断面の符号と階
本節では、断面をどう識別しているかと、断面一覧に表示される断面形状の表記について紹介します。
SEPIKA の断面は、符号と階の組で識別します。
符号は C1・GY2 のような断面記号で、階は 1・PH1 のような階の名前です。
同じ C1 でも 1 階と 3 階で寸法が変わることは実務では普通にあるため、符号だけでは断面を一意に定められず、階を含めてはじめて 1 つの断面が定まります。
実装参照:同一性キーは sepika_core::model::Section::key と sepika_core::model::section_key_taken(crates/sepika-core/src/model/section.rs)が表します。
符号+階は重複できない
モデルの中に、符号と階がどちらも同じ断面が 2 つ以上あってはいけません。
一方で、断面性能が同じ断面が別の符号+階で存在するのは問題ありません。
たとえば C2 の PH1 階と C3 の PH1 階がどちらも同じ角形鋼管であってもかまわないのは、符号を分けた意図が利用者にあり、それをアプリの都合で勝手にまとめるべきではないためです。
この制約はモデル側で守られているため、断面一覧・断面作成パネルのどちらからも重複する組合せは作れません。 断面作成パネルで既存の断面と同じ符号+階を入力すると「+ 追加」ボタンが押せなくなり、理由がツールチップに出ますので、符号か階のどちらかを変えてください。
階を持たない断面もあります。
アプリ内で作成した断面や、階の指定がない ST-Bridge 断面がこれにあたり、断面一覧の「階」欄には — と表示します。
この場合は符号だけが識別キーになるため、階なしの断面どうしで符号が重複することもできません。
実装参照:判定は sepika_core::model::section_key_taken(crates/sepika-core/src/model/section.rs)が担い、断面作成パネルの「+ 追加」「✏ 符号・階を変更」ボタンの制御は sepika_app::section_editor(crates/sepika-app/src/section_editor.rs)が行います。
断面一覧の表示
下ドックの「モデル」タブ→「断面」に、モデルが持つ全断面を一覧で表示します。
| 列 | 内容 |
|---|---|
| ID | 内部の断面 ID。クリックするとインスペクタに断面詳細を表示する |
| 符号 | 断面記号 |
| 階 | 階の名前(階を持たない断面は —) |
| 断面形状 | 形状と各寸法の表記(下記。形状定義を持たない断面は —) |
| 材料 | 主材料(コンクリートまたは鋼材)。この欄で割り当てる |
| 主筋 | 主筋の材質。配筋を持つ断面のみ有効 |
| せん断補強筋 | せん断補強筋の材質。配筋を持つ断面のみ有効 |
| 内蔵鉄骨・鋼管 | SRC の内蔵鉄骨、CFT 角形・円形の鋼管の鋼種 |
| 部材数 | この断面を割り当てられた部材・小梁・二次部材・床の数 |
| D×B [mm] | せい D × 幅 B |
| A [cm²] | 断面積 |
| Iy / Iz [cm⁴] | 断面二次モーメント |
| J [cm⁴] | ねじり定数 |
| Asy / Asz [cm²] | せん断有効断面積 |
断面性能の表示は cm 系です(\( A \)・\( A_s \): cm²、\( I \)・\( J \): cm⁴)。 内部では SI 単位系(N, mm)で保持しており、表示のときだけ換算しています。 せい D・幅 B のみ mm 表示なのは、実務での断面呼称に合わせるためです。
断面性能の欄は読み取り専用です。 断面形状も断面性能も断面形状の定義から導かれる結果であって入力ではないため、数値を直接書き換えられるようにすると、形状と断面性能が食い違ったモデルを作れてしまいます。 断面を作る・形状を変える・符号や階を直すのは、いずれも同じ画面の下にある断面作成パネルで行います。 この表から操作できるのは、材料 4 欄の割り当て、行の選択(インスペクタ表示)、どこからも参照されていない断面の削除の 3 つです。 「部材数」の欄は部材・小梁・二次部材に加え、その断面を割り当てた床も数えます(床の断面と自重)。 ここが 0 の断面だけが削除できるため、数え方は削除の可否とそろえています。
