自重の長期応力解析への接続(DL 荷重ケース)
部材自重・壁自重・ダンパー自重を、固定荷重(LoadCaseKind::Dead)の標準荷重ケース「DL」の内容として自動生成し(スラブ固定荷重の分配と合算)、長期応力解析・荷重組合せへ接続します。
床(スラブ)の自重はここには含まず、床の断面の板厚と材料から算定して床荷重の分配へ乗せます(床の断面と自重)。自重の算定対象を部材・壁・ダンパーに限ることで、床の重量が両方から二重に載るのを防いでいます。
梁・ブレースの本体は等分布荷重、柱は既存の節点自重を載せます。梁の床板下面までの嵩上げは、本体と分けた区間荷重として加算します。壁版は解析Wall生成有無によらず共通総量を支持部材へ一度伝達します。階帯集計はDL支持比や反力から独立です。シェルは既存の頂点節点荷重を維持します。
RC/SRC 柱の仕上げ重量も、階共通条件と断面形状の規則で DL と地震用重量を共通算定します。 未設定は 0 N/mm² とし、もっとも高い材端節点の所属階の値を柱全体へ適用します。 傾斜・水平配置・複数階にまたがる Column も同じ規則とし、所属階未解決はエラーにします。 柱自重の節点荷重・部材荷重への伝達方法は、上記の既存規則のままです。
鋼の物理単位重量が固定設計値78.5 kN/m³を超える材料を参照する場合、DLの生成と 設計荷重を必要とする解析を理由付きで停止します。旧自動荷重を最新の結果として使えません。 判定単位・対象・割増前の検査はカスタム鋼材の密度と計算可否によります。
矩形RC/SRC大梁と床板の実重複控除
矩形 RC/SRC の主架構大梁は、囲まれた床板との実重複体積を梁本体から控除します。 大梁の用途で対象を決め、柱・ブレース・S/CFT・二次小梁へは適用しません。 梁は個別の鉛直偏心を含む実配置、床板は基準階の FL と個別の鉛直偏心、および床断面の実板厚を使います。 剛性へ算入するかにかかわらず、支持関係から実在する床板を解決します。建物共通のスラブ厚は控除量・上限・既定値に使いません。
同じ平面位置で、梁の上端・下端を \(z_{b,t},z_{b,b}\)、床板の上面・下面を \(z_{s,t},z_{s,b}\) として、重複高さを
\[h_s=\max{0,\min(z_{b,t},z_{s,t})-\max(z_{b,b},z_{s,b})}\]
とします。片側だけに床板が実在する場合は全梁幅 \(b\)、両側に実在する場合は各 \(b/2\) を割り当てます。 片側の重複高さが 0 でも、床板が存在する限り反対側を全幅へ広げません。 床領域だけがあり床板なしを明示している側は、床板なしとして扱います。未設定・参照切れは床板なしへ読み替えず停止します。 同じ側の同じ床板の支持区間を統合し、正長の区間で別の床板候補が重なる場合は停止します。 梁の左右が別の閉領域なら、それぞれ別の床板です。同じ床板を複数の割当領域へ共有する不正な参照は停止します。
水平・一定断面では控除面積は片側のみなら \(b h_s\)、両側なら \(b(h_L+h_R)/2\) です。 上端一致で板厚 \(0<t\le D\) の場合は、控除後断面積が \(b(D-t)\) に一致します。 板厚が梁せいを超える場合も上下範囲の交差を使い、板厚を梁せいへ丸めません。離れている床板は控除 0 です。
斜梁は有限な梁の端面を含む実上下範囲を使い、控除体積を水平投影長について積分します。
\[V_{ded}=\int\sum_s b_s h_s,dl_{plan},\qquad dl_{plan}=\cos\theta,ds\]
鉛直重複高さを断面せい \(D\) で制限しません。梁本体の体積は \(bD L\) とし、既存の柱面間の自重算定区間を保ちます。 控除重量は除去する梁本体と同じ設計単位重量 \(\gamma_b\) を使い、控除後自重は \(\gamma_b(bD L-V_{ded})\) です。 床板本体は既存の床荷重分配で一度だけ計上します。動的解析の物理質量はこの設計重量の控除で変更しません。
実重複を控除する場合の適用範囲は、各側の囲まれた床板群の支持区間和集合が、梁の自重算定区間全長を隙間なく覆う場合です。 同側に別の床板が隣接する場合は、支持区間の境界ごとに左右の床板を一意に解決し、その区間の実板厚・実高さで厳密に積分します。 床板群の和集合に隙間がある場合や、途中の版なしにより正長の部分被覆となる場合は停止し、全長へ推定したり平均厚に置き換えたりしません。 実重複の控除は断面の幅方向が水平であることを要し、幅方向にも鉛直位置が変化する材軸回りの回転を与えた矩形断面は未対応として停止します。 部分取付き・取り付く床板による実重複控除は未対応です。主架構の梁の部材荷重は鉛直偏心接続を通して解析節点へ伝えます。 床板との実重複がないことを確認できる場合は、支持区間が部分的な場合や取り付く床板でも控除0とし、嵩上げの算定を続けます。回転断面は梁全体と床板の高さ包絡が分離している場合に控除0を確認します。 対象大梁に取り付く床板があり、実重複なしを確認できない場合は、未対応であることを示して停止します。 必要な位置・断面・材料・支持参照が欠ける場合、寸法や採用長さが有限な正値でない場合、体積・重量が非有限または控除体積が梁本体を超える場合は、対象と理由を示して停止します。 準備計算の荷重集計と CSV には梁本体・床板重複控除・嵩上げ加算・合計の内訳を示します。仕上げ・付加重量はこの内訳に含めません。
