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壁エレメントモデル(耐震壁)

耐震壁を壁柱(BeamElement)と剛梁変換による 4 節点 24 自由度モデルで算定します(壁エレメント置換モデル。一貫構造計算で標準的に用いられる実務的モデル化)。

壁の入力の正は壁版(WallPlate)です(壁の断面と自重)。解析用の壁要素はモデルに保存せず、準備計算・解析・診断の直前に壁版から都度生成します。

壁要素になるのは、壁領域全体を覆う 4 節点の壁版だけです。 具体的には、柱・梁に囲まれた壁版(Enclosed)の境界節点が、その壁版が属する壁領域の境界節点と一致し、その節点数がちょうど 4 で、かつ断面が割り当てられている場合に限ります。

この条件は壁エレメントの定式化そのものから来ています。壁エレメントは下辺 2 節点・上辺 2 節点を両端ピンの剛梁で結ぶ 4 節点 24 自由度のモデルなので、次の形では前提が崩れます。

  • 壁領域の境界が 5 節点以上のとき(上下の大梁が中間節点で分割されている場合など)。剛梁は四隅しか結ばないため、中間節点が壁にめり込む向きへ動けてしまいます。
  • 壁領域が間柱で複数の壁版に分割されているとき。壁版ごとに要素を作ると、1 本の長い壁柱が複数の細い壁柱に割れ、面内剛性が実態と食い違います。

壁エレメントにならない壁版(間柱で分割された壁版・腰壁・垂れ壁・パラペット・自立壁・5 節点以上の壁領域内の壁版)は、異常な状態ではないので診断には出しません。自重は境界の辺へ分配します(自重の長期応力解析への接続)。剛性は、条件を満たすものだけフレーム内雑壁(袖壁・腰壁・垂壁)として周辺の柱・梁の断面性能へ算入します(条件は ティモシェンコ梁要素)。板厚を引けない壁版、床領域に取り付く自立壁、取付き線が梁の全長を覆わない取り付く壁版は算入の相手が決まらず、剛性算入なしの壁版として扱います。剛性算入の有無と荷重の有無は別であり、自重・仕上げ荷重・開口部重量の配分対象になります。

剛性算入なしの壁版は、壁の剛性と、壁が負担する面内せん断を周辺架構へ伝える経路を落とすため、剛性と応力を過小評価し得る危険側の扱いです。4 節点でない壁版割当領域の壁版が意図したものか、剛性算入の対象から漏れていないかを確認してください。

取り付く壁版(パラペット・腰壁・垂れ壁・自立壁)も解析要素にはしません。耐震壁要素は柱・梁に囲まれた壁版を前提とするためです。取付き先と自重の分配は 壁の断面と自重、行き先は 地震用重量・層データの生成 を参照してください。

壁要素の幾何

節点は入力順に依らず標高 \( z \) で下辺 2 節点・上辺 2 節点に分け、上辺は下辺の軸への符号付き射影の順で対応付けます。壁長 \( l_w \) は上下辺長さの平均(台形壁に対応)、壁高さ \( h \) は上下辺中点間距離とします。

耐震壁として扱う条件

耐震壁として扱うのは、上下の辺がともに大梁で囲まれた壁です。壁が負担した面内せん断は、壁エレメントの上下の剛梁を介して大梁へ伝達されるため、上下辺のいずれかに大梁がない壁は伝達先を持ちません。そのような壁はフレーム内雑壁として扱います。最下階で基礎梁をモデル化していない壁も、下辺の伝達先がないため対象外です。

左右の鉛直辺(側柱)は要求しません。側柱を持たない壁は、壁の縦筋が一様配筋であるとみなして等価引張鉄筋比を算定する正規の対象となるためです。

辺と部材の対応は節点の一致で判定します。壁エレメントの剛梁は四隅節点の並進しか伝達しないため、壁の四隅とは別の節点を使う部材は辺を構成しているとみなしません。大梁とみなすのは勾配 5% までの水平材で、曲げを伝達しないブレース(軸材)・面要素・バネは大梁として数えません。大梁として扱う要素は線材(梁・ファイバー梁・マルチスプリング梁)に限ります。

