SEPIKA
Integrated Structural Analysis
SEPIKAは、日本語の「一貫計算(IKKAN)」から生まれた構造設計ソフトウェアです。名前はイカに由来し、コウイカを意味するSepiaと日本語のIKAを組み合わせています。
SEPIKA takes its name from Sepia (cuttlefish) and IKA, inspired by the Japanese phrase "Ikkan Keisan" (integrated structural calculation).
はじめに
SEPIKA は、Rust で実装された日本の建築構造計算一貫プログラムです。
このサイトは、SEPIKA を利用する方に向けたドキュメントです。
- モデル入出力(ファイル形式):ネイティブの
.ovika形式と ST-Bridge(.stb)形式でモデルを保存・読込・書出する入出力経路と、その対応範囲 - モデルの編集:通り芯・断面の符号と階・架構作成ウィザード・ 立体グリッドとスナップ・階への複製
- MCP サーバ:AI エージェントからモデル照会・解析実行・結果取得を行う MCP(Model Context Protocol)サーバのビルド・起動・ツール一覧
- 準備計算(解析前の確認):応力解析に先立って階・剛域・断面性能・ 地震力・荷重を確定させる計算と、その確認画面の見方
- 結果の表示(3D ビューア):変形図の表示倍率、床・二次部材の変形追従、 検定比図・モデル化図など、3D ビューアの表示仕様
- 計算根拠:各計算が「何という基準・法令の、何という式で」 算定されているかを、告示・施行令の条/式番号と実装位置まで対応づけた根拠ドキュメント。 荷重・材料・断面性能・構造解析・一次設計・二次設計・部材終局耐力・免震制振の 各章を、算定項目ごとのページに分けて収録しています
ライセンスと免責事項
SEPIKA は MIT License のもとで公開しているソフトウェアです。 ライセンスの全文はリポジトリの LICENSE にあります。
MIT License
Copyright (c) 2026 Hiroaki NATSUME
無保証(AS IS)
MIT License は、ソフトウェアを「現状のまま(AS IS)」提供し、明示・黙示を問わずいかなる保証も行わないことを条件としています。
THE SOFTWARE IS PROVIDED "AS IS", WITHOUT WARRANTY OF ANY KIND, EXPRESS OR IMPLIED, INCLUDING BUT NOT LIMITED TO THE WARRANTIES OF MERCHANTABILITY, FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE AND NONINFRINGEMENT.
この無保証は、SEPIKA が出力する応力、変形、検定比、保有水平耐力などの計算結果にもそのまま及びます。 つまり SEPIKA は、計算結果の正確性、妥当性、および特定の目的への適合性を、いずれも保証しません。 また、SEPIKA の使用または使用不能によって生じたいかなる損害についても、著作権者および貢献者は責任を負いません。
本ドキュメントについても同じです。 このサイトは、各計算がどの法令・規準のどの式に基づいて算定されているかを説明するものであり、個々の建築物についてその結果が正しいことや、適法であることを保証するものではありません。
利用にあたって
SEPIKA は、国土交通大臣の認定を受けた構造計算プログラム(いわゆる大臣認定プログラム)ではありません。 そのため、確認申請における認定プログラムとしての取扱い(大臣認定プログラムを用いた場合の審査の特例)は受けられません。
入力データの妥当性、モデル化の適否、そして出力された結果の検証は、いずれも利用者の責任に属します。 計算結果は、手計算や理論解、ほかのプログラムとの突合などによる利用者自身の検証を経たうえで使用してください。 設計における式の適用可否(適用範囲や前提条件)の判断も、設計者(構造設計一級建築士等)の責任に属します。
開発者向け資料
設計判断・検証記録・開発運用ドキュメントは開発者向けのため本サイトには含めていません。 これらは dev_docs/ に集約しており、リポジトリの以下を参照してください。
- dev_docs/architecture.md:クレート階層と依存方向
- dev_docs/v_and_v/:各要素・各設計式の Verification & Validation レポート(未検証一覧)。法令・規準の埋め込み値の照合チェックリスト 原典照合リスト も同ディレクトリにあります
- GitHub Issues:未完了の開発作業・不具合報告・提案
- dev_docs/handoff/:過去の実装経緯・判断の履歴と申し送り目録。ROADMAP.md は 2026-07 完了済みの歴史的記録
リポジトリ
ソースコードは github.com/hrntsm/SEPIKA にあります。
ビルド・テスト・静的解析の手順はリポジトリの CONTRIBUTING.md を参照してください。
モデルの編集
本章では、構造計算そのものには入らないものの、モデルを扱ううえで必要になる編集機能に ついて紹介します。下ドックの「モデル」タブに並ぶ各テーブルのうち、節点・部材・断面・ 材料のように解析入力を直接構成するものは各解析の計算根拠から追えます。一方で、通り芯の ように識別のために持つデータは、どこにも計算根拠がないため本章で説明します。
断面についても、断面性能そのものは計算根拠から追えますが、どの断面がどれなのかを定める符号と階は 識別のために持つデータであるため本章で説明します。
あわせて、入力の手間を減らすモデル作成の支援機能も本章で扱います。架構作成ウィザードは 節点・柱・大梁・通り芯・階を一度に作り、立体グリッドのスナップは格子点に沿って部材を 引けるようにします。階への複製は、ある階で決めた断面・荷重・床割りをほかの階へ配ります。 いずれも入力を組み立てる操作であって、解析の考え方そのものを変えるものではありません。
画面全体の構成(4 ペイン・工程タブ・ステータスバー・ログ・stale 表示)と、テーブルの スプレッドシート的な編集操作も、本章で扱います。
解析への影響
通り芯・断面の符号と階は識別のためのデータで、解析結果・設計結果に影響しません。 編集しても再解析は不要で、準備計算をやり直す必要もありません。保存が必要になるだけです。
一方、モデル作成の支援機能は節点・部材・断面・荷重そのものを作るため、実行すると解析結果は 陳腐化します。実行後は準備計算と解析をやり直してください。
実装参照:通り芯の編集では sepika_app::app::Staleness::mark_non_calc_edited(crates/sepika-app/src/app/mod.rs)だけが呼ばれ、解析・設計・準備計算を陳腐化させません。節点・部材・断面形状・荷重を変える編集は sepika_app::app::Staleness::mark_edited が下流をまとめて陳腐化させます。
この章の内容
通り芯
通り芯は、日本の構造設計で各通りを識別するために付ける呼称です。「X2 通りの柱」「Y3 通りの 大梁」のように部材の位置を言い表すためのもので、構造計算には一切用いません。応力解析・ 断面算定・保有水平耐力のいずれにも入らないため、通り芯を作っても解析結果は変わりません。
通り芯は下ドックの「モデル」タブにある「通り芯」で確認・編集します。準備計算の成果では ないため、準備計算を実行しても通り芯は作られません。生成したいときは、このタブの 「柱位置から自動生成」を押してください。計算に用いないデータなので、必ずしも自動生成する 必要はなく、通り芯を持たないままモデルを解析しても差し支えありません。
計算に用いないことに合わせて、通り芯の追加・改名・自動生成は解析結果・設計結果・準備計算を 陳腐化させません。通り芯を 1 本足すたびに再解析が必要になると、識別のためのデータが解析の 手戻りを生むことになるためです。編集後は保存だけが必要になります。
実装参照:一覧・編集 UI は sepika_app::tables::axes::axes_table(crates/sepika-app/src/tables/axes.rs)が表示し、自動生成の適用は sepika_app::app::App::generate_axes_action(crates/sepika-app/src/app/actions/mod.rs)が解析結果を陳腐化させずに行います。
通り芯の構成
通り芯は、同じ幾何規則を共有する「グループ」と、その中の 1 本ずつの「通り」の 2 段構成です。 X 方向の通りをまとめたグループ、Y 方向の通りをまとめたグループ、という持ち方をします。
グループは次の 2 種類です。
- 平行芯:原点と方向角を持ち、各通りは原点からの符号付きの離れで位置が決まる
- 平行芯以外:円弧芯・放射芯・作図芯。幾何は保持せず、所属節点のまとまりとしてのみ扱う
平行芯グループでは、芯線の方向が方向角 \( \theta \) の \( (\cos\theta, \sin\theta) \)、離れを測る 向きがそれを 90° 回した \( (-\sin\theta, \cos\theta) \) になります。方向角 270° のグループは 離れが +X 向きに測られるため X 方向の位置を、方向角 0° のグループは +Y 向きに測られるため Y 方向の位置を表します。
1 本の通りが持つのは、通り名・離れ・所属節点・出所の 4 つです。
実装参照:型は sepika_core::model::{AxisGroup, Axis, AxisGroupKind, AxisSource}(crates/sepika-core/src/model/axis.rs)が持ちます。
所属節点と所属要素
通り芯が保持するのは所属節点だけです。所属要素は「すべての材端節点がその通りに属する 要素」として、必要になった時点で算出します。柱・梁・ブレースのような線材のほか、4 節点 すべてがその通りに属する壁も所属要素になり、一覧の「所属要素」列にはこの規則で数えた本数を 表示します。
所属節点を座標から導かずリストとして持つのは、実務では通りの位置と柱の芯が一致しない 芯ずれが普通に起こるためです。たとえば X=3000 の位置にある通りに、X=3500 に立つ柱を 所属させるモデル化があります。所属を座標から求める方式ではこの関係を表せないため、所属は リストを正とします。
実装参照:所属要素の算出は sepika_core::model::Model::axis_elements(crates/sepika-core/src/model/axis.rs)が担い、一覧の「所属要素」列は sepika_app::tables::axes が表示します。
自動生成の規則
「柱位置から自動生成」は、柱が立つ平面位置に X 方向・Y 方向の通り芯を作ります。既定の 判定基準は以下のとおりです。
対象とする部材
対象は柱の材端節点だけです。柱は、線材のうち両端の水平距離(XY 平面内の距離)が 1 mm 未満のものと判定します。この判定規則は、仕上げ周長式・柱脚梁せいの付加・壁領域の 構面走査と共通です。
梁・ブレース・二次部材(小梁・間柱)・壁は、通り芯を「柱が立つ位置」と定義しているため 対象にしません。斜材の頂点や小梁の交点まで通りにすると、実際には通りではない位置に多数の 通りが立ち、識別札としての役目を果たさなくなります。剛床代表節点は要素が接続しない仮想 節点のため、自然に対象から外れます。
実装参照:柱の判定は sepika_core::geom::is_vertical_pair(crates/sepika-core/src/geom.rs)と同じ判定を sepika_core::axis_gen::generate_axes(crates/sepika-core/src/axis_gen.rs)が用います。
追加先グループの決め方
追加先のグループは幾何で突き合わせます。離れを測る向きが X 軸に沿う平行芯グループが
すでにあれば、そこへ通りを追加します。ない場合は、名前 X・原点 (0, 0)・方向角 270° の
グループを新設します。Y 方向も同様で、新設時の方向角は 0° です。
名前ではなく幾何で突き合わせるのは、他ソフトから取り込んだファイルのグループ名が
けた行・張り間 のように任意であるためです。名前で探すと、同じ位置に通りが二重に立ちます。
離れはそのグループの原点・方向角で測るため、取り込んだグループの符号の規約にそのまま 従います。たとえば方向角 90° のグループでは、離れを測る向きが -X 向きになるため、X=6000 に 立つ柱の離れは -6000 になります。
実装参照:sepika_core::axis_gen::generate_axes(crates/sepika-core/src/axis_gen.rs)が AxisGroupKind::plan_dir(crates/sepika-core/src/model/axis.rs)で幾何を突き合わせ、グループを新設します。
まとめ方と採番
柱の平面位置を離れの昇順に並べ、許容差 1 mm でまとめて 1 本の通りにします。通りの離れは、 まとまりの先頭の値を採ります。
通り名は離れの昇順に、そのグループ内で未使用の最小の正整数 \( n \) を使って
{グループ名}{n} と付けます。通り芯がないモデルであれば X1・X2・… と座標の昇順に
並びます。座標が負のモデルでも同じで、X = -6000, 0, 6000 の 3 本があれば
X1(-6000)・X2(0)・X3(6000) になります。番号が空間の順序どおりに増えないと、図面上で
位置を特定するという通り名の役目が果たせないためです。
グループ内の通りは、常に離れの昇順に並べます。
実装参照:並べ替え・許容差 1 mm の集約・採番は sepika_core::axis_gen::{generate_axes, AXIS_TOL_MM}(crates/sepika-core/src/axis_gen.rs)が行います。
既存の通りの扱い
通り芯には自動・手動の 2 つの出所があります。自動生成が作った通りが「自動」、利用者が 作った通り・ST-Bridge から取り込んだ通り・利用者が名前を変更した通りが「手動」です。
自動生成を実行すると、「自動」の通りだけを破棄して作り直し、「手動」の通りはそのまま 残します。さらに、同じグループ内に許容差 1 mm 以内の通りがすでにあれば、その位置には 新しい通りを作りません(既存優先)。取り込んだ通り名や芯ずれした所属は自動生成では復元 できないため、既存を残すほうが情報を失いません。
通り名を変更すると、その通りの出所は「手動」に変わります。利用者が付けた名前を、次の自動 生成が機械的な番号で上書きしないようにするためです。
実装参照:出所 sepika_core::model::AxisSource の保護と既存優先は sepika_core::axis_gen::generate_axes が、改名時の「手動」への変更は sepika_edit::RenameAxis(crates/sepika-edit/src/axis.rs)が担います。
3D ビューでの利用
通り芯と階がそろうと、その交点を格子点とする立体グリッドを 3D ビューへ描けます。 格子点へスナップして部材を引けるため、通り芯は識別のためだけでなく、モデリングの下敷きと しても使えます(立体グリッドとスナップ)。
ST-Bridge との対応
ST-Bridge の通り芯(StbAxes)を含む要素別の取り込み・書き出し・往復の対応状況は、ST-Bridge 要素別 変換状況一覧を参照してください。
断面の符号と階
本節では、断面をどう識別しているかと、断面一覧に表示される断面形状の表記について紹介します。
SEPIKA の断面は、符号と階の組で識別します。
符号は C1・GY2 のような断面記号で、階は 1・PH1 のような階の名前です。
同じ C1 でも 1 階と 3 階で寸法が変わることは実務では普通にあるため、符号だけでは断面を一意に定められず、階を含めてはじめて 1 つの断面が定まります。
実装参照:同一性キーは sepika_core::model::Section::key と sepika_core::model::section_key_taken(crates/sepika-core/src/model/section.rs)が表します。
符号+階は重複できない
モデルの中に、符号と階がどちらも同じ断面が 2 つ以上あってはいけません。
一方で、断面性能が同じ断面が別の符号+階で存在するのは問題ありません。
たとえば C2 の PH1 階と C3 の PH1 階がどちらも同じ角形鋼管であってもかまわないのは、符号を分けた意図が利用者にあり、それをアプリの都合で勝手にまとめるべきではないためです。
この制約はモデル側で守られているため、断面一覧・断面作成パネルのどちらからも重複する組合せは作れません。 断面作成パネルで既存の断面と同じ符号+階を入力すると「+ 追加」ボタンが押せなくなり、理由がツールチップに出ますので、符号か階のどちらかを変えてください。
階を持たない断面もあります。
アプリ内で作成した断面や、階の指定がない ST-Bridge 断面がこれにあたり、断面一覧の「階」欄には — と表示します。
この場合は符号だけが識別キーになるため、階なしの断面どうしで符号が重複することもできません。
実装参照:判定は sepika_core::model::section_key_taken(crates/sepika-core/src/model/section.rs)が担い、断面作成パネルの「+ 追加」「✏ 符号・階を変更」ボタンの制御は sepika_app::section_editor(crates/sepika-app/src/section_editor.rs)が行います。
断面一覧の表示
下ドックの「モデル」タブ→「断面」に、モデルが持つ全断面を一覧で表示します。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| ID | 内部の断面 ID。クリックするとインスペクタに断面詳細を表示する |
| 符号 | 断面記号 |
| 階 | 階の名前(階を持たない断面は —) |
| 断面形状 | 形状と各寸法の表記(下記。形状定義を持たない断面は —) |
| 材料 | 主材料(コンクリートまたは鋼材)。この欄で割り当てる |
| 主筋 | 主筋の材質。配筋を持つ断面のみ有効 |
| せん断補強筋 | せん断補強筋の材質。配筋を持つ断面のみ有効 |
| 内蔵鉄骨・鋼管 | SRC の内蔵鉄骨、CFT 角形・円形の鋼管の鋼種 |
| 部材数 | この断面を割り当てられた部材・小梁・二次部材・床の数 |
| D×B [mm] | せい D × 幅 B |
| A [cm²] | 断面積 |
| Iy / Iz [cm⁴] | 断面二次モーメント |
| J [cm⁴] | ねじり定数 |
| Asy / Asz [cm²] | せん断有効断面積 |
断面性能の表示は cm 系です(\( A \)・\( A_s \): cm²、\( I \)・\( J \): cm⁴)。 内部では SI 単位系(N, mm)で保持しており、表示のときだけ換算しています。 せい D・幅 B のみ mm 表示なのは、実務での断面呼称に合わせるためです。
断面性能の欄は読み取り専用です。 断面形状も断面性能も断面形状の定義から導かれる結果であって入力ではないため、数値を直接書き換えられるようにすると、形状と断面性能が食い違ったモデルを作れてしまいます。 断面を作る・形状を変える・符号や階を直すのは、いずれも同じ画面の下にある断面作成パネルで行います。 この表から操作できるのは、材料 4 欄の割り当て、行の選択(インスペクタ表示)、どこからも参照されていない断面の削除の 3 つです。 「部材数」の欄は部材・小梁・二次部材に加え、その断面を割り当てた床も数えます(床の断面と自重)。 ここが 0 の断面だけが削除できるため、数え方は削除の可否とそろえています。
実装参照:一覧は sepika_app::tables::sections::sections_table(crates/sepika-app/src/tables/sections.rs)が描画し、cm 系への換算は sepika_core::units::to_display(crates/sepika-core/src/units.rs)が担います。
ナビゲータの断面一覧
左ドックのナビゲータには「断面一覧」があり、断面を階ごとにグループ化して表示します。 断面の階名が利用者が入力した階定義と一致する場合は、上階から下階の順で見出しが並び、各階に属する断面がその下に並びます。 階定義にない階名の断面は、その階名を見出しとしたグループで、階定義のグループの後に並びます。 階名がある断面は、二次部材・床から参照されていてもその階のグループに残ります。 階が未設定(空欄)の断面は、用途によってさらに分かれます。間柱・小梁・床(スラブ)のいずれかに割り当てられている断面は「二次部材」グループへ、それ以外は末尾の「(階なし)」グループへ入ります。
断面の行をクリックすると、下ドックの「モデル」タブ→「断面」一覧へ移動して、その断面の ID 行が選択状態になります。 グループの既定状態は閉じているため、見通しを保ちながら必要な階だけを開いて確認できます。
実装参照:階ごとのグループ化は sepika_app::app::nav_model::section_floor_groups が、表示は sepika_app::app::App::nav_sections(crates/sepika-app/src/app/nav_model.rs)が担います。
材料は断面が持つ
材料は部材ではなく断面に割り当てます。 同じ断面を使う部材はすべて同じ材料になり、違う材料を使うならそれは別の断面になります。 断面性能と材料強度が 1 か所にそろうため、断面検定・終局耐力の算定で材料の解決先が 1 つに定まります。
RC・SRC の主筋とせん断補強筋、SRC の内蔵鉄骨も、それぞれ専用の欄で材料を割り当てます。 配筋の本数・径・ピッチは断面作成パネルで、材質はこの表で指定する形になります。
CFT 角形・円形では「材料」に充填コンクリート、「内蔵鉄骨・鋼管」に鋼管材料を割り当てます。
鋼管欄の候補は鋼材だけで、コンクリート・鉄筋は指定できません。― を選ぶと割当を解除します。
未割当の鋼管材料を主材料や既定の基準強度 F で補完せず、必要な計算は入力不足として停止します。
割当・解除は Undo/Redo と保存・再開の対象です。変更後は準備計算・解析・検定の成果が失効するため、再実行してください。
断面形状から使わないとわかる欄(鋼断面の主筋など)は淡色の — になり、選べません。
配筋を持つ断面で主筋・せん断補強筋の材料を割り当てないまま解析すると、 準備計算のモデル整合性チェックと解析前チェックがエラーで止めます。 降伏点 \( \sigma_y \) を既定値で埋めると、SD295 の部材で耐力を過大評価するためです。
形状定義を持たない断面(断面性能の数値直入力)は、断面形状の欄に — と表示します。
この断面は幅厚比・部材ランクの判定、終局耐力の算定、スラブ協力幅による剛性増大の対象外になるため、意図した入力かどうかを確認してください。
断面作成パネルで寸法を組み立ててから「✏ 選択断面へ適用」を押すと形状を与えられるので、意図しない数値直入力であればそこで直せます。
実装参照:材料は sepika_core::model::Section の material・rebar_material・shear_rebar_material・steel_material(crates/sepika-core/src/model/section.rs)が持ち、割当・解除は sepika_edit::SetSectionMaterial(crates/sepika-edit/src/section_material/element_assign.rs)、未割当の検査は sepika_solver::statics::analysis::precheck::model_issues(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs)が担います。
既存断面の符号・階を直す
断面一覧の ID 欄をクリックして断面を選ぶと、断面作成パネルの「符号」「階」の欄にその断面の現在値が読み込まれます。 欄を書き換えてから「✏ 符号・階を変更」を押すと、選択中の断面へ反映されます。 変更後の符号+階が他の断面と重なる場合はボタンが押せなくなるため、先に相手側を直すか、別の値を入れてください。
同じパネルの「✏ 選択断面へ適用」は形状だけを差し替えるボタンで、符号と階は維持します。 断面の符号は部材リストや検定結果の見出しにも出るため、形状を変えたときに符号まで変わると結果の追跡ができなくなるためです。
実装参照:符号と階の変更は sepika_edit::SetSectionName、形状のみの差し替えは sepika_edit::EditSectionShape(crates/sepika-edit/src/section_material/section.rs)が担います。
断面形状の表記
断面形状の欄には、形状の種別と各寸法を 1 つの文字列で表します。 記号は ASCII のみを使い、接頭辞から断面の種別が読み取れるようにしています。 寸法の並びは形状ごとの実務の断面呼称に合わせているため、鋼断面はせい・幅・板厚の順、RC 矩形は幅 B・せい D の順になります。
| 形状 | 表記 | 例 |
|---|---|---|
| H 形鋼 | H-{H}x{B}x{tw}x{tf} | H-500x250x9x16 |
| 非対称組立 H 形鋼 | BH-{H}x{上B}x{上tf}x{下B}x{下tf}x{tw} | BH-800x300x19x400x25x12 |
| 角形鋼管 | BOX-{H}x{B}x{t} | BOX-300x300x12 |
| 円形鋼管 | P-{D}x{t} | P-216.3x8 |
| 山形鋼 | L-{A}x{B}x{t} | L-75x75x9 |
| 溝形鋼 | CH-{H}x{B}x{tw}x{tf} | CH-200x80x7.5x11 |
| リップ溝形鋼 | LC-{H}x{B}x{C}x{t} | LC-150x75x20x3.2 |
| T 形鋼 | T-{H}x{B}x{tw}x{tf} | T-100x200x8x12 |
| 平鋼 | FB-{B}x{t} | FB-100x9 |
| 中実丸鋼 | RB-{D} | RB-25 |
| RC 矩形 | BD-{B}x{D} | BD-300x600 |
| RC 円形 | RD-{D} | RD-600 |
| SRC 矩形 | SRC-{B}x{D}+H-{h}x{b}x{tw}x{tf} | SRC-500x800+H-400x200x8x13 |
| CFT 角形 | CFT-BOX-{H}x{B}x{t} | CFT-BOX-300x300x12 |
| CFT 円形 | CFT-P-{D}x{t} | CFT-P-300x9 |
| RC 耐震壁 | W-t{t} | W-t180 |
| RC スラブ | S-t{t} | S-t150 |
寸法の単位はすべて mm です。
整数の寸法は小数点以下を落とし、端数のある寸法はそのまま示します(300.0 は 300、6.5 は 6.5)。
円形の断面は、円形鋼管が P-、中実丸鋼が RB-、RC 円形が RD- と用途で記号を分けています。
どれも断面性能の算定式も検定の扱いも別物であるため、表記の段階で見分けられるようにしています。
SRC 矩形だけは、コンクリート断面の寸法に内蔵鉄骨の寸法を + でつないでいます。
内蔵鉄骨の寸法は断面形状そのものであり、外形だけを示すと内蔵鉄骨の違う 2 断面が同じ表記になって見分けられなくなるためです。
角形鋼管の角部外半径 \( r \) は表記に含めません。 H 形鋼のフィレット半径も、断面一覧の寸法表記とは別に保持します。 断面作成パネルの「選択断面のフィレット半径」または「選択断面の角R」で確認・変更できます。 この編集は形状算定の A・Iy・Iz・J を再評価し、材料、用途、階、カタログ・直接入力性能を維持したまま undo/redo できます。 カタログ・直接入力の J は半径編集で自動上書きしません。 角形鋼管で幾何は成立しても形状由来 J の適用域を外れる場合は、A・Iy・Iz を更新して J を理由付き未算定として保持します。 適用域と直角入力の扱いは H・角形鋼管のねじり定数 を参照してください。
実装参照:表記は sepika_core::section_shape::SectionShape::dimension_label(crates/sepika-core/src/section_shape/label.rs)が生成し、一覧は sepika_app::tables::sections::sections_table が表示します。
表示が切り詰められたとき
断面一覧の各列は、内容が列幅を超えるとセル内で切り詰めます。
セルの内容が列からはみ出すのを許すと、その行だけ以降の列が右へずれて表全体が読みづらくなるためです。
切り詰められた内容は、そのセルにマウスカーソルを合わせるとツールチップで全文を確認できます。
列の境界はドラッグして幅を変えられるので、SRC-500x800+H-400x200x8x13 のような長い表記を常に表示したい場合は断面形状の列を広げてください。
実装参照:切り詰め(クリップ)・列幅のリサイズ・ホバーでの全文表示は sepika_app::table_util::{standard_table, text_cell}(crates/sepika-app/src/table_util.rs)が担います。
被覆外周用半径と実外周
本節では、耐火被覆に必要な外周を解決するための半径入力を説明します。 H 形鋼はウェブとフランジの内隅 4 か所に接する同半径の円弧を、角形鋼管と角形 CFT は外隅 4 か所の円弧を指定します。 半径と断面寸法の単位は mm です。
| 入力状態 | 保持値 | 被覆の実外周 |
|---|---|---|
| 未知(新規作成時の既定) | None | 算定エラー |
| 明示した直角 | Some(0) | 直角輪郭で算定 |
| 既知の正半径 | Some(r) | 接線円弧を含む輪郭で算定 |
「寸法既知」を選んで 0 を入力すると、直角のモデル形状を明示できます。 フィレット半径・角Rが不明な場合は、直角とみなさず未知のまま保持してください。 H と Box の新規作成欄でも同じ状態を入力でき、取り込んだ CFT の角Rは選択断面の欄で編集できます。
フィレット半径・角Rは有限な非負値で、円弧が断面からはみ出さず重ならないことを検証します。 H のせいを \(H\)、幅を \(B\)、ウェブ厚を \(t_w\)、フランジ厚を \(t_f\) とすると、上限は \(\min{(H-2t_f)/2,(B-t_w)/2}\) です。 Box と CFT Box の外角半径の上限は \(\min(H,B)/2\) です。 負値、NaN、無限大、過大半径は入力エラーとなり、直角や外周 0 へ読み替えません。
吹きつけ被覆用の実外周 \(P\) は、次の式で求めます。
| 形状 | 実外周 \(P\) [mm] | 成形版の包絡周長 [mm] |
|---|---|---|
| H | \(4B+2H-2t_w-(8-2\pi)r\) | \(2(B+H)\) |
| Box・CFT Box | \(2(B+H)-(8-2\pi)r\) | \(2(B+H)\) |
| 組立 H | \(2(B_u+B_l+H-t_w)\) | \(2{\max(B_u,B_l)+H}\) |
| Pipe・CFT Pipe | \(\pi D\) | \(\pi D\) |
| 平鋼(中実矩形) | \(2(B+t)\) | \(2(B+t)\) |
| 中実丸鋼 | \(\pi D\) | \(\pi D\) |
組立 H は、上下フランジとウェブの板組輪郭を表すモデル形状です。 溶接ビードを含む外表面を表すものではなく、圧延 H のフィレットも自動適用しません。 鋼管は内周を被覆対象に含めず、成形版でも円形を包絡正方形へ置き換えません。 成形版の包絡寸法だけなら半径未知でも算定できますが、既知の不正半径はエラーとします。 その他の形状はこの外周 API の対象外で、未対応形状としてエラーを返します。
たとえば H-400×200×8×13、ルート半径 13 mm の実外周は約 1561.68 mm です。 同断面の成形版の包絡周長は 1200 mm であり、吹きつけの実外周とは区別します。
フィレット・角Rは、形状由来の A・Iy・Iz・Zp、コア、質量、ファイバーの材料領域へ反映します。 算定元の区分と未知寸法の扱いは 断面諸量 を参照してください。 J は H の慣用薄肉式、角形鋼管の中心線式、CFT コアの単体自由ねじり算定を区別します。 鋼材せん断面積は既存式を維持しており、これらを実形状に対して全域で安全側とする保証はありません。 被覆重量の荷重への接続は 階共通耐火被覆の重量 を参照してください。
実装参照:SectionShape::{validate_surface_radius, coating_surface_perimeter, coating_envelope_perimeter}(crates/sepika-core/src/section_shape/surface.rs)が半径検証と外周算定を行います。
SetSectionSurfaceRadius(crates/sepika-edit/src/section_material/section.rs)が算定元に応じたフィレット半径・角Rの編集を行います。
架構作成ウィザード
架構作成ウィザードは、スパンと階高を入力するだけで整形な架構を一度に作る機能で、
ファイル > 新規(架構ウィザード)… から開きます。
日本の構造設計では、まず通り芯と階を決め、その交点に柱を立てて通りに沿って大梁を架けます。 ウィザードはその手順をそのまま入力欄にしたもので、節点を 1 つずつ置く手間を省けます。
本節では、ウィザードの入力項目と既定値、そしてそこから何が作られて何が作られないのかを 紹介します。
実装参照:入力ウィンドウは sepika_app::frame_wizard::frame_wizard_window(crates/sepika-app/src/frame_wizard.rs)が表示し、生成は sepika_core::frame_gen::frame_model(crates/sepika-core/src/frame_gen.rs)が担います。
新規モデルを作る操作である
ウィザードは現在のモデルを置き換えます。既存モデルへ架構を足す使い方はできません。 既存の節点とどう突き合わせるかを決める必要があり、その規則を持たないためです。 既存モデルへ部材を足したい場合は、立体グリッドとスナップを 使うと通り芯と階の格子点に沿って部材を引けるため、ウィザードの代わりになります。
置き換えは undo できませんので、作りかけのモデルがある場合は先に保存してください。
実装参照:結果の反映は sepika_app::frame_wizard::frame_wizard_window(crates/sepika-app/src/frame_wizard.rs)が sepika_app::app::App::load_model(crates/sepika-app/src/app/actions/io.rs)へ渡して行い、undo 履歴も同時に捨てます。
入力項目と既定値
最下階の FL、FL 間階高、各階の ΔSL を入力し、SL=FL+ΔSL から構造節点の Z を決めます。代表梁節点と最下段支持節点は SL に置きます。最下階 FL や GL へ支持節点を強制一致させません。床板側の階基準は FL です。個々の梁・床板の鉛直偏心は階差分とは別の入力です。
ΔSL が未入力の行は「入力」を選び数値を指定してください。行数増加でできた未入力差分を 0 に補完せず、生成を止めます。FL と SL の列はいずれも有限で下から上へ正順が必要です。
入力欄は「X 方向のスパン」「Y 方向のスパン」「階」「柱脚・大梁・床」の 4 つに分かれます。
| 項目 | 既定値 |
|---|---|
| X 方向のスパン | 6000 mm × 2(通り 3 本) |
| Y 方向のスパン | 6000 mm × 1(通り 2 本) |
| 階高(FL間) | 下から 4000 mm・3500 mm・3500 mm(3 階) |
| 階名 | 空欄(既定名で補う)。基部の床を含めて階高より 1 つ多く入力する |
| 平面の原点 | (0, 0) |
| 最下階 FL | 0 mm |
| 各階の ΔSL | 0 mm を表示(この内容で作成した場合に採用) |
| 通り名の接頭辞 | X 方向は X、Y 方向は Y |
| 柱脚 | ピン |
| 大梁を作る | ON(基礎梁は常に作る) |
| 床を作る | ON |
| 床の板厚 | 150 mm |
| 床の用途 | 事務室 |
| 床のコンクリート | Fc21 |
柱脚の既定はピンです。基礎梁は部材として作られるため、それによる柱脚の回転拘束は解析が 直接評価します。支点に重ねて固定を与えると、基礎そのものの回転拘束を無条件に見込むことに なるため、出発点のモデルでは見込まない側に寄せています。
スパンと階高は 1 つずつ数値を変えられるほか、「等スパン一括入力」「等階高一括入力」を使うと 本数と寸法を指定してまとめて置き換えられます。一括入力欄の既定は X 方向が 6000 mm × 2 スパン、 Y 方向が 6000 mm × 1 スパン、階が 3500 mm × 3 階です。
スパン・階高はいずれも正の値で入力してください。0 以下を許すと同じ位置に節点が重なり、 長さ 0 の部材ができて剛性行列が特異になるため、入力が正でない場合は生成の前に止めます。
階名の入力欄は床ごとに並びます。階は床であり、床の数は階高(層)の数より 1 つ多いため、 表の一番下に最下階の行があります。最下階の FL は表上部、ΔSL はその行で入力します。 最下階の行には直下階との階高欄がありません。階名は自由に変更できます。
階名を空欄にすると、床基準の既定名で補います。下から 1F・2F… となります(階の分布)。最上階も数字で通すため、
屋根であれば RF へ付け替えてください。
階名は階ごとに違う名前にしてください。同じ名前の階があると解析前チェックが止めます。
実装参照:既定値は sepika_core::frame_gen::FrameSpec::default と sepika_app::frame_wizard::FrameWizardState::default(crates/sepika-core/src/frame_gen.rs、crates/sepika-app/src/frame_wizard.rs)が持ち、正の値の検証は FrameSpec::validate が行います。
何が作られるか
「この内容で作成」を押すと以下の 7 つが作られます。作成前に節点数・柱本数・梁本数・床枚数を 表示しますので、規模を確かめてから実行してください。
- 節点:全格子点(X 通り × Y 通り × レベル)に 1 つずつ
- 柱:各格子点で上下に隣り合うレベルを結ぶ。基部から最上階まで通す
- 基礎梁:基部レベルで、隣り合う通りの間に架ける
- 大梁:基部より上の各レベルで、隣り合う通りの間に架ける
- 柱脚支点:最下レベルの節点へ、選んだ支持条件(固定またはピン)を与える
- 通り芯:X 方向・Y 方向のグループを新設し、通り名は座標の昇順に
X1・X2… - 階:全レベルに 1 つずつ(先頭は基部の床)
基礎梁は常に作ります。日本の RC 造・S 造では基礎梁を必ず設けるため、作る/作らないの 選択肢は設けていません。「大梁を作る」を OFF にしても基礎梁は残ります。
柱は材軸が鉛直で局所座標系の基準ベクトルに鉛直方向を使えないため、柱はグローバル X 方向、 梁はグローバル Z 方向を基準ベクトルにとります。
通り芯の出所は「手動」になります。あとから「柱位置から自動生成」を実行したときに、 ウィザードが付けた通り名が機械的な番号で上書きされないようにするためです (通り芯)。
階の所属節点・剛床・地震用重量は節点と部材が決まってはじめて定まる派生値のため、 ウィザードは空のままにし、生成後の準備計算で埋めます。
実装参照:生成規則は sepika_core::frame_gen::generate_frame(crates/sepika-core/src/frame_gen.rs)が担い、実行前の規模表示は FrameSpec::counts が算定します。
柱・梁の断面と材料は作らない
ウィザードは柱・梁(基礎梁を含む)の断面と材料を割り当てません。断面は利用者が決めるものであり、 もっともらしい既定断面を割り当てると、入力し忘れたまま解析が通ってしまうためです。 断面が未割当のまま解析しようとすると、解析前チェックが「断面が未割当の部材があります」で 止め、どの部材が未割当なのかを名指しします。
材料も割り当てません。断面形状が決まらないかぎり材料だけあっても部材の剛性は決まらないため、 材料は断面とあわせて利用者が決めることになります。生成後は断面タブで断面を作り、材料を 割り当ててから部材へ割り当ててください。
実装参照:部材へ断面を割り当てない生成は sepika_core::frame_gen::generate_frame が行い、未割当の検査は sepika_solver::statics::analysis::precheck::model_issues(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs)が担います。
床は断面とコンクリートを作る
床は解析対象の部材ではなく、解析上は荷重(自重・積載)としてのみ効く二次部材です。 板厚さえ決めれば断面が確定し、材料は自重を決める入力にすぎないため、床については 断面と材料の両方をウィザードが作ります。
床を作る設定では、板厚 150 mm の断面 S15 を1 枚だけ作り、全階の床へ割り当てます。
床の板厚と自重は断面と材料からしか解決できず、どちらかが欠けた床は解析前チェックが
止めてしまうため、床を作るなら断面とコンクリートもあわせて作ります
(床の断面と自重)。
板厚を変えて入力すれば、その値の断面を作ります。
符号は板厚を変えても S15 のままです。 符号は識別のための札なので、板厚に合わせて
S20 のように付け替えたい場合は、生成後に断面タブで変更してください。
床のコンクリートは Fc18〜Fc60 から選べ、既定は Fc21 です。選んだグレードの材料を
1 つだけ作り、床の断面 S15 へ割り当てます。材料の規格値(ヤング係数・密度・Fc)は
材料タブのプリセットと同じもので、床の自重はこの密度から決まります
(標準材料一覧)。
材料を割り当てない選択肢は設けていません。材料のない床は解析前チェックが止めるので、 選ばずに済ませてもやり直しになるだけです。別のコンクリートを使う場合は、生成後に 材料タブで差し替えてください。
床は基部を含む全レベルの通り芯の各区画(隣り合う通りで囲まれた矩形)に 1 枚ずつ作ります。 X 方向・Y 方向とも通りが 2 本以上ないと通り芯の区画ができないため、片方が 1 本のモデルでは床を 作りません。
床の用途は積載荷重のプリセットで、選んだ用途が全階の床へ入ります。用途を「なし」にすると 積載荷重が入らないため、床の積載を別途入力する場合に使います (積載荷重)。
実装参照:床の断面と材料は sepika_core::frame_gen::generate_frame(crates/sepika-core/src/frame_gen.rs)が作り、材料の規格値は sepika_core::material_grade::material_presets が与えます。
生成後の流れ
ウィザードが作るのは架構と床割りまでですので、解析へ進むには続けて以下を行ってください。
- 断面タブで断面を作り、材料を割り当てる
- 部材へ断面を割り当てる(3D ビューで部材をクリックしても割り当てられる)
- 準備計算を実行する
同じ断面を階ごとに配りたい場合は、階への複製を使うと、下の階で決めた 断面を上の階へまとめて配れます。
立体グリッドとスナップ
3D ビューには、通り芯と階から導いた立体グリッドを下敷きとして描けます。 格子点へスナップして部材を引けるため、節点を 1 つずつ作らなくても架構を組み立てられます。
通り芯は識別のためのデータで構造計算には用いませんが(通り芯)、 柱・大梁を置く位置は通りと階の交点に限られるため、モデリングの下敷きとしては有用です。 計算に使わないデータであっても 3D ビューへ描くのは、この理由によります。
本節では、何を描くのか、格子点がどう決まるのか、スナップがどう働くのかを紹介します。
実装参照:格子の導出は sepika_core::frame_gen::space_grid(crates/sepika-core/src/frame_gen.rs)が、描画とスナップは sepika_app::viewer::space_grid(crates/sepika-app/src/viewer/space_grid.rs)が担います。
表示の切り替え
「表示設定」内の「通り芯グリッド」で表示を切り替えます。既定は ON です。
このトグルは、通り芯と階の両方があるモデルにだけ表示します。どちらかが欠けると格子点が 定まらず、描く格子がないためです。構面の基準線と二重になって読みづらくなるため、構面表示 (軸組図・伏図)中も描きません(構面の表示)。
スナップの対象は、格子を描いているときだけです。構面表示中は格子を描かないため、スナップも 既存節点だけになります。正射影では別の構面の格子点が画面上で重なるため、対象にすると見ていない 構面へ節点と部材ができてしまいます。
実装参照:トグルの状態は sepika_app::app::UiViewState::show_space_grid(crates/sepika-app/src/app/mod.rs)が持ち、表示 UI は sepika_app::viewer::controls::view_controls(crates/sepika-app/src/viewer/controls.rs)が提供し、格子の有無は sepika_app::viewer::space_grid::has_grid が判定します。
何を描くか
各レベルの平面格子だけを描き、鉛直線は描きません。鉛直線は柱と重なる位置に引かれるため、 柱のある架構では情報が増えず線だけが増えてしまいます。
通り名は最下レベルの端にだけ添えます。全レベルに繰り返すと画面が文字だらけになり、かえって 架構が読みづらくなるためです。
格子線は部材より淡い色で描きます。架構と同じ濃さで線が重なると、どれが実在する部材なのか 判断できなくなるため、色の濃さで下敷きだと分かるようにしています。
実装参照:描画は sepika_app::viewer::space_grid::draw(crates/sepika-app/src/viewer/space_grid.rs)が担います。
格子点の決まり方
平面の格子線は、離れを測る向きがグローバル軸に沿う平行芯グループから取ります。 方向角 270° のグループが X 方向、方向角 0° のグループが Y 方向の格子線になります。
斜めの平行芯グループと平行芯以外のグループ(円弧芯・放射芯・作図芯)は、直交する格子として 表せないため対象にしません。これらのグループしか持たないモデルでは格子が空になるため、 トグル自体が現れません。
離れはグループの原点・方向角で測った符号付きの値なので、グローバル座標へ直してから昇順に 並べます。同じ位置に通りが複数あるモデル(取り込みで重複した通り)では、許容差 1 mm 以内の 格子線を 1 本にまとめ、通り名は先に現れたものを採ります。
鉛直方向のレベルは、構造節点の最下端と各階の SL です。構造最下端を GL や最下階 FL と同一視しません。 SL が未設定の階の格子面は表示しません。構造最下端と重なる SL は重複表示を避けます。
格子点はこの平面の格子線と鉛直のレベルの交点すべてで、3 通り × 2 通り × 4 レベルの架構で あれば 24 個になります。
実装参照:格子線・レベルの導出(軸沿いの平行芯の採用、1 mm の重複統合、構造最下端の追加)は sepika_core::frame_gen::space_grid(crates/sepika-core/src/frame_gen.rs)が担います。
格子点へのスナップ
梁作成などの 3D 編集や荷重の対象選択を始めると、変形表示と変形重ね表示を解除します。 開始直後から節点と格子点はともに未変形のモデル座標で選び、重なった位置では既存節点を優先します。 小梁・間柱の支持部材も未変形の材軸を選びます。取消・完了後も未変形表示を維持します (変形図の表示倍率)。
梁作成モードでは、クリック位置を既存節点または格子点へスナップします。どちらも許容差 10 px(画面上の距離)で判定し、許容差の内に既存節点があればそれを優先します。 同じ位置に節点を重ねて作ると、見た目では気づけない二重節点ができ、部材がつながっていない モデルになってしまうためです。
節点のない格子点を選んだ場合は部材の生成とあわせて節点も作りますが、節点の追加と部材の追加は 1 つの操作にまとめてあるため、undo 1 回で節点ごと取り消せます。
格子点の座標が既存節点と1 mm 以内で一致する場合も、その既存節点を使い回します。 表示されていない節点(床・二次部材だけに使われる節点)も対象にするため、「床壁・二次部材」を 非表示にした状態で部材を引いても二重節点はできません。
始点と終点が同じ節点に解決される場合は、長さ 0 の部材ができて剛性行列が特異になるため、 何も作らずにクリックを捨てます。
グリッドの表示を OFF にしたときも、スナップの対象は既存節点だけになります。見えていない格子点が 選ばれると、意図しない位置に節点ができてしまうためです。
実装参照:スナップは sepika_app::viewer::space_grid::{pick, SnapPoint}(crates/sepika-app/src/viewer/space_grid.rs)が、クリック処理からの呼び出しは sepika_app::viewer::input::handle_click が担います。
作られる部材の属性
スナップで作る部材は、断面が未割当・両端固定で、架構作成ウィザードが作る柱・大梁と同じ 属性を持ちます。
局所座標系の基準ベクトルは、材軸が鉛直ならグローバル X 方向、それ以外はグローバル Z 方向に とります。上下のレベルの格子点を結べば柱を引けますが、鉛直材へ Z 方向を与えると材軸と平行に なり、基準ベクトルとして働かないためです。鉛直かどうかは、両端の水平距離が 1 mm 未満かで 判定します。
断面は作成後に割り当ててください。未割当のままでは解析前チェックが止めます。
実装参照:部材と節点の生成は sepika_app::viewer::space_grid::beam_command(crates/sepika-app/src/viewer/space_grid.rs)が 1 つの sepika_edit::CompositeCommand として組み立てます。
小梁・間柱を領域内へ配置する
梁作成モードと同じ 3D 操作で、床領域へ小梁を、壁領域へ間柱を配置できます。 左パネル「作成」の**「小梁配置モード」「間柱配置モード」**がそれです。
操作は 2 段階です。まず親領域(小梁は床領域、間柱は壁領域。壁は構面で選ぶ)を作業範囲として クリックします。選択中の領域は強調表示されます。次に、両端が取り付く支持部材を 2 点クリック します。1 点目は端 A として丸印で示し、2 点目で端 B が決まると配置します。
支持部材は、主架構の 2 節点梁と、同じ種別の既存二次部材(小梁なら小梁、間柱なら間柱)です。 クリック位置を材軸へスナップし、材軸上の位置(0〜1)を取付き位置として記録します。 両端が作業範囲の内側で支持部材の材軸へ解決できない場合は配置しません (荷重の行き先が決まらない端を自由端へ読み替えると危険側になるため、利用者が明示したときだけ 片持ちにします)。片持ちにする場合は配置フォームの「端 B を自由端にする」を使います。
版の割当を保持する条件は、境界を構成する支持部材の種類・ID・材軸上の区間が同じことです。 境界辺の始点や巡回方向だけが変わっても同じ割当領域として扱い、区間の +0 と -0 は区別しません。 それ以外の区間値は厳密に区別するため、0.5 と 0.5000000000000001 は異なる境界です。 親領域の表示名・重心・面積が同じでも、別の支持境界へ版や入力荷重を引き継ぎません。 節点だけを移動して同じ支持部材・区間が残る場合は、版の仕様と入力荷重を保持して幾何を再確認します。 複数節点の座標をまとめて編集する場合は、最終座標で支持境界を判定します。 交点移動で区間が変わる場合や分割・統合は新しい未設定領域になります。親の床領域・壁領域の番号は 所属の再整理で変わる場合があり、割当領域の安定 ID とは別です。
旧版が失われる主架構の追加・削除、二次部材の配置・削除・端部変更では、除去する版 ID・版件数・面荷重の件数と値・室用途・壁の開口重量を 確認画面に表示します。「取り除いて編集」を押すまで、モデルと Undo/Redo 履歴は更新しません。 「キャンセル」で入力を維持します。確定後は 1 回の Undo で元の割当領域 ID・版 ID・割当状態・版仕様・ 入力荷重へ戻り、Redo で同じ編集結果へ進みます。 節点テーブルの座標入力・貼付・クリアでは版除去の確認を行えないため、旧版や入力荷重を失う操作を 理由とともに拒否し、モデルと履歴を維持します。支持境界を保つ座標変更は適用できます。
準備計算で境界が変わって旧版が孤立する場合は、版 ID と入力荷重を示して更新を停止します。 確認付きの支持部材編集で版を除去する操作とは区別します。境界キーが衝突する領域や同じ版を複数領域へ 割り当てた不正入力も、モデル・ID の払い出し・Undo/Redo 履歴を更新せず理由を表示します。 Redo 時にも不正入力を検査し、拒否された場合はモデル・編集回数・両履歴と操作ラベルを維持して理由を表示します。 何も適用できない Redo も履歴を消費しません。入力を修正した後、同じ Redo を再試行できます。 未設定領域が残る場合の解析前確認は 床板・壁版の表示 を参照してください。
配置は、安定 ID の払い出し・親領域への追加・床板/壁版割当領域の再構築・境界が変わって 参照先を失った版の除去までを 1 つの Undo 単位にまとめます。配置後、分割された割当領域は 未設定(赤)として現れるので、あらためて版を割り当ててください (床板・壁版の表示)。
同じ操作は「床」タブ・「壁版」タブの配置フォームからも行えます。親領域・両端の支持部材・ 材軸位置(または片持ちの自由端ベクトル)・断面・名前を指定して「配置」を押します。一覧では 安定 ID で表示し、支持条件の変更と削除ができます。
実装参照:作業範囲の選択は sepika_app::viewer::pick::pick_parent_region、支持部材のスナップは
pick_support_anchor(crates/sepika-app/src/viewer/pick.rs)が担い、クリック処理は
sepika_app::viewer::input::handle_click、強調表示は
sepika_app::viewer::scene::draw_work_scope(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が行います。
配置・移動・削除は sepika_edit::{PlaceSecondaryMember, SetSecondaryMemberEnds, DeleteSecondaryMember}
(crates/sepika-edit/src/secondary.rs)で、再構築と版の除去は
sepika_core::model::Model::rebuild_assignment_regions_dropping_orphan_plates が行います。
テーブルの配置フォームと一覧は sepika_app::tables::secondary(crates/sepika-app/src/tables/secondary.rs)
が担います。
主架構・座標変更は sepika_edit::{AddMember, DeleteMember, SetNodeCoord}
(crates/sepika-edit/src/node_member.rs)、除去候補診断は sepika_edit::preview_plate_assignment_loss、
GUI の確認は sepika_app::app::App::apply_model_edit、確認できない節点グリッドの拒否は
sepika_edit::UndoStack::run_preserving_plate_assignments と
sepika_app::app::node_grid::NodeGridAdapter(crates/sepika-app/src/app/node_grid.rs)が担います。
Redo の候補検証は sepika_edit::UndoStack::redo、GUI の拒否表示は
sepika_app::app::App::redo_action(crates/sepika-app/src/app/actions/view.rs)が担います。
階への複製
階への複製は、ある階で決めた断面・荷重・床割り・二次部材を、ほかの階へまとめて配る機能です。 右ドックの「① 準備計算」パネルにある「階の定義」で、各行の ⧉ ボタンから開きます。
実務では下の階で断面と床を決め、上の階へ同じ設定を配ってから階ごとに差分を直すという進め方を とりますので、その「配る」操作をひとまとめにしたものです。
本節では、複製が何を意味するのか、どう突き合わせるのか、何が作られて何が消えるのかを 紹介します。
実装参照:ダイアログは sepika_app::story_copy_view::{open, story_copy_window}(crates/sepika-app/src/story_copy_view.rs)が表示し、複製の本体は sepika_edit::CopyStory(crates/sepika-edit/src/story_copy.rs)が担います。
複製の意味
複製は複製元の状態をそのまま写します。複製元に「無い」という状態も写すため、複製元で 断面が未割当の部材、床が無い位置、荷重が載っていない部材については、複製先の断面が外れ、 床が削除され、荷重が取り除かれます。
この振る舞いは「既存を上書きする」で切り替えます。
| 既存を上書きする | 複製先で起きること |
|---|---|
| ON(既定) | 複製元の状態をそのまま写す。複製元に無いものは解除・削除する |
| OFF | 複製先が空いているところにだけ入れる。既存には触れず、削除もしない |
どちらの設定でも、同じ複製を 2 回実行した結果は 1 回のときと同じです。足すだけの動きにすると 2 回目で荷重が二重になり、見た目では気づけないまま重い設計になってしまうためです。
実装参照:上書きの切替は sepika_edit::CopyStory の overwrite と結果 sepika_edit::CopyStoryReport(crates/sepika-edit/src/story_copy.rs)が表します。
対象の選択
複製元の階を 1 つ、複製先の階を 1 つ以上選びますので、2 階で決めた設定を 3 階・4 階・5 階へ 一度に配れます。 複製元へ配る意味はないため、複製元の階は複製先として選べないようにしています。
複製する対象は次の 4 つで、いずれも既定は OFF です。複製は削除・解除も行うため、何を配るかは 利用者が必ず選ぶ形にしています。1 つも選んでいない状態では実行ボタンを押せません。
| 対象 | 内容 |
|---|---|
| 断面の割当 | 部材・床・二次部材の断面。複製先の階名で断面を複製してから割り当てる |
| 荷重 | 手入力の節点荷重・部材荷重と、床の面荷重・用途 |
| 床 | 床の境界の形 |
| 二次部材 | 小梁・間柱 |
実装参照:対象は sepika_edit::CopyTargets(crates/sepika-edit/src/story_copy.rs)が持ち、選択 UI は sepika_app::story_copy_view::story_copy_window が表示します。
階の判定と対応付け
階に属するかどうかは、材端節点のうちもっとも高い節点の所属階で判定します。
SEPIKA の階は床基準なので、階 2F に属するのは 1FL→2FL の柱と、2FL の大梁・床になります。
判定の情報源を 1 つに保つため、複製だけ別の規則は持ちません。
節点の所属階は準備計算が付けるため、準備計算を実行していないモデルでは複製する相手を 1 つも見つけられません。その状態ではダイアログが警告を出しますので、先に準備計算を実行して ください。
複製元と複製先の突き合わせは、平面位置と階の中での高さで行います。材端・頂点それぞれに ついて、XY 座標が許容差 1 mm 以内かを見たうえで、その節点が階の中のどの高さにあるか (直下階のレベル・当該階のレベル・そのあいだ)をあわせて見ます。節点 ID では対応が取れない (階ごとに別の節点である)ため、座標で突き合わせるほかありません。
高さを見るのは、平面へ投影すると重なる部材を区別するためです。1FL→2FL のブレースと 2FL の 大梁はどちらも材端の XY が同じで、同じ構面の X ブレース 2 本も互いに区別できません。高さを 足すと、大梁は両端が当該階のレベル、ブレースは直下階と当該階になり、X ブレースは XY との 組み合わせが入れ替わるため区別できます。高さは階高に対する比で持つので、階高の違う階へも 対応が取れます。
それでも同じキーになる相手が 2 つ以上ある場合は、どちらを選ぶべきか決められないため配りません。 飛ばした件数は実行結果に出します。並び順しだいでどちらかが選ばれると、結果を予測できないためです。
複製先に相手が見つからなかった分も同じく配らず、飛ばした件数を実行結果に出します。
実装参照:階の判定は sepika_core::model::Model::member_story(crates/sepika-core/src/model/axis.rs)を共用し、対応付けは sepika_edit::story_copy の CoordIndex・level_tag・PlanIndex(crates/sepika-edit/src/story_copy.rs)が担います。
複製元の平面の外には手を触れない
手を触れるのは、複製元に対応する相手が見つかったものだけです。 複製元の平面の外にある 複製先の部材・床・二次部材・荷重には、上書きが ON でも触れません。
セットバックや張り出しのある建物を考えると、この線引きが効いてきます。3 階が 2 階より広い 建物で 2 階から 3 階へ床を複製した場合、2 階の平面の外にある 3 階の床は残ります。複製元に 「無い」のではなく、複製元の範囲の外にあるだけだからです。ここを区別しないと、利用者から見て 複製元と関係のない場所が消えることになります。
実装参照:対象範囲の限定は sepika_edit::story_copy::{copy_slabs, copy_secondary, copy_case_loads}(crates/sepika-edit/src/story_copy.rs)が担います。
部材と節点は作らない
複製は部材と節点を作りません。架構そのものは架構作成ウィザードか手作業で先に用意されて いる前提で、この機能の役目は断面・荷重・床割りを配ることだからです。
床と二次部材だけは、必要な節点がそろっていれば新しく作ります。複製元にしかない床を配れないと、 床割りを配るという目的そのものが果たせなくなるためです。 囲まれた床板は版の有無ごと写します。複製元に版がなければ、複製先も版なし(断面未割当)で作ります。 取り付く床板(片持ち・バルコニー等)は複製しません。自由端に節点が無く、取付き先の節点だけでは 同じ形を復元できないためです。飛ばした件数は実行結果に出ます。
実装参照:床・二次部材の生成は sepika_edit::story_copy::{copy_slabs, copy_secondary}(crates/sepika-edit/src/story_copy.rs)が担い、境界を持たない取り付く床板は対象外にします。
断面の複製
断面の識別は符号+階です(断面の符号と階)。そのため断面を配る
ときは、複製先の階名を持つ断面を新しく作ってから割り当てます。符号は変えないため、
C1 (2F) を 3F へ配ると C1 (3F) ができます。
床と二次部材の断面も同じ規則で読み替えます。3F の床が 2F の断面を指したままにならないよう、 複製で床を作るときも複製先の階名の断面へ結び直します。すでにある床・二次部材の断面をそろえるのは 「断面の割当」が受け持ちます。
すでに同じ符号+階の断面がある場合は、寸法が違ってもそれを使い、中身は書き換えません。
断面はどの階の部材からでも参照できるため、中身を書き換えると複製の対象範囲の外にある部材まで
一斉に変わってしまうからです。上階ほど柱を細くするのは普通の設計で、C1 (2F) と C1 (3F) の
寸法が違うのは符号+階という識別の設計意図そのものでもあります。
寸法・材料が複製元と違う既存断面を使う場合は、実行前の見込みでその符号+階を名指しします。 そろえたい場合は断面タブで直してください。
CFT 断面は FrameSectionUse::Column 専用のため、用途不一致の主架構部材と二次部材への割当は行いません。
CFT が複製元の床板に設定されている場合は、床板の形状・荷重・用途を複製し、複製先の断面だけを未割当にします。
複製元が CFT の床板で、既存の複製先床板を上書きする場合は、用途不一致の断面を残さず複製先の断面も未割当にします。
上書きしない場合は既存の有効な複製先断面を保持します。CFT の割当拒否件数と、実際に断面を解除した件数は、実行前の見込みと実行結果の CopyStoryReport に表示します。
新しく作ることになる断面も、実行前に符号+階の一覧で確かめられます。
実装参照:複製先の階名を持つ断面の生成・再利用は sepika_edit::story_copy::section_for_story(crates/sepika-edit/src/story_copy.rs)が担います。
荷重の複製
複製するのは手入力の荷重だけです。準備計算・荷重同期が作る荷重は同期のたびに全件が 作り直されるため、複製しても次の同期で消えてしまいます。
床の面荷重と用途も「荷重」の対象で、床の境界の形は「床」の対象として分けてあるため、形だけを 配って荷重を配らない、あるいはその逆の使い方もできます。
実装参照:手入力荷重の選択と床の面荷重・用途の複製は sepika_edit::story_copy::{copy_case_loads, copy_slab_loads}(crates/sepika-edit/src/story_copy.rs)が担います。
載荷位置は材長へ合わせる
部材荷重の載荷位置は、i 端からの mm で持つ絶対位置です。同じ平面位置で突き合わせるので大梁の 材長は一致しますが、柱は階高が違えば材長も違います。そのまま写すと載荷区間が材長を超え、 等価節点力の積分が材の外まで及んで結果が誤るため、次のように扱います。
| 荷重 | 複製先での扱い |
|---|---|
| 全長追従の等分布 | 強度と全体座標の方向を保持して複製先の材長へ合わせる |
| 固定距離の区間分布・中間集中荷重 | 位置をそのまま写す。全長と数値が一致しても拡張しない |
| 複製先の材長に収まらないもの | 配らない(件数を実行結果に出す) |
固定距離は有限な位置で、集中荷重は 0≤a≤L、区間分布は 0≤a<b≤L に収まるものだけを配ります。 材長 L は有限で 1e-9 mm より大きい必要があります。0.5 mm・1.5 mm の超過も配りません。 両端の集中荷重、符号付き・ゼロ強度、小さい正の区間と固定全長区間は、その位置・強度を保持します。
外壁荷重のような全長等分布は「材長いっぱい」という意図が明確なので合わせます。一方、i 端から 2 m の位置に載る設備荷重のような部分載荷は絶対位置に意味があるため、材長比で按分すると 利用者の意図から外れます。収まらないものを縮めると区間長が黙って変わるので配りません。
節点の座標編集では、固定距離の載荷区間を保持できない最終形状は編集全体を拒否します (荷重の入力)。 不正な部材荷重は追加・更新・保存・読み込みでも拒否します。組み立てたモデルに不正な荷重がある場合は、 モデル整合性チェックと解析前チェックがエラーにします。
実装参照:全長載荷の材長合わせと収まらない荷重の除外は sepika_edit::story_copy::fit_member_load(crates/sepika-edit/src/story_copy.rs)が担います。
実行前の見込み
実行ボタンの上には、複製したときの見込みを表示します。これはモデルを変えずに複製を一度試した 結果なので、断面が何枚増えるのか、荷重が何件載せ替わるのか、相手が見つからず飛ばされるのが 何件なのかを、実行する前にそのまま確かめられます。
削除・解除を含む場合は、その旨を強調して示します。 複製は影響が広いため、見込みを確かめて から実行してください。配れるものが 1 つもない組み合わせでは、実行ボタンを押せないように しています。
実装参照:見込みは sepika_edit::CopyStory::preview(crates/sepika-edit/src/story_copy.rs)がモデルを変えずに算定し、表示は sepika_app::story_copy_view::preview_section(crates/sepika-app/src/story_copy_view.rs)が担います。
取り消し
複製は undo 1 回でまとめて元へ戻せます。削除した床も、解除した断面も戻ります。断面の追加・ 床の追加削除・荷重の載せ替えが絡み合い、個別の逆操作を組むと順序の取り違えで壊れやすいため、 逆操作はモデル全体の復元としています。
実装参照:モデル全体の復元は sepika_edit::RestoreModel(crates/sepika-edit/src/story_copy.rs)が担います。
画面構成と工程タブ
SEPIKA の画面は、上部の工程タブ、左右のアイコン列とドック、中央のビュー、下部のドックと ステータスバーからなります。工程タブは解析の流れ(モデル→荷重→解析→結果→設計→レポート)に 沿って並びますが、進行をロックしません。構造設計は断面変更と再計算を繰り返すため、 いつでも前の工程へ戻ってモデルを編集できます。
本節では、画面の構成と、ドック・ログ・stale(要再計算)・断面編集の現行挙動を紹介します。 準備計算の内容とモデル整合性チェック(診断)は 準備計算、結果の表示は 結果の表示を参照してください。
実装参照:工程タブは sepika_app::app::Tab(crates/sepika-app/src/app/mod.rs)が表し、タブ切替時のドック配置は sepika_app::app::App::apply_tab_preset(crates/sepika-app/src/app/actions/mod.rs)が設定します。
工程タブとドックの初期配置
上部ツールバーに、ファイル操作、工程タブ、Undo/Redo のボタンを置きます。工程タブは モデル・荷重・解析・結果・設計・レポートの 6 つです。
工程タブのクリックは、その工程に適したドック配置へ切り替えるプリセットとして働きます。 以後のドック開閉・パネル切替の手動変更は妨げません。
| タブ | 切替時の初期配置 |
|---|---|
| モデル | 左ドックにナビゲータ、下ドックにモデル表、右ドックにインスペクタ |
| 荷重 | 左ドックにナビゲータ、下ドックに荷重表、右ドックにインスペクタ |
| 解析 | 右ドックに ① 準備計算、下ドックにログ |
| 結果 | 左ドックにナビゲータ、右ドックにインスペクタ |
| 設計 | 右ドックにインスペクタ |
| レポート | 変更なし |
結果が陳腐化しているときは、結果タブ・設計タブの見出しに「⚠」を付けます(stale)。
実装参照:タブ見出しの stale マークは sepika_app::app::App のツールバー描画(crates/sepika-app/src/app/mod.rs)が Staleness::results_stale を見て付けます。
左右のアイコン列(ドック)
左右の端に、ドックを開閉するアイコン列を常時表示します。対象のドックが開いていてそのパネルが アクティブならクリックで閉じ、それ以外は開いてそのパネルをアクティブにします。
- 左アイコン列:ナビゲータ、作成パレット
- 右アイコン列:インスペクタ、① 準備計算、静的解析、固有値、増分解析、時刻歴応答、質点系
右アイコン列は、ウィンドウが低いときに縦スクロールして質点系まで操作できます。パネルの切替時や Tab / Shift+Tab でフォーカスを移したときは対象アイコンが見える位置へ移動します。選択したまま 手動でスクロールした位置は保持します。Enter / Space でもフォーカス中のアイコンを操作できます。
右ドック本体の内容も、アイコン列とは独立して縦スクロールできます。① の番号は準備計算の 見出しにだけ付けます。各解析パネルの先頭には 最終実行時刻と stale 表示を出します。左右ドックは境界をドラッグして幅を変えられます。
実装参照:左右のアイコン列は sepika_app::app::panels::activity_bar(crates/sepika-app/src/app/panels/activity_bar.rs)が描き、アイコンは assets/icons/ の SVG です。
中央の 3D ビューの操作
中央の 3D ビューは、左ドラッグで回転、右ドラッグで平行移動(パン)、スクロール(ピンチ)で ズームします。回転は水平ドラッグが鉛直軸まわり、垂直ドラッグが俯仰のターンテーブル方式で、 ロールしないため建物の鉛直軸は常に画面で縦に保たれます。回転・パン・ズームの操作割り当ては 3D を描く全てのビューで共通です。ズームは、ポインタがそのビューの描画領域にあるときだけ 反応します(重なったポップアップの手前側だけが反応します)。
実装参照:回転・パン・ズームの入力は sepika_app::viewer::camera::CameraState::apply_pointer_input(crates/sepika-app/src/viewer/camera.rs)が担います。
下ドックとステータスバー
下ドックのタブは、ログ・モデル・荷重・準備計算・診断です。
- ログの見出しには件数を付けます。
- 準備計算は陳腐化しているとき「準備計算 *」と表示します。
- 診断は最新で不備があるとき「診断 (E…/W…)」とエラー・警告の件数を表示します。
ステータスバーのアイコンでも下ドックを開けます。ファイル名には未保存の変更があるとき 「●」を付け、実行中はジョブ名と経過秒を表示します。解析結果の状態は ✓ 最新 / ⚠ stale / ▷ 未実行 の 3 つです。直近のエラーは 1 行で表示し、クリックすると 下ドックを開いてログタブへ切り替えます。右端には部材・節点・断面の件数を表示します。
実装参照:下ドックのタブとステータスバーは sepika_app::app::panels::status_bar(crates/sepika-app/src/app/panels/status_bar.rs)が描きます。
イベントログ
イベントログは、セッション内の出来事(エラー・注意・ジョブの開始と完了など)を時系列で 保持し、下ドックに表示します。レベルは 情報・注意・エラーの 3 段階で、時刻は アプリ起動からの経過時間です。保持件数の上限は 1000 件で、超えたものは古い順に捨てます。
- エラーはステータスバーの 1 行表示とログの両方へ反映し、下ドックを自動で開きます。 エラーが埋もれると解析結果を誤って信頼しかねないためです。
- 注意はステータスバーとログへ反映しますが、自動では開きません。
- 情報はログのみに残します。
実装参照:ログは sepika_app::app::{LogLevel, LogEntry, EventLog}(crates/sepika-app/src/app/mod.rs)が保持し、発行は sepika_app::app::App::{report_error, report_notice, report_info}(crates/sepika-app/src/app/actions/mod.rs)に集約しています。
ナビゲータと選択の連動
左ドックのナビゲータは、階・部材グループ・断面・材料・荷重ケース・結果ケースなどのツリーです。 ナビゲータの選択と、3D ビューのピック、下ドックのテーブル行は双方向に連動します。 解析結果ツリーの操作はナビゲータの解析結果ツリー、 荷重ケースのツリーは荷重の入力を参照してください。
3D ビューの部材選択
通常の部材選択では、現在表示している部材本体を対象にします。線材表示では線、断面表示では 塗られた面と輪郭を選べます。断面が未定義などで線だけを表示する部材は、その線が対象です。 断面の補助中心線、結果図、注記や強調表示は、選択対象を広げません。
- 面内・境界や、線・輪郭の描画幅内にある部材を優先します。複数の本体に重なる位置では、 最後に描かれた本体を選びます。
- 本体に直接重ならない位置では、線・輪郭から 8 px 以内の最も近い部材が候補になります。 同じ距離では、最後に描かれた本体を優先します。
- H 形などの塗られていない空隙は面として選べません。輪郭から 8 px 以内なら近傍候補になります。
ポインタを重ねたときの通常の部材強調とクリックは、同じ候補に対応します。モデル化図・検定比図・ ヒンジ図の部材情報もこの候補に対応します。検定比図の節点情報や免震支点の専用情報が優先される 位置では、通常の部材強調を重ねません。ViewCube や手前のウィンドウ・ポップアップの上では、 背後の部材を選択しません。部材の作成・割当・荷重対象指定中は、それぞれの専用操作が優先されます。
構面・表示設定・表示モードの変更で本体が非表示になった部材は、候補と 3D ビューの強調から外れます。 選択状態は保持され、インスペクタ・表・ナビゲータとの連動も維持します。選択中の部材を再び表示すると、 選択強調が戻ります。空白のクリックで選択を解除できます。選択のみでは模型・Undo 履歴・解析結果を変更しません。
実装参照:部材候補は sepika_app::viewer::pick::MemberBodies(crates/sepika-app/src/viewer/pick.rs)、
表示対象との連動は sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が担います。
3D 選択から断面編集(共有編集と複製)
3D ビュー・ナビゲータ・テーブルで部材を選ぶと、右ドックのインスペクタにその断面と 算定プロパティを表示します。
- 編集はその断面を参照する全部材へ波及します。インスペクタには 「この断面を使う N 部材に影響」と影響する部材数を常時表示し、意図しない部材まで 変わることを防ぎます。
- 並びの**「複製してこの部材だけ別断面に」**は、新しい断面を作って選択中の部材だけを 割り当て直します。
いずれも編集トランザクションとして適用するため Undo でき、断面の作成・符号と階の操作は 断面の符号と階を参照してください。
実装参照:インスペクタの断面表示と波及は sepika_app::app::panels::inspector(crates/sepika-app/src/app/panels/inspector.rs)が担い、波及の編集は sepika_edit::EditSectionShape、複製は sepika_edit::DuplicateSectionForMember を用います。
配筋の径の表示と選択
断面編集の主筋径・せん断補強筋径は、選択肢にある標準呼び名なら D25・D29 のように
表示します。それ以外の保持値は 28.6 mm のように数値と単位で表示します。
径の欄を表示したり選択肢を開いたりするだけでは、保持値は変わりません。
選択肢から標準呼び名を選ぶと、その呼び名の数値へ変更します(例:D29 を選ぶと 29)。
任意の数値径をこの欄から直接入力することはできません。
実装参照:sepika_app::section_editor::size_field(crates/sepika-app/src/section_editor.rs)が径の表示と選択を担います。
共通参照と固定対象
インスペクタの「共通参照・固定対象」から、本案のプロジェクト・案・編集世代を確認できます。 「画面選択を固定対象にする」は、その時点の対象集合を保持します。以後の画面選択、階・通りの 切替、単位や視点の変更では固定対象は変わりません。選択がない場合は開いている断面・材料・ 荷重ケースや階・通りを対象にできます。
固定対象の「図へ」「表へ」「詳細へ」は同じ対象を表示します。階・通りの絞込みで見えない対象は 「非表示」と示し、「対象を表示」で絞込みを解除できます。非表示の対象を固定集合から除外しません。 表示操作は入力・Undo・計算結果の有効性を変更しません。共有断面の既存の影響部材表示も維持します。 階・振動ケースの共通入口からの表表示、材料・荷重ケース・組合せの図表示には未対応です。 未対応の組合せは表示を変更せず理由を通知します。「詳細へ」では参照した対象を名前・識別とともに インスペクタ上部へ表示し、別の部材の選択詳細を混在させません。
参照はプロジェクト・案・入力版・対象の存続を照合します。別プロジェクト・別案・古い入力版・ 削除済みの対象は理由を示して拒否し、同じ番号や名前の別対象で代用しません。編集後のUndoでも 編集世代は進むため、過去の固定対象を現在版へ自動的に読み替えません。異なる案への対応を推測しません。 解析設定と現在受理している元波形も入力版に含めます。波形や設定が異なる場合は、同じ部材番号や 節点番号でも別の入力版として参照を拒否します。振動ケースそのものも保存内容で照合し、同番号の 別ケースへ読み替えません。波形や実効条件の異なる結果は、実行と生成入力の識別でも区別します。 解析設定の編集を確定する場合も編集世代が進み、元の設定値へ戻しても過去の世代を再使用しません。 新しい元波形を受理すると編集世代が進み、過去の波形へ戻しても古い世代を再使用しません。 同じ波形・設定の再計算では入力版を変えず、計算実行を区別します。受理前に拒否した要求では 入力版を変更せず、受理後の計算失敗では受理した入力版を残します。
準備計算だけで明示入力と保存IDが変わらない場合は、固定対象の入力版を維持します。 自動荷重ケース・仕口パネル・剛域等の再生成を、利用者の入力編集と混同しません。人がUndo/Redoした 場合や、対象の保存IDが実際に再配置された場合は旧参照を拒否します。 新規に追加した荷重ケースは明示入力です。明示ケースへの種別の自動適用では元の明示種別を保持し、 ケース名・種別等の利用者編集を識別から除外しません。自動ケースを編集したり手入力荷重を加えたり した場合も明示入力となり、最後の手入力荷重を削除しても空の明示ケースを保持します。
結果と計算時入力
結果の参照は生成時の案・入力版、実行、解析/検定種別、計算契約、実効入力を保持します。 解析/検定条件やケース・組合せ定義が異なる結果を、同じモデルの結果として置き換えません。 方向・成分・単位・位置・モード・ステップ・階/通りは表示条件として分離し、未指定の表示条件を 結果の計算条件へ補いません。
「固定対象・結果参照を保存」は固定対象の結果参照を保持します。古い版の対象や生成元不明の成果は 固定できず、理由を通知します。同じ入力を保存・再読込すると、案・入力版と保存された固定参照を 保持します。欠落した対象や結果は取得不能とし、計算や外部AIの実行許可を再開しません。 比較案を含む検討全体の保存とは別の機能です。 質量方式を変更してまだ準備計算していない場合も、その設定と固定参照を保存・復元します。 保存候補だけを設定へ合わせ、編集中モデルとUndoは変更しません。旧質量設定の準備・解析成果は 同梱せず、読込後の準備計算で再生成します。
固定した結果の「図へ戻る」は、保存した図種・応力成分・階/通り・モード・ステップを復元します。 形状・変形・応力・モード・ヒンジ・時刻歴の図を対象とし、その他の図種や位置指定は未対応と 通知します。取得できないモード・ステップ・表示単位を現在の表示値で代用しません。 固定した時刻歴ステップへ移動すると再生を停止し、参照した結果の記録時刻とフレームを復元します。 グラフ画面からの表示条件固定には未対応です。固定した立体図へ戻ると、立体図の結果表示へ切り替わります。
「計算時入力を開く」は、保持された計算用入力だけを読み取り専用で表示します。 ここで表示するのは計算へ渡したモデルであり、通り・数量・保存波形設定等を含む完全な編集モデルは 保存していないため取得不能です。計算時の案識別または入力記録のない成果も、取得不能と表示します。 現在のモデルから欠落を補完しません。現在案を編集する場合は、明示した「閲覧を閉じて現在の本案を 編集する」を選び、現在案の図・入力表を使用します。過去入力の閲覧は現在案の編集やUndoを変更しません。 記録された標準せん断力係数・地域係数・地盤・採用周期等と、検定の継続時間・損傷制御・付着・ 設計用せん断力方式も読み取り専用で確認できます。検定が使った応力の条件は、その生成記録から 表示します。記録されていない条件や実波形列は取得不能とし、現在設定や現在の波形で補いません。
実装参照:共通参照の照合・表示・固定と計算用入力の閲覧は sepika_app::app::references(crates/sepika-app/src/app/references.rs)、生成入力と有効性照合は sepika_app::app::result_validity(crates/sepika-app/src/app/result_validity.rs)が担います。
stale(要再計算)
モデル・荷重・断面などを編集すると、依存する結果や設計が古くなり(stale)、 利用者へ再計算が必要であることを示します。重い解析を勝手に走らせない方針のため、 再計算は手動です。
- 結果タブ・設計タブの見出しに「⚠」、ステータスバーに「⚠ stale」を表示します。
- 再計算は解析タブの実行ボタンで行います。
- 準備計算・診断にも、それぞれの陳腐化表示(「準備計算 *」・診断件数)があります。
- 通り芯のように解析結果へ影響しないデータの編集では、結果を stale にしません。
実装参照:陳腐化は sepika_app::app::Staleness(crates/sepika-app/src/app/mod.rs)が保持します。解析へ影響する編集は Staleness::mark_edited、影響しない編集は Staleness::mark_non_calc_edited が更新します。
テーブル編集とグリッド操作
下ドックの各テーブル(節点・部材・荷重など)は、セル単位の入力に加えて、スプレッドシートに 近い操作で編集できます。Excel で座標表や荷重表を組み立ててからまとめて貼り付ける流れを 想定したもので、矩形選択・コピー&ペースト(Excel と相互に TSV)・キーボード移動・ Undo/Redo を備えます。
現状この操作を適用しているのは節点テーブル(座標 3 列)です。 テーブルごとの違いは アダプタに隔離してあるため、他のテーブルへ順次展開する設計です。
実装参照:操作レイヤは sepika_app::grid(crates/sepika-app/src/grid/)に置き、節点テーブルへの適用は sepika_app::app::NodeGridAdapter(crates/sepika-app/src/app/node_grid.rs)が担います。描画は sepika_app::grid::GridWidget(crates/sepika-app/src/grid/widget.rs)です。
選択
- セルをクリックすると単一選択、ドラッグすると矩形選択になります。
- Shift+クリック・Shift+矢印では、選択の起点(アクティブセル)を動かさずに選択端だけを 広げます。
- 行ヘッダで行全体、列ヘッダで列全体、左上コーナーまたは Ctrl+A で全選択します。
- 表の外をクリックするか Esc を押すと選択を解除します。
アクティブセルは選択の起点に留まります。移動の基準にもなります。
グリッドのセル・列・矩形選択と、3D に表示する節点・部材の幾何選択は独立しています。 座標セルの選択・編集・コピー・貼り付け、Ctrl+A、Esc や表外クリックによるグリッド選択解除では 幾何選択は変わりません。ただし、座標編集による生成壁の ID 付け替わりへの対処は下記のとおりです。 節点表の行ヘッダをクリック、Shift+クリック、ドラッグしたときだけ、 実在する行の節点が幾何選択にも反映されます。複数行の場合は行選択の起点が個別表示の対象です。 末尾の「+」まで Shift+クリックやドラッグで広げた場合も、「+」は節点ではないため実在する行だけを幾何選択します。 「+」を起点に実在行へ広げた場合は、節点を幾何選択しますが個別表示の対象は指定しません。 「+」だけの選択や空の節点表での行ヘッダ操作では、幾何選択を変えません。 節点行を削除した場合や Undo/Redo では、ID の付け替わりによる誤選択を避けるため幾何選択と境界条件の編集対象を解除します。 準備計算の壁領域再構築で節点が削除された場合も、後続節点の ID が詰められるため同様に解除します。 部材表から支点の免震支承材を撤去した場合も、生成された地盤節点の削除で後続節点の ID が詰められるため、幾何選択と境界条件の編集対象を解除します。 境界条件フォームは、別の節点を幾何選択した場合はその節点を編集対象にします。幾何選択がないときの先頭節点表示はフォーム内だけの既定値で、フォームで明示的に節点を選んだときだけ幾何選択へ反映されます。セル操作では幾何選択を変えません。 壁版の断面変更で解析用の壁要素が増減する場合も、生成壁の選択は解除します。後続の壁要素の ID が付け替わるためです。 生成の可否が変わらない断面の差し替えでは、同じ壁・他の壁のどちらを選択していても幾何選択と個別表示の対象を保持します。 存在しない断面など、適用されなかった断面指定でも選択は解除しません。 壁版割当領域への割当・版なし・未設定への変更時は幾何選択を解除します。壁要素の生成・削除で ID が付け替わる場合があるためです。 3D・テーブルで二次部材を配置した場合と、テーブルで支持端を変更・二次部材を削除した場合は、操作が成功したときだけ生成壁を含む部材選択を解除します。 割当領域の再構築で壁版が取り除かれると、別の壁が以前の生成 ID を再利用する場合があるためです。 通常の主架構部材だけの選択と節点の選択は保持します。 節点表の座標編集・貼り付け・クリアでも、割当領域の再構築で生成壁の ID が付け替わる場合があるため、生成壁を含む部材選択は解除します。 この場合も、通常の主架構部材だけの選択と節点の選択は保持します。
幾何選択は節点と部材を同時には保持しません。3D や部材表などで個別の部材を選ぶと、 それまでの節点選択と個別表示は消えます。部材グループや断面の「使用部材を3Dハイライト」は 対象の部材全体を選びますが、個別表示の対象は指定しません。インスペクタは選択件数を表示し、 個別の対象がない複数選択では以前の詳細を表示しません。3D の背景クリックでは幾何選択を解除します。 断面・材料・荷重ケースなど各機能で開いている対象は、幾何選択とは独立して保持します。 材料・断面の一覧で開いている対象は、それより前の行を削除して ID が変わっても同じ実体のままです。 開いている対象自身を削除した場合は解除します。後の行を削除した場合や、参照中などの理由で削除できなかった場合は変わりません。 同じ操作で複数行を削除する場合も、残った同じ実体を開き続けます。 Undo/Redo でも残存する表示対象を維持し、削除後に別の実体を開いた場合はその実体を維持します。 削除によって解除された対象は、Undo で復元しても自動では開きません。材料の操作で断面の表示対象は変わらず、その逆も同じです。 部材断面の複製や階への複製で追加した断面を Undo で取り除く場合も、取り除かれた表示対象を解除します。 設計結果行の断面をクリックして断面一覧へ移動するときは、その行の部材を単一選択して個別表示し、開く断面もその行の断面に切り替えます。 生成壁を選択した場合もインスペクタに部材・断面を表示し、断面の使用部材数と「使用部材を3Dハイライト」には表示中の生成壁を含めます。
実装参照:選択の状態機械は sepika_app::grid::GridState(crates/sepika-app/src/grid/core.rs)が表します。
幾何選択は sepika_app::app::GeometrySelection(crates/sepika-app/src/app/mod.rs)と
sepika_app::app::App の選択操作(crates/sepika-app/src/app/actions/view.rs)が管理します。
材料・断面の表示対象は crates/sepika-app/src/app/actions/view.rs と crates/sepika-app/src/tables/materials.rs・crates/sepika-app/src/tables/sections.rs が編集による ID の変化に追従させます。
二次部材編集後の生成壁の選択解除は、crates/sepika-app/src/viewer/input.rs と crates/sepika-app/src/tables/secondary.rs が行います。
節点表の座標編集後の生成壁の選択解除は、crates/sepika-app/src/tables/nodes.rs が行います。
キーボード
| キー | 選択モード | 編集モード |
|---|---|---|
| 矢印 | セル移動(Shift で選択拡張) | カーソル移動 |
| Tab / Shift+Tab | 右 / 左へ移動 | 確定して右へ |
| Enter / Shift+Enter | 下 / 上へ移動 | 確定して下へ |
| F2 | アクティブセルを編集 | — |
| 文字キー | その文字を初期値に編集開始 | 文字入力 |
| Esc | 選択解除 | 編集キャンセル |
| Delete | 選択範囲をクリア | 文字削除 |
| Backspace | アクティブセルを空にして編集開始 | 文字削除 |
| Ctrl+C | 選択範囲を TSV コピー | 文字列コピー |
| Ctrl+V | TSV ペースト | 文字列貼り付け |
| Ctrl+A | 全選択 | 文字列全選択 |
| Ctrl+Delete | 行削除 | — |
Delete はセル値のクリアで、行そのものは消えません。行削除は右クリックメニューまたは Ctrl+Delete です。Backspace は範囲クリアではなく、アクティブセルを空にして編集を始めます。
2 モード式の編集
セルには選択モードと編集モードがあります。ダブルクリック・F2・文字キー・Backspace の いずれかで編集モードに入り、そのセルの現在値を初期値として入力します。Enter や Tab で確定して 次のセルへ移り、Esc で編集を取り消します。
確定した値が不正(数値列に数値でない入力など)のときは変更せず、理由をイベントログに出し、 対象セルを赤くフラッシュします。空文字のまま確定した場合は「変更なし」として扱います。
実装参照:セル確定は sepika_app::grid::commit_cell_text(crates/sepika-app/src/grid/core.rs)が検証し、失敗のフラッシュとログは GridWidget(crates/sepika-app/src/grid/widget.rs)が扱います。
コピー・貼り付け(Excel 相互 TSV)
- Ctrl+C は選択範囲をタブ区切り(TSV)でクリップボードへコピーします。セルの文字列は 内部値の正準文字列を使い、表示用に丸めた値は使いません。
- Ctrl+V は TSV を貼り付けます。**空セルは「変更なし」**として既存値を維持します。
- 座標には有限の数値だけを受け付けます。符号・指数表記は使用できますが、
NaN、Infinity、1e309、単位付き文字列や数式などは拒否します。 - 空セルや短い行の不足セルを含む矩形全体で、列範囲・編集可否・行追加条件を確認します。 1 セルでも不正、または編集後の形状が既存の荷重や版割当の条件を満たさない場合は、 貼り付け全体を適用しません。入力・Undo/Redo・計算結果の有効性は変わらず、理由をイベントログに示します。
- 通常の末尾改行(CRLFを含む)と末尾の完全な空行は除去します。途中の空行、および タブやスペースを含む意図した空白行は貼り付け矩形に残します。空白セル自体は値を変更しません。
- 選択範囲がコピー元ブロックの整数倍のときは、ブロックを繰り返して選択範囲へ広げます (タイル展開。フィルハンドルは未対応です)。
- 貼り付けが表の末尾行を超える場合、確認なしで行を自動追加します。追加は貼り付けと あわせて 1 つの複合コマンドになるため、Undo 1 回で行追加ごと戻ります。
- 一度に貼り付けられるのは、空セルを含む行数×最大列数で 100,000 セルまでです。 タイル展開前と展開後の両方で上限を確認し、超える場合は展開・適用せず全体を拒否します。
- 行追加非対応の表では、空セルだけのはみ出しも全体拒否し、一部の切り捨ては行いません。
実装参照:TSV 変換は sepika_app::grid::{rect_to_tsv, parse_tsv, checked_tile_block}、貼り付け検証は sepika_app::grid::{plan_paste, validate_paste_rect}(crates/sepika-app/src/grid/core.rs)が担います。
新規行と行削除
- 新規行プレースホルダ:行追加に対応するテーブルの最下部に、常設の空行を 1 行表示します (行ヘッダは「+」)。まだデータではない行で、選択・貼り付けの起点・直接入力の受け口に なります。ここで入力すると 1 行追加され、空のテーブルへも貼り付けで一括投入できます。
- 行削除:右クリックメニューまたは Ctrl+Delete で、選択が跨ぐ実データ行を削除します。 参照されている節点を含む場合は、1 行でも削除できないときは何も消さず、理由を イベントログに列挙します。削除も Undo 1 回で元の位置へ戻ります。
実装参照:行追加・削除の可否と適用は sepika_app::grid::GridAdapter(crates/sepika-app/src/grid/core.rs)の実装である sepika_app::app::NodeGridAdapter(crates/sepika-app/src/app/node_grid.rs)が担い、節点の参照中判定は sepika_core::model::Model::node_in_use によります。
Undo/Redo
セルの変更はすべて編集トランザクション(sepika_edit の編集コマンド)として適用します。
複数セルの貼り付け・範囲クリア・行追加・行削除は 1 つの複合コマンドにまとめるため、
Undo 1 回で操作のまとまりごと戻ります。上部ツールバーの Undo/Redo と共通です。
見た目
テーブルは Excel に近いスプレッドシート様式で、白地に共有罫線(隣接セルと 1 本の線を共有)を引きます。選択範囲は外周を青の太枠で囲い、内側を青の半透明で塗り、 アクティブセルだけは白抜きにして入力先を示します。選択に含まれる行・列のヘッダは薄い青で ハイライトします。新規行プレースホルダのセルは淡いグレー地です。
不正・注意のフィードバックは、イベントログだけでなく対象の範囲を約 1 秒フラッシュして 示します。赤は「何も適用されていない」(貼り付けの全体拒否、編集の失敗、行削除の 全体拒否など)、黄は「適用されたが確認が必要」(コピー元と選択範囲のサイズが一致しない 貼り付けなど)です。
現状の制約
- フィルハンドル(ドラッグでの連続値埋め)・切り取り(Ctrl+X)・行挿入ペーストは未対応です。
- 列のソート・行の並び替えは未対応です。
- 選択ドラッグの表外への自動スクロールは未対応です。
- 文字列列の IME 入力は未対応です。現状の適用先は数値列のため実害はありません。
節点追加・材料の直接数値入力
節点追加のX・Y・Z [mm] は、前後の空白を除いた空欄を0として扱います。材料の直接追加では E [N/mm²]・ν [-]・ρ [t/mm³] が必須です。Fc・Fy [N/mm²] と強度割増 [-] は空欄にできます。 材料一覧の単一セル編集では、必須欄を空欄にしても旧値を保持し、任意欄の明示空欄は指定をクリアします。 標準普通コンクリートのEは編集できません。直接入力コンクリートのEは編集できます。
これらの欄では指数表記を含む有限の数値を受け付け、NaN・正負の無限大・桁あふれや 数値以外の文字を拒否します。不正入力を0や未指定へ置き換えることはありません。 入力が不正な間は追加できず、材料の単一編集では対象と理由を表示して入力を保持します。 材料追加は全欄が有効な場合だけ一括で行われます。節点の重複確認では、追加の確定時にも 座標の有限性を確認します。
拒否ではモデル・Undo/Redo・未保存状態・計算結果の有効性は変わりません。有効な追加や値・元指定の 変更は1回のUndoで戻せ、計算結果は要再計算になります。数値の表記だけを変え、強度の元指定を含む 意味がすべて同じなら履歴を増やしません。Fcを明示空欄にすると元の強度指定にもクリアを反映し、 Undoでは省略を含む元指定も復元します。+0と-0の変更は符号を保持する実変更として扱います。
編集中に材料が削除されてIDが変わった場合は、旧入力を別材料へ適用せず、参照不明と保留入力を表示します。 変更後の材料を確認し、対象セルを選び直して入力してください。 別のモデルを読み込む場合や新規作成する場合、材料表の入力途中・拒否された入力は破棄されます。 数値を変更せずセルを離れた場合は現モデルの値を表示し、Undo/Redoや他の編集による変更も反映します。 既存モデルの非有限値を正常値へ修正した場合も、Undoでは強度元指定を含む元の値をそのまま復元します。
有限性の判定は材料の規準適合性や物理的な入力範囲を保証するものではありません。 有限の負値・正負0・極小値もこの入口では数値として受け付けます。SRC材料の診断や解析前の 計算可否診断はそれぞれの責務として行われます。節点一覧グリッド・TSVの空欄操作は上記の 節点追加フォームとは別です。
実装参照:sepika_app::tables::nodes::nodes_table(crates/sepika-app/src/tables/nodes.rs)、
sepika_app::tables::materials::materials_table(crates/sepika-app/src/tables/materials.rs)が直接入力を扱います。
主架構線材の断面用途
主架構線材の設計上の用途は、断面に指定する FrameSectionUse で決まります。Girder、Column、Brace のいずれかを明示し、断面符号や部材の角度から推定しません。
ElementKind::Beam は柱・大梁を含む曲げフレーム要素の解析定式化です。ElementKind::Brace はトラス定式化と tension_only を表し、Brace 用途の断面だけを割り当てられます。Beam 要素には Girder または Column 用途を、Brace 要素には Brace 用途を割り当てます。不整合や用途未設定は拒否します。
床・壁・二次部材の断面に主架構用途は要求しません。二次部材は SecondaryMemberKind::{Beam, Post} が正であり、断面の frame_use は None でも構いません。RC の専用型については、主架構用途の有無と、形状型が割当先に対応するかをそれぞれ確認します。
RC 断面は次の専用用途に限ります。
| 断面 | 主架構 | 二次部材 | 床板・壁版 |
|---|---|---|---|
RC 矩形梁(RcBeamRect) | 大梁(Girder) | 小梁(Beam) | 使用不可 |
RC 矩形柱(RcColumnRect) | 柱(Column) | 間柱(Post) | 使用不可 |
RC 円形柱(RcColumnCircle) | 柱(Column) | 間柱(Post) | 使用不可 |
RC 梁型を柱・間柱へ、RC 柱型を大梁・小梁へ割り当てることはできません。円形 RC 梁は非対応です。主架構では対応する用途を明示した Beam・Fiber・MultiSpring に限り、ブレースには使用できません。未使用または二次部材専用の RC 断面は frame_use=None を許容しますが、用途を明示する場合は表の対応用途に限ります。大梁と小梁、柱と間柱は、それぞれ同型の同じ断面を共有できます。
上表の主架構・小梁・間柱で用途と型が合わない断面の作成・変更・割当は、梁用または柱用の専用用途である理由を示して拒否します。既に参照されている断面の形状変更も同じ条件です。編集拒否ではモデルと Undo/Redo 履歴を途中変更しません。領域内・所属未割当の二次部材のどちらにも適用し、モデル検証、OVIKA 保存・読込、ST-Bridge 入出力、数量積算、解析の入口でも、上表の主架構・小梁・間柱の用途不整合を拒否します。保存拒否では既存ファイルを上書きしません。不整合の救済として用途変更、別形状への変換、配筋や部材の削除は行いません。
床板・壁版へ上表の専用型を割り当てることは、frame_use=None でもできません。板厚を別に指定しても梁用・柱用の型を板用には読み替えません。板を参照中の断面をこれらの専用型へ変更する場合も、板ID・断面IDと専用用途の理由を示して拒否します。編集拒否ではモデルと Undo/Redo 履歴を保持し、モデル検証、OVIKA 保存・読込、数量積算、解析の入口でも拒否します。保存拒否で既存ファイルを上書きせず、配筋・板の削除や断面の変換も行いません。
この制限は、床板・壁版の断面を RcSlab・RcWall だけに限定するものではありません。板厚・材料を持つ数値入力断面も、各機能の適用条件に従って扱います。断面未割当の保存・編集と、荷重・数量・解析を実行できる条件は別です。床の断面と自重と壁の断面と自重を確認してください。
断面の同一性は断面符号と階の組で決まり、用途違いを暗黙の使い回しで解決しません。形状編集と複製では用途を保持します。幾何判定は局所座標・接続関係・式の適用条件の確認に限り、用途を変更しません。仕口パネルも用途で柱梁候補を抽出し、適用可否は別の幾何条件で判断します。
OVIKA は用途を保存します。ST-Bridge の StbColumn、StbGirder、StbBrace の主架構部材文脈を用途へ写し、StbBeam・StbPost は用途を決めません。同一断面を大梁と小梁、または柱と間柱が共有する場合も内部断面は複製しません。主架構用途の競合は入力エラーとします。旧形式からの移行や用途復元の fallback はありません。
この用途は RC・S・SRC・CFT の柱梁検定、ForceRegime::Auto、no_long_axial_column、数量積算でも共通して参照されます。
CFT(CftBox・CftPipe)は FrameSectionUse::Column 専用です。用途は部材角度ではなく FrameSectionUse を正とし、Girder・Brace・None の断面作成・割当は拒否し、既存データは解析前チェックでエラーにします。小梁・間柱の二次部材には、断面用途を Column にしても CFT を使用できません。床・壁の領域内と所属未割当のどちらも、編集・モデル検証・保存・読込・数量積算・解析のすべての入口で拒否します。不正入力を受け入れるための鋼材への置換や削除は行いません。この制限は本製品の対応範囲です。Beam・Fiber・MultiSpring の主架構線材で Column 用途を持つ場合に限り割り当てます。
主架構線材 Beam・Fiber・MultiSpring・Brace は、異なる NodeId のちょうど2節点だけに対応します。断面未割当の床境界線、柱・大梁・ブレースの用途、床接触の有無によらず同じ条件です。0・1・3節点以上、同じ NodeId の二重指定は、ElemId・kind・実節点数・期待2・入力NodeId列を含む診断で拒否します。先頭2節点の採用、自動分割、節点削除による救済はしません。部材追加の拒否ではモデル・領域割当・結果鮮度・Undo/Redo履歴を更新しません。
これは現SEPIKAの対応入力契約であり、多節点梁の構造理論を否定するものではありません。Shell・Wall・PanelZoneの節点数、NodalSpring・Isolator・Damperの独立した2節点・零長契約、二次部材の支持アンカー/座標の契約は別に扱います。
実装参照:sepika_core::model::FrameSectionUse(crates/sepika-core/src/model/section.rs)と sepika_core::model::Model::validate(crates/sepika-core/src/model/aggregate.rs)が用途と割当整合性を扱います。
梁の鉛直偏心
大梁・小梁には、両端を結ぶ基準材軸から梁全体を上下へ移動する一律鉛直偏心を指定できます。 単位は mm、上向き(全体座標 +Z)を正とします。大梁は大梁用途の断面を割り当てた主架構線材、小梁は支持アンカーを持つ二次部材が対象です。柱・ブレース・間柱・床板は対象に含みません。
入力と確認
大梁は部材表、小梁は床の小梁一覧にある「梁の一律鉛直偏心 [mm](上向き+)」を開きます。 数値を入力して入力欄からフォーカスを外すと確定します。「0を指定」は基準材軸と実材軸を一致させ、「未指定」は入力を解除します。 空欄・未指定と明示した 0 は区別します。新規に画面で作成する梁は 0 を指定して作成します。ST-Bridge から取り込んだ梁は未指定とし、偏心値を推測しません。 偏心はプロジェクト保存・再読込、元に戻す・やり直すの対象です。
各行には実材軸の両端 Z と、中央の平面位置での上端・下端 Z を表示します。形状モードの材軸線・断面表示は実配置を使います。 偏心・支持アンカー・節点・実断面形状が未指定、不正または非有限なら、対象と理由を表示し、実位置を使う判定を行いません。未指定を 0 や節点位置から補いません。
基準材軸と実材軸
大梁の基準両端位置は両端節点、小梁の基準両端位置は指定済み支持アンカーから求めます。 基準位置を \(N_i,N_j\)、偏心を \(e_b\) とすると、実材軸端は次の位置です。
\[ P_i=N_i+(0,0,e_b),\qquad P_j=N_j+(0,0,e_b) \]
両端の XY、傾斜、材軸長、部材と支持先の識別は変わりません。傾斜は節点座標で指定し、端別の偏心は指定しません。 SL は階の代表梁節点を生成する基準であり、個別梁の偏心基準ではありません。既存節点を動かさず SL だけを編集した場合、実材軸は移動しません。 基準節点を移動すれば、偏心を保ったまま実材軸が追従します。個別梁の偏心は FL 間高さを変更しません。 小梁は支持梁の実位置と上下に離れていても指定した支持先を保持し、支持先の偏心を重ねて加算しません。
上端・下端と幅
実断面を局所軸の向きに配置し、実材軸の両端面で切った有限な立体を使います。 上端・下端 Z は、対象 XY を通る鉛直線と材料領域の最も上・下の交点です。端面や一点接触も含み、交差がなければ上端・下端はありません。 水平幅は対象の高さを通り、材軸の水平投影に直交する水平線で切った材料領域の最外交点間の距離です。空洞を含む断面でも、外側の距離を表します。 上下非対称断面・断面回転・空洞を実形状から扱い、一律にせいの半分を加減しません。
例えば両端節点 Z が −500 mm、せい 600 mm の水平矩形梁では次の位置になります。
| 偏心 [mm] | 実材軸 Z [mm] | 上端 Z [mm] | 下端 Z [mm] |
|---|---|---|---|
| 0 | −500 | −200 | −800 |
| +100 | −400 | −100 | −700 |
| −100 | −600 | −300 | −900 |
ねじれがなく、水平から 30 度傾く矩形梁の内部では、同じ XY における材軸と上面の鉛直差は \(D/(2\cos30^\circ)\) です。 せい 600 mm なら約 346.410 mm となります。材軸直交断面の上端を鉛直投影した約 259.808 mm とは異なります。梁端では有限な端面による制限も適用します。
解析・重量計算との関係
実配置の編集は準備計算と既存の計算結果を陳腐化させます。節点や断面の編集も実配置へ反映されます。 解析節点の座標・自由度・部材の接続条件は保持します。解析結果を表示する変形図・応力図等は解析配置を参照します。 矩形RC/SRC大梁では、偏心を含む実配置から床板との自重重複控除を算定します。 主架構の梁には鉛直偏心接続を適用し、剛性・内力・部材荷重・既存質量・反力へ反映します。共有解析節点を動かさず、部材断面の内力と節点への移送モーメントを区別します。二次小梁を新たに全体剛性へ加える機能と、床板下端までの嵩上げ重量の追加は行いません。
実装参照:sepika_core::model::Model::beam_placement・BeamPlacement(crates/sepika-core/src/model/beam_placement.rs)が共通の実配置と交点を導出し、sepika_edit::SetBeamVerticalEccentricity(crates/sepika-edit/src/beam_placement.rs)が入力を編集します。
準備計算(解析前の確認)
準備計算は、応力解析に先立って解析入力を確定させる計算です。解析を実行する前に 単独で実行でき、階の分布・剛域・断面性能・幅厚比・地震力(Ai 分布)・荷重の 集計を確認したうえで、各解析へ進めます。
準備計算は右パネル「① 準備計算」の「🛠 準備計算 実行」、または下ドック「準備計算」タブ内の 「▶ 準備計算 実行」で実行し、結果は下ドックの「準備計算」タブに表示されます。各解析 (荷重ケース・荷重組合せ)の実行時にも準備計算は自動的に最新化されるため、解析結果は常に 確認できる準備計算の内容に基づきます。
右パネルは、画面右端のアイコン列で切り替えます。一貫計算の手順は「① 準備計算」で 解析入力(地震力の算定諸元、部材のモデル化、計算条件、階の定義)を確定させ、続けて 静的解析・固有値・増分解析・時刻歴応答・質点系のいずれかを実行します。① の番号は準備計算の 見出しにだけ付け、各解析パネルは種類の名前で呼びます。
RC壁の終局せん断耐力の計算条件
右パネル「① 準備計算」の「計算条件」で「RC壁の終局せん断耐力」を荒川min/荒川meanから選びます。建物全体で共通とし、新規モデルの既定は荒川meanです。取り消し・やり直しとプロジェクト保存に対応します。方式変更後は解析・検定を再実行してください。 採用式、適用範囲と結果の失効は壁脚内力と初期耐力を参照してください。
自立壁のn倍法の計算条件
右パネル「① 準備計算」の「計算条件」で「自立壁の剛性をn倍法で考慮する」を有効にし、係数nと基準剛性の方式を指定します。初期状態は考慮なしで、方式の初期選択は層内柱合算方式です。代表内柱方式では各層で柱を1本指定し、X・Y方向で共通に使います。 変更後は地震静的解析を再実行してください。対象壁、係数の範囲とRs・Reへの反映は形状係数Fesを参照してください。
準備計算が確定させる内容
囲まれた床・壁の主架構境界は、梁・柱の解析表現を Beam・Fiber・MultiSpring に変えても同じ支持材として扱います。節点・断面用途・幾何が同じなら、床/壁領域と版の割当支持先は変わりません。床は同じ高さにある2節点材、壁は鉛直材の柱脚から得られる構面とその面内の2節点材が対象です。ブレース・壁要素・仕口パネルは主架構境界に含めません。取り付く床板を分割・統合する実梁の支持境界と、床の辺荷重を並走する小梁へ配る際の主架構との距離比較も、同じ2節点材の Beam・Fiber・MultiSpring を共通に扱います。形状・許容差・先端まで届く条件を満たす部材が対象です。小梁・間柱の主架構への支持位置を再推定するときも、同じ梁・柱の材軸を Beam・Fiber・MultiSpring 共通で扱います。主架構の材軸中点へ支持され、そこにモデル節点がない二次材の反力も、同じ支持部材の中間集中荷重へ伝えます。割当領域の分割に使う小梁・間柱は両端支持のものに限り、片持ちの自由端と支持先未解決端は閉領域の辺にしません。
実装参照:主架構の支持種別は ElementKind::is_primary_frame_support(crates/sepika-core/src/model/element.rs)、床/壁割当支持の検証と面走査は Model::rebuild_assignment_regions(crates/sepika-core/src/model/assignment_region.rs)が扱います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 階(層)データ | 各階への節点の割り付け、階高、剛床(ダイアフラム)、階の地震用重量 Wi、主要構造種別 |
| 剛域 | 部材端の剛域長 λ・柱フェース距離(接続する直交部材のせいから算定) |
| ねじり解放 | 線材(梁・柱)の i 端ねじれをピンとするモデル化の適用可否(対象外部材の抽出) |
| 仕口パネル | S 造(CFT を除く)の柱梁接合部への仕口パネル要素の生成と、その寸法・せん断剛性 |
| 断面性能 | 弾性解析に用いる断面諸量(A・Iy・Iz・J・As)と使用部材数・断面が持つ材料 |
| 幅厚比 | 鋼断面の代表最大幅厚比と、それによる部材ランク(FA〜FD) |
| 部材剛性 | スラブ協力幅・合成梁・壁エレメント上下大梁による剛性の割増しと SRC/CFT 等価断面 |
| 床領域 | 水平な大梁の閉路ごとに床領域を作り直し、床板(版)と小梁の所属を入れ直す。既存の取り付く床板は残し、取付き線に直交して先端まで届く小梁または実梁の位置で支持部材の間の床板ごとに分割し、部材がない隣り合う床板は統合する。取り付く床板への変換で床板が参照しなくなった旧自由端の節点のうち構造参照のないものを削除する |
| 壁領域 | 鉛直構面内の柱・梁の閉領域ごとに壁領域を作り直し、壁版の所属を入れ直す。解析用の壁要素はモデルに残さず、剛域算定・自重・解析の直前に壁版から都度生成する |
| 床荷重・自重・積載 | スラブ荷重の梁への分配、躯体自重、用途別の積載荷重を標準荷重ケースへ集計 |
| 地震力(Ai 分布) | 設計用固有周期 T・Rt から αi・Ai・Ci・Qi・Pi を算定し、水平力を EX・EY へ生成 |
| モデル整合性チェック | 解析を妨げる不備(支点なし・断面の未割当・断面の材料の未割当・孤立節点など)の検出。下記「モデル整合性チェック」 |
階(層)データは剛域を除くすべての項目の前提です。階名・FL・ΔSL・階種別・地震用重量の 手入力は利用者が定めるデータであり、準備計算は書き換えません。重量に影響する入力が変わったときに 算定し直すのは、各階への節点の割り付け・剛床・地震用重量の算定値・主要構造種別で、 節点・断面・荷重の変更がここへ反映されます。階への帰属の規則と、階が定義されていない モデルで必要な明示入力については階の分布を参照してください。
床板割当領域は入力に変更がある準備計算で作り直します。囲まれた床板(Slab)の境界は床板割当領域が保持し、 準備計算で大梁・小梁から割当領域を作り直します。同じ境界の領域は ID と割当を維持し、境界が変わった 領域だけが未設定になります。取り付く床板は残します。重量・質量・自動荷重とともに一括採用し、取り消し(undo)の対象になります。診断はモデルを書き換えず、いまの割当領域の状態を見ます。 準備計算のあとに診断を開くと、作り直し後の割当で警告が出ます。
一方、部材の追加・削除と節点座標の変更、二次部材の配置・移動・削除では、その編集と同じ Undo 単位で割当領域を作り直し、境界が変わって参照先を失った囲まれた床板・壁版を取り除きます (残すと「囲まれた版はちょうど 1 つの割当領域に属する」検証を満たせず解析が止まるため)。 編集を取り消せば版も戻ります。
主架構部材を削除すると、その部材を境界に持つ領域と、その部材から支持を失う小梁・間柱を 境界に持つ領域を作り直します。無関係な版の割当と入力荷重は、同じ支持部材への対応を保ちます。 囲まれた版がなくなる場合は、編集前に消える版と荷重を確認します。確認できない操作では、 版を失う編集を拒否します。Undo では、削除した部材・版・割当と二次部材の支持をまとめて戻し、 Redo で同じ編集結果へ戻ります。
削除部材を直接または他の二次部材を介して支持先としていた小梁・間柱は、削除直前の端点座標を 保持した支持未解決の部材として残します。部材長や重量を欠落させず、別の主架構へ自動で 付け替えません。支持未解決の部材は版の境界に使わず、荷重伝達を行う解析の前に支持の修正が必要です。 削除前の端点座標を解決できない場合は、部材削除を拒否して入力と Undo/Redo 履歴を保持します。
編集後の重量と地震力
材料密度、断面・形状、壁の増打ち・開口、仕上げ、用途別地震用積載荷重、支持への伝達、 手入力重量を編集すると、次の解析実行前に既存階の算定重量・剛床重量・物理質量と EX・EY を更新します。 準備計算ボタンを押し直す必要はありません。階名、表示色、選択だけの変更では重量を算定し直しません。 変更なしの再実行では生成結果を保持し、Undo を追加しません。
重量と EX・EY は一括で採用します。重量・周期・係数の算定に失敗した場合、 旧自動 EX・EY を両方向とも除去して具体的な原因を示します。通常の手入力荷重は保持します。 地震力を算定できないことと、独立した DL 解析を実行できないことは別に判定します。 階の地震用重量欄にカーソルを置くと、自動算定値と採用値を確認できます。 手入力重量は採用値を優先し、物理質量の算定値を置き換えません。
自動生成の剛床マスター拘束は現在の構造節点の支持条件から更新します。 利用者が直接編集したマスター拘束、剛床の代表節点・所属節点・指定 Ci・重量は保持します。 複数剛床へ重量・物理質量を一意に帰属できない場合は、重複・不足を示して拒否します。 複数剛床の手入力重量の合計と階重量が整合しない場合も、暗黙に合わせず原因を示します。 指定 Ci の副系統重量を除いた主系統重量が残るのに載荷先がない場合も、両方向の地震力を拒否します。
地震力の重量・係数・周期の準備だけでは剛性行列を組み立てません。 静的解析・固有値解析などの構造計算は、別途支点・材料・剛性などを検査して組み立てます。 精算周期は現在のモデル・質量・剛域・解析条件と一致した固有値結果だけを参照します。 一致しても、精算方法の法令上の適用証拠不足による標準地震力の未対応診断は残ります。
未設定の割当領域の扱い
矩形RC/SRC大梁が支持する床板の割当が未設定の場合は、床板との実重複控除を確定できないため、準備計算・解析を停止します。 それ以外では、床板・壁版をまだ割り当てていない未設定の割当領域が残っていても、入力途中で解析を試せます。ただし未設定の領域は床荷重・躯体自重と壁の剛性が 解析に入らず、応力・変形を過小評価し得ます(危険側)。このため、GUI で解析を実行すると 計算前に未設定の件数と対象 ID(床板・壁版別)を示す確認ダイアログを出し、利用者が「続行して計算」を 選ぶまで計算を開始しません(続行を選んだ対象集合は、その集合が変わるまで再確認しません)。 結果画面には未設定の件数と対象 ID を常時表示し、レポートの CSV にも 「未設定の割当領域」セクションとして記載します。版なしは利用者が明示的に版を置かないと 決めた状態であり、未設定には含めません。
MCP 経由で解析した場合は、前処理の注意事項(notices)に同じ警告を含めます
(確認フラグは要求せず、警告を結果に添えて安全側の情報を残す扱いです)。
3D ビューでは、左パネル「作成」の「床板割当モード」「壁版割当モード」を ON にすると 割当領域を状態別の色(未設定=赤・版なし=灰・版あり=緑)で描き、クリックした領域で 割当・編集の画面を開きます。準備計算・解析前同期による領域の作り直しと参照を失った版の解除は、重量・自動荷重の更新と一括で1つの Undo 単位です。手動の割当・版なし・未設定へ戻す操作は、それぞれ1つの Undo 単位です。
壁領域の作り直しも同じタイミングで走ります。壁版は柱・梁が囲む閉領域へ付け直します。両端支持の二次部材を含む有効な壁版割当領域がある壁版は、主架構だけの壁領域に収まらなくても囲まれた壁版として保持し、版の仕様・スリット・自重支持方式・任意辺負担率を変えません。壁領域へ所属しない件数の報告は残ります。ST-Bridge 取り込み時の、割当領域に一致しない壁の取付き変換とは区別してください(壁の断面と自重)。解析用の壁要素は入力モデルには残しません。剛域の算定(壁を考慮する既定)・自重・ 応力解析は、その直前に壁版から組み立てた一時的なモデルを見ます。解析要素にするかは 壁エレメントモデル の条件で決まります。壁エレメントにならない壁版は正常な状態なので、診断には出しません。断面未割当の壁版だけは、板厚と材料が決まらず自重を算定できないため警告します。 取り付く壁版の自重は、取付き先が梁(線アンカー)なら取付き線への分布または両端の柱への 集中、取付き先が床領域(自立壁)なら壁が載っている床領域の床荷重へ等価な面荷重として、 それぞれ自動で分配します(地震用重量・層データの生成)。 自立壁が載る床領域は保存せず壁の位置から都度求めるため、床領域をまたぐ壁は境界で分割して配ります。未覆いが全重量の 0.1% を超える壁は診断がエラーで止めます。
地震力は荷重ケース EX・EY として確定するため、解析はこれらの荷重ケース および荷重組合せを解くことで行います(地震のための専用の解析入口はありません)。 荷重組合せは荷重ケース単体の解析結果の線形和として求めます (線形静解析)。
各項目の算定根拠は以下を参照してください。
- 地震力: 地震力
- 積載荷重: 積載荷重
- 床荷重の分配: 床荷重の分配
- 階の生成・地震用重量: 地震用重量・層データの生成
- 自重: 自重の長期応力解析への接続
- 剛域: ティモシェンコ梁要素
- ねじり解放: 部材のねじり剛性の既定モデル化
- 仕口パネル: 仕口パネル要素
- 断面性能: 断面諸量(弾性)・せん断有効断面積 As
- SRC/CFT 等価断面: SRC / CFT の等価断面性能
- 幅厚比・部材ランク: 部材ランク(FA〜FD)
実装参照:GUI の実行・集計は sepika_app::app::App::run_preparation(crates/sepika-app/src/app/preparation.rs)、GUI/MCP 共通の領域再構築・重量・剛域・自動荷重の準備は sepika_job::prepare::prepare_model(crates/sepika-job/src/prepare.rs)が担います。
モデル整合性チェック
準備計算はモデルの不備を検査し、結果を下ドックの「診断」タブへ重要度付きで一覧します。 対象を特定できる行はクリックすると 3D ビューでその部材・節点を選択するため、一覧から そのまま是正へ進めます。同じ不備が多数ある場合は対象 100 件までを個別に並べ、残りは 「…他 N 部材で〜」と 1 行へまとめます。
重要度は次の 3 段階です。
| 重要度 | 意味 |
|---|---|
| エラー | 解析を実行しても止まる不備。解析前に解消する |
| 警告 | 解析は通るが、結果が意図と異なるおそれがあるもの |
| 情報 | 気づきの提供。解析結果には影響しない |
エラーの判定は解析前の入力チェックと同一の実装を 共有しているため、診断がエラー 0 件であることと、入力チェックを通ることは常に一致します。 準備計算の要約が「✅ 整合性チェック: 問題なし」または警告のみであれば、そのまま解析へ進めます。 逆にエラーが出ている場合は、解析を実行しても同じ内容で止まります。違いは挙げ方だけで、 入力チェックが最初の 1 件で解析を止めるのに対し、診断は不備をすべて挙げるため、 何をいくつ直せばよいかを先に把握できます。
検査する内容は次のとおりです。
- 節点・部材の ID と配列添字の不一致、存在しない断面・材料への参照、階所属・拘束・節点荷重・ 生成記録の参照先欠落など、モデル検証で見つかる不整合(エラー)。節点荷重は手入力・自動生成の どちらも対象。参照の整合性と未完成入力の扱いを参照
- 節点・部材・支点(拘束)が 1 つもない(エラー)
- 断面が必要な要素の断面が未割当、またはその断面に材料が未割当(エラー。別々に報告する)
- 配筋を持つ断面(RC 矩形・RC 円形・SRC 矩形)に主筋・せん断補強筋の材料が未割当、 SRC 断面に内蔵鉄骨の材料が未割当(エラー。断面を使う部材を名指しする)
- シェル要素の断面に板厚がない(エラー)
- 線材の有効せん断断面積 As が 0(エラー)
- SRC の材料由来等価性能が算定不能な部材(材料未割当、Fc・Ec・νc の不正、比・必要剛性の非有限・非正値は理由付きエラー。暫定比15による解析は行わない。CFT の既存評価と制限は等価断面性能を参照)
- 耐震壁と周辺架構の構造種別の食い違い(エラー)
- 断面が未割当の床、断面の材料または板厚が定まらない床(エラー。床の自重が 算定できないため。床の断面と自重)
- 固定距離の集中位置が 0≤a≤L、分布区間が 0≤a<b≤L を満たさない部材荷重、位置が非有限、 または材長 L が非有限・1e-9 mm 以下の部材荷重(エラー。域外の積分で節点力と固定端内力が 誤るため。階への複製)
- 階名の重複(エラー。階名は階の一覧・CSV の列見出しと断面の符号+階に使われ、 同じ名前の階が 2 つあるとどの階の値なのかを判別できないため。前後の空白しか違わない 名前も同名として扱う。階の分布)
- 存在しない節点への参照、およびどの部材にも接続されていない節点(エラー)
- 基部以外の階で、剛床マスター節点が水平方向(Ux または Uy)に拘束され、かつその階の地震用重量が正のとき(エラー)
- 剛床(ダイアフラム)のない階(警告。階名を挙げる)
- 空の水平力ケース(地震・風)を参照する荷重組合せ(警告)
- 節点を共有せずに交差する水平大梁(警告。床領域の閉路検出が実際の床領域とずれるため)
- 同じ位置に重なった同種の支持部材(エラー。主架構どうし(大梁・柱)、または二次部材どうし(小梁・間柱)が同一材軸上で重なっている。どちらが荷重を受けるか一意に決まらないため止める。異種(主架構と二次部材)の重なりは主架構優先で許容する。重複した部材を削除するか、材軸を分ける)
- どの床領域にも載らない囲まれた床板(警告。重心がどの大梁の閉路にも入らない版あり床板。解析は止めない)
- 断面未割当の壁版(警告。板厚と材料が決まらず自重を算定できない。解析要素にもしない。解析は止めない)
- 耐震スリットの指定が効かない壁版(警告。境界が 4 節点でない、または境界頂点にモデル節点が無い等で辺が柱際か梁際かを決められず、指定を無視する。解析は止めない。指定を外すか、境界が 4 節点で頂点にモデル節点がある壁版にする)
- 上下の梁際をともに切った壁版(エラー。境界が 4 節点の囲まれた壁版が対象。この納まりは実際に想定しないため、負担率の指定内容や柱際の状態によらず入力の誤りとして一律に止める。切れていない辺へ振り替えない。いずれかの梁際のスリットを外す)
- 自重の行き先が決まらない壁版(エラー。境界辺への自重負担率が未指定・不正、正の負担率の辺がスリットで縁切り、または壁版割当領域の境界に材軸を解決できる支持部材(柱・梁・間柱)が無い囲まれた壁版。支持先は壁版割当領域の境界を正本とし、節点座標から支持辺を再推定するフォールバックは行わず、別の辺へ振り替えない。境界が参照する支持部材が実在し、種別が適合し、材軸を解決でき、材端節点が 2 つであることは
Model::validateが確認する前提である。行き先のない節点荷重は解析の自由度から外れ、荷重の一覧には見えるのに解析からは消えるため止める) - どの床領域にも所属しない小梁・どの壁領域にも所属しない間柱(エラー。所属が決まらないと荷重の行き先も断面検定の可否も決められないため止める。主架構との同一判定を満たす小梁は二次部材側の対象から除く。基準端点だけ一致し、偏心等が異なる小梁は除かない。未所属の間柱は同一判定にかかわらずエラー)
- 二次部材(小梁・間柱)に CFT 断面が割り当てられている(エラー。CFT は柱専用で二次部材には使用できない。二次部材の自重式が充填コンクリートを扱わないため、割り当てると充填分の自重が欠落して危険側になる。断面を鋼材または RC に変更する)
FrameSectionUse::Column以外の主架構断面、または未参照断面に CFT が指定されている(エラー。CFT は柱用途専用。編集コマンドでの作成・割当を拒否し、既存データは解析前チェックで停止する。Beam・Fiber・MultiSpringの主架構線材で Column 用途を持つ場合に限り許可する)- 床板・壁版に CFT 断面が割り当てられている(エラー。対象の床板・壁版 ID と件数を示す。CFT は柱専用のため、床板・壁版の断面を RC または鋼材へ変更する)
- CFT 柱の鋼管専用材料が未設定・不正、または基準強度Fを解決できない(エラー。既知材種は実板厚の表のFを優先し、適用範囲外を直接入力値で補わない。未知名称の鋼材には正の有限値の降伏応力が必要。F=235の補完は行わない)
- 荷重を流せる床の上に載っていない自立壁(エラー。自重の行き先がないため止める。壁を床領域の内側へ移すか、床板を割り当てるか、取付き先を梁の線アンカーへ変える。床領域境界の辺上 1 mm 以内は内側とみなさない。未覆いが壁の全重量の 0.1% 以下なら丸めとして無視する)
- 荷重が定義されていない荷重ケース(情報)
剛床のない階が警告にとどまるのは、その階の水平力を階に属する節点へ質量比で直接分配して 解析を続けられるためです(地震力)。 剛床として扱うつもりの階でこの警告が出た場合は、床が張られているかを確かめてから 準備計算を実行し直してください。
基部以外で剛床マスターが水平拘束されている検査は、地震力が拘束自由度へ入って消えることを止めるためのものです。 床面に柱や大梁が取り付いていれば、マスターは水平に動ける判定になるため、このエラーは出ません。 地震用重量が 0 の階は、消える水平力も 0 であるため対象外です。
準備計算を実行するたびに診断をやり直すため、診断タブを開いていなくても件数は最新です。
先頭のモデル検証はデータの破損を見る検査で、プロジェクトファイルや ST-Bridge の 読み込み時にも同じ検証を通しているため、通常の操作では出ません。これが出た場合は モデルの参照関係そのものが壊れており、以降の検査は別の実体を指した結果を報告しかねない ため、モデル検証のエラーが出ている間は他の項目を検査せず、この 1 件だけを表示します。 表示された不整合を直せないときは、直前の編集を取り消すか、保存済みのプロジェクトファイルを 開き直してください。
仕口パネル・節点バネ・免震支承材・制振ダンパーは、断面ではなく専用の特性値から 剛性を作るため、断面と材料の未割当は検査しません (仕口パネル)。
実装参照:検査の本体は sepika_solver::statics::analysis::precheck::model_issues(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs)にあり、解析前チェックと GUI の診断(sepika_app::app::App::run_diagnostics、crates/sepika-app/src/app/actions/mod.rs)が同じ判定を共有します。GUI は壁展開モデル(sepika_core::wall_expand::expand_wall_elements)へ model_issues を適用し、対象のクリック選択は ModelIssue が持つ IssueTargets で 3D ビューと結び付けます。
通常鋼部材・鋼小梁・S/CFT接合部の検定実行時にも、材料・板厚・Fの入力条件を確認します。不備があれば対象と理由を示して検定全体を停止し、該当対象の読み飛ばしや既定強度による正常完了にはしません。
この章の内容
準備計算タブに表示される内容を、項目ごとに次のページで説明します。
階の分布
建物概要(節点数・部材数・支点数・階数・剛床数・地盤面 GL・建物高さ \( h \)・鉄骨造高さ比 \( \alpha \)・地震用重量の総和 \( \Sigma W \)・質量モデル)と、層ごとの一覧を上から順に示します。
実装参照:建物概要は sepika_app::app::App::build_prep_summary(crates/sepika-app/src/app/preparation.rs)が、層ごとの一覧は sepika_app::app::App::build_prep_stories が集計します。
FL・SL と階高
各階の FL は床上端の基準標高、SL は代表的な梁の中心が来る構造基準標高です。 どちらも同じモデル座標原点からの mm 値です。各階に FL と上向きを正とする差分 ΔSL を入力し、SL は FL + ΔSL で求めます。 差分の負・0・正を指定できます。−500 mm は例であり固定値ではありません。明示した 0 mm は FL と SL が同じことを表します。
| 値 | 定義 |
|---|---|
| 建築階高(FL間) | 上階 FL − 下階 FL。既存計算へ渡す階高 |
| 構造階高(SL間) | 上階 SL − 下階 SL |
例えば下階 FL=3500 mm・ΔSL=−500 mm、上階 FL=7000 mm・ΔSL=−600 mm なら、SL は 3000/6400 mm、建築階高は 3500 mm、構造階高は 3400 mm です。 FL を固定して差分だけを変えても建築階高は変わりません。FL・差分・SL・隣接階差は有限で、FL 列と SL 列はそれぞれ下から上へ厳密な正順が必要です。 重複・逆転を微小階高や別の階順へ置き換えることはしません。
「① 準備計算」の階定義で、階名・FL・ΔSL を編集します。SL・FL間・SL間は導出表示です。 FL と ΔSL の空欄は未設定として保持します。階追加では両方を明示し、「階を追加」で採用します。 既存階の FL が未設定・不正で追加位置を確定できない場合は、階 ID・FL の診断を表示して追加を拒否します。既存の階順・ID・原階・参照・節点座標は変更しません。既存 FL を補ってから追加してください。追加フォームには FL=0 mm、ΔSL=0 mm を表示し、追加後の次の FL 候補は直前の FL + 3500 mm とします。 階編集と追加は undo/redo と OViKA 保存・再読込に対応し、計算入力の変更で既存結果は失効します。 既存節点の座標は FL・差分の編集では動きません。変更後の構造レベルに必要な所属・剛床が成立しなければ、診断を確認してモデルを修正してください。
最下階の FL はモデル座標原点・GL・構造節点の最小 Z と別の情報です。最下層にも指定した上下 FL を使います。 構造最下端を理由に最下階 FL を変更したり、基部の階を自動追加したりしません。 FL・差分が不足するモデルは編集・保存できますが、階を必要とする準備計算・解析・後続算定を開始できません。 節点 Z から FL/SL を推測したり、未設定差分を 0/−500 mm で補ったりしません。
実装参照:sepika_core::model::{Story, Model::layers, Model::story_level_diagnostics}(crates/sepika-core/src/model/story.rs)、sepika_edit::SetStoryLevel(crates/sepika-edit/src/story.rs)が入力・導出・検査と編集を担います。
階と層
階は床の基準で、層は指定した隣接 2 階の間です。階を N 個定義すると層は N−1 個です。 層の名前は下端階、重量・所属節点・階種別・主要構造種別は上端階から採ります。 最下階に配分した重量は最下層の層重量には算入しません。 階名の既定は下から 1F・2F…です。最上階を自動的に屋根と判定せず、必要に応じて RF 等へ編集します。 階名の重複は整合性チェックで確認してください。
STB 元階の FL・階名・種別・明示所属は、現在編集する階情報と分けて保持します。 取込みで取得できた FL を保持し、ΔSL は未設定です。入力後も元の節点座標・元属性を変更しません。 解析用階と元階の対応は FL 編集後も維持され、元属性の高さ一致や階名で付け替えません。 「STB明示所属と解析用推定」で入力不整合と所属の相違を確認し、原階の節点 ID を入力して「所属を適用」で明示所属を編集できます。 未知節点・多重所属・従属先の欠落や循環は診断されます。空の元階一覧へ自動で解析階を追加しません。
実装参照:sepika_core::model::{SourceStory, Model::source_story_diagnostics}(crates/sepika-core/src/model/source_story.rs)と sepika_edit::SetSourceStoryNodes(crates/sepika-edit/src/story.rs)が元属性と明示所属を保持します。
階と剛床
階所属と剛床は別の概念です。通常の架構では SL を代表解析レベルとして使います。
| 対象 | 自動判定 |
|---|---|
| 階所属 | 直下階 SL を超え、当該階 SL 以下の区間 |
| 最下階の所属 | 構造節点の最下端以上、最下階 SL 以下の区間 |
| 剛床候補 | 当該階 SL から 1 mm 以内の面 |
中間高さの節点は階に属しても、SL 面から外れれば新規の剛床に加えません。 SL に節点がない階には剛床・代表節点を自動生成しません。入力済みの明示所属・利用者剛床は維持し、自動生成した所属・剛床は再評価します。 必要な所属や拘束が成立しない場合は計算を停止し、元の節点や明示拘束を勝手に移動・解除しません。 1 階に複数の剛床がある場合の水平力は剛床重量比で分配します。 現在の重量・質量の準備計算では、利用者剛床のスレーブも所属階 SL から 1 mm 以内にあることが必要です。 SL 外の別レベルに明示した拘束は入力として保持しますが、この準備計算で有効な別レベル剛床として自動的に受理・補正しません。
階や剛床を定義しても、部材の解放による架構全体の機構は解消しません。少数部材の架構では、ねじり解放と全体の安定性も確認してください。
最下階の自動剛床代表節点は、構造部材が接続する床面節点の水平自由度が全て拘束されている場合、水平並進・面内回転を拘束します。 支点ばねで水平移動できる場合は自由として質量を連成させます。部材が接続しない床境界・小梁支持点はこの判定に数えません。
実装参照:sepika_core::model::Model::story_spans(crates/sepika-core/src/model/story.rs)と sepika_load::story_gen::generate_stories_with_opts(crates/sepika-load/src/story_gen/generate.rs)が所属・自動剛床を解決します。
層間変形角への高さと評価点の供給
層間変形角に供給する分母は上下階の FL 間高さです。上下の評価点には、上下階 SL にある解析節点の加力方向水平変位を使い、その差の絶対値を FL 間高さで除します。 FL 位置の変位や、SL 節点変位を FL へ補間・換算した変位は使いません。対象層の柱の上下端も SL を基準に判定します。 例えば FL が 3500/7000 mm、SL が 3000/6400 mm なら、Z=3000/6400 mm の解析節点の変位差と分母 3500 mm を対応させます。 ここで整備した階情報・参照先を使う具体的な変位差の算定・集計・表示は、層間変形角機能の対応範囲に従います。
階の定義と自動算定の分担
階名・FL・ΔSL・階種別・地震用重量の手入力は利用者が定め、準備計算は保持します。 所属節点・自動剛床・地震用重量の算定値・主要構造種別は準備計算で更新します。 階の削除は節点・部材を残し、その階の所属と剛床を解除します。最下階の削除はできませんが、FL・差分の編集はできます。
一覧の列
一覧の 1 行は 1 つの層です。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| 床レベル | 層の上端階 FL [mm](モデル座標) |
| 階高 | 上端階 FL − 下端階 FL [mm] |
| 節点数 | 上端の階に属する節点の数 |
| 剛床数 | 上端の階に定義された剛床(ダイアフラム)の数 |
| 地震用重量 \( W_i \) | 層の地震用重量 [kN](固定荷重+地震用積載) |
| 累積 \( \Sigma W_j \) | 当該層以上の地震用重量の合計 [kN] |
| 構造・種別 | 層の主要構造種別(RC / S / SRC)と階種別(一般 / PH / 地下) |
剛床数が 0 の層、地震用重量が 0 の層は強調表示します。剛床のない階にも水平力は載りますが、 載荷先が剛床代表節点ではなく階の各節点になる(地震力) ため、意図した床面のモデル化になっているかを確認してください。 剛床のない階はモデル整合性チェックにも警告として並びます。 解析は止まりませんので、意図した入力であればそのまま進めてかまいません。
支点数には、階の生成が作る剛床代表節点(面外拘束を持つ仮想節点)は含めません。
主要構造種別は、その層に属する柱・梁の構造種別 (構造種別の判定)を集計して決めます。 RC を RC、S を S、鉄骨とコンクリートが一体で働く SRC・CFT を SRC とし、層に属する部材で もっとも多い種別を採ります。部材の所属は、材端節点のうちもっとも高い節点の所属階を上端と する層とします(層 \( i \) の階高区間にある柱は上端が層 \( i \) の上端の階に取り付き、 その階のレベルにある梁も層 \( i \) に属します)。種別ごとの本数が同数の場合、および断面も 材料も割り当てられていない部材だけの層は RC とします。主要構造種別は略算周期の鉄骨造高さ比 \( \alpha \)(地震力)にのみ効き、S の層が増えるほど 設計用固有周期 \( T \) が長く \( R_t \) が小さくなるため、判定が割れた場合に S を採らないことが 安全側になります。
実装参照:一覧の各列は sepika_app::app::App::build_prep_stories(crates/sepika-app/src/app/preparation.rs)が集計し、主要構造種別は sepika_core::model::StoryStructure::majority(crates/sepika-core/src/model/story.rs)が最多本数から判定します。
地震力(Ai 分布)
一般階・地下階の標準地震力を算定できる場合、算定諸元(設計用固有周期 \( T \) とその算定法、地盤種別と \( T_c \)、振動特性係数 \( R_t \)、 地域係数 \( Z \)、標準せん断力係数 \( C_0 \)、基部せん断力 \( Q_1 \)、ベースシア係数 \( Q_1/\Sigma W \))と、 階ごとの \( W_i \)・\( \Sigma W_j \)・\( \alpha_i \)・\( A_i \)・\( C_i \)・\( Q_i \)・\( P_i \) を示します。
\( \alpha_i \)・\( A_i \) は一般階でのみ算定するため、地下階の欄は「—」と表示します。 \( C_i \) の欄は、一般階では層せん断力係数、地下階では水平震度 \( K \) を表します。
層の水平外力 Pi も表示します。未設定・0・負値・非有限の重量、一般層の αi=0、C0<0.2、非正・非有限の T/Z、地下深さ不正、階順序不正、負Piや合力不一致では表を算定せず理由を表示します。0や適合結果に置き換えません。
固有値周期を選択した場合、参考周期取得は可能ですが、告示第2ただし書の適用条件と採用Rt下限の確認が未対応なので標準地震力は算定しません。現在のモデル・質量・剛域・解析条件と一致しない旧固有値結果、入力記録の欠落、未実行時には周期を採用せず原因を示します。
PH種別の指定震度k経路は適用未検証として算定しません。 PHを含む場合は標準表全体を表示せず、未対応の理由を示します。通常Aiで計算する塔屋階と屋上突出物の局部検討の対象判定は設計者が行います。kにはZを再乗算しない既存参考計算があり、通常Aiや局部検討の代用にはできません。
Zの地方区分・地盤種別の実態条件は設計者の確認事項です。入力されたZを地域適合確認済みとは表示しません。層ごとの任意Qi/CiやT直接指定モード、地域自動判定、Rt/Aiの精算例外、突出部局部検討は未対応です。副剛床の指定Ciは層全体の直接指定とは異なります。準備表の通常 C0 に対し、必要耐力用 Qud は C0=1.0 と地下の直上せん断力加算を用いる別目的の計算です。指定Ci副剛床の必要耐力用適用は未検証のため Qud 入口では拒否します。
標準 EX/EY の Ai 再生成が片方向でも失敗すると、先端荷重の有無にかかわらず旧 Auto 水平力を両方向とも除去します。 手入力荷重と先端荷重は保持しますが、Ai の再生成に成功するまで両方向と依存する組合せの静的解析は実行できません。 旧条件による結果を現行の結果と誤認しないよう、準備計算で失敗を検出した時点でも両方向と依存組合せの旧結果を削除します。 無関係な結果は保持し、除去の理由を通知・ログに示します。
算定根拠は 地震力を参照してください。
略算周期の鉄骨造高さ比は、GL から最上一般床までの範囲に含まれる一般S層の高さで求めます。GLをまたぐ層の地下部分は含めません。
地下深さ H は地盤面 GL からその地下床までの深さです。複数の地下床では「床標高+H」を共通 GL に合わせてください。0.001 mmを超える不一致は標準地震力の算定エラーとなります。多雪区域では必要な積雪分を階の地震用重量へ含めて確認してください。積雪を含む荷重組合せの設定だけでは、階重量へ積雪が自動算入されません。
実装参照:Ai 分布の標準入口と適用診断は sepika_solver::statics::analysis::seismic_distribution_for_model(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/seismic.rs)が担い、設計用固有周期 T の選択・精算時の未実行メッセージ・一覧の集計は sepika_app::app::App::build_prep_seismic(crates/sepika-app/src/app/preparation.rs)が担います。
再生成失敗時の荷重・結果の除去は sepika_app::app::actions::loads(crates/sepika-app/src/app/actions/loads.rs)が担います。
剛域
剛域長 \( \lambda \)、仕口パネル要素のオフセット、または柱フェース距離を持つ梁要素を一覧します。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| 材長 \( L \) | 節点間距離 [mm] |
| \( \lambda_i \) / \( \lambda_j \) | 各端の剛域長 [mm]。括弧内は出所(自動/手動) |
| パネル i/j [mm] | 各端の仕口パネル要素分のオフセット [mm]。仕口パネル要素がない端は 0 |
| 可とう長 \( L' \) | 採用する剛体アーム長を両端から控除した部材中間の長さ [mm] |
| フェース \( i/j \) | 柱フェース距離 [mm](断面算定の危険断面位置の基準) |
| 剛域比 | 剛体アーム長の合計を材長で除した値 |
剛域長 \( \lambda \) と仕口パネル要素分のオフセットは別々に表示しますが、「剛域を考慮する」がONなら可とう長と剛域比は両者の大きい方から定まる剛体アーム長に基づきます。OFFでは剛域長を採用せず、仕口パネル分の偏心だけを反映します。フェース距離は断面算定の危険断面位置に用いる別の量です。 構造種別による剛域の条件、壁寸法・耐震スリットの扱い、算定式は ティモシェンコ梁要素の剛域を参照してください。 剛域比が 0.5 を超える部材、可とう長が 0 以下になる部材は、直交部材せいの入力を 確認するため強調表示します。
準備計算の「剛域を考慮する」は建物共通の設定で、既定はONです。ONでは自動・手動の剛域長を剛性と荷重応答に反映します。OFFでは保存済みの剛域長を保持したまま、その力学的効果だけを抑止します。危険断面のフェース位置と仕口パネルの偏心はどちらの設定でも保持します。設定はプロジェクトへ保存され、変更後の旧解析結果は利用できません。
剛域内の部材荷重は、可撓区間の荷重と分けて、当該端節点の力・モーメントへ一度だけ伝達します。剛域内の荷重を捨てる選択肢はありません。OFFでは全長を用いた梁の荷重応答となります。ただし、別設定の仕口パネルがある場合はその接続偏心を反映します。
剛域長には、既定で取り付く壁を考慮します。準備計算の「剛域の算定で壁を考慮する」で 原断面のみに切り替えられます。フェース距離には壁を含めないため、この設定を切り替えても 値は変わりません。
部材端の剛域を含む立体形状は、モデル化ビュー(結果タブ「モデル化」)でも確認できます (モデル化の表示)。
算定根拠は ティモシェンコ梁要素を参照してください。
実装参照:剛域長 \( \lambda \)・危険断面のフェース距離・壁の考慮は sepika_element::frame::beam::{apply_auto_rigid_zones, RigidZoneRule}(crates/sepika-element/src/frame/beam/rigid_zone.rs)が算定し、一覧化は sepika_app::app::App::build_prep_rigid_zones(crates/sepika-app/src/app/preparation.rs)が行います。建物共通の採用剛域は sepika_core::model::Model::analysis_rigid_zone(crates/sepika-core/src/model/aggregate.rs)、梁CMQは sepika_element::frame::member_load::cmq_with_rigid_zone(crates/sepika-element/src/frame/member_load.rs)が扱います。
ねじり解放
ねじり解放(i 端ねじれピン)の対象外となり、ねじり剛性 \( GJ/L \) が残っている部材を 一覧します。
既定では線材(梁要素。柱を含む)の i 端のねじれをピンとしてモデル化し、部材全長で \( M_x = 0 \) とします(日本の一貫計算の通例)。この設定は右パネル「① 準備計算」の 「部材のモデル化」にあるチェックボックス 「部材 i 端のねじりをピン(梁・柱)」 (既定 ON)で建物一律に切り替えます。OFF にすると全部材でねじり剛性を保持するため、 この一覧は空になります(「対象外」という区分自体がなくなるため)。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| 部材 | 部材 ID |
| 種別 | 柱/梁/ブレース(断面用途に基づく設計上の部材分類) |
| 節点 | 判定に落ちた節点(この節点の材軸まわり回転を拘束するものがない) |
| 理由 | 対象外となった理由 |
実装参照:建物一律の設定は sepika_core::model::GirderTorsionMode(crates/sepika-core/src/model/element.rs)が保持し、一覧は sepika_app::app::App::build_prep_torsion_skipped(crates/sepika-app/src/app/preparation.rs)が集計します。
対象外になる条件
ねじりを解放した部材は材軸まわり回転に剛性を持たなくなるため、その回転を他に拘束する ものがない節点があると全体剛性行列が特異になります。そこで、部材の両端節点それぞれに ついて材軸まわりの回転が「非平行な線材の曲げ」「線材以外の要素(壁・シェル・ばね類)」 「支点拘束」「支点ばねの回転成分」のいずれかで拘束されることを確かめ、確かめられない 部材は解放せずねじり剛性を保持します(安全側のフォールバック)。
仕口パネル要素はこの判定に含めません。仕口パネル要素が剛性を与えるのは接合部のせん断変形角 (節点の標準 6 自由度とは別枠の追加自由度)だけで、節点の回転自由度には寄与しないため、 拘束ありとみなすと材軸まわり回転が浮いた節点を見逃してしまいます。
典型的に対象外となるのは次の場合です。
- 大梁・柱を中間節点で分割し、その節点に直交部材が取り付かない(分割された 2 本は 一直線に並ぶため、互いのねじりでしか材軸まわりを拘束できない)
- 片持ち梁(跳ね出し)の先端節点を持つ
- 柱脚をピン支点(並進のみ拘束)とし、基礎梁が取り付かない
いずれも「その節点でねじれ回転が浮く」ことが理由なので、直交部材を接続する・支点で 回転を拘束する・部材を分割しない、のいずれかで解消できます。解消しない場合も解析は そのまま実行でき、当該部材だけがねじり剛性を保持します。
なお、ねじり剛性をもともと持たない部材(断面の \( J \le 0 \)、材料の \( G \le 0 \)、 トラス扱いのブレース)は、解放してもしなくても剛性が 0 で設計上の影響がないため、 この一覧には含めません。
J の未算定は、剛性 0 の指定とは区別します。形状からの J が適用域外、角Rが未知、 CFT コアの数値 J が品質未達などの場合は、理由付き計算不可とし、0 として解放判定を通しません。 カタログ・直接入力の J は優先して用い、形状式の適用域外だけを理由に破棄しません。 CFT のねじり剛性は、鋼管 Js とコア Jc の初期弾性累加 GsJs+GcJc です。 この一覧に載らないことを、J の算定成立やモデル精度の確認に代えることはできません。
個別の部材については、モデル化ビュー(結果タブ「モデル化」)で部材にポインタを重ねると、 解放されている場合に「ねじれ: i 端ピン(部材全長で Mx=0)」が表示されます (モデル化の表示)。
判定規則の詳細と算定根拠は ティモシェンコ梁要素の 「部材のねじり剛性の既定モデル化」を参照してください。
実装参照:材軸まわり回転の拘束判定と対象外の理由は sepika_element::frame::beam::i_end_torsion_release_skip(crates/sepika-element/src/frame/beam/torsion.rs)が判定します。
仕口パネル
準備計算が生成した仕口パネル要素を一覧します。
仕口パネル要素は、柱梁接合部のせん断変形を解析モデルへ組み込む要素です。既定で S 造(CFT を除く)の 柱梁接合部に生成されます。生成の有無は右パネル「① 準備計算」の「部材のモデル化」にあるチェックボックス 「仕口パネルをモデル化(柱梁接合部)」(既定 ON)で建物一律に切り替えます。OFF にすると仕口パネル要素は 生成されないため、この一覧は空になります。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| 節点 | 接合部の節点 ID |
| 方向 | 採用柱の強軸・弱軸 |
| dc [mm] | 表示方向の仕口パネル要素の寸法 |
| db [mm] | 表示方向の梁フランジ板厚中心間距離 |
| tp [mm] | 表示方向の仕口パネル要素の板厚 |
| Ve [mm³] | 表示方向の仕口パネル要素の実効体積 |
| K [kN·m/rad] | 表示方向の仕口パネル要素のせん断剛性 |
接合部ごとに強軸・弱軸の2行を表示します。箇所数は接合部の数です。柱断面の既存の向きから2方向を定め、梁方向ごとの仮想の仕口パネルは設けません。追加の2自由度は、全体 X・Y の基底を柱材軸の直交面へ投影した基底の係数で、鉛直柱の場合に全体 X・Y 軸まわりの回転方向と一致します。変形とモーメントの対応は柱主軸と全体座標の変換を参照してください。
実装参照:仕口パネル要素の生成・除去は sepika_element::springs::panel_gen::apply_auto_panel_zones(crates/sepika-element/src/springs/panel_gen.rs)が行います。
仕口パネル要素の生成
仕口パネル要素は、S 造(CFT を除く)の柱梁接合部に生成されます。生成された仕口パネル要素の寸法・実効体積・ せん断剛性は、この一覧で確認できます。
一覧が空になる場合は、対象となる S 造の柱梁接合部がない、または接合部に CFT 柱を 1 本でも含む可能性があります。CFT の柱梁接合部は 仕口パネル要素を生成しませんが、柱梁接合部の断面算定の対象です。
柱由来の寸法・材料・実効体積は、接合部の物理的な下側柱から求めます。下側柱が存在しない場合だけ上側柱を使います。上下の実効体積の大小・同値、部材の並び順や端点の登録順では選びません。解析・断面検定の柱情報と軸力も同じ採用柱を参照します。
算定対象で採用柱を一意に特定できない場合や、採用柱の断面・材料・寸法・断面積・軸剛性など必要な情報が欠落・不正の場合は、接合部と理由を示すエラーになります。「断面性能」タブなどで割り当てを確認してください。不正な下側柱を不在とみなして上側柱へ切り替えたり、既定値や正常な剛パネルで補ったりしません。
せん断弾性係数は採用柱の材料の明示値を優先し、未指定の場合だけヤング係数とポアソン比から求めます。採用値と実効体積との積は有限の正値が必要で、0も入力不備として扱います。不正な明示値から導出値への切替えや、剛パネル・微小値・既定材料による補完は行いません。仕口パネルをモデル化する自動生成・準備計算と、明示パネルを使う直接解析のいずれでも、条件を満たさない場合は正常結果を返さず、接合部・採用柱と理由を示します。式と適用条件は仕口パネル要素の剛性を参照してください。
梁の寸法はH梁の形状外寸 D − tf、組立H梁の D − (tf上 + tf下)/2 から求めます。表示用の断面せいが異なっていても、形状寸法を用います。非H梁、形状未定義、不正寸法の梁を含む接合部では、仕口パネルを自動生成せず、接合部ID・梁ID・形状・梁材軸・不足条件を示す通知を表示します。非H梁のせいの直接入力は式適用の確認にはなりません。
対象梁は材軸水平・直交化したせい方向±Zに限定します。横倒し、斜め断面回転、勾配梁、鉛直Girderは理由付き未対応です。−Zを向く組立Hは上下板厚を全体座標の上下へ対応させます。
相対する梁の上下フランジ板厚中心位置を面ごとに比較し、両位置が局所数値公差1×10⁻⁶ mm以内で一致する標準形式だけを適用します。片側梁は保持し、直交梁を左右の比較相手にしません。150 mmの梁せい差による許容判定はありません。梁の一律鉛直偏心を含む実材軸端の高さで比較します。未指定偏心を0へ補わず、同じ断面でも異なる偏心によりフランジがずれれば段違いとして拒否します。端別偏心の入力や梁天端への自動調整は行いません。
段違い・未対応面を含む接合部は、標準パネル要素を自動生成せず、節点・検討面・梁ID・両db・上下位置差を通知します。自動生成しない場合はパネル分のオフセットを残しません。これはせん断変形をモデル化できない制限であり、剛接合の妥当性を確認した結果ではありません。フェイス応力評価位置・手動剛域は個別の設定条件を保持します。古い/明示パネルも同じ幾何制限を受け、条件を満たさない場合は理由付きエラーで解析を停止します。未対応接合を剛パネルへ置き換えて解析成功にはしません。
保存成果の読込時にも、共通resolverで現在の標準形式の適用条件を確認します。対象外面が旧成功結果になっている、または現在の共通理由を記録した未算定面がない場合、その解析・検定成果を利用不可にして再解析を要求し、面と位置差を含む理由を残します。全体解析の応力は接合部剛性と連成するため、旧成功成果の直交面だけを再認証しません。対応標準形式の成果と、現在の共通理由を記録した未算定面+別標準面の保存成果は保持します。モデル編集後の古い解析を対象外形状の再検定へ流用する入口も拒否します。一般の算法版管理は#587で別途扱います。
解析成果や旧Sパネルの成功結果を含まない空の結果容器・床板だけの直接設計は、旧架構成果の利用制限では停止しません。床板の自重・材料条件はその直接設計入口で検証します。静的/組合せ・固有値・増分/保有耐力・立体/質点系時刻歴などの解析成果、保存内力/パネル需要、または旧Sパネル成功結果を持つ場合は、従来どおり共通幾何による利用不可判定を受けます。
断面検定は元の梁構面の標準形式を確認し、柱の強軸・弱軸へ需要を集約します。同じ主軸へ寄与する構面間の上下フランジ位置が一致しない方向は「検定不能」とし、独立する整列直交方向の標準形式検定は保持します。解析のパネルモーメントを用いる場合、解析の共通最大dbと検定方向の高さが異なる方向も、その方向は未算定です。未算定を含む節点の検定比図は「未算定」を表示し、適合色にはしません。MCPの全適合判定とCSV帳票でも未算定方向・理由を保持します。詳しい適用条件はS 造柱梁接合部、段違い形式の解除条件は標準形式の適用範囲を参照してください。
生成条件と構造種別の判定は、構造種別の判定・ 仕口パネル要素を参照してください。
実装参照:生成条件と諸元の解決は sepika_core::panel_zone::resolve_panel_joint(crates/sepika-core/src/panel_zone.rs)が行い、CFT 柱の除外は sepika_element::springs::panel_gen::apply_auto_panel_zones が担います。
モデル化の影響
仕口パネル要素は、柱梁接合部のせん断変形を解析へ組み込みます。仕口パネル要素の寸法に対応するオフセットと 部材端の剛域は、準備計算の「剛域」表と結果タブ「モデル化」のモデル化ビューで確認できます。
せん断変形・剛域・オフセットの算定と解析モデルへの反映は、仕口パネル要素・ ティモシェンコ梁要素を参照してください。
梁端のオフセットは、採用柱の実断面と向き、梁方向から求める接合面までの距離です。非正方柱や柱断面回転を反映し、円形・角形鋼管およびH形柱の外フランジ広面内部へ交わる斜交も、既存入力から面が一意に決まる範囲で扱います。H形柱の弱軸側・フランジ端への接合、交点距離に影響する角Rが未知の角形鋼管などは、対象柱・梁・接合部と理由を示して準備計算・解析を停止します。面距離を推測して続行しません。具体的な面定義・適用条件は部材端の接合面とオフセットを参照してください。
再準備では接合面距離を更新し、モデル化解除・既存の対象外では仕口パネル分の距離を消します。手動剛域長と危険断面位置は独立して保持します。保存距離が現在の形状・向きと一致しない場合は、直接解析を止めて再準備を要求します。
断面・材料の割当と表示上の扱い
仕口パネル要素は断面を割り当てない要素です。 せん断剛性は取り付く柱・梁の断面から求めた実効体積 Ve によるため、仕口パネル要素自身が 断面を参照する必要がありません。材料は断面が持つため、断面を割り当てない仕口パネル要素は材料も 持ちません。節点バネ・免震支承材・制振ダンパーも同じく、断面ではなく専用の特性値から 剛性を作るため、これらにも断面を割り当てません。
このため、断面・材料の割当を見る次の機能は、いずれも仕口パネル要素を対象から除きます。
| 機能 | 仕口パネル要素の扱い |
|---|---|
| 下ドック「診断」タブの断面未割当の警告 | 対象外 |
| 解析前の入力チェック(断面・材料の未割当エラー) | 対象外 |
| ナビゲータの部材グループ(鋼材部材 / RC部材) | 対象外(材種で分類しない) |
| 3D ビューの選択ハイライト | 描かない |
3D ビューでハイライトしないのは、仕口パネル要素の節点列が「接合部の節点 + 取り付く部材の他端」であり、 材軸も輪郭も持たないためです。先頭 2 節点を結ぶ線は取り付く柱・梁そのものと同じ線分になるので、そこへ ハイライトを描くと、選択していない柱・梁が選択されているように見えてしまいます。同じ理由でクリックによる 選択・ホバーの対象からも外れているため、仕口パネル要素の寸法とせん断剛性は、この準備計算「仕口パネル」タブの 一覧で確認してください。
仕口パネル要素は部材タブの部材一覧には種別 PanelZone の要素として並び、断面の欄と(断面から引く)材料の欄は
どちらも空欄(―)が正しい状態です。ナビゲータの部材グループは仕口パネル要素を数えないため、鋼材部材と
RC部材の合計は部材一覧の行数とは一致しません。
実装参照:仕口パネル要素を断面必須としない扱いは sepika_core::model::ElementKind::requires_section_and_material(crates/sepika-core/src/model/element.rs)が定め、3D ビューの描画・選択からの除外は sepika_app::viewer::scene::element_draw_shape(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が担います。
断面算定との関係
柱梁接合部の断面算定は、仕口パネル要素のモデル化の有無によらず行います。CFT の柱梁接合部も断面算定の対象です。 検定結果は結果タブ「設計」の「接合部・耐震壁の検定」表と、3D の検定比図(節点上のひし形マーカー)で確認できます。
算定式・係数・対象条件は、一次設計のRC 断面検定・ 鋼構造 断面検定・ SRC / CFT 断面検定を参照してください。
断面性能
断面ごとに、符号・階・形状種別・使用部材数・せい D × 幅 B・断面積 \( A \)・断面二次モーメント \( I_y \)・\( I_z \)・ねじり定数 \( J \)・せん断有効断面積 \( A_{sy} \)・\( A_{sz} \)・断面二次半径 \( i_y = \sqrt{I_y/A} \)・\( i_z \)・材料名とヤング係数 \( E \) を示します。値は解析に用いる断面諸量 そのもの(形状定義から生成された値、またはカタログ数値の直入力)であり、この表では 再計算しません。表示は cm 系(\( A \): cm²、\( I \)・\( J \): cm⁴)です。
形状定義を持たない断面(数値の直入力)は「数値直入力」と表示します。この断面は 幅厚比・部材ランクの判定、終局耐力の算定、スラブ協力幅による剛性増大の対象外に なるため、意図した入力かどうかを確認してください。どの部材・床にも割り当てられていない 断面は、使用部材数 0 として淡色で表示します。
材料欄には、断面に割り当てた主材料の名前を示します。 材料は断面が持つため、1 つの断面が複数の材料で使われることはありません。 違う材料を割り当てるなら、それは別の断面になります。
断面は符号と階の組で識別します。
同じ符号の断面が階ごとに並ぶことがあるため、符号だけでなく階も併記しています。
階を持たない断面の階欄は — と表示します。
詳細は断面の符号と階を参照してください。
算定根拠は 断面諸量(弾性)・ せん断有効断面積 Asを参照してください。
実装参照:形状定義からの断面諸量の生成は sepika_core::section_shape::SectionShape::to_section(crates/sepika-core/src/section_shape/builder.rs)が、一覧の集計は sepika_app::app::App::build_prep_sections(crates/sepika-app/src/app/preparation.rs)が行います。
単一リップ溝形の寸法と総断面性能
単一・直角・一様厚のリップ溝形は、外寸のせい H、幅 B、端から測るリップ外寸 C、板厚 t(いずれも mm)を入力します。 H/B/C/t は有限な正値で、t < C < H/2、t < B/2 が必要です。寸法の許容差による救済は行いません。
角Rを持たない総断面は、次の重複しない5矩形で表します。ここでの y はせい方向、z は幅方向の矩形区間用の補助座標であり、部材局部軸と区別します。
| 部分 | y 区間 [mm] | z 区間 [mm] |
|---|---|---|
| ウェブ | 0~H | 0~t |
| 下フランジ | 0~t | t~B |
| 上フランジ | H−t~H | t~B |
| 下リップ | t~C | B−t~B |
| 上リップ | H−C~H−t | B−t~B |
上下リップ間の開口は H−2C です。C > H/2 では上下リップが重複し、C = H/2 では接触するため拒否します。 B ≤ 2t のウェブとリップの接触・重複、C ≤ t の不成立寸法も拒否します。 この接触拒否は本アプリが対応する単一開断面の範囲であり、規準の寸法上限を示すものではありません。 C の切詰め、微小隙間の補完、閉断面のねじり定数への読み替え、0質量化は行いません。 寸法が有限でも、算定する総断面性能や途中の計算が非有限となる入力は拒否します。
正常寸法の総A/I/Jは従来の直角矩形モデルで算定します。総性能の成立は有効断面・耐力・部材検定の成立を意味しません。 角R、傾斜リップ、孔、有効断面、座屈、接触部の結合はこのモデルの対象外です。 検討対象と未検定を参照してください。
形状定義を持つ断面では、性能をすべて直接入力しても不成立寸法を拒否します。形状なしの正常な数値直入力は引き続き使用できます。 断面フォームには寸法と理由を表示し、追加・適用が拒否された場合はモデルや編集履歴を更新しません。
実装参照:SectionShape::validate_lip_channel(crates/sepika-core/src/section_shape/properties.rs)と Section::validate_lip_channel(crates/sepika-core/src/model/section.rs)が検証します。
幅厚比
鋼系(S・CFT)の代表最大幅厚比と、それによる部材ランク(FA〜FD)を示します。断面・材料が 割り当てられ、形状定義を持つ鋼系の部材を、断面・部材用途(柱/梁)・材料ごとに集計します。 これらが同じ部材は 1 行にまとめ、該当部材数を添えます。幅厚比やランクを算定できない形状も、 この集計条件を満たせば表に表示します。
部材ランク FA〜FD は、保有水平耐力計算の構造特性係数 \( D_s \) の算定に用います。 FC は黄色、FD は赤で強調します。
鋼系のブレースは、断面と材料が割り当てられていれば本表の集計対象です。用途欄は、柱以外を 「梁」としてまとめます。保有水平耐力計算での筋かいの部材種別は、有効細長比から別途判定します。
構造種別が RC/SRC の要素、または形状定義を持たない断面は本表の集計対象外です。
円形鋼管・CFT 円形鋼管は代表最大幅厚比を表示しませんが、板厚が正であればランクを表示します。
幅厚比を算定できない場合は、最大幅厚比欄を「—」と表示します。幅厚比の数値の有無にかかわらず、
ランクが None の場合は「判定不可」と表示します。幅厚比表に行のない形状(溝形・T形・山形等)は、
集計対象であっても、最大幅厚比が算定できる場合を含めてランクは「判定不可」です。
判定条件の算定根拠は 部材ランク(FA〜FD)を参照してください。
実装参照:最大幅厚比は sepika_design_jp::secondary::width_thickness::max_width_thickness(crates/sepika-design-jp/src/secondary/width_thickness/ratio.rs)が、部材ランクは sepika_design_jp::secondary::width_thickness::s_member_rank_by_kihon(crates/sepika-design-jp/src/secondary/width_thickness/member_rank.rs)が判定します。
部材剛性
断面性能の表(断面単位)では表せない、部材ごとに決まる剛性の割増しと SRC/CFT の 等価断面性能を一覧します。割増しも等価換算もない部材は、表に載りません。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| スラブ | スラブ協力幅(RC 矩形梁の T 形断面)または合成梁(H 形鋼梁)による強軸曲げ剛性の増大率 |
| 壁上下梁 | 壁エレメントモデルの上下大梁の剛性倍率(軸・曲げ・ねじり・せん断に一律) |
| 元 \( I_y \) | 断面が持つ強軸の断面二次モーメント |
| 実効 \( I_y \) | 等価換算・上記の割増しをすべて適用した、解析に入る強軸曲げ剛性用の値 |
| 総増大率 | 実効 \( I_y \) / 元 \( I_y \) |
断面名に「(等価換算)」が付く部材は SRC/CFT の等価断面性能を用います。行にカーソルを 合わせると、等価断面の \( A_{ax} \)・\( I_y \)・\( I_z \)・\( J \)・\( A_{sy} \)・\( A_{sz} \) を確認できます。
実効剛性には、SRC/CFT の等価換算、スラブ協力幅・合成梁、壁エレメント上下大梁の補正が 反映されます。フレーム内雑壁は単一倍率で表せないため、この表の実効 \( I_y \) には含めません。
スラブ協力幅・合成梁の適用結果は「スラブ」列と実効 \( I_y \) に反映され、等価換算の適用結果は 断面名とカーソルで確認できます。
矩形RC梁の床板協力剛性は、上端を揃えて梁全長を覆う囲まれた床板群の実厚を、左右別に取付長で加重平均して反映します。 この厚さ平均は剛性過大・変形過小となり得る近似です。 版なしは倍率1、床板割当や実配置の未解決、不正寸法、同側重複、全長欠落・版なし混在・幅変化・段差などの適用範囲外は 対象と理由を返します。算定根拠・適用条件は梁の剛性計算上の付加を参照してください。
SRC の材料未割当、Fc・Ec・νc の不正、等価性能・必要剛性の非有限値などは理由付きエラーです。準備計算は成功結果を公開せず、解析も停止します。断面形状だけから生成した比15の暫定性能は解析に使いません。材料を修正して再実行してください。
CFT は鋼管とコアの初期弾性性能を累加します。ねじりには供給値を優先した鋼管 Js と、同じ内形のコア Jc を用い、実際の鋼管 Gs による GsJs+GcJc を反映します。 鋼管 G の直接入力は、ねじり・せん断双方の換算に用います。 材料不正、角Rが未知・不正、内法消失、必要な鋼管 J の未算定、コア数値 J の品質未達・資源上限到達は理由付き算定エラーです。 鋼管のみの性能に置き換えて成功表示せず、準備計算の成功結果を公開しません。
断面単位で J だけが未算定の場合、成立する A・Iy・Iz は保持し、J とその理由を分けて示します。
公開 JSON の J は null とし、未算定理由を返します。0 や保存欄に残る数値で補完しません。
J を必要としない重量・幾何性能の算定には、CFT コアのねじり求解を持ち込みません。
SRC・CFT の入力が成立することは、付着・ひび割れ等を含むモデル精度や安全側の保証とは別です。
算定根拠は ティモシェンコ梁要素・ SRC / CFT の等価断面性能を参照してください。
実装参照:割増し率は sepika_element::frame::beam::stiffness_breakdown(crates/sepika-element/src/frame/beam/stiffness_factors.rs)が、SRC/CFT の等価断面性能は sepika_element::frame::beam::composite_props_of が求め、一覧化は sepika_app::app::App::build_prep_member_stiffness(crates/sepika-app/src/app/preparation.rs)が行います。
荷重集計
荷重ケースごとの節点荷重数・部材荷重数と、全体座標系での外力の合計 \( \Sigma F_x \)・\( \Sigma F_y \)・\( \Sigma F_z \) [kN] を示します。部材荷重は、集中荷重はその大きさ、 分布荷重は \( \frac{w_1 + w_2}{2}(b - a) \) を作用方向へ投影して積算します(等価節点力へ 置換する前の外力の総和であり、支点反力と釣り合います)。鉛直下向きが負のため、 重力系の荷重ケースでは \( \Sigma F_z \) が負値になります。
荷重が定義されていない荷重ケースは淡色で表示します。
算定根拠は 積載荷重・ 床荷重の分配・ 自重の長期応力解析への接続・ 床の断面と自重を参照してください。
実装参照:荷重ケースごとの集計は sepika_app::app::App::build_prep_load_cases(crates/sepika-app/src/app/preparation.rs)が行い、集計対象の荷重は sepika_app::app::App::sync_auto_load_cases_action(crates/sepika-app/src/app/actions/loads.rs)が sepika_job::auto_loads::compute_auto_load_cases の算定結果をモデルへ同期します。
CSV 出力・プロジェクトファイルへの保存
CSV 出力
「📋 CSV をコピー」で、建物概要・階の分布・地震力(Ai 分布)・剛域・断面性能・ 幅厚比・部材剛性・荷重集計の各セクションを CSV 形式でクリップボードへコピーできます。
準備計算タブで閲覧できる「ねじり解放」「仕口パネル」は、現状 CSV には含まれません。 列構成が他セクションと異なるため、画面上での確認専用としています。
レポートタブの CSV 出力(解析結果を含むレポート)には、未設定の床板・壁版割当領域があるとき 「[未設定の割当領域]」セクションとして未設定件数と対象 ID を床板・壁版別に記載します。 未設定は荷重・剛性を過小評価し得るため、結果を見る前に気づけるようにするためです (準備計算)。
レポートCSVの「検定荷重状態」「検定荷重項」は、選択した単独ケース/保存組合せの対象キー・名称、係数とケース種別、長期/短期/未判定、作用と判定理由を記録します。モデル編集後の結果には要再計算を表示し、法的全条件は未確認です。「小梁・床検定範囲」は固定+用途別積載の独立した長期略算と、選択短期・積雪・風・地震・任意組合せの未検定範囲を示します。選択termsを小梁・床へ適用した検定結果ではありません。
レポートCSVには、壁版ごとの検定状態の壁版・生成要素・case・種別・判定・理由と、壁枚数/検定種別ごとの集計を含めます。未検定の検定比および空集合の最大検定比は空欄です。PDF/Excel形式の帳票出力入口は現在ありません。
実装参照:準備計算タブの CSV は sepika_app::summary::build_preparation_csv、レポートタブの CSV は sepika_app::summary::build_report_csv(crates/sepika-app/src/summary.rs)が生成します。
プロジェクトファイルへの保存
準備計算の結果と解析結果はプロジェクトファイル(.ovika)に保存され、次に開いたときに
復元されます。解析結果には静的解析・荷重組合せ・固有値・増分解析・時刻歴応答・質点系の
各結果と断面検定の結果が含まれます。
表示中の静的ケースと、実行済みの振動荷重ケース(立体時刻歴・質点系)も保存されます。
保存されるのはモデル編集後に再実行済み(最新)のものだけで、古い状態のまま保存した 場合は同梱しないため、復元された結果は常にそのプロジェクトのモデルに対して最新です。 振動荷重ケースは時刻歴の結果と対になるため、解析結果を同梱しない保存ではモデルからも 外します。結果のない空ケースが、開き直したときに実行済みへ見えないようにするためです。 同梱されていないファイルを開いた場合、その項目は未実行の状態から始まります。
プロジェクトファイルの構造は OVIKA プロジェクト形式(.ovika)を参照してください。
実装参照:保存・復元は sepika_app::app::App::{save_project_to_opts, open_project_from}(crates/sepika-app/src/app/actions/io.rs)が担い、.ovika の書き出し・読み込みは sepika_io::ovika::{save_ovika, load_ovika}(crates/sepika-io/src/ovika.rs)が行います。
結果の表示(3D ビューア)
この章では、解析結果を画面に出すときの仕様をまとめます。 3D ビューアでの変形・応力などの表示計算と、左ドックのナビゲータから結果を切り替える 操作の両方を扱います。 ここでの計算はいずれも画面表示のための処理であり、解析結果(節点変位・部材応力) そのものには影響しません。
この章の内容
- 変形図の表示倍率
- 梁の内部たわみ表示(内挿の切り替え)
- 応力図の表示と変形の重ね表示
- 床・二次部材の変形追従(表示用の変位補間)
- 支持条件・剛床マークの表示
- 検定比の表示
- モデル化の表示
- 応力図(M 図)の曲線補間
- ヒンジ図の表示
- 時刻歴アニメーションの表示
- 層応答分布グラフの表示
- 構面の表示(軸組図・伏図)
- 質点系の 3D 表示
- ナビゲータの解析結果ツリー
- 床板・壁版の表示
表示操作の場所
ビュー上部の主操作行には、左から表示モードの選択欄、表示範囲の選択欄、 「全体に合わせる」、前/次の通り・階(◀/▶)、「断面表示」「床壁・二次部材」「表示設定」が並びます。 表示モードの選択欄で現在のモードを確認し、一覧から切り替えます。 時刻歴は詳細記録がある場合、質点モード・質点時刻歴は質点系の結果がある場合に選べます。 表示範囲は「全体(3D)」、通り(軸組図)、階(伏図)から選びます。 通り・階のない模型では「全体(3D)」だけを選べます。
応力成分、CMQ の成分と軸、検定式、モード次数、モデル化の解析種別、変形倍率、 時刻歴の再生など、現在の表示モードに対応する操作と結果の案内は、主操作行の下に表示します。 「支点」「剛床代表点」「通り芯グリッド」などの補助表示は「表示設定」にまとめています。 利用できる項目は模型と表示モードによって異なります。
幅が足りなくなると、まず「全体に合わせる」と前/次の通り・階、次に「断面表示」「床壁・二次部材」が 「表示設定」へ移ります。幅を戻すと元の位置に戻り、設定値は引き継ぎます。 主操作行は折り返しません。長い選択名は省略し、ポインタを重ねるか選択一覧を開くと 全文を確認できます。さらに狭い幅では主操作行を横スクロールして操作します。
「表示設定」末尾の「操作案内」では、現在の表示範囲に合う操作を確認できます。 全体(3D)は左ドラッグで回転、右ドラッグで移動、構面は左ドラッグで移動します。 いずれも描画領域上でスクロールまたはピンチすると、ポインタ位置を保ったまま拡大・縮小します。 画面を移動した後や、部材のない空白上でも同じ操作ができます。倍率の限界では画面は移動しません。 ピンチでポインタ位置を取得できない場合は、現在の投影中心を基準に拡大・縮小します。 ViewCube 上や手前のウィンドウ・ポップアップへのズーム操作は、背後の模型には適用しません。 ViewCube は全体(3D)の描画領域の右上に表示し、 面や角をクリックすると視点を切り替えます。
拡大・移動した後は「全体に合わせる」を押すと、現在の視点方向を保ったまま、 画面移動を解除して全体表示の倍率へ戻ります。構面では選択した通り・階への正対を保ちます。 ウィンドウのサイズ変更やパネルの開閉後も、その時点の描画領域に合わせます。 表示モード、部材の選択、結果ケース、変形倍率などの設定は変わりません。
全体表示の基準は、全体(3D)では模型の全節点、構面では対象要素の節点の未変形座標です。 構面の対象要素から有効な節点を得られない場合は、構面の選択と視点方向を保ち、模型全体の節点範囲を使います。 部材などの表示・非表示や選択状態によって、この基準は変わりません。 断面外形、変形図・応力図の張り出し、注記・グリッドなどを含む、すべての描画物が収まる操作ではありません。
実装参照:sepika_app::viewer::controls::primary::primary_controls(crates/sepika-app/src/viewer/controls/primary.rs)が主操作行と表示設定を、sepika_app::viewer::controls::view_controls(crates/sepika-app/src/viewer/controls.rs)がモード別操作を扱います。
部材のホバーと選択表示
3D・構面ビューは淡い灰色の背景に模型を表示し、通り芯グリッドは部材より細い灰色の線で示します。 通常部材へポインタを重ねると青い補助線が一時的に現れ、部材から外すと消えます。 選択した部材は、より太い紫の補助線で示します。ポインタを外しても残り、選択中の部材へ ポインタを重ねても同じ選択表示を維持します。複数選択では各部材に適用します。 表示範囲外の部材は強調せず、選択は保持します。
線材表示では部材線に沿って、断面表示では中心線などに沿って状態を示します。 断面全体を塗り替えないため、H形の凹部や空隙は残ります。 応力図・検定比・モデル化・ヒンジの色は結果や凡例の意味を表し、青・紫の補助線は操作状態を表します。 結果の線色・塗り・数値はそのまま読み取れます。作成・割当・荷重対象指定中は、それぞれの専用プレビューを使います。
