部材荷重(等価節点力・固定端内力)
部材に作用する分布荷重を節点力へ変換し、固定端内力を算定します。 根拠は力学で、Hermite 形状関数による等価節点力(consistent load)と両端固定梁の固定端内力に基づきます。
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( Q \) | 分布荷重を形状関数で節点へ変換した等価節点力 | N |
| \( N \) | 形状関数(軸は線形、曲げは Hermite 3 次) | - |
| \( w \) | 部材に作用する分布荷重(線荷重) | N/mm |
| \( P \) | 部材に作用する集中荷重 | N |
| \( f_{FEF} \) | 固定端内力(等価節点力の符号反転) | N |
| \( N_{FEF}(x) \) | 固定端のスパン軸力(引張正) | N |
| \( R \) | 分布荷重の合力 | N |
| \( R_i,\ R_j \) | 分布荷重の i 端・j 端の分担反力 | N |
| \( L \) | 部材長 | mm |
| \( a \) | 集中荷重の i 端からの距離 | mm |
作用方向
作用方向は全体座標系のベクトル \( d=(d_x,d_y,d_z) \) で与え、次のノルムで正規化した単位方向へ集中強度 P [N] または分布強度 w [N/mm] を作用させます。
\[ n = \sqrt{d_x^2+d_y^2+d_z^2}, \qquad \hat d = d/n \]
各成分が有限で、浮動小数点の平方和・平方根により求めた n が有限かつ 1e-12 以上であることを計算条件とします。これは数値正規化の適用条件であり、構造規準の許容値ではありません。数学的に有限・非ゼロの方向でも、平方和のアンダーフローやオーバーフローにより条件を満たさない場合があります。
条件を満たす非単位方向は単位方向と同じ荷重を与えます。全荷重ケースの集中・分布荷重を強度によらず検査し、不成立なら対象と理由を示して計算を拒否します。入力の方向は保持し、重力方向への置換・荷重削除・ゼロ強度化は行いません。編集・保存との関係は荷重の入力を参照してください。
局所軸へ射影した方向成分の絶対値が 1e-15 未満なら、その軸への成分を与えません。この成分別の数値処理と、方向ベクトル全体の成立条件は別です。軸力だけが生じる荷重や、あるせん断軸と直交して別の軸へ作用する荷重を、無荷重とはみなしません。
実装参照:方向条件は sepika_core::model::MemberLoad::validate_direction(crates/sepika-core/src/model/load.rs)、正規化と局所軸への分解は sepika_element::frame::member_load::resolve(crates/sepika-element/src/frame/member_load.rs)です。
算定式
等価節点力(軸は線形形状関数、曲げは Hermite 形状関数、分布荷重は 3 点 Gauss 積分):
\[ Q = \int N^T \cdot w~dx \]
固定端内力(等価節点力の符号反転):
\[ f_{FEF} = -Q \]
節点変位による断面内力に、固定端のスパン内力を重畳します。軸力は引張を正とし、局所 x 軸正方向の荷重を正として、固定端のスパン軸力を次式で求めます。
\[ N_{FEF}(x) = -f_{FEF,i,x} - \int_0^x w_x(s)\,ds - \sum_{a_k<x}P_{x,k} \]
集中荷重位置では i 端側の極限値を返します。等分布軸荷重では軸力は線形、線形に変化する分布軸荷重では二次式となります。梁・ブレースとも軸力には同じ釣合い式を用います。
ブレースの扱い
ブレースは軸剛性のみを持つトラス要素のため、曲げ・せん断・ねじりの剛性がありません。 Hermite 形状関数による等価節点力は材端モーメントを含みますが、ブレースはこれを負担できず、 節点へ外力として撒かれるだけになります。そこでブレースに限り、材軸に直交する成分を 材端モーメントを生じない静定分配(単純梁の反力と同じ配分)で両端へ配ります。
区間 [a, b] に載る分布荷重では、合力 \( R \) と i 端まわりの 1 次モーメントから両端の分担を 決めます。集中荷重 \( P \) が i 端から距離 \( a \) にある場合は、てこの原理そのものです。
\[ R_j = \frac{1}{L}\int_a^b w(s)\,s~ds, \qquad R_i = R - R_j \]
\[ R_j = P\frac{a}{L}, \qquad R_i = P\left(1 - \frac{a}{L}\right) \]
符号付き線形分布の合力・一次モーメントは床の単純梁反力と同じつり合い式です。合力ゼロでも反力対を保持し、反力比を制限しません。これは任意の荷重を地震重量へ採用する規則ではありません。 静定分配では部材長の下限を1e−9 mm、点位置比を0〜1とし、分布は終了位置が開始位置以下なら無視、それ以外は原区間で積分します。解析へ入力する分布荷重は、有限で支間内の正の幅を持つことが必要です。
線形分布の合力と部分切断
始端 a [mm]、終端 b [mm] の強度をそれぞれ w₁、w₂ [N/mm] とし、b > a とします。切断によって残る区間 [u, v] の端部強度を wᵤ、wᵥ とすると、幅 h=v−u [mm]、合力 R [N]、i 端まわり一次モーメント S [N·mm] は次式です。
\[ w(s)=w_1\frac{b-s}{b-a}+w_2\frac{s-a}{b-a},\qquad w_u=w(u),\quad w_v=w(v) \]
