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応力図(M 図)の曲線補間

解析結果の断面力は、危険断面(評価断面)でのみ値を持ちます。既定の評価断面は 節点芯・柱フェース位置・部材中央に、指定があればハンチ端・継手位置を加えた 数点です(4.10 梁要素内部の変位・断面力の内挿)。

M 図をこの数点だけで描き、点と点を直線で結ぶと、曲げモーメントが本来もつ 曲率が失われます。たとえば等分布荷重を受ける両端固定梁では、部材中央 \( +wL^2/24 \) と端部 \( -wL^2/12 \) の間が放物線ではなく直線になります。 \( \xi=0.25 \) の値は本来 \( +wL^2/96 \)(下端引張)ですが、直線で結ぶと \( -wL^2/48 \) となり、符号まで逆になります。反曲点の位置も \( \xi=(3-\sqrt{3})/6 \approx 0.211 \) ではなく \( \xi=1/3 \) にずれます。

そこで M 図は、評価断面の値を保ったまま、区間内を 3 次エルミート補間で 曲線として描きます。

補間の根拠

断面力は材軸に沿って次の関係を満たします(断面力の符号規約は 5.2 線形静解析)。

\[ \frac{dM_z}{dx} = Q_y \]

したがって正規化座標 \( \xi = x/L \) では、各評価断面における モーメントの勾配が既知のせん断力から定まります。

\[ \frac{dM_z}{d\xi} = Q_y,L \]

区間 \( [\xi_k,\ \xi_{k+1}] \) の両端で「値 \( M_z \)」と「勾配 \( Q_y L \)」の 4 条件を与えると、3 次多項式が一意に定まります(3 次エルミート補間)。 \( t=(\xi-\xi_k)/h \)、\( h=\xi_{k+1}-\xi_k \) として

\[ M(t) = H_{00}M_k + H_{10},h,S_k + H_{01}M_{k+1} + H_{11},h,S_{k+1} \]

\[ H_{00}=2t^3-3t^2+1,\quad H_{10}=t^3-2t^2+t,\quad H_{01}=-2t^3+3t^2,\quad H_{11}=t^3-t^2 \]

ここで \( S \) は \( dM_z/d\xi \) です。

弱軸曲げ \( M_y \) も同じ補間を行います。符号規約が \( Q_z = -dM_y/dx \) と反転して いるため、図として張り出す値(\( M_y \) の符号を反転した値。 応力図の表示と変形の重ね表示)に対して \( d(-M_y)/d\xi = Q_z L \) が成り立ち、勾配には \( Q_z \) を用います。 \( N \)・\( Q_y \)・\( Q_z \)・\( M_x \) は評価断面を直線で結べば厳密なので 補間しません。

この補間は、区間内で \( M \) が 3 次以下の多項式になる場合に厳密解に一致します。

部材中間荷重\( Q \) の次数\( M \) の次数補間の結果
なし0(一定)1(直線)厳密(直線のまま)
等分布12(放物線)厳密
等変分布(三角形・台形の傾斜部)23厳密

評価断面(危険断面)の値は補間後も変わりません。したがって図は必ず 断面検定に用いた値を通ります。

中間集中荷重が評価断面上にある場合

小梁反力のように部材中央へ集中荷重が載ると、その位置で \( Q \) は不連続に 飛び、\( M \) は折れ線になります。この断面のせん断力は左側極限として 評価されるため、右側区間の左端勾配としては誤った値になります。これをそのまま 用いると、本来は直線であるべき区間に架空のふくらみが現れます。

そこで各区間について、区間内が 2 次(=等分布相当)であると仮定したときの 左端勾配

\[ S_k^{*} = 2,\frac{M_{k+1}-M_k}{h} - S_{k+1} \]

を求め、評価断面のせん断力から得た左端勾配と符号が食い違う場合は \( S_k^{*} \) を採用します。このとき補間は 2 次へ縮退し、中央集中荷重のように \( M \) が折れ線となる区間で厳密解に一致します。区間の右端勾配は常に 区間内側からの極限であるため、この補正は必要ありません。

適用範囲

  • 対象は M 図のみです。N 図は部材中間の軸荷重がなければ一定、Q 図は 等分布荷重下で 1 次となり、いずれも評価断面を直線で結べば厳密なため、 直線で描きます。
  • 対象要素は曲げ内力場をもつ線材要素(梁・柱として扱う梁要素、 ファイバー梁要素、マルチスプリング梁要素)です。軸材(ブレース)・面要素・ ばね要素は曲げ分布をもたないため補間しません。
  • 本処理は画面表示のための処理であり、解析結果(節点変位・断面力) そのものには影響しません。断面検定は評価断面の値のみを用います。