側柱は、梁・ファイバー梁・マルチスプリング梁という要素表現によらず、明示した材料区分・断面用途と、壁の鉛直側縁の両端節点との一致で判定します。側柱には柱用、上下大梁には梁用の断面が必要です。材料不明をRC壁へ推定したり、候補の重複を側柱なしへ読み替えたりしません。耐震壁として成立しない壁と、材料・用途が未確定の壁は区別します。側柱を持たない正規の壁と、不正な側柱が脱落した状態も区別します。

RC・SRC置換壁の側柱は、壁側のせん断断面への算入と、柱自身の壁面内曲げ・せん断の解放を組み合わせます。純鋼板の境界柱にはこの解放を適用せず、RC壁用の側柱断面にも算入しません。SRC・CFT側柱を認識できることは、その壁の終局耐力を算定できることとは別です。

耐震スリットが 4 辺のいずれにも無いことも、材種を問わず課します。切れた辺があると、壁が負担した面内せん断を周辺の柱梁へ伝えられないためです。

RC 壁には、上記に加えて RC 規準に由来する次の 2 条件を課します。壁厚が 120 mm 以上であること、開口周比 \( r_0 \le 0.4 \) であることです。鋼板耐震壁にはこれらを課しません。鋼板は板厚 9〜16 mm 程度で用いるため、材種を問わず 120 mm の閾値を課すとフレーム内雑壁に落ちてしまうためです。

RC・SRC置換壁と純鋼板の境界は、断面形状と明示材料の区分を照合して判定します。材料が未設定・不適合な壁は未確定として理由を示し、RC壁や鋼板壁へ暗黙に置き換えません。

壁柱・側柱・上下梁の分担

次の図はRC・SRC置換壁の概念図です。中央の仮想壁柱は壁板を表し、左右の側柱と上下梁は別の部材です。

RC・SRC置換壁の部材の役割 上下の弾性高剛性梁、中央の仮想壁柱、左右の独立側柱。側柱の両端は壁面法線まわりの回転を解放し、軸と面外応答を保持する。 上下梁:剛性100倍の弾性高剛性部材梁自身の材料降伏は評価しない○ 側柱両端の壁面法線まわり回転解放壁面内方向 →  壁面法線 ⊙(紙面手前)独立側柱軸・面外を保持仮想壁柱壁板の置換部材

壁の面内せん断断面には採用可能な側柱を算入し、独立側柱の壁面法線まわり回転を解放します。壁側と柱側へ同じ面内曲げ・せん断を無条件に二重算入しません。側柱自身の軸力・軸履歴と面外応答は保持します。壁柱と側柱の軸抵抗を併せ持つ置換モデルであり、板と柱の重なり領域について実構造の応力分担を厳密に再現する保証ではありません。

純鋼板では、鋼板のせん断抵抗と未解放の境界骨組の抵抗を別々に扱います。境界柱をRC壁用の側柱断面へ加えたり、RC・SRC置換壁用の回転解放を適用したりしません。壁単体、仮想壁柱、各独立側柱、上下梁を含む境界骨組の結果は、同じ力を重ねて加算しない範囲で読み取ってください。

側柱の回転解放と適用範囲

RC・SRC置換壁の側柱では、壁面法線まわりの両端回転だけを解放します。柱の全回転をピンにする条件ではありません。壁法線を柱断面内へ射影した方向を用い、断面が壁に対して斜めでも近い局所軸へ置き換えません。材料の断面軸を保ち、保持する回転方向には入力した剛接・ピン・半剛の条件を残します。

軸剛性・軸力、面外曲げ・せん断、物理質量を保持します。増分解析のファイバー・MS側柱は、軸・二軸曲げの材料履歴を持ち、軸降伏・除荷・再載荷を評価します。解放回転を各試行状態で釣り合わせ、同じ収束状態の内力と接線を用います。局所収束だけでは履歴を確定せず、全体未収束時は材料と内部回転を一体で巻き戻します。特異・非有限・局所不収束は失敗として扱います。

保持自由度を \(u_a\)、内部の解放回転を \(u_b\) とし、部材荷重を含む局所残差 \(r_b(u_a,u_b)=0\) を各試行状態で解きます。部材荷重がなければ、解放方向の材端モーメントは零です。同じ収束状態の保持側内力 \(f_a\) を返し、同じ状態の微分による接線ブロックについて、\(K_{bb}\) が可逆な場合に次を用います。

\[ K_{\mathrm{cond}}=K_{aa}-K_{ab},\operatorname{solve}(K_{bb},K_{ba}) \]