実装参照:sepika_load::self_weight::girder_self_weight_breakdown(crates/sepika-load/src/self_weight/girder_overlap.rs)と sepika_load::story_gen::self_weight_calc::enumerate_self_weight(crates/sepika-load/src/story_gen/self_weight_calc.rs)が実装します。
床板下面までの梁の嵩上げ
支持・割当関係で梁に対応する床板の下面が梁の実上端より高い場合、その間を対象床板の材料で嵩上げした重量と物理質量を加算します。 大梁・小梁に共通の扱いとし、梁の材料を嵩上げ材料へ流用しません。 梁上端は、梁の実材軸のXY位置を通る鉛直線と実配置した梁上面との交点高さです。 この中心線上の実上端を基準に、水平面内で材軸に直交する実断面の外側投影幅と鉛直の空き高さの積を用います。 円形断面・回転した断面も同じ算定位置と幅を使い、梁幅内の各位置の上面を積分する方式とは区別します。 断面せいの半分を一律に足した値や、斜梁の局所断面上端の座標で梁上端を代用しません。 上下に空きがあることだけで支持対象から外したり、上方の別の床板へ振り替えたりしません。 対象区間は、梁本体の自重算定区間と床板の支持・割当区間の交差です。梁端の控除を保ち、部分的な床板を梁全長へ広げません。 この交差区間、実配置、幅、床板材料が同じなら、梁材種によって嵩上げ増分は変わりません。 RC/SRC大梁の柱面間とS大梁の芯々長のように、既存の自重算定区間が異なる場合は、床板の支持区間が同じでも交差後の体積が異なることがあります。
左右の幅配分は、空き高さではなく実在する床板の有無で決めます。 片側だけならその側に全梁幅、両側なら各半幅を割り当てます。 両側に床板があれば、一方の空き高さが0でも反対側を全幅へ広げません。 床板なしの明示は床板なしとし、割当未設定・参照切れを床板なしへ読み替えません。 同じ側・同じ床板の重複候補を一度だけ使い、同一区間に矛盾する床板候補があれば停止します。 同じ床板が両側に現れる場合も、合計の割当幅は全梁幅を超えません。
各側・各区間の嵩上げ体積を \(V_j\) [mm³]、対象床板材料の設計単位重量を \(\gamma_j\) [N/mm³]、物理密度を \(\rho_j\) [t/mm³] とすると、
\[W_{add}=\sum_j\gamma_j V_j,\qquad m_{add}=\sum_j\rho_j V_j,\qquad W_{mass,add}=9806.65,m_{add}\]
です。設計重量と物理質量は同じ体積から別々に求めます。 設計重量をそのまま物理質量相当重量に使ったり、設計重量を重力加速度で除して物理質量に代用したりしません。 材料は床板の強度指定に対応する材料を優先し、それがない場合に床断面の主材料を使います。 左右で材料が異なれば、それぞれの体積へそれぞれの設計単位重量・物理密度を適用します。 床仕上げ・積載荷重、梁の鉄骨重量割増・被覆・仕上げは嵩上げへ重ねません。
各側の空き高さは \(h_j=\max(0,z_{s,bottom,j}-z_{b,top})\) とし、割当幅を \(b_j\) とすると、
\[V_j=\int b_j h_j,dl_{plan},\qquad dl_{plan}=\cos\theta,ds\]
で体積を求めます。\(s\) は材軸方向の距離、\(\theta\) は水平面からの材軸角度です。 床板の支持境界・有無・材料と、中心線上の梁実上端の式が切り替わる位置、端面、空き高さ0との交点で区間を分けます。 端面と中空部分の境界で梁上端が不連続になる場合は、各区間内からの端点高さを用いて別々の荷重区間にします。 斜梁でも鉛直の空き高さに材軸実長をそのまま掛けず、材軸方向へ渡す線荷重は \(q_{axis}=\sum_j\gamma_j b_j h_j\cos\theta\) とします。 水平で中心線上の梁上端と床板下面が一定の区間では、対象水平長 \(L_j\) に対して \(V_j=b_j h_j L_j\) です。 幅400 mm、水平長6000 mm、片側だけに床板があり空き高さ100 mmなら、体積は0.24 m³です。 設計単位重量78.5 kN/m³・物理密度7.85 t/m³の材料では、設計重量18.84 kN、物理質量1.884 t、物理質量相当重量18.4757286 kNとなります。
