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保有水平耐力の判定

建築基準法施行令 第82条の3 に基づき、各層の保有水平耐力 Qu が必要保有水平耐力 Qun を上回るか(\( Q_u \ge Q_{un} = D_s \cdot F_{es} \cdot Q_{ud} \))を判定します。

設計タブの「保有水平耐力(ルート3)」は、現在は採用条件の必要証拠を保持できないため合否を保留します。建物の高さ・規模・構造形式等から計算ルートの適用資格を自動判定せず、各ルートの必要条件を全て確認する機能でもありません。鉄骨造の計算ルートは、適用条件と部材・接合部の安全確認を設計者が別途確認してください。

記号・単位

記号意味単位
\( Q_u \)各層の保有水平耐力N
\( Q_{un} \)各層の必要保有水平耐力N
\( Q_{ud} \)設計用地震層せん断力N
\( D_s \)構造特性係数-
\( F_{es} \)形状係数(\( F_s \cdot F_e \))-
\( C_0 \)標準せん断力係数-

算定式

必要保有水平耐力:

\[ Q_{un} = D_s \cdot F_{es} \cdot Q_{ud} \]

  • 保有水平耐力 Qu は、保有耐力比較用に明示採用した確定評価点での層切断面力の大きさです。各層のピーク時刻を寄せ集めず、同じ方向・run・step の状態を全層で用います。
  • 設計用地震層せん断力 Qud = \( C_0 = 1.0 \) の標準地震層せん断力。地震力の地上部 Ai 分布と地下部の直上せん断力加算を共通に用います。地下震度 K は C0 に比例しないため、通常荷重全体を5倍する計算ではありません。
  • 層間変形角は保有耐力比較用の同じ評価点の層間変位から求めます。

剛性率・偏心率を算定できない層がある場合は、理由を表示して Fes と必要保有水平耐力 Qun の算定・合否判定を停止します。 再計算で算定不能になった場合、前回の必要耐力や合否を残しません。レポート CSV にも算定不能の理由を出力します。 入力条件と実際のゼロ値との区別は形状係数 Fesを参照してください。

RC造の計算ルートと適用範囲

設計画面の「保有水平耐力(ルート3)」は、指定した評価点の耐力比較です。建物高さ・構造形式から法定の計算ルートを選択したり、ルート全体の成立を判定したりする機能ではありません。RC造のルート1、ルート2-1、ルート2-2の成立判定は未対応です。一次設計の部材検定、層間変形角、剛性率・偏心率の個別結果だけで、それらのルートへの適合を判断しないでください。

ルート3でも、一次設計、層間変形角、崩壊形、部材・接合部の保証条件を別途確認する必要があります。「RCラーメン」「RC壁式」や「壁式構造」の選択は、建物のルート適用資格や壁式構造の仕様規定への適合を確認する操作ではありません。

連層耐力壁で脚部の浮上り・沈み込みによる回転系の破壊となる場合は、部材種別を定めるため脚部を拘束してDsを算定する取扱いがあります。このときQuも浮上りを拘束した状態で算定できます。拘束の変更と目的別評価点の対応は自動確認しません。連層壁等に対する直交梁の押さえ効果は、部材種別とDsを評価する際にも考慮が必要です。解析モデルでこの効果を評価できることを別途確認してください。

ピロティ形式では、特定階への変形集中と直上の耐力壁を支持する単独柱の変動軸力に注意が必要です。原則としてピロティ階の層崩壊を避ける計画とし、層崩壊等を許容する場合は、その設計法の適用条件、構造特性係数、柱・壁の性能とせん断・軸力の検討を確認してください。現在はピロティ形式の識別、設計方針の選択及びこれらの成立を自動判定しません。Dsを大きく指定しても、必要な部材性能の確認を省略できません。耐力比較のOKだけでピロティ階の安全性を確認したことにはなりません。

出典:『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷、6.4.1–6.4.4 pp.405–419、6.4.4(2)6) pp.430–431、付録1-6.1 pp.793–794。ピロティの設計方針と性能確認はICBA Q&A(2026年3月27日)No.25も参照してください。

実装参照:design_table(crates/sepika-app/src/design_view.rs)と App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)。

目的別の確定評価点

Ds 判定用と保有耐力比較用に、方向、解析実行(run)、入力世代、確定 step、選定理由を指定します。両目的の載荷条件・終了目標・採用 step は異なって構いません。一つの目的の内部では、壁・筋かい・柱梁の負担力、分母の層全体力、ランク判定の応力と機構を同じ状態から採ります。Ds の βu に比較用 Qu を流用しません。評価点未指定のまま、最終点や法定停止点を自動採用することはありません。

