4.6 仕口パネル(柱梁接合部パネル)
柱梁接合部のせん断変形を、接合部の節点に設ける仕口パネルとして評価します。仕口パネルは接合部内にある寸法 \( (B_x, B_y, D_z) \) の 6 面体で、パネルが設けられた節点はせん断変形角 \( \gamma_X \)・\( \gamma_Y \) の 2 自由度を追加で持ちます。
モデル化の対象と既定
仕口パネルのモデル化は既定で有効で、準備計算パネルの「部材のモデル化」で建物一律に切り替えます。無効にすると接合部を剛節点として扱い、パネルのせん断変形を考慮しません。
パネルを設けるのは、次のすべてを満たす節点です。
- 柱(鉛直材)が 1 本以上・梁(水平材)が 1 本以上取り付く
- 取り付く柱・梁がすべて S 造(CFT を含む)
- 諸元を解決できる柱が 1 本以上あり、実効体積 \( V_e \) が正
部材の鉛直成分 \( |e_z| \) が 0.8 以上を柱、0.2 以下を梁とみなします。この範囲に入らない斜材(ブレース等)は、接合位置とパネルへの寄与が定まらないため、パネル自由度と連成させず節点で接合します。斜材は構造種別の判定対象にもしないため、S 造の接合部に RC ブレースが取り付いてもパネルは設けられます。
構造種別は2.5 構造種別の判定によります。材料の区分で決まるため、H 形の断面でも材料がコンクリートなら対象外になり、矩形断面でも材料が鋼材なら対象になります。
RC/SRC の柱・梁が 1 本でも取り付く接合部は対象外です。取り付く梁が RC であれば、柱が S であっても接合部はコンクリートが全体を拘束する RC の接合部になり、鋼部材だけの実効体積による弾性せん断パネル \( G \cdot V_e \) では挙動を表せません。これらの接合部は剛域で有限寸法を評価し、接合部の検定は RC 柱梁接合部・SRC パネルゾーンの断面算定が担います。
S 造では接合部に接続する柱・梁がすべて S のとき剛域長が 0 となるため、パネルのせん断変形を明示的に評価しても剛域と二重に評価することにはなりません。
CFT 柱の接合部はモデル化の対象外とします。CFT の接合部では充填コンクリートと通しダイアフラムが接合部のせん断挙動に関与し、鋼管のみの実効体積では剛性を表せないため、接合部を剛節点として扱います。ただし断面算定は CFT も対象に含めます(鋼管部を S 造と同じ式で評価します)。
| 柱断面 | モデル化 | 断面算定 |
|---|---|---|
| H 形鋼・角形鋼管・円形鋼管 | 対象 | 対象 |
| CFT(角形・円形) | 対象外 | 対象 |
| RC・SRC・組立 H 形 | 対象外 | 対象外 |
上表が適用されるのは取り付く柱・梁がすべて S 造である接合部で、RC/SRC が 1 本でも混じる接合部は柱断面に依らずモデル化・断面算定とも対象外です。
パネルの剛性
パネルは部材座標系 X'-Z' 平面内と Y'-Z' 平面内でせん断モーメント \( {m_{xp}, m_{yp}} \) とせん断変形角 \( {\gamma'_x, \gamma'_y} \) を持ち、剛性は寸法とせん断弾性係数 \( G \) から定まります。
\[ \begin{Bmatrix} m_{xp} \\ m_{yp} \end{Bmatrix} = \begin{bmatrix} K_{yp} & 0 \\ 0 & K_{xp} \end{bmatrix} \begin{Bmatrix} \gamma'x \\ \gamma'y \end{Bmatrix}, \quad K{yp} = K{xp} = G \cdot V_e \]
節点の変位とパネルの変形は次式で適合させます。\( \theta \) はパネルの部材座標系が基準座標系 X-Y 平面内で回転する角度で、本実装では 0 固定(直交フレームを前提)です。
\[ \begin{Bmatrix} \gamma'_x \\ \gamma'_y \end{Bmatrix} = \begin{bmatrix} -1 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix} [T_p] \begin{Bmatrix} \gamma_X \\ \gamma_Y \end{Bmatrix}, \quad [T_p] = \begin{bmatrix} \cos\theta & \sin\theta \\ -\sin\theta & \cos\theta \end{bmatrix} \]
パネルの応力は次の変換をしたあと、節点に集められて釣り合います。
\[ \begin{Bmatrix} M_{SX} \\ M_{SY} \end{Bmatrix} = [T_p]^{\mathsf T} \begin{bmatrix} -1 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix} \begin{Bmatrix} m_{xp} \\ m_{yp} \end{Bmatrix} \]