DLと地震用設計重量には設計重量を、動的解析と層質量には物理質量を使います。 主架構へ実部材化した小梁は主架構経路で一度、実部材化していない小梁は小梁の設計荷重・支持反力の逐次伝達で一度計上します。 嵩上げは梁の構造断面、剛性・耐力、型枠数量へ算入しません。 床板本体の自重は床荷重経路に残し、梁本体、床板との重複控除、嵩上げ加算を区別します。 準備計算結果とCSVでは、梁本体と重複控除の内訳に加え、嵩上げを床板・材料・左右・作用区間別に確認できます。 嵩上げの体積、設計重量、物理質量、物理質量相当重量を区別して表示します。
必要な実配置・断面・厚さ・材料・支持区間が未解決の場合、有限な正の寸法を得られない場合、材料密度・設計単位重量が非有限または負の場合は対象と理由を示して停止します。 床板がある場合は、空き高さが0でも必要な床板材料を検査します。明示された有効な密度0と、材料未解決は区別します。 梁・床板の位置、厚さ、割当・材料・密度を変更した場合は再生成し、保存・再読込と編集の取り消し・やり直しでも現在入力に対応する重量・質量を使います。
実装参照:sepika_load::self_weight::{beam_upstand_segments, all_beam_upstand_segments}(crates/sepika-load/src/self_weight/beam_upstand.rs)が共通の内訳を算定し、sepika_load::story_gen::self_weight_calc::enumerate_self_weight(crates/sepika-load/src/story_gen/self_weight_calc.rs)と sepika_load::cascade::solve_with_basis(crates/sepika-load/src/cascade.rs)が主架構・小梁の重量と物理質量へ接続します。
小梁自重の作用区間
S 柱・CFT 柱・S 大梁・S 小梁の耐火被覆は、階共通耐火被覆の重量 と同じ条件・式で DL へ加算します。 被覆分には鉄骨重量割増を重ねず、既存の自重算定長と伝達方式を維持します。
二次部材小梁の自重は、芯々の材軸座標で表したフェース間区間 [a, b] に元の単位長荷重を載せます。
総重量だけを減らして全長へ再配分しないため、支持幅が異なる場合の非対称反力も保持できます。
設計自重算定長の規則は 地震用重量・層データの生成 と共通です。
鉛直柱支持では小梁を支持する鉛直柱のフェースの最外側面交点と有限柱閉区間を使います。
未算定の支持を0控除へ置換せず、理由と支持材を示してDL生成を停止します。
たとえば芯々長 3000 mm、矩形支持材の始端幅 300 mm・終端幅 200 mm の直交取付きなら、作用区間は [150, 2900] mm です。
単位長荷重を w N/mm とすると、総重量は 2750w N、載荷重心は始端から 1525 mm です。
反力は芯々の支持位置で求めるため、始端が 2750w × 1475/3000 N、終端が 2750w × 1525/3000 N になります。
片持ちでは支持端のフェースから自由端まで載荷し、全量を支持端へ伝えます。
小梁の材軸・支持位置・検定スパンは芯々のままで、間柱の自重作用区間も変更しません。
自重総量・DL への反力伝達・地震用重量は同じ区間を使うため、控除長さの食い違いは生じません。
物理密度による質量相当の逐次伝達も同じフェース間区間へ載せますが、単位長荷重は設計自重から独立に求めます。
断面質量特性と芯々長から求める量、転送量と階動的質量の関係は地震用重量・層データの生成の「動的解析用の質点質量の設定」を参照してください。
主架構大梁の DL は従来の総重量を芯々長で割った等分布として載せ、二次部材小梁の部分区間載荷とは区別します。
実装参照:sepika_load::cascade::solve_with_basis(crates/sepika-load/src/cascade.rs)が自重区間へ荷重を載せ、芯々スパン上で反力を逐次伝達します。
設計重量と物理質量相当の単位長荷重は beam_self_weight_udl・beam_mass_equiv_udl(crates/sepika-load/src/floor/beam_design.rs)から独立に求めます。