実装参照:sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が通常部材の状態表示を、sepika_app::theme(crates/sepika-app/src/theme.rs)が配色を定義します。
CMQ 図(表示モード)
3D ビューアには、大梁の C(端部固定値)・M(荷重込み曲げモーメント)・ Q(荷重込みせん断力)を表示する CMQ 図モードがあります。節点変位を0とし、建物共通の「剛域を考慮する」設定、局所軸、材端解放に従って算定します。単純梁の参考値ではありません。建物全体の変位による応力を含む解析結果は応力図で確認します。 解析の実行を必要とせず、モデル・荷重ケースの入力内容だけから毎フレーム描きます。梁の実材軸上に表示し、部材長と局所軸も実材軸から評価します。 CMQ 図表示中は床・二次部材の変形追従メッシュを描きません (床・二次部材の変形追従)。
ソースはナビゲータ/荷重タブで選択中の荷重ケース(nav.focus_load_case)の部材荷重
(LoadCase.member)そのものです。 床荷重の分配(自立壁を床へ上乗せした等価面荷重を
含む)・梁自重・取り付く壁版の線アンカー分布・手入力の部材荷重のいずれも、そのケースに
載っていれば同じ図に重ねて表示します。柱への節点集中荷重(取り付く壁版を両端の柱へ集中させた場合等)は梁に載る
荷重ではないため表示されません。荷重ケースが未選択の場合は先頭の荷重ケースを表示します
(静解析の対象決定と同じ規約)。
「DL」「LL(架構用)」「LL(地震用)」の内容は準備計算(またはいずれかの解析実行。 どちらも内部で同じ同期処理を通ります)が書き込みます。モデルを読み込んだ直後や スラブを編集した直後で準備計算をまだ一度も実行していない場合、これらのケースの CMQ図は空(部材荷重なし)のまま表示されることがあります。準備計算タブで実行すると 最新化されます(「EX」「EY」はこの制約の対象外です。水平力は常に節点荷重のみで 表され、準備計算の有無にかかわらず CMQ 図には元々何も表示されません)。
「成分:」で C/M/Q を、「軸:」で強軸(ey)・弱軸(ez)を切り替えられます(既定は強軸のみ)。 部材の局所軸が傾いている場合(斜め柱、ひねりのある断面等)、鉛直荷重でも強軸・弱軸の 両方に成分が生じうるため、荷重の作用方向を各部材の局所軸へ投影してから C/M/Q を計算します。 両軸を同時表示するときは同一スケールで重ねて描き、弱軸(ez)は強軸(ey)より半透明に 描きます(構面ビューでは強軸・弱軸の張り出し方向が同一直線上に重なるため、色だけでは 区別できないことがあります。透明度で見分けられるようにしています)。
選択中の軸に有意な荷重成分がない場合(例: 直交グリッドの部材で弱軸のみを選択した場合、 鉛直荷重はほとんど強軸側にしか投影されません)、CMQ図は空欄になり、その旨の案内を 表示します。
準備計算 CSV の出力項目は、CSV 出力・プロジェクトファイルへの保存を参照してください。
実装参照:CMQ 図は sepika_app::viewer::cmq::draw_cmq_diagram(crates/sepika-app/src/viewer/cmq.rs)が選択中の荷重ケース(nav.focus_load_case)の部材荷重から C・M・Q を求めて描き、表示モードは sepika_app::viewer::ViewMode::Cmq(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)で、成分と軸(既定は強軸のみ)を切り替えます。ViewMode::Cmq では床・二次部材の変形追従メッシュを描きません(同ファイル)。
変形図の表示倍率
変形図・モード形・応力図への変形重ね表示では、変位を実寸で描くと視認できない
ため、拡大した変位を節点座標に加えて描画します。表示倍率 \( s \) は、自動倍率 \( s_0 \) に
手動係数 \( f \)(スライダー、既定 1.0)を掛けた \( s = f \, s_0 \) とします。表示座標は
原座標 + s × 変位(並進成分) となります。
実装参照:変形後座標の組み立ては sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が、実効倍率 \( s = f\,s_0 \) の算定は sepika_app::viewer::deform::deform_display_scale(crates/sepika-app/src/viewer/deform.rs)が行います。
3D ビューで編集するとき
梁作成・床板/壁版の割当・小梁/間柱の配置・荷重の対象を 3D で選ぶ操作を始めると、 変形図・モード形・時刻歴・質点系の表示は形状表示に切り替わり、応力図の変形重ね表示も解除されます。 開始直後のクリックから未変形の節点・材軸・格子点を使います。 編集を取り消した場合や完了した場合も未変形表示を維持します。結果を見るときは表示を選び直してください。
表示倍率や表示変位はモデルの節点座標へ保存しません。編集を始めたり選択を取り消したりするだけでは モデル・Undo 履歴・解析結果は変わりません。モデルを変更する編集を確定したときに再計算が必要になります。 結果閲覧中は変形後の位置で部材を選択し、選択した部材の元の節点・接続を保ちます。
実装参照:編集時の表示解除は sepika_app::app::App::prepare_coordinate_edit_view
(crates/sepika-app/src/app/panels/draw_tools.rs)、投影と選択は
sepika_app::viewer::viewer_panel と sepika_app::viewer::input::handle_click が行います。
自動倍率
自動倍率 \( s_0 \) は、次の 2 つの上限の小さい方を採ります。
\[ s_0 = \min!\left( s_\text{bbox},; s_\text{beam} \right) \]
- 全体(バウンディングボックス)基準 \( s_\text{bbox} \): 最大並進変位が
バウンディングボックス対角長の 10% で表示される倍率。
\[ s_\text{bbox} = \frac{0.1 \, D}{\delta_{\max}} \]
- \( D \): モデル全節点のバウンディングボックス対角線長
- \( \delta_{\max} \): 全節点の並進変位成分(\( u_x, u_y, u_z \))の最大絶対値
- 梁スパン基準 \( s_\text{beam} \): 各梁の内部たわみ \( w \)(Hermite 変形 曲線の、変形後の両端を結ぶ弦からの最大逸脱)が、その梁のスパン \( L \) の 10% を 超えない倍率の、全梁にわたる最小値。 \[ s_\text{beam} = \min_{\text{梁}} \frac{0.1 \, L}{w} \]
梁は端部 6 自由度から Hermite 3 次曲線で描く(梁の内部たわみ表示)ため、端部回転が大きい梁は 全体基準だけでは中央のふくらみがスパンに対して過大になり得ます。梁スパン基準を 併用することで、全体変形も梁のふくらみも過大にならない倍率にします。梁スパン基準は 「内部たわみ」表示が有効なときのみ用います(無効時は梁を直線で描きふくらみが生じ ないため、全体基準のみです)。
実装参照:バウンディングボックス基準と梁スパン基準は、ともに sepika_app::viewer::deform::deform_display_scale(crates/sepika-app/src/viewer/deform.rs)が同 beam_deflection_scale_limit と併せて算定し、小さい方を採ります。
手動係数(スライダー)
自動倍率で変形が見づらい・大きすぎる場合は、「変形倍率」スライダー (自動倍率に対する 0.1〜10 倍、対数目盛、「リセット」で 1.0)で係数 \( f \) を 調整できます。採用された実効倍率 \( s \) はビュー左上に、\( f = 1 \) のとき 「変形倍率 ×N(自動)」、それ以外は「変形倍率 ×N(自動×f)」として表示します。
モード形(固有モード)も同じ自動倍率・手動係数で表示しますが、固有ベクトルの 規模は任意のため倍率の数値に物理的な意味はなく、倍率の注記は表示しません。 モード形は拘束縮約を逆変換して全節点へ展開した形状で描画し、剛床に属する 節点にはマスター自由度の剛体変位関係(面内並進+回転)に従った変位が表示されます (固有値解析)。 変形前の架構は破線(6 pt、隙間 4 pt)と高い透過(線のアルファ 90、塗りのアルファ 55)で重ねます。 基準位置からの変化を読むためです。質点モードと同じ規約です。
実装参照:変形前架構の破線ゴーストの描画は sepika_app::viewer::scene::draw_mode_rest_ghost(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が行います。
質点系の「質点モード」「質点時刻歴」も同じ規則(ピーク並進が対角長の 10%、時刻歴は全フレームのピーク)で倍率を定めます。 詳細は 質点系の 3D 表示 です。
実装参照:変形倍率スライダー(0.1〜10 倍・対数・リセット)は sepika_app::viewer::controls::view_controls(crates/sepika-app/src/viewer/controls.rs)が受け付け、実効倍率の注記表示とモード形への倍率適用は sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が行います。
梁の内部たわみ表示(内挿の切り替え)
用途に応じて全体の変形と梁の内部たわみを見分けられるように、「内部たわみ」 トグルで梁の変形の描き方を 2 通りに切り替えます。
- ON(既定): 梁の内部たわみを曲線で描き、床・二次部材の節点も梁の曲線に追従させる。 部材中間のふくらみを確認する用途で、詳細は梁要素内部の変位と断面力を参照してください。 表示倍率は梁スパン基準も併用する。
- OFF: 梁を節点間の直線(弦)で描き、床・二次部材の追従も端点の線形補間に する。全体の変形(層間変形・架構の傾き)を素直に確認する用途。
このトグルは変形図・モード形に加えて、N/Q/M 図に変形を重ねて表示している場合 (「変形表示」有効時)にも適用され、応力図上でも梁の内部たわみ表示と直線表示を 切り替えられます。
実装参照:「内部たわみ」トグルは sepika_app::viewer::controls::view_controls(crates/sepika-app/src/viewer/controls.rs)が提供し、梁の内部たわみの評価は sepika_app::viewer::deform::BeamDeflection(crates/sepika-app/src/viewer/deform.rs)が担い、床・二次部材の追従と応力図の基準線がこの評価を共用します。
部材線として描く要素
曲線・直線のいずれで描く場合も、部材線を描くのは材軸を持つ線材(梁・柱、 ファイバー梁、マルチスプリング梁、ブレース、節点バネ、免震支承材、ダンパー)に 限ります。壁・シェルは面要素なので材軸を持たず、境界節点を結んだ多角形として 描きます。
仕口パネル要素は、接合部の節点と、そこに取り付く各部材の他端とを節点列に持つ 接合部要素です。材軸を持たないため部材線としては描かず、部材のピック(選択・ ホバー)の対象からも外します。柱梁接合部の検定結果は 検定比の表示のとおり節点位置のマークで示します。
実装参照:要素種別ごとの描き方は sepika_app::viewer::scene::element_draw_shape(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が一意に定め、仕口パネル要素をピック対象から外す判定は sepika_app::viewer::pick::pick_nearest_member(crates/sepika-app/src/viewer/pick.rs)が同じ規約で行います。
応力図の表示と変形の重ね表示
表示する成分の選択
応力図はビューアの表示モード「応力図」で表示します。部材内力 \( [N, Q_y, Q_z, M_x, M_y, M_z] \) の 6 成分を「成分:」のチェックボックスで個別に ON/OFF でき、選んだ成分をすべて同時に描きます。よく使う組はプリセットボタンで 切り替えます。
| プリセット | ON になる成分 |
|---|---|
| N 図 | \( N \) |
| Q 図 | \( Q_y,\ Q_z \) |
| M 図 | \( M_y,\ M_z \) |
既定は M 図プリセット(\( M_y,\ M_z \))です。「変形表示」「コンター」「カラーマップ」 「値を表示」の各設定は成分を切り替えても保持されます。
張り出し面は成分ごとに決まっており、強軸側(\( N,\ Q_y,\ M_x,\ M_z \))は部材局所 \( y \) 面、弱軸側(\( Q_z,\ M_y \))は局所 \( z \) 面へ出ます。曲げとせん断の対 (\( Q_y \)–\( M_z \)、\( Q_z \)–\( M_y \))が同じ面に出るため、6 成分を同時に 表示しても直交する 2 面へ分かれて重なりが減ります。成分は固定色(凡例・図の塗り・ 輪郭線・数値ラベルで共通)で区別します。
断面力の符号規約は \( Q_y = dM_z/dx \)・\( Q_z = -dM_y/dx \) で \( M_y \) だけ せん断との関係が反転しているため、「正のモーメントを引張側へ張り出す」規約 (線形静解析)を保つよう、 \( M_y \) は張り出しの符号を反転して描きます。数値ラベル・コンターの色は張り出し値 ではなく内力値そのもので決まります。
実装参照:成分の構成(ON/OFF・プリセット・張り出し面・固定色・張り出し符号)は sepika_app::viewer::{ForceComponent, ForceComponents}(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が定め、チェックボックスとプリセットボタンは sepika_app::viewer::controls::view_controls(crates/sepika-app/src/viewer/controls.rs)が提供します。
最大値・コンター凡例(kN・kN·m)
ビュー左上の凡例には、表示中の成分ごとに「色見本+成分名+最大値」を 1 行ずつ並べます。 表示単位は力が kN、モーメントが kN·m(内部単位の N・N·mm から換算)です。
コンター表示を有効にすると、各行の下にその成分のカラーバー(左端 \( -\max \)・中央 0・ 右端 \( +\max \))を添えます。同じ単位の成分は同じ max で正規化します。力グループ (kN): \( N,\ Q_y,\ Q_z \)、モーメントグループ(kN·m): \( M_x,\ M_y,\ M_z \)。 共有 max は、表示中かつ実質ゼロでない(下記「実質ゼロの成分」)同単位成分のモデル全体 最大絶対値の最大です。凡例の max・張り出し振幅・コンター色・数値ラベルの 1% 間引きは、 すべてこの共有 max を使います。\( N \) と \( M \) のように単位が異なるグループ間では 共有しません。単独成分表示時はその成分自身の max(画面を使い切る)です。コンター表示中も 輪郭線は成分固定色のままなので、色分けされた塗りの中でもどの成分の図かを判別できます。 カラーマップは Viridis(既定)・Plasma・Turbo・Jet・青-白-赤から選べます。
実装参照:同単位グループの共有 max は sepika_app::viewer::diagram::display_scales_for_selection が、凡例・カラーバーは同 draw_force_legend(crates/sepika-app/src/viewer/diagram.rs)が描きます。
実装参照:カラーマップは sepika_app::theme::ColorMap(crates/sepika-app/src/theme.rs、既定は Viridis)が定めます。
実質ゼロの成分(図を描かない条件)
成分の最大値が、同じ次元の成分の最大値に対して \( 10^{-9} \) 以下の比しか持たない場合は 「実質ゼロ」とみなして図を描きません。基準にする「同じ次元の成分」は、力が \( [N, Q_y, Q_z] \)、モーメントが \( [M_x, M_y, M_z] \) です。同じ次元の成分がすべて 0 の 場合も描きません。
該当するのは、モデルの性質上その成分が全部材でゼロになる場合です。既定のモデル化 (ねじり解放)で i 端ねじれをピンとした部材の \( M_x \)(部材全長で \( M_x = 0 \))や、平面フレームの \( Q_z \) が典型です。
図を描かない成分も、選択中であることが分かるよう凡例には行を残し、最大値の代わりに **「全部材ゼロ(図なし)」**と表示します。
実装参照:同次元成分の最大値に対する \( 10^{-9} \) の相対判定は sepika_app::viewer::diagram::is_significant が行い、「全部材ゼロ(図なし)」の凡例行は同 draw_force_legend(crates/sepika-app/src/viewer/diagram.rs)が出力します。
数値の表示
「値を表示」を有効にすると、各部材の両端部と中央(\( \xi = 0,\ 0.5,\ 1.0 \))の値を、 各成分の図の輪郭上に成分固定色で描きます。表示は kN・kN·m の小数 1 桁です。 同単位グループの共有 max の 1% 未満の点はラベルを描きません(0 近傍のラベルが 重なって読めなくなるのを防ぐためで、張り出しピークが極小の部材の図自体を描かない扱いと 同じ方針です)。
実装参照:ξ=0・0.5・1.0 の値ラベルは sepika_app::viewer::diagram::draw_value_labels(crates/sepika-app/src/viewer/diagram.rs)が共有 max の 1% しきい値付きで描きます。
変形の重ね表示
応力図の表示中に「変形表示」を有効にすると、変形図の表示倍率で変形させた節点 座標を基準に架構を描画します。応力図は変形後の材軸方向(成分ごとの 要素ローカル軸)へ張り出すため、図も変形形状に追従します。応力の値・最大値の正規化は変形の重ね 表示による影響を受けません。
さらに「内部たわみ」表示が有効なときは、梁の張り出しの基準線(張り出し量 0 の 線)を節点間の直線ではなく梁の変形後 Hermite 曲線とし、梁の描画曲線に沿って 応力図を描きます(基準線は梁の線描画と同一の曲線)。無効なときは変形後の節点間 直線を基準線とします。張り出し方向(成分ごとの局所軸)と応力値の正規化はいずれの 場合も変わりません。
実装参照:応力図の張り出し基準線は sepika_app::viewer::diagram::draw_component(crates/sepika-app/src/viewer/diagram.rs)が担い、内部たわみ表示時は sepika_app::viewer::deform::BeamDeflection::point_at が返す変形後 Hermite 曲線を梁の線描画と共用します。
耐震壁(壁エレメント)
壁エレメントの応力図は、モデル化図と同じ壁柱(上下辺中点を結ぶ仮想中央柱)を 材軸として描きます(壁エレメントモデル)。 四隅節点の先頭 2 点を結んだ下辺大梁とは一致しません。張り出し面・符号規約は線材と 同じです。壁柱の幾何を取れない壁は応力図を描きません。
実装参照:壁エレメントの応力図用材軸(壁柱)は sepika_app::viewer::diagram::wall_force_axis(crates/sepika-app/src/viewer/diagram.rs)が上下辺中点から求め、幾何を取れない壁は同 draw_component が描画をスキップします。
床・二次部材の変形追従(表示用の変位補間)
スラブ境界・小梁支持点・二次部材(小梁・間柱)の節点のうち、主架構要素が 接続せず、拘束(剛床・剛リンク・MPC)のマスターでもない節点には解析自由度が 割り当てられず、解析結果の変位は 0 になります(零剛性自由度による特異行列を 避けるための扱いです。荷重は床荷重分配で主架構へ変換されます)。
これらの節点をそのまま描くと変形図で床・二次部材だけが原位置に残るため、 表示上は次の 2 段階で主架構の変形へ追従させます。
実装参照:解析結果の変位を表示用に加工する入口は sepika_app::viewer::deform::display_disp(crates/sepika-app/src/viewer/deform.rs)で、主架構に接続しない節点の追従は同 interpolate_unreferenced_disp が行います。
大梁に直付きする節点(梁の変形曲線への追従)
対象節点の座標 \( p \) を、主架構の各 2 節点要素(線材)の線分へ射影し、射影点 までの距離が最小の線分を選びます。射影点までの垂線距離がモデル寸法 (バウンディングボックス対角長)の 0.1% 以内であれば、その節点はその線材の 線上に載る(直付き)とみなします。追従に用いる変位は、線材の種別で分けます。
- 梁(
Beam)で「内部たわみ」表示が有効なとき: 変形図で梁は端部 6 自由度 からの Hermite 3 次曲線として描く (梁要素内部の変位と断面力)。 端点変位の線形補間では梁の曲線から浮いてしまうため、直付き節点の並進変位は、 その梁の Hermite 変位場を射影位置 \( t \in [0, 1] \)(線分外への射影は端点へ クランプ)で評価した値とし、節点が梁の描画曲線上に載るようにする。回転成分は 端点変位の線形補間で補う。 - 梁以外の線材(ブレース等)、または「内部たわみ」表示が無効なとき: 端点 (\( i \), \( j \)、変位 \( u_i \), \( u_j \))の変位を射影位置 \( t \) で線形補間する(梁を直線で 描く表示に合わせ、直付き節点もその直線上に載せる)。 \[ u = (1 - t)\, u_i + t\, u_j \]
二次部材の支持点が大梁のスパン中間に節点共有なしで載る一般的なモデルでは、 支持点が取り付く大梁の変形曲線に沿って追従します。
実装参照:線分への射影(許容距離はバウンディングボックス対角長の 0.1%)と、梁の Hermite 曲線・端点線形補間の使い分けは sepika_app::viewer::deform::interpolate_unreferenced_disp(crates/sepika-app/src/viewer/deform.rs)が同 BeamDeflection::disp_at を共用して行います。
大梁に直付きしない二次部材節点(接続を辿る追従)
いずれの大梁の線上にも載らない二次部材(小梁・間柱)の節点(片持ちの二次部材の 先端など)は、二次部材の接続グラフを辿り、最寄りの確定節点(前段で確定した 直付きアンカー、または主架構節点)の変位へ剛体的に追従させます(節点間距離を 辺長とし、主架構に近い側から順に伝播します)。これにより、取り付き先へ連なる 二次部材を介して主架構の変形に沿って追従します。
どちらでも確定しない孤立節点(大梁にも直付きせず、二次部材でも確定節点に 到達しない床境界節点など)は、最寄り線分への射影変位でフォールバックします。
実装参照:二次部材(小梁・間柱)の接続グラフを辿る伝播と、確定しない孤立節点の最寄り線分への射影は sepika_app::viewer::deform::interpolate_unreferenced_disp(crates/sepika-app/src/viewer/deform.rs)が行います。
床板・壁版の多角形も変形後の位置へ載せる
床板の未変形位置は、指定した基準階FLと床上面偏心から求めます。 変形図・モード形・時刻歴表示では、この上面位置へ支持点の変位を一度加えます。 囲まれた床板の支持点に節点がない場合は、明示した支持部材と支持区間に沿って並進変位を内挿します。 床偏心は変形倍率で増幅されず、支持梁の節点Zや梁偏心へ置き換えません。 取り付く床板は、取付き先が動いた後の境界と未変形境界の差を床上面へ加えます。 解析要素にならない壁版は変形後の支持節点座標から境界を組み立てます。
モード形では、変形後の版に加えて、入力床板・壁版の変形前の位置を破線のゴーストで示します。 囲まれた版は割当領域の境界、取り付く版は未変形の取付き先と張り出し量から求め、 表示倍率を変えてもゴーストは動きません。壁エレメントになる壁版は、壁エレメントの ゴーストだけで表示します。変形倍率が 0 のときは同じ位置を重ね塗りしません。 ゴーストにも「床壁・二次部材」の表示切替と階・構面の絞り込みを適用します。 入力幾何が無効な床板や、立ち上がり高さの符号が反転する取り付く壁版は、ゴーストも内部を塗りません。
実装参照:床板・壁版の多角形は sepika_app::viewer::scene::{draw_slabs, draw_wall_plates}、モード形の変形前ゴーストは同 draw_mode_rest_ghost(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が描きます。
補間の限界
この補間は描画専用の近似であり、次の限界があります:
- 小梁・二次部材自体のたわみ(支持点間の曲げ変形)は表現しない。支持点・ 接続先の変位による剛体的な追従のみである。
- 補間ソースは線材のみのため、壁(面要素)にしか近接しない節点は最寄りの 線材から補間される。
なお、床(スラブ・小梁)と二次部材、および解析要素にならない壁版の表示は 「床壁・二次部材」トグルでまとめて非表示にできます。このとき、部材が消えた後に節点だけが空中に残ると 実在しない構造点があるように見えるため、解析対象外の節点(主架構の部材が 接続せず、床・二次部材だけが参照する節点。上記の「解析自由度を持たない節点」と 同じもの)も併せて非表示になります。非表示の節点は部材作成モードの節点ピック 対象からも外れます。
床・二次部材の表示可否は、中心線・断面表示(断面形状の押し出しソリッド)の 双方に同じ規則で適用されます。すなわち「床壁・二次部材」トグルが OFF のとき、 また主架構の図である CMQ 図の表示中は、小梁・間柱を中心線でもソリッドでも 描きません(断面表示だけがトグルを無視して小梁を描く、ということはありません)。 断面を描けなかった部材の本数を右上に注記する「断面未定義の部材 n 本」にも、 非表示の二次部材は数えません。
実装参照:床壁・二次部材トグル下での非表示節点の判定は sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が行い、中心線・断面表示への共通規則と「断面未定義の部材 n 本」の計数は sepika_app::viewer::solid::draw_section_solids(crates/sepika-app/src/viewer/solid.rs)が担います。
支持条件・剛床マークの表示
支点(拘束された節点)には、拘束されている並進自由度の方向へ軸色(X 赤/ Y 緑/Z 青)の矢印を、拘束されている回転自由度の軸まわりに円弧を描きます。支点記号は 節点の変形後位置に描きます。並進 3 自由度がすべて拘束された支点(ピン・固定)は 解析上も動かず原位置にとどまりますが、拘束されていない並進方向がある支持 (ローラー等)は、その自由方向の並進変位に追従して変形後の位置へ移動します。
支点記号(矢印・円弧、支点ばね、免震マーカー)は、「表示設定」内の「支点」 (既定 ON)で切り替えます。形状・変形・応力図など立体の表示で使います。 質点モード・質点時刻歴では立体の柱脚拘束は串に関係ないので、トグルに依らず出しません。
剛床(剛床代表節点)の表示は、「表示設定」内の「剛床代表点」(剛床がある ときのみ選択肢を表示、既定 OFF)で切り替えます。ON にすると次を描きます。
- 面内拘束マーク: 剛床が物理的に拘束する**面内自由度(\( U_x \)・\( U_y \)・\( R_z \))**を、 支点と同じ矢印・円弧の規約で表示する。代表節点に内部で設定される鉛直・面外 回転(\( U_z \)・\( R_x \)・\( R_y \))の拘束は、面内挙動だけを扱う代表節点の剛性行列が 特異にならないようにするための数値上の処置であり、剛床の拘束条件そのものでは ないため、マークには表示しない。
- 代表点マーカーとスレーブへの点線: 代表節点(重心に置く仮想節点)を強調 リングで示し、関連付けられたスレーブ節点へ点線を引いて所属関係を可視化する。
点線を引く相手は、剛床の縮約が実際に効く節点(解析自由度を持つ節点)に限ります。 階の生成では当該レベルに属する全節点をスレーブとして登録し、その中には スラブ境界・小梁支持点・二次部材の節点(解析自由度を持たない節点)も含まれますが、 これらは剛床の面内拘束の対象になりません(拘束行列の生成が解析自由度を持つ スレーブのみを対象とするためです)。所属関係の表示もこれに合わせます。
点線は関連節点が多いと他部材が見づらくなるため、既定は非表示(トグル OFF)に しています。
代表節点は変形図で床の変形へ追従します。面内変位(\( U_x \)・\( U_y \)・\( R_z \))は解析結果を そのまま用い、床の面内変形(水平変位・面内回転)に追従して重心マークが移動します。 鉛直変位(\( U_z \))は代表節点の数値ダミー拘束で解析上 0 に固定されるため、表示上は スレーブ節点の鉛直変位の平均で補い、変形後の床の平均標高へ載せます(描画専用の 近似で、解析結果は変更しません)。代表点マーカー・点線・面内拘束マークはいずれも 変形後座標で描くため、変形へ追従します。
実装参照:支点の矢印・円弧と表示トグルの判定は sepika_app::viewer::support(crates/sepika-app/src/viewer/support.rs)が、剛床代表点の面内拘束マーク・代表点リング・スレーブへの点線の描画は sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が担い、代表節点の鉛直変位の表示補完(スレーブ節点の \( U_z \) 平均)は sepika_app::viewer::deform::display_disp(crates/sepika-app/src/viewer/deform.rs、内部で fill_diaphragm_master_disp_for_display を使用)が行います。
実装参照:支点ばね・免震マーカーの描画は sepika_app::viewer::support_symbols(crates/sepika-app/src/viewer/support_symbols.rs)が担います。
検定比の表示
表示モード「検定比」では、部材検定・節点検定の結果に基づいて部材・節点を 着色します。検定結果は式別の内訳(曲げ・せん断・付着・軸+曲げ・軸・たわみ) を持つため、着色対象を切り替える「検定式フィルタ」と、部材内の各検定位置 を個別に確認できる「位置別マーカー」を備えます。
実装参照:表示モード「検定比」の描画は sepika_app::viewer::check_ratio::draw_check_ratio(crates/sepika-app/src/viewer/check_ratio.rs)が担い、着色対象の指定は sepika_app::viewer::CheckRatioFilter(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が表します。
保存成果が利用不可の場合
計算契約版が欠落・旧版・未来版の保存検定は、現在の検定比・合否として表示しません。 解析版も非一致の場合は応力も利用できません。検定画面と CSV 帳票に利用不可の理由と再実行の案内を示します。 検定版だけの非一致なら、対象を選んで検定画面の「検定を再実行」を押すと、保持された現行応力で回復できます。 表示結果の切替や保存では旧検定を復活させません。 版が一致していても、検定の生成入力が欠落・不一致なら、表・部材Inspector・検定比図の着色/ラベル/ホバー詳細と CSV に旧検定の比率・合否を出しません。 検定が採用した計算モデル、ケース/組合せの応力生成入力、荷重期間と RC 設計条件を照合します。 材料・荷重・断面や設計条件を変更してから時刻歴・増分・固有値・質点系だけを実行しても、再計算していない検定は利用不可のままです。 同じ入力の別解析、カメラ・通り芯・表示ステップ・時刻歴記録間隔や振動ケース一覧の変更は、保持検定を認定し直す必要がありません。 Undo で生成入力へ厳密に戻れば保持結果を再利用でき、Redo で不一致になれば再び利用不可になります。 選択したケース/組合せの生成入力が不一致または入力識別が欠落している場合は直接検定も拒否します。 架構応力を使わない新しい床板・小梁の直接検定は、静的解析がなくても実行できます。 荷重用途の不適合(短期単独ケースなど)は、入力が一致していても従来どおり未検定です。 詳しい回復手順は OVIKA の保存結果 を参照してください。
検定式フィルタ
主操作行の下にある「検定式:」で着色対象を選びます。
- 最大(既定): その位置の全検定式のうち最大の検定比を対象にする。
- 式別(曲げ/せん断/付着/軸+曲げ/軸/たわみ): 選んだ式の検定比の みを対象にする。当該式を持たない検定位置は「フィルタ対象外」として 扱われ、着色・マーカーとも描かれない。
選択肢には、現在の解析結果(部材検定・節点検定の両方)に実際に現れる式 のみが表示されます。たとえば鋼構造ブレースのみのモデルでは「軸」「軸+曲げ」 系の式しか現れないため、「たわみ」等の無関係な選択肢は出ません。
実装参照:フィルタ適用(式別の抽出・対象外の除外)は sepika_app::viewer::check_ratio::ratio_for_filter が、選択肢を結果に現れる式へ絞る処理は同 available_check_kinds(crates/sepika-app/src/viewer/check_ratio.rs)が行います。
部材・節点の着色
- 部材の色は、フィルタ適用後の値でその部材の全検定位置(材端・材中間
などの複数箇所)における最大検定比により決まる。色は検定比に応じた
連続グラデーション(コンター)で、判定基準 0.8/1.0 を境に色相が
切り替わる:
- 検定比 0 〜 0.8: 淡緑 → 緑(良好域。余裕が小さいほど濃い緑)
- 検定比 0.8 〜 1.0: 黄 → アンバー(注意域。1.0 に近いほど濃い)
- 検定比 > 1.0: 赤(NG。超過。単色)
- 良好域・注意域の中では色の濃淡そのものが検定比の大小を表すため、数値 ラベルがない部材でも余裕度の分布を色で読み取れる。判定境界(0.8/1.0) では色相が不連続に変わるため、基準をまたいだかどうかも一目で分かる。
- 壁(面要素)は同じ配色の半透明ポリゴンで塗り、輪郭も検定比の色で描く。
- 柱梁接合部・耐震壁などの節点単位の検定は、部材の線とは 別に、対象節点上の色付きひし形(背景色の輪郭付き)で表示する。色は同じ 配色に従い、NG のマーカーは一回り大きく描く。支点記号などが重なる節点でも 見分けられるよう、部材とは別の形にしている。
- 節点検定のマーカーは、NG の場合と「全ラベル表示」が ON の場合に検定比を 数値で添える。マーカーへポインタを重ねると、その節点の検定種別・検定比・ 判定・根拠を一覧するツールチップを表示する。
- 検定表(「結果」タブ)のセルは、文字と背景の対比を保つため 3 段階 (緑/黄/赤)で着色する。判定レベルの粒度では 3D ビューと表の色は 一致する。
- フィルタで選んだ式の検定比が存在しない部材・節点(式別フィルタで対象 外の場合を含む)は、検定を実施していない部材・節点と同様にグレーの まま(着色されない)。
- Fc 未設定・配筋情報なし・断面形状不一致など入力不足で検定を実施 できなかった位置(検定不能) も同様に無着色(未検定と区別しない)。 ある部材の全検定位置が検定不能の場合、その部材はグレーのまま表示 される。
実装参照:部材・節点の着色と NG マーカーの拡大は sepika_app::viewer::check_ratio::draw_check_ratio(crates/sepika-app/src/viewer/check_ratio.rs)が、連続グラデーションの配色は sepika_app::theme::check_ratio_color(crates/sepika-app/src/theme.rs)が定めます。
部材中点のラベル
部材中点には検定比の数値をラベル表示します。ただし全部材に数値を出すと 3D ビュー上で文字が重なって読めなくなるため、既定では検定比 0.8 以上 (注意域以上)の部材のみにラベルを描きます。0.8 未満の部材は色の濃淡 (上記のグラデーション)だけで余裕度を示します。主操作行の下にある「全部材に 数値ラベル」を ON にすると、検定比によらず全部材にラベルを表示します。
フィルタ=最大のときは、その部材の最大検定比を与えた位置の支配式 (最大の内訳を持つ検定式)を「1.13 せん断」のように数値へ併記します。 フィルタ=式別のとき、および検定不能の位置しかない場合は数値のみを表示 します。NG 部材(検定比 > 1.0)は赤字・大きめのフォントで、かつ線の 太さも太くして強調します。
実装参照:ラベル表示条件(既定は検定比 0.8 以上)は sepika_app::viewer::check_ratio::should_label(crates/sepika-app/src/viewer/check_ratio.rs)が定め、条件を満たす部材への描画(支配式の併記を含む)は同 draw_check_ratio が行います。
位置別マーカー
「位置別マーカー」トグル(既定 ON)で、部材の各検定位置(柱フェイス i端・中央・柱フェイスj端、ハンチ端・継手位置、指定位置など)に一辺 7 px の正方形マーカーを表示します。マーカーの色はその位置のフィルタ適用後の 検定比による(部材線と同じグラデーション配色)で、フィルタ対象外の位置 (検定不能の位置を含む)にはマーカーを描きません。NG の位置(フィルタ適用後の検定比 > 1.0)にはマーカーの右上に小さく数値を添えます(全位置に数値を出すと 過密になるため NG のみ)。マーカー表示中も部材中点のラベル(部材内 最大)は変わらず表示されます。
実装参照:位置別マーカー(一辺 7 px の正方形、NG は数値付き)の描画は sepika_app::viewer::check_ratio::draw_check_ratio(crates/sepika-app/src/viewer/check_ratio.rs)が行い、ON/OFF は sepika_app::viewer::controls::view_controls(crates/sepika-app/src/viewer/controls.rs)のトグルです。
ホバーによる詳細表示
部材の近く(クリック選択と同じ 8 px の許容距離)へポインタを重ねると、
その部材の検定位置×検定式の内訳を表にしたツールチップを表示します。
1 行目に部材番号と根拠(最初の検定位置の basis。検定不能の位置のみの
場合は理由)、続く表は行に検定位置(xi の数値)、列にその部材で実際
に使われている検定式(+判定列)を持ちます。各セルはその式の検定比
({:.2} 表示。該当式がない位置・検定不能の位置は「-」)で、1.0 超は
赤、0.8 超は黄で着色します。判定列は部材のその位置の判定(OK/NG)を
表示し、検定不能の位置は灰色で「検定不能(理由)」と表示します。
実装参照:位置×式の表データの組み立ては sepika_app::viewer::check_ratio::build_tooltip_rows が、ポインタ位置へのツールチップ表示は同 show_check_tooltip(crates/sepika-app/src/viewer/check_ratio.rs)が行います。
凡例
ビュー左上に次を表示します。
- 現在のフィルタ対象・検定比の最大値・NG 件数の集計(いずれもフィルタ 適用後の値。検定不能は含みません)
- 色の凡例: 検定比 0〜1.0 のグラデーションを示すカラーバー(目盛りは 0/0.8/1.0)と、その右に NG(> 1.0)の赤の色見本、未検定・検定不能が グレーである旨の注記
- 数値ラベルの表示条件(「検定比 0.8 以上のみ」または「全部材」)と、 位置別マーカーの説明(マーカー ON 時のみ)
- 検定の生成入力が欠落・不一致の場合の利用不可理由と再実行案内
解析結果がない場合は、検定比図の代わりに解析の実行を促す案内のみを 表示します。
実装参照:ビュー左上の凡例(対象・max・NG 件数・カラーバー・陳腐化注記)は sepika_app::viewer::check_ratio::draw_legend が描き、検定結果がない場合の案内は同 draw_no_result_legend(crates/sepika-app/src/viewer/check_ratio.rs)が出します。
検定不能の表示
Fc 未設定・配筋情報なし・断面形状不一致など、入力不足により検定式を 適用できない検定位置は「検定不能」として扱い、検定比 0・OK 相当の 偽の安全側結果としては扱いません。
- 3D ビュー(検定比図): 未検定と同様に無着色。位置別マーカーは描かず、 ホバー詳細ツールチップの該当行には「検定不能(理由)」を表示する。
- 検定表(「結果」タブ): 検定比セルに「-」、判定セルに灰色で 「検定不能」、根拠セルに理由(例:「RC 検定: Fc 未設定」)を表示する。 NG 件数の集計には含めない。
実装参照:検定不能をフィルタ対象外として無着色・マーカーなしにする判定は sepika_app::viewer::check_ratio::ratio_for_filter(crates/sepika-app/src/viewer/check_ratio.rs)が、検定表での「-」「検定不能」・理由の表示は sepika_app::design_view::design_table(crates/sepika-app/src/design_view.rs)が行います。
検定表の内訳列
「結果」タブの部材検定表には「内訳」列があり、検定式ごとの検定比を 「曲げ 0.82/せん断 1.13/付着 0.44」のように横並びで表示します(検定 不能の行は「-」)。3D ビューの検定比図と同じ配色規約で各式の値を 着色するため、表と 3D ビューで一貫して式別の状態を確認できます。節点単位の 検定表(接合部・耐震壁など)はほぼ単一式のため内訳列を持ちません。
内訳セルの各式のラベル(「曲げ 0.82」等)にポインタを重ねると、その式 固有の数値根拠(許容値・作用値・中間係数など)をツールチップで表示します。 根拠セル(basis の文字列)にも、全検定式に共通の数値根拠(断面諸元など) があればホバーで表示します(共通の根拠がない場合は表示しません)。節点単位の 検定表(接合部・耐震壁など)も同様に、根拠セルへ検定式(単一式)の数値 根拠をホバー表示します。
実装参照:検定表の「内訳」列と各式・根拠のホバー表示は sepika_app::design_view::design_table(crates/sepika-app/src/design_view.rs)が描きます。
壁版ごとの検定状態
耐震壁の結果は、壁版番号・生成要素番号・表示中の荷重ケースまたは組合せ・検定種別を併記します。同じ節点を共有する複数壁も別の壁版として表示します。接合部の節点検定とは別の一覧です。
| 壁の入力・状態 | 表示 | 理由区分 | 検定比 |
|---|---|---|---|
| RC壁で許容せん断の必要入力・応答を取得済み | OK/NG | — | 既存RC検定式の値 |
| 主材・Fc・配筋材料・断面等の必要入力がない | 未検定 | 入力不足 | — |
| Fc・板厚・幾何・材料区分・応答値等が不正 | 未検定 | 不正入力 | — |
| RC壁の応答が未取得または空 | 未検定 | 応答未取得 | — |
| RC以外の未対応形状等、当該検定式の適用外 | 未検定 | 適用外 | — |
| 純鋼板壁/SRC内蔵鋼板壁 | 未検定 | 未実装 | — |
| 自重・雑壁のみの壁版(取付き壁版、スリット等で耐震壁として成立しない壁を含む) | 対象外 | 適用外 | — |
| 壁領域・断面が不足し壁要素を生成できない耐震壁候補 | 未検定 | 入力不足 | — |
板厚・壁長・高さの入力単位は mm、Fc は N/mm²、応答の力は N、モーメントは N·mmです。許容せん断とせん断参考骨格は別の検定種別です。参考骨格は成功・未算定とも建物共通の採用方式(荒川min/荒川mean)を示します。参考骨格には横筋比・材料強度・側柱断面などの追加条件が必要なため、許容せん断がOKでも参考骨格は未検定の場合があります。参考骨格の比率を壁板・接合の国内終局検定の合格へ読み替えません。
純鋼板の国内許容応力度・終局検定式は未確定です。無補剛の平鋼板も現時点では未検定とし、補剛板・波形板・座屈拘束板・SRC内蔵鋼板へ純鋼板の同じ式を適用しません。SRCの式を純鋼板へ流用しません。解析収束、ストリップ降伏、境界柱梁の検定済み状態、海外規準との比較値は、壁板・接合の国内適合確認にはなりません。
集計は「壁枚数」と「検定件数」を分け、許容せん断・参考骨格ごとに合格/NG/未検定/対象外を表示します。許容せん断がRC合格1件・純鋼板未検定1件なら合格1・未検定1、材料欠落の壁を追加すれば未検定2です。対象外は未検定耐震壁の件数へ含めません。最大検定比は実際に検定した比率の集合から求め、空集合は「—」です。未検定を0や合格へ置き換えません。
壁に設定されたスリットによる対象外判定は、断面を未割当にした場合や板厚が不正な場合も維持します。不正な板厚は理由付き未検定として残し、耐震壁の未検定件数へは加算しません。検定比図の見出しは、選択した検定式フィルタに該当する壁の比率とNG件数を部材・接合部と合わせて示します。フィルタに該当しない壁検定は、その見出しの最大値・NG件数へ含めません。
3Dの検定比図には壁ごとの番号・種別・検定比または未検定/対象外を表示し、壁の代表節点のホバー詳細に全壁版の理由を示します。CSVの耐震壁検定・種別集計にも同じ状態と理由を出します。生成入力が不一致の旧検定は、利用不可の案内を出し、比率・合否の集計へ含めません。MCPでは未検定の検定比を出さず、最大値なしは null とします。OVIKAに同梱した結果も同じキーと状態を保持し、解析・再計算時は新しい応答に基づく結果へ更新します。
実装参照:sepika_design_jp::wall_check::{WallCheck, WallCheckSummary}(crates/sepika-design-jp/src/wall_check.rs)と sepika_design_jp::joint_wiring::collect_wall_design_checks(crates/sepika-design-jp/src/joint_wiring/mod.rs)が壁ごとの状態・集計を保持します。
モデル化の表示
表示モード「モデル化」では、各部材が解析上どの要素モデルで扱われるかを色と 記号で可視化します。形状は同じでも解析種別によって部材のモデル化(要素の 定式化)が変わるため、意図どおりのモデル化になっているか(耐震壁の側柱が壁法線まわりの 回転解放を持つか、剛床上の梁が材端集中塑性で軸力変動する柱がファイバーか、など)を 視覚的に確認する用途です。着色は要素生成と同じ判定に基づくため、実際に解析へ 渡る要素種別と一致します。
実装参照:表示モード「モデル化」の描画は sepika_app::viewer::modeling::draw_modeling(crates/sepika-app/src/viewer/modeling.rs)が担い、解析への振り分けと一致する分類は同 classify が要素生成と同じ判定関数へ委譲します。
解析種別の切り替え
主操作行の下にある「解析種別:」で、可視化するモデル化を切り替えます。
- 静解析(弾性): 線形静解析は断面の降伏を考えないため、部材は原則すべて 弾性でモデル化される。
- 増分解析(弾塑性): 断面の降伏を考慮するため、軸力変動する部材はファイバー 要素、剛床上で軸力変動が小さい梁は材端集中塑性(材端回転ばね)としてモデル化 される。フォースレジームの自動判定は、剛床に所属する非鉛直材(梁)を材端集中 塑性、それ以外をファイバーへ振り分ける (非線形梁要素のモデル化、 増分解析(プッシュオーバー解析))。
RC・SRC置換壁の側柱は、静解析では「側柱(壁法線回転解放)」と表示します。増分解析では実際のファイバー・MSの材料モデルに対応する色と塑性化域を保ち、回転解放の○を重ねます。解放は壁法線まわりの両端回転のみで、全回転のピンを意味しません。側柱の材端集中ばね指定や非線形時刻歴の接続など、適用外の条件は「その他」とし、対象部材・壁・解析種別と理由をホバーで示します。純鋼板の境界柱にはRC・SRC置換壁の側柱解放を表示せず、実際の骨組の材料モデルを表示します。壁上下の剛梁は全解析種別で弾性として表示します (壁エレメントモデル)。
解析開始時には、実際のP–Δ指定と質量方式の適用条件も検査します。モデル化の色だけでそれらの計算条件の成立を判断せず、開始時の対象部材・壁・解析種別と停止理由を確認してください。
壁単体の伝達力と、付帯柱を含む壁系全体の結果は異なる範囲です。純鋼板の境界柱は独立した骨組として扱います。座標が同じでも別節点の部材を側柱へ読み替えません。
同じ部材でも、壁の成立・接続・上下梁の役割や非線形モデルの指定が変わると、材料モデルと適用外理由の表示もその条件に追従します。表示上の役割と、確定解析結果の有効性は別に確認してください。
RC壁の非線形せん断耐力は、同じ入力で実行した該当解析の採用Quを表示します。建物共通の荒川min/荒川mean選択を反映した正負耐力を用います。未解析・該当runなし・入力変更後・耐力欠落の場合は未解決とし、弾性という表示で補完しません。表示操作で静的参照を再求解しません。耐力の採用規約は壁脚内力と初期耐力を参照してください。
実装参照:解析種別は sepika_app::viewer::ModelingAnalysis(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が表し、切り替え操作は sepika_app::viewer::controls::view_controls(crates/sepika-app/src/viewer/controls.rs)が提供します。
部材の着色
部材は解析モデル分類ごとの色で描きます。
- 弾性材(グレー): 断面の降伏を考慮しない弾性材。静解析の全部材、増分解析の 弾性梁など。
- 材端集中塑性(緑): 材端回転ばねで塑性化を表す。剛床上で軸力変動が小さい梁の モデル化。
- ファイバー(分布塑性)(オレンジ): 積分点断面のファイバー分割で軸-曲げ連成を 表す分布塑性モデル。軸力変動する柱などのモデル化。
- 側柱(壁法線回転解放)(紫): 静解析のRC・SRC置換壁の側柱。壁法線まわりの両端回転を解放し、軸・面外応答と元の保持方向の接続条件を保つ。増分解析の側柱はファイバー等の材料モデル色を使う。
- MSの材料モデル色: 既存の材端集中塑性と同じ緑を使い、端部の断面記号と塑性化域で表示する。ヒンジ・MN表示ではマルチスプリングとして識別する。
- 壁エレメント(青): 耐震壁の壁エレメント置換モデル。後述の「エ」状で描く。
- フレーム内雑壁(周辺部材へ剛性算入)(暖色): 耐震壁不成立(上下辺が大梁で囲まれていない、RC 壁の板厚不足・ 開口過大・耐震スリット等)で、剛性を周辺の柱・梁へ算入するフレーム内雑壁 (壁エレメントモデル)。 破線輪郭の半透明ポリゴンで、独立した構造壁エレメントでないことを示す。 解析要素になった壁版か否かを問わず、剛性算入の対象になっている壁版をすべて描く。
- 剛性算入なしの壁版(ウォームグレー): 壁エレメントにならない壁版のうち、周辺部材への剛性算入対象外の 壁版。剛性算入の有無と荷重の有無は別であり、自重・仕上げ荷重・開口部重量の配分対象になる。 フレーム内雑壁と同じく破線輪郭の半透明ポリゴンで描く。 該当するのは、板厚を引けない壁版(断面未割当、または板厚のない断面)、床領域に 取り付く自立壁(周辺の柱・梁に取り付いておらず剛性を渡す相手がいない)、取付き線が 梁の全長を覆わない取り付く壁版、境界が 4 節点でない囲まれた壁版である (ティモシェンコ梁要素)。
- 仕口パネル要素(藍): 柱梁接合部のせん断変形を表す解析要素(後述)。
- トラス/軸材(ティール): 軸剛性のみのブレースなど。
- その他(淡いグレー): バネ・免震・ダンパー・シェルなど。側柱接続が適用外・不正な場合もこの色とし、ホバーで理由を示す。
実装参照:分類ごとの色とラベルは sepika_app::viewer::modeling::ModelClass が、各部材の分類は同 classify_with(crates/sepika-app/src/viewer/modeling.rs)が行います。
剛域の表示
部材端に剛体アーム(剛域長と仕口パネル要素分のオフセットの大きい方)が設定されている 場合、その実効剛体アームの区間を材端のバーで描きます(ティモシェンコ梁要素の剛域)。 部材色の基準線は、実効剛体アームを除いた可とう区間に描きます。可とう長と剛域比の定義は 仕口パネル要素の剛域長への反映を参照してください。剛域長の入力・自動算定値と、パネルオフセットの算定値は、準備計算の「剛域」表で確認できます。
バーは、弾性材の細いグレー線と混同しないよう、ハッチング入りのブロック (材軸に沿った矩形の輪郭+内部の斜めハッチ)として描きます。線材とは図形の種類が 異なるため、色や太さの違いに頼らずに区別できます。矩形の両端のキャップがそのまま 剛域フェイスの位置を示します。
剛域はすべての線材モデル(弾性材・材端集中塑性・ファイバー・MS)で同じ扱い (可撓長で要素を組み、可撓端を剛体アームで節点自由度へ写す)のため、表示も分類に よらず共通です。
実装参照:剛域のハッチ入りブロックと可撓区間の算定は sepika_app::viewer::modeling::{draw_rigid_zone, flexible_span}(crates/sepika-app/src/viewer/modeling.rs)が担い、剛域長の解決は sepika_element::frame::rigid_arm::resolve_lengths(crates/sepika-element/src/frame/rigid_arm.rs)と共通です。
塑性化位置・ファイバー断面の表示
塑性化のモデル化を、その設定位置に応じて記号で示します。
- 材端塑性ヒンジ(●): 材端集中塑性(材端回転ばね)の部材は、塑性ヒンジが集中 する材端(剛域があればそのフェイス)に塗り円を描く。ピン・半剛の端部にはヒンジを 描かない(回転が解放されヒンジが生じないため)。
- ファイバー断面(材軸直交の短バー+3 点): ファイバー要素・MS 要素は、可撓部の 材端の積分点 \( \xi = \mp 1 \) に配置した断面のファイバー(MS では軸ばね群)だけが 塑性化を担う。その位置=**可撓部の両端(剛域があればその剛域フェイス)**に断面 記号を描く (非線形梁要素のモデル化)。 記号は剛域ブロックや他部材の記号と重ならないよう材軸方向へわずかに内側へ寄せて 描く。
- 塑性化域 \( L_p \)(太線)/中央弾性(細線): 端部積分点の積分重みに対応する 区間(可撓部の材端から \( L_p \))を部材色の太線で、弾性のままの中央部 \( [L_p,\, L'-L_p] \) を弾性色の細線で描く。\( L_p \) は部材の指定値、未指定なら断面せいの 0.5 倍(要素生成の既定と同じ)で、可撓長 \( L' \) の 45% にクランプした値を用いる。
実装参照:材端塑性ヒンジ(●)・ファイバー断面記号・塑性化域の太線と中央弾性の細線の描き分けは sepika_app::viewer::modeling::draw_line_member が行い、\( L_p \) は同 plastic_zone_len(crates/sepika-app/src/viewer/modeling.rs)が要素生成と同じ既定・クランプで算定します。
端部接合条件の記号
線材の端部の接合条件を記号で重ねて表示します。記号は材端(剛域がある場合は剛域 フェイス)に描きます。
- ○(端部ピン): 回転自由の端部。適用可能なRC・SRC置換壁の側柱には、壁法線まわりの回転解放を表す○を両端に描く。材料履歴の有無は色・塑性化域と併せて読む。
- □(端部半剛): 回転ばね(
SemiRigid)の端部。
実装参照:○(端部ピン)・□(端部半剛)の記号は sepika_app::viewer::modeling::{draw_pin_marker, draw_semi_rigid_marker}(crates/sepika-app/src/viewer/modeling.rs)が材端(剛域があればフェイス)に描きます。
壁エレメントの「エ」状表示
耐震壁(壁エレメント成立)は、壁エレメント置換モデルの構成 (壁エレメントモデル)を 反映した「エ」状で描きます。
- 壁柱(中央の鉛直線・青): 上下剛梁の中点を結ぶ仮想中央柱。
- 上下の剛梁(ハッチ入りブロック): 四隅節点の並進を壁柱端へ写す剛体リンク。 剛域と同じ図形で描く。
- 引出線(細い破線): 剛梁の端と壁の四隅節点のつながり。
- 剛梁端のピン(○): 壁エレメントは四隅節点の回転自由度に剛性を与えないため、 剛梁の両端に○を描く。
剛梁は実要素ではなく、四隅節点の並進を壁柱端の並進・回転へ写す拘束です。壁の上辺・ 下辺には実部材である付帯梁(後述)が同じ位置にあるため、剛梁を辺の上にそのまま描くと 付帯梁が剛梁でその端部がピンであるかのように読めてしまいます。そこで剛梁は四辺とも 壁の内側へ寄せて描き、剛梁の端と四隅節点は破線の引出線でつなぎます。寄せる量は、 ズームに依らず見た目が一定になるよう画面上の距離(px)で決め、壁高さの 15% を上限とします。
RC・SRC置換壁の側柱に加えるのは壁法線まわりの回転解放です。付帯梁は入力した端部条件を保ち、連続壁板を表す弾性高剛性部材として剛性100倍で解析へ入ります。
壁エレメントの幾何を取れない壁は半透明ポリゴンにフォールバックします。
実装参照:壁エレメントの「エ」状表示(壁柱・上下剛梁・引出線・剛梁端のピン)は sepika_app::viewer::modeling::draw_wall_element(crates/sepika-app/src/viewer/modeling.rs)が描き、幾何を取れない壁は同 draw_wall_polygon の半透明ポリゴンへフォールバックします。
増分解析での降伏機構
壁エレメントの降伏機構は 2 つあり、増分解析(弾塑性)ではその両方を描きます。
- 軸・曲げ: 壁柱の材端 \( \xi = \mp 1 \) に置いたファイバー断面が担う。端部 \( L_p \) の 区間をファイバー色の太線と断面記号で、中央の弾性区間を壁エレメント色の細線で描く。 \( L_p \) は壁長の 0.5 倍(壁高さの 45% にクランプ)で、断面せいの 0.5 倍を基準とする 柱・梁とは基準が異なる。
- 面内せん断: 壁柱に沿わせたジグザグ(せん断ばね)で描く。終局せん断強度 \( Q_u \) で 頭打ちにする弾完全塑性のばねで、増分解析かつ \( Q_u \) を算定できる壁にのみ描く。
面内せん断の判定量は、要素が伝達する面内水平力 \( Q = \boldsymbol{p}^{T} \boldsymbol{f} \) という 1 つのスカラーです。上辺の剛梁は中間荷重を持たない剛体リンクのため、釣合いから \( Q \) は 壁柱の面内せん断力に等しく、壁柱にも中間荷重がないためこの値は材長方向に一定になります。 特定の断面の応力で判定する量ではないので、材端に記号を置かず材軸に沿わせて「壁柱が全長で 持つ性質」として描いています。
ファイバー化されるのは、耐震壁が成立し、\( Q_u \) を算定でき、コンクリート強度 \( F_c \) と 壁厚が得られる壁だけです。この条件を満たさない壁の壁柱は弾性のまま描かれます。
実装参照:降伏機構の描き分けは sepika_app::viewer::modeling::draw_wall_element(crates/sepika-app/src/viewer/modeling.rs)が行い、壁柱の塑性化域 \( L_p \) と面内せん断の終局強度 \( Q_u \) は sepika_element::wall::wall_element::{wall_column_fiber_lp, WallElement}(crates/sepika-element/src/wall/wall_element.rs)が算定します。
壁の付帯梁の表示
耐震壁の上下大梁(付帯梁)は、通常の大梁に倍率を乗じた剛性で解析へ入ります (壁エレメントモデル)。剛梁では ないため部材線そのものは弾性材の色とし、壁エレメント色の細い平行線を脇に添えて付帯梁であることを示します。ホバーには「壁上下の剛梁(弾性高剛性部材。材料降伏は評価しません)」と表示します。入力表現がファイバー・MSでも、この役割では材料降伏の断面記号を表示しません。
倍率100は図には出しません。図が示すのは「この梁がモデル化上 壁の付帯梁として認識されている」ことで、実際に乗った倍率は準備計算タブの 「部材剛性」で確認できます(部材剛性)。
実装参照:付帯梁の判定と壁エレメント色の平行線の描画は sepika_app::viewer::modeling::{is_wall_girder, draw_wall_girder_mark}(crates/sepika-app/src/viewer/modeling.rs)が担い、判定は sepika_element::frame::beam::stiffness_breakdown(crates/sepika-element/src/frame/beam/stiffness_factors.rs)に委ねます。
仕口パネル要素の表示
仕口パネル要素がモデル化されている場合、接合部が占める領域を四角形で描きます (仕口パネル要素)。 四角形は、梁が取り付く構面ごとの実接合面距離の2倍を幅、梁せいを高さとして描きます。非正方柱の方向や柱断面回転を反映します。
仕口パネル要素分のオフセットは部材の剛体アーム長へ反映されるため、パネル領域は部材側の 剛域ブロック(ハッチ)内に重なって描かれます。剛域長がオフセットを上回る場合は、 剛域ブロックの方が長くなります。両者は別のことを示します。
| 図形 | 示すもの |
|---|---|
| 四角形(藍の半透明) | この接合部にせん断変形角の自由度を持つ仕口パネル要素がある |
| ハッチ入りブロック | その部材のこの区間が剛体アームである |
材端の記号(塑性ヒンジ・ファイバー断面・ピン)は可とう区間の端、すなわち実効剛体アームの フェイス位置に描かれます。部材の可撓部がどこから始まるかを図で確認できます。
接合面距離が一意に求まらない接合部(必要な柱断面・接合詳細・角Rが未設定など)は四角形を描けないため、接合部中心の ひし形マーカーで位置だけを示します。
仕口パネル要素は既定で S 造(CFT を除く)の柱梁接合部に設けられます。RC/SRC の柱や梁が 1 本でも取り付く接合部は対象外です。設けるかどうかは準備計算パネルの「部材のモデル化」で 切り替えられ、生成された仕口パネル要素の寸法・剛性は準備計算タブの「仕口パネル」で 確認できます。
強軸・弱軸の2方向は採用柱の断面主軸から定めます。表示する四角形は仕口パネル要素が存在することを示す記号で、梁方向ごとに独立した仕口パネルがあることや、柱主軸方向の寸法・剛性を表すものではありません。方向別の諸元は準備計算の「仕口パネル」で確認してください。
実装参照:仕口パネル要素の四角形(幅=構面ごとの実接合面距離の2倍・高さ=梁せい)と寸法を取れない場合のひし形マーカーは sepika_app::viewer::modeling::draw_panel_zone(crates/sepika-app/src/viewer/modeling.rs)が描き、寸法は解析と同じ sepika_core::panel_zone::panel_connection_offset(crates/sepika-core/src/panel_zone.rs)から求めます。
凡例とホバー詳細
ビュー左上に、現在の解析種別と、モデルに現れた分類の色凡例・記号凡例(剛域と壁エレメント の剛梁・剛梁の引出線・壁の付帯梁・壁の面内せん断ばね・ピン・半剛・材端塑性ヒンジ・ ファイバー断面・塑性化域 \( L_p \) のうち実際に現れたもの)を表示します(支持条件の凡例は 左下のため重なりません)。部材の近く(8 px の許容距離)へポインタを重ねると、その部材の 解析モデル分類・端条件(i 端/j 端が剛・ピン・半剛)・剛域長・ファイバー断面の位置と 塑性化域 \( L_p \)(可撓長 \( L' \) 基準)をツールチップで表示します。
壁エレメントにポインタを重ねた場合は、壁長 \( l_w \)・壁高 \( h \) を表示します。増分解析 ではこれに加えて、壁柱の塑性化域 \( L_p \) と面内せん断の終局強度 \( Q_u \) を表示します。 ファイバー断面を組めない壁・\( Q_u \) を算定できない壁では、その機構が弾性であることを 表示します。どちらの機構で降伏するのかを個別に確認できます。
梁のねじり剛性を期待しない既定モデル化(i 端ねじれ解放。 部材のねじり剛性の既定モデル化)が適用されている 部材では、ツールチップに「ねじれ: i 端ピン(部材全長で Mx=0)」を併記します。 適用されない部材(柱・ブレース、および解放するとねじれ回転が拘束されない節点を 持つ梁)には表示されないため、どの梁に適用されているかを個別に確認できます。
実装参照:凡例(分類色・記号)とホバーのツールチップは sepika_app::viewer::modeling::{draw_legend, show_modeling_tooltip}(crates/sepika-app/src/viewer/modeling.rs)が組み立て、i 端ねじれ解放の判定は sepika_element::frame::beam::i_end_torsion_release(crates/sepika-element/src/frame/beam/torsion.rs)が行います。
応力図(M 図)の曲線補間
解析結果の断面力は、危険断面(評価断面)でのみ値を持ちます。既定の評価断面は 節点芯・柱フェース位置・部材中央に、指定があればハンチ端・継手位置を加えた 数点です(梁要素内部の変位・断面力の内挿)。
評価断面の値を直線で結ぶだけでは、等分布荷重などで本来生じる曲げモーメントの 曲率や反曲点を正しく表せません。そのため M 図は、評価断面の値を保ったまま 区間内を 3 次エルミート補間で曲線表示します。補間の計算根拠は梁要素内部の変位・断面力の内挿を正本とします。
実装参照:評価断面の値を保ったまま 3 次エルミート補間で M 図を稠密化する処理は sepika_app::viewer::diagram::moment_curve_samples(crates/sepika-app/src/viewer/diagram.rs)が行います。
表示上の適用範囲
- 対象は M 図のみです。N 図は部材中間の軸荷重がなければ一定、Q 図は 等分布荷重下で 1 次となり、いずれも評価断面を直線で結べば厳密なため、 直線で描きます。
- 対象要素は曲げ内力場をもつ線材要素(梁・柱として扱う梁要素、 ファイバー梁要素、マルチスプリング梁要素)です。軸材(ブレース)・面要素・ ばね要素は曲げ分布をもたないため補間しません。
- 本処理は画面表示のための処理であり、解析結果(節点変位・断面力) そのものには影響しません。断面検定は評価断面の値のみを用います。
実装参照:勾配に用いるせん断成分の対応(\( M_z \)→\( Q_y \)、\( M_y \)→\( Q_z \))と補間対象の限定は sepika_app::viewer::ForceComponent::moment_gradient_source(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が定め、補間式は sepika_app::viewer::diagram::moment_curve_samples(crates/sepika-app/src/viewer/diagram.rs)が実装します。
CMQ 図の M 成分のサンプルと塗り
CMQ 図の M 成分は、部材荷重から求める節点変位0の梁の荷重込み曲げモーメントを折れ線で表示します。建物共通の剛域設定と材端解放を反映します。 解析結果の M 図に用いる上記のエルミート補間とは適用範囲が異なります。 材長の 32 等分点に、区間分布荷重の始終点と集中荷重の左右位置を加えて値を求めます。Q成分も同じ荷重込み断面力から各位置で評価し、集中荷重のジャンプを表します。 集中荷重位置を含むこれらのサンプルが、表示する曲線の基準です。
塗りは隣接サンプルを結ぶ線と材軸に囲まれた小領域ごとに行います。 隣接値の符号が反転する区間では、両値を直線で結んだゼロ交差位置で領域を分けます。 この交差位置は表示する折れ線に対するもので、荷重から得られる元の曲線の厳密な零点ではありません。 サンプルの値・表示倍率・張り出し方向は塗りの分割によって変わらず、全体の輪郭線は一続きに表示します。 全サンプルがゼロの場合、非有限の位置・値・投影座標を含む場合、材長がゼロの場合は塗りません。 材軸方向の長さや投影面積のない小領域も塗りません。
成分色は C が青、M が紫、Q が緑です。強軸・弱軸の不透明度は CMQ 図の表示仕様 に従います。 この分割は画面表示だけに適用し、入力荷重、CMQ の計算値・積分・端部モーメント、 モデル・Undo・保存内容・結果世代には影響しません。
実装参照:sepika_app::viewer::cmq::draw_cmq_diagram(crates/sepika-app/src/viewer/cmq.rs)と sepika_app::viewer::diagram::diagram_fill_polygons(crates/sepika-app/src/viewer/diagram.rs)が実装します。
ヒンジ図の表示
表示モード「ヒンジ」では、増分解析(プッシュオーバー解析)で発生したヒンジの 位置を 3D ビュー上にマーカーで可視化します。どの部材のどちら側の材端から 塑性化が進んだか、どの端が終局に達したかを一目で確認できます。
増分解析の実行が前提です。増分解析が未実行の場合は、ヒンジ図の代わりに 解析の実行を促す案内のみを表示します。
実装参照:sepika_app::viewer::hinge::draw_hinge(crates/sepika-app/src/viewer/hinge.rs)がマーカーと未実行時の案内を描き、sepika_app::viewer::hinge::show_hinge_detail_window がクリック時の詳細ウィンドウを表示します。
ヒンジの集約
増分解析の結果は、閾値(ひび割れ・降伏・終局)を超過している間、同じ 部材・材端のヒンジ発生を毎ステップ記録します (曲げヒンジ判定(Mc・My・終局))。 ヒンジ図では、部材・材端(i端/j端)ごとにこれらを 1 件へまとめたうえで マーカーを表示します。集約後の1件は次を保持します。
- 最高レベル: 記録されたレベルのうち最も進行したもの (ひび割れ < 降伏 < 終局)。
- 最大塑性率: 記録された中での最大の塑性率 \( \mu \)。
- 初出ステップ: そのヒンジが最初に記録された増分ステップ。
実装参照:sepika_app::viewer::hinge::aggregate_hinges(crates/sepika-app/src/viewer/hinge.rs)が部材・材端ごとに最高レベル・最大塑性率・初出ステップを保持する 1 件へ集約します。
マーカーの表示位置と色
マーカーは各部材端(i端=elem.nodes[0] 側、j端=elem.nodes[1] 側)の近く
に描きます。節点の直上に描くと同一節点に集まる複数部材のヒンジが重なって
判別できなくなるため、材軸に沿って材端から中点側へ 10% だけ寄せた位置に
塗りつぶし円で表示します。
色はヒンジレベルを表します。
- ひび割れ: アンバー系の色の塗りつぶし円。
- 降伏: 赤系の色の塗りつぶし円。
- 終局: 紫系の色の塗りつぶし円。目立たせるため外周にリングを重ねて描く。
実装参照:sepika_app::viewer::hinge::hinge_marker_screen_pos(crates/sepika-app/src/viewer/hinge.rs)が材端から材軸方向へ 10% 内側の位置を求め、sepika_app::viewer::hinge::draw_hinge がレベル別の色と終局の外周リングを描きます。
凡例とホバー詳細
ビュー左上に、レベルごとの色見本と件数(集約後の件数。ステップ間の重複は 含まない)を表示します。
部材の近く(8 px の許容距離)へポインタを重ねると、その部材にヒンジが 記録されていれば、i端・j端それぞれについて「i端: 降伏 (μ=2.31, step 12)」 のように、レベル・最大塑性率・初出ステップをツールチップで表示します。 ヒンジが記録されていない部材にはツールチップを表示しません。
実装参照:sepika_app::viewer::hinge::draw_hinge_legend(crates/sepika-app/src/viewer/hinge.rs)がレベル別の件数付き凡例を描き、sepika_app::viewer::hinge::show_hinge_tooltip が i端・j端の集約情報をツールチップ表示します。
ヒンジ詳細ウィンドウ
ヒンジが記録された部材をクリックすると、「ヒンジ詳細: 部材 #N」ウィンドウ (開閉・リサイズ可能)が開き、その部材のヒンジ状態を詳しく確認できます。 ウィンドウは他の表示モードへ切り替えても、閉じるまで表示されたままです。
ウィンドウの先頭には、上記と同じ i端・j端の集約ヒンジ情報(レベル・最大 塑性率・初出ステップ)に加えて、使用した解析モデル(材端集中ばね/ファイバー/ マルチスプリング/その他)と履歴則(集中ばね)を示します。続けて採用する 曲げ面と、表示中のステップを示します。材端集中ばねは非線形ばねが強軸(局所 z) のみに作用し弱軸は弾性のため、表示を強軸(Mz)に固定します。ファイバー・ マルチスプリングは最終ステップで i端・j端のうち絶対値が大きい成分の軸を 採用します。
表示ステップはスライダーで選べます。対象は増分解析が確定したステップ列で、 既定は最終ステップです。選んだステップの軸力(圧縮正、引張は負値)は材端集中ばねの M-θ 骨格へ反映し、N-M 図ではそのステップの応答点をマーカーで強調します。
実装参照:sepika_app::viewer::hinge::show_hinge_detail_window(crates/sepika-app/src/viewer/hinge.rs)がウィンドウを開き、sepika_app::viewer::hinge::effective_bend_dir_z が解析モデルに応じて採用する曲げ面を決め(集中ばねは強軸固定)、sepika_app::viewer::hinge::dominant_bend_axis_z がファイバー系の最終ステップの支配軸を判定し、sepika_app::viewer::hinge::hinge_step_selector が表示ステップのスライダーを表示します。骨格・曲面は sepika_element::factory::build_hinge_view で解析と同じ計算経路から取得し、sepika_app::viewer::hinge::ensure_hinge_view がキー一致の間キャッシュします。
M-θ カーブ(荷重変形カーブ)
ヒンジが記録された部材であれば常に表示します。縦軸はその材端の曲げモーメント \( |M| \)(採用した曲げ面の成分、絶対値)で、増分解析の全ステップに渡る i端・j端それぞれの応答を折れ線で示します(ヒンジが記録されている端のみ)。 選択ステップの点をマーカーで強調します。
横軸は解析モデルで異なります。
- 材端集中ばね: 解析が端ばねに対して実際に使う端ばね変形 \( |\theta_s| \)(= 弦からの材端回転 − 可撓梁の材端回転)。骨格がこの 変形に対して定義されるため、応答経路と骨格で基準を揃えます。
- ファイバー/マルチスプリング: 弦からの材端回転 \( |\theta| \)。
材端集中ばねの部材では、背景に解析で使用した M-θ 骨格(バイリニア/ トリリニア等)を重ねます。この骨格は解析要素が初期載荷時にたどる包絡線 (初期・降伏・降伏後枝)であり、除荷・再載荷を含む履歴ループそのものでは ありません。このとき応答経路と骨格は、非線形ばねが作用する強軸 (\( M_z \)・\( \theta_z \))で統一します。ファイバー・マルチスプリングの 部材は固定の骨格を持たないため、応答経路のみを表示します。
実装参照:sepika_app::viewer::hinge::m_theta_series(crates/sepika-app/src/viewer/hinge.rs)が全ステップの材端応答を抽出し、sepika_app::viewer::hinge::draw_m_theta_plot がヒンジが記録された端の折れ線・集中ばねの骨格・選択ステップのマーカーを描きます。
N-M 相関図
N-M 相関図は、解析モデルに応じて内容が変わります。
- 材端集中ばね: N-M 線形相関 \( M = M_{y0}\,(1 - |N|/N_{\text{許容}}) \) を 2D で表示し(横軸 \( M \) [kN・m]、縦軸 \( N \) [kN] 圧縮正、引張は負値)、応答経路を 重ねます。応答経路は非線形ばねが作用する強軸(\( M_z \))で表示します。 N-M 相関を用いない履歴材料(武田型等)の場合は、その旨を表示して N-M 図を出しません。非線形化は強軸(局所 z)のみで、弱軸は弾性です。
- ファイバー/マルチスプリング: 上段に N-My-Mz 相関曲面(軸力と 2 軸の曲げ モーメントがなす 3 次元の耐力曲面)の 3D ワイヤーフレームを格子線で表示し、 下段に採用曲げ面での 2D スライス(正曲げ側・負曲げ側の 2 本の曲線)を表示 します。3D 曲面の軸は My・Mz・N(引張を正)、2D スライスの縦軸 \( N \) は圧縮正・引張負(3D 曲面の \( N \) は引張正)です。応答経路(各ステップで i端・j端のうち合成曲げ \( \sqrt{M\_y^2+M\_z^2} \) が大きい方の端の \( (M\_y, M\_z, N) \))を、無載荷状態(原点)を始点として折れ線で重ねます。 マウス操作は左ドラッグで回転、 右ドラッグで平行移動、スクロール(ピンチ)でズームです。
- その他(壁・ブレース・線形・側柱等): N-M 図を表示しません。
ファイバー/マルチスプリングの 3D 曲面は、解析要素が実際に生成するファイバー
配置に、解析と同じ経路で解決した実効降伏強度を与えて算定した全塑性曲面です。
ファイバー分割は、断面形状が未定義(壁断面を含む)の場合は幅方向×せい方向の
格子(ファイバー梁は 12×20、マルチスプリングは 2×5)を、形状が定義されている
場合はその形状に応じた板・円環分割(nw×nd には依らない)を用います。
解析本体は非線形のファイバー積分で応答を決めるため、この曲面が解析の全塑性挙動
そのものではなく、同じ断面・材料・強度の入力を可視化したものです。硬化は考慮
しません(初期耐力としては安全側)。劣化は考慮しないため、劣化後の耐力はこの
曲面より低下しうる点に注意してください。
断面または材料の情報が不足して曲面を算定できない場合は、表示できない旨を案内します。
実装参照:sepika_element::factory::build_hinge_view(crates/sepika-element/src/factory/hinge_view.rs)が解析と同じファイバー分割・材料解決で骨格・N-M 相関・曲面を算定し、sepika_app::viewer::hinge::draw_mn_linear_plot/sepika_app::viewer::hinge::draw_mn_plot(crates/sepika-app/src/viewer/hinge.rs)が応答経路を重ねます。
ファイバー断面の塑性化マップ
ファイバー定式化の部材(ファイバー梁・マルチスプリング梁)で、ヒンジが記録された ものにのみ表示します。マルチスプリング梁は端部塑性化域を粗く分割したファイバー梁と 同じ定式化のため、ファイバー梁と同様に断面内の状態を表示できます。ヒンジのある端 (i端・j端)ごとに、終局(最終確定ステップ)時点のその端に最も近いガウス点 断面を選び、断面内のファイバーを位置 (y, z) の散布図として表示します。両端に ヒンジがあれば 2 断面を横に並べます。
- 色は材料区分を表します: コンクリート(母材格子)はグレー系、主筋 (鉄筋)は赤系、鋼材(形鋼・鋼管・内蔵鉄骨)は青系です。プロット下に色見本 の凡例を表示します。
- 降伏状態は明度と形状で重ねて表します: 降伏比 \( |\varepsilon|/\varepsilon_{\text{ref}} \) が 1 未満のファイバーは 材料色を淡くした色(未降伏)、1 以上のファイバーは材料色そのまま+外周 リングで強調し(降伏)、さらに引張ひずみは丸、圧縮ひずみはひし形で区別 します。
- 主筋・鋼材(点ファイバー)は、母材格子のファイバーよりやや大きい円・ ひし形で描き、視認性を高めています。
- 見出しに断面位置(材軸位置 \( \xi \)。−1 側が i端、+1 側が j端)と、 「降伏ファイバー n/全 m」を表示します。
- 断面の外形線を、ファイバー点より目立たない中間色の細線でファイバーの背後 に重ねて表示します。角形鋼管・鋼管・CFT など中空断面は、外側輪郭に加えて 内側輪郭(中空部の境界)も描くため、ファイバー配置が断面形状(中空か中実 か、外形寸法)と対応しているかを目視で確認できます。
実装参照:sepika_app::viewer::hinge::draw_fiber_maps(crates/sepika-app/src/viewer/hinge.rs)が端ごとに最も近いガウス点断面を選んで散布図を並べ、sepika_app::viewer::hinge::draw_fiber_scatter が材料区分の色と降伏状態の明度・形状を描き分けます。
データがない場合
増分解析結果に部材応答履歴(M-θ・N-M 応答経路のもとになるデータ)がない 場合(結果ファイルが本機能の追加前に生成されたものである場合など)は、 再解析すると詳細を表示できる旨を案内します。
実装参照:sepika_app::viewer::hinge::draw_hinge_detail_content(crates/sepika-app/src/viewer/hinge.rs)が応答履歴の有無を判定し、ない場合は再解析を案内します。
時刻歴アニメーションの表示
表示モード「時刻歴」では、時刻歴応答解析の詳細記録(間引きされたフレーム ごとの全節点変位・部材内力)を 3D ビュー上でアニメーション再生します。 地震応答の時々刻々の変形の様子を確認できます。
時刻歴応答解析の実行が前提です。詳細記録がない場合(結果ファイルが本機能の 追加前に生成されたものである場合や、保存時に詳細記録を除外した場合など)は、 表示モードの選択肢自体に「時刻歴」が現れません。
詳細記録はプロジェクトファイル(.ovika)に保存され、読み込み直後から アニメーション・部材履歴を確認できます。詳細記録はデータ量が大きい (実建物規模の解析では数百 MB 級になり得る)ため、解析結果の保存サイズが 512 MB を超える場合は、保存時に「時刻歴の詳細記録を保存に含めますか?」の 確認が表示されます。除外して保存した場合も、層応答の集計値・ピーク値などは 別に保存され、詳細記録は時刻歴応答解析の再実行で復元できます。
実装参照:sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が詳細記録 sepika_solver::dynamic::timehistory::ThRecording を現在フレームの変位として表示し、保存時の確認は sepika_app::app::actions::io::needs_recording_confirm(crates/sepika-app/src/app/actions/io.rs)が判定します。
フレームと変形表示
詳細記録は、解析の全ステップのうち一定間隔(record_every ステップごと)
で間引いた時刻のみを保持します。ビューには次のフレーム制御を表示します。
初期点と最終確定点は必ず含めます。先頭の時刻 0 は積分前の初期状態で、N 点の入力に対する終時刻は (N−1)dt です。 フレーム番号は積分回数とは異なります。入力時刻と初期状態 と 記録間引き も参照してください。
- フレームスライダー: 0 から最終フレームまでの範囲で現在フレームを選択 します。ラベルには現在時刻 \( t \) [s] と総時間を表示します。
- 再生/一時停止ボタン(▶/⏸): 再生中は実時間の経過に再生速度を掛けた だけフレーム時刻を進め、最終フレームに達すると先頭へ周回します。
- 再生速度: ×0.25/×0.5/×1/×2 から選択します。
現在フレームの全節点変位は、変形図(表示モード「変形」)と同じ描画経路で 表示します。変形倍率スライダー・内部たわみ(梁の Hermite 曲線)表示の 切り替えも変形図と共通です。ただし自動倍率は、現在フレームではなく 解析全体を通じた最大変位(全ステップの絶対値最大、間引きの影響を受け ません)から 1 回だけ算定した固定値を使います。フレームを切り替えても 倍率自体は変わらないため、振幅の小さい時刻でも表示が消えたり、逆に 過大な倍率になったりしません。
モデルを編集すると、再解析するまで時刻歴モードの変形アニメーション・ 部材クリックは無効化され、「モデルが編集されています。解析を再実行して ください」と案内します(編集前後で部材の並びが変わり、別の部材の記録を 誤って表示する事態を防ぐためです)。開いている部材の履歴・検定ウィンドウ がある場合も同様に、プロット・検定を隠して同じ案内を表示します。
実装参照:sepika_app::viewer::controls::view_controls(crates/sepika-app/src/viewer/controls.rs)と sepika_app::viewer::playback(crates/sepika-app/src/viewer/playback.rs)がフレームの表示・再生・周回を担い、変形倍率は sepika_app::viewer::deform::time_history_deform_scale(crates/sepika-app/src/viewer/deform.rs)が解析全体の最大変位から固定値として算定します。
部材の履歴・検定ウィンドウ
時刻歴モードで部材をクリックすると、「時刻歴詳細: 部材 #N」ウィンドウ (開閉・リサイズ可能)が開きます。ウィンドウは他の表示モードへ切り替えても、 閉じるまで表示されたままです。
実装参照:sepika_app::viewer::th_detail::show_th_detail_window(crates/sepika-app/src/viewer/th_detail.rs)がクリックした部材の「時刻歴詳細」ウィンドウを開きます。
荷重変形関係の履歴ループ
部材の種別に応じて、次のいずれかのループ図(横軸・縦軸とも解析全フレームの 値を結んだ折れ線)を表示します。現在フレームの位置はループ上にマーカーで 示し、フレームスライダーと連動します。
-
軸力系(ブレース・ダンパー・免震・節点ばね要素): 軸力 N [kN](引張を 正)と軸方向相対変位 \( \delta \) [mm] の関係。\( \delta \) は部材両端 の変位差(並進成分)を、未変形時の材軸方向(i端→j端の単位ベクトル)へ 射影した値です。
免震支承・節点ばねのように部材長がほぼ 0 の要素は材軸方向が定まらない ため、代わりに要素ローカル軸の成分(軸/せん断y/せん断z)を切り替えて 表示します。免震支承は水平方向のせん断力とせん断変位の関係(局所 y 軸) を既定表示にします(免震の応答確認では水平ループが主な関心事のため)。 局所軸は免震支承が軸=鉛直・せん断=水平、それ以外(節点ばね等)は 全体座標系と同じ向きです。
-
梁・柱: 材端モーメント M [kN・m] と材端回転角 \( \theta \) [rad] (弦からのたわみ角)の関係。強軸(Mz・θz)/弱軸(My・θy)を切り替え られ、i端・j端をそれぞれ色分けして重ねて表示します。
\( \theta \) は、部材端の節点回転から「弦回転」(両端の並進変位差を 部材長で除した値)を差し引いた回転角です。弦回転は部材全体の剛体的な 傾き(層間変形相当)を表すため、これを差し引くことで材端そのものの 曲げ変形(たわみ角)だけを取り出します。
要素の内力が記録されていない場合(免震・ダンパー要素など、内力分布を 持たない要素定式化の場合)は、ループの代わりに記録がない旨を案内します。
実装参照:sepika_app::viewer::th_detail::{draw_axial_loop, draw_flexural_loop}(crates/sepika-app/src/viewer/th_detail.rs)が要素種別に応じたループを描きます。
最大応力に対する検定
全ステップを通じた部材内力の包絡値(各成分の絶対値最大値。符号は極値の 符号を保持)を用いて、短期の断面検定を行います。断面・材料の種別に応じて 鉄筋コンクリート・鋼・SRC・CFT のいずれかの検定式を適用し、検定位置ごとに 検定比・判定(OK/NG)・検定式別の内訳を表示します。判定色は検定比図 (検定比の表示)と同じ配色(緑=良好/黄=注意/ 赤=超過)です。
次の部材・要素は検定対象外とし、その旨を案内します。
- 断面または材料が未設定の部材(免震・ダンパー・節点ばね要素など、 断面検定という概念自体が当てはまらない要素を含む)。
- 壁・シェル・仕口パネル要素(断面検定の部材種別(梁・柱・ブレース)に 当てはまらない要素)。
この検定は座屈長さを部材長(座屈長さ係数 K=1 相当)として評価する簡易的な ものです。鋼継手の欠損・一本部材指定による応力合成・地震時短期の設計用 せん断力 QD の長期内力割増などは考慮しません。また各成分(軸力・せん断力・ 曲げモーメント)の最大値はそれぞれ全ステップを通じた絶対値最大(包絡値) であり、同一時刻に生じたとは限りません。実際には同時に生じない組合せを 検定している可能性があるため、安全側ではありますが過大評価になり得ます。
線形の時刻歴応答解析では、地震動による応答成分のみを検定しており、長期 荷重(固定・積載等)との重ね合わせは含みません。非線形の時刻歴応答解析 では、長期荷重を初期状態として考慮する設定にしていた場合はその旨、 していない場合は水平力のみの結果である旨を、検定結果の上に注記します。
実装参照:sepika_app::viewer::th_detail::draw_peak_check(crates/sepika-app/src/viewer/th_detail.rs)が ThRecording の peak_member_forces(全ステップの内力包絡)を使い、sepika_design_jp::checker_for で取得した DesignCheck 実装で検定位置ごとの検定比・判定・内訳を表示します。
層応答分布グラフの表示
結果タブ「時刻歴」には、時刻歴波形(節点変位・ベースシア・層間変形角の時間 履歴)に加え、「層応答分布」の表示モードがあります。縦軸に階、横軸に応答量を 取り、地震応答が高さ方向にどう分布したかを一目で確認できます。
時刻歴応答解析の詳細記録(層応答の集計。 層応答の集計)の実行が 前提です。詳細記録がない場合(結果ファイルが本機能の追加前に生成されたものである 場合など)は、再実行を促す案内のみを表示します。
実装参照:sepika_app::time_history_view::story_response_panel(crates/sepika-app/src/time_history_view.rs)が層応答分布グラフを表示し、詳細記録がない場合は再実行を案内します。
方向・表示項目の選択
グラフ上部で次を選択します。
- 方向: X/Y。地震動の加振方向に関わらず、記録済みの X・Y いずれの方向の 層応答も選べます(加振していない方向の連成応答も確認できます)。
- 表示項目:
- 層せん断力 [kN](層量)
- 層せん断力係数 Ci [-](層量)
- 階加速度 [gal](階量、絶対加速度)
- 階速度 [m/s](階量、相対速度)
- 階変位 [mm](階量、相対変位)
層せん断力・階加速度・階速度・階変位は、解析の全ステップを通じた絶対値の 最大値をグラフに表示します。層せん断力係数 Ci は元々全ステップを通じた 定義(最大層せん断力/地震用重量)のため、そのまま表示します。
実装参照:sepika_app::time_history_view::story_response_panel(crates/sepika-app/src/time_history_view.rs)が方向・項目の選択 UI を表示し、値は sepika_solver::dynamic::timehistory::StoryResponse の peak_story_shear・peak_shear_coeff・peak_floor_accel・peak_floor_vel・peak_floor_disp(crates/sepika-solver/src/dynamic/timehistory/result.rs)を使います。
層量と階量の描き方の違い
応答量には、層(階と階の間の区間)に属する量と、階(床)に属する量の 2 種類が あり、描き方を使い分けます。
- 層量(層せん断力・層せん断力係数): 層 \( i \) の値を、その層の下端から 上端までの区間で一定の水平線(階段状)として描きます。層区分そのものが 持つ量であることを表しています。
- 階量(階加速度・階速度・階変位): 階 \( i \) の値を、その階の床の高さに 点として置き、隣接する点を折れ線で結びます。
縦軸の目盛りには、地盤面(GL)と各階の名称(model.stories の階名)を
ラベルとして表示します。
実装参照:階段状・折れ線の点列と GL・階名の目盛りラベルは sepika_app::story_response(crates/sepika-app/src/story_response.rs)が作り、sepika_app::time_history_view::story_response_panel(crates/sepika-app/src/time_history_view.rs)が描きます。
ホバー表示
グラフ上にポインタを重ねると、最も近い層(または階)の名称と値を、選択中の 表示項目に応じた単位で下に表示します。
実装参照:sepika_app::story_response::hover_story_index(crates/sepika-app/src/story_response.rs)がポインタ位置から層・階を求め、sepika_app::time_history_view::story_response_panel が名称と値・単位を表示します。
レポートとの関係
層応答分布グラフと同じ層応答最大値(層せん断力・層せん断力係数・階加速度・ 階速度・階変位の全ステップ絶対値最大)は、レポートタブの CSV 出力にも含まれ、 同一の集計ロジックを共有します。
実装参照:sepika_app::summary::push_story_response_table(crates/sepika-app/src/summary.rs)が同じ StoryResponse の peak_story_shear・peak_shear_coeff・peak_floor_accel・peak_floor_vel・peak_floor_disp を表示単位へ換算して CSV に追記し、集計ロジックを共有します。
構面の表示(軸組図・伏図)
通り芯 1 本、または階 1 つに属する部材だけを取り出し、その面へ正対した 2D で表示します。 3D ビューアの主操作行にある表示範囲の選択欄で全体(3D)と切り替えます。表示モード (形状・変形・モード・応力図・CMQ 図・検定比・ヒンジ・モデル化・時刻歴)はそのまま 使えるため、3D で確認できる内容はすべて構面でも確認できます。
3D ビューアの投影はもともと正射影のため、構面の法線方向へ正対させた図がそのまま 軸組図・伏図になります。透視投影のような遠近の歪みは入らず、画面上の長さの比は実寸の 比と一致します。
実装参照:sepika_app::viewer::controls::primary::primary_controls(crates/sepika-app/src/viewer/controls/primary.rs)が表示範囲(全体/通り/階)の選択と前後送りを行い、sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が構面の描画経路です。
構面に属する部材
通り(軸組図)
節点が通り上にあるかどうかを、次のいずれかで判定します。
- 通り芯の所属節点リストに載っている
- そのグループでの離れが、通りの離れと 1 mm 以内で一致する
そのうえで、すべての材端節点が通り上にある要素を構面の部材とします。柱・大梁・ ブレースのほか、4 節点すべてが通り上にある壁も含まれます。
判定を 2 つの和にしているのは、片方だけでは部材が落ちるためです。所属節点リストだけで 判定すると、柱間の大梁が中間節点で複数の要素に分割されている場合に、中間節点が柱の節点 ではないため大梁が丸ごと図から消えます。座標だけで判定すると、通りの位置と柱の芯が一致 しない芯ずれの柱が消えます。落ちた部材は図の上では「描かれていない」だけで気づけない ため、両方を拾います。
実装参照:sepika_core::frame::build_frame(crates/sepika-core/src/frame.rs)の通り(FrameTarget::Axis)の切り出しが、所属節点リストに載っているか離れが FRAME_TOL_MM 以内の和で節点を選び、全材端節点が構面上にある要素を部材とします。
階(伏図)
その階に所属する節点を階上の節点とし、すべての材端節点が階上にある要素を構面の部材と します。これに加えて、上端節点がその階に属する柱を含めます。柱は上下 2 つの階レベルに またがるため、前者の規則だけでは伏図から柱が消え、梁がどこで支持されているのか読めなく なるためです。柱の所属階は「材端節点のうちもっとも高い節点の所属階」とし、階の主要構造 種別の判定(階の分布)と同じ規則を使います。
平面図では柱は視線方向に潰れて点になるため、柱の応力図・変形図は描けません。位置を示す ためだけに含めています。
実装参照:sepika_core::frame::build_frame(crates/sepika-core/src/frame.rs)の階(FrameTarget::Story)の切り出しが、Model::node_stories の帰属区間で節点を選び、全材端節点が階上にある要素にもっとも高い節点がその階に属する柱を加えます。
見る向き
平行芯の通りは、グループの原点と方向角から面が一意に決まります。離れを測る向きが そのまま面の法線であり、厳密に鉛直な面になります。厳密であることが重要で、法線が わずかでも傾くと階の基準線が水平にならず、床レベルが揃って見えなくなります。
平行芯以外(円弧芯・放射芯・作図芯)の通りは幾何を持たないため、所属節点群にもっとも 当てはまる平面を主成分分析(全最小二乗)で求め、その法線を使います。重心まわりの 共分散行列の最小固有値の固有ベクトルを法線に採る方法です。通常の線形回帰 (\( z = ax + by + c \) の最小二乗)は 1 つの \( (x, y) \) に 1 つの \( z \) しか対応づけ られず鉛直面を表せないため使いません。構面はほぼ常に鉛直面であり、同じ平面位置に何本も 柱が立つためです。
所属節点が一直線に並ぶ場合は平面が一意に定まらないので、その直線と鉛直軸を含む平面を 採ります。直線自体が鉛直な(1 本の柱に節点が積まれただけの)場合はさらに定まらないため、 X 方向を法線とします。
法線には向きの自由度(\( \pm \))が残り、どちらから見るかで図が左右反転します。軸組図と して読めるよう、画面の右がグローバル +X(構面内になければ +Y) になる側を選びます。 結果として、X 通りの軸組図は画面右が +Y、Y 通りの軸組図は画面右が +X、伏図は画面右が +X・上が +Y になります。画面の上は、鉛直な構面では常にグローバル Z 方向です。
実装参照:平行芯以外の法線を求める主成分分析(全最小二乗)は sepika_core::geom::best_fit_plane_normal(crates/sepika-core/src/geom.rs)が、正対させる視線方向の選択は sepika_app::viewer::frame_view::view_direction(crates/sepika-app/src/viewer/frame_view.rs)が担います。
応力図の張り出し方向
3D では、応力の成分ごとに部材の局所座標の面へ図を張り出します(強軸曲げ \( M_z \)・ 強軸せん断 \( Q_y \)・軸力 \( N \)・ねじり \( M_x \) はせい方向、弱軸曲げ \( M_y \)・ 弱軸せん断 \( Q_z \) は幅方向)。構面を正対で見ると、面外へ張り出す成分は視線方向に潰れて 線になり、何も読めなくなります。
そこで構面の表示では、張り出し方向を材軸に直交し、かつ構面に含まれる向きへ倒します。 倒した先の向きは「構面の法線 × 材軸」で、符号は元の張り出し方向に合わせます。元の方向が 構面に垂直で符号を決められない場合は正側へ倒します。値と図形は変えず向きだけを回すため、 読み取れる数値は 3D と同じです。どの成分の図かは、成分ごとの固定色と凡例・数値ラベルで 判別します。CMQ 図も同じ規約で倒します。
材軸が構面の法線と平行な部材(構面を貫く部材。伏図の柱がこれにあたります)は、面内に 張り出し方向を採れないため 3D と同じ向きのままです。平面上では点に潰れるため図としては 現れません。
実装参照:sepika_app::viewer::scene::in_plane_offset_dir(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が張り出し方向を「構面の法線 × 材軸」で構面内へ倒し、材軸が法線と平行な部材では元の向きのまま返します。
基準線と目盛り
図単体でどの通りのどの階を見ているか判別できるよう、全体表示の 1 m 方眼の代わりに通り芯と 階の基準線を描きます。方眼と基準線を同時に出すと線が二重になって読みづらいため、構面表示 では基準線だけを描きます。
- 軸組図: 各階の床レベルに水平線を引いて左端に階名を、構面と交差する通りの位置に鉛直線を 引いて下端に通り名を置く。構面自身のグループの通りは平行で交差しないため描かない
- 伏図: 平行芯の各通りを平面上の直線として引き、線の端に通り名を置く
基準線を引く範囲は、構面に属する部材の外接直方体に余白(対角長の 8 %、最小 500 mm)を 加えた範囲です。この範囲から外れる通り・階の基準線は描きません。
実装参照:sepika_app::viewer::frame_view::draw_frame_grid(crates/sepika-app/src/viewer/frame_view.rs)が軸組図・伏図の基準線と通り名・階名を描き、余白は外接直方体の対角長の 8%(最小 500 mm)で決まります。
表示範囲と操作
構面表示では、回転中心と表示倍率をその構面に属する部材だけの外接直方体から決めます。 モデル全体を基準にすると、大きな建物の 1 構面が小さく画面の端へ寄ってしまうためです。 通り・階を切り替えるたびに自動でフィットし直します。
操作は左ドラッグと右ドラッグがどちらも移動(パン)、スクロールとピンチがズームです。 描画領域上では、画面移動後や空白上でもポインタ位置を保ったまま拡大・縮小します。 倍率の限界では画面は移動しません。ピンチでポインタ位置を取得できない場合は、 現在の投影中心を基準に拡大・縮小します。回転させると 正対が崩れ、構面内に描く基準線も傾いてしまうため、構面表示では回転できません。同じ理由で ViewCube も表示しません。
ホバーやクリックで選べるのは、その構面に描かれている部材・節点だけです。構面の外にある 部材は、画面上ではカーソルの近くに重なって見えても選べません。見えていない部材の情報が 出ると、いま見ている構面の情報と取り違えるためです。
通りの前後送り(◀ ▶)で、X1 から順に構面を送って確認できます。送りの順序は、通りをグループ ごとに並べたあとに階を並べた順です。
所属する部材が 1 本もない通り(ST-Bridge から取り込んだ、節点を持たない通りなど)を選ぶと 図は空になります。モデルや表示の不具合と紛れないよう、その旨を画面中央に示します。
実装参照:sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が構面に属する部材だけの外接直方体 frame_bbox からのフィット・表示対象の絞り込み・空の構面の案内を行い、回転の禁止は sepika_app::viewer::camera::CameraState::apply_pointer_input(crates/sepika-app/src/viewer/camera.rs)が allow_rotate で担います。
質点系の 3D 表示
質点系解析の結果を、3D ビューア上で球(質点)と線(階間ばね)として表示します。 表示は計算結果を可視化するための処理であり、解析結果そのものには影響しません。
質点系の結果があるとき、表示モードに「質点モード」(固有値のモード形状)と「質点時刻歴」(時刻歴の再生)が加わります。 設定と実行は右バー「質点系」、表とグラフは結果タブ「質点系」です。 ナビゲータの解析結果ツリーで質点系の固有値次数を選ぶと、3D ビューアが質点モードに切り替わります (ナビゲータの解析結果ツリー)。 時刻歴の表は層間・層せん断・塑性率を X / Y / 45° / 最大で出します。 定義は 質点系解析 です。
実装参照:sepika_app::viewer::lumped(crates/sepika-app/src/viewer/lumped.rs)が質点・階間ばねの 3D 描画とモード/時刻歴の変形表示を担い、表示モードへの追加は sepika_app::viewer::controls::view_controls(crates/sepika-app/src/viewer/controls.rs)が行います。
質点の位置
各階の質点は、その層の上端床レベルに置きます。 最下層のばねは建物の基部標高から第 1 質点へつなぎます。
「骨組を重ねる」(既定オン)がオンのときは、平面位置を質量重心にします(2 次元は剛床マスター、なければ原点)。 架構のどこに質点があるかを見るためです。
オフのときは、各階の平面位置の平均へ揃えて鉛直な 1 列にします。 重心のずれと変形の横ずれが重なると、どちらによる変位か分からなくなるためです。 モード形状や時刻歴の変位は、この鉛直な基準位置からの増分として載せます。
実装参照:sepika_app::viewer::lumped::rest_positions(crates/sepika-app/src/viewer/lumped.rs)が各階質点を上端床レベルに置き、「骨組を重ねる」がオフのときは align_xy_to_mean で平面位置を平均へ揃えます。
変形の載せ方
表示倍率 \( s \) は、立体の変形図と同じく、ピーク並進がモデル対角長の 10% になる自動倍率に手動係数を掛けます。 質点時刻歴では全フレームのピークから 1 回だけ定め、振幅の小さい時刻で倍率が発散しないようにします。 質点モードは正規化した形状のため、倍率の数値に物理的な意味はなく、注記は出しません。
- 質点モード: 固有値のモード形状に \( s \) を掛けて載せる。2 次元は加振方向の成分、3 次元は \( (U_x, U_y) \) を並進に、\( \theta_z \) を球の平面内目盛りに使う。変形前の串は破線(6 pt、隙間 4 pt)と高い透過(線のアルファ 90、塗りのアルファ 55)で重ねます。基準位置からの変化を読むためです
- 質点時刻歴: 記録した各時刻の層変位 [mm] に \( s \) を掛けて載せる。再生の速度・スライダーは立体時刻歴と同じ操作
球の画面上の半径は、最大質量の階を 7 pt とし、\( \sqrt{m / m_{\max}} \) でスケールします(下限 4 pt)。 面積が質量に比例するようにするためです。
「骨組を重ねる」(既定オン)をオフにすると、架構・節点・床は描かず、質点とばねだけを表示します。 このとき質点の基準位置は鉛直 1 列です。 質点モード・質点時刻歴では、立体の支点記号(柱脚の矢印など)は出しません。 串の表示に関係ないためです。立体の表示では「表示設定」内の「支点」で切り替えます。
実装参照:sepika_app::viewer::lumped::display_scale(crates/sepika-app/src/viewer/lumped.rs)がピーク並進から自動倍率を算定し、支点記号の非表示は sepika_app::viewer::support::supports_visible(crates/sepika-app/src/viewer/support.rs)が判定します。
ナビゲータの解析結果ツリー
本節では、左ドックのナビゲータから解析結果と振動荷重ケースを切り替える操作を 説明します。 葉ノードをクリックすると結果タブへ移り、選んだ内容に対応する表示が開きます。
実装参照:ツリーの構築は sepika_app::app::nav_results::build_result_tree が、葉ノードのクリック時の画面切替は sepika_app::app::App::apply_result_tree_action(crates/sepika-app/src/app/nav_results.rs)が行います。
解析結果ツリー
結果が存在する解析種別だけがノードとして現れます。 並び順は右ドックの解析パネルと同じです (静的解析 → 固有値解析 → 増分解析 → 時刻歴応答解析 → 質点系)。 いずれの結果もないときは「(未実行)」と表示されます。
解析結果
├── 静的解析
│ ├── (荷重ケース名)
│ ├── EX / EY
│ ├── (組合せ名)
│ └── …
├── 固有値解析
│ ├── 1次 (T=0.52 s)
│ └── …
├── 増分解析
│ ├── X方向
│ └── Y方向
├── 時刻歴応答解析
│ ├── サンプル X (線形)
│ └── …
└── 質点系
├── 固有値
│ └── 1次 (T=… s)
└── 時刻歴
└── サンプル X (線形・2次元)
静的解析
静的解析の結果を順に並べたあと、荷重組合せを同列の葉として続けます。 ユーザー荷重ケースはケース名のみ、地震静的は EX / EY、組合せは組合せ名のみです。 プレフィックスを付けないのは、ナビの階層ですでに「静的解析」と分かっているためです。
実装参照:ユーザー荷重ケースのラベルは sepika_app::app::nav_results::user_static_label、地震静的(EX / EY)のラベルは sepika_app::app::nav_results::seismic_static_label(crates/sepika-app/src/app/nav_results.rs)が作ります。
失敗・除外時の旧結果
線形静的解析で失敗・除外された対象の旧結果は、現行の結果と誤認しないよう結果ツリーから削除します。 地震以外のケースにも適用し、単体・組合せ・一括と同期・バックグラウンド実行で同じ扱いです。
| 実行対象と失敗箇所 | 削除する旧結果 |
|---|---|
| 荷重ケース単体の失敗・除外 | 該当ケースと、そのケースに依存する組合せ(今回未実行の組合せを含む) |
| 組合せだけの失敗・除外 | 該当組合せのみ |
| 共通前処理の失敗 | 単体なら該当ケースと依存組合せ、組合せなら対象組合せのみ、一括なら今回実行対象すべて |
| 標準 EX/EY の Ai 再生成失敗 | 準備計算での検出時点から、失敗方向の単体結果と依存組合せ |
一括解析の部分成功では成功した結果を更新し、全失敗でも該当する旧結果は残しません。 無関係な結果と今回の対象外の結果は保持します。 削除対象を表示していた場合は選択と関連する応力・検定キャッシュを解除し、保持した組合せの添字は選択先が変わらないよう対応し直します。 失敗・除外の理由は画面の案内とログで確認してください。
実装参照:sepika_app::app::actions::linear_static(crates/sepika-app/src/app/actions/linear_static.rs)が失敗・除外対象の結果削除と選択の解除・添字対応を行います。
固有値解析(立体)
各モード次数を N次 (T=… s) 形式で子ノードに並べます。
クリックすると 3D ビューアが、その次数のモード形に切り替わります。
実装参照:sepika_app::app::nav_results::eigen_mode_label(crates/sepika-app/src/app/nav_results.rs)が N次 (T=… s) のラベルを作り、クリック時は 3D ビューアがその次数のモード形に切り替わります。
増分解析
結果がある方向だけを X方向 / Y方向 として並べます。 クリックすると結果タブの増分解析パネルがその方向を表示します。 選択した方向に結果がない場合は、反対方向の結果を代わりに表示しません。
結果を含めてプロジェクトを保存すると、X・Y各方向の結果と表示中の方向を保存します。 再読込では保存した表示方向を復元します。表示方向の指定がない場合は、 結果が片方向だけならその方向、両方向なら解析設定の加力方向を表示します。
実装参照:sepika_app::app::nav_results::pushover_dir_label(crates/sepika-app/src/app/nav_results.rs)が X方向/Y方向のラベルを作り、クリック時は増分解析パネルがその方向を表示します。
時刻歴応答解析
結果がある立体の振動ケース名を、1 ケース 1 葉で並べます。 クリックすると結果タブの時刻歴グラフが、そのケースの結果に切り替わります。
実装参照:sepika_app::app::nav_results::vibration_case_label(crates/sepika-app/src/app/nav_results.rs)がケース名のラベルを作り、クリック時は時刻歴グラフがそのケースの結果に切り替わります。
質点系
2 つの子グループを持ちます。
- 固有値: 表示中の質点系モデルの各次数。ラベルは立体固有値と同じ
N次 (T=… s)形式 - 時刻歴: 結果がある質点系の振動ケース名
固有値の次数をクリックすると、3D ビューアが 質点モード に切り替わり、選んだ次数の モード形を球とばねで表示します。 表とグラフの「質点系」パネルではなく 3D 側を開くのは、モード形を架構と重ねて見るためです。 表示の根拠は 質点系の 3D 表示 を参照してください。
時刻歴のケースをクリックすると、結果タブの質点系パネルがそのケースの時刻歴を表示します。
実装参照:sepika_app::app::nav_results::lumped_vibration_case_label(crates/sepika-app/src/app/nav_results.rs)が質点系時刻歴のラベルを作り、固有値のクリック時は sepika_app::app::App::select_lumped_eigen_mode(crates/sepika-app/src/app/actions/lumped_mass.rs)が質点モードへ切り替えます。
振動荷重ケース
荷重ケース(静的)の直後、部材一覧の前に 振動荷重ケース セクションがあります。 静的な荷重ケースとは別系統です。 節点荷重や部材荷重を載せる入れ物ではなく、時刻歴を実行したときの波形・加振方向・ 線形/非線形(質点系では次元も)を表します。
解析が成功し、開始時の入力と対象に結果を適用できたときだけ登録されます。 未実行の空ケースは作りません。 プロジェクトへ保存するときは、解析結果が最新のときだけ振動荷重ケースも残します。 モデル編集後に未再実行のまま保存して開き直すと、ケースは「(なし)」に戻ります。 編集後のモデルで解析に成功した場合は、生成時の識別を確認できる旧モデルの時刻歴も履歴として保存します。 履歴を表示できても、現モデルに一致しない結果を耐力等の採用値としては使えません。
振動荷重ケース
├── 立体時刻歴
│ └── サンプル X (線形)
└── 質点系
└── サンプル X (線形・2次元)
空のときは「(なし)」と表示されます。
実装参照:sepika_app::app::App::nav_vibration_cases(crates/sepika-app/src/app/nav_vibration.rs)が立体時刻歴・質点系のケースをツリー表示し、保存時は sepika_app::app::App::save_project_to_opts(crates/sepika-app/src/app/actions/io.rs)が解析結果が最新でない場合に振動荷重ケースを保存から外します。
ケース名
立体時刻歴: {波形名} {X|Y|X+Y} ({線形|非線形})
- 例:
サンプル X (線形)、elcentro Y (非線形) - サンプル波の波形名は
サンプルです。ライブラリ波・直接開いた CSV は実行に用いたファイル名です
質点系: {波形名} {X|Y} ({線形|非線形}・{2次元|3次元})
- 例:
サンプル X (線形・2次元)
同じ実入力・同じ計算条件を再実行すると、同じケース ID の結果を置き換えます。 名前だけでは同じケースと判断しません。同名でも加速度列・時間刻み・倍率などが異なれば別ケースです。 同じ波形・設定でも、材料強度などの計算モデルが異なれば別ケースです。 立体時刻歴は解析に用いる波形、質点系は方向の選択・変換後に解析へ渡す加速度列と時間刻みを識別します。 減衰・線形/非線形など、解析に使う設定も対応付けます。 質点系は、剛性・復元力の生成に必要な静的・増分解析の生成条件も区別します。
確認待ちから完了まで、波形・生成時の設定・入力元名の対応を保持します。 確認待ち中に計算設定を変えた場合は、その波形での起動を拒否し、生成・読込のやり直しを案内します。 波形ライブラリの表示選択を変えても、結果は実行した入力に所属し、変更後の選択先を上書きしません。 実行中のモデル・計算設定変更や、開始時に固定した既存ケースの消失で結果を採用できない場合は、結果を破棄して理由を表示します。 拒否・計算失敗・確認待ちの取消・通信路異常では、今回の成功ケースや結果表示を作らず、既存の別結果と検定の生成入力を保持します。 静的解析・固有値・増分解析の結果は、時刻歴の再実行では消えません。
実装参照:sepika_core::model::{spatial_vibration_case_name, lumped_vibration_case_name}(crates/sepika-core/src/model/vibration.rs)が表示名を組み立て、入力識別によるケースの対応付けは sepika_core::model::Model::{upsert_vibration_case, upsert_lumped_vibration_case}(crates/sepika-core/src/model/vibration.rs)が行います。
クリック時の動作
| 葉ノード | 結果タブの表示 |
|---|---|
| 静的ケース / 組合せ | 3D/応力図(空間表示) |
| 固有値モード(立体) | 3D/応力図の N 次モード形 |
| 増分解析(X/Y) | 増分解析パネル |
| 時刻歴応答(ケース名) | 時刻歴グラフ(該当ケースの結果) |
| 質点系・固有値 | 3D/応力図の質点モード(N 次) |
| 質点系・時刻歴 | 質点系パネル(時刻歴再生) |
振動荷重ケース の葉をクリックすると、インスペクタに設定(波形・方向・線形/非線形、 質点系なら次元)が読み取り専用で表示されます。 結果がある場合のみ結果タブへ切り替わり、表示がそのケースの結果になります。
結果タブ上部の「表示対象」ドロップダウンも残っており、静的ケース/荷重組合せの 切り替えに使えます。
実装参照:sepika_app::app::App::apply_result_tree_action(crates/sepika-app/src/app/nav_results.rs)が葉ノードごとの結果タブ表示を切り替え、振動荷重ケースの葉は sepika_app::app::App::{focus_spatial_vibration_case, focus_lumped_vibration_case}(crates/sepika-app/src/app/vibration.rs)がインスペクタの表示対象にします。
床板・壁版の表示
本節では、3D ビューアが床板と壁版をどのような書式で描くかを紹介します。
床板と壁版は入力であって解析要素そのものではないため、実部材と一目で区別できる書式で描きます。 壁版のうち条件を満たすものは壁エレメントになりますが、床板は常に荷重を配るための版です。
実装参照:床板・要素にならない壁版の書式は sepika_app::viewer::scene(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が、壁エレメントの面は sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が描きます。
色が種別を、線種が解析要素かどうかを表す
書式は 2 つの軸で決まります。色は床板が暖色、壁版と壁エレメントが青で、線種は解析要素が実線、 解析要素でない入力が破線です。 つまり暖色の破線は床板、青の破線は解析要素にならない壁版、青の実線は壁エレメントを表します。
色のほうを種別に割り当てているのは、3D の斜め視点では面の向きが読み取りにくく、水平な床と 鉛直な壁を同じ色で描くと見分けが付かなくなるためです。
破線は 6 pt・隙間 4 pt、塗りは半透明(アルファ 28)で、輪郭のアルファは 220 です。 壁エレメントの塗り(アルファ 50)より薄くしてあるため、要素になる壁版とならない壁版が隣り 合って描かれても、荷重を配るだけの版が手前に出て架構を隠すことはありません。
実装参照:sepika_app::viewer::scene(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が破線(6 pt・隙間 4 pt)と半透明塗り(アルファ 28、輪郭 220)で描き、壁エレメントの面は sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が実線・アルファ 50 で描きます。
床板の塗りと入力形状の確認
床板は入力モデルの XY 平面上の境界で形を判定します。単純な凸形・凹形と、 取付き線の片端だけ張り出し量が 0 の三角形を塗ります。自己交差、重複点、 折り返す辺、面積が 0 または縮退した境界は実配置を解決できないため描画しません。 基準階・偏心・FL・実厚が未入力または不正な床板も描画せず、床板一覧の鉛直配置欄に項目と理由を表示します。 境界を修復して有効な床板へ読み替えることはありません。
形の判定は視点回転や変形表示によって変わりません。変形表示では、入力形状で決めた 三角形の頂点対応を保って表示位置へ載せます。変形後の取付き線が XY 平面で完全に 潰れるなど、表示境界を生成できない場合は描けません。非有限座標や画面への投影で 非有限になる点につながる輪郭辺は省略します。支持点の表示変位自体が非有限の場合は床板全体を描画しません。
塗りは支持先の成立や荷重計算の可否を保証しません。支持先が欠落していても形が有効なら 塗りますが、計算時の入力検査はそのまま適用されます。表示用の三角形を荷重分配へ 流用することはなく、表示によって入力床板・保存内容・解析結果が変わることもありません。
実装参照:sepika_app::viewer::scene::draw_slabs(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が入力幾何と表示位置を分けて描き、sepika_core::geom::polygon::triangulate_simple(crates/sepika-core/src/geom/polygon/simple.rs)が単純性検査と頂点インデックスによる三角形化を担います。
壁エレメントにならない壁版もすべて描く
壁版は入力なので、解析要素になるか否かにかかわらず描きます。 壁エレメントが生成されるのは、壁領域全体を覆う 4 節点で、かつ断面が割り当たっている壁版だけ ですが(壁エレメントモデル)、 それ以外の壁版も自重を配り、多くは周辺部材へ剛性算入されるため、入力したものが画面に出ないと 確認のしようがありません。
具体的には、次の壁版が破線で描かれます。
- 間柱で分割された壁版
- 壁領域の境界が 5 節点以上で、壁エレメントの定式化に載らない壁版
- 断面がまだ割り当たっていない壁版
- 取り付く壁版(腰壁・垂れ壁・パラペット・自立壁)
囲まれた壁版の境界は壁版割当領域(柱・梁・間柱から準備計算が導出)が持ちます。 割当領域の境界が 4 節点でない囲まれた壁版は、壁エレメントにも周辺部材への剛性算入にも 載らず、剛性算入なしの壁版として自重・仕上げ荷重・開口部重量を境界辺へ配ります。間柱で分割された壁版は 壁エレメントにしませんが、フレーム内雑壁として周辺部材の剛性へ算入されることがあります。
この「剛性算入なしの壁版」とする扱いは、壁の剛性と、壁が負担するはずの面内せん断を 周辺架構へ伝える経路を落とすため、剛性と応力を過小評価し得る危険側の近似です。 壁エレメントにならない壁版が意図したものか、剛性算入の対象から漏れていないかを 確認してください。
断面が未割当の壁版も描くのは、壁版タブの追加フォームでも 3D ビューアの壁作成モードでも断面は 後から選ぶ導線になっており、壁版を作った直後は必ず断面が未割当だからです。 ここで描かないでいると、壁を作ったのに画面に何も現れず、作成に失敗したように見えてしまいます。
なお、取付き先が点の取り付く壁版だけは描けません。 壁の取付き先として点は使わないため、境界の多角形を組み立てられないからです (壁の断面と自重)。
実装参照:sepika_app::viewer::scene::draw_wall_plates(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が sepika_core::model::Model::wall_plate_becomes_element でない壁版を描き、自己交差する取り付く壁版は plate_fill_is_valid が false となって輪郭のみになります。
取り付く壁版の立ち上がり高さが両端で符号反転している場合は、輪郭の破線だけを描いて内部を 塗りません。 境界の 4 点が自己交差する蝶ネクタイ形になり、塗りが輪郭からはみ出すためです。 この形は自重の算定でも扱えないので(壁の断面と自重)、 塗られていない壁版を見つけたら立ち上がり高さの符号を確認してください。
割当領域は状態別の色で描き、クリックで割り当てる
左パネル「作成」の「床板割当モード」「壁版割当モード」を ON にすると、3D ビューに床板割当領域・ 壁版割当領域を多角形で描きます。色は状態を表します。
- 未設定=赤(版が無く、荷重・剛性を過小評価し得る)
- 版なし=灰(利用者が明示的に版を置かないと決めた状態)
- 版あり=緑
クリック位置が最も手前の領域を選び(奥行きが重なるときはカメラ空間の深度で手前を優先)、 未設定・版なしならその場で版の仕様を入力して割り当てる画面を、版ありなら既存版の一覧 (編集画面)を開きます。版を二重に作ることはありません。マウスを重ねた領域は輪郭を太くして 強調します。
未設定の割当領域が残っている間は、結果画面の上部にも件数と対象 ID(床板・壁版別)を常時 表示します。解析前に示す確認ダイアログについては 準備計算を参照してください。
実装参照:sepika_app::viewer::scene::draw_assignment_regions(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が状態別の色で描き、sepika_app::viewer::pick::pick_assignment_region(crates/sepika-app/src/viewer/pick.rs)が投影と多角形内包判定・カメラ深度で領域を選びます。クリック時の割当画面は sepika_app::app::App::region_assign_window(crates/sepika-app/src/app/panels/draw_tools.rs)、結果画面の常時表示は sepika_app::app::App::unset_regions_banner(crates/sepika-app/src/app/panels/results.rs)です。
配置モードでは作業範囲と端部を強調する
左パネル「作成」の「小梁配置モード」「間柱配置モード」を ON にすると、3D ビューに親領域 (小梁は床領域、間柱は壁領域)を強調表示します。選択中の作業範囲は濃い塗りと太い輪郭で、 未選択の領域は淡い塗りで描きます。1 点目に選んだ支持部材アンカーは丸印で示します。 親領域の中へ小梁・間柱を配置すると、床板・壁版割当領域が再構築され、境界が変わった領域は 未設定(赤)として現れます。操作の流れは 立体グリッドとスナップ を参照してください。
実装参照:sepika_app::viewer::scene::draw_work_scope・draw_anchor_marker(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が描き、sepika_app::viewer::pick::{pick_parent_region, pick_support_anchor}(crates/sepika-app/src/viewer/pick.rs)が選びます。
変形図では変形後の位置へ載せる
変形図・モード形・時刻歴では、床板も壁版も変形後の節点座標から多角形を組み立てて描きます。 詳しくは床・二次部材の変形追従を参照してください。
モード形では、囲まれた床板・壁版と取り付く床板・壁版の未変形位置もゴーストで示します。 ゴーストの輪郭は破線・アルファ 90、塗りはアルファ 55 です。床板は暖色、壁版の塗りは青で、 壁版の輪郭は架構ゴーストと同じ紫です。倍率を変えても未変形位置は変わりません。 壁エレメントになる壁版は壁エレメントのゴーストとして一度だけ描き、倍率が 0 のときは ゴーストを省きます。モードの変位がないときもゴーストを描きません。 床板の無効幾何と、取り付く壁版の立ち上がり高さの符号反転に対する塗りの制限は、 ゴーストにも同じように適用します。
実装参照:sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が節点の表示用 3D 座標(変形後)を作り、sepika_app::viewer::scene::{draw_slabs, draw_wall_plates, draw_mode_rest_ghost}(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が変形後の版とモード形の変形前ゴーストを描きます。
表示の切り替え
床板・小梁・間柱・壁版の表示は、主操作行の「床壁・二次部材」でまとめて切り替えます。 幅が足りないときは「表示設定」内へ移ります。 主架構だけを見たいときに、荷重を配るための入力を一度に隠せるようにするためです。 トグルと連動して非表示になる解析対象外の節点については、同じく 床・二次部材の変形追従を参照してください。
構面表示中は、囲まれた壁版の境界節点がすべてその構面にあるときだけ描きます。 境界の 1 点でも構面の外にあると、その頂点だけが構面から離れた位置へ投影され、多角形が構面から 飛び出して構面図として読めなくなるためです。 取り付く壁版のほうは、取付き先の節点が構面上にあれば描きます。
実装参照:sepika_app::viewer::controls::view_controls(crates/sepika-app/src/viewer/controls.rs)の「床壁・二次部材」トグルを sepika_app::viewer::viewer_panel(crates/sepika-app/src/viewer/mod.rs)が描画可否に使い、構面表示中の壁版の可否は wall_plate_visible_on_frame(crates/sepika-app/src/viewer/scene.rs)が判定します。
モデル化図では分類ごとの色で描く
モデル化図(モデル化の表示)だけは、本節の書式ではなく解析モデル 分類ごとの色で壁版を描きます。 壁エレメントにならない壁版は、周辺部材へ剛性算入される「フレーム内雑壁(周辺部材へ剛性算入)」と、 算入対象外の「剛性算入なしの壁版」に描き分けます。分類は剛性算入の有無を表し、荷重の有無とは別です。
実装参照:sepika_app::viewer::modeling::draw_wall_plates_modeling(crates/sepika-app/src/viewer/modeling.rs)が要素にならない壁版を、sepika_element::wall::misc_wall::misc_stiffness_wall_plates(crates/sepika-element/src/wall/misc_wall.rs)が返す剛性算入の有無で分類して描き分けます。
モデル入出力(ファイル形式)
SEPIKA は構造モデルを 2 つのファイル形式で入出力します。
| 形式 | 拡張子 | 用途 | 往復精度 |
|---|---|---|---|
| OVIKA(SEPIKA Project File) | .ovika | SEPIKA ネイティブの保存形式。モデルを欠損なく保存・読込する | 完全一致 |
| ST-Bridge | .stb / .xml | 他社の一貫計算プログラムや BIM ツールとのモデル受け渡し | サブセットのみ意味的一致 |
いずれも GUI アプリ(sepika-app)のファイルメニューから利用でき、実装は sepika-io クレートにあります。日常的な保存・読込は .ovika、他ツール連携は .stb と使い分けます。
実装参照:.ovika は sepika_io::ovika(save_ovika / load_ovika、crates/sepika-io/src/ovika.rs)、ST-Bridge は sepika_io::stbridge(export_stbridge / import_stbridge)が入出力を担います。
この章の内容
MCP サーバでのモデル入力
MCP サーバのモデル入力には制約があります。詳細は MCP の制約・注意点を参照してください。
OVIKA — SEPIKA Project File
OVI(卵)とIKAを組み合わせた名前です。
SEPIKAの構造モデル、解析条件、解析結果などを、一つの卵のようにまとめて保存します。
OVIKA(.ovika)は SEPIKA ネイティブの保存形式です。入力モデルを格納し、保存・読込で入力を保持します(ST-Bridge のようなサブセット制約はありません)。古い自動生成荷重と計算成果の保存条件は下記を参照してください。名称は ZIP という実装技術に依存しません。
実装参照:sepika_io::ovika::{save_ovika, load_ovika}(crates/sepika-io/src/ovika.rs)が保存・読込します。
小梁・間柱への CFT 割当は、断面用途が柱でも保存・読込時に拒否します。領域内・所属未割当のどちらも対象です。保存が拒否された場合は既存ファイルを変更せず、読込が拒否された場合は現在のモデル・選択・Undo 履歴・計算成果を保持します。入力を自動置換・削除して受け入れることはありません。対応範囲は断面用途を参照してください。
主架構線材 Beam・Fiber・MultiSpring・Brace は、保存・読込で異なる2つの NodeId を明示検査します。断面未割当の床境界線も対象です。0・1・3節点以上や同一IDの二重指定は、ElemId・kind・実節点数・期待2・入力NodeId列を含むエラーです。不正保存は既存ファイルを上書きせず、不正読込は現在のモデル・Undo履歴・結果を置換しません。自動分割や先頭2節点による救済はしません。
単一リップ溝形は、有限正の H/B/C/t [mm]、t < C < H/2、t < B/2 を満たさない場合、入出力時に断面ID・符号・寸法と原因を表示して拒否します。 上下リップの接触・重複、ウェブとリップの接触・重複、非有限の派生性能も対象です。 自動C切詰め・微小隙間補完・閉断面Jへの読み替え・0質量化は行いません。 寸法と総断面性能を参照してください。
未完成の入力と参照の整合性
断面・材料の未割当や主架構断面の用途未設定だけを理由に、保存を拒否することはありません。 入力途中の状態をそのまま保存でき、未設定を既定値で補いません。ただし、上記の断面用途・形状等の制約は入力途中でも適用します。
梁を短くした後など、準備計算が古く、自動生成した部材荷重の位置・区間が現在の材長に収まらない場合も、通常の「保存」で編集済み入力を保存できます。 この場合は、自動生成した節点荷重・部材荷重と計算成果をファイルに含めません。手入力荷重・荷重ケース・組合せ・生成条件は保持します。 保存のために準備計算を実行する必要はありません。開き直した後、準備計算を実行して自動荷重を再生成してください。 保存操作は編集中のモデルや Undo/Redo 履歴を変更しません。有効な自動荷重や、入力が一致する直接検定だけを保存する従来の条件は維持します。 手入力した固定距離荷重の範囲外位置・区間は保存時も拒否し、自動で短縮・削除しません。
未割当と、割り当てた参照先が存在しない状態は区別します。節点・部材・断面・材料等の ID と保存位置の不一致や重複、 検査対象の参照先欠落は、対象と理由を示して保存・読込を拒否します。通常のモデル編集では ID を管理しますが、 不整合なファイルを読み込む際に ID の付け替え、断面の置換・削除、用途の推定をして受け入れることはありません。 小梁・間柱と版の割当領域は安定した ID を持つため、連番でないことだけでは不整合になりません。
参照の不整合で保存を拒否した場合、既存ファイルと現在のモデル・選択・Undo/Redo 履歴・計算成果を保持します。 読込を拒否した場合も、入力ファイルと現在のモデル・履歴・計算成果を保持します。 ハッシュが正しくても、参照の整合性まで保証されるわけではありません。
階が持つ節点一覧と、節点に設定した所属階も、参照先が実在することを検査します。 剛床・剛リンク・多点拘束では代表節点と従属節点(多点拘束の各項の節点を含む)、剛床では所属階を検査します。 節点荷重の載荷先は、手入力・自動生成のどちらも対象です。存在しない節点の荷重を無視して受け入れることはありません。
自動生成した剛床代表節点の記録と、地震用重量の生成記録に明示された節点・階も対象です。 後者には算定重量の対象階、記録した拘束の代表・従属節点と剛床の所属階、代表節点の拘束条件の対象節点を含みます。 自動生成した代表節点は、現在の拘束や階所属から使われていなくても、実在していれば保持できます。
階所属の未設定、空の節点一覧・拘束・荷重、生成記録の未設定や空の一覧だけでは、参照不整合にしません。 生成記録と現在の拘束条件・採用重量が異なる状態や、再生成前の古い記録も、参照先が実在すれば保持できます。 保存時の参照検査は、所属の相互一致、入力の完成度、生成入力・出力の識別の新しさ、記録した値の正しさを認定しません。 解析へ採用する重量の更新は、算定値と採用値の更新で確認します。
保存できることと、GUI の「開く」で受け入れられること、解析できることは別です。 保存・読込のライブラリは入力完成度の検査を一括適用しませんが、GUI の「開く」はモデル全体の検証も行います。 例えば、主架構断面の用途が未設定の入力は保存できても、GUI の「開く」では拒否されます。 解析に必要な入力は、解析前チェックでも確認してください。
部材荷重の作用方向の全成分が有限であれば、ゼロ方向など方向の計算条件を満たさない入力も、方向と手入力荷重を変更せず保存・再読込できます。参照先や位置・区間など、他の入力条件は引き続き適用します。方向の不備は計算時に拒否し、保存や読込による既定方向への置換・荷重削除・自動修復は行いません。
実装参照:参照 ID の検査は sepika_core::model::Model::validate_reference_ids(crates/sepika-core/src/model/aggregate.rs)、アプリの状態変更前の検査は sepika_app::app::App::{load_model, save_project_to_opts, open_project_from}(crates/sepika-app/src/app/actions/io.rs)です。
GUI からの操作
ファイルメニューに以下の項目があります。
| メニュー | 動作 |
|---|---|
| 📄 新規 | 空モデルを開く |
| 🏠 サンプル(門型ラーメン) | 内蔵のサンプルモデルを開く |
| 📂 開く… | .ovika プロジェクトを読み込みます。読込後、モデルは検証(validate)を通ってから差し替わります |
| 💾 保存 | 現在のプロジェクトを上書き保存する(保存先が未設定なら保存先を尋ねる) |
| 💾 名前を付けて保存… | 保存先を指定して .ovika として保存する |
読み込むとそのファイルが現在のプロジェクトの保存先になり、以降の「保存」は同じファイルへ上書きします。
実装参照:ファイルメニューは sepika_app(crates/sepika-app/src/app/mod.rs)が表示し、モデルの差し替えは sepika_app::app::App::load_model、開く・保存は App::{open_project_from, save_project_to_opts}(crates/sepika-app/src/app/actions/io.rs)が担います。
保存結果の計算契約と再実行
現行の解析契約版は65、検定契約版は44です。自立壁の基準剛性方式と代表内柱の指定、斜め壁の壁面内剛性、Rs評価用再解析の条件を含みます。旧解析63以前と依存する検定成果は再利用せず、明示的に再解析・再検定してください。モデル保存スキーマは変更しません。
偏心・断面・用途・材料が異なる二次小梁を 主架構と同一として除外しない条件を含みます。旧解析48以前・旧検定27以前の保存成果は 現在の成果として再利用せず、明示的に再計算してください。
検定契約版44には、RC・SRC梁柱のSD345・SD390・SD490主筋について、長期許容引張・圧縮応力度を数値径28 mm以下/28 mm超で選ぶ条件を含みます。旧検定43以前の保存検定は明示的に再検定してください。現行解析契約の解析結果は保持し、モデル・結果の保存スキーマと解析契約版は変更しません。径の保存値と幾何・面積・数量の算定も変更しません。
検定契約版43には、Ds・Quの採用状態について外力分布・崩壊形・非崩壊部分・壁脚拘束やピロティ等の不足証拠を全件保持し、条件未確認の点を自動・手動とも合否へ採用しない条件を含みます。旧検定42以前の成果は失効し、再保存やランク指定で解除しません。解析契約64の応力結果は保持します。適用条件と現在の制約は保有水平耐力を参照してください。
検定契約版42には、層崩壊の一律群補正を適用せず、RC/Sの破壊形式・非ヒンジ柱・接合部・柱脚等の条件不足を自動・手動とも理由付きで保留する条件を含みます。旧検定41以前は現行成果として利用せず、再検定してください。解析契約64の解析結果は保持します。表示切替・再保存・部材ランクの手動指定ではDsの保留を解除しません。モデル保存スキーマは変更しません。
検定契約版41には、通常鋼主架構の圧縮柱200・柱以外250の有効細長比上限の不適合を確認し、主軸と有効長の対応が未確認の圧縮山形鋼を理由付き未検定とする条件を含みます。未検定位置を含む部材は他位置の適合値だけで着色せず、確定した構造規定NGは保持します。旧検定40以前の検定結果は明示的に再検定してください。現行解析64の応力は保持し、表示切替や再保存だけでは旧検定を再利用しません。詳細は鋼構造の断面検定を参照してください。
検定契約版40には、S/CFT静的仕口パネルの軸力比を正の有限な実断面積で求め、断面積・基準軸耐力・軸力比を算定できない場合は理由付き未算定とする条件を含みます。旧検定39以前の保存検定は明示的な再検定が必要です。現行契約の解析結果は保持し、表示切替や再保存では旧検定を利用可能に戻しません。モデル・結果の保存スキーマと解析契約版は変更しません。
検定契約版34には、CFT充填コンクリートのFcが24 N/mm²未満の場合に理由付き検定不能とする条件を含みます。旧検定33以前の保存検定は再利用せず、明示的に再検定してください。現行契約の解析結果は保持します。
解析契約版57には、対角合同平衡化後の推定逆条件数による正定値求解の数値条件の確認を含みます。解析契約版56以前の保存解析と、それに依存する検定は再利用せず、明示的に再解析してください。モデル保存スキーマは変更しません。数値診断の意味と限界は線形代数ソルバを参照してください。
解析契約版56と検定契約版30には、梁中心線上の実上端と水平投影幅から求める床板下面までの嵩上げを、床板材料別の設計重量と物理質量へ反映する条件を含みます。旧解析55以前の保存解析とそれに依存する検定は再利用せず、明示的に再解析してください。解析成果を伴わない直接小梁検定も、旧検定29以前は明示的に再検定してください。モデル保存スキーマは変更しません。
解析契約版55には、梁の鉛直偏心接続による剛性・内力・部材荷重・既存質量・反力の写像と、拘束自由度の質量寄与を保持する地動入力を含みます。旧解析54以前の保存解析とそれに依存する検定は再利用せず、現行契約で明示的に再解析してください。
検定契約版29には、雑壁の剛心・偏心率算定と必要入力の不足を拒否する条件を含みます。旧検定28以前の保存検定は現行契約で再検定してください。形状係数Fesの適用条件に従います。
解析契約版49には、増分性能曲線の全支持抵抗を物理材端力・固定支持反力・支持ばねから回復し、 部材内部の荷重と拘束点反力を層切断面の元荷重照合へ含める条件を含みます。 旧解析48以前の保存解析とそれに依存する検定は、現行契約で明示的に再解析してください。
解析契約版48には、全固定通常材の部材力回収、通常Fiber/MSの材料・端部接続・記録への現在部材荷重の反映、 縮約右辺がゼロでも長期部材荷重を保持する非線形時刻歴の条件を含みます。 解析契約版47以前の保存解析とそれに依存する検定は現行成果として利用できず、明示的な再解析が必要です。 モデル・結果の保存スキーマと検定契約版は変更しません。
解析契約版41には、仕口パネルの軸力比を実材長と方向別の実基準軸耐力から評価する条件を含みます。解析契約版40以前の保存解析と、それに依存する検定は現行成果として利用できません。入力を確認して明示的に再解析してください。モデル保存スキーマと検定契約版26は変更しません。算定条件は仕口パネル要素を参照してください。
解析契約版40と検定契約版26には、共通局所座標で補完なしに得た単位直交基底を支持面にも用い、有限投影の丸めでフェース・小梁自重作用区間・需要を変えない条件を含みます。旧解析39と旧検定25の成果は入力が同じでも現行成果として利用できません。解析成果は明示的に再解析し、解析成果を伴わない直接小梁検定も明示的に再検定してください。支持面の適用条件は座標変換を参照してください。
解析契約版38には、共通局所座標の断面参照方向を検査し、非有限または単位直交基底を解決できない入力を対象部材と理由付きで拒否する条件を含みます。解析契約版37以前の保存解析と、それに依存する検定は現行成果として利用できません。入力を確認して明示的に再解析してください。解析成果を伴わない直接小梁検定でも、検定契約版23以前の保存成果は現行成果として利用できません。入力を確認して明示的に再検定してください。モデル保存スキーマは変更しません。入力条件は座標変換を参照してください。
S/CFT柱梁接合部の検定は、柱の強軸・弱軸への符号付き需要集約、方向別抵抗板と実板厚によるF選択、集約後のフランジ高さの適用条件を含みます。検定契約版21以前の成果は再検定が必要です。表示切替や再保存で旧検定を新版へ認証せず、明示的に再検定してください。
単独無開口RC壁のDs判定では、側柱心間距離による平均せん断応力度と両側柱寸法による表選択を含む検定契約を要求します。採用式と適用範囲を参照してください。
通常鋼部材・鋼小梁・S/CFT柱梁接合部の材料・実板厚によるF選択と、必要入力不備時の検定全体停止を検定契約版23に含みます。検定契約版22以前の保存成果は明示的な再検定が必要です。表示切替や再保存で旧検定成果を有効に戻しません。
保存結果は、生成時の解析契約版と検定契約版を独立して持ちます。現行の解析契約版は 65、検定契約版は 44 です。対角合同平衡化後の推定逆条件数で正定値求解の数値条件を確認し、作業精度で信頼性を確認できない結果を公開しない契約を含みます。Fiber/MSの元端部解放と材料釣合いの収束判定を整合させた契約を含みます。旧解析50以前の保存成果は再解析が必要です。全固定の非線形時刻歴でも長期部材応力を記録し、不正な部材記録は履歴確定前に拒否する契約と、免震支承の試行・確定状態を保持する復元契約を含みます。SM520系列の75 mm超100 mm以下のF=325と100 mm超の非補完・拒否契約を含みます。旧335成果と旧範囲外成功成果は表示切替や再保存では利用可能に戻らず、現行契約での再計算が必要です。単一リップ溝形の不成立幾何を解析前に拒否する契約を含みます。標準配筋の適用・未対応ゲート、共通断面質量の採用契約、矩形SRCの内蔵Hとコンクリートの非重複材料領域の契約を満たす版の成果だけを利用します。静的解析の長期軸力無効化・引張専用の採用契約も含みます。履歴ばねの確定点再評価による履歴保持と初期接線の契約も含みます。通常静解析は規模によらず元の f64 剛性を疎 Cholesky で分解する契約を含みます。鋼材の自動強度割増は標準物性・F値と同じ対応済み名称を認識する契約を含みます。囲まれた床・壁の主架構支持は Beam・Fiber・MultiSpring の解析表現に依存しない契約を含みます。正常区間の符号付き単純梁反力は合力と一次モーメントを保存する契約を含みます。囲まれた床では閉合・直交・面積で矩形の適用を判断し、非直交床は真面積による多角形分配を用い、矩形の一方向版検定の結果を生成しない契約を含みます。固定距離の部材荷重は有限な支間内の位置・正の分布区間だけを解析へ渡す契約を含みます。主架構の Beam・Fiber・MultiSpring・Brace は異なる2節点だけを受け付ける契約を含みます。RC壁の明示方向配筋・材料役割と不足拒否の契約を含みます。時刻歴の実入力・実効設定とケースへの所属を識別する契約を含みます。RC梁Q0の符号付きlocal Qy端反力を選択重力係数で端別に合成し、合成後に最大絶対値を採る契約を含みます。RC 梁型は大梁・小梁、RC 柱型は柱・間柱に限る専用型です。主架構線材・小梁・間柱の用途不整合を解析前に拒否する契約を含みます。RC・CFT の静的終局需要は圧縮正の設計軸力に統一します。仕口パネルの柱由来の諸元・材料・軸力は物理的な下側優先で同じ参照柱にそろえ、採用側の不備を他の柱や正常な剛パネルで補わない契約を含みます。弾性梁に採用する G は直接入力・導出値とも正の有限値を必要とし、0・負値・非有限値を解析前に拒否する契約を含みます。非零幅の線形分布荷重を微小幅でも保持し、合力・一次モーメントと部分切断の荷重釣合いへ反映する契約を含みます。明示仕口パネルの採用GとG・Veは有限の正値を必要とし、不正値を剛パネルへ補完せず接合部・採用柱と理由を示して拒否する契約を含みます。増分部材応答履歴の記録時に非有限値を認めず、記録不能なら部材・ステップ・理由を示して解析を停止する契約を含みます。弾性梁の入力が有限でも、剛性算定・端部縮約・剛域変換を構成できない場合は対象部材と理由を示して停止する契約を含みます。Fes の必要入力が欠ける場合・不正な場合・算定不能の場合は、Rs=1 や Re=0 へ補完せず、必要保有水平耐力と合否を算定しない契約を含みます。3次元質点系の準備でも共有する剛心・ねじり剛性の集計・除算不能を、正常な座標や剛性へ戻さず拒否する契約を含みます。解析契約版35以前・検定契約版20以前の保存成果は対応する再実行が必要です。 S造の非線形仕口パネルでは、軸力依存の降伏式と履歴ばねの降伏値を一致させ、軸耐力到達・ゼロ耐力・履歴ばねの設定可能域外を理由付きで停止する契約を含みます。解析契約版35以前の成果とそれに依存する検定は利用できず、現行契約で再解析が必要です。モデル保存スキーマと結果スキーマは変更しません。 壁側柱の分類・局所回転解放は壁エレメントモデル、ファイバー・MSの軸・二軸曲げ材料応答は非線形梁要素のモデル化に従います。これらの契約を満たさない旧成果は、現行契約で再実行してください。 取り付く床板の分割境界と、並走小梁への床辺荷重の分配は、同じ主架構支持の Beam・Fiber・MultiSpring を共通に扱います。有効な壁版割当領域のある囲まれた壁版は、主架構だけの壁領域への所属がなくても、境界・版仕様・スリット・自重支持方式・任意辺負担率を保持します。この準備荷重と小梁検定入力の契約により、旧解析24と旧検定16の成果は入力が同じでも利用できません。直接小梁検定も明示的に再実行してください。 鉛直柱が支持する二次小梁の最外外側面・有限柱閉区間・角丸CFT外形と、その面間区間に基づく設計自重/物理質量相当の転送を解析契約に含めます。旧フェース契約の保存成果は、入力が同じでも再解析が必要です。 SRC梁の地震時設計用せん断に必要な同位置のQL参照と、不足・非有限時の位置全体の未検定を検定契約に含めます。検定契約版16以前・欠落・未来版の検定成果は利用できず、現行契約で明示的な再検定が必要です。解析契約版が現行と一致し入力条件も有効な解析成果は、検定版の不一致だけでは失効しません。現行解析からの再検定で現行の検定契約版の成果を生成します。再保存・開き直しで旧検定版を補完せず、モデル保存スキーマと結果スキーマは据え置きます。 終局需要では保存した架構用長期組合せの明示選択と完全な重力参照を必要とします。増分解析は初期重力の terms・係数・載荷有無と生成入力を記録し、終局検定では静的ヒンジ略算と確定総応答を区別する契約を含みます。旧成果や入力識別のない成果は、再保存・表示切替・Undo・Redo によって利用可能には戻りません。詳細は終局検定の統括を参照してください。モデル保存スキーマは 1 のままです。 検定契約版35には、SRC梁・柱の内蔵鉄骨について、対応材種・実板厚による強度確定と、未知名・材料不備を理由付き未算定とする条件を含めます。旧検定34以前は明示的に再検定してください。旧契約のF235補完による検定は再保存で有効化せず、現行解析が有効なら明示的に再検定してください。 計算式、適用条件、解析準備・solver の適用ゲートが変わった場合は対応する版を更新します。 部材荷重の方向条件を全荷重ケースの計算前に検査する契約を含みます。解析契約版 24 以前・欠落・未来版の保存解析と、それに依存する検定は利用できません。方向が正常な入力でも旧成果は再解析を必要とし、方向不備の入力は修正してから再解析します。方向条件の追加ではモデル保存スキーマを変更しません。 解析契約には、時刻歴の N 点入力を N−1 区間として積分し、先頭を初期状態として記録する時間軸も含みます。 旧時間軸の保存結果は、時刻ラベルの補正や再保存では再利用できず、入力波形から再解析が必要です。 骨組の非線形時刻歴では全体未収束の試行状態を確定せず停止する契約を含みます。 解析契約版27以前の保存成果は、未収束ステップ数の表示や再保存で再利用せず、現行契約で再解析してください。 アプリのリリース番号、Git SHA、カメラ・表示ステップ・ハイライト・表示専用通り芯の変更では版を変更しません。
| 保存版 | 利用状態 | 操作 |
|---|---|---|
| 現行版と完全一致 | 生成入力も現在のモデル・計算設定と一致する結果を利用できます | 選択したケース・組合せを確認します |
| 欠落 | 版不明の成果として利用不可 | 対象の解析または検定を再実行します |
| 現行版より小さい | 旧契約の成果として利用不可 | 対象の解析または検定を再実行します |
| 現行版より大きい | 現アプリ未対応の成果として利用不可 | 対応アプリを使用するか、現アプリで再実行します |
解析版が非一致の場合は解析成果と依存する検定成果を除外します。モデル・解析設定は読み込みます。 検定版だけが非一致の場合は現行解析の応力を保持し、部材・接合部・壁・小梁・床板の検定を除外します。 理由には保存版と現行版、必要な再実行を示します。読込時に自動計算はしません。 同版でも、保存時に選択していた静的ケース/組合せの生成入力が不一致または識別欠落の場合は、その応力と依存検定を除外します。 検定自身にも成功完了時の生成入力を記録します。採用した計算モデル、実際の静的ケース/組合せとその既存生成入力、実効荷重期間、RC損傷制御・付着・QD方式が一致する場合だけ検定を利用します。 生成入力が欠落・不一致の検定は、解析が最新でも保存対象から除外します。新しい時刻歴等の解析結果は保存でき、再読込で旧検定を復活させません。保存は生成入力や版を新規認定しません。 直接床板・小梁検定は架構応力源を持たず、解析が未実行でも保存できます。解析が古い場合、この保存には直接検定のみを含め、保持された旧解析を同梱しません。 他の方向・固有値・目的別runはそれぞれの既存入力照合で利用可否を判断します。 立体・質点系の時刻歴は、ケース ID と実入力・実効設定・開始時の計算モデルの識別を結果の生成入力とともに保存します。 現行成果の保存再読込で結果の所属を保持します。同じモデルで異なる時間刻み・倍率等を用いた複数ケースは、 最後に表示したケースの設定に揃えて上書きせず、各実行時の条件に対応する ID と結果を保持します。識別が欠落・不一致の成果は利用できず、 再保存や波形の表示選択変更では補完・再認定しません。波形 CSV のファイル名やハッシュだけを、実入力の識別の代用にはしません。
材料条件などのモデル編集後に現モデルで解析に成功した場合、生成時のモデル・実入力の対応を確認できる旧時刻歴は、別ケースの履歴として保存・再読込できます。 履歴の保持と現モデルへの採用は別に判断します。旧モデルの結果は履歴表示できても現モデルの耐力等へ採用できず、現モデルと生成入力が一致する結果だけを採用できます。 現モデルに利用できる解析成果がなく、旧モデルの時刻歴履歴だけが残る読込は、解析済みの最新状態とは認定しません。 モデル編集後に未再実行で解析全体が古いまま保存する場合は、従来どおり解析結果と振動ケースを同梱しません。
検定版だけが失効した場合は、対象を選び、検定画面の「検定を再実行」を押してください。 応力の版または生成入力が失効した場合は、対象のケース/組合せを再解析してから検定します。 解析の一部だけを再実行しても、旧契約の固有値・増分・時刻歴・目的別採用runは復活しません。同版の旧入力で生成された未再計算の検定も利用不可のままです。 必要な解析と目的別評価点の採用をそれぞれ再実行してください。 表示切替、保存し直し、結果状態の更新だけでは新版へ認証し直しません。 現行条件で生成された「未検定(Skipped)」や参考値の「算定不能(Unavailable)」も正当な現行成果ですが、全適合を意味しません。 新しい床板・小梁の直接設計は架構解析を要求しません。
この版情報の追加では OVIKA コンテナの schema_version は変更しません。 旧ファイルのモデル・設定は読めますが、版不明の保存結果は再実行が必要です。 未知の項目を無視する旧アプリでの結果利用の安全性は保証しません。
MCP の DesignCheck は毎回新しい解析を行い、OVIKA の保存応力を再利用しません。 MCP の Parquet/FsResultStore の result_get は別の保存経路で、この OVIKA の版・入力照合の対象には含みません。
実装参照:版定義は sepika_core::result_contract(crates/sepika-core/src/result_contract.rs)、OVIKA 成果の利用判定は sepika_app::app::result_validity(crates/sepika-app/src/app/result_validity.rs)です。
ファイル構造
.ovika の内部は現在 ZIP コンテナです。manifest.json・model.msgpack は必須エントリ、
残りは任意エントリ(同梱がなければ読込側の該当項目が None になる)です。
| エントリ | 必須 | 内容 |
|---|---|---|
manifest.json | ○ | スキーマ版、単位系、各エントリの SHA-256 ハッシュ |
model.msgpack | ○ | 内部モデル本体(MessagePack でシリアライズ) |
preparation.msgpack | - | 準備計算の結果(モデルに対して最新の場合のみ同梱) |
results.msgpack | - | 解析結果(静的・組合せ・固有値・増分・時刻歴・質点系など。モデルに対して最新の場合のみ同梱) |
analysis_settings.msgpack | - | 解析タブの設定値(立体時刻歴と質点系それぞれの波形パラメータ・減衰、固有値/質点系のモード数など) |
4 種の MessagePack エントリでは、struct をフィールド名付きの map(named MessagePack)として保存します。 入れ子の struct も名前を保持するため、Rust のフィールド宣言順序を変更しても読み込みは順序に依存しません。 任意エントリの直列化はアプリ側が行い、IO 層は内容を解釈しないバイト列として保存・返却します。
内部モデルには節点・部材・断面・材料・荷重・層に加え、断面形状(SectionShape)や部材付帯情報(ハンチ・継手位置)まで含まれ、これらは保存・読込で保持されます。
時刻歴を実行すると振動荷重ケースもモデルへ入りますが、解析結果が最新でない保存では書き出しません。
開き直したときに、結果のない空ケースが残らないようにするためです。
preparation.msgpack・results.msgpack はモデルから再計算できる派生データですが、再計算が
高価なため保存して復元します。解析全体が古い場合は解析を同梱しません。検定は独立した生成入力の一致も要求し、未再計算の旧検定を最新解析と一緒に保存しません。
再読込後は同梱されていない成果を未実行として扱います。
analysis_settings.msgpack はモデルから導出できない独立した設定値(時刻歴の波形パラメータ・
減衰モデル、固有値解析のモード数など)で、解析結果を生成した条件そのものです。モデルの新陳とは
無関係に、保存のたびに現在の設定値を常に同梱します。このエントリを持たないファイルを読み込んだ
場合、解析タブの設定値は変更しません(既定値のまま、または直前の値を保持します)。
質量モデルの方式(mass_method)は例外で、モデル本体(model.msgpack)が持つ値を単一情報源
とします。analysis_settings.msgpack にも同じ項目がありますが、読込後は常にモデル側の値で
上書きします。
なお、時刻歴応答解析の入力波形(CSV読込波)そのものは .ovika に含まれません。波形ライブラリ
(波形ライブラリ)から選んで実行した場合は、analysis_settings.msgpack
にライブラリ内のファイル名と実行時点の内容の SHA-256 を記録し、開き直したときにライブラリから
自動で同じ波形を参照します。立体時刻歴と質点系は別々の選択を持ちます。ファイル選択ダイアログ
(「📂 波形CSVを開いて実行…」)から一回限りで実行した場合は、波形は保存されず再現できません。
実装参照:各エントリの中身の直列化・復元は sepika_app::app::App::{save_project_to_opts, open_project_from}(crates/sepika-app/src/app/actions/io.rs)が担います。
整合性・安全性
- ハッシュ検証: 読込時に各エントリの SHA-256 を
manifest.jsonの記載と照合し、不一致ならエラーにします。必須エントリ(model.msgpack)が manifest に列挙されていない場合も拒否します(未検証のまま読み込ませないためです)。 - 余分なエントリ: 利用対象外のエントリは設定として取り込みません。manifest に列挙されている場合は、同じ SHA-256 検証と展開サイズ上限を適用します。
- スキーマ版チェック: 本ソフトはリリース前で後方互換を持たないため、現行スキーマ版(
1)以外は拒否します。 - 原子的な保存: 一時ファイルへ書き出して
fsyncした後にrenameすることで、電源断でファイルが破損しないようにしています。 - ZIP 爆弾対策: 1 エントリあたりの展開サイズ上限(4 GiB)を超える書庫は拒否します。現在の
.ovikaは単層 zip(deflate)で展開率は理論上約 1032 倍が上限のため、絶対サイズ上限がメモリ保護として機能します。ヘッダの申告サイズは信用せず、実際の展開バイト数でも検査します。 - 保存サイズの確認: 解析結果(時刻歴の詳細記録を含む)の直列化サイズが 512 MB を超える場合、保存時に「時刻歴の詳細記録を保存に含めますか?」の確認を表示します。除外して保存しても、層応答・ピーク値等の集計結果は保存され、詳細記録は再解析で復元できます。
実装参照:ハッシュ検証・スキーマ版チェック・原子的保存・ZIP 爆弾対策は sepika_io::ovika::{load_ovika, save_ovika}(crates/sepika-io/src/ovika.rs)が、保存サイズの確認は sepika_app::app::App::save_project_to_opts(crates/sepika-app/src/app/actions/io.rs)が担います。
壁版の自重支持辺の負担率と間柱の端部負担率は .ovika に保存します。未指定は支持先なしとして扱い、対象壁版の解析前チェックでエラーになります。
増分解析の部材応答には、壁の正負耐力の選択に用いる符号付き面内せん断力 wall_shear_signed [N]を保持します。壁以外はnullです。壁下辺a→bの向きを正とします。スキーマ番号は1です。
スキーマと互換性
モデルには共有数量設定(壁筋の仮定径・定着係数等)と、RC壁の明示横筋比・縦筋比を保存します。
方向比の欠落は欠落のまま復元し、最小筋比から補完しません。現行スキーマで方向比を持たず
psだけを持つ入力も、その方向の鉄筋数量は未算定です。数量設定を変更して保存・再読込すると、
GUI・CSV・MCPは保存値で数量を再集計します。数量設定は解析入力に含めず、積算鉄筋重量を解析質量へ加算しません。
契約は数量積算を参照してください。
manifest.json の schema_version は、モデルと任意エントリを含む永続化スキーマの版です。
現行値は 1 で、読み込み時にはこの値との一致を確認します。
ただし初回リリースまでは、版を 1 に据え置いたまま破壊的変更を行い、開発中に保存したファイルの後方互換は保証しません。
同じ版でも過去のファイルを読み込める保証はなく、旧形式への変換や互換層は提供しません。
named 形式はフィールド順序への依存をなくしますが、フィールド名・型・意味の変更まで自動的に互換にするものではありません。
たとえば #[serde(default)] を持つ追加フィールドは欠落時に補完できますが、その値が計算上も適切かは別に確認する必要があります。
struct の未知フィールドは通常無視されますが、フィールド削除に伴う情報の喪失が許されることを意味しません。
初回リリースは Git タグで判定します。 初回リリース後に永続化スキーマを変更するときは版を上げ、リリース済みファイルからの明示的な migration を実装します。 順序だけの変更は named 表現のスキーマ変更に当たりません。 それ以外の変更は、以下の観点でデータの保存・復元と計算上の意味を確認します。
| 変更 | 確認する事項 |
|---|---|
| フィールド追加 | 欠落を default 等で読めるか、補完値が適切か |
| フィールド削除 | 未知フィールドを無視しても必要な情報が失われないか |
| フィールド名変更 | 旧名から新名への明示的な変換が必要か |
| 型変更 | 値の範囲・単位・表現を保って変換できるか |
| enum variant の追加・削除・意味変更 | 未知 variant や廃止値をどう扱うか、計算の意味が保たれるか |
| 構造の分割・統合 | 対応する値を欠落・重複なく移せるか |
| 任意エントリの変更 | producer 側の具体型の変更と、同梱がない場合の挙動が整合するか |
リリース済みスキーマを移行する場合は、その版の型へ decode してから現行型へ変換します。
現行型への直接 decode を migration の代用にはしません。
現在は版間の変換を行わず、未対応版は MessagePack の decode 前に UnsupportedVersion として拒否します。
実装参照:sepika_io::ovika::CURRENT_SCHEMA_VERSION と load_ovika(crates/sepika-io/src/ovika.rs)が現行版と版一致チェックを定義します。
開発者向け: ライブラリ API(Rust)
Rust コード例(開発者向け)
Model::section と Model::element_section、二次部材の断面用途検査は、添字位置の ID が一致する断面を優先し、
なければ同じ ID を持つ先頭の断面を選びます。未割当・参照先欠落は断面取得で None になります。
この検索規則は不整合なモデルの保存許可を意味せず、保存・読込では参照 ID の検査を別に行います。
#![allow(unused)] fn main() { use sepika_io::ovika::{save_ovika, load_ovika, OvikaExtras}; use std::path::Path; // 保存: 内部モデル+任意エントリ(各バイト列は呼び出し側が事前に // rmp_serde::to_vec_named で直列化したもの。io 層は中身を解釈しない)→ .ovika save_ovika(Path::new("model.ovika"), &model, OvikaExtras { preparation: Some(&preparation_bytes), results: Some(&results_bytes), analysis_settings: Some(&analysis_settings_bytes), })?; // 読込: .ovika → 内部モデル+同梱されていれば各任意エントリ let contents = load_ovika(Path::new("model.ovika"))?; let model = contents.model; }
RC壁の参考骨格は同じ静的case/comboの壁脚共通face内力を使い、初期Quは同じrunの静的一次参照から正負別に固定する契約を含みます。建物共通の荒川min/mean方式と新規既定mean、両consumerと同じrunの採用Quへの方式反映を含みます。採用Quのない旧結果や旧計算契約の結果を補完せず、再計算を要します。
矩形RC梁の左右床板の実厚による曲げ剛性と、未解決・適用範囲外を停止する条件を解析契約に含めます。 解析契約版52以前の保存成果は現行契約で再解析が必要です。モデル入力の保存スキーマは変更しません。
ST-Bridge 形式(.stb / .xml)
ST-Bridge(XML, 2.0 系)で読み込み・書き出しができ、構造計算や BIM のモデルを受け渡すための入出力経路として機能します。
実装参照:sepika_io::stbridge::{import_stbridge_with_report, export_stbridge}(crates/sepika-io/src/stbridge/)が取り込み・書き出しの入口です。
単一リップ溝形は、有限正の H/B/C/t [mm]、t < C < H/2、t < B/2 を満たさない場合、内部編集・書き出し時に断面ID・符号・寸法と原因を表示して拒否します。 上下リップの接触・重複、ウェブとリップの接触・重複、非有限の派生性能も対象です。 自動C切詰め・微小隙間補完・閉断面Jへの読み替え・0質量化は行いません。 寸法と総断面性能を参照してください。正式なリップ溝形タグの取り込みは未対応です。
組立BOXの読み込み
組立BOXは外高さA、外幅B、左右の板厚t1、上下の板厚t2をmmで指定します。 取り込む断面が参照する組立BOXは、部材がまだ割り当てられていない断面も含め、次を検査します。
- A・B・t1・t2がすべて存在し、有限の正値であること。
- 内法高さA−2×t2、内法幅B−2×t1が有限の正値であること。
正常な組立BOXは、同厚・異厚とも左右と上下の板厚を保持した角R=0の鋭角断面として取り込みます。 板厚差が微小でも丸め・平均による置き換えは行いません。CFTの充填鋼管にも同じ条件を適用します。 同じ符号・階・用途でも上下板厚が異なる断面と部材の参照先を区別し、OVIKA保存・再読み込みでも保持します。 どの取込断面からも参照されないライブラリ内だけの定義は、寸法不正だけでは読み込みを止めません。 圧延BOXの条件は別です。
断面積・断面二次モーメント・材料別重量は両板厚で算定します。 異厚のねじり定数・せん断性能とCFT等価剛性は理由付き未算定です。 入力の受理は、これらを必要とする解析・検定の成功を保証しません。 組立BOXの断面諸量を参照してください。
診断には形鋼名、参照断面の識別情報、不足・不正な属性と入力値、停止理由を表示します。 該当部材や断面を除いて読み込み成功にはしません。 失敗した読み込みによって、現在開いているモデル・結果・保存先は置き換わりません。
実装参照:stbridge::import::steel::built_box_shape(crates/sepika-io/src/stbridge/import/steel.rs)とstbridge::import::assemble::build_sections(crates/sepika-io/src/stbridge/import/assemble.rs)が検査と参照断面の診断を実装します。
GUI からの操作
| メニュー | 動作 |
|---|---|
| 📥 ST-Bridge 読込… | .stb(または .xml)ファイルを選び、内部モデルへ取り込みます。取り込んだモデルは検証(validate)を通ってから現在のモデルと差し替わります |
| 📤 ST-Bridge 書出(開発中)… | 標準 ST-Bridge 2.0.2(StbSecColumn_S 等+形鋼ライブラリ)で書き出す。BIM・他ソフト向け |
「ファイル」メニューの書き出しボタン直下には、操作前に次の説明を表示します。
ST-Bridge書き出しは開発中です。一部の形状・属性・断面性能を正しく出力できない場合があります。出力内容は利用先で確認してください。モデルの保存にはOVIKAを使用してください。
- ファイル選択ダイアログの拡張子フィルタは
.stb/.xml。 - ST-Bridge 読込は
.ovikaプロジェクトとは別系統であり、読み込んでもプロジェクトの保存先パスは設定されません(新規モデルとして開く扱い)。保存するとネイティブの.ovikaとして保存されます。 - 書き出しは ST-Bridge 2.0.2 の標準要素を用いる1形式です。全断面・部材の標準適合は未完了で、RC梁の配筋入力不足と一部ブレースの出力には制約があります。受け渡し先での検証を確認し、完全一致の保存にはネイティブの
.ovikaを使います。
実装参照:メニューは sepika_app(crates/sepika-app/src/app/mod.rs)が表示し、取り込みは sepika_app::app::App::import_stbridge_from、書き出しは sepika_app::app::App::export_stbridge_to(crates/sepika-app/src/app/actions/io.rs)が担います。
対応バージョン
- ST-Bridge 2.0 系のみを受け付けます(ルート要素
ST_BRIDGEのversion属性が2.で始まること)。 - 要素の名前空間は
https://www.building-smart.or.jp/dlに限定します。同じURIなら既定名前空間と接頭辞付きの記述を同じものとして扱います。名前空間なし・異なるURI・未宣言の接頭辞は拒否します。属性の接頭辞を外して標準属性へ読み替えることはありません。 - 1.x 系や ST-Bridge でない XML は読み込みエラーになります。
- 読み取る ID 定義・参照は、XML の数値文字列として
0〜4294967295の整数を検査します。負数・小数・範囲外・数値でない値は項目と理由を付けて拒否し、取り込み全体を失敗させます。節点境界列の不正 ID も捨てません。標準節点 ID の書出しなど、個別の正整数条件は別途適用します。 - 柱・大梁・ブレース・小梁・間柱は、端部節点と断面の参照先が実在することを要求します。床・壁も指定された境界節点と断面の参照先が実在しなければ、理由を示して取り込み全体を拒否します。参照先の欠落を部材の省略や断面リンクの解除で処理しません。床・壁の断面参照の省略など、既存の未指定入力の扱いは要素別変換状況を参照してください。
- STBで表現できる情報はすべて適切に出力し、対応表現がない形状等だけを近似する方針です。未割当断面や必須属性の欠落を許容する方針ではありません。主架構部材・ブレース・小梁・間柱に断面未割当がある場合、必須の断面参照を出力できないため書き出し全体を拒否します。診断の部材区分・内部ID・二次部材名を確認し、適切な実在断面を明示的に割り当てて再出力してください。拒否時は出力先を作成せず、既存ファイルも上書きしません。未割当をダミー部材へ変更したり、架空の断面・材料を補ったりはしません。断面が割当済みで形状が未設定の場合は、従来の出力を維持します。
- ファイルの文字コードは、BOM 付き UTF-8・UTF-8・Shift_JIS(Windows-31J)の順に判定します。
実装参照:文字コードは sepika_io::stbridge::read_stbridge_file(crates/sepika-io/src/stbridge/import/mod.rs)が判定し、version 属性の検証は sepika_io::stbridge::import::parser::parse(crates/sepika-io/src/stbridge/import/parser.rs)が行います。
標準入力と保存の範囲
断面系列と数値ID
断面は、採用名前空間・具体的な断面系列・元の数値IDの組で識別します。
例えば StbSecColumn_RC:1、StbSecColumn_S:1、StbSecBeam_RC:1 は別の定義です。
同じ系列の 1 と 01 は同じ数値IDなので、形状・材料・強度が同じでも重複定義として拒否します。
断面の符号・階・形状が一致することは、部材から参照する系列を変更する理由にはなりません。
部材の種類と kind_structure から要求する系列を決めます(系列対応表)。
要求系列に参照先がなく、別系列だけに同じ数値IDがある場合も、取り込み全体を拒否します。
診断には元部材の要素名・ID・kind_structure・要求系列・id_section と理由を示します。
kind_structure の欠落・不正値・未対応の構造種別は区別し、別系列や既定断面へ結びません。
床・壁の断面参照自体の省略は、要素別変換状況に示す未割当の扱いを維持します。
取り込み失敗時は、現在のモデル・Undo履歴・解析結果の世代を変更しません。
断面からの強度指定も同じ入力識別に結びます。別系列に同じIDがあっても、柱のFc30を梁のFc24へ取り違えません。 以下の強度優先順位、配筋、原階と材料参照節点、任意物性の扱いは共通です。 この入力識別はST-Bridge読込用です。ネイティブモデルとOVIKAの断面参照・強度指定は、保存・再読込・内部の再採番後も保持します。 元の外部断面IDをOVIKAへ永続保存する契約ではありません。
ST-Bridge 2.0.2のXSDは具体的断面系列ごとに19個の key を定義していますが、keyref はありません。
XSDへの適合と、部材が正しい断面・強度へ結び付くことは別に確認する必要があります。
本機能は全文XSD検証器ではなく、全形状・全標準要素への対応を意味しません。
出典:公式2.0.2 XSD、
公式仕様説明書の本文64頁§5.2.1補足10、68頁§5.3.1、73頁§5.4.1補足16、75頁§5.5.1、77頁§5.6.1。
原階と強度指定の保持
原階の元 ID/GUID・名称・height・kind・id_dependence・strength_concrete・明示節点列を保存し、 節点の元 ID/GUID も再出力します。内部の連番 ID は交換形式の ID とは別に扱います。 新規の階・構造節点は編集時に既存と衝突しない正整数 ID を保持し、並べ替えや undo/redo で変わりません。 標準節点 ID がまだ無いネイティブモデルでは、最初の成功編集時に既存構造節点の ID も保存します。 初回の削除でも残存節点の標準 ID を保持し、拒否された編集は ID を追加しません。undo は編集前の保存状態へ戻します。 未保存の既存階も、階追加・変更・削除の前に標準 ID を保存するため、中間階を削除しても残存階の標準 ID は変わりません。 原階が未初期化のネイティブモデルでは、節点側と階側の所属指定を合わせた、その時点の標準出力所属を初回階編集でも保持します。 同じ階への重複はまとめ、二つの階への所属指定が競合する場合は両方を保持して多重所属を診断します。 準備計算で推定した解析所属や生成した剛床代表節点を、元の明示所属へ合算しません。
コンクリートの強度指定と省略状態は、部材・断面・原階・共通ごとに保持します。 採用値を元属性へ補完して保存しないため、再出力で省略の優先順位が変わりません。
標準強度の解決と編集
コンクリートのFcは 部材 → 断面 → 指定節点の明示原階 → 共通 の順に採用します。 上位属性が存在しても未知名・空文字・非正値・非有限値なら未解決とし、下位の既知値へ迂回しません。 全指定の欠落も未解決です。原階の参照は次の節点で決まり、近傍階・平均標高・準備計算の解析所属では代用しません。
| 部材 | 材料参照節点 |
|---|---|
| 柱・間柱 | id_node_top |
| 大梁・小梁 | id_node_start |
| 床 | 元 StbNodeIdOrder の第1節点 |
| 壁 | 元 StbNodeIdOrder の最終節点 |
原階に異なるFcが競合する場合、上位の部材・断面で確定していれば材料は解決できます。 材料の採用元と、原階の所属・依存関係の診断は別に確認します。
鉄筋は、各部位の strength_* があればその指定を採用し、省略時だけ対応する D_* と
共通の StbReinforcementStrengthList の D/strength を照合します。
主筋・副主筋・帯筋・あばら筋・腹筋・巾止筋、位置別指定をそれぞれ保持します。
径や強度の欠落をD13・SD345で補完しません。同径の競合と未知名は理由を示して解析を停止します。
位置別の各指定が解けても、現行計算で一つの主筋・せん断補強筋・内蔵鋼材へ縮約できない強度は解析に採用できません。
高強度鉄筋のgrade読取りと、各検定式の適用範囲は別です。
StbCommon の project_name・app_name・app_version、任意の strength_concrete と径別リストを保存します。
共通子要素の出力順は径別リスト、適用条件リストの順です。RC/SRC梁・柱の原配筋と ApplyConditionsList は省略を含めて保存し、役割・位置・適用の対応を参照します。
説明図中の concrete_strength は標準属性 strength_concrete の別名として受け付けません。
準備計算の「STB強度指定と採用元」で、元指定の有無、共通・原階・部材・断面・鉄筋部位の指定と採用結果を確認・編集します。 チェックを外すと元属性を省略し、チェックを入れた空欄は明示された空文字として未解決になります。 通常の材料テーブルの名称変更は表示名の変更であり、保存された標準gradeやFc・Fyを変更しません。 Fc数値の意図的な変更は、その材料を採る元明示指定へ反映します。E・ν・密度の編集では元強度指定・省略を変えません。 断面への明示材料割当は、その断面の強度を変更します。主材料・主筋・せん断補強筋・SRC内蔵鉄骨を別々に指定できます。S断面の主材料は鋼材、RC・SRC・CFT断面の主材料はコンクリートです。鋼材割当を解除した場合は、必須の鋼材強度が未解決になり、旧gradeへ戻りません。上位の部材Fc指定があれば部材の採用値はそのままです。 標準鋼材gradeの編集は、Sの主材料・二次部材の鋼材・SRC内蔵鋼の実採用材料にも反映します。明示材料割当がある場合は、その材料の数値を採用し、標準gradeによる採用と区別します。明示割当だけの操作で別の既定材料を追加しません。 鉄筋や鋼材のFy数値を編集した場合は、その数値を採用し、元の標準gradeとは区別します。標準gradeで編集後の数値を表せない場合はSTB出力を理由付きで拒否します。独自の標準gradeを生成せず、任意物性の保存にはOVIKAを使います。 明示材料の物性を採る結果には「明示材料指定」を表示し、標準gradeからの解決と区別します。 任意の明示鉄筋物性と標準gradeの数値が一致しない場合は、ネイティブ保存と標準書出しを区別し、標準で表せない出力を拒否します。
ST-Bridge強度名の解決とE・ν・密度の既定復元は別の処理です。
認識済みgradeの強度を採用した後、明示物性を持たない材料にSEPIKAの標準材料既定値を与えます。
CFT鋼管も認識済みの標準鋼材名からE・ν・密度を復元します。SN400Bの鋼管密度は7.85 t/m³で、同じ文書内の通常鋼断面の有無には依存しません。主材料は充填コンクリート、鋼管は別の材料として扱います。
ST-Bridgeに存在しない独自材料表は追加しません。任意物性を含む完全保存には .ovika を使います。
長さmm・角度deg・強度N/mm²を保持します。
強度の入出力制限
| 条件 | 読取り・材料供給 | 標準書出し |
|---|---|---|
| 対応部位の強度・径・省略 | 元指定と採用元を保持 | 元属性を再出力。解決値を各部材へ補完しない |
| 床が領域ごとに分割される | 各分割床へ元第1節点からFcを供給 | 元第1節点が分割境界に残る場合は、その節点を先頭にして出力し、原階・共通由来と元Fc省略を保つ。元第1節点が境界にない原階・共通依存の省略は、理由付きで拒否。明示部材・断面Fcで意味を保持できる場合は区別する |
| 同領域へ複数の元床を合算する | 元の強度・採用元が異なる場合は拒否 | 任意の先勝ち値で出力しない |
| 原配筋の位置別入力 | 各部位の元指定・posを保持 | 標準の同じ系列へ出力。位置別解析は理由付きで不可 |
| 断面系列間で同じ数値IDを使う | 具体的な系列ごとに断面と強度を結ぶ。同系列の数値ID重複は拒否 | 元の外部断面IDの保存・出力写像は本読込契約の対象外 |
床の元幾何を再結合して出力する機能はありません。取り付く壁版や配筋全体にも既存の出力制限があります。 材料を対象にしたXMLの適合が、建物全体の標準適合を保証するわけではありません。
出典: buildingSMART Japan「ST-Bridge XML仕様説明書 ver.2.0.2」2022-06-15、§2.4(本文11頁)、 §3.2–3.2.4(本文18–24頁、優先順20頁)、§4.4.1(本文57–58頁)、§6.2.5(補足4頁)。 採用対象の仕様説明書、 公式配布入口。標準属性・子要素順序は2.0.2 XSDによります。
実装参照:sepika_core::model::Model::{resolve_stb_concrete, resolve_stb_rebar, resolve_stb_steel}(crates/sepika-core/src/model/strength.rs)と sepika_io::stbridge::strength_export(crates/sepika-io/src/stbridge/strength_export.rs)が解決と元指定の出力を担います。