\( K_{xp} = K_{yp} \) のとき、この一連の変換は直交変換になるため、節点座標系でのパネル剛性は \( \theta \) に依らず \( \mathrm{diag}(K, K) \) に帰着します。
パネルの寸法と実効体積
体積 \( V_e \) は柱断面の形状から次のとおり算定します。\( d_c \) は柱せい方向のパネル寸法、\( d_b \) は梁フランジ板厚中心間距離、\( t_p \) はパネル板厚です。
| 柱断面 | \( d_c \) | \( t_p \) | \( V_e \) |
|---|---|---|---|
| H 形鋼 | せい − フランジ厚 | ウェブ厚 | \( d_c \cdot d_b \cdot t_p \) |
| 角形鋼管・CFT 角形 | せい − 板厚 | 板厚 | \( 2 , d_c \cdot d_b \cdot t_p \) |
| 円形鋼管・CFT 円形 | 外径 − 板厚 | 板厚 | \( 2 , d_c \cdot d_b \cdot t_p \) |
H 形柱ではウェブ厚方向の寸法を \( B_y = t_p \) と対応させたものであり、中実 6 面体の体積ではなく板厚分の実効体積になります。角形・円形はウェブ 2 枚相当として 2 倍とします。
\( d_b \) は接合部に取り付く梁のうち最大の値を採り、H 形鋼の梁は「せい − フランジ厚」、それ以外の断面は情報がないため \( 0.9 \times \) せいで近似します。
パネル板厚 \( t_p \) は次の順で解決します。
- 断面の「パネル板厚 tp」が入力されていればその値(ダイアフラム補強・ダブラープレートによる増厚の明示指定)
- 未入力なら上表のとおり柱の断面形状から算定
「パネル板厚 tp」はモデルタブの断面作成パネルで、対象の断面を選んだうえで入力します。空欄・0 は未入力を表し、断面形状からの算定値を用います。この値はモデル化と断面算定の双方で使われます。
柱が複数取り付く節点では、諸元を解決できる柱のうち実効体積 \( V_e \) が最小になる 1 本から \( d_c \)・\( t_p \)・\( G \)・基準強度 \( F \) を取ります。剛性・耐力とも安全側になり、かつモデルの入力順に依らず一意に定まります。\( V_e \) は \( d_b \) に比例するので、この選択は \( d_b \) の値によりません。
この \( V_e \) は断面検定のパネル降伏モーメントと同じ値を用いるため、剛性と耐力が同一の諸元で整合します。
部材との接合位置
パネルが設けられた節点では、部材は節点そのものではなく、パネル寸法分だけ離れた接合位置で接合します。節点の変位(せん断変形角を含む 8 成分)と部材端の変位(6 成分)は次式で適合します。
\[ {d} = {D} + [B_0]{\Phi} + [B_{tp}]{S}, \quad {\phi} = {\Phi} + [B_p]{S} \]
\[ [B_0] = \begin{bmatrix} 0 & Z_0 & -Y_0 \\ -Z_0 & 0 & X_0 \\ Y_0 & -X_0 & 0 \end{bmatrix}, \quad [B_{tp}] = \frac{1}{2}\begin{bmatrix} 0 & Z_0 \\ -Z_0 & 0 \\ -Y_0 & X_0 \end{bmatrix}, \quad [B_p] = \begin{bmatrix} \zeta & 0 \\ 0 & \zeta \\ 0 & 0 \end{bmatrix} \]
部材端の応力も同じ変換行列の転置で節点位置へ写され、パネルのせん断モーメントと釣り合います。
\[ M^p_{SX} + \sum_i M^i_{SX} = 0, \quad M^p_{SY} + \sum_i M^i_{SY} = 0 \]
係数 \( \zeta \) は部材が仕口パネルのどの面で接合するかで決まり、水平材(はり)は \( -0.5 \)、鉛直材(柱)は \( +0.5 \) とします。パネルのせん断変形角の半分ずつを、梁と柱が互いに逆向きの材端回転として受け持つことを表します。
オフセット \( {X_0, Y_0, Z_0} \) の大きさは接合部の物理的な半寸法とし、向きは節点から部材の他端へ向かう単位ベクトルとします。梁は柱フェースで、柱は梁フェースで接合します。
| 部材 | オフセットの大きさ |
|---|---|
| 梁(水平材) | 節点に取り付く柱せいの最大値 / 2 |
| 柱(鉛直材) | 節点に取り付く梁せいの最大値 / 2 |
この寸法には断面のせい \( D \) を用います。実効体積 \( V_e \) の \( d_c \)・\( d_b \) はせん断を負担する範囲を表す量で、フランジ厚を差し引くぶん物理的な外形より小さくなるため、部材が実際に取り付く位置を表す接合位置には外形のほうを用います。
パネル分のオフセットは部材の剛体アーム長へ算入します(4.1.5)。剛体アーム \( [B_0] \) は剛域変換がそのまま担い、幾何剛性・せん断降伏の内法高さ・座屈長さ係数の剛度比も同じ可撓長を用います。剛域長とは別に保持するため、剛域の再算定でオフセットが失われることはありません。