実装参照:一覧は sepika_app::tables::sections::sections_table(crates/sepika-app/src/tables/sections.rs)が描画し、cm 系への換算は sepika_core::units::to_display(crates/sepika-core/src/units.rs)が担います。
ナビゲータの断面一覧
左ドックのナビゲータには「断面一覧」があり、断面を階ごとにグループ化して表示します。 断面の階名が利用者が入力した階定義と一致する場合は、上階から下階の順で見出しが並び、各階に属する断面がその下に並びます。 階定義にない階名の断面は、その階名を見出しとしたグループで、階定義のグループの後に並びます。 階名がある断面は、二次部材・床から参照されていてもその階のグループに残ります。 階が未設定(空欄)の断面は、用途によってさらに分かれます。間柱・小梁・床(スラブ)のいずれかに割り当てられている断面は「二次部材」グループへ、それ以外は末尾の「(階なし)」グループへ入ります。
断面の行をクリックすると、下ドックの「モデル」タブ→「断面」一覧へ移動して、その断面の ID 行が選択状態になります。 グループの既定状態は閉じているため、見通しを保ちながら必要な階だけを開いて確認できます。
実装参照:階ごとのグループ化は sepika_app::app::nav_model::section_floor_groups が、表示は sepika_app::app::App::nav_sections(crates/sepika-app/src/app/nav_model.rs)が担います。
材料は断面が持つ
材料は部材ではなく断面に割り当てます。 同じ断面を使う部材はすべて同じ材料になり、違う材料を使うならそれは別の断面になります。 断面性能と材料強度が 1 か所にそろうため、断面検定・終局耐力の算定で材料の解決先が 1 つに定まります。
RC・SRC の主筋とせん断補強筋、SRC の内蔵鉄骨も、それぞれ専用の欄で材料を割り当てます。 配筋の本数・径・ピッチは断面作成パネルで、材質はこの表で指定する形になります。
CFT 角形・円形では「材料」に充填コンクリート、「内蔵鉄骨・鋼管」に鋼管材料を割り当てます。
鋼管欄の候補は鋼材だけで、コンクリート・鉄筋は指定できません。― を選ぶと割当を解除します。
未割当の鋼管材料を主材料や既定の基準強度 F で補完せず、必要な計算は入力不足として停止します。
割当・解除は Undo/Redo と保存・再開の対象です。変更後は準備計算・解析・検定の成果が失効するため、再実行してください。
断面形状から使わないとわかる欄(鋼断面の主筋など)は淡色の — になり、選べません。
配筋を持つ断面で主筋・せん断補強筋の材料を割り当てないまま解析すると、 準備計算のモデル整合性チェックと解析前チェックがエラーで止めます。 降伏点 \( \sigma_y \) を既定値で埋めると、SD295 の部材で耐力を過大評価するためです。
形状定義を持たない断面(断面性能の数値直入力)は、断面形状の欄に — と表示します。
この断面は幅厚比・部材ランクの判定、終局耐力の算定、スラブ協力幅による剛性増大の対象外になるため、意図した入力かどうかを確認してください。
断面作成パネルで寸法を組み立ててから「✏ 選択断面へ適用」を押すと形状を与えられるので、意図しない数値直入力であればそこで直せます。
実装参照:材料は sepika_core::model::Section の material・rebar_material・shear_rebar_material・steel_material(crates/sepika-core/src/model/section.rs)が持ち、割当・解除は sepika_edit::SetSectionMaterial(crates/sepika-edit/src/section_material/element_assign.rs)、未割当の検査は sepika_solver::statics::analysis::precheck::model_issues(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs)が担います。
既存断面の符号・階を直す
断面一覧の ID 欄をクリックして断面を選ぶと、断面作成パネルの「符号」「階」の欄にその断面の現在値が読み込まれます。 欄を書き換えてから「✏ 符号・階を変更」を押すと、選択中の断面へ反映されます。 変更後の符号+階が他の断面と重なる場合はボタンが押せなくなるため、先に相手側を直すか、別の値を入れてください。