非線形内力を \(K_{\mathrm{cond}}u_a\) で代用しません。局所残差の評価と接線には同じ荷重・材料履歴を用い、特異・非有限・局所不収束を零剛性や弾性への置換で隠しません。これは準静的な数値縮約の条件であり、全状態での解の一意性や動的適用を保証しません。

部材荷重がある側柱では、元の節点間全長に対する荷重を可撓部と剛域に分けます。可撓部の等価荷重を断面材料と回転接続の両方の釣合いへ含め、剛域分は実合力と腕長による節点荷重として扱います。出力する材端力は同じ収束状態の荷重込みの力とし、固定端力をさらに加算しません。元の端部条件・剛域の変換と物理質量を保持し、荷重のない側柱へだけ有効なモーメント零条件を、部材荷重のある側柱へ無条件には当てはめません。

局所釣合いと整合接線の数理原理は、Lowes, Mitra, Altoontash, A Beam-Column Joint Model for Simulating the Earthquake Response of Reinforced Concrete Frames, PEER Report 2003/10(扉February 2004)、§3.3.2 本文15–17頁/PDF21–23頁、式(3.3)・(3.4)、§3.3.3 本文17–18頁/PDF23–24頁、式(3.5)–(3.8)を参照します。原著の対象は13成分・4内部自由度の平面RC接合部です。この原理の採用だけでは、本壁側柱モデルの材料履歴・実壁挙動の検証を完了したことにはなりません。

解析・指定RC・SRC置換壁の側柱接続
線形静的、梁・ファイバー・MSの入力表現共通の弾性回転解放を適用
単一平面・準静的の増分解析、ファイバー・MS材料履歴を保持した回転解放を適用。梁の自動選択でファイバーとなる柱も同じ扱い
増分解析で側柱を材端集中ばねに指定解放との連成が未定式化のため、対象部材・壁・解析種別と理由を示して適用外
非線形時刻歴の側柱接続従属回転の慣性との連成が未定式化のため理由付き適用外
P–Δを有効にした側柱接続幾何剛性との連成が未成立のため、実際の指定に従って理由付き適用外
固有値・線形時刻歴で部材の整合質量を使う接続初期弾性接続による実際の整合質量を構成できる条件に限る。特異な内部回転や、慣性を持つ共通ねじり回転を静的に固定しなければならない条件は理由付き適用外
要素質量を使わない質点のみ方式上記の部材整合質量の構成条件は課さない。非線形時刻歴・P–Δ等の接続制限は別に適用

側柱の幾何判定は材軸単位ベクトルの鉛直成分が \( |e_z| > 0.707 \) となる鉛直卓越材を対象とします。これは壁脚内力と初期耐力の矩形鉛直壁への限定とは別の条件です。側柱として認識されても、傾斜壁の参考骨格や初期耐力が求められるとは限りません。

複数壁が側柱を共有する場合、平行・反転した法線は同じ解放面として扱います。採用可能な壁どうしが非平行となる共有柱は、独立した定式化が未成立のため適用外です。最初に登録した壁だけで解放方向を決めません。

診断とモデル化表示は、同じ部材の物理的役割と解析種別に対応した理由を示します。解析入口では、実際のP–Δ指定と質量方式の適用条件も検査します。停止条件は対象部材・壁・解析種別とともに示し、有効な鋼板耐震壁の注意通知と区別します。壁との節点・断面・材料用途の対応が矛盾する場合も、側柱なしとして継続しません。純鋼板・壁なし骨組・剛性算入なしの壁版へ、RC側柱接続の制限を一律には適用しません。

実装参照:共通分類は sepika_core::model::WallSideColumnIndex(crates/sepika-core/src/model/wall_side_column.rs)、生成と診断は sepika_element::factory(crates/sepika-element/src/factory/)によります。

壁上下の剛梁の役割

壁上下辺の大梁は、壁と連続した一枚の板を梁として表す弾性高剛性部材です。軸・二軸曲げ・ねじり・せん断の剛性を一律100倍とし、重量・物理質量にはこの倍率を乗じません。対象は耐震壁として成立した壁の上下辺と両端節点が一致する水平材(勾配5%以下)で、辺の一部だけを共有する材や鉛直材には適用しません。

