ファイバー断面(M–φ 積分)
ファイバー断面の断面力と接線剛性は、平面保持仮定に基づくファイバー断面積分で算定します。
算定式
ファイバーひずみ(平面保持):
\[ \varepsilon = \varepsilon_0 - \kappa_z \cdot y + \kappa_y \cdot z \]
断面力:
\[ N = \sum \sigma \cdot A \]
\[ M_y = \sum \sigma \cdot A \cdot z \]
\[ M_z = \sum (-\sigma \cdot A \cdot y) \]
- 接線剛性 3×3 は各ファイバーの \( E_t \cdot A \)、\( E_t \cdot A \cdot y \)、\( E_t \cdot A \cdot z \) の総和として求めます
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( \varepsilon \) | ファイバーのひずみ | - |
| \( \varepsilon_0 \) | 断面の軸ひずみ(図心位置のひずみ) | - |
| \( \kappa_y, \kappa_z \) | y 軸・z 軸まわりの曲率 | 1/mm |
| \( y, z \) | 断面内のファイバー位置 | mm |
| \( N \) | 軸力 | N |
| \( M_y, M_z \) | y 軸・z 軸まわりの曲げモーメント | N·mm |
| \( \sigma \) | ファイバーの応力 | N/mm² |
| \( A \) | ファイバーの断面積 | mm² |
| \( E_t \) | ファイバーの接線ヤング係数 | N/mm² |
実装参照:sepika_section::fiber::section_response(fiber.rs)が算定し、各ファイバーは独立履歴状態を保持します。
ファイバーの配置は断面形状(SectionShape)に応じて sepika_section::mn_surface::plastic_fibers_at が生成します(H 形・箱形は板分割、鋼管・円形は円環分割、RC・SRC・CFT はコンクリート・主筋・鋼材の各領域へ配置)。形状を持たない断面は矩形分割(sepika_section::fiber::rect_fiber_section)です。M–φ / M–θ 曲線は sepika_section::mn_surface で求めて断面詳細ビュー(M-N 相関曲面ビュー)に表示します(弾完全塑性、二分法で軸力整合、\( \theta(M) = \frac{M \cdot L}{6 \cdot EI_0} + L_p \cdot \left( \varphi(M) - M/EI_0 \right) \))。解析要素(ファイバー梁・マルチスプリング梁)は、要素が実際に生成した FiberSection をファイバー積分して応答を決めます。
材料割当と初期接線
以下の γ=23 固定は、材料未割当時の全塑性評価に限った既定値です。材料が割り当てられている場合も、鋼材・鉄筋等のファイバーは既存実装どおり材料の E(Material.young)を用います。コンクリートファイバーは、Fc≤60 では材料から解決した E を NewRC の初期接線へ反映し、Fc>60 では NewRC 固有の Ec を暫定的に外挿します。
CFT の等価断面性能で用いる Ec は、鋼管と充填コンクリートの等価換算のために Fc・コンクリート種類・単位体積重量から算定する値です。これは、CFT 充填コンクリートのファイバー材料に用いる NewRC の Ec(初期接線)とは別の値です。
材料未割当時の全塑性評価には次の既定強度を用います(鋼材降伏 235・鉄筋降伏 345・コンクリート圧縮 24 [N/mm²]、弾性係数 205000 [N/mm²])。 コンクリートの弾性係数は RC 規準式(\( \gamma = 23 \) 固定)によります。
実装参照:既定強度は sepika_section::mn_surface::StrengthParams::default(crates/sepika-section/src/mn_surface/types.rs)が与え、コンクリートの弾性係数は sepika_core::section_shape::concrete_young_modulus(crates/sepika-core/src/section_shape/material.rs)が算定します。
ファイバー配置の解像度
H は板領域とフィレット、角形鋼管は角丸外形と内形の差、角形 CFT のコアは同じ内形に配置します。 角丸部は四分円・四分円環、フィレットは四分正方形から四分円を除いた領域へ分解します。 各セルの面積と一次モーメントを積分して面積・図心を求め、総面積だけを事後スケーリングする処理は行いません。 フィレット半径・角Rが未知・不正の場合は、配置の入口で理由付きエラーとなります。
面積保存と曲げ・応力分布の精度は別の検証項目です。 セルの図心で応力を評価するため、通常配置の誤差には過大・過小の両方があり、安全側とは認定していません。 公開の軸力一定曲げ耐力の照合では、H-400×200×9×12 の 1/40 配置で約 3.07% の差があり、フィレット半径 0 の変更前配置にも同じ差があります。 1/2560 の検証配置では、代表方向・軸力の曲げ耐力と両軸 I を独立積分比 0.1% 以内で照合していますが、通常配置に同じ精度を保証するものではありません。
解析要素の形状配置は、最大寸法の 1/16(下限 1 mm)を目標とする既定分割を用います。 代表例 H-400×200×9×12、フィレット半径 13 mm の既定分割では、強軸 I の差が約 −0.095%、弱軸 I の差が約 −1.705% です。 フィレット半径 0 の既定分割の差は約 −0.097%、−1.703% であり、形状による変化と既存の分割誤差を区別して評価します。 これらの差を、一般的な応答・耐力が安全側になるとの保証には用いません。