設計タブで各目的の step と理由を入力し、「目的にこのrun・stepを採用して保持」で採用します。続く別条件の解析は保持した目的別結果を上書きしません。X/Y 各方向の 2 目的分をプロジェクトに保存し、復元後も同じ点を使います。画面と帳票で、目的、方向、run、入力世代の識別値、解析条件、外力分布の各層累積値、選定理由、解析終了理由を確認できます。選定理由は設計者が確認した条件を記載してください。選択操作だけで法適合や機構形成を保証するものではありません。

DsとQuを採用する状態の条件

『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版、6.2.4 イ) pp.365–370及び6.4.4(2)2)–3) pp.425–427に基づき、採用点では次の条件を別途確認してください。目的別の点を保存できることと、これらの成立は別です。

  • Quは全体・部分・局部の崩壊形を考慮します。全層の耐力が必要保有水平耐力を超え、崩壊形に至っていない場合は、確認できた耐力をQuとして用いる取扱いもあります。ただしDs算定で脆性部材を無視した場合は、Qu確認でも同じ部材を無視する必要があります。単なる収束・終了目標到達・数値的特異から採用可能とは判断できません。
  • Qu算定の外力分布はAi分布が原則です。Qun分布を用いるには、Ai分布での全体崩壊形、又は部分・局部崩壊時の非崩壊部分について別途全体崩壊形等の条件を確認する必要があります。非崩壊層をQun分布で評価しても、崩壊層はAi分布で評価します。特別な調査研究による扱いは別途確認が必要です。
  • RCのDs判定では、全体崩壊形ならその時の応力を用います。部分・局部崩壊形で崩壊していない階は、さらに水平力が作用した場合の崩壊形と応力を別途求めます。解析最終点を無条件に流用できません。余耐力法の利用にも応力比・応力分布等の適用確認が必要であり、自動適用しません。
  • せん断破壊するRC耐力壁を含む階は、壁のせん断破壊時がQuの状態となり、その時の各部材の水平せん断力でDsのβuを評価します。Ds用部材種別の判定、非崩壊部分及び急激な耐力低下の防止を併せて確認してください。

現在の保存成果から確認できるのは、目的別評価点と生成入力・方向・確定状態の対応、部材応力、層切断面力と外力の釣合い、同時点の負担率です。これらを確認できても、次の採用条件は証明できないため、自動・手動ランクのどちらでも合否を保留します。対象への該当性が不明な場合も、対象なしと推定しません。

採用条件不足する証拠
Ai/Qun外力分布Qun分布へ変更する場合の全体崩壊形・非崩壊部分の成立
全体・部分・局部崩壊形必要な崩壊形の網羅と各耐力の最小値
非崩壊階の別途Ds応力非崩壊階の識別と、さらに水平力を作用させた別途評価応力
壁せん断破壊時のβu対象壁と破壊状態及びその時の各部材応力の対応
Ds/Quの脆性部材除外整合除外対象、除外後の双方の応力と成立条件
局部崩壊時の鉛直支持対象と崩壊後の鉛直荷重支持力
未崩壊の確認済耐力Qu利用条件と全層の成立。Qu≥Qunだけでは代替不可
連層壁脚拘束のDs/Qu対応対象への該当性、Ds時の浮上り・沈み込み拘束とQu時の拘束状態の対応
直交梁押さえ効果対象への該当性、作用軸力、負担せん断力、部材種別及びDsへの適用
ピロティ設計方針・単独柱変動軸力形式への該当性、層崩壊回避又は許容の方針、単独柱軸力・外力分布・変形集中等の検討
ピロティの性能確認該当性と設計方針に対応する性能確認。Ds割増しでも省略不可

目的ごとに一つの解析と確定状態を保持する現在の機能では、非崩壊階ごとに別途評価した応力を保持できません。その他の条件も、現在の機構分類や選定理由の文章から確認済みへ変換しません。確認チェックボックスやキーワードで保留を解除する機能はありません。新しい解析・余耐力法・拘束変更や押さえ効果の近似を自動で追加しません。

設計画面と増分結果画面には不足する全条件の理由を表示し、レポートCSVにも各理由を出力します。前回の採用結果や合否を残しません。評価点の入力・run・方向・確定状態の混合や釣合い不成立がある場合は、その既存検査の理由を先に表示します。CSVの採用保留理由一覧は、これらの成立確認とは独立して出力します。

実装参照:App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)と App::holding_adoption_unavailable_reasons(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding_adoption.rs)。