このオフセットは、断面算定の危険断面位置とは独立に定めます。危険断面位置は設計上の評価位置であって、部材が実際にどこで接合するかとは別に定まるためです。
弾塑性
保有水平耐力計算(増分解析)・非線形時刻歴応答解析では、パネルの降伏を考慮します。骨格は次の降伏モーメントを持つバイリニア(二次勾配比 0.01)とし、履歴則は S 造部材の既定と同じ標準型(移動硬化型。Masing 則)です。
\[ {}_p M_y = \frac{V_e}{\kappa} \sqrt{1 - n^2} \cdot \frac{F}{\sqrt{3}} \]
形状係数 \( \kappa \) は断面ごとに次式によります。\( b_c \) は柱のフランジ幅(角形は柱幅)、\( t_f \) はフランジ厚です。
| 柱断面 | \( \kappa \) |
|---|---|
| H 形鋼 | \( \dfrac{1}{2/3 + 4 b_c t_f/(d_c t_p)} + \dfrac{1}{1 + d_c t_p/(6 b_c t_f)} \) |
| 角形鋼管・CFT 角形 | \( \dfrac{1}{2/3 + 2 b_c/d_c} + \dfrac{1}{1 + d_c/(3 b_c)} \) |
| 円形鋼管・CFT 円形 | \( 4/\pi \) |
軸力比 \( n \) は、パネルが属する柱の各ステップの軸力から \( n = \) 圧縮軸力 \( /(F \cdot A) \) として更新します。引張軸力では耐力を低減せず \( n = 0 \) とし、\( n \) は 1.0 でクランプします。降伏耐力の下限は \( 0.02 , {}_p M_y \) とします(軸力比が 1 に近づくと接線剛性が二次勾配のみになり数値的に不安定になるため)。
柱の軸力は、材端集中ばねの N–M 相関と同じく、蓄積した節点変位から弾性軸剛性 \( EA/L \) で評価します。
パネルの基準強度 \( F \) は柱の鋼種名の前方一致(板厚 40 mm 区分)で解決し、解決できない場合は材料の降伏強度、それもない場合は 235 N/mm² とします。
質量
パネルは質量を持ちません。せん断変形角の自由度に対応する質量はなく、固有値解析では回転自由度と同じく質量を持たない方向として扱われます。
断面算定との関係
S 造パネルゾーンの断面算定(6.3.2)は、モデル化と同じ判定で対象の接合部を選びます。柱・梁がすべて S 造である接合部だけを検定し、諸元(\( d_c \)・\( t_p \)・\( d_b \)・\( V_e \)・\( \kappa \))も同じ規則で解決します。剛性と耐力が別々の諸元で算定されることはありません。
両者が異なるのは CFT 柱の扱いだけです。
| 接合部 | モデル化 | 断面算定 |
|---|---|---|
| 柱・梁がすべて S 造(CFT を除く) | 行う | 行う |
| 柱に CFT を含み、他はすべて S 造 | 行わない | 行う |
| 柱・梁に RC/SRC を含む | 行わない | 行わない |
CFT の接合部を検定に含めるのは、鋼管部を S 造と同じ式で評価できるためです。一方 RC/SRC が混じる接合部は、S 造パネルゾーンの式が前提とする挙動から外れるため検定しません。これらの接合部は RC 柱梁接合部・SRC パネルゾーンの断面算定が担います。
**断面算定はモデル化の有無に依らず行います。**モデル化を無効にしても、上表の「断面算定」列は変わりません。変わるのは設計用パネルモーメント \( {}_p M \) の求め方だけです。
- パネルをモデル化した節点:解析が出力するパネルせん断モーメント \( M_{SX} \)・\( M_{SY} \) のうち絶対値の大きい方
- モデル化していない節点:梁端モーメントと柱せん断から \( {}_p M = {}_b M_L + {}_b M_R - ({}_c Q_U + {}_c Q_L) d_b/2 \) で組み立てた値
前者は節点まわりのモーメント釣り合いが解析上厳密に満たされた値です。
諸元の確認
生成された仕口パネルの寸法(\( d_c \)・\( d_b \)・\( t_p \))・実効体積 \( V_e \)・せん断剛性 \( K_{xp} \) は、準備計算タブの「仕口パネル」で確認できます。3D の位置はモデル化ビューで確認できます。
実装
- 接合部判定・半せい:
squid_n_core::panel_zone(panel_half_extent・resolve_panel_joint等) - 自動生成:
squid_n_element::springs::panel_gen::apply_auto_panel_zones - S 造パネルゾーン断面算定:
squid_n_design_jp::steel::panel_zone::s_panel_zone_check - 準備計算での一覧:
squid-n-app準備計算タブ「仕口パネル」(仕口パネル)