同じパネルの「✏ 選択断面へ適用」は形状だけを差し替えるボタンで、符号と階は維持します。 断面の符号は部材リストや検定結果の見出しにも出るため、形状を変えたときに符号まで変わると結果の追跡ができなくなるためです。
実装参照:符号と階の変更は sepika_edit::SetSectionName、形状のみの差し替えは sepika_edit::EditSectionShape(crates/sepika-edit/src/section_material/section.rs)が担います。
断面形状の表記
断面形状の欄には、形状の種別と各寸法を 1 つの文字列で表します。 記号は ASCII のみを使い、接頭辞から断面の種別が読み取れるようにしています。 寸法の並びは形状ごとの実務の断面呼称に合わせているため、鋼断面はせい・幅・板厚の順、RC 矩形は幅 B・せい D の順になります。
| 形状 | 表記 | 例 |
|---|---|---|
| H 形鋼 | H-{H}x{B}x{tw}x{tf} | H-500x250x9x16 |
| 非対称組立 H 形鋼 | BH-{H}x{上B}x{上tf}x{下B}x{下tf}x{tw} | BH-800x300x19x400x25x12 |
| 角形鋼管 | BOX-{H}x{B}x{t} | BOX-300x300x12 |
| 円形鋼管 | P-{D}x{t} | P-216.3x8 |
| 山形鋼 | L-{A}x{B}x{t} | L-75x75x9 |
| 溝形鋼 | CH-{H}x{B}x{tw}x{tf} | CH-200x80x7.5x11 |
| リップ溝形鋼 | LC-{H}x{B}x{C}x{t} | LC-150x75x20x3.2 |
| T 形鋼 | T-{H}x{B}x{tw}x{tf} | T-100x200x8x12 |
| 平鋼 | FB-{B}x{t} | FB-100x9 |
| 中実丸鋼 | RB-{D} | RB-25 |
| RC 矩形 | BD-{B}x{D} | BD-300x600 |
| RC 円形 | RD-{D} | RD-600 |
| SRC 矩形 | SRC-{B}x{D}+H-{h}x{b}x{tw}x{tf} | SRC-500x800+H-400x200x8x13 |
| CFT 角形 | CFT-BOX-{H}x{B}x{t} | CFT-BOX-300x300x12 |
| CFT 円形 | CFT-P-{D}x{t} | CFT-P-300x9 |
| RC 耐震壁 | W-t{t} | W-t180 |
| RC スラブ | S-t{t} | S-t150 |
寸法の単位はすべて mm です。
整数の寸法は小数点以下を落とし、端数のある寸法はそのまま示します(300.0 は 300、6.5 は 6.5)。
円形の断面は、円形鋼管が P-、中実丸鋼が RB-、RC 円形が RD- と用途で記号を分けています。
どれも断面性能の算定式も検定の扱いも別物であるため、表記の段階で見分けられるようにしています。
SRC 矩形だけは、コンクリート断面の寸法に内蔵鉄骨の寸法を + でつないでいます。
内蔵鉄骨の寸法は断面形状そのものであり、外形だけを示すと内蔵鉄骨の違う 2 断面が同じ表記になって見分けられなくなるためです。
角形鋼管の角部外半径 \( r \) は表記に含めません。 H 形鋼のフィレット半径も、断面一覧の寸法表記とは別に保持します。 断面作成パネルの「選択断面のフィレット半径」または「選択断面の角R」で確認・変更できます。 この編集は形状算定の A・Iy・Iz・J を再評価し、材料、用途、階、カタログ・直接入力性能を維持したまま undo/redo できます。 カタログ・直接入力の J は半径編集で自動上書きしません。 角形鋼管で幾何は成立しても形状由来 J の適用域を外れる場合は、A・Iy・Iz を更新して J を理由付き未算定として保持します。 適用域と直角入力の扱いは H・角形鋼管のねじり定数 を参照してください。
実装参照:表記は sepika_core::section_shape::SectionShape::dimension_label(crates/sepika-core/src/section_shape/label.rs)が生成し、一覧は sepika_app::tables::sections::sections_table が表示します。
表示が切り詰められたとき
断面一覧の各列は、内容が列幅を超えるとセル内で切り詰めます。
セルの内容が列からはみ出すのを許すと、その行だけ以降の列が右へずれて表全体が読みづらくなるためです。
