装:squid_n_load::story_gen(story_gen/mod.rs)が算定し、
自重の算定規則は enumerate_self_weight に一元化して、後述の DL 荷重ケース(自重の自動同期)と共有します。
鋼材単位体積重量は \( \gamma_s = 77\ \text{kN/m}^3 \)(実務慣用値)、回転慣性重量は \( \sum W \cdot i_r^2 \) です。
なお数量積算は積算慣用値の 7.85 t/m³ を用いており(約 0.02% の系統差)、荷重・質量は一貫して 77 kN/m³ によります(分野別の慣用値の使い分け。10.1 数量積算の算定式)。
重力ケースの選択:地震用重量に算入する荷重ケースは LoadCaseKind から選択します(固定 Dead + 地震用積載 LiveSeismic。LiveSeismic がなければ Live で代用)。
自重専用ケースと骨組用積載ケースは除外します。種別未設定のモデルでは先頭ケースのみを用います。
標準構成では自重を含む「DL」と「LL(地震用)」が算入され、階の生成では密度からの自重直接算入を無効にします(generate_stories_with_opts の include_density_self_weight = false。§1.7 参照)。
手入力の地震用重量:階の地震用重量は、上記の集計値に代えて階ごとに直接入力できます。 入力した値は準備計算で階を生成し直しても保持され、集計値より優先して Ai 分布の \( W_i \) に用います (準備計算)。