読み込みは、ST-Bridge 2.0.2の標準要素・属性のうち、要素別変換状況に示す対応範囲を対象とします。旧独自の材料表 StbMaterial、物性を直接記す StbSecRaw、独自の id_material 系参照は読み取りません。標準にない属性名や異なる階層の属性を、標準入力の代わりに採用しません。
標準の StbExtensions・StbCalData・StbAnaMaterial が存在すること自体を旧形式の判定には使いません。これらの全情報を取り込めるという意味ではありません。標準ルート直下の StbExtensions 内も要素の名前空間を検査しますが、内容をモデルや強度指定として取り込みません。読込時のXSD全文検証や旧形式の専用判定・移行は行いません。
書き出しには現在も StbSecRaw への出力がありますが、その出力を再読込できる保証はありません。書き出しの制限を含む完全なモデル保存にはOVIKAを使用してください。内部の任意断面性能・材料物性・強度指定とその編集、OVIKAの保存・再読込・再採番は、ST-Bridge入力の対応範囲とは別に保持します。
要素ごとの詳細な変換状況(取り込み/書き出し/往復・備考)は、 ST-Bridge 要素別 変換状況一覧を参照してください。
実装参照:取り込みと書き出しは sepika_io::stbridge::{import, export}(crates/sepika-io/src/stbridge/)が担い、床板・壁版の床領域/壁領域への付け直しは sepika_core::{region_rebuild, wall_region_rebuild} が行います。
非対応(対象外)
非対応項目は入出力の対象外です。取り込み時の扱いは、ST-Bridge 要素別変換状況一覧を参照してください。
- 剛域・製作情報などの詳細属性。
- 解析結果・SEPIKA 独自の解析/設計属性。ST-Bridge の対象外で、保持には
.ovikaを使います。
未対応の要素(StbFooting・StbPile など)を含む、取り込み時にデータを欠落させる要素は、取りこぼしを無言で捨てず ImportReport の warnings
(Rust API では report.warnings)として通知します。手動リストにない新要素・ベンダー拡張も、部材グループ・
断面の直属子であれば要素名で通知します。GUI の「ST-Bridge 読込」は警告があれば「⚠️ 取り込み時の注意」として表示します。
実装参照:未対応要素の収集と警告への変換は sepika_io::stbridge::import(crates/sepika-io/src/stbridge/import/{parser.rs, assemble.rs})が担い、sepika_io::stbridge::ImportReport として返ります。
属性の扱いの報告
要素の警告とは別に、属性の単位でも、ファイルに存在したものをどう扱ったかをすべて報告します。
取り込みの報告 ImportReport.attributes に、要素名・属性名ごとの出現件数と、そのうち
取り込んだ件数を持ちます。1 件も取り込まなかった属性は report.dropped_attributes() で取得できます。
属性の未取り込みは warnings には積まず、attributes とログで報告します。
無視リストは持ちません。
節点・原階の GUID と共通のアプリ情報は保存し、それ以外の未対応の guid は「取り込まなかった属性」として現れますが、
どの属性がどう扱われたかを利用者が漏れなく追えることを優先しています。
リストを持たない副次的な利点として、取り込みの実装を増やせば報告も自動的に追随するため、
一覧の更新漏れが起きません。
GUI の「ST-Bridge 読込」では、扱いの全量を下ドックの「ログ」タブへ出します。 読込直後のメッセージには「取り込まなかった属性が N 種類あります」という要約だけを出します。 実ファイルでは属性の種類が数十になり、そのまま並べると読めなくなるためです。
同じ属性でも文脈により扱いが分かれることがあります。 たとえば 1 つの断面に図形要素が複数ある場合、最初の図形だけを採るため 2 つ目以降の寸法属性は 参照しません。 このときログには「N 件中 M 件を取り込み」と出ます。
実装参照:属性の出現・取り込み件数は sepika_io::stbridge::AttrDisposition として集計し(crates/sepika-io/src/stbridge/import/{parser.rs, assemble.rs})、GUI のログ出力は sepika_app::app::App::log_attribute_dispositions(crates/sepika-app/src/app/actions/io.rs)が担います。
支点の自動設定(取り込み時)
ST-Bridge は境界条件(支点)を持たないため、支点が 1 つもないモデルを取り込んだ
ときは、そのままでは解析できません。そこで取り込み時に、最下レベル(Z 最小、
許容差 1 mm)で柱脚が取り付く節点をピン支点(並進 3 自由度を拘束・回転自由)に
自動設定します(柱脚ピンの仮定。基礎の回転拘束を期待しない安全側の既定)。この支点自動設定に限り、柱脚候補を鉛直な 2 節点線材(部材軸の鉛直成分が大きい部材)で判定し、
柱が取り付かず梁だけが取り付く最下レベル節点(地中梁の中間節点など)は支点にしません。
最下レベルに柱脚が特定できない場合に限り、解析可能性を優先して最下レベルの全節点を
ピン支点にフォールバックします。設定した内容は ImportReport の通知(notes)で知らせ、
モデルタブ→境界条件で変更できます。すでに拘束を持つモデルはそのまま尊重し、何もしません。
実装参照:sepika_io::stbridge::import::assemble::auto_assign_supports(crates/sepika-io/src/stbridge/import/assemble.rs)が判定・設定し、通知は sepika_io::stbridge::ImportReport の notes に積みます。
断面用途の取り込み
主架構線材の設計用途は、断面に保持する FrameSectionUse(Girder・Column・Brace)を正とします。
ST-Bridge の StbColumn・StbGirder・StbBrace の部材コンテナから用途を割り当て、部材の角度・鉛直性・断面符号から柱・梁・ブレースを推定しません。
したがって、部材の角度にかかわらず StbGirder は大梁として扱います。
ElementKind は解析定式化、FrameSectionUse は設計用途を表します。主架構の ElementKind::Beam には Girder または Column、
ElementKind::Brace には Brace を割り当てます。不整合または用途不明の断面は、角度で補正せず取り込みをエラーにします。
二次部材は SecondaryMemberKind(小梁 Beam・間柱 Post)を正とし、二次部材から FrameSectionUse は決めません。小梁・間柱が参照する断面は frame_use=None でも構わず、同一断面を主架構と共有する場合を含め、frame_use の値だけを理由に二次部材を拒否しません。
実装参照:ST-Bridge の部材コンテナから用途を解決する処理は sepika_io::stbridge::import::assemble::section_uses(crates/sepika-io/src/stbridge/import/assemble.rs)が担い、要素種別と断面用途の整合性は sepika_core::model::Model::validate(crates/sepika-core/src/model/aggregate.rs)が検証します。
断面の符号と階(取り込み)
ST-Bridgeの部材から断面への参照は、採用名前空間・具体的な断面系列・数値IDで解決します。guid や符号・階は、この参照識別の代わりには使いません。
同じ符号の断面を階ごとに異なる数値IDの定義として持つことができます。
そのため 1 つのファイルに name="C1" の StbSecColumn_S が、floor="1"・floor="2"・floor="3"
と 3 つ並ぶことは正常な状態です。
SEPIKA の断面は符号と階の組で識別するため、この構造を
そのまま取り込めます。
断面の floor 属性は文字列としてそのまま保持し、階(StbStory)への参照としては扱いません。
ST-Bridge の floor は自由文字列で、階への id 参照を持たないためです。
実際、断面の階名が 1・R・PHR で StbStory の名称が 1FL・RFL・PHRFL というように
食い違うファイルや、断面の階名に対応する StbStory が存在しないファイルがあります。
異なる数値IDの断面定義を取り込むとき、符号+階が重複する場合は次のように解決します。
同一系列の同じ数値ID(1 と 01 を含む)の重複は、この統合処理の対象ではなく取り込みエラーです。
- 同一の具体的な断面系列内で、断面性能・断面形状・材料と、強度・配筋の元指定がすべて一致する定義に限り、1 件へ統合する。統合した件数は
ImportReportの通知(notes)で知らせる - 別系列の定義や、上記のいずれかが食い違う定義は、符号へ連番を付けて(
b3→b3#2)別の断面として残す。同名同形状でも、別系列を1件へまとめない。 符号を変えた内容はImportReportの警告で知らせる
材料も一致の判定に含めるのは、材料は断面が持ち、違う材料を割り当てるならそれは 別の断面だからです。材料だけが違う定義を 1 件へまとめると、片方の材料が無言で消えます。
食い違う定義を捨てずに残すのは、利用者が書いた断面定義を無言で消さないためです。 連番を付けた時点で符号+階は一意になるので、モデル側の制約とも矛盾しません。
階を持たない断面定義(floor 属性のない StbSecBeam_S など)も、異なる数値IDで、同一具体系列・同一符号かつ断面性能・形状・材料・強度と配筋の元指定がすべて一致する場合に限り、1 件へ統合されます。
小梁の断面定義が同じ内容で何件も並ぶファイルは実際にあるため、この統合で断面一覧が実態に近づきます。
実装参照:重複の統合・連番付与・材料を含む一致判定は sepika_io::stbridge::import::assemble::build_sections(crates/sepika-io/src/stbridge/import/assemble.rs)が担います。
断面表現(書き出し)
書き出しは ST-Bridge 2.0.2 の標準要素を用いる 1 形式です。全体のスキーマ適合は未完了で、
対応範囲と制限は上記の対応範囲・非対応項目を参照してください。
内部モデルのパラメトリック断面形状(Section.shape)を対応する標準要素+形鋼ライブラリ(StbSecSteel)へ写像します。
断面ごとの書き出し先と、取り込み・書き出し・往復の詳細は、ST-Bridge 要素別 変換状況一覧を参照してください。
材料の物性値まで含めた完全一致での往復が必要な場合は
.ovika を使います。
実装参照:断面の写像は sepika_io::stbridge::section_std(crates/sepika-io/src/stbridge/section_std.rs)が、XML 全体の組み立ては sepika_io::stbridge::export(crates/sepika-io/src/stbridge/export.rs)が担います。
開発者向け: ライブラリ API(Rust)
Rust コード例(開発者向け)
#![allow(unused)] fn main() { use sepika_io::stbridge::{import_stbridge, import_stbridge_with_report, export_stbridge}; // 読み込み: ST-Bridge XML 文字列 → 内部モデル let xml = std::fs::read_to_string("model.stb")?; let model = import_stbridge(&xml)?; // 読み込み(報告つき): 未対応要素などの警告を得る。必須参照の欠落はエラーになる let (model, report) = import_stbridge_with_report(&xml)?; if !report.is_clean() { for w in &report.warnings { eprintln!("警告: {w}"); } } // 書き出し: 内部モデル → 標準 ST-Bridge 2.0.2 XML 文字列 let xml = export_stbridge(&model)?; std::fs::write("model.stb", xml)?; }
ST-Bridge 要素別 変換状況一覧
ST-Bridge の主要要素ごとの変換状況です。
凡例: ✅ 対応 / ⚠️ 一部・近似 / ❌ 非対応。
「取り込み」は標準入力の対応範囲、「書き出し」は SEPIKA が出力するか、「往復・備考」は
import→export→再import での保存性と注意点を示します。
対応範囲の考え方と非対応項目の扱いは ST-Bridge 形式(.stb / .xml)を参照してください。 本表は要素の単位でまとめたものです。 属性の単位では、取り込んだファイルに存在した属性の扱いを すべて取り込み時に報告します(属性の扱いの報告)。
書き出しは開発中で、一部の形状・属性・断面性能を正しく出力できない場合があります。 出力内容は利用先で確認してください。モデルの保存にはOVIKAを使用してください。 「ファイル」メニューの「ST-Bridge 書出(開発中)…」の直下にも、この説明を表示します。
書き出しは ST-Bridge 2.0.2 の標準要素を用いる 1 形式で、断面の表現を選ぶモードはありません。
全体のスキーマ適合は未完了です。対応範囲と制限は上記の ST-Bridge 形式を参照してください。
標準要素で表せない断面だけが、物性を直接持つ拡張要素 StbSecRaw へ落ちます。StbSecRaw は取り込み対象ではなく、この出力の再読込は保証しません。
ST-Bridge の ID は positiveInteger(1 始まり)で出力します。原階・節点は元 ID/GUID を保持し、内部の 0 始まり連番とは別に再出力します。
実装参照:書き出しは sepika_io::stbridge::export_stbridge(crates/sepika-io/src/stbridge/export.rs)が担います。表現限界による近似・切り捨ての警告は export_stbridge_with_report が返します。取り込みは節ごとに入口を示します。
節点・階・材料
| ST-Bridge 要素 | 取り込み | 書き出し | 往復・備考 |
|---|---|---|---|
StbNode(座標) | ✅ | ✅ | 座標は標準スキーマの大文字 X/Y/Z。書き出しの kind は ON_GRID 固定(所属部材から種別を決められないため)。拘束・質量は対象外 |
StbStory(原階属性) | ✅ | ✅ | 元 ID/GUID・name・height・kind・id_dependence・strength_concrete を保存して再出力する。解析用階は高さ順に並べるが、数値 ID の大小は階順序を表さない |
StbStory/StbNodeIdList/StbNodeId(階の所属節点) | ✅ | ✅ | 元の明示所属を往復する。準備計算や節点移動では更新せず、意図的所属変更と節点削除だけが参照を変更する |
| 共通・部材・断面の標準強度と径別鉄筋リスト | ✅ | ⚠️ | 元指定・省略と採用grade/採用元を分けて保持する。Fc優先順、指定節点、部位別鉄筋、位置別指定と出力制限は標準強度の解決を参照。grade解決とE・ν・密度の既定復元は別で、任意物性完全保存はOVIKA。配筋全体・元床幾何再結合は対象外 |
StbMaterial(独自材料表) | ❌ | ❌ | 標準2.0.2の材料入力ではないため読み取らない。任意物性は内部編集とOVIKAで保持する |
部材・断面の id_material 系参照 | ❌ | ❌ | 独自材料表への参照は読み取らない。標準強度の指定から材料を解決する |
実装参照:取り込みは sepika_io::stbridge::import::assemble::{build_nodes_and_stories, build_materials}(crates/sepika-io/src/stbridge/import/assemble.rs)が担います。
部材
断面参照の系列対応
取り込み時は、部材要素と kind_structure から次の具体的な断面系列を選び、同じ系列の数値IDへ結びます。
柱と間柱、大梁と小梁はそれぞれ系列を共有します。
| 部材要素 | kind_structure | 要求する断面系列 |
|---|---|---|
StbColumn / StbPost | RC / S / SRC / CFT | StbSecColumn_RC / StbSecColumn_S / StbSecColumn_SRC / StbSecColumn_CFT |
StbGirder / StbBeam | RC / S / SRC | StbSecBeam_RC / StbSecBeam_S / StbSecBeam_SRC |
| 上記の柱・間柱・大梁・小梁 | UNDEFINED | StbSecUndefined(未対応) |
StbBrace | S | StbSecBrace_S |
StbSlab | RC / DECK / PRECAST | StbSecSlab_RC / StbSecSlabDeck / StbSecSlabPrecast(PRECASTは未対応) |
StbWall | RC | StbSecWall_RC |
系列の選択と、形状・用途の対応可否は別です。例えばCFTの系列が存在しても、二次部材への使用は下表の用途制限に従います。 ブレースのRC/SRCは対応系列を創作せず、未対応の構造種別として拒否します。 UNDEFINEDやPRECASTは、要求系列の定義がなければ参照先欠落、定義があれば未対応として診断します。未対応形状を別系列の同IDへ読み替えません。 同系列の重複IDは、その形状が未対応でも拒否します。 名前空間と数値IDの制約、参照不正時の扱いは断面系列と数値IDを参照してください。
| ST-Bridge 要素 | 取り込み | 書き出し | 往復・備考 |
|---|---|---|---|
StbColumn(柱) | ✅ | ✅ | StbSecColumn_* を参照する。鉛直材として往復し、rotate・condition_bottom/_top を読む。端部の偏心 offset_* は対象外 |
StbGirder(大梁) | ✅ | ✅ | StbSecBeam_* を参照する。水平材として往復し、rotate・condition_start/_end を読む。端部の偏心 offset_* は対象外 |
StbBeam(小梁) | ✅ | ✅ | StbSecBeam_* を参照する。解析の ElementKind::Beam とは別の二次部材(小梁)である。全体解析の対象外で、床荷重と自重は大梁への集中荷重(CMQ)として伝える。取り込み後は「床」タブの小梁(二次部材)一覧に表示され、端部支持条件を設定できる(実部材化済みは除く)。幾何的に支持のない端(節点が実部材に接続せず、大梁の材軸上にも他の二次部材の内法にもない端。許容差 10 mm)は自由端(片持ち小梁)として取り込み、件数と対象を取り込み報告に出す。他の二次部材の端点と一致する端は、自分の反対側の端が主架構に載り、かつ相手の材軸が連続していないときだけ自由端にする。断面検定は 小梁の検定(二次部材経路。床板分配の線荷重を単純梁または片持ち梁として重ね合わせる)。両端のいずれかがモデル節点に一致しない小梁は、ST-Bridge が材端を節点 ID で表すため書き出せず、書き出し全体がエラーになる(下記参照) |
StbPost(間柱) | ✅ | ✅ | StbSecColumn_* を参照する二次部材。節点は標準の id_node_bottom/id_node_top。端点がモデル節点に一致しない場合の書き出し制限は小梁と同じ |
StbBrace(ブレース) | ✅ | ✅ | 標準断面は StbSecBrace_* を参照する。書き出しで標準要素に表せない断面は StbSecRaw へフォールバックするが、その再読込は保証しない。feature_brace を読み、TENSIONANDCOMPRESSION 以外は引張専用とする。両端ピンで取り込む |
StbSlab(スラブ) | ✅ | ⚠️ | 境界節点ループ(StbNodeIdOrder のテキスト・CDATA・子要素 StbNodeId のいずれも可)+断面参照。取り込み後、各大梁・小梁から床板割当領域を再構築し、スラブと割当領域の交差面積が正の領域ごとに床板(Slab)を 1 枚作る。仕上げ荷重・積載は元スラブの値へ交差面積比を掛けて領域へ合算し、躯体の断面・材料は元スラブから継承する(1 領域 1 版)。1 辺が大梁に全長載り自由端が 1〜2 点なら取り付く床板へ変換する。どの割当領域にも入らない面積が正なら、その面積と境界節点を含むエラーにし、取り込み全体を失敗させる。kind_slab は読まない。書き出しは囲まれかつ版がある床板だけ(kind_slab は NORMAL 固定)。仕上げ荷重・用途(積載)・分配法・取り付き・版なしは対象外 |
StbWall(壁) | ✅ | ✅ | 境界節点ループ+断面参照(厚さ)。材料は標準強度指定から解決する。開口(StbOpen)は対象外。取り込み先は壁版割当領域で、柱・梁・間柱から再構築した割当領域のうち境界が一致するものへ壁版を割り当てる。解析要素は都度生成する。解析要素になるかは 壁エレメントモデル の条件で決まり、ならない壁版は解析要素にはしない。どの割当領域とも境界が一致しない壁は、取り付く壁版へ自動変換できるときだけ取り込み、できない場合は境界節点を含むエラーにして取り込み全体を失敗させる(境界が間柱で分割された領域への面積按分は未実装のため、黙って落とさない)。書き出しは壁版から出すため、4 節点でない囲まれた壁版も往復するが、取り付く壁版は往復しない。解析要素にならない壁版も、自重は自動で分配し地震用重量・「DL」・数量拾いへ算入する(地震用重量・層データの生成)。仕上げ・増打ちの面荷重は対応する要素がないため往復せず、取り込んだ壁版では常に空になる |
部材の符号(name) | ⚠️ | ⚠️ | 取り込みで符号を保つのは二次部材(小梁・間柱)のみ。書き出しは C1・G1・BR1 のような自動命名になるため、符号は往復しない |
StbFooting / StbPile / StbFoundationColumn / StbStripFooting(基礎系) | ❌ | ❌ | 取り込み時に警告 |
StbParapet / StbOpen(パラペット・開口) | ❌ | ❌ | 取り込み時に警告 |
囲まれた壁版の自重支持辺の負担率と間柱の端部負担率は、ST-Bridge では取り込み・書き出しを行いません。
取り込んだ間柱の端部負担率は未指定になるため、鉛直な間柱では解析前チェックでエラーになり得ます。
ST-Bridge 取込後は、モデルタブの「壁版」一覧で、解析要素にならない壁版の自重支持辺の負担率と、
「間柱の自重・重力荷重の伝達先」の端部負担率を画面から指定してください
(壁の断面と自重、自重の長期応力解析への接続)。値の保持には .ovika を使用します。
境界節点の参照先が存在しないスラブ・壁は、取り込み全体を拒否します。頂点が3つに満たないスラブ・壁は、取り込まず警告へ出します。指定された断面参照が存在しない場合も全体を拒否し、断面参照を省略した壁の既存の未割当処理とは区別します。 割当領域に収まらず、取り付く床板へも変換できず、未帰属の面積が残るスラブは、境界節点と面積を含むエラーにして取り込み全体を失敗させます(面積を欠落させないため)。 床領域の付け直しで、どの床領域にも載らない版・所属の付かない小梁・面積照合できなかった旧床領域があるときも、件数を警告へ出します。 壁領域の付け直しでは、主架構だけの壁領域へ所属しない囲まれた壁版と、所属の付かない間柱の件数を警告へ出します。両端支持の二次部材を含む有効な割当領域のある壁版は、所属先がなくても囲まれた壁版とその仕様を保持します。割当領域に一致しない壁を取り込み時に取付き変換する経路とは別です。取付き変換の支持候補は同一レベルの2節点 Beam に限り、Fiber・MultiSpring は含めません(変換条件)。 断面未割当の壁版は、取り込み時に警告します(板厚と材料が決まらず自重を算定できません)。 材軸中間へアンカーした二次部材(両端のいずれかが一致するモデル節点を持たない小梁・間柱)は、ST-Bridge が 材端を節点 ID で表すため書き出せません。件数と対象 ID を含むエラーにして書き出し全体を 失敗させ、黙って部材を落としません(ST-Bridge は二次部材の材軸途中の取付きを表現できない)。
実装参照:取り込みは sepika_io::stbridge::import::assemble::{build_members, build_secondaries}(crates/sepika-io/src/stbridge/import/assemble.rs)が担います。二次部材の両端は Model::anchorize_secondary_members(crates/sepika-core/src/model/secondary.rs)が支持部材アンカー(どの支持部材の材軸上のどこに載るか)へ一括で解決し、幾何的に支持のない端は自由端と推定します。支持端のアンカーを解決できない二次部材は件数を notes に出し、端点座標のまま保持します(重量・材軸長は欠落させず、解析前チェックでエラーにして解析を止めます)。
断面 — 共通
断面の階は floor 属性として書き出します。階を持たない断面は属性ごと省きます。
ST-Bridge 2.0 の floor は省略可能な xs:string なので、未設定を空文字列で書き出すと取り込み側で
「階なし」と「階が空文字列」を区別できなくなるためです。属性を省くことで、往復しても符号+階の
組が保たれます。
部材種別ごとの断面要素は、Girder(大梁)と Beam(小梁)が StbSecBeam_*、Column(柱)と
Post(間柱)が StbSecColumn_*、Brace(ブレース)が StbSecBrace_* です。ここでいう Beam
(小梁)は ST-Bridge の StbBeam を指し、解析要素 ElementKind::Beam(柱・大梁を含む線材の
解析定式化)とは別の分類です。
柱・梁で共有していた断面は、書き出し時に柱用(StbSecColumn_*)と梁用(StbSecBeam_*)へ
分割されます。二次部材は、同じ断面を参照する場合でも、小梁は梁用、間柱は柱用を参照します。
取り込みでは、柱用と梁用の別系列の断面は、符号・階・形状が同じでも符号を改名して別々に保持します。
異なる数値IDの定義を1件へ統合するのは、同一具体系列・同一符号/階で、断面性能・形状・材料・強度と配筋の元指定がすべて一致する場合に限ります。同系列の同数値ID重複は統合せず拒否します
(断面の符号と階(取り込み)を参照)。
断面 — 鋼(形鋼ライブラリ StbSecSteel)
StbSecColumn_S / StbSecBeam_S / StbSecBrace_S が形鋼図形を参照します。
書き出しでは、Column(柱)の鋼断面が StbSecColumn_S、Girder(大梁)と Beam(小梁)の鋼断面が
StbSecBeam_S、Brace(ブレース)の鋼断面が StbSecBrace_S になります。
二次部材(小梁・間柱)だけが使う断面は、それぞれ梁用・柱用として書き出します。
鋼ブレースの一様断面は、StbSecBrace_S → StbSecSteelFigureBrace_S →
StbSecSteelBrace_S_Same の要素で表し、形鋼参照 shape と材料名 strength_main を保持します。
断面要素間の文字はXML空白(空白・タブ・CR・LF)だけとし、断面名の &・引用符をエスケープして、
名称中のバックスラッシュも保持します。名称中の文字と要素間の文字は区別します。
根拠は公式2.0.2 XSDの
同名要素(mixed を指定しない複合型)と
W3C XML Schema Part 1 §3.4.4のelement-only契約です。
この限定モデルのSchema適合は、全STB要素の適合や構造計算の妥当性確認を意味しません。
| 形鋼要素 | 取り込み | 書き出し | 内部形状・備考 |
|---|---|---|---|
StbSecRoll-H | ✅ | ✅ | SteelH のルート半径 r を保持。書き出しには既知の正半径が必要 |
StbSecBuild-H | ✅ | ✅ | 対称断面も SteelBuiltH の板組輪郭として保持 |
StbSecBuild-H(上下フランジ相違) | ❌ | ✅ | 入力の標準属性は A/B/t1/t2。独自の B2/t2_lower は読まない。現行出力ではこれらの方言属性を持つが、再読込による非対称形状の保存は保証しない |
StbSecRoll-BOX / StbSecBuild-BOX | ⚠️ | ⚠️ | SteelBox の外角半径 r を保持。圧延は t を一様板厚に採る。組立はA/B/t1/t2と内法の有限正値を検査し、同厚・異厚とも左右t1・上下t2を保持する。欠落・不正寸法は読込全体を理由付きエラーにする(組立BOXの読み込み)。圧延の欠落半径は未知、組立は明示した直角。書き出しには既知の正半径が必要 |
StbSecPipe | ✅ | ✅ | 鋼管。標準の D/t を読む。独自の StbSecRoll-Pipe/StbSecBuild-Pipe は読まない |
StbSecRoll-L | ✅ | ✅ | 山形鋼(SteelAngle) |
StbSecRoll-C | ✅ | ✅ | 溝形鋼(SteelChannel) |
StbSecRoll-T | ✅ | ✅ | T形鋼。独自の StbSecBuild-T は読まない |
StbSecFlatBar | ❌ | ⚠️ | 正式タグの取込接続は未対応。現行出力は独自の StbSecRoll-FlatBar で、再読込できない |
StbSecRoundBar | ❌ | ⚠️ | 正式タグの取込接続は未対応。標準寸法は直径 R(公式説明書 §6.20.11、本文349頁)。現行出力は独自の StbSecRoll-RoundBar で、再読込できない |
StbSecLipC | ❌ | ⚠️ | 正式タグの取込接続は未対応。標準の H と A は別寸法。現行出力は独自の StbSecRoll-LipC で、再読込できない |
| 組立断面(2L・2C・十字)・リップ Z・その他軽量形鋼 | ❌ | ❌ | 必要な形鋼参照を解決できなければ、取り込み全体を拒否する |
H と Box の圧延断面で r 属性が欠落した場合は、モデルを取り込んで半径を未知のまま保持します。
被覆の実外周が必要になった時点で算定エラーとなるため、欠落を直角として黙って読み替えません。
Box を角形 CFT へ変換する経路でも、既知・未知の半径を引き継ぎます。
ST-Bridge 2.0.2 の圧延 H・Box は正の r が必須です。
未知または明示した 0 はこの形式で表せないため、書き出しをエラーにします。
フランジ厚・板厚を便宜半径にせず、出力の都合で製法を組立へ変更することもありません。
不正半径も出力エラーとし、同寸法で半径だけ異なる図形は参照名を分けて保持します。
未知と 0 を含む完全な保存には OViKA を使用してください。
カタログの H・Box は名称でなく CSV の r 列から半径を保持します。
カタログの A・I・J 等は表値を維持し、半径保持を理由に再計算値へ置き換えません。
鋼断面の図形参照(StbSecSteelColumn_S_Same・StbSecSteelBeam_S_Straight など)は、
標準の shape から形鋼名を読みます。独自の shape_start・shape_center・shape_main を代替には使いません。
| 図形参照 | 取り込み | 書き出し | 往復・備考 |
|---|---|---|---|
一様断面(*_Same / *_Straight) | ✅ | ✅ | 書き出しはこの形だけを使う |
テーパ・継手(*_Taper / *_Joint ほか始端を持つ図形) | ⚠️ | ❌ | 始端の形鋼を採り、材長方向に一様な断面として近似する。中間・終端の形鋼は取り込まない |
形鋼参照 shape を解決できない図形 | ❌ | ❌ | 必要な形鋼参照を解決できず、取り込み全体を拒否する |
実装参照:取り込みは sepika_io::stbridge::import::steel::steel_shape_from(crates/sepika-io/src/stbridge/import/steel.rs)が形鋼を復元し、sepika_io::stbridge::import::assemble::build_sections(crates/sepika-io/src/stbridge/import/assemble.rs)が断面を組み立てます。
断面 — RC・SRC・CFT
| ST-Bridge 要素 | 取り込み | 書き出し | 往復・備考 |
|---|---|---|---|
StbSecColumn_RC(_Rect / _Circle) | ✅ | ✅ | RC 矩形柱・円形柱(RcColumnRect/RcColumnCircle)+配筋 |
StbSecBeam_RC(_Straight) | ✅ | ✅ | RC 矩形梁(RcBeamRect)+配筋。大梁・小梁専用。RC 柱型の梁利用と円形 RC 梁は非対応で、主架構線材・小梁・間柱の用途不整合は入出力時に拒否する |
StbSecBarArrangement*(配筋) | ✅ | ⚠️ | RC/SRC梁・柱の元部位・pos・標準属性・省略を保存。現解析型へ表現できない配置は計算不可。新規・編集済み配筋の標準出力は必須値と段数を検査する |
StbSecColumn_CFT(+充填鋼管) | ✅ | ⚠️ | CFT 角形・円形(CftBox/CftPipe)。FrameSectionUse::Column の主架構柱だけに使用でき、床板・壁版・StbBeam 等の二次部材には使用しない。用途不一致の既存参照や未参照断面は解析前チェックで ID・件数を示してエラーにする。書き出しで不正用途の部材が参照する場合は StbSecRaw へ |
StbSecColumn_SRC / StbSecBeam_SRC | ✅ | ✅ | SRC矩形+内蔵H形鋼+配筋。鋼材強度は標準の鋼材図形子の strength_main を読む。断面親の独自 strength_steel/strength_main_S は読まない |
StbSecRaw(物性直持ちの拡張要素) | ❌ | ✅ | 入力対象外。現行出力のフォールバックは残るが、そこへの断面参照を入力時に救済しない |
| RC・SRC のテーパ・ハンチ等(矩形・円形以外の図形) | ❌ | ❌ | 図形を認識できず、断面を取り込めなかったものとして警告する |
StbSecFoundation_RC / StbSecPile_* / StbSecParapet_RC / StbSecOpen_RC | ❌ | ❌ | 取り込み時に警告 |
配筋の保存と解析採用は別です。標準の配筋コンテナと各部位を、属性の省略を含めてOVIKAへ保存し、同じ標準系列へ再出力します。XML順序ではなく pos を対応させ、重複・不足する位置や必須値欠落、明示0本、ピッチ0を拒否します。
| 入力 | 保存する意味 | 現解析への対応 |
|---|---|---|
梁 N_main_top/bottom_1st/2nd/3rd | 上端・下端の主筋段 | 主筋中心・段間位置を解決できる範囲。段間未解決は不可 |
D_2nd_main / N_2nd_main_* | 別径・材料の副主筋。2段筋とは別 | 保存・出力可、解析不可 |
D_stirrup / N_stirrup / pitch_stirrup | あばら筋 | 主筋・腹筋・巾止筋へ合算しない |
D_web / N_web | 腹筋 | 適用条件があるときだけ適用。現解析は不可 |
D_bar_spacing / N_bar_spacing* / pitch_bar_spacing | 巾止筋 | 適用条件があるときだけ適用。現解析は不可 |
柱 N_main_X/Y_1st/2nd / N_main_total | X=左右垂直列、Y=上下水平列と段別配筋。総本数は確認済み共有位相だけで検査 | 既存実鉄筋座標で表現できない配置は不可 |
D_axial / N_axial | 軸筋。主筋総本数へ加えない | 保存・出力可、解析不可 |
| Same / StartEnd / ThreeTypes / RectNotSame | 同一またはSTART/CENTER/END、BASE/TOPの各部位 | 位置別の新しい解析モデルは未対応 |
kind_corner | NONE/DIR_X/DIR_Y/DIR_XYの位置意味と省略を保持(段数・追加本数ではない) | 寄せ配置は未対応。NONEへ平滑化しない |
配筋コンテナの depth_cover_* / center_* | 外周補強筋までのあきと第一段主筋重心を別保存 | Apply適用時はcenter優先。単一かぶりへ表現できる範囲で採用し、面別値・未解決位置は診断する。配筋子に置かれた同名属性は採用しない |
StbApplyConditionsList の対象要素がない項目は非適用です。元属性は保存しても解析用入力には混ぜません。対象要素の set_default=false は共通省略値を供給せず、true は書かれた属性だけ供給します。個別指定を優先し、部分既定値の未指定項目に値を追加しません。
円形帯筋の N_band は必須です。nativeの閉鎖帯筋は現モデルの2脚を明示し、標準入力の2脚以外は原保存して計算を拒否します。共通Apply既定の腹筋・巾止筋は実効本数と径で役割・強度を解決し、個別属性の省略は元入力に保持します。未確定の隅筋共有位相は保存できますが計算できません。未証明の一般本数式だけで有効な標準入力を拒否しません。
径名 D22 などは元の文字列を保存します。主筋・副主筋・軸筋・帯筋・あばら筋・腹筋・巾止筋それぞれの元部位・posを、標準強度の解決へ結びます。呼び名の保存はJIS公称断面積の全対応を意味しません。
原配筋付き断面を形状編集した場合は、新しい配筋をnative入力として扱い、古い原配筋を再適用しません。Undoは原配筋と強度指定をともに復元します。新規・編集後の配筋は、必須本数・径・ピッチの不足、梁4段以上・矩形柱3段以上を対象断面付きで出力不可にします。任意の0本段は標準属性を省略し、後段を前段へ詰めません。
保存できても解析できない標準入力は、準備・公開solver・該当架構検定で理由を示します。未使用断面や架構配筋を消費しない床板単独検定まで一律に禁止しません。完全保存はOVIKAを使用してください。
出典:buildingSMART Japan『ST-Bridge XMLファイル仕様書(ver.2.0)Revision 2』採用2.0.2、2022-06-15版、本文12、22–29、122–127、192–198頁。公式2.0.2 XSDの同名要素・attributeGroupに照合しています。
実装参照:StbRebarArrangement / Model::stb_rebar_diagnostics(crates/sepika-core/src/model/stb_rebar.rs)、StrengthInputs(crates/sepika-io/src/stbridge/import/strength.rs)、strength_export::section(crates/sepika-io/src/stbridge/strength_export.rs)。
断面 — スラブ・壁
| ST-Bridge 要素 | 取り込み | 書き出し | 往復・備考 |
|---|---|---|---|
StbSecSlab_RC(厚さ・符号・階・コンクリート) | ✅ | ✅ | 厚さ(depth)は図形要素(StbSecFigureSlab_RC > StbSecSlab_RC_Straight)から取る。符号 name・階 floor・strength_concrete も断面として取り込む。書き出すのは StbSlab を出した領域が参照する断面だけ(版なし・取り付きの孤立断面は出さない) |
StbSecSlabDeck(デッキ合成) | ✅ | ⚠️ | 図形(StbSecSlabDeckStraight)からコンクリート部せいを厚さとして取る。書き出しは StbSecSlab_RC 相当 |
StbSecWall_RC(厚さ) | ⚠️ | ✅ | 厚さは StbSecFigureWall_RC 内の StbSecWall_RC_Straight の t を読む。標準の強度指定を保持・解決する。書き出しは壁版ごとに1件、符号は W1 のような自動命名 |
StbSecSlab_S(鋼スラブ) | ❌ | ❌ | 取り込み時に警告 |
スラブの入力参照は、RCとDECKを含む具体的な系列と元の数値IDで区別します。同じ断面を参照する複数の床には、その断面の厚さと強度指定を結びます。 床の自重は面荷重へ焼き込まず、断面の板厚とコンクリート材料から使うたびに算定します (床の断面と自重)。
壁の入力参照は StbSecWall_RC と元の数値IDで解決します。取り込み後の断面符号は Wall t180 のように厚さから決めますが、同厚であることだけを理由に異なる強度指定を取り違えません。
壁の材料は、部材・断面・原階・共通の標準 strength_concrete とその優先順位から解決します。独自の id_material へは接続しません。
実装参照:取り込みは sepika_io::stbridge::import::assemble::{build_slabs, push_slab_section, build_walls}(crates/sepika-io/src/stbridge/import/assemble.rs)が担います。
荷重・その他
| ST-Bridge 要素 | 取り込み | 書き出し | 往復・備考 |
|---|---|---|---|
StbLoadCase / StbNodalLoad(荷重ケース・節点荷重) | ✅ | ❌ | 荷重ケースの名称と、節点荷重の 6 成分(fx・fy・fz・mx・my・mz。欠けている成分は 0)を取り込む。荷重は StbModel(幾何)の外なので書き出さない |
StbLoadCase 直下のほかの荷重要素(StbLoadMember ほか) | ❌ | ❌ | 取り込み時に警告 |
StbAxes > StbParallelAxes(平行芯) | ✅ | ✅ | グループの原点・方向角、通り名・離れ・所属節点が往復(通り芯) |
StbAxes > 円弧芯・放射芯・作図芯 | ⚠️ | ❌ | 通り名と所属節点のみ取り込む(幾何は保持しない)。書き出しは平行芯のみで、除いた旨を通知 |
| 拘束条件(支点) | ❌ | ❌ | ST-Bridge の幾何スコープ外。支点を持たないモデルは取り込み時に自動設定する(下記) |
| 質量 | ❌ | ❌ | ST-Bridge の幾何スコープ外 |
StbCommon | ✅ | ✅ | プロジェクト・アプリ情報、共通Fc・径別鉄筋強度・適用条件を保持する。新規モデルの書き出し情報は既定値を用いる |
StbJoints | ❌ | ✅ | 接合部は扱わないため、書き出しでは空要素だけを出す |
実装参照:取り込みは sepika_io::stbridge::import::assemble::{build_load_cases, build_axes}(crates/sepika-io/src/stbridge/import/assemble.rs)が担います。
取り込み時の既定値
ファイルに属性がないときの扱いをまとめます。 支点の自動設定は、採用内容を取り込み報告の通知でも知らせます。
- 部材端の接合条件(
condition_*)がない場合は剛接合(FIX)とする - 断面の回転角(
rotate)がない場合は 0 とする - ブレースの
feature_braceがない場合は引張専用とする - 柱・大梁・ブレース・小梁・間柱は断面参照(
id_section)の未指定・参照先欠落で取り込み全体を拒否する。床・壁の断面参照省略は既存の未割当処理を維持する。存在する-1・小数・範囲外・非数値は不正IDとして取り込み全体を拒否する。主架構部材・ブレース・小梁・間柱の断面未割当は、必須の断面参照を出力できないため書き出し全体を拒否する。診断に示された部材へ適切な実在断面を明示的に割り当てて再出力する。未割当を-1や属性省略で出力せず、ダミー部材・架空の断面や材料を生成しない - 配筋要素がないRC・SRC断面は未入力として保持する。標準の必須配筋属性の欠落を本数・径・ピッチ0で補って出力しない
- 形鋼参照を解決できない鋼・CFT・SRC断面は、理由を示して取り込み全体を拒否する
- 支点を 1 つも持たないモデルは、最下レベルで柱脚が付く節点をピン支点にする (支点の自動設定)
実装参照:既定値の適用は sepika_io::stbridge::import(crates/sepika-io/src/stbridge/import/{parser.rs, assemble.rs})が担い、支点の自動設定は sepika_io::stbridge::import::assemble::auto_assign_supports が行います。
標準配筋の未対応診断は部材だけでなく、配筋を使うRC/SRC接合部・PCa水平接合面・耐震壁側柱でも理由付きで検定を止めます。実際に使う断面だけを対象にし、未使用断面や鋼材だけのパネルへ広げません。SRC柱・梁の標準出力は採用XSDの子順(図形、配筋、鉄骨図形)を守り、全文XSDと原配筋の意味往復を別検証しています。
標準配筋の数値属性とApply/isSpiralのbooleanは、XML Schemaのcollapseに従いXML空白(空白・タブ・CR・LF)を意味解釈の境界で処理する。元属性字句はOVIKAとSTBへ保存し、共通既定の指定範囲と個別優先を維持する。enum/stringには数値用の正規化を適用せず、未知値を既定化しない。
実効coverとcenterを併記した場合はcenterを優先する。既知の主筋/外周補強筋径から採用あきを算出し、指定coverと異なれば断面・面・両指定値・採用値を非blocking通知する。GUI取込の注意と準備パネル、MCP model.query の rebar_notices(blocking: false)で確認できる。未知径や未指定値は推測せず、既存の未対応解析/検定gateで扱う。
波形ライブラリ
時刻歴応答解析の入力波形(CSV)を、プロジェクト(.ovika)をまたいで使い回すための置き場です。
実装参照:sepika_io::wave_library::{wave_library_dir, list_wave_library, register_wave, wave_sha256}(crates/sepika-io/src/wave_library.rs)が保管先の解決・一覧・登録・ハッシュ算定を担います。
位置づけ
.ovika にはモデル・解析結果・解析タブの設定値(時刻歴の波形パラメータ・減衰モデル等)を保存しますが、時刻歴の入力波形(CSV)そのものは含めません。波形ライブラリは、OS 標準のユーザーデータディレクトリ配下の専用フォルダに波形 CSV をコピーして保管し、全プロジェクトから共通の置き場として参照します。立体時刻歴と質点系は、同じライブラリから独立した選択を持ちます。
- ディレクトリ: OS 標準のユーザーデータディレクトリ配下の
sepika/waves(Windows は%APPDATA%\sepika\waves、macOS は~/Library/Application Support/sepika/waves、Linux は~/.local/share/sepika/waves相当)。 - 対応拡張子:
.csv/.txt/.dat。
注意(機械ローカル): ライブラリはこのマシンのユーザーデータディレクトリに置かれます。別のマシンで .ovika を開いた場合や、プロジェクトファイルを他者へ渡した場合、そのマシンのライブラリに同名の波形がなければ波形を解決できません。
実装参照:保存先は sepika_io::wave_library::wave_library_dir、一覧は同 list_wave_library(crates/sepika-io/src/wave_library.rs)が持ち、一覧とファイル選択ダイアログは .csv・.txt・.dat の拡張子でフィルタします。
GUI からの操作
波形の登録
ファイルメニューの「🌊 波形を保存…」から、波形 CSV を選んでライブラリへコピーします(この操作では解析は実行しません)。ライブラリに同名の波形が既にある場合は、上書き確認ダイアログを表示します。
実装参照:sepika_app::app::App::{register_wave_to_library_dialog, confirm_register_wave}(crates/sepika-app/src/app/actions/wave_library.rs)が受け付け、コピーは sepika_io::wave_library::register_wave が行います。
波形を選んで実行
工程タブ「解析」を開き、右のアイコン列から「時刻歴応答」パネルを出すと、「波形ライブラリ」のドロップダウンがあります。登録済みの波形ファイル名を一覧表示します(他のプロジェクトで登録したものも同じ一覧に表示されます)。選んで「▶ 選択した波形で実行」を押すと、時刻歴応答解析をジョブ実行します。方向(X/Y/X+Y)・dt の解釈は「📂 波形CSVを開いて実行…」(一回限りのファイル選択)と同じです。
右バー「質点系」にも同じドロップダウンがあります。ここでの選択は立体時刻歴とは独立で、.ovika にも別フィールドとして保存します。質点系パネルから波形 CSV を直接開いて実行する操作はありません。
実装参照:ドロップダウンは sepika_app の解析パネル(crates/sepika-app/src/app/panels/analysis.rs)が表示し、実行は sepika_app::app::App::run_time_history_from_library と App::start_lumped_mass_library_th_job(crates/sepika-app/src/app/actions/)が担います。
実行結果のケースは、選択中の名前ではなく、実際に解析した波形と計算条件に対応します。 実行開始後にライブラリの表示選択を変えても、完了結果の所属先は変わりません。 同名のファイルを上書きして波形の加速度列や時間刻みが変わった場合は、再実行で別ケースになります。 ケースの再実行と表示はナビゲータの解析結果ツリーを参照してください。
入力波形の時間軸
GUI で実行する CSV は 2 点以上が必要です。N 点を時刻 0, dt, …, (N−1)dt の瞬時値として扱い、 立体・質点系とも N−1 区間を積分します。先頭は積分前の初期状態、末端は最後の入力時刻に対応する応答です。 詳細は 入力時刻と初期状態 を参照してください。
.ovika との連携
「▶ 選択した波形で実行」で実行した波形のファイル名と、実行時点のファイル内容の SHA-256 は、解析タブの設定値(analysis_settings.msgpack)に同梱して保存します。プロジェクトを開き直すと、ライブラリに同名のファイルが存在する限り、この選択を自動的に復元します。
- ライブラリにファイルが見つからない場合(削除された等)は、通知したうえで選択を解除します。
- ファイルは見つかるが内容(SHA-256)が保存時と異なる場合(ライブラリ側で上書きされた等)は、選択は維持したうえで内容が変わっている旨を通知します。
実装参照:保存は sepika_app::app::App::save_project_to_opts が波形名と SHA-256 を SavedAnalysisSettings に同梱し、復元は App::{restore_wave_library_selection, restore_lumped_wave_library_selection}(crates/sepika-app/src/app/actions/wave_library.rs)が行います。
開発者向け: ライブラリ API(Rust)
Rust コード例(開発者向け)
#![allow(unused)] fn main() { use sepika_io::wave_library::{wave_library_dir, list_wave_library, register_wave, wave_sha256}; let dir = wave_library_dir().expect("ユーザーデータディレクトリを特定できません"); let names = list_wave_library(&dir)?; // 登録済みの波形ファイル名一覧 let name = register_wave(&dir, src_path)?; // 波形 CSV をライブラリへコピー(同名は上書き) let hash = wave_sha256(&dir, &name)?; // 内容の SHA-256(16進小文字) }
MCP サーバ
sepika-mcp は SEPIKA の構造モデルを Model Context Protocol (MCP) 経由で AI エージェントに公開するサーバです。標準入出力(stdio)をトランスポートとして動作し、接続したクライアント(Claude Code、Claude Desktop など)から次のことができます。
- 構造モデル(節点・部材・断面・壁版・床板・床領域・壁領域・二次部材)の照会
- 壁版・床板・床領域・壁領域(間柱)・二次部材(未割当を含む)の編集(
model_edit。Undo 可能) - 数量積算(コンクリート・型枠・鉄筋・鉄骨)の集計
- 解析(線形静解析・固有値解析・増分解析(プッシュオーバー)・時刻歴応答解析・断面検定・終局検定)の非同期実行
- ジョブ状態のポーリングと解析結果の取得
ツールの詳細はツール一覧、入力形式と機能上の制約は制約・注意点を参照してください。
MCP プロトコル層(rmcp/tokio に依存する部分)はすべて Cargo の機能フラグ mcp の配下にあり、mcp は非デフォルト(default = [])です。フラグを付けずにビルドした場合、MCP サーバ(起動バイナリ・ツール群)はビルド対象に含まれません。
この章の内容
ビルドと起動
# ビルドのみ(バイナリは target/debug/sepika-mcp に生成される。
# --release 付きなら target/release/sepika-mcp)
cargo build -p sepika-mcp --features mcp
# モデルファイルを指定して起動
cargo run -p sepika-mcp --features mcp -- model.ovika
# 引数を省略すると空モデルで起動する
cargo run -p sepika-mcp --features mcp
- 起動時の第 1 引数がモデルの読み込み元になり、省略時は空モデルで起動します。
- 解析結果ストアのディレクトリは環境変数
SEPIKA_RESULT_DIRで指定でき、未設定の場合は OS 一時ディレクトリ配下のsepika-mcp-resultsを使います。
SEPIKA_RESULT_DIR=/path/to/results cargo run -p sepika-mcp --features mcp -- model.ovika
注意: stdout は MCP の JSON-RPC トランスポートそのものです。ログや診断出力を stdout に書くと、クライアントは壊れたフレームとして接続を切断します。
よくあるエラー:
| 状況 | 結果 |
|---|---|
--features mcp を sepika-mcp 以外のクレート(例: -p sepika-app)に付けて実行する | そのクレートに mcp という機能フラグがないためビルドエラーになります |
sepika-mcp を --features mcp なしでビルド/実行しようとする | 起動バイナリ自体が required-features = ["mcp"] でゲートされているため、バイナリが存在せず実行できません |
モデル入力の形式と制約は制約・注意点を参照してください。
クライアント設定例
Claude Code
claude mcp add sepika -- /path/to/sepika-mcp model.ovika
もしくはプロジェクトの .mcp.json に登録します。
{
"mcpServers": {
"sepika": {
"command": "/path/to/sepika-mcp",
"args": ["model.ovika"]
}
}
}
Claude Desktop
claude_desktop_config.json に以下のエントリを追加します。
{
"mcpServers": {
"sepika": {
"command": "/path/to/sepika-mcp",
"args": ["model.ovika"],
"env": {
"SEPIKA_RESULT_DIR": "/path/to/results"
}
}
}
}
ツール一覧
公開されている MCP ツールは以下の 6 個です。
model_query
原階の属性と明示所属は kind: "source_stories"、原階入力の不整合と解析用推定との差は
kind: "source_story_diagnostics" で確認できます。診断文は GUI と共通です。
節点・部材・断面・壁版・床板・床領域・壁領域・二次部材を検索します。
| 引数 | 型 | 必須/任意 | 意味 |
|---|---|---|---|
kind | String | 必須 | 下表の種別・別名。未知の値は対応種別を示す入力エラー(invalid_params) |
filter | Option<String> | 任意 | 各アイテムを JSON 文字列化した内容に対する部分一致フィルタ |
| 種別・別名 | 対象 |
|---|---|
node / nodes | 節点 |
member / members / element / elements | 部材 |
section / sections | 断面 |
wall_plate / wall_plates | 壁版 |
slab / slabs | 床板 |
floor_region / floor_regions | 床領域 |
wall_region / wall_regions | 壁領域 |
floor_assignment_region / floor_assignment_regions | 床板割当領域 |
wall_assignment_region / wall_assignment_regions | 壁版割当領域 |
secondary_member_end / secondary_member_ends | 支持先を持つ小梁・間柱 |
unassigned_beam / unassigned_beams | 未割当の小梁 |
unassigned_post / unassigned_posts | 未割当の間柱 |
secondary_beam / secondary_beams | 全小梁 |
source_stories | 原階の入力属性と明示所属 |
source_story_diagnostics | 原階入力・解析用所属の診断 |
stb_strengths | STB強度入力(1項目) |
resolved_strengths | 部材ごとの強度解決結果 |
strength_diagnostics | 強度入力の診断 |
rebar_notices | 鉄筋入力の非阻害通知 |
既知の種別で対象がない場合や、フィルタに一致しない場合は正常な items: [] です。
未完成のモデルも照会できます。
返り値:
{ "items": [ /* 検索結果の JSON オブジェクト配列 */ ] }
node:{ "id", "coord", "story" }member/element:{ "id", "kind", "nodes", "section", "material" }。部材付帯情報(ハンチ・継手位置)があればhaunch_i/haunch_j(length/depth_increase/width_increase)とjoints(distance/kind)を追加。入力モデルに保存されている部材だけを返す(壁版から都度生成する耐震壁は含まない。壁はkind=wall_plateで照会する)section:{ "id", "name", "area", "iy", "iz" }wall_plate:{ "id", "shape", "section", "opening_area", "opening_weight", "slit", "openings", "loads", "becomes_element" }。slitは{ "column_face": [bool, bool], "beam_face": [bool, bool] }(耐震スリット。梁際は 0 が下辺、1 が上辺)、loadsは仕上げ・増打ちの面荷重 [N/mm²](躯体の自重は含まない)、becomes_elementはその壁版から壁エレメントが生成されるか。shape.kindは"Enclosed"(boundary)または"Attached"(anchor・extent・resolved_extent)。extentは入力値そのものでnullは階高いっぱいを表し、resolved_extentは階レベルから解決した高さ(nullは直上に階が無く解決できない。解析前チェックが止める)slab:{ "id", "shape", "section", "loads", "usage", "method", "one_way" }。shape.kindは"Enclosed"(boundary)または"Attached"(anchor・extent)floor_region:{ "id", "name", "boundary", "slab_ids", "secondary_beams" }。secondary_beamsは所属小梁の実体配列wall_region:{ "id", "name", "boundary", "wall_plate_ids", "posts" }。postsは所属間柱の実体配列unassigned_beam/unassigned_post: どの領域にも入らなかった二次部材の配列secondary_beam: 領域内と未割当を合わせた小梁の実体配列
囲まれた壁版・床板の shape.boundary は解決できた節点ID列です。
割当領域がない、支持部材を解決できない、境界頂点に一致する節点がない場合は null です。
空の割当境界も未解決です。未解決を空の節点列として表示しません。
実装参照:ハンドラは sepika_mcp::server::SepikaServer::model_query(crates/sepika-mcp/src/server.rs)で、検索本体は sepika_mcp::query::query_model(crates/sepika-mcp/src/query.rs)が担います。
model_edit
明示階種別は SetStoryLevelKind(例: {"command":"SetStoryLevelKind","story":1,"level_kind":{"Penthouse":{"k":0.7}}})でGUIと同じ編集を行います。取り込み原階kindは保持し、native由来の原階kindだけを更新します。
原階の明示所属は {"command":"SetSourceStoryNodes","source_story":51,"nodes":[0,1]} で変更します。
source_story は元 STB 階 ID、nodes は GUI と同じ内部節点 ID の配列です。
未知節点・生成代表節点・重複 ID は適用を拒否し、undo 履歴を増やしません。
モデルを編集します。GUI と同じ EditCommand と Undo 履歴を使います。引数は command キーで種別を指定する JSON オブジェクトです(トップレベルに command を置く)。{ "body": { "command": "...", ... } } という入れ子も受け付けます。
壁版・床板・領域・断面・二次部材の ID は 0〜4294967295 の JSON 整数で指定します。
負数、小数、範囲外、文字列、真偽値、配列、オブジェクトを指定すると、対象項目と理由を付けて拒否します。
必須 ID の省略・null も拒否します。任意の断面 ID は省略・null が未割当で、不正な指定値は未割当として扱いません。
拒否時はモデル・割当・Undo 履歴を変更しません。有効範囲内でも、対象 ID の存在や各操作の適用条件は別途確認します。
たとえば {"body":{"command":"DeleteSlab","id":4294967296}} は床板0を削除せずエラーになります。
MCP のツール引数はこの body 形式で渡します。
返り値:
{ "op_id": "op-1", "applied": true, "undoable": true, "summary": "..." }
appliedがfalseのときは、参照検証などでコマンドが Noop になった(モデルは変わらない)- 節点・部材・荷重・断面そのものの追加削除など、下表にない
EditCommandは未対応(エラー)
断面形状と数量設定(2)
command | 必須 | 任意と既定 |
|---|---|---|
EditSectionShape | section(断面ID)、new_shape(断面形状) | frame_use(線材用途、省略時はnull。壁・床断面はnull) |
SetQuantityCfg | cfg(共有数量設定の全5項目) | — |
RC壁の方向比はEditSectionShapeで共有断面のpwh_ratio・pwv_ratioを編集します。
値は小数比で、nullは未入力、数量上の明示0は0.0です。
数量設定の5項目・単位・既定値は算定係数を参照してください。
SetQuantityCfgは解析結果を失効させず、設定値を保存モデルへ反映します。
{"body":{"command":"SetQuantityCfg","cfg":{"anchorage_dia_factor":40.0,"assumed_wall_bar_dia":13.0,"beam_main_ratio":0.008,"beam_stirrup_ratio":0.001,"slab_rebar_ratio":0.01}}}
壁版(9)
囲まれた壁版は任意の節点境界からは作れません。柱・梁・間柱から導出した壁版割当領域
(準備計算が作る)へ AssignWallPlateToRegion で割り当てます。四辺の対称性から
割当領域の境界がそのまま壁版の境界になります。
command | 必須 | 任意と既定 |
|---|---|---|
AssignWallPlateToRegion | region(壁版割当領域 ID) | section(既定 null)、opening_area(既定 0)、opening_weight(既定 0)。領域が既に版ありなら applied: false |
SetWallPlateRegionNoPlate | region | 既存の版があれば削除する(同一 Undo 単位) |
UnsetWallPlateRegion | region | 既存の版があれば削除する(同一 Undo 単位) |
AddAttachedWallPlate | anchor | extent(2 要素 [mm]。省略または null で階高いっぱい。自立壁のみ)、section(既定 null)、self_weight_shares(境界辺順の負担率。非負・有限・総和 1、既定 [] は未指定)、opening_area(既定 0)、opening_weight(既定 0) |
DeleteWallPlate | id | — |
SetWallPlateSection | id | section(null で未割当) |
SetPostGravityEndShares | member(間柱の安定 ID) | shares(端の並び順の負担率2値、非負・有限・総和1。省略・nullは未指定) |
SetWallPlateAttrs | id | self_weight_shares(境界辺順の負担率。非負・有限・総和 1、既定 [] は未指定)、opening_area(既定 0)、opening_weight(既定 0)、openings(既定 [])、loads(仕上げ・増打ちの面荷重。既定 [])、slit({ "column_face": [bool, bool], "beam_face": [bool, bool] }。片方のキーだけでも可。既定は 4 辺とも false) |
SetAttachedWallPlateExtent | id | extent(省略または null で階高いっぱい。自立壁のみ) |
SetAttachedWallPlateAnchor | id、anchor | — |
壁版割当領域への割当の例:
{
"command": "AssignWallPlateToRegion",
"region": 0,
"section": null,
"opening_area": 0.0,
"opening_weight": 0.0
}
取付き先 anchor が線のときの形(nodes は取付き梁の 2 節点、span は梁全長に対する無次元区間):
{
"Line": { "nodes": [0, 1], "span": [0.0, 1.0], "transfer": "Anchor" }
}
床板(10)
囲まれた床板は任意の節点境界からは作れません。大梁・小梁から導出した床板割当領域
(floor_assignment_region)へ割り当てます。割当・版なし・未設定は同一 Undo 単位です。
command | 必須 | 任意と既定 |
|---|---|---|
AssignSlabToFloorPlateRegion | region(床板割当領域 ID) | 版仕様はフラット引数(section/loads/usage/method/one_way)か plate オブジェクト。method 未指定は "TriTrapezoid"。loads 未指定は []。領域が既に版ありなら applied: false |
SetFloorPlateRegionNoPlate | region | 既存の版があれば削除する(同一 Undo 単位) |
UnsetFloorPlateRegion | region | 既存の版があれば削除する(同一 Undo 単位) |
AddAttachedSlab | anchor、extent | 版仕様はフラット引数(section/loads/usage/method/one_way)か plate オブジェクト。method 未指定は "TriTrapezoid"。loads 未指定は [] |
DeleteSlab | id | — |
SetSlabSection | id | section(null で未割当) |
SetSlabUsage | id | usage(null で積載荷重なし) |
SetSlabOneWay | id | one_way(null で境界辺 0・2 が負担) |
SetAttachedExtent | id、extent | — |
SetAttachedAnchor | id、anchor | — |
AddAttachedSlab のフラット引数の例:
{
"command": "AddAttachedSlab",
"anchor": { "Line": { "nodes": [0, 1], "span": [0.0, 1.0], "transfer": "Anchor" } },
"extent": [1000.0, 1000.0],
"section": 0
}
床領域(2)
command | 必須 | 任意と既定 |
|---|---|---|
SetFloorRegionName | id、name | — |
SetFloorRegionSecondaryBeams | floor_region(別名 id)、secondary_beams(SecondaryMember の配列。空にするときは []。空にすると旧所属は未割当へ移る) | — |
secondary_beams を省略するとエラーになります(欠落を空配列とみなしてリストを消すことはしません)。旧小梁語彙のコマンドやキーは受け付けずエラーになります。
未割当二次部材(4)
command | 必須 | 任意と既定 |
|---|---|---|
AddUnassignedBeam | beam(SecondaryMember) | — |
DeleteUnassignedBeam | index | — |
AddUnassignedPost | post(SecondaryMember) | — |
DeleteUnassignedPost | index | — |
同じ端点の小梁・間柱が既にあるときは適用されず applied: false になります。SecondaryMember は id(安定 ID)・kind・ends(支持部材アンカー/片持ち自由端)・section・name を持ちます。端部支持条件は SetSecondaryMemberEndSupport で設定できます。
二次部材の端部支持条件(1)
command | 必須 | 任意と既定 |
|---|---|---|
SetSecondaryMemberEndSupport | member(二次部材の安定 ID)、end_support("Supported" / "Free" の 2 要素配列) | — |
安定 ID で対象の小梁・間柱を探し、床領域内・壁領域内・未割当のいずれにあっても設定します。支持端は現在の端部座標から支持部材アンカーへ再解決し、片持ち小梁は自由端の位置を "Free" にします(例: "end_support": ["Supported", "Free"])。同じ条件のときは適用されず applied: false になります。
二次部材の配置・移動・削除(3)
command | 必須 | 任意と既定 |
|---|---|---|
PlaceSecondaryMember | parent("floor" / "wall" / "unassigned")、kind("Beam" / "Post")、ends(取付き位置表現) | region(parent が "floor" / "wall" のとき必須。対象の床領域/壁領域 ID)、section(既定は未割当)、name(既定は空) |
SetSecondaryMemberEnds | member(二次部材の安定 ID)、ends(取付き位置表現) | — |
DeleteSecondaryMember | member(二次部材の安定 ID) | — |
PlaceSecondaryMember は安定 ID を新規に払い出し、親領域(floor なら小梁、wall なら間柱、unassigned なら未割当)へ追加したうえで床板・壁版割当領域を再構築します。ends は {"Supported": [{"support": {"Primary": 0}, "position": 0.5}, ...]} のように支持部材アンカーで指定します。支持が決まらない端(Detached)、種別に合わない親、支持端が親領域(SecondaryParent が指す床領域・壁領域)の内側または境界上(許容差 10 mm)にない場合は適用されず applied: false になります(片持ちへの読み替えはしません)。SetSecondaryMemberEnds も同じ親領域内判定を行い、移動先が現在の所属領域の外へ出る場合は適用されません。
配置・移動・削除で旧版を失う場合は、まず除去する版 ID・件数・入力面荷重・室用途・開口重量と、1 Undo で復元できることをエラー応答で知らせます。モデル・ID の払い出し・Undo/Redo 履歴は未更新です。内容を確認した後、同じコマンドへ "confirm_plate_loss": true を追加して再送してください(既定は確認なし)。確認後は旧版を取り除き、新しい割当領域を未設定にします。成功応答の summary に除去対象を記載し、版・入力荷重の除去まで含めて 1 つの Undo 単位とします。ends の解析に失敗した場合は ends の解析エラーを返します。
版の割当は支持部材の種類・ID・厳密な材軸区間が同じ領域だけへ保持します。重心・面積・親名が同じ別境界へ転用しません。境界キーの衝突や同じ版の重複割当は確認フラグで許可できず、理由を返してモデル・履歴を更新しません。解析準備で予期しない孤立版が生じる場合も、入力荷重と版 ID を示して候補の確定を停止します。
壁領域(1)
command | 必須 | 任意と既定 |
|---|---|---|
SetWallRegionPosts | wall_region(別名 id)、posts(SecondaryMember の配列。空にするときは []) | — |
posts を省略するとエラーになります。壁領域の新規作成・削除は公開していません(準備計算が壁領域を作り直すため)。
床領域の新規作成・削除は公開していません(準備計算が床領域を作り直すため)。
実装参照:ハンドラは sepika_mcp::server::SepikaServer::model_edit(crates/sepika-mcp/src/server.rs)で、コマンドの解析と GUI と同じ Undo 経路での適用は sepika_mcp::edit::{parse_edit_command, apply_edit}(crates/sepika-mcp/src/edit.rs)が担います。
quantity_takeoff
数量積算(コンクリート体積・型枠面積・鉄筋/鉄骨重量の概算)を集計します。
| 引数 | 型 | 必須/任意 | 意味 | 既定値 |
|---|---|---|---|---|
group_by | Option<String> | 任意 | "category"(部位別)/"story"/"stories"(階別)/"structure"(構造別)/"steel"(鉄骨種類別)/"rebar"(鉄筋径別)/"detail"/"items"(明細) | "category" |
group_by の未指定・空文字列は category です。明示した未知の文字列は
入力エラー(invalid_params)となり、数量を計算できないモデルでも集計軸の誤指定を先に通知します。
返り値:
{ "status": "complete", "rows": [ /* group_by に応じた行 */ ], "totals": { "concrete_m3": .., "formwork_m2": .., "rebar_t": .., "rebar_status": "complete", "rebar_issues": [], "steel_t": .., "rebar_joints": .. }, "notes": [ /* 注記 */ ] }
rows の形は group_by により異なります。
group_by | 行の形 |
|---|---|
category(既定) | { category, concrete_m3, formwork_m2, rebar_t, steel_t, rebar_joints } |
story | { story, concrete_m3, formwork_m2, rebar_t, steel_t, rebar_joints } |
structure | { structure, concrete_m3, formwork_m2, rebar_t, steel_t, rebar_joints } |
steel | { section, length_m, weight_t } |
rebar | { dia_mm, length_m, weight_t } |
detail | { elem, slab, wall_plate, secondary_member, section, label, story, category, structure, concrete_m3, formwork_m2, rebar_t, steel_t, rebar_joints, rebar_status, rebar_issues, rebar } |
部位別・階別・構造別と全体にはrebar_status・rebar_issuesを付します。
状態はempty(対象なし)、complete(算定済み概算)、incomplete(未算定を伴う小計)です。
completeは実配筋数量との照合済みを意味しません。rebar_issuesには
elem・wall_plate・section・usage・kind・reasonを返し、欠落/不正/未実装を区別します。
明細のrebarは方向・径・総延長・重量・状態の算定済み行です。未入力方向は0の行にせず理由を返します。
鉄筋径別の行は算定済み分の小計で、全体の状態・理由も確認してください。
数量全体の算定が不成立の場合はstatus="unavailable"、totals=nullと理由を返します。
detail(別名items)では、secondary_memberが二次部材IDの整数、他の対象ではnullです。
二次部材をelem・slabのIDで代用しません。端点にモデル節点がなくても解決実長で集計します。
実材への集約条件を満たす明細は、実材のelemを保持し、secondary_member=nullです。
階だけが未確定の場合は、ID付きの注記とstory="-"の行を残し、数量を全体・各小計へ含めます。
鉄骨種類別の集計は鋼材だけを対象とします。
断面・材料・端点等の不足で数量が決まらない場合は、対象IDと原因付きのunavailableです。
階の確定条件と実材との重複防止は二次部材の数量を参照してください。
集計にはモデルに保存された共有数量設定を用います。model_editのSetQuantityCfgで
数量設定を編集でき、Undo/Redo・保存後の再読込も同じ設定を使用します。
数量の算定式は数量積算を参照してください。
実装参照:ハンドラは sepika_mcp::server::SepikaServer::quantity_takeoff(crates/sepika-mcp/src/server.rs)で、集計本体は sepika_mcp::query::quantity_takeoff_json(crates/sepika-mcp/src/query.rs)が担います。
analysis_run
解析を非同期で実行し、ジョブを登録して job_id を即座に返します(計算完了は待ちません)。
| 引数 | 型 | 必須/任意 | 意味 | 既定値 |
|---|---|---|---|---|
kind | JobKind | 必須 | LinearStatic/Eigen/Pushover/TimeHistory/DesignCheck/UltimateCheck(質点系は含まれません) | — |
load_case | Option<u32> | 任意 | LinearStatic/DesignCheck/UltimateCheck: 対象荷重ケース ID | 先頭の荷重ケース |
load_combination | Option<usize> | 任意 | DesignCheck専用: 保存組合せindex。load_caseとの同時指定・不正indexは拒否 | 未指定 |
n_modes | Option<usize> | 任意 | Eigen: モード数 | 3 |
dir | Option<String> | 任意 | Pushover/TimeHistory: 加力・入力方向。"X"/"Y" 以外はエラー | "X" |
steps | Option<usize> | 任意 | Pushover: 最大ステップ数 | 50 |
max_disp | Option<f64> | 任意 | Pushover: 目標変位 [mm]。未指定なら目標層間変形角のみで判定 | なし |
max_drift_denom | Option<f64> | 任意 | Pushover: 目標最大層間変形角の分母 n(角度 1/n)。max_disp と両方指定した場合は早く達した方で終了 | 150(max_disp 未指定時) |
dt | Option<f64> | 任意 | TimeHistory: サンプル波の時間刻み [s] | 0.01 |
duration | Option<f64> | 任意 | TimeHistory: サンプル波の継続時間 [s] | 2.0 |
period | Option<f64> | 任意 | TimeHistory: サンプル波の周期 [s] | 0.5 |
amp | Option<f64> | 任意 | TimeHistory: サンプル波の振幅 [mm/s²] | 1000 |
z | Option<f64> | 任意 | 荷重自動同期: 地域係数 Z(令88条) | 1.0 |
soil | Option<String> | 任意 | 荷重自動同期: 地盤種別。"I"/"II"/"III" 以外はエラー | "II" |
c0 | Option<f64> | 任意 | 荷重自動同期: 標準せん断力係数 C0 | 0.2 |
ai_mode | Option<String> | 任意 | 荷重自動同期: Ai 算定法。"Approx"/"SemiPrecise" 以外はエラー | "Approx" |
design_period | Option<f64> | 任意 | 荷重自動同期: 参考の固有周期 T [s]。数値だけは告示精算の証拠にならず、SemiPrecise の標準EX/EYは未対応 | なし |
返り値:
{ "job_id": "job-0" }
kind ごとに使用するパラメータと概略処理:
kind | 使用パラメータ | 処理概要 |
|---|---|---|
LinearStatic | load_case, z, soil, c0, ai_mode, design_period | 指定/先頭の荷重ケースで線形静解析(解析前に荷重自動同期) |
Eigen | n_modes, z, soil, c0, ai_mode, design_period | 固有値解析(周期・刺激係数・有効質量。解析前に荷重自動同期) |
Pushover | dir, steps, max_disp, max_drift_denom(解析前同期: z, soil, c0, ai_mode, design_period) | 増分解析(プッシュオーバー解析)。水平載荷の Ai 分布は solver 側で略算 T・Z=1・地盤 II・C0=0.2 固定。地震引数は階重量・EX/EY の同期にのみ効く。結果ストアには書かずサマリ JSON のみを返す |
TimeHistory | dir, dt, duration, period, amp, z, soil, c0, ai_mode, design_period | サンプル波(amp * sin(ωt) * e^{-0.3t})による時刻歴応答解析。減衰は剛性比例減衰(h=0.02、1 次固有振動数使用)固定(解析前に荷重自動同期)。結果ストアには書かずサマリ JSON のみを返す |
DesignCheck | load_case または load_combination, z, soil, c0, ai_mode, design_period | 保存組合せはGUIと同じterms/kind・継続時間・線形内力で検定。単独ケースは種別による状態を表示し、雪/風単体は組合せ未検定。地震単独指定は架構用G+Pを自動合成し、必要重力の一部/全部失敗で拒否。積雪ケースがあれば保存組合せの明示が必要。結果のload_targetがsingle_case/automatic_gravity_combination/saved_combination、terms、状態と理由を区別。法的全条件確認を意味しない。付着はRc1999、QDは既定方式。検定結果はサマリJSON。単独ケース内力だけ結果ストアへ保存し、組合せ内力は下記サマリから取得 |
UltimateCheck | load_case, z, soil, c0, ai_mode, design_period | RC 部材の終局せん断・付着・軸余裕度、CFT 柱の軸終局検定(靭性保証型耐震設計指針)。単独ケースの指定と未指定時の先頭ケース採用には、架構用長期総組合せの完全性に関する未解決事項があり、終局需要の専用受入は未完了。共通の需要モード・不足条件を確認。結果ストアには書かずサマリ JSON のみを返す |
解析前に、現在のモデルから既存階の地震用重量・剛床重量・物理質量と自動荷重を同期します。 密度・仕上げ・地震用積載などの編集後も、準備ボタンを経由せず最新重量を使用します。 重量・周期・係数の生成が失敗すると旧 Auto EX/EY を両方向とも除去し、通常の手入力荷重は保持します。 失敗した旧派生質量を使う Eigen/TimeHistory は拒否しますが、独立した DL 解析は可能なら継続します。 階が未定義のモデルの初期化は、この解析入口では行いません。
DesignCheckの保存組合せ・自動G+P+Kはcase: null、store.persisted: falseです。既存単独ケースの変位・内力と同じIDで保存しません。load_targetのsource・combination_index・requested_case・termsで計算対象を確認してください。単独ケースはcaseにケースIDを返し、store.persisted: trueならresult_getで内力を取得できます。
組合せ内力の取得は、analysis_statusの公開レスポンスにあるstatus.Done.result_refをJSON文字列として解析し、サマリ内のmember_forcesとload_targetを読み取ります。member_forces.rowsは最大10,000行、内部単位はN/QがN、MがN·mmです。total_rowsは計算した全行数、truncated: trueは取得行の省略を示し、全内力の取得完了を意味しません。store.retrievalに取得ツール・フィールド・JSON文字列の形式を示します。
組合せサマリと内力はサーバープロセス中のジョブ情報だけに保持します(store.lifetime: "server_process")。結果ストア/プロジェクトへの永続保存、result_getでの組合せ取得、10,000行を超えた内力のページ取得は未対応です。サーバー終了前に必要なサマリを取得してください。
Done の result_ref(サマリ JSON)には、解析結果に加え、前処理の注意事項があれば notices 配列が付きます。たとえば ai_mode="SemiPrecise" では告示精算の適用証拠の検証が未対応のため、design_period の有無にかかわらず EX/EY の自動水平力を生成せず、理由が notices に入ります(DL等の独立した解析は続行できますが、Ai生成に失敗した標準EX/EYと依存組合せは実行できません)。未設定の床板・壁版割当領域が残っている場合も、件数と対象 ID を記した警告が notices に入ります。GUI のような計算前の確認は挟みませんが、矩形RC/SRC大梁が支持する床板の割当が未設定なら、実重複控除を確定できないため停止します。それ以外は警告を添えて続行します(未設定は荷重・剛性を過小評価し得るため、結果を採用する前に必ず解消してください)。
標準 EX/EY の LinearStatic が Ai 地震力の再生成失敗で止まる場合、Failed.error に選択方向の具体的な理由を表示します。C0 下限、告示精算の未対応、精算周期の未取得などを確認してください。別方向の再生成通知は失敗原因へ混在させず、DL 等の独立した解析は続行できます。
実装参照:ハンドラは sepika_mcp::server::SepikaServer::analysis_run(crates/sepika-mcp/src/server.rs)で、kind ごとの振り分けは sepika_mcp::job::compute_job(crates/sepika-mcp/src/job/mod.rs)が担います。
analysis_status
ジョブの状態を取得します。
| 引数 | 型 | 必須/任意 | 意味 |
|---|---|---|---|
job_id | String | 必須 | analysis_run が返した ID |
返り値:
{ "id": "job-0", "kind": "LinearStatic", "status": { /* Queued | Running{progress} | Done{result_ref} | Failed{error} */ } }
statusは次のいずれかの形を取ります。"Queued"(ジョブ登録直後の内部状態。通常はanalysis_runがすぐに実行を開始するため、ポーリングではほとんど見えません){ "Running": { "progress": null } }{ "Done": { "result_ref": "<サマリ JSON 文字列>" } }{ "Failed": { "error": "<エラーメッセージ>" } }
Running.progressのnullは未計測を表します。実測値0.0(0%)とは区別します。現在の解析ジョブは進捗を計測しません。結果保存中も状態を照会でき、保存が終わるまでRunningです。job_idが存在しない場合はエラー(invalid_params)。
実装参照:ハンドラは sepika_mcp::server::SepikaServer::analysis_status(crates/sepika-mcp/src/server.rs)で、ジョブの登録・状態保持は sepika_mcp::JobRegistry(crates/sepika-mcp/src/lib.rs)が担います。
result_get
解析結果ストアから結果を取得します。
| 引数 | 型 | 必須/任意 | 意味 |
|---|---|---|---|
case | u32 | 必須 | 荷重ケース ID(Eigen の結果は case=0 固定) |
kind | String | 必須 | "NodalDisp"/"MemberForce"/"Modal"/"TimeHistory" のいずれか |
node_ids | Option<Vec<u32>> | 任意 | 節点 ID での絞り込み |
member_ids | Option<Vec<u32>> | 任意 | 部材 ID での絞り込み |
step_range | Option<Vec<u64>> | 任意 | [start, end) のちょうど 2 要素。それ以外はエラー |
返り値:
{ "case": 1, "kind": "NodalDisp", "status": "current", "current_scope": "model_input_only", "entry": { /* 選択成果の生成元・版・公開path/hash */ }, "rows": [ /* 明細行 */ ], "truncated": false }
(case, kind) の組が結果ストアにない場合はエラーになります(analysis_run を先に実行する必要があります)。
各 kind の列構成は解析ジョブのフローと結果ストアを参照してください。
生成入力不一致でも保存値は stale として照会できます。生成元不明・版不一致・公開ファイル不整合では status: "unavailable"、機械可読な reason、action: "analysis_run" を返し、rows は返しません。保存成果の生成元と利用可否で判定範囲を確認してください。
実装参照:ハンドラは sepika_mcp::server::SepikaServer::result_get(crates/sepika-mcp/src/server.rs)で、結果の読み出しと絞り込み・行数上限の適用は sepika_mcp::persist::result_get_json(crates/sepika-mcp/src/persist.rs)が担います。
解析ジョブのフローと結果ストア
解析ジョブのフロー
analysis_runを呼び、job_idを受け取る(この時点でジョブはRunningとしてバックグラウンド実行される)analysis_status(job_id)をDone/FailedになるまでポーリングするDoneの場合、analysis_statusのresult_refにサマリ JSON が入っている。さらに詳細な明細(節点変位・部材内力など)が必要ならresult_getを呼ぶ
結果ストアへ保存するジョブは、対象の全種別の書き込み・完了処理とマニフェストの同期に成功した後にだけ Done になります。保存失敗は Failed です。保存中の model_edit と result_get は保存完了を待ちます。計算中にモデルが編集されても、そのジョブは開始時のモデルと解析条件による成果を保存します。
// 1. analysis_run(kind="LinearStatic") の返り値
{ "job_id": "job-0" }
// 2. analysis_status(job_id="job-0") の返り値(Done になった時点)
{
"id": "job-0",
"kind": "LinearStatic",
"status": {
"Done": {
"result_ref": "{\"kind\":\"LinearStatic\",\"case\":1,\"n_nodes\":2,\"n_member_force_rows\":3,\"max_abs_disp\":1.23,\"store\":{\"case\":1,\"kinds\":[\"NodalDisp\",\"MemberForce\"]}}"
}
}
}
// 3. result_get(case=1, kind="NodalDisp") の返り値
{ "case": 1, "kind": "NodalDisp", "rows": [ { "node_id": 1, "ux": 0.0, "uy": 0.0, "uz": 1.23, "rx": 0.0, "ry": 0.0, "rz": 0.0 } ], "truncated": false }
Eigen ジョブの結果は結果ストアに case=0 として格納されます(実荷重ケース番号との衝突を避けるための固定値)。result_get(case=0, kind="Modal") で取得します。
TimeHistory は既存のサンプル波で実行します。サマリの n_steps は積分区間数、n_points は初期点込みの応答点数、end_time は終時刻 [s] です。
正の有限な duration・dt に対して区間数は ceil(duration/dt)、点数はその数+1、終時刻は区間数×dt となります。
0<duration<dt は 1 区間・2 点です。継続時間または刻みが 0 以下・非有限の場合は生成前に失敗し、解析結果を返しません。
時間軸と相対・絶対加速度の意味は 時刻歴応答解析 を参照してください。
実装参照:ジョブの登録・実行・状態は sepika_mcp::server::SepikaServer::{analysis_run, analysis_status}(crates/sepika-mcp/src/server.rs)が、結果の取得は sepika_mcp::persist::result_get_json(crates/sepika-mcp/src/persist.rs)が担います。
保存成果の生成元と利用可否
静的解析の節点変位・部材内力、単独ケース検定の部材内力、固有値のモード情報は、開始時モデルの計算入力、実行したジョブ、解決済み生成条件とともに保存します。通り芯と保存振動荷重ケースは入力照合から除きます。その他のモデル変更は stale として区別します。節点・部材の絞り込みは保存成果の ID に適用するため、現在モデルから対象がなくなっていても過去の行を照会できます。
result_get の status は、入力一致の current、入力不一致の stale、利用不可の unavailable です。current_scope: "model_input_only" は現在モデルとの一致だけを示します。MCP は現在の解析設定を保持しないため、現在設定との一致や法的適合・合否を証明しません。stale の値を現在モデルの成果や検定の根拠として採用せず、解析を再実行してください。
応答の entry は選択成果の case、kind、rows、公開 path と sha256、provenance を含みます。provenance は実行識別 run(再起動後も別実行と区別)、job_kind、開始入力の input_sha256、conditions、計算契約版、結果スキーマ版を保持します。conditions は荷重生成に使った地域係数・地盤・C0・Ai算定法・設計周期 [s] と、実対象ケース/単独検定の荷重状態、固有値の要求モード数を示します。analysis_status の保存サマリにも今回公開した store.entries を返します。同じケースでも run が違う種別を同じ解析の組として扱わないでください。
計算契約版は解析 65、検定 44 です。結果スキーマ版は 1 で、リリース版や OVIKA コンテナの版とは独立します。解析の版はすべての対象成果で、検定の版は単独検定由来の部材内力で、結果スキーマ版とともに完全一致を要求します。正常な行の返却前に生成元・必要条件・版と公開ファイルの SHA-256 を検査します。仕口パネルの柱主軸への座標変換と部材端回転への接続、S造の非線形仕口パネルの降伏式と履歴ばねの降伏値の一致、軸耐力到達・ゼロ耐力・設定可能域外の理由付き停止を解析契約に含みます。解析契約版44以前の解析成果と、単独検定由来の検定契約版27以前の成果は旧版として扱い、現行契約での再計算が必要です。剛心・ねじり剛性を共有する3次元質点系の準備でも、集計・除算不能を正常な座標や剛性へ戻さず拒否します。
検定契約版34には、CFT充填コンクリートのFcが24 N/mm²未満の場合に理由付き検定不能とする条件を含みます。単独検定由来の検定契約版33以前の成果は再利用せず、現行契約で再検定してください。
共通局所座標の断面参照方向に非有限値がある場合、または単位直交基底を解決できない場合は、対象部材と理由を示して計算を拒否する解析契約を含みます。旧解析契約版37以前の成果は、入力が同じでも現在の成果として公開せず、現行条件で再解析してください。
支持面には、共通局所座標で補完なしに得た単位直交基底の断面姿勢を使います。有限投影の丸めによるフェース・小梁自重作用区間・需要の差を防ぐ条件を解析40・検定26の契約に含みます。旧解析39・旧直接検定25の保存成果は再実行が必要です。
解析契約には、弾性梁の有限入力から計算不能な剛性・端部縮約が生じた場合に、対象部材と理由を示して停止する扱いを含みます。解析契約版33以前の保存成果は再解析が必要です。
解析契約には、増分部材応答履歴を有限な単精度値で記録できない場合に正常成果を返さず停止する扱いを含みます。旧契約の保存成果は再解析が必要です。
解析契約には、鉛直柱が支持する二次小梁の実最外側面・有限柱閉区間と、是正フェース区間による設計自重/物理質量相当の転送を含みます。旧フェース契約の成果は、入力が同じでも再解析が必要です。
unavailable の reason | 意味 |
|---|---|
unknown_provenance | 生成元・入力識別・必要条件・版・公開 hash の欠落または不正 |
old_contract | 計算契約版または結果スキーマ版が旧版 |
unsupported_contract | 未来版または未対応のジョブ/結果種別 |
inconsistent_file | 選択した公開ファイルの欠落・hash 不一致・読出し不整合 |
利用不可の応答は rows を含まず、action: "analysis_run" と再実行案内を返します。開き直し・編集・Undo・別種別の再解析や保存は過去成果の生成元や版を補完しません。正常に公開できた新しい成果だけを記録します。保存失敗では以前の公開ファイルと成果情報を保持し、新しい部分成果を照会対象にしません。これは通常の書込み・公開失敗時の契約であり、電源断後の復元保証ではありません。
保存組合せ・自動 G+P+K 検定は引き続きサマリ内だけの非永続成果です。時刻歴の永続化・ページ取得は対象外です。
要求モード数が 0 の Eigen は、既知の生成条件を持つ空のモード成果として保存・照会します。同じ入力では current、rows: [] になります。要求数 0 を条件の欠落や不明と読み替えません。
結果ストアのスキーマ
結果ストアの列構成は以下のとおりです(すべて Arrow の UInt32/UInt64/Float64 列で構成されます)。
NodalDisp
| 列名 | 型 |
|---|---|
node_id | UInt32 |
ux, uy, uz | Float64 |
rx, ry, rz | Float64 |
MemberForce
| 列名 | 型 | 備考 |
|---|---|---|
elem_id | UInt32 | |
pos | Float64 | 評価位置(0..1 の正規化座標) |
n, qy, qz, mx, my, mz | Float64 | 部材内力(軸力・せん断・ねじり・曲げ) |
Modal
| 列名 | 型 |
|---|---|
mode | UInt32 |
period | Float64 |
omega2 | Float64 |
part_x, part_y, part_z | Float64 |
eff_x, eff_y, eff_z | Float64 |
TimeHistory
IO の時刻歴用列構成です。MCP はこの種別を保存せず、現在 result_get で正常な行を返す対象は NodalDisp・MemberForce・Modal のみです。
| 列名 | 型 |
|---|---|
step | UInt64 |
time | Float64 |
node_id | UInt32 |
ux, uy, uz | Float64 |
rx, ry, rz | Float64 |
result_get が 1 回に返す行数の上限は 10,000 行です。超過分は切り詰められ、応答の truncated が true になります。
実装参照:スキーマは sepika_io::results::{nodal_disp_schema, member_force_schema, modal_schema, time_history_schema}(crates/sepika-io/src/results/schema.rs)が定め、結果の書き込みは sepika_mcp::persist::persist_job_outcome(crates/sepika-mcp/src/persist.rs)が行います。
RC壁の参考骨格は同じ静的case/comboの壁脚共通face内力を使い、初期Quは同じrunの静的一次参照から正負別に固定する契約を含みます。建物共通の荒川min/mean方式と新規既定mean、両consumerと同じrunの採用Quへの方式反映を含みます。採用Quのない旧結果や旧計算契約の結果を補完せず、再計算を要します。
制約・注意点
- モデルの読み込みは起動時引数のみ。
.ovikaファイルパスをコマンドライン引数として渡す方法しかなく、実行中にモデルを差し替えたり読み込んだりするmodel.loadのような MCP ツールは存在しません。ST-Bridge ファイルを直接渡すことはできないため、GUI で ST-Bridge を読み込み、.ovikaとして保存してから、そのファイルパスを MCP サーバに渡してください。保存(model.save)と計算書出力(report.export)も未公開です。 - 編集は
model_editで壁版・床板・床領域・壁領域・二次部材(未割当を含む)に限る。壁版 9 コマンド、床板 10 コマンド(囲まれた床板は任意境界ではなく床板割当領域regionへの割当で作る)、床領域 2 コマンド、二次部材 4 コマンド(配置・移動・削除・端部支持条件)、壁領域 1 コマンド、未割当 4 コマンドを GUI と同じ Undo 経路で適用します。節点・部材・荷重など他の編集コマンド、および実行中のモデル差し替えは公開していません。存在しない対象など通常の参照不成立はapplied: false(Noop)になります。割当境界の衝突・版の重複割当・未確認の旧版除去は、モデル・履歴が未更新であることと理由を返します(二次部材の編集確認)。未対応のコマンド名や必須キーの欠落はエラーになります。 - 主架構線材は異なる2節点のみ対応。
Beam・Fiber・MultiSpring・Braceの0・1・3節点以上と同一NodeId二重指定は、quantity_takeoffでstatus=unavailable・totals=null、analysis_runで入力不正の失敗となります。ElemId・kind・実節点数・期待2・入力NodeId列を含む同じ診断を返します。床接触や断面割当の有無によらず拒否し、先頭2節点の採用・自動分割はしません。起動時OVIKA読込も同じ条件です。 - 質点系解析は GUI の右バーからのみ実行できます。
analysis_runのkindには含まれません。 Pushover・TimeHistory・UltimateCheckジョブは結果ストアへ書き込みません。対応する結果スキーマがない、あるいはスキーマが要求する粒度(全節点×全ステップ)のデータを持たないため、結果はanalysis_statusのresult_ref(サマリ JSON)としてのみ得られます。DesignCheckの検定結果(OK/NG・検定比)はサマリのみです。単独ケースのMemberForceは結果ストアへ保存します。保存組合せ・自動G+P+Kはcase: null・store.persisted: falseで、組合せ内力もサマリのみです。analysis_statusのstatus.Done.result_refをJSON文字列として解析し、member_forcesとload_targetを取得してください。内力は最大10,000行(truncated/total_rowsで省略を確認)、サーバープロセス中だけ保持し、result_get/永続化/ページ取得は未対応です。- 未設定の床板・壁版割当領域は、前処理の注意事項(
notices)に件数と対象 ID を記します。矩形RC/SRC大梁が支持する床板の割当が未設定の場合は、実重複控除を確定できないため停止します。それ以外の未設定は警告を添えて続行しますが、床荷重・躯体自重と壁の剛性が解析に入らず応力・変形を過小評価し得るため、解消後に採用してください(GUI では計算前に続行確認を挟みます)。
実装参照:公開ツールと結果ストア書き込みの有無は sepika_mcp::server::SepikaServer(crates/sepika-mcp/src/server.rs)・sepika_mcp::JobKind(crates/sepika-mcp/src/lib.rs)・sepika_mcp::persist::persist_job_outcome(crates/sepika-mcp/src/persist.rs)が定め、モデルの読み込みは起動バイナリ(crates/sepika-mcp/src/main.rs)がコマンドライン引数で行います。
DesignCheckのload_targetは、保存組合せ・自動G+P合成・単独ケースを区別します。未判定の継続時間はterm: null、必要応力の解析失敗は入力不備となり、部分成功で合格を返しません。legal_conditions_verified: falseは地域指定・風時実況等の法的適用条件を自動確認していないことを示します。小梁・床の長期略算はGUIで別計算し、MCPの主架構サマリには含めません。
計算根拠
このセクションは、SEPIKA が行う各計算について、どの基準や法令のどの式で算定しているかを体系的に示します。
構造計算一貫プログラムは、応力や変形、検定比、保有水平耐力といった出力を、法令や規準に定められた根拠に基づいて算定したものだと説明できなければなりません。 このセクションは「なぜその値になるのか」、すなわち法令、規準、力学の根拠を扱います。
この章で確認できる内容
- 各計算が依拠する法令・告示の条項と、学会規準・指針の式
- 画面に表示するときの単位(換算表)
- 共通の主な記号と、各ページの主要な記号・単位
- 各計算に対応する実装コードへの参照(実装参照)
目次
| ドキュメント | 主な内容 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 荷重・外力 | 固定・積載・積雪・地震力(Z・Rt・Ai・C0・T)、荷重組合せ | 令 82〜88 条、昭55建告第1793号(Z・Rt・Ai) |
| 材料構成則・材料強度 | 一軸履歴則、コンクリート/鋼の応力ひずみ、F値、許容応力度の材料基礎 | 令 90〜91 条、令 96・98 条、告示 |
| 断面性能 | 断面諸量(A・I・Z・Zp)、せん断形状係数、ヤング係数、SRC/CFT 等価剛性、ファイバー断面 | RC 規準、各規準 |
| 要素の定式化・剛性 | ティモシェンコ梁、剛域、CMQ、MITC4 シェル、壁エレメント、仕口パネル要素、ばね | 力学(マトリクス法・FEM) |
| 構造解析 | 線形静解析、固有値、幾何剛性、時刻歴(Newmark-β)、減衰、非線形解法、増分解析(プッシュオーバー) | 力学(数値解析法) |
| 一次設計(実務上の章分類) | RC・S・SRC の断面検定、接合部、付着・定着、座屈長さ | 令第82条の6(許容応力度等計算)、同条第1号による第82条各号・第82条の2・第82条の4の参照、RC 規準、鋼構造規準 |
| 二次設計(実務上の章分類) | 保有水平耐力 Qu、必要保有 Qun、Ds、部材ランク、幅厚比、剛性率 Fs、偏心率 Fe、層間変形角 | 令第82条の2(層間変形角)、令第82条の3(保有水平耐力)、昭55建告第1792号(Ds・Fes)、昭55建告第1793号(Z・Rt・Ai) |
| 部材終局耐力 | RC/S/SRC/CFT の Mu・Qmu・Qsu(荒川式・塑性理論式)、耐震壁非線形、接合部終局 | 靭性保証型指針、終局強度型指針、技術基準解説書 |
| 免震・制振 | 免震アイソレータ、摩擦ばね、オイル/履歴ダンパー、座屈拘束ブレース | 各指針 |
| 数量積算 | コンクリート体積・型枠面積・鉄筋/鉄骨重量・鉄筋継手の部位別概算集計 | 概算数量の慣用手法、JIS G 3112 |
法令・規準との関係
法的根拠の全体像
日本の建築構造計算は次の階層で規定されるため、SEPIKA はこの体系に沿って計算を構成しています。
建築基準法 20条(構造耐力)
└ 建築基準法施行令 第3章第8節(構造計算)
├ 第82条〜第82条の4 … 保有水平耐力計算
│ ├ 第82条 … 保有水平耐力計算
│ ├ 第82条の2 … 層間変形角(法令上の上限。画面は設定値との参考比較)
│ ├ 第82条の3 … 保有水平耐力(Qu ≧ Qun = Ds·Fes·Qud)
│ └ 第82条の4 … 屋根ふき材等の構造計算
├ 第82条の5 … 限界耐力計算
├ 第82条の6 … 許容応力度等計算
│ └ 第1号で第82条各号・第82条の2・第82条の4を参照
├ 令85〜86条 … 積載荷重・積雪荷重
├ 令88条 … 地震力(C0・Ci・Z・Rt・Ai)
├ 令89〜94条 … 材料の許容応力度・材料強度(鋼・コンクリート・鉄筋等)
├ 令96・98条 … 溶接・材料強度
└ 告示
├ 昭55建告1793号 … Z(地域係数)・Rt(振動特性係数)・Ai(高さ方向分布)
├ 昭55建告1792号 … Ds(構造特性係数)・Fes(形状係数 Fs・Fe)
├ 平12建告1455号 … 積雪(区域・単位荷重・多雪区域)
└ 平12建告1458号 … 保有水平耐力に関する基準 等
学会規準・指針
法令が直接には数値を与えない部材耐力式などは、次の学会規準や指針を根拠とします。
RC 規準:日本建築学会『鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説』。
鋼構造規準:日本建築学会『鋼構造設計規準』および『鋼構造許容応力度設計規準』。
塑性設計指針:日本建築学会『鋼構造塑性設計指針』。
靭性保証型指針:日本建築学会『鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針・同解説』。
終局強度型指針:日本建築学会『鉄筋コンクリート造建物の終局強度型耐震設計指針・同解説』。
技術基準解説書:『建築物の構造関係技術基準解説書』(国土交通省住宅局建築指導課ほか監修)。
SRC 規準:日本建築学会『鉄骨鉄筋コンクリート構造計算規準』。
CFT 指針:『コンクリート充填鋼管(CFT)構造設計・施工指針』。
出典の分類(Category A / B)
本ソフトが用いる数値や式は、次のように区分します。
Category A(法令・告示の公開値):誰でも原典(法令や告示)で照合できる値を指すため、このセクションはこれらを条番号や式番号まで明示します。
Category B(学会規準・私的規準の係数):学会規準や指針に基づく部材耐力式の係数などを指すため、出典の文献名とページを併記し、利用組織がライセンスや実測で確定すべき旨を明記します。
力学の閉形式:ティモシェンコ梁剛性、CMQ、Newmark 更新式のような教科書的な力学式を指すため、原典照合ではなく、理論解と一致するかどうかを検証します。
このほか、規準・指針が式を直接与えない実務的取扱い(床荷重の分配、壁エレメント置換、剛床への荷重按分など)は「実務慣用」と明記します。 製品固有の係数(免震・制振部材のアイソレータ・ダンパー・座屈拘束ブレース等)はCategory Bとして扱い、対応する製品別の採用値・認定値と適用条件を用います。同じ構造形式という理由だけで別製品へ一般化しません。
単位系
各ページの記号・単位表および算定式は、法令・告示・学会規準が用いる単位で記載します。 法令が m で定める建物高さ・地下階の深さなども、原典どおり m で書きます。 荒川式のように工学単位系(kgf/cm²)で導出された実験式は、単位換算(1 kgf/cm² = 0.0980665 N/mm²、1 kgf = 9.80665 N)を施してから評価します。
画面に表示する単位は、量ごとに実務の慣例へ合わせて換算します。
| 量 | 画面に表示する単位 |
|---|---|
| 力(軸力・せん断力・重量) | kN |
| モーメント | kN·m |
| 単位幅あたりモーメント | kN·m/m |
| 階高・建物高さ・スパン | m |
| 断面寸法・鉄筋径・変位 | mm |
| 応力度・材料強度 | N/mm² |
| 面荷重(床・雑壁) | kN/m² |
| 断面積 A・せん断有効断面積 As | cm² |
| 断面二次モーメント I・ねじり定数 J | cm⁴ |
| 断面係数 Z(弾性・塑性) | cm³ |
| 断面二次半径 i | cm |
| バネ定数・線剛性 | kN/mm |
| 粘性係数 C0(マクスウェル) | kN·(s/mm)^α |
断面性能を cm 系で示すのは、JIS 形鋼表の慣例に合わせるためです。 同じ量は、どの画面でも同じ単位で表示します。 該当する箇所は各ページで明記します。
実装参照:画面表示の単位換算(上表)と単位ラベルは sepika_core::units::to_display(crates/sepika-core/src/units.rs)に量ごとに一元化しています。
記号の扱い
主な記号は次のとおりです。
| 記号 | 意味 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|---|
F | 鋼材の基準強度(F 値) | Fc | コンクリート設計基準強度 |
σy / σwy | 主筋/せん断補強筋の降伏強度 | pt / pw | 引張鉄筋比/せん断補強筋比 |
E / G | ヤング係数/せん断弾性係数 | A / I / Z / Zp | 断面積/断面二次モーメント/断面係数/塑性断面係数 |
M / Q / N | 曲げ/せん断力/軸力 | Mu / Qmu / Qsu | 終局曲げ耐力/曲げ終局時せん断力/終局せん断耐力 |
Ci | i 層の地震層せん断力係数 | Qud | 地震時の設計用層せん断力 |
Ds | 構造特性係数 | Fes | 形状係数(Fs·Fe) |
各ページには、そのページの式を読むために必要な主要な記号と単位の表も置きます。 各ページの記号・単位表および算定式は、法令・告示・学会規準が用いる単位で記載します。 画面に表示する単位は、上記「単位系」の換算表で対応を示します。
実装参照の読み方
このセクションの各ページには、その説明に対応する実装箇所を示す <div class="impl-ref"> の表示が入ります。中には、次のように関数・モジュール名とソースファイルを書きます。
**実装参照**:`sepika_xxx::module::item`(`crates/...`)が…します。
この表示は警告やエラーではありません。計算を実装しているコードへたどるための入口を示すものです。 行番号は、コードの変更で陳腐化するため書きません。コードを確認するときは、示された関数名やファイルパスをコード検索でたどってください。
このドキュメントは実装が依拠する根拠を説明するものであり、個々の建築物の設計における式の適用可否(適用範囲や前提条件)の判断は、設計者(構造設計一級建築士等)の責任に属します。
開発者向け: 設計判断・検証記録
- 設計判断・検証記録(dev_docs/):開発者向け文書の配置。出典の分類 A/B の根拠となる原典照合リストは Verification & Validation として
dev_docs/v_and_v/にあります。 - 検証記録(dev_docs/v_and_v/):各要素・各設計式の Verification & Validation レポート。
- 力学の閉形式(ティモシェンコ梁剛性、CMQ、Newmark 更新式など)は、理論解と一致するかどうかの数値 DoD で自己検証し、その記録を V&V に置いています。
荷重・外力
このソフトは、固定荷重、積載荷重、積雪荷重、地震力を算定するもので、地震力は建築基準法施行令 88 条および昭和 55 年建設省告示第 1793 号を根拠とします。風圧力は算定しません。風荷重を考慮する場合は、荷重ケースを種別「風荷重」で作成し、荷重を直接入力します。
この章の内容
地震力
地震力は現在の入力から確定した階重量を使います。材料密度・床仕上げ・地震用積載などを編集した後も、 解析実行前に重量と EX・EY を一括更新します。重量や周期が古い場合は旧値と新係数を混成せず、 旧自動水平力を両方向とも使用不可にして原因を示します。通常の手入力荷重は保持します。 算定と構造解析の準備は独立し、Ai・Ci・Qi・Pi の算定に剛性行列の組立は不要です。
地震層せん断力係数 Ci と層せん断力 Qi
地震層せん断力係数 Ci と層せん断力 Qi は、建築基準法施行令 88 条に基づいて算定します。
\[ C_i = Z \cdot R_t \cdot A_i \cdot C_0 \]
\[ Q_i = C_i \cdot W_i \]
ここで Wi は当該層が支える部分の固定荷重と地震用積載荷重に、多雪区域では必要な積雪荷重を加えた地震用重量、すなわち当該層以上の累積重量を表します。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( C_i \) | i 層の地震層せん断力係数 | - |
| \( Q_i \) | i 層の地震層せん断力 | N |
| \( W_i \) | i 層以上の累積地震用重量(固定+地震用積載、多雪区域では必要な積雪を含む) | N |
| \( W_{\text{total}} \) | 地上部分の地震用重量 | N |
| \( Z \) | 地域係数 | - |
| \( R_t \) | 振動特性係数 | - |
| \( T \) | 建物の一次固有周期 | s |
| \( T_c \) | 地盤種別ごとの卓越周期 | s |
| \( A_i \) | i 層の高さ方向分布係数 | - |
| \( C_0 \) | 標準せん断力係数 | - |
| \( \alpha_i \) | i 層以上の累積重量比 | - |
| \( P_i \) | i 層に作用する水平外力 | N |
| \( h \) | 建物高さ(略算周期用) | m |
| \( \alpha \) | 鉄骨造部分の高さ比 | - |
| \( k \) | 塔屋(PH)階の指定震度 | - |
| \( K_i \) | 地下階の水平震度 | - |
| \( H_i \) | 地盤面からの深さ | m |
算定式
当該層以上の累積重量比:
\[ \alpha_i = W_i / W_{\text{total}} \]
\[ A_i = 1 + \left( \frac{1}{\sqrt{\alpha_i}} - \alpha_i \right) \cdot \frac{2T}{1 + 3T} \]
\[ C_i = Z \cdot R_t \cdot A_i \cdot C_0 \]
\[ Q_i = C_i \cdot \alpha_i \cdot W_{\text{total}} = C_i \cdot W_i \]
各層水平外力(最上層は \( P_i = Q_i \)):
\[ P_i = Q_i - Q_{i+1} \]
実装参照:sepika_load::ai::ai_distribution(crates/sepika-load/src/ai.rs)が標準式を計算し、sepika_solver::statics::analysis::seismic_distribution_for_model(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/seismic.rs)が入力と適用可否を検証します。
Pi の載荷先:各層の水平外力 \( P_i \) は、その階の剛床(ダイアフラム)の代表節点へ載せます。 載荷先は階の剛床の数で決まります。
| 階の剛床 | \( P_i \) の載荷先 |
|---|---|
| 1 つ | その剛床の代表節点へ全量 |
| 複数(段差床など) | 剛床ごとの地震用重量の比で按分。重量が未算定の剛床は 0 とし、合計が 0 なら等分割 |
| なし | 階に属する節点へ質点質量の比で分配。質量が未設定または合計 0 なら等分割 |
剛床のない階でも層せん断力の総量 \( P_i \) は保たれます(階と剛床は別のものであり、 剛床を持たない階にも法規上の層としての水平力が生じるため)。ただし載荷位置は床面の 代表点ではなく個々の節点になります。
副剛床の層せん断力係数 \( C_i \) を直接入力した剛床は、主系統の Ai 分布から除外し、 その剛床の重量に \( C_i \) を乗じた水平力を等価震度として別途作用させます。主系統の 地震用重量は、階の地震用重量から副剛床の重量を控除した値とします。副剛床重量が階重量を超える入力はエラーです。
振動特性係数 Rt
振動特性係数 Rt は、昭和 55 年建設省告示第 1793 号 第 2 に基づき、地盤種別ごとの卓越周期 Tc によって 3 つに場合分けして算定します。
算定式
\[ R_t = \begin{cases} 1.0 & (T < T_c) \\ 1 - 0.2 (T/T_c - 1)^2 & (T_c \le T < 2T_c) \\ 1.6 T_c/T & (2T_c \le T) \end{cases} \]
実装参照:sepika_load::ai::rt(t, tc)(crates/sepika-load/src/ai.rs)が算定します。
地盤種別と卓越周期 Tc
卓越周期 Tc は、昭和 55 年建設省告示第 1793 号 第 2 に基づき、第 1 種、第 2 種、第 3 種の地盤種別ごとに定めます。
算定式:第 1 種 \( T_c = 0.4\ \text{s} \)、第 2 種 0.6 s、第 3 種 0.8 s。
実装参照:sepika_load::ai::tc_of(soil)(crates/sepika-load/src/ai.rs)が算定し、地盤種別は SoilClass { I, II, III } で表します。
高さ方向分布係数 Ai
高さ方向分布係数 Ai は、昭和 55 年建設省告示第 1793 号 第 3 に基づいて算定します。 αi の分子・分母には上記の同じ地震用重量を用い、地下重量は含めません。
算定式
\[ A_i = 1 + \left( \frac{1}{\sqrt{\alpha_i}} - \alpha_i \right) \cdot \frac{2T}{1+3T} \]
SEPIKA の地震係数入口は確定した階の地震用重量を使用します。多雪区域の地震時荷重組合せでは積雪低減係数 δ3(既定0.35)を扱いますが、階重量の自動生成は固定荷重と地震用積載荷重から行い、Snow ケースの必要積雪分を自動加算しません。多雪区域では必要な積雪分を含む地震用重量を別途確認・設定してください。荷重組合せの積雪対応だけで Ai の重量も確認済みとはしません。
実装参照:sepika_load::ai::ai_distribution(crates/sepika-load/src/ai.rs)が算定します。
重量比 αi が 0 の層:当該層以上の地震用重量がない場合、標準式の Ai は定義できません。準備表と標準 EX/EY 荷重の生成は理由付きエラーとし、Ai=0 の適合結果として表示しません。全層重量 0・未設定・負値・非有限値も算定できません。
地域係数 Z
地域係数 Z は、昭和 55 年建設省告示第 1793 号 第 1 の表 の地方区分ごとの Z 値に基づいて与えるもので、取り得る値は 1.0、0.9、0.8、0.7 です。
算定式:地方区分ごとに定まる定数であり、式ではなく告示第1の表からの読み取りによります。
入力:右パネル「① 準備計算」の「地震力の条件」で、建設地の Z を直接入力します(既定 1.0)。Z は有限の正数かを検証しますが、数値入力だけで地域適合を確認済みにはしません。敷地に適用する地方区分と根拠資料は設計者が確認してください。全自治体の現行区域マスターと地域自動判定は未対応です。
実装参照:右パネル「① 準備計算」の入力は sepika_app::app::panels::preparation(crates/sepika-app/src/app/panels/preparation.rs)が受け付け、値は sepika_job::AnalysisSettings::z(crates/sepika-job/src/settings.rs、既定 1.0)が保持して地震力の算定へ渡ります。
標準せん断力係数 C0
標準せん断力係数 C0 は令88条2項により通常 \(C_0\ge0.2\)、同3項の必要保有水平耐力用地震力では \(C_0\ge1.0\) が下限です。SEPIKA の二次設計は1.0を採用します。 Qud は選択した略算周期を用いて地上部・地下部の標準式で算定し、参考固有値の存在で周期を変更しません。指定 Ci の副剛床の必要耐力用適用は未検証のため Qud 入口では未対応です。通常入口では有限値かつ0.2以上を要求します。著しく軟弱な指定区域の一定の木造建築物に対する0.3下限は、木造を扱わない本機能の対象外です。指定区域は第3種地盤という土質条件だけでは確定せず、特定行政庁の指定を別途確認します。
実装参照:C0 は sepika_solver::statics::analysis::SeismicCfg::c0(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/config.rs、既定 0.2)に保持され、層せん断力の算定 sepika_load::ai::ai_distribution(crates/sepika-load/src/ai.rs)には引数として、荷重ケース構築 sepika_solver::statics::analysis::Analysis::build_seismic_load_case(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/seismic.rs)には SeismicCfg の一部として与えられます。
一次固有周期の略算 T
一次固有周期 T は、令 88 条および昭和 55 年建設省告示第 1793 号に基づき \( T = h(0.02 + 0.01\alpha) \) で略算します。 告示第2の α は柱・はりの大部分が木造又は鉄骨造である階(地階を除く)の高さ比です。SEPIKA は木造を扱わず、S造一般層のうち、GL から最上一般床までに含まれる高さの合計を建物高さ h で除します。一般層の下端床が GL より下にある場合、その地下部分の高さは分子に含めません。h は GL から PH を除く最上一般階までとする現在の対応範囲であり、塔屋の高さ算入等の特殊条件の自動適用判断は行いません。RC 造 0.02、S 造 0.03 に相当します。
算定式
\[ T = h \cdot (0.02 + 0.01 \cdot \alpha) \]
鉄骨造比(0〜1 にクランプ):
\[ \alpha = \frac{\sum(\text{一般S層のGL以上の高さ})}{h} \]
階が S 造かどうかは、その階に属する柱・梁の構造種別を集計して決めます (構造種別の判定・ 準備計算「階の分布」を参照)。
実装参照:sepika_load::ai::approx_t(height_m, steel_ratio)(crates/sepika-load/src/ai.rs)が算定し、鉄骨造比は sepika_solver::statics::analysis::steel_height_ratio(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/seismic.rs)が求めます。
T 算定法の選択(略算/精算)
右パネル「① 準備計算」の「地震力の条件」で、既定の略算を選択します。略算周期は固有値解析を必要としません。周期は有限の正数を要求し、0.3 s 等の代替周期は採用しません。EX・EY 両方向には同じ T を用います。
固有値周期による地震力は未対応です。固有値解析の参考周期は取得できますが、解析済みの周期や MCP の design_period 数値だけでは告示第2ただし書の適用証拠になりません。標準 EX/EY 荷重と準備表は理由付きで算定を止めます。未実行の場合は固有値結果がないことを案内します。
告示第2ただし書の精算には、弾性域(RC はひび割れ前)の剛性、地盤・杭の変形を考慮しない条件、有効高さ、精算方法の確認が必要です。条件を満たす精算の理論上の採用値は \( R_{t,採用}=\max(R_{t,精算},0.75 R_{t,略算}) \) です。略算 0.8・精算 0.5 なら採用 0.6、精算 0.7 なら採用 0.7 です。この下限は周期 T でなく Rt に掛かります。SEPIKA は適用証拠の保存・検証とこの精算採用経路を実装していません。任意周期に下限演算だけを加えて適合扱いにはしません。Ai の特別な調査・研究による例外も未対応です。
EX/EY の単体解析は同期済みの荷重ケース ID を解き、Ai 水平力に同じケースの手入力荷重・片持ちスラブ先端荷重を加えて反映します。 標準 EX/EY の Ai 水平力を再生成できない場合は、先端荷重の有無にかかわらず失敗方向の旧 Auto 水平力だけを取り除きます。 手入力荷重(Manual)と先端荷重(SlabTip)は保持しますが、手入力水平力があっても Ai の再生成に成功するまで該当方向の単体解析・依存する組合せ解析は実行できません。
準備計算を含め、再生成失敗を検出した時点で該当方向の単体結果と依存する組合せの旧結果を削除します。 成功した方向と無関係な結果は保持するため、たとえば EX だけが失敗した場合に EY の結果まで失うことはありません。 削除対象を表示していた場合は選択と応力・検定の表示用キャッシュも解除し、再生成が必要であることを通知・ログで案内します。
実装参照:sepika_app::app::actions::linear_static(crates/sepika-app/src/app/actions/linear_static.rs)が同期済みケースを解き、sepika_job::compute::missing_seismic_horizontal_load(crates/sepika-job/src/compute.rs)が水平力の欠損を判定します。
塔屋(PH)階・地下階を含む地震層せん断力分布
地下階の標準経路は令88条4項の下限震度を採用し、直上層から伝わる層せん断力を加えます。H は地盤面からの深さ [m](入力は mm)で、有限の非負値を要求します。 各地下床の標高+H は同じ地盤面 GL を示す必要があり、差が0.001 mmを超える入力は地震力・準備表・Qud・増分載荷の標準入口で拒否します。許容差は座標の大きさによって拡大しません。
\[ K_i=0.1(1-\min(H_i,20)/40)Z \]
\[ Q_i=Q_{i+1}+K_i w_i \]
ここで地下層の \(w_i\) はその層自身の重量です。Z=1、H=0/20/25m では K=0.10/0.05/0.05 になります。地下重量は地上部の αi に含めません。地盤や建物の動的性状に基づく地下震度例外は未対応です。
塔屋等を通常Aiで建物全体の一部として計算する場合と、屋上突出物・設備の局部地震力を検討する場合は対象が異なります。通常Aiで計算する塔屋は設計者が適用条件と有効高さを確認して一般階として定義します。局部検討の対象をこの設定で代用しません。
PH種別の既存指定震度の参考計算は \(Q_i=k\sum W_j\) で、k に Z を再乗算しません。Z=0.8、k=1、PH重量100kNでは参考値100kNです。これは K=Z による80kNとも通常Aiの階地震力とも別の入力契約です。PH種別は標準 EX/EY と準備表では適用未検証として拒否します。指定震度を無根拠に変更したり、通常階・局部対象へ自動分類したりしません。
負Pi(数値誤差を超える値)・非有限結果・ΣPi と基部せん断力の不一致・載荷先の欠落・分配合力の不一致も、標準荷重を生成できない理由として表示します。階種別は下から地下→一般→PHの順、階レベルは有限値の厳密な昇順が必要です。
実装参照:sepika_solver::statics::analysis::seismic_distribution_for_model と build_seismic_load_case_from_model(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/seismic.rs)が標準入口の診断・地下算定・分配を担います。sepika_load::ai::seismic_shear_distribution(crates/sepika-load/src/ai.rs)は適用検証を行わない参考数値計算です。
出典と確認範囲
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第88条:地上地震力、C0下限(2・3項)、地下(4項)。適用日に有効な版を確認してください。現行政令全文と全適用条件の照合完了を保証するものではありません。
- 建設省住指発第96号「建築基準法施行令の一部改正(構造計算関係)について」昭和56年5月1日、第三・二(一)(二)、別記四(HTML、頁なし):Ci、告示1793号の指定、地下直上Qの加算、Rt/Tの運用。歴史的通達であり現行政令全文の代替ではありません。
- 国土交通省「官庁施設の総合耐震診断・改修基準」(平成8年)による耐震診断方法、PDF pp.1–2:Z=告示1793号第1、Rt=第2、Ai=第3の条項対応。官庁施設の診断の追加係数を一般建物へ転用しません。
- 国住指第1335号、平成19年6月20日・同年8月10日改正の技術的助言、3(2)③ PDF p.7、4(3)PDF pp.11–12:通常Aiの階と突出部局部の区別、Rt精算の初期剛性・境界条件・有効高さ。
- 国立国会図書館・日本法令索引、告示1793号:昭和55年11月27日公布、有効、昭和62年告示1918号と平成19年告示597号による改正履歴。本文・全地域の現行区分を確認する資料ではありません。
告示1793号の第1の表(Z)、第2(Rt、T、地盤)、第3(Ai)を採用します。地盤第1種は岩盤・硬質砂礫層等、第3種は腐植土・泥土等に準じ沖積層深さ概ね30m以上等の条件、第2種はそのいずれでもないものです。数値タグだけで敷地の地盤判定は確定せず、地盤調査と告示の実態条件を設計者が照合してください。全自治体、官報原本全体、公的現行統合告示の原画像の照合は未完了です。公式公開の2007年告示対照資料に「改正案」とあるものは公布原本とは扱いません。告示1101号は一般地震層せん断力の根拠として引用しません。
積載荷重
積載荷重は室の用途に応じて定めます。建築基準法施行令 85 条 1 項の別表は、(い)「床の構造計算をする場合」、 (ろ)「大ばり、柱又は基礎の構造計算をする場合」、(は)「地震力を計算する場合」の 3 列を、用途ごとに使い分ける ことを求める(同一用途でも (い)≧(ろ)≧(は) の関係にあります)。(い) 欄は床版と小梁を分けていません。
本プログラムは積載荷重を床用・小梁用・大梁用・地震力用の 4 区分で保持します。ただし法令上 (い) 欄は床版と小梁で共通(官庁営繕 「建築構造設計基準」等では「床版又は小梁計算用」と整理)のため、用途プリセットの「小梁用」は「床用」 と同じ値を返します。小梁用を床用から独立して指定したい場合は「任意入力」を使います。
- 床用:床スラブの設計に用いる。
- 小梁用:小梁の設計に用いる。用途プリセットでは法令上 (い) 欄(床版と小梁で共通。官庁営繕「建築構造設計基準」等では「床版又は小梁計算用」と整理)に同じで、床用と同じ値になる。
- 大梁・柱・基礎用:長期の骨組解析(大梁・柱・基礎の設計)に用いる。
- 地震力用:地震力(地震用重量)の算定に用いる(4 区分のうちもっとも小さい)。
用途別の積載荷重
用途プリセットの値は次表によるもので(単位 N/m²)、出典は建築基準法施行令 85 条 1 項・令別表第 1、 および国土交通省官庁営繕部「建築構造設計基準」令和 3 年度版です。後者は令 85 条を準用しつつ、 官庁施設に特有の室用途(書庫・実験室・電算室・機械室・体育館等)を追加しています。
| 室名等 | 床用 | 小梁用 | 大梁・柱・基礎用 | 地震力用 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 住宅の居室・寝室・病室 | 1,800 | 1,800 | 1,300 | 600 | 令 85 条による |
| 事務室・会議室・食堂 | 2,900 | 2,900 | 1,800 | 800 | 令 85 条による |
| 研究室 | 2,900 | 2,900 | 1,800 | 800 | 実況に応じて算定する(値は事務室に同じ) |
| 教室 | 2,300 | 2,300 | 2,100 | 1,100 | 令 85 条による |
| 百貨店・店舗の売場 | 2,900 | 2,900 | 2,400 | 1,300 | 令 85 条による |
| 集会室・客席(固定席) | 2,900 | 2,900 | 2,600 | 1,600 | 令 85 条による |
| 集会室・客席(その他) | 3,500 | 3,500 | 3,200 | 2,100 | 令 85 条による |
| 廊下・玄関・階段(集会場・売場等に連絡) | 3,500 | 3,500 | 3,200 | 2,100 | 令 85 条による |
| 法務局登記書庫 | 5,900 | 5,900 | 4,900 | 3,900 | 法務省型鋼製書架 W 型 8 段 6 連を配置した場合 |
| 一般書庫・倉庫等 | 7,800 | 7,800 | 6,900 | 4,900 | 通常の階高の室に満載の書架を配置した場合 |
| 移動書架書庫・電算室空調機室・用具庫等 | 11,800 | 11,800 | 10,300 | 7,400 | 一般書庫の 1.5 倍程度 |
| 一般実験室(化学系) | 3,900 | 3,900 | 2,400 | 1,600 | |
| 一般実験室(物理系) | 4,900 | 4,900 | 3,900 | 2,500 | |
| 電算室 | 4,900 | 4,900 | 2,400 | 1,300 | 床用は電算室用既製床の耐荷重、大梁・柱・基礎用と地震力用は令 85 条の店舗の売場を準用 |
| 機械室 | 4,900 | 4,900 | 2,400 | 1,300 | 床用は機械の平均的な重量、大梁・柱・基礎用と地震力用は令 85 条の店舗の売場を準用 |
| 体育館・武道場等 | 3,500 | 3,500 | 3,200 | 2,100 | 振動等を考慮し令 85 条の劇場等(その他)を準用 |
| 自動車車庫・通路 | 5,400 | 5,400 | 3,900 | 2,000 | 令 85 条による |
| 片持形式のバルコニー・庇等 | 1,800 | 1,800 | 1,300 | 600 | 令 85 条のバルコニーを準用 |
| 屋上広場(学校・百貨店の類を除く) | 1,800 | 1,800 | 1,300 | 600 | 令 85 条の屋上広場を準用 |
| 屋上広場(学校・百貨店の類) | 2,900 | 2,900 | 2,400 | 1,300 | 令 85 条の屋上広場を準用 |
| 屋上(通常人が使用しない場合) | 980 | 980 | 600 | 400 | |
| 屋上(鉄骨造体育館・武道場等) | 980 | 980 | 0 | 0 | 短期荷重とする(作業荷重を考慮)。積雪荷重及び風荷重との組合せは行わない |
小梁用は、令 85 条 1 項の別表では (い) 欄「床の構造計算をする場合」に属し、床版と小梁を分けていません (官庁営繕「建築構造設計基準」等では「床版又は小梁計算用」と整理)。上の表では床用と同じ値を掲げますが、 「任意入力」では小梁用を床用から独立して指定できます。
用途を指定しない場合、積載荷重は 0 とします(固定荷重のみを考慮します)。表以外の用途は 「任意入力」を選び、床用・小梁用・大梁・柱・基礎用・地震力用の 4 値を直接与えます。
単位換算:内部計算は N-mm-s 系(面荷重は N/mm²)で行うため、上表の N/m² を ×10⁻⁶ して N/mm² に換算して用います。
備考の扱い:屋上(鉄骨造体育館・武道場等)は、床用・小梁用のみ作業荷重を短期荷重として 見込み、大梁・柱・基礎計算用および地震力計算用は 0 とします。研究室・電算室・機械室の値は 特定の書架・機器の配置を前提とした標準値であり、実況に応じて設計者が別途算定して構いません。
実装参照:用途プリセットは sepika_core::model::{SlabUsage, LoadPurpose}(crates/sepika-core/src/model/slab.rs)が保持し、SlabUsage::live_load が計算目的に応じた表値を ×10⁻⁶ して N/mm² で返します。
柱の積載荷重低減(支持床数による低減)
柱の積載荷重は、建築基準法施行令 85 条 2 項に基づき、支える床の数に応じて柱および基礎の積載荷重を低減します。
算定式(低減率表):支持床数 1→1.0、2→0.95、3→0.90、4→0.85、5→0.80、6→0.75、7→0.70、8→0.65、9 以上→0.60。
実装参照:sepika_load::live_load::column_live_load_reduction(crates/sepika-load/src/live_load.rs)が算定し、支持床数は floors_supported_by_column が求めます。
Model.load_cfg.live_load_reduction(既定 false。既定では低減しません)が有効なときのみ適用する想定です。
床荷重の分配(スラブ → 梁・柱)
床荷重の分配は、負担面積法と 45° 振り分けによる三角形・台形分布の力学に基づいて算定します(一貫構造計算の標準的な床荷重分配法)。 総和保存(\( \sum \text{梁・小梁・柱荷重} = w \times \text{面積} \))を全経路で満たします。
床領域は、水平な大梁が作る閉路ごとに 1 つです。床領域そのものは版の仕様を持たず、 名前と、床領域内の小梁・床板(スラブ)をまとめる単位です。 床板(スラブ)は、大梁または小梁で囲まれた版、または主架構に取り付く版(片持ち・バルコニー・ 出隅)ごとに 1 つで、断面(板厚・材料)・仕上げ荷重・室用途・分配方法を持ちます。 1 つの床領域は、床領域内が小梁でさらに細かい打設単位に分かれていれば複数の床板を持ちえます。 取り付く床板はどの床領域からも参照されない独立した床板です。
囲まれた床板の境界は、床板自身ではなく床板割当領域(FloorPlateAssignmentRegion)が
保持します(ADR 0020)。床板割当領域は、水平な大梁と、両端が支持された小梁とを面走査して
レベルごとに分割した閉領域です。囲まれた床板は 1 つの割当領域へ 1 枚だけ割り当て、境界はその
割当領域の境界をそのまま使います。境界の 1 辺は 1 つの支持部材(大梁または小梁)と、その材軸上の
無次元区間に対応します。境界の頂点にモデル節点が無くても(小梁の端が大梁の材軸中間にある場合
など)支持先と荷重を取り落としません。
同じ境界辺の位置に支持部材が重なる場合は、異種(大梁と小梁)なら主架構(大梁)を支持部材と して採用し、同種(大梁どうし、小梁どうし)なら荷重の受け手が一意に決まらないため解析前 チェックのエラーとして止めます(ADR 0021)。平行に並ぶだけ(材軸が一致しない)の部材は、同じ位置に重なったものではないため重なり検出と主架構優先の対象にしません(別の辺の支持部材や、領域を分割する間柱にはなり得ます)。
ST-Bridge の取り込み直後と、準備計算が荷重ケースを同期する前に、二次部材の端を支持部材アンカーへ
解決したうえで、大梁と両端支持の小梁から床板割当領域を再構築します。同じ境界の割当領域は ID と
割当状態を維持し、境界が変わった割当領域だけを新しい ID の未設定領域へ置き換えます。面走査へ
入れる小梁は両端が支持されたものだけで、片持ちの自由端と支持が決まらない端(Detached)は
境界に使いません。あわせて主架構から大梁の閉路を検出し、既存の床領域を作り直します。囲まれた
床板は、割り当てられた床板割当領域の境界多角形の重心の XY が床領域の内部に入り、かつレベルが
一致する床領域へ結び付けます(FloorRegion.slab_ids)。同じレベルとみなす Z の差は 1 mm 以内です。
内部判定は辺上 1 mm 以内を含めません。重心が複数の床領域に入るとき(中庭の内側閉路と、穴を無視
した外側多角形など)は、面積が小さい方へ付けます。面積が同じ場合は、検出順が先の床領域とします。
旧床領域と新しい床領域の面積の相対差が \( 10^{-3} \) 未満なら照合できたものとして数えます。
中庭のように床板のない閉路は、床板を持たない床領域として残します。
どの床領域にも入らない床板は、水平大梁にちょうど 1 辺が全長載り、かつ自由端が 1 点または 2 点の ときに限り、ST-Bridge の取り込みで取り付く床板へ変換します。辺の全長を覆う判定のずれは 10 mm 以内です。張り出し量の正の向きは、取付き線の始点から終点を見て左側です。変換した取付き線の区間は 全長(無次元位置 \( [0, 1] \))です。荷重の出口は取付き線への分布です。 大梁に載る辺が 0 本または 2 本以上のとき、および自由端が 3 点以上のとき(出隅・L 形など)は、 囲まれた床板のまま残します。断面が割り当たった床板がどの床領域にも載らない場合は、 取り込み報告と診断に警告を出します。床板をモデルから落とすことはしません。 既存の取り付く床板は消しません(支持部材の間ごとの分割・統合は後述します)。 取付き線は、無次元位置 \( [t_i, t_j] \)(\( 0.0 \le t_i \lt t_j \le 1.0 \)、既定は全長 \( [0.0, 1.0] \))で表す区間だけを覆うことができます。腰壁の開口、パラペットの 途切れ、バルコニーが梁スパンの途中までしか出ていない、といった形を表すためです。 区間の範囲外は \( 0.0 \le t_i \lt t_j \le 1.0 \) を満たさないため、モデル検証が エラーとして止めます。
実装参照:大梁と両端支持の小梁からの床板割当領域の再構築は Model::rebuild_floor_assignment_regions(crates/sepika-core/src/model/assignment_region.rs)が行います。大梁の閉路の再検出による床領域の作り直しと、床板の帰属の付け替え・支持部材の間の床板の分割と統合は sepika_core::region_rebuild::rebuild_floor_regions(crates/sepika-core/src/region_rebuild.rs)が行います。ST-Bridge 取り込みでのスラブの割当領域への分割割当・面積按分と、どの割当領域にも入らない版の取り付く床板への変換は sepika_io::stbridge::import::assemble::assign_imported_slabs(crates/sepika-io/src/stbridge/import/assemble.rs)が行います。
取り付く床板の入力検査
GUI 編集・MCP の作成更新・プロジェクト読込・ST-Bridge 取込・解析前は、同じ床板 ID と理由で不正な幾何や支持先を拒否します。編集は複数セルの貼付けも含めて全体を拒否し、元のモデルと undo/redo 履歴を保持し、解析結果と準備計算の有効状態も変えません。GUI のステータスバーと床板表、MCP のエラーで理由を確認できます。
取付き節点の参照と座標、線の無次元区間、張り出し量が有限で、生成境界の XY 投影面積が正でなければなりません。取付き線の XY ゼロ長、両端ともゼロの張り出し量、逆符号による自己交差は拒否します。同符号の台形・反対側への張出し・正当な部分区間は許可します。一端だけゼロの張出しは連続重複頂点を除いた三角形として扱います。点取付きは全体 X/Y の張り出し量がそれぞれ非ゼロなら、正負の組合せによらず矩形として許可します。点取付きへの自動変換や L 形分割は行いません。
区間には既存の無次元許容差 1e-9 を適用します。上下端にこの許容差以内ではみ出す位置は境界生成時に 0 または 1 に丸めます。ゼロ長と連続重複頂点は長さ 1e-9 mm、面積縮退は境界ボックスの最大辺長の二乗に対して 1e-12 以下と判定します。面積の単位は mm² です。支持梁材軸からの距離は既存の支持解決と同じ 10 mm を許容し、取付き区間内の欠落と正長の重複の判定は 1e-9 mm を用います。材軸の距離許容と幾何のゼロ長許容は別の用途です。
取付き線への分布は、その区間全体が主架構の梁に覆われ、各部分に荷重受け手が一つだけあることを検査します。連続する分割梁は許可し、重複する梁の先頭や最寄りの一つを黙って採用しません。別々の床板が同じ梁を使うことは許可します。点取付きと両端集中は指定節点を支持先とし、部材と未接続の幾何節点では、既存の集中荷重変換に対応する梁スパン内の候補が一つであることを検査します。欠落・複数候補は拒否します。
台形・三角形・点取付き・入力検査・許容差はSEPIKAの採用条件です。1 本の大梁に支持された長方形の全荷重をその梁へ等分布で伝える限定モデルとは、対象形状と支持条件を区別します。
実装参照:共通検査と取付き区間の支持解決は crates/sepika-core/src/model/attached_slab.rs、境界生成は Slab::boundary_coords_with、原子的編集は UndoStack::run と CompositeCommand::apply が担います。荷重支持への解決は crates/sepika-load/src/floor/mod.rs、実荷重への変換は crates/sepika-job/src/auto_loads.rs を参照してください。
取り付く床板の荷重の出口は 2 通りから選びます。
- 取付き線へ分布(既定): 区間の両端は取付き線上の座標であり、実節点とは限りません。 荷重は、その座標が載る大梁(複数の大梁にまたがっていれば、覆っているすべての大梁)へ、 区間の長さだけの分布荷重として幾何的に割り付けます。
- 両端の柱へ集中(出隅、および壁を柱で受ける納まり): 総荷重は、区間の中点(無次元位置 \( t_{\text{mid}} = (t_i + t_j)/2 \))に集中したものとみなします。 単純梁の集中荷重の反力公式(始端の柱 \( R_i = W(1-t_{\text{mid}}) \)、 終端の柱 \( R_j = W \cdot t_{\text{mid}} \))で両端の柱へ按分し、 全長(\( t_{\text{mid}} = 0.5 \))なら半分ずつです。
取り付く床板は、下の支持部材の間ごとに 1 枚です。床領域の付け直しのとき、取付き線に 直交して先端まで届く小梁または実梁の位置で床板を分割し、部材を消したときは同じ版仕様の隣り合う床板を 1 枚に統合します。この分割・統合の境界となる実梁は、同じ節点・材軸・断面用途なら Beam・Fiber・MultiSpring のいずれでも同じに扱います。一直線に連結した2節点材は連続する軸として扱います。解析表現だけを変更しても境界が消えて統合されることはありません。直交しない部材・先端まで届かない部材は分割境界にせず、その部材には床荷重が 載りません。辺の全長を覆わない実部材も支持辺にせず、その実部材には床荷重が載りません (いずれも診断に警告が出ます。二次部材は「分配が得られない」、実部材は覆われていない辺の件数)。 取付き線へ分布する床板は、側辺・先端辺の支持部材の有無や荷重伝達方向によらず、取付き線 (辺0)の取付き大梁だけへ全荷重を等分布で伝達します。面荷重を q、出し幅を d とすると 水平な矩形の線荷重は w_line = qd です。台形・三角形・Z 方向に傾いた取付き線では、XY 投影面積 A と取付き区間の実長 L によって w_line = qA/L とし、同じ等分布伝達で総荷重 q*A を保持します。取付き線が部分区間の場合も、実取付き長さに対して同じ線荷重を載せ、 総荷重 q×床板面積を保存します。側辺・先端辺の小梁や実梁へは分配しません。 点アンカー(出隅)と囲まれた床板はこの規則の対象外です。上記の取付き大梁への等分布が現行仕様であり、 側辺・先端辺への最近接負担面積分配は行いません。
この等分布伝達は合力を保存しますが、荷重点は床面から取付き線へ移ります。元の床面積の重心による位置一次と、取付き線に載せた後の荷重位置の一次は区別してください。取付き線からの偏心によるモーメントを追加する方式ではありません。
片持ちスラブの先端荷重
線取付きで「取付き線へ分布」を選んだ床板だけ、先端辺の実長あたりの線荷重を複数設定できます。 各設定には既存の荷重ケースと全体座標の ±X・±Y・±Z 方向、強度(入力 kN/m、内部 N/mm)を指定します。 「床」タブの床板一覧の下で、対象となる床板ごとに追加・変更・削除できます。 面荷重とは別に加算され、面荷重強度へ換算して重ねることはありません。 先端辺の実長を \(L_{\mathrm{tip}}\)、取付き区間の実長を \(L_{\mathrm{attach}}\)、先端荷重強度を \(p_{\mathrm{tip}}\) とすると、 先端辺は両端の張り出し位置を結ぶ辺です。張り出し方向が取付き線の XY 投影に直交するため、 両端の張り出し量を \(d_i,d_j\) とすると、\(L_{\mathrm{tip}}=\sqrt{L_{\mathrm{attach}}^2+(d_j-d_i)^2}\) です。 片端がゼロまたは重複頂点の正規化許容差内でも、この先端辺の実長を使い、側辺の長さに置き換えません。 総荷重 \(W=p_{\mathrm{tip}}L_{\mathrm{tip}}\) を取付き区間へ等分布荷重 \(w=W/L_{\mathrm{attach}}\) として載せます。たとえば取付き区間 4 m・先端辺 4 m・強度 2 kN/m なら 総荷重 8 kN、取付き区間の線荷重 2 kN/m です。面荷重 5 kN/m²・出し幅 1.5 m の場合、 先端荷重の方向を -Z とすると、同じ取付き梁への下向き荷重は面荷重分 7.5 kN/m と 先端荷重分 2 kN/m の合計 9.5 kN/m になります。
先端荷重は指定方向の力だけを伝え、先端での偏心モーメントを取付き部へ付加しません。 利用者は各方向について連続するスラブ等がモーメントを負担する条件を確認してください。 成立しなければ取付き部の応力を過小評価し得ます。床板の断面検定には先端荷重を含めません。 先端荷重も面荷重と同じ幾何・参照・支持区間の共通検査を使い、床板 ID と理由付きで拒否します。 共通検査で有効な短い部分区間も伝達し、先端荷重だけの最小区間長は設けません。 分割梁では全荷重を各支持区間が取付き線に占める長さの割合で分け、実梁区間の実長で除した等分布を載せます。 取付き区間を実梁で全長覆えない場合や支持が重複する場合は、先端荷重を節点集中荷重で代用せずエラーにします。 解析前の荷重同期がこのエラーに失敗した場合は、以前同期した先端荷重で解析を続けません。 面荷重も取付き線の支持が欠落または重複する場合は、床板 ID と理由付きで拒否します。 各設定はケース ID で追跡し、EX/EY・独自ケースへも既存の水平力や手入力を残したまま同期します。 ケース削除時にはそのケース向けの先端荷重設定も削除されます。床板の分割では設定を引き継ぎ、 設定の異なる床板は統合しません。
実装参照:sepika_job::auto_loads::compute_tip_loads(crates/sepika-job/src/auto_loads.rs)が取付き実梁へのケース別割付を行い、sepika_core::model::SlabTipLoad(crates/sepika-core/src/model/slab.rs)が入力を保持します。
片持ち小梁(基端が支持され、先端が自由な小梁)の荷重は、基端の鉛直反力として主架構へ 伝達します。基端に生じる曲げモーメントは伝達しません。曲げは考慮されないため、適切に 考慮してください。 片持ち小梁の自由端に他の二次部材が載る形(先端リブなど)は、自由端を 支持として扱い、その荷重を基端へ伝えます。
端部支持条件(支持/自由)は「床」タブの小梁一覧、編集コマンド、MCP で設定します。
既定は両端支持です。ST-Bridge の取り込みでは、節点が実部材に接続せず、大梁の材軸上にも
他の二次部材の内法にもない端(許容差 10 mm)を自由端として取り込みます。他の二次部材の端点と
一致する端は、自分の反対側の端が主架構に載り、かつ相手の材軸が連続していないときだけ自由端に
します。推定した端の件数と対象は取り込み報告に出ます。
なお、床板の内部を横切る部材は支持辺にも分割境界にもなりません。実部材化済みの小梁
(実 Beam 要素)は二次部材としては扱わず、境界辺の全長を覆う場合は実部材として支持辺に
なります。
二次部材と主架構の同一判定
小梁・間柱が主架構としても登録されているときは、同一部材と確認できる場合だけ、二次部材側の 荷重伝達・小梁検定・一覧表示から除きます。小梁は所属なしの解析前チェックからも除きますが、 未所属の間柱は同一判定にかかわらずエラーです。両端の基準位置がそれぞれ 10 mm 以内で一致し(材端反転可)、同じ断面が割り当てられ、解決した材料と断面用途も一致する 2節点の実梁要素が対象です。小梁は梁用途、間柱は柱用途を要求します。断面・材料が未割当または 参照不明の場合は、同一部材とは扱いません。形状が同じでも別に登録した断面は一致としません。
小梁では一律鉛直偏心の指定状態と値も一致する必要があります。主架構が -300 mm、小梁が 0 mm なら別部材として残し、未指定と明示した 0 mm も区別します。双方未指定の場合は同一判定を 許しますが、実配置が確定したことを意味しません。間柱には小梁の鉛直偏心比較を適用しません。 この判定は数量積算の集約条件とは 別です。また、主架構と二次部材の荷重支持関係や、偏心接続の剛性・内力を新たに定義するものではありません。 この同一判定を反映していない計算契約の保存済み解析・検定成果は再利用せず、再計算が必要です。
実装参照:Model::secondary_member_materialized(crates/sepika-core/src/model/secondary.rs)が共通の同一判定を行います。
実装参照:端部支持条件の編集は sepika_edit::SetSecondaryMemberEndSupport(crates/sepika-edit/src/secondary.rs)と「床」タブの小梁一覧(sepika_app::tables::slabs、crates/sepika-app/src/tables/slabs.rs)が担い、MCP の model_edit からも設定できます。取り込みの自由端推定と支持部材アンカーへの解決は sepika_core::model::Model::anchorize_secondary_members(crates/sepika-core/src/model/secondary.rs)が一括して行います。支持端のアンカーを解決できない二次部材は端点座標のまま保持し、重量・材軸長を欠落させず、解析前チェックでエラーにして解析を止めます(片持ちへの読み替えはしません)。
小梁は、3D の「小梁配置モード」または「床」タブの配置フォームで、親の床領域(作業範囲)と両端が取り付く支持部材(大梁または既存の小梁)・材軸位置(0〜1)を指定して追加します。両端が作業範囲の内側または境界上(許容差 10 mm)で支持部材の材軸へ解決できない場合は配置を拒否します(片持ちへの読み替えはしません)。この親領域内判定は配置・端部移動の編集コマンドでも行い、3D の候補表示に頼らずモデルの不変条件として守ります。配置すると床板割当領域を再構築するため、境界が変わって参照先を失った囲まれた床板は取り除かれ、新しい割当領域は未設定(赤)になります。配置・再構築・版の除去は 1 つの Undo 単位です。
並走する小梁への荷重分配
床の辺荷重について、大梁の材軸の方が近い場合は小梁へ配らず、大梁側へ残します。同じ節点・材軸・断面用途の主架構は Beam・Fiber・MultiSpring 共通で距離を比較します。小梁の材軸距離が大梁以下なら小梁を優先し、候補が複数なら辺の端点からの材軸距離が最小の1本へ配ります。材軸とみなす許容差は10 mmです。解析用の残り辺荷重と、小梁検定での期待床板・実際の分配荷重に同じ判断を用います。
たとえば幅5 mm・長さ4000 mmの一方向床が、y=0 mmの大梁とy=5 mmの両端支持小梁に挟まれ、面荷重が0.005 N/mm²なら、各辺の負担は50 Nです。大梁に近い辺の50 Nを小梁へ移さず、合力100 Nと荷重位置を保持します。この小幅帯は距離判定の限定例であり、一般寸法の床の精度保証を表すものではありません。
実装参照:sepika_load::floor::beam_design::secondary_beam_distribution_split(crates/sepika-load/src/floor/beam_design.rs)が小梁への寄与と残り荷重を分けます。
荷重ケース書込時の支持先解決
取り付く床板の取付き線への分布は、部分区間も含め、一意に全長を覆う実梁へ割り付けます。 支持が欠落する場合、覆いが全長に届かない場合、被覆区間が重なる場合は、床板 ID と理由付きで拒否します。 両端節点への集中荷重に置き換えません。指定した両端集中や点取付きは、指定節点への集中伝達規則に従います。
取付き線への分布以外の未解決区間荷重には、覆う梁へ割り付けられないとき、両端節点へ単純梁反力として 振り分ける既存の代替経路があります(総和は保存します)。この代替では分布が集中に変わるため、 梁のモーメントを過小評価し得る危険側の近似です(位置もわずかにずれます)。
取り付く床板への変換では、旧境界のうち取付き線の両端(大梁に載る辺の 2 点)を取付き線として 引き継ぎ、残りの自由端は床板の境界から外れます。
版があるとは、実体のある床板に断面が割り当てられていることです。版なしの明示と、 未設定・断面未割当・不正な板厚は区別します。矩形RC梁の協力剛性には床板群の実断面厚を取付長で左右別に加重平均して使い、 未解決の床板を版なしとして成功させません(床板協力剛性)。 取り付く床板の荷重は支持辺(または点)へ渡しますが、矩形RC梁の全長一定協力剛性の適用範囲外です。
囲まれた床板の分配は、境界の辺に対する三角形・台形(または一方向・負担面積)です。床領域内に複数の 床板があるときは、床板ごとに独立して分配します(境界辺は大梁または小梁のいずれか)。 小梁の辺へ渡った荷重は、後述の逐次伝達(二次部材の反力の逐次伝達)で 主架構へ運びます。 小梁の所属は、中点が床領域の内部にあり(辺上 1 mm 以内は含めない)、 かつレベルが 1 mm 以内で一致することで決めます。中点が 0 領域または 2 領域以上に入る小梁は 所属を付けず、取り込み報告と診断に警告を出します。
矩形の適用条件
囲まれた水平床では、4頂点の閉合に加え、隣接辺の直交と座標面積を確認して矩形の分配式を適用します。 辺ベクトルを \(u=p_1-p_0\)、\(v=p_3-p_0\)、辺長を \(l_x=|u|\)、\(l_y=|v|\)、局所座標の面積を \(A\) とすると、 閉合誤差 \(|(p_2-p_0)-u-v|/\max(l_x,l_y)\)、単位辺ベクトルの内積絶対値 \(|\hat u\cdot\hat v|\)、 面積差 \(|A-l_xl_y|/A\) がすべて \(10^{-6}\) 以下で、頂点・計算値が有限、\(A>0\)、隣接辺長が \(10^{-9}\) mmを超えることを条件とします。 これらは数値計算上の許容であり、施工寸法の許容や床荷重分配精度を示す値ではありません。 寸法の順序は境界の辺0→1、0→3で、短辺・長辺へ並べ替えません。XY平面内で回転した矩形も同じ条件で扱います。
斜めの平行四辺形では面積を隣接辺長の積に置換できません。例えば頂点[mm]が (0,0)、(1000,0)、(1500,1000)、(500,1000)なら、真面積は1 m²、辺長積は約1.118034 m²です。 この床は既存の多角形負担面積法で真面積を使い、3 kN/m²なら総荷重3 kNを分配します。 短辺指定の一方向分配は非矩形として拒否します。水平性・単純境界・全周支持などの入力条件は、矩形判定にかかわらず適用します。
実装参照:矩形寸法の共通判定は sepika_load::floor::slab_dimensions_of(crates/sepika-load/src/floor/geometry.rs)が行います。
算定式(主な経路)
- 三角形・台形(TriTrapezoid): 45°振り分け。正方形は各辺三角形分布 \( w_0 = w \cdot L/2 \)。 矩形は短辺三角形・長辺台形。
- 一方向(OneWay): 負担辺へ \( w_{\text{line}} = w \cdot \text{スパン}/2 \) の等分布。伝達方向は X、Y、短辺から選択できます。短辺指定は矩形床の X・Y スパンを評価時に比較して決め、同寸の正方形では X または Y の明示指定を求めるエラーとします。寸法変更後も短辺指定を保持して再判定します。
- 負担面積等分布換算(TributaryArea): 短辺 \( w \cdot \text{short}/4 \)、長辺 \( w \cdot (\text{short} \cdot \text{long}/2 - \text{short}^2/4)/\text{long} \)。
- 多角形負担面積法: 最大100 mmの格子と床の交差領域を凸片に分け、実面積と各片内の重心から有限線分最近接の負担面積を積分します。全同距離辺へ均等配分し、真面積との総和比較と辺別誤差上界を返します。適用条件と精度の読み方は多角形床の幾何分配を参照してください。
- 短辺指定は矩形床に限って対応します。非矩形床で短辺を指定した入力はエラーとし、多角形の負担面積法へフォールバックしません。
- 片持ち・出隅: 取付き線への分布は、版の XY 投影面積に面荷重強度を掛けた全荷重を、取付き区間の実長で除した等分布で取付き梁だけへ伝えます。側辺・先端辺へは分配しません。両端集中は取付き線の区間中点に応じた比率で指定節点へ、点取付きは矩形の全重量を指定節点へ伝えます。
- 小梁の辺へ渡った荷重: 小梁は解析要素ではないため、単純梁の両端反力に変えて支持相手へ渡します(二次部材の反力の逐次伝達)。
実装参照:線アンカーの取り付く床板の分配は sepika_load::floor::distribute_cantilever(crates/sepika-load/src/floor/cantilever.rs)、短辺指定の入力検証は sepika_load::floor::validate_one_way_directions、床板単体の算定と直接経路の検証は sepika_load::floor::distribute_slab_w
(crates/sepika-load/src/floor/mod.rs)が行います。床領域単位の入口は distribute_region
(床領域内の各床板を distribute_slab_w で分配する)、床板単体の入口は
distribute_slab/distribute_slab_w で、形状と手法によって経路を分岐します。正方形で
OneWayDir::Short を指定した場合は ShortDirectionOnSquare を返して停止し、荷重を空結果へ
置き換えません。自動荷重生成・解析前チェックもこのエラーを呼び出し元へ伝播します。
多角形床の幾何分配
対象は水平な、無開口・自己交差なし・全周支持の単純多角形です。境界は大梁または小梁の 支持部材IDと有向材軸区間で与え、座標はmm、面荷重強度はN/mm²です。 開口、自由辺、支持欠落をこの全周支持モデルへ流用しません。現在の床板には開口輪郭の入力欄がなく、 外周だけを入力して開口面積を控除する使い方も対象外です。支持参照不明、非有限座標・荷重、 退化辺、自己交差、閉じない支持境界は理由付きエラーとなり、ゼロ荷重でも入力異常を検査します。 囲まれた床の幾何入力検査は矩形分配・多角形分配のどちらにも適用します。
各床内点を、全境界辺の有限線分までの距離が最短になる辺へ帰属させます。 辺 \(e=[a,b]\) に対して
\[ u_e=\operatorname{clamp}\left(\frac{(p-a)\cdot(b-a)}{|b-a|^2},0,1\right),\qquad d_e=|p-(a+u_e(b-a))| \]
を用います。\(d_e-d_{\min}\le\varepsilon_d\) の全辺へ面積を等分します。 凹頂点が最近接となる領域でも、その端点へ達する隣接辺へ均分し、新たな節点集中荷重は作りません。 無限延長線への垂線とは異なるモデルです。全周支持の床内点から最近接境界点へ向かう線分が 途中で床外へ出るなら、先の境界交点のほうが近くなります。このため本適用範囲では可視性による 候補除外を行いません。支持辺を間引く床にはこの論証を適用できません。
これはSEPIKAで採用した幾何分配モデルです。床版の剛性・応力の厳密解ではなく、各辺荷重が 一律安全側になる保証もありません。凹形の処理を公開資料にない他者の仕様と同一とは扱いません。 辺別荷重は \(W_e=qA_e\)、辺長 \(L_e\) の等価等分布は \(w_e=W_e/L_e\) です。
凸台形の連続面積
凸床内では、辺の内向き単位法線への距離 \(d_e\) が最小となる半平面 \(d_e\le d_j\) の交差が、その辺の負担領域になります。領域の面積は 頂点を順に並べた座標法で求められます。例えば頂点[m]が (0,0),(6,0),(4,3),(1,3)の凸台形では、内向き距離は
\[ d_0=y,\quad d_1=\frac{18-3x-2y}{\sqrt{13}},\quad d_2=3-y,\quad d_3=\frac{3x-y}{\sqrt{10}} \]
です。辺番号は0始まりで、辺3は(1,3)→(0,0)です。各負担面積[m²]は \([(63-3\sqrt{13}-3\sqrt{10})/8,;3\sqrt{13}/4,;(45-3\sqrt{13}-3\sqrt{10})/8,;3\sqrt{10}/4]\) となり、和は13.5m²です。これは採用幾何モデルの連続解です。 100mm重心格子の出力そのものや、床剛性による実応力分配の精度保証を意味しません。
格子・同率・誤差
格子辺長は既定100 mm、指定時は100 mm以下です。床境界箱からの位相も指定できます。 境界セルは交差した凸片の実面積を使い、セル中心が床外でも床片を捨てません。 凹形または複数片を床外の単一重心で代表させず、各凸片内の面積重心で分配します。 各片の配分率和は1で、独立な多角形面積と配分総和を比較します。総荷重による後付け正規化は行いません。
距離は床の局所原点へ平行移動して評価します。床境界箱対角長 \(D\) に対し \(\varepsilon_d=64,\mathrm{EPSILON},\max(1\mathrm{mm},D)\) とし、倍精度の丸め用にのみ使用します。 格子幅に比例する同率帯へ拡張しません。採用したε、辺別面積、未配分面積(正の総和残差)、 格子寸法・位相、丸め許容幅、辺別絶対誤差上界を診断に含めます。 診断付き公開床分配APIでは取得できますが、通常GUI・解析ジョブ・MCPの結果には これらの積分診断を表示・保存しません。通常画面での精度確認には未対応です (追跡: Issue #555)。
各凸片の重心から全頂点への最大距離を \(r\) とすると、各辺への距離は片内で最大 \(r\) 変化するため、 他辺との差が \(2r+\varepsilon_d\) より大きければ帰属は変わりません。 全頂点で隣接辺への投影が同一共有端点側にある場合、線形な投影条件は片全域で成り立ち、 両辺は片全域で等距離です。この群を一つの等分候補群として認証します。 群内の同率を帰属誤差として数えず、候補群が変わり得る片の真面積を、可能性のある各辺の 絶対誤差上界へ加えます。したがって上界は保守的な数値積分誤差であり、構造設計上の安全率ではありません。 辺荷重の誤差上界は \(|q|\) 倍です。
100 mmは分割寸法の設定で、特定の精度保証ではありません。既定は要求誤差未指定で、算定した上界を報告します。 辺別要求誤差 [mm²] を指定した場合、上界が要求を超える結果を成功にせず、細分化を求める理由付き診断を返します。 一律2%は許容値に用いません。既定の格子資源上限は400万セル、凸分割片との走査上限は3200万回です。 上限時に格子を粗くしません。境界頂点数256超または数値精度不足も理由付き診断となります。
採用方式と適用限界
| 項目 | SEPIKAの採用条件 |
|---|---|
| 重心から最短の垂線・2/3/4等分 | 全同距離の支持辺へ等分。境界片ごとに実面積と片内重心を使用 |
| 格子最大辺長 | 既定100 mm以下、資源超過は診断。精度保証とは区別 |
| 凹角の辺延長・共有頂点 | 無開口・全周支持の有限線分最近接を採用 |
| 凹角の曲線境界と二等分線方式 | 異なる幾何モデルであり、その差を格子誤差へ吸収しない |
| ε・境界実面積・上界・要求精度 | SEPIKAの数値積分設定と距離の1-Lipschitz性による上界 |
| 剛性分配・実応力・規準上の精度限界 | 未確認。本幾何モデルの検証を実験Validationや法適合保証とはしない |
学会規準・技術基準解説書の原典に凹形分配の規定があることは未確認です。
実装参照:sepika_load::floor::integrate_polygon(crates/sepika-load/src/floor/polygon.rs)が面積・格子・誤差診断を返し、
sepika_load::floor::distribute_slab_w_with_diagnostics(crates/sepika-load/src/floor/mod.rs)が実床板の支持境界検査と荷重生成へ接続します。
固定端モーメント・せん断力(CMQ)
以下は剛域なし・両端固定梁の固定端モーメントとせん断力(CMQ)の基準式です。 V&Vで総和保存と固定端値を検証しています。
算定式
等分布:
\[ C = \pm w \cdot L^2/12 \]
\[ Q = w \cdot L/2 \]
三角形:
\[ C = \pm 5 \cdot w_0 \cdot L^2/96 \]
\[ Q = w_0 \cdot L/4 \]
台形(閉形式評価):
\[ \mathrm{FEM} = \frac{1}{L^2} \int_0^L w(x) \cdot x \cdot (L - x)^2 \ dx \]
一般(非対称荷重。剛域を考慮する場合は可撓区間の長さと可撓端からの座標を用いる):
\[ \mathrm{FEM}_i = \frac{1}{L^2} \int w(\xi) \xi (L - \xi)^2 \ d\xi \]
\[ \mathrm{FEM}_j = \frac{1}{L^2} \int w(\xi) \xi^2 (L - \xi) \ d\xi \]
\[ Q = R_0 \pm (\mathrm{FEM}_i - \mathrm{FEM}_j)/L \]
「剛域を考慮する」がON(既定)なら、両端の解決済み剛域長を \(\lambda_i,\lambda_j\) とし、可撓長 \(L_f=L-\lambda_i-\lambda_j\) の形状関数に可撓区間の荷重を積分します。線形分布は区間を切り分け、区間端の強度を元の分布から評価します。三点Gauss積分はこの多項式積分に対して厳密です。
可撓端の等価力は剛体アームを介して節点へ移し、i端では \(M_{zi}=M_{zi,f}+\lambda_i Q_{yi,f}\)、j端では \(M_{zj}=M_{zj,f}-\lambda_j Q_{yj,f}\) とします。剛域部分に直接載る荷重は、その合力と節点まわりの一次モーメントを別に加えます。境界上の点荷重は可撓側へ所属させ、一度だけ計上します。材端解放は同じ荷重を用いて内部回転を釣り合わせます。
OFFでは剛域長を控除せず、全長の剛性と荷重応答を用います。ただし仕口パネルのある接続では、その偏心による長さ・力の移送を反映します。手動剛域長と危険断面フェース位置は保存したままです。仕口パネルの偏心は別概念として保持します。可撓長が成立しない過大剛域は既存の長さ解決規則で剛域なしとして扱い、荷重をゼロにしません。荷重値・荷重位置の非有限値や不正な荷重区間はエラーです。
下向き荷重を正にとる強軸面では、等分布・両端固定のCはi端が正、j端が負です。荷重込み曲げMの端値は \(M(0)=-C_i\)、\(M(L)=C_j\) とし、せん断Qはi端側が正、j端側が負になります。
CMQ図は節点変位を0とした梁の荷重応答です。Cは端部固定値、Q・Mは全長座標で回復した荷重込み断面力で、単純梁の参考図とは区別します。建物全体を解いて得られる変位による応力は含みません。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( w \) | 部材に作用する等分布荷重(線荷重) | N/mm |
| \( w_0 \) | 三角形分布荷重の最大荷重強度 | N/mm |
| \( L \) | 部材長(スパン) | mm |
| \( C \) | 節点変位0の端部モーメント(材端解放を反映) | N·mm |
| \( Q \) | 両端固定梁の固定端せん断力 | N |
| \( \mathrm{FEM} \) | 分布荷重の固定端モーメント | N·mm |
| \( R_0 \) | 単純梁の支点反力 | N |
| \( \xi \) | 材軸方向の無次元位置 | - |
実装参照:床分配時の固定端値は sepika_load::floor::fixed_end_moments(crates/sepika-load/src/floor/fem.rs)、解析と表示の梁荷重応答は sepika_element::frame::member_load::{FrameDeadLoadMap, cmq_with_rigid_zone}(crates/sepika-element/src/frame/member_load.rs)が扱います。
符号付き単純梁反力
支間 \(L\) [mm]、i端からの位置 \(a,b\) [mm]、点荷重 \(P\) [N]、線荷重 \(w_1,w_2\) [N/mm] を用います。有限入力・正支間の正常区間(点は \(0\le a\le L\)、分布は \(0\le a<b\le L\))では、符号付き合力 \(W\) [N] とi端まわりの一次モーメント \(S\) [N·mm]から反力を求めます。
\[ W=P,\quad S=Pa \qquad\text{(点荷重)} \] \[ h=b-a,\quad W=\frac{h(w_1+w_2)}{2},\quad S=aW+\frac{h^2(w_1+2w_2)}{6} \qquad\text{(線形分布)} \] \[ R_j=\frac{S}{L},\quad R_i=W-R_j \]
合力で割る重心比は用いず、反力比を0〜1へ制限しません。合力がゼロでも一次モーメントがゼロでなければ、正負の反力対が生じます。強度を全て反転すれば反力と曲げモーメントも反転します。単純梁の曲げは \(M(x)=R_ix-\int_a^{\min(x,b)}w(s)(x-s)ds\)(未載荷部分の積分は0)で、正常区間では両支持端で0になります。これは重量・質量への負荷重採用を承認する規則ではありません。
床の単純梁算定では、点位置は支間内に制限し、分布は指定した原区間を保持します。反力比や合力の近ゼロ判定で旧重心配分へ戻すことはありません。支間外の原区間を入力した場合も数値は変わります。例えば支間6000 mm、区間[7000,8000] mm、強度1/1 N/mmは、重心比を制限した配分の0/1000 Nから、W/Sによる−250/1250 Nになります。この域外結果の物理的妥当性や単純梁Mの端点閉合は保証しません。支間外荷重を妥当な梁モデルとして推奨するものではありません。区間の受理・原区間の扱いは変更せず、切断・端強度再評価・新入力拒否は追加していません。固定距離域外入力の扱いはIssue #635で別途調査します。分布長が1e−9 mm以下なら反力0、非負の支間が1e−9 mm以下なら合力を半分ずつとします。負支間の点荷重は計算できません。今回の正常域保証はこれらの極小判定に掛からない範囲です。域外・極小入力の数学的精度は保証しません。GUIの固定区間を超える座標編集は引き続き拒否します。範囲を切断する際の端強度再評価は今回の契約に含みません。
実装参照:sepika_load::floor::{simple_reactions, simple_beam_moment_at}(crates/sepika-load/src/floor/fem.rs)と simple_beam_extremes(crates/sepika-load/src/floor/beam_design.rs)が算定します。
二次部材の反力の逐次伝達
小梁・間柱(二次部材)は解析要素ではないため、受け持った荷重は単純梁の両端反力に変えて 支持相手へ渡し、支持相手が主架構(大梁)ならそこで終端して梁の中間集中荷重になります。 支持相手が別の二次部材のときは、その相手の集中荷重として渡し、主架構へ行き着くまで 同じ操作を繰り返します。 これを二次部材の反力の逐次伝達と呼びます。荷重を受けるのは あくまで大梁の側なので、大梁を交点で分割することはしません。
二次部材が受け持つ荷重は次の 4 つの重ね合わせです。
- 床板分配が二次部材の材軸へ出した辺荷重(本ページ冒頭の三角形・台形などの分配則による)
- 解析要素にならない壁版から間柱へ配られた自重(自重の長期応力解析への接続。 長期の固定荷重にのみ算入し、積載荷重のケースには載せない)
- 二次部材自身の自重(\( \rho \cdot A \cdot g \times \) 鉄骨重量割増。長期の固定荷重にのみ算入し、 積載荷重のケースには載せない)
- その二次部材に架かる別の二次部材から渡された集中荷重
交点は常にピン受け・架けとして扱い、剛接十字(交点で曲げが連続する接合)は扱いません。 両端ピンであれば各段が静定に決まるため、逐次伝達は近似ではなく厳密解になります。一律に ピンとみなすことは、交点の曲げ連続による低減を無視するぶん架け側のモーメントとたわみを 過大に見ることになるので、安全側の扱いです。