切り詰められた内容は、そのセルにマウスカーソルを合わせるとツールチップで全文を確認できます。
列の境界はドラッグして幅を変えられるので、SRC-500x800+H-400x200x8x13 のような長い表記を常に表示したい場合は断面形状の列を広げてください。
実装参照:切り詰め(クリップ)・列幅のリサイズ・ホバーでの全文表示は sepika_app::table_util::{standard_table, text_cell}(crates/sepika-app/src/table_util.rs)が担います。
被覆外周用半径と実外周
本節では、耐火被覆に必要な外周を解決するための半径入力を説明します。 H 形鋼はウェブとフランジの内隅 4 か所に接する同半径の円弧を、角形鋼管と角形 CFT は外隅 4 か所の円弧を指定します。 半径と断面寸法の単位は mm です。
| 入力状態 | 保持値 | 被覆の実外周 |
|---|---|---|
| 未知(新規作成時の既定) | None | 算定エラー |
| 明示した直角 | Some(0) | 直角輪郭で算定 |
| 既知の正半径 | Some(r) | 接線円弧を含む輪郭で算定 |
「寸法既知」を選んで 0 を入力すると、直角のモデル形状を明示できます。 フィレット半径・角Rが不明な場合は、直角とみなさず未知のまま保持してください。 H と Box の新規作成欄でも同じ状態を入力でき、取り込んだ CFT の角Rは選択断面の欄で編集できます。
フィレット半径・角Rは有限な非負値で、円弧が断面からはみ出さず重ならないことを検証します。 H のせいを \(H\)、幅を \(B\)、ウェブ厚を \(t_w\)、フランジ厚を \(t_f\) とすると、上限は \(\min{(H-2t_f)/2,(B-t_w)/2}\) です。 Box と CFT Box の外角半径の上限は \(\min(H,B)/2\) です。 負値、NaN、無限大、過大半径は入力エラーとなり、直角や外周 0 へ読み替えません。
吹きつけ被覆用の実外周 \(P\) は、次の式で求めます。
| 形状 | 実外周 \(P\) [mm] | 成形版の包絡周長 [mm] |
|---|---|---|
| H | \(4B+2H-2t_w-(8-2\pi)r\) | \(2(B+H)\) |
| Box・CFT Box | \(2(B+H)-(8-2\pi)r\) | \(2(B+H)\) |
| 組立 H | \(2(B_u+B_l+H-t_w)\) | \(2{\max(B_u,B_l)+H}\) |
| Pipe・CFT Pipe | \(\pi D\) | \(\pi D\) |
| 平鋼(中実矩形) | \(2(B+t)\) | \(2(B+t)\) |
| 中実丸鋼 | \(\pi D\) | \(\pi D\) |
組立 H は、上下フランジとウェブの板組輪郭を表すモデル形状です。 溶接ビードを含む外表面を表すものではなく、圧延 H のフィレットも自動適用しません。 鋼管は内周を被覆対象に含めず、成形版でも円形を包絡正方形へ置き換えません。 成形版の包絡寸法だけなら半径未知でも算定できますが、既知の不正半径はエラーとします。 その他の形状はこの外周 API の対象外で、未対応形状としてエラーを返します。
たとえば H-400×200×8×13、ルート半径 13 mm の実外周は約 1561.68 mm です。 同断面の成形版の包絡周長は 1200 mm であり、吹きつけの実外周とは区別します。
フィレット・角Rは、形状由来の A・Iy・Iz・Zp、コア、質量、ファイバーの材料領域へ反映します。 算定元の区分と未知寸法の扱いは 断面諸量 を参照してください。 J は H の慣用薄肉式、角形鋼管の中心線式、CFT コアの単体自由ねじり算定を区別します。 鋼材せん断面積は既存式を維持しており、これらを実形状に対して全域で安全側とする保証はありません。 被覆重量の荷重への接続は 階共通耐火被覆の重量 を参照してください。
実装参照:SectionShape::{validate_surface_radius, coating_surface_perimeter, coating_envelope_perimeter}(crates/sepika-core/src/section_shape/surface.rs)が半径検証と外周算定を行います。
SetSectionSurfaceRadius(crates/sepika-edit/src/section_material/section.rs)が算定元に応じたフィレット半径・角Rの編集を行います。