線形・非線形の解析とも、この役割の梁自身の材料降伏は評価しません。入力の要素表現が梁・ファイバー・マルチスプリングのいずれでも、非線形モデルの選択にかかわらず弾性高剛性部材として扱います。モデル化表示は弾性とし、「壁上下の剛梁(弾性高剛性部材。材料降伏は評価しません)」と示します。骨格・降伏材料のうちこの役割で使わない入力は要求しませんが、断面・材料区分・配筋幾何・必要なコンクリート強度・正の有限なヤング係数・質量算定に必要な入力は必要です。

このモデルは実梁自身の耐力・降伏・損傷を評価する用途には使えません。高剛性の弾性境界から実梁の無損傷を判断すると、耐力の過大評価や変形の過小評価につながり得ます。通常のファイバー・マルチスプリング部材と壁側柱の材料非線形は、この上下梁の弾性という役割とは別に扱います。

実装参照:役割と剛性倍率は sepika_element::frame::beam::is_elastic_wall_girder(crates/sepika-element/src/frame/beam/stiffness_factors.rs)、非線形解析での要素生成は sepika_element::factory::build_nonlinear_behavior(crates/sepika-element/src/factory/mod.rs)によります。

壁と周辺架構の構造種別

耐震壁とその周辺架構(上下の大梁・左右の側柱)は、構造種別をそろえてください。壁エレメントは、仮想壁柱が壁板の軸・面内曲げ・面内せん断を表す置換モデルです。RC・SRC置換壁の独立側柱は壁面法線まわりの両端回転を解放し、柱自身の軸・面外応答を保持します。上下の大梁は壁板と連続する弾性高剛性部材として扱い、壁と周辺架構が一体で抵抗します。RC壁の周辺にはRC・SRC架構を用い、弾性解析ではCFT側柱も扱います。RC壁に純鉄骨の周辺架構を組み合わせた混合構造は扱いません。

構造種別が食い違うモデルは、解析の入口で入力エラーとして停止します。許容応力度計算の剛性・断面検定にも効くため、保有水平耐力計算だけでなくすべての解析で検査します。判定には材料の区分(構造種別の判定)を用い、材料が設定されていない部材は別の入力チェックが扱うためここでは対象外とします。

算定式

線形弾性解析における壁柱の軸剛性用断面積(壁筋考慮):

\[ a = t \cdot l_w \cdot \text{rebar_factor} \]

\[ \text{rebar_factor} = 1 + (E_{\text{steel}}/E - 1) \cdot p_s \]

面内曲げ:

\[ i_z = \frac{t \cdot l_w^3}{12} \cdot \text{rebar_factor} \]

この係数の壁筋比は直交する筋比の小さい方を表す入力値であり、明示した縦筋比とは区別します。鉄筋のヤング係数は205000 N/mm²で、方向別鉄筋材料のヤング係数・降伏強度・強度倍率はこの線形係数に使用しません。軸剛性はE・a、面内曲げ剛性はE・izの積です。この共通筋比による換算は未照合の近似であり、応力配分や変形について一律に安全側と判断できません。線形の軸・面内曲げ断面には開口による控除を行わず、開口低減は下記のせん断に適用します。開口位置による軸・曲げへの影響も検証済みではありません。

開口低減をせん断へ適用しても、開口による軸変形や軸・曲げ連成の影響を補える保証はありません。側柱なし、上下辺の水平変位を拘束し上辺に一様鉛直変位を与える均質な平面応力弾性板では、同じ軸方向材料剛性・ポアソン比0.2・外形面積の10%の開口に対し、開口無控除の軸剛性はエネルギー原理による剛性上界を超え、軸変位を過小評価する方向になります。この限定比較を実RC全般、側柱あり、水平荷重時の安全側/危険側の判定へ一般化できません。任意の開口位置・寸法への適用が確認されたモデルとして使用せず、対象の荷重・ひび割れ・周辺架構を含む根拠を別途確認してください。

壁板の軸・面内曲げに用いる断面と、側柱を含む耐力壁全体の断面を区別してください。側柱の軸力差による偶力は耐力壁全体の曲げ抵抗へ寄与しますが、側柱自身の断面二次モーメントを壁板の面内曲げ断面へ加算しません。側柱込みの一本柱断面の剛性を中央壁柱へ与え、側柱軸も別に残すと、側柱の抵抗を重ねて評価するおそれがあります。