受け側と架け側は幾何から決まります。 二次部材 B の端点が二次部材 A の内法に載っていれば B が架け側・A が受け側で(許容差 10 mm)、どちらを受け側にするかを指定する入力欄はありません。
反力の分配則は、支点まわりのモーメントのつり合いによります。鉛直荷重に対する鉛直反力の てこの腕は水平投影の距離であり、荷重の材軸上の位置は水平投影へ線形に写ります。したがって 水平投影が 0 でない限り、鉛直反力は材軸上の按分(単純梁の反力)と一致します。傾斜した 二次部材でも、部材の向きで場合分けする必要はありません。
例外は水平投影が 0 になる部材、すなわち鉛直な間柱です。このときはモーメントのつり合いが
退化して荷重が軸力として流れるため、両端への配分が不静定になり、仮定を置く必要があります。
水平投影が 10 mm 以下の二次部材は、SecondaryMember::gravity_end_shares(Option<[f64; 2]>)に両端への負担率を明示します。並びは ends(SecondaryMemberEnds)の端の順で、各値は非負・有限、総和 1(許容差 1e-9)です。既定の None は未指定で、解析前チェックのエラーです。画面は端部の高さから上下端を表示し、下端 100%・上端 100%・上下各 50% または任意の比率を指定できます。間柱自身の自重、壁から受ける荷重、他の二次部材から受ける荷重に同じ比率を適用します。0% の端部には荷重伝達先を要求しません。
この比率は納まり・支持条件に基づく入力で、軸剛性や支持ばねから自動算定するものではありません。実際は下端だけで受ける部材に上下各50%を指定すると、下の梁の負担を過小評価する危険側のモデルになります。水平投影が 10 mm を超える傾斜材は、モーメントの釣合いによる単純梁反力を使い、この比率を使用しません。
片持ち小梁(基端が支持され、先端が自由な小梁)の荷重は、基端の鉛直反力としてのみ 伝達します。基端の曲げが考慮されない点と端部支持条件の設定方法は、本ページ前半の 「取り付く床板の荷重の出口」を参照してください。
荷重を流せない形は解析前チェックのエラーになります。端部がどの主架構にも二次部材にも 載っていない二次部材、支持関係が一巡している二次部材、節点を共有せずに交差している二次部材が これに当たります。いずれも荷重の行き先が決まらないため、モデル化を直す必要があります。 両端が自由端の二次部材も支持がなく不安定なためエラーです。 ただし端部の行き先が決まらない二次部材のうち、受け持つ荷重が実際に 0 のもの (断面が未割当で自重が出ず、床の分配も載らないもの)はエラーにしません。失う荷重がなく、 形だけ置かれた支持点で解析が止まるのを避けるためです。
実装参照:sepika_load::cascade が算定し、荷重の同期(sepika_job::auto_loads)と
小梁の断面検定(小梁・床の断面検定)は同じ経路を通ります
(面荷重強度は用途ごとに違うため、荷重の値そのものは一致しません)。
床の中の小梁・スラブの断面検定(設計タブの「小梁・床の設計」表)は、ここで述べた荷重の分配とは別の話題です。小梁・床の断面検定を参照してください。
外周スラブ
標準床荷重を設定した階では、大梁の一方の側だけに床組がある場合に、床組のない側へ外周スラブを
荷重計算上の派生形状として生成します。standard_floor_load が None の階は外周スラブを生成しません
(エラーにはしません)。両側に床組がある場合や、外周側に同じ大梁へ取り付く明示床板(片持ち・バルコニー等)が
ある場合も生成しません。
始端柱・終端柱の大梁直交方向寸法をそれぞれ \(d_{start}\)、\(d_{end}\) とすると、外周スラブの出は \(e=(d_{start}+d_{end})/4\) とします。標準床荷重 \(q\) [N/mm²] から大梁の等分布線荷重 \(w=qe\) [N/mm] を生成します。長期固定荷重・大梁用積載荷重・地震用重量は同じ派生形状を共有し、 用途別の標準床荷重強度だけを切り替えます。
この式は両端寸法の算術平均の 1/2 とする明示仕様です。両端寸法が異なる場合、実際の外周面積や荷重の 作用位置を表さず、局所荷重等を過小評価し得る危険側近似です。柱断面は、対象階の床レベルから直下の床レベルへ 鉛直材を下向きに辿り、当該層に属する最上側の柱セグメントから取得します。途中で柱が分岐する、直下床へ到達しない、 必要な柱断面・幾何情報が欠落する場合はエラーとして停止し、別部材や要素順依存の候補へフォールバックしません。
実装参照:sepika_core::model::perimeter_slabs(crates/sepika-core/src/model/perimeter_slab.rs)が
外周スラブの派生形状を算定し、sepika_job::auto_loads(crates/sepika-job/src/auto_loads.rs)が
その形状から荷重を生成します。3D 表示も同じ派生形状を参照します。
荷重組合せ
荷重によって生ずる部材内力と継続時間
令第82条第2号の係数表は、荷重・外力によって各部分に生ずる力を組み合わせます。 面荷重強度や建物総重量を、そのまま断面力へ足す表ではありません。 同じ部材・評価位置・内力成分について、固定荷重G、架構用積載P、積雪S、風W、地震Kの寄与を組み合わせます。
| 状態 | 一般地域 | 多雪区域 | 許容応力度 |
|---|---|---|---|
| 常時 | G+P | G+P | 長期 |
| 長期積雪 | — | G+P+0.7S | 長期 |
| 積雪時 | G+P+S | G+P+S | 短期 |
| 暴風時 | G+P+W | G+P+W、およびG+P+0.35S+W | 短期 |
| 地震時 | G+P+K | G+P+0.35S+K | 短期 |
荷重の条項はGが第84条、Pが第85条、Sが第86条、Wが第87条、Kが第88条です。 第82条第3号は構造耐力上主要な部分の断面と長期・短期の許容応力度を対応させます。 許容応力度等計算の第82条の6第1号は第82条各号・第82条の2・第82条の4を参照します。 第82条の3の保有水平耐力計算とは計算種別を区別してください。
内部の軸力N・せん断力QはN、曲げモーメントMはN·mmです。表示時はN/Qを1000で除してkN、Mを1,000,000で除してkN·mに換算します。 線形重ね合わせが成り立つ同じ内力成分でG=100、P=20、S=40、K=±30なら、常時120、多雪長期148、短期積雪160、多雪地震164/104です。 別ケースの非線形応答を足しても、合成荷重を載せた同一の非線形解にはなりません。 引張専用ブレースの反復解析を含む組合せは、現在の断面検定では理由付き未検定にします。
入力と自動生成
標準表示はG→DL、P→LL(架構用)、S→SL、K→EX/EYです。名称は表示用です。 継続時間は保存された組合せ係数と荷重ケースの種別から判定し、名称を変えても許容値を変えません。 G/Pは係数1、積雪だけの場合は0.7Sを長期、1.0Sを短期、風・地震と併用する積雪は0.35Sを短期として扱います。 正負の風・地震は係数±1で指定します。複数の水平作用、Other、地震重量用積載、参照欠落、標準外の係数などは一意に判定できず、理由付き未検定となります。 Pがゼロの場合も、種別を架構用積載とした空ケースを明示してください。
標準生成はG+P、多雪長期0.7S、短期S、X±/Y±の地震、多雪0.35S付き地震を用意します。 新規モデルは積雪なし・一般地域のG+PとX±/Y±から始めます。 固定・架構用積載・積雪は種別から先頭のケースを選び、標準地震の方向はEX/EYへ対応付けます。 任意の地震・風ケースと複数の重力ケースは、必要なtermsを手動で設定してください。
雪係数は直接入力でき、入力した係数とtermsを保存します。ただし0.7/0.35からの変更は、標準の継続時間・適用根拠を自動確認するものではなく未判定になります。 多雪区域は特定行政庁の指定(第86条第2項ただし書)を設計者が確認する必要があります。 風圧力と暴風組合せは自動生成しません。多雪暴風は積雪なし・0.35S付きの両状態を手動設定してください。 風時の実況に応じたPの低減、転倒・柱引抜き等の注意条件も自動確認しません。 荷重状態の判定と必要ケースの存在だけで、建物の法的全条件への適合を表示することはありません。
積載荷重の用途と検定対象
積載は原則として実状によります。表値を採る場合も床・小梁・架構・地震重量の用途を保持します。 事務室の表値は床/小梁2900、架構1800、地震重量800 N/m²です。10m²なら29/18/8kNです。 任意入力は用途ごとに実状強度を直接保存します(内部N/mm²)。地震重量用8kNを検定重力Pの18kNへ流用しません。 第85条第2項の低減率算定は用意していますが、柱又は基礎の圧縮力への適用は未対応です。床・梁荷重や水平質量へ一律適用しません。
| 検定対象 | 荷重・内力 | 継続時間と結果範囲 |
|---|---|---|
| 主架構の保存組合せ | 選択termsのFEM内力 | 判定できる長期/短期。入力・応力不足は未検定 |
| 主架構の単独G/P | そのケース単体のFEM内力 | 長期の単体応力評価。法令組合せ完了を意味しない |
| 単独雪・風・地震のGUI表示 | そのケース単体のFEM内力 | 短期の作用表示。G+Pを含む組合せの検定は未実施 |
| 小梁 | 固定+小梁用積載を分配した梁略算 | 長期略算のみ。選択雪/風/地震/任意組合せは未検定 |
| 床 | 固定+床用積載の一方向版略算 | 長期略算のみ。選択雪/風/地震/任意組合せは未検定 |
GUIでは対象結果の切替時にも保存条件を再判定します。
MCPは保存組合せを指定すれば同じterms・継続時間・線形内力を用います。
MCPの地震ケース単体指定にはG+Pを自動合成しますが、地震重量用積載は含めません。
積雪ケースがあるときは地域条件に応じた保存組合せを明示する必要があります。
重力ケースの一部または全部の解析失敗は、不足応力の検定を拒否します。
地震時の設計せん断用参照は、選択termsのG/P/S係数を保持したFEM重力応力と、部材荷重からの単純梁Q0を区別します。RC梁のQ0は符号付きlocal Qy端反力を選択係数で端別に合成した後、最大絶対値を採ります。方向・不足・算定範囲はRC梁の単純梁せん断Q0を参照してください。
レポートCSVに選択対象・terms/kind・継続時間・小梁床の長期略算/選択短期未検定範囲を残します。
MCPの保存組合せと自動G+P+Kは単独ケースの保存結果と区別し、case: null・store.persisted: falseで返します。組合せ内力はサーバープロセス中のサマリのみです。取得形式・行数制限は解析ジョブのツール仕様で確認してください。
小梁・床は全体FEMの外で略算していても、構造安全の法的対象から一律除外されません。
終局検定と増分初期重力への接続
終局検定と増分初期重力に用いる架構用長期組合せは、保存組合せ一覧から明示的に選択します。名称・先頭順・地震重量の集合から選びません。同じ terms と係数を静的の重力需要と増分初期載荷で共有し、未指定・不完全を成功へ変換しません。採用できる状態、符号付き合成、モード別の QL と倍率、未検定の条件は終局検定の統括を参照してください。上記の許容応力度用係数表を全終局荷重組合せの規準と読み替えるものではありません。
出典と確認範囲
- デジタル庁・e-Gov 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号):第1条第3号、第82条、第82条の6、第84~88条。上表は採用する基本組合せです。2026-10-10時点の公開現在版条項の直接照合は未確認です。建物の適用日版と条項の原文確認が必要です。
- 厚生労働省 第2講座 石綿含有建材の建築図面調査:本文p.2-66、PDF66頁の参考欄。防火上の主要構造部と力学的な構造耐力上主要な部分を区別し、後者に床版・横架材を含める用語補助資料です。資料の版・発行日は未確認で、現行施行令原本の代用にはしません。
- 『建築物の構造関係技術基準解説書』2015/2020/2025版の該当頁、学会規準の今回未閲覧箇所は未確認です。未確認事項を原典照合済みとして扱いません。
実装参照:sepika_core::load_combo::{standard_combinations, combination_design_state, case_design_state}(crates/sepika-core/src/load_combo.rs)、検定用重力参照はsepika_job::design_q0(crates/sepika-job/src/design_q0.rs)が扱います。
地震用重量・層データの生成
地震用重量と層データは、令 88 条に基づき固定荷重と積載荷重の合計として生成します。 自重・床荷重の梁せん断力(CMoQo による Q0)を単純梁の静定反力として節点へ配分する実務的取扱いによります。
部材荷重の節点への静定配分は符号付き単純梁反力の合力W・一次モーメントSによります。WがゼロでもSを失いません。ただし非正の節点反力と、地震重量・物理質量へ採用できることは別です。現行の下向き成分フィルタ、荷重用途・重量採否、同期自重置換後の負質量診断を維持します。正常域の数学一致は層生成成功を保証しません。 層生成の配分は支間が0以下なら0、点位置は支間内に制限、分布は開始位置を0以上・終了位置を支間以下に制限し、空区間なら0です。切断端の強度再評価は行わず、正常域外の数学保証はありません。
Q0は両端支持とした時のせん断力です。ここで扱う層重量への反力配分と、RC梁の断面検定に用いるQ0の評価方向・選択荷重の合成/包絡は区別します。学会規準原本の未確認箇所は、適合確認済みとは扱いません。
算定式(概要)
線材自重(設計重量):
通常線材の Beam・明示 Fiber・明示 MultiSpring は、同じ断面・用途・配置なら同じ重量です。
自重、鉄骨重量割増、付加線重量、仕上げ、被覆、柱の上下配分、下階柱と柱脚梁の探索、
大梁自重の柱面控除、壁自重の周辺柱梁内法判定に共通の扱いを適用します。
重量専用の接続判定であり、一般剛域や剛性の定式化は変更しません。
CFT は Column 用途の主架構線材専用であり、梁用途や二次部材には割り当てません。CFT 柱の自重は鋼管部と充填コンクリート部を分けて算定し、鋼管部だけに鉄骨重量割増を掛けます。
\[ w = \gamma \cdot A_{\text{eff}} \cdot L_{\text{eff}} \cdot \text{factor} \]
(鋼材は密度 > 0 なら \( \gamma = \gamma_s = 78.5\ \text{kN/m}^3 \) 固定。質量密度 0 なら 0)、その他の材料は \( \gamma = \rho \cdot g \)。 設計単位重量が固定でも、質量密度は物理質量の算定に使います。固定単位重量を使う参照鋼で物理単位重量が78.5 kN/m³を超える場合は、理由付きで設計重量の生成を停止します。カスタム鋼材の密度と計算可否を参照してください。
CFT 線材は鋼管部と充填コンクリート部を足し合わせ、\( w = \gamma_s \cdot A_s \cdot \text{factor} + \gamma_C \cdot A_c \) とします(\( A_s \)=鋼管断面積、\( A_c \)=充填コンクリート断面積、\( \gamma_C \)=無筋コンクリートの気乾単位体積重量。Fc と種類で決まり、鋼管部と充填部を重複計上しません)。鋼管部には通常の S 造と同じく factor を掛け、充填コンクリート部には掛けません。
RC/SRC 大梁は柱面間距離、RC/SRC 柱は解析節点間距離、S 梁・柱は節点間距離で算定します。
矩形 RC/SRC 大梁では、支持する床板との実重複体積を梁本体から控除し、DL と地震用設計重量に同じ量を使います。
大梁・小梁の床板下面までの嵩上げは、対象床板の材料と実体積から別に加算します。
設計単位重量による設計重量と、物理密度による動的質量を区別し、左右・区間ごとの材料を保持して支持先へ一度だけ伝達します。
RC/SRC 主架構大梁は断面用途 FrameSectionUse::Girder で判定し、節点間長から両端の柱フェース距離を控除します。
控除する相手は、端に接続する FrameSectionUse::Column の柱だけです。
直交大梁は控除に含めず、柱がない端の控除距離は 0 mm とします。
上下に柱がある端では、大梁の材軸方向に求めた柱面距離の小さい方を採ります。
これは自重の過小評価を避けるための採用条件です。
この選択による柱との重複評価の適用性は未確認です。
片側にしか柱がなければ、その柱面距離を使います。
たとえば芯々長 6000 mm・両端の柱面距離 300 mm なら、自重算定長は 5400 mm です。
同じ端にせい 900 mm の直交大梁が接続していても、この長さは変わりません。
S 造大梁は柱面を控除せず、芯々長 6000 mm をそのまま使います。
二次部材の小梁は RC・S とも、支持する大梁・小梁または鉛直柱の外側フェース間を設計自重算定長とします。
主架構の柱/大梁は断面用途で識別し、材軸の角度から用途を読み替えません。
片持ち小梁は支持端だけを控除し、自由端は控除しません。
小梁の断面方向は鉛直基準とし、水平材ではせい方向が鉛直・幅方向が水平です。
勾配材では鉛直方向を材軸直交面へ投影してせい方向を決め、断面方向の入力は追加しません。
主架構の支持部材には、その部材の局所断面方向を使います。
支持面には、共通局所座標で得られる補完なしの単位直交基底と同じ断面姿勢を使います。有限な参照方向でこの姿勢を解決できる場合、材軸方向成分の投影丸めや同じ向きの極大値によってフェース距離を変えません。支持面の断面姿勢を解決できない場合は、その支持材と理由を示して自重算定を停止します。
非対称断面は図心を材軸に置き、取付き側ごとに外側フェースまでの非対称距離を求めます。
穴・鋼管の空洞内面・CFT の鋼管と充填コンクリートの界面はフェースとせず、中心配置の外接矩形で非対称距離を対称化しません。
小梁の支持梁フェースは、支持梁の平面内材軸に直交する水平法線 n へ実断面を投影した範囲 [qmin, qmax] の外側境界です。
図心と断面姿勢を保持したまま投影し、小梁の 3 次元単位材軸 u が向かう側の境界 qside を使います。
控除距離は t = qside / (n・u) とし、局所側面を支持材の端面で切り詰めません。
斜め・勾配取付きもこの交点距離で控除するため、鉛直の梁せいを平面内幅へ流用しません。
支持材の断面が回転している場合は、その実際の姿勢を投影へ反映します。
H 形鋼の幅 200 mm・ウェブ厚 10 mm に水平直交する取付きなら、控除距離はウェブ外面の 5 mm ではなくフランジ外縁の 100 mm です。
溝形鋼の開口側もフランジ先端を境界とし、図心からの側ごとの距離を保持します。
この投影側面は、取付き高さにおける鋼材との接触面を表すものではありません。 小梁の自重は芯々長による評価より減少し、接合位置の局所的な接触面による評価とも異なることを開示します。
小梁を支持する鉛直柱のフェース
鉛直柱では、実断面を柱材軸方向へ延ばした外側側面と、小梁端から相手端へ向かう3次元半直線との正の交点のうち、同じ半直線上で最も遠い外側交点を採ります。 断面の回転は実際の局所断面方向を使います。支持梁の平面内投影外縁や断面平面との交点へ置き換えません。 H形でウェブを出た後にフランジへ再入する場合は、その先のフランジ外面を採ります。 角Rが既知の角形CFTは角丸の実外形を使い、幅・せいだけの矩形へ置き換えません。
選んだ同じ最外交点が、柱両端標高の閉区間内にあることを条件とします。上端・下端ちょうどの側面交点は含みます。 材軸平行、側面交点なし、最外交点が有限区間外、断面欠落・未対応形状、控除後長さが0以下の場合は、支持材を特定する理由付きの未算定です。 最外交点が柱の有限区間外でも、より近いウェブ面・柱端面・便宜幅・梁用投影・0控除へ切り替えません。 対象は厳密に鉛直な柱と既存の水平/傾斜小梁であり、傾斜柱の支持側面には対応しません。
たとえば矩形400×400 mmの柱に、小梁端 (0,0,3000) mmから単位方向 (0.8,0,0.6) で向かう場合、控除は250 mm、側面交点は (200,0,3150) mmです。 柱上端が4000 mmなら成立し、上端が3000 mmなら有限側面区間外です。小梁端が柱上端にあることだけでは成立しません。
この最外側面は採用した設計上の交点モデルです。控除の増加は正のDL計上自重を減らし得るため、自動的に安全側とは扱いません。 国内資料がこの支持アンカーと交点選択を直接規定するとはしていません。接合部の実際の納まりに対する妥当性確認は別に必要です。
これに対して RC/SRC 大梁の柱面は、実柱外形を柱軸に延ばした側面と大梁軸の交点です。 柱面を小梁用の平面投影へ読み替えず、円形柱の半径や矩形柱の回転方向も反映します。 たとえば芯々長 4000 mm・両端支持幅 400 mm の直交する矩形支持材なら、内法長は 3600 mm です。 芯々長 3000 mm・始端支持幅 300 mm・終端支持小梁幅 200 mm なら、内法長は 2750 mm です。
控除後長さが 0 mm 以下なら、部材・芯々長・両端の控除距離を示してエラーにします。
必要な支持材寸法や参照が解決できない場合も、控除を省略して重量の欠落を隠さずエラーにします。
フェース控除に用いる支持材の形状未定義断面は、幅・せいだけから実外形や図心を保証できないため、矩形へのフォールバックをせず明示エラーにします。
支持未解決の Detached は、生座標による芯々長の重量を保持して解析前エラーにする契約を維持します。
間柱の自重長は芯々のままです。
自重専用のフェース算定は、剛域長(剛域)の算定とは別です。
剛域・検定スパン・数量積算の長さには、この控除を適用しません。
線材自重の節点への配分は、柱(2 節点の鉛直な梁要素)とそれ以外で異なります。柱の単位長さ当りの自重を \( w_0 \) とすると、柱の全自重 \( W = w_0 \cdot L \)(\( L \) は柱の全長=節点間距離)は上下の節点重量へ 1/2 ずつ加算します。ただし下階に柱が接続しない RC/SRC 柱(一般には最下階の柱)では、柱下部の節点に取り付く梁の最大せい \( D_{\max} \) に相当する長さの柱重量 \( W_{\text{extra}} = w_0 \cdot D_{\max} \) を下端節点だけへ加算します(鉄骨柱には適用しません)。柱の総重量は \( w_0 \cdot (L + D_{\max}) \) です。梁・ブレースは部材の等分布荷重として扱います。この配分規則は地震用重量と長期応力解析用の DL 荷重ケース(自重の長期応力解析への接続)で共通です。
算定値と採用値の更新
形状・断面、材料密度と設計単位重量、鋼用途別倍率、壁増打ち・開口、仕上げ、 用途別地震用積載、支持伝達、手入力重量の変更後は、解析直前にも重量・物理質量を再生成します。 階名・床レベル・種別・手入力重量と利用者剛床設定は保持します。 階の自動算定値と、手入力を優先した採用値を区別して表示します。 X と Y は同じ確定重量を使い、方向ごとの生成で重量を加算しません。
自動算定の階重量・剛床重量・代表節点質量・自動荷重は、重量入力自身には含めません。 利用者が編集した剛床重量・Ci・代表節点・所属とマスター拘束は入力として保持します。 自動マスター拘束は、構造節点の現在の支持条件から更新します。 入力が同じでも保存・編集で生成結果が変わった場合は、出力の整合も確認して更新します。 重量と EX・EY は一括採用し、途中失敗では旧自動地震力を使用しません。 係数算定に必要な重量・階・剛床・周期の検査は、構造解析の剛性行列組立とは独立です。
再生成前の記録や、現在使われていない自動生成の代表節点も、参照先が実在すれば保存できます。 この保持は、現在の入力への採用可否を認定するものではありません。 保存・読込と解析前の参照先検査の範囲は、未完成の入力と参照の整合性を参照してください。 階の生成では、前回自動生成した代表節点の記録に実在しない節点があれば、対象を示して停止します。
実装参照:sepika_job::weight_preparation(crates/sepika-job/src/weight_preparation.rs)と
sepika_job::prepare::prepare_model(crates/sepika-job/src/prepare.rs)が重量の鮮度と一括採用を扱います。
階共通耐火被覆の重量
本節では、S と CFT が混在する建物の耐火被覆重量を説明します。
被覆の種別と面重量は重量算定の入力です。防火被覆の要否、必要厚さ・認定仕様、火災時の耐力や一の柱を除いた架構の安全性は判定しません。
被覆なし・面重量0で計算できることは、令第70条に基づく防火被覆が不要であることを意味しません。必要な防火性能と、実際に採用する被覆の重量を別途確認してください。
各階の Story::fireproof に次の条件を保持し、部材ごとの上書きは設けません。
| 条件 | 既定値 | GUI の単位 |
|---|---|---|
| S 用種別 | なし | なし/吹きつけ/成形版 |
| S 柱用面重量 | 0 | N/m² |
| S 梁用面重量 | 0 | N/m² |
| CFT 用種別 | なし | なし/吹きつけ/成形版 |
| CFT 柱用面重量 | 0 | N/m² |
面重量は内部で N/mm² に換算します。 S と CFT は種別も面重量も独立しているため、同じ階でも S は吹きつけ、CFT は成形版といった設定ができます。 入力は有限な非負値とし、種別なし、または面重量 0 の条件は重量を加算しません。
対象は S 主架構柱・大梁、CFT 主架構柱、S 小梁です。
主架構の用途は FrameSectionUse::Column/Girder、小梁は SecondaryMemberKind::Beam で判定します。
片持ち大梁・片持ち小梁も含め、材軸の角度から対象用途を推定しません。
RC・SRC、ブレース、二次部材の間柱、CFT 梁には加算しません。
帰属階は、部材の端点のうちもっとも高い標高が属する階です。 主架構は材端節点、小梁は支持アンカーと自由端から解決した材端座標を用います。 床レベル上はその階、中間高さは直上階となり、複数階にまたがる場合も帰属階の条件を全体へ適用します。 正の面重量を持つ被覆条件で必要な階・用途・断面・材軸を解決できない場合は、別階や周長 0 へ読み替えず算定エラーにします。
周長 \(P\) [mm] は 被覆外周用半径と実外周 の共通 API から求めます。 吹きつけは H のフィレットと Box の角丸を含む実外周、成形版は包絡矩形を用い、円形はどちらも円周とします。 組立 H は板組輪郭を表す仕様を維持し、溶接ビードの輪郭を自動追加しません。 平鋼はモデルの中実矩形、中実丸鋼は円形の周長を使用します。 吹きつけに必要な半径が未知・不正の場合や、未対応の形状では算定エラーにします。 成形版は半径未知でも包絡寸法を解決できれば算定できますが、既知の不正半径は拒否します。
内部面重量を \(q\) [N/mm²]、既存の自重算定長を \(L\) [mm] とすると、被覆重量は次式です。
\[ w_{\mathrm{fireproof}}=qP,\qquad W_{\mathrm{fireproof}}=qPL \]
被覆は付加自重として加算し、steel_weight_factor は重ねて乗じません。
DL、地震用重量、物理質量相当重量へ同じ重量を加算し、質量は重量を重力加速度で除して扱います。
躯体の重量割増、自重算定長、既存の節点・支持部材への伝達方式は変更しません。
extra_line_weight は部材固有の例外追加重量として加算を維持し、通常の耐火被覆は階共通条件で入力してください。
小梁は既存のフェース間自重作用区間へ被覆の線重量を重ね、両端支持・片持ちとも同じ逐次反力伝達を使用します。 小梁検定で用いる自重荷重にも含めるため、主架構への反力だけに加算して小梁の曲げを取り落とすことはありません。 間柱が壁版から受ける荷重や、壁版自身の自重には被覆を追加しません。
階の再生成・編集 undo/redo・OViKA 保存では条件を保持します。 ST-Bridge から新たに生成する階は、被覆なし・面重量 0 で初期化します。 標準 ST-Bridge ではこの荷重条件を保存しないため、条件を含む保存・復元には OViKA を使用してください。 ダンパー総重量を指定した対象部材は、被覆を総重量に含め、階共通被覆を自動追加しません。
実装参照:StoryFireproof(crates/sepika-core/src/model/story.rs)が階共通条件を保持し、sepika_load::fireproof::{primary_line_weight, secondary_line_weight}(crates/sepika-load/src/fireproof.rs)が共通の被覆線重量を解決します。
主架構は enumerate_self_weight(crates/sepika-load/src/story_gen/self_weight_calc.rs)、小梁は beam_self_weight_udl・beam_mass_equiv_udl(crates/sepika-load/src/floor/beam_design.rs)で付加自重へ接続します。
ダンパー総重量の直接入力
設定する
- 「荷重」タブで「荷重計算条件」を開きます。
- 「ダンパー総重量(断面・付加重量を置換)」で対象の「部材#」を選び、 「総重量[N]」に重量を入力して「+ 追加」を押します。例えば20 kNなら 20000 と入力します。
- 重量を変更する場合も、同じ部材を選んで新しい値を入力し「+ 追加」を押します。 同じ部材の登録値は更新されます。指定の取消しは登録行の「🗑」で行います。 指定先を変える場合は新しい部材へ登録し、旧対象の登録が重複して残っていないか確認してください。
対象は2節点の制振ダンパー、またはダンパーとして重量を置換する柱・梁・ブレース・ ファイバー梁・マルチスプリングです。重量は有限な非負値とし、無重量として扱う場合は 0 N を指定します。 制振ダンパーとして配置した部材は総重量の指定が必要なので、無重量の場合も登録行を削除せず0を入力してください。
重量の範囲: 入力する総重量 \(W\) には、その部材としてモデル化した範囲の装置・支持部・ 被覆・仕上げ・その他の付加重量を含めます。支持部を別の部材としてモデル化した場合は、 その支持部の重量をWに含めないでください。装置だけの重量を入力したり、別モデルの支持部重量を 重ねたりすると、重量が不足または二重計上になります。支持部の面積・長さからの自動重量算定は行いません。
重量・質量の扱い
指定した部材では、断面から求める自重・要素質量、鉄骨重量割増、付加線重量、仕上げ、 階共通被覆を重ねて加算しません。元の断面は剛性・非線形特性のために使用します。 設計重量と物理質量相当重量に同じWを用い、DLには両端へ \(W/2\) ずつ、 動的質量には \(W/(2g)\) ずつを配分します(総質量は \(W/g\)、gは重力加速度)。 階へ集計した質量は床面の代表点へ集中し、水平X・Yと鉛直軸回りのねじれを扱います。 この重量から上下方向Zの動的質量は作りません。補正質点方式・質点のみ方式の選択は変わりません。
集中質量の制約: 装置・支持部の分布質量による局部応答や、装置・支持部自体の回転慣性の再現は 保証しません。安全側・危険側を一律には認定できないため、局部応答が重要な場合はモデル化範囲と 質量配置の妥当性を別途確認してください。
更新後の準備計算とエラー対処
重量の追加・変更・取消し、指定先の変更、材端・剛床の位置や拘束を編集した後は、 画面下部の「準備計算」パネルで確認してください。既存階の重量と質量の配分は、次の解析前にも更新されます。階が未定義なら 「▶ 準備計算 実行」 で初期化してください。 同じ階のW合計が変わらない編集や、通常部材へ0 Nを新たに指定する場合も、現在の入力から配分を確認して更新します。 生成結果の不足・不一致を指摘された場合や、読み込んだモデルで階の再生成を求められた場合も、 入力の不備を解消し、準備表示を確認してから解析を再実行してください。
総重量の未設定や対象部材・節点の不備がある場合は、該当する入力を修正してください。 正の重量の帰属階に床面の節点がない場合は質量を配置できないため、階レベルと節点配置を確認します。 例えば材端Z=3000 mm、階レベル0/4000 mmで4000 mmの床面に節点がないモデルは計算できません。 エラーを避けるために重量を0にしたり、別階へ移したりするのではなく、実際のモデル化に合う入力へ修正してください。
実装参照:load_cfg_panel(crates/sepika-app/src/tables/load_cfg.rs)が設定画面を提供し、
enumerate_self_weight(crates/sepika-load/src/story_gen/self_weight_calc.rs)が総重量を両端へ配分します。
RC/SRC 柱の仕上げ重量
RC/SRC 主架構柱の仕上げ面重量は、各階の共通条件として指定します。
未設定の値は 0 N/mm² とし、同じ階の柱には同じ値を適用します。
対象は FrameSectionUse::Column の RC/SRC 梁要素であり、材軸の角度で柱と梁を読み替えません。
適用する値は、もっとも高い材端節点が属する階の設定値です。 床レベルちょうどの節点はその階に属し、中間高さの節点は直上階に属します。 傾斜柱・水平配置の Column・複数階にまたがる柱も、この値を柱全体に適用し、階境界で区間分割しません。 所属階が解決できない柱はエラーとし、別階の値へ振り替えて重量の欠落を隠しません。 階が未定義または FL・差分が不足する場合は、明示入力を求めて階に依存する算定を停止します。 初回の DL 自動同期も同じ床レベルを使い、共通値は 0 とします。 階がすでに定義されている場合は、最上階より上の柱へ新しい階を補ってエラーを回避しません。
仕上げ周長は SectionShape の実形状から求めます。
矩形 RC/SRC 柱は \( \varphi = 2(b+D) \)、円形 RC 柱は \( \varphi = \pi D \) です。
単位長さ当たりの仕上げ重量は \( w_{\mathrm{finish}} = q_{\mathrm{finish}}\varphi \)(N/mm)となり、部材自重へ加算します。
たとえば幅 500 mm・せい 700 mm の矩形柱の周長は 2400 mm、直径 600 mm の円形柱は \( 600\pi \) mm です。
正の仕上げ重量を指定した柱の形状を解決できない場合や、面重量が負値・非有限値の場合もエラーにします。
荷重計算条件の GUI では階ごとに入力し、RC/SRC 柱は部材別仕上げ面重量の選択対象から除外します。
部材別 LoadCfg::finish_area_weight は RC/SRC 柱には適用しません。
特定柱だけ異なる仕上げ重量が必要な場合は、既存の追加荷重を入力してください。
RC/SRC 柱の仕上げと、梁仕上げ・耐火被覆・鉄骨重量割増は別の条件として扱います。
実装参照:Story::column_finish_area_weight(crates/sepika-core/src/model/story.rs)が階共通値を保持します。
enumerate_self_weight(crates/sepika-load/src/story_gen/self_weight_calc.rs)が仕上げ重量を算定し、DL と地震用重量で共有します。
壁・シェル自重(設計重量)
壁版は、物理壁版IDごとに躯体実領域・板厚・材料・開口・仕上げから共通総量を求めます。生成Wall、剛性に算入しない壁版、Attachedを二重計上しません。設計重量・物理質量相当重量・解析Wallの質量行列負担は用途別に保持します。
| 対象・入力 | 単位 | 総量の算定条件 | 配分・未算定 |
|---|---|---|---|
| 躯体板厚・材料・境界 | mm・kN/m³ | 正の板厚と解決可能な実領域 | 境界断面・材料・向き不足は壁ID付き診断 |
| 位置付き矩形開口 | mm | 実領域内の和集合を控除 | 重なりを二重控除しない。外側・自己交差・不正入力は診断 |
| 開口面積だけ/位置なし個別開口 | mm²・mm | 単一開口の成分総量は算定可能 | 階帯・実体積中央配分は未算定。複数開口で和集合も不明なら総量も未算定 |
| 仕上げ・増打ち面荷重 | kN/m² | 現在の入力は正味実領域上一様分布 | 分布不明の別の荷重を一様分布へ読み替えない |
| 開口部重量 | N | 非負の成分総量を加算 | 位置・分布入力が無いため階配分は未算定 |
| DL方式/任意辺率 | — | 支持条件と別に明示選択 | 地震用階帯・物理総量を変えない |
未算定を0、半々、仮の重心、DL反力で補いません。必要な地震用計算は壁IDと不足理由を示して停止します。0以下の板厚、負値、NaN・∞、途中で非有限となる計算結果も診断します。
壁の階帯は既存の隣接階レベルの中間標高で区切り、実領域との交差を積分します。DL方式・任意辺率・小梁反力は使いません。多層壁は同じ壁IDの総量と各帯内訳を保持します。基部より下・最上階より上で領域を覆えない場合、未定義端帯を推測しません。
幅4m・高さ3m・厚さ0.2m・γ24kN/m³で総57.6kN。上半分の2m²開口なら総48kN、下28.8/上19.2kN、下半分なら19.2/28.8。中央跨ぎは各帯との実交差を控除します。三方スリットでも階帯は28.8/19.2で変わりません。
床0/3000/6000/9000mmで幅4000・厚200mmの壁3000..6000なら3000階28.8kN/6000階28.8kN。3000..9000なら28.8/57.6/28.8kN、計115.2kNです。生成要素数で総量を変えません。
補正質点方式は物理質量相当重量から行列負担を控除し、質点のみ方式は物理全量を代表質点へ置きます。必要な床面スレーブ節点が無い場合は質量を失わせず壁ID付き診断です。シェルは従来の面積・頂点集計を維持します。壁の断面と自重に実領域の条件と出典を示します。
| 公開生成方法 | 壁自重の扱い |
|---|---|
| Density | 共通総量を独立階帯へ積分 |
| SyncedGravityCases | 同期壁自重を識別してDL反力を除外し、同じ階帯を一度加算。再同期で増分なし |
| GravityCasesOnly | ケースの荷重だけを使用。手入力ケースを壁自重へ読み替えない |
実装参照:generate_stories_with_opts・generate_stories_with_synced_self_weight(crates/sepika-load/src/story_gen/generate.rs)、Model::wall_weight(crates/sepika-core/src/model/wall_weight.rs)を参照してください。
節点の階・剛床への割り付け
階の FL・ΔSL は利用者入力を保持します。SL を自動所属の区間境界と剛床候補面に使い、階高は FL 間差を使います。 最下階の所属区間は構造最下端から最下階 SL までで、構造最下端を FL として追加しません。 明示所属・利用者剛床を保持し、SL 面から 1 mm を超えて離れた中間節点を新規剛床へ含めません。 未設定の FL・差分があれば推測で補完せず、依存計算を停止します。入力方法と使い分けは階の分布を参照してください。
動的解析用の質点質量の設定
階の生成は、剛床代表節点(マスター)へ動的解析(固有値・時刻歴・精算固有周期)用の質点質量をあわせて設定します。動的質量は物理質量(鋼材は物理質量密度 7.85 t/m³)に基づき、地震用重量(設計重量。鋼材は 78.5 kN/m³)とは一致しません。鉄骨重量割増 factor(スチフナ・スプライスプレート・ボルト等の実重量の割増)は、設計重量だけでなく動的質量側にも 7.85 t/m³ ベースで同じ値を掛けます(主架構線材・二次部材で同一の規則)。CFT 線材の動的質量は解析の質量行列と同じく鋼管部(7.85 t/m³)と充填コンクリート部(γC)の合計とし、鋼管部にだけ factor を掛けます。質量方式(固有値解析の質量モデル)に応じて:
- 補正質点方式(既定): 各節点の物理質量相当重量 \( w_{\text{mass},i} \) から、解析の質量行列に部材密度の分布質量として計上される分 \( w_{\text{frame},i} \) を控除した \( \text{net}_i = \max(0, w_{\text{mass},i} - w_{\text{frame},i}) \) を用いる(密度質量との二重計上防止。仕上げ・付加線重量・鉄骨重量割増の増分・二次部材・雑壁・ダンパーの自重は分布質量に入らないため控除しない)
- 質点のみ方式: 控除なしの物理質量相当重量の全量 \( w_{\text{mass},i} \) を用いる
両方式の公称並進総動的質量は一致します(\( \sum w_{\text{mass},i}/g \))。
主架構線材の物理質量相当と質量行列控除は、解析と同じ総断面・芯々長を使います。 RC/SRC 大梁の設計自重長を控除しても、この物理質量の幾何は変更しません。 二次部材小梁は質量行列に入らないため、物理密度による自重も同じフェース間区間へ載せます。 断面質量特性と芯々長から求める質量と、二次小梁から支持先へ伝える物理質量相当は区別します。 フェースの是正は後者の作用長を変え、節点の物理質量相当・階の動的質量にも反映されます。断面質量特性と芯々長の保持だけで、これらの転送量の不変を保証しません。 たとえば単位長質量0.000157 t/mm・芯々長6000 mmなら断面質量特性からは0.942 tですが、両端控除が各266.274169979695 mmなら転送量は0.858389910626376 tです。 転送量・動的質量の増減を、自動的に安全側とは扱いません。 設計重量と物理質量相当は別々の単位重量・密度から算定し、設計重量を重力加速度で割って物理質量に読み替えません。
マスターの並進質量(水平 2 方向)と剛床面内の回転慣性は次によります(\( r_i \) は慣性力重心からの平面距離、\( g \) は重力加速度):
\[ m = \sum \text{net}_i / g, \quad J = \sum (\text{net}_i / g) \cdot r_i^2 \]
質点系(串団子)用の動的質量:上記の剛床マスター質量はフレーム(質量行列)用で、補正質点方式では分布質量分を控除した net 質量です。
これとは別に、階の生成は質点系へ渡す層の物理質量相当を Story::dynamic_mass(mass_equiv_weight_n・center_xy_mm・inertia_t_mm2)として保存します。
質点系は部材分布質量を持たないため、質量方式に依らず物理質量相当重量の全量 \( \sum w_{\text{mass},i} \) を集計し、回転慣性はその分布から質量重心まわりに直接算定します(質点系解析の「質量」)。
実装参照:sepika_load::story_gen(story_gen/mod.rs)が算定し、
自重の算定規則は enumerate_self_weight に一元化して、後述の DL 荷重ケース(自重の自動同期)と共有します。
大梁・小梁の自重専用フェース区間は sepika_core::face_distance::girder_self_weight_interval・secondary_self_weight_interval(crates/sepika-core/src/face_distance.rs)が求め、実形状は SectionGeometry(crates/sepika-core/src/section_shape/face_geometry.rs)を共有します。
鋼材の設計用単位体積重量は \( \gamma_s = 78.5\ \text{kN/m}^3 \) 固定(固定荷重。密度 > 0 のとき。保存密度に依存しない)です。物理質量密度は 7.85 t/m³ です。
CFT 充填コンクリート部の設計用単位体積重量・物理質量密度は、どちらも sepika_core::model::Material::cft_core_design_unit_weight_n_per_mm3・Material::cft_core_mass_density(crates/sepika-core/src/model/material.rs)が無筋コンクリート(ConcreteComposition::Plain)の単位体積重量表 \( \gamma_C \) から換算します。
なお数量積算は積算慣用値の 7.85 t/m³ を用いており、値は物理質量密度と同じですが用途は独立です
(数量積算の算定式)。
重力ケースの選択:地震用重量に算入する荷重ケースは LoadCaseKind から選択します(固定 Dead + 地震用積載 LiveSeismic。LiveSeismic がなければ Live で代用)。
骨組用積載ケースは除外します。種別未設定のモデルでは先頭ケースのみを用います。
標準構成では自重を含む「DL」と「LL(地震用)」が算入されます。階の生成では密度からの自重直接算入を行わず、DL に含まれる設計自重を物理質量へ置換する専用入口 generate_stories_with_synced_self_weight を使います(DL へ自重を同期済みであることを呼び出し側が保証する。generate_stories_with_opts の include_density_self_weight = false は密度算入を行わず重力ケースの内容だけを算入するモードで、モデル自重の置換もしません。荷重の入力(節点荷重・部材荷重) 参照)。
床板本体も、この自重同期済みモードでは材料密度による物理質量へ一度だけ置換します。 仕上げ・用途別積載・先端荷重は床板本体の置換対象に含めません。 単位・材料優先解決・適用制限は床板の物理質量と適用モードを参照してください。
手入力の地震用重量:階の地震用重量は、上記の集計値に代えて階ごとに直接入力できます。 入力した値は準備計算で階を生成し直しても保持され、集計値より優先して Ai 分布の \( W_i \) に用います (準備計算)。
実装参照:手入力は sepika_edit::SetStoryWeight(crates/sepika-edit/src/wall_misc.rs)が受け付け、sepika_core::model::Story::weight_override(crates/sepika-core/src/model/story.rs)に保持して実効値 Story::seismic_weight へ反映します。準備計算で階を再生成しても手入力値が優先されます。
壁版と間柱の明示した支持先
壁版支持辺率・間柱端部率はDLの伝達へ使います。壁の地震用階重量はこの反力を使わず水平帯積分です。間柱自身の既存反力伝達は自重の長期応力解析への接続を参照してください。
自重の長期応力解析への接続(DL 荷重ケース)
部材自重・壁自重・ダンパー自重を、固定荷重(LoadCaseKind::Dead)の標準荷重ケース「DL」の内容として自動生成し(スラブ固定荷重の分配と合算)、長期応力解析・荷重組合せへ接続します。
床(スラブ)の自重はここには含まず、床の断面の板厚と材料から算定して床荷重の分配へ乗せます(床の断面と自重)。自重の算定対象を部材・壁・ダンパーに限ることで、床の重量が両方から二重に載るのを防いでいます。
梁・ブレースの本体は等分布荷重、柱は既存の節点自重を載せます。梁の床板下面までの嵩上げは、本体と分けた区間荷重として加算します。壁版は解析Wall生成有無によらず共通総量を支持部材へ一度伝達します。階帯集計はDL支持比や反力から独立です。シェルは既存の頂点節点荷重を維持します。
RC/SRC 柱の仕上げ重量も、階共通条件と断面形状の規則で DL と地震用重量を共通算定します。 未設定は 0 N/mm² とし、もっとも高い材端節点の所属階の値を柱全体へ適用します。 傾斜・水平配置・複数階にまたがる Column も同じ規則とし、所属階未解決はエラーにします。 柱自重の節点荷重・部材荷重への伝達方法は、上記の既存規則のままです。
鋼の物理単位重量が固定設計値78.5 kN/m³を超える材料を参照する場合、DLの生成と 設計荷重を必要とする解析を理由付きで停止します。旧自動荷重を最新の結果として使えません。 判定単位・対象・割増前の検査はカスタム鋼材の密度と計算可否によります。
矩形RC/SRC大梁と床板の実重複控除
矩形 RC/SRC の主架構大梁は、囲まれた床板との実重複体積を梁本体から控除します。 大梁の用途で対象を決め、柱・ブレース・S/CFT・二次小梁へは適用しません。 梁は個別の鉛直偏心を含む実配置、床板は基準階の FL と個別の鉛直偏心、および床断面の実板厚を使います。 剛性へ算入するかにかかわらず、支持関係から実在する床板を解決します。建物共通のスラブ厚は控除量・上限・既定値に使いません。
同じ平面位置で、梁の上端・下端を \(z_{b,t},z_{b,b}\)、床板の上面・下面を \(z_{s,t},z_{s,b}\) として、重複高さを
\[h_s=\max{0,\min(z_{b,t},z_{s,t})-\max(z_{b,b},z_{s,b})}\]
とします。片側だけに床板が実在する場合は全梁幅 \(b\)、両側に実在する場合は各 \(b/2\) を割り当てます。 片側の重複高さが 0 でも、床板が存在する限り反対側を全幅へ広げません。 床領域だけがあり床板なしを明示している側は、床板なしとして扱います。未設定・参照切れは床板なしへ読み替えず停止します。 同じ側の同じ床板の支持区間を統合し、正長の区間で別の床板候補が重なる場合は停止します。 梁の左右が別の閉領域なら、それぞれ別の床板です。同じ床板を複数の割当領域へ共有する不正な参照は停止します。
水平・一定断面では控除面積は片側のみなら \(b h_s\)、両側なら \(b(h_L+h_R)/2\) です。 上端一致で板厚 \(0<t\le D\) の場合は、控除後断面積が \(b(D-t)\) に一致します。 板厚が梁せいを超える場合も上下範囲の交差を使い、板厚を梁せいへ丸めません。離れている床板は控除 0 です。
斜梁は有限な梁の端面を含む実上下範囲を使い、控除体積を水平投影長について積分します。
\[V_{ded}=\int\sum_s b_s h_s,dl_{plan},\qquad dl_{plan}=\cos\theta,ds\]
鉛直重複高さを断面せい \(D\) で制限しません。梁本体の体積は \(bD L\) とし、既存の柱面間の自重算定区間を保ちます。 控除重量は除去する梁本体と同じ設計単位重量 \(\gamma_b\) を使い、控除後自重は \(\gamma_b(bD L-V_{ded})\) です。 床板本体は既存の床荷重分配で一度だけ計上します。動的解析の物理質量はこの設計重量の控除で変更しません。
実重複を控除する場合の適用範囲は、各側の囲まれた床板群の支持区間和集合が、梁の自重算定区間全長を隙間なく覆う場合です。 同側に別の床板が隣接する場合は、支持区間の境界ごとに左右の床板を一意に解決し、その区間の実板厚・実高さで厳密に積分します。 床板群の和集合に隙間がある場合や、途中の版なしにより正長の部分被覆となる場合は停止し、全長へ推定したり平均厚に置き換えたりしません。 実重複の控除は断面の幅方向が水平であることを要し、幅方向にも鉛直位置が変化する材軸回りの回転を与えた矩形断面は未対応として停止します。 部分取付き・取り付く床板による実重複控除は未対応です。主架構の梁の部材荷重は鉛直偏心接続を通して解析節点へ伝えます。 床板との実重複がないことを確認できる場合は、支持区間が部分的な場合や取り付く床板でも控除0とし、嵩上げの算定を続けます。回転断面は梁全体と床板の高さ包絡が分離している場合に控除0を確認します。 対象大梁に取り付く床板があり、実重複なしを確認できない場合は、未対応であることを示して停止します。 必要な位置・断面・材料・支持参照が欠ける場合、寸法や採用長さが有限な正値でない場合、体積・重量が非有限または控除体積が梁本体を超える場合は、対象と理由を示して停止します。 準備計算の荷重集計と CSV には梁本体・床板重複控除・嵩上げ加算・合計の内訳を示します。仕上げ・付加重量はこの内訳に含めません。
実装参照:sepika_load::self_weight::girder_self_weight_breakdown(crates/sepika-load/src/self_weight/girder_overlap.rs)と sepika_load::story_gen::self_weight_calc::enumerate_self_weight(crates/sepika-load/src/story_gen/self_weight_calc.rs)が実装します。
床板下面までの梁の嵩上げ
支持・割当関係で梁に対応する床板の下面が梁の実上端より高い場合、その間を対象床板の材料で嵩上げした重量と物理質量を加算します。 大梁・小梁に共通の扱いとし、梁の材料を嵩上げ材料へ流用しません。 梁上端は、梁の実材軸のXY位置を通る鉛直線と実配置した梁上面との交点高さです。 この中心線上の実上端を基準に、水平面内で材軸に直交する実断面の外側投影幅と鉛直の空き高さの積を用います。 円形断面・回転した断面も同じ算定位置と幅を使い、梁幅内の各位置の上面を積分する方式とは区別します。 断面せいの半分を一律に足した値や、斜梁の局所断面上端の座標で梁上端を代用しません。 上下に空きがあることだけで支持対象から外したり、上方の別の床板へ振り替えたりしません。 対象区間は、梁本体の自重算定区間と床板の支持・割当区間の交差です。梁端の控除を保ち、部分的な床板を梁全長へ広げません。 この交差区間、実配置、幅、床板材料が同じなら、梁材種によって嵩上げ増分は変わりません。 RC/SRC大梁の柱面間とS大梁の芯々長のように、既存の自重算定区間が異なる場合は、床板の支持区間が同じでも交差後の体積が異なることがあります。
左右の幅配分は、空き高さではなく実在する床板の有無で決めます。 片側だけならその側に全梁幅、両側なら各半幅を割り当てます。 両側に床板があれば、一方の空き高さが0でも反対側を全幅へ広げません。 床板なしの明示は床板なしとし、割当未設定・参照切れを床板なしへ読み替えません。 同じ側・同じ床板の重複候補を一度だけ使い、同一区間に矛盾する床板候補があれば停止します。 同じ床板が両側に現れる場合も、合計の割当幅は全梁幅を超えません。
各側・各区間の嵩上げ体積を \(V_j\) [mm³]、対象床板材料の設計単位重量を \(\gamma_j\) [N/mm³]、物理密度を \(\rho_j\) [t/mm³] とすると、
\[W_{add}=\sum_j\gamma_j V_j,\qquad m_{add}=\sum_j\rho_j V_j,\qquad W_{mass,add}=9806.65,m_{add}\]
です。設計重量と物理質量は同じ体積から別々に求めます。 設計重量をそのまま物理質量相当重量に使ったり、設計重量を重力加速度で除して物理質量に代用したりしません。 材料は床板の強度指定に対応する材料を優先し、それがない場合に床断面の主材料を使います。 左右で材料が異なれば、それぞれの体積へそれぞれの設計単位重量・物理密度を適用します。 床仕上げ・積載荷重、梁の鉄骨重量割増・被覆・仕上げは嵩上げへ重ねません。
各側の空き高さは \(h_j=\max(0,z_{s,bottom,j}-z_{b,top})\) とし、割当幅を \(b_j\) とすると、
\[V_j=\int b_j h_j,dl_{plan},\qquad dl_{plan}=\cos\theta,ds\]
で体積を求めます。\(s\) は材軸方向の距離、\(\theta\) は水平面からの材軸角度です。 床板の支持境界・有無・材料と、中心線上の梁実上端の式が切り替わる位置、端面、空き高さ0との交点で区間を分けます。 端面と中空部分の境界で梁上端が不連続になる場合は、各区間内からの端点高さを用いて別々の荷重区間にします。 斜梁でも鉛直の空き高さに材軸実長をそのまま掛けず、材軸方向へ渡す線荷重は \(q_{axis}=\sum_j\gamma_j b_j h_j\cos\theta\) とします。 水平で中心線上の梁上端と床板下面が一定の区間では、対象水平長 \(L_j\) に対して \(V_j=b_j h_j L_j\) です。 幅400 mm、水平長6000 mm、片側だけに床板があり空き高さ100 mmなら、体積は0.24 m³です。 設計単位重量78.5 kN/m³・物理密度7.85 t/m³の材料では、設計重量18.84 kN、物理質量1.884 t、物理質量相当重量18.4757286 kNとなります。
DLと地震用設計重量には設計重量を、動的解析と層質量には物理質量を使います。 主架構へ実部材化した小梁は主架構経路で一度、実部材化していない小梁は小梁の設計荷重・支持反力の逐次伝達で一度計上します。 嵩上げは梁の構造断面、剛性・耐力、型枠数量へ算入しません。 床板本体の自重は床荷重経路に残し、梁本体、床板との重複控除、嵩上げ加算を区別します。 準備計算結果とCSVでは、梁本体と重複控除の内訳に加え、嵩上げを床板・材料・左右・作用区間別に確認できます。 嵩上げの体積、設計重量、物理質量、物理質量相当重量を区別して表示します。
必要な実配置・断面・厚さ・材料・支持区間が未解決の場合、有限な正の寸法を得られない場合、材料密度・設計単位重量が非有限または負の場合は対象と理由を示して停止します。 床板がある場合は、空き高さが0でも必要な床板材料を検査します。明示された有効な密度0と、材料未解決は区別します。 梁・床板の位置、厚さ、割当・材料・密度を変更した場合は再生成し、保存・再読込と編集の取り消し・やり直しでも現在入力に対応する重量・質量を使います。
実装参照:sepika_load::self_weight::{beam_upstand_segments, all_beam_upstand_segments}(crates/sepika-load/src/self_weight/beam_upstand.rs)が共通の内訳を算定し、sepika_load::story_gen::self_weight_calc::enumerate_self_weight(crates/sepika-load/src/story_gen/self_weight_calc.rs)と sepika_load::cascade::solve_with_basis(crates/sepika-load/src/cascade.rs)が主架構・小梁の重量と物理質量へ接続します。
小梁自重の作用区間
S 柱・CFT 柱・S 大梁・S 小梁の耐火被覆は、階共通耐火被覆の重量 と同じ条件・式で DL へ加算します。 被覆分には鉄骨重量割増を重ねず、既存の自重算定長と伝達方式を維持します。
二次部材小梁の自重は、芯々の材軸座標で表したフェース間区間 [a, b] に元の単位長荷重を載せます。
総重量だけを減らして全長へ再配分しないため、支持幅が異なる場合の非対称反力も保持できます。
設計自重算定長の規則は 地震用重量・層データの生成 と共通です。
鉛直柱支持では小梁を支持する鉛直柱のフェースの最外側面交点と有限柱閉区間を使います。
未算定の支持を0控除へ置換せず、理由と支持材を示してDL生成を停止します。
たとえば芯々長 3000 mm、矩形支持材の始端幅 300 mm・終端幅 200 mm の直交取付きなら、作用区間は [150, 2900] mm です。
単位長荷重を w N/mm とすると、総重量は 2750w N、載荷重心は始端から 1525 mm です。
反力は芯々の支持位置で求めるため、始端が 2750w × 1475/3000 N、終端が 2750w × 1525/3000 N になります。
片持ちでは支持端のフェースから自由端まで載荷し、全量を支持端へ伝えます。
小梁の材軸・支持位置・検定スパンは芯々のままで、間柱の自重作用区間も変更しません。
自重総量・DL への反力伝達・地震用重量は同じ区間を使うため、控除長さの食い違いは生じません。
物理密度による質量相当の逐次伝達も同じフェース間区間へ載せますが、単位長荷重は設計自重から独立に求めます。
断面質量特性と芯々長から求める量、転送量と階動的質量の関係は地震用重量・層データの生成の「動的解析用の質点質量の設定」を参照してください。
主架構大梁の DL は従来の総重量を芯々長で割った等分布として載せ、二次部材小梁の部分区間載荷とは区別します。
実装参照:sepika_load::cascade::solve_with_basis(crates/sepika-load/src/cascade.rs)が自重区間へ荷重を載せ、芯々スパン上で反力を逐次伝達します。
設計重量と物理質量相当の単位長荷重は beam_self_weight_udl・beam_mass_equiv_udl(crates/sepika-load/src/floor/beam_design.rs)から独立に求めます。
解析要素にならない壁版の自重
生成Wallと壁エレメントにならない壁版は共通総量とDL方式を使います。実領域・対象・入力・未算定の対照表は壁の断面と自重、独立階帯は地震用重量・層データの生成を参照してください。
| DL方式 | 実支持材へ伝える量 |
|---|---|
| 下梁全量 | 共通総量全量 |
| 上梁全量 | 共通総量全量 |
| 高さ中央の実体積切断 | 内法実領域の上下端中央で切断した交差量。位置付き開口を反映 |
| 任意辺率 | 境界辺順の非負率、総和1(許容差1e-9)。DL専用 |
3方式と任意辺率の同時適用はエラーです。方式は支持条件・スリットと別に明示選択します。左右下完全スリット・上接続は先に判定して上梁全量です。上下梁せいが異なれば実高さ中央と階レベル中央は一致しません。DL変更で総量・階重量は変わりません。
スリットがない囲まれた壁は、梁中間の間柱端など境界頂点に節点がない場合も、実支持部材の材軸部分区間へDLを載せます。スリットを指定した場合は辺への対応が必要で、対応を解決できなければ未算定を診断します。
小梁上の壁は下小梁へ全量を載せ、逐次反力伝達で主架構へ運びます。柱・間柱支持は指定区間へ分布荷重を載せ、間柱端部率は別に必要です。未設定・不正率・支持欠落・循環・切れた辺は振り替えず診断します。
Attachedの腰壁・垂れ壁・パラペット・部分区間は線アンカー、柱伝達指定は柱へ集中、床領域自立壁は既存床伝達です。3方式を無条件適用しません。支持や床領域が解決できなければ解析前診断で停止します。
壁版フォームで方式を選び適用し、準備計算後にDL表示と階重量を確認します。編集Undo・再生成も現在形状から同期します。自動壁荷重と手入力荷重を識別し、同期2回で増分を生じません。手入力重力ケースを壁自重として再解釈しません。
実装参照:dl_ratios・distribute_enclosed_wall_plates(crates/sepika-load/src/wall_plate_load.rs)、compute_gravity_auto_load_cases・apply_auto_load_cases(crates/sepika-job/src/auto_loads.rs)を参照してください。
任意辺指定と間柱の取付条件
各辺の支持部材と材軸区間は、壁版割当領域の境界を正本としてそのまま使います(ADR 0020)。壁版割当領域は柱・梁・間柱を構面ごとに面走査して分割した閉領域で、境界の 1 辺は 1 つの支持部材の材軸区間に対応します。同じ種類どうし(主架構どうし・間柱どうし)の重なりは解析前チェックのエラーであり、異種の重なりは主架構を優先します。同種の重なりを自動で一意化しないため、再構築でどの支持部材が残るかは要素順に依存します。辺の全長を覆うかは領域の構成から決まり、節点座標からの支持先の再推定はしません。境界が参照する支持部材が実在し、種別(柱・梁・間柱)が適合し、材軸を解決できることは Model::validate が確認します。境界の頂点にモデル節点が無くても(間柱の端が梁の材軸中間にある場合など)支持先と荷重を取り落としません。
実際に梁で受ける壁の自重を柱へ指定すると、その梁の曲げを過小評価する危険側のモデルとなります。境界辺の存在だけで荷重の伝達を判断せず、実際の納まりに応じて指定してください。間柱を支持辺にする場合は、その間柱が壁版の境界となるよう壁版を分割します。
柱が受け持つ分は、その柱の材軸方向の分布荷重として載せます。軸力は、節点変位による内力に、切断位置までの部材荷重を含む固定端内力を重ね合わせて求めます。引張を正とし、下端固定・上端自由の鉛直柱に下向き等分布荷重 w が作用する場合、下端からの距離 x における軸力は N(x) = −w(L−x) です。下端は柱が受け持つ全重量を圧縮軸力として負担し、上端の軸力は 0 となります。上下端とも拘束される場合の負担は、架構の変形適合条件と釣合いから決まります。
間柱が受け持った荷重は、二次部材の反力の逐次伝達が主架構へ運びます(床荷重の分配)。鉛直な間柱では、壁から間柱への負担率とは別に、間柱の上下端への負担率も明示入力が必要です。既定は未指定で、解析前エラーとなります。間柱自身の自重にも同じ端部負担率を適用します。
指定した支持辺に荷重を流せない壁版は、解析前チェックがエラーで止めます。 自重の行き先が決まらないためです。行き先のない荷重を節点荷重として残すと、要素が接続しない節点への節点荷重は解析の自由度から外れるので、荷重の一覧には見えるのに解析からは消えます。
間柱の端部支持条件で自由端とした端には、端部負担率0を指定してください。自由端への正の負担率は入力エラーで、反対側へ自動振替しません。
荷重の入力(節点荷重・部材荷重)
荷重は、荷重ケースの中に節点荷重と部材荷重として定義します。 本節では、それぞれで何を指定でき、入力した値が解析へどう入るかを説明します。
荷重の入力は、左パネルのナビゲータにある「荷重ケース」から行います。 荷重ケース・種別グループ・個別の荷重のいずれかを右クリックすると、追加・編集・削除の メニューが出ます。入力した内容は下ドックの「荷重」タブでも一覧・編集できます。
荷重ケースの構成
ナビゲータの荷重ケースは、次の 3 階層で表示します。
- 荷重ケース(DL・LL(架構用)・EX など)
- 種別グループ(節点荷重・部材荷重)
- 個別の荷重
種別グループを分けているのは、節点荷重が 6 成分の力とモーメントを持つのに対し、部材荷重は 載荷の形と作用方向を持つというように、指定する内容がそもそも異なるためです。
個別の荷重をクリックすると、その荷重が載っている節点・部材が 3D ビューで選択状態になります。 名称だけでは位置がわからないため、モデル上のどこに載っているかを確かめられるようにしています。
実装参照:左パネルの荷重ツリーは sepika_app::app::nav_loads(crates/sepika-app/src/app/nav_loads.rs)が描画し、LoadGroup が節点荷重・部材荷重の種別グループを表します。
振動荷重ケースとの違い
ナビゲータには、静的な荷重ケースとは別に 振動荷重ケース があります。 時刻歴応答解析(立体)と質点系時刻歴を実行したときにだけ登録され、波形・加振方向・ 線形/非線形(質点系では次元も)を表します。 節点荷重や部材荷重を載せる入れ物ではないため、本節の荷重入力の対象外です。 ツリーの見方とクリック時の表示切替は ナビゲータの解析結果ツリー を参照してください。
実装参照:sepika_core::model::{VibrationCase, LumpedVibrationCase}(crates/sepika-core/src/model/vibration.rs)が波形・加振方向・線形/非線形(質点系は次元も)を保持し、ナビゲータの表示は sepika_app::app::App::nav_vibration_cases(crates/sepika-app/src/app/nav_vibration.rs)が行います。
節点荷重
節点荷重は、節点に作用する力とモーメントを全体座標系の 6 成分で与えます。 単位は力(Fx・Fy・Fz)が N、モーメント(Mx・My・Mz)が N·mm です。
1 つの節点に何件でも定義できます。 たとえば同じ柱頭に載る機器の重量と吊り物の重量を別々の荷重として入力し、それぞれに名称を 付けておくと、あとからどちらがどれだけを占めていたかをたどれます。 解析では、同じ節点に載る荷重をすべて加算した値を外力とします。
実装参照:sepika_core::model::NodalLoad(crates/sepika-core/src/model/load.rs)が 6 成分と名称を保持し、同一節点の荷重の加算は sepika_solver::common::assemble::assemble_global_f(crates/sepika-solver/src/common/assemble.rs)が行います。
部材荷重
部材荷重は、載荷の形(種別)・作用方向・諸元の 3 つで指定します。 位置と長さは、部材の i 端から材軸に沿って測った距離 [mm] で与えます。
| 種別 | 諸元 | 内容 |
|---|---|---|
| 中間集中 | a [mm]、P [N] | i 端から距離 a の位置に大きさ P の集中荷重 |
| 全長等分布(全長追従) | w [N/mm] | 現在の材長全体に強度 w の等分布荷重 |
| 区間分布(固定距離) | a・b [mm]、w1・w2 [N/mm] | 固定した区間 [a, b] に強度 w1 → w2 の線形分布荷重。w1=w2 なら部分等分布 |
既定の種別は等分布、既定の作用方向は鉛直下向き(-Z)です。 作用方向は全体座標系で指定し、鉛直下(-Z)・鉛直上(+Z)・X±・Y± から選びます。既存荷重の編集では「保存済み方向」が既定です。選択肢にない任意方向や微小な成分も、方向を明示変更しなければそのまま保持します。対象部材の選び直しだけでは保存済み方向を変更しません。
作用方向の計算条件
集中・分布のどちらも、作用方向は内部で単位方向へ正規化してから強度と組み合わせます。[0,0,-1] と [0,0,-2] は同じ下向き荷重です。入力した方向成分は書き換えません。
計算には、方向の全成分が有限で、成分の平方和の平方根として計算したノルムが有限かつ 1e-12 以上であることを要求します。全荷重ケースの部材荷重を対象に確認し、不成立なら荷重ケース・荷重の添字と名称・対象部材・理由を示して計算を拒否します。強度が 0 の荷重も方向の検査対象です。
ゼロ方向、ノルムが 1e-12 未満の方向、平方和がオーバーフローする巨大な方向、非有限成分を含む方向は計算できません。この境界は既存の数値正規化の適用条件であり、構造規準の許容値や荷重を省略してよい基準ではありません。方向全体が条件を満たせば、微小な成分を含む任意方向や非単位方向も使えます。正規化の詳細は部材荷重の作用方向を参照してください。
方向の全成分が有限であれば、ゼロ方向など計算条件を満たさない入力も、そのまま編集・保存・再読込できます。参照先や位置・区間など、他の入力条件は引き続き適用します。計算時に既定方向へ置換したり、荷重を削除したり、強度を 0 に直したりしません。方向が成立した強度 0 の荷重、荷重のないケース、等大反対荷重の相殺、検討軸への直交による成分 0 は、方向不備とは区別します。合力 0 の分布でもモーメントが残ることがあります。
実装参照:sepika_core::model::Model::validate_member_load_directions(crates/sepika-core/src/model/load.rs)が共通の方向条件を検査します。
作用位置と区間
載荷対象の材長 L は有限で 1e-9 mm より大きい必要があります。固定距離の集中荷重は有限な位置 a で 0≤a≤L、区間分布は有限な位置 a・b で 0≤a<b≤L としてください。両端の集中荷重、短い正の区間、符号付き・ゼロの強度は入力できます。
範囲外・非有限の位置、長さが 0 以下の分布区間は、追加・更新・保存・読み込み・解析前の確認で、荷重ケース・荷重の添字・対象部材と理由を示して拒否します。材長を 0.5 mm だけ超える場合も同じです。区間の切り詰めや全長追従への読み替えは行いません。これは本アプリの入力条件であり、構造規準の寸法許容値ではありません。
実装参照:sepika_core::model::{MemberLoad, MemberLoadKind}(crates/sepika-core/src/model/load.rs)が種別・作用方向・諸元を保持し、入力 UI の既定(等分布・鉛直下向き)は sepika_app::load_editor::MemberDraft(crates/sepika-app/src/load_editor.rs)が持ちます。
節点の座標編集と作用区間
新規の全長等分布は全長追従です。全長追従では a=0、b=現在材長 L [mm]、w1=w2=w [N/mm] とし、節点編集後も強度 w、対象部材、荷重ケース、名称、全体座標の作用方向を保持します。部材が回転しても重力方向は回転しません。
合力は wL です。L=6000 mm、w=10 N/mm、方向 [0,0,-1] なら鉛直下向き 60000 N、L=8000 mm へ延長すると 80000 N、重心は新しい部材中点です。同長の平行移動では 60000 N を保ち、重心だけが移動します。総荷重を一定に保つために強度を変える扱いはしません。
集中荷重と区間分布は固定距離で、i 端からの位置・区間を保持します。例えば [1000,3000] mm、w1=w2=10 N/mm は延長後も同じ区間と 20000 N の合力を保持します。全長と数値が一致する固定区間も全長追従へ読み替えません。追従属性がない入力は固定距離として扱います。
固定位置・区間が材長を越える短縮や、荷重の対象部材がゼロ長になる座標編集は、荷重ケース・部材荷重の添字・対象部材・理由を示して編集全体を拒否します。区間を切り詰めたり荷重を消したりしません。複数節点の貼り付けは全座標を反映した最終形状で判断します。
更新は編集節点を共有する部材の利用者入力だけが対象で、自動生成・片持ちスラブ先端荷重は既存の準備計算で再生成します。座標と全長追従の区間は 1 回の取り消し・やり直しで一緒に戻り、保存・読み込みでも追従区分を保持します。
節点編集時の追従・強度保持・全体方向保持・不正編集の拒否はSEPIKAの採用条件です。
実装参照:sepika_core::model::{MemberLoadExtent, MemberLoad}(crates/sepika-core/src/model/load.rs)と sepika_edit::SetNodeCoord(crates/sepika-edit/src/node_member.rs)が区分と座標編集を扱います。
荷重を載せられる部材
部材荷重を載せられるのは、2 節点の線材です。 具体的には梁・柱・ブレースと、非線形解析用の梁要素(ファイバー梁・マルチスプリング梁)が 対象になります。3D ビューでこれら以外をクリックしても選択されません。
壁・スラブのような面要素を対象から外しているのは、材軸方向という概念を持たない要素に部材 荷重を紐付けると、先頭の 2 節点を材端とみなして荷重が誤って配られるためです。 床に載る荷重は、スラブの床荷重として入力してください (床荷重の分配)。
実装参照:対象の判定は sepika_app::viewer::pick::member_load_pickable(crates/sepika-app/src/viewer/pick.rs)と sepika_solver::common::assemble::is_member_load_target(crates/sepika-solver/src/common/assemble.rs)が同じ集合(2 節点の梁・ファイバー梁・マルチスプリング梁・ブレース)で行います。
ブレースに載せる荷重
ブレースは軸剛性のみを持つトラス要素としてモデル化するため、材軸に直交する方向の荷重を 部材として負担できません。そこで、ブレースを対象に選んだ場合は新規荷重の作用方向を材軸方向に 限定します。既存荷重を編集するときは「保存済み方向」が既定で、部材回転後も保存された全体方向をそのまま保持します。「現在の材軸方向」を明示選択したときだけ、現在の部材軸へ変更します。
材軸に直交する成分は、材端モーメントを生じない静定分配で両端の節点へ配ります。 配り方は単純梁の反力と同じで、合力と作用位置が保存されるため、建物の総重量や支点反力は この扱いによって変わりません(部材荷重)。
実装参照:sepika_app::load_editor::LoadEditor::set_picked_member(crates/sepika-app/src/load_editor.rs)が新規ブレース荷重の作用方向を材軸方向へ設定し、材軸直交成分は sepika_element::frame::member_load(member_load.rs)が SpanLoadTransfer::StaticallyEquivalent で両端の節点へ配ります。
準備計算が生成する荷重との区別
荷重ケースの中身には、利用者が入力した荷重と、準備計算が生成した荷重の 2 つがあります。 準備計算が生成するのは、スラブの床荷重の分配・躯体の自重・地震力(Ai 分布)の水平力で、 標準荷重ケース DL・LL(架構用)・LL(地震用)・EX・EY へ書き込まれます。
準備計算が生成した荷重は、実行のたびに算定し直して入れ替わります。 このため編集しても次の実行で失われることになり、編集・削除はできないようにしています。 一方で利用者が入力した荷重はこの入れ替えの対象外なので、DL や EX のような自動生成の 荷重ケースへ荷重を足しても消えません。
表示は次のように分けています。
- ナビゲータの荷重ツリー:利用者が入力した荷重のみ
- 下ドックの「荷重」タブ:両方を表示。準備計算が生成した荷重は読み取り専用
- 準備計算タブの荷重集計:両方を合算した件数と合力
ナビゲータに準備計算の荷重を出さないのは、床荷重を分配した部材荷重が数百件に達することも あり、編集できない行の中に手入力の荷重が埋もれるためです。 準備計算が何を生成したかは、下ドックの「荷重」タブと準備計算タブで確認できます。
実装参照:sepika_core::model::LoadSource が荷重の生成元(利用者入力/準備計算)を区別し、LoadCase::replace_auto_loads(crates/sepika-core/src/model/load.rs)が自動生成分だけを入れ替えます。表示は荷重タブ(crates/sepika-app/src/tables/loads.rs)が AUTO_LOAD_LABEL で読み取り専用として区別します。
荷重の名称
節点荷重・部材荷重には、それぞれ名称を付けられます。 「機器荷重」「外壁の仕上げ荷重」のように書いておくと、あとからその荷重が何であったかを たどれるようになります。
名称は未入力でもかまいません。
未入力の場合は、節点荷重なら零でない成分(Fz=-10.0 など)、部材荷重なら種別と諸元
(分布 [0,6000] w1=2.50 w2=2.50 など)から作った自動ラベルを一覧に表示します。
準備計算が生成した荷重は名称を持たないため、下ドックの「荷重」タブでは「(自動計算)」と
表示します。
実装参照:名称が未入力のときの自動ラベルは sepika_app::tables::loads::{member_load_display_name, nodal_load_display_name}(crates/sepika-app/src/tables/loads.rs)が作り、自動生成分は AUTO_LOAD_LABEL(「(自動計算)」)と表示します。
対象の節点・部材の選び方
荷重を追加・編集するとき、対象の節点・部材は3D ビューでクリックして選びます。 実務規模のモデルでは節点も部材も数百を超え、ID を並べた一覧からでは目的のものを選べません。
入力ダイアログの「3D で選択」を押すと、入力中の内容を保ったままダイアログが閉じ、選択待ちに 入ります。3D ビューでクリックすると対象が仮選択され、Enter で確定するとダイアログへ戻るため、 確定する前であれば何度でもクリックし直して選び直せます。 選択そのものをやめる場合は Esc を押してください。
3D ビューが表示されないタブ(結果・設計・レポート)で荷重の追加を選んだ場合は、モデルタブへ 自動的に切り替わります。節点荷重では、あらかじめ節点を選択していればそれが初期値になります。
選択待ちの間もモデルの編集や undo は行えるため、確定時に対象が存在するかを確認します。 編集の場合は、ダイアログを開いた時点の内容と一致するかも確認し、別の荷重に変わっていれば エラーとして選び直しを促します。
実装参照:3D ビューのクリックによる候補の選択は sepika_app::viewer::pick::{pick_nearest_node, pick_nearest_member, member_load_pickable}(crates/sepika-app/src/viewer/pick.rs)が画面距離から行い、仮選択の保持と Enter/Esc の確定・取消は sepika_app::load_editor::LoadEditor(crates/sepika-app/src/load_editor.rs)が行います。
床の断面と自重
本節では、床(スラブ)が持つ断面と、そこから決まる板厚・自重について紹介します。
床は断面を持ちます。 断面には符号・板厚・主材料がそろっており、床の板厚も自重もここから決まります。 柱や大梁と同じく「符号を決めて割り当てる」形へそろえることで、床の諸元を探す先が 断面 1 か所に定まります。
床板の鉛直配置
床板一覧の「床板の鉛直配置(FL基準・上面)」を開き、床板ごとに基準階と鉛直偏心を入力します。 偏心は基準階のFLから床板上面までの差をmmで与え、上向きを正とします。 「0を指定」は上面をFLへ合わせ、「未入力」は配置を未解決に戻します。 新規に個別割当した床板は基準階・偏心とも未入力です。架構生成で作る床板は各生成階を基準とし、偏心0を明示します。 囲まれた床板と取り付く床板に同じ規則を適用します。
\[ z_{s,top}=FL+e_s,\qquad z_{s,bottom}=z_{s,top}-t_s \]
実厚 \(t_s\) は割り当てた床断面から取得します。一枚の上面は水平で、偏心は一つだけです。 板厚を変えると上面を固定して下面が変わります。FLの変更は上面と下面を同量移動します。 SL、支持節点のZ、梁の偏心・梁せいだけを変えても床板上面・下面は動きません。 平面形状は既存支持材のXYと支持区間を使い、支持節点のXY変更には追従します。 梁と床板の間に空きが生じても、明示した支持関係と荷重伝達先は維持します。 鉛直荷重は床の平面長から支持材の実材長あたりへ変換し、支持区間内の同じ無次元位置へ与えて合力と作用位置を保ちます。 解析節点や剛床面は床上面へ移動しません。傾斜床・頂点ごとの高さ指定は扱いません。
FL=0mm、実厚150mmでは、偏心0、+100、−100mmの順に、上面Zは0、100、−100mm、下面Zは−150、−50、−250mmです。
基準階・FL・偏心・床断面・正の実厚・平面位置を解決できない場合や、入力・導出座標が非有限の場合、 床板と項目・理由を表示して準備計算と依存する自動荷重計算を停止します。未入力偏心は0へ補完しません。 「版なし」は床板実体がないため厚さ・偏心を要求しません。「未設定」は版なしと区別して注意を表示します。 基準階を削除するとその床板の基準階は未入力となります。保存・再読込、Undo/Redoでも入力を保持します。 偏心・FL・板厚の変更後は準備計算と解析を再実行してください。
実装参照:実配置は sepika_core::model::Model::resolved_slab_placement(crates/sepika-core/src/model/slab_placement.rs)、入力編集は sepika_app::tables::slabs::slab_placements(crates/sepika-app/src/tables/slabs.rs)が扱います。
板厚と自重は断面から決まる
床の板厚は、割り当てた断面の板厚をそのまま用います。 RC スラブ形状の断面のほか、形状を持たず板厚を数値入力し主材料を割り当てた断面も扱います。 RC 梁・柱の専用型は床板へ割り当てられません(断面用途)。 自重は板厚 \( t \) と断面の主材料の単位体積重量 \( \gamma \) から、 使うたびに算定します。
\[ w_{\text{自重}} = t \times \gamma \]
自重を面荷重として固定値で持たせないのは、そうすると板厚や材料を変えたときに自重が 追随せず、断面と重量が食い違ったモデルを作れてしまうためです。 床の固定荷重(DL)は、この自重に床の面荷重(仕上げ等)を足したものになります。 積載荷重は室の用途から決まるため断面には含みません(積載荷重)。
部材・壁・ダンパーの自重を部材荷重ケースへ展開する範囲には、スラブを含みません。
実装参照:床断面形状は sepika_core::section_shape::SectionShape::RcSlab(crates/sepika-core/src/section_shape/mod.rs)、床の自重算定は sepika_core::model::Model::slab_self_weight_intensity(crates/sepika-core/src/model/slab.rs)、部材荷重ケースへの展開は sepika_load::self_weight::self_weight_case_content(crates/sepika-load/src/self_weight.rs)を参照してください。
鋼床板の設計自重と密度
囲まれた床板と取り付く床板のどちらも、主材料が鋼材で密度が正なら設計自重は 78.5 kN/m³を板厚へ掛けて算定します。ST-Bridgeの床板強度情報がある場合は、 その強度情報から解決した材料を優先し、断面の材料だけで判定しません。
密度の単位と境界判定はカスタム鋼材の密度と計算可否に従います。 物理単位重量が固定設計値を超える鋼床板は、設計DLの生成・分配と、自重同期済みの 地震用重量生成、およびGUIの床板・小梁検定で理由付き拒否します。 直接検定の開始時には既存の検定値を消去し、計算不可の場合は古い検定値を現在結果として残しません。 密度の訂正またはUndo後は、準備・検定を再実行してください。仕上げ荷重が差を上回っていても、自重本体の 過小評価を補償したとは扱いません。板厚を変えても密度の判定境界は変わりません。 未使用の材料、積載荷重だけの分配、独立に与えた物理面荷重の分配には適用しません。
水平な2000×5000 mm、板厚100 mmの床板は体積1 m³です。 標準密度7.85e-9 t/mm³なら、設計自重強度は0.00785 N/mm²、総設計重量は78500 Nです。 物理密度から独立に算定する質量は7.85 t、標準重力による重量は76982.2025 Nです。 85 kN/m³相当の密度では物理重量85000 Nと固定設計重量との差が6500 Nとなり、 設計結果として78500 Nを採用する計算は停止します。
床板の物理質量と適用モード
囲まれた床板・取り付く床板とも、床板本体の物理質量は材料密度と実体積から求めます。 板厚と材料は版へ割り当てた断面を正とし、ST-Bridge床板強度情報がある場合はその解決材料を優先します。 内部単位は密度ρ [t/mm³]、面積A [mm²]、板厚t [mm]、体積V=At [mm³]、 質量m=ρV [t]です。物理質量相当重量はm×9806.65 [N]となります。
標準の自重同期済み重力ケースを使う準備計算では、設計地震用重量を維持したまま、 床板本体の設計自重を一度だけ物理質量相当重量へ置換します。 仕上げ・用途別積載荷重・先端荷重は本体の置換に含めず、従来の荷重用途と係数で一度だけ算入します。 両質量方式で床板本体の総動的質量は同じです。上記1 m³の標準鋼床板は、 設計重量78500 Nに対して動的質量7.85 t、物理質量相当重量76982.2025 Nとなり、 層モデルもこの物理量を使用します。
密度・板厚・断面参照変更後は再準備が必要です。材料未解決、不正形状、非有限・非正の板厚、 非有限・負の密度は算定エラーとなり、ゼロや推定材料で補いません。 物理質量の生成ができない場合は、診断を表示して旧動的質量・自動地震力を無効化します。 独立した重力解析を許す準備結果が返る場合も、有効な物理質量が生成されたことを意味せず、動的入口は拒否します。 独立した物理分配では固定設計単位重量を採用しないため高密度でもρVgを求められますが、 設計を必要とする標準準備計算の高密度鋼拒否は維持します。
重力ケース内容だけを使う独立モードでは、自重を含むとは仮定せず床板本体の置換を行いません。 材料自重を直接追加するモードも、自重同期済みケース向けの置換モードとは別です。 床板の支持部材への分配、二次部材の逐次伝達、階への集計は既存の床荷重経路に従います。 T形梁等と床板の形状重複体積の追加控除は行いません。
実装参照:設計密度診断は sepika_core::model::Model::validate_slab_design_self_weight(crates/sepika-core/src/model/slab.rs)、DL入口は sepika_job::auto_loads::compute_dl_beam_loads(crates/sepika-job/src/auto_loads.rs)、物理本体の解決・分配は slab_physical_self_weight_intensity(crates/sepika-core/src/model/slab.rs)と sepika_load::slab_load(crates/sepika-load/src/slab_load.rs)、同期済み階重量入口は sepika_load::story_gen::generate_stories_with_synced_self_weight(crates/sepika-load/src/story_gen/generate.rs)、GUI検定入口は sepika_app::app::App::run_design_check(crates/sepika-app/src/app/actions/design/check.rs)を参照してください。
断面が未割当の床は解析前チェックで止まる
断面が未割当の床、および断面に主材料が割り当てられていない床があるモデルは、準備計算の モデル整合性チェックと解析前チェックがエラーで停止します。 床の自重が算定できないまま解析へ進むと、長期荷重が過小なまま応力が出るためです。
既定の板厚 150 mm やコンクリート Fc21 で補うことはしません。 根拠のない数値で床の重量を作ると、入力し忘れたことに気づけないまま設計が進みます。
実装参照:断面・主材料が未割当の床の診断は sepika_solver::statics::analysis::precheck(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs)を参照してください。
建物一律の「剛性計算用のスラブ厚」(既定 0 mm。部材剛性)とは 別の値なので注意してください。 床の自重・検定・型枠控除に使う厚さは、その床板(スラブ)へ割り当てた断面の板厚です。 梁の型枠接触控除では、 左右別の実際の取付き区間と上下高さから接触面を求めます。剛性計算用の厚さが0でも 実在床の接触は失われません。版なしと未設定は区別し、未設定の数量は算定しません。 矩形RC梁の協力剛性は、全長を覆う床板群の実断面厚を取付長で左右別に加重平均して使います。 重量・数量にはこの剛性用平均厚を使いません。建物一律の剛性計算用スラブ厚で 未割当・不正厚を補いません。版なしの明示と未設定・未解決を区別します。
実装参照:数量積算での床厚参照は sepika_design_jp::quantity(crates/sepika-design-jp/src/quantity/mod.rs)を参照してください。
床の断面を作る
床の断面は、断面作成パネルで形状に「RC スラブ」を選び、板厚を入力して作ります。
断面一覧の断面形状の欄には S-t150 のように表示されます。
床は配筋を持たないため、断面の材料欄で有効なのは主材料(コンクリート)だけで、
主筋・せん断補強筋・内蔵鉄骨の欄は淡色の — になります。
床配筋は板厚とかぶり厚から算定するため、断面には配筋を持たせていません。
作った断面は、床タブの一覧の「断面」欄で床へ割り当てます。 候補に出るのは板厚を持つ断面だけです。 板厚のない断面を割り当てても自重も数量も算定できないため、選べないようにしています。
床を作る設定の架構作成ウィザードは、板厚 150 mm の断面 S15 を 1 枚だけ作り、全階の床へ
割り当てます(架構作成ウィザード)。
符号は板厚を変えても S15 のままなので、必要なら生成後に付け替えてください。
ウィザードで選んだコンクリート(既定は Fc21)も 1 つ作って断面へ割り当てるため、
生成した直後から床の自重が入ります。
実装参照:断面作成は sepika_app::section_editor::section_editor_panel(crates/sepika-app/src/section_editor.rs)、架構作成ウィザードは sepika_core::frame_gen::frame_model(crates/sepika-core/src/frame_gen.rs)を参照してください。
ST-Bridge との対応
床・スラブ断面を含む ST-Bridge の要素別の取り込み・書き出し・往復の対応状況は、ST-Bridge 要素別 変換状況一覧を参照してください。
壁の断面と自重
壁版は、物理壁版IDごとに躯体実領域・板厚・材料・開口・仕上げから共通総量を求めます。生成Wall、剛性に算入しない壁版、Attachedを二重計上しません。設計重量・物理質量相当重量・解析Wallの質量行列負担は用途別に保持します。
| 対象・入力 | 単位 | 総量の算定条件 | 配分・未算定 |
|---|---|---|---|
| 躯体板厚・材料・境界 | mm・kN/m³ | 正の板厚と解決可能な実領域 | 境界断面・材料・向き不足は壁ID付き診断 |
| 位置付き矩形開口 | mm | 実領域内の和集合を控除 | 重なりを二重控除しない。外側・自己交差・不正入力は診断 |
| 開口面積だけ/位置なし個別開口 | mm²・mm | 単一開口の成分総量は算定可能 | 階帯・実体積中央配分は未算定。複数開口で和集合も不明なら総量も未算定 |
| 仕上げ・増打ち面荷重 | kN/m² | 現在の入力は正味実領域上一様分布 | 分布不明の別の荷重を一様分布へ読み替えない |
| 開口部重量 | N | 非負の成分総量を加算 | 位置・分布入力が無いため階配分は未算定 |
| DL方式/任意辺率 | — | 支持条件と別に明示選択 | 地震用階帯・物理総量を変えない |
未算定を0、半々、仮の重心、DL反力で補いません。必要な地震用計算は壁IDと不足理由を示して停止します。0以下の板厚、負値、NaN・∞、途中で非有限となる計算結果も診断します。
板厚と自重は断面から決まる
鉛直構面内で、境界を局所水平座標と標高へ対応させます。囲まれた壁の節点・支持材軸は図心座標です。RC/SRC周辺材は材料区分がコンクリートの場合に、断面形状と部材局所軸から求めた実フェースまで控除します。Fc欠落だけでS材へ読み替えません。S周辺材は材軸を境界とする採用モデルです。上下梁せいが違えば上下の控除も違います。外部資料の荷重階(梁上面)と解析階(梁中心)を、SEPIKAの節点座標へ無条件に同一視しません。
斜辺・凸多角形と、実フェースを解決できる周辺断面を扱います。非鉛直面、非平面、面控除を要する凹多角形、向き・形状が解決できない境界は未算定です。最小幅や芯々面積で情報不足を補いません。
Attachedの張り出し高さが途中で符号反転する場合は、アンカーの上下にできる実領域を共に算定します。位置付き開口の内包は控除前の全実領域で確認し、重複開口は和集合で一度だけ控除します。二つの成分の間にある領域外の空隙を壁として補いません。
正味実面積A、板厚t、設計単位体積重量γ、仕上げ強度q、開口部重量Woを使います。
[ W=(\gamma t+q)A+W_o ]
内部単位は面積mm²、板厚mm、強度N/mm²、総量Nです。設計躯体重量は既存の主材料の設計単位重量を使います。RC壁の物理質量相当・質量行列負担はFcとConcreteClassによる標準RC密度を使い、その他は保存物理密度を使います。質量は重量/gです。保存密度が標準RC密度と異なれば設計と物理は一致しません。標準RC密度には壁筋を含め、別加算しません。鋼材の設計重量と物理密度の用途差を保持します。生成Wallの質量行列は躯体・開口部重量を負担し、仕上げは代表質点へ載せます。壁エレメントにならない壁版の行列負担は0です。
仕上げ・増打ちは面荷重として入力する
面荷重を構造板厚に足しません。剛性・耐力へ算入せず開口控除後の実領域へ一様に載せます。断面未割当は躯体なしの明示入力として仕上げだけを算定できますが、割当済み断面の材料欠落を重量0成功にしません。
物理壁版IDのない旧解析Wallだけの入力は、要素ID付きで壁版への変換を要求します。重量を0として解析を続けません。
壁版を作る
壁版はモデルタブの「壁版」で編集します。 一覧には囲まれた壁版・取り付く壁版の両方が並び、断面と、取り付く壁版の取付き先・立ち上がり 高さはその場で反映されます。 開口(開口面積または個別開口の寸法)・開口部重量・仕上げ・増打ちの面荷重・耐震スリットは、 対象の壁版を選んでフォームで入力し「適用」で反映します。
囲まれた壁版は、柱・梁・間柱から導出された壁版割当領域へ割り当てます。 同じタブの「壁版割当領域へ壁版を割り当てる(柱・梁・間柱で囲まれた領域)」で、 未設定または版なしの領域の「割当」を押します。境界が 3 節点以上の領域で割当が有効になり、 断面未割当でも作れます(断面未割当の扱い)。 領域がない場合は、柱・梁・間柱を配置して準備計算を実行してください。
3D ビューアでは、左パネル「作成」の「壁版割当モード」で既存の壁版割当領域をクリックします。 未設定・版なしは割当画面、版ありは編集画面を開きます。割当画面では正の板厚を持つ断面を選び、 「この断面で割当」を押します。表の「割当」と異なり、断面の選択が必要です。 境界頂点に対応する節点がなく、形状を解決できない領域へは割り当てられません。
取り付く壁版は、同じタブの別フォーム 「取り付く壁版を追加(パラペット・腰壁・垂れ壁・自立壁)」で、取付き先と立ち上がり高さを 指定して追加します。囲まれた壁版の領域割当とは別の導線です。
断面に割り当てられるのは板厚を持つ断面だけです。 板厚のない断面を割り当てても自重も数量も算定できないため、選べないようにしています。 RC 壁形状の断面のほか、形状を持たず板厚を数値入力し主材料を割り当てた断面も扱います。 RC 梁・柱の専用型は、板厚を与えても壁版へ割り当てられません(断面用途)。
既定値は、断面が未割当、開口面積 0 mm²、個別開口なし、開口部重量 0 N、仕上げ・増打ちの 面荷重なし(名称の既定は「仕上げ」)、耐震スリットは 4 辺とも無しです。DL方式は未指定です。囲まれた壁版ではDL3方式または有効な任意辺率を明示してください。 位置は壁境界の始端からの水平距離と、内法控除前の壁下端からの高さ(mm)です。開口全体が控除後の実領域内にあることが必要です。 個別開口を 1 つ以上入力すると、開口面積の入力値は無視され、位置付き開口の和集合面積を用います。位置なしは総量と配分可否を区別します。
囲まれた壁版は柱・梁・間柱から導出した壁版割当領域へ割り当てて作ります(任意の節点境界からは作りません)。3D ビューアの「壁版割当モード」も、既存の壁版割当領域をクリックして作成します。壁版の編集は Undo に対応します。
実装参照:壁版の一覧・入力は sepika_app::tables::wall_plates::wall_plates_table(crates/sepika-app/src/tables/wall_plates.rs)、壁版の割当は sepika_edit::AssignWallPlateToRegion(crates/sepika-edit/src/wall_misc.rs)を参照してください。
間柱は、3D の「間柱配置モード」または「壁版」タブの配置フォームで、親の壁領域(構面で選ぶ作業範囲)と両端が取り付く支持部材(柱・梁または既存の間柱)・材軸位置(0〜1)を指定して追加します。両端が作業範囲の内側または境界上(許容差 10 mm)で支持部材の材軸へ解決できない場合は配置を拒否します(片持ちへの読み替えはしません)。この親領域内判定は配置・端部移動の編集コマンドでも行い、3D の候補表示に頼らずモデルの不変条件として守ります。配置すると壁版割当領域を再構築するため、境界が変わって参照先を失った囲まれた壁版は取り除かれ、新しい割当領域は未設定になります。配置・再構築・版の除去は 1 つの Undo 単位です。
耐震スリット
耐震スリットは、壁と周辺の柱・梁との縁を切ったことを表す指定です。 スリットは辺ごとに入れるものなので、壁版の 4 辺それぞれについて独立に指定します。
| 納まり | 切れている辺 |
|---|---|
| 柱際のみ | 柱際 2 辺 |
| 三方スリット(垂れ壁型) | 柱際 2 辺 + 下辺 |
| 三方スリット(腰壁型) | 柱際 2 辺 + 上辺 |
| 完全スリット | 4 辺 |
三方スリット壁と垂れ壁は別物です。 垂れ壁は上の梁からぶら下がる短い壁で、下端に壁そのものがありません(取り付く壁版として入力します)。 一方、下辺にスリットを入れた壁は構面いっぱいの全高の壁で、下の梁と接してはいますが縁が切れています。 形が違うので、どちらか一方では表せません。
規則は 2 つです。 剛性は、切れていない辺の部材にだけ算入します。 柱際が切れていればその柱へ袖壁として算入せず、梁際が切れていればその梁へ腰壁・垂れ壁として算入しません (ティモシェンコ梁要素)。 剛域も同じ扱いで、切れている辺には壁による張り出しを与えません。 自重は、切れていない支持辺へ伝えます。 囲まれた壁版ではDL3方式または任意辺負担率を明示します。 囲まれた壁版の境界は壁版割当領域が保持するため、負担率はその境界辺の並び順に対応する長さで指定します(ADR 0020)。 スリットで切れた辺へ正の負担率を指定すると解析前チェックのエラーです。 支持辺を幾何から推定するフォールバックは行わず、未指定の辺への自動振替もありません(自重の長期応力解析への接続)。
耐震壁として成立するのは、4 辺すべてが躯体と一体の壁だけです (壁エレメントモデル)。 切れた辺があると、壁が負担した面内せん断を周辺の柱梁へ伝えられないためです。
実装参照:スリットの指定は sepika_core::model::WallSlit(crates/sepika-core/src/model/wall_plate.rs)、袖壁長さ・腰壁/垂れ壁高さは sepika_element::wall::misc_wall::InFrameMiscWallGeometry、耐震壁の成立判定は sepika_element::wall::misc_wall::wall_is_seismic(crates/sepika-element/src/wall/misc_wall.rs)、周辺部材の断面性能への合成は sepika_element::frame::beam(crates/sepika-element/src/frame/beam/mod.rs)を参照してください。
自重の支持先とスリット
囲まれた壁版は、下梁全量・上梁全量・実高さ中央切断、またはDL専用任意辺負担率を選びます。同時適用はできません。支持条件とスリットは方式とは別です。左右下完全スリット・上接続は例外を先に判定し上梁全量、下小梁支持は下小梁全量です。階重量はこれらに依存しません。 負担率は柱際(鉛直辺)へも指定でき、柱・間柱が受けます。ただし実際に梁で受ける壁の自重を柱へ指定すると、その梁の曲げを過小評価する危険側のモデルとなります(自重の長期応力解析への接続)。 上下いずれか片側だけ梁際を切った三方スリットでは、切れていない方の梁へ負担率を指定します。
上下の梁際をともに切った壁版(境界が 4 節点の囲まれた壁版)は、実際の納まりとして想定しないため、負担率の指定内容や柱際の状態によらず解析前チェックのエラーとします。 切れていない辺へ振り替えません。いずれかの梁際のスリットを外してください。
実装参照:取り付く壁版の自重分配は sepika_load::wall_attached(crates/sepika-load/src/wall_attached.rs)、囲まれた壁版のDL自重分配は sepika_load::wall_plate_load(crates/sepika-load/src/wall_plate_load.rs)、自重支持先と上下梁際スリットの診断は sepika_solver::statics::analysis::precheck::model_issues(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs)を参照してください。
スリットを指定する辺の指し方
左右のどちらを指すかは、境界のうち標高の低い 2 節点を境界の並び順に取った順で決まります。 一覧と入力欄には、その節点番号を添えて示します。 梁際は下辺・上辺として示します。
取り付く壁版(腰壁・垂れ壁・パラペット・自立壁)は柱・梁と接する 4 辺を持たないため、この指定は ありません。
スリットを指定できるのは、境界が 4 節点の壁版だけです。 境界が 4 節点でない壁版(3 節点以下、または 5 節点以上。上下の大梁が中間節点で分割されて いる場合など)では、どの辺が柱際でどの辺が梁際かを決められないためです。 境界が 4 節点でも、境界頂点にモデル節点が無い(間柱の端が梁の材軸中間にある等)場合は 同じく辺の役割を決められません。 指定したスリットの対応を一つでも解決できない場合は、壁版IDと不足理由を示して自重DL生成を停止します。 斜め側辺の柱際指定は未解決です。柱際を指定しない台形壁の水平な上下梁際指定は対応できます。 任意辺負担率とDL三方式のどちらにも適用し、切断条件を全辺接続へ読み替えません。 スリットを指定しない部分支持の壁版は、境界頂点に節点がなくても実支持区間を使用できます。
実装参照:柱際の節点との対応は sepika_core::model::WallPlate::column_face_nodes(crates/sepika-core/src/model/wall_plate.rs)、節点番号表示は sepika_app::tables::wall_plates::wall_plates_table(crates/sepika-app/src/tables/wall_plates.rs)、無効なスリット指定の診断は sepika_solver::statics::analysis::precheck::model_issues(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs)を参照してください。
取り付く壁版の取付き先
取り付く壁版は、柱・梁が囲む壁領域に取り付く(線)か、床領域に取り付く(自立壁)かの どちらかの取付き先を持ちます。 取付き先の種別は作成時に決め、作成後に変える場合は削除して作り直します。
取付き線の区間の既定は全長 \( [0.0, 1.0] \) です。 張り出し量は取付き線からの鉛直方向の高さ差で、符号は上向きが正、下向き(垂れ壁)が負です。
実装参照:取付き先は sepika_core::model::WallPlateShape::Attached と sepika_core::model::RegionAnchor(crates/sepika-core/src/model/wall_plate.rs・crates/sepika-core/src/model/region.rs)、取付き先と張り出し量の変更は sepika_edit::{SetAttachedWallPlateAnchor, SetAttachedWallPlateExtent}(crates/sepika-edit/src/wall_misc.rs)を参照してください。
自立壁の高さは階高いっぱいにできる
自立壁は、立ち上がり高さを数値で入れるかわりに「階高」を選べます。 階高を選んだ壁は、壁の下端から直上の階 SL までを高さとします。 壁が載るレベルは下端線分の両端の平均標高とし、直上の階レベルはそれより 1 mm を超えて 高い階レベルのうち最も低いものです。 同じレベルの階はその壁が載っている床そのものなので、「上」とは数えません。 必要な階の FL・ΔSL が未設定の場合、その階を飛ばして上の階の SL を高さに採用しません。 高さは未解決となり、依存する自重・数量は算定を停止します。数量の診断には壁版 ID・階 ID と不足項目を表示します。 直上 SL の確定後にある未使用階の未設定値は、この壁の高さには影響しません。明示寸法による高さは階入力に依存しません。
階高は設計を進めるあいだに何度も変わります。 全高の壁を絶対寸法で書くと階高の変更に追随せず、上階とのあいだに隙間が残りますが、 数値としては何も破綻しないため、その食い違いは気づかれないまま残ります。 高さの持ち主を階レベルに寄せることで、この食い違いが起きなくなります。
階高を選べるのは自立壁だけです。 柱・梁が囲む構面いっぱいの全高の壁は、囲まれた壁版として入力してください。 囲まれた壁版の高さは境界の節点、つまり周囲の柱梁が決めるので、そもそも高さを書く欄が ありません。 取付き線に取り付く壁版で階高を許すと、階高ぶんの腰壁せいがその 1 本の梁へ丸ごと算入され、 梁の剛性を過大に、変形を過小に見ることになります。
壁の下端より上に階レベルがないと高さが決まりません。 最上階の床に立つ壁がこれにあたり、解析前チェックがエラーで止めます。 パラペットのように最上階で上へ伸ばす壁は、上端を決める階がないので立ち上がり高さを数値で 指定してください。
床領域は主架構から作り直される派生的な入力で ID が振り直されるため、自立壁が荷重を渡す 床領域は保存せず、壁の位置から都度求めます。 床領域をまたぐ壁は境界で分割して配ります。 内包判定は辺上 1 mm 以内を内側とみなしません。 荷重を流せる床の上に載っていない壁は、自重の行き先がないため解析前チェックがエラーで 止めます。 未覆いは全重量に対する比1e-9を超える場合に診断し、実重量を暗黙に切り捨てません。位置付き開口も各床領域への交差量へ反映します。
実装参照:階高いっぱいの壁の高さ解決は sepika_core::model::Model::wall_plate_extent(crates/sepika-core/src/model/wall_plate.rs)、自立壁の自重支持先の診断は sepika_solver::statics::analysis::precheck(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs)を参照してください。
取り付く壁版への自動変換
ST-Bridge 取り込み時に、境界がどの壁版割当領域にも一致しない壁だけを対象とします。水平な辺(上辺または下辺)がちょうど1つ、同一レベルの大梁に全長載り、かつ自由頂点が1点または2点なら、その辺を全長の取付き線とします。張り出し量は支持辺からの高さ差で、上向きが正、下向きが負です。
この取り込み時の変換で支持候補とする大梁は、2節点の Beam です。Fiber・MultiSpring はこの変換の支持候補に含めません。連結する複数の梁は投影区間を合わせて全長を覆うか判定します。辺の全長を覆う判定のずれは10 mm以内で、柱沿いの鉛直辺は判定対象にしません。支持される水平辺が0本または2本以上、自由頂点が3点以上、または支持梁の高さが一致しない場合は変換しません。割当も変換もできない壁は、取り込み全体を理由付きで拒否します。
準備計算で壁領域へ所属を付け直すときは、壁版割当領域のある囲まれた壁版を取り付く壁版へ変換しません。両端支持の二次部材が境界を作る場合も、有効な割当・境界・版仕様・スリット・自重支持方式・任意辺負担率を保持します。主架構だけで作る壁領域への所属がないことと、自重を受ける割当境界がないことは別です。所属しない壁版の件数は報告されます。
自立壁はST-Bridgeから判別できる情報源がないため自動検出せず、手入力します。取付き変換後も、自由頂点のモデル節点は保持します。
実装参照:取り付く壁版への自動変換は sepika_core::wall_region_rebuild(crates/sepika-core/src/wall_region_rebuild.rs)を参照してください。
ST-Bridge との対応
壁・壁版を含む ST-Bridge の要素別の取り込み・書き出し・往復の対応状況は、ST-Bridge 要素別 変換状況一覧を参照してください。
質量行列は共通physical総量を用いますが、既存WallElementの局所空間分布を階帯の幾何分布と同一とはしません。非対称開口に対する局所質量・回転慣性分布の精度は未検証です。CorrectedLumpedは共通physicalから同じ壁のmatrix負担を引いた分を代表節点へ置きます。
採用範囲と確認限界
DLと建物重量は計算目的ごとに別集計します。通常梁荷重を扱わない方式とは区別し、本文で示す幾何・開口・スリットの適用条件を用います。
DL3方式と階中央帯は採用幾何モデルで、法令で唯一指定された方式とはしません。法令本文と技術基準解説書の未閲覧原本を、この方式の直接根拠として扱いません。
実装参照:共通重量と階帯は Model::wall_weight・WallWeight::story_band(crates/sepika-core/src/model/wall_weight.rs)を参照してください。
材料構成則・材料強度
この章は、材料の応力ひずみ関係(構成則・履歴則)と、許容応力度設計や終局耐力計算の基礎となる材料強度(F 値、降伏強度、コンクリート強度)の根拠を示します。あわせて、部材が RC 造か S 造かを決める構造種別の判定規則を示します。
この章の内容
一軸材料構成則(ファイバー断面用)
このソフトは一軸材料を UniaxialMaterial トレイト(trial/commit/revert)として実装し、ファイバー断面積分と集中ばねに用います。
塑性率算定の基点には reference_stress(鋼・鉄筋は降伏強度、コンクリートはシリンダー強度)と reference_strain を用います。降伏強度に 1e18 以上を与えた実質弾性ダミーは塑性率評価の対象外とします。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( \varepsilon \) | ひずみ | - |
| \( \sigma \) | 応力 | N/mm² |
| \( E \) | 鋼材・鉄筋の初期ヤング係数 | N/mm² |
| \( E_0 \) | コンクリートの初期接線剛性 | N/mm² |
| \( f_y \) | 鋼材・鉄筋の降伏強度 | N/mm² |
| \( f_c \) | コンクリートの圧縮強度 | N/mm² |
| \( F_c \) | コンクリートの設計基準強度 | N/mm² |
| \( f_t \) | コンクリートの引張強度 | N/mm² |
| \( \varepsilon_p \) | 塑性ひずみ | - |
| \( \varepsilon_y \) | 降伏ひずみ(\( f_y/E \)) | - |
| \( \varepsilon_{c0} \) | コンクリートの圧縮ピークひずみ | - |
| \( \varepsilon_{cu} \) | コンクリートの終局圧縮ひずみ | - |
実装参照:sepika_material::uniaxial::UniaxialMaterial(crates/sepika-material/src/uniaxial/mod.rs)が trial・commit・revert と reference_stress/reference_strain を定め、降伏強度 1e18 以上の実質弾性ダミーの判定は sepika_material::uniaxial::Bilinear(bilinear.rs)が行います。
バイリニア鋼材(線形移動硬化)
このモデルは、弾塑性力学の線形移動硬化(kinematic hardening)に基づきますが、コード上に規準名を明示するコメントはありません。
算定式
硬化率の適用範囲は0以上1未満です。1以上、負値、非有限値は受け付けません。
塑性係数(降伏後接線が \( d\sigma/d\varepsilon = \text{hardening} \cdot E \) となるよう定義します):
\[ H_p = \text{hardening} \cdot E/(1 - \text{hardening}) \]
弾性予測、背応力、降伏関数:
\[ \sigma_{tr} = E \cdot (\varepsilon - \varepsilon_p) \]
\[ \alpha = H_p \cdot \varepsilon_p \]
\[ f = |\sigma_{tr} - \alpha| - f_y \]
\( f \le 0 \) のときは弾性(接線 E)とし、\( f > 0 \) のときは戻し写像により塑性ひずみと応力を更新します。
\[ \Delta\varepsilon_p = f/(E + H_p) \]
\[ \sigma = E \cdot (\varepsilon - \varepsilon_{p,\text{new}}) \]
更新後の接線は \( E \cdot H_p/(E + H_p) \) です。
降伏面上では、外向き載荷の勾配は降伏後接線、内向き除荷の勾配は初期弾性係数となり、載荷方向なしに接線は一意に定まりません。 確定した変形をそのまま再評価しても、確定時の接線や次の載荷方向の接線を保証しません。 降伏関数が0に近い場合、丸めによって弾性・塑性の判定が切り替わり得ます。応力・塑性履歴の丸め程度の差とは区別が必要です。 物性を更新した場合は、同じ変形でも更新後の物性と確定塑性履歴に基づいて応力を再評価します。
瞬間剛性比例減衰を明示的に選択した場合、材端集中ばねの接線を減衰にも用います。同じ変形の再評価で接線が変わる場合には減衰力も変わり得るため、 確定時接線の保持や載荷方向による接線選択が行われるとの前提で応答を解釈できません。 この条件での減衰力・応答の安全側/危険側は一律に定まらず、一般の応答精度は未確認です。 既定の初期剛性比例減衰は未載荷の剛性を固定して用います(減衰)。
実装参照:sepika_material::uniaxial::Bilinear(crates/sepika-material/src/uniaxial/bilinear.rs)が算定します。
既定硬化率は用途側で指定します。材端集中ばね等の履歴則として用います。
ファイバー断面の鋼材・主筋の既定材料は Menegotto–Pinto 鋼材・鉄筋モデルです。
Menegotto–Pinto 鋼材・鉄筋モデル
このモデルは、バウシンガー効果を滑らかに表現する Menegotto & Pinto (1973) の2漸近線を 結ぶ遷移曲線を基本式とし、反転時の漸近線交点の更新則・曲率パラメータの劣化則・ 等方硬化則には Filippou, Popov & Bertero (1983, EERC 83-19) の履歴則を用います。ファイバー断面の鋼材・主筋の既定材料です。 ファイバー断面は降伏進展を追うことが目的のため、鋼材・主筋の降伏点が未設定のモデルは 非線形解析の入力チェックがエラーで停止します(弾性で代替しません)。
遷移曲線(正規化形)
正規化ひずみ \( \varepsilon^\ast = (\varepsilon - \varepsilon_r)/(\varepsilon_0 - \varepsilon_r) \) (\( (\varepsilon_r,\sigma_r) \) は直前の反転点、\( (\varepsilon_0,\sigma_0) \) は現在の 分枝の漸近線交点)に対し:
\[ \sigma^\ast = b \cdot \varepsilon^\ast + (1 - b) \cdot \varepsilon^\ast/(1 + |\varepsilon^\ast|^R)^{1/R} \]
\[ \sigma = \sigma_r + (\sigma_0 - \sigma_r) \cdot \sigma^\ast \]
ゼロ応力近傍と大ひずみでの数値評価
反転後のゼロ応力近傍では、反転点応力と遷移曲線の応力が相殺します。 ここでは同じ構成式を直線部と遷移差に分け、微小な遷移差を保持して評価します。 \( d=\varepsilon_0-\varepsilon_r \)、\( g=(\sigma_0-\sigma_r)/d \)、 \( x=(\varepsilon-\varepsilon_r)/d \)、\( h=(1+|x|^R)^{-1/R}-1 \) とすれば、元式は
\[ \sigma=g\varepsilon+(\sigma_r-g\varepsilon_r)+(1-b)g(\varepsilon-\varepsilon_r)h \]
と同値です。大きい \( |x| \) では差の形による再相殺とべき乗のオーバーフローを避け、 遷移成分を \( \operatorname{sgn}(x)(1+|x|^{-R})^{-1/R} \) として評価します。 反転点の更新・履歴・パラメータ・応力曲線・接線の数学的定義は同じです。 微小な応力やひずみをゼロへ丸めたり、材料の釣合い許容誤差を緩めたりする扱いではありません。
漸近線交点の更新(Filippou 1983 の反転則)
反転が生じるたびに、反転点 \( (\varepsilon_r,\sigma_r) \)(直前のコミット点のひずみ・応力)を 通る勾配 \( E \) の弾性直線と、載荷方向側の降伏漸近線(勾配 \( b \cdot E \)、等方硬化で シフト)との交点を新しい \( (\varepsilon_0,\sigma_0) \) とします。引張方向へ載荷を 開始する場合:
\[ \varepsilon_0 = \frac{f_y \cdot \mathrm{shft} - bE \cdot \varepsilon_y \cdot \mathrm{shft} - \sigma_r + E \cdot \varepsilon_r}{E - bE} \]
\[ \sigma_0 = f_y \cdot \mathrm{shft} + bE \cdot (\varepsilon_0 - \varepsilon_y \cdot \mathrm{shft}) \]
(\( \varepsilon_y = f_y/E \)。圧縮方向は符号を反転した対称の式です。)
曲率パラメータ R の劣化則
\[ \xi = |\varepsilon_{pl} - \varepsilon_0|/\varepsilon_y \]
(\( \varepsilon_{pl} \) は載荷方向側の履歴極値ひずみ:引張方向への分枝では経験最大ひずみ \( \varepsilon_{max} \)、圧縮方向への分枝では経験最小ひずみ \( \varepsilon_{min} \))
\[ R = \max(R_0 - a_1 \cdot \xi/(a_2 + \xi),\ 1) \]
等方硬化則
降伏漸近線を以下の shft 倍にシフトします。
\[ \mathrm{shft} = 1 + a_3 \cdot \left(\frac{\varepsilon_{max} - \varepsilon_{min}}{2 \cdot a_4 \cdot \varepsilon_y}\right)^{0.8} \]
\( a_3 = 0 \) のとき等方硬化は無効です(既定)。
既定パラメータ: \( b = 0.01,\ R_0 = 20,\ a_1 = 18.5,\ a_2 = 0.15 \)(Filippou 1983 の 推奨値)、\( a_3 = 0,\ a_4 = 1 \)(等方硬化なし)。
実装参照:sepika_material::uniaxial::MenegottoPinto(menegotto_pinto.rs)が算定します。
コンクリート一軸履歴モデル
このモデルは、圧縮を放物線上昇からピーク、線形軟化、残留へと進め、引張を弾性からひび割れ、指数減衰(テンションスティフニング)へと進めます。
算定式
初期接線:
\[ E_0 = 2 \cdot f_c/|\varepsilon_{c0}| \]
圧縮上昇(\( \varepsilon \ge \varepsilon_{c0} \)、\( r = \varepsilon/\varepsilon_{c0} \)):
\[ \sigma = -f_c \cdot (2r - r^2) \]
圧縮軟化(\( \varepsilon_{c0} > \varepsilon \ge \varepsilon_{cu} \)):
\[ \sigma = -f_c + \text{slope} \cdot (\varepsilon - \varepsilon_{c0}) \]
\[ \text{slope} = f_c \cdot (1 - \text{残留比})/(\varepsilon_{cu} - \varepsilon_{c0}) \]
引張(\( \varepsilon > \varepsilon_{cr} = f_t/E_0 \)、β = テンションスティフニング係数):
\[ \sigma = f_t \cdot \exp(-\beta \cdot (\varepsilon/\varepsilon_{cr} - 1)) \]
除荷・再載荷は最大経験ひずみへの原点指向割線とします。
既定値は \( \varepsilon_{c0} = -0.002 \), \( \varepsilon_{cu} = -0.0035 \), テンションスティフニング係数 0.5, 残留比 0.0 とします。 これらの既定値の規準原典との照合は未確認です。
実装参照:sepika_material::uniaxial::Concrete(crates/sepika-material/src/uniaxial/concrete.rs)が算定します。
NewRC コンクリート構成則(ファイバー柱の既定)
この構成則は、建設省総合技術開発プロジェクト「New RC」(鉄筋コンクリート造建築物の超軽量・超高層化技術開発)で提案されたコンクリートの応力–ひずみ曲線の有理式モデル(NewRC 式)に基づきます。 原典上の適用範囲は \( F_c \le 60 \) です。現行仕様では、\( F_c > 60 \) についても本式を変更せず外挿して使用します。高強度コンクリート用の別構成則は未採用です。
算定式(工学単位系 kgf/cm² で導出します。実装は \( \sigma_B = F_c[\text{N/mm}^2] \times (1/0.0980665) \) で換算します)
応力–ひずみ関係(\( X = \varepsilon_c/\varepsilon_{c0} \)):
\[ \sigma_c/\sigma_{cB} = \frac{A \cdot X + (D-1) \cdot X^2}{1 + (A-2) \cdot X + D \cdot X^2} \]
ひずみ、ヤング係数(\( k = 1.0 \)):
\[ \varepsilon_{c0} = 0.5243 \cdot \sigma_B^{1/4} \times 10^{-3} \]
\[ E_c = 4k \cdot (\sigma_B/1000)^{1/3} \times 10^5 \cdot (\gamma/2.4)^2 \]
係数(コンファインド効果なし):
\[ A = E_c \cdot \varepsilon_{c0}/\sigma_{cB} \]
\[ D = 1.50 + 1.68 \times 10^{-3} \cdot \sigma_B \]
\[ \sigma_{cB} = \sigma_B \]
引張は Ec 弾性とし、ひび割れ(\( \varepsilon_{cr} = f_t/E_c \))後は応力を保持しない脆性型とします。
ファイバー材料の除荷則は部材ごとに増分解析用・時刻歴応答解析用を指定できます。自動(未指定)の既定は、柱等のファイバー要素・MS 要素では増分解析=逆行型、時刻歴応答解析=Karsan–Jirsa 型、壁柱ファイバーでは増分解析=原点指向型、時刻歴応答解析=Karsan–Jirsa 型です。\( F_c > 60 \) でもこの対応と構成則を切り替えません。
圧縮包絡線の値は次のとおりです。
| ひずみ | 応力 \( \sigma_c \) | 接線 \( d\sigma_c/d\varepsilon_c \) |
|---|---|---|
| \( \varepsilon_c = 0 \) | 0 | \( E_c \) |
| 有理式が \( \sigma_c > 0 \) を与える範囲 | 有理式の値 | 有理式の微分(0 未満は 0) |
| 有理式が \( \sigma_c \le 0 \) を与える終局域 | 0 | 0 |
実装参照:sepika_material::newrc::ConcreteNewRc(newrc.rs)が算定します。
逆行型(Retrace)または原点指向型(OriginOriented)を選択したファイバーのコンクリートに対応し、部材の解析種別ごとの既定および指定は要素側で解決します。Karsan–Jirsa 型を選択した場合は sepika_material::uniaxial::ConcreteCyclic::newrc(concrete_cyclic.rs)が同じ NewRC 骨格を用いて算定します。
\( F_c \le 60 \) では材料から解決した Material.young を初期接線へ反映し、\( F_c > 60 \) では NewRC 固有の初期接線を暫定的に外挿します。
コンクリート繰返し履歴モデル(Karsan–Jirsa 除荷)
このモデルは、圧縮包絡線(修正 Kent–Park・NewRC コンクリート構成則(ファイバー柱の既定) から選択)に対して、除荷・再載荷を Karsan, I.D. & Jirsa, J.O. (1969) の残留塑性 ひずみ則で、引張のひび割れ開閉・剛性劣化を Yassin (1994) の規則で表現します。
圧縮包絡線
修正 Kent–Park(圧縮ひずみの大きさ \( x \ge 0 \)、\( r = x/\varepsilon_{c0} \)):
\[ \sigma = -f_c \cdot (2r - r^2) \qquad (x \le \varepsilon_{c0}) \]
\[ \sigma = -f_c + \text{slope} \cdot (x - \varepsilon_{c0}), \quad \text{slope} = \frac{f_c - f_{cu}}{\varepsilon_{cu} - \varepsilon_{c0}} \qquad (\varepsilon_{c0} < x \le \varepsilon_{cu}) \]
\[ \sigma = -f_{cu} \qquad (x > \varepsilon_{cu}) \]
NewRC を選ぶ場合は NewRC コンクリート構成則(ファイバー柱の既定)の有理式包絡線を用い、 \( \varepsilon_{cu} \) 超過は \( \varepsilon_{cu} \) における曲線値を残留として保持します。
Karsan–Jirsa の残留塑性ひずみ
除荷点の圧縮ひずみの大きさを \( \varepsilon_{min} \)、\( \eta = |\varepsilon_{min}|/\varepsilon_{c0} \) として:
\[ \varepsilon_p/\varepsilon_{c0} = 0.145\,\eta^2 + 0.13\,\eta \qquad (\eta < 2) \]
\[ \varepsilon_p/\varepsilon_{c0} = 0.707\,(\eta - 2) + 0.834 \qquad (\eta \ge 2) \]
除荷・再載荷は、包絡線上の除荷点 \( (\varepsilon_{min}, \sigma(\varepsilon_{min})) \) と 残留塑性ひずみ点 \( (\varepsilon_p, 0) \) を結ぶ割線とします。
引張(ひび割れ閉鎖点シフト)
残留塑性ひずみ点 \( \varepsilon_p \) をひび割れ閉鎖点とし、そこを原点にシフトした相対 ひずみ \( \varepsilon' = \varepsilon - \varepsilon_p \ge 0 \) 上で、弾性(勾配 \( E_0 \)) からひび割れ(\( \varepsilon_{t0} = f_t/E_0 \))を経て線形軟化(勾配 \( -E_{ts} \))へ 進める骨格とします。
\[ \sigma = E_0 \cdot \varepsilon' \qquad (\varepsilon' \le \varepsilon_{t0}) \]
\[ \sigma = f_t - E_{ts} \cdot (\varepsilon' - \varepsilon_{t0}) \qquad (\varepsilon' > \varepsilon_{t0},\ \sigma > 0) \]
引張側の除荷・再載荷は、シフト原点 \( (\varepsilon_p, 0) \) と引張側の経験極値点を結ぶ 割線とし、経験極値が進むほど除荷剛性が低下します(剛性劣化)。
実装参照:sepika_material::uniaxial::ConcreteCyclic(concrete_cyclic.rs)が算定します。
部材履歴則の設定と集中ばね履歴則
この節は、部材履歴則の設定(増分用・時刻歴用の 2 系統)と、集中ばね (one/two-component)用の M–θ 履歴則を扱います。 スケルトンは crack/yield/ultimate の 3 点で与えるトリリニア(またはバイリニア)とし、除荷則はモデルごとに異なります。
履歴則の設定(増分用・時刻歴用)
部材の履歴則は、増分解析(保有水平耐力計算)用と時刻歴応答解析用を 部材ごとに別々に指定できます。時刻歴用が「増分と同じ」(未指定)の部材は 増分用の指定に従います。どちらも未指定(自動)の部材は、要素種別ごとの 次の既定に従います。
| 要素 | 履歴則の適用先 | 自動(増分) | 自動(時刻歴) |
|---|---|---|---|
| 梁(材端集中ばね) | 材端曲げばねの M–θ 履歴 | RC/SRC/CFT: 武田型 S: 標準型 | 増分と同じ |
| 柱等のファイバー要素・MS 要素 | コンクリートファイバの除荷則 | 逆行型 | Karsan–Jirsa 型 |
| 耐震壁 | 面内せん断ばねの Q–δ 履歴(壁エレメントモデル(耐震壁)) +壁柱ファイバーのコンクリート除荷則 | せん断: 最大点指向型 コンクリート: 原点指向型 | せん断: 最大点指向型 コンクリート: Karsan–Jirsa 型 |
- ファイバー要素・MS 要素・耐震壁では、履歴則の指定をコンクリートの除荷則 として解釈します。有効な指定は逆行型・原点指向型・Karsan–Jirsa 型(コンクリート繰返し履歴モデル(Karsan–Jirsa 除荷))で、 それ以外(武田型等の曲げばね用履歴)を指定した場合は自動と同じ既定に従います。 鋼材・主筋ファイバは常に Menegotto–Pinto(Menegotto–Pinto 鋼材・鉄筋モデル)で、選択の対象外です。
- 梁(材端集中ばね)に Karsan–Jirsa 型(M–θ 履歴でない指定)を与えた場合は 武田型として扱います。
- 耐震壁では、履歴則の指定を面内せん断ばね(Q–δ 系として解釈できる指定: 逆行型・標準型・原点指向型・最大点指向型・武田型)と壁柱ファイバーの コンクリート除荷則(逆行型・原点指向型・Karsan–Jirsa 型)のそれぞれへ、 解釈できる範囲で適用します。どちらとしても解釈できない指定は各既定に従います。 せん断ばねの既定を最大点指向型とするのは、壁の面内せん断はひび割れの スリップ性状が強く、除荷開始剛性が初期剛性のままの移動硬化型(Masing)では 履歴ループの吸収エネルギーを過大評価するためです(壁エレメントモデル(耐震壁))。
- 増分解析のファイバー既定を逆行型とするのは、単調載荷が主体で骨格追従が目的の ためです。耐震壁の壁柱のみ原点指向型を既定とします(壁はロッキングに伴う 中立軸移動で圧縮縁の除荷が本質的に生じ、逆行型では圧縮ブロックの応力が 抜けずに曲げ寄与を過大評価し、面内水平力の終局せん断強度 Qu 頭打ちを 超えてしまうため)。
- 時刻歴応答解析のファイバー既定を Karsan–Jirsa 型とするのは、残留塑性ひずみ・ ひび割れ開閉・剛性劣化を含む履歴(コンクリート繰返し履歴モデル(Karsan–Jirsa 除荷))により、繰返し載荷の履歴吸収 エネルギーの評価が原点指向型より現実的なためです。
実装参照:sepika_core::model::{default_member_hysteresis, default_fiber_concrete_hysteresis}(crates/sepika-core/src/model/hysteresis.rs)が材端集中ばね・ファイバーの既定を定め、材端集中ばねの指定(増分用・時刻歴用の 2 系統)の解決は sepika_element::factory::resolve_member_hysteresis(crates/sepika-element/src/factory/springs.rs)が行います。
履歴モデル一覧
各履歴モデルは、構造動力学で標準的に用いられる復元力特性モデルに基づきます。
武田モデル(Takeda, Sozen and Nielsen, 1970)、最大点指向型(Clough 系)、原点指向型、標準型、逆行型(Retrograde)、辻・山田モデル(TsujiYamada)、鉄骨横座屈型(SteelBuckling)を実装します。
選択肢は sepika_core::model::HysteresisModel が列挙します。
算定式(各モデルの除荷則):
- 武田モデル(Takeda): 剛性低下型トリリニア。除荷剛性は \( K_u = K_0 \cdot |\delta_{\max}/\delta_y|^{-\alpha} \)(K0 = ひび割れ勾配 \( M_c/\theta_c \)、α = 除荷剛性低下指数)。
- 原点指向型(OriginOriented): バイリニアで、除荷は原点へ向かう割線とします。
- 逆行型(Retrograde): 常にスケルトン上を辿り、履歴ループを持ちません。
- 標準型(Standard): 材端集中ばね(S 造の既定)では線形移動硬化(バイリニア鋼材(線形移動硬化)、降伏後剛性比 0.01)とし、耐震壁の面内せん断ばねでは Masing 則(相似則)により除荷し、除荷開始剛性を初期剛性 K1 とします。
- 最大点指向型(MaxPointOriented): Clough 系のピーク指向とします。
トリリニア・バイリニアのスケルトンは、終局超過後は軟化せず終局耐力を保持します。
実装参照:sepika_material::hysteresis::HysteresisRule(crates/sepika-material/src/hysteresis/mod.rs)が算定します。ただし材端集中ばねの標準型(線形移動硬化)は sepika_element::factory::springs::build_flexural_springs(crates/sepika-element/src/factory/springs.rs)が sepika_material::uniaxial::Bilinear で構築します。
武田の除荷剛性は同モジュールの unloading_stiffness で「原典式 \( K_d^+ = K_0 \cdot |\delta_{\max}/\delta_{y2}|^{-\nu} \)」と明記しています。
確定点の再評価と初期接線
武田型、最大点指向型、原点指向型、標準型、逆行型と鉄骨横座屈型では、確定した変形と同じ変形を再評価・確定しても、力・接線・載荷方向・反転点・経験最大点を保持します。変形差の厳密なゼロを対象とし、正負のゼロを同じ点として扱います。有限の非ゼロ微小変形は載荷増分として評価します。
生成直後の原点では、力は0、接線は各骨格の初期剛性です。試行を取り消した場合は確定状態へ戻ります。応答の照会だけでは、別の変形で試行中の状態を変更しません。
正負非対称の壁せん断履歴
壁せん断ばねには正側・負側それぞれの包絡線を指定します。両側の履歴則の種類と初期剛性は同一とし、降伏耐力と降伏変位を別々に与えます。一般の HysteresisMaterial::new は正負対称が既定で、with_negative_rule により負側を明示します。
包絡線・未経験側の目標点・降伏判定には評価方向の諸元を使い、最大経験点は正負別に記録します。内側ループが反対側の目標点へ到達した場合は再載荷枝へ、さらに最大経験点へ到達した場合は包絡線へ戻ります。標準型の反転枝は、進行方向の降伏耐力Qdirに対して相似倍率c=(Qu正+Qu負)/Qdirを用います。対称時はc=2です。包絡線への再合流変位は、反転変位の絶対値を両側の降伏変位比で換算します。実装は sepika-material/src/hysteresis/material.rs です。
辻・山田モデル(混合硬化)
このモデルは、辻・山田による混合硬化則(バイリニア骨格に β による等方硬化と移動硬化を組み合わせる弾塑性モデル)に基づきます(二重鋼管座屈補剛ブレース等に適用)。
算定式
硬化係数:
\[ H = \frac{K_1 \cdot K_2}{K_1 - K_2} \]
降伏時の移動硬化:
\[ \Delta\bar{\alpha} = (1-\beta) \cdot H \cdot \Delta\varepsilon_p \]
降伏時の等方硬化:
\[ \Delta\bar{\sigma} = \beta \cdot H \cdot \Delta\varepsilon_p \]
\( \beta = 1 \) で等方硬化、\( \beta = 0 \) で移動硬化となります。
実装参照:sepika_material::hysteresis::TsujiYamada(crates/sepika-material/src/hysteresis/tsuji_yamada.rs)が算定します。
鋼梁 横座屈考慮 Mu/Mp 比
この算定は、井戸田ほか (2015) による、横座屈を考慮した鉄骨梁の耐力比 Mu/Mp 評価式に基づきます。
算定式: 細長比 λb・κ(両端モーメント比)から \( M_u/M_p \) を算定します(qκ・r・αΛ・Λc' などの多段の閉形式。結果は [0.05, 5.0] にクランプします)。
原典既定は 残留応力 \( c_{\text{res}} = 0 \)、形状係数 \( f = 1 \)、\( k_{\text{res}} = 0.3 \)、\( k_{\text{def}} = 1.0 \) です。
実装参照:sepika_material::hysteresis::lateral_buckling_mu_ratio(crates/sepika-material/src/hysteresis/steel_buckling.rs)が算定します。
除荷は孟・大井・高梨の Ramberg–Osgood モデル(\( \gamma = 5,\ \Phi = 0.5 \))を同ファイルの SteelBuckling で実装しています。
解析骨格と断面表示
材端集中ばねの解析骨格は、初期剛性と降伏時剛性低下率による総変形を評価します。 せん断・鉄筋抜出しによる部材角を別途加算しません。 RC梁の材端集中ばねで採用する骨格と適用条件を説明します。 ファイバー解析要素は要素の断面積分を用います。 断面詳細のM–N相関曲面は弾完全塑性ファイバーによる参考表示であり、ヒンジ詳細には実際の解析骨格を表示します。
実装参照:sepika_element::factory::springs(crates/sepika-element/src/factory/springs.rs)が材端集中ばねを構築します。
材料強度(F値・許容応力度の基礎)
材料強度定数は、建築基準法施行令 89〜91 条・96 条・98 条、および告示(鋼材の F 値等)に基づきます。 詳細な埋込値と条番号の対応は原典照合リスト 優先度2を参照します。
算定式(主要な材料強度):
- 鋼材 F 値(令 98 条/告示): SN400/SS400 = 235(\( t \le 40 \))、SN490/SM490 = 325 ほか
- 鉄筋降伏強度(令 90 条・JIS G3112): SD295 = 295、SD345 = 345、USD685 = 685 ほか
- コンクリート設計基準強度 Fc(令 91 条): 許容応力度は長期 \( F_c/3 \)、短期 \( 2F_c/3 \)
- ヤング係数比 n(Fc 区分): \( F_c \le 27 \to 15 \) / \( \le 36 \to 13 \) / \( \le 48 \to 11 \) / \( \le 60 \to 9 \) / \( \text{それ超} \to 7 \)
グレード名(SS400・SD345・Fc21 等)と基準強度・材料定数の対応、および
プリセット材料の登録値の一覧は 標準材料(プリセット)一覧 を参照します。
断面設計用ヤング係数比の確認範囲
上記のnはRC断面の許容曲げ・軸力計算に用いる設計用の換算比です。Fcの単位はN/mm²で、各境界の等号は小さい強度側の区分に含めます。コンクリート種類・荷重の長期/短期による切替えはありません。初期弾性解析の材料定数Es/Ecとは区別します。
Fc≤60の15/13/11/9と境界は、日本建築学会の2008年RC規準12条公開改定案・表12.1に記載があります。同条はコンクリートの種類・荷重の長短によらず共通としますが、刊行規準の総則・材料条項を含めた適用資格は未確認です。表の下端がFc≤27であることは、非正のFcや任意材料を設計対象として認める根拠にはなりません。
Fc>60でも現行計算はn=7を返しますが、この値の採用原典と強度上限は未確認です。軽量コンクリートの各種別・強度範囲、任意材料を含めた全入力への規準適合も確認できていません。数値が算定されることを、その条件での設計適用や安全側の保証として扱わないでください。SRCの設計換算は許容曲げ計算のnと適用限界も参照してください。
実装参照:グレード名 → 基準強度の対応表は sepika_core::material_grade(material_grade.rs)に一本化します。
許容応力度は sepika_design_jp::material_strength(crates/sepika-design-jp/src/material_strength/)が算定し、ヤング係数比 n は同モジュールの young_ratio_n(concrete.rs)が算定します。
鉄筋強度の未設定時の扱いは次のとおりです(詳細は 鉄筋(径区分に注意))。
通常の鋼部材・鋼小梁・S/CFT柱梁接合部の基準強度 F は、鋼材のF値と入力条件に従います。対応する材種は対象部位の実板厚から表のFを求め、保存された降伏応力で上書きしません。対応しない名称の割当済み鋼材は、正の有限値の降伏応力を直接用います。材料・必要寸法・直接入力強度の不備や、既知材種の適用範囲外は、対象と理由を示して検定計算を停止します。
名称の対応範囲は鋼材名の対応範囲を参照します。SRC内蔵鉄骨は対応材種と実板厚で強度を確定し、未知名の直接入力は適用根拠未確定として未算定とします。解析用終局耐力はそれぞれの計算経路の条件に従います。
主筋は断面への材料割当が必須です。未割当のモデルは解析前チェックで停止し、断面検定も「検定不能」となります。アプリが SD345 を自動割当することはありません。
せん断補強筋は、材料未割当のとき終局耐力の \( \sigma_{wy} \) のみ SD295 相当(295 N/mm²、SHEAR_REBAR_DEFAULT_FY)を用います。
対応グレード(SR235・SR295・SD295 系・SD345・SD390・SD490)の材料を割り当てているのに \( f_y \) が未設定(0 以下を含む)の場合は入力不備として停止し、断面検定は「検定不能(理由付き)」、解析は解析前チェックのエラーになります。
ST-Bridgeから取り込む強度
ST-Bridge入力では、標準強度の解決と編集の優先順位を用います。Fcは部材・断面・指定節点の明示原階・共通、鉄筋は部位ごとの明示強度と径別共通指定を区別します。未知の上位指定を下位の既知強度で補いません。独自の材料表や数値材料IDから任意物性を取り込む経路はありません。
内部で明示した任意物性・強度の編集と、OVIKAの保存・再読込・再採番は引き続き利用できます。ST-Bridge標準gradeによる採用と内部の明示材料による採用を区別し、表現できない任意値の完全保存にはOVIKAを使用してください。
標準材料(プリセット)一覧
材料タブの「プリセット追加」から選択できる標準材料と、その登録値を示します。 プリセットにない材料は、各定数(E・ν・ρ・Fc・Fy)と区分を直接入力して登録できます。
プリセットの分類(鋼材・鉄筋・コンクリート)は、そのまま材料の区分になります。 区分は部材が RC 造か S 造かを決めるため、直接入力でも必須の入力項目です (構造種別の判定)。
材料グレード名と基準強度の対応は H12 建告第 2464 号(JIS 規格品)および 大臣認定品の基準強度によります。
ST-Bridgeの元強度指定・省略と、材料の表示名・明示物性は別です。 標準強度の優先順・径別指定・未解決時の扱いはST-Bridge標準強度を参照します。 ST-Bridgeの未知名に既知prefixがあっても標準強度として採用しません。 以下のE・ν・密度は、強度gradeから認識済み材料を作る際のSEPIKAの既定値であり、交換形式が物性を一意に規定するという意味ではありません。 任意物性の完全保存はOVIKAを用います。
共通の材料定数
| 材料 | ヤング係数 E [N/mm²] | ポアソン比 ν | 単位体積重量 [kN/m³] |
|---|---|---|---|
| 鋼材 | 205,000 | 0.3 | 設計用 γs = 78.5(固定荷重。正の密度で物理単位重量が設計値以下の場合) |
| 鉄筋 | 205,000 | 0.3 | 設計用 γ = ρ×g(RC/SRC の γRC/γSRC に内包。別加算しない) |
| コンクリート | \( E_c = 3.35\times10^4 \cdot (\gamma/24)^2 \cdot (F_c/60)^{1/3} \) | 0.2 | 単位体積重量表による(下表) |
- せん断弾性係数はいずれも \( G = E / {2(1+\nu)} \) で算定します(鋼材 G ≒ 78,846 N/mm²)。
- コンクリートの \( E_c \) 式は、RC 単位体積重量 γRC から \(\gamma_C=\gamma_{RC}-1.0\) [kN/m³] とした γC を用います。
- 鋼材の固定荷重(DL・地震用重量)は設計用単位体積重量 \( \gamma_s=78.5\ \mathrm{kN/m^3} \) を固定値として用います。 密度0の材料は自重0とします。物理質量密度の標準値は 7.85 t/m³ で、 質量行列・動的解析では入力した物理密度を用います。
- 鉄筋の自重は RC/SRC の \(\gamma_{RC}/\gamma_{SRC}\) に内包し、別加算しません。 CFT鋼管と充填コンクリートは別の材料領域として扱います。
- 質量密度は内部の N-mm-s 単位系で t/mm³ として保持します。 1 t/m³ = 1e-9 t/mm³、標準重力加速度は 9806.65 mm/s² (9.80665 m/s²)、1 kN/m³ = 1e-6 N/mm³です。 内部単位では1 t·mm/s² = 1 Nなので、密度と重力の積はN/mm³になります。
カスタム鋼材の密度と計算可否
主架構、二次部材、鋼壁、鋼床板、CFT鋼管の設計自重に参照される鋼材は、入力した 物理単位重量 \(\rho g\) が固定設計値を超える場合、理由付きで計算不可になります。 判定は鉄骨重量割増・被覆・仕上げを加える前の本体単位重量で行います。
\[ \rho,[\mathrm{t/mm^3}]\times9806.65,[\mathrm{mm/s^2}]
78.5\times10^{-6},[\mathrm{N/mm^3}] \]
等号は許可します。境界密度は \(78.5\times10^{-6}/9806.65\) t/mm³で、 約8.004772271876737 t/m³です。表示の丸め値8.005 t/m³を判定境界に用いません。 負の密度と非有限値(NaN・∞)は、高密度による過小評価とは別の入力不正です。 密度の大きい材料を登録しただけでは停止せず、対象の設計自重へ参照される場合に検査します。 SRC主材料の総断面重量、CFT充填材、鉄筋には鋼材の境界を適用しません。
標準密度の鋼材1 m³では物理重量76.9822025 kN、設計重量78.5 kNです。 物理単位重量85 kN/m³の鋼材1 m³では差が6.5 kNとなります。 鉄骨重量割増を1.1として設計重量が86.35 kNになっても、この密度入力は拒否します。
診断には材料ID、参照部材ID、入力密度、物理単位重量、固定値78.5、影響する 計算目的を示します。準備計算、DL自動同期、地震重量再生成、設計荷重を必要とする 解析は同じ条件で停止します。失敗後の旧自動DL/EX/EYと旧階重量は最新計算に使えません。 手入力荷重は保持され、密度の訂正またはUndo後に再準備できます。 物理密度に基づく独立した質量算定は、この高密度判定によって停止しません。
この入力防護はSEPIKAが採用する安全性契約です。固定設計値78.5を 任意のカスタム鋼の過小評価を許す根拠として扱いません。設計単位重量の直接入力や、 密度に比例させた設計値の自動変更には対応していません。 CFTは柱専用です。二次部材・床板・壁版へのCFT断面の使用は、編集と解析前チェックで拒否します。 この入力防護によってCFTの対応用途を広げるものではありません。
標準重力とSIの単位換算の公開一次資料は NIST SP 811(2008), Appendix B.8です。 同表の標準自由落下加速度は9.80665 m/s²です。設計単位体積重量78.5と高密度の拒否条件はSEPIKAの採用値・条件であり、 標準重力から導出した値や学会規準への適合保証ではありません。 学会規準・技術基準解説書の未閲覧原本を、照合済みとは扱いません。
実装参照:密度の設計可否は sepika_core::model::Material::validate_design_self_weight(crates/sepika-core/src/model/material.rs)、準備失敗時の無効化は sepika_job::prepare::invalidate_design_weights(crates/sepika-job/src/prepare.rs)が実装します。
実装参照:プリセットの材料定数は sepika_core::material_grade::material_presets(crates/sepika-core/src/material_grade.rs)が与え、せん断弾性係数は sepika_core::model::Material::shear_modulus(crates/sepika-core/src/model/material.rs)が \( G = E/{2(1+\nu)} \) で算定します。
コンクリート Ec の扱い
標準コンクリート材料の Ec は、構造区分に応じた単位体積重量表の γC から生成します。RC は γC = γRC - 1.0、SRC は γC = γSRC - 2.0 とするため、同じ Fc の RC/SRC で Ec は同一です。標準材料は、標準プリセットまたは標準グレード生成経路で作成された材料に限られ、材料タブで E を編集できません。ST-Bridge の RawMaterial など、物性値を明示入力して作成された材料は、標準グレードと同名でも直接入力材料として扱います。この場合は入力した E(Material.young)を編集でき、線形剛性などの線形材料経路ではその値を使います。NewRC ファイバーの圧縮包絡線は Fc から算定し、初期接線は Fc≤60 では Material.young、Fc>60 では NewRC 固有 Ec の暫定外挿を使います。
CFT の充填コンクリートだけは別経路で、Fc・コンクリート種類から無筋コンクリートの γC を求めて Ec を算定します。鋼管材料の密度・ヤング係数は充填 Ec に用いません。
鋼材プリセット
基準強度 F [N/mm²] は、JIS 規格品では板厚 t による区分があります。
| 名称 | 区分 | F(t≦40mm) | F(40mm<t≦100mm) |
|---|---|---|---|
| SS400 | 一般構造用圧延鋼材(JIS G3101) | 235 | 215 |
| SN400 | 建築構造用圧延鋼材(JIS G3136) | 235 | 215 |
| SM400 | 溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106) | 235 | 215 |
| SM490 | 溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106) | 325 | 295 |
| SN490 | 建築構造用圧延鋼材(JIS G3136) | 325 | 295 |
| BCR295 | 建築構造用冷間ロール成形角形鋼管(大臣認定品) | 295 | ― |
| BCP235 | 建築構造用冷間プレス成形角形鋼管(大臣認定品) | 235 | ― |
| TMCP325 | 建築構造用 TMCP 鋼材 490N 級(大臣認定品の一般名) | 325 | 325 |
| TMCP355 | 建築構造用 TMCP 鋼材 520N 級(同上) | 355 | 355 |
| TMCP385 | 建築構造用 TMCP 鋼材 550N 級(同上) | 385 | 385 |
| TMCP440 | 建築構造用 TMCP 鋼材 590N 級(同上) | 440 | 440 |
| SA440 | 建築構造用高性能 590N/mm² 鋼材(大臣認定品) | 440 | 440 |
| LY100 | 建築構造用低降伏点鋼材 100N 級(大臣認定品) | 80 | ― |
| LY225 | 建築構造用低降伏点鋼材 225N 級(大臣認定品) | 205 | ― |
- TMCP 鋼材(HBL 等の商品名で流通する大臣認定品の一般名)は板厚 40 mm 超 100 mm 以下でも F の低減がありません。
- プリセットの
Fyには F(t≦40 mm)を登録しますが、許容応力度検定では 材料名から板厚区分込みの F を都度解決するため、板厚 40 mm 超の 断面には低減後の F が適用されます(鋼材(F 値・許容応力度・座屈) 参照)。 - プリセット以外にも、SM520(355/335/325 の 3 区分、有効板厚100 mm以下)・SS490・STK400/490・ STKN400/490・STKR400/490・SNR400/490・SSC400・SWH400・BCP325 等の グレード名を材料名として登録すれば同様に F 値が解決されます (種別記号付き名称の対応範囲は次節を参照)。
- 保有水平耐力計算(プッシュオーバー)では、鋼材の材料強度として基準強度の 1.1 倍(590N 級の SA440・TMCP440 は 1.05 倍)、RC 主筋は 1.1 倍を用います (せん断補強筋は割増ししません)が、材料ごとに割増係数の直接入力もできます (プッシュオーバー解析 参照)。
実装参照:基準強度 F の板厚区分込みの解決は sepika_core::material_grade::{steel_f_value, steel_f_value_prefix}(crates/sepika-core/src/material_grade.rs)が行います。
SM520 系列の基準強度と適用限界
SM520B・SM520C の基準強度 F は、平成12年建設省告示第2464号第一一の表を採用します。 裸の SM520 はアプリ内の既存系列名であり、告示の完全な種類記号 B/C と区別します。 材料の名称認識は前後空白を除く完全一致で、大小文字を区別します。
| 有効な製品板厚 t [mm] | F [N/mm²] |
|---|---|
| 0 < t ≤ 40 | 355 |
| 40 < t ≤ 75 | 335 |
| 75 < t ≤ 100 | 325 |
| t > 100 | 未算定 |
0・負値・非有限値は有効厚さではありません。100 mm超を最終区分へ外挿せず、材料の明示 fy、主材料の fy、235 N/mm²等の既定値でも補完しません。 対象の通常S・SRC・CFT検定、接合部のH梁/壁側柱鋼材、部材ランク・保有水平耐力、複合断面ファイバー材料・SRC増分せん断耐力は、範囲外を理由付き未算定または入力エラーとして扱います。 一部の適合鋼材だけを合計して全適合とすることもありません。未知名称の鋼材を正の有限な fy で直接指定する既存の契約とは区別します。 準備計算の部材ランクは判定不可と理由を示します。通常検定の未算定は検定比0の合格ではなく、帳票・MCPでも理由と未算定件数を保持します。
出典は発出省の告示2464本文のPDF3頁の表とPDF6頁の表注(JIS G3106-1999の種類記号)です。 この統合本文の改正記載は平成19年告示623までです。令和元年国土交通省告示203第18条のPDF43–45頁は日本工業規格から日本産業規格への用語改正であり、この数値欄を変更していません。 日本法令索引の沿革と合わせて照合しています。
355/335の2区分で扱う方式に対し、現在の標準Fには告示の3区分を採用します。75 mm超335を採用する認定・製品限定条件や上限は未確認です。 鋼板・圧延H/極厚H・溶接組立材の素材は完全な種類記号と適用規格を確認してください。認定TMCP等の個別指定FをSM520B/Cへ一般化しません。 正式な現行JIS原本の全製品・全厚みの確認は未実施であり、JIS最小降伏点の16 mm区分や365 N/mm²をこの法令Fに混入しません。 小梁やパネルの用途別板厚の解決、パネルの柱選択、材料強度割増係数の責務はこの表とは別で、ここで厚さ40 mm固定等の既存接続を変更しません。
鋼材名の対応範囲
標準物性と基準強度Fは、対応する分類名または下表の種別記号を付けた名称だけから解決します。 前後空白は除き、大文字小文字を区別します。内部空白や余分な文字は許可しません。
| 分類名 | 対応する種別記号 |
|---|---|
| SM400 | A・B・C |
| SM490 | A・B・C・YA・YB |
| SM520 | B・C |
| SN400 | A・B・C |
| SN490 | B・C |
| STKN400・STKN490 | B・W |
| SNR400 | A・B |
| SNR490 | B |
分類名だけのSM400・SM490等は、アプリ内の既存分類として使用できます。 SS400/490、STK400/490、STKR400/490、SSC400、SWH400、BCR235/295、BCP235/325、 TMCP325/355/385/440、SA440、LY100/225は分類名だけを認識します。 これは全JIS鋼種の一覧ではありません。SM400YA・SM400YB・SM400XYZ・SN400XYZは未対応です。 SM400とSM490では、上表に示す種類記号を区別して認識します。 上表の名称認識は、SM490YA/YB等の種類別・全厚みのF値を保証するものではありません。 F値は既存の分類名ごとの表を使用します。通常鋼部材・鋼小梁・S/CFT接合部の検定では、SM520系列、およびSS・SM・SN・STK・STKN・STKR・SNRの400/490系列、SSC400・SWH400の100 mm超を入力エラーとします。その他の材料や計算経路を含む全製品・全厚みの適用を保証するものではありません。既存表で最終区分値を用いる経路の100 mm超への適用は非保守的になり得るため、実運用では別途確認が必要です。
ST-Bridgeで未知の元gradeだけを指定した場合は、元名称を残し、強度を未解決として報告します。 標準F・標準密度・標準材料対応を自動生成しません。SRC等の内蔵鋼材には、未解決の材料行を E=205000 N/mm²・密度0・fy未指定で保持する場合があります。このEの既定値は標準鋼材としての認定を意味しません。 同名の材料に物性が明示されている場合は、名称・E・ν・密度・G・fyと参照を保持します。 未知の元gradeの解決と、利用者が明示したカスタム材料の採用は別です。
通常鋼部材・鋼小梁・S/CFT柱梁接合部の検定は、F値の選択と入力条件に従い、材料不備を235 N/mm²で補完しません。SRC内蔵鉄骨も235 N/mm²で補完せず、未知名の直接入力はSRCへの適用根拠が未確定として未算定とします。解析用終局耐力は各経路の条件に従います。 保有水平耐力の鋼材強度割増も、標準物性・F値と同じ対応済み名称だけを認識します。 前後空白は除き、大小文字は区別します。SN400Bと前後空白付きは1.1、SA440・TMCP440と前後空白付きは1.05です。 SN400-custom・SM400YA・小文字sn400b・未知名称は、自動割増なし(1.0)です。 明示した割増係数は名称判定より優先し、未知名称の明示fyも保持します。 材料区分の名称推定は別の判定であり、未知の接尾辞を持つ名称でも鋼材区分を推定する場合があります。 名称の標準復元を拒否しても、すべての計算が停止するわけではありません。 CFTは鋼材区分の既知名称から実板厚のFを解決し、未知名称でも正の有限な明示fyがあれば採用します。 既知名称の標準Fは明示fyより優先します。
実装参照:鋼材名の対応判定は sepika_core::material_grade::steel_grade_base(crates/sepika-core/src/material_grade.rs)、標準物性は sepika_core::standard_material::standard_material_properties(crates/sepika-core/src/standard_material.rs)が解決します。
鉄筋プリセット
基準強度(=規格降伏点)[N/mm²]。
| 名称 | 区分 | 基準強度 |
|---|---|---|
| SD295 | 異形鉄筋(JIS G3112) | 295 |
| SD345 | 異形鉄筋(JIS G3112) | 345 |
| SD390 | 異形鉄筋(JIS G3112) | 390 |
SD/SRに続く数値を基準強度として解決するため、プリセット外のSR235・SD490等も材料名から解決できます。- 鉄筋の許容応力度(径区分・せん断補強筋の上限)は 鉄筋(径区分に注意) によります。
- せん断補強筋として対応するのは
SR235・SR295・SD295(SD295A・SD295Bを含む)・SD345・SD390・SD490の普通強度のみです。高強度せん断補強筋の製品名(KH785等)や 未知名は現時点で未対応であり、割り当てた断面を含む検定・解析は停止します。
実装参照:基準強度(=規格降伏点)の名称解決は sepika_core::material_grade::rebar_f_value(crates/sepika-core/src/material_grade.rs)が行います。
コンクリートプリセット
普通コンクリートを対象とし、γC は気乾単位体積重量(Ec 算定用)、γRC は鉄筋コンクリートの 単位体積重量(自重・質量算定用。γRC = γC + 1.0)とします。
| 名称 | Fc [N/mm²] | γC [kN/m³] | Ec [N/mm²] | γRC [kN/m³] |
|---|---|---|---|---|
| Fc18 | 18 | 23.0 | 20,596 | 24.0 |
| Fc21 | 21 | 23.0 | 21,682 | 24.0 |
| Fc24 | 24 | 23.0 | 22,669 | 24.0 |
| Fc27 | 27 | 23.0 | 23,577 | 24.0 |
| Fc30 | 30 | 23.0 | 24,419 | 24.0 |
| Fc33 | 33 | 23.0 | 25,208 | 24.0 |
| Fc36 | 36 | 23.0 | 25,949 | 24.0 |
| Fc40 | 40 | 23.5 | 28,058 | 24.5 |
| Fc42 | 42 | 23.5 | 28,518 | 24.5 |
| Fc45 | 45 | 23.5 | 29,182 | 24.5 |
| Fc50 | 50 | 24.0 | 31,525 | 25.0 |
| Fc55 | 55 | 24.0 | 32,542 | 25.0 |
| Fc60 | 60 | 24.0 | 33,500 | 25.0 |
- RC の自重・質量は鉄筋の実体積を置換せず、総断面へ γRC を一様に適用します。標準プリセットの γRC は表の値とし、Ec 算定時は必ず γC = γRC - 1.0 とします。SRC 造(鉄骨鉄筋コンクリート)用に追加する場合は γSRC = γC + 2.0 を総断面の密度に
用います(プリセット追加時の「SRC造」指定。名称は
Fc24(SRC)のようになります)。 - CFT の充填コンクリート部は鉄筋が無いため、無筋コンクリートの \( \gamma_C \) をそのまま用います(γRC・γSRC は用いません)。設計重量(DL・地震用重量)と質量のどちらも同じ \( \gamma_C \) を使い、鋼管部の設計用単位体積重量 \( \gamma_s = 78.5\ \text{kN/m}^3 \)・物理質量密度 7.85 t/m³ とは別領域として合算します。
- CFT の等価断面性能に用いる Ec は、充填コンクリートの Fc と種類から無筋コンクリートのγCを求めて算定します。鋼管材料の密度は用いません。
Fcに続く数値を設計基準強度として解釈するため、プリセット外のFc38等も材料名から解決できます。- コンクリートの許容応力度は コンクリート によります。
実装参照:設計基準強度の名称解決は sepika_core::material_grade::parse_concrete_fc(crates/sepika-core/src/material_grade.rs)が行い、プリセットの γC・γRC は sepika_core::units::concrete_unit_weight_kn_m3(crates/sepika-core/src/units.rs)、Ec は sepika_core::section_shape::concrete_young_modulus_gamma(crates/sepika-core/src/section_shape/material.rs)を用いて算定します。
ナビゲータの材料一覧
左ドックのナビゲータには「材料一覧」があり、材料は区分ごとにグループ化して表示します。 表示順は鋼材 → コンクリート → 鉄筋で固定し、各区分の中に材料名が並びます。 材質の行をクリックすると、下ドックの「モデル」タブ→「材料」テーブルへ移動して、その材料行が選択状態になります。 グループの既定状態は閉じているため、必要な区分だけを開いて確認できます。
実装参照:区分ごとのグループ化(鋼材 → コンクリート → 鉄筋の固定順)と一覧の描画は sepika_app::app::nav_model::material_category_groups・App::nav_materials(crates/sepika-app/src/app/nav_model.rs)が行い、材質クリックでモデルタブの材料テーブルへ移動します。
構造種別の判定(RC・S・SRC・CFT)
部材が RC 造か S 造かは、剛域長の分類・仕口パネル要素をモデル化するか・柱梁接合部の断面算定にどの式を使うか・ 略算周期・数量積算のすべてに効きます。 本節はその判定規則を示します。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( T \) | 建物の一次固有周期 | s |
| \( h \) | 建物高さ | m |
| \( \alpha \) | 鉄骨造部分の高さ比 | - |
| \( M_p \) | 鋼部材の全塑性モーメント | N·mm |
| \( Z_p \) | 塑性断面係数 | mm³ |
| \( \sigma_y \) | 鋼材の降伏強度 | N/mm² |
| \( M_c \) | 曲げひび割れモーメント | N·mm |
| \( M_y \) | 曲げ降伏モーメント | N·mm |
| \( F_c \) | コンクリートの設計基準強度 | N/mm² |
| \( F_y \) | 鋼材の降伏強度 | N/mm² |
判定の順序
- 断面形状が複合断面なら、その種別で決まる
- それ以外は断面が持つ主材料の区分で決まる
- 主材料が割り当てられていない場合だけ、断面形状の系統で補う
| 断面形状 | 構造種別 |
|---|---|
| SRC 矩形 | SRC |
| CFT(角形・円形) | CFT |
| 上記以外 | 主材料の区分による(下表) |
| 主材料の区分 | 構造種別 |
|---|---|
| 鋼材 | S |
| コンクリート | RC |
| 鉄筋 | RC |
断面に主材料が割り当てられていない部材は、断面形状の系統を既定とします。 RC 矩形・RC 円形・RC 壁は RC、形鋼・鋼管は S です。 材料を付け忘れた鋼部材を一律 RC とすると、RC の剛域が入って架構が硬くなるためです。 断面形状も割り当てられていない部材は RC とします。
断面形状ではなく材料で判定する理由
断面形状は見た目であって力学的な性質ではないため、H 形のコンクリート部材も、 矩形断面の鋼部材もありえます。 材料の区分で判定すれば、任意の材料と任意の断面の組み合わせに対して、 どの式を適用すべきかが定まります。
SRC・CFT だけを断面形状で判定するのは、これらが 1 つの材料では表せない複合断面だからです。 SRC 矩形は内蔵鉄骨、CFT は鋼管の材料を断面の専用の欄に持ち、主材料は充填コンクリートとして使います。
鉄筋を主材料に割り当てた断面
鉄筋は材料としては鋼ですが、これを主材料に割り当てた線材は S 造ではないため RC として扱います。 主筋・せん断補強筋は断面の専用の欄に持つため、主材料へ鉄筋を割り当てるのは入力の誤りです。 増分解析・時刻歴応答解析では入力チェックが停止して是正を促します。
材料の区分の入力
区分は材料ごとに必ず持ちます。 「材料」タブのプリセットから追加した材料は、選んだ分類(鋼材・鉄筋・コンクリート)が そのまま区分になります。 直接入力で追加する場合は、E・ν・ρ と同じく必須の入力項目です。
区分は材料一覧の「区分」列でいつでも確認・変更できます。 区分を変えると剛域長・仕口パネル要素のモデル化対象・柱梁接合部の断面算定の式・数量積算がまとめて変わるため、 取り込んだモデルではまずこの列を確認してください。
ST-Bridge を取り込んだ場合は、グレード名から区分を決めます
(Fc21 はコンクリート、SN400B は鋼材、SD345 は鉄筋)。
ST-Bridge は材料をグレード名で表す形式で、名称が物性を一意に定めるためです。
名前から決まらない材料は物性から推定し、\( F_c \) を持つものをコンクリート、
\( F_y \) だけを持つものを鋼材、どちらもないものをコンクリートとします。
判断がつかない場合にコンクリートへ寄せるのは、RC 部材を誤って鋼材にすると
鋼の検定式で評価されて検定比が過小になるためです。
推定した材料は取り込み後の通知に名前が並ぶので、「材料」タブで確認してください。
区分と断面形状が矛盾する場合
配筋を持つ断面(RC 矩形・RC 円形)に鋼材の材料を割り当てるのは入力の誤りです。 配筋を持つ断面はコンクリート断面であり、鋼材として検定すると素の断面積で 許容応力度を評価して耐力を大きく過大評価します。 増分解析・時刻歴応答解析ではこの組み合わせも入力チェックが停止します。
ですが、形鋼の断面にコンクリートの材料を割り当てるのは誤りではありません。 H 形のコンクリート部材は成立する入力であり、断面検定・剛域・数量積算のいずれも RC として扱います。 ただし増分解析・時刻歴応答解析のファイバー断面は形鋼の板要素を鋼材ファイバとして 組み立てるため、この場合も材料に \( F_y \) が要ります。
用途ごとの扱い
4 種別をそのまま使うのは断面検定と数量積算で、他の用途はより粗い区分へまとめます。
| 用途 | まとめ方 |
|---|---|
| 剛域長の算定式(剛域) | S・CFT を同じ側に置く |
| 仕口パネル要素のモデル化(仕口パネル要素) | S のみ(CFT を除く) |
| 略算周期の構造種別(地震力) | CFT を SRC へ寄せる |
| 柱梁接合部の断面算定の式の選択(章) | 4 種別をそのまま使う(CFT を含む) |
| 数量積算(数量積算の算定式) | 同上 |
剛域の分類で S と CFT を同じ側に置くのは、接合部の剛域長が 0 になり、接合部の有限寸法を 剛域で評価しないためです。仕口パネル要素のモデル化は S 造(CFT を除く)に限ります。 柱梁接合部の断面算定は仕口パネル要素の有無によらず行い、CFT も対象に含めます。 略算周期が CFT を SRC へ寄せるのは、\( T = h(0.02 + 0.01\alpha) \) が S の階ほど長く \( R_t \) が小さくなって地震力が下がるため、鋼管にコンクリートを充填した CFT を S へ寄せないほうが安全側になるためです。
階の構造種別も部材ごとの判定を集計して決めるため、材料の区分で決まります。 H 形の断面にコンクリートの材料を割り当てた部材は、その階を RC 側に数えます。
増分解析のヒンジ式だけは断面形状を優先します
曲げひび割れ \( M_c \)・曲げ降伏 \( M_y \) の算定は、配筋を持つ断面(RC 矩形・RC 円形) であれば材料の区分に依らず RC の式を使います。 鋼の全塑性モーメント \( M_p = Z_p \sigma_y \) は配筋を無視した素の断面係数を使うため、 RC 断面へ当てると \( M_y \) が桁で過大になり、増分解析で曲げヒンジが検出されなくなるためです。
実装参照:sepika_core::structure_kind が判定します。
断面形状から複合断面を見分ける関数と、材料がないときの既定を返す関数は、
いずれも網羅的な分岐で書かれているため、断面形状の種類が増えたときの追随漏れは
コンパイル時に検出されます。
断面性能
本章では、断面諸量(断面積 A、断面二次モーメント I、断面係数 Z、塑性断面係数 Zp、ねじり定数 J、せん断有効断面積 As)、せん断形状係数、コンクリートのヤング係数、SRC/CFT の等価断面性能、およびファイバー断面の算定方法を示します。 断面公式は力学の閉形式、ヤング係数は RC 規準の Ec 式、SRC/CFT の等価剛性はヤング係数比による累加(SRC 規準の考え方)に基づきます。
実装参照:sepika_core::section_shape(crates/sepika-core/src/section_shape/mod.rs)が断面諸量を算定します。
この章の内容
主要定数
| 定数 | 値 | 意味 | 根拠 |
|---|---|---|---|
N_S_EQ | 15.0 | SRC の形状だけから生成する断面表示の暫定比。解析は材料由来の比を必須とし、不正時は停止する | ヤング係数比 \( n = E_s/E_c \)(式形は力学) |
KAPPA_RC | 1.2 | RC のせん断形状係数 κ(\( A_s = A/\kappa \)) | 力学(矩形断面の慣用値) |
E_STEEL | 205000 N/mm² | 鋼材ヤング係数 | 力学(材料定数) |
NU_STEEL | 0.3 | 鋼材ポアソン比 | 力学(材料定数) |
NU_CONCRETE | 0.2 | コンクリートポアソン比 | 力学(材料定数) |
GAMMA_CONCRETE | 23.0 kN/m³ | γC を材料から解決しない既定の Ec 算定経路で用いる値。直接入力密度の不正値を置き換えるものではない | RC規準(Ec 式の γ) |
矩形断面のせん断有効断面積は \( \text{rect_shear_area}(A) = A \cdot 5/6 \) で算定します(せん断補正係数 \( k = 6/5 \))。
実装参照:定数は crates/sepika-core/src/section_shape/constants.rs に定義し、sepika_core::section_shape::{E_STEEL, KAPPA_RC, N_S_EQ} として公開しています(NU_STEEL・NU_CONCRETE・GAMMA_CONCRETE はクレート内でのみ参照)。矩形断面のせん断有効断面積は sepika_core::model::rect_shear_area(crates/sepika-core/src/model/section.rs)が算定します。
断面諸量(弾性)
各断面形状の A、I、Z、J は、形状ごとの断面公式と以下の適用条件に従って算定します。 充填コンクリートを含む CFT の要素剛性は、等価断面性能で別に扱います。
本頁の Iy・Iz は保存断面性能の添字です。Iy は断面せいを用いる曲げ(強軸側)、Iz は断面幅を用いる曲げ(弱軸側)に対応し、要素局所ではそれぞれ z 軸・y 軸まわりです。梁要素の対応表の局所軸添字と区別してください。強弱は基準呼称であり、寸法による性能の大小や、すべての断面で主軸と一致することを保証しません。
上下・左右の板厚が異なる組立BOX
外高さを \(H\)、外幅を \(B\)、左右の縦板厚を \(t_1\)、上下の横板厚を \(t_2\) とします。 鋼BOX・角形CFTともに、異厚は外角Rを明示した0 mmの鋭角形状が対象です。 各寸法は有限正値で、内法 \(h=H-2t_2>0\)、\(b=B-2t_1>0\) を満たす必要があります。 上下対称・左右対称であるため、図心と等面積軸はいずれも外形中心に一致します。
\[ A=BH-bh,\qquad I_y=\frac{BH^3-bh^3}{12},\qquad I_z=\frac{HB^3-hb^3}{12} \]
\[ Z_y=\frac{2I_y}{H},\qquad Z_z=\frac{2I_z}{B},\qquad Z_p=\frac{BH^2-bh^2}{4} \]
鋼BOXの強軸塑性断面係数は、中心を境にした半断面の一次モーメントから求めます。 角形CFTの鋼管幾何性能も同じ外形と内法の差で求め、充填部は幅 \(b\)・高さ \(h\) の長方形です。 鋼材の質量・重量には実鋼材断面積と鋼材密度、充填部には実内法断面積と既存の無筋コンクリート密度・単位体積重量を用います。 通常鋼部材・小梁の基準強度Fには \(\max(t_1,t_2)\) を供給します。 接合部の抵抗板厚は強軸側で \(t_1\)、弱軸側で \(t_2\) とし、明示した仕口パネル板厚の優先規則は維持します。
異厚BOXのねじり定数Jとせん断性能は、採用式・適用条件を確認できていないため未算定です。 同厚式への代表板厚の代入や0による計算継続は行いません。 形状・A/I/Z/Zp・重量の作成、編集と保存は可能ですが、未確認性能を必要とする解析・部材検定は理由を示して実行を拒否します。 角形CFTの等価剛性と終局曲げ耐力の一様厚式も異厚への適用対象に含めません。 保存はOVIKAを使用してください。STBからの異厚入力は両板厚を保持して受理します。異厚断面のSTB出力は未対応で、板厚を一様化して出力しません。 同厚の鋭角BOX、圧延BOXの角R・採用式はそれぞれ従来の適用条件を保ちます。
実装参照:sepika_core::section_shape::SectionShape::{rounded_steel_properties, try_cft_core_props, input_section}(crates/sepika-core/src/section_shape/rounded.rs、crates/sepika-core/src/section_shape/composite.rs、crates/sepika-core/src/section_shape/builder.rs)が材料領域と未算定性能を扱います。
リップ溝形の総断面と有効断面
リップ溝形は、既存のH/B/C/t(外寸、mm)からウェブ・上下フランジ・上下リップの 5矩形による総断面幾何性能を保持します。総Aはmm²、Iy/Iz/Jはmm⁴です。 この幾何モデルは設計用の平板部幅や未知の曲げ半径Rを確定するものではありません。 荷重・圧縮側・採用式に依存する有効A/Zは未算定であり、総断面性能や0で代用しません。 総断面の保存・ST-Bridge往復対応は部材検定の対応を意味しません。 部材の未検定と座屈の分類は単一リップ溝形材の検討対象と未検定を参照してください。
算定式(代表例)
フィレット半径を明示した 0 とする H 形の断面積:
\[ A = 2 \cdot B \cdot t_f + (H - 2t_f) \cdot t_w \]
H 形 強軸(\( h_w = H - 2t_f \)):
\[ I_y = \frac{B \cdot H^3 - (B - t_w) \cdot h_w^3}{12} \]
H 形 塑性断面係数:
\[ Z_p = B \cdot t_f \cdot (H - t_f) + \frac{t_w \cdot (H - 2t_f)^2}{4} \]
箱形の閉断面ねじりは、外角Rと中心線の規約に従います。
円形鋼管:
\[ A = \pi (r^2 - r_i^2) \]
\[ J = \frac{\pi}{2} \cdot (r^4 - r_i^4) \]
矩形 RC(ねじりは \( J = \text{rect_torsion_j}(b, d) \)):
\[ A = b \cdot d \]
\[ I_y = \frac{b \cdot d^3}{12} \]
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( A \) | 断面積 | mm² |
| \( I_y \) | 強軸まわりの断面二次モーメント | mm⁴ |
| \( Z_p \) | 塑性断面係数 | mm³ |
| \( J \) | ねじり定数 | mm⁴ |
| \( B \) | フランジ幅 | mm |
| \( H \) | 断面せい | mm |
| \( t_f \) | フランジ厚 | mm |
| \( t_w \) | ウェブ厚 | mm |
| \( h_w \) | ウェブ高さ(\( H - 2t_f \)) | mm |
| \( b, d \) | 矩形断面の幅・せい | mm |
| \( r, r_i \) | 円形鋼管の外半径・内半径 | mm |
| \( y_p \) | 等面積軸の図心からの位置 | mm |
塑性断面係数 Zp の算定範囲
\( Z_p \) はすべての鋼断面形状について算定します。 対象は H 形・箱形・円形鋼管・組立 H 形・T 形・溝形・リップ溝形・山形・平鋼・中実丸鋼で、RC・SRC・CFT は対象外です。
H 形と箱形は、下記のフィレット・角Rを含む閉形式で求めます。 円形鋼管と中実丸鋼も閉形式で求めます。 それ以外は断面を水平な矩形帯へ分解し、等面積軸(断面積を上下 2 等分する水平軸)まわりに \( Z_p = \int |y - y_p| \, dA \) を積分します。 等面積軸は弾性図心とは一般に一致しません。 とくに T 形や組立 H 形のような非対称断面では、両者の差が大きくなります。
\( Z_p \) を求める軸は \( I_y \) と同一です。 山形鋼の \( I_y \) は図心を通る脚に平行な軸(幾何軸)まわりで、主軸まわりではありません。 \( Z_p \) も同じ軸で定義しているため、形状係数 \( Z_p/Z_e \) が意味を持ちます。
実装参照:sepika_core::section_shape::SectionShape::{calc_area, calc_iy, calc_iz, calc_j, plastic_modulus_strong}(crates/sepika-core/src/section_shape/properties.rs)が算定します。
非対称断面(山形、溝形、T 形)は図心を求めて平行軸定理で合成します。
CFT・壁・スラブ形状の扱い
CFT(角形・円形)の断面生成は鋼管部分のみで算定し、充填コンクリートの剛性は含めません。RC 壁・RC スラブ形状の断面性能は幅 1 m の帯としての名目値であり、要素剛性には用いません(壁は壁エレメント、スラブは荷重分配のみ)。
実装参照:sepika_core::section_shape::SectionShape::to_section(crates/sepika-core/src/section_shape/builder.rs)が CFT の鋼管部分と RC 壁・RC スラブの帯断面を生成します。
SRC 断面の断面レベル諸量
SRC の断面レベル \( I_y \)・\( I_z \) は、コンクリート部分に鉄骨部分の \( (n_s - 1) \) 累加を加えた等価値です。\( n_s \) は形状だけでは決まらないため、形状から生成する暫定値として \( n_s = N_S_EQ = 15 \) を用い、解析では材料由来の検証済み等価性能を必須とします。SRC の材料未割当・不正時は解析不可となり、この暫定値を解析へ使用しません。
算定根拠は SRC / CFT の等価断面性能 を参照してください。
鋼材カタログ表値の扱い