符号付き層切断面力と釣合い

層の中間高さで構造を切り、上側自由体へ伝わる各物理要素の加力方向成分を一度ずつ合算します。同じ確定状態の内力を用い、絶対値の端力和や、最終変位による弾性応力再計算は使いません。

\[ Q_i = Q_{wall,i}+Q_{brace,i}+Q_{frame,i},\quad \beta_{u,i}=\frac{Q_{wall,i}+Q_{brace,i}}{Q_i} \]

壁面内方向に作用する壁系は壁パネルと鉛直側柱の和です。隣接壁の共有側柱は壁系全体へ一度含め、柱梁系との二重計上や、根拠のない個別壁への按分をしません。直交方向の側柱力は柱梁系です。開口の影響は解析で確定した実内力に含まれるため、合算時に低減係数を再適用しません。仕口パネルの柱節点参照は軸力追従用であり、独立した層水平力として加算しません。

上側の節点へ作用する外力を累積します。支持ばねの内力は上側自由体の外部作用として差し引きます。荷重倍率を λ、参照外力を q、固定外力を f0、支持ばね内力を s とすると、釣合い診断は次式です。

\[ E_i=\sum_{z>z_{cut,i}}(\lambda q+f_0-s),\quad r_i=Q_i-E_i \]

偏心接続を持つ梁の切断は、実材軸と両端の剛体接続腕を合わせた経路で評価します。部材荷重の層内・切断面上側の位置も実材軸で定め、共有解析節点の標高で置き換えません。

残差の許容差は Newton 求解の相対許容差(10⁻⁶)に、実外力ベクトルのノルム(下限 1 N)と節点数の平方根を掛けた値です。基準外力、支持ばね内力、実外力、残差と許容差を層別に表示します。例えば下階 100 kN、上階 50 kN の外力なら切断面力は下層 150 kN、上層 50 kN です。壁系が 90/30 kN を負担すれば、各層 βu は 0.6 です。反転載荷では各力の符号が反転しても同方向の比率は変わりません。

非有限値、内力・履歴欠損、二重計上、識別不一致、釣合い残差超過、ゼロ分母、全体力と反対の群寄与、βu が 0〜1 の範囲外の場合は理由を示して判定を停止します。値をゼロや上下限へ置換しません。残差超過・ゼロ分母・負寄与・βu範囲外で停止した場合も、算定できた群別力・外力・基準外力・支持ばね内力・残差・許容差(N)とβu(無次元)、目的・run・方向・採用stepを診断に表示します。分母がゼロ又は許容差以下ならβuは未定義と表示し、非有限値や履歴欠損に対して未算定値を補いません。切断面上の支持拘束反力を取得できないモデルや、節点力と自由度の対応を確定できない要素は集計対象の適用外です。多層をまたぐ壁・斜め壁など一般配置の網羅的検証は未完了です。

実装参照:sepika_solver::nonlinear::pushover::story_response(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/story_response.rs)と sepika_app::app::App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)。

構造特性係数 \( D_s \) は部材種別と破壊形式・柱脚等の適用条件から層別に定めます(構造特性係数 Ds)。形状係数 \( F_{es} = F_s \cdot F_e \) は剛性率・偏心率から求めます(いずれも加力方向の地震時弾性層間変位に基づきます)。

Qud の入力と適用範囲

令88条3項の必要保有水平耐力用地震力の C0 下限は1.0であり、SEPIKA は1.0を採用します。周期は解析条件で選択した略算式を用い、参考固有値の存在によって周期を変更しません。地域係数・地盤種別は解析条件から採用し、地域根拠と地盤の適用は設計者が確認してください。出典・版・条項・適用条件は地震力の出典に示します。

精算周期、PH 指定震度、指定 Ci の副剛床を含む Qud は、必要な適用条件が未検証なので理由付きで未対応とします。指定 Ci の副剛床重量を除いた主系統のせん断力だけで、層全体の必要耐力が満たされるとは判定しません。固有値解析と参考周期の取得は利用できます。

実装参照:App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)が design_seismic_period と seismic_distribution_for_model を用いて Qud を算定します。

解析結果の有効性

目的別に保持した増分解析は、現在モデルと各目的の保存済み解析条件に生成入力が一致する結果だけを採用します。自動地震荷重はその目的の条件で照合し、手入力荷重の変更は無効化します。現在の解析条件が別目的へ変わったことだけでは保持した点を無効にしません。地震静的(EX/EY)は現在のモデル・関連する設定と生成入力が一致する結果を採用します。画面で別の静的荷重ケースを選択していても、判定には対象方向の地震静的結果を使います。X 方向の判定へ Y 方向の増分結果を代用することはありません。