線形解析では、長期・短期の荷重や応力の大きさに応じて、ひび割れ前後の壁剛性を自動で切り替えません。許容応力度計算であることだけを理由に、実際の壁がひび割れ前であるとは判断できません。ひび割れ後も初期剛性を用いると変形を過小評価し得ます。一方、壁剛性を小さくすれば、応力配分・偏心率・剛性率が一律に安全側となるわけでもありません。対象の荷重・応力状態と評価目的に対する適用性を確認してください。

『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』(第2版第1刷、2026年2月11日)付録1-3.1(3)②、708–710頁は、目的に応じた剛性評価と剛性低下に対する技術的検証を求め、耐力壁の弾性剛性の算定先をRC規準(2024)8条3項としています。713頁の一本柱モデルの降伏時剛性低下率と、714頁の壁板・側柱を分担する三本柱モデルは適用対象が異なります。これらは上記共通筋比換算の式を直接定める根拠ではありません。鉄筋を剛性へ算入しないコンクリート総断面の方式は現在採用していません。

面内せん断は、壁と左右側柱の重複を控除した断面に各材料のE・Gを与え、せん断ひずみエネルギー積分から剛性Ksを求めます。RC壁・RC/SRC側柱のEcはFcと直接入力密度からγRC→γCを求めて算定し、CFT側柱の充填部EcはFc・種類・無筋コンクリート表から算定します。Fcまたは密度が不正な耐震壁・側柱は要素生成時にエラーとし、Material.youngや鋼管のみへ黙ってフォールバックしません。仮想壁柱にはAsy=r Ks/G壁を与えます。rは開口低減率です。面外せん断にも同じ開口低減率を乗じます。

剛梁変換(並進は平均、回転はレビ・チビタ記号で ω):

\[ K_{24} = A^T \cdot K_{\text{col}} \cdot A \]

面外回転の接合条件: 壁柱の面外曲げに対応する局所 y 軸まわりの両端回転はピンとし、内部自由度として静縮約します。弾性・ファイバー壁柱とも同じ条件です。壁柱に沿う面外横移動に対する曲げ抵抗は期待しません。実装は sepika-element/src/wall/wall_element.rs です。

記号・単位

記号意味単位
\( t \)壁厚mm
\( l_w \)壁長(上下辺長さの平均)mm
\( h \)壁高さ(上下辺中点間距離)mm
\( E \)コンクリートのヤング係数N/mm²
\( E_{\text{steel}} \)壁筋のヤング係数N/mm²
\( p_s \)壁筋比-
\( \text{rebar_factor} \)軸・曲げ剛性に壁筋を考慮する係数-
\( a \)壁柱の軸剛性用断面積(壁筋考慮)mm²
\( i_z \)壁の面内曲げの断面二次モーメントmm⁴
\( K_{\text{col}} \)壁柱の剛性マトリクスN/mm
\( A \)壁柱の自由度を四隅節点へ写す剛梁変換マトリクス-
\( K_{24} \)壁エレメントの 24 自由度剛性マトリクスN/mm
\( Q_u \)壁の終局せん断強度N
\( Q_y \)鋼板耐震壁のせん断降伏耐力N
\( F \)鋼板の降伏強度N/mm²
\( r_0 \)開口周比-
\( r_1 \)剛性用の開口低減率-
\( r_2 \)耐力用の開口低減率-

面内せん断の非線形性

非線形解析では、壁の面内せん断を終局せん断強度 \( Q_u \) で頭打ちとする弾完全塑性骨格の復元力ばねとして扱います(耐震壁(せん断非線形トリリニア))。せん断モード(上辺 2 節点の壁面内水平並進)に沿う塑性すべり \( \gamma_p \) を導入し、変形測度 \( D = \gamma_p + Q/k_{s0} \)(\( k_{s0} = p^{\mathsf T} K_{el}\, p \) は弾性モード剛性)に対する履歴ばね \( Q = M(D) \) と壁の伝達水平力が一致するよう \( \gamma_p \) を定めます。接線剛性はせん断モードの剛性を保持し、非線形は内力側のすべり補正のみで表現します(初期剛性法。曲げ機構の形成後にせん断が \( Q_u \) から除荷へ向かう角点で、剛性を除去した整合接線では大域反復が特異化するため)。