カタログ断面の諸元は表値をそのまま用い、再計算しません。 CSV は cm 系のため面積は 100 倍、断面二次モーメント・ねじり定数は 10⁴ 倍して mm 系へ換算します。 幅厚比判定用の寸法は断面名から復元し、フィレット半径・角Rは CSV の専用列から保持します。 表値からフィレット半径・角Rを逆算することはありません。 丸鋼管の幅は外径を用います。
実装参照:sepika_section::catalog::to_section(crates/sepika-section/src/catalog.rs)が表値を用いた断面生成を行い、CSV の mm 系換算は同モジュールの parse_csv、断面名からの形状復元は parse_shape_from_name が担います。
フィレット・角Rの材料領域
H 形鋼は、ウェブと上下フランジの内隅 4 か所に接する円弧でフィレットを定義します。 角形鋼管・角形 CFT は、外形 H×B の角丸矩形と内形 (H−2t)×(B−2t) の角丸矩形の差を鋼管領域とします。 角Rを ro、内角Rを ri とすると、ri=max(ro−t,0) です。 角形 CFT のコアは、この鋼管内形と同じ領域です。
ro=0 は内外とも直角、0<ro<t は内側が直角となるモデルです。 独立した内角Rの入力は持ちません。 これは入力形状の定義であり、実製品の角部を安全側へ置換したとの認定ではありません。
四分正方形から四分円を除いた領域について、円中心から測る面積・一次・二次モーメントを次で表します。
\[ a=(1-\pi/4)r^2,\qquad m=r^3/6,\qquad q=(1/3-\pi/16)r^4 \]
角丸矩形の cH=H/2−r、cB=B/2−r に対し、断面性能は次のとおりです。
\[ A=HB-4a,\quad I_y=BH^3/12-4(c_H^2a+2c_Hm+q),\quad I_z=HB^3/12-4(c_B^2a+2c_Bm+q) \] \[ Z_p=BH^2/4-4(c_Ha+m) \]
鋼管は外形の性能から内形の性能を差し引き、コアは内形の性能を用います。 H のフィレットは直角の板組 H に加える領域で、cH=(H−2tf)/2−r、cB=tw/2+r とします。 a、m、q を用い、A に 4a、Iy に 4(cH²a+2cHm+q)、Iz に 4(cB²a−2cBm+q)、Zp に 4(cHa+m) を加えます。
設計重量は保存 A に、物理質量と質量二次モーメントは材料領域の A・Iy・Iz に各材料の密度を掛けます。 CFT は鋼管と充填コンクリートを分けるため、コアを鋼管の密度で重複計上しません。 カタログ・直接入力の保存性能は形状算定値で上書きせず、フィレット半径・角Rが未知でも入力性能だけで成立する計算は継続します。 ただし、コアやファイバーなど未知寸法を必要とする計算は理由付きエラーとなります。
一般ブレースの Truss 要素も、物理質量はこの共通の材料領域算定を用います。 軸剛性の A はカタログ・直接入力値を保護したまま保持し、質量源の A と混同しません。 Truss の Lumped・Consistent は同じ単位長さ質量を用い、形状がない場合は直接入力性能と主材料から算定します。
J は次節の形状別ねじりモデルを用います。剛性用の鋼材せん断面積にはフィレット・角Rを反映していません。 検定用の角形鋼管せん断面積にある既存の角R参照は維持し、今回の材料領域の差分を使う新しい方法へは置換しません。 鋼材せん断面積のこの扱いを安全側とは認定しておらず、#417 で追跡します。 CFT の既存せん断式が参照するコア面積は、角丸内形の面積を用います。
Beam・Fiber・MultiSpringの集中質量と整合質量は、共通の単位長さ質量を用います。 CFT は鋼管・コアそれぞれの採用密度×幾何面積の和を用い、コンクリート密度を鋼管へ流用しません。 点質量の配置方式や、地震用重量と物理質量の区別は変更しません。
階の動的質量と二次部材の物理質量相当自重も、共通の材料領域から求める単位長さ質量を用います。 CFT の鉄骨割増は、その全量から充填コンクリート質量を除いた鋼管部分だけに適用します。 解析要素の質量行列分は割増前の質量とし、補正質点は割増・付加重量を含む物理質量との差で求めます。 保存 A は設計 DL・設計地震用重量の算定で保護し、物理質量から逆算して上書きしません。 必要な材料領域や質量特性が解決できない場合、自重・階質量の生成は理由付きエラーで中断し、質量ゼロに補完しません。 未知のフィレット半径・角Rについて、A だけが直接入力され、Iy・Iz が形状未算定の断面もこの対象です。 鋼材の A・Iy・Iz がすべてカタログ・直接入力なら、それらの値で成立する共通質量算定は維持します。
実装参照:SectionShape::{rounded_steel_properties, rounded_core_properties}(crates/sepika-core/src/section_shape/rounded.rs)がフィレット・鋼管・コアの幾何性能を算定します。
SectionMassProperties::try_from_section(crates/sepika-core/src/model/mass.rs)が材料別の質量特性を求めます。
TrussElement::try_new(crates/sepika-element/src/frame/truss.rs)が共通質量算定の失敗を理由付きで返します。
階の自重列挙は crates/sepika-load/src/story_gen/self_weight_calc.rs、二次部材の物理質量相当自重は beam_mass_equiv_udl(crates/sepika-load/src/floor/beam_design.rs)が共通質量算定を用います。
算定元と未知寸法
保存する性能には項目別の算定元を持たせ、形状算定値とカタログ・直接入力値を区別します。 フィレット半径・角Rの編集時は形状算定の A・Iy・Iz・J を再評価し、カタログ・直接入力の項目は維持します。 たとえば A だけを直接入力した断面では、A を維持しながら Iy・Iz が形状編集に追従します。 材料・用途・階と項目別の区分は、undo/redo と OVIKA の保存往復でも保持します。
ST-Bridge から未知寸法を取り込む場合は、未知のフィレット半径・角Rと断面形状を保持します。
このとき必要な寸法が不足する A・Iy・Iz・J は未算定として保持し、格納欄の値を計算値として用いません。
GUI・CSV は「未算定」、公開 JSON の性能値は null と理由を示します。
必要な寸法が確定すると未算定の形状項目を算定し、直接入力項目を保護したまま更新します。
形状由来の J は現在の形状から求め、保存済みの数値だけを根拠に採用しません。 カタログ・直接入力の J は有限な非負値を優先し、形状式の適用域外であることだけを理由に破棄・上書きしません。 未算定項目は、明示的な形状更新で再評価するまで未算定のままです。 幾何が成立して J だけが適用域外の場合は、A・Iy・Iz を更新して J の未算定と理由を保持できます。 J を必要としない面積・曲げ性能・重量の計算を、J の未算定だけを理由に失敗させません。
実装参照:Section::{ensure_properties_resolved, resolved_area, resolved_j, with_surface_radius} と SectionPropertyBasis(crates/sepika-core/src/model/section.rs)が未算定の拒否と項目別更新を担います。
SectionShape::input_section(crates/sepika-core/src/section_shape/builder.rs)が未知の入力を保持します。
H・角形鋼管のねじり定数
J は Saint-Venant のねじり定数 [mm⁴] です。一般に極断面二次モーメント Iy+Iz とは異なり、 そり定数 Iw [mm⁶] や耐力用のねじり断面係数 C [mm³] とも区別します。 材軸を x、断面内を y・z とし、一様自由ねじりでは次の関係を用います。
\[ T=GJ\theta^{\prime},\qquad \theta=\frac{TL}{GJ} \]
T は Nmm、G は N/mm²、材長 L は mm、ねじり率 θ′ は 1/mm、ねじれ角 θ は rad です。 同じ G・T・L では J の過大評価はねじれ角の過小評価となります。 横座屈でも GJ がねじり抵抗に寄与するため、J のモデル差を断面公式の丸め誤差だけで評価しないでください。
H 形鋼
H 形鋼は薄肉開断面の慣用式を用います。
\[ J=\frac{2Bt_f^3+(H-2t_f)t_w^3}{3} \]
フィレット半径は内隅半径です。A・I・Zp にはフィレットを反映しますが、この J には加算しません。 この省略は実断面の J が半径によらず厳密に一定であることや、全域で安全側であることを意味しません。 H400×200×8×13 は内隅半径 0・13 mm とも、慣用式の値が 356762.6666666667 mm⁴ です。
角形鋼管・角形 CFT の鋼管
一様厚さ t、単セル、内外が同心円弧の角形鋼管には、中心線で囲まれる面積 Am と周長 pm による薄肉式を用います。 B・H は外寸、ro は外角R、ri は内角R、rm は中心線半径で、長さはすべて mm です。
\[ r_i=r_o-t,\quad r_m=r_o-t/2,\quad A_m=(B-t)(H-t)-(4-\pi)r_m^2 \] \[ p_m=2(B+H-2t)+(2\pi-8)r_m,\qquad J=\frac{4tA_m^2}{p_m} \]
正の外角Rに対する形状算定の適用域は、次の両条件を満たす場合です。
\[ t\le r_o\le\frac{\min(B,H)}2,\qquad \frac{\min(B,H)}t\ge10 \]
両軸の厚比条件は採用モデルの限定で、普遍的な誤差保証ではありません。 明示した ro=0 は独立した直角薄肉モデルとし、Am=(B−t)(H−t)、pm=2(B+H−2t) を用います。 正半径の厚比条件はこの直角分岐に転用しませんが、正の寸法と残存内法を必要とします。 0<ro<t は A・I の幾何が成立しても形状由来 J は未算定です。 外角R未知、無効寸法、正半径の適用域外も理由付き未算定とし、製法からの半径推定、半径の切詰め、別式への自動置換は行いません。 カタログ等から供給された J の優先は、算定元の規約に従います。
400×300×12、ro=30 mm では rm=24 mm、pm=1310.79644737231 mm、Am=111249.55736846772 mm²、 J=453213215.4428274 mm⁴ です。 板自身の項 t³pm/3 を加える別の薄肉式では 453968234.19651383 mm⁴ となり、採用値との差は約0.1665924%です。 この算術差は厳密解や実験値に対するモデル誤差ではなく、追加項を省くことを全域で安全側とする根拠にもなりません。 中心線式と角丸半径の定義は Dowswell, 2026, Engineering Journal, pp.3–4、式(9)(13)(14) によります。 この定義から、未指定Rや実製品の半径を自動的に決めることはできません。
実装参照:SectionShape::try_calc_j(crates/sepika-core/src/section_shape/properties.rs)が形状別の J と適用域を扱います。
矩形ねじり定数
通常の矩形断面のねじり定数 J は、Saint-Venant のねじり理論による矩形断面の級数近似式で算定します。 角形 CFT のコアにはこの式や面積比補正を使わず、コアの数値算定を用います。
算定式: \[ J = \frac{b^3 h}{16} \left[ \frac{16}{3} - 3.36 \frac{b}{h} \left( 1 - \frac{1}{12} \left( \frac{b}{h} \right)^4 \right) \right] \] (\( b = \text{短辺} \)、\( h = \text{長辺} \))。
実装参照:sepika_core::section_shape::geometry::rect_torsion_j(crates/sepika-core/src/section_shape/geometry.rs)が算定します。
せん断有効断面積 As
せん断有効断面積 As は、初期弾性解析のせん断剛性 \( GA_s \) に用いる面積です。 RC は \( A_s = A/\kappa \)(\( \kappa = 1.2 \))とします。 SRC は RC 部分のせん断有効断面積 \( {}_{rc}A_s = {}_{rc}A/\kappa \) に、材料由来の換算係数 \( n_{gs} \) による鉄骨等価分 \( {}_s A_s \cdot (n_{gs} - 1) \) を累加します。材料由来の値を算定できないときは \( N_S_EQ = 15 \) の既定値を用います(SRC / CFT の等価断面性能)。 S 造の H 形・角形鋼管は、以下の方向別板面積を採用します。カタログ・直接入力で供給された断面性能は、形状算定値と区別して扱います。
形状係数 \( \kappa = A/A_s \) と面積乗算係数 \( k = A_s/A \) は逆数です。 \( GA/\kappa = GkA = GA_s \) であり、As に換算した後で再び κ で除しません。 寸法は mm、As は mm²、G は N/mm²、GAs は N、部材長 L に対するせん断ばね剛性 GAs/L は N/mm です。
算定式(代表例)
H 形:
\[ a_{s,y}\text{(弱軸)} = 2 \cdot B \cdot t_f \]
\[ a_{s,z}\text{(強軸)} = H \cdot t_w \]
異厚組立BOXのせん断性能は採用式・適用条件が未確認で未算定です。異厚BOXの制限に従い、以下の一様厚式への代入は行いません。
一様厚さの角形鋼管:
\[ a_{s,y}\text{(弱軸)} = 2t(B-2t),\qquad a_{s,z}\text{(強軸)} = 2t(H-2t) \]
これらは剛性用の慣用面積で、H のフィレットや角形鋼管の角Rの円弧面積を加算しません。 H を矩形板二枚に置き換えて κ=1.2 を一律適用したり、20%の誤差があると断定したりする根拠にはなりません。
矩形 RC:
\[ a_s = b \cdot d/1.2 \]
円形鋼管:
\[ a_s = A/2 \]
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( A_s \) | せん断有効断面積(要素剛性用) | mm² |
| \( A \) | 断面積 | mm² |
| \( {}_{rc}A_s, {}_s A_s \) | RC 部分・内蔵鉄骨部分のせん断有効断面積 | mm² |
| \( n_{gs} \) | せん断弾性係数比を考慮した換算係数 | - |
| \( N_S_EQ \) | 材料から換算係数を算定できないときの SRC 鉄骨の等価ヤング係数比(暫定既定) | - |
| \( \kappa \) | せん断形状係数 | - |
| \( a_{s,y} \) | 断面性能の弱軸側せん断有効断面積 | mm² |
| \( a_{s,z} \) | 断面性能の強軸側せん断有効断面積 | mm² |
| \( B \) | H のフランジ幅、角形鋼管の外幅 | mm |
| \( H \) | 断面せい | mm |
| \( t_f \) | フランジ厚 | mm |
| \( t_w \) | ウェブ厚 | mm |
| \( t \) | 角形鋼管の板厚 | mm |
| \( b, d \) | 矩形断面の幅・せい | mm |
断面検定で用いる有効断面積とは別の量です
本節の \( A_s \) は要素剛性(ティモシェンコ梁のせん断剛性 \( GA_s \))に用いる値です。 鋼構造の許容応力度検定でせん断応力度 \( \tau = |Q|/A_d \) を求めるときの検定用面積 Ad は、これとは別の定義によります(鋼構造 断面検定「せん断の検定」)。 検定側はウェブの内法せいを用い、フランジのせん断応力分布も考慮するためです。
H 形では、本節が \( a_{s,z} = H t_w \)(ウェブ全せい)・\( a_{s,y} = 2 B t_f \) であるのに対し、検定側は \( A_y = t_w(H - 2 t_f) \)・\( A_z = 2 B t_f/1.5 \) となります。
H400×200×8×13 は、フィレット半径が 0 mm でも 13 mm でも剛性用 \( (a_{s,y},a_{s,z})=(5200,3200) \)、検定用 \( (A_y,A_z)=(2992,3466.6666666667) \) mm²です。 角形鋼管400×300×12の剛性用面積は \( (a_{s,y},a_{s,z})=(6624,9024) \) mm²で、検定用面積の角R依存とは区別します。 H形・角形鋼管・その他の形状の柱/梁の検定では、方向別せん断比の和と、von Misesへの \( \tau_{\mathrm{sum}}=|Q_y|/A_y+|Q_z|/A_z \) の接続を採用します。 実際の部材別の法線応力と合成式は鋼構造 断面検定に示し、本節の剛性用Asへこの検定用の加算規約を流用しません。
力の方向と断面性能の対応
添字は保存断面性能と部材内力で同じ意味ではありません。強軸側・弱軸側は断面形状の基準呼称で、性能の大小から軸を自動的に並べ替える意味ではありません。空間内の取付方向は部材の局所座標で扱います。局所 y はせい方向、局所 z は幅方向であり、せん断力の方向と曲げモーメントの回転軸を区別します。
| 曲げの基準呼称・要素局所曲げ面 | 部材局所内力 | 保存断面二次モーメント | 保存剛性用 As | 検定用 Ad |
|---|---|---|---|---|
| 強軸まわり・xy 面(z 軸まわり) | Mz、Qy | Iy | as_z | Ay |
| 弱軸まわり・xz 面(y 軸まわり) | My、Qz | Iz | as_y | Az |
したがって保存 as_z は、局所 z 方向のせん断面積ではなく、局所 y 方向のせん断面積です。ティモシェンコ梁の記号と対応表では、要素局所の回転軸・せん断方向を添字に用います。
エネルギー等価面積との区別
均質線形弾性断面のエネルギー等価なせん断面積は、断面内の二成分のせん断応力から定義できます。
\[ A_{s,\mathrm{energy}} = \frac{V^2}{\int_A(\tau_1^2+\tau_2^2),dA} \]
Jourawski のせん断応力分布に限定して評価すると、次式になります。
\[ A_{s,J} = \frac{I^2}{\int Q(s)^2/b(s),ds} \]
ここで V はせん断力 [N]、Q(s) は断面一次モーメント [mm³]、I は断面二次モーメント [mm⁴]、b(s) と s は mm です。 この剛性の定義は、許容応力度検定の Ad の定義や、上記慣用面積の物理精度を保証するものではありません。
出典と確認範囲
Favataほか、2010、§2、式(8)(9)、p.5は、せん断応力のエネルギー等価による形状係数を定義しています。上記の慣用面積とは区別します。 せん断検定面積の採用方式と適用範囲は鋼構造 断面検定を参照してください。
As = 0 は入力エラー
線材(梁・柱・ファイバー・マルチスプリング)が参照する断面の \( A_{s,y} \)・\( A_{s,z} \) は正の値でなければならず、0 の断面を用いるモデルは解析前チェックでエラー停止します。\( A_s = 0 \) はティモシェンコ梁の \( \phi = 0 \)(せん断変形なし)となるうえ、せん断降伏の判定閾値も \( Q_y = +\infty \)(せん断では決して降伏しない)となり、入力不足が「せん断について無限に強い部材」として通ってしまうためです。
せん断変形を無視した検討を行う場合は、断面の \( A_s \) を 0 とするのではなく、部材のモデル化として十分大きな \( A_s \) を与えてください(\( \phi \to 0 \) でベルヌーイ梁に一致します)。
実装参照:sepika_core::section_shape::SectionShape::to_section(crates/sepika-core/src/section_shape/builder.rs)が算定します。
断面性能の Section.{iy,iz,as_y,as_z} と梁要素の局所内力の接続は BeamElement::try_new(crates/sepika-element/src/frame/beam/construct.rs)が行い、梁要素の (iy,iz,as_y,as_z) へ断面性能の (iz,iy,as_z,as_y) を渡します。
\( A_s = 0 \) の検出は sepika_solver::statics::analysis::precheck::precheck_model(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs)です。
コンクリートのヤング係数 Ec
コンクリートのヤング係数 Ec は、RC 規準の Ec 式で算定します。
\[ E_c = 3.35 \times 10^4 \cdot (\gamma_C/24)^2 \cdot (F_c/60)^{1/3} \]
標準コンクリート材料は、Fc・コンクリートの種類・構造区分から単位体積重量表を参照し、RC では γC = γRC - 1.0 [kN/m³] とします。明示入力された Material.young は線形弾性経路など通常の弾性係数の入力に用います。NewRC のファイバー実効剛性の初期接線は、Fc≤60 では材料から解決した Material.young、Fc>60 では NewRC の式から算定する固有 Ec を用います。
Fc>60 のファイバー材料も、現行仕様では NewRC の式を外挿して使用します。これは NewRC の原典上の適用範囲を超える暫定措置であり、高強度コンクリート用の正式な別構成則は未採用です。εc0>=εcu の扱いを含む構成則の変更は、この文書の対象外です。
Fc≤0 または Fc が非有限値の場合、Ec は 0 とします。正の有限値は下限補完せず、その値で算定します。
実装参照:sepika_core::section_shape::concrete_young_modulus_gamma(crates/sepika-core/src/section_shape/material.rs)が γC を受けて算定します。
耐震壁のせん断形状係数 κ
側柱付き耐震壁は、壁板をウェブ・両端の側柱をフランジとする平面 I 形断面とみなし、せん断形状係数 κ を材料力学の定義(Timoshenko 梁のせん断補正係数)から厳密に算定します。
算定式
\[ \kappa = \frac{A}{I^2} \int \frac{Q(y)^2}{b(y)} \, dy \]
- \( A \): 断面積、\( I \): 断面二次モーメント
- \( Q(y) \): 位置 \( y \) より上の断面一次モーメント
- \( b(y) \): 位置 \( y \) における断面幅(ウェブ部は壁厚 \( t \)、フランジ部は側柱幅)
面内曲げの断面は「壁長方向を断面のせい、壁厚方向を断面の幅」とみなし、断面のせいは側柱外面間の全長 \( D \)、フランジは両端の側柱(沿壁方向せい \( d_c \)・壁直交方向幅 \( b_c \))、ウェブは壁板(せい \( D - 2 d_c \)・幅 \( t \))です。
性質
- 一様矩形(側柱なし、側柱幅が壁厚に等しい、または中央のウェブせいが0)では \( \kappa = 1.2 \)(=
KAPPA_RC)。 - 係数はフランジ・ウェブの寸法比に依存します。側柱せいを増やして中央のウェブせいが0になると矩形断面となるため、側柱寸法に対して単調に増えるとは限りません。
- せん断断面積 \( A/\kappa \) は総断面積を超えません。
積分の評価
\( c=D/2,\ a=c-d_c,\ q_a=b_c d_c(c+a)/2 \) とすると、半断面の各区間の積分は次の多項式になります。
\[ J_w=\frac{a q_a^2}{t}+\frac{2q_a a^3}{3}+\frac{2ta^5}{15} \] \[ J_f=b_c d_c^3\left(\frac{c^2}{3}-\frac{c d_c}{4}+\frac{d_c^2}{20}\right) \] \[ \kappa=\frac{2A(J_w+J_f)}{I^2},\qquad I=\frac{2}{3}\left(t a^3+b_c d_c(c^2+ca+a^2)\right) \]
実装では、幅が一定の各区間を3点Gauss積分で評価します。各区間のQは二次式、Q²/bは四次式であり、3点Gauss積分は五次までの多項式を厳密に積分するため、上記の多項式積分と一致します(浮動小数点の丸め誤差を除く)。幅一定の区間を細分する設定や既定分割数はありません。
共通処理 section_shape::strip_section_properties は、連続区間ごとの長さ・幅から、同じ断面の面積・始点からの図心位置・図心まわりの断面二次モーメント・せん断有効断面積を返します。同一材料で幅方向対称の断面を前提とします。空の区間列、非正・非有限の寸法、算定不能な性能値には値を返しません。
実装参照:section_shape::wall_shear_shape_factor_isection が算定します。非有限の寸法、全せい・幅が非正の場合は1.2を返します。側柱せいは0以上かつ全せいの半分以下に制限し、側柱せいが0、または側柱幅が壁厚以下の場合も1.2とします。計算結果が非有限または1未満の場合は1.2を返します。
側柱の断面形状は明示指定が必要です。形状未定義の側柱は解析前の入力エラーとします。断面積・幅・せいだけから形状を推定する既定の扱いはありません。入力チェックの実装は sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs です。
矩形の和集合断面を求める補助関数 section_shape::wall_rectangular_section_properties は、壁長・壁厚と左右個別の沿壁方向せい・壁直交方向幅を受け取ります。壁厚中央に柱中心があり、各矩形の辺が壁に平行・直交する同一材料断面が対象です。柱なしは None で明示します。各矩形の境界で区間を区切り、同じ区間を覆う矩形の最大幅を用いることで、壁と柱・柱同士の重複を一度だけ数えます。図心は左の壁端から測ります。非正・非有限の寸法や算定不能な性能値は返しません。この補助関数は壁要素本体の断面集計には接続していません。
材料間の接合条件
鋼材・コンクリートの合成断面は完全付着とし、界面のすべりを考慮しません。界面にすべりが生じる場合には変形を過小評価しうる危険側の近似です。適用できる断面形状は壁エレメントモデルによります。
材料定数が区間ごとに異なる断面の積分
material_strip_section_properties は、完全付着・平面保持を前提とする区分一定幅断面を扱います。各区間の幅方向は単一材料とし、区間間ではE・Gを別々に指定します。材料定数の既定値はありません。面積の図心と区別して、弾性図心をEで重み付けして求めます。
\[ y_E=\frac{\int E(y)b(y)y\,dy}{\int E(y)b(y)\,dy},\qquad D=\int E(y)b(y)(y-y_E)^2\,dy \] \[ Q_E(y)=\int_{y_{min}}^y E(s)b(s)(s-y_E)\,ds,\qquad K_s=\frac{D^2}{\int Q_E(y)^2/[G(y)b(y)]\,dy} \]
断面性能は幾何学的な面積 [mm²]、弾性図心 [mm]、曲げ剛性D [N·mm²]、せん断剛性Ks [N]です。均質断面ではD=EI、Ks=GAsに一致します。Q_E²/(Gb)は各区間内で四次式なので、3点Gauss積分で評価します。この関数自体は区間ごとの幅・E・Gを受け取り、材料領域の重複判定は呼び出し側が行います。
実形状と材料別幅による一次元せん断流モデル
壁要素は wall/shear_section.rs を通じて、側柱の回転を反映した各位置yの材料別実幅bi(y)を求めます。矩形は直線、円・角丸は円弧との交差から幅を求め、外接矩形では代用しません。非対称鋼材の基準点は幾何学的図心です。壁と柱の重複部分は柱材料を優先し、同一材料の重なりを二重計上しません。SRCは内蔵H形鋼をコンクリートから控除し、CFTは外周の鋼管と内部コンクリートを区別します。中空鋼材の空洞は材料なしとして保持し、壁材料で埋めません。
幅方向のせん断ひずみを共通とする一次元モデルを用います。Eの幅積分はB_E(y)=ΣEi bi(y)、Gの幅積分はB_G(y)=ΣGi bi(y)です。上式のEb・GbをそれぞれB_E・B_Gに置き換えて積分します。これは幅方向のせん断変形の分布を省略する近似で、局所的なせん断変形を過小評価しうる危険側の近似です。完全付着の条件だけから幅方向のひずみ一定が保証されるわけではありません。面外曲げとの連成を求める断面内二次元せん断解析ではありません。
材料定数は壁・左右柱の割当材料を個別に使用し、Gの明示値があれば優先します。SRC内蔵鋼材は断面の鉄骨材料を使用し、未指定はエラーです。CFT充填部は鋼管材料に指定したFcとコンクリートの種類から、無筋コンクリートの単位体積重量表でγCを求めてEを算定し、ν=0.2からGを求めます。鋼管材料の密度は用いません。Fcの未指定・非正値はエラーです。RC主筋をせん断剛性の材料領域には加えません。
断面形状の端・矩形頂点の投影・壁厚境界との交点で積分区間を区切ります。各区間の中点で実幅を評価し、区分一定幅の積分へ渡します。1分割から2倍ずつ最大8192分割まで細分し、面積・曲げ剛性・せん断剛性の相対変化と、全断面長で無次元化した弾性図心の変化が1e-6以下となることを連続2回確認します。収束しない場合は計算を中止します。この収束判定は一次元モデルの数値積分誤差を管理するもので、上記のモデル化の近似を解消するものではありません。
数値処理では、幅を求める座標変換の方向余弦が1e-14未満の場合は平行として扱い、投影された積分区間の境界差が1e-10 mm以下の場合は同一境界として統合します。
SRC / CFT の等価断面性能
SRC の初期弾性解析には入力コンクリートの Ec と標準鋼材 Es=205000 N/mm²の比を用います。許容曲げ計算の n とは区別します。外形コンクリートに鉄骨部分を重ねて表すため、軸・曲げでは鉄骨の重複コンクリートを除く n−1 の累加を用います。
\[ A_n = {}_{rc}A_n + {}_s A_n \cdot (n_s - 1) \]
\[ I_e = {}_{rc}I_e + {}_s I_e \cdot (n_s - 1) \]
\[ A_s = {}_{rc}A_s + {}_s A_s \cdot (n_{gs} - 1) \]
\[ J = {}_c J + ({}_s G/{}_c G) \cdot {}_s J \] CFT は SRC 柱に準じ、鋼基準の 1/n 換算で累加します。充填コンクリートの Ec は鋼管材料の密度やヤング係数からは算定せず、Fc とコンクリートの種類から無筋コンクリートの単位体積重量 γC を求めて算定します。
算定式
SRC の換算係数(νs=0.3、νc は主材料の入力値):
\[ n_s = E_{\text{steel}}/E_c \]
\[ n_{gs} = n_s \cdot \frac{1 + \nu_c}{1 + \nu_s} \]
SRC 軸剛性用:
\[ A = b \cdot d + (n_s - 1) \cdot {}_s a \]
SRC 曲げ:
\[ I_y = \frac{b \cdot d^3}{12} + (n_s - 1) \cdot {}_s i_y \]
異厚角形CFTは鋼管・充填部の幾何性能と重量を保持しますが、鋼管J・せん断性能の適用式が未確認のため、以下を含む等価剛性一式の算定は理由付きエラーとします。
CFT(充填コンクリートを鋼基準へ換算):
\[ A = A_{\text{steel}} + {}_c a/n \]
\[ I_y = I_{y,\text{steel}} + {}_c i_y/n \]
記号・単位
角形 CFT の鋼管・コアの A・Iy・Iz は、角Rを含む材料領域から算定します。 せん断換算のコア面積にも同じ値を用います。 角Rが未知・不正、または内法が消失した角形 CFT は、鋼管のみへフォールバックせず入力・算定エラーとします。 鋼管 J は形状別ねじりモデルと供給値優先、コア J は以下の単体自由ねじりモデルを用います。
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( n_s \) | 鋼材とコンクリートのヤング係数比(\( E_{\text{steel}}/E_c \)) | - |
| \( n_{gs} \) | せん断弾性係数比を考慮した換算係数 | - |
| \( E_{\text{steel}}, E_c \) | 鋼材・コンクリートのヤング係数 | N/mm² |
| \( \nu_s, \nu_c \) | 鋼材・コンクリートのポアソン比 | - |
| \( A \) | 等価換算後の断面積 | mm² |
| \( I_y \) | 等価断面二次モーメント | mm⁴ |
| \( J \) | 等価ねじり定数 | mm⁴ |
| \( b, d \) | 鉄筋コンクリート部分の幅・せい | mm |
| \( {}_{rc}\cdot,\ {}_s\cdot,\ {}_c\cdot \) | 鉄筋コンクリート部分・内蔵鉄骨部分・充填コンクリート部分の諸量 | - |
| \( {}_{rc}A_n, {}_s A_n \) | 等価換算前の鉄筋コンクリート部分・内蔵鉄骨部分の断面積 | mm² |
| \( {}_{rc}I_e, {}_s I_e \) | 等価換算前の鉄筋コンクリート部分・内蔵鉄骨部分の断面二次モーメント | mm⁴ |
| \( {}_{rc}A_s, {}_s A_s \) | 等価換算前の鉄筋コンクリート部分・内蔵鉄骨部分のせん断有効断面積 | mm² |
| \( {}_s a, {}_c a \) | 内蔵鉄骨部分・充填コンクリート部分の断面積 | mm² |
| \( {}_s i_y, {}_c i_y \) | 内蔵鉄骨部分・充填コンクリート部分の断面二次モーメント | mm⁴ |
| \( {}_s G, {}_c G \) | 内蔵鉄骨・コンクリートのせん断弾性係数 | N/mm² |
| \( {}_c J, {}_s J \) | コンクリート部分・内蔵鉄骨部分のねじり定数 | mm⁴ |
| \( A_{\text{steel}} \) | CFT 鋼管部分の断面積 | mm² |
| \( I_{y,\text{steel}} \) | CFT 鋼管部分の断面二次モーメント | mm⁴ |
| \( n \) | CFT の鋼基準換算係数(\( n_s \) に同じ) | - |
CFTの初期弾性ねじり剛性
鋼管と充填コンクリートの単体自由ねじり定数を、それぞれ Js・Jc として初期弾性剛性を累加します。
\[ (GJ)_{\mathrm{CFT}}=G_sJ_s+G_cJ_c,\qquad J_{\mathrm{eq}}=J_s+\frac{G_c}{G_s}J_c \]
J の単位は mm⁴、G は N/mm²、GJ は Nmm² です。 鋼管材料に G を直接入力している場合はその値を用い、未入力の場合は Gs=Es/{2(1+νs)} とします。 Gc=Ec/{2(1+νc)}、νc=0.2 とし、軸・曲げの換算比 n=Es/Ec とせん断・ねじりの換算比 ngs=Gs/Gc を区別します。 G の直接入力時も Es や νs から Gs を上書きしません。
断面に登録する CFT の J は鋼管単体 Js です。供給 Js を優先して用い、合成後の Jeq で書き換えません。 弾性梁とファイバーのねじり剛性は、同じ実 Gs と Jeq の積を用います。 鋼管形状式の厚比・外角R適用域は、供給 Js がある場合のコア算定域へ転用しません。 ただしコア輪郭の寸法と角Rは既知かつ有効である必要があります。
この累加は各単体の自由ねじりを用いる初期弾性モデルで、完全付着により鋼管とコアが共通のそり変位を持つ複合断面の厳密解とは同一ではありません。 付着すべり、ひび割れ、塑性化、繰返し履歴や拘束そりを評価するモデルではなく、全域で安全側とは認定していません。 正方形 CFT の純ねじり・自由そり・界面長手すべりなしを対象とする Zhangほか2022、§2.2・式(23)・表3 の近似式は、角丸矩形一般の式ではありません。 同論文の12例に対するねじれ角差 −3.21~−6.06% は近似式全体の差であり、この単体累加だけの誤差と解釈しません。
角形CFTコアの数値算定
コア輪郭は鋼管の内形と一致させ、内法 b=B−2t、h=H−2t、内角R=max(ro−t,0) とします。 円形 CFT は内半径 rc の円として Jc=πrc⁴/2 を用います。 角形 CFT は直角を含む角丸内形に対し、均質等方、穴なし、一定断面、一様自由ねじりの Prandtl 問題を解きます。 断面内座標は y・z、材軸は x です。
\[ \Delta\Phi=-2\quad\text{(コア内)},\qquad \Phi=0\quad\text{(コア外周)},\qquad J_c=2\int_A\Phi\,dA,\qquad T=G_cJ_c\theta^{\prime} \]
Φ は Gc とねじり率 θ′ を除いた正規化応力関数で、寸法付きでは mm² です。 外周の Φ=0 は単体コアの自由ねじり境界条件であり、CFT 界面の応力がゼロであることを意味しません。 定式化は Franců・Nováčková・Janíček2012、pp.48–50、式(9)(11)–(13) に基づきます。
適合一次三角形(P1)の Galerkin 法を用い、外周節点の Φ を 0 に固定します。 外周で 0 となる試験関数 v と三角形形状関数 Ni に対して、次式を一次三角形上で厳密に積分します。
\[ \int_A\nabla v\cdot\nabla\Phi\,dA=2\int_Av\,dA,\quad K_{ij}=\sum_e\int_{A_e}\nabla N_i\cdot\nabla N_j\,dA,\quad f_i=2\sum_e\int_{A_e}N_i\,dA,\quad J_h=2\sum_e\int_{A_e}\Phi_h\,dA \]
円弧は接線接続点を保持した内接弦で近似します。 内法長辺 ℓ=max(b,h) で長さを正規化し、算定した無次元 Ĵ を Jc=ℓ⁴Ĵ に復元します。 矩形の近似 J にコア面積比を掛ける補正、外挿、未収束時の別式への置換は行いません。
数値品質と算定限界
円弧境界の分割と内部の三角形サイズを別の系列で細分化します。 内部系列では元の内接弦多角形を固定し、弦上の共線分割を許します。 正の内角Rでは、直近3段の境界分割について同じ内部サイズで比較し、それぞれの内部収束も確認します。 直角コアには円弧境界の近似誤差がないため、内部系列だけを確認します。
| 項目 | 採用条件・上限 |
|---|---|
| 四分円の境界分割数 | 16、32、64、128、256、512 の最大6段 |
| 正規化最大三角形面積 | 1/128、1/512、1/2048、1/8192、1/32768、1/131072、1/524288、1/2097152 の最大8段 |
| 変化率 | 各系列で最低3段、最後の連続2区間とも \(\lvert J_k-J_{k-1}\rvert/\lvert J_k\rvert\le0.1%\) |
| 相対残差 | \(\lVert K\Phi-f\rVert_2/\lVert f\rVert_2\le10^{-10}\) |
| メッシュ資源 | 頂点200000以下、三角形400000以下、最大48設定 |
品質基準に最初に合格した段で停止します。 内部の節点・自由度・要素が増えず、同じメッシュから J の変化だけが 0 となる場合は収束とみなしません。 輪郭の被覆・面積・要素の正向きを確認し、退化・反転要素を除外します。 非有限・非正の J、不正なメッシュ、残差超過、変化率未達、資源上限到達は数値 J 未確定です。 上限内で全形状が成功することを保証するものではありません。
これらは本ソフトが採用する数値品質基準で、原論文が示す閾値ではなく、厳密解に対する誤差上限の証明でもありません。 線形方程式の算術誤差、境界近似・有限要素分割による離散化誤差、CFT 単体累加の物理モデル誤差を区別してください。 円・楕円・矩形などとの一致だけで、実 CFT の付着・ひび割れを含む精度や安全側を保証しません。 J の過大評価は一定トルク下のねじれを過小評価し、横座屈のねじり抵抗にも影響します。
寸法・内角Rを変更した場合は変更後のコア輪郭で評価し、供給 Js と材料を検証して累加します。 面積・曲げ性能・重量の算定にはこのコアねじり求解を必要としません。
CFTの初期弾性せん断剛性
鋼管と充填コンクリートの初期弾性せん断剛性を、方向ごとに累加します。 換算に用いる Gs・Gc は上記のねじり剛性と共通で、鋼管の G の直接入力を優先します。
\[ (GA)_{\mathrm{dir}} = G_s A_{s,\mathrm{steel,dir}} + G_c A_c/1.2 \]
\[ A_{s,\mathrm{eq,dir}} = A_{s,\mathrm{steel,dir}} + \frac{G_c}{G_s}\frac{A_c}{1.2} \]
GはN/mm²、面積はmm²、GAはN、材長L [mm]に対する剛性GA/LはN/mmです。 角形鋼管の鋼管項は強軸Qyに \( 2t(H-2t) \)、弱軸Qzに \( 2t(B-2t) \) を用います。 断面性能の添字ではそれぞれas_z、as_yです(力の方向と断面性能の対応)。 コア面積Acは角Rを含む材料領域の面積で、外角Rが変わればAcも変わりますが、鋼管項の板面積式には円弧面積を加算しません。 円形CFTの鋼管項は鋼管全断面積の1/2です。 これらのAsは剛性用であり、鋼管の許容せん断検定用Adとは区別します。
この累加は初期弾性に対するモデルです。弾性剛性に比例する材料分担を、終局時の鋼管・コンクリートの分担、付着劣化、繰返し履歴へ流用しません。 角Rを含むコア幾何が求まることは、せん断剛性モデルの精度や安全側を保証しません。
公開論文の別規約と適用範囲
以下の論文でAsと記された鋼管面積は、方向別の有効板面積ではなく鋼管全断面積です。ここでは混同を避けるため \( A_{\mathrm{steel}} \) と表記します。
| 規約 | せん断剛性GAの式 | 確認した条件と限界 |
|---|---|---|
| 富井・崎野1979 | \( G_s A_{\mathrm{steel}}/2 + G_c A_c/1.2 \) | 100mm正方形40体、D/t=24/33/44、せん断スパン比0.83/1/2/3、焼鈍鋼管・膨張コンクリート。小さいQの初期弾性の比較であり、任意矩形・角Rへの全域保証ではない |
| 中村ほか2003 | \( G_s k_s A_{\mathrm{steel}} + G_c k_c A_c \) | 100mm正方形、D/t=33/44、Fc=30/60 N/mm²、軸力比0.2–0.7。初期剛性のせん断成分と、残留応力・軸力を考慮する曲げ成分を区別 |
| 福元2019 | \( G_s k_s A_{\mathrm{steel}} + G_c k_c A_c \) | 角形CFT98体、D/t=20.8–94.8、軸力比0–0.67。曲げ降伏先行、せん断成分は弾性。任意矩形・角Rへの検証済み範囲とはしない |
2003・2019の面積乗算係数は次式です。
\[ k_s = \frac{20(1+\nu_s)}{48+39\nu_s},\qquad k_c = \frac{10(1+\nu_c)}{12+11\nu_c} \]
νs=0.3、νc=0.2ではks=0.4355108877721943、kc=0.8450704225352113で、逆数はそれぞれ2.296153846153846、1.1833333333333333です。 コアの係数kcと1/1.2は同値ではありません。これらの別規約の係数で、採用中の方向別板面積やコア項を置換しません。 角なし正方形D×D×tでは、1979の鋼管面積項が \( A_{\mathrm{steel}}/2=2t(D-t) \)、採用方向別板面積が \( 2t(D-2t) \) となり、後者は2t²小さくなります。
同条件での規約比較
次表はEs=205000 N/mm²、νs=0.3、Ec=33500 N/mm²、νc=0.2を共通にした算術比較です。 EcはFc=60 N/mm²・γC=24 kN/m³の例で、Gs=Es/{2(1+νs)}、Gc=Ec/{2(1+νc)}とします。 H/B/t/外角Rはmm、GAはMNで表示し、鋼管・コアの全断面積は同じ角Rの材料領域を各式へ代入しています。 1979と2003/2019の列は正方形に対する式を矩形・角Rへ算術的に外挿した比較値で、その適用を確認した値ではありません。
| H×B×t | 外角R | 採用GA:強軸Qy | 採用GA:弱軸Qz | 1979 | 2003/2019 |
|---|---|---|---|---|---|
| 100×100×3 | 0 | 147.249092 | 147.249092 | 148.668323 | 144.197314 |
| 100×100×3 | 3 | 147.249092 | 147.249092 | 148.363753 | 143.932027 |
| 100×100×3 | 7.5 | 147.046897 | 147.046897 | 147.247849 | 142.931124 |
| 400×300×12 | 0 | 1918.624359 | 1729.393590 | 1846.716667 | 1781.223837 |
| 400×300×12 | 12 | 1918.624359 | 1729.393590 | 1841.843554 | 1776.979250 |
| 400×300×12 | 30 | 1915.389236 | 1726.158467 | 1823.989094 | 1760.964801 |
差を「採用値−比較値」とすると、100×100×3の例では1979に対して負、2003/2019に対して正です。 400×300×12の例では両比較式に対して強軸が正、弱軸が負となり、単一の符号にはなりません。 これは規約間の差であり、実験値・厳密解に対する物理誤差ではありません。 任意矩形・角Rに対する方向別鋼管項の精度、誤差の符号、要求精度は未確定です。数表の丸め精度を、モデルの物理精度や安全性の保証と解釈しないでください。
入力と計算不可の表示
SRC の主材料はコンクリートです。Ec [N/mm²] は正の有限値、νc は有限値で −1 < νc < 0.5、Fc [N/mm²] は設定済みの正の有限値を要します。この等方弾性範囲では体積弾性係数とせん断弾性係数が正になります。材料登録で決まった Ec を解析に使い、解析時に Fc から再算定しません。内蔵鋼材に登録したカスタム E は、SRC の換算比に使いません。
材料未割当・不正値、換算比または必要剛性の非有限・非正値は計算不可です。診断は理由と対象部材を示すエラーとなり、解析を停止します。準備計算も理由を表示し、成功結果を公開しません。材料を直して再実行してください。形状だけから作成する断面性能の暫定比15を、解析の代替値には使いません。
CFT では鋼管材料の Es・実 Gs は正の有限値、νs は有限かつ −1<νs<0.5 を必要とします。 主コンクリート材料の Fc と、その Fc・コンクリートの種類から求める無筋コンクリートの単位体積重量 γC も、正の有限値を必要とします。 等価剛性の鋼管 Js は正値を必要とし、コア輪郭不明・不正、数値 Jc 未確定も理由付き計算不可です。 鋼管のみの剛性や Jc=0 に置き換えて解析を継続しません。 ねじりが未算定でも、必要な幾何・材料が成立する A・I・重量の独立した算定値は保持します。
等価面積は軸剛性のための値です。実面積・実体積から算定する自重・物理質量には流用しません。例として b=300、D=600、中心 H400×200×8×12、フィレット・鉄筋・スラブなしでは、実面積180000 mm²に対して Ec=20500、ns=10 の等価面積は250272 mm²、Ie=7345337856 mm⁴です。ns=15なら289312 mm²、8426081109.333333 mm⁴となり、この差を安全側とは断定しません。
SRC の塑性域付きファイバー・MultiSpring の弾性基準 EA/EI、集中ばねの初期回転剛性 6EI/L、ファイバーのねじり剛性 GJ/L も、この材料検証済みの性能を使います。履歴則や耐力算定の係数を変更する契約ではありません。
弾性梁・ファイバー・MultiSpring の集中質量と整合質量は、同じ共通質量特性を使います。SRCは総外形×包括採用密度、CFTは鋼管・充填コアの幾何と各採用密度を用い、Aeや応力積分のファイバー面積を流用しません。SRCのHとコンクリートの応力積分は非重複の材料領域を用い、質量算定とは独立です。主筋なしではEc(Ag−As)+EsAs=Ec{Ag+(ns−1)As}となり、材料積分と換算EA/EIは連続領域として整合します。セル中心での曲げ積分には別途分割誤差があります。
設計DL自重と物理質量相当自重は別の採用条件を持ちます。普通SRC300×600×3000 mmの包括物理密度γSRC25の例では、物理質量相当は13500 Nですが、登録密度2.4×10⁻⁹ t/mm³の現行DL設計自重は12709.4184 Nとなります。この差を解消する全面統合は未対応です。質量行列の共通化を、設計DLの包括SRC単位重量への統一と解釈しないでください。
許容曲げ計算の n と適用限界
許容曲げ計算の n は次の強度区分によります。入力 Ec から求める解析用 ns の代用にはしません。
| Fc [N/mm²] | 許容曲げ用 n |
|---|---|
| Fc ≤ 27 | 15 |
| 27 < Fc ≤ 36 | 13 |
| 36 < Fc ≤ 48 | 11 |
| 48 < Fc ≤ 60 | 9 |
| Fc > 60 | 7(採用原典・適用上限未確認) |
Fc>60の7は現行計算の応答であり、60以下の区分から導いた外挿や規準適合の保証ではありません。断面設計用nの確認範囲のとおり、刊行規準への適合・高強度・軽量等の全材料条件は未確認です。RCの設計用nの部分一致からSRCへの適用を保証しません。SRC の鉄筋・フィレット・スラブを含む断面の全換算理論、ねじり・せん断の全式の原典適合とモデル精度は未検証です。SRC の材料入力契約は、CFT の追加適用や精度保証を含みません。
出典と確認範囲
- 日本建築学会、2008年公開改定案、第8条、pp.2–4:解析用 Es/Ec と重複コンクリートを除く n−1 の区別を補足する公開資料です。RC 改定案であり、SRC 2014 原本と同一視しません。
- 日本建築学会『鉄骨鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説』(2014)、『鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説』(2018)12条・13条の原本への適合は未確認です。
- 富井政英・崎野健治1979、本文pp.81–82・p.87式(1)(PDF pp.1–2・7):試験条件と初期せん断剛性。Ac/1.2の直接根拠として参照しますが、鋼管全断面積の1/2と方向別板面積は異なります。
- 中村ほか2003、本文p.32・pp.35–36、式(4)(5)(PDF pp.2・5–6):試験条件、せん断剛性と面積乗算係数。軸力・残留応力を含む初期曲げ剛性の検討を、せん断面積の一律補正へ読み替えません。
- 福元2019、本文p.738 §2.1、p.739式(11)・表1(PDF pp.2–3):曲げ降伏先行モデルの弾性せん断成分と検討試験体範囲。
- 円形CFT短柱の研究2015、本文p.1796(PDF p.2)の終局材料分担は、ここで用いる初期弾性累加の根拠には転用しません。CFTのせん断剛性への適用は別途確認が必要です。
材料不正時の停止は SEPIKA の入力契約です。規準全文への適合は未確認です。
実装参照:等価性能とコア診断は sepika_core::section_shape::SectionShape::{src_equivalent_props, try_cft_equivalent_props, try_cft_core_torsion}(crates/sepika-core/src/section_shape/composite.rs)、数値品質判定は crates/sepika-core/src/section_shape/core_torsion/controller.rs です。
実要素の材料検証済み入口は sepika_element::frame::beam::composite_props_of(crates/sepika-element/src/frame/beam/stiffness_factors.rs)です。
ファイバー断面(M–φ 積分)
ファイバー断面の断面力と接線剛性は、平面保持仮定に基づくファイバー断面積分で算定します。
算定式
ファイバーひずみ(平面保持):
\[ \varepsilon = \varepsilon_0 - \kappa_z \cdot y + \kappa_y \cdot z \]
断面力:
\[ N = \sum \sigma \cdot A \]
\[ M_y = \sum \sigma \cdot A \cdot z \]
\[ M_z = \sum (-\sigma \cdot A \cdot y) \]
- 接線剛性 3×3 は各ファイバーの \( E_t \cdot A \)、\( E_t \cdot A \cdot y \)、\( E_t \cdot A \cdot z \) の総和として求めます
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( \varepsilon \) | ファイバーのひずみ | - |
| \( \varepsilon_0 \) | 断面の軸ひずみ(図心位置のひずみ) | - |
| \( \kappa_y, \kappa_z \) | y 軸・z 軸まわりの曲率 | 1/mm |
| \( y, z \) | 断面内のファイバー位置 | mm |
| \( N \) | 軸力 | N |
| \( M_y, M_z \) | y 軸・z 軸まわりの曲げモーメント | N·mm |
| \( \sigma \) | ファイバーの応力 | N/mm² |
| \( A \) | ファイバーの断面積 | mm² |
| \( E_t \) | ファイバーの接線ヤング係数 | N/mm² |
実装参照:sepika_section::fiber::section_response(fiber.rs)が算定し、各ファイバーは独立履歴状態を保持します。
ファイバーの配置は断面形状(SectionShape)に応じて sepika_section::mn_surface::plastic_fibers_at が生成します(H 形・箱形は板分割、鋼管・円形は円環分割、RC・SRC・CFT はコンクリート・主筋・鋼材の各領域へ配置)。形状を持たない断面は矩形分割(sepika_section::fiber::rect_fiber_section)です。M–φ / M–θ 曲線は sepika_section::mn_surface で求めて断面詳細ビュー(M-N 相関曲面ビュー)に表示します(弾完全塑性、二分法で軸力整合、\( \theta(M) = \frac{M \cdot L}{6 \cdot EI_0} + L_p \cdot \left( \varphi(M) - M/EI_0 \right) \))。解析要素(ファイバー梁・マルチスプリング梁)は、要素が実際に生成した FiberSection をファイバー積分して応答を決めます。
材料割当と初期接線
以下の γ=23 固定は、材料未割当時の全塑性評価に限った既定値です。材料が割り当てられている場合も、鋼材・鉄筋等のファイバーは既存実装どおり材料の E(Material.young)を用います。コンクリートファイバーは、Fc≤60 では材料から解決した E を NewRC の初期接線へ反映し、Fc>60 では NewRC 固有の Ec を暫定的に外挿します。
CFT の等価断面性能で用いる Ec は、鋼管と充填コンクリートの等価換算のために Fc・コンクリート種類・単位体積重量から算定する値です。これは、CFT 充填コンクリートのファイバー材料に用いる NewRC の Ec(初期接線)とは別の値です。
材料未割当時の全塑性評価には次の既定強度を用います(鋼材降伏 235・鉄筋降伏 345・コンクリート圧縮 24 [N/mm²]、弾性係数 205000 [N/mm²])。 コンクリートの弾性係数は RC 規準式(\( \gamma = 23 \) 固定)によります。
実装参照:既定強度は sepika_section::mn_surface::StrengthParams::default(crates/sepika-section/src/mn_surface/types.rs)が与え、コンクリートの弾性係数は sepika_core::section_shape::concrete_young_modulus(crates/sepika-core/src/section_shape/material.rs)が算定します。
ファイバー配置の解像度
H は板領域とフィレット、角形鋼管は角丸外形と内形の差、角形 CFT のコアは同じ内形に配置します。 角丸部は四分円・四分円環、フィレットは四分正方形から四分円を除いた領域へ分解します。 各セルの面積と一次モーメントを積分して面積・図心を求め、総面積だけを事後スケーリングする処理は行いません。 フィレット半径・角Rが未知・不正の場合は、配置の入口で理由付きエラーとなります。
面積保存と曲げ・応力分布の精度は別の検証項目です。 セルの図心で応力を評価するため、通常配置の誤差には過大・過小の両方があり、安全側とは認定していません。 公開の軸力一定曲げ耐力の照合では、H-400×200×9×12 の 1/40 配置で約 3.07% の差があり、フィレット半径 0 の変更前配置にも同じ差があります。 1/2560 の検証配置では、代表方向・軸力の曲げ耐力と両軸 I を独立積分比 0.1% 以内で照合していますが、通常配置に同じ精度を保証するものではありません。
解析要素の形状配置は、最大寸法の 1/16(下限 1 mm)を目標とする既定分割を用います。 代表例 H-400×200×9×12、フィレット半径 13 mm の既定分割では、強軸 I の差が約 −0.095%、弱軸 I の差が約 −1.705% です。 フィレット半径 0 の既定分割の差は約 −0.097%、−1.703% であり、形状による変化と既存の分割誤差を区別して評価します。 これらの差を、一般的な応答・耐力が安全側になるとの保証には用いません。
全塑性評価の配置は、M-N 相関用マルチファイバーと単純降伏バネには細分割(最大寸法の 1/40 目安)、M-N 相関用マルチスプリングには粗い配置(最大寸法の 1/4 目安)を用います。 鋼管・円形の円環分割は、細分割では周 48・薄肉径方向 4・中実径方向 12、粗い配置では周 8・薄肉径方向 1・中実径方向 2 です。 非対称断面(山形・溝形・T 形等)は断面積重心へ座標を平行移動し、曲げの基準軸を図心に取ります。 中心配置・直角Hを持つ矩形SRCでは、Hの上下フランジとwebの3枚板を非重複領域とし、その占有位置を外形コンクリートから除きます。H境界で残存コンクリートを正面積の矩形領域へ分割してからメッシュ化します。セル中心の内外判定による丸ごとの削除や、総面積だけの縮小は行いません。Fiber / MultiSpring の応力積分、M–N、M–φ と表示は同じ材料領域を用います。
主筋は実座標に1本面積を持つ離散ファイバーとして加算する近似を保持し、その占有コンクリートは控除しません。したがって主筋なしではΣAf=Ag、主筋ありではΣAf=Ag+Arです。ΣAfを物理断面積・体積や質量の算定に用いません。主筋位置のコンクリート応力σc(εr)に対応するΣσc(εr)Ar、弾性時のΣEcArが重複増分となり、応答・耐力を一律安全側とは認定していません。主筋とHの実干渉、主筋同士の不正な近接・重複、断面外配置は入力エラーとして拒否します。
対象の幅・せい・H寸法・板厚・分割寸法は有限正とし、Hは矩形内に収まり各板が正面積・非重複となる必要があります。材料別面積と図心は分割寸法に依存しませんが、セル中心評価によるI・応答の離散誤差は残ります。b300、D600、H400×200×8×12、主筋なしの材料別I誤差は、M–N用1/40配置で最大0.610%、M–N用1/4配置で最大25.08%です。解析要素Fiber / MultiSpringの既定37.5 mm分割では、材料別Iの最大差は2.876%、連続領域の強軸EIに対する差は−0.279%です。3.75 mmへの細分化では材料別Iの最大差が0.046%へ収束します。通常の粗い表示・ばね配置に同じ精度を保証するものではありません。
平面保持、材料ごとの応力・接線の面積積分は Taucer・Spacone・Filippou UCB/EERC-91/17(1991年、§3.2–3.5、本文pp.46–57、式3.24–3.25)を根拠とします。主筋の重複を含むn表現とn−1との違いは、日本建築学会 2008年8条公開改定案(pp.2–4、解8.12–8.14後の注)にも示されます。後者はRCの式の注記であり、SRC全履歴則の実験的精度保証ではありません。一般幾何、全RCの主筋円形控除、新たな拘束・局部座屈・付着滑りのモデルは対象外です。
実装参照:細分割と粗い配置の解像度の選択は sepika_section::mn_surface::plastic_fibers(crates/sepika-section/src/mn_surface/fibers.rs)が行います。
M–N 相関曲面
剛塑性(全塑性応力分布)の支持点法で算定します。 平面保持のひずみ速度方向を単位球面上で掃引し、各方向でひずみ符号に応じた限界応力(鋼は ±fy、コンクリートは圧縮のみ)を積分した断面力が曲面上の支持点になります。 単純降伏バネは軸バネと回転バネの連成を線形相関(\( |N|/N\text{許容} + M/M\text{許容} = 1 \))で考慮し、曲面は N 軸を頂点とする双錐になります。 耐力 0 の軸があると退化するため、参照耐力には下限を設けます(軸耐力 1.0 [N]、モーメント耐力 1.0 [N·mm])。
実装参照:sepika_section::mn_surface::{build_surface, build_simple_spring_surface}(crates/sepika-section/src/mn_surface/surface.rs)が支持点法で構築し、支持点の断面力は sepika_section::mn_surface::plastic_point(crates/sepika-section/src/mn_surface/plastic.rs)が算定します。
M–φ / M–θ 曲線(断面詳細ビュー用)
弾完全塑性のファイバー評価で、曲率上限は最外縁ひずみが降伏ひずみの約 12 倍となる曲率とし、軸力整合は 80 回の二分法で行います。
初期剛性は最初のステップの割線とします。
この曲線は断面詳細ビュー(M-N 相関曲面ビュー)に表示するもので、解析要素(ファイバー梁・マルチスプリング梁)の応答は実 FiberSection のファイバー積分が決めます。
実装参照:sepika_section::mn_surface::{m_phi_curve, m_theta_curve}(crates/sepika-section/src/mn_surface/m_phi.rs)が算定します。
RC 主筋点の配置(既定)
矩形断面の主筋点は、断面検定の有効せいと同じ sepika_core::rc_rebar_geom の規約で置きます。
- 縁から第 1 段中心: \( \text{かぶり} + \text{せん断補強筋径} + \text{主筋径}/2 \)
- 段間隔: \( \text{主筋径} + \max(25,\ 1.5\cdot\text{主筋径}) \)(配筋指針のあき)
- 円形断面の周方向主筋半径も、縁から同じ第 1 段距離を用います(ファイバー配置の多段は未対応)。整合質量では、段間隔の規約に従って各段の半径を内側へ移します
要素の定式化・剛性
この章では、各有限要素の剛性マトリクス、質量マトリクス、幾何剛性、内力回復の定式化をまとめます。 フレーム要素はティモシェンコ梁理論、板は MITC4 シェルによります。 剛域は RC規準の剛域規定(技術基準解説書の運用)、スラブ協力幅は RC規準 8 条、雑壁の断面性能算入は等価断面の力学(平行軸の定理)に基づきます。
この章の内容
- ティモシェンコ梁要素(12×12)
- トラス(ブレース)要素
- 部材荷重(等価節点力・固定端内力)
- MITC4 シェル要素
- 壁エレメントモデル(耐震壁)
- RC壁の壁脚内力と初期耐力
- 仕口パネル要素
- ばね要素(免震・制振・独立せん断・節点ばね)
- 座標変換
- 非線形梁要素のモデル化(材端集中・ファイバー・MS)
ティモシェンコ梁要素(12×12)
せん断変形を考慮したティモシェンコ梁理論に基づき、フレーム要素の 12×12 剛性を算定します。 力学の閉形式であり、V&Vで片持ち先端たわみ \( \delta = 0.417292 \) mm 等により検証しています。
本節では、各剛性項の値だけでなく、要素剛性マトリックスが全体としてどう組み上がるか(可撓部の raw 剛性 → 端部条件の反映 → 剛域変換 → 全体座標変換)を、実装(sepika_element::frame::beam)に沿って示します。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( \lambda \) | 剛域長 | mm |
| \( \lambda^{p} \) | 仕口パネル要素分のオフセット | mm |
| \( \lambda\' \) | 剛体アーム長(\( \max(\lambda,\lambda^{p}) \)) | mm |
| \( E \) | ヤング係数 | N/mm² |
| \( G \) | せん断弾性係数 | N/mm² |
| \( A \) | 断面積 | mm² |
| \( A_{s,y},\ A_{s,z} \) | 要素局所 y 方向・z 方向のせん断有効断面積(それぞれ z 軸・y 軸まわりの曲げに対応) | mm² |
| \( I_y,\ I_z \) | 要素局所 y 軸・z 軸まわりの断面二次モーメント(それぞれ弱軸側・強軸側) | mm⁴ |
| \( J \) | ねじり定数 | mm⁴ |
| \( L \) | 節点間長(raw 剛性は可撓長 \( L' \) で組む) | mm |
| \( \varphi_z,\ \varphi_y \) | 要素局所 z 軸(強軸側)・y 軸(弱軸側)まわりのせん断変形パラメータ | - |
せん断弾性係数の入力条件
弾性梁に採用するせん断弾性係数 \( G \) [N/mm²] は、正の有限値を必要とします。材料に直接入力した G を優先し、未入力の場合はヤング係数 \( E \) [N/mm²] とポアソン比 \( \nu \) から \( G=E/{2(1+\nu)} \) で算定します。通常の鋼材・RC は割り当てた主材料、SRC は主材料のコンクリート、CFT は鋼管材料の G を採用します。SRC・CFT には等価断面性能の材料条件も適用します。
線形解析で弾性梁として扱うファイバー梁・MultiSpring、および弾性梁として扱う壁上下梁にも同じ条件を適用します。
G=0、負値、NaN、正負の無限大は入力不備です。導出した G にも同じ条件を適用します。対象部材の ID と理由を示して解析前に停止し、剛性行列へ不正値を渡しません。G=0 をせん断剛性ゼロの部材指定として扱わず、微小値や既定値に補正して計算を継続しません。ねじり解放の指定によってこの条件は免除されません。
G が正の有限値でも、断面性能・材長と組み合わせた剛性算定の演算結果が有限値に収まらない場合は計算できません。例えば、ねじり剛性 GJ/L は、G と J がそれぞれ有限でも積が数値表現の上限を超える場合があります。可撓部剛性、端部解放の縮約、剛域変換を構成できない場合は、対象部材の ID・採用した弾性諸元・失敗した演算を示して解析を停止します。端部解放の条件により不安定となる架構も計算不能として扱い、剛性の上限値への置換や微小剛性の追加によって継続しません。
実装参照:sepika_element::frame::beam::BeamElement::try_new(crates/sepika-element/src/frame/beam/construct.rs)が採用材料と G を解決します。通常鋼材・RC の解析前診断は sepika_element::factory::input_check::elastic_stiffness_input_issue(crates/sepika-element/src/factory/input_check.rs)が扱います。
局所自由度と組み立ての全体像
要素は 2 節点・各節点 6 自由度の計 12 自由度をもちます。局所自由度の並びは次のとおりです(i 端・j 端の順、各端 [ux, uy, uz, rx, ry, rz])。
\[ \boldsymbol{u} = [\,u_{x,i},\,u_{y,i},\,u_{z,i},\,r_{x,i},\,r_{y,i},\,r_{z,i},; u_{x,j},\,u_{y,j},\,u_{z,j},\,r_{x,j},\,r_{y,j},\,r_{z,j}\,]^{T} \]
局所座標は \( e_x \)(i→j 材軸)・\( e_y \)(断面せい方向)・\( e_z=e_x\times e_y \) の右手系です。断面参照方向の材軸直交成分が \( e_y \) を定めます(座標変換)。せい方向への変位・せん断は y 方向ですが、その曲げモーメントと断面回転は z 軸まわりです。幅方向への変位・せん断は z 方向で、曲げモーメントと断面回転は y 軸まわりです。
本頁の強軸側・弱軸側は、断面せいを用いる曲げ・断面幅を用いる曲げの基準呼称です。断面寸法を入れ替えた場合などに、断面二次モーメントの大小から局所軸を自動的に並べ替える意味ではありません。曲げの2面を非連成として扱うモデルであり、すべての断面形状でこれらの軸が主軸となることを意味しません。
保存断面性能と要素局所軸の対応
断面諸量とせん断有効断面積で示す保存断面性能の添字と、本頁の要素局所軸の添字は区別します。本頁の \( I_y,I_z \) は回転軸、\( A_{s,y},A_{s,z} \) はせん断力の方向を表します。
| 曲げの基準呼称 | 曲げ面 | 変位・せん断力の方向 | 回転・モーメントの軸 | 本頁の要素性能 | 保存断面性能 |
|---|---|---|---|---|---|
| 強軸まわり | xy | y(せい方向)、\( u_y,Q_y \) | z、\( r_z,M_z \) | \( I_z,A_{s,y} \) | Iy、as_z |
| 弱軸まわり | xz | z(幅方向)、\( u_z,Q_z \) | y、\( r_y,M_y \) | \( I_y,A_{s,z} \) | Iz、as_y |
例えば幅 b・せい d の矩形では、本頁の \( I_z=bd^3/12 \)、\( I_y=db^3/12 \) です。保存断面性能の Iy は前者であり、本頁の \( I_y \) へ同じ添字のまま代入しません。以下の剛性式では、剛性補正を反映した要素性能を用います。
実装参照:BeamElement::resolve_properties(crates/sepika-element/src/frame/beam/construct.rs)が保存断面性能の (iy,iz,as_y,as_z) を要素局所の (iz,iy,as_z,as_y) に対応させます。
raw 剛性は次の 4 つの独立ブロックに分解できます(それ以外の成分は 0)。
| ブロック | 関与自由度(index) | 剛性 |
|---|---|---|
| 軸(伸縮) | \( u_{x,i},\,u_{x,j} \)(0, 6) | \( EA/L \) |
| ねじり | \( r_{x,i},\,r_{x,j} \)(3, 9) | \( GJ/L \) |
| z 軸まわり曲げ(強軸側・xy 面) | \( u_{y,i},\,r_{z,i},\,u_{y,j},\,r_{z,j} \)(1, 5, 7, 11) | 4×4 |
| y 軸まわり曲げ(弱軸側・xz 面) | \( u_{z,i},\,r_{y,i},\,u_{z,j},\,r_{y,j} \)(2, 4, 8, 10) | 4×4 |
節点自由度の局所剛性 \( K_{\text{local}} \) は、次の 4 段で組み立てます(実装 sepika_element::frame::beam::BeamElement::local_stiffness)。
- 可撓長の raw 剛性:節点間長 \( L \) から両端の剛体アーム長を除いた可撓長 \( L' = L - \lambda'_i - \lambda'_j \) を用い、両端固定(fixed–fixed)の 12×12 raw 剛性を組みます(可撓部の raw 剛性(両端固定・12×12))。
- 端部条件の反映:剛接は厳密に扱い(近似ばねを用いない)、ピン・半剛の端のみ要素端回転を内部自由度へ分離して静縮約し 12×12 に戻します(端部条件(剛接・ピン・半剛)の反映)。線材(梁・柱)は既定で i 端のねじれも解放します(部材のねじり剛性の既定モデル化(i 端ねじれ解放))。
- 剛域変換:可撓端の自由度を剛体アームで節点自由度へ写します(剛域)。
- 全体座標変換:\( K_{\text{global}} = R^{T} K_{\text{local}} R \)(全体座標系への変換)。
仕口パネル要素を設けた接合部では、仕口パネル要素分のオフセットが剛体アーム長に反映されるため、1.〜3. の各段階に反映されます(仕口パネル要素の剛域長への反映)。
可撓部の raw 剛性(両端固定・12×12)
以下の \( L \) は raw 剛性を組む長さを表し、剛域または仕口パネル要素分のオフセットがあれば可撓長 \( L' = L - \lambda'_i - \lambda'_j \)、なければ節点間長そのものです(軸剛性のみ 剛域の補正で \( EA/L \)(節点間長基準)へ戻します)。
算定式
せん断パラメータ:
\[ \varphi_z = \frac{12 \cdot E \cdot I_z}{G \cdot A_{s,y} \cdot L^2} \]
\[ \varphi_y = \frac{12 \cdot E \cdot I_y}{G \cdot A_{s,z} \cdot L^2} \]
曲げ係数:
\[ a_z = \frac{E \cdot I_z}{(1+\varphi_z) \cdot L^3} \]
\[ a_y = \frac{E \cdot I_y}{(1+\varphi_y) \cdot L^3} \]
軸・ねじりの 2×2 ブロック(自由度 \( [\,\cdot_i,\,\cdot_j\,] \)):
\[ K_{\text{axial}} = \frac{EA}{L}\begin{bmatrix} 1 & -1 \\ -1 & 1 \end{bmatrix}, \qquad K_{\text{tors}} = \frac{GJ}{L}\begin{bmatrix} 1 & -1 \\ -1 & 1 \end{bmatrix} \]
z 軸まわり曲げ(強軸側・xy 面)の 4×4 ブロック(自由度 \( [\,u_{y,i},\,r_{z,i},\,u_{y,j},\,r_{z,j}\,] \)):
\[ K_{xy} = \begin{bmatrix} 12 a_z & 6 a_z L & -12 a_z & 6 a_z L \\ 6 a_z L & (4+\varphi_z) a_z L^2 & -6 a_z L & (2-\varphi_z) a_z L^2 \\ -12 a_z & -6 a_z L & 12 a_z & -6 a_z L \\ 6 a_z L & (2-\varphi_z) a_z L^2 & -6 a_z L & (4+\varphi_z) a_z L^2 \end{bmatrix} \]
y 軸まわり曲げ(弱軸側・xz 面)の 4×4 ブロック(自由度 \( [\,u_{z,i},\,r_{y,i},\,u_{z,j},\,r_{y,j}\,] \))です。並進-回転結合項の符号が xy 面と逆になります(回転 \( r_y \) の向きによる規約):
\[ K_{xz} = \begin{bmatrix} 12 a_y & -6 a_y L & -12 a_y & -6 a_y L \\ -6 a_y L & (4+\varphi_y) a_y L^2 & 6 a_y L & (2-\varphi_y) a_y L^2 \\ -12 a_y & 6 a_y L & 12 a_y & 6 a_y L \\ -6 a_y L & (2-\varphi_y) a_y L^2 & 6 a_y L & (4+\varphi_y) a_y L^2 \end{bmatrix} \]
実装参照:sepika_element::frame::beam::BeamElement::local_stiffness_raw(crates/sepika-element/src/frame/beam/stiffness.rs)が算定します。
せん断有効断面積 \( A_{s,y},\,A_{s,z} \) が 0 のときは、要素構築時(beam/construct.rs)に \( \text{rect_shear_area}(A) = 5A/6 \)(sepika_core::model::rect_shear_area)へフォールバックした値が用いられます。
この raw 剛性は常に両端固定で組み、端条件(ピン・半剛)は 端部条件(剛接・ピン・半剛)の反映の回転ばねで与えます。
端部条件(剛接・ピン・半剛)の反映
部材端の剛接・ピン・半剛接を要素剛性へ反映します。剛接は厳密に扱い(近似ばねを用いない)、ピン・半剛の端だけ要素端回転を内部自由度へ分離して静縮約します。
算定式
- 剛接(Fixed):「節点回転 = 要素端回転」を厳密に満たすため、要素端回転をそのまま節点回転自由度に残します(内部自由度・ばね不要)。raw 剛性は回転が節点自由度に乗っているので、両端剛接ならその raw 剛性そのものが要素剛性となります。
- ピン・半剛:その端の要素端回転 \( r^{e} \) を内部自由度へ分離し、節点回転 \( r \) との間に回転ばね \( k_s \) を挟みます。
\[ \begin{bmatrix} k_s & -k_s \\ -k_s & k_s \end{bmatrix} \quad(\text{自由度 } [\,r,\ r^{e}\,]),\qquad k_s = \begin{cases} 0 & (\text{Pinned:ピン}) \\ k_\theta & (\text{SemiRigid:半剛、} k_\theta\ \text{[N·mm/rad]}) \end{cases} \]
分離した内部回転自由度(本数 = 非剛接の回転自由度数、0〜6)を静縮約して 12×12(節点自由度のみ)へ戻します。
\[ K^{*} = K_{aa} - K_{ab} \cdot K_{bb}^{-1} \cdot K_{ba} \]
ここで \( a \) は残す 12 節点自由度、\( b \) は消去する内部回転自由度です。剛接端は \( b \) に含めない(=内部自由度を作らない)ため、解放する自由度が 1 つもない場合に限り \( b \) が空となり raw 剛性がそのまま返ります。
- ピン(\( k_s = 0 \)):節点回転と要素端回転が完全に切れ、その端は曲げモーメントを節点へ伝えません。内部回転を消去した厳密なモーメント解放となり、当該節点回転への当要素の剛性寄与は厳密に 0 になります。
- 剛接:内部自由度を作らないため、raw の回転剛性がそのまま節点回転へ伝わります(厳密。ペナルティ近似・チューニング係数を用いません)。
- 半剛(\( k_s = k_\theta \)):接合部の回転剛性 \( k_\theta \) に応じて部分的にモーメントを伝えます(有限ばねは近似ではなくモデルそのものです)。
実装参照:sepika_element::frame::beam::BeamElement::condense_end_springs(crates/sepika-element/src/frame/beam/stiffness.rs)が算定します。剛接は厳密です(解放する回転自由度が 1 つもない場合に限り、静縮約を行わず raw を返します)。
ねじり剛性を持たない部材(\( J \le 0 \))の \( r_x \) は、端条件がピン・半剛でも解放しません。解放しても縮約行列 \( K_{bb} \) の対角がゼロになって特異化するだけで、モーメント解放としての意味を持たないためです(非線形梁要素 非線形梁要素の材端条件(ピン・半剛) と同じ規則)。
部材のねじり剛性の既定モデル化(i 端ねじれ解放)
床と一体になる大梁のねじり剛性は設計上期待しないため、**線材(梁要素。柱を含む)の i 端のねじれ(材軸まわり回転 \( r_x \))を既定でピン(解放)**として要素剛性を組みます。解放は 端部条件(剛接・ピン・半剛)の反映 と同じ回転ばね \( k_s = 0 \) の静縮約で厳密に行い、結果として
- 解放端のねじりモーメントは \( M_x = 0 \)
- ねじりモーメントは分布ねじりがない部材では材長方向に一定
であるため、部材全長で \( M_x = 0 \)(=ねじりを負担しない)となります。
対象:2 節点の線材(梁・ファイバー梁・MS 梁・ブレース)で、梁・柱の区別はしません。壁・シェル・仕口パネル要素・ばね類はねじり自由度の概念を持たないため対象外です。
設定:準備計算パネルの「部材のモデル化」にあるチェックボックス「部材 i 端のねじりをピン(梁・柱)」で建物一律に切り替えます(既定は ON)。OFF にすると全部材でねじり剛性 \( GJ/L \) を保持します。剛性が変わる設定のため、切り替えると解析結果は再計算が必要になります。
解放しない部材(特異化の回避)
ねじりを解放した部材は材軸まわり回転に剛性を持たなくなるため、その回転を他に拘束するものがない節点では全体剛性行列が特異になります。そこで、部材の両端節点それぞれについて材軸 \( e_x \) まわりの回転が次のいずれかで拘束されることを確かめ、確かめられない部材は解放せず、入力した断面のねじり剛性を保持します。この判定は接合節点での局所的な接続条件であり、架構全体の安定性を保証しません。
| 拘束の経路 | 判定 |
|---|---|
| 非平行な線材の曲げ | その節点に、材軸と平行でない線材が 1 本以上接続している。材軸に直交する曲げ剛性を持つ接続として数えるが、相手端の支持まで含めた架構全体の拘束は保証しない |
| 線材以外の要素 | その節点に壁・シェル・ばね・免震・ダンパーのいずれかが接続している(回転剛性を与え得るため拘束ありとみなす)。仕口パネル要素はこの拘束経路に数えない |
| 支点拘束 | 材軸方向の成分を持つ回転自由度(例: 材軸が X なら \( R_x \))がすべて固定されている |
| 支点ばね | 上記と同じ回転成分のばね定数がすべて正である |
平行な線材(一直線に続く同方向の部材)は、材軸まわりをねじりでしか拘束できず、そのねじりも同じ既定で解放され得るため、拘束の経路には数えません。
剛床(Constraint::RigidDiaphragm)も判定に含めません。剛床が拘束するのは面内 3 成分(\( U_x, U_y, R_z \))で、スレーブ節点の \( R_z \) が独立自由度でなくなる一方、その拘束はマスター節点の \( R_z \) へ集約されるだけです。「柱 1 本だけが載る剛床」ではマスターの \( R_z \) を止めるのがその柱のねじりだけになるため、剛床を「拘束あり」とみなすと特異化を見逃します。
この規則により、解放されない典型例は次のとおりです。
- 大梁・柱を中間節点で分割し、その節点に直交部材が取り付かない場合:分割された 2 本は一直線(平行)で、他に拘束がないため両方とも解放されません。
- 片持ち梁(跳ね出し)の先端節点を持つ部材:先端には他の部材も支点もないため解放されません。
- 柱脚をピン支点(並進のみ拘束)とし、基礎梁が取り付かない柱:柱脚で材軸(鉛直)まわりの回転が拘束されないため解放されません。
固定柱 1 本と片持ち梁 1 本だけの立体架構では、柱頭に直交梁が接続するため柱のねじりが解放され、梁を含む上部全体が柱軸まわりに剛体回転できる場合があります。剛床はこの全体回転を止めません。この場合、階・剛床の入力が揃っていても特異行列として解析を停止します。
ねじりで釣り合わせる構造計画を採用する場合は、ねじりを解放する設定を OFF とし、部材のねじり抵抗を含めて成立性を確認してください。応答・部材間の応力配分が変わるため、ねじり剛性の保持を一律に安全側とみなすことはできません。特異を避ける目的だけで実在しない支点や回転拘束を追加しないでください。
確認方法:解放されなかった部材は、準備計算タブの「ねじり解放」に部材 ID・種別・原因となった節点の一覧として表示されます。個別の部材については、結果表示のモデル化ビューで部材にポインタを重ねると、解放されている場合に「ねじれ: i 端ピン(部材全長で Mx=0)」が表示されます。なお、ねじり剛性をもともと持たない部材(断面の \( J \le 0 \)、トラス扱いのブレース)は解放してもしなくても剛性が 0 のため、一覧には含めません。
実装参照:sepika_element::frame::beam::{i_end_torsion_release, i_end_torsion_release_skip}(適用判定と理由)と sepika_element::frame::beam::BeamElement::condense_end_springs(弾性梁の静縮約)・sepika_element::frame::fiber::resolve_end_releases(非線形梁)です。
剛域
部材端の剛域を扱うため、可撓長 \( L' = L - \lambda'_i - \lambda'_j \) で 可撓部の raw 剛性(両端固定・12×12)〜端部条件(剛接・ピン・半剛)の反映の剛性を求めたうえで、可撓端の自由度を剛体アームで節点自由度へ写します。 剛域長は RC規準の剛域規定(部材フェイスから部材せいの 1/4 内側までを剛域とする取り方)に基づきます。
剛域を設ける条件
剛域を設けるのは、その節点に集まる柱・大梁がすべて RC/SRC 系のときだけです。1 本でも S・CFT 系の柱または大梁が集まる仕口では、その端の剛域長を 0 とします。S 造の仕口は剛域ではなく仕口パネル要素(仕口パネル要素の剛域長への反映)でモデル化するため、剛域も与えると接合部を二重に剛く評価することになります。
構造種別(S・CFT 系か RC・SRC 系か)は構造種別の判定によります。断面形状ではなく材料の区分で決まるため、H 形のコンクリート部材は RC として扱われます。判定の対象は柱・大梁(ElementKind::Beam)で、ブレース・壁・仕口パネル要素と、解析要素ではない二次部材(小梁・間柱)は対象外です。
算定式(剛域長 λ)
上の条件を満たす端について(負は 0):
\[ \lambda = L_f - D/4 \]
危険断面フェイス距離(剛域を設けない端でも常に算定):
\[ \text{face} = L_f \]
- \( L_f \) は節点から部材フェースまでの距離です。仕口部で直交する部材の最大せいの半分に、その部材に取り付く壁の張り出しを加えた値になります(下記「壁の考慮」)。壁がなければ \( L_f = D_{\text{直交}}/2 \) です。直交判定は軸内積 < 0.707(概ね 45°以上)とします。
- \( D \) は当該部材のせいです(直交部材のせいではありません)。壁を考慮する場合は取り付く壁を含めた値になります。
- \( L_f \) は剛域長と危険断面フェイス距離で共有します。ですが、壁を含めるのは剛域長のほうだけです(下記「壁の考慮」)。
壁の考慮
既定では、剛域長を求める \( L_f \) と \( D \) に取り付く壁を含めた寸法を用います。柱には袖壁が材軸に直交する水平方向へ、梁には腰壁・垂壁が鉛直方向へ張り出します。その分だけフェースが外側へ移り、部材せいが増します。
壁の張り出しは「壁の長さ − 部材せい/2」です。壁の長さは、柱に対しては袖壁長さ、梁に対しては腰壁・垂壁の高さを指します。いずれも構造階高・軸間距離の 1/2 の位置における包絡開口までの距離として評価し、開口がその位置を跨がない場合は壁を両側の部材で折半します。
- 対象は現場打ちコンクリート壁で厚さ 100 mm 以上のものです。耐震壁として成立するか否かを問いません(耐震壁の板厚条件 120 mm とは別の閾値です)。
- **耐震スリットを入れた辺の部材には、壁を算入しません。**その部材とは縁が切れているためです。柱際が切れていればその柱へ袖壁として、梁際が切れていればその梁へ腰壁・垂壁として算入しません。辺ごとに独立に効くので、柱際だけを切った壁でも梁へは算入されます。
- **反対側の梁際が切れている壁は、上下で折半しません。**残った 1 本の梁が全高を負担します(三方スリットの壁を、その梁の垂れ壁・腰壁として扱う形です)。
- 部材せい \( D \) は向きを持たないため、両側に取り付く壁の長さが異なる場合は長い方を基準にします。
- 部材フェース \( L_f \) は向きを持ちます。柱の片側だけに袖壁がある場合、フェースが外側へ移るのは袖壁が張り出している側に取り付く梁だけです。反対側の梁のフェースは移りません。
- **危険断面フェイス距離には壁を含めません。**壁の考慮は剛域の規定であり、危険断面位置は柱フェースで決まる幾何量だからです。フェイス距離は RC/SRC 梁の自重の内法長(地震用重量・層データの生成)や数量積算にも用います。ここに壁を含めると、壁の張り出し分だけ梁の自重が過小になります。
設定:解析タブの「部材のモデル化」にあるチェックボックス「剛域の算定で壁を考慮する」で建物一律に切り替えます(既定は ON)。OFF にすると部材の原断面だけで算定します。剛性が変わる設定のため、切り替えると解析結果は再計算が必要になります。
両端の剛域が重なる場合
壁の張り出しが大きい場合や短スパンの部材では、両端の剛域長の合計が材長以上になることがあります。この場合は、材長の中点から部材せいの 1/4 の距離までを剛域とします。
\[ \lambda_i = \lambda_j = \max(0,\ L/2 - D/4) \]
算定式(剛域変換)
可撓端変位 \( \boldsymbol{u}_{\text{flex}} \) と節点変位 \( \boldsymbol{u}_{\text{node}} \) を、材軸方向オフセット \( \lambda'_i,\,\lambda'_j \) の剛体アームで関係づけます。
\[ \boldsymbol{u}_{\text{flex}} = T_r\, \boldsymbol{u}_{\text{node}}, \qquad K_{\text{node}} = T_r^{T}\, K_{\text{flex}}\, T_r \]
\( T_r \) は単位行列に、剛体アームによる並進-回転結合の非零成分を加えたものです(それ以外は恒等)。
剛体アームの運動学 \( \boldsymbol{u}_{\text{flex}} = \boldsymbol{u}_{\text{node}} + \boldsymbol{\theta}_{\text{node}} \times \boldsymbol{r} \)(可撓端は i 端で節点から材軸内側へ \( \boldsymbol{r}_i = (+\lambda'_i, 0, 0) \)、j 端で \( \boldsymbol{r}_j = (-\lambda'_j, 0, 0) \))を成分展開すると、非零成分は次になります。
\[ (T_r)_{u_{y,i},\,r_{z,i}} = +\lambda'_i,\quad (T_r)_{u_{z,i},\,r_{y,i}} = -\lambda'_i,\quad (T_r)_{u_{y,j},\,r_{z,j}} = -\lambda'_j,\quad (T_r)_{u_{z,j},\,r_{y,j}} = +\lambda'_j \]
すなわち、可撓端の並進は「節点並進 ± アーム長 × 節点回転」で表され(例:\( u_{y,i}^{\text{flex}} = u_{y,i} + \lambda'_i\, r_{z,i} \))、節点回転による付加変位が剛域を通じて伝わります。剛体回転(節点回転=弦回転)では可撓端に相対たわみが生じず、内力はゼロになります。
軸・ねじりの扱い(剛域は曲げのみを剛とする):
- 剛域は曲げ(せん断を含む)のみを剛とする方針とし、軸・ねじりは剛域で増大させません。可撓長 \( L' \) で組むと \( EA/L',\ GJ/L' \) となるため、軸断面積・ねじり定数を \( A \cdot (L'/L),\ J \cdot (L'/L) \) に補正して \( EA/L,\ GJ/L \)(いずれも節点間長基準)へ揃えます。剛域なしでは補正 1 です。
- 剛域変換 \( T_r \) は回転・軸方向自由度に作用しないため、補正後の軸・ねじり剛性がそのまま残り、曲げ(xy・xz 面)のみが剛体アームで剛域化されます。
剛域長・剛体アーム長の解決:
- 剛域長は負値を 0 に丸めます。自動算定では剛域長の両端合計が節点間長以上になる場合に「材長の中点から部材せいの 1/4」へ丸めます。解析では剛域長と仕口パネル要素分のオフセットの大きい方を剛体アーム長とし、その両端合計が節点間長以上になる場合は、可撓長を正に保つため剛体アームを両端とも 0 とし、剛域なしとして扱います。
実装参照:危険断面フェイス距離は sepika_core::face_distance が求めます。接合関係と断面せいだけで決まる幾何量のため、剛域長とは独立に算定でき、自重・数量積算のように剛域と無関係な用途からも直接求められます。剛域長は sepika_element::frame::beam::auto_rigid_zones が求め、剛体アームの変換 \( T_r \) と剛体アーム長の解決を sepika_element::frame::rigid_arm(弾性梁とファイバー梁で共有)が行います。
直交判定は \( \text{軸内積} < 0.707 \)(概ね 45°以上)とします。組立順は「可撓長で raw 剛性 → 端部ばね静縮約 → 剛域変換」とします。
非線形梁要素(ファイバー・MS)の剛域は 非線形梁要素の剛域 を参照してください。
仕口パネル要素の剛域長への反映
仕口パネル要素を設けた接合部では、部材は節点そのものではなく、仕口パネル要素の面で接合します。節点から接合面までの距離は剛体アームそのものなので、剛体アーム長へ算入します。
剛体アーム長は、剛域長と仕口パネル要素分のオフセットの大きい方とします。
\[ \lambda'_k = \max(\lambda_k,\ \lambda^{p}_k)\quad (k=i,j) \]
ここで \( \lambda^{p}_k \) が仕口パネル要素分のオフセットで、接合部の物理的な半寸法です(\( k=i,j \))。
| 部材 | 接合する面 | オフセット |
|---|---|---|
| はり(水平材) | 採用柱の実接合面 | 柱断面・向き・梁材軸から求める実接合面までの材軸上距離 |
| 柱(鉛直材) | 梁フェース | 梁せいの最大値 / 2 |
梁端の面の定義と適用範囲は部材端の接合面とオフセットを正とします。面が一意に決まらない対象は、距離を補完せず準備計算・解析を停止します。
剛域長 \( \lambda_k \) と仕口パネル要素分のオフセット \( \lambda^{p}_k \) は入力・表示上は区別しますが、両方を加算したり別々に控除したりはしません。剛体アーム長・可撓長・剛域変換には、常に \( \lambda'_k = \max(\lambda_k,\lambda^{p}_k) \) を用います。剛域長の手動指定がオフセットより大きければその値が、オフセットの方が大きければその値が剛体アーム長になります。
準備計算の「剛域」表には、剛域長 \( \lambda_i \)・仕口パネル要素分のオフセット \( \lambda^{p}_i \)・危険断面フェイス距離を別々の列で表示します。
このオフセットは、断面算定の危険断面位置(剛域のフェイス距離)とは独立な量として扱います。危険断面位置は設計上の評価位置であって、部材が実際にどこで接合するかとは別に定まるためです。
可撓長は \( L' = L - \lambda'_i - \lambda'_j \) となり、剛性の組み立てだけでなく、幾何剛性(幾何剛性・整合質量)・せん断降伏の内法高さ・座屈長さ係数 \( K \) の剛度比 \( G \)(柱の座屈長さ係数 K)も同じ可撓長を用います。剛域のとおり軸・ねじり剛性は節点間長基準のままなので、仕口パネル要素を設けても軸剛性・ねじり剛性は変わりません。
仕口パネル要素は、柱材軸の直交面へ投影した全体 X・Y 基底による2自由度を持ちます。柱の強軸・弱軸ごとのせん断剛性と、部材へ伝える3次元のせん断回転・内力の変換、対象接合部の判定は 仕口パネル要素 を参照してください。
実装参照:オフセットの算定を sepika_core::panel_zone::panel_connection_offset、モデルへの書き込みを sepika_element::springs::panel_gen::apply_auto_panel_zones が行い、剛体アーム長を RigidZone::rigid_length_i/rigid_length_j が返します。
準備計算で表示する剛域比は、剛体アーム長の合計を節点間長で除した値です。
\[ \text{剛域比} = \frac{\lambda'_i + \lambda'_j}{L} \]
全体座標系への変換
局所 12×12 剛性を全体座標へ回します。フレーム要素は \( e_x = (p_j - p_i)/L \) とし、参照ベクトルを直交化して \( e_y,\,e_z \) を構成します(詳細は 座標変換)。
\[ K_{\text{global}} = R^{T} \cdot K_{\text{local}} \cdot R \]
\( R \) は 3×3 方向余弦を 4 ブロック並べた 12×12 のブロック対角行列です。
実装参照:sepika_element::frame::beam::BeamElement::tangent_stiffness(crates/sepika-element/src/frame/beam/behavior.rs)は全体系の 12×12 を返す契約です(シェルと同じ)。これを欠くと、局所系と全体系が一致しない部材(鉛直柱・任意方向材・非対称断面 \( I_y \ne I_z \))で組立 K が誤ります。座標変換自体は sepika_element::transform(crates/sepika-element/src/transform.rs)です。
幾何剛性・整合質量
P-Δ 効果の線形化幾何剛性と、軸・曲げ・ねじりを含む整合質量を算定します。 根拠は運動エネルギーの積分であり、V&Vで理論値と行列の性質を検証しています。
算定式
幾何剛性 Kg(標準ビーム幾何剛性、係数 \( 6/5 \)、\( L'/10 \)、\( 2L'^2/15 \)、\( -L'^2/30 \)):
\[ c = N/L' \]
- 幾何剛性は可撓長 \( L' \) で組み、弾性剛性と同じ剛域変換 \( T_r \)(剛域)を施して節点自由度へ写します。P-δ は可撓部でのみ生じ、剛域は剛体アームとして働きます。剛域なし(\( L'=L,\ T_r=I \))では全長 \( L \) の幾何剛性に一致します。軸力 \( N \) は引張正で、最後に全体座標へ回します。
- 端部条件(ピン・半剛)は幾何剛性には反映しません(線形化 P-Δ の実務的簡略化)。
質量特性
\[ \mu = \int_A \rho\,dA, \qquad \mu I_y = \int_A \rho z^2\,dA, \qquad \mu I_z = \int_A \rho y^2\,dA \]
- 質量は節点間の全長 \( L \) で組みます。剛域を含む部材は、可撓部の質量を剛体アームで変換し、剛域の分布質量を加えることで全長の質量を保存します。
- 単位長さ当たり質量 \( \mu \) は [t/mm]、質量二次モーメント \( \mu I_y,\mu I_z \) は [t·mm] とします。
- 各材料領域の密度 \( \rho \) は断面種別ごとに次の優先順位で決めます。RC は総断面へ γRC、SRC は総断面へ γSRC、CFT は鋼管領域へ
steel_materialのMaterial.density、充填コンクリートのコア領域へ γC を適用します。それ以外の形状付き断面は主材料のMaterial.densityを用います。形状付き RC/SRC/CFT はMaterial.fcが未設定または不正ならMaterial.densityへフォールバックせず入力エラーとします。 - RC は梁・矩形柱・円形柱(
RcBeamRect・RcColumnRect・RcColumnCircle)とも総断面の幾何特性へ γRC を一様に適用します。配筋の配置・収まりは質量入口では検証せず、断面・耐力・入力検証の経路で扱います。SRC(SrcBeamRect・SrcColumnRect)も同様に総断面へ γSRC を適用します。 - RC/SRC の主筋・せん断補強筋・内蔵鉄骨の材料は質量計算では参照しません。これらの未設定や区分不正は、耐力・剛性側の材料検証で扱います。
- 材軸まわりの回転慣性は \( \mu I_p = \mu I_y + \mu I_z \) とします。ねじり剛性 \( GJ/L \) のねじり定数
Jは質量用の回転慣性へ流用しません。 - 軸方向と材軸まわり回転は線形形状関数、各曲げ面はせん断変形係数を含む Timoshenko 形状関数から質量行列を積分します。
- 弾性梁・ファイバー梁・MultiSpring の集中質量と整合質量は、同じ幾何形状と採用密度から単位長さ質量を求めます。ファイバーの面積総和・分割数・積分点・材料履歴・接線は質量源に用いません。集中質量は総質量 \( m=\mu L \) の半分を各端の各並進自由度へ配分し、回転自由度は0とします。整合質量は同じ単位長さ質量と断面回転慣性を積分します。行列成分や固有値の完全一致は要求しません。
質量を使わない静的計算は、質量だけの不備で停止しません。必要な幾何・剛性材料の不備は別途拒否します。要素質量を使う解析では、集中質量・整合質量の双方で、不正な寸法・密度・必要材料・未解決の角R等を対象要素IDと理由付きで拒否し、保存面積×登録密度・ファイバー面積・0質量に置き換えません。明示的な有限・非負入力として成立する0質量は許容します。節点質量だけを採用する質点のみ方式では要素質量の検査を要求しません。
自重と慣性質量の単位長さ物理質量は同じ幾何・密度を使用します。自重の支持先・階帯への分配、算定長、設計重量の採用条件はそれぞれの契約を維持します。
普通SRCの幅300×せい600×長さ3000 mm、包括単位重量25 kN/m³では、密度は \( 25/9.80665\times10^{-9} \) t/mm³、総質量は1.3766168875202032 t、集中質量の各端各並進は0.6883084437601016 tです。登録密度2.4×10⁻⁹ t/mm³による1.296 tとは同値ではありません。各方向の剛体並進に対する質量はそれぞれ総質量mであり、3方向合計3mを部材総質量と呼びません。
- 形状付き RC/SRC/CFT では
Fcを必須とします。未設定または不正な場合は質量を算定せず入力エラーとし、主材料のMaterial.densityは代替値にしません。 - 形状のない断面は、保存された断面諸元 A・Iy・Iz と主材料の
Material.densityを入力にします。幅×せいのファイバーメッシュ面積は質量算定に用いません。断面諸元が正なのに主材料が未設定の場合は質量を 0 と解釈せず、入力エラーとします。Section::zeroのように断面諸元がすべて 0 の断面だけは意図的な無質量として許可します。 - 端部解放を含む質量は、剛性と同じ拡大自由度(節点自由度と解放端回転)で組みます。初期弾性剛性から ( S=-K_{bb}^{-1}K_{ba} )、( R=[I;S] ) を求め、拡大質量 ( \bar{M} ) を ( M=R^T\bar{M}R ) として 12×12 へ縮約します。回転ばねは無質量です。
実装参照:sepika_element::frame::beam::BeamElement::mass_matrix(crates/sepika-element/src/frame/beam/behavior.rs)が初期弾性剛性による端部解放の質量縮約を行います。縮約と Timoshenko 質量の共通実装は sepika_element::frame::prismatic::{condense_end_releases_with_mass, consistent_mass_timoshenko}、剛域の質量変換・追加は sepika_element::frame::rigid_arm::{transform_mass, rigid_zone_mass} です。K_{bb} が特異な場合は解放条件を満たす質量を構成できないため、明示的に失敗します。材料領域からの質量特性は sepika_core::model::{Model::element_mass_properties, SectionMassProperties::from_section} が入口です。
剛性計算上の付加(協力幅・壁エレメント上下梁・雑壁)
次の剛性補正を実装しています(可撓部 raw 剛性の断面性能側に反映します)。
-
スラブ協力幅による強軸曲げ剛性増大(矩形RC大梁): 囲まれた床板群が各側で梁全長を覆い、 各床板上面と梁上端が一致する水平・一定断面の梁を対象とします。床領域の存在だけでは算入せず、 支持境界に割り当てられた実床板を使います。片側全体が版なしならその側を省略し、両側とも床板がなければ倍率1です。 未設定・参照切れを版なしとして扱いません。左右の厚さ・幅・分割点はそれぞれ独立です。 各側の対向平行梁との内法距離 \(a\)(中心線間距離から自梁・対向梁の幅の半分ずつを控除)と、 剛域控除前の元構造スパン \(L\) から協力幅を求めます。同じ側の内法距離と協力幅は全区間で一定であることを必要とします。
\[ b_a=\begin{cases}(0.5-0.6a/L)a & a<L/2\\0.1L & a\ge L/2\end{cases} \]
厚さは各側で取付区間長による加重平均を使います。 支持区間の端位置を元スパン上の無次元位置 \(u_{0,sj},u_{1,sj}\)、実厚を \(t_{sj}\) とし、剛性算定用の床板平均厚を次式で定義します。
\[ l_{sj}=|u_{1,sj}-u_{0,sj}|L,\qquad \overline{t}_s=\frac{\sum_j l_{sj}t_{sj}}{L},\qquad \sum_j l_{sj}=L \]
同側の矩形床板区間が隙間・正長の重複なく全長を覆うことを確認し、端位置の共有は重複としません。 各実厚は個別に \(0<t_{sj}\le D\) と有限性を検査し、段差・不正値を平均で隠しません。 協力幅式のスパンは各床板の区間長に置き換えません。床板ありと版なしの材軸方向混在、全長欠落、 同側の幅変化、未設定・未解決・非有限幾何、取り付く床板、傾斜・上端高さが変わる梁は理由付きで診断します。
梁下端を高さ0として、梁矩形 \(b\times D\) と梁幅外側の左右フランジ矩形 \(b_{a,l}\times\overline{t}_l\)、\(b_{a,r}\times\overline{t}_r\) に重複なく分解します。 梁の図心は \(D/2\)、各フランジの図心は \(D-\overline{t}_s/2\) です。 平行軸の定理で図心回りの強軸断面二次モーメントと倍率を求めます。
\[ A=\sum_j A_j,\quad z_G=\frac{\sum_j A_jz_j}{A},\quad I=\sum_j\{I_j+A_j(z_j-z_G)^2\},\quad I_0=\frac{bD^3}{12},\quad\phi_2=I/I_0 \]
\(b,D\) は正の有限値、\(b_{a,s}\) は非負の有限値を必要とします。最大厚への集約、梁せいへの切詰め、 建物一律厚による補完を各床板の入力厚に行いません。 検証済みの床板厚から求めた平均厚だけは、丸め誤差で個別厚の最小値・最大値の範囲を外れないようにします。 これは不正な個別入力厚の補正ではありません。平均するのは厚さであり、I・倍率・柔性の平均ではありません。 倍率は供給された元強軸性能へ乗じます。EA・弱軸曲げ・せん断・ねじり、材軸・支持条件、質量・設計自重・数量を変更しません。 SRC梁・S合成梁の算定方式はこの厚さ平均の対象外です。
厚さの長さ平均は危険側になり得る近似です。 区間別変形を精算する方式ではなく、剛性を過大、変形を過小に評価し得ます。 b300/D600 mm・左右協力幅合計1200 mmで、前半の実厚50 mm、後半250 mmなら平均厚150 mmから I=10293750000 mm⁴となります。区間別Iは8815625000/10407812500 mm⁴で、一定M・一定Eに対して 回転を一致させる等価Iは9545782024.709421 mm⁴です。この例では剛性約7.84%過大、回転約7.27%過小となります。 これは一般の誤差上限ではありません。厚さが一定なら、区間の分割だけでは算定倍率は変わりません。
-
S 造合成梁の剛性(H 形鋼大梁): スラブが取り付く水平な H 形鋼梁は、 スラブを考慮した換算断面剛性 I(スラブ上端からの図心 \( g = \frac{{}_c E \cdot B \cdot t \cdot (t/2) + {}_s E \cdot {}_s A \cdot (t + {}_s H/2)}{{}_c E \cdot B \cdot t + {}_s E \cdot {}_s A} \) による)と鉄骨単独 剛性 sI の平均 \( (I + {}_s I)/2 \) を強軸剛性に採用します(各種合成構造設計指針の 完全合成梁剛性を安全側に丸めた平均法)。協力幅 B は RC 梁と共通の RC規準 8 条です。デッキ高さは 0、スラブコンクリートは Fc21 の標準仮定とします。 実装は
sepika_element::frame::beam::stiffness_factors::composite_beam_stiffness_factorです。 -
壁エレメントモデル上下大梁の剛性倍率: 既定 100 倍(
WALL_GIRDER_STIFF_FACTOR。 壁の剛性を四隅節点へ伝えるための実務的モデル化)。 -
フレーム内雑壁(袖壁・腰壁・垂壁): 平行軸の定理で周辺部材の断面性能に合成します (
compose)。せん断は \( A_s \mathrel{+=} \sum a_w/1.2 \)。「腰壁・垂壁のヤング係数は母材と同じ」 の仮定によるため、対象はコンクリート系(RC/SRC)部材のみとします(S 造部材への 無換算合成はしません)。実装はsepika_element::frame::beam::BeamElement::new(crates/sepika-element/src/frame/beam/construct.rsのローカル処理compose)です。算入する壁の範囲は、耐震壁として成立しない壁版です(壁エレメント モデル)。柱・梁に囲まれた壁版か、取り付く壁版 (パラペット・腰壁・垂れ壁)かは問いません。同じ腰壁が入力の形によって剛性に 効いたり効かなかったりしないためです。耐震スリットのある壁も算入対象です。 切れているのは指定した辺だけなので、その辺の部材への算入だけを落とします。
ただし、壁の取り付く長さを求めるには下辺 2 点・上辺 2 点の壁ローカル座標が要るため、 囲まれた壁版は境界がちょうど 4 節点のものだけを算入します。境界が 5 節点以上の 壁版(T 字取り付きなど)は、自重は配りますが剛性には算入しません。取り付く壁版は、 取付き線がその梁の全長を覆う場合だけ算入します(梁の一部にだけ載る壁を梁全長の 断面性能へ合成する根拠がないためです)。
壁の取り付く長さは、袖壁なら構造階高の 1/2 の位置における包絡開口までの距離、 腰壁・垂壁なら軸間距離の 1/2 の位置における包絡開口までの距離です。位置付きの 開口がない場合の既定は、袖壁は壁長さを両側の柱で折半(\( l_w/2 \))、腰壁・垂壁は 壁高さを上下の梁で折半(\( h/2 \))です。ただし反対側の辺に主架構がない壁 (梁に載る腰壁・梁から垂れる垂壁)は折半せず、その 1 本の梁が全高を負担します。
実装参照:RC床板協力剛性は sepika_element::frame::beam::stiffness_factors::{rc_slab_sides,flanged_inertia}(crates/sepika-element/src/frame/beam/stiffness_factors.rs)、公開算定入口は sepika_element::frame::beam::stiffness_breakdown です。
トラス(ブレース)要素
軸剛性のみをもつブレースを次式で算定します(トラス要素の力学)。
\[ K_B = E \cdot A/L \]
軸剛性のみを持ち、曲げ・せん断・ねじりはゼロとします。
実装参照:sepika_element::frame::truss(crates/sepika-element/src/frame/truss.rs)が算定します。
引張専用ブレースの扱い
引張専用ブレース(ElementKind::Brace { tension_only: true })は要素側では特別扱いせず、一般ブレースと同じ全剛性 \( E\,A/L \) のトラス要素として扱います。圧縮側の無効化は線形応力解析の active-set 反復で実現し、計算条件で切り替えます。
- 反復なし(既定,
false):引張専用という指定だけでは軸剛性を低減せず、1回の求解で圧縮側も軸力を負担します。 - active-set 反復(真の引張専用,
true):各反復で圧縮側(軸伸び δ < 0)に入った引張専用ブレースの軸剛性を残留比 1e-6 まで縮小して無効化します。無効化ブレースの節点変位から求めた軸伸びが引張へ転じれば再び active に戻します。active 集合が前反復と一致した時点で収束とみなします。反復上限50回で集合が一致しなければ未収束エラーとして停止し、未収束解を正常な成果として保存しません。長期軸力無効化を併用すると、長期係数と残留比の積を採用します。軸伸び0は有効です。収束後は active な引張ブレースのみが \( N = \beta E\,A/L \cdot \delta \) を負担し、圧縮ブレースの軸力はほぼ 0 となります。
実装参照:要素側は sepika_element::frame::truss::TrussElement(crates/sepika-element/src/frame/truss.rs)が tension_only の有無によらず一般ブレースと同じ全剛性 \( E\,A/L \) のトラス要素として扱い、圧縮側の無効化は sepika_solver::statics::linear(crates/sepika-solver/src/statics/linear/mod.rs)の solve_tension_only_iterative が active-set 反復で行います。計算条件は sepika_core::model::StressAnalysisCfg::tension_only_iteration(crates/sepika-core/src/model/stress_cfg.rs、既定 false)が保持します。
部材荷重(等価節点力・固定端内力)
部材に作用する分布荷重を節点力へ変換し、固定端内力を算定します。 根拠は力学で、Hermite 形状関数による等価節点力(consistent load)と両端固定梁の固定端内力に基づきます。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( Q \) | 分布荷重を形状関数で節点へ変換した等価節点力 | N |
| \( N \) | 形状関数(軸は線形、曲げは Hermite 3 次) | - |
| \( w \) | 部材に作用する分布荷重(線荷重) | N/mm |
| \( P \) | 部材に作用する集中荷重 | N |
| \( f_{FEF} \) | 固定端内力(等価節点力の符号反転) | N |
| \( N_{FEF}(x) \) | 固定端のスパン軸力(引張正) | N |
| \( R \) | 分布荷重の合力 | N |
| \( R_i,\ R_j \) | 分布荷重の i 端・j 端の分担反力 | N |
| \( L \) | 部材長 | mm |
| \( a \) | 集中荷重の i 端からの距離 | mm |
作用方向
作用方向は全体座標系のベクトル \( d=(d_x,d_y,d_z) \) で与え、次のノルムで正規化した単位方向へ集中強度 P [N] または分布強度 w [N/mm] を作用させます。
\[ n = \sqrt{d_x^2+d_y^2+d_z^2}, \qquad \hat d = d/n \]
各成分が有限で、浮動小数点の平方和・平方根により求めた n が有限かつ 1e-12 以上であることを計算条件とします。これは数値正規化の適用条件であり、構造規準の許容値ではありません。数学的に有限・非ゼロの方向でも、平方和のアンダーフローやオーバーフローにより条件を満たさない場合があります。
条件を満たす非単位方向は単位方向と同じ荷重を与えます。全荷重ケースの集中・分布荷重を強度によらず検査し、不成立なら対象と理由を示して計算を拒否します。入力の方向は保持し、重力方向への置換・荷重削除・ゼロ強度化は行いません。編集・保存との関係は荷重の入力を参照してください。
局所軸へ射影した方向成分の絶対値が 1e-15 未満なら、その軸への成分を与えません。この成分別の数値処理と、方向ベクトル全体の成立条件は別です。軸力だけが生じる荷重や、あるせん断軸と直交して別の軸へ作用する荷重を、無荷重とはみなしません。
実装参照:方向条件は sepika_core::model::MemberLoad::validate_direction(crates/sepika-core/src/model/load.rs)、正規化と局所軸への分解は sepika_element::frame::member_load::resolve(crates/sepika-element/src/frame/member_load.rs)です。
算定式
等価節点力(軸は線形形状関数、曲げは Hermite 形状関数、分布荷重は 3 点 Gauss 積分):
\[ Q = \int N^T \cdot w~dx \]
固定端内力(等価節点力の符号反転):
\[ f_{FEF} = -Q \]
節点変位による断面内力に、固定端のスパン内力を重畳します。軸力は引張を正とし、局所 x 軸正方向の荷重を正として、固定端のスパン軸力を次式で求めます。
\[ N_{FEF}(x) = -f_{FEF,i,x} - \int_0^x w_x(s)\,ds - \sum_{a_k<x}P_{x,k} \]
集中荷重位置では i 端側の極限値を返します。等分布軸荷重では軸力は線形、線形に変化する分布軸荷重では二次式となります。梁・ブレースとも軸力には同じ釣合い式を用います。
ブレースの扱い
ブレースは軸剛性のみを持つトラス要素のため、曲げ・せん断・ねじりの剛性がありません。 Hermite 形状関数による等価節点力は材端モーメントを含みますが、ブレースはこれを負担できず、 節点へ外力として撒かれるだけになります。そこでブレースに限り、材軸に直交する成分を 材端モーメントを生じない静定分配(単純梁の反力と同じ配分)で両端へ配ります。
区間 [a, b] に載る分布荷重では、合力 \( R \) と i 端まわりの 1 次モーメントから両端の分担を 決めます。集中荷重 \( P \) が i 端から距離 \( a \) にある場合は、てこの原理そのものです。
\[ R_j = \frac{1}{L}\int_a^b w(s)\,s~ds, \qquad R_i = R - R_j \]
\[ R_j = P\frac{a}{L}, \qquad R_i = P\left(1 - \frac{a}{L}\right) \]
符号付き線形分布の合力・一次モーメントは床の単純梁反力と同じつり合い式です。合力ゼロでも反力対を保持し、反力比を制限しません。これは任意の荷重を地震重量へ採用する規則ではありません。 静定分配では部材長の下限を1e−9 mm、点位置比を0〜1とし、分布は終了位置が開始位置以下なら無視、それ以外は原区間で積分します。解析へ入力する分布荷重は、有限で支間内の正の幅を持つことが必要です。
線形分布の合力と部分切断
始端 a [mm]、終端 b [mm] の強度をそれぞれ w₁、w₂ [N/mm] とし、b > a とします。切断によって残る区間 [u, v] の端部強度を wᵤ、wᵥ とすると、幅 h=v−u [mm]、合力 R [N]、i 端まわり一次モーメント S [N·mm] は次式です。
\[ w(s)=w_1\frac{b-s}{b-a}+w_2\frac{s-a}{b-a},\qquad w_u=w(u),\quad w_v=w(v) \]
\[ R=\frac{h}{2}(w_u+w_v),\qquad S=uR+\frac{h^2}{6}(w_u+2w_v) \]
位置 x [mm] まわりの荷重モーメントは xR−S [N·mm] です。切断区間は元の荷重区間との共通部分とし、空なら合力・モーメントはゼロです。符号付きの端部強度をそのまま用いるため、合力がゼロでも一次モーメントが残る場合があります。
浮動小数点で区別できる正の幅は、微小であっても元の線形分布として扱います。幅を理由に始端強度一定へ置き換えたり、荷重を省略したりしません。端部近傍も同じ扱いです。ただし、座標・強度の表現精度や演算のオーバーフロー・アンダーフローを含む、任意の極小・極大入力での数学的精度保証ではありません。
この合力と一次モーメントをブレースの静定分配および断面の荷重釣合いへ用います。曲げを負担する部材への等価節点力は、引き続き形状関数による算定です。
載荷状態と部材力
全固定の通常梁でも、節点変位がゼロのまま部材荷重による材端力と評価断面の内力を保持します。 線形静的解析の部材力には、変位による応答と元の荷重による固定端・スパン内力を含めます。
通常のファイバー・マルチスプリングと材端集中ばね梁では、各載荷段階の部材荷重の絶対強度を材端材料の釣合いと端部接続へ反映します。 同じ強度を再指定しても加算せず、荷重だけが変化する場合も置換し、空の荷重状態では部材荷重を解除します。 節点の釣合いに用いる残差と、物理材端力・可撓端力・評価断面の内力は同一の載荷状態に対応します。 等価節点荷重を解析右辺と要素応答へ二重に加えません。
部材荷重を含む物理端力は、弾性の場合に \( f=Ku-Q \) です。 断面の内力分布はその端力と元の分布・集中荷重の切断片の釣合いから求めます。 材端間を荷重のない直線分布として補間しません。既存の Hermite 離散化と材端の塑性モデルを用い、 部材中間の塑性化を追加するものではありません。
非線形時刻歴では、長期荷重の元の部材荷重を静的に導入し、初期記録から後続ステップまで保持します。 モデル全体に独立自由度があっても、拘束方向の等価荷重だけが残って縮約右辺がゼロになることがあります。 この場合も長期部材荷重の導入を省略しません。動的初期変位・速度は長期解からの増分です。 要素の試行が失敗した場合、荷重状態と材料履歴をともに直前の状態へ戻し、既存の保存再開でも両者を復元します。
壁接続材には既存の壁法線解放・剛域・材料釣合いを用います。 RC壁の静的一次参照では、側柱の材軸に直交する部材荷重を含む条件は、対象と理由を示して解析前に拒否します。 初期Quの長期軸力用の側柱軸方向荷重は既存の対応範囲です(壁脚内力と初期耐力)。 要素内部の荷重応答を評価できることと、公開解析の適用条件を満たすことは区別します。
材端集中ばね梁では、部材荷重による可撓端力を端部の固定・ピン・半剛接条件に合わせて求め、 強軸曲げの端ばねと弾性梁の局所釣合いに含めます。剛域上の荷重も、その作用位置のモーメントを含めて支持へ伝えます。 RC梁の総角基準でも、部材荷重を含む曲げモーメントから弾性角を控除して材料へ接続します。 N-M相関には、各可撓端における荷重込みの軸力をそれぞれ用います。 局所釣合いが収束しない場合は解析を失敗として扱い、直前の荷重・変位・材料状態を保持します。
例えば、軸方向の一定分布荷重 w [N/mm] を受ける長さ L [mm] の片持ち梁では、 固定端からの距離 x [mm] における引張軸力は \( N(x)=w(L-x) \)、固定端反力は −wL [N] です。 先端変位 \( wL^2/(2EA) \) と、固定端・中央・自由端の軸力を同じ載荷状態で評価します。
実装参照:通常材の載荷状態は sepika_element::frame::fiber::FiberBeam(crates/sepika-element/src/frame/fiber/mod.rs)、
荷重の釣合いは crates/sepika-element/src/frame/fiber/constitutive.rs、
集中ばね梁は sepika_element::frame::concentrated::ConcentratedSpringBeam(crates/sepika-element/src/frame/concentrated/mod.rs)、
解析への受渡しは crates/sepika-solver/src/common/linear_load.rs と crates/sepika-solver/src/common/elem_loop.rs、
時刻歴の長期載荷は crates/sepika-solver/src/dynamic/timehistory/nonlinear.rs です。
ブレースの内力回復
合力と作用位置の 1 次モーメントがともに保存されるため、建物の総重量・支点反力はこの扱いに よって変わりません。材軸方向の成分は形状関数が線形で静定分配と一致するので、配り方を 変える必要がありません。内力回復でも、ブレースには軸力以外の固定端内力を与えません (材軸直交成分は荷重ベクトル側で両端へ流し切っているためです)。
実装参照:sepika_element::frame::member_load(crates/sepika-element/src/frame/member_load.rs)の consistent_load_local・fixed_internal_local が算定します。
荷重込み断面力と切断片の荷重合力は同モジュールの LoadedFrameSection が算定します。
配り方の選択は SpanLoadTransfer が表し、要素種別からの振り分けは
sepika_solver の span_load_transfer が行います。
MITC4 シェル要素
せん断ロッキングを回避する混合補間法 MITC4(Mixed Interpolation of Tensorial Components)を用い、膜・曲げ・せん断・ドリリング安定化を含む板要素の剛性を算定します。
算定式
膜、曲げ、せん断(せん断補正係数 5/6):
\[ D_m = \frac{E \cdot t}{1-\nu^2} \cdot [\cdots] \]
\[ D_b = \frac{E \cdot t^3}{12(1-\nu^2)} \cdot [\cdots] \]
\[ D_s = (5/6) \cdot G \cdot t \cdot I \]
- MITC4 せん断補間: タイング点 A(0,+1)/B(−1,0)/C(0,−1)/D(+1,0) の共変ひずみを補間し、逆ヤコビアンで 直交座標へ射影
- 剛性は 2×2 Gauss 積分 \( B^T \cdot D \cdot B \)、ドリリング安定化 \( \text{scale} = \gamma \cdot G \cdot t \cdot A \)(既定 \( \gamma = 10^{-3} \))
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( D_m \) | 膜の構成則マトリクス | N/mm |
| \( D_b \) | 曲げの構成則マトリクス | N·mm |
| \( D_s \) | せん断の構成則マトリクス | N/mm |
| \( \text{scale} \) | ドリリング安定化の剛性 | N·mm |
| \( E \) | ヤング係数 | N/mm² |
| \( G \) | せん断弾性係数 | N/mm² |
| \( \nu \) | ポアソン比 | - |
| \( t \) | シェル要素の板厚 | mm |
| \( \gamma \) | ドリリング安定化の係数(既定 \( 10^{-3} \)) | - |
実装参照:sepika_element::shell::ShellElement::{local_stiffness, add_drilling}(crates/sepika-element/src/shell/stiffness.rs)と sepika_element::shell::ShellElement::shear_b_mitc4(crates/sepika-element/src/shell/bmatrix.rs)が算定します。
剛床時は面内成分(Ux/Uy/Rz)を無効化します。
壁エレメントモデル(耐震壁)
耐震壁を壁柱(BeamElement)と剛梁変換による 4 節点 24 自由度モデルで算定します(壁エレメント置換モデル。一貫構造計算で標準的に用いられる実務的モデル化)。
壁の入力の正は壁版(WallPlate)です(壁の断面と自重)。解析用の壁要素はモデルに保存せず、準備計算・解析・診断の直前に壁版から都度生成します。
壁要素になるのは、壁領域全体を覆う 4 節点の壁版だけです。 具体的には、柱・梁に囲まれた壁版(Enclosed)の境界節点が、その壁版が属する壁領域の境界節点と一致し、その節点数がちょうど 4 で、かつ断面が割り当てられている場合に限ります。
この条件は壁エレメントの定式化そのものから来ています。壁エレメントは下辺 2 節点・上辺 2 節点を両端ピンの剛梁で結ぶ 4 節点 24 自由度のモデルなので、次の形では前提が崩れます。
- 壁領域の境界が 5 節点以上のとき(上下の大梁が中間節点で分割されている場合など)。剛梁は四隅しか結ばないため、中間節点が壁にめり込む向きへ動けてしまいます。
- 壁領域が間柱で複数の壁版に分割されているとき。壁版ごとに要素を作ると、1 本の長い壁柱が複数の細い壁柱に割れ、面内剛性が実態と食い違います。
壁エレメントにならない壁版(間柱で分割された壁版・腰壁・垂れ壁・パラペット・自立壁・5 節点以上の壁領域内の壁版)は、異常な状態ではないので診断には出しません。自重は境界の辺へ分配します(自重の長期応力解析への接続)。剛性は、条件を満たすものだけフレーム内雑壁(袖壁・腰壁・垂壁)として周辺の柱・梁の断面性能へ算入します(条件は ティモシェンコ梁要素)。板厚を引けない壁版、床領域に取り付く自立壁、取付き線が梁の全長を覆わない取り付く壁版は算入の相手が決まらず、剛性算入なしの壁版として扱います。剛性算入の有無と荷重の有無は別であり、自重・仕上げ荷重・開口部重量の配分対象になります。
剛性算入なしの壁版は、壁の剛性と、壁が負担する面内せん断を周辺架構へ伝える経路を落とすため、剛性と応力を過小評価し得る危険側の扱いです。4 節点でない壁版割当領域の壁版が意図したものか、剛性算入の対象から漏れていないかを確認してください。
取り付く壁版(パラペット・腰壁・垂れ壁・自立壁)も解析要素にはしません。耐震壁要素は柱・梁に囲まれた壁版を前提とするためです。取付き先と自重の分配は 壁の断面と自重、行き先は 地震用重量・層データの生成 を参照してください。
壁要素の幾何
節点は入力順に依らず標高 \( z \) で下辺 2 節点・上辺 2 節点に分け、上辺は下辺の軸への符号付き射影の順で対応付けます。壁長 \( l_w \) は上下辺長さの平均(台形壁に対応)、壁高さ \( h \) は上下辺中点間距離とします。
耐震壁として扱う条件
耐震壁として扱うのは、上下の辺がともに大梁で囲まれた壁です。壁が負担した面内せん断は、壁エレメントの上下の剛梁を介して大梁へ伝達されるため、上下辺のいずれかに大梁がない壁は伝達先を持ちません。そのような壁はフレーム内雑壁として扱います。最下階で基礎梁をモデル化していない壁も、下辺の伝達先がないため対象外です。
左右の鉛直辺(側柱)は要求しません。側柱を持たない壁は、壁の縦筋が一様配筋であるとみなして等価引張鉄筋比を算定する正規の対象となるためです。
辺と部材の対応は節点の一致で判定します。壁エレメントの剛梁は四隅節点の並進しか伝達しないため、壁の四隅とは別の節点を使う部材は辺を構成しているとみなしません。大梁とみなすのは勾配 5% までの水平材で、曲げを伝達しないブレース(軸材)・面要素・バネは大梁として数えません。大梁として扱う要素は線材(梁・ファイバー梁・マルチスプリング梁)に限ります。
側柱は、梁・ファイバー梁・マルチスプリング梁という要素表現によらず、明示した材料区分・断面用途と、壁の鉛直側縁の両端節点との一致で判定します。側柱には柱用、上下大梁には梁用の断面が必要です。材料不明をRC壁へ推定したり、候補の重複を側柱なしへ読み替えたりしません。耐震壁として成立しない壁と、材料・用途が未確定の壁は区別します。側柱を持たない正規の壁と、不正な側柱が脱落した状態も区別します。
RC・SRC置換壁の側柱は、壁側のせん断断面への算入と、柱自身の壁面内曲げ・せん断の解放を組み合わせます。純鋼板の境界柱にはこの解放を適用せず、RC壁用の側柱断面にも算入しません。SRC・CFT側柱を認識できることは、その壁の終局耐力を算定できることとは別です。
耐震スリットが 4 辺のいずれにも無いことも、材種を問わず課します。切れた辺があると、壁が負担した面内せん断を周辺の柱梁へ伝えられないためです。
RC 壁には、上記に加えて RC 規準に由来する次の 2 条件を課します。壁厚が 120 mm 以上であること、開口周比 \( r_0 \le 0.4 \) であることです。鋼板耐震壁にはこれらを課しません。鋼板は板厚 9〜16 mm 程度で用いるため、材種を問わず 120 mm の閾値を課すとフレーム内雑壁に落ちてしまうためです。
RC・SRC置換壁と純鋼板の境界は、断面形状と明示材料の区分を照合して判定します。材料が未設定・不適合な壁は未確定として理由を示し、RC壁や鋼板壁へ暗黙に置き換えません。
壁柱・側柱・上下梁の分担
次の図はRC・SRC置換壁の概念図です。中央の仮想壁柱は壁板を表し、左右の側柱と上下梁は別の部材です。
壁の面内せん断断面には採用可能な側柱を算入し、独立側柱の壁面法線まわり回転を解放します。壁側と柱側へ同じ面内曲げ・せん断を無条件に二重算入しません。側柱自身の軸力・軸履歴と面外応答は保持します。壁柱と側柱の軸抵抗を併せ持つ置換モデルであり、板と柱の重なり領域について実構造の応力分担を厳密に再現する保証ではありません。
純鋼板では、鋼板のせん断抵抗と未解放の境界骨組の抵抗を別々に扱います。境界柱をRC壁用の側柱断面へ加えたり、RC・SRC置換壁用の回転解放を適用したりしません。壁単体、仮想壁柱、各独立側柱、上下梁を含む境界骨組の結果は、同じ力を重ねて加算しない範囲で読み取ってください。
側柱の回転解放と適用範囲
RC・SRC置換壁の側柱では、壁面法線まわりの両端回転だけを解放します。柱の全回転をピンにする条件ではありません。壁法線を柱断面内へ射影した方向を用い、断面が壁に対して斜めでも近い局所軸へ置き換えません。材料の断面軸を保ち、保持する回転方向には入力した剛接・ピン・半剛の条件を残します。
軸剛性・軸力、面外曲げ・せん断、物理質量を保持します。増分解析のファイバー・MS側柱は、軸・二軸曲げの材料履歴を持ち、軸降伏・除荷・再載荷を評価します。解放回転を各試行状態で釣り合わせ、同じ収束状態の内力と接線を用います。局所収束だけでは履歴を確定せず、全体未収束時は材料と内部回転を一体で巻き戻します。特異・非有限・局所不収束は失敗として扱います。
保持自由度を \(u_a\)、内部の解放回転を \(u_b\) とし、部材荷重を含む局所残差 \(r_b(u_a,u_b)=0\) を各試行状態で解きます。部材荷重がなければ、解放方向の材端モーメントは零です。同じ収束状態の保持側内力 \(f_a\) を返し、同じ状態の微分による接線ブロックについて、\(K_{bb}\) が可逆な場合に次を用います。
\[ K_{\mathrm{cond}}=K_{aa}-K_{ab},\operatorname{solve}(K_{bb},K_{ba}) \]
非線形内力を \(K_{\mathrm{cond}}u_a\) で代用しません。局所残差の評価と接線には同じ荷重・材料履歴を用い、特異・非有限・局所不収束を零剛性や弾性への置換で隠しません。これは準静的な数値縮約の条件であり、全状態での解の一意性や動的適用を保証しません。
部材荷重がある側柱では、元の節点間全長に対する荷重を可撓部と剛域に分けます。可撓部の等価荷重を断面材料と回転接続の両方の釣合いへ含め、剛域分は実合力と腕長による節点荷重として扱います。出力する材端力は同じ収束状態の荷重込みの力とし、固定端力をさらに加算しません。元の端部条件・剛域の変換と物理質量を保持し、荷重のない側柱へだけ有効なモーメント零条件を、部材荷重のある側柱へ無条件には当てはめません。
局所釣合いと整合接線の数理原理は、Lowes, Mitra, Altoontash, A Beam-Column Joint Model for Simulating the Earthquake Response of Reinforced Concrete Frames, PEER Report 2003/10(扉February 2004)、§3.3.2 本文15–17頁/PDF21–23頁、式(3.3)・(3.4)、§3.3.3 本文17–18頁/PDF23–24頁、式(3.5)–(3.8)を参照します。原著の対象は13成分・4内部自由度の平面RC接合部です。この原理の採用だけでは、本壁側柱モデルの材料履歴・実壁挙動の検証を完了したことにはなりません。
| 解析・指定 | RC・SRC置換壁の側柱接続 |
|---|---|
| 線形静的、梁・ファイバー・MSの入力表現 | 共通の弾性回転解放を適用 |
| 単一平面・準静的の増分解析、ファイバー・MS | 材料履歴を保持した回転解放を適用。梁の自動選択でファイバーとなる柱も同じ扱い |
| 増分解析で側柱を材端集中ばねに指定 | 解放との連成が未定式化のため、対象部材・壁・解析種別と理由を示して適用外 |
| 非線形時刻歴の側柱接続 | 従属回転の慣性との連成が未定式化のため理由付き適用外 |
| P–Δを有効にした側柱接続 | 幾何剛性との連成が未成立のため、実際の指定に従って理由付き適用外 |
| 固有値・線形時刻歴で部材の整合質量を使う接続 | 初期弾性接続による実際の整合質量を構成できる条件に限る。特異な内部回転や、慣性を持つ共通ねじり回転を静的に固定しなければならない条件は理由付き適用外 |
| 要素質量を使わない質点のみ方式 | 上記の部材整合質量の構成条件は課さない。非線形時刻歴・P–Δ等の接続制限は別に適用 |
側柱の幾何判定は材軸単位ベクトルの鉛直成分が \( |e_z| > 0.707 \) となる鉛直卓越材を対象とします。これは壁脚内力と初期耐力の矩形鉛直壁への限定とは別の条件です。側柱として認識されても、傾斜壁の参考骨格や初期耐力が求められるとは限りません。
複数壁が側柱を共有する場合、平行・反転した法線は同じ解放面として扱います。採用可能な壁どうしが非平行となる共有柱は、独立した定式化が未成立のため適用外です。最初に登録した壁だけで解放方向を決めません。
診断とモデル化表示は、同じ部材の物理的役割と解析種別に対応した理由を示します。解析入口では、実際のP–Δ指定と質量方式の適用条件も検査します。停止条件は対象部材・壁・解析種別とともに示し、有効な鋼板耐震壁の注意通知と区別します。壁との節点・断面・材料用途の対応が矛盾する場合も、側柱なしとして継続しません。純鋼板・壁なし骨組・剛性算入なしの壁版へ、RC側柱接続の制限を一律には適用しません。
実装参照:共通分類は sepika_core::model::WallSideColumnIndex(crates/sepika-core/src/model/wall_side_column.rs)、生成と診断は sepika_element::factory(crates/sepika-element/src/factory/)によります。
壁上下の剛梁の役割
壁上下辺の大梁は、壁と連続した一枚の板を梁として表す弾性高剛性部材です。軸・二軸曲げ・ねじり・せん断の剛性を一律100倍とし、重量・物理質量にはこの倍率を乗じません。対象は耐震壁として成立した壁の上下辺と両端節点が一致する水平材(勾配5%以下)で、辺の一部だけを共有する材や鉛直材には適用しません。
線形・非線形の解析とも、この役割の梁自身の材料降伏は評価しません。入力の要素表現が梁・ファイバー・マルチスプリングのいずれでも、非線形モデルの選択にかかわらず弾性高剛性部材として扱います。モデル化表示は弾性とし、「壁上下の剛梁(弾性高剛性部材。材料降伏は評価しません)」と示します。骨格・降伏材料のうちこの役割で使わない入力は要求しませんが、断面・材料区分・配筋幾何・必要なコンクリート強度・正の有限なヤング係数・質量算定に必要な入力は必要です。
このモデルは実梁自身の耐力・降伏・損傷を評価する用途には使えません。高剛性の弾性境界から実梁の無損傷を判断すると、耐力の過大評価や変形の過小評価につながり得ます。通常のファイバー・マルチスプリング部材と壁側柱の材料非線形は、この上下梁の弾性という役割とは別に扱います。
実装参照:役割と剛性倍率は sepika_element::frame::beam::is_elastic_wall_girder(crates/sepika-element/src/frame/beam/stiffness_factors.rs)、非線形解析での要素生成は sepika_element::factory::build_nonlinear_behavior(crates/sepika-element/src/factory/mod.rs)によります。
壁と周辺架構の構造種別
耐震壁とその周辺架構(上下の大梁・左右の側柱)は、構造種別をそろえてください。壁エレメントは、仮想壁柱が壁板の軸・面内曲げ・面内せん断を表す置換モデルです。RC・SRC置換壁の独立側柱は壁面法線まわりの両端回転を解放し、柱自身の軸・面外応答を保持します。上下の大梁は壁板と連続する弾性高剛性部材として扱い、壁と周辺架構が一体で抵抗します。RC壁の周辺にはRC・SRC架構を用い、弾性解析ではCFT側柱も扱います。RC壁に純鉄骨の周辺架構を組み合わせた混合構造は扱いません。
構造種別が食い違うモデルは、解析の入口で入力エラーとして停止します。許容応力度計算の剛性・断面検定にも効くため、保有水平耐力計算だけでなくすべての解析で検査します。判定には材料の区分(構造種別の判定)を用い、材料が設定されていない部材は別の入力チェックが扱うためここでは対象外とします。
算定式
線形弾性解析における壁柱の軸剛性用断面積(壁筋考慮):
\[ a = t \cdot l_w \cdot \text{rebar_factor} \]
\[ \text{rebar_factor} = 1 + (E_{\text{steel}}/E - 1) \cdot p_s \]
面内曲げ:
\[ i_z = \frac{t \cdot l_w^3}{12} \cdot \text{rebar_factor} \]
この係数の壁筋比は直交する筋比の小さい方を表す入力値であり、明示した縦筋比とは区別します。鉄筋のヤング係数は205000 N/mm²で、方向別鉄筋材料のヤング係数・降伏強度・強度倍率はこの線形係数に使用しません。軸剛性はE・a、面内曲げ剛性はE・izの積です。この共通筋比による換算は未照合の近似であり、応力配分や変形について一律に安全側と判断できません。線形の軸・面内曲げ断面には開口による控除を行わず、開口低減は下記のせん断に適用します。開口位置による軸・曲げへの影響も検証済みではありません。
開口低減をせん断へ適用しても、開口による軸変形や軸・曲げ連成の影響を補える保証はありません。側柱なし、上下辺の水平変位を拘束し上辺に一様鉛直変位を与える均質な平面応力弾性板では、同じ軸方向材料剛性・ポアソン比0.2・外形面積の10%の開口に対し、開口無控除の軸剛性はエネルギー原理による剛性上界を超え、軸変位を過小評価する方向になります。この限定比較を実RC全般、側柱あり、水平荷重時の安全側/危険側の判定へ一般化できません。任意の開口位置・寸法への適用が確認されたモデルとして使用せず、対象の荷重・ひび割れ・周辺架構を含む根拠を別途確認してください。
壁板の軸・面内曲げに用いる断面と、側柱を含む耐力壁全体の断面を区別してください。側柱の軸力差による偶力は耐力壁全体の曲げ抵抗へ寄与しますが、側柱自身の断面二次モーメントを壁板の面内曲げ断面へ加算しません。側柱込みの一本柱断面の剛性を中央壁柱へ与え、側柱軸も別に残すと、側柱の抵抗を重ねて評価するおそれがあります。
線形解析では、長期・短期の荷重や応力の大きさに応じて、ひび割れ前後の壁剛性を自動で切り替えません。許容応力度計算であることだけを理由に、実際の壁がひび割れ前であるとは判断できません。ひび割れ後も初期剛性を用いると変形を過小評価し得ます。一方、壁剛性を小さくすれば、応力配分・偏心率・剛性率が一律に安全側となるわけでもありません。対象の荷重・応力状態と評価目的に対する適用性を確認してください。
『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』(第2版第1刷、2026年2月11日)付録1-3.1(3)②、708–710頁は、目的に応じた剛性評価と剛性低下に対する技術的検証を求め、耐力壁の弾性剛性の算定先をRC規準(2024)8条3項としています。713頁の一本柱モデルの降伏時剛性低下率と、714頁の壁板・側柱を分担する三本柱モデルは適用対象が異なります。これらは上記共通筋比換算の式を直接定める根拠ではありません。鉄筋を剛性へ算入しないコンクリート総断面の方式は現在採用していません。
面内せん断は、壁と左右側柱の重複を控除した断面に各材料のE・Gを与え、せん断ひずみエネルギー積分から剛性Ksを求めます。RC壁・RC/SRC側柱のEcはFcと直接入力密度からγRC→γCを求めて算定し、CFT側柱の充填部EcはFc・種類・無筋コンクリート表から算定します。Fcまたは密度が不正な耐震壁・側柱は要素生成時にエラーとし、Material.youngや鋼管のみへ黙ってフォールバックしません。仮想壁柱にはAsy=r Ks/G壁を与えます。rは開口低減率です。面外せん断にも同じ開口低減率を乗じます。
剛梁変換(並進は平均、回転はレビ・チビタ記号で ω):
\[ K_{24} = A^T \cdot K_{\text{col}} \cdot A \]
面外回転の接合条件: 壁柱の面外曲げに対応する局所 y 軸まわりの両端回転はピンとし、内部自由度として静縮約します。弾性・ファイバー壁柱とも同じ条件です。壁柱に沿う面外横移動に対する曲げ抵抗は期待しません。実装は sepika-element/src/wall/wall_element.rs です。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( t \) | 壁厚 | mm |
| \( l_w \) | 壁長(上下辺長さの平均) | mm |
| \( h \) | 壁高さ(上下辺中点間距離) | mm |
| \( E \) | コンクリートのヤング係数 | N/mm² |
| \( E_{\text{steel}} \) | 壁筋のヤング係数 | N/mm² |
| \( p_s \) | 壁筋比 | - |
| \( \text{rebar_factor} \) | 軸・曲げ剛性に壁筋を考慮する係数 | - |
| \( a \) | 壁柱の軸剛性用断面積(壁筋考慮) | mm² |
| \( i_z \) | 壁の面内曲げの断面二次モーメント | mm⁴ |
| \( K_{\text{col}} \) | 壁柱の剛性マトリクス | N/mm |
| \( A \) | 壁柱の自由度を四隅節点へ写す剛梁変換マトリクス | - |
| \( K_{24} \) | 壁エレメントの 24 自由度剛性マトリクス | N/mm |
| \( Q_u \) | 壁の終局せん断強度 | N |
| \( Q_y \) | 鋼板耐震壁のせん断降伏耐力 | N |
| \( F \) | 鋼板の降伏強度 | N/mm² |
| \( r_0 \) | 開口周比 | - |
| \( r_1 \) | 剛性用の開口低減率 | - |
| \( r_2 \) | 耐力用の開口低減率 | - |
面内せん断の非線形性
非線形解析では、壁の面内せん断を終局せん断強度 \( Q_u \) で頭打ちとする弾完全塑性骨格の復元力ばねとして扱います(耐震壁(せん断非線形トリリニア))。せん断モード(上辺 2 節点の壁面内水平並進)に沿う塑性すべり \( \gamma_p \) を導入し、変形測度 \( D = \gamma_p + Q/k_{s0} \)(\( k_{s0} = p^{\mathsf T} K_{el}\, p \) は弾性モード剛性)に対する履歴ばね \( Q = M(D) \) と壁の伝達水平力が一致するよう \( \gamma_p \) を定めます。接線剛性はせん断モードの剛性を保持し、非線形は内力側のすべり補正のみで表現します(初期剛性法。曲げ機構の形成後にせん断が \( Q_u \) から除荷へ向かう角点で、剛性を除去した整合接線では大域反復が特異化するため)。
ばねの骨格は弾完全塑性(初期剛性 \( k_{s0} \)、耐力 \( Q_u \)。トリリニアのひび割れ点は弾性線上 \( Q_u/3 \) に置きバイリニア相当、終局点は降伏変形の \( 10^4 \) 倍で降伏後フラット)とし、除荷・再載荷則は履歴則の設定(履歴則の設定(増分用・時刻歴用))から解決します。既定は最大点指向型(増分・時刻歴共通。壁の面内せん断はひび割れのスリップ性状が強く、除荷開始剛性が初期剛性のままの移動硬化型ではループの吸収エネルギーを過大評価するため)です。逆行型・標準型・原点指向型・武田型も選択できます。
軸・曲げの非線形性(ファイバー壁柱)
保有水平耐力計算(増分解析)では、壁柱の軸・曲げを既定でファイバー断面の弾塑性評価とします(柱の Fiber 既定と同じ扱い)。壁柱は「全長弾性梁+端部塑性増分ヒンジ」のファイバー要素(ファイバーモデル)とし、断面は次で構成します。
- コンクリート: 幅 \( t \) × せい \( l_w \) の格子ファイバー(幅 4 × せい 20 分割。Fc≤60 は材料から解決した E を初期接線へ反映した NewRC、\( f_c > 60 \) は NewRC 固有 Ec の暫定外挿)。除荷則は部材ごとに増分用・時刻歴用を選択でき(履歴則の設定(増分用・時刻歴用))、自動(未指定)の既定は増分解析=原点指向型、時刻歴応答解析=Karsan–Jirsa 型です。壁柱のファイバーでは
ConcreteNewRcが逆行型・原点指向型に、ConcreteCyclic::newrcが Karsan–Jirsa 型に対応します。 - 縦筋: 明示壁縦筋比 pwv_ratio を各せい方向層へ等価分散した鋼材ファイバーとします。縦筋材料の公称fyを用い、増分解析では所有する材料の強度倍率を一度適用します。縦筋比・材料の不足は補完せず拒否します。
非線形壁柱の弾性基準となる軸・面内曲げの鉄筋剛性係数は、上記の線形解析用の共通筋比に代えて明示した縦筋比を用います。鉄筋のヤング係数は205000 N/mm²です。せん断の断面評価と開口低減は弾性壁柱と共通です。塑性化域長は \( 0.5 \, l_w \)(可撓長の 45% までにクランプ)とします。これにより細長壁の曲げ降伏・N–M 相関(軸力変動による曲げ耐力の変化)が表現されます。せん断の \( Q_u \) 頭打ちは上記のとおり併用し(すべりを差し引いた変位を壁柱へ与える直列構成)、曲げ・せん断のうち先に到達した方で耐力が頭打ちになります。
許容応力度計算(弾性解析)では、軸・曲げ・せん断とも線形弾性として扱います。
終局せん断耐力の引張主筋量は、引張側最端の付帯柱1本の全主筋量です。初期耐力の対応域は、対称同質の正方形RC側柱を持つ単独無開口壁に限ります(壁脚内力と初期耐力)。
壁横筋の降伏強度は断面の「せん断補強筋」材料のfyを用い、割増しません。明示横筋比pwh_ratioとその材料が必要で、未割当・非有限・非正fyは入力不備として拒否します。
正負の終局耐力を別々に求め、壁ばねにも別々に設定します。正方向は下辺aからbへ向かう上辺の移動で、a側を引張側・b側を圧縮側とします。負方向はこれを入れ替えます。全長Dは左右柱の外面間距離、圧縮側柱せいDcはその柱の壁長方向の実投影寸法です。等価壁厚は、重複控除した同じ断面の面積Aを使い、te=min(A/D, 1.5t)とします。引張側柱の主筋量は方向別の主筋セットの面積を合算した全主筋量です。側柱を左右平均した寸法や、多い側の主筋量では代用しません。関連する寸法・面積の定義は建築研究資料第204号・第4章を参照してください。
正負それぞれの降伏変位はQu/Ks0です。初期剛性Ks0は共通とし、反対側の最大経験点・未経験時の降伏点は、載荷方向に対応する包絡線から求めます。弾完全塑性リターンマッピング、履歴ばね、ファイバー壁柱との連成のいずれでも、その方向の耐力を使います。モデル化表示には正負両方のQuを表示します。採用runがない場合や入力が一致しない場合は未解決と表示します。表示のために初期耐力を再計算しません。
鋼板耐震壁の終局せん断強度
鋼板耐震壁の面内せん断は、鋼板のせん断降伏で頭打ちとします。降伏せん断応力度には von Mises の降伏条件による純せん断の値 \( \tau_y = F/\sqrt{3} \) を用い、これを全断面 \( t \cdot l_w \) に乗じます。\( F \) には材料の降伏強度を用います。
\[ Q_y = t \cdot l_w \cdot \frac{F}{\sqrt{3}} \]
せん断座屈は考慮していません。 幅厚比が大きく補剛のない鋼板は、せん断降伏に達する前に面外へせん断座屈して耐力が頭打ちになるため、上式では耐力を過大評価し得ます。
増分解析および非線形時刻歴応答解析の開始時には、実際に解析へ組み込まれる鋼板耐震壁の枚数・要素 ID・生成元の壁版 ID とあわせて、上式とせん断座屈未考慮の注意を表示します。同期実行・バックグラウンド実行とも、1 回の起動につき対象をまとめて 1 回通知し、解析は注意付きで継続します。再起動では再通知します。準備計算の注意や計算エラーは、この通知とは別に保持します。
線形時刻歴、対象の鋼板耐震壁がないモデル、RC 壁・SRC 内蔵鋼板、壁エレメントにならない壁版には、この鋼板耐力モデルの注意を表示しません。通知は既知制限の開示であり、座屈耐力・補剛条件・境界条件の検討や断面検定の合格判定ではありません。適用可能な幅厚比の数値しきい値は定めていません。
実装参照:sepika_job::notices::steel_seismic_wall_notice(crates/sepika-job/src/notices.rs)が対象と通知を生成し、sepika_app::app::actions(crates/sepika-app/src/app/actions/)が開始時に表示します。
設定不備による停止
次の設定不備がある耐震壁は、保有水平耐力計算・非線形時刻歴応答解析をエラーで停止します(代替値で補わず、弾性としても扱いません。耐力が定まらない壁は際限なく水平力を負担し保有水平耐力を過大評価するためです。増分解析「解析前の入力チェック」)。
- 壁エレメントとして構築できない(4 節点の指定がない、節点座標が退化している)
- 断面が設定されていない、または壁厚が \( \le 0 \)
- 材料が設定されていない
RC 壁では、これに加えて次を検出します。
- 材料にコンクリート強度 \( F_c \) が設定されていない、または \( F_c \le 0 \)
- 付帯柱があるのに、その断面から主筋量を取得できない(断面形状が RC 矩形でない、主筋の本数・径が 0)
- 明示方向配筋・材料・対応側柱・同じfaceの必要応答が不足する
- 静的一次参照または正負の初期Quが未解決・不正となる
鋼板耐震壁では、次を検出します。
- 材料に降伏強度 \( F \) が設定されていない、または \( F \le 0 \)
- \( Q_y \) の算定結果が \( \le 0 \) となる
壁単体の確定ステップ応答
壁板を代表する4節点要素の応答と、左右の付帯柱・上下梁を含む系全体の応答を区別します。以下の合力は壁要素単体の節点内力であり、側柱や梁の断面力を加算した層切断力ではありません。側柱は各線材自身のN・M・Qを参照します。仮想壁柱は壁板の置換部材であり、側柱とは別です。
正規化した下辺を \(B=(b_a,b_b)\)、上辺を \(T=(t_a,t_b)\)、下辺aからbへ向かう単位ベクトルを \(e_w\) とします。同じ標高の下辺2点を入れ替えると \(e_w\) は反転します。全体座標の物理的な力は変わりませんが、局所の正負符号と正負別耐力の対応は一緒に反転します。
\[ Q_w=\left(\sum_{i\in T}F_i\right)\cdot e_w,\qquad Q_{dir}=\left(\sum_{i\in T}F_i\right)\cdot e_{load} \]
\(Q_w\) は面内せん断力、\(Q_{dir}\) は加力方向への符号付き寄与です。平面内で斜めを向いた矩形壁では両者が異なります。例えば面内力100 kNの壁が全体X軸に45°をなすと、X方向寄与は70.71 kNです。正の負担割合へ用いる絶対値は、上下力・モーメントの釣合いを確認してから採ります。
任意の基準点 \(O\) での合力は、節点の並進力だけでなく節点モーメント \(M_i\) を含めます。位置 \(r_i\) は未変形の全体座標です。
\[ F=\sum_iF_i,\qquad M_O=\sum_i\{M_i+(r_i-O)\times F_i\} \]
\[ M_{O'}=M_O+(O-O')\times F \]
下辺と上辺それぞれの合成点は、その辺の中点を既定とします。上下の釣合い残差は、下辺中点を共通基準点として全4点を合成した値です。上辺高さ3000 mm、X方向力が2点各50 kNなら、下辺中点での上辺合力のY回り力項は +300 kN·m、上辺中点での力項は0です。節点モーメントがある場合はこの力項へ別に加算します。集中モーメントの和だけを転倒モーメントとして読みません。
上下中点の平均並進変位差による弦変形角は次式です。
\[ H=|center(T)-center(B)|,\quad \Delta_w=(u_T-u_B)\cdot e_w,\quad R_{wall}=\Delta_w/H \]
剛体並進では0ですが、剛体回転の寄与を含みます。例えばY回り微小剛体回転0.01 radでは \(R_{wall}=0.01\) になり、材料せん断ひずみ0を意味しません。材料せん断ひずみ \(\gamma_{wall}\) には剛体回転・曲げの除去が必要です。現在はその材料量を復元していないため、値なしと未提供理由を記録します。弦変形角を材料せん断ひずみへ流用しません。
| 入力・結果 | 対象・単位 | 既定・適用条件 |
|---|---|---|
| 正規化4節点・局所面内軸 | 下a、下b、上a、上b/無次元 | 壁幾何と解析要素の自由度順が一致すること |
| 節点内力24成分 | 全体座標のF [N]、M [N·mm] | 全成分が有限であること。欠落・不正は値なし |
| 上下合力・合モーメント | 壁要素単体/N、N·mm | 各辺中点を基準点とし、その位置 [mm] を併記 |
| 釣合い残差 | 全4点/N、N·mm | 共通基準点は下辺中点。設計消費では力・モーメントの相対許容差 \(10^{-6}\) を確認 |
| \(Q_w,Q_{dir}\) | 壁単体/N | 加力方向は全体XまたはY、局所符号を保持 |
| 仮想壁柱N・Q・M | 局所断面力/N、N·mm | 既存評価位置0〜1と局所x/y/z軸を併記。Nは引張正。付帯柱を含めない |
| \(H,\Delta_w,R_{wall}\) | 壁上下辺中点/mm、mm、rad近似 | 矩形鉛直壁。辺の同標高・鉛直対応の幾何許容差は代表長さの \(10^{-8}\) |
| \(\gamma_{wall}\) | 材料せん断ひずみ/無次元 | 未提供。剛体回転・曲げを除去した材料量の復元なし |
| 線材用m・axial・Rp、ヒンジ・せん断降伏イベント | 2節点線材 | 壁へ適用しない。壁内部の塑性化0やイベント0と解釈しない |
| 壁版・生成要素・run・入力世代・step | 結果の識別 | 各確定stepを保存。最終値を過去stepへ複写しない |
壁専用応答の検証範囲は矩形鉛直壁です。平面内の方位は任意ですが、台形、傾斜した側辺、上下辺の標高が曖昧な形状、退化形状には壁専用結果を提供せず理由を示します。この制限は応答の検証範囲を表し、既存の幾何や解析要素の適用条件を変更するものではありません。結果未記録の過去データも0で補完せず、再解析を案内します。
GUIの増分解析結果、CSV帳票、保存結果には、各確定stepの壁専用応答と未提供理由を保持します。MCPでは増分解析ジョブの analysis_status のsummaryから壁応答履歴と実行識別を確認できます。材料せん断ひずみや壁用イベントがないことは、塑性化していないという判定ではありません。頭打ち・曲げ塑性化後の内力も、各stepの要素状態から記録します。
力と変形の根拠
合力・合モーメントと基準点移動は静力学から定めた結果の定義です。Daniel W. Baker(Colorado State University)・William Haynes(Massachusetts Maritime Academy), Engineering Statics: Open and Interactive, 著者公開HTML 2026年9月26日版、§4.4 式4.4.2、§4.7、書誌を参照します。HTMLにはページ番号がありません。
弦変形と材料せん断の区別は、TU Delft / CiTG Computational Modelling 講義、Solving the Timoshenko beam equation: approaches to avoid shear locking の「Problem setting」に示す \(GA(v'-\theta)\) と独立な断面回転によっても確認できます(HTML、ページ番号なし)。これは壁固有の材料せん断ひずみを復元できる保証や実験検証ではありません。
実装参照:sepika_solver::nonlinear::pushover::wall_response(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/wall_response.rs)が壁単体応答を合成し、step_record(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/step_record.rs)が確定stepごとに記録します。
質量
壁版から生成する壁エレメントの質量は、壁版の自重配分で定まる解析用負担分を用います。壁エレメントを直接構成する場合も、周辺の梁・ファイバー梁・MSの表現によらず、同じ内法寸法から総量を求めます。壁版と生成要素、周辺架構の物理質量を重ねて加算しません。
壁の質量は、自重と同じ周辺柱梁の内法面積から開口面積を控除し、開口部(サッシ等)の重量を加算した値とします(節点質量からの控除規約と揃えます。地震用重量・層データの生成)。
集中質量ではこの質量を四隅の並進自由度へ均等配分します。整合質量では、壁柱の整合質量を面内ピンの剛性と同じ自由度写像で縮約し、4節点の変換行列へ写します。内法面積・開口重量による質量との差は全体をスカラー補正し、総質量を保存します。
実装参照:sepika_element::wall::wall_element(crates/sepika-element/src/wall/wall_element.rs)が算定します。
側柱の回転接続は sepika_element::wall::side_column と sepika_element::frame::fiber が扱います。弾性接続は side_column/column.rs、材料履歴を持つ接続は frame/fiber によります。
耐震壁の成立判定は sepika_element::wall::misc_wall::wall_is_seismic が担います。一次設計の耐震壁せん断検定(一次設計)でも成立判定は共通です。ただし、材料・断面・応答が不足する壁版も検定表から消さず、未検定理由を表示します。耐震壁として成立しない自重・雑壁のみの壁版は「対象外」として分けます。純鋼板の解析モデルが成立しても、国内検定式が未確定のため壁板・接合の検定合格を意味しません(壁の未検定表示)。モデル化の確認ビューでも同じ判定を用いるため、図に耐震壁として描かれる壁と解析でせん断を負担する壁も一致します。
なお剛性計算用の開口低減率は \( r_1 = 1 - 1.25 \cdot r_0 \)(\( r_0 = \sqrt{h_0 l_0/(h \, l_w)} \) は開口周比)であり、複数開口は建物一律の設定(等価開口/包絡/自動判定)で単一の等価開口に統合してから適用します。開口周比の分母には本モデルと同じ \( l_w \)・\( h \) を用います。
『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』付録1-3.1(3)②、710–711頁のこの低減式はせん断剛性を対象とし、分母の高さ・長さは上下梁・左右柱の中心間距離です。複数開口の等価化には位置・大きさ・応力伝達機構の確認が必要です。係数形の一致だけでは、側柱なしや任意形状への適用、軸・曲げ断面の開口無控除を認める根拠になりません。
耐震壁として不成立となった壁版は、条件を満たす場合に周辺柱梁へフレーム内雑壁として剛性算入されます。このとき生成された壁要素自体の微小剛性と、雑壁を含む柱梁の抵抗を区別してください。壁要素だけの力を建物内の当該壁版の抵抗全体と解釈したり、雑壁分を柱梁の結果へ重ねて加算したりしないでください。解析が求解できることは、そのモデル切替えの適用性を保証しません。 耐力用の開口低減率 \( r_2 = 1 - \max(r_0,\ l_0/l_w,\ h_0/h) \) とは別式であり混用しません(一次設計・部材終局耐力参照)。
非線形時刻歴の壁柱断面力は現在の要素状態から取得します。ファイバー壁柱ではその状態断面力、弾性壁柱とせん断ばねの組合せでは塑性せん断すべりを除いた変位から復元する断面力を記録します。
4節点壁の面積算定は、剛性算定と同じ上下辺の対応付けを使います。上辺のa・bは下辺a→b軸への符号付き射影の昇順で対応付けます。下辺a・下辺b・上辺b・上辺aの周回順で面積と周辺柱梁の内法控除を求め、入力節点の列挙順によって自重・質量が変わらないようにします。幾何の共通実装は sepika_core::model::wall_element_geometry です。
壁側のせん断断面への側柱算入は、RC・SRC置換壁の採用可能な接続に限ります。純鋼板の境界柱は算入しません。
側柱のせん断断面は実形状と向きを別々に反映し、壁厚方向に並ぶ材料のE・Gを幅に沿って積分します。RC矩形・円形、SRC矩形、CFT角形・円形の幾何を扱います。CFTの鋼管には明示した鋼材のE・G、充填部にはコンクリートの係数を与え、鋼管だけへの置換は行いません。形状を認識できることと、壁接続・耐力の適用性は別に確認します。
側柱の形状・材料が未指定、不正寸法、異なる材料定数の柱断面同士の重なり、積分の未収束はエラーです。側柱軸と壁下辺は直交することを前提とし、壁下辺方向を側柱断面内へ射影した長さと1の差が1e-10を超える場合もエラーです。不正な断面を弾性梁へ置換して計算を続けません。
弾性断面の対応範囲と、非線形RC壁の初期耐力の対応範囲は別です。初期耐力は壁脚内力と初期耐力の限定域へ適用します。SRC・CFT・鋼材側柱、円形柱、側柱なしのRC壁をこの限定域の成功として扱いません。RC壁の弾性解析ではCFT側柱を合成断面として認めます。
実装参照:せん断断面の診断・算定は sepika_element::wall::shear_section::wall_shear_rigidity(crates/sepika-element/src/wall/shear_section.rs)、形状は sepika_core::section_shape::face_geometry::SectionGeometry(crates/sepika-core/src/section_shape/face_geometry.rs)が扱います。剛性用の \( r_1 \) は sepika_element::factory::wall_opening_reduction(crates/sepika-element/src/factory/wall_opening.rs)、耐力用の \( r_2 \) は sepika_element::wall::wall_element::WallElement::opening_strength_reduction(crates/sepika-element/src/wall/wall_element.rs)が算定します。
RC壁の壁脚内力と初期耐力
静的解析後のせん断参考骨格は、選択した荷重ケースまたは保存組合せの同じ応力状態から、壁全体の壁脚内力を求めます。非線形解析の初期耐力は、解析開始時の入力を固定した静的一次参照から求め、解析中は更新しません。この二つは目的と応力状態が異なります。
適用範囲と未算定
対応するのは、同一平面の単独・無開口・矩形鉛直RC耐震壁と、対称同質の正方形RC断面を持つ両側の付帯柱です。付帯柱と上下支持梁は、梁・ファイバー梁・MSのいずれの入力表現でも同じ物理的な接続と断面を用い、この参照では線形弾性として評価します。側柱の元端部条件は両端剛接とし、断面方向は壁面内・壁面法線に平行で、壁面法線まわりの両端回転解放が成立し、下部支持梁と左右柱脚が同じ実face平面を持つ必要があります。
解析種別の適用条件は側柱の回転解放と適用範囲を優先します。両側柱を持つRC壁の非線形時刻歴は、側柱の解放回転と慣性の連成が未定式化のため未対応です。初期Quを算定できることは、その解析の実行可能性を意味しません。側柱を除いた壁も本節の初期Quの対象には含めません。
終局せん断耐力の単体評価でも両側柱を必要とし、無側柱・片側柱の壁には耐力を返しません。壁板の全縦筋量を引張側柱主筋量へ代用せず、無側柱の壁に両側柱付き壁の有効せいを適用しません。
共有柱、連スパン、開口、異種・非対称側柱、成立しない端条件は未対応として対象IDと理由を示します。解析後の参考骨格では壁・側柱への部材荷重を含む経路も未対応です。初期耐力用の長期軸力に限り、側柱の軸方向部材荷重を実face位置で回収します。生成された壁要素への直接部材荷重は拒否します。
側柱と壁の節点・断面用途・材料の対応が不正な場合は、許容せん断検定と参考骨格の双方に対象と理由を示します。一方、鉛直卓越材として側柱を認識できても、壁が傾斜して矩形鉛直壁の条件を満たさない場合は参考骨格を未算定とし、独立に成立する許容せん断検定は維持します。
必要な応答・材料・face由来の不足、非有限値、水平参照のQ=0、引張軸力、平均圧縮応力度が0.4Fcを超える場合は代替耐力を補完しません。参考骨格は理由付き未算定となり、独立した正常な許容せん断検定は維持します。初期Quが必要な壁のいずれかの正負が未解決なら、その非線形解析は開始できません。壁なし、純鋼板壁、非耐震壁、線形解析にはこの初期QuのAi要件を課しません。
終局せん断耐力の方式と入力
右パネル「① 準備計算」の「計算条件」で「RC壁の終局せん断耐力」を荒川min/荒川meanから選びます。新規モデルの既定は荒川meanです。建物全体で共通の一方式を使い、部材・断面・階別の上書き、二方式の同時計算・比較、小さい耐力の自動採用は行いません。
壁脚faceの入力から \(\lambda=|M_{face}|/(|Q|D)\)、\(c=p_{te}^{0.23}(F_c+18)\)、\(s=0.85\sqrt{p_{wh,e}\sigma_{wh}}+0.1\sigma_0\) として、次を使います。
\[ Q_{u,min}=\left(\frac{0.053c}{\lambda+0.12}+s\right)t_ej, \qquad Q_{u,mean}=\left(\frac{0.068c}{\sqrt{\lambda+0.12}}+s\right)t_ej \]
方式によってコンクリート項の係数と分母を同時に変えます。横筋・軸力項は共通であり、Qu全体を0.068/0.053倍しません。両方式の値の大小だけでは、対象壁の安全性や設計適合を判定できません。
- Dは付帯柱を含む壁全長、d=D−Dc/2、j=7d/8、Dcは圧縮側柱の壁方向せいです。
- 等価壁厚teは実壁板と付帯柱の重複を控除した面積と全長を等しくする置換幅で、1.5t以下とします。
- 引張側柱主筋agからpte=100ag/(te d)を百分率で求めます。明示横筋比Pwhと壁板の明示縦筋比Pwvは実壁厚基準の小数で、pwh,e=min(Pwh t/te, 0.012, 2Pwv)とします。横筋比だけを等価壁厚へ換算し、上限側の縦筋比は壁板の実壁厚基準を使います。最小筋比から方向別の比を推定しません。
- σ0=N/Aは圧縮正です。Aはteの上限制限前の実壁板と付帯柱の物理面積で、te Dへ置き換えません。明示N=0は有効ですが、欠落したNは0にしません。
- λは正の有限入力を1〜3へ制限します。無開口に限りr=1です。長さmm、面積mm²、強度N/mm²、MはNmm、Q・N・QuはNです。
横筋寄与は、等価壁厚基準で1.2%以下、かつ壁板の実壁厚基準の縦筋比の2倍以下に制限します。側柱主筋の有無にかかわらず、壁板の縦筋比が未知・非有限・負の場合は初期耐力を算定できません。参考骨格では縦横とも直交最小筋比以上の明示入力が必要です。構造実験による終局強度確認を入力する機能はなく、実験確認による上限の例外は適用しません。上限適用後にQc以上のQuを得られない場合、参考骨格は理由付き未算定になります。
引張N、σ0>0.4Fc、Q=0、非有限・不足・入力世代不一致は理由付き未算定または解析開始拒否です。0.4Fcの制限は現在の実装域を拡張しないための条件であり、規準による適用保証ではありません。他方式への切替や0耐力による補完は行いません。
参考骨格と非線形解析の正負初期Quには同じ選択を用います。非線形解析は開始時の方式を固定し、求解中の方式変更・履歴再構築・採用stepの自動探索を行いません。モデル化表示とDsは同じrunの採用Quを使います。
設定はプロジェクト全体とともに保存され、取り消し・やり直しの対象です。方式を編集すると切替前の解析・検定・実行中ジョブの結果は利用できません。別の解析を実行しても旧増分結果は復活せず、採用方式で再計算が必要です。参考骨格は成功・未算定とも方式名を示し、初期Quの未解決理由にも方式を示します。
同じ壁脚faceでの壁全体内力
壁柱の局所xを下から上、yを下辺aからb、zをx×yとします。中央壁柱の軸・曲げは壁厚t×壁長lwの断面で、独立側柱の軸・曲げを含みません。面内せん断剛性は側柱を含む和集合断面に由来します。したがって中央壁柱と側柱の全成分を一律に足し合わせません。
同じ高さ・同じ切断側へ局所軸と端順を正規化し、引張正の回収軸力をNt、圧縮正をNc=-Nt、物理断面の図心から沿壁方向の腕長をrとすると、対応経路では次を使います。
\[ N_{comp}=N_{c,wall}+N_{c,left}+N_{c,right},\qquad Q_{wall}=Q_{y,wall} \] \[ M_{z,O}=M_{z,wall}+\sum_i r_iN_{c,i} \]
同じ壁脚faceの軸力合成では、圧縮正の各成分を \(N_i\)、合成値を \(N=\sum_iN_i\) として、\(|N|\leq32\varepsilon\sum_i|N_i|\) のときだけ、正負どちらの値も零へ正規化します。\(\varepsilon=2^{-52}\) は倍精度の機械イプシロンです。これは相殺に伴う丸め誤差を扱う数値上の判定であり、厳密な全誤差上界を保証するものではありません。絶対的な力・応力のしきい値は設けず、単独の微小軸力は保持します。有意な引張軸力は引き続き適用外とし、耐力式の応力度範囲や物性値は変更しません。
解放側柱の面内Q・Mは零となる経路で、その数値残差を確認します。側柱の軸力腕長Mは零ではありません。軸力の釣合い合成と、壁板・柱の重複を控除した物理面積Aは別の量です。例えばlw=4000、t=180、左右600×600では中央と両柱の解析軸断面積の和は1440000 mm²、物理和集合Aは1332000 mm²です。軸力を重複面積の割合で任意に減算しません。軸剛性モデル自体の妥当性確認を、この内力合成の確認で代用しません。
中央壁柱のpos=0は下梁心の応答です。下部支持梁の形状・方向・支持関係から実face距離ℓを求め、左右側柱の明示faceと実空間高さを照合します。剛性用剛域長をface距離の代わりに使いません。別の接続梁のfaceが支配する場合、face不明・不一致、近傍位置の行しかない場合は未算定です。
現行局所断面力の符号はdMz/dx=+Qyです。梁心から上向きにℓ移す中央壁柱は、符号付きのまま一度だけ次の輸送を行います。
\[ M_{z,face}=M_{z,center}+Q_y\ell,\qquad \lambda=\frac{|M_{z,face}|}{|Q_{wall}|D} \]
側柱は既に同じfaceで回収されたNを使い、再輸送しません。絶対値化は輸送と軸力腕長合成の後です。壁脚以外の最大N・最大Mを組み合わせず、総応力へ長期成分を再加算しません。
GUI・MCPで選択したケース/組合せを検定する場合は、その応答を生成した実荷重集合に対して未対応部材荷重を検査します。対象集合が明示されない検定では、モデル内の全荷重ケースを保守的に検査します。ケース名だけから対象集合を推定しません。
初期Quの静的一次参照
長期参照Gは、その解析の長期載荷設定がONなら固定・積載・雪・その他の長期種別の全荷重を係数1で合成します。負の値も保持します。OFFと、正常に解決した空の長期集合は明示無載荷N=0です。応答取得の失敗はN=0へ置き換えません。設計用組合せや雪係数をこの集合へ無断適用しません。
水平参照EX/EYは、建物高さと鋼造高さ比による略算周期を使い、方向だけX/Yに設定した既定Ai条件で生成します。壁下辺の水平単位方向e=(ex,ey)に平行な荷重Ew=ex EX+ey EYを作り、正負をそれぞれ直接解きます。GもEwも節点・部材荷重を求解前に合成し、引張専用の反復や長期軸力無効化など当該runの静的設定を保ちます。active-set応答の事後重ね合わせや、一方の解の負号反転による代用は行いません。
Gは長期、Ewは非長期地震荷重として扱います。採用するN_Gは設定された静的一次参照の軸力であり、別の非線形構成則で長期載荷した後の軸力との完全一致を保証しません。保存済みのEX/EY名称や表示中の荷重ケースを初期参照に読み替えません。
Gから使うのは同じfaceの圧縮正N_Gとσ0=N_G/Aです。軸方向分布荷重のある側柱は固定端内力を含む実faceのNを採り、梁心のNを一定として運びません。各水平参照から壁全体M/Qを求め、λを選択した耐力式の1〜3に制限します。中央壁柱の下側Qyと上辺伝達力Qwは逆符号なので、参照応答の局所Qwに従って正負の引張側・圧縮側へ対応付けます。
この壁方向Ai参照はSEPIKAの採用するモデル化規約です。法令・規準による唯一の方向規則とはしません。増分の加力方向、時刻歴の方向・波形ピーク・瞬間応答から初期値を選ぶ規約ではなく、実時刻歴の応力状態を再現することを意味しません。対応する増分解析では材料強度を用い、横筋fyは割増せず、縦材料の自身の倍率は一度適用します。
全壁の正負Quを有限正値として確定してから非線形解析へ進みます。参照応答は変位・応力・履歴・外力の初期状態へ移さず、後続の長期載荷は従来どおり一回です。壁展開も一回で、参照応答は静的解析結果として保存しません。モデル化表示とDs判定は同じ入力・同じrunで採用したQuを使います。未解析・採用runなし・旧入力・欠落耐力は未解決と表示し、表示操作で再求解しません。
参照求解の特異・不収束、Ai生成不可、局所分岐不足、材料不正も開始拒否の理由になります。失敗した計算の新しい非線形結果・履歴は公開しません。計算中に入力を変更した場合は、その開始入力と一致しない結果を採用しません。
計算根拠と確認限界
初期モデルには静的一次参照のM/Qと長期軸力を用います。中央壁柱も軸力を負担するため、中央と両柱を同じfaceで合成します。ピン側柱の面内Q/Mが零でも、軸力の腕長によるモーメントは合成します。faceへの輸送符号は本モデルの局所符号に従い、M−Qℓを無条件に適用しません。
荒川min/meanの係数・分母と、λ、D/d、等価壁厚te・物理面積Aは本文で示す組合せを採用します。M/(Qd)とσ0=N/(te D)を使う方式は、SEPIKAのDと物理Aを使う方式と区別し、式の一部を混成しません。
国土交通省・建築研究所 中村聡宏の公開報告の本文p.44/PDF47式(6)は0.068・根号分母・Dと根号外の軸力項を示します。開口新設連層壁実験の評価を、一般開口モデルへ転用しません。
『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷、付録1-3.1(3)⑥b)、pp.715–716、 式(付1.3-32)・(付1.3-33)は、この二方式の係数・分母、D/d、等価壁厚・鉄筋比とスパン比を示します。 p.716の横筋比上限には1.2%に加えて壁板の鉛直せん断補強筋比の2倍という条件があり、 その上限を超える場合の例外には構造実験による終局強度の確認が必要です。 横筋比にはこの二つの上限を適用します。0.4Fcの圧縮上限は同頁の壁式には明記されていません。 この上限を柱のせん断式に対する0.4Fcの規定で正当化しません。引張域の適用と高圧縮域の安全性も確認できていないため、初期Quでは現在の軸応力度制限を維持します。範囲内で計算できることだけでは、個別壁の規準適合や破壊性状を保証しません。
同頁のI形断面では、引張側柱の総主筋量と圧縮側柱せいを使います。側柱のない長方形断面にはd=0.95Dと端部の曲げ補強筋量という別の定義があり、全壁の縦筋量による代用はできません。端部圧縮領域の閉鎖型補強筋による拘束が不十分な無側柱壁では、実験値と計算値の比が小さくなる傾向も示されています。側柱なしの壁は本節の初期Quの対象外とし、端部筋・拘束条件を推定して計算しません。
壁板縦横筋によるせん断補強と端部の曲げ補強筋は区別します。p.714にある壁筋比0.45%以上・周辺柱寸法等は、終局変形角からせん断剛性低下率を設定する条件であり、Qu式の一律の配筋条件へ読み替えません。p.716のFc18〜60 N/mm²の試験調査も、任意の軸力・配筋・材料域への適用を保証するものではありません。
2007年版pp.281–282・638–639及び2020年版原典全文への適合は未確認です。実験による破壊・履歴・軸剛性・動的応答・全適用域のValidationは未確認です。
実装参照:sepika_element::wall::static_face::StaticWallFace(crates/sepika-element/src/wall/static_face.rs)が同一faceの内力を解決し、sepika_solver::nonlinear::wall_reference(crates/sepika-solver/src/nonlinear/wall_reference.rs)がrunの初期Quを解決します。方式と耐力式は sepika_core::model::RcWallShearMethod・sepika_core::rc_wall_capacity::wall_shear_ultimate(crates/sepika-core/src/rc_wall_capacity.rs)が保持します。
仕口パネル要素
柱梁接合部のせん断変形を、採用柱の強軸・弱軸に対応する2方向の仕口パネル要素として評価します。仕口パネル要素が設けられた節点は、せん断変形を表す \( \gamma_X \)・\( \gamma_Y \) の 2 自由度を追加で持ちます。これらは全体 X・Y の基底を柱材軸の直交面へ投影した基底の係数です。鉛直柱では全体 X・Y 軸まわりの回転方向に一致しますが、傾斜柱では物理的な回転の X・Y 成分そのものではありません。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( \gamma_X,\ \gamma_Y \) | 柱材軸の直交面へ投影した全体 X・Y 基底によるせん断変形の係数 | rad |
| \( \gamma_s,\ \gamma_w \) | 柱の強軸・弱軸に対応するせん断変形角 | rad |
| \( V_e \) | 各方向の仕口パネル要素の実効体積 | mm³ |
| \( d_c \) | 各方向のせん断抵抗板の水平寸法 | mm |
| \( d_b \) | 梁フランジ板厚中心間距離 | mm |
| \( t_p \) | せん断抵抗板1枚あたりの有効厚 | mm |
| \( G \) | せん断弾性係数 | N/mm² |
| \( K_s,\ K_w \) | 柱の強軸・弱軸に対応するせん断剛性 | N·mm/rad |
| \( m_s,\ m_w \) | 柱の強軸・弱軸に対応するせん断モーメント | N·mm |
| \( \kappa \) | 各方向に用いる形状係数 | - |
| \( n \) | 各方向の仕口パネルの軸力比 | - |
| \( F_y \) | 各方向の抵抗板の基準強度(F 値) | N/mm² |
| \( {}_pM_y \) | 各方向の仕口パネルの降伏耐力 | N·mm |
モデル化の対象と既定
仕口パネル要素のモデル化は既定で有効で、準備計算パネルの「部材のモデル化」で建物一律に切り替えます。無効にすると接合部を剛節点として扱い、仕口パネル要素のせん断変形を考慮しません。
仕口パネル要素を設けるのは、次のすべてを満たす節点です。
FrameSectionUse::Columnの主架構線材が 1 本以上・FrameSectionUse::Girderの主架構線材が 1 本以上取り付く- 取り付く柱・梁がすべて S 造(CFT を除く)
- 梁の形状寸法と式の適用を解決でき、下側優先で採用した柱の諸元を解決でき、実効体積 \( V_e \) が正
柱の接合位置と一般のパネル結線に用いる幾何条件として、部材軸の鉛直成分 \( |e_z| \) が 0.8 以上または 0.2 未満であることを要求します。この範囲に入らない部材は斜材として仕口パネルの自由度と連成させず、節点で接合します。
ElementKind は解析定式化、FrameSectionUse は設計用途を表します。仕口パネルの柱・大梁候補は用途で抽出し、傾斜した柱や勾配のある大梁も用途を変更しません。部材軸の鉛直成分は、接合位置を適用できる幾何条件の確認にだけ用います。FrameSectionUse::Brace、用途不明、用途と ElementKind が不整合な部材は柱・大梁候補にせず、幾何から用途を補いません。
構造種別は構造種別の判定によります。材料の区分で決まるため、H 形の断面でも材料がコンクリートなら S 造の対象条件を満たしません。矩形断面でも材料が鋼材なら S 造と判定しますが、パネル式の適用には下記の柱・梁断面の条件を別に確認します。
RC/SRC の柱・梁が 1 本でも取り付く接合部は仕口パネル要素のモデル化対象外です。取り付く梁が RC であれば、柱が S であっても接合部はコンクリートが全体を拘束する RC の接合部になり、鋼部材だけの実効体積による弾性せん断剛性 \( G \cdot V_e \) では挙動を表せません。これらの柱梁接合部は剛域で有限寸法を評価し、断面算定は構造種別に応じた柱梁接合部の式で行います。
仕口パネル要素を設ける S 造接合部では、接合部に接続する柱・梁がすべて S のため剛域長が 0 となり、仕口パネル要素のせん断変形を明示的に評価しても剛域と二重に評価することにはなりません。