解析要素にならない壁版の自重
生成Wallと壁エレメントにならない壁版は共通総量とDL方式を使います。実領域・対象・入力・未算定の対照表は壁の断面と自重、独立階帯は地震用重量・層データの生成を参照してください。
| DL方式 | 実支持材へ伝える量 |
|---|---|
| 下梁全量 | 共通総量全量 |
| 上梁全量 | 共通総量全量 |
| 高さ中央の実体積切断 | 内法実領域の上下端中央で切断した交差量。位置付き開口を反映 |
| 任意辺率 | 境界辺順の非負率、総和1(許容差1e-9)。DL専用 |
3方式と任意辺率の同時適用はエラーです。方式は支持条件・スリットと別に明示選択します。左右下完全スリット・上接続は先に判定して上梁全量です。上下梁せいが異なれば実高さ中央と階レベル中央は一致しません。DL変更で総量・階重量は変わりません。
スリットがない囲まれた壁は、梁中間の間柱端など境界頂点に節点がない場合も、実支持部材の材軸部分区間へDLを載せます。スリットを指定した場合は辺への対応が必要で、対応を解決できなければ未算定を診断します。
小梁上の壁は下小梁へ全量を載せ、逐次反力伝達で主架構へ運びます。柱・間柱支持は指定区間へ分布荷重を載せ、間柱端部率は別に必要です。未設定・不正率・支持欠落・循環・切れた辺は振り替えず診断します。
Attachedの腰壁・垂れ壁・パラペット・部分区間は線アンカー、柱伝達指定は柱へ集中、床領域自立壁は既存床伝達です。3方式を無条件適用しません。支持や床領域が解決できなければ解析前診断で停止します。
壁版フォームで方式を選び適用し、準備計算後にDL表示と階重量を確認します。編集Undo・再生成も現在形状から同期します。自動壁荷重と手入力荷重を識別し、同期2回で増分を生じません。手入力重力ケースを壁自重として再解釈しません。
実装参照:dl_ratios・distribute_enclosed_wall_plates(crates/sepika-load/src/wall_plate_load.rs)、compute_gravity_auto_load_cases・apply_auto_load_cases(crates/sepika-job/src/auto_loads.rs)を参照してください。
任意辺指定と間柱の取付条件
各辺の支持部材と材軸区間は、壁版割当領域の境界を正本としてそのまま使います(ADR 0020)。壁版割当領域は柱・梁・間柱を構面ごとに面走査して分割した閉領域で、境界の 1 辺は 1 つの支持部材の材軸区間に対応します。同じ種類どうし(主架構どうし・間柱どうし)の重なりは解析前チェックのエラーであり、異種の重なりは主架構を優先します。同種の重なりを自動で一意化しないため、再構築でどの支持部材が残るかは要素順に依存します。辺の全長を覆うかは領域の構成から決まり、節点座標からの支持先の再推定はしません。境界が参照する支持部材が実在し、種別(柱・梁・間柱)が適合し、材軸を解決できることは Model::validate が確認します。境界の頂点にモデル節点が無くても(間柱の端が梁の材軸中間にある場合など)支持先と荷重を取り落としません。
実際に梁で受ける壁の自重を柱へ指定すると、その梁の曲げを過小評価する危険側のモデルとなります。境界辺の存在だけで荷重の伝達を判断せず、実際の納まりに応じて指定してください。間柱を支持辺にする場合は、その間柱が壁版の境界となるよう壁版を分割します。
柱が受け持つ分は、その柱の材軸方向の分布荷重として載せます。軸力は、節点変位による内力に、切断位置までの部材荷重を含む固定端内力を重ね合わせて求めます。引張を正とし、下端固定・上端自由の鉛直柱に下向き等分布荷重 w が作用する場合、下端からの距離 x における軸力は N(x) = −w(L−x) です。下端は柱が受け持つ全重量を圧縮軸力として負担し、上端の軸力は 0 となります。上下端とも拘束される場合の負担は、架構の変形適合条件と釣合いから決まります。
間柱が受け持った荷重は、二次部材の反力の逐次伝達が主架構へ運びます(床荷重の分配)。鉛直な間柱では、壁から間柱への負担率とは別に、間柱の上下端への負担率も明示入力が必要です。既定は未指定で、解析前エラーとなります。間柱自身の自重にも同じ端部負担率を適用します。
指定した支持辺に荷重を流せない壁版は、解析前チェックがエラーで止めます。 自重の行き先が決まらないためです。行き先のない荷重を節点荷重として残すと、要素が接続しない節点への節点荷重は解析の自由度から外れるので、荷重の一覧には見えるのに解析からは消えます。
間柱の端部支持条件で自由端とした端には、端部負担率0を指定してください。自由端への正の負担率は入力エラーで、反対側へ自動振替しません。