全塑性評価の配置は、M-N 相関用マルチファイバーと単純降伏バネには細分割(最大寸法の 1/40 目安)、M-N 相関用マルチスプリングには粗い配置(最大寸法の 1/4 目安)を用います。 鋼管・円形の円環分割は、細分割では周 48・薄肉径方向 4・中実径方向 12、粗い配置では周 8・薄肉径方向 1・中実径方向 2 です。 非対称断面(山形・溝形・T 形等)は断面積重心へ座標を平行移動し、曲げの基準軸を図心に取ります。 中心配置・直角Hを持つ矩形SRCでは、Hの上下フランジとwebの3枚板を非重複領域とし、その占有位置を外形コンクリートから除きます。H境界で残存コンクリートを正面積の矩形領域へ分割してからメッシュ化します。セル中心の内外判定による丸ごとの削除や、総面積だけの縮小は行いません。Fiber / MultiSpring の応力積分、M–N、M–φ と表示は同じ材料領域を用います。
主筋は実座標に1本面積を持つ離散ファイバーとして加算する近似を保持し、その占有コンクリートは控除しません。したがって主筋なしではΣAf=Ag、主筋ありではΣAf=Ag+Arです。ΣAfを物理断面積・体積や質量の算定に用いません。主筋位置のコンクリート応力σc(εr)に対応するΣσc(εr)Ar、弾性時のΣEcArが重複増分となり、応答・耐力を一律安全側とは認定していません。主筋とHの実干渉、主筋同士の不正な近接・重複、断面外配置は入力エラーとして拒否します。
対象の幅・せい・H寸法・板厚・分割寸法は有限正とし、Hは矩形内に収まり各板が正面積・非重複となる必要があります。材料別面積と図心は分割寸法に依存しませんが、セル中心評価によるI・応答の離散誤差は残ります。b300、D600、H400×200×8×12、主筋なしの材料別I誤差は、M–N用1/40配置で最大0.610%、M–N用1/4配置で最大25.08%です。解析要素Fiber / MultiSpringの既定37.5 mm分割では、材料別Iの最大差は2.876%、連続領域の強軸EIに対する差は−0.279%です。3.75 mmへの細分化では材料別Iの最大差が0.046%へ収束します。通常の粗い表示・ばね配置に同じ精度を保証するものではありません。
平面保持、材料ごとの応力・接線の面積積分は Taucer・Spacone・Filippou UCB/EERC-91/17(1991年、§3.2–3.5、本文pp.46–57、式3.24–3.25)を根拠とします。主筋の重複を含むn表現とn−1との違いは、日本建築学会 2008年8条公開改定案(pp.2–4、解8.12–8.14後の注)にも示されます。後者はRCの式の注記であり、SRC全履歴則の実験的精度保証ではありません。一般幾何、全RCの主筋円形控除、新たな拘束・局部座屈・付着滑りのモデルは対象外です。
実装参照:細分割と粗い配置の解像度の選択は sepika_section::mn_surface::plastic_fibers(crates/sepika-section/src/mn_surface/fibers.rs)が行います。
M–N 相関曲面
剛塑性(全塑性応力分布)の支持点法で算定します。 平面保持のひずみ速度方向を単位球面上で掃引し、各方向でひずみ符号に応じた限界応力(鋼は ±fy、コンクリートは圧縮のみ)を積分した断面力が曲面上の支持点になります。 単純降伏バネは軸バネと回転バネの連成を線形相関(\( |N|/N\text{許容} + M/M\text{許容} = 1 \))で考慮し、曲面は N 軸を頂点とする双錐になります。 耐力 0 の軸があると退化するため、参照耐力には下限を設けます(軸耐力 1.0 [N]、モーメント耐力 1.0 [N·mm])。
実装参照:sepika_section::mn_surface::{build_surface, build_simple_spring_surface}(crates/sepika-section/src/mn_surface/surface.rs)が支持点法で構築し、支持点の断面力は sepika_section::mn_surface::plastic_point(crates/sepika-section/src/mn_surface/plastic.rs)が算定します。
M–φ / M–θ 曲線(断面詳細ビュー用)
弾完全塑性のファイバー評価で、曲率上限は最外縁ひずみが降伏ひずみの約 12 倍となる曲率とし、軸力整合は 80 回の二分法で行います。
初期剛性は最初のステップの割線とします。
この曲線は断面詳細ビュー(M-N 相関曲面ビュー)に表示するもので、解析要素(ファイバー梁・マルチスプリング梁)の応答は実 FiberSection のファイバー積分が決めます。
実装参照:sepika_section::mn_surface::{m_phi_curve, m_theta_curve}(crates/sepika-section/src/mn_surface/m_phi.rs)が算定します。
RC 主筋点の配置(既定)
矩形断面の主筋点は、断面検定の有効せいと同じ sepika_core::rc_rebar_geom の規約で置きます。
- 縁から第 1 段中心: \( \text{かぶり} + \text{せん断補強筋径} + \text{主筋径}/2 \)
- 段間隔: \( \text{主筋径} + \max(25,\ 1.5\cdot\text{主筋径}) \)(配筋指針のあき)
- 円形断面の周方向主筋半径も、縁から同じ第 1 段距離を用います(ファイバー配置の多段は未対応)。整合質量では、段間隔の規約に従って各段の半径を内側へ移します