実装参照:柱・梁用途の解決とモデル化対象の判定は sepika_core::panel_zone::resolve_panel_joint(crates/sepika-core/src/panel_zone.rs)、自動生成は sepika_element::springs::panel_gen::apply_auto_panel_zones(crates/sepika-element/src/springs/panel_gen.rs)を参照してください。
仕口パネル要素のモデル化対象
CFT 柱を 1 本でも含む接合部は仕口パネル要素のモデル化対象外とします。CFT の接合部では充填コンクリートと通しダイアフラムが接合部のせん断挙動に関与し、鋼管のみの実効体積では剛性を表せないため、接合部を剛節点として扱います。柱梁接合部の断面算定での扱いは後述します。
| 柱断面 | 仕口パネル要素のモデル化 |
|---|---|
| H 形鋼・角形鋼管・円形鋼管 | 対象 |
| CFT(角形・円形) | 対象外 |
| RC・SRC | 対象外 |
| 組立 H 形 | その柱からは諸元を解決しない |
上表の「対象」は個々の柱断面の扱いです。接合部全体では、取り付く柱・梁がすべて S 造で、CFT 柱を含まず、下側優先で採用した柱の諸元を解決できる場合に仕口パネル要素をモデル化します。RC/SRC が 1 本でも混じる接合部は対象外です。採用柱が組立 H 形などの未対応断面の場合は理由付きエラーとし、他の解決可能な柱へ切り替えません。
仕口パネル要素の剛性
仕口パネル要素は採用柱の強軸・弱軸に対応するせん断モーメント \( \boldsymbol m=(m_s,m_w)^{\mathsf T} \) とせん断変形角 \( \boldsymbol\gamma_p=(\gamma_s,\gamma_w)^{\mathsf T} \) を持ちます。各方向の剛性は、その方向の実効体積とせん断弾性係数 \( G \) から定まります。
\[ \boldsymbol m=\boldsymbol K_p\boldsymbol\gamma_p,\qquad \boldsymbol K_p=\operatorname{diag}(K_s,K_w),\qquad K_i=G V_{e,i}\quad(i=s,w) \]
せん断弾性係数 \( G \) は、下側優先で採用した柱に割り当てられた材料から求めます。材料に \( G \) の明示値があればその値を優先し、未指定の場合だけヤング係数 \( E \) とポアソン比 \( \nu \) から次式で求めます。\( E \) と \( G \) の単位は N/mm² です。
\[ G = \frac{E}{2(1+\nu)} \]
採用する \( G \) とせん断剛性 \( G V_e \) は、いずれも有限の正値が必要です。明示値が不正な場合に導出値へ切り替えることはありません。0・負値・非有限値や、積のオーバーフロー・アンダーフローによって条件を満たさない入力は、接合部・採用柱と理由を示して拒否します。\( G=0 \) を剛接合や仕口パネルのモデル化解除を表す指定としては扱いません。明示された仕口パネル要素にもこの条件を適用し、不正値を剛パネル・微小値・既定材料へ置き換えません。
柱主軸と全体座標の変換
採用柱の強軸・弱軸のモーメント方向を表す3次元の直交単位ベクトルを \( \boldsymbol b_s,\boldsymbol b_w \) とし、列に並べた行列を \( \boldsymbol B=[\boldsymbol b_s\ \boldsymbol b_w] \) とします。柱の有限な参照方向から材軸成分を除去して直交化し、平行などで直交成分が退化する場合は部材座標系と同じ全体 X・Y の基準方向で補います。非有限の参照方向や、有限値でも直交化・正規化の演算によって有限な単位直交軸を解決できない参照方向は、接合部・採用柱と理由を示して拒否します。\( \boldsymbol E \) は全体 X・Y の2成分を3次元へ埋め込む行列です。
\[ \boldsymbol E= \begin{bmatrix}1&0\\0&1\\0&0\end{bmatrix},\qquad \boldsymbol A=\boldsymbol B^{\mathsf T}\boldsymbol E,\qquad \boldsymbol\gamma_p=\boldsymbol A\boldsymbol\gamma,\qquad \boldsymbol\gamma=(\gamma_X,\gamma_Y)^{\mathsf T} \]
仕口パネルの物理的なせん断回転ベクトルは \( \boldsymbol B\boldsymbol A\boldsymbol\gamma \) です。柱断面だけを回転したときは柱主軸への負担配分が変わり、建物全体をXY平面内で全体Z軸まわりに回転したときは、同じ物理応答が全体座標で回転します。梁の方向ごとに仮想の仕口パネルを追加しません。
取り付く部材の接合部端の回転には、梁で \( \zeta=-1/2 \)、柱で \( \zeta=+1/2 \) として、次の3成分を加えます。傾斜柱では全体 Z 軸まわりの回転成分も含め、全体 X・Y 成分だけを部材へ渡しません。既存の剛体アーム変換にも、この回転を同じように反映します。
\[ \Delta\boldsymbol\phi=\zeta\boldsymbol B\boldsymbol A\boldsymbol\gamma \]
仕口パネルの物理的なせん断モーメントベクトルは \( \boldsymbol B\boldsymbol m \) であり、解析で扱う全体 X・Y 成分とその接線は次式です。非線形時は、\( \boldsymbol K_p \) を各方向の現在のせん断接線とします。
\[ \boldsymbol M_S= \begin{pmatrix}M_{SX}\\M_{SY}\end{pmatrix} =\boldsymbol A^{\mathsf T}\boldsymbol m,\qquad \boldsymbol K_\gamma=\boldsymbol A^{\mathsf T}\boldsymbol K_p\boldsymbol A \]
変形・内力・接線と部材側の回転に同じ基底を用いることで、せん断成分の仮想仕事は一致します。
\[ \delta\boldsymbol\gamma^{\mathsf T}\boldsymbol M_S =\delta\boldsymbol\gamma_p^{\mathsf T}\boldsymbol m =(\boldsymbol B\boldsymbol A\delta\boldsymbol\gamma)^{\mathsf T} (\boldsymbol B\boldsymbol m) \]
鉛直柱では \( \boldsymbol A \) は直交変換で、さらに2方向の剛性が等しい場合だけ \( \boldsymbol K_\gamma=K\boldsymbol I \) に帰着します。傾斜柱では \( \boldsymbol A \) を直交行列として扱わず、上記の行列積をそのまま用います。この座標変換の整合は、傾斜柱を含むすべての接合形式の物理的な適用妥当性を保証するものではありません。
実装参照:仕口パネル要素は sepika_element::springs::panel::PanelZone(crates/sepika-element/src/springs/panel.rs)、部材端への回転と仕事共役な内力・接線・質量の変換は sepika_element::frame::panel_offset::PanelOffsetMember(crates/sepika-element/src/frame/panel_offset.rs)が実装します。柱の主軸は sepika_core::panel_zone::panel_column_moment_axes、明示パネルの採用G・剛性の検査は同 resolve_explicit_panel_joint(crates/sepika-core/src/panel_zone.rs)を参照してください。
部材端の接合面とオフセット
梁端は、下側優先で採用した柱の断面と向き、梁材軸から一意に決まる実接合面へ接続します。オフセットは接合部節点からその面までの梁材軸上の距離 [mm] です。柱のせいを全方向へ共用せず、断面性能表の表示用せい・幅を形状寸法の代わりに使いません。
柱のせい方向・幅方向の単位ベクトルを \(\boldsymbol d,\boldsymbol w\)、梁の単位材軸を \(\boldsymbol e\) とし、\(a=|\boldsymbol e\cdot\boldsymbol d|,\ b=|\boldsymbol e\cdot\boldsymbol w|\) とします。柱材軸方向の成分を除いた断面への射影を使って交点を求めますが、射影を単位化して距離を短縮しません。傾斜柱でも、得られる長さは元の梁材軸に沿う距離です。部材方向・標準梁形式に関する既存の適用条件は別途満たす必要があります。
| 採用柱 | 一意に解決する接合面と距離 |
|---|---|
| H形鋼 | 梁材軸が外フランジの広面の内部に交わる場合。その外面まで \(H/(2a)\)。斜交でも交点がフランジ幅の内部なら解決します。 |
| 角形鋼管・角R既知 | 入力した外寸と角Rによる実外周と梁材軸との交点。平面部分・丸角部分を区別し、丸角を直角の外接矩形へ置き換えません。明示した角R=0は直角です。 |
| 角形鋼管・角R未知 | 角Rの許容範囲全体で交点が平面部分に残り、距離が変わらない場合だけ解決します。主軸方向に加え、長辺の中央部分へ当たる一部の斜交も含みます。 |
| 円形鋼管 | 外円筒面まで \(D_o/(2\sqrt{a^2+b^2})\)。鉛直柱と水平梁では外半径です。 |
H形鋼の広面の内部である条件は \(a>0\) かつ \(bH/(2a)<B/2\) です。フランジ端の境界、フランジ端面・ウェブ側への接合は、採用面を指定する接合詳細が既存入力になく一意に決められません。弱軸方向の梁について、フランジ幅の半分やウェブ厚の半分を自動採用しません。弱軸のせん断抵抗板を持つことと、梁の接合面を確定できることは別の条件です。広面内部の判定には方向の数値公差1×10⁻¹²を用い、幅の同じ割合だけ境界を除きます。
角R未知の角形鋼管では、最大角Rを \(R_{\max}=\min(H,B)/2\) とします。せい側の外面との交点で幅座標が \(B/2-R_{\max}\) 以下、または幅側の外面との交点でせい座標が \(H/2-R_{\max}\) 以下なら、全許容角Rで距離が同じです。それ以外は角Rの入力が必要です。
角R未知の場合に上表で判定するのは接合面距離だけです。断面性能・質量など別の計算に角Rの入力が必要なら、その入力条件に従って準備計算・解析を停止します。面距離が一意であることから、他の幾何性能を補完しません。
必要な面が未解決なら、接合部・採用柱・対象梁と理由を示して準備計算・解析を停止します。外接矩形、最大せい、最小距離、平均、0による補完や、未解決の接合部だけを黙って除く処理は行いません。斜交という理由だけでも除外しません。誤った接合面距離は剛性・応力・反力へ影響し、安全側の扱いとは判断できません。
柱端のオフセットは、接続梁の断面せいの最大値の半分 [mm] を引き続き用います。梁端の方向別解決によって柱端の接合形式や梁半せいの評価を拡張しません。
オフセットは手動剛域長と別に保持し、剛体アーム長には両者の大きい方を用います。断面検定の危険断面位置も別の量で、接合面距離の変更から自動的に変更しません。同じ剛体変換を剛性、部材荷重、材端内力、反力へ適用します。部材荷重は元の材長上の作用位置・区間を保持し、剛体アーム上の荷重も力とモーメントを保って節点へ伝えます。
再準備では面距離を置き換え、重ね加算しません。モデル化解除・既存の対象外では仕口パネル分のオフセットを消します。これは、必要な面を解決できない入力への0補完とは異なります。保存された仕口パネルの接続距離が現在の形状・向きと一致しないモデルは直接解析を停止し、準備計算の再実行を要求します。旧計算契約の保存解析成果は再解析が必要です。モデル化ビューの各構面にも同じ接合面距離を用い、未解決の寸法を四角形として描きません。
実装参照:接合面距離は sepika_core::panel_zone::panel_connection_offset、保存距離の整合検査は同 validate_panel_connection_offsets(crates/sepika-core/src/panel_zone.rs)、モデルへの反映は sepika_element::springs::panel_gen::apply_auto_panel_zones(crates/sepika-element/src/springs/panel_gen.rs)を参照してください。
仕口パネル要素の寸法と実効体積
仕口パネル要素のモデル化対象は S 造(CFT を除く)であるため、ここでは鋼製柱の諸元を示します。
体積 \( V_e \) は柱断面の形状から次のとおり算定します。\( d_c \) は柱せい方向の仕口パネル要素の寸法、\( d_b \) は梁フランジ板厚中心間距離、\( t_p \) は仕口パネル要素の板厚です。
| 柱断面 | \( d_c \) | \( t_p \) | \( V_e \) |
|---|---|---|---|
| H 形鋼・強軸 | せい − フランジ厚 | ウェブ厚 | \( d_c \cdot d_b \cdot t_p \) |
| H 形鋼・弱軸 | フランジ幅 | フランジ1枚の厚さ | \( 2 \, d_c \cdot d_b \cdot t_p \) |
| 角形鋼管・強軸 | せい − 板厚 | 鋼管壁1枚の厚さ | \( 2 \, d_c \cdot d_b \cdot t_p \) |
| 角形鋼管・弱軸 | 幅 − 板厚 | 鋼管壁1枚の厚さ | \( 2 \, d_c \cdot d_b \cdot t_p \) |
| 円形鋼管・両軸 | 外径 − 板厚 | 鋼管壁1枚の厚さ | \( 2 \, d_c \cdot d_b \cdot t_p \) |
H 形柱の強軸側はウェブ1枚、弱軸側は幅全体にわたるフランジ2枚をせん断板として扱います。角形・円形鋼管はウェブ2枚相当です。中実6面体の体積ではありません。角形鋼管の弱軸側では、強軸側の式のせいと幅を交換し、円形鋼管では両軸を同じ諸元とします。
H 形柱の弱軸側の近似
弱軸側は、フランジ2枚の純せん断を負担機構とするモデルです。フランジの面外曲げ、柱ウェブによる拘束の影響、弱軸側の曲げ・せん断相互作用による耐力低下は含めません。実際にこれらが支配する接合部では耐力を過大評価する可能性があり、安全側の近似や規準適合を保証するモデルではありません。2方向のせん断成分を正しく変換できることと、この近似の物理的な妥当性は区別してください。
梁の \( d_b \) はフランジの板厚中心間距離です。外寸・板厚の単位は mm とし、断面形状の寸法から次のように求めます。断面性能表の表示用せいはこの距離の算定元にしません。
| 梁形状 | 板厚中心間距離 \( d_b \) | パネル式の扱い |
|---|---|---|
| H 形鋼 | \( D-t_f \) | 幾何解決の対象 |
| 組立 H 形 | \( D-(t_{f上}+t_{f下})/2 \) | 異厚フランジの幾何解決の対象 |
| 箱形・円形・その他・形状未定義 | フランジ対の定義を解決しない | 接合詳細と式の適用根拠未確認につき未算定 |
H・組立 H 梁では外寸、幅、上下フランジ板厚、ウェブ厚が有限の正値であり、上下フランジ板厚の合計が外寸未満である必要があります。上下フランジを入れ替えても中心間距離は同じです。組立 H 梁の幾何解決は、組立 H 柱の適用範囲を広げません。
非H梁には、箱形の外寸から板厚を引いた距離、円形の代表径、直接入力されたせいをH梁の板厚中心間距離として自動採用しません。寸法を求められることと、当該接合部にパネルの剛性・降伏式を適用できることは別の確認です。非H梁の拡張には原典の接合詳細図、対象梁形状、板厚中心間距離の定義、適用式・条件の照合が必要です。
候補接合部に不正寸法・未対応梁があれば、対応するH梁だけを抽出して成功とはしません。接合部全体のパネルを自動生成せず、接合部ID、梁ID、形状、検討面を識別する梁材軸と不足条件を通知します。せん断変形をモデル化できない制限であり、剛接合の妥当性を確認した結果ではありません。該当する検討面の断面検定も同じ理由で未算定になります。
標準形式の適用範囲
接合部から外向きの梁材軸によって検討面と左右を分け、相対する梁の上・下フランジ板厚中心位置が両方一致する面に限り、標準形式の式を適用します。片側梁は比較相手なしとして除外せず、その梁の寸法を用います。直交する梁は別の検討面です。同じ側に複数梁が取り付く形式は未対応です。
現行の標準形式ゲートは、梁材軸が水平、かつ参照ベクトルを材軸へ直交化した断面せい方向が全体座標の±Zである梁に限定します。方向の数値公差は1×10⁻¹²(無次元)で、勾配の設計許容値ではありません。横倒し・斜め断面回転・勾配梁・鉛直Girderは用途を保持したまま理由付き未対応とし、梁を消去して片側形式にはしません。参照ベクトルの材軸成分は除去して判定するため、例えばX方向梁の [1,0,1] は対応します。せい方向が−Zの組立Hでは上・下板厚を全体座標の上下へ入れ替えます。一般3D方向への寸法投影による適用拡張は行っていません。
接合部節点から対象端の実材軸端までの鉛直差を z として、一律鉛直偏心を含む実位置でフランジ位置を比較します。未指定・不正な偏心を0へ補いません。接合部を原点とする局所鉛直位置を z とすると、上フランジ中心は z + D/2 − tf上/2、下フランジ中心は z − D/2 + tf下/2 です。外寸差、db 差、上下位置差を区別します。同じ外寸でも配置が異なれば段違いになり、異なる外寸でも両フランジ中心が一致する場合は外寸差だけで除外しません。
同じ断面・向きの相対する梁でも、一方の偏心0 mm、他方+100 mmなら、上・下フランジ中心がともに100 mmずれ、段違いとして未対応になります。両梁が同じ一律偏心なら相対位置の一致は維持します。共通の鉛直移動を新しいパネル中心位置・中心偏心・耐力式へ置き換えることはせず、既存のパネル寸法・材料・適用式を保ちます。
位置差の絶対値が上・下とも 1×10⁻⁶ mm 以下(境界を含む)なら一致とします。この公差は局所座標の数値誤差用で、施工許容差・規準値ではありません。梁せい差149/150/151 mmによって判定を切り替えません。梁せい差150 mmを判定境界とする方式は採用していません。
梁端の解析接続は既存節点を保持し、鉛直偏心接続によって節点側の仕口パネル回転を実材軸端へ伝えます。既存の仕口パネルの適合と適用判定を維持し、標準形式外の段違い接合を新たに対応済みとはしません。梁を天端基準へ自動移動せず、材軸方向のパネル面距離も鉛直偏心に転用しません。
一面でも位置不一致・未対応梁があれば、接合部全体の標準パネル要素を自動生成せず、節点・面・梁ID・両梁のdb・上下位置差を通知します。解析側の db は取り付く梁の板厚中心間距離の最大値を両主軸へ共通で用います。各方向の実効体積・剛性は、その方向の抵抗板から求めます。この共通最大 db は、異なる梁せいを持つ接合部の各方向の実効高さや安全側を保証するものではありません。自動生成しない場合はパネル分のオフセットを残さず、フェイス応力の評価位置と手動剛域はそれぞれの入力条件に従います。これは別の接合モデルや剛接合の妥当性を確認した結果ではありません。
断面検定は元の梁構面の標準形式を確認したうえで、柱の強軸・弱軸へ需要を集約します。同じ主軸へ寄与する構面間でも上下フランジ位置の一致が必要です。未対応構面が寄与する方向をゼロ耐力・合格へ置換せず「未算定」とし、独立する整列直交方向の標準形式検定は保持します。解析のパネルモーメントを用いる場合、解析の共通最大dbと検定方向の高さが異なる方向も、その方向の容量の実幾何対応が未確認のため未算定です。詳細はS 造柱梁接合部を参照してください。古い・手動のパネル要素も同じ位置判定を通り、条件を満たさない場合は理由付きエラーで解析を停止します。未対応接合を数値上の剛パネルへ置換して解析成功にしません。正当な標準形式の明示パネルは引き続き使用できます。
保存成果の読込時にも、共通resolverで現在の標準形式の適用条件を確認します。対象外面が旧成功結果になっている、または現在の共通理由を記録した未算定面がない場合、その解析・検定成果を利用不可にして再解析を要求し、面と位置差を含む理由を残します。全体解析の応力は接合部剛性と連成するため、旧成功成果の直交面だけを再認証しません。対応標準形式の成果と、現在の共通理由を記録した未算定面+別標準面の保存成果は保持します。モデル編集後の古い解析を対象外形状の再検定へ流用する入口も拒否します。一般の算法版管理は#587で別途扱います。
解析成果や旧Sパネルの成功結果を含まない空の結果容器・床板だけの直接設計は、旧架構成果の利用制限では停止しません。床板の自重・材料条件はその直接設計入口で検証します。静的/組合せ・固有値・増分/保有耐力・立体/質点系時刻歴などの解析成果、保存内力/パネル需要、または旧Sパネル成功結果を持つ場合は、従来どおり共通幾何による利用不可判定を受けます。
段違い形式の解除には、採用版『鋼構造接合部設計指針』§5.2の接合図・対象柱種・ダイアフラムと、上端/下端/両端段差ごとの耐力・有効体積・剛性の照合が必要です。建築研究資料No.143、2013年、§2(7)、本文pp.16–17/PDF26–27頁は偏心付加曲げと上下パネルのせん断差の考慮を要求します。小さいdbへの置換や解析モーメントの取得だけでは、この適用範囲を証明できません。
実装参照:面・上下位置の判定は sepika_core::panel_zone::{panel_joint_planes, BeamFlangePositions, standard_flange_differences}(crates/sepika-core/src/panel_zone.rs)、面別検定の配線は sepika_design_jp::joint_wiring::steel_panel(crates/sepika-design-jp/src/joint_wiring/steel_panel.rs)が担います。
板厚中心間距離の定義は、北岡聡・田中剛「ノンスチフナ形式H形断面柱梁接合部の弾塑性挙動」(日本建築学会、2016年、本文p.13/PDF4頁、§2.1)を参照します。対象はH柱/H梁であり、非Hへの一般化や全塑性耐力式の降伏式への置換を裏付けるものではありません。学会指針本文への適合は未確認です。
仕口パネル要素の板厚 \( t_p \) は次の順で解決します。
- 断面の「パネル板厚 tp」が入力されていれば、その値を各方向のせん断抵抗板1枚あたりの有効厚として使う
- 未入力なら上表のとおり柱の断面形状から算定
「パネル板厚 tp」はモデルタブの断面作成パネルで、対象の断面を選んだうえで入力します。この入力欄では空欄・0を確定すると指定が解除され、断面形状からの算定値を用います。板厚を指定する場合は有限の正値が必要です。この値は CFT を除く S 造の仕口パネル要素のモデル化と、S/CFT の柱梁接合部の断面算定に使われます。CFT では仕口パネル要素を生成しませんが、柱梁接合部の断面算定には用います。
H 形柱の弱軸側では、指定厚を2枚のフランジへそれぞれ用います。指定厚そのものを2枚の合計厚には読み替えません。F 値の板厚区分には、この有効厚ではなく、強軸側は実ウェブ厚、弱軸側は実フランジ厚、鋼管は実壁厚を用います。
柱由来の諸元は、接合部の物理的な下側柱を優先し、下側柱が存在しない場合だけ上側柱を採用します。上下は接合部と柱の接続・座標から決め、実効体積の大小・同値、部材の並び順・識別番号・端点の登録順には依存しません。採用柱から寸法・板厚・実効体積・形状係数・せん断弾性係数・基準強度・軸力比に用いる断面積と軸力をそろえます。非線形解析の節点・材軸等も同じ柱を参照し、検定用軸力はその柱の接合部側の端と符号を保ちます。釣合いに必要な上下柱・梁の応力は引き続き両側から組み立てます。
算定対象で採用側の柱がない、用途不明などにより柱の存在・上下・候補を一意に特定できない、採用柱の材料・断面・寸法・実効体積・断面積・軸剛性などが欠落・不正、または未対応である場合は、接合部と理由を示すエラーとし、正常な算定結果を出しません。柱の物理的な存在と諸元の有効性は分けて扱い、不正な下側柱を候補から落として上側柱へ切り替えません。既定材料・ゼロ軸力・正常な剛パネルで補いません。残存する明示パネルに参照できる柱がない場合も、接合部と理由を示して解析を停止します。この採用規則は剛性・耐力の最小値や安全側を保証する規則ではありません。
仕口パネル解析要素とS 造柱梁接合部の断面算定は、どちらも柱2主軸の抵抗板を用います。検定では元の梁構面の標準形式と、同じ主軸へ寄与する構面間の高さを別に確認します。CFT の柱梁接合部については仕口パネル要素を生成せず、詳細な諸元・式は同ページを正本とします。
部材との接合位置
仕口パネル要素が設けられた節点では、部材は節点そのものではなく、仕口パネル要素の寸法分だけ離れた接合位置で接合します。節点の変位(せん断変形角を含む 8 成分)と部材端の変位(6 成分)は次式で適合します。
\[ {d}={D}+[B_0]\bigl({\Phi}+\zeta\boldsymbol B\boldsymbol A\boldsymbol\gamma\bigr),\qquad {\phi}={\Phi}+\zeta\boldsymbol B\boldsymbol A\boldsymbol\gamma \]
\[ [B_0]=\begin{bmatrix}0&Z_0&-Y_0\\-Z_0&0&X_0\\Y_0&-X_0&0\end{bmatrix} \]
部材端の応力も同じ変換行列の転置で節点位置へ写され、仕口パネル要素のせん断モーメントと釣り合います。
\[ M^p_{SX} + \sum_i M^i_{SX} = 0, \quad M^p_{SY} + \sum_i M^i_{SY} = 0 \]
係数 \( \zeta \) は部材が仕口パネル要素のどの面で接合するかで決まり、水平材(はり)は \( -0.5 \)、鉛直材(柱)は \( +0.5 \) とします。仕口パネル要素のせん断変形角の半分ずつを、梁と柱が互いに逆向きの材端回転として受け持つことを表します。
接合部から他端へ向かう部材材軸に沿って、部材端の接合面とオフセットで解決した距離を与えます。梁端の実接合面距離と柱端の梁半せいは、実効体積に用いる抵抗板の寸法とは区別します。
仕口パネル要素分のオフセットは部材の剛体アーム長へ算入します(仕口パネル要素の剛域長への反映)。剛体アーム \( [B_0] \) は剛域変換がそのまま担い、幾何剛性・せん断降伏の内法高さ・座屈長さ係数の剛度比も同じ可撓長を用います。剛域長とオフセットは入力・表示上区別しますが、剛域の自動再算定はオフセットを変更せず、パネル配置の再生成時に現在の配置から更新します。
このオフセットは、断面算定の危険断面位置とは独立に定めます。危険断面位置は設計上の評価位置であって、部材が実際にどこで接合するかとは別に定まるためです。
実装参照:柱端の梁半せいは sepika_core::panel_zone::panel_beam_half_extent(crates/sepika-core/src/panel_zone.rs)を参照してください。
仕口パネル要素(S造)の弾塑性
この節の降伏耐力式と形状係数は、仕口パネル要素をモデル化する S 造に適用します。CFT の式は柱梁接合部の断面算定専用であり、仕口パネル要素の弾塑性モデル化には用いません。
保有水平耐力計算(増分解析)・非線形時刻歴応答解析では、仕口パネル要素の降伏を考慮します。骨格は次の降伏耐力を持つバイリニア(二次勾配比 0.01)とし、履歴則は線形移動硬化(kinematic hardening。除荷剛性は初期剛性、再載荷で降伏点が移動)です。
軸力比 \( n=0 \) の基準降伏耐力を \( {}_p M_{y0} \) として、次式で定義します。
\[ {}_p M_{y0} = (V_e/\kappa) (F_y/\sqrt{3}) \]
形状係数 \( \kappa \) は断面ごとに次式によります。\( b_c \) は柱のフランジ幅(角形は柱幅)、\( t_f \) はフランジ厚です。
| 柱断面 | \( \kappa \) |
|---|---|
| H 形鋼・強軸 | \( \dfrac{1}{2/3 + 4 b_c t_f/(d_c t_p)} + \dfrac{1}{1 + d_c t_p/(6 b_c t_f)} \) |
| H 形鋼・弱軸 | \( 3/2 \)(フランジを矩形せん断板として扱う係数) |
| 角形鋼管 | \( \dfrac{1}{2/3 + 2 b_c/d_c} + \dfrac{1}{1 + d_c/(3 b_c)} \) |
| 円形鋼管 | \( 4/\pi \) |
角形鋼管は方向ごとに \( d_c \) と直交する柱幅 \( b_c \) を対応させます。H 形柱の弱軸側に採用する \( \kappa=3/2 \) は前述の純せん断2枚板モデルの係数であり、弱軸接合部の曲げによる低下を含めた容量式ではありません。
軸力比は、前述の規則で採用した柱の現在の試行変位による弾性推定軸力から、各方向 \( i=s,w \) について圧縮軸力 \( /(F_i A) \) として更新します。柱軸力と断面積は両方向で同じ値を用い、フランジへの新たな軸力分配は行いません。各方向のせん断抵抗板の F 値を断面全体の軸耐力へ用いる既存式の妥当性は未確認です。初期軸力や直前の確定軸力を固定して用いる方式ではありません。引張軸力では \( n_i=0 \) とし、圧縮では \( 0\le n_i<1 \) の範囲を対象とします。各方向の降伏耐力は次式です。
\[ {}p M{y,i}(n_i)={}p M{y0,i}\sqrt{1-n_i^2}\qquad(i=s,w) \]
非線形ばねに設定する降伏耐力はこの式の値と一致させ、基準降伏耐力に対する比率の下限は設けません。算定値は有限で 1×10⁻⁹ N·mm 以上(境界を含む)である必要があります。この絶対値は採用する履歴ばねが降伏値をそのまま設定できる範囲の下端であり、物理的な残留耐力や安全率ではありません。下端未満の値を下端へ引き上げて計算を継続しません。
軸力比が1以上となる軸耐力到達・超過、ゼロ降伏耐力、上記下端未満、軸力比や降伏耐力を有限値として算定できない状態は未対応です。これらの試行は状態を変更する前に、接合部と理由を示して拒否します。既存の刻み再試行条件に従い、解析を継続できなければ停止します。この判定は試行変位から推定した軸力に対する適用範囲の確認であり、反復途中の試行で拒否されても、確定した実柱の軸耐力到達や軸崩壊を意味しません。ゼロ耐力時の履歴則や軸方向との連成挙動の適用根拠は未確認であり、正の残留耐力・剛接合・解析成功へ置き換えません。
降伏式のN・A・Fと形状別の適用根拠は未確認です。全塑性相関式・接合部の最大耐力とは区別します。降伏耐力と適用根拠を参照してください。
この降伏耐力は処女載荷の降伏点と移動硬化の降伏幅を定める値です。降伏後も二次勾配比0.01で硬化するため、応答モーメントの上限値を意味しません。降伏式との一致や未対応状態での停止は、高軸力域の物理的妥当性や接合部全体の安全側を保証するものではありません。
採用柱の i 端から j 端への初期材軸単位ベクトルを \( \boldsymbol{a} \)、節点並進変位を \( \boldsymbol{u}_i,\boldsymbol{u}_j \) とすると、推定引張軸力は \( N_e=(EA/L)\boldsymbol{a}\cdot(\boldsymbol{u}_j-\boldsymbol{u}_i) \) です。回転変位はこの評価に含めません。柱の材料応答から回収した軸力や、部材荷重を含む接合部側の断面力ではありません。
柱の軸剛性と各方向の基準軸耐力は、実際の節点間長さ L [mm]、断面積 A [mm²]、採用したヤング係数 E [N/mm²] と方向別基準強度 F [N/mm²] による EA/L [N/mm] と F・A [N] を用います。これらの入力と算定値は正の有限値である必要があり、算定不能は接合部・採用柱と理由を付けた入力エラーとします。1 mm 未満の長さや 1 N 未満の基準軸耐力も実値で評価し、寸法や耐力を数値下限へ引き上げません。変位から求めた軸力比が非有限となる場合も計算を継続しません。
この推定が実際の柱軸力と一致するには、柱の軸応答が採用した E・A・節点間長による弾性軸剛性に従い、初期ひずみ・塑性軸ひずみ・部材荷重による軸力成分等を別途加える必要がないことが前提です。軸塑性化した柱や軸方向の部材荷重を持つ柱について、推定値と接合部側軸力の一致は保証しません。圧縮軸力を小さく推定するとパネル耐力を大きく評価しうるため、安全側の近似とは扱いません。
非線形応答の利用上の制限
二方向のせん断ばねは、それぞれ独立した移動硬化履歴を持ちます。二方向せん断間、パネル軸変形、パネル曲げとの連成降伏面は表現しません。固定した軸力比のもとでの一次元履歴と、変動する軸力を含む接合部全体の妥当性は区別する必要があります。
軸力比が変わる場合も塑性履歴を保持して降伏耐力を更新しますが、軸力変化に対するパネル内力の連成接線と軸方向の仕事は含めません。せん断角に関する接線が得られることだけでは、軸変位を含む全応答の整合を保証できません。未確定の試行を取り消すと、せん断変形角・軸力状態・降伏耐力・塑性履歴は直前の確定状態へ戻り、内力・接線と再試行の応答も同じ確定状態に対応します。この復元の整合は、変動軸力下の除荷・再載荷や連成接合部モデルの妥当性確認を意味しません。固定軸力比でも実験による妥当性確認は未実施です。
仕口パネル要素の基準強度は、採用柱の割当鋼材と、各方向の抵抗板の実板厚から求めます。既知材種では材種表の実板厚区分による F 値を優先し、入力済みの降伏強度で上書きしません。表に対応しない名前の割当鋼材は直接入力材料として、正の有限値の降伏強度を用います。既知材種の適用範囲外、必要な実板厚・材料の欠落や不正は理由付き入力エラーとし、40 mm・235 N/mm²や別の部位の強度で補いません。
実装参照:弾塑性の仕口パネル要素は sepika_element::springs::panel::PanelZone::new_nonlinear が生成し、降伏耐力は PanelZone::yield_moment、軸力比は PanelZone::axial_ratio、仕口パネル要素のモーメントは PanelZone::panel_moments が返します(いずれも crates/sepika-element/src/springs/panel.rs)。履歴則は sepika_material::uniaxial::Bilinear(二次勾配比 0.01)です。
質量
仕口パネル要素そのものの質量は付与しません。取り付く部材の質量は、回転・剛体アームと同じ変換行列の両側から写すため、追加のせん断自由度にも寄与し得ます。仕口パネル要素自身の質量が0であることと、全体系の当該自由度に質量がないことは区別します。
柱梁接合部の断面算定
仕口パネル要素のモデル化と柱梁接合部の断面算定は独立です。CFT は仕口パネル要素をモデル化しませんが、CFT を含む柱梁接合部は断面算定の対象です。
柱梁接合部の対象範囲、CFT の \( d_c \)・\( t_p \)・\( d_b \)・\( V_e \)・\( \kappa \)・\( n \)・\( F_y \)、降伏耐力式、設計用モーメント、検定方法は S 造柱梁接合部 に集約しています。CFT の詳細な算定式の正本は同ページであり、本ページでは仕口パネル要素と柱梁接合部の対象範囲の境界だけを示します。
実装参照:S 造柱梁接合部の断面算定は sepika_design_jp::steel::panel_zone::s_panel_zone_check(crates/sepika-design-jp/src/steel/panel_zone.rs)を参照してください。
諸元の確認
生成された仕口パネル要素の寸法(\( d_c,d_b,t_p \))・実効体積 \( V_e \)・せん断剛性 \( K_s,K_w \) は、準備計算タブの「仕口パネル」で柱強軸・弱軸の2行として確認できます。3D の位置はモデル化ビューで確認できます。
実装参照:準備計算での仕口パネルの一覧は sepika_app::prep_view::panel_zone_section(crates/sepika-app/src/prep_view.rs)を参照してください(仕口パネル)。
ばね要素(免震・制振・節点ばね・支点ばね)
免震支承材、制振要素、節点ばね、支点ばねを算定します。 各特性にはバイリニア・摩擦・マクスウェル要素の力学モデルを採用し、製品別に設定した係数と入力条件を用います。製品固有の係数は対応する製品の適用条件に限り、他製品へ一般化しません。
算定式
免震支承(積層ゴム)は各方向独立バイリニアとし、摩擦支承は \( Q_{\max} = \mu \cdot N \)(長期軸力)を 2 次元摩擦で射影します。歪依存は次式によります。
\[ Q_d(\gamma) = Q_{d0} \cdot C_{Qd}(\gamma) \]
\[ K_2(\gamma) = K_{2,0} \cdot C_{Kd}(\gamma) \]
マクスウェルダンパーはバネ Kd と粘性ダッシュポットの直列(後退 Euler、線形 \( \alpha = 1 \) かつリリーフなしは閉形式、それ以外はスカラー Newton)とします。時間刻み \( \Delta t \le 0 \)(静的・線形解析)では不活性(力・剛性 0)とします。ダッシュポット力は、リリーフ速度 \( V_r \) を指定しない場合は次式です。
\[ F_c = C_0 \cdot \operatorname{sign}(V) \cdot |V|^\alpha \]
リリーフ速度 \( V_r \)(オイルダンパーのバイパス弁による頭打ち特性)を指定した場合、 リリーフ後の減衰係数比 \( C_2/C_1 \) による折れ線とします。
\[ F_c = \begin{cases} C_0 \cdot \operatorname{sign}(V) \cdot |V|^\alpha & (|V| \le V_r) \ \operatorname{sign}(V) \cdot \left( C_0 \cdot V_r^\alpha + C_2 \cdot (|V| - V_r) \right) & (|V| > V_r) \end{cases} \]
ここで \( C_1 = C_0 \cdot \alpha \cdot V_r^{\alpha-1} \)(リリーフ速度における接線減衰係数)、 \( C_2 = (C_2/C_1) \cdot C_1 \) です。リリーフ点で力は連続(\( C_0 \cdot V_r^\alpha \) に一致)、 勾配は \( C_1 \) から \( C_2 \) へ不連続に低下します。
節点ばねは、局所各自由度に指定のばね剛性を独立に持つ標準的な 2 節点ばねとします(成分ごとに \( k \cdot (u_i - u_j) \))。ばね定数の未指定は 0(ばねなし)とします。2 節点が同一座標の零長ばねは全体座標系=局所座標系(単位回転)とみなします。
免震支承の回転自由度は \( 10^{12} \) N·mm/rad の剛でモーメントを伝達します。摩擦ばねの滑り後の残留せん断剛性比は \( 10^{-4} \) とします。
支点ばねは、節点に直接指定する全体座標系の並進・回転ばね(接地を仮定した 1 節点分の対角剛性)です。全体剛性の対角へ単純加算し、固定(拘束)されている自由度の値は無視します(固定支持を優先)。
\[ K_{ii} \mathrel{+}= k_i \quad (\text{節点 } i \text{ の自由な各自由度}) \]
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( Q_d(\gamma) \) | 免震支承の切片荷重(ひずみ依存) | N |
| \( Q_{d0} \) | 基準(ひずみ 0 相当)の切片荷重 | N |
| \( K_2(\gamma) \) | 免震支承の降伏後剛性(ひずみ依存) | N/mm |
| \( K_{2,0} \) | 基準(ひずみ 0 相当)の降伏後剛性 | N/mm |
| \( C_{Qd}(\gamma),\ C_{Kd}(\gamma) \) | 切片荷重・降伏後剛性のひずみ依存係数 | - |
| \( \gamma \) | 免震支承のせん断ひずみ | - |
| \( Q_{\max} \) | 摩擦支承の最大水平力 | N |
| \( \mu \) | 摩擦係数 | - |
| \( N \) | 長期軸力(圧縮正) | N |
| \( F_c \) | マクスウェルダンパーのダッシュポット力 | N |
| \( C_0 \) | 基準の粘性減衰係数 | N·(s/mm)^α |
| \( V \) | ダンパーの相対速度 | mm/s |
| \( \alpha \) | 速度の指数 | - |
| \( V_r \) | リリーフ速度 | mm/s |
| \( C_1,\ C_2 \) | リリーフ前後の接線減衰係数 | N·s/mm |
| \( k_i \) | 支点ばねのばね定数(自由度 i) | N/mm |
| \( K_{ii} \) | 全体剛性行列の対角成分(自由度 i) | N/mm |
実装参照:sepika_element::springs::{isolator, damper, spring} および sepika_solver::common::assemble(支点ばねの対角加算)が算定します。
詳細な設計式(等価剛性・等価減衰・製品別係数)は免震・制振を参照してください。
座標変換
局所座標系の剛性を、力学(局所-全体座標変換)に基づき全体座標系へ変換します。
算定式
フレーム要素は \( e_x = (p_j - p_i)/L \) とし、参照ベクトルの材軸直交成分を正規化して \( e_y \)、右手系の \( e_z=e_x\times e_y \) を構成します。局所 y は断面せい方向であって、強軸まわりの曲げの回転軸ではありません。せい方向の変位・せん断に対応する回転軸は局所 z です(保存断面性能と要素局所軸の対応)。剛性は次式で変換します。
\[ K_{\text{global}} = R^T \cdot K_{\text{local}} \cdot R \]
実装参照:sepika_element::transform::LocalFrame(crates/sepika-element/src/transform.rs)が算定します。
ですが、シェルは規約が逆で \( K_{\text{global}} = R \cdot K_{\text{local}} \cdot R^T \) とします。
断面参照方向の適用条件
線材の断面参照方向は、材軸に直交する局所 y 軸を定めます。有限な零ベクトルや材軸に平行な方向では、全体 X または Y 方向を使って局所軸を補います。有限な大きい値でも単位直交基底を構成できる場合は、その方向を採用します。材軸方向の成分が非常に大きくても、解決可能な直交成分の向きは保持します。非有限値を含む方向、または有限でも単位直交基底を構成できない方向は、その部材の局所座標を必要とする準備・解析・検定で、対象部材と理由を示して拒否します。不正な方向を既定の軸に置き換えたり、退化した軸で剛性・荷重・内力を算定したりしません。
小梁の検定では、需要に使う支持材の断面参照方向、断面フェース、自重作用区間を解決できる必要があります。解決できない場合は、小梁需要を欠いた部分的な検定結果を返さず、対象と理由を示して停止します。この検定の需要に使わない別の一次部材の参照方向は検査対象に含めません。 支持面には、共通局所座標で得られる補完なしの単位直交基底と同じ断面姿勢を使います。有限な参照方向でこの姿勢を解決できる場合、材軸方向成分の投影丸めによって支持面・小梁自重作用区間・小梁需要を変えません。同じ向きの極大値でも、姿勢と結果を保ちます。支持面では、零ベクトル・材軸平行方向を含め、参照方向の材軸直交成分の長さが \(10^{-12}\) 以下なら、一般の局所座標で用いる補完軸を代用せず、支持材と理由を示して停止します。
零長・範囲外の扱い
- 一般の線材で 2 節点が同一座標の場合は材軸を定められないため、局所座標を構成せず計算を拒否します。
- 節点ばねは、節点間距離が \( 10^{-9} \) mm 未満の場合は全体座標系=局所座標系(単位回転)とみなします。ばね定数の未指定は 0(ばねなし)とします。
- 免震支承は、節点間距離が \( 10^{-9} \) mm 未満の場合は鉛直方向を部材軸として局所座標系を組みます(支承は鉛直材のため)。
- 梁用途の主架構では節点・偏心・実材軸・局所軸・断面・材料の不足、不正、非有限や退化材長を対象部材・端・項目と理由付きで拒否します。ほかの既存要素で節点 ID が範囲外の場合は解析前チェックへ委ねます。
実装参照:一般線材の局所座標系と節点 ID 範囲外の座標フォールバックは sepika_element::transform(crates/sepika-element/src/transform.rs の LocalFrame::from_nodes・EndGeometry::of_element)、小梁の支持材フェースと自重作用区間は sepika_core::face_distance::secondary_self_weight_interval(crates/sepika-core/src/face_distance.rs)、節点ばね・免震支承の零長時の扱いは sepika_element::springs::{spring, isolator}(crates/sepika-element/src/springs/)が担います。
梁の鉛直偏心接続
大梁用途の主架構は、弾性梁・ファイバー梁・材端集中ばね梁・マルチスプリング梁のいずれでも、既存の共有解析節点 \(N\) と実材軸端 \(P\) を剛体として接続します。実部材化済みの小梁は主架構として一度だけ扱います。二次部材の小梁を新たに全体剛性へ加えるものではありません。柱・ブレース、一般の三方向偏心入力、有限回転や新しい段違い仕口パネルの適用は対象外です。
各端の初期偏心ベクトルを \(r=P-N\) [mm] とし、微小変位・微小回転に対して次を用います。
\[ u_P=u_N+\theta_N\times r,\qquad \theta_P=\theta_N,\qquad d_P=T d_N \]
接続節点・自由度は移動せず、実材軸と元の断面参照方向から部材の局所軸と初期長を求めます。SLから実材軸を再設定しません。未指定の偏心は0へ補いません。実断面形状を持たなくても解析に必要な断面性能と材料が解決済みなら、実材軸の解析接続を適用できます。
局所軸変換、材軸方向の剛域、端条件を適用した実材軸端の全体座標量に対し、同じ写像で剛性・接線・既存の幾何剛性・内力・部材荷重・質量を接続節点へ戻します。
\[ f_N=T^{\mathsf T}f_P,\quad K_N=T^{\mathsf T}K_P T,\quad M_N=T^{\mathsf T}M_P T \]
材端解放は実部材端に適用します。実材軸端の曲げが0でも、接続節点には \(r\times F_P\) が伝わります。接続のための新しい重量・質量は加えず、既存の部材質量と節点集中質量の方式を保ちます。部材荷重は元の定義と作用区間のまま実材軸で扱い、等価端力を同じ写像で戻します。元の節点荷重を実材軸端へ移動しません。
例えば \(r=(0,0,100)\) mm、実材軸端の \(F_P=(1000,0,0)\) N、\(M_P=0\) なら、接続節点の \(M_{Ny}=100000\) Nmmです。\(\theta_{Ny}=0.001\) radは実材軸端の \(u_{Px}=0.1\) mmに対応し、仮想仕事は双方100 Nmmです。負の偏心では符号が反転し、鉛直力と偏心が平行なら移送モーメントは0です。
検定・断面力図に用いる部材端と危険断面の内力は実部材の内力です。接続節点力・支持反力に現れる移送モーメントを検定用の曲げモーメントへ重ねません。既存仕口パネルの適合は節点側に保ち、その回転から実材軸へ同じ剛体写像を適用します。材軸方向のパネル面距離や剛域長へ鉛直偏心を加算せず、既存の適用条件を満たさない段違い接合は引き続き拒否します。
層切断面の梁負担は、接続節点から実材軸端へ至る両端の剛体腕と実材軸を合わせた経路で評価します。切断面より上(標高が切断面を超える側)にある接続節点の端力と、実材軸上の上側荷重の和から、全交点の符号付き合力を求めます。両腕が同じ切断面を横切る場合も一部材として一度だけ合算し、無荷重の交点力が相殺する場合を含めます。切断面上の経路端点は上側へ含めず、集中荷重が切断面に一致する場合は既存のi端側極限を保ちます。性能曲線の層内荷重も実材軸の標高で分類し、実材軸端の部材荷重を、偏心で離れた固定接続節点へ直接作用する節点荷重と同一視しません。
地動の慣性入力は、拘束自由度を含む質量と一様並進・鉛直軸まわりの回転の影響ベクトルで先に \(M r_g\) を求め、その後に自由自由度へ抽出して既存の拘束縮約を適用します。これにより、並進が拘束され回転が自由な節点でも、偏心に対応する回転慣性入力を保持します。偏心0の整合質量でも固定端側の地動寄与を含み、対角の節点集中質量への入力は従来と同じです。減衰モデル・時間積分法は変更しません。
実装参照:実材軸端は Model::primary_beam_axis_ends(crates/sepika-core/src/model/beam_placement.rs)、接続写像と荷重合成は sepika_element::frame::eccentric(crates/sepika-element/src/frame/eccentric.rs)、地動慣性入力は GroundInfluence::build(crates/sepika-solver/src/dynamic/timehistory/common.rs)が扱います。
非線形梁要素のモデル化(材端集中・ファイバー・MS)
非線形解析(プッシュオーバー・時刻歴応答)では、線形の弾性ティモシェンコ梁(ティモシェンコ梁要素(12×12))に代えて、部材の弾塑性挙動を表す 3 種類の梁要素モデルを用います。材端集中ばねモデルは弾性ティモシェンコ梁を土台とし、ファイバー・MS モデルは Timoshenko 適合内挿(φ 依存形状関数、ファイバーモデル)によりせん断変形を曲げと直列に合成します(初期弾性状態では軸成分を含めて弾性ティモシェンコ梁と一致します)。
| モデル化 | 塑性化の表現 | N–M 相関 | 実装 |
|---|---|---|---|
| 材端集中ばね | 部材端の回転ばね(M–θ 履歴則) | 降伏モーメント低減式 | sepika_element::frame::concentrated |
| ファイバー | 積分点断面のファイバー分割(平面保持) | 断面積分で自然に表現 | sepika_element::frame::fiber |
| マルチスプリング(MS) | 端部塑性化域を軸ばね群に置換 | 軸ばね合力で自然に表現 | sepika_element::frame::multi_spring |
材端集中ばねモデル
弾性ティモシェンコ梁の両端に**回転ばね(M–θ 履歴則、部材履歴則の設定と集中ばね履歴則)**を直列接続し、塑性化を材端の集中回転に代表させます(構造動力学で標準的な集中ばね(one-component / two-component)モデル)。
算定式
- 回転ばねは強軸曲げ面(要素局所系の \( r_z \) まわり。要素局所 y 軸=断面のせい方向とする規約による)に入れます。一軸曲げ(
ForceRegime::UniaxialBendingShear)のモデルであり、骨格の降伏モーメント(強軸 \( Z_p \sigma_y \))・初期剛性 \( 6EI/l \)(\( I \) は強軸)も強軸で与えます。 - 要素剛性は、可撓長(部材長から剛域を除いた長さ)で組んだ弾性ティモシェンコ梁に、端部条件(ピン・半剛)と材端回転ばねを直列に静縮約し、最後に剛域変換で節点自由度へ移して得ます(弾性梁 ティモシェンコ梁要素(12×12) と同じ土台)。ばねは直列のため接合部ばねと塑性ばねの順序は結果に影響しません。
- ばねの変形量は相対回転 \( \gamma_k = \theta_{n,k} - \theta_{b,k} \)(節点回転 − 可撓端回転)とし、履歴則 \( M_s(\gamma) \) を適用します。可撓端回転 \( \theta_b \) は内部自由度として保持し、各トライアルで両端の内部釣合い
\[ R_k = \bigl[K_{\text{flex}}\,\hat{\boldsymbol u}\bigr]_{d_k} - M_{s,k}(\gamma_k) = 0 \]
(\( d_k \) は材端回転自由度の番号、\( \hat{\boldsymbol u} \) は回転スロットを \( \theta_b \) で置き換えた可撓端変位)を要素内 Newton 反復(2 自由度連成)で解きます。履歴則は区分線形のため通常数回で収束します。固定端(節点回転 0)でも可撓部端モーメントが降伏モーメントへ達すればばねが塑性回転し、柱脚ヒンジが形成されます。
- 復元力は弾性可撓部の \( K_{\text{flex}}\,\hat{\boldsymbol u} \) とばねの履歴モーメント \( M_s(\gamma) \) から経路整合に評価します(節点の回転自由度にはばねを介してモーメントが伝わるため、回転スロットはばね側の履歴力で置き換えます。内部釣合いの解では両者は一致します)。接線剛性はばねの接線 \( k_t(\gamma) \) を直列に静縮約した \( K^{*} \) を用います。
- 履歴則は部材個別指定(履歴則の設定(増分用・時刻歴用)の 2 系統)→ 構造種別ごとの既定表で解決します。RC/SRC/CFT 梁は武田型トリリニア、S 梁は**標準型(kinematic バイリニア)**を材端ばねに用います(増分・時刻歴共通の既定)。
- 軸-曲げ相互作用(N–M 相関)は、現在軸力 \( N \) に応じて回転ばねの降伏モーメントを
\[ M_{\text{lim}} = M_{y0} \cdot \left(1 - \frac{|N|}{N_{\text{allow}}}\right) \]
で更新します(下限 \( 0.02 \cdot M_{y0} \))。この相関は降伏モーメントを更新できる材料(標準型・辻・山田型・座屈考慮型)に適用し、武田型等の骨格固定の履歴材料は対象外とします。
- 材端ばねの骨格(トリリニア)の既定値は次のとおりです。終局点は \( M_u = 1.1 \cdot M_y \)、終局回転角は降伏回転角の 4 倍(塑性率 4)とします。ひび割れ点は RC 系が \( M_c = 0.56 \cdot \sqrt{F_c} \cdot Z_e \)(梁(曲げ・せん断・軸)。\( M_y \) の 10〜90% にクランプし、折れ点の逆転を防ぎます)、それ以外は \( M_y/3 \) とします。降伏時剛性低下率 \( \alpha_y \) は RC 矩形梁(水平材)を菅野式、それ以外を 0.3 とします。スラブ協力付きRC梁の材端集中ばねは、方向別T形鉄筋比に必要な情報を設定できないため入力診断で停止します(鉄筋比の分母・単位と引張方向)。武田型の除荷剛性低下指数は 0.4 とします。
- 辻・山田型を指定した材端ばねは、二次勾配 \( K_2 = 0.01 \cdot k_{rot} \)・混合硬化比 \( \beta = 0.5 \) のバイリニア+混合硬化とし、N–M 相関を適用します。座屈考慮型を指定した材端ばねは終局点を \( M_u = 1.1 \cdot M_y \) とし、N–M 相関を適用します。標準型・降伏モーメント不定の材端ばねは kinematic バイリニア(降伏後剛性比 0.01)とし、N–M 相関を適用します。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( \gamma_k \) | 材端回転ばねの相対回転(節点回転 − 可撓端回転) | rad |
| \( \theta_{n,k},\ \theta_{b,k} \) | 節点回転・可撓端回転 | rad |
| \( M_s(\gamma) \) | 材端回転ばねの履歴モーメント | N·mm |
| \( K_{\text{flex}} \) | 可撓部の弾性剛性行列 | N/mm |
| \( M_{\text{lim}} \) | 軸力に応じて更新した降伏モーメント | N·mm |
| \( M_{y0} \) | 初期の降伏モーメント | N·mm |
| \( N \) | 軸力(引張正) | N |
| \( N_{\text{allow}} \) | 軸方向の許容耐力(実装は \( \sigma_y A \)) | N |
| \( K_2 \) | 降伏後の二次勾配 | N·mm/rad |
| \( k_{\text{rot}} \) | 材端回転ばねの初期剛性 | N·mm/rad |
| \( \beta \) | 混合硬化比 | - |
| \( M_u \) | 終局モーメント | N·mm |
| \( M_y \) | 降伏モーメント | N·mm |
| \( M_c \) | ひび割れモーメント | N·mm |
| \( Z_e \) | 弾性断面係数 | mm³ |
| \( \alpha_y \) | 降伏時剛性低下率 | - |
| \( L_p \) | 塑性化域長 | mm |
実装参照:sepika_element::frame::concentrated::ConcentratedSpringBeam(crates/sepika-element/src/frame/concentrated/mod.rs)が算定します。
履歴則の解決は sepika_element::factory::resolve_member_hysteresis、材端ばねの構築は sepika_element::factory::springs::build_flexural_springs(crates/sepika-element/src/factory/springs.rs)、N–M 相関の有効化は ConcentratedSpringBeam::with_mn_interaction によります。
ファイバーモデル
積分点(ガウス点)の断面を多数のファイバーに分割し、平面保持仮定のもとで各ファイバーが独立した履歴状態を持つ一軸材料として応答することで(構造力学のファイバーモデル)、軸力と曲げの連成(N–M 相関)を断面積分から自然に得ます。断面応答(M–φ 積分)の詳細は ファイバー断面(M–φ 積分)を参照してください。
算定式
- 非線形解析で構築するファイバー要素は塑性化域考慮モデルとし、「全可撓長の弾性梁 \( K_{el} \) + 端部の塑性増分ヒンジ」の直列モデルとして解きます。曲げ・せん断の基準長は可撓長 \( L' \)(剛域があれば節点間長から剛域長を除いた長さ)、軸・ねじりの弾性剛性の基準長は節点間長です(非線形梁要素の剛域)。塑性化域長 \( L_p \) は部材の指定値、未指定なら断面せいの 0.5 倍(マルチスプリング(MS)モデルと共通の既定。断面せいが取れない場合は 200 mm を仮定)とし、可撓長の 45% までにクランプします。したがって塑性化を担うファイバー断面は可撓部両端の 2 断面(\( \xi = \mp 1 \)、すなわち可撓部の材端=剛域があればその剛域フェイス。非線形梁要素の剛域)であり、その断面の状態のみを追跡します。
- 弾性梁 \( K_{el} \): \( B(\xi)^{\mathsf T}\,\mathrm{diag}(EA, EI_y, EI_z)\,B(\xi) \) を可撓長で 2 点ガウス(\( \xi = \mp 1/\sqrt{3} \))積分し、一定せん断ひずみ場(後述)と Saint-Venant ねじり剛性を加算して組み立てます(\( EA, EI_y, EI_z \) は公称断面諸元)。軸・ねじりの弾性剛性は節点間長 \( L \) を用いる \( EA/L,\ GJ/L \) とします(非線形梁要素の剛域)。初期弾性状態(端部の追加変形がゼロ)の要素剛性はこの \( K_{el} \) に厳密一致し、弾性ティモシェンコ梁(ティモシェンコ梁要素(12×12))の剛性と一致します。
- 軸・二軸曲げの塑性増分: 各端の断面ひずみを \( \boldsymbol\eta_e=(\varepsilon_e,\kappa_{y,e},\kappa_{z,e})^{\mathsf T} \)、断面力を \( \boldsymbol q_e=(N_e,M_{y,e},M_{z,e})^{\mathsf T} \) とします(\( e=i,j \))。ファイバーのひずみは \( \varepsilon_f=\varepsilon_e+z_f\kappa_{y,e}-y_f\kappa_{z,e} \) で、断面力と接線は同じ材料履歴から積分します。軸ひずみと二軸の曲率を両端で合わせた 6 未知数を同時に解き、軸降伏と N–M 連成を部材の力・変形へ反映します。
- 各端の初期断面剛性を \( D_{0,e} \)、そのコンプライアンスを \( C_{0,e}=D_{0,e}^{-1} \) とし、初期状態の完全な 3×3 行列を履歴中も固定します。端部の追加変形は
\[ \boldsymbol p_e=L_p\left(\boldsymbol\eta_e-C_{0,e}\boldsymbol q_e\right) \]
です。軸ひずみは無次元、曲率は [1/mm]、軸力は引張を正として [N]、曲げモーメントは [N·mm] で表します。\( \boldsymbol p_e \) の第 1 成分は追加伸縮 [mm]、第 2・3 成分は追加回転 [rad] です。軸・曲げの連成項を含めて初期弾性分を控除するため、初期弾性域では \( \boldsymbol p_e=\boldsymbol0 \) となり、全可撓長の弾性梁の変形を二重計上しません。除荷・再載荷では材料履歴に応じて追加伸縮・回転が変化し、残留伸縮も保持します。
- 両端の量を \( \boldsymbol\eta=(\boldsymbol\eta_i;\boldsymbol\eta_j) \)、\( \boldsymbol q=(\boldsymbol q_i;\boldsymbol q_j) \)、\( \boldsymbol p=(\boldsymbol p_i;\boldsymbol p_j) \) と並べます。\( A \) は端部の追加変形を可撓端の局所 12 自由度へ写す行列で、次の符号を持ち、その他の成分はゼロです。局所 x 軸は i 端から j 端へ向かい、断面の y・z 軸は両端で共通とします。
| 追加変形成分 | 対応する可撓端自由度 | \( A \) の符号 |
|---|---|---|
| i 端の追加伸縮 | i 端の軸方向並進 | −1 |
| i 端の y・z 軸まわり追加回転 | i 端の同じ軸まわり回転 | −1 |
| j 端の追加伸縮 | j 端の軸方向並進 | +1 |
| j 端の y・z 軸まわり追加回転 | j 端の同じ軸まわり回転 | +1 |
局所軸は右手系とし、断面の曲率は物理的な断面回転の材軸方向微分 \( \kappa_y=d\theta_y/dx,\ \kappa_z=d\theta_z/dx \) です。共通の y・z 軸で表す断面力と可撓端の節点復元力の対応は、境界仕事 \( [N,\delta u_x+M_y,\delta\theta_y+M_z,\delta\theta_z]_i^j \) から \( \boldsymbol q_i=-\boldsymbol f_i^{(N,M_y,M_z)},\ \boldsymbol q_j=+\boldsymbol f_j^{(N,M_y,M_z)} \) となります。したがって、上表の三成分の符号は i 端でいずれも負、j 端でいずれも正です。断面の実座標に対する \( \varepsilon_f=\varepsilon+z_f\kappa_y-y_f\kappa_z \) と引張・圧縮側の対応も、この共通軸で評価します。
可撓端変位を \( \boldsymbol u \)、弾性梁の変位を \( \hat{\boldsymbol u} \) として、釣合いは
\[ \hat{\boldsymbol u}=\boldsymbol u-A\boldsymbol p,\qquad \boldsymbol f=K_{el}\hat{\boldsymbol u},\qquad \boldsymbol R=\boldsymbol q-A^{\mathsf T}\boldsymbol f=\boldsymbol0 \]
です。写像 \( A \) と \( A^{\mathsf T} \) は仕事共役であり、\( \boldsymbol f^{\mathsf T}A,d\boldsymbol p=\boldsymbol q^{\mathsf T}d\boldsymbol p \) を満たします。各試行状態でこの釣合いを解き、収束した同じ状態の \( \boldsymbol f \) を部材復元力とします。軸力を両端断面力の平均や弾性式へ置換せず、接線剛性と全変位の積も復元力の代用には用いません。
整合接線と履歴
両端断面の接線 \( D_e=\partial\boldsymbol q_e/\partial\boldsymbol\eta_e \) を対角ブロックに並べた行列を \( D \)、同様に \( C_{0,e} \) を並べた行列を \( C_0 \) とします。同じ試行状態で
\[ P=\frac{\partial\boldsymbol p}{\partial\boldsymbol\eta}=L_p(I-C_0D),\qquad J_{\eta}=D+A^{\mathsf T}K_{el}AP \]
\[ J_{\eta},\frac{\partial\boldsymbol\eta}{\partial\boldsymbol u}=A^{\mathsf T}K_{el},\qquad K_{tan}=K_{el}-K_{el}AP,\frac{\partial\boldsymbol\eta}{\partial\boldsymbol u} \]
とします(\( I \) は 6×6 単位行列、\( J_{\eta} \) は局所釣合いのヤコビアン)。この式を線形求解して、内力の厳密な微分を得ます。全連成項を保持し、接線を対称平均しません。材料の折れ点等では左右の接線を区別します。初期断面剛性や局所釣合いの特異、非有限値、不収束は計算失敗として扱い、微小剛性の付加・正則化・弾性への置換で隠しません。
初期断面剛性の求解では、軸力と二軸曲げの単位・寸法尺度の差を対角成分の平方根で無次元化して扱います。寸法や剛性に数値的な下限を付加しません。局所釣合いの残差と、断面力・要求力・各寄与の絶対和を同じ対角尺度で無次元化し、6成分の最大値に対して相対評価します。許容値は \(10^{-10}\) とし、全寄与が厳密にゼロなら絶対残差を評価します。初期断面が解けない場合は、解析開始前に対象部材と理由を示して停止します。
元端部のピン・半剛接で解放する回転成分は、外側の端部接続が必要とする精度も満たすように内側の材料釣合いを判定します。その成分の断面力・要求力・相殺前の各寄与・荷重の最大値と 1 N·mm の大きい方を尺度とし、上記の共通尺度との小さい方に対して同じ許容値を適用します。軸力が大きい場合にも回転成分の精度を保ち、除荷後に軸力がゼロとなる状態で内側の早期収束が外側の反復を妨げることを防ぎます。外側の許容値・反復上限や材料則は変更しません。
局所密行列の求解は、各右辺ごとに無限大ノルムの後退誤差
\[ \frac{\lVert A x-b\rVert_\infty}{\lVert A\rVert_\infty\lVert x\rVert_\infty+\lVert b\rVert_\infty} \]
を検査し、許容値を \(256n\varepsilon_{\mathrm{mach}}\) とします(\(n\) は局所行列の次数)。分母が厳密にゼロなら残差の絶対値を検査します。これは丸め誤差の検査であり、構造安全性や任意の寸法での解析可能性を保証するものではありません。
各試行状態と局所反復は同じ確定済み材料履歴を基準とし、局所収束だけでは履歴を確定しません。準静的増分解析で全体が未収束の試行を破棄するときは、材料履歴と断面ひずみ、弾性梁の変位、内力・接線を一体で確定状態へ戻します。時刻歴のステップ確定の扱いは非線形時刻歴に従います。
仕事の関係
弾性梁のひずみエネルギーを \( U_{el}=\hat{\boldsymbol u}^{\mathsf T}K_{el}\hat{\boldsymbol u}/2 \)、端部の初期弾性相当エネルギーを \( U_{0,e}=L_p\boldsymbol q_e^{\mathsf T}C_{0,e}\boldsymbol q_e/2 \) とすると、釣合いを満たす経路での内力仕事は
\[ \int\boldsymbol f^{\mathsf T},d\boldsymbol u=\Delta U_{el}+\sum_{e=i,j}L_p\int\boldsymbol q_e^{\mathsf T},d\boldsymbol\eta_e-\sum_{e=i,j}\Delta U_{0,e} \]
です。断面材料の仕事に全可撓長の弾性エネルギー変化を加え、端部で重複する初期弾性相当分を控除します。断面仕事は軸と二軸曲げの全成分を含み、回復可能なエネルギーと材料の履歴消費を合わせた量です。
剛接・ピン・半剛は断面材料とは別の接続条件として 非線形梁要素の材端条件(ピン・半剛) に従って扱います。ピン・半剛を理由に端部断面全体や軸塑性を無効にしません。接続のために材料の断面軸を回転させることもありません。
実装参照:sepika_element::frame::fiber::FiberBeam(crates/sepika-element/src/frame/fiber/mod.rs)と、塑性化域の構成則を扱う crates/sepika-element/src/frame/fiber/constitutive.rs によります。
モデルの範囲
ここまでの釣合い式・仕事式は部材荷重がない場合の式です。壁側柱の部材荷重を含む局所釣合いは、側柱の回転解放と適用範囲に従います。
完全塑性等では、外部力の平衡解が存在しても、両端への塑性変形の内部配分が非一意となる場合があります。外部軸力が一意であることは内部状態の一意性を意味しません。局所ヤコビアンが特異となり採用した局所解法の条件を満たせない場合は、理由を示して停止します。完全塑性の部材を一律に適用外とはせず、微小剛性・正則化・弾性への置換で非一意性を隠しません。
この端部塑性化域モデルは、部材全長への塑性化の分布を表すものではありません。壁側柱は側柱の回転解放と適用範囲に従います。単一平面・準静的の材料履歴を保持した接続と、壁全体系の検証は区別します。壁側柱のP–Δ指定・非線形時刻歴・非平行共有柱は理由付き適用外です。部材整合質量を使う固有値・線形時刻歴では、実際の初期弾性接続から質量を構成できることも必要です。実験等に対する物理的妥当性は別途確認を要します。上記の釣合い式と接線式だけから、それらの検証完了を意味するものではありません。
- 塑性化域を設けない全長ファイバー積分モデル(2 点ガウス積分、\( \xi = \mp 1/\sqrt{3} \)、重み 1)も要素として構築できますが、非線形解析の要素生成では用いません。
- ファイバーは断面形状どおりの領域に配置します(MN 相関曲面と同じ配置規則を共用)。H 形はフランジ+ウェブ、角形鋼管・鋼管は管壁のみ、CFT は管壁+充填コンクリート、RC 円形は円形領域、SRC はコンクリート+主筋+内蔵鉄骨に配置するため、中空・薄肉断面の断面積・剛性・耐力が正しく表現されます。非対称断面(山形・溝形・T 形等)は断面積重心へ座標補正します。
- RC 断面はコンクリートファイバー格子に加え、主筋を点ファイバー(Menegotto–Pinto 鋼材)として分離配置します。主筋点の縁からの距離・多段間隔は断面検定の有効せいと同じ
rc_rebar_geom規約です(ファイバー断面)。コンクリートは Fc≤60 では材料から解決した E を初期接線へ反映した NewRC、\( f_c > 60 \) では NewRC 固有 Ec の暫定外挿として扱います。鋼材領域(形鋼・鋼管・内蔵鉄骨)・主筋はいずれも Menegotto–Pinto モデル(降伏後剛性比 \( b = 0.01 \))です。
ファイバー材料の既定値と強度の解決順
ファイバー断面の各領域には、次の既定の構成則・パラメータを割り当てます。 強度は表の解決順で決め、解決できないモデルは非線形解析の入力チェックが解析前に エラーで停止します(弾性で代替しません。ファイバー断面は降伏・ひび割れの進展を 追うことが目的のため、弾性代替は耐力の過大評価=危険側になります)。
| 領域 | 構成則(既定) | 弾性係数 | 強度の解決順 |
|---|---|---|---|
| コンクリート | Fc によらず NewRC コンクリート構成則(ファイバー柱の既定)(\( \gamma = 2.4 \))。\( f_c > 60 \) は適用範囲外への外挿 | 構成則から算定 | 断面の主材料の \( F_c \)(未設定はエラー) |
| 主筋 | Menegotto–Pinto 鋼材・鉄筋モデル(既定パラメータ) | \( E = 205000 \) N/mm²(固定) | 断面の主筋材料の \( f_y \)(未割当・\( f_y \) 未設定はエラー) |
| 鋼材(形鋼・鋼管・内蔵鉄骨・CFT 管壁) | Menegotto–Pinto 鋼材・鉄筋モデル(既定パラメータ) | 断面の主材料の \( E \) | SRC: 断面の内蔵鉄骨材料の名称から引く F 値(フランジ厚の板厚区分を考慮)→ 断面の主材料の \( f_y \) その他の形状: 断面の主材料の \( f_y \)(いずれもなければエラー) |
- コンクリートの初期接線は、Fc≤60 では材料から解決した E、Fc>60 では NewRC 固有 Ec の暫定外挿を用います。
- 引張強度は両コンクリート構成則とも既定 \( f_t = 2.0 \) N/mm² とします。
- コンクリートの除荷則は部材ごとに増分用・時刻歴用を選択できます(履歴則の設定(増分用・時刻歴用))。柱等のファイバー要素・MS 要素の自動(未指定)の既定は、増分解析=逆行型、時刻歴応答解析=Karsan–Jirsa 型です。壁柱ファイバーの自動既定は、増分解析=原点指向型、時刻歴応答解析=Karsan–Jirsa 型です。いずれも部材ごとに指定できます。
Fc≤60 は材料から解決した E を初期接線へ反映し、Fc>60 は NewRC 固有 Ec を用いて外挿します。逆行型・原点指向型は
ConcreteNewRc、Karsan–Jirsa 型はConcreteCyclic::newrcに対応します。 - Karsan–Jirsa 型を用いる場合の骨格・引張の既定は次のとおりです: Fc によらず NewRC 骨格(終局ひずみ \( \varepsilon_{cu} = 0.01 \)、 超過は \( \varepsilon_{cu} \) の曲線値を残留として保持)を用います。\( f_c > 60 \) は NewRC の適用範囲外への外挿です。引張は \( f_t = 2.0 \) N/mm²、 軟化勾配 \( E_{ts} = E_0/10 \)(\( E_0 \) は初期接線剛性)です。
- Menegotto–Pinto の既定パラメータは \( b = 0.01,\ R_0 = 20,\ a_1 = 18.5,\ a_2 = 0.15,\ a_3 = 0 \)(等方硬化なし)\( ,\ a_4 = 1 \) です(Menegotto–Pinto 鋼材・鉄筋モデル)。
- 材料強度の割増は保有水平耐力計算(材料強度基準)でのみ適用し、鋼材文脈・RC 主筋文脈それぞれの材料グレード別割増係数を強度に乗じます。時刻歴応答解析等は割増なし(1.0)です。
ファイバー分割の既定
- 断面形状がある場合: 目標ファイバ寸法 = 断面最大寸法 / 16(絶対寸法の下限なし)。円形・円環断面は周方向 24 分割、径方向は薄肉 2 分割・中実 8 分割。
- 断面形状がない場合(壁エレメントの壁柱以外の矩形近似): 幅 12 × せい 20 の中実格子。
- せん断変形は Timoshenko 適合内挿(φ 依存の曲率形状関数+一定せん断ひずみ場による変位法内挿。interdependent interpolation 系の定式化)で曲げと直列に合成します。せん断変形係数
\[ \varphi = \frac{12EI}{GA_s L^2} \]
は公称断面諸元(Section の \( I \)・\( A_s \) と Material の \( E \)・\( G \))から算定して凍結するため、降伏後も内挿は弾性時の配分を保ちます(曲げの Hermite 内挿と同型の近似)。公称値を用いるのは線形解析(ティモシェンコ梁要素(12×12)の弾性 Timoshenko 梁)の φ と一致させるためであり、RC 断面ではファイバーの実効初期剛性が公称値と僅かに乖離するため、φ は公称値ベースの近似となります。
- 曲率場は回転項を \( (1 \pm 3\xi) \to (1 \pm 3\xi + \varphi) \)、全体を \( 1/(1+\varphi) \) 倍に補正します。せん断ひずみは曲げ面ごとに要素内一定の
\[ \gamma_y = \frac{\varphi_y}{2(1+\varphi_y)} \left( \theta_{z,i} + \theta_{z,j} - \frac{2\,\Delta u_y}{L} \right), \qquad \gamma_z = \frac{\varphi_z}{2(1+\varphi_z)} \left( \theta_{y,i} + \theta_{y,j} + \frac{2\,\Delta u_z}{L} \right) \]
(\( \Delta u \) = 端部並進差。符号は各曲げ面の曲率規約に従い面ごとに異なる点に注意してください。いずれも剛体回転で恒等的にゼロとなる客観的な測度)とし、弾性せん断剛性 \( GA_s \) を作用させます。曲率剛性とせん断剛性の和は、断面剛性が φ の算定基礎と一致する一様弾性断面で、弾性 Timoshenko 梁(ティモシェンコ梁要素(12×12))の剛性と厳密に一致します(被積分関数は \( \xi \) の 2 次のため 2 点ガウスで厳密です)。
-
\( GA_s \le 0 \)(せん断有効断面積が未設定等)の場合は \( \varphi = 0 \)(せん断剛直 = Euler-Bernoulli)へフォールバックするため、幾何剛性・整合質量は Euler 系の係数を用います(ティモシェンコ梁要素(12×12)の弾性梁と同じ扱いです)。 弾性諸元に採用する G にはせん断弾性係数の入力条件を適用します。上記のフォールバックは、不正な G を入力して計算を継続できることを意味しません。
-
ファイバー梁・MultiSpring の集中質量と整合質量は、弾性梁と同じ幾何形状・採用密度から求める単位長さ質量と断面回転慣性を用います。ファイバー未生成でも質量特性は求められ、分割数・Gauss点・履歴・現在接線で物理質量は変わりません。初期弾性剛性を使う端部解放の質量変換は維持します。質量要求時の不正入力は両形式で拒否します。
-
軸方向と曲げ面の質量は Timoshenko 形状関数から積分し、材軸まわりの回転自由度には質量用極二次モーメント \( \mu I_p = \mu I_y + \mu I_z \) を与えます。ねじり剛性のねじり定数
Jは質量用回転慣性へ流用しません。 -
剛域がある場合は、可撓部の質量を剛体アームで節点自由度へ変換し、剛域の分布質量を加えて全長の質量を保存します。集中質量を並進自由度へ分配する扱いは弾性梁と同じです。
-
端部解放を含む整合質量は、塑性状態ではなく初期弾性剛性から固定した変換を用います。保持自由度を \( u \)、内部回転を \( b \)、可撓部変位を \( u_f=A u+B b \) とすると、初期釣合いから \( S=-K_{bb}^{-1}K_{ba} \)、\( T=A+BS \) とし、\( M=T^T M_f T \) により可撓部質量 \( M_f \) を節点自由度へ写します。剛域がある場合は、この接続変換の後に剛体アーム変換と剛域の分布質量を一度だけ適用します。回転ばねは無質量です。この初期Guyan写像は動的な内部自由度を独立に求解する定式化ではありません。内部剛性が特異な場合や、慣性を持つ共通ねじり回転を静的に固定しなければならない場合は、解放条件を満たす整合質量を構成できないため理由付きで停止します。集中質量と、要素質量を使わない質点のみ方式には、それぞれ実際に使う質量方式の条件を適用します。
実装参照:sepika_element::frame::fiber::FiberBeam::mass_matrix(crates/sepika-element/src/frame/fiber/mod.rs)が整合質量の入口で、sepika_element::frame::prismatic::{condense_end_releases_with_mass, consistent_mass_timoshenko} を弾性梁と共有します。端部解放の変換は要素生成時に保存した初期弾性剛性を使い、塑性化後の接線剛性には依存しません。断面のファイバー応答は sepika_section::fiber::section_response(crates/sepika-section/src/fiber.rs)が担います。
マルチスプリング(MS)モデル
部材端の塑性化領域(長さ \( L_p \)、既定は断面せいの 0.5 倍)の断面を、少数の軸方向ばね群で表し、その塑性増分を全可撓長の弾性梁へ直列に組み合わせます(RC 柱・梁端部の塑性ヒンジを軸ばね群で表す MS モデル)。軸ばね群の合力が \( N \)、図心まわりの偶力が \( M \) となるため、N–M 相関を自然に表現できます。ねじりばねは別系統で付加します。
算定式
- 端部断面のばね配置は幅方向 × せい方向 = 2 × 5 = 10 本の 2 次元配置とし、二軸曲げに対応します。
- ファイバーモデルと同じ軸・二軸曲げの塑性増分定式化を用い、端部断面を粗く分割します(ばね = 粗いファイバー)。軸降伏・除荷再載荷・残留伸縮と N–M 連成を材料履歴から評価し、初期弾性分の控除・仕事の関係・履歴の確定と巻戻しも同じです。
- 分割が粗いため、断面内の応力分布・降伏進展の精度は分割の影響を受けます。ファイバー要素との相互比較だけでは、材料・部材の物理的妥当性を保証しません。
- せん断変形は ファイバーモデルの Timoshenko 適合内挿と同一です。
実装参照:sepika_element::frame::multi_spring::MultiSpringElement(crates/sepika-element/src/frame/multi_spring.rs)が算定します。
モデルの自動選択(ForceRegime)
ElementKind::Beam の要素は、部材の ForceRegime に基づいて非線形要素種別を選択します。
耐震壁の上下辺にある壁上下の剛梁は、連続した壁板を表す弾性高剛性部材です。この役割では以下の非線形モデル選択にかかわらず、剛性100倍の弾性梁として扱い、梁自身の材料降伏を評価しません。壁側柱の材料履歴は保持します。
選択規則
ForceRegime::UniaxialBendingShear→ 材端集中ばねForceRegime::AxialBendingInteract→ ファイバーForceRegime::Auto→ トポロジから判定します(ヒューリスティック)。剛床に所属する水平材(軸力変動が小)→ 材端集中、それ以外(柱などの鉛直材)→ ファイバー。鉛直材判定は部材軸単位ベクトルの \( |e_z| > 0.707 \)(水平から 45° 超。線形静解析の柱判定・偏心率算定と共通の規約)によります。
MS モデルはこの自動選択には乗らず、要素種別 ElementKind::MultiSpring を明示指定した場合にのみ用います。
線形弾性解析は常に弾性 BeamElement を用い、非線形解析でのみ上記の非線形要素を構築します。両者を分けるのは、Auto 判定が剛床に乗らない梁もファイバーへ振り分けるため、共通化すると線形解析の弾性梁まで非線形要素へ置き換わってしまうためです。
実装参照:弾性梁の生成は sepika_element::factory::build_behavior、非線形要素の生成は sepika_element::factory::build_nonlinear_behavior(crates/sepika-element/src/factory/mod.rs)、ForceRegime::Auto の判定は sepika_element::factory::resolve_force_regime(crates/sepika-element/src/factory/regime.rs)によります。
非線形梁要素の剛域
ファイバーモデル・MS モデル(いずれも実体は FiberBeam)も、弾性梁(剛域)と同じ剛体アームで剛域を扱います。断面積分・せん断・幾何剛性を、仕口パネル要素の剛域長への反映で定義する可撓長 \( L' \) で組み立て、可撓端自由度を \( T_r \) で節点自由度へ写します。
\[ \boldsymbol{u}_{\text{flex}} = T_r\, \boldsymbol{u}_{\text{node}}, \qquad K_{\text{node}} = T_r^{T}\, K_{\text{flex}}\, T_r, \qquad \boldsymbol{f}_{\text{node}} = T_r^{T}\, \boldsymbol{f}_{\text{flex}} \]
\( T_r \) の成分と剛域・剛体アーム長の解決規則は 剛域 と同一です。
算定式
- ひずみ-変位行列 \( B(\xi) \)・せん断変形係数 \( \varphi \)・一定せん断ひずみ場・弾性梁 \( K_{el} \) の積分は、いずれも \( L' \) を基準長とします。
- 端部のファイバー断面(\( \xi = \mp 1 \)、塑性増分ヒンジを担う断面)は可撓部の材端、すなわち剛域フェイスに位置します。塑性化域 \( L_p \) も剛域フェイスから材内側へ測り、\( L' \) の 45% までにクランプします(ファイバーモデル)。塑性ヒンジは節点位置ではなく部材フェイスに形成されます。
- 断面ひずみは節点変位ではなく可撓端変位 \( \boldsymbol{u}_{\text{flex}} \) から評価します。剛体回転(節点回転=弦回転)では可撓端に相対たわみが生じないため、内力はゼロになります(客観性)。
- ねじりは断面積分と連成しない独立項であり、剛体アーム変換がねじり自由度に作用しないため、弾性梁と同じく節点間長基準 \( GJ/L \) とします(剛域では増大させません)。
軸方向の扱い
通常の非線形解析で用いるファイバー・MS の塑性化域モデルは、弾性梁(剛域)と同じく、剛域を曲げ(せん断を含む)のみに効かせます。弾性梁 \( K_{el} \) の軸剛性は \( EA/L \)(節点間長基準)とし、剛域によって増大させません。初期弾性剛性は軸成分を含めて弾性ティモシェンコ梁と一致します。
この基準長の扱いは弾性梁の軸剛性に適用し、ファイバーの実断面積・材料・初期完全断面剛性 \( D_{0,e} \) は変更しません。端部の追加変形は引き続き \( \boldsymbol p_e=L_p(\boldsymbol\eta_e-C_{0,e}\boldsymbol q_e) \) から求め、断面力 \( (N,M_y,M_z) \) と部材内力の釣合いを同時に解きます。軸降伏・除荷再載荷・残留伸縮を材料履歴から評価する扱いと、初期弾性相当分を控除する仕事の関係も保持します。塑性化域長・曲げとせん断の基準長・物理質量・設計用重量は、この軸剛性の扱いによって変更しません。
一方、塑性化域を設けない全長ファイバー積分モデルは、通常の非線形解析の要素生成とは別のモデルです。こちらは可撓長にわたる断面積分から軸応答を得るため、一様弾性断面の軸剛性は \( EA/L' \) となります。上記の塑性化域モデルの節点間長基準とは区別します。
実装参照:剛体アームの変換は sepika_element::frame::rigid_arm(弾性梁と共有)、可撓長基準の断面積分・内力・接線剛性は sepika_element::frame::fiber::FiberBeam によります。
非線形梁要素の材端条件(ピン・半剛)
ファイバーモデル・MS モデルも、弾性梁(端部条件(剛接・ピン・半剛)の反映)と同じ定式化で材端の回転解放を扱います。剛接端は接続部の相対回転をゼロとします。ピン・半剛の端のみ、要素端回転を内部自由度へ分離し、節点回転との間に回転ばね \( k_s \) を挟んで静縮約します。
- ピン: \( k_s = 0 \)(厳密なモーメント解放)
- 半剛: \( k_s = k_\theta \)(接合部の回転剛性 [N·mm/rad])
RC・SRC置換壁の側柱では、元の端部条件と壁面法線まわりの回転解放を同じ接続で扱います。解放方向を追加しても軸・面外応答の材料履歴は保持し、材料の断面軸は変えません。集中ばね指定との連成と非線形時刻歴の接続は未成立のため、ファイバーへの暗黙置換を行わず理由付き適用外とします。
算定式
- 縮約は可撓長で組んだ要素剛性に対して行います。組立順は「可撓長で要素剛性 → 材端解放の静縮約 → 剛体アーム変換 → 全体座標変換」で、弾性梁(局所自由度と組み立ての全体像)と同一です。縮約は \( K^{*} = K_{aa} - K_{ab} K_{bb}^{-1} K_{ba} \) により節点自由度 12 へ戻します。
- 内部自由度 \( \boldsymbol{u}_b \)(解放した要素端回転)は状態として保持し、各ステップで内部釣合い
\[ R_k = f_{\text{elem}}[d_k] + k_{s,k}\,\bigl(u_{b,k} - u_{\text{flex}}[d_k]\bigr) = 0 \]
を満たすよう要素内 Newton 反復で解きます(\( d_k \) は解放した回転自由度の番号、\( \boldsymbol{f}_{\text{elem}} \) は要素内力)。弾性域では線形のため 1 反復で厳密に収束します。部材荷重がない場合、断面が降伏した後も内部釣合いを解き直してピン端のモーメントを零に保ちます。
- 解放端の節点回転が受け持つのは回転ばねのモーメントのみであり、部材荷重がないピン端では 0 になります。軸方向の力・変形と断面材料の履歴は保持します。
- ねじり剛性を持たない部材(\( J \le 0 \))の rx は、解放しても縮約行列 \( K_{bb} \) の対角がゼロになり特異化するだけでモーメント解放としての意味を持たないため、解放しません。
- 線材(梁・柱)の i 端のねじれは、端条件が剛接でも既定で解放します(ねじり剛性を期待しないモデル化。適用判定・例外は 部材のねじり剛性の既定モデル化(i 端ねじれ解放) と同一で、弾性梁と非線形梁で同じ規則です)。
実装参照:sepika_element::frame::fiber::FiberBeam(crates/sepika-element/src/frame/fiber/mod.rs)が解放自由度の決定・内部釣合い・静縮約を行います。
非線形解析での部材内力
弾塑性要素の断面内力は、部材端の復元力を材軸方向へ釣合いで分配して求めます(線形解析の内力回収 線形静解析 と同じ分配式)。復元力は、接線剛性 × 全変位では降伏後の内力が実際より小さく評価されるため、接線剛性と全変位の積ではなく各積分点の断面応答(ファイバーの履歴状態)から算定した値を用います。
評価断面(危険断面)は線形解析と同じ規則(節点芯・部材中央・柱フェース位置、および部材付帯情報の追加位置。6.2.3)で与え、線形解析と同じ断面で応力を比較できるようにします。
適用範囲:ファイバー・MS・材端集中ばね(sepika_element::frame::concentrated)・弾性材・トラス(軸材)に適用します。
実装参照:sepika_element::behavior::ElementBehavior::state_member_forces(crates/sepika-element/src/behavior.rs)と、分配式を共有する sepika_element::frame::beam::forces::member_forces_from_end_forces(crates/sepika-element/src/frame/beam/forces.rs)によります。
梁要素内部の変位・断面力の内挿
節点の解(変位)から、梁要素の**両端の間(要素内部)**の変位と断面力(内力)をどう評価するかを示します。 変位は Hermite 3 次多項式による内挿、断面力は断面の力の釣合い(切断法)と部材中間荷重の固定端内力の重ね合わせで求めます。
要素内部の変位(Hermite 3 次内挿)
節点変位は要素端の 6 自由度(並進・回転)として得られます。要素内部の変位場は、要素ローカル系(\( e_x \): i→j 材軸、\( e_y,\,e_z \): 断面主軸)で次のように内挿します。
- 軸方向(局所 \( x \)):線形形状関数 \( (1-\xi,\ \xi) \)
- 曲げ 2 面(局所 \( y,\,z \)):Hermite 3 次形状関数
曲げ面の内挿は、部材荷重の等価節点力(部材荷重(等価節点力・固定端内力))に用いる形状関数と同一であり、要素の定式化と整合します。
Hermite 3 次形状関数(\( \xi = s/L \)、i 端 \( \xi=0 \)・j 端 \( \xi=1 \)、\( L \) は節点間長):
\[ N_1 = 1 - 3\xi^2 + 2\xi^3,\qquad N_2 = L\,(\xi - 2\xi^2 + \xi^3) \]
\[ N_3 = 3\xi^2 - 2\xi^3,\qquad N_4 = L\,(-\xi^2 + \xi^3) \]
要素内部の局所変位場(端部並進 \( u \)・回転 \( r \) から):
\[ u_x(\xi) = (1-\xi)\,u_{x,i} + \xi\,u_{x,j} \]
\[ u_y(\xi) = N_1\,u_{y,i} + N_2\,r_{z,i} + N_3\,u_{y,j} + N_4\,r_{z,j} \]
\[ u_z(\xi) = N_1\,u_{z,i} - N_2\,r_{y,i} + N_3\,u_{z,j} - N_4\,r_{y,j} \]
局所 \( z \) 面では回転 \( r_y \) の向きの規約により回転項の符号が反転します(可撓部の raw 剛性(両端固定・12×12)の \( K_{xz} \) の符号規約、および 部材荷重(等価節点力・固定端内力)の等価節点力と一致)。
\( \xi=0,\,1 \) では \( N_2=N_4=0,\ N_1=1 \) または \( N_3=1 \) となり、要素端は節点変位に厳密に一致します。回転自由度が変位場の傾きを与えるため、両端の回転差に応じて要素内部が曲線状にたわみます。
**変形図(変形形状の可視化)**は、この Hermite 曲線に沿って要素を描きます。節点間を直線で結ぶと梁の曲げたわみが表れないため、要素内部を Hermite 3 次で内挿した折れ線として表示します。要素はせん断変形を含むティモシェンコ梁(ティモシェンコ梁要素(12×12))ですが、内部変位の内挿は Euler–Bernoulli の Hermite 曲線で近似します。
実装参照:sepika_app::viewer(crates/sepika-app/src/viewer/deform.rs の BeamDeflection)が端部 6 自由度から要素内部の Hermite 変位場を求め、変形図の曲線と床・二次部材の追従を描画します。
要素内部の断面力(平衡+固定端内力の重ね合わせ)
要素内部の断面力分布は、形状関数による内挿ではなく、**断面の力の釣合い(切断法)**で求めます。
- 端部節点力:局所剛性と局所変位から \( \boldsymbol{f} = K_{\text{local}}\,\boldsymbol{u} \) を求めます。
- 任意断面への分布:端部の内力から自由体の釣合いで各断面 \( \xi \) の \( [N, Q_y, Q_z, M_x, M_y, M_z] \) を求めます。せん断が一定の区間ではモーメントは材軸方向に線形になります(例:\( M_z(x) = M_{z,i} + Q_y\,x \))。
- 部材中間荷重の重ね合わせ:部材にスパン荷重(分布・集中)がある場合は、両端固定梁の固定端内力(部材荷重(等価節点力・固定端内力)の
fixed_internal_local)を各断面に重ね合わせます。これにより、剛性応答(等価節点力に対する \( K\boldsymbol{u} \))とスパン内力の和として実内力が得られます。
\[ \text{実内力}(\xi) = \underbrace{\text{(}K\boldsymbol{u}\text{ 由来の内力)}}_{\text{端部からの平衡分布}} + \underbrace{\text{(両端固定梁のスパン内力)}}_{\text{固定端内力の重ね合わせ}} \]
この重ね合わせにより、等分布荷重を受ける梁では曲げモーメント \( M \) が放物線、せん断力 \( Q \) が線形の正しい分布になります(中間荷重がなければ手順 2 のとおりモーメントは線形)。荷重組合せでは、各項の部材荷重を組合せ係数で倍したうえで重ね合わせます。
断面力の符号規約は 線形静解析 を参照してください。断面力を評価する位置(危険断面)は、節点芯・柱フェース位置・部材中央に加え、指定があればハンチ端・継手位置を含みます。評価断面の間の分布を画面上でどう描くかは応力図(M 図)の曲線補間を参照してください。
応力図表示用の曲線補間
以下は、評価断面の間を M 図として表示するための補間です。表示用の処理であり、解析結果の断面力の算定や断面検定には用いません。
断面力は材軸に沿って次の関係を満たします。
\[ \frac{dM_z}{dx} = Q_y \]
正規化座標 \( \xi=x/L \) では、モーメントの勾配は次のとおりです。
\[ \frac{dM_z}{d\xi} = Q_y L \]
区間 \( [\xi_k,\ \xi_{k+1}] \) の両端のモーメントと勾配から、\(t=(\xi-\xi_k)/h\)、\(h=\xi_{k+1}-\xi_k\) として、3 次 Hermite 補間を行います。
\[ M(t) = H_{00}M_k + H_{10}\,h\,S_k + H_{01}M_{k+1} + H_{11}\,h\,S_{k+1} \]
\[ H_{00}=2t^3-3t^2+1,\quad H_{10}=t^3-2t^2+t,\quad H_{01}=-2t^3+3t^2,\quad H_{11}=t^3-t^2 \]
ここで \(S\) は \(dM_z/d\xi\) です。弱軸曲げ \(M_y\) は図として表示する値 \(-M_y\) に対して補間し、\(d(-M_y)/d\xi=Q_zL\) とします。N・Q・\(M_x\) は評価断面を直線で結びます。
区間内で M が 3 次以下の多項式になる場合、この補間は厳密解に一致します。したがって、無荷重時の直線、等分布荷重時の放物線、等変分布荷重時の 3 次曲線を正しく表示できます。
中間集中荷重が評価断面上にある場合、Q は不連続となり、M は折れ線になります。右側区間の左端勾配には、評価断面のせん断力から得た値ではなく、必要に応じて次の補正値を用います。
\[ S_k^{*} = 2\,\frac{M_{k+1}-M_k}{h} - S_{k+1} \]
補正により補間は 2 次へ縮退し、集中荷重による折れ線を正しく表示します。補間後も評価断面の値は変わらず、図は断面検定に用いた値を通ります。
この処理は M 図だけを対象とし、解析結果(節点変位・断面力)には影響しません。詳細な表示上の適用範囲と実装参照は応力図(M 図)の曲線補間を参照してください。
実装参照:要素内部変位の内挿は変形図描画(viewer)、断面力の分布は sepika_element::frame::beam::BeamElement::recover_forces と sepika_element::frame::member_load::fixed_internal_local(重ね合わせ)が担います。
構造解析
本章では、線形静解析、荷重組合せの重ね合わせ、固有値解析、減衰、時刻歴応答(Newmark-β)、増分解析(プッシュオーバー解析)、累積損傷度、質点系解析のアルゴリズム根拠を記します。 応力解析・動的解析の手法は、変位法(マトリクス法・有限要素法)と構造動力学の標準的な数値解析法に基づきます。
決定性: 単一スレッド設定(並列スレッド数 1)では、全ソルバを CPU の単一スレッドで実行し、同一入力でビット一致を保証します(V&V 決定性テスト)。並列実行時(既定の自動を含む)はビット一致は保証されず、値一致(丸め誤差程度の差)となります(並列計算)。
この章の内容
線形代数ソルバ
構造解析の連立一次方程式は、f64 の疎行列に対する直接法(Cholesky LLᵀ 分解、LU 分解)で解きます。通常の静解析では拘束縮約後の剛性行列が対称正定値であることを前提とし、自由度規模によらず疎 Cholesky を用います。特異・非正定値の行列、または倍精度で信頼できる正定値求解を確認できない行列では解析を停止します。荷重がゼロ、または不安定な変位方向を励起しない荷重でも分解を省略しません。
疎行列の扱い(スカイライン法との対比)
構造解析で古くから使われる疎行列の格納・求解法に、スカイライン法(バンド法・エンベロープ法)があります。スカイライン法は各列の対角から最上端の非ゼロまでの「帯」を連続配列で保持する方式で、帯の内側にあるゼロ要素も格納・演算の対象になるため、効率が節点番号付け(Cuthill–McKee 法などによるバンド幅最小化)に強く依存します。
本プログラムはスカイライン法ではなく、汎用疎行列格納と現代的な疎行列直接法を用います:
- 非ゼロ要素のみの格納:全体剛性行列は要素剛性の Triplet(行・列・値)として組み立て、CSC(圧縮列格納)形式へ変換します。同一位置の重複は加算マージし、帯の内側か否かに関係なく、非ゼロ要素だけを保持します。
- フィルイン低減オーダリング:疎 Cholesky(faer)は数値分解に先立つ記号解析(symbolic analysis)で、フィルイン(分解で新たに生じる非ゼロ)を減らす行列の並べ替えを自動で適用し、因子 \( L \) の非ゼロパターンを事前に確定します。節点番号付けの良し悪しに性能が左右されるスカイライン法と異なり、入力モデルの節点順序に依存せずフィルインが抑えられます。
- 記号解析と数値分解の分離:非ゼロパターンの解析(記号解析)と数値分解を分離しているため、一度
factorizeすれば複数右辺(多数の荷重ケースや時刻歴の各ステップ)は前進・後退代入のみで解けます。
計算量の目安として、スカイライン法の分解コストは自由度数 \( n \)・平均バンド幅 \( b \) に対しおおむね \( O(n b^2) \) で帯内のゼロにも演算が及ぶのに対し、オーダリング後の疎 Cholesky は因子の非ゼロ数 \( \mathrm{nnz}(L) \) に応じたコストで済みます。立体骨組のように帯内に多くのゼロを含む系では、この差が求解時間・メモリの双方に効きます。
算定式
対称正定値の \( K \cdot u = F \) には疎 Cholesky を用います。通常の静解析で Cholesky 分解に失敗しても LU への自動切替は行いません。
正の対角成分から対角行列 \( D=\operatorname{diag}(\sqrt{K_{ii}}) \) を作り、合同平衡化した行列
\[ A=D^{-1}KD^{-1},\qquad b=D^{-1}F \]
を用います。並進と回転の単位や対角剛性の大きさによる見かけの差を取り除きます。対角が非正または非有限、平衡化した成分が非有限の場合は停止します。フィルイン低減の並べ替え \( P \) の後、
\[ PAP^\mathsf{T}=LL^\mathsf{T} \]
へ分解し、前進・後退代入で \( Az=b \) を解き、\( u=D^{-1}z \) として元の変位へ戻します。剛性や拘束を付加する操作ではありません。疎 LU は不定値・非対称行列を扱う別の直接法であり、この正定値診断とは区別します。
数値条件の確認と逆1ノルム推定
浮動小数点の丸めにより、不安定な架構の零剛性が微小な正値になって分解が成功する場合があります。そのため、荷重に対する解を公開する前に、平衡化後の行列について推定逆条件数を確認します。対象は全体行列を拘束縮約した後の行列です。
行列の1ノルムは列ごとの絶対値和の最大値です。
\[ \lVert A\rVert_1=\max_j\sum_i|A_{ij}|,\qquad \widehat{r}=\frac{1}{\lVert A\rVert_1,\widehat{\lVert A^{-1}\rVert_1}} \]
逆行列の1ノルムは、逆行列を作らずに標準的な反復推定法で評価します。一定値の初期ベクトル、符号ベクトル、選ばれた座標方向への求解を繰り返し、符号の反復・推定値の停滞・反復回数で終了し、最後に交互符号のベクトルも確認します。対称行列では転置方向への作用も同じ因子で求解できます。これは標準的な逆1ノルム推定に用いられる DLACN2 の方法です。既存の因子による数回の前進・後退代入とベクトル演算を追加し、逆行列の生成や追加の因数分解は行いません。
\( \widehat{r}<\epsilon \) の場合、または推定途中に非有限値が生じた場合は、数値精度上信頼できる正定値求解を確認できないものとして停止します。ここで \( \epsilon=2^{-53}\simeq1.1102230246251565\times10^{-16} \) は倍精度の丸め単位です。条件数推定は DPOCON、判定水準は DPOSVX の作業精度で特異とみなす判定を根拠とします。DPOSVX は警告後も求解を続けますが、本プログラムでは結果を公開せず停止します。
この推定法が与える逆1ノルムは下界であり、推定逆条件数はすべての不安定な架構を検出する数学的保証ではありません。また、数学的に正定値でも作業精度で識別できない行列は停止対象です。診断は物理的な不安定性の証明でも、建物の安全性の判定でもありません。診断通過は要求する変位精度を保証せず、各求解で元の行列に対する残差を常時検査する仕様でもありません。
数値処理の一次資料:LAPACK 3.12.1 DPOCON、DLACN2、DPOSVX、DLAMCH の目的・計算手順・機械精度の定義によります。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( K \) | 全体剛性行列 | 並進・回転の成分に応じた一般化剛性 |
| \( u \) | 節点変位ベクトル | mm・rad |
| \( F \) | 荷重ベクトル | N・Nmm |
| \( P \) | フィルイン低減の並べ替え行列 | - |
| \( L,\ U \) | 分解で得られる下三角・上三角因子 | - |
| \( A,\ b,\ z \) | 平衡化後の行列・右辺・解 | 変換後の成分による |
| \( n \) | 自由度数 | - |
| \( \mathrm{nnz}(L) \) | 因子 \( L \) の非ゼロ要素数 | - |
分解の再利用と適用条件
- 線形静解析:通常・長期の固定剛性は採用条件ごとに分解し、同じ条件の荷重ケースに再利用します。引張専用ブレースはケースごとの有効集合を反復更新し、剛性が変わるたびに数値分解します。
- 固有値解析・参考固有周期:静解析の準備で分解した基準剛性を全規模で再利用します。長期の軸剛性低減や引張専用のケース別最終剛性には置き換えません(固有値解析)。
- 線形時刻歴応答(Newmark-β):全ステップ共通の有効剛性を1回分解し、各ステップの求解に再利用します。
- 増分解析・非線形時刻歴:接線剛性が変わるたびに数値分解し、同じ疎パターンの記号解析を再利用します。
上記の正定値診断は、これらの Cholesky 分解で実際に求解する行列へ共通に適用します。時刻歴では有効剛性や初期加速度の質量行列が対象であり、静的な不安定性だけから動的な解の存在を一律に否定するものではありません。初期加速度に用いる質量行列の既存の LU への切替は、この診断とは別の契約です。
行列が更新された際の再分解に失敗した場合は、Cholesky・LU ともに以前の行列の分解結果を使って求解しません。求解を再開するには、対象行列の分解が正常に完了する必要があります。
線形連立方程式を直接法で解く方針と、固有値反復・Newton 反復・引張専用の有効集合反復の収束条件は別です。反復が規定回数内に収束しない場合はエラーで停止します。因子のフィルインによって分解の時間とメモリが増えるため、大規模解析の資源量は構造・拘束・疎パターンに依存します。
実装参照:sepika_math::{solver, cholesky, lu, sparse}(crates/sepika-math/src/)、sepika_solver::statics::analysis::Analysis(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/mod.rs)が担当します。
線形静解析
変位法(有限要素法)により、部材内力と変位を求めます。
算定式
全体剛性 K_free を組立て、拘束を縮約して次を得ます:
\[ K_{\text{red}} = \text{reducer}^\mathsf{T} \cdot K_{\text{free}} \cdot \text{reducer} \]
次を解き、部材内力を behavior.recover_forces(u_elem) で回復します:
\[ u = K_{\text{red}}^{-1} \cdot F_{\text{red}} \]
実内力は、剛性応答と両端固定梁のスパン内力(fixed_internal_local)の重ね合わせとします。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( K_{\text{free}} \) | 拘束を反映する前の全体剛性行列 | N/mm |
| \( K_{\text{red}} \) | 拘束を縮約した剛性行列 | N/mm |
| \( \text{reducer} \) | 拘束自由度を縮約する変換行列 | - |
| \( F_{\text{red}} \) | 縮約後の荷重ベクトル | N |
| \( u \) | 節点変位ベクトル | mm |
| \( N \) | 軸力(引張正) | N |
| \( Q_y,\ Q_z \) | せん断力 | N |
| \( M_x \) | ねじりモーメント | N·mm |
| \( M_y,\ M_z \) | 曲げモーメント | N·mm |
| \( S,\ S_i \) | 部材断面力ベクトル(荷重組合せ・荷重ケース単体) | N, N·mm |
| \( F,\ F_i \) | 荷重ベクトル(荷重組合せ・荷重ケース単体) | N |
| \( c_i \) | 荷重組合せの組合せ係数 | - |
線材(柱・梁・ブレース)は、剛床への所属や ForceRegime の指定に依らず、すべて
弾性要素(弾性ティモシェンコ梁・弾性トラス)で組みます(モデルの自動選択(ForceRegime))。したがって線材の
部材内力は全部材について出力され、応力図・断面検定の対象になります。材端集中ばね・
ファイバーといった弾塑性の梁要素は非線形解析でのみ用います。
解析前の入力チェック
解析の実行前に、モデルの静的な検証を行います。 次の不備は、何をすれば直るかを含むエラーとして扱い、解析を停止します。 断面や材料が未割当の要素を既定値で補って解析することはありません。
- 節点・部材の ID と配列添字の不一致、存在しない断面・材料への参照など、モデル検証で見つかる不整合
- 節点・部材・支点(拘束)が 1 つもない
- 断面・材料が必要な要素(梁・柱・ブレース・ファイバー・マルチスプリング・シェル・壁)の断面が未割当、または材料が未割当
- シェル要素の断面に板厚がない(線材用断面を割り当てた場合など)
- 線材の有効せん断断面積 As が 0(せん断有効断面積 As)
- 耐震壁と周辺架構の構造種別の食い違い
- 断面が未割当の床、断面の材料または板厚が定まらない床(床の断面と自重)
- 存在しない節点への参照(ダングリング)、およびどの部材・拘束・床にも属さない孤立節点
- 基部以外の階で、剛床マスター節点が水平方向(Ux または Uy)に拘束され、かつその階の地震用重量が正のとき
仕口パネル要素・節点バネ・免震支承材・制振ダンパーは、断面や材料ではなく専用の特性値から剛性を作るため、断面と材料の未割当チェックの対象外です(仕口パネル)。
基部の床では、柱脚が固定またはピンで水平拘束されているとき、剛床マスターも水平拘束になります。 これは剛床が動けるかどうかの判定結果であり、地震用重量があってもエラーにはしません。 上階で同じ状態になるのは、床面に柱や大梁が取り付いておらず、非構造節点だけが剛床のスレーブになっているときです。 その階の地震力はマスターへ載るため、水平拘束された自由度へ入ると解析結果に現れません。 地震用重量が 0 の階は、消える水平力も 0 であるため、この検査の対象外です。
この一覧は、下ドックの「診断」タブがエラーとして挙げる項目と同じで、どちらも同じ判定を呼んでいます。 判定は解析を止めない警告も返し、剛床のない階や、断面未割当の壁版などがその例です。 入力チェックはエラーだけを見て停止するため、警告では解析は止まりません。 入力チェックは最初の 1 件で解析を止めるため、不備が複数あるモデルでは、修正と再実行を繰り返すことになります。 解析の前にまとめて洗い出したい場合は、準備計算のモデル整合性チェックを確認してください。 こちらは不備をすべて挙げ、部材や節点ごとに 3D ビューで位置を示すため、修正の順序を立ててから解析へ進めます。
実装参照:sepika_solver::statics::analysis(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs)が検証します。
解析前の入力チェック(precheck_model)と診断はどちらもこれを呼びます。
部材内力の符号規約
評価断面の内力 \( [N, Q_y, Q_z, M_x, M_y, M_z] \) は、部材全長で連続な断面力 (切断法による断面の力の釣合いから定まる値)として出力します:
- 軸力 \( N \) は引張を正とする。
- せん断力とモーメントは \( Q_y = dM_z/dx \)・\( Q_z = -dM_y/dx \) を満たす。
- 曲げモーメント \( M_z \) は局所 \( -y \) 側(重力方向の下向き荷重を受ける 水平梁では下端)の引張を正とする。両端固定梁の等分布荷重では端部 \( -wL^2/12 \)・中央 \( +wL^2/24 \) となる。
- 応力図は正のモーメントを引張側(局所 \( -y \) 方向)へ張り出して描画する。 張り出しの実線と材軸の間の領域を塗りつぶす。塗りは単色のほか、値に応じた 色分け(コンター表示。カラーバー凡例付き)へ切り替えられる。コンターの カラーマップは Viridis(既定。知覚均等で色覚多様性に配慮)・Plasma・ Turbo・Jet・青-白-赤(発散型)から選択できる。
長期軸力無効化と引張専用
単発・一括・背景実行のいずれも、荷重ケースの種類と応力解析条件から同じ剛性を採用し、その剛性で部材内力を回復します。 長期軸力無効化を指定した場合、対象部材の軸剛性に係数 β = 1e-6 を乗じます。指定しない場合は β = 1 です。 長期ケースは固定・積載・雪・その他(Dead / Live / Snow / Other)です。 地震用積載・風・地震(LiveSeismic / Wind / Seismic)は長期低減の対象外です。Ai 地震力も地震ケースとして扱います。 柱の対象は柱用途の梁・ファイバー・マルチスプリング要素です。部材の傾きでは追加判定しません。ブレースの指定は柱とは独立です。
低減するのは軸剛性であり、回復軸力が必ず1e-6倍になるわけではありません。代替の荷重伝達経路がない場合は対象部材が荷重を負担し続けるため、軸力と変形を確認してください。 SRC・CFT柱では合成軸剛性を求めてから低減します。断面形状、質量、曲げ・せん断・ねじり剛性、剛域、壁側柱の解放、仕口パネルのオフセット、支持ばねは保持します。 完全にゼロにせず微小値を残すのは、浮き自由度による特異行列を避けるためです。
引張専用ブレースで反復解析を指定した場合、軸伸びが負の部材には追加の残留係数 s = 1e-6、軸伸びが0以上の部材には s = 1 を採用します。 軸剛性の係数は βs です。両設定を併用した長期圧縮側では1e-12となり、微小な圧縮軸力が残ります。 有効部材の集合が変わらなくなった場合だけ収束とします。反復上限50回で集合が一致しなければ、荷重ケース名・ID・上限を示す未収束エラーとなり、正常な解析結果として保存しません。 ほかの荷重ケースの成功応答は、そのケース自体が失敗しない限り使用できます。固有値・精算周期の基準剛性にはこれらの静的設定を適用しません。
実装参照:sepika_solver::statics::linear::solve_static_case(crates/sepika-solver/src/statics/linear/mod.rs)、sepika_element::factory::build_behavior_with_axial_factor(crates/sepika-element/src/factory/mod.rs)が実装します。
荷重組合せの応答(重ね合わせ)
求解の最小単位は荷重ケース単体です。荷重組合せの応答は、荷重ケース単体の応答を 組合せ係数で倍して足し合わせて求めます。長期低減や引張専用反復も、各ケースで採用した応答を足し合わせます。 引張専用を含む係数和は合成荷重の active-set 解ではなく、別ケース合成の断面検定は理由付き未検定です。合成荷重による再解析は行いません。
算定式
荷重組合せが荷重ケース \( L_1, L_2, \dots \) を係数 \( c_1, c_2, \dots \) で参照する場合、 節点変位 \( u \) と部材断面力 \( S \)(評価断面ごとの \( [N, Q_y, Q_z, M_x, M_y, M_z] \))は
\[ u = \sum_i c_i \, u_i, \qquad S = \sum_i c_i \, S_i \]
とします。ここで \( u_i, S_i \) は荷重ケース \( L_i \) 単体の応答です。
全ケースで同じ剛性・回復条件を採用する場合、この係数和は荷重ベクトル \( F = \sum_i c_i F_i \) を組み立てて同じ条件で 1 回解いた結果と理論上一致します。 長期低減を採用するケースと通常剛性の短期ケースが混在する場合は、引張専用反復がなくてもこの同値性は成立しません。 その場合も各ケースの応答係数和を維持し、合成荷重による再解析は行いません。部材中間荷重による スパン内力(両端固定梁の内力。上式の \( S_i \) に含まれます)も同じ係数で倍されるため、 等分布荷重を受ける梁の M の放物線分布は組合せでも保たれます。
この扱いにより、同じ荷重ケース(DL・LL・EX・EY など)を参照する荷重組合せが 何件あっても、求解は荷重ケースの数だけで済みます。GUI の「単体実行」「一括解析」は いずれもこの経路を使い、単体実行で荷重組合せを選んだ場合は、その組合せが参照する 荷重ケースを解いてから線形和を組み立てます。
実装参照:sepika_solver::statics::analysis(analysis/combination.rs)の
Analysis::{linear_combination, linear_combination_batch, linear_static_with_combinations} が
組み立て、線形和そのものは sepika_solver::statics::linear::superpose_static が行います。
参照する荷重ケースが存在しない、またはその荷重ケースの解析が失敗した場合、その荷重組合せは
エラーとして扱います(該当項が黙って 0 になることを避けるため)。
固有値解析
固有周期とモードを、部分空間反復法(Bathe)と一般化 Jacobi 法による射影固有値問題の求解で求めます。
質量モデル
全体質量行列 \( M \) の質量源は「部材密度による整合質量(Consistent)」と「節点集中質量(剛床マスターの質点等)」の 2 つで、その組合せはモデルの質量方式に従います:
- 補正質点方式(既定): 部材密度による分布質量に加え、剛床マスター節点へ「物理質量相当重量のうち分布質量として計上されない分」(床・仕上げ・積載・二次部材・雑壁など)を補正質点として与えます。階の生成がマスター質量を \( m = (W_{\text{mass}} - W_{\text{frame}})/g \)(水平 2 方向)、回転慣性を \( J = \sum m_i r_i^2 \)(\( r_i \) は慣性力重心からの平面距離)で算定します。部材の分布質量による鉛直・局部の振動モードも保たれます。
- 質点のみ方式: 質量は節点集中質量のみを用い、部材密度による分布質量は算入しません(水平質点系モデル化)。剛床マスターには物理質量相当重量の全量 \( W_{\text{mass}}/g \) と回転慣性を与えるため、鉛直方向・局部の振動モードは表現されません。
質点のみ方式でも、立体骨組の固有値解析は部材剛性を使います。局所軸を構成できない部材は、質量が節点集中のみでも対象部材と理由を示して解析を停止します。
両方式の公称並進総動的質量は \( \sum W_{\text{mass},i}/g \) で一致します。動的質量は物理質量(鋼材は物理質量密度 7.85 t/m³)に基づき、地震用重量 \( W \)(設計重量。鋼材は 78.5 kN/m³)とは一致しません。
質量方式は固有値解析・時刻歴応答解析・精算固有周期(Ai 分布の T 算定)で共通に適用されます。
質点系(串団子)の層質量は、この質量行列とは別に、階生成が物理質量相当重量の全量から
Story::dynamic_mass として保存した値を用います(質点系解析の「質量」)。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( K \) | 全体剛性行列 | N/mm |
| \( M \) | 全体質量行列 | t |
| \( p_{\text{req}} \) | 要求モード数 | - |
| \( n \) | 縮約後自由度数 | - |
| \( p \) | 解析対象のモード数 \( p = \min(p_{\text{req}}, n) \) | - |
| \( q \) | 部分空間サイズ | - |
| \( y,\ x \) | 部分空間反復の予測・更新ベクトル | - |
| \( \bar{K},\ \bar{M} \) | 部分空間へ射影した剛性・質量行列 | N/mm, t |
| \( V \) | 射影固有値問題の固有ベクトル | - |
| \( \Theta \) | 射影固有値問題の固有値 | rad²/s² |
| \( S \) | 対称スケーリング行列 | - |
| \( \omega \) | 固有円振動数 | rad/s |
| \( \text{period} \) | 固有周期 | s |
| \( \varphi \) | 固有ベクトル(モード形状) | - |
| \( \beta \) | 刺激係数(参加係数) | - |
| \( M_{\text{eff}} \) | 有効質量 | t |
| \( r \) | 地動方向の影響ベクトル | - |
| \( W_{\text{mass}},\ W_{\text{frame}} \) | 階の物理質量相当重量・分布質量として計上する部材重量 | N |
| \( m,\ g \) | 補正質点の質量・重力加速度 | t, mm/s² |
| \( J,\ r_i \) | 階の回転慣性・慣性力重心からの平面距離 | t·mm², mm |
算定式
要求モード数 \( p_{\text{req}} \) は縮約後自由度数 \( n \) で切り詰め、解析対象のモード数 \( p \) とします:
\[ p = \min(p_{\text{req}}, n) \]
部分空間サイズ \( q \) は次で算定します:
\[ q = \min(n, \max(2p, p+8)) \]
上式は \( p_{\text{req}} \geq 1 \) に適用します。要求モード数 \( p_{\text{req}} = 0 \) のときは上式によらず \( q = 0 \) とし、部分空間を構成しません(固有値解析は行わず、空の結果を返します)。
この式は Bathe 2013 式(19) の \( q = \max(p+8, 2p) \) に、縮約後自由度数 \( n \) の上限を課したものです。部分空間反復は本来、Sturm 列チェックによる固有振動数の欠落検出と部分空間の自動拡大を併用しますが、本実装では Sturm 列チェックを行わないため、小さい部分空間でモードを取りこぼすのを避けて \( 2p \) と \( p+8 \) の大きい方(\( \max \) 側)を採ります。
要求モード数 \( p_{\text{req}} \) が縮約後自由度数 \( n \) を超える場合は、自由度数まで切り詰めて \( p = n \) として実行します(返るモード数は要求モード数を超えません)。一方、質量を持つ方向の数(質量ランク)が解析対象のモード数 \( p \) に満たない場合は、要求モード数を切り詰めるのではなくエラーとして通知します(質量が有効な独立自由度が不足しているため)。
反復は次の予測から射影を作り、射影一般化固有値問題を解いて更新します:
\[ K y = M x \]
\[ \bar{K} = y^\mathsf{T} K y, \bar{M} = y^\mathsf{T} M y \]
\[ x_{\text{new}} = y \cdot V \]
射影一般化固有値問題 \( \bar{K} V = \bar{M} V \Theta \) は、一般化 Jacobi 法(Bathe)により \( \bar{K} \)・\( \bar{M} \) を同時対角化して解きます。半正定値の \( \bar{M} \)(部分空間サイズが質量ランクを超える場合に必ず生じる)でも正則な合同変換のみで進むため、質量を持たない方向が混在しても数値的に安定します。求解に先立ち、両行列を \( \bar{K} \) の対角で対称スケーリング(\( S = \operatorname{diag}(1/\sqrt{\bar{K}_{ii}}) \)、合同変換のため固有値は不変)することで、並進質量と回転慣性のように単位スケールが大きく異なる質量が混在しても、質量の有無の判定が単位系に依存しません。質量を持たない方向(対角化後の質量対角成分が相対許容誤差未満の方向)には固有振動数が存在しないため解の対象から除外し、質量を持つ方向の数(質量ランク)が解析対象のモード数 \( p \) に満たない場合はエラーとして通知します。
収束は \( |\theta - \theta_{\text{prev}}| < 10^{-10} \cdot \max(\theta, 1) \) で判定します。周期および固有ベクトルの M 正規化は次のとおりとします:
\[ \text{period} = 2\pi/\sqrt{\omega^2} \]
\[ \varphi^\mathsf{T} M \varphi = 1 \]
固有ベクトル \( \varphi \) は拘束縮約後の独立自由度空間で求まるため、モード形状の表示・出力にあたっては縮約を逆変換して全節点の 6 成分へ展開します。剛床などの従属自由度には、マスター自由度の剛体変位関係(面内並進+回転)に従った値が入ります。
参加係数および有効質量は次で算定します:
\[ \beta = \frac{\varphi^\mathsf{T} M r}{\varphi^\mathsf{T} M \varphi} \]
\[ M_{\text{eff}} = \frac{(\varphi^\mathsf{T} M r)^2}{\varphi^\mathsf{T} M \varphi} \]
疎行列演算と計算コスト
全体剛性行列 \( K \)・全体質量行列 \( M \) は、立体骨組ではほとんどの成分がゼロの疎行列になります(各自由度は同じ節点・隣接節点の自由度としか連成しないため)。固有値解析の反復に現れる行列演算は、この疎行列の非ゼロ要素だけを用いて計算します:
- 射影行列の算定:部分空間への射影 \( \bar{K} = Y^\mathsf{T} K Y \)、\( \bar{M} = Y^\mathsf{T} M Y \) は、まず疎行列ベクトル積 \( Z = K Y \)(列ごとに非ゼロ要素のみを走査。コストは非ゼロ数 \( \mathrm{nnz} \) に比例)を求め、続いて \( Y^\mathsf{T} Z \) を計算する 2 段構成とします。1 反復あたりのコストは \( O(\mathrm{nnz} \cdot q + n q^2) \)(\( n \): 自由度数、\( q \): 部分空間サイズ)で、モデル規模に対しほぼ線形にしか増えません。
- 固有ベクトルの M 正規化・参加係数:\( \varphi^\mathsf{T} M \varphi \) や \( \varphi^\mathsf{T} M r \) も同様に疎行列ベクトル積で算定します。
- 分解の再利用:反復中の \( y = K^{-1} M x \) は、基準剛性行列の疎 Cholesky 分解(線形代数ソルバ)を多数回の前進・後退代入で再利用します。静解析と続けて実行する場合は、自由度規模によらず準備済みの基準剛性の分解を共有し、固有値解析・参考固有周期のために再分解しません。長期軸剛性低減や引張専用のケース別最終剛性は基準固有値に用いません。
このため固有値解析の所要時間は、モデル規模(自由度数と非ゼロ数)にほぼ比例して増える程度に収まり、小規模モデルでは即座に完了します。
地震荷重(Ai 分布)との連携
地震荷重の設計用一次固有周期 T の算定法(地震力)で「精算(固有値解析)」を選択した場合は、本解析で求めた 1 次モードの固有周期を用います。固有周期は加力方向(X/Y)によらず同一のため、算定は 1 回で足ります。精算周期を使うには、解析タブで固有値解析を先に実行しておく必要があります(未実行の場合は画面に案内が表示されます)。既定の「略算」は告示の略算式 T = h(0.02+0.01α) を用いるため、固有値解析の実行は不要です。
実装参照:sepika_solver::dynamic::eigen(crates/sepika-solver/src/dynamic/eigen/mod.rs)が算定します。
EIGEN_TOL = 1e-10、EIGEN_MAX_ITER = 200 とし、部材の分布質量は整合質量(Consistent)で組み立てます(算入の要否は上記の質量方式に従います)。整合質量行列は要素局所系で構成し、剛性行列と同様に全体系へ変換(\( M_{\text{global}} = R^\mathsf{T} M_{\text{local}} R \))してから全体自由度へ組み込みます(軸方向と曲げ方向で係数が異なり回転不変ではないため。部材の向きに依らず同一の固有周期が得られます)。
減衰
減衰マトリクスを、質量比例、初期剛性比例、Rayleigh、モード別、接線剛性比例の各方式で、構造動力学の標準手法に準拠して構成します。
算定式
質量比例(\( a_0 = 2h\omega \)):
\[ C = a_0 \cdot M \]
初期剛性比例(\( a_1 = 2h/\omega \)):
\[ C = a_1 \cdot K \]
Rayleigh は減衰マトリクスを次とし、係数を次で定めます:
\[ C = a_0 \cdot M + a_1 \cdot K \]
\[ \beta_k = \frac{2(h_2\omega_2 - h_1\omega_1)}{\omega_2^2 - \omega_1^2} \]
\[ \alpha_m = \frac{2\omega_1\omega_2(h_1\omega_2 - h_2\omega_1)}{\omega_2^2 - \omega_1^2} \]
モード別:
\[ C = \sum 2h_i\omega_i(M\varphi_i)(M\varphi_i)^\mathsf{T} \]
接線剛性比例:
\[ C = (2h/\omega) \cdot K_t \]
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( C \) | 減衰マトリクス | N·s/mm |
| \( M \) | 質量マトリクス | t |
| \( K \) | 初期剛性マトリクス | N/mm |
| \( K_t \) | 接線剛性マトリクス | N/mm |
| \( h \) | 減衰比 | - |
| \( h_1,\ h_2 \) | Rayleigh に用いる 1 次・2 次の減衰比 | - |
| \( \omega \) | 基準の固有円振動数 | rad/s |
| \( \omega_1,\ \omega_2 \) | Rayleigh に用いる 1 次・2 次の固有円振動数 | rad/s |
| \( a_0,\ \alpha_m \) | 質量比例の係数 | 1/s |
| \( a_1,\ \beta_k \) | 剛性比例の係数 | s |
| \( \varphi_i \) | i 次の固有ベクトル(モード形状) | - |
基準振動数の求め方
剛性比例と接線剛性比例の基準は初期剛性の 1 次固有円振動数、Rayleigh は 1 次・2 次を用います。 モード別は 6 次から 1 次の順に試行し、得られた低次モードに一律の減衰比を与えます。
初期剛性比例の適用
初期剛性は、長期荷重と動的初期変位を与える前の未載荷状態で定め、初期加速度の評価から全時刻の減衰行列に用います。 長期載荷や地震応答で塑性化しても、状態確定や同じ変位での再評価によって減衰用剛性を切り替えません。 復元力と材料履歴は非線形に更新し、釣合い反復には現在の接線剛性を用います。
塑性化後も初期剛性に比例した減衰力が作用します。したがって同じ速度なら、剛性低下した接線に比例する方式より大きな減衰力となり得ます。 塑性履歴によるエネルギー消費に加えて粘性減衰を与えるため、減衰が過大となり、変位や応力の応答を過小評価する可能性があります。 初期剛性比例がすべての建物・応答について安全側になるという保証はありません。 塑性化の程度、減衰比、減衰力の大きさと応答への影響を確認し、適用する解析モデルに応じて減衰条件を選んでください。
既定値(解析タブ):
時刻歴応答解析では、次の値を既定とします。
| 項目 | 既定 |
|---|---|
| 減衰比 | 0.02 |
| 減衰モデル | 初期剛性比例 |
| Rayleigh の 2 次モード減衰比 | 0.02(1 次は上記の減衰比) |
| 質点系の減衰比 | 0.02(初期剛性比例固定。立体時刻歴とは独立) |
立体時刻歴では Rayleigh・モード別・接線剛性比例(α1 一定、h1 一定)も選択できます。 接線剛性比例を明示的に選んだ場合は、現在の接線に応じて減衰行列が変わります。 保存した解析設定の減衰方式を再実行時にも用います。 時刻歴応答解析での使い方は 時刻歴応答解析 を参照してください。 質点系の減衰は初期剛性比例のみで、減衰比は右バー「質点系」の設定を使います(既定は上表。質点系解析)。
実装参照:sepika_solver::dynamic::damping(crates/sepika-solver/src/dynamic/damping.rs)が算定し、h1 一定や累積型/非累積型の減衰力評価にも対応します。減衰設定の永続化は sepika_job::AnalysisSettings(crates/sepika-job/src/settings.rs)です。
時刻歴応答解析
支配方程式(基盤一様加振、相対変位形式)を解きます。全体質量行列 \( M \) は固有値解析と同一の質量モデル(固有値解析の質量モデル: 部材の整合質量と剛床マスター等の節点集中質量を、モデルの質量方式に従って組み合わせる)で組み立てます。
\[ M \cdot \ddot{u} + C \cdot \dot{u} + K \cdot u = -M \cdot r \cdot \ddot{x}_g(t) \]
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( M \) | 全体質量行列 | t |
| \( C \) | 減衰マトリクス | N·s/mm |
| \( K \) | 全体剛性行列 | N/mm |
| \( u,\ \dot{u},\ \ddot{u} \) | 相対変位・速度・加速度ベクトル | mm, mm/s, mm/s² |
| \( \ddot{x}_g(t) \) | 地動加速度 | mm/s² |
| \( r \) | 地動方向の影響ベクトル | - |
| \( \beta,\ \gamma \) | Newmark-β の積分パラメータ(平均加速度法は \( 1/4,\ 1/2 \)) | - |
| \( \Delta t \) | 時間刻み | s |
| \( \hat{K},\ K_{\text{eff}} \) | Newmark・非線形時刻歴の有効剛性行列 | N/mm |
| \( K_t \) | 接線剛性行列 | N/mm |
| \( c_1,\ c_2,\ c_3,\ c_4 \) | Newmark-β の係数 | 1/s², 1/s, 1/s, - |
| \( p_{\text{eff}} \) | Newmark の有効荷重ベクトル | N |
| \( a,\ v \) | 加速度・速度ベクトル | mm/s², mm/s |
| \( f_{\text{int}} \) | 要素の復元力ベクトル | N |
| \( p,\ p_{\text{dyn}},\ f_0 \) | 外力・動的外力・長期荷重の外力ベクトル | N |
実装参照:全体質量行列の組立ては sepika_solver::common::assemble::assemble_global_m(crates/sepika-solver/src/common/assemble.rs)が、減衰行列の構成は sepika_solver::dynamic::damping が担います。
入力時刻と初期状態
立体の線形・非線形時刻歴と、平面・空間の質点系時刻歴は、入力の各点をその時刻の地動加速度の瞬時値として扱います。 N 点の入力は時刻 0, dt, …, (N−1)dt に対応し、積分は T=N−1 区間です。 時刻 sdt から (s+1)dt への更新には、終点の入力加速度を使います。 記録の先頭は積分前の初期状態で、入力末端後の自由振動区間は自動追加しません。
| 入力 | 点数・積分区間数 | 解析・記録の終時刻と下限 |
|---|---|---|
| サンプル波(正の有限な継続時間 D・刻み dt) | S=ceil(D/dt)、N=S+1、S 区間 | Sdt。0<D<dt でも 1 区間・2 点 |
| 外部波 N≥2 点 | N 点、T=N−1 区間 | Tdt。GUI の CSV 読込は 2 点以上が必要 |
| 低位の計算入口で受理する 1 点入力 | 初期 1 点、0 区間 | 0。先頭地動による初期加速度を含む |
| 空の入力 | 正常な応答として採用しない | エラーまたは空の結果となる |
サンプル波の継続時間と刻みが 0 以下または非有限の場合は、波形生成前に拒否します。 たとえば D=0.05 s、dt=0.02 s では 3 区間・4 点、終時刻 0.06 s です。 刻みは実際に解析へ適用する時間刻みであり、詳細記録の間引きによって終時刻は変わりません。
初期相対加速度は、先頭地動と初期の変位・速度を含む釣合いから求めます。 線形では次式です。静止から始める場合でも、先頭地動が非零なら相対初期加速度は一般に非零です。
\[ M a_0 = -M r \ddot{x}_g(0) - C v_0 - K u_0 \]
非線形では、初期復元力と長期荷重を含めて次式を用います。
\[ M a_0 = -M r \ddot{x}_g(0) + f_0 - f_{\text{int},0} - C v_0 \]
質量行列が特異な立体モデルでは、任意の初期条件を扱えるわけではありません。 既存の初期加速度求解で解けず、右辺の成分を内部単位系(並進 N・回転 N·mm)で表した数値のユークリッドノルムが 10⁻⁹ 未満の場合は初期加速度をゼロとして扱い、それ以外はエラーになります。 この近零時の扱いは厳密な初期釣合いを保証しません。無質量自由度を含む一般モデルや一般 MPC の初期加速度求解への対応を意味しません。
相対変位・相対速度・相対加速度は地盤に対する応答です。 並進の絶対加速度は、同じ時刻の相対加速度に地動の寄与を加えた \( a_{\mathrm{abs}}=a_{\mathrm{rel}}+r\ddot{x}_g \) です。 入力地動、相対加速度、階絶対加速度を同じ量として比較しないでください。
実装参照:sepika_job::sample_wave(crates/sepika-job/src/sample_wave.rs)と sepika_solver::dynamic::timehistory::common(crates/sepika-solver/src/dynamic/timehistory/common.rs)が入力生成と立体の初期求解を担います。
線形時刻歴(Newmark-β)
線形の時刻歴応答を Newmark-β 法で解きます。 パラメータは平均加速度法(\( \beta = 1/4, \gamma = 1/2 \)、無条件安定)と線形加速度法(\( \beta = 1/6, \gamma = 1/2 \)、条件付安定)を取り、解析は常に平均加速度法で実行します。 時間刻みによらず安定なため、波形の刻みをそのまま使えるためです。 時間刻み \( \Delta t \) は、解析設定で指定した値が正であればそれを、指定がなければ入力波形のサンプリング間隔を使います。
算定式
有効剛性(\( c_1 = 1/(\beta \Delta t^2), c_2 = \gamma/(\beta \Delta t) \)):
\[ \hat{K} = K + c_2 \cdot C + c_1 \cdot M \]
終点の地動外力を \( p_{n+1}=-Mr\ddot{x}_g(t_{n+1}) \) として、有効荷重は次式です。
\[ p_{\text{eff}}=p_{n+1}+M\left(\frac{u_n}{\beta\Delta t^2}+\frac{v_n}{\beta\Delta t}+\left(\frac{1}{2\beta}-1\right)a_n\right)+C\left(\frac{\gamma u_n}{\beta\Delta t}+\left(\frac{\gamma}{\beta}-1\right)v_n+\Delta t\left(\frac{\gamma}{2\beta}-1\right)a_n\right) \]
次を解き、加速度と速度を更新します:
\[ u_{n+1} = \hat{K}^{-1} \cdot p_{\text{eff}} \]
\[ a_{n+1} = c_1(u_{n+1} - u) - c_3 \cdot v - c_4 \cdot a \]
\[ v_{n+1} = v + \Delta t((1-\gamma)a + \gamma \cdot a_{n+1}) \]
初期加速度は 入力時刻と初期状態 の釣合いから求めます。
実装参照:sepika_solver::dynamic::timehistory(crates/sepika-solver/src/dynamic/timehistory/mod.rs)が算定します。
非線形時刻歴(Newmark-β + Newton-Raphson)
全節点が固定され、独立自由度がないモデルでも、長期部材荷重による部材応力を評価します。変位・速度・加速度はゼロですが、初期時点と各確定時点の応力を記録し、荷重の評価に失敗した場合は理由付きで停止します。節点も要素もない空モデルだけは計算せず空の結果を返します。
記録する部材応答は履歴を確定する前に検査します。荷重を含む応答の欠落・自由度数不一致・非有限値、不正な評価位置・断面力を検出した場合は、その時刻の開始状態へ戻して停止し、不正な記録や材料履歴を後続時刻へ渡しません。
非線形の時刻歴応答を、Newmark-β と Newton-Raphson 反復(commit/rollback)で解きます(構造動力学の標準的な非線形時刻歴解法)。 積分パラメータと時間刻みの決め方は 線形時刻歴(Newmark-β) と同じで、平均加速度法(\( \beta = 1/4, \gamma = 1/2 \))を使います。
算定式
各反復で釣合い用の接線剛性を更新します。既定の初期剛性比例減衰は、長期載荷前の未載荷剛性から定めた減衰行列を固定します。 接線剛性比例を選んだ場合に限り、接線に応じて減衰行列も更新します(減衰)。有効剛性を次とします:
\[ K_{\text{eff}} = K_t + c_2 \cdot C + c_1 \cdot M \]
残差を次とします(\( f_{\text{int}} \) は要素の復元力に加え、支点ばね(Node::support_spring)
の内力 \( k_i u_i \) も含みます):
\[ r = p - f_{\text{int}} - C \cdot v - M \cdot a \]
収束は \( \|r\| < \text{tol} \cdot r_{\text{ref}} \) で判定します。基準ノルム \( r_{\text{ref}} \) は 動的釣り合いの各項のノルムの最大とし、解析中の最大値に対する下限を設けます。
\( p_{\text{dyn}} \) は外力 \( p \) から長期荷重成分 \( f_0 \) を除いた地震動由来の 動的外力(\( p = p_{\text{dyn}} + f_0 \))です。\( f_0 \) を含めないのは、長期荷重が 卓越するモデルで収束判定が過度に緩まないようにするためです。
慣性力・減衰力も基準に含めるのは、地動加速度がゼロを横切る時刻で基準が消えるのを 防ぐためです。動的外力だけを基準にすると、その時刻で分母が最低値の 1 まで落ち、判定が 「残差が tol(N)を下回ること」という絶対値判定に化けます。実建物では内力・慣性力が \( 10^7 \) N 規模あります。有効剛性の線形解が持つ残差は、その条件数と計算機イプシロンに 比例して \( 10^{-1} \) N 規模になります。つまり到達できない閾値です。正弦波なら 毎周期 2 回通る時刻であり、実地震波でも頻繁に起きます。地動が 0 でも構造は動いており 慣性力・減衰力は大きいので、3 項の最大を採れば基準は消えません。
3 項の最大だけでは、応答が減衰しきった時刻で同じ破綻が戻ります。長い波形の末尾では 3 項すべてが 1 N を下回り、また床まで落ちるためです。そこで解析中に観測した力のスケールの 最大値に対する下限を設け、その 1% を切った領域では基準をそれ以上下げません。
\[ r_{\text{ref}} = \max(\|p_{\text{dyn}}\|,\ \|M \cdot a\|,\ \|C \cdot v\|,\ 0.01 \cdot r_{\text{ref,max}},\ 1) \]
応答が最大の 1% を切った領域は工学的に無視できる大きさで、そこで判定を続けても意味が ありません。実測では、最大 6.1e7 N の解析の末尾で力が 6e-4 N まで落ちたところ、履歴則が 微小振幅でチャタリングして残差が 1e-4 N から下がらなくなりました。1% はこれを収束と 認めるのに必要な余裕から定めています。応答が大きい時刻では瞬間値のほうが大きいため、 この下限は効きません。
最低値の 1 は、解析を通して一度も動いていないときに 0 除算を避けるための床です。 反復の最大回数と許容誤差 tol は解析タブ「時刻歴応答」の「Newton反復」欄で指定します (既定は最大 50 回・tol \( 10^{-6} \))。
次を解いて要素状態を更新します:
\[ \delta u = K_{\text{eff}}^{-1} \cdot r \]
骨組の非線形時刻歴では、反復が上限に達しても全体釣合いが収束しなかったステップは確定せず、 時刻ステップ開始時の状態へ復元して解析を停止します。試行応答が有限値でも続行しません。 材料履歴・部材荷重・内部変形・部材応答を復元し、失敗時刻以後の履歴や完了結果は返しません。 応答または釣合い残差が非有限値となった場合も同じ扱いです。 エラーに示された時刻・ステップ・理由を確認し、時間刻み dt、減衰、復元力特性などの条件を見直して再実行してください。 時間刻みの自動細分は行いません。
質点系(串団子)非線形時刻歴の未収束時の扱いは別です。
実装参照:sepika_solver::dynamic::timehistory::nonlinear_time_history_analysis(crates/sepika-solver/src/dynamic/timehistory/nonlinear.rs)が算定します。
コンクリート履歴は動的解析で原点指向型に切替え、制振要素へ set_time_step(dt) を設定します。
位相差入力(ねじれ加振)にも対応します。
非線形時刻歴の幾何剛性は考慮しません。
入力方向と位相差入力
X・Y に加え、同一波形を両方向へ同時入力する X+Y を選べます。 X+Y は同一波形をそのまま両方向へ入れる簡易仕様で、位相差や方向別の波形指定には対応しません。
位相差入力では、位相遅れ時間 \( t = (L \cdot \sin\theta)/V_s \) を求め、位相遅れ方向の並進波を基準波としてねじれ地動加速度を生成します。 \( L \) は矩形基礎長さ [m]、\( V_s \) はせん断波速度 [m/s]、\( \theta \) は入射角 [°] です(既定は \( L = 20 \)、\( V_s = 200 \)、\( \theta = 30 \))。
Y を位相遅れ方向に選ぶ場合は Y 方向の加速度が必要です。Y 方向の加速度がない入力は理由を表示して解析を開始できません。
長期荷重の初期化
RC耐震壁の初期せん断耐力は、開始入力の静的一次参照で正負別に確定し、時刻歴中固定します。公称強度を用い、波形ピークや瞬間応答から選びません。参照応答は時刻歴の初期変位・応力・履歴へ移さず、後述の長期載荷と区別します。限定域外や未解決の対象壁がある場合は非線形時刻歴を開始できません。
時刻歴の開始前に、長期系荷重ケース(固定・積載等、LoadCaseKind::is_long_term)の外力を
節点荷重・部材荷重の全量を1回の静的 Newton 求解で載荷し、その変位・応力・材料履歴を時刻歴の初期条件とするオプションです(既定で有効)。
軸力に依存する部材耐力(柱の曲げ降伏 \( M_y \)・せん断降伏 \( Q_y \) の軸力項、ファイバー断面の
N–M 相関)を、長期軸力を含んだ状態で評価するために用います。
長期荷重ベクトル \( f_0 \) は時刻歴を通じて一定の外力として毎ステップ加算し、動的な初期変位・
初期速度(波形読込フォームで指定する initial_disp/initial_vel)は「長期解からの増分」として
扱います。したがって、記録される変位・部材内力は長期変位・長期応力を含む全量です。長期系荷重
ケースがないモデルでは何も行いません。このオプションは非線形時刻歴のみに適用され、線形時刻歴
(線形時刻歴(Newmark-β))には適用されません(地震動による応答成分のみを扱います)。
OFF にすると長期系荷重は時刻歴中に一切載荷されず、重力を無視した応答になります。
長期荷重の初期載荷が収束しない場合
長期系荷重は荷重係数 1.0 の固定外力として1回の静的 Newton 求解で釣り合わせ、成功した場合だけ状態を確定します。収束失敗・要素更新失敗時は全要素を載荷前の状態へ復元し、理由付きで解析全体を停止します。分割載荷・刻み半減による再試行や、長期荷重を除いた解析への切替えは行いません。地震動応答の起点となる長期状態が定まらないためです。
このエラーが出た場合は、次を確認してください。
- 長期系荷重ケースの荷重値・載荷先(固定・積載等)
- 支点・拘束の設定(剛床・剛リンク・MPC・支点ばね)。剛性がゼロになる自由度がないか
- 弾性の長期静解析(許容応力度計算の長期)は通るのにこの載荷で落ちる場合、非線形要素の接線剛性(材料の履歴則・ファイバー断面の設定)を疑う
実装参照:利用者向けの既定は sepika_job::settings::AnalysisSettings::th_apply_long_term(crates/sepika-job/src/settings.rs、既定 true)が持ち、ソルバの NonlinearThCfg::apply_long_term(crates/sepika-solver/src/dynamic/timehistory/nonlinear.rs)へ渡されます。静的載荷は同ファイルの apply_long_term_static が行います。
質点系(串団子)非線形時刻歴
質点系(串団子)モデルの非線形時刻歴を解きます。 モデルの組み立て(2 次元/3 次元、線形の層剛性、非線形骨格)は 質点系解析 です。 2 次元の非線形時刻歴は、プッシュオーバー Q–δ を等包絡面積則でトリリニアに縮約し、せん断型串団子で Newmark 平均加速度と Newton を用い、三重対角 Thomas 法で解きます(質点系縮約の標準的な実務手法)。 3 次元では各階 \( (U_x, U_y, \theta_z) \) の密な接線剛性を Newton で解きます。ねじりばねは線形です。 層間・層せん断・塑性率は X・Y・45°・水平合成の 4 欄です(定義は 質点系解析)。 減衰・サンプル波の dt/継続/周期/振幅は立体時刻歴とは独立です(既定は 質点系解析)。
算定式
復元力は最大点指向型(Clough 系)トリリニアとし、等包絡面積則で次を解いて折点を決定します:
\[ A_{\text{tri}}(\delta_2) = A_{\text{actual}} \]
骨格の元になる層 Q–δ 曲線は、プッシュオーバーの性能曲線から抽出します。長期荷重のみを 初期載荷した状態(水平力ゼロ。プッシュオーバー解析の 長期載荷フェーズ)の (δ, Q) を曲線の原点として各点から差し引きます。長期荷重による層の 残留水平変形(非対称な荷重配置で生じ得る)を、水平力に対する復元力特性から切り離すためです。
減衰は初期剛性比例 \( a_1 = 2h/\omega_1 \) とします。ω1 は下記「固有値解析」の 1 次モードを 用い、固有値分解が失敗した場合(質量 0 以下の層がある等)のみ、逆反復法による概算へ フォールバックします。
各時刻ステップの Newton 反復は最大 30 回とし、収束を \( \|r\| < 10^{-6} \cdot r_{\text{ref}} \) で判定します (基準ノルム \( r_{\text{ref}} \) の取り方は 非線形時刻歴(Newmark-β + Newton-Raphson) と同じです)。反復が上限内に収束しなかった ステップはその時点の試行状態で確定して解析を続行し、結果画面に非収束ステップ数を 警告表示します。この場合の応答値は残差の収束を確認できていない参考値のため、 時間刻み dt を小さくするなどの見直しを検討してください。
実装参照:sepika_solver::dynamic::lumped_mass(crates/sepika-solver/src/dynamic/lumped_mass/)が算定します。
固有値解析
串団子モデル(各層の質量・初期剛性 K1)から、せん断型の一般化固有値問題 \( K x = \omega^2 M x \) を解きます(M は対角、K はせん断型三重対角)。M が対角である ことを利用して標準固有値問題 \( A = M^{-1/2} K M^{-1/2} \) に帰着し、対称行列の固有値 分解(faer の直接解法)で解きます。
- モード数は質点系パネルのモード数設定(既定 3。立体固有値のモード数とは独立。画面上の上限は 30)を用い、 2 次元は層数、3 次元は 3×層数を超える場合はそこまで切り詰めます。
- 2 次元のモード形状は各層の相対変位(下層→上層)で、最上階の値を 1.0 に正規化します。 3 次元は各階 \( (U_x, U_y, \theta_z) \) を頂部水平変位のノルムで正規化します。 立体モデルの固有値解析結果(M 正規化・別の自由度空間)とは正規化基準が異なるため、モード 形状の値どうしは比較せず、周期のみを比較してください。 刺激係数と有効質量は算定しません。
- 3 次元非線形の並進初期剛性は増分骨格の K1 です。静解析の層 Q/δ とは別に、復元力と同じ骨格から組みます。
- 層に質量が 0 以下のものがある場合は算定できません(実体のない極端な高周波モードが 紛れ込むため)。3 次元では回転慣性 \( J \le 0 \) の階も算定できません。
層応答の集計(層せん断力・層せん断力係数・階加速度・階速度・階変位)
線形時刻歴・非線形時刻歴のいずれの経路でも、応答の詳細記録として各時刻の層応答を階(model.stories、下層→上層)ごとに集計します。
層せん断力(慣性力ベース)
節点慣性力ベクトル \( f_{\text{abs}} = M \cdot \ddot{u} + \ddot{x}_g \cdot M \cdot r \) (\( \ddot{u} \) は相対加速度ベクトル、\( \ddot{x}_g \) は地動加速度、\( M \cdot \ddot{u} \) は疎行列ベクトル積)の当該方向の並進自由度成分のみを、当該層以上に属する節点について 集計し、符号を反転した値です。
\[ Q_i = -\sum_{j \geq i} \sum_{\text{dof} \in \text{階} j \text{ の並進自由度}} f_{\text{abs, dof}} \]
一貫質量行列では \( M \) が並進・回転自由度間の連成項を持ちますが、これは疎行列ベクトル積 \( M \cdot \ddot{u} \) の並進成分の中に既に正しく反映されているため、回転自由度そのものを 集計へ含める必要はありません(回転自由度の加速度に地動加速度 \( \ddot{x}_g \) を直接 加算することもしません)。どの階にも属さない節点(基礎レベルの自由節点等)の並進自由度は、 Z 座標が最も近い階(階の代表 Z=所属節点の平均 Z)に計上します。最下層の \( Q_1 \) は 全並進自由度の慣性力の総和(ベースシア)に一致します。
層せん断力係数
全時刻を通じた層せん断力の絶対値最大値を、当該層以上の地震用重量の総和で除した値です。
\[ C_i = \dfrac{\max_t |Q_i(t)|}{\sum_{j \geq i} W_j} \]
\( W_j \) は階 \( j \) の地震用重量(地震力と同じ Story::seismic_weight)です。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( Q_i \) | i 層の層せん断力(慣性力ベース) | N |
| \( C_i \) | i 層の層せん断力係数(最大層せん断力/i 層以上の地震用重量) | - |
| \( W_j \) | j 層の地震用重量 | N |
| \( \bar{a}_i \) | i 階の質量加重平均した絶対加速度 | mm/s² |
| \( m_{\text{dof}} \) | 自由度の質量 | t |
階絶対加速度・階速度・階変位
階に属する節点の質量加重平均です(質量が全節点ゼロの階は単純平均)。加速度は絶対加速度(相対加速度+地動加速度)、速度・変位は相対値です。
\[ \bar{a}_i = \dfrac{\sum_{\text{dof} \in \text{階} i} m_{\text{dof}} \left( \ddot{u}_{\text{dof}} + \ddot{x}_g \right)}{\sum_{\text{dof} \in \text{階} i} m_{\text{dof}}} \]
層応答の最大値
層せん断力・階絶対加速度・階速度・階変位のいずれも、全時刻を通じた絶対値最大値 (詳細記録のフレーム間引き(record_every)に関わらず全ステップで求めた値)を別途保持します。
代表応答記録
UI 描画用の代表応答(1 節点変位等)の記録方向は、入力加速度の絶対値和が大きい方向を自動選択します(Y 方向入力があり、その絶対値和が X を上回る場合のみ Y)。記録節点は最上部の当該方向自由度を持つ節点です。
実装参照:sepika_solver::dynamic::timehistory(crates/sepika-solver/src/dynamic/timehistory/recording.rs)が算定します。X・Y 方向の両方を常に記録し、加振されていない方向の連成応答(ねじれ・偏心による応答等)も含みます。
鋼板耐震壁の既知制限の注意
非線形時刻歴応答解析では、解析へ組み込まれる鋼板耐震壁がある場合、開始時に対象の枚数・要素 ID・生成元の壁版 ID をまとめて 1 回表示し、解析を継続します。同期実行とバックグラウンド実行で通知内容は共通です。時刻ステップごとには繰り返さず、新しい起動では再通知します。準備計算の注意と計算エラーも保持します。
現行のせん断耐力は鋼板のせん断降伏 \( Q_y=t,l_w F/\sqrt{3} \) によるもので、せん断座屈を考慮しません。幅厚比が大きく補剛のない鋼板では、耐力を過大評価し得ます。通知は座屈耐力や断面検定の合格を保証せず、未確認の幅厚比の数値しきい値は用いません。計算モデルと適用上の制限は壁エレメントモデルを参照してください。
線形時刻歴、鋼板耐震壁がないモデル、RC 壁・SRC 内蔵鋼板、壁エレメントにならない壁版には、この非線形耐力モデルの注意を表示しません。
実装参照:sepika_app::app::actions::time_history(crates/sepika-app/src/app/actions/time_history.rs)が開始時に通知し、sepika_job::notices::steel_seismic_wall_notice(crates/sepika-job/src/notices.rs)が対象と文言を生成します。
詳細記録のフレーム間引き(record_every)
線形時刻歴・非線形時刻歴いずれの経路でも、全節点変位・部材内力・層応答の時系列(層応答の集計(層せん断力・層せん断力係数・階加速度・階速度・階変位))は、
解析の全ステップのうち一定間隔 record_every ステップごとに間引いて保持します
(初期点と最終確定点は間引きに関わらず必ず含めます)。地震波は数千〜数万ステップに及ぶため、
時系列の全量をそのまま保持するとメモリ・保存容量を圧迫することへの対処です。
record_every を指定しない場合は、記録フレーム数がおおむね 1000 になるよう次式で自動決定します(\( T=N-1 \) は全積分区間数)。間引かない場合のフレーム数は初期点込みの T+1 です。
\[ \text{record_every} = \max\left(1, \left\lfloor T / 1000 \right\rfloor\right) \]
たとえば T=5、record_every=3 では確定ステップ 0, 3, 5 を残します。
間引きの対象は時系列本体(各フレームの全節点変位・部材内力・層応答)のみです。 全ステップを通じた最大応答(節点変位の最大値、部材内力の包絡値、層せん断力係数 Ci、 層せん断力・階絶対加速度・階速度・階変位の絶対値最大)は間引かず、全ステップを走査して 求めます。
フレームごとの部材内力(時系列本体)は、各部材の評価断面のうち両端 2 点(材端、 最小ξ・最大ξ)のみを保持し、メモリを削減します(3D アニメーション・履歴表示は端部値の みを用いるため)。中間の評価断面(危険断面)を含む全断面の情報は、間引かない包絡値 (部材内力の最大値)側にのみ保持されます。
解析タブ「時刻歴応答」の「記録間引き」欄で record_every を指定できます
(線形 Newmark-β・非線形のいずれの経路でも共通)。0 を指定すると上式による
自動決定になります。
実装参照:sepika_solver::dynamic::timehistory::recording::auto_record_every(crates/sepika-solver/src/dynamic/timehistory/recording.rs)が自動決定を、
呼び出し側(GUI・非線形の NonlinearThCfg::record_every)が record_every を
明示指定できます。
解析の中断と再開
GUI・MCP には、解析の途中状態をファイルへ保存して再開する操作はありません。 プロジェクトの保存結果の扱いは 保存結果の計算契約と再実行 を参照してください。
内部の線形時刻歴計算では、確定状態を渡して残りの区間を計算できます。 この計算では、ステップ s は時刻 sdt の既確定状態を表します。 変位・速度・相対加速度をそのまま引き継ぎ、初期加速度の再求解や同一区間の再積分は行いません。 全積分区間数を T とすると、0≤s≤T の残りは T−s 区間で、s=T なら更新しません。s>T は拒否します。
再開時の詳細記録は開始点 s を残し、その後は絶対ステップ番号による間引き格子と末端 T を残します。 s を基準に格子を作り直しません。T=5、record_every=3、s=2 なら 2, 3, 5 が記録され、連続実行の記録にない開始点 2 が加わります。
実装参照:sepika_solver::dynamic::timehistory::linear_time_history_from_state(crates/sepika-solver/src/dynamic/timehistory/linear.rs)が確定状態からの線形時刻歴計算を担います。
増分解析(プッシュオーバー解析)
保有水平耐力を求めるため、漸増静的(プッシュオーバー)解析を行います。画面上の表記は「増分解析」です。 外力分布は Ai 分布(荷重)とし、荷重制御から変位制御へと段階的に制御を切替えます。
終了目標
変位増分をどこまで押し込むかは、次の 2 つの終了目標で指定します。それぞれ独立に有効・無効を切替えられ、有効な目標のいずれかに最初に達した時点で解析を打ち切ります。
| 目標 | 内容 | 既定 |
|---|---|---|
| 目標層間変形角 | 全層の最大層間変形角(\( \max_i |\delta_i| / h_i \)、\( h_i \) は階高=階標高の隣接差分)が指定値(1/n)に達したら終了 | 有効(1/150) |
| 目標変位 | 頂部(最上階の代表節点)の加力方向変位が指定値 [mm] に達したら終了 | 無効 |
両方を無効にした場合は荷重制御(λ=1、設計地震力レベル)までで終了します。 変位制御フェーズの押込み上限は、目標変位はその値を、目標層間変形角は「全層が一様に目標角へ達した場合の頂部変位」=目標角 × Σ階高を用います(最大層間変形角は平均層間変形角=頂部変位/Σ階高 以上であるため、上限到達までに必ず判定が成立します)。
終了目標の判定は、水平力を載荷するフェーズ(荷重制御・変位制御)すべてで行います。 あるフェーズで目標に達した場合、以降のフェーズへは移行しません。 長期荷重の初期載荷(λ=0)は水平力に対する応答ではないため、判定の対象外です。
増分の刻み(均等変位刻み制御)
段階制御では、性能曲線の点間隔(頂部変位軸)が全域で概ね均等になるよう増分を刻みます。 目標刻みを du =(押込み上限)/(ステップ数設定)とし、次の規則で増分を決めます。
- 荷重制御: λ 増分を「頂部変位が du 進む見込みの量」に適応させます。増分は直近の確定ステップ間の荷重−変位勾配(初回は初期接線剛性による弾性勾配)から求めます。剛性が変化しない弾性域は粗い λ 刻みで足り、降伏が進み勾配が増すほど刻みは自動的に細かくなります。
- 変位制御: 同じ du を頂部変位の押込み刻みに用います。
弾性勾配を推定できない場合は、荷重制御を等分割 λ 刻み(1/ステップ数)、変位制御を 10 分割とする固定刻みで解析します。 増分方式「荷重増分のみ」は常に等分割の λ 刻みです。
算定式
外力は標準地震荷重生成の節点荷重を自由度へ載荷します(地上部 Ai 分布と地下部の標準式。載荷先は地震力の「Pi の載荷先」に同じ)とし、周期は略算式によります(\( C_0 = 0.2 \), \( Z = 1.0 \), 第2種地盤):
この増分載荷経路の Z・地盤種別・C0 は上記の固定値で、画面の地域・地盤設定を伝達しません。対象建物への適用はこの制限を確認してください。地下の直上せん断力加算、指定 Ci の副剛床の別荷重、入力診断は標準地震荷重入口と共通です。PH 指定震度は未検証として拒否します。
\[ T = h(0.02 + 0.01\alpha) \]
Newton 反復は次とし(幾何剛性オプション use_kg、1 ステップあたり最大 50 回)、収束を \( \|r\| < 10^{-6} \cdot \max(\|f_{\text{ext}}\|, 1) \) で判定します:
\[ K_t \cdot \delta u = f_{\text{ext}} - f_{\text{int}} \]
解析経過の最大ベースシアは次とします:
\[ V_{base,max} = \text{性能曲線上の最大ベースシア} \]
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( \lambda \) | 荷重係数(設計地震力レベルで 1) | - |
| \( \boldsymbol{q} \) | Ai 分布の荷重パターン | N |
| \( K_t \) | 接線剛性行列 | N/mm |
| \( \boldsymbol{f}_{\text{ext}},\ \boldsymbol{f}_{\text{int}} \) | 外力・要素内力ベクトル | N |
| \( \delta u \) | 変位増分ベクトル | mm |
| \( T \) | 一次固有周期(略算) | s |
| \( h \) | 建物高さ | m |
| \( \alpha \) | 鉄骨造部分の高さ比 | - |
| \( V_{base,max} \) | 解析経過の最大ベースシア | N |
| \( Q_u \) | 保有耐力比較用の採用点における層耐力 | N |
| \( Q_{un} \) | 必要保有水平耐力 | N |
| \( D_s \) | 構造特性係数 | - |
| \( F_{es} \) | 形状係数 | - |
| \( Q_{ud} \) | 地震時の設計用層せん断力 | N |
| \( C_0 \) | 標準せん断力係数 | - |
接線剛性が特異・非正定値になったときの扱い
弾塑性の接線剛性 \( K_t \) は、降伏の進行(崩壊機構の形成・耐力劣化)によって正定値性を失うことがあります。増分解析はこれを増分が大きすぎるときの非収束と同じ扱いとし、水平力の荷重制御・変位制御では次の順で対処します。長期荷重の初期載荷は再試行せず、失敗理由を表示して解析を停止します。
- 確定済みの状態から増分を半減して解き直す(最大 5 回。確定 λ・確定頂部変位を基点とした増分のみを縮めるため、単調載荷が保たれます)。
- それでも進めない場合はそのフェーズを打ち切り、次のフェーズ(荷重制御 → 変位制御)へ引き継ぐ。極限点近傍は変位制御の方が安定に追えるためです。
- 1 ステップも確定できなかった場合のみ、原因を切り分けたメッセージでエラー停止する(性能曲線が空の結果を「解析できた」として返すと、保有水平耐力を 0 と誤認させるためです)。
終了理由の記録
解析がどのように終了したか(終了目標へ到達/荷重係数上限まで載荷/押込みスケジュール完了/非収束による打ち切り)を結果へ記録します。現在の解析では、接線剛性の求解失敗で増分半減を尽くした場合も、非収束による打ち切りとして記録します。目標へ到達しないまま非収束・数値的な特異性などで打ち切られた場合、性能曲線は途中で途切れており \( V_{base,max} \)(性能曲線上の最大ベースシア)はその時点までの最大値です。結果画面はこの場合に警告を表示します(過小評価の可能性があるため、増分ステップ数の増加やモデルの見直しを検討してください)。
接線剛性の数値的な特異性・精度限界は、有限精度で信頼できる求解を確認できない状態を表し、物理的には安定した架構でも極端な剛性比などで生じ得ます。この終了理由だけで物理的な機構形成・耐力喪失を断定せず、降伏ヒンジの分布に基づく崩壊機構の分類とは区別します。途中打ち切りの場合は、解析通知にも終了理由と最大ベースシアがその時点までの最大値であることを表示します。
解析開始前の初期接線剛性チェック:初期(未変形・未降伏)の接線剛性を一度分解し、失敗した場合は増分を刻む前にエラー停止します。初めから特異なモデルは増分をいくら刻んでも解けないため、剛性がゼロの自由度を節点 ID と自由度成分で名指しして停止します(例: 梁だけが一直線に並ぶ節点のねじれ回転)。分解できるが対角が負の自由度がある場合は耐力劣化・機構形成として、いずれも該当しない場合は拘束不足・機構の可能性として案内します。
自由度を名指しする診断は、拘束(剛床・剛リンク・MPC)を縮約した後の接線剛性 \( K_r = T^\top K T \)(=実際に分解する行列)の対角で判定します。名指しの対象は縮約後に独立自由度として残るものだけなので、剛床・剛リンク・MPC のスレーブ自由度は挙がりません。
長期荷重の初期載荷
水平力の増分に先立ち、保存した架構用長期組合せの terms・係数による外力を載荷し、その応力状態(柱軸力・梁端モーメント)を初期条件とします。標準は固定荷重と架構用積載の係数 1 の組合せであり、地震重量用積載や全ての長期系ケースの総和ではありません。組合せの明示選択と完全性の条件は終局検定の重力参照と共有します。 長期荷重の初期載荷は既定で有効です。節点荷重・部材荷重の全量を、荷重係数 1.0 の固定外力に対する1回の静的 Newton 求解で釣り合わせます。収束した場合だけ変位・応力・材料履歴を確定します。収束しない場合は載荷前の状態へ復元して理由付きで停止し、分割載荷や長期荷重なしの解析へ切り替えません。 この設定を無効にした結果は、一般建物の終局合否には使用できません。 長期応力を初期状態とすることで、軸力に依存する部材耐力(柱の曲げ降伏 \( M_y \)・せん断降伏 \( Q_y \) の軸力項、ファイバー断面の N–M 相関)が長期軸力を含んだ状態で評価されます。 長期荷重は全フェーズを通じて外力 \( f_0 + \lambda \boldsymbol{q} \) の \( f_0 \) として保持され、載荷完了状態は荷重係数 λ=0 の 1 ステップとして記録されます(ヒンジ詳細図の N-M 応答経路の始点)。 初期載荷は右パネル「増分解析」で無効化できます。明示的に重力を載荷しない解析は参考の水平載荷実験として扱い、一般建物の終局合否には自動採用しません。初期重力を載荷する場合は、組合せの未指定や必要ケースの不足を重力なしへ読み替えません。
解析には初期重力の terms・係数・入力識別・載荷有無を記録します。確定内力は初期重力を含む総応答です。増分・確定総応答による終局検定では、同じ解析の重力条件と確定評価ステップを採用し、QL を再加算しません。表示ステップの切替だけでは需要採用ステップを変更しません。
材端軸力の符号
ヒンジ詳細図(ヒンジ図の表示)へ記録する材端軸力は、圧縮正・引張負の符号付きで保持します。材端集中ばねの N–M 相関(非線形梁要素のモデル化)は \( |N| \) を、せん断降伏耐力 \( Q_y \) の軸力項は圧縮側の大きさ(引張は 0)を用いるため、解析の挙動はこの符号に依存しません。
部材応答履歴を記録できない場合
ヒンジ詳細図に用いる部材応答履歴は単精度浮動小数点で保持します。軸力 [N]、両端の局所曲げモーメント [N·mm]、弦からの材端回転と材端集中ばねの回転 [rad] のいずれかが非有限値、または記録時の単精度への変換で非有限値になる場合、部材・ステップ・成分・理由を示して解析をエラーで停止します。その実行の途中までの応答を正常な解析結果として返しません。記録不能な値をゼロや最大値へ置き換えたり、記録できない履歴を除いて正常終了したりする扱いは行いません。
有限値として記録できる応答には通常の単精度丸めを適用し、単位・符号は保持します。極小値が丸めによってゼロとなる場合もあります。この数値記録の検査は、解析モデルや荷重の構造上の妥当性を保証するものではありません。
実装参照:sepika_solver::nonlinear::pushover::member_response::record_member_step(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/member_response.rs)と step_record::StepRecorder::record(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/step_record.rs)が実装します。
制御方式の切替(荷重制御 → 変位制御)
2 つの制御方式には、それぞれ釣合い経路を安定して辿れる領域があります。 増分解析は、経路の進行に合わせて有効な方式へ乗り換えることで、崩壊機構の形成域まで解析を進めます。
- 荷重制御(λ を 0 → 1 へ増分): 構造が十分に硬い序盤。λ=1 は \( C_0 = 0.2 \) の設計地震力レベル
- 変位制御(頂部変位を増分し λ を解く): 耐力の頭打ち・低下の前後
荷重制御は、荷重を入力とするため耐力のピーク(極限点)を越えられません。 ピークを越えた大きさの荷重には、釣合う解がそもそも存在しないためです。
保有耐力比較では、明示採用した確定点の層力を必要保有水平耐力と比較します。 必要保有水平耐力 \( Q_{un} = D_s \cdot F_{es} \cdot Q_{ud} \) の \( Q_{ud} \) は標準せん断力係数 \( C_0 = 1.0 \)(大地震レベル)で算定するため、同じ Z・地盤・略算周期で地下や指定 Ci の副剛床を含まない場合、増分解析の λ に換算すると \( 5 D_s F_{es} \)、\( D_s \) が下限の 0.25 でも λ≒1.25 に相当します。 そのため、λ=1 で終わる荷重制御だけでは判定に必要な耐力域へ届きません。
また、建物が保持できない大きさの荷重を与えても、釣合い解が存在せず反復が収束しないだけで、耐力の頭打ちや低下に至る釣合い経路の情報は得られません。 一方、頂部変位は崩壊機構形成の前後を通じて単調に増え続けます。 そのため、変位をパラメータに取る変位制御へ切替えることで、耐力の頭打ちと低下を釣合い経路上の応答として観測できます。解析経過のピークと、目的別に明示採用する Qu・Ds の評価点は区別します。 健全な建物であれば、変位制御の区間でも λ は単調に増加し、荷重の低下はヒンジ形成による剛性低下が生じてはじめて現れます。
なお、頂部変位そのものが経路上で一時的に戻るスナップバックだけは、変位制御でも追えません。 段階制御は、荷重制御と変位制御の 2 段で構成されます。
増分方式の選択(比較検証用)
増分方式は、既定の段階制御のほかに「荷重増分のみ」を選択できます(右パネル「増分解析」)。 荷重増分のみでは変位制御へ移行せず、終了目標が有効な場合は λ=1 を超えて同じ刻み dλ のまま荷重増分を継続します。 増分を半減しても収束しなくなった時点で解析を打ち切ります。 これ以上の荷重に釣合う解がない、すなわち耐力ピーク近傍に達したことを意味するためです。
荷重を入力とするため、この方式では耐力の頭打ち・低下域は追跡できません。 段階制御との結果の違い(どの λ まで釣合いが取れるか、変位制御が結果に与える影響)を確認する用途を想定しています。 保有水平耐力の判定に用いる結果は、崩壊機構の形成まで追跡できる段階制御(既定)で求めてください。 結果画面と CSV には、どちらの方式で得られた結果かを表示します。
変位制御が仮定するもの・しないもの
変位制御と聞くと、「λ=1 時点の変形形状を拡大していくため、ヒンジ発生による変形形態の変化を表現できないのではないか」という疑問が生じるかもしれません。 ですが、変位制御が拘束するのは頂部(最上階の代表節点)の加力方向変位という 1 自由度だけで、変形の形状は仮定しません。 残りの全自由度は、その時点の接線剛性(ヒンジによる剛性低下を反映した剛性)と外力 λ·q に対する釣合いから解かれます。 そのため、たとえば特定の層の柱にヒンジが入って層崩壊形へ向かう場合、同じ頂部変位の増分でも、その内訳は軟化した層の層間変位へ自動的に集中します。 この変形集中は、結果画面の層別の Q-δ 曲線(層間変位−層せん断力)で確認できます。
一方、固定しているのは外力の分布形状 q(Ai 分布)で、全フェーズを通じて λ でスケールするだけです。 ヒンジ形成により振動特性が変わると実際の地震時の慣性力分布も変わり得ますが、これには追随しません。 これは静的漸増載荷(プッシュオーバー)解析に共通の近似で、告示の保有水平耐力計算も Ai 分布による静的載荷を前提としています。
解析前の入力チェック
増分解析は、部材の終局耐力(曲げ降伏 \( M_y \)、せん断終局 \( Q_{su} \)、耐震壁の \( Q_u \))で応力を頭打ちにすることで崩壊機構を形成します。耐力を算定できない部材は弾性のまま・降伏しないまま扱われ、押し込むほど際限なく応力を負担するため、崩壊機構が形成されず保有水平耐力を過大評価します(危険側)。
そのため、次の入力不足があるモデルは、既定値で補わずに解析をエラーで停止し、該当する部材 ID と是正内容を表示します。
| 対象 | 停止条件 |
|---|---|
| 耐震壁(壁エレメント) | 終局せん断強度 \( Q_u \) を算定できない(下記の一覧) |
| 線材(梁・柱・ファイバー・マルチスプリング) | 断面に材料が割り当てられていない |
| 同上 | 主材料の区分が鉄筋(構造種別の判定。線材の主材料には鋼材かコンクリートを割り当てます) |
| 同上(配筋を持つ断面: RC 矩形・RC 円形) | 主材料の区分が鋼材(鋼材として検定すると耐力を大きく過大評価します) |
| 同上(コンクリート系断面: RC・SRC・CFT) | 主材料にコンクリート強度 \( F_c \) が設定されていない、または \( F_c \le 0 \) |
| 同上(配筋を持つ断面: RC 矩形・RC 円形・SRC 矩形) | 主筋の材料が未割当、またはその材料に正の \( f_y \) がない |
| 同上(鋼材断面形状: 形鋼・鋼管など) | 鋼材の降伏強度 \( f_y \) を解決できない(SRC は内蔵鉄骨の材料、その他は主材料。ファイバー断面は鋼材の降伏進展を追うため必須) |
| 同上(断面形状が未設定) | 主材料に正のコンクリート強度 \( F_c \) も正の降伏強度 \( f_y \) も設定されていない(\( F_c \) があればコンクリート、なければ鋼材のファイバとして組み立てるため、使われる側の強度が必要) |
| 全部材(線材) | 断面の有効せん断断面積 \( A_s \) が 0(せん断有効断面積 As。全解析共通の入力チェック) |
\( F_c \le 0 \)・\( f_y \le 0 \) のような 0 以下の値は、未設定と同じ「耐力を算定できない」入力として扱います。
耐震壁で耐力を算定できないのは次の場合です。材種によらず次を検出します。
- 壁エレメントとして構築できない(4 節点の指定がない、節点座標が退化している)
- 断面が設定されていない、または壁厚が \( \le 0 \)
- 断面に材料が割り当てられていない
RC 壁では、これに加えて次を検出します。
- 材料にコンクリート強度 \( F_c \) が設定されていない、または \( F_c \le 0 \)
- 付帯柱(側柱)があるのに、その断面から主筋量を取得できない(断面形状が RC 矩形でない、主筋の本数・径が 0)
- 付帯柱がなく、かつ明示縦筋比から求める縦筋面積が 0
- 上記のいずれにも該当しないが \( Q_u \) の算定結果が \( \le 0 \) となる(寸法・開口の入力を確認してください)
以下は耐震壁として非線形化するRC壁の必須入力です。スリット等で既存の耐震条件を満たさないRC壁には、既存の線形・極小剛性モデルを明示採用し、必要入力の不足から非線形壁を線形へ切り替える扱いとは区別します。
初期せん断耐力は、同じ解析入力の長期荷重と壁方向の正負Ai荷重による静的一次参照から、解析開始前に確定します。この参照の適用範囲は単独無開口壁と対称同質の既存対応側柱に限られ、材料入力が揃っているだけでは開始可能になりません。全対象壁の正負耐力が未解決なら増分解析を開始せず、採用した耐力は解析中固定します。
RC壁の方向別配筋は小数で指定します。横筋比は実壁厚に対する横筋比、縦筋比は壁板の総縦筋面積を実壁厚と壁長の積で除した値です。直交最小筋比 ps は数量・質量用の既存入力として保持し、方向比の推定には使いません。横筋比を等価壁厚へ換算する係数 t/te は終局せん断式で一度だけ適用します。縦筋の総面積は縦筋比×t×lwで、壁長方向に20等分して配置します。
横筋には断面のせん断補強筋材料、縦筋には断面の主筋材料を割り当てます。両者は独立した鉄筋材料で、対応材種と有限正の明示fyが必要です。材料名だけの強度補完、コンクリートの強度倍率による鉄筋強度の推定は行いません。材料強度基準では、縦筋材料の倍率を縦筋fyへ一度だけ適用します。横筋のfyは主筋の倍率を適用せず使用します(横筋材料の倍率欄もこのせん断式には用いません)。標準配筋の元部位 main・band・stirrup を壁方向へ読み替えません。vertical・horizontal として明示した方向部位は、位置指定付き部位や異なるnative割当を一つの材料へ統合せず、解決不能として扱います。
方向比の未設定は明示0と区別します。0は有限非負の入力として保持します。側柱主筋で引張成分を与えられる横筋式単体は横0でも評価できますが、側柱のない式で縦筋面積0なら適用条件を満たしません。ファイバー断面は明示縦0を鉄筋なしとして生成できます。縦筋比・材料が欠落する場合は軸曲げファイバーを生成できず、非線形解析を開始しません。縦成分だけ不足した側柱付き壁の横筋式単体の評価と、非線形解析の開始可否は別です。
壁版ごとの採用コンクリート強度は展開後も物理壁版に対応します。同断面でも部材指定のFcが異なれば、その壁ごとの材料で評価します。準備計算は不足理由を「非線形解析不可」と表示し、線形解析は独立したモードとして利用できます。必要な成分が不足するRC耐震壁をQu=0や弾性壁柱へ置換して、増分解析・非線形時刻歴を継続しません。入力や材料の編集後は旧成果を再利用せず再計算します。
非線形RC壁の軸・曲げ初期剛性の鉄筋換算にも明示縦筋比を用います。線形モードに残るps換算剛性は別の調査対象であり、方向値不足の妥当性や安全側を保証するものではありません。
縦筋の等価分布と横筋入力は本文に示すモデルを採用します。引用規準原典への適合と現在の履歴則の実験妥当性は未確認です。方向別入力の採用は、終局式の選択、同一評価状態M/Q/N、側柱の役割、参考Qcの接続の妥当性を保証しません。
鋼板耐震壁では、次を検出します。
- 材料に降伏強度 \( F \) が設定されていない、または \( F \le 0 \)
- \( Q_y \) の算定結果が \( \le 0 \) となる(板厚・壁長さの入力を確認してください)
同じチェックは非線形時刻歴応答解析にも適用します(耐力が定まらない部材を弾性のまま解析すると応答を過小評価するためです)。許容応力度計算(線形弾性解析)は部材耐力を用いないため対象外です。
実装参照:sepika_element::factory::{nonlinear_input_issues, ensure_nonlinear_input} が判定し、crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/driver.rs と crates/sepika-solver/src/dynamic/timehistory/nonlinear.rs が解析の冒頭で呼び出します。
材料強度(割増)
保有水平耐力計算の材料強度として、降伏強度に次の割増係数を乗じます (H12 建告第2464号の運用・各認定条件)。
| 用途 | 割増係数 |
|---|---|
鋼材(材料名から鋼材グレードを解決できる材料。SS400・SN490B 等) | 1.1 |
| 鋼材のうち 590N 級(SA440・TMCP440) | 1.05 |
| RC 主筋(RC壁は必須の明示fyを使用) | 1.1 |
| せん断補強筋 | 割増しない |
| 名称から解決できない直接入力材料 | 割増しない(下記の直接入力で指定可) |
- 鋼材の自動判定は標準材料の対応済み名称と共通です。前後空白は除き、大小文字を区別し、未知の接尾辞は認識しません。
- 材料ごとに割増係数を直接入力でき(材料タブの「割増」欄)、入力がある場合は 自動判定より優先してその値を用います。直接入力材料に割増を適用したい場合に指定します。
- 割増はプッシュオーバー解析(部材の集中ばね・ファイバーの組み立て、 曲げヒンジ・せん断降伏の判定閾値)にのみ適用し、許容応力度計算(一次設計)・ 時刻歴応答解析には適用しません。