材料強度・配筋・断面・壁属性・荷重と組合せ・階・計算設定を変更した場合は、必要な解析を再実行してください。静的解析や時刻歴だけを再実行しても、残っている旧増分結果は利用できません。X/Y の片方向だけの再解析でも、他方向の旧結果は有効になりません。剛性・偏心率の精算で使用する地震静的と長期組合せ、対象の結果にも同じ照合を行います。使用する結果の不一致や入力識別情報の欠落、方向別結果の不足がある場合は、旧合否を無効にし、理由と再解析対象を表示します。

略算周期を用いる標準結果は、参考固有値の更新だけでは再解析を必要としません。精算周期を選択している場合は、上記の適用制限により標準 Qud を算定できません。

解析実行中にモデル・計算設定が変わった場合、変更前の入力から届いた結果は破棄します。入力識別情報がない保存結果も、再解析するまで判定には利用できません。表示ステップ・カメラ・ハイライト・通り芯の表示専用変更や、判定に無関係な時刻歴の記録間隔変更は再解析を必要としません。

実装参照:sepika_app::app::App::compute_holding_capacity(crates/sepika-app/src/app/actions/design/holding.rs)と app::result_validity(crates/sepika-app/src/app/result_validity.rs)が結果入力の照合を行います。設計タブと増分結果タブは同じ判定入口を使用します。

出典

  • 国土交通省公開『建築基準法施行令の一部改正(構造計算関係)について』、住指発第96号、昭和56年5月1日、HTML(頁なし)、別記3付則(2)2)i)表3-1脚注・3)i)表3-6脚注。壁又は筋かいの分担保有水平耐力/階全体の定義。歴史的通知であり、現行法の全要件の確認資料ではありません。原文
  • Daniel W. Baker/William Haynes『Engineering Statics: Open and Interactive』、2026年9月26日版、§4.7 Statically Equivalent Systems、HTML(頁なし)。同じ自由体の力・モーメント収支。本文

目的別停止条件、Ds 表の現行法との全面照合、実験による妥当性確認は本節の釣合い検証からは導けません。

自動ランク用の部材群耐力入力は自動判定時に正値・有限・重複なしを検査します。手動ランクへ切り替えた場合、その未使用入力の欠損やゼロ値は候補ランク計算を妨げません。手動の指定ランクと出典状態、目的別採用点と釣合いの検査は引き続き適用します。

手動ランクでも、Dsの候補計算は明示Ds点の壁・筋かい負担率βuを用います。指定ランクや機構分類で部材・接合部・柱脚の不足条件を補わず、Ds判定保留とします。採用点の選択自体が保証条件の成立を意味するものではありません。

RC耐力壁の候補種別では、採用Ds点の符号付きQ、壁厚、柱心間距離、Fc、応力度比、内法寸法、左右の柱断面積・最小径・適格性を用います。ただしRCの破壊形式・非ヒンジ柱・接合部等の確認情報が不足するため、現在はDs・必要保有水平耐力・合否を理由付きで保留します。自動・手動ランクで共通の制限です。式と寸法条件は耐力壁の種別を参照してください。適用外・不正入力は対象IDと理由を表示し、自動ランクを算定しません。

SRC造の計算ルートと適用範囲

SRC造のルート1・2-1・2-2の適用資格、壁柱量、ルート別保証せん断の成立判定は未対応です。ルート3の耐力比較は、一次設計・層間変形角・部材性能・採用状態を含む法適合全体の判定ではありません。

SRC柱・壁の部材種別は算定できますが、設計画面の構造形式はRCラーメン・RC壁式・Sラーメン・Sブレースで、SRC用Ds表の選択は未対応です。SRC断面や階の主要材種を入力してもSRC用Dsへ自動で切り替わりません。Sラーメン等の指定をSRCの代用として採用しないでください。例えばSRC壁付き架構で壁群A・柱梁群A、βu=0.5のDs下限は0.30ですが、S表の同じ入力では0.25となり、必要耐力を過小評価します。RC表を選べばSRCの適用条件を満たす、という取扱いもありません。

X/Yで構造が異なる場合は方向ごとの規定、高さ方向で異なる場合は原則同一ルートと構造・階ごとの必要耐力、部材ごとに異なる場合は全体系の耐力とヒンジ部材・接合部の条件を確認する必要があります。本プログラムはこれらの併用条件を自動確認しません。全体のRC/S選択や一つのDsだけで併用構造への適合を判断しないでください。

根拠:『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』第2版第1刷、6.5.1–6.5.4 pp.436–444、6.9.1–6.9.4 pp.482–484。個別部材の分類と、階・方向・全建物への適用成立を区別します。