\[ R=\frac{h}{2}(w_u+w_v),\qquad S=uR+\frac{h^2}{6}(w_u+2w_v) \]
位置 x [mm] まわりの荷重モーメントは xR−S [N·mm] です。切断区間は元の荷重区間との共通部分とし、空なら合力・モーメントはゼロです。符号付きの端部強度をそのまま用いるため、合力がゼロでも一次モーメントが残る場合があります。
浮動小数点で区別できる正の幅は、微小であっても元の線形分布として扱います。幅を理由に始端強度一定へ置き換えたり、荷重を省略したりしません。端部近傍も同じ扱いです。ただし、座標・強度の表現精度や演算のオーバーフロー・アンダーフローを含む、任意の極小・極大入力での数学的精度保証ではありません。
この合力と一次モーメントをブレースの静定分配および断面の荷重釣合いへ用います。曲げを負担する部材への等価節点力は、引き続き形状関数による算定です。
載荷状態と部材力
全固定の通常梁でも、節点変位がゼロのまま部材荷重による材端力と評価断面の内力を保持します。 線形静的解析の部材力には、変位による応答と元の荷重による固定端・スパン内力を含めます。
通常のファイバー・マルチスプリングと材端集中ばね梁では、各載荷段階の部材荷重の絶対強度を材端材料の釣合いと端部接続へ反映します。 同じ強度を再指定しても加算せず、荷重だけが変化する場合も置換し、空の荷重状態では部材荷重を解除します。 節点の釣合いに用いる残差と、物理材端力・可撓端力・評価断面の内力は同一の載荷状態に対応します。 等価節点荷重を解析右辺と要素応答へ二重に加えません。
部材荷重を含む物理端力は、弾性の場合に \( f=Ku-Q \) です。 断面の内力分布はその端力と元の分布・集中荷重の切断片の釣合いから求めます。 材端間を荷重のない直線分布として補間しません。既存の Hermite 離散化と材端の塑性モデルを用い、 部材中間の塑性化を追加するものではありません。
非線形時刻歴では、長期荷重の元の部材荷重を静的に導入し、初期記録から後続ステップまで保持します。 モデル全体に独立自由度があっても、拘束方向の等価荷重だけが残って縮約右辺がゼロになることがあります。 この場合も長期部材荷重の導入を省略しません。動的初期変位・速度は長期解からの増分です。 要素の試行が失敗した場合、荷重状態と材料履歴をともに直前の状態へ戻し、既存の保存再開でも両者を復元します。
壁接続材には既存の壁法線解放・剛域・材料釣合いを用います。 RC壁の静的一次参照では、側柱の材軸に直交する部材荷重を含む条件は、対象と理由を示して解析前に拒否します。 初期Quの長期軸力用の側柱軸方向荷重は既存の対応範囲です(壁脚内力と初期耐力)。 要素内部の荷重応答を評価できることと、公開解析の適用条件を満たすことは区別します。
材端集中ばね梁では、部材荷重による可撓端力を端部の固定・ピン・半剛接条件に合わせて求め、 強軸曲げの端ばねと弾性梁の局所釣合いに含めます。剛域上の荷重も、その作用位置のモーメントを含めて支持へ伝えます。 RC梁の総角基準でも、部材荷重を含む曲げモーメントから弾性角を控除して材料へ接続します。 N-M相関には、各可撓端における荷重込みの軸力をそれぞれ用います。 局所釣合いが収束しない場合は解析を失敗として扱い、直前の荷重・変位・材料状態を保持します。
例えば、軸方向の一定分布荷重 w [N/mm] を受ける長さ L [mm] の片持ち梁では、 固定端からの距離 x [mm] における引張軸力は \( N(x)=w(L-x) \)、固定端反力は −wL [N] です。 先端変位 \( wL^2/(2EA) \) と、固定端・中央・自由端の軸力を同じ載荷状態で評価します。
実装参照:通常材の載荷状態は sepika_element::frame::fiber::FiberBeam(crates/sepika-element/src/frame/fiber/mod.rs)、
荷重の釣合いは crates/sepika-element/src/frame/fiber/constitutive.rs、
集中ばね梁は sepika_element::frame::concentrated::ConcentratedSpringBeam(crates/sepika-element/src/frame/concentrated/mod.rs)、
解析への受渡しは crates/sepika-solver/src/common/linear_load.rs と crates/sepika-solver/src/common/elem_loop.rs、
時刻歴の長期載荷は crates/sepika-solver/src/dynamic/timehistory/nonlinear.rs です。
ブレースの内力回復
合力と作用位置の 1 次モーメントがともに保存されるため、建物の総重量・支点反力はこの扱いに よって変わりません。材軸方向の成分は形状関数が線形で静定分配と一致するので、配り方を 変える必要がありません。内力回復でも、ブレースには軸力以外の固定端内力を与えません (材軸直交成分は荷重ベクトル側で両端へ流し切っているためです)。
実装参照:sepika_element::frame::member_load(crates/sepika-element/src/frame/member_load.rs)の consistent_load_local・fixed_internal_local が算定します。
荷重込み断面力と切断片の荷重合力は同モジュールの LoadedFrameSection が算定します。
配り方の選択は SpanLoadTransfer が表し、要素種別からの振り分けは
sepika_solver の span_load_transfer が行います。