実装参照:sepika_solver::nonlinear::pushover(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/mod.rs)が算定します。
材料強度の割増は部材組み立て(sepika_element::factory::build_nonlinear_behavior の
StrengthBasis::MaterialStrength)とヒンジ・せん断降伏閾値で適用し、係数は
sepika_core::material_grade::{material_strength_factor_steel, material_strength_factor_rebar}
が算定します。
変位制御は、Ai 分布の比例荷重パターン \( \lambda \boldsymbol{q} \) を保持したまま、荷重係数 \( \lambda \) を「頂部変位 = 目標値」の拘束条件から決定します(Batoz–Dhatt の変位制御法)。各反復で釣合い残差解 \( \delta u_r = K^{-1}(\lambda \boldsymbol{q} - f_{\text{int}}) \) と荷重パターン解 \( \delta u_q = K^{-1} \boldsymbol{q} \) を解き、
\[ \delta\lambda = \frac{u_{\text{target}} - u_{\text{roof}} - \delta u_r[\text{roof}]}{\delta u_q[\text{roof}]}, \qquad \delta u = \delta u_r + \delta\lambda \cdot \delta u_q \]
として頂部変位拘束と力の釣合いを同時に満たす \( \lambda \) を定めます。収束は外力ノルム基準の相対残差(\( 10^{-6} \))と頂部変位の目標一致で判定し、収束しないステップは押込み増分を半減して再試行します。荷重制御から変位制御へ切替わっても載荷パターンは同一の Ai 分布のままであるため、荷重−変位曲線は連続で、ベースシアの低下は部材の剛性低下(ヒンジ形成・崩壊機構)によってのみ生じます。これにより解析は、設計地震力レベル(\( \lambda = 1 \))を超えて崩壊機構形成域まで押し切ることができます。 崩壊機構判定は、静的不静定次数 \( r = 3m - 3n + r_{\text{support}} \)(\( r_{\text{support}} \) は加力方向の平面内拘束自由度数)に対して降伏ヒンジ数 \( \ge r+1 \) をゲートとします。ここで \( m \)・\( n \) は、加力方向の平面骨組に関与する部材とその接続節点の数です。具体的には 2 節点の線材(梁・柱・ブレース)のうち部材軸が加力直交の水平方向へ卓越しない(軸単位ベクトルの直交水平成分の絶対値が 0.707 以下の)ものを \( m \) に数え、それらが接続する節点を \( n \)・\( r_{\text{support}} \) の集計対象とします(3 次元モデルを加力方向の平面骨組へ射影して次数式を適用する扱いで、直交方向の梁や耐震壁は算入しません)。 層崩壊の判定に用いるヒンジの層帰属は、層を上端の階(床)で識別し、ヒンジ位置側と相手端の節点のうち高い側の所属階を採ります。柱脚のヒンジは最下層の柱脚を表すため、高い側(柱頭)により最下層へ帰属します。高い側も基部の階にある部材は基礎梁であり、どの層にも属さないものとして層崩壊の判定から除きます。
耐震壁の軸・曲げ
耐震壁(壁エレメントモデル)の壁柱は、柱と同様に既定でファイバー断面の弾塑性評価とします(コンクリート格子+縦筋の等価分散配置。壁エレメントモデル)。細長壁の曲げ降伏・軸力変動による N–M 相関が増分解析に反映されます。
耐震壁の面内せん断
耐震壁(壁エレメントモデル)は、面内せん断を終局せん断強度 \( Q_u \) で頭打ちとする弾完全塑性として扱う(壁エレメントモデル、耐震壁)ため、壁が伝達する面内水平力は \( Q_u \) を超えません。\( Q_u \) を算定できない壁があるモデルは、上記「解析前の入力チェック」によりエラーで停止します。
側柱(耐震壁の鉛直辺に取り付く柱)は面内曲げ面の端部回転を静的縮約し、面内せん断を負担しません(許容応力度計算と同じ扱い)。壁のせん断断面には側柱断面を算入します。
鋼板耐震壁を含むモデルでは、面内せん断を鋼板のせん断降伏 \( Q_y = t \, l_w F/\sqrt{3} \) で頭打ちとします。せん断座屈を考慮していないため、解析の開始時に対象の枚数・要素 ID・生成元の壁版 ID とあわせて集約した注意事項を 1 回表示します。目標到達前の打切り注意がある場合も鋼板壁の注意は保持します(壁エレメントモデル)。
曲げヒンジ判定(Mc・My・終局)
曲げヒンジの発生レベルを判定します。 RC 曲げひび割れ(\( \kappa = 0.56 \)、技術基準解説書 P.621-623):
\[ M_c = \kappa \cdot \sqrt{F_c} \cdot Z_e \]
RC 曲げ降伏(\( d = \text{有効せい} \)、同 P.623):
\[ M_y = 0.9 \cdot a_t \cdot \sigma_y \cdot d \]
有効せい \( d \) は引張縁から引張筋重心までの距離 \( d_t \) を用いて \( d = D - d_t \) とします。
\( d_t \) はかぶり・せん断補強筋径・主筋径・多段配筋を考慮し、RC 断面検定と同じ
sepika_core::rc_rebar_geom の規約で算定します(曲げばねの降伏モーメントも同一)。
鋼 全塑性:
\[ M_p = Z_p \cdot \sigma_y \]
算定式:\( m_{\max} \ge M_y \) かつ \( \mu \ge {} \)ULTIMATE_DUCTILITY(=4.0) のとき終局、\( M_c \le m_{\max} < M_y \) のときひび割れとします。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( M_c \) | RC 曲げひび割れモーメント | N·mm |
| \( M_y \) | 曲げ降伏モーメント | N·mm |
| \( M_p \) | 鋼の全塑性モーメント | N·mm |
| \( m_{\max} \) | 材端モーメントの最大値(危険断面) | N·mm |
| \( \kappa \) | RC 曲げひび割れの係数(0.56) | - |
| \( F_c \) | コンクリートの設計基準強度 | N/mm² |
| \( Z_e,\ Z_p \) | 弾性断面係数・塑性断面係数 | mm³ |
| \( a_t \) | 引張鉄筋断面積 | mm² |
| \( \sigma_y \) | 鉄筋・鋼材の降伏強度 | N/mm² |
| \( d \) | 断面の有効せい | mm |
| \( \mu \) | 部材塑性率 | - |
| \( Q_y \) | せん断降伏耐力 | N |
| \( A_s \) | せん断有効断面積 | mm² |
| \( f_y \) | 鋼材の降伏強度 | N/mm² |
| \( {}_rQ_{su} \) | SRC の RC 部の終局せん断耐力 | N |
| \( {}_sA_w,\ {}_sF \) | 内蔵鉄骨のせん断有効断面積・基準強度 | mm², N/mm² |
式の選択
配筋を持つ断面(RC 矩形・RC 円形)は、材料の区分に依らず上の RC の式を使います。 鋼の \( M_p = Z_p \sigma_y \) は配筋を無視した素の断面係数を使うため、RC 断面へ当てると \( M_y \) が桁で過大になり、曲げヒンジが検出されなくなるためです。 それ以外の断面は構造種別(構造種別の判定)で分け、 S は鋼の全塑性、複合断面(SRC・CFT)と形状を持たない断面は \( M_y = \sigma_y Z_e \)・\( M_c = \kappa \sqrt{F_c} Z_e \) の簡易値とします。 塑性断面係数 \( Z_p \) はすべての鋼断面形状(H 形・箱形・円形鋼管・組立 H 形・T 形・溝形・リップ溝形・山形・平鋼・中実丸鋼)について算定します(断面諸量)。
判定に用いる材端モーメントの位置
比較する材端モーメント \( m \) は、危険断面=剛域フェイスの値を用います。要素が返す材端力は グローバル系・節点位置のため、(1) 要素局所座標系へ回転し、(2) 剛体アームのモーメント (材端せん断 × アーム長)を差し引いて求めます(剛域)。 節点位置のモーメントは剛体アームぶん大きく、断面耐力 \( M_y \) と直接比較すると、剛域を持つ 部材のヒンジを過早に検出し、崩壊荷重を過小評価します(両端固定柱では \( m_{\text{node}} = Q \cdot L/2 \) となり、判定が剛域長に依存しなくなります)。 局所成分を用いることで、材軸まわりのねじりを曲げと取り違えることもありません。
材端ごとの記録
ヒンジは i 端・j 端それぞれについて判定・記録します。崩壊機構の運動学的ゲート (降伏ヒンジ数 \( \ge r+1 \))は (部材, 材端) の重複を除いて数えるため、1 部材につき モーメント最大側の 1 端しか記録しないと、両端が降伏した柱も 1 個としか数えられず、 機構が成立していても部分崩壊形と判定されます。
判定対象
曲げヒンジ・せん断降伏の判定対象は 2 節点の線材(梁・柱・ブレース)です。 耐震壁(壁エレメントモデル、4 節点)は線材の材軸(i 端 → j 端)が定義できない ため対象外とし、壁の非線形性は壁要素自身の弾塑性 (壁柱ファイバーの軸・曲げと、終局せん断強度 \( Q_u \) による面内せん断の 頭打ち。上記「耐震壁の軸・曲げ」「耐震壁の面内せん断」)で表現します。
実装参照:sepika_solver::nonlinear::pushover::hinge::{member_moment_thresholds, track_hinges}(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/hinge.rs)が算定します。
危険断面への変換は sepika_solver::nonlinear::pushover::geom::member_end_forces_at_face
(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/geom.rs)が
sepika_element::frame::rigid_arm::to_flex_force を用いて行います。
RC 主筋の σy は断面の主筋材料の \( f_y \) から解決します(未割当のモデルは解析前チェックで停止します)。鋼材 σy は断面の主材料の \( f_y \)、ない場合は既定 235 とします。
部材塑性率(ductility)の 3 方式
部材塑性率を 3 方式(基点ひずみ・重み付け平均・初降伏)で算定します。
算定式
方式(1) は基点ひずみによります。RC 引張 0.01、圧縮 0.005、鉄骨 0.01 を超えた曲率を基点とし、次とします:
\[ \mu = \kappa_{\max}/\kappa_{\text{ref}} \]
方式(2) は重み付け平均が次を満たす時点を基点とします:
\[ J_m = \frac{\sum \sigma_y \cdot A \cdot |\varepsilon| \cdot \mu_i}{\sum \sigma_y \cdot A \cdot |\varepsilon|} \ge 1.0 \]
方式(3) は初降伏によります。
実装参照:sepika_solver::nonlinear::pushover::ductility::compute_ductility_refs(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/ductility.rs)が算定します。
せん断降伏判定(Qy)
せん断降伏を判定します。 鋼系は次によります(von Mises):
\[ Q_y = A_s \cdot f_y/\sqrt{3} \]
RC 矩形断面は荒川 mean 式系(rc_qsu_simple、軸力を各ステップで反映)によります。せん断補強筋の \( \sigma_{wy} \) は断面のせん断補強筋材料の \( f_y \) から解決し、未割当の場合のみ SD295 相当(295 N/mm²、材料未割当時の代表値)を用います。対応グレードの材料を割り当てているのに \( f_y \) が未設定(0 以下を含む)の場合は解析前チェックのエラーで停止します。
SRC 矩形断面は、RC 部と内蔵鉄骨の累加式によります(SRC 規準の累加強度の考え方):
\[ Q_y = {}_rQ_{su} + {}_sA_w \cdot {}_sF/\sqrt{3} \]
- \( {}_rQ_{su} \): RC 部の荒川 mean 式系。鉄骨を控除しない全断面 \( b \cdot D \) と配筋で評価し、軸力の各ステップ反映も RC 矩形と同一です。
- \( {}_sA_w \): 内蔵鉄骨のせん断有効断面積。強軸(局所 y)はウェブ内法 \( t_w (H - 2t_f) \)、弱軸(局所 z)は上下フランジ \( 2 B t_f \)(全塑性評価のため応力分布係数による低減は行いません)。
- \( {}_sF \): 内蔵鉄骨の基準強度。鋼種名の前方一致で当該板厚の区分から解決し、解決できない場合は 235 N/mm² とします。材料強度割増(直接入力係数優先、なければ鋼種名から判定: 鋼材 1.1・590N 級 1.05・鋼種名を解決できない場合は割増なし 1.0)を乗じます。
材料に降伏強度 \( f_y \) が設定されていても(主筋 \( \sigma_y \) の解決用など)、断面形状から精算できる RC 矩形・SRC 矩形は常に上記の式で評価します(\( f_y \) による鋼系の式 \( Q_y = A_s f_y/\sqrt{3} \) は、形状から精算できない断面のみに用います)。
SRC 矩形以外のコンクリート系断面(形状情報がない場合等)は \( Q_y = A_s \cdot 0.7\sqrt{F_c} \)(簡易慣用値)へフォールバックします。
材料強度が未入力で \( Q_y \) を算定できない部材、および有効せん断断面積 \( A_s \) が 0 の断面を用いる部材は、解析前チェックにより解析が停止します(上記「解析前の入力チェック」、せん断有効断面積 As)。
実装参照:sepika_solver::nonlinear::pushover::shear_yield::build_dir_threshold(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/shear_yield.rs)が算定します。
RC主筋・せん断補強筋の材種別基準値は「要・原典照合」と明記します。RC壁解析は必須の明示fyを使用し、345・295の欠落補完は行いません。
局所せん断を ey/ez へ射影して方向別に判定します。
確定状態の層力履歴と目的別採用
性能曲線の全支持抵抗と骨組負担せん断力
性能曲線のベースシアは、同じ確定状態で固定支持と地盤支持ばねに伝わる水平反力を合計し、 載荷方向に符号をそろえた全支持抵抗です。固定自由度へ直接作用する節点荷重は、部材に変形を 生じない直接支持作用として控除します。部材端点ちょうどの集中荷重も同じ節点荷重として扱います。 固定した代表節点への既存の剛体接続などによって、変位0へ消去される従属自由度も固定と同じように扱います。 端点から離れた集中荷重と分布荷重は、拘束端へ直接伝わる分も含めて部材荷重として回復します。 例えば長さ3 mの両端固定部材へ水平に2 kN/mを載せた場合、変位は0でも両支持の合計抵抗は6 kNです。
性能曲線の層別値は、上端階に属する節点を上層から累積した範囲で評価します。 その節点群の物理材端力と地盤支持作用に、対象層下端SLより上・最上端SL以下に作用する 部材内部の荷重を加えます。部材端点の集中荷重は節点所属で数え、分布荷重は高さで 切り取った区間を積分します。所属階を持たない節点の荷重や最上端より外の荷重がある場合、 層別値と建物全体のベースシアは一致するとは限りません。
二次設計に採用する骨組負担せん断力は、層内水平切断面を横切る物理部材の力です。 柱のせん断力とブレース軸力の水平成分を含み、切断面上側の地盤支持ばねや固定支持の分担は 上側自由体の外部作用として差し引きます。水平外力16 kNを骨組と支持ばねが8 kNずつ担う場合、 性能曲線の全支持抵抗は16 kN、骨組負担せん断力は8 kNです。
元の節点荷重と部材荷重から上側自由体の外力を求め、同じ確定状態の部材力・支持作用と照合します。 剛床代表節点に作用する荷重も元荷重として含みます。 切断位置ちょうどの部材集中荷重は部材i端側から近づいた断面力の極限に対応させるため、 上下端を反転すると切断位置で選ぶ側は変わります。性能曲線の階帯の境界とは別に扱います。
実装参照:sepika_solver::nonlinear::pushover::physical_response::PhysicalStep(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/physical_response.rs)、capacity_response(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/capacity_response.rs)、story_response(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/story_response.rs)が回復と照合を担います。
収束して確定した各 step について、実要素の線材応答、符号付き層切断面力、参照外力、上側の固定支持・支持ばねの外部作用、実外力累積と釣合い許容差を記録します。壁単体の履歴と同じ run・入力世代・方向・step を使います。性能曲線の最大ベースシアは解析経過の指標であり、二次設計の目的別採用点とは区別します。
Ds 判定と保有耐力比較の点は、保有水平耐力の判定に従って明示します。MCP の増分解析では任意の ds_step/capacity_step(0 始まり)を指定でき、未指定は未判定です。解析条件と目的別識別、集計値又は集計不能理由を出力します。通常の終了目標は解析制御の条件であり、法定の Ds 判定停止点を意味しません。
GUI と CSV は性能曲線全体のピークを「解析経過の最大ベースシア」と表示します。MCP の max_base_shear_kN も同じピーク値(kN)です。保有耐力比較に使う Qu は、明示した capacity_step の capacity_story_evaluation に記録する層切断面力 qu_n(N)から採用します。例えば全体ピーク150 kN、比較点120 kNなら、それぞれ150 kNと120 kNを別の意味で出力します。評価点が未指定のときも解析経過ピークは残りますが、比較用の Qu は確定せず、MCP の目的別集計は null です。
結果画面の「解析経過の層別最大せん断力(各層のピーク)」は、各層の性能曲線全体での絶対せん断力の最大値です。各層のピークは同じ step に生じるとは限らず、この表示を層別の採用 Qu として組み合わせません。設計表の Qu は保有耐力比較用に選定した同一確定点の層切断面力です。
累積損傷度(鉄骨梁端部)
鉄骨梁端部の累積損傷度を、塑性率の時系列に対するレインフロー法(ASTM E1049-85 3 点法)と Miner 則を用いて算定します。最大振幅だけから損傷度を算定する方式は提供しません。
算定式
破断寿命および損傷度を次とします:
\[ N_f = (\mu/C)^{-1/\beta} \]
\[ D = \sum \text{count} \cdot (\mu/C)^{1/\beta} \]
振幅は振れ幅(peak-to-peak)としてカウントされるため、片振幅としての \( \mu \) は振れ幅の 1/2 とします。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( N_f \) | 片振幅 \( \mu \) に対する破断寿命(繰返し回数) | 回 |
| \( D \) | 累積損傷度(Miner 則) | - |
| \( \mu \) | 部材塑性率の片振幅(振れ幅の 1/2) | - |
| \( C \) | 疲労強度係数 | - |
| \( \beta \) | 疲労指数 | - |
| \( \text{count} \) | レインフローで抽出したサイクルの繰返し回数(全サイクル 1.0・半サイクル 0.5) | 回 |
実装参照:sepika_solver::damage::{rainflow_cycles, cumulative_damage_rainflow, FatigueParams}(crates/sepika-solver/src/damage.rs)が算定します。既定は \( C = 20.0, \beta = 0.5 \)(「暫定既定・要原典照合」と明記)。
並列計算
解析の並列度(使用するスレッド数)を設定し、(1) 行列ソルバ内部の並列、(2) 荷重ケース単位の並列、(3) 非線形解析の要素ループ並列の 3 種類で解析を高速化します。既定は自動(使用可能な全コア)で速度を優先します。ですが、単一スレッド(設定値 1)を指定すると、同一入力に対するビット一致の再現性(決定性)を保証します。
並列度の設定
並列度はプロセス全体の設定(sepika_math::parallelism)で、GUI では右パネル「① 準備計算」の「計算条件」で指定します:
| 設定値 | 意味 |
|---|---|
| 0(既定) | 自動。使用可能な全コアを使う |
| 1 | 単一スレッド。同一入力でビット一致の再現性を保証する |
| n(2 以上) | スレッド数を n に固定する |
ソルバ内部並列では浮動小数点加算の順序が変わり得るため(加算の非結合性)、結果は単一スレッド実行とビット単位では一致しません。ただし各荷重ケースの計算はケース間で状態を共有せず独立に行われるため、値としての差は丸め誤差程度であり、工学的判断に影響しません(検証は単一スレッド解との値一致で行います)。ビット一致の再現が必要な場合(V&V・回帰試験・成果の完全再現)は 1 を指定します。なお、後述の要素ループ並列(非線形解析)はこの例外で、並列でも単一スレッド実行とビット単位で完全に一致します。
並列化の 3 種類
- ソルバ内部の並列(inner): 疎 Cholesky / LU の分解・求解(線形代数ソルバ)を複数スレッドで実行することで、解析準備(全体剛性の組立と分解)を高速化します。
- 荷重ケース単位の並列(outer): 固定剛性の採用条件が一致するケースで分解を共有し、複数の荷重ケースを並列に解きます(
Analysis::linear_static_batch)。一貫計算では多数の荷重ケース(長期・地震 X/Y など)を通常・長期の固定剛性を使い分けるため、実務ワークフローでもっとも効果が大きくなります。GUI の「一括解析」は、この経路で全荷重ケースを解いたうえで、荷重組合せをその結果の線形和として組み立てます(荷重組合せの応答)。引張専用反復の有効集合と剛性更新は各ケースに閉じ、順序・並列実行で持ち越しません。荷重組合せ自体は求解を伴わないため、並列化の対象は荷重ケースの数になります。 - 非線形解析の要素ループ並列: 非線形時刻歴応答解析・増分解析(プッシュオーバー)の反復計算で繰り返される要素単位の処理(要素状態の更新、接線剛性の組立、内力の集計)を、要素ごとに並列実行します。各要素の計算は要素間で状態を共有せず独立で、結果の集約は常に要素番号順に行うため、浮動小数点の加算順序が単一スレッド実行と完全に同一になり、結果はビット単位で一致します(ソルバ内部並列と異なり、並列化しても決定性が失われません)。効果は要素数が多いモデルほど大きく、要素数が少ない小規模モデルではスレッド化のオーバーヘッドが計算短縮を上回ることがあります。
固定剛性では自由度規模によらず疎 Cholesky 直接法を用い、採用条件ごとに分解を行い、同じ条件のケースは前進・後退代入と内力復元で解きます。引張専用反復では各ケースの有効集合に応じて再分解します(線形代数ソルバ・線形静解析 参照)。ケースごとの計算は荷重ベクトル組立 → 求解 → 変位展開 → 部材断面力復元の全工程が独立で、結果の格納順は入力順に固定されます。
スレッドの自動配分
ケース並列(outer)とソルバ内部並列(inner)を同時に全開にすると、合計要求スレッド数(outer × inner)がコア数を超えて奪い合いが起き、かえって遅くなります。このためバッチ解析では、総枠(設定スレッド数、自動なら全コア数)を両者へ自動配分します:
\[ \text{outer} = \min(\text{ケース数},\ \text{総枠}), \qquad \text{inner} = \max!\left(1,\ \left\lfloor \text{総枠} / \text{outer} \right\rfloor\right) \]
- ケース数 ≥ コア数: inner = 1(全コアをケース並列に使う)
- ケース数 < コア数: 余りコアをソルバ内部並列へ回す
- 1 ケースのみ: ケース並列なし。設定どおりのソルバ内部並列で解く
バッチ終了後は設定値の並列度へ戻ります。
配分例(8 コアマシン、並列スレッド数 0=自動のとき)
| 状況 | ケース並列 | ソルバ内部並列 | 動き |
|---|---|---|---|
| 荷重ケース 16 件の一括解析 | 8 | 1 | 全コアをケース並列に使う。16 件は 8 スレッドへ順次割り当てられる |
| 荷重ケース 4 件の一括解析 | 4 | 2 | 4 ケースを同時に解き、各ケースの求解に 2 スレッドを使う |
| 荷重ケース 3 件の一括解析 | 3 | 2 | ⌊8/3⌋=2。合計 6 スレッドの要求に留め、コア数の超過(奪い合い)を避ける |
| 1 ケースのみ・単体実行 | – | 8 | ケース並列なし。ソルバ内部並列が全コアを使う |
| 解析準備(剛性組立+分解)・固有値・時刻歴 | – | 8 | 一括解析以外の処理はソルバ内部並列が全コアを使う |
端数が出るケース(例: 3 件)では、切り捨て配分により一部のコアを割り当てませんが、超過配分してスレッドを奪い合うより速くなります(実測は後述のベンチマーク参照)。
速度の目安
同梱のベンチマーク(cargo run -p sepika-solver --example parallel_bench --release)で、実行環境での効果を確認できます。以下は旧実装で記録した参考値(4 コア、約 34,000 自由度・部材 15,480 の立体ラーメン)であり、現在の性能保証や大規模解析の確認済み証拠としては用いません:
| 処理 | 単一スレッド比 |
|---|---|
| 荷重ケース 16 件の一括解析 | 約 3.5〜4 倍 |
| 荷重ケース 2 件の一括解析 | 約 1.8〜1.9 倍 |
| 解析準備(剛性組立+分解) | 約 1.3 倍 |
ケース数がコア数以上のとき並列化効率がもっとも高く、コア数までほぼ線形にスケールします。剛性組立は現状単一スレッドのため、解析準備の向上率は分解の並列化分に留まります。
実装参照:sepika_math::parallelism(並列度設定・線形代数ライブラリへの反映・スレッドプール)、sepika_solver::statics::analysis::Analysis::{linear_static_batch, linear_static_with_combinations}(ケース並列とスレッド配分)、sepika_solver::dynamic::timehistory/sepika_solver::nonlinear::pushover(非線形解析の要素ループ並列)、GUI は解析タブ(sepika_app)が担当します。
質点系解析
本節では、各階を質点に縮約したせん断型・曲げせん断型モデルの固有値と時刻歴を扱います。 立体 FEM の固有値・時刻歴とは独立した解析です。
立体のモードは部材の曲げや局部変形を含むため、質点系の次数と並べて読むことはできません。 周期だけを比較してください。 曲げせん断型は、柱軸伸縮による建物全体の弾性曲げをせん断変形から分離します。弾性曲げ要素と履歴せん断ばねの直列接続を用い、別方式の回転ばね型は提供しません。 曲げせん断型の入力不足、非有限な質量・剛性、時刻歴の未収束は理由付きの計算失敗として通知します。空の応答結果として扱いません。
実行は右バー「質点系」です。 表とグラフは結果タブ「質点系」、球とばねは 3D ビューアの「質点モード」「質点時刻歴」です。
前提
| 設定 | 必要な先行結果 |
|---|---|
| 2 次元・線形 | 加振方向の地震静的(EX または EY) |
| 3 次元・線形 | 地震静的 EX と EY の両方 |
| 2 次元・非線形 | 加振方向の増分解析 |
| 3 次元・非線形 | X・Y 両方の増分解析と、ねじり剛性のための EX・EY |
表の先行結果は、現在のモデル・その先行解析の計算条件と一致する生成入力を持つ必要があります。 結果の欠落、生成入力の記録欠落、入力の不一致は、対象の方向と再解析の案内を表示して質点系解析の開始を拒否します。 せん断型では、未使用方向の結果や、2 次元・非線形の地震静的結果は要求しません。 曲げせん断型は線形・非線形とも対象方向の EX/EY を必要とし、3 次元では両方向を必要とします。 非線形では、それらに加えて対象方向の増分解析も必要です。 表示の切替、質点系固有値のモード数や質点系時刻歴の時間刻みだけの変更では先行再解析は不要です。
3 次元のねじりばね(KR)は、線形・非線形のいずれでも線形ばねです。 非線形の並進だけが増分解析のトリリニアを使い、ねじりは偏心率精算の KR のままにするためです。
実装参照:GUI の先行成果の存在・生成入力一致の検査は App::require_lumped_prerequisites(crates/sepika-app/src/app/actions/lumped_mass.rs)、解析結果の組み立ては sepika_job::compute::compute_lumped_mass(crates/sepika-job/src/compute.rs)が担います。
既定値
| 項目 | 既定 | 範囲 |
|---|---|---|
| モデル | せん断型 | せん断型 / 曲げせん断型 |
| 次元 | 2 次元 | 2 次元 / 3 次元 |
| 非線形 | オフ(線形) | オン / オフ |
| 加振・解析方向 | X | X / Y |
| 層並進剛性の定義 | 層 Q/δ(EX/EY) | 層 Q/δ / 柱 ki。せん断型・線形のときだけ使います |
| 固有値のモード数 | 3(立体固有値のモード数とは独立) | 画面は 1〜30。せん断型は 2 次元で層数、3 次元で 3×層数、曲げせん断型はそれぞれ 2×層数、5×層数までです |
| 第 1 折点の割線剛性比 | 0.75(非線形時。増分解析の層 Q–δ をトリリニア縮約するとき) | 0.3〜0.95 |
| 時刻歴の減衰比 h | 0.02(初期剛性比例。立体時刻歴とは独立) | 0〜0.2 |
| サンプル波の dt | 0.01 s | 0.001〜0.1 s |
| サンプル波の継続時間 | 10 s | 0.1〜60 s |
| サンプル波の周期 | 0.5 s | 0.05〜5 s |
| サンプル波の振幅 | 1000 mm/s² | 1〜20000 mm/s² |
波形はサンプル波か波形ライブラリから選びます。
立体時刻歴にある「波形 CSV を開いて実行」は、質点系パネルにはありません。
プロジェクトファイル(.ovika)には設定・固有値・時刻歴結果を同梱し、波形の実体はライブラリ参照です。
サンプル波は立体時刻歴と同じ式です。
\[ \ddot{x}_g(t) = A \sin(\omega t)\, e^{-0.3 t},\quad \omega = 2\pi / T \]
\( A \) は振幅、\( T \) は周期、\( dt \) は刻みです。
入力 N 点は時刻 0 から (N−1)dt の瞬時値で、積分は N−1 区間です。 平面・空間とも、先頭は積分前の静止初期変位・速度に対応し、相対初期加速度は先頭地動の釣合いから求めます。 サンプル波の点数と丸上げ終時刻、外部入力の下限は 時刻歴の入力時刻と初期状態 と共通です。 初期釣合いと積分で扱う加速度は相対加速度で、並進の絶対加速度は同時刻の地動を加えた値です。
実装参照:既定値は sepika_job::AnalysisSettings(crates/sepika-job/src/settings.rs)が持ちます。
質量
各層の質量は上端階の物理質量相当重量 \( W_{\text{mass}} \) を重力加速度で割った値です(\( m = W_{\text{mass}}/g \))。
W_mass は準備計算の階生成が節点の物理質量相当重量から階ごとに集計した Story::dynamic_mass.mass_equiv_weight_n です。
質量方式(固有値解析の質量モデル)に依らず全量を用います(串団子は部材分布質量を持たないため)。
物理質量相当重量は物理質量(鋼材は物理質量密度 7.85 t/m³)に基づき、設計地震用重量 seismic_weight(鋼材は 78.5 kN/m³)とは一致しません(地震用重量・層データの生成の「動的解析用の質点質量の設定」)。
手入力の地震用重量(weight_override)は設計地震力のみを変え、質点系の質量は変えません。
未算定なら準備計算で階を生成する必要があり、質点系は明示エラーで止まります(設計重量での代用はしません)。
3 次元の回転慣性 \( J \) [t·mm²] は、同じ物理質量分布から質量重心まわりに直接算定した値(Story::dynamic_mass.inertia_t_mm2)です。
質点の平面位置はその質量重心 center_xy_mm です。
従来の剛床マスター RZ 質量の比例換算は使いません。
\[ J = \sum \frac{w_{\text{mass},i}}{g} , \lvert r_i - G \rvert^2 \]
\( r_i \) は節点 \( i \) の平面位置、\( G \) は質量重心です。 2 次元の 3D 表示では、剛床マスター(なければ原点)を代表点にします。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( m \) | 層の質量 | t |
| \( W_{\text{mass}} \) | 上端階の物理質量相当重量 | N |
| \( w_{\text{mass},i} \) | 節点 \( i \) の物理質量相当重量 | N |
| \( g \) | 重力加速度 | mm/s² |
| \( J \) | 3 次元の質量重心まわりの回転慣性 | t·mm² |
| \( r_i \) | 節点 \( i \) の平面位置 | mm |
| \( G \) | 階の質量重心 | mm |
| \( Q \) | 地震静的解析の層せん断力 | N |
| \( \delta \) | 層間変位 | mm |
| \( K_x,\ K_y \) | 層の並進剛性(X・Y 方向) | N/mm |
| \( k_i \) | 柱の剛性(\( Q_i/\delta_i \)) | N/mm |
| \( K_R \) | 層のねじり剛性 | N·mm/rad |
| \( r_x,\ r_y \) | 剛心の重心に対する相対位置 | mm |
| \( \omega \) | 固有円振動数 | rad/s |
| \( T \) | 固有周期 | s |
| \( \mu_X,\ \mu_Y,\ \mu_{45} \) | X・Y・45° の層塑性率 | - |
| \( \delta_{1x},\ \delta_{1y} \) | 各方向骨格の第 1 折点変形 | mm |
実装参照:層の物理質量相当重量・質量重心・回転慣性は sepika_load::story_gen(crates/sepika-load/src/story_gen/generate.rs)が準備計算で sepika_core::model::Story::dynamic_mass に保存し、質点系の層質量への変換は sepika_job::lumped_mass::build_lumped_mass が担います。
層並進剛性
層 Q/δ(既定、線形時)
地震静的 EX の層せん断 \( Q \) と層間変位 \( \delta \) から \( K_x = |Q|/|\delta| \)、EY から同様に \( K_y \) を算定します。 層せん断は当該層の柱せん断の合計です。 柱せん断はすでに当該層より上の水平力を含むので、層間で足し直しません。
2 次元の層間変位は、階の代表節点(剛床マスター、なければ質量最大の節点)の水平変位差です。 3 次元の層間変位は、その層の剛心の平面位置における剛床変位の上下差です。 3×3 の並進ばねは剛心位置のばねなので、\( \delta \) も剛心で取ります。 上下とも同じ平面位置で取るため、セットバックでマスターがずれても層間になります。
剛心座標とねじり剛性 KR [N·mm/rad] は、偏心率の精算と同じ柱剛性 \( k_i = |Q_i|/|\delta_i| \)(雑壁の寄与を含む)から算定します。 柱の変位差が0の場合、又は剛性の商が非有限になる場合は算定できません。正の微小変位を剛性0へ置き換えません。 保存した静的応答から層せん断・柱剛性を求めるときは、使う柱の局所軸が解決できない場合に部材と理由を示して停止します。この集計に使わない梁の参照方向は要求しません。
柱 ki(線形時)
\( K_x \)・\( K_y \)・剛心・KR をすべて柱の \( k_i \) 合計(偏心率精算と同じ)から定めます。
非線形時の並進骨格は、該当方向の増分解析の層 Q–δ を等包絡面積則でトリリニア縮約したものです(第 1 折点の割線比は上表。長期載荷点を原点とする補正は 質点系(串団子)非線形時刻歴 と同じです)。 固有値と減衰に使う初期剛性も、この骨格の K1 です。 線形時の定義(層 Q/δ または柱 ki)は使いません。
実装参照:層剛性の組み立ては sepika_job::lumped_mass::build_lumped_mass が、柱 ki・剛心・ねじり剛性の算定は sepika_design_jp::secondary::{eccentricity_analysis, eccentricity}(crates/sepika-design-jp/src/secondary/)が担います。
2 次元(せん断串)
加振方向 1 本の質点列です。層間ばねはせん断型三重対角です。
算定式
固有値は
\[ K x = \omega^2 M x \]
(M は対角、K は三重対角)を標準固有値問題へ帰着して解きます。 モード形状は最上階を 1.0 に正規化します。 刺激係数と有効質量は算定しません。 立体固有値の参加係数は M 正規化に紐づく量で、質点系は縮約モデルの周期を見る解析だからです。
時刻歴は Newmark 平均加速度と Newton 反復、減衰は初期剛性比例 \( a_1 = 2h/\omega_1 \) です。 詳細は 質点系(串団子)非線形時刻歴 です。
実装参照:固有値は sepika_solver::dynamic::lumped_mass::lumped_mass_eigen が、時刻歴は sepika_solver::dynamic::lumped_mass::lumped_mass_time_history が求解します。
3 次元(Ux, Uy, θz)
各階の自由度は質量重心における並進 2 成分と鉛直軸まわり回転です。 剛心相対位置を \( r_x = X_s - X_g \)、\( r_y = Y_s - Y_g \) として、層の 3×3 剛性は次です。
算定式
\[ K = \begin{bmatrix} K_x & 0 & -K_x r_y \ 0 & K_y & K_y r_x \ -K_x r_y & K_y r_x & K_x r_y^2 + K_y r_x^2 + K_R \end{bmatrix} \]
\( K_x \)・\( K_y \) は線形なら静解析の層剛性、非線形なら増分骨格の初期剛性です。 階間は相対変位で直列につながります。 地動は加振方向(X または Y)の 1 方向です。
たとえば偏心のない 1 層では、並進の固有周期は \( T = 2\pi\sqrt{m/K} \)、ねじりの固有周期は \( T = 2\pi\sqrt{J/K_R} \) となり、上の 3×3 を対角化した結果と一致します。
非線形時、X・Y の並進ばねは各方向のトリリニア(最大点指向型)、ねじりは KR の線形ばねのままです。 3 次元のモード形状は各階 \( (U_x, U_y, \theta_z) \) で、頂部水平変位のノルムで正規化します。 刺激係数と有効質量は 2 次元と同じく算定しません。
実装参照:固有値・時刻歴の求解は 2 次元と同じ sepika_solver::dynamic::lumped_mass::{lumped_mass_eigen, lumped_mass_time_history}(crates/sepika-solver/src/dynamic/lumped_mass/)が担います。
時刻歴の方向別ピーク
時刻歴の層間・層せん断・塑性率は、X・Y・45°・最大の 4 欄で出します。 地動は X か Y の 1 方向でも、ねじりがあれば剛心位置の層間は平面内を動くためです。
層間は剛心位置の並進 \( (\delta_x,\ \delta_y) \) です。 層ばねの変形がここだからです。 層せん断は同じ位置のばね力 \( (Q_x,\ Q_y) \) です。 頂部変位のグラフは質量重心の加振方向成分です。 質点の自由度がそこだからです。
算定式
各時刻の値から、層ごとに時刻歴の最大絶対値を取ります。
| 欄 | 層間・層せん断 |
|---|---|
| X | \( |\delta_x| \)、\( |Q_x| \) |
| Y | \( |\delta_y| \)、\( |Q_y| \) |
| 45° | \( \max(|(\delta_x+\delta_y)/\sqrt{2}|,\ |(\delta_x-\delta_y)/\sqrt{2}|) \)(せん断も同じ) |
| 最大 | \( \sqrt{\delta_x^2+\delta_y^2} \)、\( \sqrt{Q_x^2+Q_y^2} \) |
45° は 45° と 135° の投影の大きい方です。 斜めの応答はどちらの対角にも出るためです。
塑性率は次です。 \( \delta_{1x} \)・\( \delta_{1y} \) は各方向骨格の第 1 折点変形です。
| 欄 | 塑性率 |
|---|---|
| X | \( \mu_X = \delta_X / \delta_{1x} \)(\( \delta_{1x} \le 0 \) は 0) |
| Y | \( \mu_Y = \delta_Y / \delta_{1y} \)(\( \delta_{1y} \le 0 \) は 0) |
| 45° | \( \mu_{45} = \delta_{45} / (\sqrt{2}\,\min(\delta_{1x},\delta_{1y})) \) |
| 最大 | \( \max(\mu_X,\ \mu_Y) \) |
45° の分母は、軸平行の降伏矩形 \( |\delta_x|=\delta_{1x} \)、\( |\delta_y|=\delta_{1y} \) に沿う斜め距離です。 最大の塑性率は並進ばねが経験した値の包絡です。 合成変位を \( \min(\delta_{1x},\delta_{1y}) \) で割ると、ばねが感じていない量になるため使いません。
2 次元では加振方向以外の並進は 0 です。 45° は加振方向成分の \( 1/\sqrt{2} \) になります。
実装参照:方向別ピークは sepika_solver::dynamic::lumped_mass::lumped_mass_time_history(StickDirPeaks)が算定します。
3D 表示
3D ビューアの「質点モード」「質点時刻歴」で、各階の質点を球、階間ばねを線で描きます。 球の半径は質量に応じます。 「骨組を重ねる」をオフにすると、質点の基準位置は鉛直 1 列です。 質点モードでは変形前の串を破線と高い透過で重ねます。 表示倍率は立体の変形図と同じく、ピーク並進がモデル対角長の 10% になる自動倍率に手動係数を掛けます。 詳細は 質点系の 3D 表示 です。
実装参照:モデル生成は sepika_job::lumped_mass、固有値・時刻歴は sepika_solver::dynamic::lumped_mass です。
Newton 反復は最大 30 回、相対許容誤差は \( 10^{-6} \) です。
曲げせん断型
適用範囲と自動算定
右バー「質点系」の「モデル」で「曲げせん断型」を選択します。 基部の並進・曲げ回転は固定とし、変形前形状の一次釣合いを用います。 曲げは層ごとに一定の弾性剛性とし、曲げ塑性・P–Δ効果・基礎のスウェイ/ロッキングは考慮しません。 柱軸伸縮で高さ方向の曲げを代表できる柱・梁・ブレースの骨組が対象です。壁・シェル・節点ばね・免震・制振部材等は、高さや層中央との交差にかかわらず対象外と診断します。 部材に接続する節点と、剛床・剛リンク・多点拘束に参加する節点(部材に直結しない代表節点も含む)の支持ばねのうち固定されていない自由度の非零成分も対象外です。ゼロ成分と固定自由度のばね成分は作用しないため、この制限に含めません。 基部より上の節点が解析対象の水平方向で地盤に固定される場合も対象外です。2 次元では対象方向、3 次元では X/Y 両方向を確認し、2 次元の面外拘束はこの制限に含めません。傾斜柱には鉛直変位差を軸伸縮として用いることができないため、適用外として解析を停止します。
EX・EY の水平力だけによる柱の軸力・鉛直軸変形・平面位置から算定します。 中間節点で分割された柱は上下階間の連なりを一度だけ数えます。 層を切断するすべての柱について上下階を結ぶ非分岐の連なりであることを確認し、途中階を飛ばす柱・下端階に達しない柱・中間分岐を持つ柱は、階と部材を特定して停止します。 仕口パネルの接続節点列は独立した層切断部材として重ねて数えず、その変形は骨組の全層間変位に含めます。 軸力は引張正、全体座標の上向きを正とし、X 方向加力は Y 軸回り、Y 方向加力は X 軸回りの曲げ剛性に対応します。 同一の平面基準点からの座標を使い、上下端で
\[ M_x=\sum_k N_k(y_k-y_0),\qquad M_y=-\sum_k N_k(x_k-x_0) \]
を求めます。上下端平均軸力を用いた軸仕事を \(W_a=\sum_k \bar N_k\Delta u_{z,k}\) とすると、
\[ \bar M_i=(M_{b,i}+M_{t,i})/2,\quad \Delta\theta_i=W_{a,i}/\bar M_i,\quad EI_i=h_i\bar M_i/\Delta\theta_i \]
です。\(h_i\) は上下階の構造基準レベル間の高さ [mm]、軸力は [N]、曲げモーメントは [N·mm]、曲げ剛性は [N·mm²] です。 軸仕事・有効曲げモーメントが不足する層、非有限値や正の曲げ剛性を得られない層は、階と原因を表示して停止します。 柱以外の変形を曲げ剛性に加算せず、算定不能な層を剛とみなしません。
全変位からせん断骨格を得る
層せん断力から頂部をゼロとして下層へ曲げモーメントを復元します。
\[ M_{t,i}=M_{b,i+1},\qquad M_{b,i}=M_{t,i}+Q_i h_i \]
各層のモーメントは線形分布とし、基部回転ゼロから積分します。
\[ \Delta\theta_i=\frac{h_i(M_{b,i}+M_{t,i})}{2EI_i},\qquad \delta_{b,i}=h_i\theta_{b,i}+\frac{h_i^2(2M_{b,i}+M_{t,i})}{6EI_i} \]
上端回転は \(\theta_{t,i}=\theta_{b,i}+\Delta\theta_i\) とし、次層の下端回転へ引き継ぎます。 線形では全層間変位から \(\delta_s=\delta-\delta_b\) を求め、\(K_s=Q/\delta_s\) とします。 非線形では、各確定ステップの層せん断力と全層間変位から水平力ゼロ時点の値を引き、各ステップの層せん断力で曲げ変位を再計算して差し引きます。 3 次元では各確定ステップと水平力ゼロの初期載荷点の水平変位・ねじれ回転を同じ剛心位置へ変換してから差を取り、剛床の代表節点位置に依存しないせん断骨格を求めます。 増分解析の荷重分布を EX/EY と同一とは仮定しません。 得られたせん断骨格を等包絡面積則でトリリニアへ縮約し、最大点指向型履歴を使います。 バイリニアなど同じ力・変位の折点へ縮退する場合も、同じ履歴則で扱います。同一変位の折点の力は相対64ε(εは倍精度の機械精度)以内の一致を要求し、異なる力を持つ同一変位や負勾配・非有限接線を拒否します。折点値の正値補正・移動は行いません。 正のせん断剛性・有効なせん断骨格が得られない場合は、絶対値化や微小正値による補正を行わず停止します。
要素と自由度
各層は Euler–Bernoulli 弾性曲げとせん断ばねの直列要素です。 局所自由度を \([u_b,\theta_b,u_t,\theta_t]\)、\(\phi=12EI/(K_s h^3)\) とすると、線形剛性は
\[ K_e=\frac{EI}{h^3(1+\phi)} \begin{bmatrix} 12&6h&-12&6h\ 6h&(4+\phi)h^2&-6h&(2-\phi)h^2\ -12&-6h&12&-6h\ 6h&(2-\phi)h^2&-6h&(4+\phi)h^2 \end{bmatrix} \]
です。基部固定 1 層に頂部水平力 \(Q\) を与えると、
\[ \delta=Q\left(\frac{1}{K_s}+\frac{h^3}{3EI}\right),\qquad \theta=\frac{Qh^2}{2EI} \]
となり、\(EI\to\infty\) でせん断型へ収束します。 非線形でも内部の直列接続点で同じせん断力を満たすよう釣合いを解き、同じせん断ばね変形に対して内力・接線・履歴を確定します。
2 次元の各階は水平変位と曲げ回転の 2 自由度、3 次元は水平 2 成分・Z 軸ねじれ・X/Y 軸曲げ回転の 5 自由度です。 X 方向の曲げ回転は \(\theta_y\)、Y 方向は \(-\theta_x\) として連続性を満たします。 3 次元の剛心とねじりばねの扱いはせん断型と同じです。
物理質量と結果の読み方
並進質量と同じ階の物理質量分布を用い、重心まわりの慣性を求めます。 壁版の物理質量は実領域を積分し、重心への移送も含めます。
\[ J_x=\sum m(y-y_G)^2,\quad J_y=\sum m(x-x_G)^2,\quad P_{xy}=\sum m(x-x_G)(y-y_G),\quad J_z=J_x+J_y \]
2 次元は \(\operatorname{diag}(m,J_y)\)(X 方向)、\(\operatorname{diag}(m,J_x)\)(Y 方向)です。 3 次元の回転慣性の X/Y 部分は \(\begin{bmatrix}J_x&-P_{xy}\-P_{xy}&J_y\end{bmatrix}\) とし、積慣性も考慮します。 必要な質量・慣性が正でない場合や質量行列が正定値でない場合は、該当階と値を提示して停止します。 固有値解析は追加回転と慣性を含む一般化固有値問題を解きます。 時刻歴は Newmark 平均加速度法と初期剛性比例減衰を用い、地動は並進自由度に作用します。
結果の層間変位は全層間変位、層せん断力はせん断ばね力、塑性率はせん断ばね変形に基づきます。 結果画面にモデル種別と層別曲げ剛性を表示し、算定モデル・曲げ回転・固有値・時刻歴を保存します。 時刻歴のケース識別にはモデル種別も含むため、せん断型と同じ波形を解析しても別の結果として所属します。
実装参照:自動算定は sepika_job::lumped_mass(crates/sepika-job/src/lumped_mass/bending.rs)、要素・固有値・時刻歴は sepika_solver::dynamic::lumped_mass(crates/sepika-solver/src/dynamic/lumped_mass/bending.rs)が実装します。
許容応力度・断面検定(一次設計)
本章でいう「一次設計」は、材料の許容応力度、および RC・S・SRC・CFT 部材の断面検定(曲げ・せん断・軸力・付着・接合部・座屈長さ)をまとめる実務上の章分類です。 法令上の「許容応力度等計算」は建築基準法施行令第82条の6に規定され、同条第1号は第82条各号、第82条の2および第82条の4によることを求めています。 そのため、本章では許容応力度等計算を第82条の6に対応づけつつ、荷重組合せ等の個別の説明では第82条各号等への参照を残します。部材の許容応力度は令第89〜91条・98条に、断面算定は各学会規準(RC規準・鋼構造設計規準)に依拠します。 小梁・床の断面検定は、固定+用途別積載に対する独立した長期略算です。 全体FEMに含めないことは、令第1条第3号・第82条の構造安全対象からの免除を意味しません。
荷重継続時間と検定範囲
保存組合せの係数と荷重ケース種別から長期・短期を判定します。名称は許容値を決めません。 常時G+Pと多雪0.7Sは長期、Sと風・地震の組合せは短期です。 任意係数・Other・地震重量用積載の混用など一意に判定できない条件は理由付き未検定です。 荷重ケース単体は種別により継続時間を表示し、直前の選択状態を引き継ぎません。 単独の雪・風・地震表示では主架構の組合せ検定は未実施です。G+Pを含む保存組合せを選択してください。 小梁・床の表は長期略算として表示し、選択した短期等の検定済みを意味しません。
法令組合せ、部材内力の単位、積載用途別入力、多雪・風の適用条件と未確認原典は荷重組合せを参照してください。
実装参照:sepika_core::load_combo::{combination_design_state, case_design_state}(crates/sepika-core/src/load_combo.rs)、sepika_app::app::App::run_design_check(crates/sepika-app/src/app/actions/design/check.rs)が対象状態を検定へ反映します。
本章の断面検定は sepika_design_jp にあり、材料強度は sepika_design_jp::material_strength(concrete・rebar・steel)が担います。
この章の内容
材料の許容応力度
コンクリート
コンクリートの許容応力度には、以下の式を採用します。圧縮は建築基準法施行令 第91条の基本倍率によります。普通コンクリートの長期許容せん断応力度は同条及び平成12年建設省告示第1450号第2の値を用います。短期倍率・軽量コンクリートの低減及び付着のFc上限には以下の設計用の扱いがあり、この機能だけで全ての法令上の適合を判定することはできません。
長期・短期は荷重状態に対応する区分です。令82条では常時及び多雪区域の長期積雪を長期、積雪・暴風・地震時を短期とします。短期の損傷制御/安全確保は、同じ短期区分の中の検討目的の違いです。材料値の短期倍率を、そのまま部材耐力全体の倍率として使うことはできません。
算定式
付着許容応力度には Fc(36 N/mm²を上限)を用います。異形鉄筋は長期上端筋 \(\min(F_c/15, 0.9 + (2/75)F_c)\)、その他 \(\min(F_c/10, 1.35 + F_c/25)\) とし、丸鋼は上端筋 \(\min(4F_c/100, 0.9)\)、その他 \(\min(6F_c/100, 1.35)\) とします。短期は長期値の1.5倍です。異形鉄筋の長期値は、平12建告第1450号第1第一号の表によります。上端筋以外では Fc=22.5 N/mm²を境に Fc/10 と 1.35+Fc/25 が連続します。出典は『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷、9.3、p.585です。
告示第1第二号の短期値は長期の2倍ですが、本プログラムでは1.5倍の小さい値を採用します。Fcの上限は36 N/mm²とし、Fcがこれを超える場合は36の値を使います。これらの採用条件は、告示表そのものの規定とは区別します。
- 許容圧縮応力度 \( f_c \) = 長期 \( F_c/3 \)、短期 = 長期×2
- 許容せん断応力度 \( f_s \) = 長期は \(F_c \le 21\) で \(F_c/30\)、\(F_c > 21\) で \(0.49 + F_c/100\)、短期 = 長期×1.5
- 付着(異形鉄筋)\( f_a \) = 長期上端筋 \( \min(F_c/15, 0.9 + (2/75)F_c) \)、その他 \( \min(F_c/10, 1.35 + F_c/25) \)、短期×1.5
- 付着(丸鋼)\( f_a \) = 長期上端筋 \( \min(4F_c/100, 0.9) \)、その他 \( \min(6F_c/100, 1.35) \)、短期×1.5
- 軽量コンクリート 1 種・2 種は許容せん断応力度のみを 0.9 倍(許容圧縮応力度は普通コンクリートと同じ。付着は対象外)
普通コンクリートの長期値は、Fc=21/24/36 N/mm²でそれぞれ0.70/0.73/0.85 N/mm²です。実験に基づく別の許容値への置換は行いません。
せん断の短期1.5倍は設計用の採用倍率です。令91条の短期表値は長期の2倍であり、採用する材料値はその75%です。軽量1種・2種の0.9倍は別の設計用低減であり、令91条・告1450第2だけからその種類別係数の根拠を確認したものではありません。これらの係数と各部材の検定式全体の適用根拠は別途確認が必要です。材料値が小さいことだけで部材・建物全体の安全性を保証しません。
このせん断材料値はRC梁・柱、RC壁、RC接合部及びSRC梁・柱・仕口パネルに適用します。RC接合部は短期値、その他は検討の長短期区分に応じた値を用います。SRCのRC部分にも同じ材料値を用い、CFT柱の鋼管のみで評価する許容せん断には用いません。
軽量1種・2種のせん断0.9倍と短期1.5倍は、材料値としての採用条件です。通常RC・SRCの各部材式と組み合わせる学会規準の適用条件は未確認であり、これらの材料値による検定結果だけで設計の適否を確定しないでください。付着についても、軽量への適用条件及び丸鋼を含む短期1.5倍・Fc上限36の規準上の根拠は未確認です。令91条の一般付着の軽量値0.6を、せん断0.9の根拠や、ここで用いる異形鉄筋・丸鋼の付着表の代わりには使いません。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( f_c \) | コンクリートの許容圧縮応力度 | N/mm² |
| \( f_s \) | コンクリートの許容せん断応力度 | N/mm² |
| \( f_a \) | 付着の許容応力度(異形鉄筋) | N/mm² |
| \( F_c \) | コンクリートの設計基準強度 | N/mm² |
実装参照:sepika_design_jp::material_strength::{concrete_allowable_compression, concrete_allowable_shear_class, concrete_allowable_bond}(crates/sepika-design-jp/src/material_strength/concrete.rs)が算定し、軽量コンクリート 1 種・2 種は許容せん断応力度のみを 0.9 倍します。
鉄筋(径区分に注意)
鉄筋の許容応力度には、以下の材種・径別の値を採用します。SD345・SD390の長期許容引張・圧縮応力度は建築基準法施行令第90条表2に、SD490は平成13年国土交通省告示第1024号第1第六号・第3第五号により、径28 mm以下/28 mm超で区分します。数値径28 mmでは215 N/mm²、28.6 mmでは195 N/mm²です。短期値とせん断補強筋の許容値は、この主筋の径区分によって変わりません。
断面編集の径選択はD10〜D41の標準呼び名から選び、呼び名の数値を保持します。D25は25、D29は29を用いるため、長期許容値はそれぞれ215/195 N/mm²です。ST-Bridgeの標準配筋でも、D25・D29表記は25・29として取り込み、数値径は小数を含めてその値を保持します。公称直径を数値で指定した25.4/28.6 mmも、同じ215/195 N/mm²の区分になります。
配筋の径は正の有限値が必要で、配置が断面内に成立することも必要です。標準呼び名以外の数値径を取り込んでも、近い呼び名やJIS公称直径へ丸めません。断面積は保持した径の円面積で求め、主筋位置や鉄筋数量も保持した径によります。呼び名の数値と公称直径を入れ替えると、許容応力度の区分が同じ場合でも面積・位置・数量は変わり得ます。
算定式(許容引張、長期/短期)
- SR235 = 155/235、SR295 = 155/295、SD295 = 195/295、SD345/390/490 は \( D > 28 \to 195/ \)、\( D \le 28 \to 215/ \)(短期は 345/390/490)
- USD685 = 215/685(径によらず)
- せん断補強筋: 長期は SR235 のみ 155、他は 195。短期は基準強度(SR235 = 235、 SR295/SD295 = 295、SD345 = 345、SD390 = 390、SD490 = 490)。
- 損傷制御の短期せん断検定では、普通強度せん断補強筋(
SD*・SR*)を用いる RC 梁・柱の 許容せん断力で \( {}_w f_t \) を 390 N/mm² 以下に制限します(RC規準)。
鉄筋は長期上限と短期値をそれぞれ選ぶため、短期値は長期値の一律1.5倍ではありません。例えばSD345主筋は径28 mm以下で215→345、28 mm超で195→345 N/mm²です。法令表の分数値に対し、SD295主筋の径28 mm以下の長期値は196.666…に対して195、SR235せん断補強筋の長期値は156.666…に対して155 N/mm²を採用します。この小さい側の差の規準上の採用根拠は未確認です。SD490の短期材料値490と、部材の損傷制御で用いる390上限は用途が異なり、材料表の値によって部材側の上限を緩和しません。
実装参照:sepika_design_jp::material_strength::{rebar_allowable_tension, rebar_allowable_shear} が算定します。
鉄筋の材料はどこで指定するか
主筋・せん断補強筋の材料は、断面の属性として指定します(断面タブの「主筋」「せん断補強筋」欄)。 断面は 4 つの材料欄を持ち、それぞれ次の役割を担います。
| 欄 | 役割 | 使う断面 |
|---|---|---|
| 材料 | 主材料。コンクリート(\( F_c \))または鋼材(F 値) | すべての断面 |
| 主筋 | 主筋の材質。降伏点 \( \sigma_y \) と許容応力度に用いる | RC 矩形・RC 円形・SRC 矩形・RC 壁 |
| せん断補強筋 | せん断補強筋の材質。\( \sigma_{wy} \) と \( w f_t \) に用いる | 同上 |
| 内蔵鉄骨 | SRC の内蔵鉄骨の鋼種。F 値に用いる | SRC 矩形 |
呼び名サイズ(D10〜D41)と本数・段数・ピッチは、材料とは別に断面の配筋欄で指定します。
材料の名称がそのままグレード名になり、そこから許容応力度の表を引きます。 降伏点 \( \sigma_y \)・\( \sigma_{wy} \) は材料に登録した \( f_y \) をそのまま用い、 名称からの推定は行いません。
- 許容応力度の表は名称で引きます(
SD345→ 令90条表の SD345 の行) - 主筋の \( \sigma_y \)・せん断補強筋の \( \sigma_{wy} \) は、割り当てた材料の \( f_y \) です
- せん断補強筋の材料が未割当のとき、終局耐力の \( \sigma_{wy} \) は SD295 相当 (295 N/mm²、材料未割当時に用いる代表値)を既定とします
配筋を持つ断面で主筋の材料が未割当のモデルは、解析前チェックがエラーで停止します (増分解析「解析前の入力チェック」)。 せん断補強筋の材料が未割当のときは解析前チェックで停止せず、終局耐力の \( \sigma_{wy} \) のみ上記の既定値を用います。
許容応力度計算の断面検定は材料の名称で許容応力度表を引くため、主筋・せん断補強筋の いずれが未割当でも「検定不能」として理由を返します。主筋の \( \sigma_y \) を 既定値 345 N/mm² で補わないのは、SD295 の部材で耐力を過大評価するためです。
せん断補強筋として対応する材料は、普通強度の SR235・SR295・SD295(SD295A・SD295B を含む)・SD345・SD390・SD490 に限ります。
普通強度鉄筋は令90条の表、SD490は平成13年国土交通省告示第1024号の高強度鉄筋の表に対応する値を採用します。高強度せん断補強筋の製品名や未知名など上記以外のグレードを割り当てた断面は、現時点で未対応のため、断面検定は「検定不能(理由付き)」、解析は解析前チェックのエラーで停止します。
対応グレードの材料を割り当てているのに \( f_y \) が未設定(0 以下を含む)の場合も入力不備とし、断面検定は「検定不能(理由付き)」、解析は解析前チェックのエラーで停止します。 壁の断面検定・非線形参考骨格は別の入力契約とし、必要な材料役割の未割当・fy欠落・非有限/非正値を未検定とします。壁検定には295の既定値を用いません(壁参考骨格)。
解析用の既存終局耐力では、材料未割当のときだけ既定 295 N/mm² を用います。対応グレードの \( f_y \) を無言で 295 に補うと、SR235(\( f_y = 235 \))の部材で \( \sigma_{wy} \) を 235 から 295 へ増やす危険側の評価になるためです。
実装参照:sepika_core::material_grade::{rebar_yield_strength, shear_rebar_yield_strength, is_supported_shear_rebar_grade, shear_rebar_material_issue} が \( f_y \) の解決と材料の不備判定を行い、検定側の材質選択は sepika_design_jp::material_strength::{main_rebar_grade, shear_rebar_grade} によります。
鋼材(F 値・許容応力度・座屈)
鋼材の F 値・許容応力度・座屈を、建築基準法施行令 第90条・98条/告示、および鋼構造設計規準 1973 に基づいて算定します。許容曲げ応力度 fb の算定式と通常の利用経路は、鋼構造 断面検定に記載します。
算定式
- F 値(板厚区分): SS400/SN400 = 235(\( t \le 40 \))/215、SN490/SM490 = 325/295 ほか
(グレード別の F 値一覧は 標準材料(プリセット)一覧)。
F 値は断面に割り当てた材料の対応済み名称から解決します(
SN490B→SN490等)。 名称の対応範囲は鋼材名の対応範囲を参照します。 SRC の内蔵鉄骨は、断面の「内蔵鉄骨」欄の材料の名称を用います。 通常鋼部材・鋼小梁・S/CFT柱梁接合部の材料・実板厚の選択と入力条件は、鋼材のF値と入力条件に従います。 SRC内蔵鉄骨の条件はSRC / CFT 断面検定を参照してください。 - 許容引張 \( f_t \) = 長期 \( F/1.5 \)、短期 \( F \)、許容せん断 \( f_s \) = 長期 \( F/(1.5\sqrt{3}) \)、短期 \( F/\sqrt{3} \)
- 圧縮(座屈考慮):
\[ \Lambda = \sqrt{\pi^2 E / (0.6 F)} \]
\[ \nu = 3/2 + (2/3)(\lambda/\Lambda)^2 \]
\[ \lambda \le \Lambda: f_c = F(1 - 0.4(\lambda/\Lambda)^2)/\nu \]
\[ \lambda > \Lambda: f_c = 0.277 F / (\lambda/\Lambda)^2 \]
標準的な建築用鋼材のヤング係数は205000 N/mm²です。材料種別が「鋼材」の材料には、大臣認定による特別な鋼材も含めて、上記の許容圧縮応力度式を共通に適用します。 Eは当該鋼材に登録したヤング係数、Fは鋼材のF値と入力条件で定める基準強度を用い、短期は長期値の1.5倍です。特別な鋼材の材料定数・使用条件は、その認定内容に従って指定します。 平13国交告第1024号第1第三号ロ表1の炭素鋼の式は、限界細長比を \(1500/\sqrt{F/1.5}\)、長柱側の係数を \(18/65\) とします。 標準値と異なるEでは、この告示式より許容値が大きくなり、同じ圧縮応力度の検定比が小さくなる場合があります。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( F \) | 鋼材の基準強度(F 値) | N/mm² |
| \( f_t \) | 鋼材の許容引張応力度 | N/mm² |
| \( f_s \) | 鋼材の許容せん断応力度 | N/mm² |
| \( f_c \) | 座屈を考慮した許容圧縮応力度 | N/mm² |
| \( \lambda \) | 座屈長さと断面二次半径から求める細長比 | - |
| \( \Lambda \) | 限界細長比 | - |
| \( E \) | 鋼材のヤング係数(材料に登録した値を用い、標準的な鋼材は \( 2.05\times10^5 \) N/mm²) | N/mm² |
| \( \nu \) | 座屈係数(\( \lambda/\Lambda \) の関数) | - |
| \( t \) | 板厚(F 値の板厚区分) | mm |
実装参照:sepika_design_jp::material_strength::{steel_f_value, steel_ft, steel_fs, steel_fc, big_lambda} が F 値・許容引張/せん断/圧縮応力度を算定し、fb は sepika_design_jp::steel::{steel_fb_h, steel_fb_h_asd2019}(crates/sepika-design-jp/src/steel/section.rs)が算定します。
鋼材のF値と入力条件
通常の鋼部材・鋼小梁・S/CFT柱梁接合部には、次の規則を適用します。材料名の対応範囲と各板厚区分の値は標準材料一覧を参照してください。
| 材料の条件 | 採用するF |
|---|---|
| 材種表に対応する鋼材 | 対象部位の実板厚による表のF。材料の降伏応力が未入力でも採用でき、保存された降伏応力で上書きしない |
| 材種表に対応しない名称の、割当済み鋼材 | 材料に指定した正の有限値の降伏応力を直接採用する |
| 既知材種で表の適用範囲外 | 入力エラー。直接入力材料へ読み替えない |
| 対象 | 参照する材料 | Fを選ぶ実板厚 |
|---|---|---|
| 通常鋼部材・鋼小梁 | 対象断面の鋼材 | 実断面形状の最大板厚。実形状がない場合は明示した断面板厚 |
| H形柱の強軸側パネル | 採用柱の鋼材 | ウェブの実厚 |
| H形柱の弱軸側パネル | 採用柱の鋼材 | フランジ1枚の実厚 |
| 鋼管・CFTパネル | 鋼管の鋼材。CFTは鋼管専用の材料割当 | 鋼管壁1枚の実厚 |
パネルの参照柱は物理的な下側を優先し、下側柱が存在しない場合だけ上側を採ります。補強を含む有効厚や複数の抵抗板の合計厚を、材種表に渡す一枚の製品板厚に置き換えません。柱の強軸・弱軸への需要の分担と適用条件は鋼構造の柱梁接合部に従います。
材料未割当、参照先不明、鋼材以外の割当、必要板厚の欠落・非正値・非有限値は、対象と理由を示す入力エラーです。直接入力材料の降伏応力の欠落・0以下・非有限値も同様です。235 N/mm²や40 mmで補ったり、該当対象だけを読み飛ばしたりして検定全体を正常完了にしません。直接入力材料のFを決めるためだけの板厚区分は不要ですが、断面性能やパネル耐力の算定に必要な形状寸法は必要です。
例えばSS400の40 mmはF=235 N/mm²、50 mmはF=215 N/mm²です。50 mmの断面に降伏応力235 N/mm²が保存されていても、通常部材・鋼小梁はF=215 N/mm²を用い、小梁の長期許容曲げ応力度は215/1.5 N/mm²となります。
実装参照:sepika_core::material_grade::resolve_steel_f(crates/sepika-core/src/material_grade.rs)が材料と対象厚からFを解決し、sepika_design_jp::material_strength::section_steel_f(crates/sepika-design-jp/src/material_strength/steel.rs)が通常鋼部材・鋼小梁の実形状を扱います。
RC 断面検定
梁(RC規準13条)
RC 梁の曲げ・せん断・付着を、日本建築学会 RC規準 13条(2010年版)に基づいて検定します。
材料の短期倍率・軽量コンクリートの適用条件には材料の許容応力度に示す未確認範囲があります。本ページの部材式と材料値の組合せだけで、規準の全適用条件を満たすと判断しないでください。付着の方式・版は付着・定着で区別します。
算定式
許容曲げ(中立軸 xn を弾性・ヤング係数比 n で算定):
\[ M_A = \min(M_{At}, M_{Ac}) \]
\[ M_{At} = a_t \cdot f_t \cdot j \]
\[ M_{Ac} = f_c \cdot I_{cr}/x_n \]
部材中央(正規化位置 0.5)かつ梁にスラブが取り付く場合では、正曲げの許容を次のように扱います。 「スラブが取り付く」は版がある床板(Slab)に対して判定します(版 = 断面が割り当たり板厚が正)。 囲まれた床板は、その床板が属する床領域の外周(大梁の区画。小梁による細分によらず常に区画 全体を表す。床領域内のどれか 1 枚でも版があればよい)に両端節点が含まれること、どの床領域にも 属さない床板は自身の境界節点に両端が含まれることです。取り付く床板は取付き線の両端が梁の 両端と一致すること(順不同)です。点取り付きと版なしは対象外です。 正曲げは部材座標系の \( m_z > 0 \) とし、床スラブ側が圧縮となる向きです。 このときは T 形断面の引張支配略算として \( M_A = M_{At} = a_t \cdot f_t \cdot j \) のみを用います。 負曲げではスラブが引張側になるため、長方形複筋の \( \min(M_{At}, M_{Ac}) \) を用います。
床スラブ自体の一方向検定(版のある床板の \( M \)・許容値)は、この梁の T 形断面略算とは 別の検定です。床(スラブ)の一方向検定を参照してください。
せん断(1.0〜2.0):
\[ \alpha = 4/(M/(Q \cdot d)+1) \]
退化時の規約: \( Q \approx 0 \) かつ \( M > 0 \) は \( M/(Q \cdot d) \to \infty \) すなわち下限 \( \alpha = 1.0 \)(割増なし)を採用します。M も Q も 0(無応力)または \( d \le 0 \) の場合も中立な \( \alpha = 1.0 \) とします。この規約は RC・SRC のせん断検定で共通です。
\[ Q_{AL} = b \cdot j \cdot (\alpha \cdot f_s + 0.5 \cdot {}_w f_t \cdot (p_w - 0.002)) \]
短期の損傷制御の検討では、普通強度せん断補強筋を用いる場合に限り \( {}_w f_t \) を 390 N/mm² 以下に制限します(RC規準)。
地震時設計用せん断:
\[ Q_D = \min(Q_{D1}, Q_{D2}) \]
\[ Q_{D1} = Q_0 + n_{\mathrm{mech}} \cdot \sum {}_B M_y/l' \]
\[ Q_{D2} = Q_L + n \cdot Q_E \]
ここで記号の意味を分けます。
- \( Q_L \):選択組合せのG/P/S係数を保持したFEM重力せん断力(Pは架構用)
- \( Q_E \):選択地震termsの寄与(組合せ内力から上記重力参照を差し引いた成分。0.35Sを含めない)
- \( Q_0 \):両端支持とした単純梁の長期せん断力(部材荷重から算定。重力ケース集合は \( Q_L \) と同じ)
\( Q_0 \) は選択G/P/S termsの部材荷重から、次節の方法で算定します。地震重量用積載は流用しません。 RC梁でQD1を含む方式を選びQ0が不足する場合は理由付き未検定とし、FEMのQLでは代替しません。SRC梁はSRC梁の地震時設計用せん断と重力参照に従います。 \( n_{\mathrm{mech}} \) はメカニズム側の割増で、既定は 1.0 です。 本ソフトでは QD1 をメカニズム側、QD2 を割増 QE 側と呼びます。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( M_{At} \) | 引張鉄筋の引張力で決まる許容曲げモーメント | N·mm |
| \( M_{Ac} \) | コンクリートの圧縮応力度で決まる許容曲げモーメント | N·mm |
| \( a_t \) | 引張鉄筋断面積 | mm² |
| \( f_t \) | 鉄筋の許容引張応力度 | N/mm² |
| \( j \) | 応力中心距離 | mm |
| \( I_{cr} \) | ひび割れ断面二次モーメント | mm⁴ |
| \( x_n \) | 圧縮縁から中立軸までの距離 | mm |
| \( \alpha \) | せん断スパン比 \( M/(Q \cdot d) \) による割増係数 | - |
| \( Q_{AL} \) | 長期許容せん断力 | N |
| \( {}_w f_t \) | せん断補強筋の許容引張応力度 | N/mm² |
| \( p_w \) | せん断補強筋比 | - |
| \( Q_D \) | 地震時の設計用せん断力 | N |
実装参照:sepika_design_jp::rc::beam(crates/sepika-design-jp/src/rc/beam.rs)が検定し、許容せん断と地震時 QD の共通処理を sepika_design_jp::rc が担います。
RC梁の単純梁せん断Q0
Q0は梁のlocal Qy方向(Mzに対応)の両端支持反力から求めます。荷重方向は全体座標で正規化し、部材の局所y軸への内積を、符号付きの集中荷重・分布強度に乗じます。局所y軸に直交する有限な定義済み方向の寄与は0です。方向と強度をともに反転した荷重は同じ作用になります。鉛直部材・斜材を一律に除外する方向制限は設けません。
材長を \( L \) [mm]、i端からの距離を \( x \) [mm] とし、同じlocal y方向の合力を \( W \) [N]、i端まわりの一次モーメントを \( S \) [N·mm] とします。
\[ R_j = S/L,\qquad R_i = W-R_j \]
選択termsの係数 \( c_k \) を端別に合成し、最後に最大絶対値を採ります。
\[ Q_0 = \max\left(\left|\sum_k c_k R_{i,k}\right|,\left|\sum_k c_k R_{j,k}\right|\right) \]
荷重の絶対値やケース別の最大端反力を先に加算しません。合力が0でも一次モーメントを保持するため、正負の分布による反力対を失いません。同じ選択荷重なら、ケースの分割・統合や名称変更でQ0は変わりません。
例えばL=6000 mm、i端から1500/4500 mmに同方向の1000 Nを1個ずつ載せた場合、合成端反力は1000/1000 N、Q0は1000 Nです。後者の係数を0.5とすると数学上の合成端反力は875/625 N、Q0は875 Nです。この異係数例はQ0算定の独立例であり、GUI/MCPの検定で非標準の固定荷重・架構用積載係数を受理することを意味しません。検定可能な係数・荷重状態は荷重組合せに従います。
これは両端支持時の端せん断から部材代表値を採る略算です。符号反転分布を含む全断面のせん断極値、local Qzとの合成せん断、別組合せ間の包絡を求めるものではありません。全断面最大に対する安全側は保証しません。
有効な無荷重・荷重相殺・局所y軸への直交によるQ0=0と、入力不足を区別します。参照できない荷重ケース・部材・節点、非有限の強度・位置・係数、未定義の方向、有限な結果を得られない計算は不足とし、部分値・QL・過去のQ0で補完しません。QD1を含む検定とその詳細表示は、必要なQ0や重力内力が不足すれば理由付き未検定とします。QD2のみの方式や通常の長期検定にQ0必須条件を加えません。
入力は有限な材長L>1e−9 mm、点位置0≤a≤L、分布区間0≤a<b≤Lです。符号付き強度・0強度と短い正区間も扱います。
この符号付きQy・端別合成はRC梁に適用します。SRC等のQ0算定や地震用重量の荷重採否、終局検定の需要算定へ一般化しません。非RCの算定は荷重の絶対値と材軸直交成分の大きさを用い、複数ケースではケース別Q0を係数付きで加算します。SRC梁の地震時設計用せん断は上記リンク先のQL参照条件を用い、Q0を必須にしません。
保存組合せの検定では選択した重力荷重の係数を用います。詳細表示などで検定用重力ケースを自動選択する場合は、固定荷重と架構用積載の全ケースを係数1で用います。対象重力ケースがない場合や参照できない場合は入力不足です。Q0の単位はNです。
Q0は両端支持時のせん断力として扱います。local Qyと荷重ケースの合成後包絡は、RC梁の検定方向との整合に基づくSEPIKAの採用方法です。学会規準原本への適合は未確認です。
実装参照:sepika_job::design_q0::{simple_beam_q0_by_elem, simple_beam_q0_by_terms, simple_beam_q0_by_gravity_cases}(crates/sepika-job/src/design_q0.rs)が算定します。
柱(RC規準14条)
RC 柱の軸力+二軸曲げ+せん断を、RC規準 14条に基づいて検定します。
算定式
許容軸力:
\[ N_A = \min(f_c \cdot A_e, f_t \cdot A_e/n) \]
\[ A_e = A + (n-1) \cdot A_s \]
- N-M 相関曲線を弾性・線形ひずみ仮定で構築する(圧縮縁・圧縮鉄筋・引張鉄筋の 3 条件の最小)
- 二軸曲げは、矩形が \( \text{ratio} = \text{ratio}_z + \text{ratio}_y \)(線形和)、円形が \( (m_z/m_a)^2 + (m_y/m_a)^2 \)
- せん断 \( \alpha = 4/(M/(Q \cdot d)+1) \)(1.0〜1.5)。α のせん断スパン比は加力方向ごとに 「モーメントが最大となる検定位置」の (|M|, |Q|) を採用します(強軸: |Mz|max と 対応 |Qy|、弱軸: |My|max と対応 |Qz|)。地震時設計用せん断は \( Q_{D1} = n_{\mathrm{mech}} \cdot \sum M_y / h' \)、 \( Q_{D2} = Q_L + n \cdot Q_E \) とします。
- 短期の損傷制御の検討では、普通強度せん断補強筋を用いる場合に限り \( {}_w f_t \) を 390 N/mm² 以下に制限します(RC規準)
円形柱のせん断補強筋比 \( p_w \) は、帯筋を 1 組 2 本(閉鎖フープ、検討方向あたり 2 本)とみなし、\( A_w = 2 \cdot a_{w1} \)、\( p_w = A_w/(b_e \cdot s) \) で算定します(\( a_{w1} \) は帯筋 1 本の断面積、\( b_e = \sqrt{\pi D^2/4} \) は等価正方形断面の辺長、\( s \) は帯筋間隔)。円形柱の入力は帯筋径・間隔のみを取り、円形柱の帯筋脚数(HOOP 本数)を個別入力する方式には未対応です。
\( \sum M_y \) は柱頭・柱脚の崩壊メカニズムから定めます。
- 各端で、加力方向に取り付く梁の降伏モーメント和と柱の降伏モーメントを比較する
- 梁が弱い側を梁ヒンジ(寄与 \( \sum {}_B M_y/2 \))、柱が弱い側・梁無し・同値を柱ヒンジ(寄与 \( {}_c M_y \))とする
- 上下端とも梁ヒンジになる場合は下端を柱ヒンジへ落とす(両端梁降伏は考えない)
- 柱 My の軸力は \( N = N_L + n \cdot |N_E| \) とする(\( n \) の既定は 1.0。計算ルート連動は未実装)
- 部分スリット壁による強制柱ヒンジは、モデル属性が無いため対象外とする
- メカニズムが未算定のとき、または柱 My が取れない方向は、検定位置軸力の \( \sum M_y = 2 \cdot M_u \) で代替する
- 梁 My は RC 矩形梁の略算降伏モーメントのみ算定する。SRC・円形など My が取れない梁が加力方向にあれば、その方向は端の設計軸力による \( M_{u,i}+M_{u,j} \) とする
- 実配筋梁(上下非対称配筋)の梁 My は、上端引張・下端引張で算定した値の大きい方(安全側。柱 QD1 の過小を避ける)を採用する
- 梁の加力方向割当は強軸・弱軸で排他する(45° 付近の二重算入を避ける。同点は強軸側)
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( N_A \) | 許容軸力 | N |
| \( A_e \) | ヤング係数比を考慮した等価断面積 | mm² |
| \( A_s \) | 鉄筋断面積 | mm² |
| \( m_a \) | 許容曲げモーメント | N·mm |
| \( \sum M_y \) | 柱頭・柱脚の降伏モーメントの和 | N·mm |
| \( h' \) | 柱の内法高さ | mm |
| \( M_u \) | 柱の終局曲げモーメント | N·mm |
| \( N_L \) | 長期軸力 | N |
| \( N_E \) | 地震時軸力 | N |
| \( N \) | 軸力(圧縮を正) | N |
実装参照:sepika_design_jp::rc::column(crates/sepika-design-jp/src/rc/column/mod.rs)が検定し、地震時 QD は軸力を考慮する sepika_core::rc_capacity::rc_column_mu_simple(crates/sepika-core/src/rc_capacity.rs)が担います。メカニズムは sepika_design_jp::rc::column_mechanism が算定します。
柱梁接合部(RC規準15条)
柱梁接合部のせん断を、RC規準 15条に基づいて検定します。
算定式
許容せん断(形状係数 \( \kappa_A \) = 十字10/T字7/ト字5/L字3):
\[ Q_{Aj} = \kappa_A \cdot (f_s - 0.5) \cdot b_j \cdot D \]
有効幅:
\[ b_j = b_b + 2 \cdot b_{ai} \]
\[ b_{ai} = \min(b_i/2, D/4) \]
設計用:
\[ Q_{dj} = \min(Q_{dj1}, Q_{dj2}) \]
\[ \xi = j/({}_c H(1 - D/L_b)) \]
\[ Q_{dj1} = \sum M_y/j \cdot (1-\xi) \]
ここで ΣMy は大梁の降伏モーメントの和(略算降伏モーメント \( 0.9 \cdot a_t \cdot \sigma_y \cdot d \)。弾性解析の梁端モーメントではない)です。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( Q_{Aj} \) | 接合部の許容せん断力 | N |
| \( \kappa_A \) | 接合部の形状係数(十字10/T字7/ト字5/L字3) | - |
| \( f_s \) | コンクリートの許容せん断応力度 | N/mm² |
| \( b_j \) | 接合部の有効幅 | mm |
| \( D \) | 柱の断面せい | mm |
| \( b_{ai} \) | 梁の有効幅の片側分 | mm |
| \( Q_{dj} \) | 接合部の設計用せん断力 | N |
| \( \xi \) | 接合部せん断力の分配係数 | - |
| \( {}_c H \) | 柱の内法高さ | mm |
| \( L_b \) | 梁の内法長さ | mm |
| \( j \) | 梁の応力中心距離 | mm |
実装参照:sepika_design_jp::rc::joint(crates/sepika-design-jp/src/rc/joint.rs)が検定します。
付着・定着(RC規準1999/1991)
RC 梁の付着・定着を、RC規準1999(既定)/1991 に基づいて検定します。設計タブで方式を切り替えられます(既定は 1999)。
算定式(1991方式)
設計用付着応力度は \( \tau_a = |Q|/(\sum\varphi \cdot j) \)、検定比は \( \tau_a/f_a \) です。許容値 \( f_a \) は材料の許容応力度を用います。引張側の上端筋・下端筋、異形鉄筋・丸鋼、長期・短期を区別します。
算定式(1999方式)
必要定着長:
\[ l_{db} = \sigma_t \cdot a_s/(K \cdot f_b \cdot \varphi) \]
\[ K = 0.3 \cdot C/d_b + 0.4 \quad (\text{長期}) \] \[ K = 0.3 \cdot (C+W)/d_b + 0.4 \quad (\text{短期}) \]
(上限 2.5、\( C = \min(\text{あき}, 3\text{cover}, 5d_b) \))
\[ f_b = F_c/60 + 0.6 \]
(上端筋 0.8 倍、短期×1.5)。 1999方式の \( f_b \) は付着割裂を検討する別式の係数であり、1991方式の告示表に基づく \( f_a \) とは異なります。両者を同じ許容値として置き換えず、それぞれの検定式と組み合わせます。 丸鋼では \( f_b = F_c/30 + 0.4 \) とし、上端筋 0.8 倍、短期×1.5 とします。 多段配筋(2 段以上)の場合は fb に 0.6 を乗じ(RC規準1999「1段筋以外は 0.6 を乗じる」)、必要付着長さが最大となる 2 段目以降の鉄筋列で代表して検定します。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( l_{db} \) | 必要定着長さ | mm |
| \( \sigma_t \) | 検定断面の鉄筋引張応力度 | N/mm² |
| \( a_s \) | 主筋 1 本の断面積 | mm² |
| \( K \) | 付着割裂の検討用係数 | - |
| \( f_b \) | 付着の許容応力度 | N/mm² |
| \( \varphi \) | 主筋 1 本の周長 | mm |
| \( C \) | あき・かぶり・鉄筋径から定まる付着の有効長さ | mm |
| \( W \) | 横補強筋効果を表す換算長さ | mm |
| \( d_b \) | 主筋の呼び径 | mm |
| \( F_c \) | コンクリートの設計基準強度 | N/mm² |
実装参照:sepika_design_jp::rc::{rc_beam_bond_check_with_rebar, rc_beam_bond_check_1991}(crates/sepika-design-jp/src/rc/bond.rs)が検定します。
構造規定・長期たわみ
RC 梁・柱の構造規定と梁の長期たわみを、平12 告示第1459号および慣行の入力チェックに基づいて扱います。
部材全体に共通する項目(構造規定・たわみ)は、危険断面のうち部材中央(正規化位置 0.5)の検定結果に一度だけ付記します。 中央は剛域の有無にかかわらず危険断面に含まれるため、フェイス位置のみを検定する架構でも見落とせません。
梁の構造規定
入力エラー(検定種別「構造規定」、検定比 > 1 で NG):
- かぶり厚さは 30 mm 以上とする
- あばら筋間隔は \( \min(3D/4,\,300\,\mathrm{mm}) \) 以下とする
警告(共通 detail に付記。検定比には載せない):
- 主筋径は D13 以上とする
- あばら筋間隔は \( \min(D/2,\,250\,\mathrm{mm}) \) 以下とする
- せん断補強筋比は \( p_w \ge 0.2\% \) とする
- 長期の引張鉄筋断面積は \( a_t \ge \min(0.004bd,\,4/3\cdot\text{必要量}) \) とする
実装参照:sepika_design_jp::rc::provisions::beam_provisions(crates/sepika-design-jp/src/rc/provisions.rs)が判定します。
柱の構造規定
入力エラー:
- かぶり厚さは 30 mm 以上とする
- 主筋全本数は長方形で 4 本以上、円形で 8 本以上とする
- 帯筋間隔は 100 mm 以下とする
警告:
- 最小径 / 支点間距離は、普通コンクリートで 1/15 以上、軽量で 1/10 以上とする。支点間距離は内法長さ(
DesignCtx.clear_length)を優先し、無ければ節点間長さとする - 主筋比は \( p_g \ge 0.8\% \) とする
- せん断補強筋比は \( p_w \ge 0.2\% \) とする(計算ルート未連動のためルート1/3 相当の下限のみ)。長方形柱は両方向の幅で \( p_w \) を算定し、小さい方で下限を見る
- 短期軸応力度は \( N/A_g \ge F_c/3 \) とする。規定を満たさないとき(\( \sigma < F_c/3 \))に警告する
実装参照:sepika_design_jp::rc::provisions::column_provisions(crates/sepika-design-jp/src/rc/provisions.rs)が判定します。
梁の長期たわみ
建設省告示「平12 第1459号」:
\[ \alpha \cdot \delta / L \le 1/250 \]
ここでスパン \( L \) は内法長さ(フェイス間。剛域控除後)を用います。 内法が取れないときは節点間長さで代替します。
変形増大係数 \( \alpha \) の既定は 8 です。 略算たわみは鋼梁と同じモーメント復元形で、
\[ M_0 = |M_c| + (|M_i|+|M_j|)/2 \]
\[ \delta = 5 M_0 L^2/(48 E I) - (|M_i|+|M_j|) L^2/(16 E I) \]
\( I = b D^3/12 \)(長方形断面)とします。 端部・中央の長期モーメントが揃うときのみ検定し、結果は検定種別「たわみ」に載せます。 片持ち梁の先端集中換算は対象外です。
実装参照:sepika_design_jp::rc::provisions(rc/provisions.rs)。
耐震壁(RC規準18条)
耐震壁のせん断を、RC規準 18条に基づいて検定します。
検定の対象は耐震壁として成立する壁だけです。上下辺が大梁で囲まれていない壁と、耐震スリットがある壁と、RC 壁のうち壁厚が 120 mm 未満・開口周比 \( r_0 > 0.4 \) のいずれかに該当する壁は、耐震壁ではないため本検定の対象外とします。成立判定は解析側と同じ関数(sepika_element::wall::misc_wall::wall_is_seismic。壁エレメントモデル)を用いるため、解析で壁エレメントとして扱われる壁と検定の対象は必ず一致します。
算定式
コンクリート負担:
\[ Q_1 = r \cdot t \cdot l \cdot f_s \]
壁筋負担:
\[ Q_w = p_s \cdot t \cdot l_e \cdot {}_w f_t \]
側柱負担 Qc を加えた
\[ Q_2 = r \cdot (Q_w + \sum Q_c) \]
側柱 1 本あたり \( Q_c = b \cdot j \cdot (1.5 \cdot f_s + 0.5 \cdot {}_w f_t \cdot (p_w - 0.002)) \)(\( j = 7/8 \cdot d \)、\( (p_w - 0.002) < 0 \) は 0 とする。SRC 側柱は鉄骨のせん断負担 \( s_{fs} \cdot A_s \) を加算する。\( (p_w - 0.002) \) のオフセットは SRC 造耐震壁にも同じ式を用いる)。
短期許容:
\[ Q_a = \max(Q_1, Q_2) \]
開口低減:
\[ r = \min(\gamma_1, \gamma_2, \gamma_3) = 1 - \max\left(\frac{l_0}{l},\ r_0,\ \frac{h_0}{h}\right),\quad r_0 = \sqrt{\frac{h_0 \cdot l_0}{h \cdot l}} \]
\( \gamma_1 = 1 - l_0/l \)、\( \gamma_2 = 1 - r_0 \)、\( \gamma_3 = 1 - h_0/h \)。終局せん断(耐震壁(せん断非線形トリリニア))の開口低減と同一の式ですが、剛性計算用の \( r_1 = 1 - 1.25 r_0 \)(壁エレメントモデル)とは別の式です。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( Q_1 \) | コンクリートが負担する許容せん断力 | N |
| \( Q_w \) | 壁筋が負担する許容せん断力 | N |
| \( Q_2 \) | 側柱を含む許容せん断力 | N |
| \( Q_a \) | 耐震壁の短期許容せん断力 | N |
| \( Q_c \) | 側柱 1 本が負担する許容せん断力 | N |
| \( r \) | 開口による低減率 | - |
| \( t \) | 壁厚 | mm |
| \( l \) | 壁の長さ | mm |
| \( l_e \) | 壁筋が有効な壁の長さ | mm |
| \( p_s \) | 壁筋比 | - |
| \( {}_w f_t \) | 壁筋の許容引張応力度 | N/mm² |
| \( r_0 \) | 開口周比 | - |
実装参照:sepika_design_jp::rc::wall(crates/sepika-design-jp/src/rc/wall.rs)が検定します。
鋼構造 断面検定
鋼構造の断面検定を、鋼構造設計規準・告示平13国交告第1024号に基づいて行いますが、幅厚比による断面性能の低減は考慮しません(幅厚比は部材ランク判定 (部材ランク)で別途評価します)。
柱脚・接合部とブレース検定の範囲
部材の断面検定と、柱脚・継手・仕口の安全確認は別の検討です。 現在、アンカーボルト・ベースプレート・基礎コンクリート・根巻き部・埋込み部の専用検定には対応していません。 解析上のピン・固定・ばねの指定だけでは、柱脚の緊結、回転剛性、耐力、塑性変形能力を確認したことになりません。 特に、骨組をピン柱脚として解析できることは、柱脚自体の設計で曲げモーメントを無視できることを保証しません。
高力ボルト・普通ボルト・溶接等の接合方法、孔径・縁端距離・間隔、摩擦面、溶接詳細、ダイアフラムの検討も専用検定の対象外です。 柱梁接合部のパネル検定が適合しても、これらの接合詳細の安全性を確認したことにはなりません。 普通ボルトの孔ずれによる層間変形角の増分は自動加算しません。 令第66〜68条の適用条件・構造方法・必要な耐力等は、別途確認してください。
対応断面のブレース検定は総断面積による引張・圧縮の軸力検定に限り、圧縮では座屈を考慮します。 曲げ・せん断、接合部の孔欠損や偏心、接合部の破断耐力・保有耐力接合は検定しません。 継手・スカラップの欠損率を入力しても、ブレースの有効引張断面積には反映しません。 部材の軸力検定比だけで、令第69条の全方向の水平力に対する安全性・釣合いのよい配置を確認したことにはなりません。 混構造の鉄骨部分にも鉄骨造の規定が適用されるため、建物全体の構造種別だけでこれらの確認を省略しないでください。
実装参照:sepika_design_jp::steel::SteelDesign と steel::brace::check_brace(crates/sepika-design-jp/src/steel/brace.rs)が部材検定の対象を定めます。柱梁接合部は本ページの「S 造柱梁接合部」を参照してください。
計算ルートに応じた応力の確認
部材断面検定の適合は、鉄骨造の耐震計算ルートの全条件を満たすことを意味しません。ルート2で必要となる、一次地震時の筋かい水平力分担率に応じた応力割増しは自動適用しません。筋かいだけでなく柱・梁・柱脚への影響と下階への軸力伝達を含め、設計者が適切な設計用応力を別途確認する必要があります。未割増しの応力による検定結果だけでルート2の安全確認を完了しないでください。Ds判定に用いる終局時の分担率は、この一次地震時の分担率とは異なります。
根拠は『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版、6.3.3 p.387及び付録1-2.3 pp.650–651です。
単一リップ溝形材の検討対象と未検定
単一・直角・一様厚の総断面モデルは、有限な正の外寸 H/B/C/t [mm]、t < C < H/2、t < B/2 を必要とします。 5矩形の交差と開口の根拠は単一リップ溝形の寸法と総断面性能を参照してください。 上下リップの接触 C = H/2 も対応範囲外です。接触の結合や閉断面Jを推定せず、寸法・総性能が成立しても以下の未検定状態は変わりません。 この寸法条件は対応する初等幾何モデルの条件であり、国内耐力規準や製造者表の規準条文として扱いません。
一般軽量形鋼の単一リップ溝形材は、断面の幾何性能と部材検定の対応範囲を分けます。 現段階の部材検定は、柱・梁・ブレースのいずれも理由付きの「検定不能」です。 純圧縮、正負の強軸・弱軸曲げ、圧縮曲げ・組合せ、純引張、無荷重、せん断のみでも検定済みにはしません。 総断面の降伏、一般断面の許容曲げ応力度、幅厚比や断面保存の成立だけでは部材の適合を示せません。 純引張などで座屈の不適用を別途判断できても、断面欠損・接合を含む部材検定の対応完了とは別です。 現在の分類表示では不適用も判定せず、条件不明を不適用へ読み替えません。
| 検討対象 | 区別する変形 | 現在の状態 |
|---|---|---|
| 局部座屈 | ウェブ–フランジおよびフランジ–リップの接合線が移動しない板要素の局所変形 | 算定未対応 |
| ゆがみ座屈 | フランジ–リップ接合線の移動等を伴う断面形状変化 | 算定未対応 |
| 全体座屈 | 断面形状を保つ部材全体の曲げ・ねじり・曲げねじり、梁の横座屈 | 各耐力式と拘束条件の適用が未確認 |
分類は検討対象の種別を示します。形状名から実際に発生する座屈や支配モードを予測せず、 各項目を合格にしません。局部・ゆがみ・全体の連成も一つのモードへ強制分類せず、未評価とします。
入力・結果の単位と適用条件は次のとおりです。
| 情報 | 単位 | 参照・保持する内容と適用限界 |
|---|---|---|
| H/B/C/t | mm | 保存された外寸のせい・幅・リップ長・板厚を理由欄へ表示。未知の曲げ半径Rを0として設計用平板部幅へ変換しない |
| 総A、Iy/Iz/J | mm²、mm⁴ | 既存の総断面幾何性能を保持。検定対応や有効断面の値を意味しない |
| 有効A、強軸/弱軸の有効Z | mm²、mm³ | 荷重状態・圧縮側・採用式に依存する評価結果。未算定であり総A/Zや0による代替は行わない |
| N、Qy/Qz、My/Mz | N、N、N·mm | Nは負が圧縮、正が引張。強軸はMz/Qy、弱軸はMy/Qz。符号を理由欄へ保持し、非有限値を0や無荷重へ置換しない |
| 材長、lk_y/lk_z、lb | mm | 検定へ渡された材長・座屈長・横座屈長を表示。未指定は不明、非正/非有限は不正/未確定と表示。長さの値だけで拘束の適合を証明しない |
| 等間隔横補剛本数 | 本 | 入力あり(0本も含む)と未指定を区別。補剛剛性、端部・ねじり・反り拘束は未確定 |
| 材料E/F/G、リップ剛性、荷重作用点・せん断中心 | N/mm²、mm⁴、mm等 | 既存材料情報は保持するが、今回耐力式には使用しない。リップ剛性・偏心と拘束の国内耐力式適用条件は未確認 |
| 内外/中心線R、リップ角、孔、左右向き | mm、度等 | 本検定の幾何入力には表現がない。追加入力や推定補完を行わない |
ただし、圧縮材の有効細長比が法定上限を超えると確定した場合は、その構造規定NGを応力度検定の未対応による未検定より先に表示します。このNGは許容耐力や有効断面の算定に対応したことを意味しません。法定上限内、引張、軸力0など、確定した法定上限超過のない場合は、以下の理由付き未検定を保持します。
GUIの部材検定表・検定比表示とCSV帳票は、検定比を数値の0ではなく未検定として扱い、 形状・各座屈の未対応・有効断面未算定・適用条件未確定の理由を保持します。 表の冒頭では検定済み位置と検定不能位置を別集計し、検定不能をOK/NG件数に含めません。 保存・再読込やST-Bridgeの形状往復後も、その形状から未対応理由を再生成します。 ST-Bridgeは荷重・補剛属性・解析結果の完全保存形式ではありません。 既存の幾何・材料入力検査は維持し、不正な入力を合格へ置換しません。
分類の公開一次根拠は以下です。ここから耐力式・安全係数は採用していません。
- 日本建築学会発行、三井和也・五十嵐規矩夫「圧縮力が作用する冷間成形溝形断面部材の弾性局部座屈耐力と座屈挙動」、構造系論文集86巻790号、2021年12月、pp.1685–1692、分類はp.1685 §1・Fig.1。公開本文。局部・ゆがみとその連成の区別を参照し、論文の弾性局部解を最大耐力へ流用しません。
- American Iron and Steel Institute発行、AISI S100-16 (2020)、Commentary Appendix 2 §2.2.1、本文pp.2-1–2-3(PDF434–436頁)。公開本文。全体座屈の下位モード分類を参照し、海外設計モードを追加しません。
有効幅/幅厚比式の全面実装、国内の耐力式一式、ゆがみ・ねじり/曲げねじり耐力、 全域の許容曲げ応力度、圧縮曲げ相関、面材拘束による耐力上昇は未対応です。 これらの根拠・平板部と無効部分の配置・各拘束条件を確認するまで、一般リップ材の応力度検定済み表示には進めません。
実装参照:sepika_design_jp::steel::SteelDesign(crates/sepika-design-jp/src/steel/mod.rs)と lip_channel::unsupported_reason(crates/sepika-design-jp/src/steel/lip_channel.rs)が理由付き未検定を返します。
対応断面の検定式
S 造柱梁接合部では、検定比を \( |{}_p M|/{}_p M_y \) とし、1.0 以下を適合とします。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( \sigma_{ax} \) | 軸力による応力度 | N/mm² |
| \( \sigma_{by}, \sigma_{bz} \) | 強軸・弱軸まわりの曲げ応力度 | N/mm² |
| \( N \) | 軸力 | N |
| \( M_z, M_y \) | 強軸・弱軸まわりの曲げモーメント | N·mm |
| \( A \) | 断面積 | mm² |
| \( Z \) | 断面係数 | mm³ |
| \( f_c \) | 座屈を考慮した許容圧縮応力度 | N/mm² |
| \( f_b \) | 許容曲げ応力度 | N/mm² |
| \( f_t \) | 許容引張応力度 | N/mm² |
| \( F \) | 鋼材の基準強度(F 値) | N/mm² |
| \( \lambda \) | 座屈長さと断面二次半径から求める細長比 | - |
| \( l_{ky}, l_{kz} \) | 強軸・弱軸まわりの座屈長さ | mm |
| \( i_y, i_z \) | 強軸・弱軸まわりの断面二次半径 | mm |
| \( C \) | 横座屈修正係数 | - |
| \( l_b \) | 圧縮フランジの支点間距離(横座屈長さ) | mm |
算定式(梁)
軸力・曲げによる応力度:
\[ \sigma_{ax} = |N|/A,\quad \sigma_{by} = |M_z|/Z,\quad \sigma_{bz} = |M_y|/Z_{\text{弱軸}} \]
円形鋼管は強軸・弱軸の曲げモーメントを合成した \( \sigma_b \) で代表させます:
\[ \sigma_b = \sqrt{M_z^2 + M_y^2}/Z \]
軸力+二軸曲げの組合せ検定。圧縮時(\( f_c \) は座屈を考慮した許容圧縮応力度):
\[ \sigma_c/f_c + \sigma_{by}/f_b + \sigma_{bz}/f_t \le 1.0 \]
(円形鋼管は \( \sigma_c/f_c + \sigma_b/f_b \))。引張時:
\[ (\sigma_t + \sigma_{by} + \sigma_{bz})/f_t \le 1.0 \]
(円形鋼管は \( (\sigma_t + \sigma_b)/f_t \))。組合せ検定とは別に、単独曲げの検定 \( \sigma_{by}/f_b \)(円形鋼管は \( \sigma_b/f_b \) で代替)・\( \sigma_{bz}/f_t \) も行い、いずれも検定比として扱います。
許容圧縮応力度 \( f_c \) は、強軸・弱軸それぞれの座屈長さによる細長比のうち大きい方で算定します:
\[ \lambda = \max(l_{ky}/i_y,\ l_{kz}/i_z),\quad i_y = \sqrt{I_y/A},\quad i_z = \sqrt{I_z/A} \]
(\( l_{ky} \): 強軸まわり座屈長さ、\( l_{kz} \): 弱軸まわり座屈長さ。両者とも部材長のとき \( \lambda = l_k/i_{\min} \)、\( i_{\min} = \sqrt{\min(I_y, I_z)/A} \) に一致します。)
\( l_{ky}, l_{kz} \) は次の優先順位で解決します: 直接入力(部材単位、SteelDesignAttr.lk_y_direct/lk_z_direct)> 柱の自動算定(軸別座屈長さ係数 K×部材長。柱の座屈長さ係数 K 参照)> 部材長。直接入力は柱に限らず梁・ブレースでも有効であり、柱の自動算定は柱のみに適用されます。
実装参照:この優先順位による \( l_{ky}, l_{kz} \) の解決は sepika_design_jp::member_design_check::run_member_design_checks(crates/sepika-design-jp/src/member_design_check.rs)が行い、柱の自動算定は sepika_design_jp::steel::buckling::steel_column_k_axes_with_index を用います。
せん断の検定
せん断応力度は \( \tau_y = |Q_y|/A_y \)、\( \tau_z = |Q_z|/A_z \) とし、せん断有効断面積 \( A_y, A_z \) は梁・柱共通の単一定義として断面形状ごとに次式によります:
- 欠損なし標準H 形: \( A_y = t_w(H - 2t_f) \)、\( A_z = 2Bt_f/1.5 \)。フィレット面積は加算しません。
- 角形鋼管(同心円弧・一様厚さ、外角R \( r_o\ge t \)): \( A_y = 2t(H-2r_o) \)、\( A_z = 2t(B-2r_o) \)。対向する直線部だけを用い、円弧面積を加算しません。
- 明示した外角R \( r_o=0 \) の溶接箱: \( A_y = 2t(H-2t) \)、\( A_z = 2t(B-2t) \)。正の角Rを持つモデルとは別の対向板モデルです。
- 円形鋼管: \( A_y = A_z = \pi t (D - t)/2 \)
- その他の形状: 強軸Qyには断面性能as_z、弱軸Qzにはas_yを用います。各性能が正でなければ、その方向は全断面積Aを代替値として用います。一般軽量形鋼の単一リップ溝形材の未検定条件は別途適用します。
寸法H/B/tと外角Rはmm、面積Ay/Azはmm²、Qy/QzはN、τとfsはN/mm²です。 検定用の \( (A_y,A_z) \) は強軸Qy・弱軸Qzの順で、剛性用断面性能 \( (a_{s,y},a_{s,z}) \) の添字順とは異なります。 曲げについては強軸Mzが断面性能Iy、弱軸MyがIzに対応します。
角形鋼管の梁・柱では、外角Rの未知、\( 0<r_o<t \)、両方向いずれかの直線長が0以下、不正寸法、非有限・非正の面積を理由付きの検定不能とします。 負値・NaN・無限大・外角Rの上限超過も拒否し、未知を0にしたり、不成立の長さを丸めたり、未検定を数値0や合格へ置き換えたりしません。 形状を持たず名称だけでBoxに分類された断面も、明示した外角R=0の溶接箱とはみなさず、寸法・外角Rの不足として扱います。 外角Rが断面外形に収まっても、\( r_o=\min(H,B)/2 \) では一方向の直線長が0になるため本検定には適用できません。 この検定モデルの条件は、内角Rを \( \max(r_o-t,0) \) とする断面幾何で\( 0<r_o<t \)を表現することまで禁止しません。 軸力のみを扱うブレース検定は、このせん断面積の適用条件の対象外です。
角形鋼管400×300×12の検定用 \( (A_y,A_z) \) は、外角R=12で(9024,6624)、外角R=30で(8160,5760)、明示した外角R=0の溶接箱で(9024,6624) mm²です。 外角R=0と12で数値が一致しても、採用モデルの区別は維持します。
検定面積には、前述の方向別面積を採用します。 ウェブ有効率rは欠損なしで1であり、外角Rとは別の記号です。弱軸Hにはκ=1.5を用い、角形鋼管は直線部、溶接箱は対向板、円管はA/2を用います。角形鋼管の式は直線領域の幾何に基づきます。 日本建築学会の規準書本体の全文照合は未完了です。AIJ2005・冷間鋼管2003の本体は未閲覧です。
実装参照:SteelDesign::check(crates/sepika-design-jp/src/steel/mod.rs)が SectionShape::validate_surface_radius(crates/sepika-core/src/section_shape/surface.rs)の幾何検証と検定専用の寸法・直線長条件を適用し、shear_area_2d が検定用の (Ay,Az) を返します。
この \( A_y, A_z \) は検定用の有効断面積です。 要素剛性(ティモシェンコ梁の \( GA_s \))に用いる \( a_{s,y}, a_{s,z} \)(せん断有効断面積 As)とは値が異なります。 H 形では、検定側がウェブの内法せい \( H - 2 t_f \) を用い、フランジ側を 1.5 で除する点が剛性側と異なります。
H形・角形鋼管・その他の形状の柱/梁は、純せん断の方向別検定比を求め、その和で検定します。
\[ R_y = \frac{|Q_y|}{A_y f_s},\qquad R_z = \frac{|Q_z|}{A_z f_s},\qquad R_{\mathrm{shear}}=R_y+R_z \]
von Mises合成には、各方向のせん断応力度の和を用います。
\[ \tau_{\mathrm{sum}}=\tau_y+\tau_z=\frac{|Q_y|}{A_y}+\frac{|Q_z|}{A_z} \]
方向別比の和とτsumによる接続は、SEPIKAの採用規約です。
各方向のvon Mises比全体を足して軸力・曲げを二重算入する計算は行いません。 円形鋼管はこの加算規約の対象外で、以下に示す合成式を用います。
von Mises 合成
H形の梁は、次の2式の大きい方をvon Mises比とします。双方に同じτsumを用い、法線応力はそれぞれの式で評価します。
\[ R_{\mathrm{VM,H,beam}}=\max\left(\dfrac{\sqrt{(\sigma_{ax}+\sigma_b')^2+3\tau_{\mathrm{sum}}^2}}{f_t},\ \dfrac{\sqrt{(\sigma_{ax}+\sigma_{by}+\sigma_{bz})^2+3\tau_{\mathrm{sum}}^2}}{f_t}\right) \]
ここで \( \sigma_{ax}=|N|/A \)、\( \sigma_{by}=|M_z|/Z_{\mathrm{strong}} \)、\( \sigma_{bz}=|M_y|/Z_{\mathrm{weak}} \) です。 H梁の強軸断面係数には、設定された欠損の控除を適用します。 ウェブ端の曲げ応力度は \( \sigma_b' = \sigma_{by}\max(H-2t_f,0)/H \) とします。
角形鋼管とその他の形状の梁は、次式を採用します。この一般形状への適用を、任意断面での安全側の保証とはしません。
\[ R_{\mathrm{VM,Box/Other,beam}}=\sqrt{(\sigma_{ax}+\sigma_{by}+\sigma_{bz})^2+3\tau_{\mathrm{sum}}^2}/f_t \]
円形鋼管の梁は、中立軸位置の式を用います(曲げ応力度の寄与はありません)。円形鋼管の純せん断比も方向別比の最大値を用い、上記の和へ置き換えません。
\[ \sqrt{\sigma_{ax}^2+3(\tau_y^2+\tau_z^2)}/f_t \]
梁の検定比は、上記の組合せ検定・単独曲げ検定・せん断検定・von Mises 合成の各比のうち最大値とします。 柱の法線応力と集約式は後述の「算定式(柱・ブレース)」に示します。
日本建築学会の規準書本体への全面適合や、任意断面に対する安全性を確認済みとするものではありません。
許容曲げ応力度 fb(横座屈、H 形の強軸のみ考慮。他形状は \( f_b = f_t \))
ライブラリ API 内部では、鋼構造設計規準 1973 年版(Standard1973)と鋼構造許容応力度設計規準 2019 年版(Asd2019)を指定できます。ただし、通常の App / MCP の断面検定では SteelFbBasis::default() により Asd2019 を使用し、現状は UI・MCP・モデル設定から Standard1973 を選択できません。
圧縮フランジの支点間距離(横座屈長さ)\( l_b \) は、次の優先順位で解決します: 直接入力(部材単位、始端・中央・終端の区間別)> 等間隔横補剛本数 \( n \) による自動算定 \( l_b = L/(n+1) \) > 部材長 \( L \)。区間別の直接入力は、評価位置に応じて始端側(部材軸方向の無次元位置 0.25 未満)・中央(0.25〜0.75)・終端側の値を用います。
Standard1973:
\[ f_b = \max(f_{b1}, f_{b2}) \le f_t \]
\[ f_{b1} = F(2/3 - (4/15)(l_b/i)^2/(C \cdot \Lambda^2)) \]
\[ f_{b2} = 89000/(l_b \cdot h/A_f) \]
断面二次半径 \( i \) は、圧縮フランジと、せいが部材せいの 1/6 のウェブからなる T 形断面で算定します(ウェブ部の高さは \( \max(h/6 - t_f,\ 0) \))。上下フランジの形状が異なる組立 H 形(BH)は、どちらが圧縮側か特定できないため、上下フランジそれぞれで求めた T 形断面のうち \( i \) が小さい側を安全側として採用します。
Asd2019(AIJ-ASD19):
\[ M_y = F \cdot Z,\quad M_e = C\sqrt{\dfrac{\pi^4 E I_z E I_w}{l_b^4} + \dfrac{\pi^2 E I_z G J}{l_b^2}} \]
\[ \lambda_b = \sqrt{M_y/M_e},\quad {}_e\lambda_b = 1.29,\quad \nu = 3/2 + (2/3)(\lambda_b/{}_e\lambda_b)^2 \]
\[ f_b = \begin{cases} F/\nu & (\lambda_b \le {}_p\lambda_b) \\ \left(1 - 0.4\dfrac{\lambda_b - {}_p\lambda_b}{{}_e\lambda_b - {}_p\lambda_b}\right)F/\nu & ({}_p\lambda_b < \lambda_b \le {}_e\lambda_b) \\ F/(2.17\lambda_b^2) & ({}_e\lambda_b < \lambda_b) \end{cases} \]
長期の上限は \( F/1.5 \)、短期は長期の 1.5 倍(上限 \( F \))とします。塑性限界細長比 \( {}_p\lambda_b \) は、横補剛区間内で曲げモーメントが最大となる場合は 0.3、区間内で単調に変化する場合は \( 0.6+0.3(M_2/M_1) \)(\( M_2/M_1 \) は複曲率で正・単曲率で負)とします。端部モーメントの情報がない場合は安全側の 0.3 とします。
曲げねじり定数 \( I_w \) は、H 形で \( I_w = I_z (h - t_f)^2/4 \)、上下フランジの形状が異なる組立 H 形(BH)で \( I_w = h_f^2 \cdot I_u I_l/(I_u + I_l) \)(\( h_f \): 上下フランジ重心間距離、\( I_u, I_l \): 上下フランジ単独の弱軸まわり断面二次モーメント)とします。せん断弾性係数 \( G \) は材料に入力があればその値、なければ \( E/(2(1+\nu)) \) によります。サンブナンのねじり定数 \( J \) は断面性能のねじり定数を用います。
部分補剛区間で区間端部モーメントを入力・復元できない場合は、端部モーメント比によらず安全側の pλb=0.3 とします。全長区間では端部モーメントが利用できる場合に既存の M2/M1 式を用い、情報がない場合は安全側の 0.3 とします。
横座屈修正係数(両基準に共通):
\[ C = 1.75 + 1.05(M_2/M_1) + 0.3(M_2/M_1)^2 \le 2.3 \]
\( M_1 \) は座屈区間両端の強軸曲げモーメントの絶対値が大きい方、\( M_2 \) は小さい方で、\( M_2/M_1 \) は複曲率(反曲点あり)で正・単曲率で負とします。自動算定では次の場合に安全側の値を用います:
- 座屈区間中央の曲げモーメントが両端より大きい(区間内で最大となる)場合は \( C = 1.0 \)。
- 横補剛により座屈区間 lb が部材の部分区間となる場合は、区間端モーメント比が不明なため自動算定の \( C = 1.0 \)。
- 端部モーメントの情報がない場合は \( C = 1.0 \)(もっとも不利な等曲げ分布相当)。
横座屈修正係数 C は、SteelDesignAttr.c_direct により部材単位で直接入力できます(正値。0 以下は無効入力として無視します)。入力がある場合は自動算定(上記の \( M_2/M_1 \) 式・上限 2.3・安全側の \( C=1.0 \) 規定)を行わず入力値をそのまま採用します。したがって部分補剛区間でも正値の c_direct が優先されます。
断面欠損を考慮した断面係数 Z′(H 形の強軸曲げ)
継手部の欠損率 \( \beta_f \)(フランジ [%])・\( \beta_w \)(ウェブ [%])、端部スカラップによるウェブ欠損率 \( \alpha_w \) [%] が部材に入力されている場合、H 形の強軸曲げ応力度は欠損を考慮した断面係数 \( Z' \) で算定します。全断面の強軸断面二次モーメントをフランジ寄与分 \( I_f = (B H^3 - B(H-2t_f)^3)/12 \) とウェブ寄与分 \( I_w = t_w (H-2t_f)^3/12 \) に分解し:
\[ I_f' = I_f (1 - \beta_f/100),\quad I_w' = I_w (1 - \beta_w/100) \]
端部(評価位置が部材軸方向の無次元位置 0.25 以下または 0.75 以上)は、スカラップを考慮したウェブ寄与分に置き換えたうえで \( \beta_w \) も乗じます:
\[ I_w'' = \frac{t_w {(H-2t_f)(1-\alpha_w/100)}^3}{12} (1 - \beta_w/100) \]
\[ Z' = (I_f' + I_w')/(H/2) \]
(端部は \( I_w' \) を \( I_w'' \) に置き換えます。)
参考情報(検定比に含めない)
梁の検定では、次の 2 項目を検定比に含めない参考情報として併記します。
- 大梁の必要横補剛数(保有耐力横補剛・均等配置の参考本数): 大阪府『構造計算適合性判定指摘事例集』2021年版・2023年一部改正版、4.1.6-2 式(3a)(3b)に掲載された、400/490ニュートン級炭素鋼の均等配置式を採用します。 弱軸細長比 \( \lambda_y = L/i_y \)(\( i_y = \sqrt{I_z/A} \)、\( I_z \): 弱軸の断面二次モーメント、\( A \): 断面積)に対し、 400ニュートン級は \( \lambda_y \le 170 + 20n \)、490ニュートン級は \( \lambda_y \le 130 + 20n \) を満たす最小非負整数を必要本数とします。 すなわち \( n = \max(0,\lceil(\lambda_y-c)/20\rceil) \)(400ニュートン級: \( c=170 \)、490ニュートン級: \( c=130 \))です。 出典では \( L \) を柱間の内法実長(節点間距離によることも可)としています。本機能は柱間の節点間全長を採用し、内法長、横座屈長さ \( l_b \)、中間節点による解析分割長では代替しません。長さの単位をmmに揃えると \( \lambda_y \) は無次元です。 対象材種は400級のSS400、SN400/SN400A/B/C、SM400/SM400A/B/Cと、490級のSS490、SN490/SN490B/C、SM490/SM490A/B/C/YA/YBです。裸のSN400/490・SM400/490はアプリ内の材種系列名で、完全なJIS種類記号ではありません。基準強度 \( F \) の数値から400/490級を推定せず、板厚で \( F \) が変わってもこの区分は変わりません。未知材種、任意の接尾辞、SM400YA/YB、BCP/BCR/TMCPや520級は対象外です。 明示したH形鋼(SteelH)の大梁で、柱間の両外端がFixed/Fixedの場合だけ参考数を返します。断面符号からの形状推定、BuiltH、鋼管、非対称断面、片端ピン、半剛接、片持ち、用途不明は今回の対象外です。この限定は参考機能の採用範囲であり、それらの構造形式が成立しないという意味ではありません。 単一の2節点大梁は、両端の同一節点IDへ明示した柱用途の実線材が接続する場合に柱間全長とします。一本部材指定の分割大梁は、全区間が節点で連続し、折返しがなく共線で、両外端に柱があり、内部節点に柱がないことを確認します。ID欠落や重複所属、非連続・非共線、複数柱間、外端条件の不足などがあれば、単一の分割要素へ戻さず全体を算定不能とします。 有効な分割大梁では全区間に柱間全長を適用し、最大必要数と支配要素・断面・材種・細長比を一組で表示します。同数の場合は指定順で先の区間を採用します。一つでも未確認の区間があれば全体を算定不能とします。モデルに表現された区間断面だけを評価し、未表現の断面変化やハンチ部の断面性能は検証しません。 断面積 \( A \)、弱軸 \( I_z \)、柱間全長 \( L \)、H寸法、強度入力と途中計算の有限性・正値を確認します。既存の弱軸 \( I_z \) 規約が不整合な場合に他の軸へ入れ替えません。不正入力や整数上限超過は理由付き算定不能とし、0本には置換しません。参考数の可否は曲げ・せん断の検定比や合否集計から分離され、有効な既存検定を消しません。表示が0本でも横補剛不要や適合の証明にはなりません。 実際の補剛配置、補剛材・接合部の耐力と剛性、力の伝達は別途確認が必要です。許容曲げ応力度の横座屈長さ \( l_b \) の算定・検定とも区別し、本数表示だけでは保有耐力横補剛の適合を意味しません。
- たわみ(長期のみ): モーメント図を 2 次曲線分布(等分布荷重相当)と仮定し、単純梁中央モーメントを \( M_0 = |M_c| + (|M_L| + |M_R|)/2 \)(\( M_c \): 部材中央、\( M_L, M_R \): 両端の曲げモーメント)として
\[ S = \frac{5 M_0 l^2}{48EI} - \frac{(M_L + M_R) l^2}{16EI} \]
を算定しますが、変形制限(例: \( l/300 \))による合否判定は行わず、算定値の出力のみとします。 分割された梁要素を一本の梁として扱う場合、中央モーメント \( M_c \) は A 式(端部せん断と釣り合う等分布荷重の単純梁中央モーメントから端部モーメントの平均を差し引いた復元値)と B 式(グループ中央位置に最も近い評価行のモーメント)の絶対値の大きい方(符号は B 式に合わせる)とします。
算定式(柱・ブレース)
柱(座屈考慮 fc):
\[ \sigma_c/f_c + \sigma_{bX}/f_{bX} + \sigma_{bY}/f_{bY} \le 1.0 \]
- ブレース: 圧縮 \( \sigma_c/f_c \)、引張 \( \sigma_t/f_t \)
柱の \( f_{bX} \)(H 形強軸)も、梁と同じ許容曲げ応力度 fb の算定式(Standard1973・Asd2019 の選択、横座屈修正係数 C の直接入力を含む)によりますが、lb には柱の階高(ctx.length)を用います。
H形・角形鋼管・その他の形状の柱も、梁と共通のAy/Azを用い、純せん断比は \( R_{\mathrm{shear}}=R_y+R_z \)、von Misesへのせん断応力度は \( \tau_{\mathrm{sum}}=|Q_y|/A_y+|Q_z|/A_z \) とします。 柱のvon Misesに用いる法線応力は、次の部材別の式です。
\[ \sigma_{\mathrm{H,column}}=\frac{|N|}{A}+\frac{|M_z|}{Z_{\mathrm{strong}}}\frac{\max(H-2t_f,0)}{H} \]
\[ \sigma_{\mathrm{Box/Other,column}}=\frac{|N|}{A}+\frac{|M_z|}{Z_{\mathrm{strong}}}+\frac{|M_y|}{Z_{\mathrm{weak}}} \]
柱では \( Z_{\mathrm{strong}}=I_y/(H/2) \)、\( Z_{\mathrm{weak}}=I_z/(B/2) \) を用い、上記σを次式へ代入します。
\[ R_{\mathrm{VM,column}}=\frac{\sqrt{\sigma^2+3\tau_{\mathrm{sum}}^2}}{f_t},\qquad R_{\mathrm{Shear,column}}=\max(R_{\mathrm{VM,column}},R_{\mathrm{shear}}) \]
H柱のvon Mises用σはウェブ端の強軸曲げを用い、弱軸曲げを含むH梁の第2ケースとは異なります。 τsumは共通ですが、法線応力の評価式は柱と梁で異なります。軸力・二軸曲げの独立検定は別に行い、柱全体の検定比はその比と上記せん断検定比の最大値です。 H柱・H梁の法線応力と断面内評価位置の適合性は未検証です(追跡先: #692)。
円形鋼管の柱は合成 \( \tau=\sqrt{Q_y^2+Q_z^2}/A_y \)(Ay=Az)と \( \sigma=|N|/A+\sqrt{M_z^2+M_y^2}/Z_{\mathrm{strong}} \) を用い、\( \max(\sqrt{\sigma^2+3\tau^2}/f_t,\tau/f_s) \) とします。円形鋼管柱のσは、円形鋼管梁の中立軸位置の式とも異なります。
実装参照:sepika_design_jp::steel::{beam, column, brace, section} が許容応力度を検定し、断面欠損を考慮した Z'、および横座屈長さ lb を解決します。必要横補剛箇所数の参考値は steel::lateral_bracing::resolve_lateral_bracing_reference(crates/sepika-design-jp/src/steel/lateral_bracing.rs)を共通入口 member_design_check::run_member_design_checks から採用します。
圧縮材の有効細長比上限
構造耐力上主要な圧縮材には、令第65条の有効細長比上限(柱200以下、柱以外250以下)が適用されます。 通常の鋼柱・大梁・筋かいでは、長期・短期とも検定位置の軸力が圧縮(引張正の軸力が負)の場合に、この上限を判定します。強軸・弱軸それぞれの有効座屈長さを断面二次半径で除した値の最大を用い、上限ちょうどは許容します。引張のみ、軸力0・曲げのみの位置には適用しません。SRC・CFTの内蔵鉄骨や鋼管単体へこの通常鋼の判定を流用しません。
判定位置は通常の断面検定と同じ柱フェース両端・中央・追加指定位置です。各荷重ケース・組合せの評価位置ごとの軸力で判定し、同じ部材の他の位置が引張または軸力0でも、圧縮位置の上限超過を打ち消しません。
超過は「構造規定」のNGとして、細長比・法定上限とその比率を示します。この比率は応力度比ではありません。超過時には応力度検定に進まず、法定上限の不適合を表示します。検定比図で曲げ等の項目を選択しても、超過した構造規定は不適合として残ります。許容圧縮応力度の低減だけでは法定上限の確認を代替できません。有効座屈長さは自動算定値または直接指定値を用います。座屈長さ0は、その軸の座屈を無視する指定として扱います。
山形鋼の断面二次モーメントは図心を通る幾何軸の値であり、主軸の値とは異なります。主軸と有効座屈長さの対応が未確認のため、圧縮山形鋼は柱・大梁・筋かいとも法定上限を含む部材検定を理由付き未検定とします。幾何軸の細長比を主軸細長比の代わりに用いず、主軸の有効長を推定しません。この追加制限は圧縮位置に適用し、引張・軸力0の位置は既存の検定範囲で扱います。
検定比図では、同じ部材に未検定位置と検定済み位置が混在する場合も、検定済み位置の適合値だけで部材を着色しません。選択した項目で確認済みのNGがなければグレーの「未検定」とし、NGがあればそのNGと「未検定あり」を表示します。検定表とホバー内訳には、各位置の未検定理由を保持します。荷重組合せを切り替えた場合も、選択した組合せの検定結果で表示します。
BRBは製品別の許容軸力・限界長さによる別の検定です。製品条件と令第65条の適用・有効細長比の対応は未確認であり、BRBの検定適合を同条への適合確認と読み替えないでください。
実装参照:sepika_design_jp::steel::SteelDesign(crates/sepika-design-jp/src/steel/mod.rs)が法定上限を判定します。
柱の座屈長さ係数 K
柱の座屈長さ係数 K を、鋼構造塑性設計指針 式(6.65)〜(6.67)に基づいて算定します。 水平移動非拘束(sway)を前提とし、強軸まわり K_y・弱軸まわり K_z を個別に評価します。
算定式
\[ \frac{G_A \cdot G_B \cdot x^2 - 36}{6(G_A + G_B)} = \frac{x}{\tan(x)} \]
\[ x = \pi/K \]
(\( K \ge 1 \))
\[ G_a = \sum (E \cdot I_{\text{eff}}/L)_{\text{柱}}/\sum (E \cdot i_y \cdot \cos^2\theta/L)_{\text{梁}} \]
(\( a \in {y(\text{強軸}), z(\text{弱軸})} \))。ピン端・取付部材なしは \( G_a = 10 \) とします。
軸別評価
柱・梁それぞれの局所軸から、評価方向(強軸 y または弱軸 z のたわみ方向)の水平投影単位ベクトルを求め、次の重みで G を軸ごとに集計します:
- 梁: 梁材軸の水平投影と評価方向のなす角の余弦の 2 乗 \( \cos^2\theta \) を \( E \cdot i_y/L' \) に乗じます(面内(鉛直面)曲げは強軸 \( i_y \) とする仮定を維持し、角度のみ重み付けします)。評価方向に平行な梁が節点回転をもっとも拘束し、直交する梁は寄与しません。当該節点側の梁端が \( \text{Pinned} \) の場合、その梁は節点回転を拘束しないため G の梁側の集計に算入しません(
SemiRigidは剛接合とみなします)。 - 柱(評価対象の柱自身を含む): その柱自身の強軸たわみ方向と評価方向のなす角 \( \cos^2\beta \) により、断面二次モーメントを \( I_{\text{eff}} = I_y \cdot \cos^2\beta + I_z \cdot (1-\cos^2\beta) \) へ投影します(評価対象の柱自身は \( \cos^2\beta=1 \) となり \( I_y \)(強軸側)/\( I_z \)(弱軸側)にそのまま一致します)。
- 部材種別は
FrameSectionUseから解決したMemberKindを用います。Braceは剛度比から除外し、Girder・Columnは傾斜していても用途どおりに集計します。部材軸の鉛直成分は、部材種別の分類ではなく、各評価方向への水平投影の重み付けにだけ用います。 - \( L' \) は柱・梁とも剛域控除後の内法長(\( L' = \) 節点間長さ \( - \) 始端剛域長 \( - \) 終端剛域長。\( L' \le 0 \) となる場合は節点間の幾何学的長さにフォールバックする)。
評価方向の水平投影が縮退する(部材がほぼ鉛直で水平方向が定まらない)軸は、方向を区別しない評価(\( I_y \) を全部材で用いる簡略版と同じ G)にフォールバックします。方向を区別しない簡略版は、梁の結合状態(ピン接合を含む)を考慮せず、剛域による材長補正も行いません。
いずれの版も、支点(節点の境界条件)の状態・梁の遠端の結合状態は考慮しません。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( K \) | 柱の座屈長さ係数 | - |
| \( G_A, G_B \) | 柱頭・柱脚節点における柱と梁の剛度比 | - |
| \( E \) | ヤング係数 | N/mm² |
| \( I_{eff} \) | 評価方向へ投影した柱の有効断面二次モーメント | mm⁴ |
| \( i_y \) | 梁の強軸まわりの断面二次モーメント | mm⁴ |
| \( L, L' \) | 部材長・剛域控除後の内法長 | mm |
実装参照:sepika_design_jp::steel::buckling(crates/sepika-design-jp/src/steel/buckling.rs)が算定します。方向を区別しない簡略版は steel_column_k/steel_column_k_with_index です。
梁・ブレースの座屈長さ
梁・ブレースは座屈長さ係数 K の自動算定を行わないため、直接入力がない場合は部材長(節点間の距離。K=1 相当)を座屈長さとします。K 係数法(水平移動非拘束の骨組の剛度比)は柱のみに適用されます。
実装参照:部材種別に基づく軸別の座屈長さ係数は sepika_design_jp::steel::buckling::steel_column_k_axes_with_index(crates/sepika-design-jp/src/steel/buckling.rs)が算定し、梁・ブレースの座屈長さも sepika_design_jp::member_design_check::run_member_design_checks(crates/sepika-design-jp/src/member_design_check.rs)が直接入力を優先し、直接入力がなければ部材長を座屈長さとします。
S 造柱梁接合部
S 造柱梁接合部を、採用柱の強軸・弱軸に対応する2方向で検定します。以下の降伏耐力式を用いますが、H 形柱の弱軸側はフランジ2枚の純せん断モデルであり、曲げ等による耐力低下は含みません。原典適合・実接合部の妥当性を確認したモデルではなく、耐力を過大評価する可能性があります。弱軸側の近似も確認してください。
算定式
\[ {}_p M_y = (V_e/\kappa) \cdot \sqrt{\max(0, 1 - n^2)} \cdot F_y/\sqrt{3} \]
降伏耐力と適用根拠
上式は降伏耐力の評価式であり、接合部の全塑性耐力・最大耐力と同一ではありません。N・A・Fの組合せ、H形・鋼管・CFT、異厚・補強・接合詳細ごとの原典適合は未確認です。せん断抵抗板の実板厚からFを選べることだけでは、そのFと柱全断面積の積を軸耐力に使えることを保証しません。
『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷(2026年2月11日)、§6.3.4、pp.402–403は、パネルの早期降伏を直ちに架構耐力喪失とせず、パネル降伏を無視する保有水平耐力の評価にはパネル部・近傍接合部が早期破断しない条件を示しています。この説明は上記の降伏式や全塑性相関式の定義ではなく、非線形ばね・二次勾配・変動軸力の妥当性を保証するものでもありません。同節pp.394–395の柱梁耐力比に用いる接合部の最大曲げモーメントも、上式の降伏耐力へ自動的に置換しません。
CFTについて同書§3.10.11 p.237は仕様規定の概要を示し、設計の参考文献として『コンクリート充填鋼管(CFT)造技術基準・同解説』(2012.8)と『同解説の運用及び計算例等』(2024.1)を挙げています。この節にはパネルのN・A・Fと耐力式の定義がなく、鋼管部分が鉄骨造の規定によることだけをもって、部材全軸力と鋼管のA・Fによる本検定の妥当性を確認済みとはしません。
検定する接合部
取り付く柱・梁がすべて S 造(CFT を含む)で、下側優先で採用した柱の諸元を解決できる柱梁接合部を検定します。構造種別は材料の区分で決まります(構造種別の判定)。RC/SRC の柱や梁が 1 本でも取り付く接合部は、S 造柱梁接合部の式が前提とする挙動から外れるため、この式では検定しません。採用柱が組立 H 形などの未対応断面の場合は理由付きエラーとし、他の解決可能な柱へ切り替えて検定成功にしません。 RC/SRC を含む接合部は RC 柱梁接合部・SRC 柱梁接合部の断面算定が担います。斜材(ブレース等)は この判定の対象外です。
仕口パネル要素のモデル化対象は S 造(CFT を除く)で、CFT 柱を 1 本でも含む接合部はモデル化しません。一方、柱梁接合部の断面算定は S 造(CFT を含む)を対象とします。CFT の接合部は仕口パネル要素を生成せず、柱梁接合部の検定では鋼管の諸元を上記の降伏式へ代入します。充填コンクリートの耐力寄与、軸力分担、鋼管断面積と基準強度の組合せを含む式の適用根拠は未確認です(仕口パネル要素)。
諸元
対象梁は材軸水平・直交化したせい方向±Zに限定します。横倒し、斜め断面回転、勾配梁、鉛直Girderは理由付き未対応です。−Zを向く組立Hは上下板厚を全体座標の上下へ対応させます。
梁はH形鋼・組立H形の形状寸法からフランジ板厚中心位置を解決し、元の梁構面で相対する上下両位置が一致するときに限り標準形式を適用します。片側梁は既存の対象条件を保持し、直交梁は別構面に分けます。さらに、同じ柱主軸へ幾何的に非零の寄与を持つ構面間でも、上下のフランジ中心位置がそれぞれ一致する必要があります。瞬間的な応力が0でも、この参加条件を変えません。独立した整列直交構面は方向別の高さを用いるため、梁せいが異なることだけで両方向を停止しません。位置の局所数値公差・段違いの未対応条件・解除に必要な原典と入力条件は標準形式の適用範囲を参照してください。
全梁が一つの構面を構成し、一方の柱主軸へ梁曲げの寄与がない場合も、強軸・弱軸の2方向の仕口パネルを評価します。その方向の高さは唯一の梁構面から定め、標準形式が未確認のまま0需要の適合とはしません。
不正寸法・非H梁・位置不一致の構面が寄与する柱主軸は、接合部と不足条件を示す「未算定」とします。外寸やdbの一致だけで適合にせず、設計用パネルモーメントを取得しても未対応形状へ耐力式を適用しません。GUI・MCP・帳票では方向別の検定不能と理由を保持し、一方向でも未算定を含む接合部を全適合としません。上下位置が未検証のdb単独数値入力も未算定です。
複数の梁構面に入力不備がある場合は、不足条件を落とさないため補足の入力診断行を表示することがあります。これは追加の仕口パネルの耐力評価ではありません。
H 形鋼・角形鋼管・円形鋼管では、方向別の柱寸法・抵抗板・形状係数を仕口パネル要素と同じ柱断面から求めます。H 形柱は強軸側のウェブ1枚、弱軸側のフランジ2枚を用い、弱軸側は dc = フランジ幅、tp = フランジ1枚の厚さ、Ve = 2 dc db tp、κ = 1.5 とします。明示されたパネル板厚は抵抗板1枚あたりの有効厚です。基準強度の板厚区分は有効厚と区別し、強軸側の実ウェブ厚・弱軸側の実フランジ厚・鋼管の実壁厚から選びます。既知鋼種は鋼種と実板厚の表を優先し、適用範囲外を直接指定値で補いません。未知の材料名は、割当材料が鋼材で基準強度の直接指定値が正の有限値なら、その値を用います。材料の欠落・不正を既定強度で補いません。
柱由来の諸元・材料・軸力は、仕口パネル要素の参照柱の規則に従い、物理的な下側柱を優先し、下側柱が存在しない場合だけ上側柱を採用します。実効体積や入力順では選びません。採用柱の接合部側の軸力と、その柱の断面・材料から d_c・t_p・κ・軸力比 n・基準強度 F_y をそろえます。採用側を一意に特定できない場合や必要情報が欠落・不正の場合は、接合部と理由を示すエラーとし、上側柱やゼロ軸力で補って検定成功にしません。仕口パネル要素を生成しない CFT では、以下のとおり柱梁接合部の断面算定専用の諸元として解決します。
CFT 柱梁接合部の諸元
CFT の V_e は、充填コンクリートを含む等価断面の体積ではなく、鋼管の断面形状から求める柱梁接合部の実効体積です。CFT 角形の強軸側は d_c = せい − 板厚、弱軸側は d_c = 幅 − 板厚、CFT 円形の両軸は d_c = 外径 − 板厚 とし、t_p は入力された「パネル板厚 tp」を優先し、未入力なら鋼管の板厚を用います。d_b はその主軸へ寄与する構面間で上下位置が一致した梁フランジ板厚中心間距離です。H梁は形状外寸 D − tf、組立H梁は D − (tf上 + tf下)/2 です。いずれも V_e = 2 d_c d_b t_p とします。
CFT の κ は鋼管の形状係数で、ここで b_c は評価方向と直交する外寸(強軸側は幅、弱軸側はせい)です。角形は 1/(2/3 + 2 b_c/d_c) + 1/(1 + d_c/(3 b_c))、円形は 4/π です。CFT の n は、検定対象柱の解析軸力のうち圧縮側を、鋼管の基準強度 F_y と CFT 断面データの鋼管断面積 A の積で除した柱梁接合部用の軸力比です。引張側は n = 0 とし、n は 1.0 でクランプします。
CFT の F_y は、CFT 柱に割り当てた鋼管専用材料の鋼種名と実壁厚、または正の有限値の直接指定から解決します。未設定・不正・範囲外・解決不能の材料を既定強度で補いません。これは充填コンクリートの F_c や CFT の等価断面性能から求める値ではありません。
S/CFT の静的仕口パネル検定では、軸力比の断面積 A は正の有限な実値を使い、微小値を数値下限へ引き上げません。A が非正・非有限、F_y A が非正・非有限となる場合は理由付き未算定とします。圧縮軸力が非零でも除算結果が0へアンダーフローする場合や、軸力比が非有限となる場合も未算定とし、正常な軸力比で補いません。軸力0・引張の軸力比0と、有限な軸力比1以上で降伏耐力0となる評価は区別します。
CFT 柱梁接合部の降伏耐力は、上記の算定式にこの専用諸元を代入して求めます。柱梁接合部の断面検定には降伏耐力比の下限を設けず、軸力比が1以上では降伏耐力を0、検定比を無限大とします。非線形要素の設定可能域の制限とは区別します。
柱梁接合部の設計用モーメント
需要は同一状態の符号を保って柱の強軸・弱軸へ集約し、集約後の絶対値を各方向の降伏耐力と比較します。梁方向ごとの仮想の仕口パネルや、近い主軸への振分けは用いません。複数構面が同じ主軸へ寄与する場合は加算・相殺を含めて合成します。
解析のパネルせん断モーメントがある場合は、柱主軸と全体座標の変換の \( \boldsymbol{MS}=\boldsymbol A^{\mathsf T}\boldsymbol m \) から、\( \boldsymbol m=\boldsymbol A^{-\mathsf T}\boldsymbol{MS} \) によって柱2主軸の需要を復元します。梁高さによる需要の倍率補正は行いません。有限で非退化の逆変換が必要です。傾斜柱の \( \boldsymbol A \) は直交行列として扱いません。解析で用いる共通最大dbと、その検定軸へ寄与する梁のフランジ中心間距離が異なる場合は、容量の実幾何との対応が未確認のため当該方向を未算定とします。
解析のパネルせん断モーメントがない場合は、鉛直柱に限り、梁端曲げモーメントと柱端力から組み立てます。梁端モーメントは局所軸から全体座標へ変換し、要素の節点抵抗モーメント(Ku)の符号へそろえます。各梁構面の面内曲げ成分を符号付きで柱主軸へ合成した後、その方向のフランジ中心間距離dbによる柱端力の補正を一度だけ加えます。同じ柱の補正を梁構面ごとに繰り返しません。材端内部モーメントの節点側端がi端なら−1、j端なら+1を乗じます。
解析のパネルせん断モーメントを持たない非鉛直柱の材端力組立は未対応であり、理由付き未算定とします。 鉛直柱用の高さ方向・腕長を傾斜柱へそのまま適用した結果を、適合や安全側の評価に用いません。柱断面だけが梁方向に対して回転した鉛直柱は、この制限の対象ではありません。
検定の実施可否はパネルのモデル化・設計用モーメントの取得の有無に依らず、最初に幾何の適用条件で判定します。 梁・柱応力が未取得の場合も、0で補って適合にしません。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( {}_p M_y \) | 柱梁接合部の降伏耐力 | N·mm |
| \( {}_p M \) | 柱梁接合部の設計用モーメント | N·mm |
| \( V_e \) | 評価する柱主軸方向の抵抗板と、適用条件を満たすdbから求める実効体積 | mm³ |
| \( \kappa \) | 柱梁接合部の形状係数(H形/角形/円形) | - |
| \( n \) | 柱梁接合部の検定に用いる対象柱の軸力比 | - |
| \( F_y \) | 柱梁接合部に用いる柱側鋼材の基準強度(F 値) | N/mm² |
| \( d_b \) | 梁フランジ板厚中心間距離 | mm |
| \( M_{SX}, M_{SY} \) | 解析が出力する X・Y 方向の仕口パネル要素のせん断モーメント | N·mm |
| \( {}_b M_L, {}_b M_R \) | 左・右梁端のフェイスモーメント | N·mm |
| \( {}_c Q_U, {}_c Q_L \) | 上・下柱のせん断力 | N |
実装参照:sepika_design_jp::joint_wiring::steel_panel(crates/sepika-design-jp/src/joint_wiring/steel_panel.rs)が主軸別の需要・諸元・適用条件を組み立て、sepika_design_jp::steel::panel_zone(crates/sepika-design-jp/src/steel/panel_zone.rs)が検定します。
冷間成形角形鋼管柱の柱梁耐力比
冷間成形角形鋼管柱の柱梁耐力比を、2008年版「冷間成形角形鋼管の柱に用いる角形鋼管設計・施工マニュアル」に基づいて算定します。
算定式:耐力低減 νu(\( n \le 0.5: 1 - 4n^2/3 \)、\( n > 0.5: 4(1-n)/3 \))、要求値 \( \min(1.5 \cdot \sum M_{pb}, 1.3 \cdot M_{pp}) \)。
実装参照:sepika_design_jp::steel::cold_formed(cold_formed.rs)が算定し、存在軸力は \( N = N_L + 1.5 \cdot N_E \) とします。
SRC / CFT 断面検定
SRC は SRC規準1987の累加強度式・併用せん断式を採用します。以下の対応範囲と制約に従って部材の検定比を確認してください。検定比の適合は、SRC造の構造細則・柱脚・接合詳細を含む全条件の適合を意味しません。CFT の採用方式・適用範囲は各節に示します。
SRC の対応範囲と別途確認
矩形のRC部に中心H形鉄骨を内蔵した梁・柱を対象とします。梁は強軸曲げと対応するせん断、柱は軸力・二軸曲げ・二方向せん断を検定します。梁の軸力・弱軸曲げ・弱軸方向せん断は評価しません。これらが作用する梁では、この検定比だけで安全を判断せず、別途その影響を検討してください。
鉄骨のコンクリートかぶりは、令79条の3による原則50 mm以上と例外の適用条件を別途確認してください。形状や配筋入力の受理は、この法定かぶりの適合判定ではありません。令79条の4で準用される規定の適用・除外、柱脚の引張抵抗、継手・定着、構造切替階の応力伝達、接合部の帯筋配置も自動確認しません。部材・接合部の耐力比は、これらの詳細確認を代替しません。
CFT の適用条件と別途確認
CFTは柱を対象とし、鋼管と充填コンクリートへ別々の材料を割り当てます。平成14年国土交通省告示第464号第三2に基づき、充填コンクリートの設計基準強度Fcは24 N/mm²以上を必要とします。Fcが24 N/mm²未満の場合は許容応力度検定を行わず、下限未満である理由を付けて検定不能として表示します。24 N/mm²ちょうどを含む、それ以上の有限値は既存の検定の対象です。入力Fcを24 N/mm²へ補完せず、別認定による例外も扱いません。第十・第十一による適用条件の違いを、第三2の下限の除外として扱いません。
告示464号の充填・養生・接合の施工順序、蒸気抜き孔、仕口補強の条件は別途確認してください。柱の座屈長さと小径の比、板厚、径厚比・幅厚比の仕様条件と、保有水平耐力計算等による適用除外の条件も自動判定しません。長柱の耐力を計算できることや、拘束による強度割増しを採らないことだけで、適用除外の成立を意味しません。
許容耐力は以下に示す累加・鋼管せん断の採用モデルによります。検定比の適合は、これらの法定適用条件・施工条件の適合や、全ての断面・材料に対するモデル精度を保証しません。
角形 CFT の暫定適用範囲
許容曲げは内角Rが 0 の場合に限り、矩形コアの既存式を用います。 0<角R≤板厚では内角Rが 0 となりますが、鋼管の A・Iy・Iz・弾性断面係数・細長比には角Rを反映します。 内角Rが正の場合は許容曲げを未対応とし、その検定位置全体を理由付きの「未算定」とします。 需要が 0 でも、未対応の耐力を 0 や適合へ読み替えません。
終局 N–M が必要な設計用せん断 QD1/min は、角Rが正の場合に未算定となります。
内角Rが 0 でも鋼管が角丸なら対象となり、QD2 へ自動切替しません。
利用者が QD2 を明示しても、内角Rが正なら許容曲げが未対応のため位置全体は未算定です。
GUI は未算定理由を表示し、MCP は member_skipped に位置と理由を返します。
NG が 0 件であっても、未算定を含む結果は「全適合」ではありません。
正の角Rに対する規準設計への対応には、上記の制約があります。 ファイバー積分を規準式の無条件な代替として採用していません。 明示した角R=0 の既存設計式と、円形 CFT の適用は維持します。
実装参照:CftDesign::check(crates/sepika-design-jp/src/cft/mod.rs)が許容曲げと Mu 依存の設計用せん断を検証し、CheckOutcome::Skipped に理由を保持します。
記号・単位と算定式
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( M_A \) | SRC 断面の許容曲げモーメント(鉄骨と RC の累加) | N·mm |
| \( {}_s M_o \) | 鉄骨部の許容曲げモーメント | N·mm |
| \( {}_r M_A \) | RC 部の許容曲げモーメント | N·mm |
| \( {}_s Q_A \) | 鉄骨部の許容せん断力 | N |
| \( {}_r Q_A \) | RC 部の許容せん断力 | N |
| \( Q_A \) | SRC 柱の許容せん断力(併用式) | N |
| \( {}_s Z \) | 鉄骨の断面係数 | mm³ |
| \( a_t \) | 引張鉄筋断面積 | mm² |
| \( f_t, f_s \) | 鉄筋の許容引張応力度・コンクリートの許容せん断応力度 | N/mm² |
| \( {}_s f_t, {}_s f_s \) | 鉄骨の許容引張応力度・許容せん断応力度 | N/mm² |
| \( {}_w f_t \) | せん断補強筋の許容引張応力度 | N/mm² |
| \( p_w \) | せん断補強筋比 | - |
| \( \beta \) | 鉄骨ウェブの形式と寸法による係数 | - |
| \( {}_r \alpha \) | せん断スパン比による RC 部の割増係数 | - |
| \( \sum {}_c M_y \) | 柱頭・柱脚の終局曲げ耐力の和 | N·mm |
| \( Q_D \) | 地震時の設計用せん断力 | N |
算定式
SRC 梁 曲げ(鉄骨と RC の累加):
\[ M_A = {}_s M_o + {}_r M_A \]
鉄骨部:
\[ {}_s M_o = {}_s Z \cdot {}_s f_t \]
RC 部:
\[ {}_r M_A = a_t \cdot f_t \cdot j \]
SRC 梁 せん断は、鉄骨部と RC 部を弾性分担(または地震時短期の構造規定方式 sQD/rQD)と比較します。
鉄骨部:
\[ {}_s Q_A = t_w \cdot d_w \cdot {}_s f_s \]
RC 部(pw は 0.6% 上限):
\[ {}_r Q_A = \min(b \cdot {}_r j \cdot ({}_r \alpha \cdot f_s + 0.5 \cdot p_w \cdot {}_w f_t), b \cdot {}_r j \cdot (2(b'/b) \cdot f_s + p_w \cdot {}_w f_t)) \]
- SRC 柱 N-M 相関を累加強度式で構築する(コンクリート許容応力度は鉄骨フランジ食い込み低減後 \( f_c' = f_c(1 - 15 \cdot {}_s p_c) \))、二軸曲げは線形和。RC 部 N-M 曲線は引張側アンカー \( ({}_r N_t, 0) \) を持ち、純引張耐力近傍で \( {}_r M \to 0 \) に収束する。 SRC 柱 せん断の長期は、併用式を全せん断力と比較します。
\[ Q_A = (1+\beta) \cdot b \cdot {}_r j \cdot a' \cdot f_s \]
ここで \( a' = {}_r \alpha \)(\( b'/b \ge {}_r \alpha/3 \))または \( 3b'/b \)、\( 1 \le {}_r \alpha \le 2 \)、β は鉄骨ウェブの形式と寸法による係数とします。
せん断スパン比による割増係数 \( {}_r \alpha = 4/(M/(Q \cdot d)+1) \) の算定(\( Q \approx 0 \) の退化時は下限 1.0 を採用する規約を含む)は RC 断面検定(梁(RC規準13条))と共通です。
短期は鉄骨部 sQA(強軸 \( d_w \cdot t_w \cdot {}_s f_s \)/弱軸 \( (4/3) \cdot b_f \cdot t_f \cdot {}_s f_s \))と RC 部を分担 sQD/rQD と比較します。
\[ {}_r Q_{AS1} = b \cdot {}_r j \cdot (f_s + 0.5 \cdot p_w \cdot {}_w f_t) \]
(α を含まない)
\[ {}_r Q_{AS2} = b \cdot {}_r j \cdot (2(b'/b) \cdot f_s + p_w \cdot {}_w f_t) \]
- CFT 柱は SRC 規準の累加モデルを CFT 断面に準用し、相互拘束効果の強度割増しを考慮しません。許容せん断耐力は鋼管部分だけで評価します。角形のせん断有効断面積は方向別(\( 2t(H-2t) \)/\( 2t(B-2t) \))とし、二方向のせん断検定比の最大を用います。円形は鋼管全断面積の1/2をせん断有効断面積とし、二方向のせん断力の合力 \( \sqrt{Q_y^2+Q_z^2} \) を許容せん断耐力と比較します。鋼管部分の許容圧縮応力度の細長比は、充填コンクリートの剛性を算入せず鋼管単体の断面二次半径で評価します。これら個々の低減の採用だけで、累加モデル全体や適用条件を含む安全側を認定するものではありません。鋼管部分の許容圧縮応力度には鋼管専用材料のヤング係数を用います。コンクリート強度未設定の断面は検定不能です。鋼管材料の不備は下記の条件に従い拒否します。
- CFT 柱の充填コンクリート部分の \( (c_N, c_M) \) は、縁応力一定・線形分布(コンクリート引張無視)の弾性三角形応力分布で求める(矩形は中立軸位置・充填断面幅せいの閉形式、円形は同仮定の数値積分)。中立軸が断面外(\( X_n > c_D \))の分枝の \( c_M \) 式は、\( X_r = 1 \) での連続性と全断面一様圧縮での 0 収束を満たす形を用いる。
- CFT の鋼管材料は鋼管専用の材料割当を参照し、既知材種は実板厚による表のF、未知名称は正の有限値の降伏応力を用います。既知材種の適用範囲外を直接指定値で補いません。未設定・不正・解決不能な場合は解析前エラーとし、F=235 の補完は行いません。
CFTの鋼管専用材料は、GUIの断面表の「内蔵鉄骨・鋼管」欄で指定・変更します。主材料には充填コンクリートを割り当て、鋼管材料と分けます。
CFT鋼管のヤング係数と許容圧縮
鋼管の許容圧縮応力度は、材料の許容応力度の式へ、鋼管専用材料に登録したヤング係数Eをそのまま用いて求めます。 正の有限値を入力範囲とし、標準値205000 N/mm²と異なる値も許します。充填コンクリートのEを鋼管側へ用いません。 Eが0以下・非有限の場合、または中間値や許容応力度が数値の表現範囲外になる場合は、対象位置全体を理由付き未算定とします。固定値で補完しません。
鋼管専用材料の種別が「鋼材」であれば、大臣認定による特別な鋼材も同じ許容圧縮応力度式を適用します。材料定数・使用条件はその認定内容に従って指定します。 限界細長比の内側係数と外側係数0.277の丸めによる小さな段差は保持します。Eの増減を全領域で厳密に単調な耐力変化とは扱いません。
SRC 梁の地震時設計用せん断と重力参照
地震時短期には構造規定方式を用います。QL は、検定対象と同じ選択重力荷重・係数による FEM のせん断力です。 単純梁の部材荷重から求める Q0 とは異なり、SRC 梁のこの方式では Q0 を算定に使いません。 RC 梁の Q0 に対する符号付き端反力の合成方法を SRC 梁へ適用するものではありません。
評価位置ごとに、鉄骨の断面係数 \( {}_s Z \)、引張鉄筋断面積 \( a_t \)、RC 部の応力中心間距離 \( {}_r j \) から分担率を求めます。 曲げの引張側に対応する鉄筋を用い、曲げが 0 の場合は上下の引張鉄筋量の小さい側を採ります。
\[ \eta_s = \frac{{}_s Z}{{}_s Z+a_t,{}_r j},\qquad {}_s Q_L=\eta_s|Q_L|,\qquad {}_r Q_L=(1-\eta_s)|Q_L| \]
\[ {}_s Q_D={}_s Q_L+\frac{2,{}_s Z,{}_s f_t}{l'},\qquad {}_r Q_{D1}={}_r Q_L+\frac{2,{}_r M_u}{l'} \]
\[ {}_r Q_{D2}=\max{0,\ n(|Q|-{}_s Q_D)} \]
ここで Q は検定対象の地震組合せ後の全せん断力 [N]、l′ は内法スパン [mm]、n は割増係数、 鉄骨の短期許容引張応力度は N/mm²、RC 部の終局曲げ耐力は N·mm です。 Qd1 は RC 部に rQD1、Qd2 は rQD2、Min は両者の小さい値を用い、鉄骨部の sQD は共通です。 既存の退化時の扱いとして、内法スパンが正でない場合は鉄骨部の曲げ項を加算せず、 RC 部の QD1 が求まらない場合は QD2 を用います。これは長期参照不足の代替規則ではありません。
検定は i 端・中央・j 端の既存評価位置で行い、端部フェースがある場合は端の評価位置をフェースへ移します。 各位置の QL は同じ位置から採り、正規化位置の差が 10⁻⁶ 未満の行を一致とします。 Qd1・Qd2・Min のいずれもこの長期参照を必要とします。 要求した長期参照に当該部材がない場合、または同位置の QL が欠落・非有限の場合や評価位置が非有限の場合は、 該当する検定位置全体を理由付き未検定とします。弾性分担・0・近傍位置・補間値で補いません。 定義済みで有限な QL=0 は不足に含めません。通常の長期・地震割増を用いない短期は既存の弾性分担で検定します。
QLを用いる構造規定方式と、単純梁Q0を用いる方式は参照する応力状態が異なります。SEPIKAは本文に示すQL分担とsQD/rQDを採用し、QLをQ0で置き換えません。 『2007年版 建築物の構造関係技術基準解説書』p.664–665への適合は未確認です。
両端同一断面の仮定と絶対値による合成を含むため、正負地震・異断面等の一般的な安全性や規準適合を保証するものではありません。
実装参照:SrcDesign::check と src_seismic_qd(crates/sepika-design-jp/src/srrc/mod.rs)、run_member_design_checks(crates/sepika-design-jp/src/member_design_check.rs)が算定と必要参照の検査を担います。
CFT 柱の地震時設計用せん断
\[ Q_D = \min(Q_{D1}, Q_{D2}) \]
\[ Q_{D1} = \sum {}_c M_y/h' \]
ここで cMy には CFT 柱の終局 N–M 相互作用による終局曲げ耐力 Mu(N)(柱分類対応)を用い、柱頭・柱脚同一断面の仮定で \( \sum {}_c M_y = 2 \cdot M_u(N) \) とします。
\[ Q_{D2} = Q_L + n \cdot Q_E \]
QD1 または min を選択した場合、各検討軸の座屈長さによる Mu(N) を用います。
正方形・角R=0 の長柱で圧縮軸力がコンクリート座屈耐力を超える Case2 は、リンク先の適用域・有効域に従います。
この Case2 で曲げ耐力が下がると、QD1 と min の要求せん断力も下がり得ます。曲げの耐力低下だけで設計全体を安全側とは判定しません。
純圧縮端の Mu=0 や軸終局限界超過を、QD2 への自動切替で適合に読み替えません。
無効な寸法・座屈荷重や適用範囲外で Mu が求められない場合は、QD1/min も理由付き未算定です。
GUI の未算定理由、MCP の member_skipped と、終局検定の軸 NG/Mu 未算定を区別して確認してください。
実装参照:sepika_design_jp::srrc::{beam, column, panel_zone}、sepika_design_jp::cft が検定します。
SRC 柱梁接合部は \( {}_c V \cdot j\delta \cdot f_s \cdot (1+\beta) \ge (h'/h)({}_B M_1 + {}_B M_2) \)。
SRC規準1987からの主な簡略化
- 地震時短期の設計用せん断力は構造規定方式のみを実装し、選択機能は設けない。
sM1+sM2 = 2・sZ・sftは部材両端が同一鉄骨・短期許容引張応力度に達するとみなす近似(安全側とは限らない)、rMu1+rMu2 = 2・rMuも両端同一断面・同一設計軸力の仮定による。 - SRC 柱の内蔵鉄骨の座屈は考慮せず
s_fc = s_ftとする(被覆コンクリートによる拘束のため。SRC 規準の座屈検討は別途必要になり得る)。 - SRC 柱の RC 部分の中立軸圧縮側鉄骨面積は軸に依らない一つの値を用いる。
- SRC 柱のせん断は強軸・弱軸を対称的に扱い、RC 柱検定と同様の「b/D 入れ替え」近似を用いる。
- CFT 断面では、鋼管と充填コンクリートに別の材料を割り当て、F値には鋼管材料、Fc・コンクリート種別には充填材を用いる。許容圧縮応力度に用いる鋼管のヤング係数は鋼管材料の入力値とする。コンクリート強度または鋼管材料未設定の断面は検定不能とする。
- CFT の鋼管強度は鋼管専用の材料割当から、上記の材種・実板厚の条件で決める。未設定・不正・解決不能な場合は解析前エラーとし、SS400 相当(F=235)の補完は行わない。
- SRC 断面では、コンクリート強度、主筋・せん断補強筋・内蔵鉄骨の材料が必要です。内蔵鉄骨は鋼材区分の材料を割り当て、対応する材種名とウェブ・フランジの実最大板厚から鋼材のF値を決めます。両方の実板厚に正の有限値が必要です。既知材種では表のFを優先し、直接入力した降伏応力の欠落・不正値でも表の適用条件が成立すれば算定します。表の適用範囲外を降伏応力で補完しません。
- 未知の材種名は、正の降伏応力を入力してもSRC規準への適用根拠が未確定のため、位置全体を理由付き未算定とします。降伏応力の欠落・0・負値・非有限値も未算定です。235 N/mm²やRC部分だけの耐力で成功に補完しません。未算定を含む結果は全適合を意味しません。
小梁・床の断面検定
床の中の小梁とスラブの断面検定は、全体 FEM から独立して行い、設計タブの「小梁・床の設計」表に出します。表の「二次部材」列には小梁と間柱の両方が並び、間柱には「(間柱)」を付けて区別します。実際に載る荷重の分配は床荷重の分配のとおり床領域・床板の境界へ配るため、この検定は主架構の解析結果とは別に、小梁・床板それぞれを単純梁・一方向版とみなした略算です。
継続時間と法的対象
本表は長期の固定荷重+用途別積載荷重による略算です。主架構で選択した雪・風・地震・任意組合せについて、小梁・床は未検定です。 長期の曲げ・せん断・たわみ等の既存結果を保持し、短期許容値に置き換えたり、短期検定の合格として報告したりしません。 床板は長期鉄筋許容値による必要鉄筋量を算定します。実配筋の全検定や面内地震応答は扱いません。
構造耐力上主要な部分(令第1条第3号)の床版・横架材と、防火上の主要構造部(法第2条第5号)を区別してください。 小梁・床を全体FEMに含めないことだけでは、令第82条の必要な構造安全検討から除外できません。 実際の負担荷重・支持条件・用途に応じ、未対応の組合せや軸力・面内力は別途検討が必要です。 法令参照と確認済み範囲は荷重組合せを参照してください。
小梁の検定
架構の解析結果・接合部の診断結果がなく、架構の検定対象も選択していない状態では、小梁・床だけを直接検定できます。この実行では床小梁が対象で、架構の検定結果は生成しません。対象となる鋼小梁の入力不備は、その実行全体を停止します。
対象は床領域に所属する小梁と、所属先がない片持ち小梁です。 主架構との同一判定を満たす小梁は 主架構の一部としてここでは検定しません。基準両端が同じでも偏心・断面等が異なる小梁は対象に残ります。
この検定は曲げ・せん断・たわみだけを見て軸力を見ません。 これは「その小梁が載る床面が 1 枚の剛体で、面内力は剛床が処理している」ことを前提にしています。したがって次の二次部材は 検定の対象外とし、表には判定「未」の行として残します(表から消すと、検定されていないことに 気づけないためです)。
- 間柱。壁版から受けるのは材軸方向の軸力で、地震時には壁の面外地震力による弱軸曲げも 受けます。軸力・面外曲げのいずれも本検定は扱いません。
- 剛床でない床の小梁。床領域の境界節点が 1 つの剛床にすべて属していない床の小梁は、 面内力を負担するため上記の前提が成り立ちません。複数の剛床にまたがる床領域(段差床の階は 1 つの階に複数の剛床を持ちます)も、境界で相対変位が生じうるため対象外です。
なお、どの床領域にも所属しない小梁(片持ち小梁を除く)・どの壁領域にも所属しない間柱が あるモデルは、解析前チェックがエラーで止めます。 所属が決まらない二次部材は、どの床面・どの 構面に載っているかが確定しておらず、荷重の行き先も検定の可否も決められないためです。 所属先がない片持ち小梁は、取り付く床板の支持辺として荷重を受け、基端の鉛直反力で伝達する ため検定できます。
検定荷重は二次部材の反力の逐次伝達が 求めたものをそのまま使うため、小梁が受け持つのは次の 3 つの重ね合わせです (壁版から配られる自重は間柱だけが受けるため、小梁には現れません)。
- 床荷重の分配が小梁の材軸へ出した線荷重 (等分布・線形・三角形・台形・集中)
- 小梁自身の自重(自重算定と同じ \( \rho A g \)。鉄骨は有効重量割増。断面または材料が ない小梁には足しません)
- その小梁に架かる別の二次部材から渡された集中荷重
これを単純支持梁として重ね合わせ、曲げ・せん断・たわみを求めます。端部支持条件が 片持ち(基端が支持され、先端が自由な小梁)の場合は、基端まわりの片持ち梁として 重ね合わせます(端部支持条件は「床」タブの小梁一覧、編集コマンド、MCP で設定します)。
荷重の同期(解析へ渡す荷重)と断面検定は同じ経路を通るため、「解析では受け側が架け側の
反力を受けているのに、検定では受けていない」という食い違いは生じません。ただし荷重の値そのものは
一致しません。共有するのは支持関係の判定と伝達の手順であって、面荷重強度は用途ごとに違うためです。
小梁の検定では小梁用の面荷重(固定荷重+小梁用の積載荷重、LoadPurpose::Beam)を用います。
用途プリセットの小梁用は法令上 (い) 欄(床版と小梁で共通。官庁営繕「建築構造設計基準」等では「床版又は
小梁計算用」と整理)に同じで床用と同じ値ですが、任意入力では床用と小梁用を独立して指定できます
(積載荷重)。
床板の境界が途中節点で分割されていても、小梁の材軸上に載る区間は全長へ合成します(両端節点の完全一致は要求しません)。部分区間の載荷も、材軸上の該当区間へ写します。大梁の材軸の方が近い辺荷重は小梁検定には載せません(10 mm 以内に並走する小梁が外周大梁の荷重を奪わないため)。同じ位置に小梁がある(材軸距離が大梁以下)場合は小梁側を優先します。1 本の辺荷重が複数の小梁材軸に載りうる場合は、端点の材軸距離が最小の 1 本だけに載せます。材軸とみなす許容差は 床荷重の分配(スラブ → 梁・柱) と同じ 10 mm です。
曲げ・せん断の最大値はスパンを 64 等分した点(端点を含む)で探します。たわみは曲率を 80 等分した台形積分で求め(両端支持は両端ピンの条件、片持ちは基端固定・先端自由の条件)、その最大絶対値を用います。ヤング係数は小梁断面の鋼材の \( E \)(未設定時は既定 \( 205000\ \mathrm{N/mm}^2 \))です。
たわみの制限は \( \delta/L \le 1/250 \) です。
次の小梁は部材力を算定せず、表に判定「未」として残します(OK ではありません)。診断タブは理由を分けて警告します。
- 分配から荷重が得られない(段差床・傾斜小梁・床板境界外など)
- 同じ床領域内で、境界が材軸に載り、かつその床板の分配がその辺へ線荷重を出す床板(期待床板)の寄与が 1 枚でも欠けている(内法の片側欠落。反対側に床板がない外周は片側のまま検定する)
- 載荷区間の合計がスパンの半分未満(既定の下限は 0.5)
- 断面係数が取れない
- RC等、鋼小梁の略算に対応しない断面形状
- 支持関係が一巡しているなど、逐次伝達が荷重を流せない(解析前チェックのエラーにもなる)
期待床板が 1 枚もない材軸には、床分配の線荷重を載せません(近くの大梁・別の小梁の辺を奪わないため)。
代表等分布 \( w \) は合計荷重 / スパンです。45° 分配の辺荷重は、負担幅一様(面荷重 × 間隔)より合計・曲げ・せん断が小さくなることがあります(共有辺の矩形例では等価 \( w \) が負担幅一様の約半分)。解析の大梁伝達と同じ分配を検定に使うためです。負担幅一様は小梁の需要を過大評価しうる(安全側になりうる)近似であり、本経路はそれより低い需要を出すことがあります。
小梁の許容曲げ応力度は、鋼材の長期許容値 \( ft = F/1.5 \) です。Fは通常鋼部材と同じ材種・実板厚の選択規則で決めます。既知材種の表のFを保存された降伏応力で上書きしません。
本経路は鋼小梁の検定です。RC等の断面形状の小梁を、鋼の検定へ読み替えません。断面未割当、鋼小梁の材料未割当・参照先不明・鋼材以外の割当、Fの解決に必要な板厚や直接入力強度の不備は、対象と理由を示して実行中の検定全体を停止します。該当小梁だけを「未」として正常完了にはしません。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( w \) | 代表等分布荷重(合計荷重 / スパン) | N/mm |
| \( L \) | 小梁のスパン | mm |
| \( \delta \) | たわみ | mm |
| \( Z \) | 断面係数 | mm³ |
| \( E \) | ヤング係数 | N/mm² |
| \( F \) | 鋼材の基準強度(F 値) | N/mm² |
| \( f_t \) | 鋼材の長期許容曲げ応力度 | N/mm² |
実装参照:sepika_design_jp::floor::design_beam_from_forces(crates/sepika-design-jp/src/floor.rs)が検定し、荷重の重ね合わせと梁の最大曲げ・せん断・たわみは sepika_load::floor::simple_beam_extremes・cantilever_extremes と sepika_load::cascade::solve(crates/sepika-load/src/)が担います。端部支持条件の編集は sepika_edit::SetSecondaryMemberEndSupport(crates/sepika-edit/src/secondary.rs)・床タブの小梁一覧(sepika_app::tables::slabs、crates/sepika-app/src/tables/slabs.rs)・MCP で行います。
床(スラブ)の一方向検定
版があり板厚が正の床板だけを検定します(版 = 断面が割り当たり板厚が正)。
荷重は**床用の面荷重(固定荷重+床用の積載荷重、LoadPurpose::Floor)**を用います。
囲まれた床のうち、矩形の適用条件を満たす床は単純支持相当 \( M = wL^2/8 \)(係数 8)、取り付きは片持ち \( M = wL^2/2 \)(係数 2)です。
取り付きのスパン \( L \) は張り出し量の絶対値の大きい方(\( \max |extent| \))です。台形などで矩形寸法が取れなくても、この \( L \) が正なら検定します。
斜めの平行四辺形などの囲まれた非矩形床は、この一方向版検定の結果を生成しません。
版なし・スパン非正・厚さ 0 は検定しません。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( M \) | 単位幅あたりの設計曲げモーメント | N·mm/mm |
| \( w \) | 床の面荷重 | N/mm² |
| \( L \) | 床のスパン(取り付きでは張り出し量) | mm |
実装参照:sepika_design_jp::floor::design_slab_oneway(crates/sepika-design-jp/src/floor.rs)が算定します。
保有水平耐力計算(二次設計)
本章でいう「二次設計」は、保有水平耐力などをまとめる実務上の章分類です。法令上の計算項目と告示の対応は、次のように分けて示します。
| 計算項目 | 参照 |
|---|---|
| 層間変形角 | 令第82条の2 |
| 保有水平耐力 Qu・必要保有水平耐力 Qun | 令第82条の3 |
| Ds・Fes | 令第82条の3第2号、昭55建告第1792号 |
| Z・Rt・Ai を参照する計算 | 昭55建告第1793号 |
令第82条の3は必要保有水平耐力を \( Q_{un} = D_s \times F_{es} \times Q_{ud} \) として規定し、昭55建告第1792号は Ds / Fes の算出方法を定めます。 このため、条文が規定する保有水平耐力の判定と、告示が定める係数の算出方法を分けて記載します。
層間変形角の上限比較は設定値との参考比較であり、法令適合や1/120の緩和資格を自動判定しません。算定対象と表示の制約は層間変形角を参照してください。
この章の内容
保有水平耐力の判定
建築基準法施行令 第82条の3 に基づき、各層の保有水平耐力 Qu が必要保有水平耐力 Qun を上回るか(\( Q_u \ge Q_{un} = D_s \cdot F_{es} \cdot Q_{ud} \))を判定します。
設計タブの「保有水平耐力(ルート3)」は、現在は採用条件の必要証拠を保持できないため合否を保留します。建物の高さ・規模・構造形式等から計算ルートの適用資格を自動判定せず、各ルートの必要条件を全て確認する機能でもありません。鉄骨造の計算ルートは、適用条件と部材・接合部の安全確認を設計者が別途確認してください。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( Q_u \) | 各層の保有水平耐力 | N |
| \( Q_{un} \) | 各層の必要保有水平耐力 | N |
| \( Q_{ud} \) | 設計用地震層せん断力 | N |
| \( D_s \) | 構造特性係数 | - |
| \( F_{es} \) | 形状係数(\( F_s \cdot F_e \)) | - |
| \( C_0 \) | 標準せん断力係数 | - |
算定式
必要保有水平耐力:
\[ Q_{un} = D_s \cdot F_{es} \cdot Q_{ud} \]
- 保有水平耐力
Quは、保有耐力比較用に明示採用した確定評価点での層切断面力の大きさです。各層のピーク時刻を寄せ集めず、同じ方向・run・step の状態を全層で用います。 - 設計用地震層せん断力
Qud= \( C_0 = 1.0 \) の標準地震層せん断力。地震力の地上部 Ai 分布と地下部の直上せん断力加算を共通に用います。地下震度 K は C0 に比例しないため、通常荷重全体を5倍する計算ではありません。 - 層間変形角は保有耐力比較用の同じ評価点の層間変位から求めます。
剛性率・偏心率を算定できない層がある場合は、理由を表示して Fes と必要保有水平耐力 Qun の算定・合否判定を停止します。 再計算で算定不能になった場合、前回の必要耐力や合否を残しません。レポート CSV にも算定不能の理由を出力します。 入力条件と実際のゼロ値との区別は形状係数 Fesを参照してください。
RC造の計算ルートと適用範囲
設計画面の「保有水平耐力(ルート3)」は、指定した評価点の耐力比較です。建物高さ・構造形式から法定の計算ルートを選択したり、ルート全体の成立を判定したりする機能ではありません。RC造のルート1、ルート2-1、ルート2-2の成立判定は未対応です。一次設計の部材検定、層間変形角、剛性率・偏心率の個別結果だけで、それらのルートへの適合を判断しないでください。
ルート3でも、一次設計、層間変形角、崩壊形、部材・接合部の保証条件を別途確認する必要があります。「RCラーメン」「RC壁式」や「壁式構造」の選択は、建物のルート適用資格や壁式構造の仕様規定への適合を確認する操作ではありません。
連層耐力壁で脚部の浮上り・沈み込みによる回転系の破壊となる場合は、部材種別を定めるため脚部を拘束してDsを算定する取扱いがあります。このときQuも浮上りを拘束した状態で算定できます。拘束の変更と目的別評価点の対応は自動確認しません。連層壁等に対する直交梁の押さえ効果は、部材種別とDsを評価する際にも考慮が必要です。解析モデルでこの効果を評価できることを別途確認してください。
ピロティ形式では、特定階への変形集中と直上の耐力壁を支持する単独柱の変動軸力に注意が必要です。原則としてピロティ階の層崩壊を避ける計画とし、層崩壊等を許容する場合は、その設計法の適用条件、構造特性係数、柱・壁の性能とせん断・軸力の検討を確認してください。現在はピロティ形式の識別、設計方針の選択及びこれらの成立を自動判定しません。Dsを大きく指定しても、必要な部材性能の確認を省略できません。耐力比較のOKだけでピロティ階の安全性を確認したことにはなりません。
出典:『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷、6.4.1–6.4.4 pp.405–419、6.4.4(2)6) pp.430–431、付録1-6.1 pp.793–794。ピロティの設計方針と性能確認はICBA Q&A(2026年3月27日)No.25も参照してください。
実装参照:design_table(crates/sepika-app/src/design_view.rs)と App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)。
目的別の確定評価点
Ds 判定用と保有耐力比較用に、方向、解析実行(run)、入力世代、確定 step、選定理由を指定します。両目的の載荷条件・終了目標・採用 step は異なって構いません。一つの目的の内部では、壁・筋かい・柱梁の負担力、分母の層全体力、ランク判定の応力と機構を同じ状態から採ります。Ds の βu に比較用 Qu を流用しません。評価点未指定のまま、最終点や法定停止点を自動採用することはありません。
設計タブで各目的の step と理由を入力し、「目的にこのrun・stepを採用して保持」で採用します。続く別条件の解析は保持した目的別結果を上書きしません。X/Y 各方向の 2 目的分をプロジェクトに保存し、復元後も同じ点を使います。画面と帳票で、目的、方向、run、入力世代の識別値、解析条件、外力分布の各層累積値、選定理由、解析終了理由を確認できます。選定理由は設計者が確認した条件を記載してください。選択操作だけで法適合や機構形成を保証するものではありません。
DsとQuを採用する状態の条件
『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版、6.2.4 イ) pp.365–370及び6.4.4(2)2)–3) pp.425–427に基づき、採用点では次の条件を別途確認してください。目的別の点を保存できることと、これらの成立は別です。
- Quは全体・部分・局部の崩壊形を考慮します。全層の耐力が必要保有水平耐力を超え、崩壊形に至っていない場合は、確認できた耐力をQuとして用いる取扱いもあります。ただしDs算定で脆性部材を無視した場合は、Qu確認でも同じ部材を無視する必要があります。単なる収束・終了目標到達・数値的特異から採用可能とは判断できません。
- Qu算定の外力分布はAi分布が原則です。Qun分布を用いるには、Ai分布での全体崩壊形、又は部分・局部崩壊時の非崩壊部分について別途全体崩壊形等の条件を確認する必要があります。非崩壊層をQun分布で評価しても、崩壊層はAi分布で評価します。特別な調査研究による扱いは別途確認が必要です。
- RCのDs判定では、全体崩壊形ならその時の応力を用います。部分・局部崩壊形で崩壊していない階は、さらに水平力が作用した場合の崩壊形と応力を別途求めます。解析最終点を無条件に流用できません。余耐力法の利用にも応力比・応力分布等の適用確認が必要であり、自動適用しません。
- せん断破壊するRC耐力壁を含む階は、壁のせん断破壊時がQuの状態となり、その時の各部材の水平せん断力でDsのβuを評価します。Ds用部材種別の判定、非崩壊部分及び急激な耐力低下の防止を併せて確認してください。
現在の保存成果から確認できるのは、目的別評価点と生成入力・方向・確定状態の対応、部材応力、層切断面力と外力の釣合い、同時点の負担率です。これらを確認できても、次の採用条件は証明できないため、自動・手動ランクのどちらでも合否を保留します。対象への該当性が不明な場合も、対象なしと推定しません。
| 採用条件 | 不足する証拠 |
|---|---|
| Ai/Qun外力分布 | Qun分布へ変更する場合の全体崩壊形・非崩壊部分の成立 |
| 全体・部分・局部崩壊形 | 必要な崩壊形の網羅と各耐力の最小値 |
| 非崩壊階の別途Ds応力 | 非崩壊階の識別と、さらに水平力を作用させた別途評価応力 |
| 壁せん断破壊時のβu | 対象壁と破壊状態及びその時の各部材応力の対応 |
| Ds/Quの脆性部材除外整合 | 除外対象、除外後の双方の応力と成立条件 |
| 局部崩壊時の鉛直支持 | 対象と崩壊後の鉛直荷重支持力 |
| 未崩壊の確認済耐力Qu | 利用条件と全層の成立。Qu≥Qunだけでは代替不可 |
| 連層壁脚拘束のDs/Qu対応 | 対象への該当性、Ds時の浮上り・沈み込み拘束とQu時の拘束状態の対応 |
| 直交梁押さえ効果 | 対象への該当性、作用軸力、負担せん断力、部材種別及びDsへの適用 |
| ピロティ設計方針・単独柱変動軸力 | 形式への該当性、層崩壊回避又は許容の方針、単独柱軸力・外力分布・変形集中等の検討 |
| ピロティの性能確認 | 該当性と設計方針に対応する性能確認。Ds割増しでも省略不可 |
目的ごとに一つの解析と確定状態を保持する現在の機能では、非崩壊階ごとに別途評価した応力を保持できません。その他の条件も、現在の機構分類や選定理由の文章から確認済みへ変換しません。確認チェックボックスやキーワードで保留を解除する機能はありません。新しい解析・余耐力法・拘束変更や押さえ効果の近似を自動で追加しません。
設計画面と増分結果画面には不足する全条件の理由を表示し、レポートCSVにも各理由を出力します。前回の採用結果や合否を残しません。評価点の入力・run・方向・確定状態の混合や釣合い不成立がある場合は、その既存検査の理由を先に表示します。CSVの採用保留理由一覧は、これらの成立確認とは独立して出力します。
実装参照:App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)と App::holding_adoption_unavailable_reasons(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding_adoption.rs)。
符号付き層切断面力と釣合い
層の中間高さで構造を切り、上側自由体へ伝わる各物理要素の加力方向成分を一度ずつ合算します。同じ確定状態の内力を用い、絶対値の端力和や、最終変位による弾性応力再計算は使いません。
\[ Q_i = Q_{wall,i}+Q_{brace,i}+Q_{frame,i},\quad \beta_{u,i}=\frac{Q_{wall,i}+Q_{brace,i}}{Q_i} \]
壁面内方向に作用する壁系は壁パネルと鉛直側柱の和です。隣接壁の共有側柱は壁系全体へ一度含め、柱梁系との二重計上や、根拠のない個別壁への按分をしません。直交方向の側柱力は柱梁系です。開口の影響は解析で確定した実内力に含まれるため、合算時に低減係数を再適用しません。仕口パネルの柱節点参照は軸力追従用であり、独立した層水平力として加算しません。
上側の節点へ作用する外力を累積します。支持ばねの内力は上側自由体の外部作用として差し引きます。荷重倍率を λ、参照外力を q、固定外力を f0、支持ばね内力を s とすると、釣合い診断は次式です。
\[ E_i=\sum_{z>z_{cut,i}}(\lambda q+f_0-s),\quad r_i=Q_i-E_i \]
偏心接続を持つ梁の切断は、実材軸と両端の剛体接続腕を合わせた経路で評価します。部材荷重の層内・切断面上側の位置も実材軸で定め、共有解析節点の標高で置き換えません。
残差の許容差は Newton 求解の相対許容差(10⁻⁶)に、実外力ベクトルのノルム(下限 1 N)と節点数の平方根を掛けた値です。基準外力、支持ばね内力、実外力、残差と許容差を層別に表示します。例えば下階 100 kN、上階 50 kN の外力なら切断面力は下層 150 kN、上層 50 kN です。壁系が 90/30 kN を負担すれば、各層 βu は 0.6 です。反転載荷では各力の符号が反転しても同方向の比率は変わりません。
非有限値、内力・履歴欠損、二重計上、識別不一致、釣合い残差超過、ゼロ分母、全体力と反対の群寄与、βu が 0〜1 の範囲外の場合は理由を示して判定を停止します。値をゼロや上下限へ置換しません。残差超過・ゼロ分母・負寄与・βu範囲外で停止した場合も、算定できた群別力・外力・基準外力・支持ばね内力・残差・許容差(N)とβu(無次元)、目的・run・方向・採用stepを診断に表示します。分母がゼロ又は許容差以下ならβuは未定義と表示し、非有限値や履歴欠損に対して未算定値を補いません。切断面上の支持拘束反力を取得できないモデルや、節点力と自由度の対応を確定できない要素は集計対象の適用外です。多層をまたぐ壁・斜め壁など一般配置の網羅的検証は未完了です。
実装参照:sepika_solver::nonlinear::pushover::story_response(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/story_response.rs)と sepika_app::app::App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)。
構造特性係数 \( D_s \) は部材種別と破壊形式・柱脚等の適用条件から層別に定めます(構造特性係数 Ds)。形状係数 \( F_{es} = F_s \cdot F_e \) は剛性率・偏心率から求めます(いずれも加力方向の地震時弾性層間変位に基づきます)。
Qud の入力と適用範囲
令88条3項の必要保有水平耐力用地震力の C0 下限は1.0であり、SEPIKA は1.0を採用します。周期は解析条件で選択した略算式を用い、参考固有値の存在によって周期を変更しません。地域係数・地盤種別は解析条件から採用し、地域根拠と地盤の適用は設計者が確認してください。出典・版・条項・適用条件は地震力の出典に示します。
精算周期、PH 指定震度、指定 Ci の副剛床を含む Qud は、必要な適用条件が未検証なので理由付きで未対応とします。指定 Ci の副剛床重量を除いた主系統のせん断力だけで、層全体の必要耐力が満たされるとは判定しません。固有値解析と参考周期の取得は利用できます。
実装参照:App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)が design_seismic_period と seismic_distribution_for_model を用いて Qud を算定します。
解析結果の有効性
目的別に保持した増分解析は、現在モデルと各目的の保存済み解析条件に生成入力が一致する結果だけを採用します。自動地震荷重はその目的の条件で照合し、手入力荷重の変更は無効化します。現在の解析条件が別目的へ変わったことだけでは保持した点を無効にしません。地震静的(EX/EY)は現在のモデル・関連する設定と生成入力が一致する結果を採用します。画面で別の静的荷重ケースを選択していても、判定には対象方向の地震静的結果を使います。X 方向の判定へ Y 方向の増分結果を代用することはありません。
材料強度・配筋・断面・壁属性・荷重と組合せ・階・計算設定を変更した場合は、必要な解析を再実行してください。静的解析や時刻歴だけを再実行しても、残っている旧増分結果は利用できません。X/Y の片方向だけの再解析でも、他方向の旧結果は有効になりません。剛性・偏心率の精算で使用する地震静的と長期組合せ、対象の結果にも同じ照合を行います。使用する結果の不一致や入力識別情報の欠落、方向別結果の不足がある場合は、旧合否を無効にし、理由と再解析対象を表示します。
略算周期を用いる標準結果は、参考固有値の更新だけでは再解析を必要としません。精算周期を選択している場合は、上記の適用制限により標準 Qud を算定できません。
解析実行中にモデル・計算設定が変わった場合、変更前の入力から届いた結果は破棄します。入力識別情報がない保存結果も、再解析するまで判定には利用できません。表示ステップ・カメラ・ハイライト・通り芯の表示専用変更や、判定に無関係な時刻歴の記録間隔変更は再解析を必要としません。
実装参照:sepika_app::app::App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)と app::result_validity(crates/sepika-app/src/app/result_validity.rs)が結果入力の照合を行います。設計タブと増分結果タブは同じ判定入口を使用します。
出典
- 国土交通省公開『建築基準法施行令の一部改正(構造計算関係)について』、住指発第96号、昭和56年5月1日、HTML(頁なし)、別記3付則(2)2)i)表3-1脚注・3)i)表3-6脚注。壁又は筋かいの分担保有水平耐力/階全体の定義。歴史的通知であり、現行法の全要件の確認資料ではありません。原文
- Daniel W. Baker/William Haynes『Engineering Statics: Open and Interactive』、2026年9月26日版、§4.7 Statically Equivalent Systems、HTML(頁なし)。同じ自由体の力・モーメント収支。本文
目的別停止条件、Ds 表の現行法との全面照合、実験による妥当性確認は本節の釣合い検証からは導けません。
自動ランク用の部材群耐力入力は自動判定時に正値・有限・重複なしを検査します。手動ランクへ切り替えた場合、その未使用入力の欠損やゼロ値は候補ランク計算を妨げません。手動の指定ランクと出典状態、目的別採用点と釣合いの検査は引き続き適用します。
手動ランクでも、Dsの候補計算は明示Ds点の壁・筋かい負担率βuを用います。指定ランクや機構分類で部材・接合部・柱脚の不足条件を補わず、Ds判定保留とします。採用点の選択自体が保証条件の成立を意味するものではありません。
RC耐力壁の候補種別では、採用Ds点の符号付きQ、壁厚、柱心間距離、Fc、応力度比、内法寸法、左右の柱断面積・最小径・適格性を用います。ただしRCの破壊形式・非ヒンジ柱・接合部等の確認情報が不足するため、現在はDs・必要保有水平耐力・合否を理由付きで保留します。自動・手動ランクで共通の制限です。式と寸法条件は耐力壁の種別を参照してください。適用外・不正入力は対象IDと理由を表示し、自動ランクを算定しません。
SRC造の計算ルートと適用範囲
SRC造のルート1・2-1・2-2の適用資格、壁柱量、ルート別保証せん断の成立判定は未対応です。ルート3の耐力比較は、一次設計・層間変形角・部材性能・採用状態を含む法適合全体の判定ではありません。
SRC柱・壁の部材種別は算定できますが、設計画面の構造形式はRCラーメン・RC壁式・Sラーメン・Sブレースで、SRC用Ds表の選択は未対応です。SRC断面や階の主要材種を入力してもSRC用Dsへ自動で切り替わりません。Sラーメン等の指定をSRCの代用として採用しないでください。例えばSRC壁付き架構で壁群A・柱梁群A、βu=0.5のDs下限は0.30ですが、S表の同じ入力では0.25となり、必要耐力を過小評価します。RC表を選べばSRCの適用条件を満たす、という取扱いもありません。
X/Yで構造が異なる場合は方向ごとの規定、高さ方向で異なる場合は原則同一ルートと構造・階ごとの必要耐力、部材ごとに異なる場合は全体系の耐力とヒンジ部材・接合部の条件を確認する必要があります。本プログラムはこれらの併用条件を自動確認しません。全体のRC/S選択や一つのDsだけで併用構造への適合を判断しないでください。
根拠:『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷、6.5.1–6.5.4 pp.436–444、6.9.1–6.9.4 pp.482–484。個別部材の分類と、階・方向・全建物への適用成立を区別します。
構造特性係数 Ds
昭和55年建設省告示第1792号に基づき定める各階の構造特性係数 Ds は、次の 3 つの軸で決まります。
- 柱及びはりの部材群としての種別(A〜D)
- 耐力壁(RC)/筋かい(S)の部材群としての種別(A〜C)
- \( \beta_u \) — 耐力壁・筋かいの水平耐力の和を保有水平耐力で除した数値
部材群としての種別は、各部材の種別(RC は FA〜FD・WA〜WD、S は幅厚比区分 FA〜FD と筋かいの BA〜BC、SRC は判定比 \( N/N_0 \)・\( {}_sM_0/M_0 \) による FA〜FD と耐震壁の WA/WC)を耐力比 \( \gamma_A, \gamma_C \) で集計して定めます。個々の部材種別の判定条件、部材群としての種別の判定式、および Ds の値表は 部材ランク に示します。
SRC柱・壁の部材種別の算定は、SRC用Ds表を採用できることを意味しません。現在のRC/S選択とSRCへの制限はSRC造の計算ルートと適用範囲を参照してください。
Ds 用の部材応力・機構・βu は、同じ目的別確定評価点から採ります。保有耐力比較用の Qu や他 step の壁力を混合しません。群の耐力重みは同時点の負担力と区別します。採用点と釣合い診断は 保有水平耐力の判定 を参照してください。
本対応域のRC壁のせん断耐力には、その増分runで実際に採用した正負Quを使います。壁脚内力と初期耐力の入力一致・不足診断を適用し、Modelだけから耐力を再計算しません。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( \beta_u \) | 耐力壁・筋かいの水平耐力の和を保有水平耐力で除した数値 | - |
| \( \gamma_A \) | 種別 A の部材(筋かい BA・柱 FA)の耐力の和を全耐力で除した耐力比 | - |
| \( \gamma_C \) | 種別 C の部材(筋かい BC・柱 FC)についての耐力比 | - |
| \( N/N_0 \) | SRC 柱の軸力比 | - |
| \( {}_sM_0/M_0 \) | SRC 柱の鉄骨曲げ耐力比 | - |
代表値(耐力壁・筋かいがない純ラーメンの場合)
| 柱及びはりの部材群としての種別 | A | B | C | D |
|---|---|---|---|---|
| RC 造 | 0.30 | 0.35 | 0.40 | 0.45 |
| S 造 | 0.25 | 0.30 | 0.35 | 0.40 |
耐力壁・筋かいを有する架構では \( \beta_u \) と壁・筋かいの部材群種別に応じて Ds が増大します(各階の構造特性係数 Ds(RC 造)・各階の構造特性係数 Ds(S 造) の表)。
崩壊機構の反映
解析上の全体崩壊・層崩壊・機構未形成の分類だけでは、Dsの適用条件を確定しません。層崩壊の層を一律に一段階悪化する補正は適用しません。
現在はRCの崩壊時破壊形式、非ヒンジ柱の該当性と接続梁種別、接合部で塑性ヒンジ又は脆性破壊を生じる部材の種別、S柱脚の形式・伸び能力・保有耐力接合を確定する入力が不足しています。対象の柱・梁・接合節点と不足条件を示し、Ds判定を保留して必要保有水平耐力・合否を算定不能とします。自動ランクと手動ランクのどちらでも同じ制限を適用し、FDの手動指定でも保証条件の確認に代用しません。設計画面・増分結果画面・CSVに不足理由を表示します。一般のRC/Sラーメンもこの制限の対象です。
接続梁の確認対象は加力方向ごとに示し、計算方向に直交する梁を除きます。接合部の表示部材は確認対象候補であり、全てがヒンジ・脆性部材であるとの判定ではありません。S柱は柱脚の有無・形式から未確認とし、露出柱脚と決め付けません。S柱とRC梁を含む架構では層外のRC梁も確認対象とし、基礎梁用途や限定換算の適用条件を未確認として示します。
ここでの「部分崩壊形」は機構未形成を表すプログラム上の分類です。特定階が崩壊形に達した状態を指す告示上の部分崩壊形とは区別してください。機構分類、解析終了、評価点の選択だけでは規準上の採用状態の成立を確認できません。Ds・Quの採用状態の確認も別途必要です。
崩壊機構に関する適用条件と確認範囲
確認根拠は『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版(2026年2月11日)、6.3.4(2) pp.397–400・403、付録1-2.6 付図1.2-25 p.670、6.4.4(2) pp.420・422–427 です。以下は条件の要約です。現在はこれらを自動で成立と判定する情報がなく、対象条件を理由付きで保留します。
| 対象 | 規準上の条件と取扱い | 現在の利用上の制約 |
|---|---|---|
| 通常RCの層崩壊 | Dsを算定する階の崩壊時応力と破壊形式で部材種別を定めます。非ヒンジ柱は取り付く梁(計算方向と直交する方向に取り付く梁を除く)の種別を用います。異種別接合は、接合部で接合される部材のうち、崩壊時に塑性ヒンジ又は脆性破壊を生じる部材に限って最低種別を用います | 機構分類から層全体を一段階悪化する方式では代替できません。非ヒンジ柱・接合部・脆性破壊の個別確認が必要です |
| Sの非ヒンジ柱 | 接続梁及び塑性ヒンジを形成する接合部材の種別に応じて柱種別を修正します | RC基礎梁の換算や露出柱脚の措置とは別の確認です |
| 塑性化する露出柱脚 | アンカーボルトに伸び能力があり、保有耐力接合を満たさない場合は、履歴のスリップ化を考慮して1階Dsを0.05程度割増すなどの措置が必要です。保有耐力接合を満たす場合は柱ヒンジを仮定し、Dsは上部構造で決定します | 柱脚形式・伸び能力・保有耐力接合の成立を機構分類だけで確認できません。柱梁群Dの場合は付図の割増対象外です |
| 伸び能力のないアンカーボルトの露出柱脚 | 保有耐力接合を満たす設計が基本です。満たさない場合は柱梁群Dに対応するDsで1階Quを確認します | 一段階悪化や一律0.05加算へ置換できません。認定柱脚は認定条件の確認も必要です |
| S造のRC基礎梁に塑性ヒンジが生じる場合 | 同書6.9.4 p.484はヒンジ部材の構造とランクに重点を置く取扱いを示します | RC種別をS種別へ一段階下げて換算する直接規定は、今回確認した同書の範囲では未確認です。限定した地域取扱いを一般条件として採用せず、適用条件とFDの扱いを別途確認してください |
柱脚・接合部・基礎梁や破壊形式の情報不足を、一律補正・無補正・手動ランクで埋めません。保留は規準不適合の確定とも区別してください。
実装参照:sepika_design_jp::secondary::ds_group::{ds_rc, ds_steel} が告示の Ds 表を引き、sepika_design_jp::secondary::ds_group::member_group が耐力比 \( \gamma_A, \gamma_C \) から部材群としての種別を判定します。条件未確認時の保留は sepika_app::app::App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)と条件判定(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding_conditions.rs)が担います。
部材ランク(FA〜FD)
昭和55年建設省告示第1792号と学会規準(RC 靭性、S 幅厚比)に基づき、部材ランク FA〜FD を、RC はせん断余裕度で、S は幅厚比で判定します。
算定式
- RC 部材種別: 下記のRC 部材の種別の多変数表(\( h_0/D \)・\( \sigma_0/F_c \)・\( p_t \)・\( \tau_u/F_c \))で判定する。
- S 部材種別: 下記の鋼材の幅厚比種別の幅厚比限界値表(部材種別・断面・部位・鋼種別)で判定する。
- SRC 部材種別: 下記のSRC 部材の種別の判定比(\( N/N_0 \)・\( {}_sM_0/M_0 \))と破壊モードの表で判定する。
実装参照:sepika_design_jp::secondary::ds_group が告示表による部材種別・部材群種別・Ds を、sepika_design_jp::secondary::width_thickness が幅厚比を算定します。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( h_0/D \) | 柱の内法高さと断面せいの比 | - |
| \( \sigma_0/F_c \) | 柱の軸方向応力度とコンクリート設計基準強度の比 | - |
| \( p_t \) | 引張鉄筋比 | % |
| \( \tau_u/F_c \) | 平均せん断応力度とコンクリート設計基準強度の比 | - |
| \( N/N_0 \) | SRC 柱の軸力比 | - |
| \( {}_sM_0/M_0 \) | SRC 柱の鉄骨曲げ耐力比 | - |
| \( Q_{su}, Q_{mu} \) | 終局せん断耐力・曲げ終局時せん断力 | N |
| \( \gamma_A, \gamma_C \) | 部材群の耐力比(A 種・C 種) | - |
| \( \beta_u \) | 耐力壁・筋かいの水平耐力の和を保有水平耐力で除した数値 | - |
| \( r_2 \) | 耐力用の開口低減率 | - |
| \( Q_u \) | 耐震壁の終局せん断強度 | N |
RC 部材の種別
柱及びはりの種別
いずれも「せん断破壊、付着割裂破壊及び圧縮破壊その他の構造耐力上支障のある急激な耐力の低下のおそれのある破壊を生じないこと」を満たすことが前提で、これを満たさない場合は FD とします。
| 種別 | 柱 \( h_0/D \) | 柱 \( \sigma_0/F_c \) | 柱 \( p_t \) | 柱 \( \tau_u/F_c \) | はり \( \tau_u/F_c \) |
|---|---|---|---|---|---|
| FA | 2.5 以上 | 0.35 以下 | 0.8 以下 | 0.1 以下 | 0.15 以下 |
| FB | 2.0 以上 | 0.45 以下 | 1.0 以下 | 0.125 以下 | 0.2 以下 |
| FC | — | 0.55 以下 | — | 0.15 以下 | — |
| FD | FA, FB 又は FC のいずれにも該当しない場合 |
- \( h_0 \): 柱の内法高さ、\( D \): 加力方向の柱の断面せい
- \( \sigma_0 \): Ds 算定時に柱の断面に生じる軸方向応力度
- \( p_t \): 引張鉄筋比 [%]
- \( F_c \): コンクリートの設計基準強度
- \( \tau_u \): Ds 算定時に柱、梁の断面に生じる平均せん断応力度
本プログラムは \( \sigma_0, \tau_u \) を Ds 判定用に明示採用した確定 step の部材応答から算定し、急激な耐力低下のおそれのある破壊はせん断先行(\( Q_{su} < Q_{mu} \))で判定します。評価点の指定だけでは崩壊機構の成立を保証しません。採用点における機構を確認します。
耐力壁の種別
「せん断破壊、その他の構造耐力上支障のある急激な耐力の低下のおそれのある破壊を生じないこと」が前提です。
| 種別 | 壁式構造以外の構造の耐力壁 \( \tau_u/F_c \) | 壁式構造の耐力壁 \( \tau_u/F_c \) |
|---|---|---|
| WA | 0.20 以下 | 0.1 以下 |
| WB | 0.25 以下 | 0.125 以下 |
| WC | — | 0.15 以下 |
| WD | WA, WB, WC のいずれにも該当しない場合 |
Ds 判定時の平均せん断応力度
Ds 判定用に明示採用した確定 step の壁単体局所面内せん断力を \(Q_{Ds}\) として、次式を用います。
\[ \tau_u = \frac{|Q_{Ds}|}{t\cdot l_{cc}}, \qquad \frac{\tau_u}{F_c}=\frac{|Q_{Ds}|}{t\cdot l_{cc}\cdot F_c} \]
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \(Q_{Ds}\) | 同じ Ds 評価点の壁単体局所面内せん断力(符号付き) | N |
| \(t\) | 壁板の実厚 | mm |
| \(l_{cc}\) | 左右の側柱の中心間距離 | mm |
| \(F_c\) | 壁コンクリートの設計基準強度 | N/mm² |
| \(\tau_u\) | Ds 判定時の平均せん断応力度 | N/mm² |
\(l_{cc}\) は壁板の内法長さと区別します。分母は壁厚と側柱中心間距離の積であり、側柱の全断面積や耐力用開口低減率 \(r_2\) を加えません。係数1.2も用いません。保有耐力比較用の \(Q_u\) や別 step の最大せん断力を \(Q_{Ds}\) に代用しません。
両側柱の寸法と適用表
壁板の実内法長さを \(l_{clear}\)、実内法高さを \(h_{clear}\) とし、\(s=\min(l_{clear},h_{clear})\) [mm] とします。左右それぞれの側柱について、実断面積 \(A_c\) [mm²] と最小径 \(d_{min}\) [mm] が次のすべてを満たす場合を寸法上の適格とします。
\[ A_c\ge\frac{st}{2},\qquad d_{min}\ge\sqrt{\frac{st}{3}},\qquad d_{min}\ge 2t \]
いずれか一方の側柱でも不足する場合は、上表の「壁式構造」の列を用います。不足の判定は厳密な「未満」であり、等号は適格です。設計タブの「壁式構造」チェックを入れた場合も壁式構造の列を用います。チェックの既定はオフですが、オフだけでは通常の列に決まりません。両側の寸法条件を満たす場合に通常の列を用います。階の構造種別からの自動切替は行いません。表の切替によって上式の \(\tau_u\) は変わりません。
矩形RC柱は実幅と実せいの積を \(A_c\)、小さい方を最小径とします。円形RC柱は実径から断面積と最小径を求めます。内法寸法は周辺の実支持材のフェース間から求め、柱心間距離や解析用剛域長で置換しません。
例えば、柱心間3000 mm、壁厚200 mm、内法2600×1500 mm、左右400 mm角、\(F_c=24\) N/mm²では、\(s=1500\) mm、各柱の断面積160000 mm²は必要150000 mm²以上、最小径400 mmは必要316.227766… mm以上で、\(2t=400\) mmの等号も満たします。非せん断破壊で \(Q_{Ds}=3.0\times10^6\) Nなら、\(\tau_u=5\) N/mm²、\(\tau_u/F_c=5/24=0.208333333\ldots\) となり通常表のWBです。内法高さだけを2400 mmにすると面積条件が不足し、同じ応力度比のまま壁式表を用います。
適用範囲と出典
自動判定は、無開口・矩形・同一鉛直面で、両側に非共有のRC柱を持つ単独RC壁を対象とします。壁版と壁単体応答の負担範囲、実支持材、左右の柱断面・材料を一意に確認できることが必要です。袖壁・開口付き壁、連スパンや直交する壁との共有側柱を含む壁群は対象外です。壁版の分割や支持材の分割等で対応が不明な場合も推定で受理しません。
壁厚・柱心間距離・内法寸法・柱断面・材料強度は正の有限値、応答Qは符号付き有限値を要求します。未対応・不明・不正のときは対象IDと理由を示して自動判定を停止し、0・WA・合格・指定ランクで補いません。手動判定を利用者が明示選択した場合に限り、設計タブの指定ランクを使用します。
出典は日本建築防災協会『令和5年度 構造設計者向け留意事項作成等事業 報告書』(2024年3月)、本文44頁/PDF46頁の、2015年版『建築物の構造関係技術基準解説書』393頁「②鉄筋コンクリート造耐力壁の靱性と破壊形式 c)」の公開引用です。平均せん断応力度の壁厚・側柱中心間距離による定義と、側柱断面積・最小径による表切替条件を採用します。この引用頁の確認は原書全体の照合や2020/2025年版との同一性を意味しません。別資料の \(1.2|Q|/\Sigma A\) による比較方式は本判定に用いません。
壁応答には、壁単体の局所面内せん断力 \(Q_w\) と加力方向への符号付き寄与 \(Q_{dir}\) を別々に記録します。定義・合成基準点・入力表と一次資料は壁単体の確定ステップ応答を参照してください。局所正負別 \(Q_u[+,-]\) の選択には \(Q_w\) の符号を用います。下辺a/bの反転では局所符号と耐力の張力側対応が一緒に反転します。
局所壁ランクの自動判定には、Ds 判定用に明示採用した同じ確定 step の \(|Q_w|\) を既存式へ渡します。層の βu は、その Ds 評価点での符号付き層切断面力から算定します。壁系の分子は面内壁パネルと切断面をまたぐ鉛直側柱の寄与、分母は同じ層・方向・run・入力世代・step の全体系の寄与です。共有側柱は壁系全体へ一度だけ計上し、柱梁側へ二重計上しません。境界梁を無条件に足すことも、局所 \(|Q_{dir}|\) を壁の層負担力として加算することもありません。局所壁応力の判定と、壁系全体の層力・βu の評価を区別します。層外力との釣合い、反転、開口・共有側柱などの独立回帰を検証していますが、多層をまたぐ壁や斜め壁など一般配置の網羅的 Validation は未完了です。
目的別に保持した解析条件と現在のモデル・材料・実荷重から確認した入力識別が一致しない結果、壁専用の確定履歴が未記録の結果、壁幾何の適用外、非有限な内力、上下力・モーメントの釣合い不成立は自動判定を拒否します。材料せん断ひずみと壁の線材用イベントは未提供であり、イベントなしを「塑性化なし」と読むことはできません。実測・原典例題による壁ランクのValidationは未完了です。
増分解析の壁要素は、面内せん断を終局せん断強度 \( Q_u \) で頭打ちにする弾完全塑性としてモデル化します。 Ds 判定用に明示採用した確定 step の局所面内せん断力の絶対値が \( Q_u \) の 99 % 以上(\( |Q_w| \ge 0.99\, Q_u \))に達したときは、せん断が頭打ちに達したとみなし、種別を WD とします。 数値誤差を見込んで 100 % ではなく 99 % で切るため、頭打ちの直前で WA〜WC に残ることを避けます。 \( Q_u \) が0以下・非有限で算定できないときは、自動判定をエラーとします。未対応や不正な耐力を0として判定しません。 終局せん断強度 \(Q_u\) の算定で用いる開口低減率 \(r_2\) は、Ds 平均せん断応力度の分母とは別です(壁エレメントモデル)。
実装参照:sepika_design_jp::secondary::ds_group(crates/sepika-design-jp/src/secondary/ds_group.rs)の rc_wall_tau_over_fc・rc_wall_side_column_eligible・rc_wall_type と、App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)。
鋼材の幅厚比種別
鉄骨部材の種別は、板要素の幅厚比を限界値と比較して定めます(技術基準解説書「鋼材の幅厚比種別等」)。
幅厚比の計算方法
| 断面 | 部位 | 幅厚比 |
|---|---|---|
| H 形鋼 | フランジ | \( b/t_f \)(\( b \) はフランジ半幅 \( = B/2 \)) |
| H 形鋼 | ウェブ | \( (D - 2t_f)/t_w \)(内法せい) |
| 角形鋼管 | (径厚比) | \( B/t \)(全せい。内法ではない) |
| 円形鋼管 | (径厚比) | \( D/t \)(外径) |
柱及びはりの種別
\( F \) は平成12年建設省告示第2464号第1に規定する基準強度 [N/mm²] です。
| 部材 | 断面 | 部位 | FA | FB | FC | FD |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 柱 | H 形断面 | フランジ | \( 9.5\sqrt{235/F} \) | \( 12\sqrt{235/F} \) | \( 15.5\sqrt{235/F} \) | 左記以外 |
| 柱 | H 形断面 | ウェブ | \( 43\sqrt{235/F} \) | \( 45\sqrt{235/F} \) | \( 48\sqrt{235/F} \) | 左記以外 |
| 柱 | 角形断面 | — | \( 33\sqrt{235/F} \) | \( 37\sqrt{235/F} \) | \( 48\sqrt{235/F} \) | 左記以外 |
| 柱 | 円形断面 | — | \( 50(235/F) \) | \( 70(235/F) \) | \( 100(235/F) \) | 左記以外 |
| はり | H 形断面 | フランジ | \( 9\sqrt{235/F} \) | \( 11\sqrt{235/F} \) | \( 15.5\sqrt{235/F} \) | 左記以外 |
| はり | H 形断面 | ウェブ | \( 60\sqrt{235/F} \) | \( 65\sqrt{235/F} \) | \( 71\sqrt{235/F} \) | 左記以外 |
備考
- この表の規定は、基準強度が 205 N/mm² 以上で 375 N/mm² 以下である鋼材に限る。
- 基準強度が 235 N/mm² 及び 325 N/mm² 以外の炭素鋼にあっては、H 形断面及び角形断面では \( \sqrt{235/F} \) を、円形断面では \( 235/F \) を、400N 級鋼の幅厚比に乗じた値とする。
H 形断面はフランジ・ウェブの両方を判定し、不利な方(FD 寄り) を部材の種別として採用します。 角形鋼管・円形鋼管は同表に「はり」の行がないため、柱の行を準用します。
幅厚比表に行のない形状(溝形・T形・山形等)は、規範的根拠のない仮のしきい値で 自動判定することを避けるため自動判定の対象外とし、当該部材はランク未判定とします。層切断面の必須構成員のランクが未判定なら自動判定を停止し、手動ランクへ暗黙に切り替えません。利用者が手動判定を明示選択する必要があります。
角形鋼管の鋼種別限界値
冷間成形角形鋼管(BCR・BCP)及び一般構造用角形鋼管(STKR)は、鋼種ごとの限界値を用います。
| 鋼種 | FA | FB | FC | FD |
|---|---|---|---|---|
| STKR400 / BCP235 | 33 | 37 | 48 | 左記以外 |
| STKR490 / BCP325 | 27 | 32 | 41 | 左記以外 |
| BCR295 | 30 | 34 | 43 | 左記以外 |
筋かいの種別
筋かいの種別判定に用いるFも、通常鋼部材と同じ材種・実板厚の選択規則に従います。既知材種の表のFを保存された降伏応力で上書きせず、材料・必要厚・直接入力強度の不備を既定値で補いません。
| 有効細長比 \( \lambda \) | 筋かいの種別 | |
|---|---|---|
| (一) | \( \lambda \le 495/\sqrt{F} \) | BA |
| (二) | \( 495/\sqrt{F} < \lambda \le 890/\sqrt{F} \) 又は \( 1980/\sqrt{F} \le \lambda \) | BB |
| (三) | \( 890/\sqrt{F} < \lambda < 1980/\sqrt{F} \) | BC |
実装参照:sepika_design_jp::secondary::width_thickness::s_member_rank_by_kihon(crates/sepika-design-jp/src/secondary/width_thickness/member_rank.rs)が幅厚比限界値による柱・はりの種別(角形鋼管の鋼種別限界値を含む)を判定し、筋かいは sepika_design_jp::secondary::ds_group::steel_brace_type が有効細長比から判定します。準備計算に表示する代表幅厚比は sepika_design_jp::secondary::width_thickness::max_width_thickness(crates/sepika-design-jp/src/secondary/width_thickness/ratio.rs)が形状寸法から簡易に算定し、角形鋼管は内法寸法、円形鋼管は対象外です。
SRC 部材の種別
SRC 柱の種別
鉄骨鉄筋コンクリート造の柱は、軸力比 \( N/N_0 \)・鉄骨曲げ耐力比 \( {}_sM_0/M_0 \) と破壊モードで種別を定めます(2025年版技術基準解説書、第2版第1刷、6.5.4(2) p.442、告示第1792号第5一)。
| 破壊モード | \( N/N_0 \le 0.3 \) かつ \( {}_sM_0/M_0 \ge 0.4 \) | \( N/N_0 \le 0.3 \) かつ \( {}_sM_0/M_0 < 0.4 \) | \( 0.3 < N/N_0 \le 0.4 \) かつ \( {}_sM_0/M_0 \ge 0.4 \) | \( 0.3 < N/N_0 \le 0.4 \) かつ \( {}_sM_0/M_0 < 0.4 \) | \( N/N_0 > 0.4 \) |
|---|---|---|---|---|---|
| 曲げ破壊 | FA | FB | FB | FC | FD |
| せん断破壊 | FB | FC | FC | FD | FD |
- \( N \): Ds 判定用に明示採用した確定 step に柱に生じる軸方向力(圧縮を正とし、引張の場合は 0 として扱う)
- \( N_0 \): SRC 断面の圧縮耐力
- \( {}_sM_0 \): 内蔵鉄骨の曲げ耐力
- \( M_0 \): 軸力 0 とした SRC 断面の曲げ耐力
- 破壊モード: 増分解析でせん断降伏イベントが記録された部材をせん断破壊、それ以外を曲げ破壊とする
評価点の指定だけでは崩壊機構の成立を保証しません。採用点における機構を確認します。耐力は累加による以下の略算で評価します。分類表との一致だけでは、略算の適用性や安全性は保証されません。
- \( N_0 = {}_cA_c \cdot F_c + {}_sA \cdot {}_sF + a_r \cdot \sigma_y \)(コンクリートは鉄骨・主筋を控除した正味断面積 \( {}_cA_c \)、\( a_r \) は主筋全断面積)
- \( {}_sM_0 = {}_sZ_p \cdot {}_sF \)(内蔵 H 形鋼の強軸全塑性断面係数 \( {}_sZ_p = B \cdot t_f (H - t_f) + t_w (H - 2t_f)^2 / 4 \))
- \( M_0 = {}_sM_0 + {}_rM_0 \)(\( {}_rM_0 = 0.9 \, a_t \, \sigma_y \, d_e \)。\( a_t \) は引張側主筋量、\( d_e = D - d_t \) は有効せい)
引張縁から主筋群重心までの距離 \( d_t \) は、1 段配筋では \( \text{かぶり} + \text{せん断補強筋径} + \text{主筋径}/2 \) です。段数・段別本数で与える配筋の多段配筋(2 段以上)では、段間のあき(主筋径の 1.5 倍と 25 mm の大きい方)を考慮した多段重心位置とし、RC 断面検定の引張有効せいと同じ規則によります。断面中心対称な実配筋では引張側最外段の \( \text{かぶり} + \text{帯筋径} + \text{主筋径}/2 \) を \( d_t \) とし、\( a_t \) は同最外段の本数分の主筋量とします。
既定値:内蔵鉄骨の基準強度 \( {}_sF \) は断面の内蔵鉄骨材料の名称から板厚区分(フランジ厚)込みで解決し、解決できない場合は 235 N/mm²(400N 級鋼相当)とします。主筋の降伏強度 \( \sigma_y \) は断面の主筋材料の \( f_y \) から解決します。判定対象は SRC 矩形断面の柱で、SRC 梁は表に規定がないため自動ランク判定の対象外とします。層切断面の必須構成員が未判定なら自動判定を停止し、手動判定の指定ランクへ暗黙に切り替えません。SRC 矩形柱で Fc 未設定または 0 以下・増分解析応答なし・主筋降伏強度を解決できない・ランク判定比を算定できない場合はフォールバックせず部材 ID 付きエラーとします。
柱の分類表は、柱・はりの大部分がSRC造の階を対象とします。靭性を期待する柱の内蔵鉄骨は充腹形又はラチス形とし、格子形を用いません。非埋込み柱脚に曲げ降伏が生じる柱はRC柱としてDsを定める必要があります(同書6.5.4(2) p.444)。本プログラムはこれらの適用成立や柱脚条件によるRC扱いを自動確認しません。
SRC 耐震壁の種別
側柱(壁と両端の節点を共有する鉛直部材)に SRC 造の柱がある耐震壁は、\( \tau_u/F_c \) の表によらず破壊モードで種別を定めます。
| 破壊モード | 種別 |
|---|---|
| せん断破壊 | WC |
| それ以外 | WA |
破壊モードは、Ds 判定用に明示採用した確定 step に記録された壁専用応答の局所面内せん断力 \( Q_w \) と、その符号に対応する正負別終局せん断耐力 \( Q_u \) を用い、\( |Q_w| \ge 0.99 Q_u \) をせん断破壊と判定します。加力方向への射影値 \( Q_{dir} \) はこの局所判定に用いません。評価点の指定だけでは崩壊機構の成立を保証しません。採用点における機構を確認します。この0.99倍による同定だけでは、原典が求める崩壊形時の実際の破壊状況を確認したことにはなりません。閾値未到達だけで非せん断破壊と判断しないでください。壁専用応答・生成入力の識別が未記録または不正な場合や、対応する \( Q_u \) が未算定・非有限・0 以下の場合は、層の選択ランクへフォールバックせずエラーとします。
実装参照:sepika_design_jp::secondary::src_rank が SRC 柱の種別・判定比・SRC 耐震壁の種別を算定します。
部材群としての種別
層の Ds は個々の部材ではなく、部材群としての種別(A・B・C)で定めます。
| 部材の耐力の場合 | 部材群としての種別 | |
|---|---|---|
| (一) | \( \gamma_A \ge 0.5 \) かつ \( \gamma_C \le 0.2 \) | A |
| (二) | \( \gamma_C < 0.5 \)(部材群としての種別が A の場合を除く) | B |
| (三) | \( \gamma_C \ge 0.5 \) | C |
- \( \gamma_A \): 筋かいの部材群の種別を定める場合は、種別 BA である筋かいの耐力の和をすべての筋かいの水平耐力の和で除した数値。柱及びはりの部材群の種別を定める場合は、種別 FA である柱の耐力の和を種別 FD である柱を除くすべての柱の水平耐力の和で除した数値。
- \( \gamma_C \): 同様に、種別 BC である筋かい/種別 FC である柱について求めた数値。
実装参照:sepika_design_jp::secondary::ds_group::member_group が耐力比 \( \gamma_A, \gamma_C \) から判定します。
各階の構造特性係数 Ds(RC 造)
\( \beta_u \) は耐力壁の水平耐力の和を保有水平耐力の数値で除した数値です。
| 耐力壁の部材群としての種別 | 条件 | 柱及びはりの部材群としての種別 A | B | C | D |
|---|---|---|---|---|---|
| A | \( 0 < \beta_u \le 0.3 \) | 0.3 | 0.35 | 0.4 | 0.45 |
| A | \( 0.3 < \beta_u \le 0.7 \) | 0.35 | 0.4 | 0.45 | 0.5 |
| A | \( \beta_u > 0.7 \) | 0.4 | 0.45 | 0.45 | 0.55 |
| B | \( 0 < \beta_u \le 0.3 \) | 0.35 | 0.35 | 0.4 | 0.45 |
| B | \( 0.3 < \beta_u \le 0.7 \) | 0.4 | 0.4 | 0.45 | 0.5 |
| B | \( \beta_u > 0.7 \) | 0.45 | 0.45 | 0.5 | 0.55 |
| C | \( 0 < \beta_u \le 0.3 \) | 0.35 | 0.35 | 0.4 | 0.45 |
| C | \( 0.3 < \beta_u \le 0.7 \) | 0.4 | 0.45 | 0.45 | 0.5 |
| C | \( \beta_u > 0.7 \) | 0.5 | 0.5 | 0.5 | 0.55 |
| D | \( 0 < \beta_u \le 0.3 \) | 0.4 | 0.4 | 0.45 | 0.45 |
| D | \( 0.3 < \beta_u \le 0.7 \) | 0.45 | 0.5 | 0.5 | 0.5 |
| D | \( \beta_u > 0.7 \) | 0.55 | 0.55 | 0.55 | 0.55 |
耐力壁がない(\( \beta_u = 0 \))純ラーメンの場合は 0.3 / 0.35 / 0.4 / 0.45 とします。
実装参照:sepika_design_jp::secondary::ds_group::ds_rc が告示の Ds 表を引きます。
各階の構造特性係数 Ds(S 造)
\( \beta_u \) は筋かい(耐力壁を含む)の水平耐力の和を保有水平耐力で除した数値です。
| 筋かいの部材群としての種別 | 条件 | 柱及びはりの部材群としての種別 A | B | C | D |
|---|---|---|---|---|---|
| A 又は \( \beta_u = 0 \) | — | 0.25 | 0.3 | 0.35 | 0.4 |
| B | \( 0 < \beta_u \le 0.3 \) | 0.25 | 0.3 | 0.35 | 0.4 |
| B | \( 0.3 < \beta_u \le 0.7 \) | 0.3 | 0.3 | 0.35 | 0.45 |
| B | \( \beta_u > 0.7 \) | 0.35 | 0.35 | 0.4 | 0.5 |
| C | \( 0 < \beta_u \le 0.3 \) | 0.3 | 0.3 | 0.35 | 0.4 |
| C | \( 0.3 < \beta_u \le 0.5 \) | 0.35 | 0.35 | 0.4 | 0.45 |
| C | \( \beta_u > 0.5 \) | 0.4 | 0.4 | 0.45 | 0.5 |
実装参照:sepika_design_jp::secondary::ds_group::ds_steel(crates/sepika-design-jp/src/secondary/ds_group.rs)が告示の Ds 表を引きます。
本プログラムでの部材群種別・βu の算定
βu は 保有水平耐力の判定に示す、Ds 判定用確定点の符号付き負担力比を使います。部材群の種別を決める耐力重みは、同時点の実負担力とは別の量です。自動ランクを使用する場合は設計タブで各部材の正の耐力重み [N] を明示入力してください。壁系の側柱は壁系へ一度分類し、柱梁系へ再計上しません。
耐力重み・ランク・確定応力が欠ける場合は自動判定を停止します。壁・筋かい群が存在しない純ラーメンではその群を仮にランク A とせず、βu=0 の純ラーメンの表を用います。柱梁群を持たない構造の自動 Ds 判定は未対応として明示し、手動設計入力を求めます。実負担力を耐力と読み替えることや、欠損をランク A・選択ランクで埋めることはありません。自動判定を使用しない場合の手動ランクは設計者の明示入力です。
目的別集計の釣合い確認は、群種別のD部材取扱い・柱梁群の範囲やDs適用条件の成立を保証しません。破壊形式・非ヒンジ柱・接合部・柱脚の確認不足は、構造特性係数Dsの制限に従い自動・手動とも理由付きで保留します。
実装参照:sepika_app::app::App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)。
群の耐力比の背景資料は、国土交通省公開の住指発第96号(昭和56年5月1日)別記3付則(2)2)v)表3-5です(HTML、頁なし)。原文。歴史的通知として参照し、現行法の全要件の代替には用いません。
形状係数 Fes(剛性率 Fs・偏心率 Fe)
算定方法と適用範囲
形状係数Fesは、建物の高さ方向・平面内の剛性の偏りに応じて必要保有水平耐力を割り増す係数です。 各階について、剛性率RsによるFsと偏心率ReによるFeの積で求めます。 建築基準法施行令第82条の3第二号と昭和55年建設省告示第1792号第7の通常式を用います。
Rs・Reの算定には、部材の剛性を適切に評価する必要があります。 Rs≧0.6・Re≦0.15ではそれぞれの係数が1となります。この境界を外れる場合は、以下の式による割増しを行います。
個別評価を行う場合
通常式と異なるFesを用いる場合は、告示第7ただし書に基づき、各階の剛性率・偏心率と形状特性の関係を個別に評価する必要があります。 剛性の高い下層部があることだけで、上層階の割増しを一律に除外することはできません。
本機能が算定するのは通常式によるFesです。個別評価による割増しの除外・別値の採用や、その適用可否、法規上の設計ルートは判定しません。 個別評価が必要な案件では、別途その検討を行ってください。
剛性率 Rs・Fs
告示第1792号第7表1に対応する次式で、剛性率 Rs から Fs を算定します。
算定式
\[ K_s = h/\delta \]
\[ R_s = K_s/\mathrm{mean}(K_s) \]
\[ F_s = \begin{cases} 1.0 & (R_s \ge 0.6) \\ 2.0 - R_s/0.6 & (R_s < 0.6) \end{cases} \]
表1の境界 Rs=0.6 では Fs=1.0 です。Fs に 1.5 の上限は設けません。例えば Rs=0.60、0.30、0.15 に対して Fs=1.0、1.5、1.75 です。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( R_s \) | 層の剛性率 | - |
| \( K_s \) | 相対剛性(層間変形角の逆数=階高 / 層間変位) | - |
| \( h \) | 階高 | mm |
| \( \delta \) | 重心位置の層間変位 | mm |
| \( F_s \) | 剛性率による形状係数 | - |
自立壁のn倍法を使用する場合は、一次解析結果から求めた壁の付加剛性を壁の位置・方向に応じて上下階へ組み込み、Rs評価用の再解析を行います。同じ地震荷重に対する評価用変位から重心位置の層間変位を求め、床の並進・回転の連成を考慮します。元の応力と最大層間変形角は一次解析結果から求めます。
実装参照:sepika_design_jp::secondary::holding_capacity::{stiffness_ratios, fs} が算定し、δg は sepika_design_jp::secondary::stiffness_ratio::cog_story_drifts です。
自立壁を考慮する評価用変位は sepika_job::stiffness_ratio::{attach_evaluations, attach_single_evaluation}(crates/sepika-job/src/stiffness_ratio.rs)が生成します。
剛性率に使う層間変位は、柱の最大変位ではなく、重心位置の水平変位 δg です。
各層の δg は、上端の床レベル上の節点と下端の床レベル上の節点について、重心位置の水平変位の差として求めます。
δg は柱の層間変位とは別の量であり、中間節点は床レベルにないため平均には入れません。
偏心率 Re・Fe
告示第1792号第7表2に対応する次式で、偏心率 Re から Fe を算定します。 計算結果の偏心率は、X・Y 両方向の地震時弾性応力解析結果による柱の水平剛性から剛心を求めて算定します。 片方向の結果が欠ける場合、D 値法の略算へ切り替えず、偏心率を算定不能とします。 剛心・偏心率の算定で柱の局所軸を使う場合、その柱の断面参照方向から単位直交基底を構成できなければ、部材と理由を示して算定を停止します。この算定に使わない梁の参照方向は対象に含めません。
算定式
D 値(一般階):
\[ D = a \cdot K_{c0} \]
\[ K_{c0} = 12EI_c/h^3 \]
\[ a = \bar{k}/(2+\bar{k}) \]
剛心と偏心距離:
\[ X_s = \sum(D_y \cdot x)/\sum D_y \]
\[ e_x = |X_g - X_s| \]
弾力半径:
\[ r_{ex} = \sqrt{K_R/\sum D_x} \]
\[ K_R = \sum(D_x \cdot \bar{y}^2) + \sum(D_y \cdot \bar{x}^2) \]
偏心率と Fe:
\[ R_e = e/r_e \]
\[ F_e = \begin{cases} 1.0 & (R_e \le 0.15) \\ \min(1.0 + 0.5(R_e - 0.15)/0.15, 1.5) & (R_e > 0.15) \end{cases} \]
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( R_e \) | 層の偏心率 | - |
| \( F_e \) | 偏心率による形状係数 | - |
| \( D \) | 柱の水平剛性(D 値) | N/mm |
| \( a \) | D 値の係数(\( \bar{k}/(2+\bar{k}) \)) | - |
| \( K_{c0} \) | 柱の標準剛性 | N/mm |
| \( E \) | ヤング係数 | N/mm² |
| \( I_c \) | 柱の断面二次モーメント | mm⁴ |
| \( X_g, X_s \) | 重心位置・剛心位置 | mm |
| \( e_x \) | X 方向の偏心距離 | mm |
| \( r_{ex} \) | X 方向の弾力半径 | mm |
| \( K_R \) | 層のねじり剛性 | N·mm |
| \( D_x, D_y \) | X・Y 方向の層剛性 | N/mm |
| \( \bar{x}, \bar{y} \) | 剛心から各柱までの距離 | mm |
実装参照:sepika_design_jp::secondary::holding_capacity::fe が Fe を算定します。
地震時の応力解析結果があるときは、柱の水平剛性を \( k_i = |Q_i|/|\delta_i| \) として剛心を求めます。
ここでの \( \delta_i \) は、その柱の上下階SL節点の水平変位差です。各柱の剛性算定と、層間変形角の最大値の集計は別に行います。
中間節点で柱を分割するとセグメント単体の変位差は層高より短くなるため、連なりを 1 本の柱とみなします。
重心は、鉛直荷重を支持する柱の長期軸力を重みにして求めます。
引張の柱は鉛直荷重を支持しないため、重みに入れません。
この精算は sepika_design_jp::secondary::eccentricity_analysis(crates/sepika-design-jp/src/secondary/eccentricity_analysis.rs)です。
武藤 D 値法の略算は sepika_design_jp::secondary::eccentricity です。計算結果の偏心率表示で不足する解析結果を補うものではありません。
略算でも中間節点で分割された鉛直材は連なりを 1 本の柱とみなし、層の上下端の高さを \( h \) として D 値を求めます。
セグメントの材長を \( h \) にすると \( 12EI/h^3 \) が過大になるためです。
雑壁の剛性(n 倍法)
柱・梁に囲まれていない壁も、階と階をつないでいれば層の剛性に効き、剛心を偏らせます。 これを等価な剛性要素としてRs・Reへ算入する方法が n 倍法です。 基準にする柱の剛性と断面積は、次の二方式から建物全体で共通の方式を選びます。初期選択は層内柱合算方式です。
| 方式 | 基準にする柱 | 壁1枚の等価水平剛性 |
|---|---|---|
| 層内柱合算方式 | 当該層の柱全体 | \( K_w' = n A_w' \sum K_c / \sum A_c \) |
| 代表内柱方式 | 各層で指定した代表的な内柱1本 | \( K_w' = n A_w' K_c / A_c \) |
代表内柱は各層で1本指定し、同じ柱のX・Y方向それぞれの剛性を使います。柱の剛性は、壁の付加剛性を加える前の一次解析結果の \( |Q_c|/|\delta_c| \) から求めます。方式によって評価結果は異なります。
適用範囲は、基準に使う各柱が層内で同一断面となる場合に限ります。層内柱合算方式では集計する全柱、代表内柱方式では指定柱が対象です。中間節点で分割された柱も、一本の連なりを構成する各部材が同一断面である必要があります。異なる柱どうしの断面を揃える必要はありません。 層内で断面が変わる対象柱がある場合は、対象柱と理由を示してn倍法による付加剛性の算定を停止します。異断面柱を集計から外したり、最上部・平均などの代表断面で代用したりしません。この制限はn倍法に関するもので、モデル全体の解析を一律に禁止するものではありません。
\( A_w' \) は壁の平面長さ × 構造厚です。 構造厚は断面の板厚で、仕上げ・増打ちの面荷重(壁の断面と自重)は 重さの入力であって厚さではないため含めません。 方向別に求めた \( K_{wx}' \)・\( K_{wy}' \) を壁面内方向の方向余弦 \( (c_x, c_y) \) で投影し、壁面内方向の単一ばねを壁の平面中点に置きます。
\[ k_w = K_{wx}' c_x^2 + K_{wy}' c_y^2 \]
\[ \boldsymbol{K}_w = k_w \begin{bmatrix} c_x^2 & c_x c_y \\ c_x c_y & c_y^2 \end{bmatrix} \]
Rs評価用再解析にはこのばねのXY連成と位置による回転連成を反映します。Reには同じばねの方向別成分 \( D_x=k_w c_x^2 \)、\( D_y=k_w c_y^2 \) を用います。 層内柱合算方式では柱総面積が0の層を算定できません。代表内柱方式では対象層の有効な柱の指定が必要です。
対象は無開口RC自立壁(床領域に取り付く壁版)だけです。 非RC壁、有開口壁、スリット付き壁は算入しません。主材料を確認できない壁をRC壁として扱いません。 腰壁・垂れ壁・パラペットは、フロア間で壁がつながっていないため層剛性に影響しません。 これらが周辺の柱梁へ及ぼす剛性は、袖壁・腰壁として部材の断面性能へ算入する経路 (ティモシェンコ梁要素)が受け持つので、 ここで等価剛性要素としても数えると二重に計上することになります。
自立壁も同じ基準で切り分け、立ち上がりが直上の階レベルに達している壁だけを対象とします。 床の上に立つ腰高のパーティションは階と階をつないでいないため、対象にしません。 考慮を指定した対象壁の断面・主材料・構造厚を確認できない場合は算定を停止します。 帰属する層は、壁の下端からその階の階高の半分だけ上がった高さがどの層に入るかで決めます。
既定値は \( n \) が未設定で、そのときは雑壁の剛性を考慮しません。 準備計算の「計算条件」で「自立壁の剛性をn倍法で考慮する」を有効にし、係数nと算定方式を指定します。代表内柱方式では各層の柱を選択します。設定を変更した場合は、地震静的解析を再実行してください。 考慮する場合の係数nは1以上の有限値に限ります。1未満・非有限値は入力・保存・読込・算定で拒否し、1や「考慮しない」への読み替えは行いません。範囲外の係数を含むプロジェクトファイルは読み込めません。 柱の剛性と面積は、同じ層・同じ柱集合から集計します。各柱の断面積とヤング係数には正の有限値が必要です。必要な変位・内力の欠落、柱の層間変位が0、面積・方向別剛性の不正、集計・演算結果の非有限では、対象と理由を示して算定を停止します。正の層間変位に対してせん断力が0となる正常な剛性0とは区別します。正の微小変位を一律に剛性0へ置き換えません。
支持条件・配置等によって危険側の評価にならない係数nと代表内柱を選定してください。下限1は一律の推奨値ではありません。両方式とも一次解析から求めた水平剛性を使い、D値による略算とは区別します。 係数を大きくすると付加剛性は比例して増えますが、壁位置によって剛心とねじり剛性が変わるため、剛性率・偏心率・形状係数・必要耐力が一律に安全側へ変わるとは限りません。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( K_w' \) | 雑壁 1 枚の等価水平剛性 | N/mm |
| \( n \) | 雑壁の剛性を柱に換算する係数(n 倍法) | - |
| \( A_w' \) | 壁の平面長さ × 構造厚 | mm² |
| \( K_c \) | 基準にする柱の方向別剛性 | N/mm |
| \( A_c \) | 基準にする柱の断面積 | mm² |
| \( D_x, D_y \) | 壁の X・Y 方向の層剛性 | N/mm |
| \( c_x, c_y \) | 壁面内方向の方向余弦 | - |
実装参照:sepika_design_jp::secondary::eccentricity::{misc_wall_stiffness, append_misc_wall_stiffnesses}(crates/sepika-design-jp/src/secondary/eccentricity/misc_wall.rs)が算定します。
算定できない場合
設計画面とレポート CSV では、Rs は選択方向の地震静的結果、Re は X・Y 両方向の地震静的結果について、現在のモデル・関連計算条件と解析時の入力および計算契約の対応を確認します。 Re の重心に長期結果を用いる場合は、保存された常時 G+P の長期組合せ結果のうち先頭のものも確認します。 必要な結果の欠落、入力不一致、入力識別情報の欠落、計算契約の不一致・欠落があれば、対象の方向・組合せと理由を表示します。 選択方向以外の地震結果又は長期結果だけが無効な場合、Rs と層間変形角の表示は継続し、Re と Fes を算定不能とします。 長期結果が存在しても入力の対応を確認できない場合は、長期結果なしとして質量重心へ切り替えません。 増分解析の刻み・目標変位、表示方向、層間変形角の参考比較分母の変更だけでは、地震静的結果を無効にしません。
階高と重心位置の層間変位は、全層について対応する正の有限値が必要です。 全層の変位が 0 の場合も、一部の層だけが 0 の場合も、相対剛性を定義できないため Rs を算定しません。 ゼロ変位の層を平均から除いたり、Rs=1 や他層の最大値で代用したりしません。 床レベル上の必要節点の変位が欠ける場合、階・方向の対応が取れない場合、非有限値や演算不能がある場合も算定不能です。 自立壁のn倍法を使用する場合、Rs評価用再解析の結果がない場合や再解析できない場合も算定不能です。壁の上下端で接続先の剛床を一意に特定できない場合は、対象と理由を示します。固定支持へ接続する端部を除き、別の床や近くの節点へ置き換えません。 質量が未設定又は全節点の質量が 0 の階では、床レベル上の節点変位の単純平均を重心位置変位として用います。
Re には有限な偏心距離と正の有限な弾力半径が必要です。半径が 0 の場合は、偏心距離も 0 であっても Re を定義できません。 必要な柱の地震時変位・内力が欠ける場合や不正な場合、上下端の変位差を有限値として求められない場合も算定しません。 柱の水平剛性を求める変位差が0の場合は、せん断力も0であっても比を定義できないため算定不能です。正の変位差では大きさによらず比を求め、非有限な商は算定不能とします。 長期解析結果を用いて重心を求める場合、その必要柱の軸力が欠ける場合や非有限の場合も算定不能です。 長期結果がない場合又は全柱の圧縮軸力の合計が 0 の場合は、質量重心を用います。 質量重心に使う節点質量は未設定を 0 と扱い、全質量が 0 なら節点座標の幾何重心を用います。 長期軸力又は質量から重心を求める際、必要な位置・質量の不正、軸力・質量・位置一次モーメントの集計不能、重心座標の除算不能がある場合も算定不能です。 剛心・ねじり剛性・弾力半径についても、方向別剛性や位置一次モーメントの集計・除算を有限値で行えない場合は算定不能とします。 方向別剛性の合計が 0 の場合、対応する剛心座標は 0 と扱いますが、弾力半径が 0 の Re を正常値で代用しません。 偏心距離が 0 で弾力半径が正なら Re=0 は正常です。有効な全層の相対剛性が等しい場合の Rs=1 も正常です。
結果画面とレポート CSV は、該当する層・加力方向と理由を付けて「算定不能」と表示し、剛性率・偏心率の判定を「判定なし」とします。 Rs 又は Re を算定できなければ Fes と、それに依存する必要保有水平耐力・合否の算定を止めます。 再計算や保存後の再読込みでも、欠ける入力を既定値や前回の値で補いません。
実装参照:sepika_design_jp::secondary::holding_capacity と sepika_app::summary::{seismic_story_metrics, compute_story_metrics_with}(crates/sepika-app/src/summary.rs)。
形状係数 Fes
形状係数 Fes は、剛性率による Fs と偏心率による Fe の積として算定します。 表2では Re≦0.15 で Fe=1.0、0.15<Re<0.30 で直線補間、Re≧0.30 で Fe=1.5 です。 Re=0.15、0.225、0.30 に対して Fe=1.0、1.25、1.5 です。Rs=0.15、Re=0.225 なら Fes=2.1875 です。
算定式
\[ F_{es} = F_s \cdot F_e \]
実装参照:sepika_design_jp::secondary::holding_capacity::fes が算定します。
層間変形角
設計画面とCSVの層指標は、選択したX/Y方向の地震静的解析結果から、対象柱の最大層間変形角を算定します。表示中の別の荷重ケースや反対方向の結果で代用しません。対応する地震結果がなければ「未計算」と表示します。
上限との比較は設定値との参考比較です。比較分母の既定値は200であり、入力した正の有限値の逆数と比較します。不正な比較分母や逆数を演算できない設定は「比較なし」とし、既定値で補いません。この比較設定は解析・部材検定を止めず、変位・応力・断面検定値を変更しません。
建築基準法施行令第82条の2に関連する数値を示しますが、設計ルートや特例、1/120への緩和適用資格を自動確認する機能ではありません。参考比較のOKは、法令適合や緩和条件の確認完了を意味しません。
算定式
\[ R = \max_k \left(\frac{|u_{\mathrm{top},k,d}-u_{\mathrm{bottom},k,d}|}{h_{\mathrm{FL}}}\right) \]
層間変位 δ には、当該層の柱の層間変位のうち最大のものを用います。 FLは床上端の基準レベル、SLは代表梁の中心が来る構造基準レベルです。各柱の δ は、上下階のSLにある解析節点の加力方向水平変位差の絶対値です。FL位置で求めた変位や、SLの節点変位をFL位置へ補間・換算した変位は用いません。 分母 h は、その層で共通の上下階FL間高さです。変位の取得位置はSL、分母の高さはFL間とし、SL間高さや柱の材長へ置き換えません。 例えば、上下階FLが3500/7000 mm、SLが3000/6400 mmの場合、Z=3000/6400 mmの解析節点の水平変位差をFL間高さ3500 mmで除します。水平変位差が18 mmなら、層間変形角は18/3500です。
斜め柱も対象層の上下階SLを結ぶ場合は算定対象に含めます。斜め柱についても、上下端の加力方向水平変位差の絶対値を、当該層で共通の上下階FL間高さで除します。軸方向変位は用いません。 算定対象は、対象層の上下階SLを結ぶ柱です。途中の階のSLに節点を持たず、複数層をまたぐ柱は対象外とし、そのSL位置の変位を補間して集計には加えません。 例えば、1F–3Fを結び2FのSLに節点を持たない柱は、1F–2F層および2F–3F層のいずれの算定対象にも含めません。この対象外の扱いは、接続不整合や変位欠落による異常とは区別します。 中間節点で分割された柱は、上下階SLの節点を結ぶ連なりを1本の柱とみなします。中間節点の変位差や分割材の長さで評価しません。 途中で柱が分岐する連なりは、現在の評価対象に含めません。 算定対象の柱が一本もない層は「対象なし」と表示し、層間変形角の数値および設定値との参考比較のOK/NGは表示しません。節点の平均変位では代用せず、有効な変形角ゼロや、対象柱の接続不整合・変位欠落による異常とは区別します。 正常終了した解析では、対象節点の有限な変位が揃うことを前提とします。正常な対象柱の接続を解決できない場合や、解析結果の変位が欠ける場合は不具合として扱い、その柱を除外した最大値やゼロ・平均値を正常な算定結果として表示しません。固定節点の変位ゼロは有効な結果です。 最大角を与えた柱の代表ID(最上部の分割材)、柱頭の平面位置、水平変位差、採用したFL間高さ、角度を対応させて表示します。変位差が0の有効な結果は角度0と参考比較を表示します。
解析結果の計算契約・生成入力と現在モデルの不一致、必要変位の欠測・非有限値、正の有限値でないFL間高さは理由を示し、角度と参考比較のOK/NGを表示しません。階情報に不整合がある場合は、算定できない階情報の診断も表示します。
表示する最大値は上記の算定対象の範囲内の値であり、対象外の柱を含むモデル全体の最大変形を保証するものではありません。
Rsに用いる重心位置の代表変位、Ds・Quの確定評価点や解析終了条件は目的が異なります。ここでの最大柱角や参考比較の設定を、それらに流用しません。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( \delta \) | 上下階SLの解析節点から求める各柱の水平変位差の絶対値(最大値を採用) | mm |
| \( h \) | 上下階FL間高さ | mm |
実装参照:sepika_app::summary::seismic_story_metrics(crates/sepika-app/src/summary.rs)がGUI・CSVの共通集計を行い、柱の最大変位差は sepika_design_jp::secondary::stiffness_ratio::max_column_drift(crates/sepika-design-jp/src/secondary/stiffness_ratio.rs)が算定します。
主軸の計算
地震力方向に対する架構の主軸を、水平力のなす仕事の極値条件から計算します(実務的手法)。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( \Theta \) | 地震力方向に対する架構の主軸角 | rad |
| \( P \) | 各節点に作用する水平力(X・Y 加力で共通の分布) | N |
| \( u_x, u_y \) | X 加力時の節点の x・y 方向変位 | mm |
| \( v_x, v_y \) | Y 加力時の節点の x・y 方向変位 | mm |
算定式
\[ \tan 2\Theta = -\frac{P^t(u_y+v_x)}{P^t(v_y-u_x)} \]
仕事 W の極値から主軸角 Θ を決定します。
実装参照:sepika_design_jp::secondary::principal_axis(principal_axis.rs)が計算します。
部材終局耐力
本章は、保有水平耐力計算、終局検定、非線形解析で用いる部材終局耐力の算定式と出典をまとめます。 対象は、曲げ Mu、曲げ終局時せん断 Qmu、終局せん断 Qsu、付着割裂 Qbu、軸終局 Nu、接合部終局、耐震壁非線形、CFT 終局です。
法令はこれらの終局耐力式を直接与えていないため、本章の各式は、日本建築学会の各指針(靭性保証型、終局強度型)および『建築物の構造関係技術基準解説書』の略算式と塑性理論式に主に依拠します(Category B)。 多くの係数には、コード上で「要・原典照合(原典照合リスト)」の申し送りが付されています。
単位系の注意: 工学単位系の式は \( 1\ \mathrm{kgf/cm^2} = 0.0980665\ \mathrm{N/mm^2} \)、\( 1\ \mathrm{kgf} = 9.80665\ \mathrm{N} \) で換算して評価します。 無開口壁のQcはFc [N/mm²]と柱心間距離×実壁厚 [mm²]から直接Nで算定し、kgf換算を重ねません。 βsは強度比が無次元です。式ごとの単位と面積はRC部材の非線形復元力特性を参照してください。
この章の内容
- RC 部材 略算終局耐力(曲げ・せん断)
- RC 終局せん断(塑性理論式・靭性指針式)
- RC 柱梁接合部 終局耐力
- RC 部材 非線形復元力特性
- SRC / SRRC 梁 せん断終局(充腹・非充腹)
- CFT 柱 終局耐力
- 終局検定の統括
RC 部材 略算終局耐力(曲げ・せん断)
略算式の鉄筋比は、用途ごとに分母と単位が異なります。断面タブの梁幅・全せいと実配筋から算定するため、百分率の表示値を小数の入力へ読み替えないでください。耐力式の係数と適用条件には原典未照合の項目が残ります。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( M_u \) | 曲げ終局モーメント | N·mm |
| \( Q_{mu} \) | 曲げ終局時のせん断力 | N |
| \( Q_{su} \) | 終局せん断耐力 | N |
| \( a_t \) | 引張鉄筋断面積 | mm² |
| \( \sigma_y \) | 主筋の降伏強度 | N/mm² |
| \( d, d_e \) | 有効せい | mm |
| \( h_0 \) | 梁の内法スパン | mm |
| \( N \) | 柱の軸力(圧縮を正) | N |
| \( N_{bal}, N_{max} \) | 釣合軸力・終局圧縮軸力 | N |
| \( b, D \) | 断面幅・断面せい | mm |
| \( F_c \) | コンクリートの設計基準強度 | N/mm² |
| \( p_t \) | 引張鉄筋比(荒川 mean 式系 rc_qsu_simple 用。\( 100 a_t/(b d_e) \)) | % |
| \( p_t \) | 引張鉄筋比(降伏時剛性低下率用。at/(bD) の小数) | - |
| \( p_w \) | せん断補強筋比 | - |
| \( \sigma_{wy} \) | せん断補強筋の降伏強度 | N/mm² |
| \( \sigma_0 \) | 軸方向応力度 | N/mm² |
| \( \alpha_y \) | 曲げ降伏時の剛性低下率 | - |
| \( n \) | ヤング係数比 | - |
鉄筋比の分母・単位と引張方向
全せい D と有効せい d は区別します。有効せいは圧縮縁から引張主筋の重心までの距離です。 梁の上下の配筋が異なる場合、引張側の主筋面積と重心を各方向で求めます。 多段配筋は入力した各段の面積による重心から有効せいを算定します。
| 用途・方向 | 定義 | 数値の単位 |
|---|---|---|
| 矩形梁の降伏時剛性低下率 | at/(bD) | 小数(1% は 0.01) |
| T形梁の下端引張、スラブ圧縮 | at/(BD)、B はスラブ協力幅を含む有効幅 | 小数 |
| T形梁の上端引張、スラブ引張 | (at + 協力幅内のスラブ引張筋面積)/(bD) | 小数 |
| 終局せん断耐力 | 100at/(bd)、梁幅 b と有効せい d を使う | 百分率(1% は 1.0) |
| せん断補強筋比 | aw/(b・ピッチ)、aw は検討方向の1組の総面積 | 小数(0.2% は 0.002) |
b=300 mm、D=600 mm、d=540 mm、at=1800 mm² のとき、降伏時剛性低下率用は 0.010、 終局せん断用は 1.111111…% です。同じ配筋でも分母が異なるため単純な100倍変換はできません。 T形の B=1500 mm なら下端引張用は 0.002、上端引張でスラブ筋600 mm²を加える場合は 0.013333…です。この変更で梁のせん断用鉄筋比を有効幅 B に置き換えません。
T形の上端引張では、この鉄筋比で得た剛性低下率に矩形断面とT形断面の断面二次モーメント比 I0/IT を一度だけ乗じます。下端引張へ同じ補正を一律に適用しません。 鉄筋比の生成自体にはこの補正を含めません。
利用できる範囲と入力の確認
材端集中ばねは矩形梁の上下それぞれの配筋を確認し、現在は主筋面積が少ない側の諸元による共通骨格を用います。 主筋ヤング係数 Es は割り当てた主筋材料、Ec はコンクリート材料のヤング係数を用います。 せん断スパン a は剛域を控除した可撓長さの半分とし、a/D と d/D は無次元です。 RC矩形梁以外の既定剛性低下率は0.3です。
スラブ協力付きRC梁の材端集中ばねは未対応です。 現在の床板には協力幅内の引張筋面積を設定できず、 集中ばねも正負別のT形骨格を設定できません。この条件の非線形解析は入力診断で停止します。 矩形断面や既定剛性低下率による代用として解析を継続しません。入力を修正するまで解析要素を生成しません。 弾性剛性のスラブ協力と、T形の降伏時骨格が対応することは同義ではありません。 ファイバー骨格のスラブ筋・T形断面の妥当性を保証するものでもありません。
梁幅・全せい・有効せい・引張筋面積は正の有限値、有効せいは全せい以下が必要です。 RC矩形梁の非線形解析には、上端・下端の両側の主筋入力が必要です。両側未入力や片側欠落は入力診断で停止し、主筋材料の割当だけでは耐力・骨格を算定しません。骨格表示も未算定とします。 T形の計算には引張方向、有効幅(梁幅以上)、上端引張時の協力スラブ筋面積(非負の有限値)を明示します。 この情報の欠落を、矩形への置換で補いません。
定義の出典と未確認事項
- 日本建築学会RC規準改定小委員会、2018年版8条関連 公式Q&A No.57、2024-09-30、pp.1–2。下端引張のat/(BD)、上端引張のスラブ筋加算の計算例。実験資料の鉄筋比0.4–2.8%は元の矩形断面についての範囲で、仮想幅から求めた値を機械的に下限へ補正する根拠にはしません。追加知見に限りがあります。
- 同小委員会、2018年版8条関連 公式Q&A No.33、2020-03-19、p.1。I0/IT補正は上端引張時のみ。
- 向井智久ほか/国立研究開発法人建築研究所、『実験データベースを用いた鉄筋コンクリート造部材の構造特性評価式の検証(2020年版)』、建築研究資料No.197、2020-03、第3章 本文3-3・3-55(PDF pp.3・55)。引張鉄筋比の分母と、荒川min式(3.5.8)のpt百分率・pw小数を確認した資料です。単位契約の根拠として用い、min式の係数をmean式へ転用しません。
- 日本建築学会RC規準改定小委員会、2018年版15条関連 公式Q&A No.58、2025-03-25、p.1。荒川meanと規準の設計せん断式は、設計せん断力との組合せを区別します。
採用式の確認範囲は上記文献の記載範囲に限り、規準原本全体への適合を保証するものではありません。 せん断用鉄筋比の分母 b・d は、上記建築研究資料の定義によります。 二段筋の扱いを任意段の配筋へ外挿して、算定式の適用性が確認済みとはみなしません。
日本建築学会『鉄筋コンクリート終局強度設計に関する資料1987』p.17、 2015・2020年版『建築物の構造関係技術基準解説書』の該当原書ページは未閲覧です。 2025年版の梁曲げ・柱曲げの根拠と適用条件は、以下の各節を参照してください。 単位・分母の確認は、剛性低下率の係数・分岐や終局せん断耐力の全適用条件の原典照合完了を意味しません。 実験による妥当性確認は未実施です。
実装参照:sepika_core::rc_capacity::rc_rebar_ratios(crates/sepika-core/src/rc_capacity.rs)、sepika_element::factory::input_check(crates/sepika-element/src/factory/input_check.rs)。
曲げ終局モーメント(梁)
引張鉄筋降伏型の長方形梁の曲げ終局モーメントを略算します。圧縮コンクリートの破壊に先行して引張鉄筋が降伏する条件が必要です。
算定式(\( d = \text{有効せい} \)):
\[ M_u = 0.9 \cdot a_t \cdot \sigma_y \cdot d \]
引張鉄筋量・有効せい・降伏強度のいずれかが 0 以下の場合は 0 を返し、呼び出し側の部材ランク判定では判定不能=最不利側として扱います。
根拠は『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷、付録1-3.1(1)⑥a)、pp.698–699、式(付1.3-5)です。 同書は釣合鉄筋比以下を前提とし、圧縮強度18 N/mm²以上・SD390級以下の通常の引張鉄筋比2%未満、 SD490も引張鉄筋比2%未満を適用範囲として挙げています。過大な鉄筋量・高圧縮強度・狭い圧縮幅では適否の検討が必要です。 数値が得られることだけでは、これらの条件やスラブ筋の定着・有効幅を確認したことにはなりません。
実装参照:sepika_core::rc_capacity::rc_mu_simple。
曲げ終局時せん断力(梁)
両端が曲げ降伏し反曲点が中央にあると仮定して、曲げ終局時のせん断力を略算します。
算定式:
\[ Q_{mu} = \frac{2 \cdot M_u}{h_0} \]
実装参照:sepika_core::rc_capacity::rc_qmu_simple。
柱の軸力考慮終局曲げ
柱の終局曲げモーメントは、『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷、 付録1-3.1(2)⑥a)、p.703、式(付1.3-10)〜(付1.3-12)に対応する略算式を用います。 同式の対象は長方形断面で、引張側・圧縮側に各1段の主筋を配した柱です。多段配筋用の式や平面保持断面解析とは区別します。 異なる配筋・断面への適用や安全性を一律には保証しません。
全主筋面積をagとしてNmax=bDFc+agσy、Nmin=−agσyとし、入力軸力はこの区間へ制限します。 全主筋面積は引張主筋面積以上として扱い、負の算定モーメントは0とします。 この範囲外の処理は現在の計算上の扱いであり、原典の適用範囲外の耐力を保証しません。
算定式(3 分岐、\( N_{bal} = 0.4 \cdot b \cdot D \cdot F_c \)):
\( N > N_{bal} \) のとき:
\[ M_u = (0.8 \cdot a_t \cdot \sigma_y \cdot D + 0.12 \cdot b \cdot D^2 \cdot F_c) \cdot (N_{max} - N)/(N_{max} - N_{bal}) \]
\( 0 \le N \le N_{bal} \) のとき:
\[ M_u = 0.8 \cdot a_t \cdot \sigma_y \cdot D + 0.5 \cdot N \cdot D \cdot (1 - N/(b \cdot D \cdot F_c)) \]
\( N < 0 \) のとき:
\[ M_u = 0.8 \cdot a_t \cdot \sigma_y \cdot D + 0.4 \cdot N \cdot D \]
実装参照:sepika_core::rc_capacity::rc_column_mu_simple。
柱の地震時設計用せん断力 \( Q_{D1} = \sum {}_c M_y/h' \) の算定に使用します。
終局せん断耐力(荒川 mean 式系)
終局せん断耐力は、『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷、付録1-3.1、p.699の梁の式(付1.3-7)とp.704の柱の軸力項(付1.3-16)に対応する荒川 mean 式系の略算式で算定します。引張域を含む全適用条件の原典照合は未完了です。
算定式:
\[ Q_{su} = \left\{ \frac{0.068\,p_t^{0.23}(F_c+18)}{M/(Q\,d_e)+0.12} + 0.85\sqrt{p_w \sigma_{wy}} + 0.1\,\sigma_0 \right\} b\,j \]
- \( p_t = 100 \cdot a_t/(b \cdot d_e) \) [%]、\( j = 7 \cdot d_e/8 \)
- せん断スパン比 \( M/(Q \cdot d_e) = h_0/(2d_e) \) を 1.0〜3.0 にクランプ
pwを 0〜0.012(1.2%)にクランプ、σ0を 0〜0.4Fc にクランプ(引張は 0)
引張軸力を0へ置換する扱いについて、耐力を安全側に評価する保証はありません。 同書2025年版p.704の柱の軸力項と圧縮上限を、引張域の適用根拠として読み替えないでください。 引張域で設計に採用できる軸力範囲は未確認で、引張0置換の設計適用判断は保留です。実際の耐力が零軸力時より低下する条件では、耐力過大となる可能性があります。負の軸力項をそのまま残す外挿も妥当性未確認であり、代わりの低減式として使用できません。 増分解析のせん断降伏追跡でも引張軸力は0として扱うため、イベント未到達だけで引張部材の非せん断破壊や靭性確保を判断できません。
実装参照:sepika_core::rc_capacity::rc_qsu_simple。係数は 0.068/0.23/+18/+0.12/0.85/0.1。
曲げ降伏時剛性低下率と復元力特性
採用する係数・二分岐・鉄筋比の単位、総部材角と追加端ばねの区別、適用制限は RC 部材 非線形復元力特性を参照してください。 同書2025年版pp.697–698の長方形部材式とSEPIKAの採用分岐は同一ではなく、数式の一致や資料域内を設計適用の保証としません。
RC 終局せん断(塑性理論式・靭性指針式)
「06 終局検定」の照合のため、荒川式に加えて塑性理論式と靭性指針式を実装しています。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( Q_{su} \) | 塑性理論式による終局せん断耐力 | N |
| \( Q_{bu} \) | 付着割裂で決まる終局せん断耐力 | N |
| \( V_u, V_{bu} \) | 靭性指針式のせん断信頼強度・付着信頼強度 | N |
| \( N_{uc}, N_{ut} \) | 柱の圧縮・引張軸終局耐力 | N |
| \( b, D \) | 断面幅・断面せい | mm |
| \( j_t \) | トラス機構の応力中心距離 | mm |
| \( p_w \) | せん断補強筋比 | - |
| \( \sigma_{wy} \) | せん断補強筋の降伏強度 | N/mm² |
| \( F_c \) | コンクリートの設計基準強度 | N/mm² |
| \( \nu \) | コンクリートの有効係数 | - |
| \( R_p \) | 塑性率(ヒンジ領域の回転角) | rad |
| \( L \) | 部材の内法スパン | mm |
| \( \tau_{bu} \) | 付着信頼強度 | N/mm² |
| \( \sum\varphi \) | 主筋の周長の総和 | mm |
| \( a_g \) | 主筋の全断面積 | mm² |
| \( \sigma_y \) | 主筋の降伏強度 | N/mm² |
塑性理論式 Qsu(トラス+アーチ機構)
RC 部材の終局せん断耐力は、日本建築学会『靭性保証型耐震設計指針』(終局強度型設計指針、藤井・森田式系)に基づき、トラス機構とアーチ機構の累加により算定します。
算定式:
\[ Q_{su} = \text{truss} + \text{arch} \]
- \( \text{truss} = b \cdot j_t \cdot p_w \cdot \sigma_{wy} \cdot \cot\varphi \)(\( p_w \cdot \sigma_{wy} \le \nu \cdot F_c/2 \) に制約)
- \( \text{arch} = k_1 \cdot (1 - k_2) \cdot b \cdot D \cdot \nu \cdot F_c \)
- 有効係数 \( \nu_0 = \max(0.7 - F_c/200, 0) \)、\( \nu = \text{factor} \cdot \nu_0 \)(factor は塑性率 Rp 依存)
- \( \cot\varphi \)(Rp 依存、1.0〜2.0)、\( k_1 = (\sqrt{(L/D)^2+1} - L/D)/2 \)、\( k_2 = \min(2p_w \cdot \sigma_{wy}/(\nu \cdot F_c), 1) \)
- 軽量コンクリートは 0.9 倍
円形柱の \( p_w \) は、帯筋を 1 組 2 本(閉鎖フープ、検討方向あたり 2 本)とみなし、\( A_w = 2 \cdot a_{w1} \)、\( p_w = A_w/(b_e \cdot s) \) で算定します(\( a_{w1} \) は帯筋 1 本の断面積、\( b_e = \sqrt{\pi D^2/4} \) は等価正方形断面の辺長、\( s \) は帯筋間隔)。円形柱の帯筋脚数(HOOP 本数)を個別入力する方式には未対応です。
あばら筋・帯筋の間隔が0以下の場合はpw=0とし、せん断補強筋の耐力寄与を見込まない。自動部材ランク判定も同じpw=0を使用する。
実装参照:sepika_design_jp::ultimate::rc_shear(crates/sepika-design-jp/src/ultimate/rc_shear.rs)。
付着割裂耐力 Qbu
付着割裂で耐力が決まる場合の Qbu は、靭性保証型指針 P.175-181 に基づき算定します。
算定式:
\[ Q_{bu} = j_t \cdot \tau_{bu} \cdot \sum\varphi + k_1 \cdot (1 - k_3) \cdot b \cdot D \cdot \nu \cdot F_c \]
付着信頼強度は次によります。
\[ \tau_{bu} = \alpha_t \cdot ((0.085 \cdot b_1 + 0.10) \cdot \sqrt{F_c} + k_{st}) \]
実装参照:sepika_design_jp::ultimate::rc_shear(rc_shear_qbu_bond、bond_reliable_strength_deformed)。
靭性指針式せん断信頼強度 Vu / Vbu
せん断信頼強度 Vu は、日本建築学会『鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針・同解説』(1997) 式(6.4.1)〜(6.4.11)、付着(6.8.14)〜(6.8.16) に基づき、トラス項とアーチ項から算定します。
算定式(トラス項+アーチ項):
\[ V_u = \min(V_{u1}, V_{u2}, V_{u3}) \]
\( \tan\theta \) は L/D に応じて \( 0.9D/(2L) \)(式6.4.10)または \( (\sqrt{L^2+D^2} - L)/D \)(式6.4.11)とします。
靭性指針の be(トラス機構有効幅)・Ns(中子筋本数)はモデルに直接保持されないため、せん断補強筋のコア芯々幅・脚数から近似します(be = 幅 − 2·(かぶり + 補強筋径/2)、Ns = 脚数/2 − 1)。円形柱は帯筋を 1 組 2 本とみなすため脚数 2、Ns = 0 です。引張軸力の柱はアーチ機構を無効(tanθ = 0)とします。
実装参照:sepika_design_jp::ultimate::rc_shear_ductility(rc_shear_ductility.rs)。
式番号をコメントに明記しています。
柱の軸終局耐力
柱の軸終局耐力(Nuc/Nut)は技術基準解説書に基づき算定します。
算定式:
圧縮正:
\[ N_{uc} = b \cdot D \cdot F_c \]
引張負:
\[ N_{ut} = -a_g \cdot \sigma_y \]
柱の曲げ終局モーメント Mu は構造規定式(at 式、軸力考慮)によります(RC 部材 略算終局耐力(曲げ・せん断) 参照)。
実装参照:sepika_design_jp::ultimate::rc_axial。
RC 柱梁接合部 終局耐力
柱梁接合部のせん断終局耐力と柱梁接合部余裕度は、靭性保証型指針(接合部せん断 \( V_{ju} = \kappa \cdot \varphi \cdot F_j \cdot b_j \cdot D_j \)、\( F_j = 0.8 \cdot F_c^{0.7} \))に基づき算定します。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( V_{ju} \) | 接合部の終局せん断耐力 | N |
| \( Q_{du} \) | 設計用接合部せん断力 | N |
| \( \kappa \) | 接合部の形状係数(十字1.0/T字・ト字0.7/L字0.4) | - |
| \( \varphi \) | 直交梁の有無による補正係数 | - |
| \( F_j \) | 接合部コンクリートのせん断終局強度 | N/mm² |
| \( b_j \) | 接合部の有効幅 | mm |
| \( D_j \) | 下側柱の断面せい | mm |
| \( F_c \) | コンクリートの設計基準強度 | N/mm² |
| \( \alpha \) | 接合部せん断力の割増率(既定 1.0) | - |
| \( T, T' \) | 上端・下端鉄筋の引張力 | N |
| \( Q_{cu} \) | 上下柱の存在せん断力の平均 | N |
| \( d_t \) | 引張縁から主筋群重心までの距離 | mm |
| \( j \) | 梁の応力中心間距離 | mm |
| \( {}_mC_d \) | SRC 柱梁接合部の主筋間距離 | mm |
算定式:
\[ V_{ju} = \kappa \cdot \varphi \cdot F_j \cdot b_j \cdot D_j \]
形状係数は κ = 十字1.0/T字・ト字0.7/L字0.4 とし、せん断力を次式とします。
\[ Q_{du} = \alpha \cdot (T + T' - Q_{cu}) \]
引張筋重心位置 dt
\( d_t \) は引張縁から主筋群重心までの距離で、梁の応力中心間距離 \( j = \frac{7}{8}(D - d_t) \) と、SRC 柱梁接合部の主筋間距離 \( {}_mC_d = \text{柱幅} - 2 d_t \) に用います。 この \( d_t \) は多段配筋の段数を考慮します。 1 段配筋では \( \text{かぶり} + \text{せん断補強筋径} + \text{主筋径}/2 \) とします。 2 段以上では、段間のあき(主筋径の 1.5 倍と 25 mm の大きいほう)を考慮した多段重心位置とします。 RC 断面検定・部材ランクの引張有効せいと同じ規則です(部材ランク)。
実装参照:sepika_design_jp::ultimate::joint(crates/sepika-design-jp/src/ultimate/joint.rs)。
\( d_t \) は sepika_core::rc_rebar_geom::rebar_tension_dt が算定します(断面検定・プッシュオーバーヒンジ・曲げばねと同一規約)。
RC 部材 非線形復元力特性
梁の曲げ降伏骨格
採用式と境界
降伏時剛性低下率は、原点から降伏点までの割線剛性と初期曲げ剛性の比です。 SEPIKAでは、\(r=a/D\)、\(n=E_s/E_c\) として、
\[ \alpha_y = \begin{cases} (0.043+1.64 n p_t+0.043r)(d/D)^2 & r\le 2.0 \\ (-0.0336-0.1935 n p_t+0.1270r)(d/D)^2 & r>2.0 \end{cases} \]
\(b,D,d,a\) はmm、\(E_s,E_c\) はN/mm²、\(p_t=a_t/(bD)\) は小数です。1%は0.01です。 せん断耐力用の \(100a_t/(bd)\) [%]、せん断補強筋比 \(p_w\)(小数)とは独立に扱います。 有効せい \(d\) は全せい \(D\) 以下とし、寸法・材料比・せん断スパンは正の有限値が必要です。
\(n=10,p_t=0.01,d/D=0.9\) の独立計算は、\(r=1\) で0.2025、\(r=2\) で0.23733、 \(r\to2+\) で0.1628505、\(r=5\) で0.4714605です。境界の不連続を補間しません。 入力域へのクランプや非正結果の0置換も行いません。数式を評価できること、設計対象に適用できること、 受動ばねへ接続できることを区別します。有限な非正値も式の評価値として保持しますが、降伏骨格へ適用できません。
菅野(1973)の原研究資料域は、引張鉄筋比0.4–2.8%、せん断スパン比2–5、軸力比0–0.55です。 この資料域はSEPIKAの採用分岐条件と同じではありません。資料域内の入力でも、採用分岐の原典裏付けと 設計対象での実験的妥当性を確認済みとは扱いません。資料域外の数値評価は外挿であり、精度や安全側を保証しません。
T形梁の引張方向と幾何断面
下端引張ではスラブを圧縮側として、協力幅 \(B\)・全せい \(D\) の仮想長方形で \(p_t=a_t/(BD)\) を算定します。下端引張に上端用のI補正を重ねません。 上端引張では元の梁幅 \(b\) を使い、協力幅内のスラブ引張筋を加えて \(p_t=(a_t+a_{t,slab})/(bD)\) とし、
\[ \alpha_y'=\alpha_y I_0/I_T,\qquad I_0=bD^3/12 \]
と補正します。\(I_T\) は参加するコンクリート幅・厚さ・高さから図心を求めた幾何断面二次モーメントです。 鉄筋換算断面や材料ヤング係数比を再度含めた剛性を \(I_T\) としません。 総角のT形初期剛性にも同じ \(I_T\) を使い、\(\alpha_y'K_{0T}=\alpha_y3E_cI_0/a\) となります。 例えば \(I_0/I_T=0.5\) なら上端の係数は半分です。
現行の集中ばね解析には方向別のスラブ引張筋面積と正負別骨格の入力が揃っていません。 スラブ協力付きRC梁は理由を表示して解析を停止し、矩形梁として代用しません。 方向別の式を数値評価できることは、T形梁をGUIから解析できることを意味しません。
せん断スパンと総部材角
一定せん断力・三角形曲げモーメント分布を基準とし、\(a=|M/Q|>0\) から
\[ K_0=3E_cI/a,\qquad R_y=M_y/(\alpha_yK_0) \]
を求めます。\(Q=0\)、反曲点が評価区間外、分布荷重等で三角形曲げ分布を満たさない場合は自動接続できません。 逆対称で両半部材が同じ場合だけ、\(a=L/2\)、\(K_0=S=6E_cI/L\) とします。 \(L\) は節点間長から剛体アーム長を控除した柔部材長です。協力幅算定用のスパンとは区別します。 柔部材長が非正の場合に全長へ置き換えません。
曲げひび割れは \(M_c=0.56\sqrt{F_c}Z_e\)、\(R_c=M_c/K_0\) とします。 この矩形基準の \(Z_e=bD^2/6\) は、係数・降伏強度と同じ形状の幅・全せいから求めます。 \(M_c<M_y\)、\(R_c<R_y\) が必要で、ひび割れ点や降伏点を丸めて順序を整えません。 『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷、付録1-3.1(1)④a)、p.697、 式(付1.3-1)は鉄筋を考慮した断面係数と軸力項ND/6を含みます。 本節の集中ばねはコンクリート幾何断面係数と軸力項を含まない骨格です。 圧縮軸力によるひび割れ耐力の増加・鉄筋換算断面を含む同式全体への適合を保証しません。 同式の数値適用域はコンクリート圧縮強度18〜60 N/mm²、軸応力N/(bD)=0〜10 N/mm²です。 軸力0でも鉄筋考慮断面係数と幾何断面係数が同じとは限らず、本節の省略を設計対象に適用できるとの判断は保留です。 ひび割れの早期判定だけから、変形や応力分配が常に安全側になるとは判断できません。 第2勾配は \((M_y-M_c)/(R_y-R_c)\) であり、\(\alpha_yK_0\) を区間勾配として使いません。 経験式の総降伏部材角に独立したせん断・抜出し変形角を加算しません。
弾性梁へ接続する追加端ばね
同じ逆対称基準の弾性角は \(M/S\) です。集中端ばねへ渡す追加角と降伏時割線柔性は、
\[ R_{s}=R-M/S,\qquad f_{s,y}=(1/\alpha_y-1)/S \]
です。ひび割れ前の追加柔性0を有限の近似ばねへ置換しません。 \(\alpha_y=1\) は降伏点まで追加柔性0、\(\alpha_y>1\) は負の追加柔性になるため受動ばねへ接続できません。 後者も数式の総降伏角自体は保持します。 追加骨格の第2勾配は \((M_y-M_c)/(R_{s,y}-R_{s,c})\) です。総骨格の第2勾配とは区別します。
\(E_cI=10^{12}\) N·mm²、\(L=6000\) mm、\(M_y=10^6\) N·mm、\(\alpha_y=0.25\) なら、 \(S=10^9\) N·mm/rad、弾性角0.001 rad、総角0.004 rad、追加角0.003 radです。 弾性梁へ総角0.004 radを追加して0.005 radにしません。 この経験式基準の強軸には初期曲げ剛性を用い、独立したせん断柔性を加算しません。 弱軸と軸の既存モデルは別に扱います。
GUIでの指定と制限
部材表の「RC梁基準」で「逆対称・同一半部材の基準」を明示選択します。既定は「未指定」です。 この指定は基準骨格の選択であり、解析で生じる実応力分布へ適合することの確認ではありません。 取り込みや準備計算が自動選択することはありません。未指定の採用式接続は理由付きで停止します。
対象は一様な矩形RC梁、上下同一配筋、対象曲げ面の端部解放なし、ハンチなし、同じ両半部材です。 対象軸の弾性梁Iとコンクリート幾何Iが一致する必要があります。 材端集中ばね専用です。基準を指定したままファイバー・MS・柱・その他要素へ変更した場合は、使用できない理由を表示して解析を停止します。 基準未指定のファイバー・MSモデルは、それぞれの既存骨格を使用します。 武田型・逆行型・最大点指向型に限定します。原点指向型は当該初期剛性とひび割れ点を持たないため未対応です。 Karsan–Jirsa型はこの集中RC梁経路では未対応です。コンクリート材料用の履歴則を武田型へ代用しません。 標準型・辻山田型・座屈考慮型は採用αyを用いる骨格の対象外です。基準指定からこれらへ黙って代用しません。 増分・時刻歴はそれぞれ実行する側の履歴則を診断します。 ヒンジ詳細と保有水平耐力解析は材料強度基準、時刻歴は公称値基準で降伏モーメントを算定します。 使用する強度基準でMyが正の有限値でない、Mc<My・Rc<Ryが成立しない場合は、原因付き未算定として解析を停止します。 材料強度係数が1未満であることだけでは拒否せず、当該骨格の成立を確認します。 当該解析で載荷する長期ケースに中間部材荷重がある場合は、この基準へ接続できません。 長期載荷を無効にした時刻歴では、保存されているだけの未適用荷重を拒否理由にしません。
ヒンジ詳細のM–θ骨格と端ばね応答は弾性角を控除した追加角です。総降伏部材角とは区別して読んでください。 数式との一致は対象構造物への設計適用保証ではありません。一般分布荷重やT形方向別の解析、 新しい履歴則への一般化は本接続の対象外です。
文献と確認範囲
- 菅野俊介、刊行元:日本コンクリート工学会(J-STAGE)、「鉄筋コンクリート部材の復元力特性に関する研究」、コンクリートジャーナル11巻2号(1973)、pp.1–9、DOI:10.14826/coj1963.11.2_1。p.5式(12)は割線剛性比の定義、p.6式(13)は軸力比項を含む長方形部材の基本式と原研究の資料域です。原研究の式とSEPIKAが採用する第2式・分岐は同一と扱いません。
- 日本建築学会RC規準改定小委員会、2008年公開改定案・8条、p.9:M/Rと6EI/l、p.13:a=M/Q、pp.13–14:T形補正。公開改定案であり2018年版原本ではありません。
『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷、pp.697–698、式(付1.3-3)・(付1.3-4)は、 長方形部材のせん断スパン比2〜5の基本式と1〜2の短スパン式を示し、軸力比項も含みます。 SEPIKAの採用分岐・第2式とは異なるため、同書への一致を採用理由とはしません。 本節の採用式は軸力比を入力に含まず、原研究の基本式とは軸力比0で比較します。 係数の大小による変形・応力分配への影響は入力と解析条件に依存し、全条件で安全側とは扱いません。 原研究の資料域への制限だけで、異なる採用分岐の設計適用を保証することもできません。 直接引用先の日本建築学会『鉄筋コンクリート終局強度設計に関する資料』(1987)p.17は未閲覧です。 公開資料の式と実装のVerification、原典による分岐裏付け、対象実験によるValidationを分けます。
実装参照:sepika_core::rc_capacity・rc_beam_backbone、sepika_element::factory・frame::concentrated。
入力診断APIの既定は公称値です。実解析入口では ensure_nonlinear_input_with_basis に実使用強度基準を指定します。
耐震壁(せん断非線形トリリニア)
断面検定で算定する参考骨格です。解析で使用する壁エレメントの弾完全塑性せん断モデルとは別です。 ひび割れ点・終局点は純せん断成分に対して評価し、曲げ変形を含む全体剛性を初期剛性に代入しません。
横筋による剛性低下率
SEPIKAでは、明示した横筋比と降伏強度から次式を用います。
\[ \beta_s = 0.46 p_{wh} \sigma_{wh}/F_c + 0.14 \]
ここで \(p_{wh}\) は実壁厚に対する壁横筋比(小数)、\(\sigma_{wh}\) は横筋の明示降伏強度、\(F_c\) はコンクリート設計基準強度(ともに N/mm²)です。 直交2方向の最小筋比 \(p_s\) と独立に横筋比を入力します。最小比を横筋比とみなす推定は行いません。 終局耐力式の等価壁厚換算比 \(p_{wh,e}=p_{wh}t/t_e\) とも区別し、剛性低下率には換算前の比を用います。 水平力分担の係数 \(\beta_u\) とは別の量です。
同書2025年版、付録1-3.1(3)⑤b)、p.714、式(付1.3-29)もこの終局点のせん断割線剛性比を示します。 原研究の強度170〜280 kgf/cm²、高さ/柱心距離0.33〜1.63、壁筋比0〜1.5%を適用域とし、 計算では同じ応力単位にそろえた横筋強度/Fcの比を用います。
「せん断剛性低下率」の骨格への適用点は公開一次資料で補います。 菅野(1973)p.8 式(23)(24)は \(\beta_u=K_{su}/K_{se}\)、\(K_{su}=\tau_u/R_{us}\)、\(K_{se}=G/\kappa\) と定義しています。 したがって終局点への原点からの割線剛性比であり、ひび割れ後の区間勾配の比ではありません。 原研究では全変形から曲げ成分を差し引き、せん断成分を取り出しています。 同論文の記号 \(\beta_u\) は、本節の \(\beta_s\) に対応します。 建築研究資料197号p.7-30の評価手法C、p.7-53式(7.5.41)・図7.5.16(b)でも、せん断強度点への変形を \(Q_{su}/(\beta_u K_e)\) としています。
耐力・骨格点・単位
無開口壁のひび割れ耐力は、次式を採用します。 この参考骨格の採用式は同書2025年版p.712の式(付1.3-26)・(付1.3-27)とは別式です。 同頁の軸応力・断面形状係数を含む推定や、kgf系で定義された下限傾向の式を再現しません。 ひび割れ点の精度や適用対象への妥当性を、終局耐力式の数値一致で保証しないでください。 採用Qcの一次原典について、壁種別・側柱・軸力の対象条件は未照合です。以下の入力成立条件は、Qc式の実験的適用範囲を確認済みであることを意味しません。
\[ A_{w,Qc}=t l_w \quad [\mathrm{mm^2}],\qquad Q_c=0.1F_c A_{w,Qc} \quad [\mathrm{N}] \]
\(t\) は実壁厚、\(l_w\) は側柱中心間の距離(ともにmm)、\(F_c\) はN/mm²です。 この単位は本アプリの採用契約です。kgfへの換算を重ねません。 Qc用面積は壁板の柱心間距離×実壁厚であり、側柱面積を加えません。Qu用の等価断面や軸応力度用の物理面積とも区別します。 例えば \(t=200,l_w=4200,F_c=24\) なら \(A_{w,Qc}=840000\) mm²、\(Q_c=2016000\) Nです。 \(l_w=2100\) ならQcは1008000Nです。柱断面・柱主筋・縦横筋比・軸力はQc式の項ではありません。 ただし、これらの入力はQuや参考骨格全体の成立条件を左右します。 終局せん断耐力Quは建物共通の荒川min/荒川mean二択で、新規モデルの既定はmeanです。 参考骨格の終局せん断耐力も両側柱付き壁を対象とし、圧縮側柱のせいは有限の正値を必要とします。無側柱・片側柱の壁を壁板全縦筋によって代用評価しません。 二式・D/d・等価壁厚teと物理面積A・λの1〜3制限は壁脚内力と初期耐力を正とします。 σ0が0〜0.4Fcの範囲外の場合は未算定とし、限界値へ丸めて成功にしません。 \(Q_c\ge Q_u\) となる入力は骨格を算定できないと通知し、ひび割れ点を終局点へ丸めません。
剛性用の物理断面積 \(A\) は壁板と側柱の重複を控除した軸断面積です。Qc用面積とは別です。 純せん断の有効面積を \(A_s=A/\kappa\)、壁高さを \(h\) とすると、
\[ K_0 = GA_s/h \quad [\mathrm{N/mm}],\qquad \delta_c=Q_c/K_0,\qquad \delta_u=Q_u/(\beta_s K_0) \quad [\mathrm{mm}] \]
骨格は原点・ひび割れ点・終局点の3点です。せん断角 \(\gamma=\delta/h\) を用いる場合は初期剛性を \(K_e=GA_s\) [N] とし、\(\gamma_c=Q_c/K_e\)、\(\gamma_u=Q_u/(\beta_s K_e)\) とします。 矩形均質断面の形状係数は1.2、側柱付き断面では実断面のせん断有効面積を使います。軸断面積を形状係数なしでそのまま代入しません。 区間勾配 \((Q_u-Q_c)/(\delta_u-\delta_c)\) は上記端点からの代数的導出であり、\(\beta_s K_0\) と異なります。
耐力算定とは別の接続例として、Qc2016000N、入力済みQu4000000N、βs0.151308333333333、 K0=1000000N/mm、h3000mmなら、δc=2.016mm、δu=26.436085256375mm、 γc=0.000672、γu=0.008812028418792、第2区間勾配81244.597599514N/mmです。 断面検定の参考骨格欄にはQc用面積と第2区間剛性、Q–δ・Q–γの3点を表示します。グラフのQはkNです。
入力不足と適用範囲
横筋材料は「せん断補強筋」欄の対応材種と、明示された有限かつ正のfyが必要です。 未割当・fy欠落・0・負・NaN・∞・非対応材種は、横筋を必要とする出力を部材ID・役割・原因付きの未検定とします。 SD295等の材料名からfyを推定せず、295への補完も行いません。明示fy=295/345は正常入力です。 βs・側柱付き壁のQuは壁縦筋の材料強度を使いません。Qc式自体は壁縦横筋の材料強度を使いません。 縦筋材料の不足だけでこれらを拒否しません。ただし参考骨格全体には横筋材料と明示した縦横筋比が必要です。 許容応力度の短期検定では直交最小筋比を用いるため、縦横両材種の許容値の小さい方を用い、縦筋不足はその許容検定だけを未検定とします。縦横異材では最小筋比と小さい許容応力度の積を採用します。この積は各方向の鉄筋比×許容応力度の最小値以下となるため、壁筋耐力項を過大評価しない安全側の下界です。 長期のコンクリート負担Q1だけの検定は壁筋材料を必要としません。 この検定入口では、横筋比が未知の入力は非線形参考骨格を未検定とし、最小比を用いる許容検定と区別します。RC壁の非線形解析開始可否は別途判定します。 参考骨格の縦横筋比は有限非負かつ直交最小筋比以上が必要です。Quの横筋寄与には、等価壁厚換算後の1.2%と、実壁厚基準の壁板縦筋比の2倍の小さい方を上限とします。βsは上限適用前の実壁厚基準の横筋比を用います。構造実験確認による上限の例外は適用しません。終局せん断耐力の入力を参照してください。
現時点の参考骨格は、無開口の鉛直壁、通常強度の同質コンクリート、壁厚中央に側柱中心がある断面、明示の縦横筋比を対象にします。傾斜壁の原研究への適用は未確認のため、参考骨格を理由付き未算定とします。主材はコンクリート区分が必須で、Fcが設定されていても鋼材・鉄筋区分をコンクリートとして扱いません。 せん断スパン比M/(QD)は有限の正値が必須です。0・負値・非有限値は入力不正として拒否し、正入力に対する既存Qu式の評価範囲1〜3への制限とは区別します。 側柱がある場合は正方形RC柱に限定し、柱軸が壁高さ方向、断面の二軸が壁面内方向・壁面法線に平行な配置だけを扱います。柱の実局所座標系で判定するため、正方形断面の相対0°・90°は同じ断面として扱い、45°などの回転は理由付き未算定とします。SRC・鋼材・異材料・円形・方向別せいが未解決の側柱を代用しません。 左右の側柱は断面寸法・配筋が同じで、壁とコンクリート種別・Fc・弾性材料特性が同質であることを必須とします。片側だけの側柱や断面・配筋の非対称入力で、強い側の主筋量・大きい側の断面せいを両側へ代用しません。実在する側柱の断面・コンクリート主材を解決できない場合は、その柱を断面から除外せず、側柱IDと不足役割・原因を付けて参考骨格を未算定とします。 側柱主筋量が不足した入力は未検定です。縦横異配筋は明示横筋比で計算できますが、その全組合せに対する実験的精度を保証するものではありません。 菅野の回帰資料域に合わせ、\(F_c=170\text{–}280\) kgf/cm²(約16.67–27.46 N/mm²)、\(h/l=0.33\text{–}1.63\)、横筋比0–1.5%の範囲外を参考骨格の未検定とします。 原研究の回帰相関係数は0.62です。 開口低減をAwへ含める方式に対し、Qcへ適用する低減率と二重適用防止は未確定です。 Qu用・剛性用の低減率や面積控除率から推定せず、有開口のQc・参考骨格は理由付き未算定とします。 Fc・実壁厚・柱心距離が欠落、0・負・NaN・∞の場合、面積の積やQcがoverflowする場合も未算定です。 βsが0–1の内部にない、Qc≥Qu、非有限値または非正初期剛性、終局変形がひび割れ変形以下となる入力も理由付き未算定です。 ゼロ骨格やクランプで有効な結果へ救済しません。 入力編集後は旧結果を現行結果として再利用せず、現在の入力で再検定します。
精度と安全性
横筋式への是正によるβsの増減は縦横の配筋比・fyの大小で変わります。βsが増えると同じQu/K0の終局変形は小さくなり、減ると大きくなります。 この是正を一律に安全側と評価しません。原研究と図の定義への一致と、設計対象での実験的妥当性は分けて扱います。 Qcの変更もひび割れ点と第2区間勾配を変えるため、一律に安全側とは認定しません。 Qc式に軸力項がないことは、任意の引張軸力や全壁形式への適用保証ではありません。 Qcが大きいほど同じ初期剛性で参考ひび割れ点の変形は大きくなりますが、同じ中間荷重での参考変形が小さくなる場合があります。ひび割れ点の大小だけで安全側と判断しないでください。 建築研究資料197号p.7-53–54では評価式Ⅲが終局変形を過小評価する傾向を報告しています。採用式の同定は対象壁での安全側保証を意味しません。 入力不足を未検定にするのは誤った耐力・剛性で合格扱いされることを防ぐアプリの入力契約です。
断面の明示横筋比は参考骨格とRC壁解析で共有します。参考骨格専用の部材上書きは解析の実配筋へ流用しません。解析では独立した明示縦筋比と方向別材料も必要です。RC壁解析の入力と不足時の扱いを参照してください。数量積算は直交最小筋比による既存算定を保持します。 解析用壁の材料・配筋解決はIssue #535、方向別の概算数量はIssue #536で追跡します。質量は総断面積に標準RC密度を適用します。 参考骨格を解析骨格として扱わないでください。これら別機能の方向別配筋への整合は未対応です。 このQcは断面検定の参考3点と骨格成立判定に使います。増分・非線形時刻歴のせん断ばねは、別途求めたQuによる弾完全塑性骨格で、履歴則のひび割れ点もQu/3です。参考Qcの未算定は、そのまま解析開始の拒否を意味しません。解析には独自の材料・配筋・開口・軸力等の制約があります。
出典と適用範囲
N/mm単位を採用し、Qc=0.1FcAw、Awの柱心間距離×壁厚、横筋による0.46/0.14式は本文の定義を用います。有開口のQc・参考骨格は未対応です。
- 菅野俊介(1973)、コンクリートジャーナル11巻2号pp.1–9:p.1図2、p.3図4、p.8式(23)(24)・図16が骨格と資料域を示します。p.3の壁筋比表記は縦横異配筋まで明示していません。
- 建築研究所・建築研究資料197号(2020)第7章:p.7-30、7-53、7-54にQ–γの弾性勾配と終局割線、評価精度を示しています。
- 井戸硲勇樹ほか・日本コンクリート工学会年次論文集42巻2号(2020):p.983 §4.1・式(5)に用いる実壁厚65mmに対する横筋比0.35%を、終局式の等価壁厚比と区別して使用します。SRC/S骨組試験の補足証拠であり、一般RC壁全条件の規定とはしません。
直接引用元の日本建築学会『鉄筋コンクリート終局強度設計に関する資料 1987』p.89本体は未閲覧です。公開原研究・公的研究資料で骨格接続を補足したもので、同書を閲覧済みとはしません。 Qcの引用元である広沢雅也『既往の鉄筋コンクリート造耐震壁に関する実験資料とその解析』p.30本体も未閲覧です。 建築研究所・建築研究資料No.6の公式書誌と原典本文の確認を区別します。 柱主筋比を含むpg式は採用式の根拠としません。その原出典は未確認です。
実装参照:sepika_design_jp::rc::wall_nonlinear、sepika_design_jp::joint_wiring::wall、sepika_core::section_shape::wall_rectangular_section_properties。
SRC / SRRC 梁 せん断終局(充腹・非充腹)
SRC/SRRC 梁のせん断終局耐力について、充腹の累加式および非充腹の格子材・ラチス材の算定には対応していません。 これらの方式によるせん断終局耐力の検定結果は出力しません。
SRC柱についても、鉄骨とRC部分のせん断終局耐力を累加する部材終局検定は出力しません。 矩形RC柱・梁の終局検定結果にSRC部材は含まれません。結果の件数が0でも、SRCの終局耐力を満足したという意味にはなりません。 非充腹の格子材・ラチス材は、矩形RC部と中心H形鉄骨からなる対応断面へ読み替えず、別途検討してください。
SRC柱梁接合部のパネル検定は許容応力度による検定です。終局パネルモーメント、終局強度式の有効体積、帯筋の終局寄与による検定には対応していません。 許容パネルの検定比や、解析でのパネル降伏を、SRC接合部の終局検定結果として用いることはできません。 接合部帯筋の最小比0.1%と配置・定着の適合は、耐力比とは別に確認してください。
現在のSRC梁・柱の許容応力度検定の算定方法と適用範囲は、 SRC・CFT 断面検定を参照してください。
計算根拠と適用の区別
『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷(2026年2月11日)、付録1-4.2 pp.764–770は、 曲げ累加、充腹・非充腹のせん断終局強度、接合部の終局パネルモーメントの算定例を示しています。 これらの終局算定例と、SEPIKAが採用する許容応力度検定は分けて扱います。 同書付録1-4.1 pp.758–759の設計用せん断力を用いる靭性確認も、部材のせん断終局耐力そのものの算定とは異なります。
実装参照:collect_rc_ultimate_checks(crates/sepika-design-jp/src/ultimate/rc_check.rs)の対応断面と、src_panel_zone_check(crates/sepika-design-jp/src/srrc/panel_zone.rs)の許容パネル検定を参照してください。
CFT 柱 終局耐力
CFT 柱は座屈長さにより短柱(\( l_k \le 4D \))、中柱(\( 4D < l_k \le 12D \))、長柱(\( l_k > 12D \))に分類します。採用モデルでは、正方形・角R=0 の長柱の圧縮側 Case2 を津田ほか(1999)の式(20.3)で補足します。現行規準本文との照合は未実施です。
角形 CFT の指針上の対象は正方形です。長方形断面は既存式の準用経路を持ちますが、以下の正方形長柱 Case2 の適用対象には含めません。
終局耐力が算定できても、平14国交告第464号の構造・施工条件や適用除外資格を自動判定した結果ではありません。充填材の Fc≥24 N/mm²、通常の座屈長さ/柱小径≤12、鋼管厚12 mm以上、円形径厚比50以下・角形幅厚比34以下等を別途確認してください。保有水平耐力計算等による適用除外には鋼管の実況を考慮して拘束効果を低減した計算などの条件があり、長柱や円形拘束割増の計算結果だけで除外を認定できません。
角Rが正の角形 CFT
軸終局耐力は、鋼管とコアの形状由来 A・Iy・Iz を既存の軸終局式へ渡して継続します。 終局 N–M は角Rが正の場合に未対応とし、Mu を理由付き未算定とします。 内角Rが 0 の場合も、鋼管に角Rがあればこのゲートの対象です。 軸終局の判定と曲げの算定状態は別に保持し、軸が OK であることを曲げを含む全適合として表示しません。
GUI は Mu 欄に「未算定」と理由を表示します。
MCP は mu_nm: null、mu_nm_unavailable_reason、axial_ok を返し、全算定・全適合の状態と区別します。
未知・不正な角Rで軸終局用の材料領域も求められない場合は、呼び出し入口へエラーを返します。
未対応を Mu=0、無音の行削除、別のせん断方式への自動切替として扱いません。
角形の低水準 N–M 入力は、鋼管・コアとも直角モデルを前提としています。 角丸形状からこの低水準式へは到達させず、明示した角R=0 のときだけ既存式を用います。 正の角Rの終局 N–M は現行の未対応範囲です。
実装参照:cft_mu_nm と collect_cft_ultimate_checks(crates/sepika-design-jp/src/ultimate/cft_check.rs)が、軸終局結果と理由付き Mu 算定結果を分けて返します。
記号・単位と算定式
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( l_k \) | 座屈長さ | mm |
| \( D \) | 鋼管の断面せい | mm |
| \( N_{cu1} \) | 短柱の軸終局耐力 | N |
| \( {}_c A, {}_s A \) | 充填コンクリート・鋼管の断面積 | mm² |
| \( F_c \) | コンクリートの設計基準強度 | N/mm² |
| \( F_y \) | 鋼管の基準強度(降伏強度) | N/mm² |
| \( \xi \) | 円形 CFT の拘束効果による強度割増係数(角形 0) | - |
| \( {}_c \sigma_{cr} \) | 充填コンクリートの座屈応力 | N/mm² |
| \( {}_c \lambda_1 \) | 充填コンクリートの規準化細長比 | - |
| \( R \) | 中柱・長柱の座屈低減係数 | - |
| \( M_u \) | N-M 相互作用による終局曲げ耐力 | N·mm |
| \( {}_s N_{cr} \) | 鋼管の座屈耐力 | N |
| \( {}_s \lambda_1 \) | 鋼管の規準化細長比 | - |
| \( \beta_2 \) | 軸引張終局耐力の引張低減係数(1.0) | - |
算定式:
- 短柱軸終局 \( N_{cu1} = {}_c A \cdot F_c + (1+\xi) \cdot {}_s A \cdot F_y \)(ξ = 円形0.27/角形0)
- コンクリート座屈応力 \( {}_c \sigma_{cr} \)(規準化細長比 \( {}_c \lambda_1 \) の 2 分岐、\( {}_c \lambda_1 = 1 \) で連続)
- N-M 相互作用(角形・円形の (Nu, Mu) 曲面)を用いる。中柱・長柱は座屈の影響を考慮し、正方形長柱の Case2 は次節の式による。角形の鋼管曲げ耐力
sMuの第 2 項は、中立軸におけるウェブ 2 枚の全塑性モーメント2t·xn·(cD−xn)·Fyとする。 - 鋼管の座屈耐力
sNcrの分岐条件は鋼管細長比sλ1で評価する。軸引張終局耐力の引張低減係数は角形・円形ともβ2 = 1.0(鋼管全断面降伏)とする。円形の拘束割増 ξ=0.27 と、短柱N–Mの鋼管応力係数 β1=0.89・β2=−1.08、充填材割増係数0.78はそれぞれ別の係数であり、相互に置換しない。これら円形モデル全体および中柱・Case1・長方形準用の規準適用条件の確認は完了していません。
正方形・角R=0 の長柱 Case2
対象は既存の材料・幅厚比の適用域内にある正方形・角R=0 の断面で、\( F_c \le 58.8399 \) N/mm²、\( 12 < l_k/D \le 30 \) とします。圧縮を正とし、\( N > {}_cN_{cr} \) のとき、\( {}_cN_{cu}={}_cN_{cr} \)、\( \Delta N=N-{}_cN_{cr} \) を用いて算定します。
\[ C_M M_u = \left(1-\frac{\Delta N}{{}_sN_{cr}}\right) \left(1-\frac{\Delta N}{{}_sN_E}\right) \left(1-\frac{{}_cN_{cr}}{N_k}\right){}_sM_{u0}, \qquad {}_sM_{u0}={}_sZ_pF_y \]
鋼管単体の降伏軸力・オイラー荷重と座屈耐力は次のとおりです。終局耐力用の鋼管ヤング係数は 205000 N/mm² を用います。
\[ {}_sN_y={}_sAF_y,\qquad {}_sN_E=\frac{\pi^2{}_sE{}_sI}{l_k^2},\qquad {}_s\lambda_1=\sqrt{\frac{{}_sN_y}{{}_sN_E}} \]
\[ {}_sN_{cr}=\begin{cases} {}_sN_y & {}_s\lambda_1<0.3\\ \{1-0.545({}_s\lambda_1-0.3)\}{}_sN_y & 0.3\le{}_s\lambda_1<1.3\\ {}_sN_E/1.3 & 1.3\le{}_s\lambda_1 \end{cases} \]
境界 1.3 の左右に生じる微小差は補間しません。分岐にはコンクリートの規準化細長比 \( {}_c\lambda_1 \) を用いません。
\[ N_k=\frac{\pi^2({}_cE^{\prime}{}_cI/5+{}_sE{}_sI)}{l_k^2},\qquad {}_cE^{\prime}=(3.32\sqrt{F_c}+6.90)\times10^3\ \mathrm{N/mm^2},\qquad C_M=1 \]
\( C_M=1 \) は節点移動がある場合の採用条件です。\( 1/C_M \) は乗算係数です。 \( {}_cE^{\prime} \) は解析用コンクリートのヤング係数と別の値で、コンクリート剛性には 1/5 を乗じます。合成断面の \( N_k \) を鋼管単体の \( {}_sN_E \) に代用しません。
コンクリートの座屈耐力は、同じ検討軸・座屈長さ・断面を用い、次式により求めます。
\[ {}_cN_{cr}={}_c\sigma_{cr}{}_cA,\quad {}_c\lambda_1=\frac{l_k}{\pi\sqrt{{}_cI/{}_cA}}\sqrt{\varepsilon_u},\quad \varepsilon_u=0.93F_c^{1/4}\times10^{-3},\quad C_c=0.568+0.00612F_c \]
\[ \frac{{}_c\sigma_{cr}}{F_c}=\begin{cases} 2/(1+\sqrt{{}_c\lambda_1^4+1}) & {}_c\lambda_1\le1\\ 2(\sqrt2-1)\exp\{C_c(1-{}_c\lambda_1)\} & {}_c\lambda_1>1 \end{cases} \]
軸力・座屈荷重は N、面積は mm²、断面二次モーメントは mm⁴、塑性断面係数は mm³、長さは mm、強度とヤング係数は N/mm²、曲げ耐力は N·mm です。\( C_M,{}_c\lambda_1,{}_s\lambda_1 \) は無次元です。
有効域と結果の読み方
\( 0<\Delta N\le{}_sN_{cr}\le{}_sN_E \)、\( {}_cN_{cr}<N_k \)、\( C_M>0 \) を同じ検討軸・座屈長さで満たす場合に用います。 純圧縮限界 \( N={}_cN_{cr}+{}_sN_{cr} \) では \( M_u=0 \) です。限界超過は軸 NG とし、負の二因子の積や切り詰め処理で正の曲げ耐力を復活させません。 無効寸法・非有限値・無効な座屈荷重・上記適用範囲外は理由付き未算定とし、既知の軸 NG と算定条件を満たさない状態を区別します。
中柱・円形・Case1・引張と長方形の既存経路はこの Case2 式の対象外です。正の角Rは前述の未対応ゲートに従います。 これらの耐力式の維持と、静的解析の軸力を圧縮正の設計軸力へ変換する共通契約は別です。設計軸力と保存結果に従い、RC・CFT の静的終局需要へは符号を一度だけ変換し、既に圧縮正の増分軸力は反転しません。 曲げ耐力が小さくなると、それを用いる QD1/min の要求せん断力も小さくなり得るため、曲げ耐力だけで安全側とは判定できません(一次設計への適用)。
出典と照合範囲
- 津田惠吾・松井千秋・藤永隆「コンクリート充填鋼管長柱の実用耐力評価式」1999、構造系論文集518、pp.141–146:誌面144の式(18.2)(19)、145の式(20.3)。\( {}_cN_{cu}={}_cN_{cr} \) の選択を用い、式(21.2)の \( 0.9{}_cN_{cr} \) や式(23)の端モーメント比は混在させません。原著の kgf/cm² の値は SI へ換算し、600 kgf/cm² を 58.8399 N/mm² としています。
- 城戸將江・津田惠吾・原口将行、2017、構造系論文集735、pp.753–763:§2.2、誌面754–755の式(7)–(16)によるコンクリート・鋼管の座屈耐力。§3以降の新提案式は採用していません。
採用式は、\( \pi^2 \) 付きの \( N_k \)、SI の \( {}_cE^{\prime} \)、\( C_M=1 \) を用います。角形長柱 Case2 は上記1999年論文の式を用います。
津田ほかの印刷式(22)には \( \pi^2 \) が確認できないため、採用する \( N_k \) を同式の無加工の転記とは扱いません。鋼管分岐の細長比・降伏軸力・オイラー荷重は、2017年論文の \( {}_s\lambda_1,{}_sN_y,{}_sN_E \) で区別しています。
原著の実験照合には150×150×4.5(STKR400)、\( l_k/D=4,8,12,18,24,30 \) 等が含まれますが、全寸法・全材料での実験的妥当性を保証するものではありません。現行規準本文との照合、実験値を用いた本プログラムの Validation は未実施です。
実装参照:sepika_design_jp::ultimate::{cft, cft_nm}、統括は sepika_design_jp::ultimate::collect_cft_ultimate_checks。
終局検定の統括
RC 部材のせん断・付着・軸の余裕度と CFT 柱の軸終局検定を扱います。需要は「静的・両端ヒンジ略算」と「増分・確定総応答」を区別します。部材余裕度の成立だけで、建物全体の保有水平耐力判定が完了したことにはなりません。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( Q_{mu} \) | 曲げ終局時せん断力 | N |
| \( Q_{su}, Q_{bu} \) | 終局せん断耐力・付着割裂耐力 | N |
| \( Q_L \) | 長期せん断力 | N |
| \( Q_{mx}, Q_{my} \) | x・y 方向の曲げ終局時せん断力 | N |
| \( Q_{ux}, Q_{uy} \) | x・y 方向の終局せん断耐力 | N |
| \( M_u \) | 曲げ終局強度 | N·mm |
| \( \text{内法} \) | 部材の内法長さ | mm |
| \( b_{ai} \) | 接合部有効幅の片側分 | mm |
| \( b_i \) | 梁幅 | mm |
| \( D \) | 柱の断面せい | mm |
静的・両端ヒンジ略算の余裕度:部材別にせん断、付着、軸の余裕度を算定します。 梁の余裕率は長期せん断力 QL を分子から控除した \( \frac{Q_{su} - Q_L}{Q_{mu}} \)・\( \frac{Q_{bu} - Q_L}{Q_{mu}} \ge 1.0 \) とします。 ここで QL は、保存した架構用長期組合せの terms と係数で符号付き合成した FEM 重力せん断力の最大絶対値です。部材荷重から単純梁として求める Q0 とは区別します。控除後の耐力が負になる場合は 0 とします。この式は静的・両端ヒンジ略算に限り、増分・確定総応答には適用しません。 柱の 2 軸せん断余裕度は \( 1/((Q_{mx}/Q_{ux})^2 + (Q_{my}/Q_{uy})^2)^{1/2} \) とします。 曲げ Mu は引張鉄筋量を用いる略算式により、柱は軸力を考慮します。 せん断は塑性理論式(既定)または靭性指針式せん断信頼強度 Vu / Vbuを切り替えます。 接合部終局の有効幅は \( b_{ai} = \min(b_i/2, D/4) \)(許容応力度検定と同じ)。 検定対象は用途別 RC 断面(RC 梁・RC 矩形柱・RC 円形柱)とします。梁の曲げ Mu は実配筋の上端・下端と曲げ符号から引張側を選んで算定します(曲げ 0 のときは引張鉄筋量の小さい側)。対応 RC 断面で Fc 未設定・Fc/断面寸法不正・材料未設定・主筋降伏強度未解決・配筋不整合・有効せい 0 以下・せん断補強筋の未対応グレードまたは fy 未設定がある場合は対象外とせず部材 ID 付きエラーとします。柱の 2 軸せん断余裕度は指定により検定します。
設計軸力の符号と保存結果
RC・CFT の終局検定に用いる設計軸力は圧縮正[N]です。静的解析の引張正の断面軸力は、terms の合成後、終局需要へ渡す際に一度だけ符号を反転します。増分解析の軸力は既に圧縮正のため、そのまま用います。 この符号契約は RC・CFT の静的終局検定に共通です。CFT の中柱・円形・Case1・引張・長方形の耐力式を維持することと、解析結果から渡る軸力の符号を正しく扱うことは区別します。
荷重 terms・係数・用途、材料、配筋、形状、解析条件の変更と、読込・Undo・Redo により入力が変わった場合は結果を失効させます。生成元の入力識別が現在と異なる結果の採用も拒否します。保存成果の契約版と再計算の扱いはプロジェクト形式を参照してください。
静的・両端ヒンジ略算の重力参照
設計タブ「終局検定」の「長期架構用組合せを選択」から、保存した架構用長期荷重組合せを明示します。「未指定(未検定)」のままでは需要を算定しません。標準は係数 1 の固定荷重 G と架構用積載 P です。積載がゼロでも、架構用積載の空ケースを明示します。地震重量用積載による代用、名称・ケースの並び順による選択はしません。
選択 terms と係数を保持し、同じ部材・局所軸・評価位置の符号付き 6 成分を線形合成します。
\[ \boldsymbol{F}_G(\xi)=\sum_k c_k\boldsymbol{F}_k(\xi),\qquad \boldsymbol{F}=[N,Q_y,Q_z,M_x,M_y,M_z],\quad \xi=x/L \]
軸力・せん断力は N、モーメントは N·mm、位置は i 端からの無次元位置 \(0\le\xi\le1\) です。絶対値・最大値をケースごとに先に加算せず、符号付き合成後に抽出します。設計軸力は合成した始端値、曲げ需要は合成後の部材内最大絶対値、QL は合成後の local Qy の最大絶対値です。始端 N と最大 M・QL は必ずしも同一断面ではありません。全断面の危険位置探索や補間を行う評価ではなく、この抽出について一律の安全側は保証しません。
両端ヒンジを仮定する要求せん断力は \(Q_{mu}=\alpha,2M_u/l_0\) です。α は上限強度倍率、Mu は曲げ終局強度、l0 は内法長さです。既存の上限強度倍率を用いる限定評価であり、実際の終局時総応答を取得した検定ではありません。
増分・確定総応答
選択方向の確定評価ステップから N・M・Q・塑性回転角 Rp を採ります。画面で閲覧しているステップと需要採用ステップは区別します。解析実行に記録した初期重力の terms・係数・入力識別・載荷有無を参照し、現在の地震重量集合から重力を再構成しません。
外力の釣合いは \(\boldsymbol{f}_{ext}=\boldsymbol{f}_0+\lambda\boldsymbol{q}\) です。確定内力は初期重力を含む総応答なので、Q へ QL を再加算せず、耐力から QL を再控除しません。総応答モードで追加 QL を 0 と扱うことは「総 Q に追加しない」という意味であり、重力なしや QL 不足の代用ではありません。
総応答モードでは QL の未設定を需要モードと組にして「追加なし」と表します。静的略算での QL 未設定は入力不足です。
初期対応の上限強度倍率は 1 に限ります。非 1 は重力まで増幅するため理由付き未対応とし、静的略算への自動切替は行いません。強軸のせん断・付着余裕度は次式です。
\[ \eta_s=\frac{Q_{su}}{|Q_{total}|},\qquad \eta_b=\frac{Q_{bu}}{|Q_{total}|} \]
例えば Qsu=120000 N、Qmu=80000 N、QL=12000 N のヒンジ略算は余裕度 1.35 です。同じ耐力で総 Q=92000 N の総応答は 1.304347826、逆向き総 Q=−68000 N は 1.764705882 です。これは需要モードの演算例であり、実部材の耐力式・実験的妥当性の検証ではありません。
初期重力を明示的に載荷しない解析は参考の水平載荷実験として扱い、一般建物の終局合否へ自動採用しません。非線形総応答へ別の線形重力応力を後から加えて、同じ荷重履歴の解として扱うこともしません。
完全性と未検定
必要な非ゼロ係数ケースが 1 件でも未解析・失敗・参照破損・世代不一致なら、取得できたケースだけで需要を成立させません。重複 terms はケース別に係数を正規化します。係数 0 の term は応力を要求しませんが、参照と係数の構文は検査します。同種別でも選択外のケースは加えません。
必要部材の欠落、空の評価位置列、重複部材 ID、不正位置、非有限の位置・内力、局所軸・結果モデルの不一致も入力不足です。評価位置は 0 と 1 の両端を含む厳密な昇順とし、ケース間で同じ位置列に完全一致する範囲だけを扱います。位置が対応しなければ、欠けた側を 0 とせず理由付きで拒否します。増分応答の空・非有限・未確定・旧世代・方向違いでも静的へ自動代用しません。静的モードは利用者が明示的に選択します。
対応する RC・CFT 対象の需要不足は対象外と区別し、部材 ID・ケースまたは term・用途・原因を伴う理由として返します。直接の部材検定でも欠落を需要 0・無限大余裕度・合格に変換しません。部分結果が得られても全体は不完全・未検定であり、全検定算定済みかつ合格とは扱いません。定義済みで有限な 0 と入力不足は区別します。材料不足などの診断も保持します。
Other、用途不明、LiveSeismic だけの代用、標準外係数の根拠不足は理由付き未対応です。長期組合せに明示した積雪係数を保持しますが、特別な終局重力組合せ、雪の地域・実況条件の自動判定、過強度需要や増分成分だけの増幅には対応しません。許容応力度用の組合せ判定を、すべての終局荷重条件の規準適合とは解釈しないでください。
MCP 固有の未指定時の先頭ケース採用と、単独ケース指定による長期総組合せ不足の扱いは修正・専用受入が未完了です。共有計算の不足診断だけで、MCP 経由の終局検定が受入済みとは扱いません。
根拠と確認範囲
架構応力用積載と地震重量用積載の区別は、文部科学省「建築構造設計指針」平成21年版・平成26年訂正掲載 §4.2 表4.2(本文 p.22/PDF p.29)に確認できます。同指針 §6.2(本文 p.31/PDF p.38)は部材・接合部の終局強度と崩壊機構の関係を示します。文教施設を対象とするため追加係数を一般建物へ無条件に転用しません。表紙・訂正事項・適用範囲(PDF pp.1–2、8)も確認範囲です。
静的標準 G+P と保存長期 terms、総応答の倍率 1 は SEPIKA の先行対応範囲です。総応答へ重力を再加算しないことは、上記釣合いと確定内力の定義からの判断です。これらを学会規準の全終局条件として断言しません。引用学会規準・技術基準解説書の未閲覧原本、特殊条件の適用、実験 Validation は確認済みとは扱いません。
実装参照:需要は sepika_job::ultimate_demand(crates/sepika-job/src/ultimate_demand.rs)、重力条件は sepika_core::load_combo::ultimate_gravity_terms(crates/sepika-core/src/load_combo.rs)、部材検定は sepika_design_jp::ultimate(crates/sepika-design-jp/src/ultimate/mod.rs)が扱います。
免震・制振
本章では、免震支承材(積層ゴム、鉛プラグ入り、高減衰、すべり、転がり、球面すべり)、制振ダンパー(オイル/マクスウェル型、履歴型)、座屈拘束ブレース(BRB)の力学モデルと係数の採用条件を示します。 バイリニア・摩擦・マクスウェル要素等の力学モデルを採用します。製品別の係数・認定値はCategory Bとして扱い、各モデルに対応する製品と入力条件に限って用います。同じ構造形式の製品全般への適用を保証するものではありません。
要素剛性としての組込みはばね要素に示し、設計計算は sepika_design_jp::{isolator, brb} が担当します。
この章の内容
免震アイソレータ
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( n \) | マルチシア配置の方向別ばね本数 | - |
| \( Q_{\max} \) | すべり支承の最大水平力 | N |
| \( \mu \) | 摩擦係数 | - |
| \( N \) | 長期軸力(引張・浮上りは 0) | N |
| \( \gamma \) | せん断ひずみ | - |
| \( C_{Kd}(\gamma) \) | 降伏後剛性のひずみ依存係数 | - |
| \( C_{Qd}(\gamma) \) | 切片荷重のひずみ依存係数 | - |
| \( K_d(t) \) | 温度 \( t \) における降伏後剛性 | N/mm |
| \( K_{d20} \) | 20℃ における降伏後剛性 | N/mm |
| \( Q_d(t) \) | 温度 \( t \) における切片荷重 | N |
| \( Q_{d20} \) | 20℃ における切片荷重 | N |
| \( t \) | 温度 | ℃ |
| \( k_{eq} \) | 等価水平剛性 | N/mm |
| \( H_{eq} \) | 等価粘性減衰定数 | - |
| \( \delta \) | 設計変位 | mm |
| \( \beta \) | 初期剛性と降伏後剛性の比 \( K_1/K_d \) | - |
| \( P_v \) | 転がり支承の長期軸力 | N |
| \( P_o \) | 転がり支承の静定格圧縮荷重 | N |
| \( \sigma \) | 球面すべり支承の長期支持面圧 | N/mm² |
| \( V \) | 球面すべり支承の層間速度 | mm/s |
| \( \mu_0 \) | 球面すべり支承の標準摩擦係数 | - |
マルチシア(多層積層ゴム)低減率
多層積層ゴム(マルチシア配置)の剛性および耐力の低減率を、配置の幾何(せん断ばねの方向余弦の和)に基づいて算定します。
算定式
剛性低減率:
\[ = 2/n \]
耐力低減率:
\[ = \frac{1}{\sum_{i=1}^{n/2} \left( \cos(\pi/n \cdot (i-1)) + \sin(\pi/n \cdot (i-1)) \right)} \]
実装参照:sepika_design_jp::isolator(crates/sepika-design-jp/src/isolator.rs)が剛性低減率(multi_shear_stiffness_reduction)と耐力低減率(multi_shear_strength_reduction)を算定します。
摩擦(すべり)支承
すべり支承の最大水平力を、クーロン摩擦則により次式で算定します(N は長期軸力、引張は 0)。
\[ Q_{max} = \mu \cdot N \]
実装参照:sepika_design_jp::isolator::friction_max_force が最大力を算定し、要素側では 2 次元摩擦として合力を Qmax に射影します(sepika_element::springs::isolator)。
鉛プラグ入り積層ゴム(LRB)統一型・歪依存
鉛プラグ入り積層ゴム(LRB)の剛性と切片荷重は、以下の歪依存モデルにより、ひずみ γ への依存性と 20℃基準の温度換算を算定します。採用係数は対応する製品別モデルの適用条件に限り、他製品へ一般化しません。
算定式
- 剛性ひずみ依存係数 \( C_{Kd}(\gamma) \)(\( \gamma < 0.25:\ 0.779 \cdot \gamma^{-0.43} \)、\( 0.25 \le \gamma < 1.0:\ \gamma^{-0.25} \)、 \( 1.0 \le \gamma:\ \gamma^{-0.12} \)。第1分岐の指数は分岐点 \( \gamma = 0.25 \) での連続性から −0.43)
- 切片荷重ひずみ依存係数 \( C_{Qd}(\gamma) \)(3 分岐)
温度換算:
\[ K_d(t) = K_{d20} \cdot \exp(-0.00271(t-20)) \]
\[ Q_d(t) = Q_{d20} \cdot \exp(-0.00879(t-20)) \]
等価水平剛性、等価粘性減衰:
\[ k_{eq} = Q_d/\delta + K_d \]
\[ H_{eq} = \frac{2}{\pi} \cdot \frac{Q_d \left( \delta - \frac{Q_d}{(\beta - 1) K_d} \right)}{k_{eq} \cdot \delta^2} \]
実装参照:sepika_design_jp::isolator(crates/sepika-design-jp/src/isolator.rs)がひずみ依存係数・温度換算・等価剛性/等価粘性減衰(lrb_stiffness_strain_factor・lrb_intercept_strain_factor・lrb_stiffness_at_temperature・lrb_intercept_at_temperature・equivalent_stiffness・equivalent_damping)を算定します。
転がり支承・球面すべり支承・高減衰ゴム
転がり支承と球面すべり支承には以下の摩擦モデル、高減衰ゴムにはブリヂストン E6/E4 のひずみ多項式を採用します。係数は対応する製品別モデルの適用条件に限って用います。
算定式(代表)
転がり支承摩擦:
\[ \mu = \frac{1.2 + 7.8 \cdot P_v/P_o}{1000} \]
球面すべり支承 標準摩擦係数(MN型ほか):
\[ \mu_0 = 0.043(2.03\sigma^{-0.19} + 0.068) \]
速度依存:
\[ \mu = \mu_0(1 - 0.55 \cdot e^{-0.019|V|}) \]
- 高減衰ゴム(ブリヂストン E6/E4): Geq・Heq・U のひずみ多項式。登録された製品別係数の適用条件に限り、同じ構造形式の製品全般には一般化しません。
実装参照:sepika_design_jp::isolator(crates/sepika-design-jp/src/isolator.rs)が各支承の摩擦係数・ひずみ多項式(rolling_bearing_friction・spherical_bearing_mu0_mn・spherical_bearing_mu_mn・hdr_bridgestone_e6・hdr_bridgestone_e4)を算定します。
支点への免震支承配置
支点(固定・ピン等で拘束された節点)へ免震支承材を配置すると、対象節点はもはや直接の 固定支点ではなく、免震支承材を介して支持される状態になります。この置き換えを次の手順で モデル化します。
- 対象節点と同一座標に、地盤に接地する節点(拘束=全自由度固定)を新規作成します。
- 接地節点と対象節点の間に、長さ 0 の免震支承材要素(節点順は「接地節点→対象節点」)を 追加します。長さ 0 の要素では、局所座標系の材軸(x 軸)を全体座標系の鉛直方向とみなします。
- 対象節点自身の拘束を解放します。免震支承材を介して支持されるため、対象節点はもはや 直接の固定支点ではありません。
免震支承材の水平・鉛直方向の力学特性は マルチシア(多層積層ゴム)低減率〜転がり支承・球面すべり支承・高減衰ゴムの各特性式によります。配置を取り消すと、 生成した接地節点・免震支承材要素を削除し、対象節点の拘束を元の状態へ戻します。
支点免震要素の撤去(単体削除)では、対象節点の拘束を常に固定へ戻します。 設置前の拘束(ピン等)は記録していないため復元しません。設置前と異なる拘束に戻したい場合は、撤去後に境界条件で再設定します。
実装参照:sepika_edit::PlaceSupportIsolator(crates/sepika-edit/src/node_member.rs)が配置を、
sepika_element::springs::isolator の零長要素特例が要素側の局所座標決定を行います。
制振ダンパー
制振ダンパーの復元力特性を、標準的な力学モデル(マクスウェル要素・弾塑性バイリニア)で算定します。
算定式
- マクスウェル型(バネ Kd +粘性ダッシュポットの直列、後退 Euler)のダッシュポット力は次式によります。
\[ F_c = C_0 \cdot \mathrm{sign}(V) \cdot |V|^{\alpha} \]
オイルダンパーのバイパス弁による頭打ち特性(リリーフ)を扱う場合は、リリーフ速度 \( V_r \) とリリーフ後の減衰係数比 \( C_2/C_1 \)(\( C_1 = C_0 \cdot \alpha \cdot V_r^{\alpha-1} \)) を指定し、\( |V| > V_r \) の域を \( F_c = \mathrm{sign}(V) \cdot (C_0 \cdot V_r^{\alpha} + C_2 \cdot (|V|-V_r)) \) の折れ線(リリーフ点で力が連続、勾配が \( C_1 \to C_2 \) に低下)で近似します。 未指定の場合は全域で上式を用います。
- 履歴型(弾塑性バイリニア、鋼材系/鉛/U形ダンパー)
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( F_c \) | マクスウェルダンパーのダッシュポット力 | N |
| \( C_0 \) | 基準の粘性減衰係数 | N·(s/mm)^α |
| \( V \) | ダンパーの相対速度 | mm/s |
| \( \alpha \) | 速度の指数 | - |
| \( V_r \) | リリーフ速度 | mm/s |
| \( C_1 \) | リリーフ速度における接線減衰係数 | N·s/mm |
| \( C_2 \) | リリーフ後の接線減衰係数 | N·s/mm |
制振ダンパーの諸元は、部材ごとに個別指定するほか、名前付きプリセット
(Model::damper_defs)としてライブラリ化し、部材へは値をコピーして割り当てられます
(プリセット自体を更新・削除しても、既に割り当て済みの部材の特性には影響しません)。
実装参照:sepika_element::springs::damper(MaxwellDamperElement、HystereticDamperElement)が算定します。
座屈拘束ブレース(BRB)
座屈拘束ブレースの断面検定は、製品別に設定した許容軸力・限界長さ・端部低減を用い、軸力と座屈長さの検定比から算定します。認定値を用いる場合も、その製品の適用条件を満たす必要があります。 製品は JFE シビル二重鋼管座屈補剛ブレースおよび日鉄エンジニアリングアンボンドブレースを対象とし、メーカー許容値を直接使用します(座屈拘束により全断面降伏まで座屈しない製品特性のため、座屈考慮 fc は用いません)。同じ構造形式の製品全般に適用できることを保証するものではありません。
算定式
- 軸力検定比 \( |N| / N_a \)(
Na= 短期許容軸力、長期は/1.5) - 座屈長さ検定比 \( L_k / \text{限界長さ} \)(\( L_k = \text{部材長} - 2 \cdot \text{端部低減} \))
- 総合 \( \text{ratio} = \max(\text{軸力比}, \text{座屈長さ比}) \)
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( N \) | ブレースに生じる軸力 | N |
| \( N_a \) | 短期許容軸力(長期は 1/1.5) | N |
| \( L_k \) | 座屈長さ(部材長から端部低減を除いた長さ) | mm |
| \( \text{ratio} \) | 総合検定比(軸力比と座屈長さ比の大きい方) | - |
実装参照:sepika_design_jp::brb::brb_check(crates/sepika-design-jp/src/brb.rs)が算定します。
辻・山田モデル(座屈補剛ブレース履歴)
二重鋼管座屈補剛ブレース等で用いられる座屈拘束ブレースの履歴則(混合硬化)は、辻・山田モデルを参照してください。
実装参照:sepika_material::hysteresis::TsujiYamada(crates/sepika-material/src/hysteresis/tsuji_yamada.rs)が算定します。
数量積算
本章では、建物モデルから部位別(柱・大梁・小梁・基礎梁・床・壁・ブレース)に コンクリート体積・型枠面積・鉄筋重量・鉄骨重量・鉄筋継手個所数を概算集計する 数量積算の算定根拠を、構造計算プログラムで慣用される概算数量の拾い出し規則として 示します。
構造計算モデルを唯一の入力とする概算数量であり、施工数量(鉄筋のフック・余長・ 継手長さ、開口補強筋、接合部プレート等の詳細)は対象外とします。
実装は sepika_design_jp::quantity に置いており、
GUI は設計タブ「数量積算」(sepika_app::quantity_view)、
CSV 出力は sepika_app::summary::build_quantity_csv、
MCP ツールは quantity_takeoff(sepika_mcp)から利用できます。
数量積算は解析結果に依存しないため、応力解析の前後を問わず参照でき、モデルを編集する たびに再集計されます(準備計算・応力解析の要再計算とは別に扱います)。GUI では 部位別・階別・構造別・明細・鉄骨種類別・鉄筋径別に集計を切り替えられます。 壁筋は明示横筋比・縦筋比で方向別に概算し、不足する方向は理由付き未算定とします。 未算定を含む鉄筋重量は不完全小計です。仮定径・定着係数はパネルで編集し、Undo/Redoと保存に対応します。 詳しい入力、完全性、解析質量との境界は算定式を参照してください。 二次部材は端点にモデル節点がなくても実長で集計し、階だけ不明な数量は「-」の行へ保持します。 明細の識別と数量全体が未算定になる条件は二次部材の数量を参照してください。
この章の内容
数量積算の算定式
建物モデルの部材・スラブ・壁から、部位別にコンクリート体積 [m³]・型枠面積 [m²]・ 鉄筋重量 [t]・鉄骨重量 [t]・鉄筋継手個所数を、構造計算プログラムで慣用される 概算数量の拾い出し規則により集計します。
入力の適用範囲
主架構線材 Beam・Fiber・MultiSpring・Brace は異なる2つの NodeId による対応入力に限ります。断面未割当や床なしでも、0・1・3節点以上と同一ID二重指定を ElemId・kind・実節点数・期待2・入力NodeId列付きで拒否します。先頭2節点の採用や自動分割による救済、部分成功や数量0への置換はしません。GUIは「未算定」、CSVは [数量積算 未算定]、MCPは status=unavailable・totals=null と同じ理由を示します。正常な2節点の数量長と支持軸は同じ端点を使います。この制限は本製品の入力契約であり、多節点梁理論の制限ではありません。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( H \) | 柱の長さ(床上〜床上) | mm |
| \( L \) | 部材の内法長さ(鋼材・二次部材では材長) | mm |
| \( B, D \) | 梁・柱の断面幅・断面せい | mm |
| \( D_x, D_y \) | 柱の X・Y 方向の断面せい | mm |
| \( n \) | 鉄筋・せん断補強筋の本数 | - |
| \( S \) | 壁筋の定着長さ | mm |
| \( p_{wh}, p_{wv} \) | 壁の明示横筋比・縦筋比(全厚内の両面合計) | - |
各部位共通事項
-
鉄筋(RC 造): フック・余長・重ね継手長さ・溶接継手長さは考慮しない。
-
鉄骨(S 造): 鉄骨重量は次式による。
\[ W = L \times A \times 7.85 \]
ここで \(W\): 鉄骨重量 [t]、\(L\): 鋼材長さ [m]、\(A\): 鋼材断面積 [m²]、 7.85 t/m³: 鉄骨単位重量(積算の慣用値・固定値)。
荷重計算(固定荷重・地震用重量)の鋼材設計用単位体積重量 \( \gamma_s = 78.5\ \text{kN/m}^3 \)、動的解析の物理質量密度 7.85 t/m³ とは用途が 別であり、数量積算の重量はすべて積算の慣用値 7.85 t/m³ によります(値が同じでも 独立の用途。固定荷重は 78.5 kN/m³、質量行列は物理密度 7.85 t/m³)。
-
SRC 造: コンクリート体積は内蔵鉄骨の体積を差し引かずに計算する。
鉄筋の長さ → 重量の換算は JIS G 3112 の単位質量(D10=0.560、D13=0.995、 D16=1.56、D19=2.25、D22=3.04、D25=3.98 kg/m …)によります。 表の呼び径から±1 mm以内は対応する表値を使い、一致しない径は幾何面積πd²/4 [mm²]に 0.00785 kg/(mm²·m)を乗じた概算単位質量で換算します。
部材の分類
主架構の柱・梁は、割当断面の明示用途(柱・梁)で 分類します。梁用途の内訳は、柱との端節点の共有と最下標高との関係で分けます。 二次部材は、配置時の種別(小梁・間柱)で分類します。部材の角度から用途を推定しません。
| 部位 | 判定 |
|---|---|
| 柱 | 主架構の柱用途の線材(傾斜柱を含む)、または二次部材の間柱 |
| 基礎梁 | 主架構の梁用途の線材で、両端標高と最下標高との差がそれぞれ 10 mm 未満、かつ端節点の少なくとも一方を主架構の柱用途の線材と共有するもの |
| 大梁 | 主架構の梁用途の線材で、端節点の少なくとも一方を主架構の柱用途の線材と共有し、基礎梁に該当しないもの |
| 小梁 | 主架構の梁用途の線材で、どちらの端節点も主架構の柱用途の線材と共有しないもの、および二次部材の小梁(実部材との集約条件を満たす場合は線材側のみ) |
| 床・片持ち床 | 床領域の版(主架構が囲む領域は「床」、主架構に取り付く領域は「片持ち床」) |
| 壁 | 壁・シェル要素(3 節点以上) |
| ブレース | ElementKind::Brace |
ここで最下標高は、主架構の曲げ線材(柱・梁を含む、2 節点以上)の先頭 2 節点を 対象とした最小標高です。基礎梁・大梁・小梁の分類に水平条件はなく、勾配梁も 梁用途のまま上表で分類します。標高差がちょうど 10 mm の端を持つ梁は基礎梁に含めません。
構造種別(RC/S/SRC/CFT)は構造種別の判定によります。 複合断面(SRC・CFT)は断面形状で、それ以外は材料の区分で決まります (剛域・仕口パネル要素・一次設計の検定器選択と同じ規則)。
小梁・間柱に CFT 断面が割り当てられている場合は、数量積算全体を未算定とし、部材 ID・種別・断面 ID と禁止理由を示します。断面用途が柱でも、領域内・所属未割当の二次部材は対象外です。鋼管だけの重量を正常な合計として返しません。画面・CSV・外部連携でも同じ未算定状態を表示します。CFT の対応範囲は断面用途を参照してください。
柱
柱長さ \(H\) は両端節点間の実長とし、フェイス控除しません。傾斜材も鉛直投影長ではなく実長を用います。
- コンクリート体積: \( D_x \times D_y \times H \)(円形柱は \(\pi D^2/4 \times H\))
- 型枠面積: \( 2 \times (D_x + D_y) \times H \)(円形柱は \(\pi D H\))
- 主筋: すべての柱で長さ \(H\) として算定します。X・Y 方向で鉄筋径が異なる場合も 隅の重なり合う部分は差し引きません(\(n = n_x + n_y\) 本)。
- フープ: 一組の長さ \( n_x \times D_x + n_y \times D_y \)、
本数 \( H / \text{ピッチ} \)。一組の本数 \(n_x=n_y\) は実配筋(
RectColumnHoop)の 脚数(legs_x・legs_y)を用います。 - 鉄筋継手: 柱頭・柱脚通しの主筋(=min(柱頭本数, 柱脚本数)。単一断面のため 全主筋本数)について階ごとに 1 個所、階高 7.0 m 以上は 7.0 m 毎にさらに 1 個所を加えます。
- 鉄骨(S・SRC・CFT): 種類別(断面名別)に長さと重量 \(W = L A \times 7.85\) を 集計します。SRC は内蔵 H 形鉄骨の断面積 \( 2 B_f t_f + (H_s - 2 t_f) t_w \) を用います。CFT は鋼管重量に加えて 充填コンクリート体積(内空断面 × H)を計上します(型枠は不要)。
大梁
寸法は柱フェイス間の内法長さ \( L = L_{node} - \mathrm{face}_i - \mathrm{face}_j \)
(RigidZone::face_*)によります。
-
コンクリート体積(ハンチなし): \( B \times D \times L \)
-
コンクリート体積(ハンチ付き): \[ B \times D \times L + \frac{(B+B_i)(D+D_i)}{4} L_i + \frac{(B+B_j)(D+D_j)}{4} L_j \] (ハンチ部は平均断面 × ハンチ長さで加算。ハンチ寸法は部材付帯情報 (ハンチ長 \(L_i\)・せい増分・幅増分。剛性には影響しない属性)から取得し、 ハンチ端の全幅 \(B_i = B + \Delta B\)・全せい \(D_i = D + \Delta D\) へ 換算します。未入力の部材はハンチなし)
-
型枠面積: \[ \left( \frac{D_1+D_2}{2} L + \frac{D_i-\max(D_1,D_2)}{2} L_i + \frac{D_j-\max(D_1,D_2)}{2} L_j \right) \times 2 + B L + \frac{B_i-B}{2} L_i + \frac{B_j-B}{2} L_j \] 床との接触がない場合は両側の側面せい D1・D2 をともに D とします。 床との接触がない場合のハンチ投影面積は上式で求め、各増分の負側は 0 にクランプします。 床が接するハンチ付き梁は、側面高さが一定でないため接触型枠の算定対象外です。 ハンチのない一定矩形梁は、次節の左右別接触面を控除します。
-
主筋: 現状の部材モデルは全長 1 断面のため、1 断面(全断面)配筋の主筋長さで算定します。
端部条件 主筋 1 本の長さ 外端 - 内端(タイプ 7) \( L_o + L_2 + D_c/2 \) 両外端(タイプ 7a) \( L_o + L_2 \times 2 \) 両内端(タイプ 8) \( L_o + D_c/2 \times 2 \) \(L_o\): 内法長さ、\(L_2\): 外端の定着長さ(既定 35d)、\(D_c/2\): 柱せいの 半分(フェイス距離)。端部が外端か内端かは、当該節点から梁軸方向 (±45°)に連続する別の水平梁の有無で判定します。 2 断面・3 断面配筋(端部・中央の断面分割、カットオフ筋 +15d。タイプ 1〜6)は 部材が断面分割を持たないため対象外。
-
スターラップ: 一組の長さ \( 2 B + n D \)(\(n\): 一組の本数 =
legs)、 本数 \( L_o / \text{ピッチ} \)。 -
腹筋・幅止筋: 段数(入力値)がモデルにないため計上しません。
-
鉄筋継手: 梁毎に主筋 1 本あたり 0.5 個所、梁長さ 5.0 m 以上は 5.0 m 毎に 0.5 個所を加えます(圧接個所数として集計)。
梁と床の接続面の控除
水平で一定矩形断面の RC・SRC 梁(大梁・主架構小梁・二次小梁)では、 底面と両側面から、左右それぞれの実際の床接触面の和集合を控除します。 梁上面は対象に含めません。同側で重なる床の接触面は一度だけ控除します。
梁の対象内法長を \(L\)、幅を \(B\)、せいを \(D\)、左右の接触集合を \(C_{left},C_{right}\) とすると、mm 系の入力による型枠面積 [m²] は
\[ F = [BL+2DL-\operatorname{area}(\cup C_{left})-\operatorname{area}(\cup C_{right})]\times10^{-6} \]
です。接触面は材軸方向の取付き区間と、床・梁の上下端高さの共通部分で決まります。 柱フェイス距離を持つ梁では接触区間も同じ内法区間へ切り詰めます。 片側床・左右異厚・部分取付き・床の上下ずれを区別し、露出側面高さが負にはなりません。 床厚の最大値と枚数の積、剛性用の厚さ、荷重用の代表厚さは接触面の代用にしません。
入力・単位・適用条件
| 入力 | 単位・意味 | 適用条件・数量への反映 |
|---|---|---|
| 支持材・床板 | 支持材ID・床板ID | 主架構は2節点梁に適用。床の割当領域の有向境界を使用。節点IDが異なっても床境界と梁の平面材軸が接すれば幾何照合する |
| 有向材軸区間 | 始端0・終端1の無次元区間 | 取付き区間を梁内法へ切り詰める。方向から左右を区別する |
| 実厚 | mm、床へ割り当てた断面の板厚 | 正かつ有限。未割当・参照不明・不正厚は未算定の理由を表示する |
| 床上面・下面 | mm、基準階FL+床上面偏心・その上面から実厚を減じた高さ | 水平床の実在する区間だけを控除する。支持材Zから床標高を代用しない |
| 梁上端・下端 | mm、実材軸の標高に断面せいの半分を加減した高さ | 基準両端位置から梁の一律鉛直偏心を反映した実材軸を使う。断面せい方向が鉛直の一定矩形RC・SRC梁に適用する |
| 型枠対象長さ | mm、主架構は柱フェイス間、二次小梁は解決端点間 | 主架構で両端フェイス距離未算定の場合は既存の節点間長を使う |
| 版なし・未設定 | NoPlate / Unset | 版なしは接触なし。未設定は数量未確定として集計を停止する |
| 剛性算入 | 数量接触とは独立 | 剛性計算用スラブ厚0でも、実在床の接触を維持する。現入力には床ごとの算入boolはない |
| 幾何許容差 | 材軸接触10 mm、水平レベル1 mm | 既存の共通幾何判定値を使う。面積を丸めて接触を作らない |
左右の接触は、その材軸区間に接する床の実際の内側に合わせて区別します。 水平レベルの許容差は幾何照合用です。接触型枠の数量を確定するには、梁上端と床上面が それぞれ一定の実標高である必要があります。梁に許容差内の微小な高低差がある場合も、 梁の実高さを水平化することなく接触数量を未算定とします。床の実上面は支持材の高さと独立です。
床板の面積・体積と接触控除には、床板の鉛直配置を共通に使います。 床偏心・FL・板厚の変更は接触範囲へ反映し、支持節点のZ変更だけで床の面積や実体積を増やしません。 床配置に必要な基準階・FL・偏心・断面・実厚が欠落または不正な場合は数量全体を未算定とします。 梁の実材軸は、大梁では両端節点、小梁では支持アンカーの解決位置を基準とし、 梁の一律鉛直偏心を上向き正で加えて求めます。未指定と明示0を区別し、SLからの距離には読み替えません。 梁偏心だけの変更と床偏心だけの変更は、それぞれの実標高と接触範囲へ独立に反映します。 これらの偏心の変更で、支持節点・支持アンカー・床の支持関係は変更しません。 梁の実配置に必要な偏心・位置・断面が未指定または不正な場合は、対象梁と理由を表示して数量を未算定とします。 傾斜梁・傾斜床、断面せい方向が鉛直でない梁、一定矩形でない梁、接触のあるハンチ梁は未対応です。 梁の実配置が解決しても、傾斜梁の接触型枠を算定できることにはなりません。 床接触を持つ2節点以外の主架構梁も、支持材ID付きの理由を表示して未算定とします。 床が傾斜梁の終端付近だけに接触する場合も、材端の入力順によらず未算定とします。 自己交差境界、解決できない支持材・床板・断面の参照も算定できません。 支持材が指定する断面IDが不明な場合は、支持材IDを含む未算定理由を表示します。 断面未割当線は床境界用の線と数量対象の実梁を区別する情報がないため、既存の扱いでは 梁数量に含めません。数量対象梁には有効な断面を割り当ててください。 接触対象梁の断面幅・せいは形状の寸法を正とし、非正・非有限寸法、不正な内法区間、 有限範囲を超える接触・型枠面積は拒否します。 支持アンカーを持つ二次小梁は解決端点間の基準材軸に鉛直偏心を反映し、端点にモデル節点がなくても同じ接触控除を適用します。 支持アンカーのない小梁は実配置を解決できないため、接触型枠を未算定とします。 実部材との集約条件を満たす小梁は実梁側だけで接触控除を集計します。 接触条件が未対応の場合は、床なしの基本型枠面積で代用せず数量全体を未算定とします。 GUIの数量積算には未算定の理由を表示し、MCPは未算定状態、CSVは理由を出力します。
開口・床の欠けは、実際に床を置いた境界で分けて入力してください。 梁に接しない区間や、明示的に版なしとした領域は控除しません。 床板内の孔を面積だけで指定して接触面から一律に差し引く入力はありません。
幅300・せい600・長さ6000 mmでは床なし9.0 m²、全長左右150/100 mmは7.5 m²、 片側150 mmは8.1 m²です。同側に100/150 mmの床を重ねても8.1 m²です。 左150 mmが前半3000 mmにだけ接する場合は8.55 m²で、同位置に100 mmを重ねても変わりません。
根拠と適用範囲
国土交通省大臣官房官庁営繕部『公共建築数量積算基準(令和5年改定)』 第4編第2章第2節1(2)1・2(本文p.12/PDF p.17)及び2(3)2(本文p.13/PDF p.18) の、梁側面・底面から梁と床板の接続面を控除する取扱いを根拠とします。 その他の接続部の1 m²以下の非控除例外は、梁と床板の接続へ適用しません。 左右別の集合・区間積分は、本機能の入力条件に対する幾何計算の定義です。 上記資料が左右別集合の式を直接規定しているという意味ではありません。 上面型枠、勾配部、施工条件、他部位の積算を含む数量全体系への適合は主張しません。
実装参照:sepika_design_jp::quantity::contact::Contacts(crates/sepika-design-jp/src/quantity/contact.rs)が接触和集合を、quantity::try_compute_quantity_takeoff(crates/sepika-design-jp/src/quantity/mod.rs)が数量集計と診断を扱います。梁の共通実配置は sepika_core::model::Model::beam_placement(crates/sepika-core/src/model/beam_placement.rs)で求めます。
基礎梁
コンクリート・鉄筋・継手は大梁と同じですが、型枠は基礎梁用の式
\[ D' L + \frac{D_i-D'}{2} L_i + \frac{D_j-D'}{2} L_j + B L + (B_i-B) L_i + (B_j-B) L_j \]
(側面 1 面+底面。大梁と異なり側面の ×2 は付きません)によります。 床との接触がない場合は断面せいをそのまま用います。床が接する場合は、片面算定の 対象側面を現在の入力から特定できないため、数量未確定の理由を表示します。 基礎フーチングはモデルに定義がないため対象外です。 型枠式で \(D_i-D'\)・\(B_i-B\) が負となる項は、大梁と同様に負側を 0 にクランプします。
小梁
- コンクリート体積: \( B \times D \times L \)
- 型枠面積: \( (B + 2 D) \times L \)(床接触面は左右別に控除)
- 鉄筋: 主筋重量 = 小梁コンクリート体積 × 0.8%、スターラップ重量 = 同 × 0.1% (鉄筋比 × 体積 × 鋼比重 7.85 t/m³ で重量化)
二次部材の実長・階・明細
床領域・壁領域内と未割当の小梁・間柱を集計します。両端支持・片持ち・未解決端の座標を保持するものの いずれも、解決した両端座標の3次元実長を使います。材軸途中の取付き位置や片持ち自由端に モデル節点がなくても算定し、近傍節点への移動や接合部の長さ控除は行いません。 数量の参照によって節点・部材・取付き位置・材料指定は変更しません。 未解決端の数量が算定できることは、荷重を伝達できる支持の保証ではありません。
RC・SRCの矩形小梁は上記の体積・型枠、矩形間柱は柱と同じ体積・側面型枠、 円形RC間柱は次節の式によります。Sの鉄骨は解決した鋼材断面積と実長で \(W=LA\times7.85\) を求めます。二次部材の配筋とSRCの内蔵鉄骨の積算は含みません。 CFTの二次部材は前述のとおり使用できません。
数量の階は低い側の端点(同標高は始端)を基準として、次の順に確定します。
- 基準端点から10 mm以内の全節点について、有効な所属階が1種類だけならその階とします。
- 節点から決まらず基準端に支持部材の取付き位置がある場合、主架構の支持部材の両端が 同じ有効な階に属するときだけ採用します。他の二次部材が支持する場合は同じ規則でたどります。
- なお不明・競合の場合は階を「-」とし、二次部材ID付きの「階帰属未確定」の注記を付します。 数量は全体・部位別・構造別へ含め、鋼材は鉄骨種類別にも含めます。階別にも「-」の行を残します。
支持参照の循環は診断します。上下階をまたぐ支持材の材軸位置、最寄り階、最低階、 中点や断面の階文字列から補完しません。支持や節点の所属情報を変更すると、集計先の階も変わり得ます。 階帰属は材料の強度採用元とは独立で、階表示のために材料の参照元を変えません。
明細は二次部材IDごとに1行とし、画面・CSVでは SM{id} で要素・床板と区別します。
名称があればその名称、空なら断面名を表示します。
同じ完全な端点対(逆順を含む)を持つ2節点の実梁が一意に存在し、二次部材の種別・用途・
断面・解決材料が一致する場合だけ線材側1本へ集約します。この場合の明細IDは実材の要素IDです。
小梁は基準端点対に加えて一律鉛直偏心の指定状態と値が一致することも必要です。
偏心が異なる場合や、一方が未指定で他方が明示0の場合は別の数量明細とします。
両方とも未指定の場合は他の条件が一致すれば集約しますが、床との接触控除に必要な偏心は
補完せず、未指定のまま接触判定が必要になれば数量全体を未算定とします。
間柱にはこの鉛直偏心の比較を適用しません。
支持主梁の途中に載るだけでは同じ実材としません。候補の複数存在・不一致・参照不明は
二次部材ID付きの診断とし、近接節点の配列順で対応を選びません。
断面・材料・形状の不足や不正、端点の解決不能、非有限座標、ゼロ実長、数量の数値範囲超過は、
二次部材IDと原因を示して数量全体を未算定とします。GUIは「未算定」、CSVは
[数量積算 未算定]、MCPは status=unavailable・totals=null とします。
階だけが未確定の場合の数量保持とは区別してください。
材料はモデルの既存の採用元を用い、元の部材強度指定が断面指定より優先される場合も維持します。
供給断面積だけで材料不明を補うことはしません。
計算根拠と適用範囲:国土交通省大臣官房官庁営繕部 『公共建築数量積算基準(令和5年改定)』 (最終改定:令和5年3月29日)第4編第2章第2節2(2)1・2及び2(3)1・2 (本文p.13/PDF p.18)の、設計断面積と長さによる柱・梁の体積、柱側面と梁側面・底面の 型枠面積を根拠とします。端点間実長・接合部無控除・上記の階帰属とID表示は本製品の 概算数量契約であり、同基準の全規定や実施工数量への適合を意味しません。
円形RC間柱
RC の間柱に円形柱断面を割り当てた場合、断面の直径 \(D\) と解決した両端の 3 次元実長 \(L\) をそれぞれ mm で用い、コンクリート体積と側面型枠を算定します。 断面幅・せいや等面積の正方形へ置き換えません。主柱も同じ直径・同じ実長なら同じ数量です。
\[ V = \frac{\pi D^2 L}{4} \times 10^{-9}\quad [\mathrm{m}^3], \qquad F = \pi D L \times 10^{-6}\quad [\mathrm{m}^2] \]
円の断面積と円周から、体積は断面積×実長、側面積は円周×実長として幾何的に導いた式です。 D=400 mm、L=3000 mm の場合は V=0.3769911184 m³、F=3.7699111843 m² です。 集計中は丸めず、GUI・帳票での表示時に丸めます。部位は柱、階は前節の規則で確定し、 構造種別は RC とし、間柱名(未入力なら断面名)を明細に用います。
適用範囲・限界:解決端点間実長を数量長さとし、接合部控除、上面・底面型枠は追加しません。 二次部材の配筋は計上しません。断面・材料が無い場合や端点を解決できない場合は数量全体を未算定とし、 端点に対応するモデル節点が無いことだけでは集計対象から外しません。 直径または解決実長が有限かつ正でない場合は、対象二次部材 ID と原因を示して GUI・帳票・ヘッドレスの数量全体を未算定にします。矩形数量や 0 に置換しません。 数量が数値の有限範囲を超える場合も未算定です。
一次資料の記述:国土交通省大臣官房官庁営繕部 『公共建築数量積算基準(令和5年改定)』 (最終改定:令和5年3月29日、第4編第2章第2節2(2)、本文 p.13/PDF p.18)は、 柱コンクリートを設計断面積と長さによる体積、柱型枠をコンクリート側面の面積と定めています。 この記述が断面実形状による数量の根拠です。
本アプリの判断:端点間実長・接合部無控除は本アプリの概算数量契約です。 同資料の積算長や接続部の規定をすべて実装したものではなく、同基準への全面適合を意味しません。 矩形 RC/SRC、鋼材/CFT、小梁の既存数量規則は各節のとおりです。
床・片持ち床
- 面積: 床板(スラブ)境界の多角形面積(Newell の公式)とし、床が配置されていない 部分は計算しません。
- コンクリート体積: 面積 × 床厚としますが、デッキスラブのデッキ高さ控除は モデル未対応です。床厚は床ごとに割り当てた断面の板厚を用います (床の断面と自重)。断面が未割当の床は数量未算定です。 未入力を体積0へ置換せず、理由を表示します。
- 型枠面積: 面積
- 鉄筋重量: 床コンクリート体積 × 1.0%(片持ち床・出隅も同率)
壁(耐震壁・フレーム内雑壁)
- 寸法: 幅は柱内法距離、高さは梁内法高さ(4 節点壁は周辺柱梁の断面寸法の
半分を芯々寸法から控除。自重算定
wall_clear_area_factorと同じ規則)としたうえで、 開口部面積を控除します。開口は壁版(WallPlate)が持ち、数量拾いの直前に 組み立てる解析用壁要素の合成属性(WallAttr)経由で読みます。 - コンクリート体積: 面積 × 壁厚
- 型枠(壁枠)面積: 面積 × 2
自立壁で高さに「階高」を指定した場合、壁下端から直上 SL までの高さを使います。 その解決に必要な FL・ΔSL が未設定なら、壁版 ID・階 ID と不足項目を示して数量算定を停止します。 未設定階を飛ばした高さや、コンクリート・型枠の正常数量を公開しません。高さを数値で明示した壁や、階高を必要としない数量は維持します。
方向別の壁筋概算
RC壁の横筋には明示横筋比 \(p_{wh}\)、縦筋には明示縦筋比 \(p_{wv}\) を用います。 各比は壁全厚 \(t\) 内の両面合計の鉄筋断面積比であり、面数を再度乗じません。 直交方向の最小比 \(p_s\) から方向比を補完しません。横筋だけを編集した場合、縦筋数量は変わりません。
仮定呼び径 \(d\) [mm]、定着係数 \(c\) [-] に対して、 断面積は幾何面積 \(A_d=\pi d^2/4\) [mm²]、定着長は \(S=cd\) [mm] とします。 これはJISの公称断面積による本数算定ではありません。
\[ n_h=\frac{p_{wh}tH}{A_d},\qquad n_v=\frac{p_{wv}tL}{A_d},\qquad \ell_h=n_h(L+2S)10^{-3},\qquad \ell_v=n_v(H+2S)10^{-3} \]
\(n_h,n_v\) は丸めない等価本数 [-]、\(\ell_h,\ell_v\) は総延長 [m] です。 重量 [t] はそれぞれ総延長に呼び径の単位質量 [kg/m] を乗じ、1000で除して求めます。 既定はD10(0.560 kg/m)、定着35dです。単位質量表と幾何面積を併用する本製品の概算仮定であり、 実際の径・ピッチ・配筋本数を拾い出した施工数量との照合を意味しません。
4節点壁は上記の内法寸法、内法を解決できない壁は多角形面積と高さから求める等価幅を用います。 開口面積はコンクリート・型枠から控除しますが、壁筋には開口欠損、開口補強、端部配置を詳細に反映しません。 フック・余長・重ね継手等も未考慮です。これらの省略を施工数量の安全側評価とは扱いません。
未入力・明示0と小計の読み方
方向比の未入力はその方向だけを未算定とし、入力済みの他方向、コンクリート、型枠の数量は保持します。 有限・非負の明示0は、その方向の延長・重量0を算定済みとして表示します。 これは構造上の最小配筋への適合を意味しません。降伏強度や解析耐力用材料の不足だけでは数量を拒否しません。 負値、NaN、正負の無限大は無効値です。壁厚・算定寸法・仮定径には有限・正、定着係数には有限・非負を要します。 換算結果が非有限の場合も、0への置換による成功にはしません。
GUI・CSV・MCPでは、部材明細と部位別・階別・構造種別・全体集計に鉄筋の完全性を付します。 未算定方向が含まれる重量は不完全小計で、算定できた鉄筋だけの和です。 対象がない集計は対象なし、不足がない集計は算定済み概算です。 未算定理由には要素ID、元壁版ID(対応する場合)、断面ID、横筋/縦筋を示します。 GUIは共有設定欄に仮定径・定着係数を、方向行に算定済みの総延長・重量・状態と未算定方向の理由を表示します。 CSV・MCPの方向明細には径も付します。 径別の重量・延長も算定済み分の小計なので、全体の完全性・理由を併せて確認してください。
上記「壁」の数量は、解析要素になる壁版(条件は 壁エレメントモデル)だけが対象です。
解析要素にならない壁版(取り付く壁版〔パラペット・腰壁・垂れ壁・自立壁〕、 間柱で分割された壁版、壁領域の一部を占める腰壁・垂れ壁など)は、壁版から直接 (開口控除後の正味面積×壁厚)算定し、雑壁の区分へコンクリート体積・型枠面積を 計上します。壁版から直接拾う経路の鉄筋積算は未実装で、横筋・縦筋とも理由付き未算定、 鉄筋重量は不完全小計とします。配筋量0の完全な数量とは扱いません。 断面・壁厚・境界が未解決または不正な壁版も、壁版ID・断面ID・方向・理由を持つ不完全な対象として残します。 その数値を完全な数量とは扱わず、入力を補完して再集計してください。 解析要素として拾った壁版は直接経路で再び数えません。 仕上げ・増打ちの面荷重は重さの入力であって厚さではないため、 コンクリート体積には含めません。この経路では周辺柱梁の 断面寸法の控除(内法化)を行わず、壁版の輪郭そのもの(芯々)で面積を求めます。 壁版は 取付き先や自由端を持ちうるため、四周の柱梁から内法を導く前提が成り立たないからです。 同じ壁でも、解析要素になる場合(内法)とならない場合(芯々)で数量がわずかに変わります。
ブレース
- 長さ: 節点間距離 \( L_B = \sqrt{L^2 + H^2} \)
- 各階・部材符号(断面名)毎に種類別の長さと重量 \( W = L_B \times A \times 7.85 \) を集計します。
- 接合部のプレート・ボルト等は考慮しない。
算定係数の既定値(QuantityCfg)
| 項目 | 既定 | 意味 |
|---|---|---|
anchorage_dia_factor | 35 | 主筋・壁筋の定着長さ係数(L2・S = 係数 × 呼び径) |
assumed_wall_bar_dia | 10 mm | 壁筋の仮定呼び径(等価本数・定着長・単位質量換算に使用) |
beam_main_ratio | 0.8% | 小梁主筋の鉄筋比(コンクリート体積比) |
beam_stirrup_ratio | 0.1% | 小梁スターラップの鉄筋比 |
slab_rebar_ratio | 1.0% | 床・片持ち床の鉄筋比 |
数量積算パネルで仮定壁筋径と定着係数を編集できます。変更はUndo/Redoの対象で、
モデルの共有数量設定として.ovikaへ保存します。保存後に読み直したモデル、CSV、MCPも同じ設定で再集計します。
MCPのSetQuantityCfgも共有設定を編集します。定着係数は大梁・基礎梁の主筋定着にも使用します。
数量設定の変更では、標準RC密度による自重・解析質量・解析応答は変えず、既存の正常な解析成果を保持します。
積算した鉄筋重量を解析質量へ加算しません。
実装参照
- 算定式(純関数):
sepika_design_jp::quantity::member - 鉄筋単位質量:
sepika_design_jp::quantity::rebar - 鋼材単位重量(7.85 t/m³):
sepika_core::units::STEEL_UNIT_WEIGHT_TAKEOFF_T_M3(crates/sepika-core/src/units.rs) - モデル走査・集計:
sepika_design_jp::quantity::try_compute_quantity_takeoff(モデルの共有数量設定。前提・未対応の注記は集計結果に付します) - GUI:
sepika_app設計タブ「数量積算」(部位別・階別・明細・鉄骨種類別・ 鉄筋径別の切替、CSV エクスポート) - CSV:
sepika_app::summary::build_quantity_csv(レポート CSV にも[数量積算 *]セクションとして常時出力) - MCP:
quantity_takeoffツール(group_by = category / story / structure / steel / rebar / detail)