ばねの骨格は弾完全塑性(初期剛性 \( k_{s0} \)、耐力 \( Q_u \)。トリリニアのひび割れ点は弾性線上 \( Q_u/3 \) に置きバイリニア相当、終局点は降伏変形の \( 10^4 \) 倍で降伏後フラット)とし、除荷・再載荷則は履歴則の設定(履歴則の設定(増分用・時刻歴用))から解決します。既定は最大点指向型(増分・時刻歴共通。壁の面内せん断はひび割れのスリップ性状が強く、除荷開始剛性が初期剛性のままの移動硬化型ではループの吸収エネルギーを過大評価するため)です。逆行型・標準型・原点指向型・武田型も選択できます。

軸・曲げの非線形性(ファイバー壁柱)

保有水平耐力計算(増分解析)では、壁柱の軸・曲げを既定でファイバー断面の弾塑性評価とします(柱の Fiber 既定と同じ扱い)。壁柱は「全長弾性梁+端部塑性増分ヒンジ」のファイバー要素(ファイバーモデル)とし、断面は次で構成します。

  • コンクリート: 幅 \( t \) × せい \( l_w \) の格子ファイバー(幅 4 × せい 20 分割。Fc≤60 は材料から解決した E を初期接線へ反映した NewRC、\( f_c > 60 \) は NewRC 固有 Ec の暫定外挿)。除荷則は部材ごとに増分用・時刻歴用を選択でき(履歴則の設定(増分用・時刻歴用))、自動(未指定)の既定は増分解析=原点指向型、時刻歴応答解析=Karsan–Jirsa 型です。壁柱のファイバーでは ConcreteNewRc が逆行型・原点指向型に、ConcreteCyclic::newrc が Karsan–Jirsa 型に対応します。
  • 縦筋: 明示壁縦筋比 pwv_ratio を各せい方向層へ等価分散した鋼材ファイバーとします。縦筋材料の公称fyを用い、増分解析では所有する材料の強度倍率を一度適用します。縦筋比・材料の不足は補完せず拒否します。

非線形壁柱の弾性基準となる軸・面内曲げの鉄筋剛性係数は、上記の線形解析用の共通筋比に代えて明示した縦筋比を用います。鉄筋のヤング係数は205000 N/mm²です。せん断の断面評価と開口低減は弾性壁柱と共通です。塑性化域長は \( 0.5 \, l_w \)(可撓長の 45% までにクランプ)とします。これにより細長壁の曲げ降伏・N–M 相関(軸力変動による曲げ耐力の変化)が表現されます。せん断の \( Q_u \) 頭打ちは上記のとおり併用し(すべりを差し引いた変位を壁柱へ与える直列構成)、曲げ・せん断のうち先に到達した方で耐力が頭打ちになります。

許容応力度計算(弾性解析)では、軸・曲げ・せん断とも線形弾性として扱います。

終局せん断耐力の引張主筋量は、引張側最端の付帯柱1本の全主筋量です。初期耐力の対応域は、対称同質の正方形RC側柱を持つ単独無開口壁に限ります(壁脚内力と初期耐力)。

壁横筋の降伏強度は断面の「せん断補強筋」材料のfyを用い、割増しません。明示横筋比pwh_ratioとその材料が必要で、未割当・非有限・非正fyは入力不備として拒否します。

正負の終局耐力を別々に求め、壁ばねにも別々に設定します。正方向は下辺aからbへ向かう上辺の移動で、a側を引張側・b側を圧縮側とします。負方向はこれを入れ替えます。全長Dは左右柱の外面間距離、圧縮側柱せいDcはその柱の壁長方向の実投影寸法です。等価壁厚は、重複控除した同じ断面の面積Aを使い、te=min(A/D, 1.5t)とします。引張側柱の主筋量は方向別の主筋セットの面積を合算した全主筋量です。側柱を左右平均した寸法や、多い側の主筋量では代用しません。関連する寸法・面積の定義は建築研究資料第204号・第4章を参照してください。

正負それぞれの降伏変位はQu/Ks0です。初期剛性Ks0は共通とし、反対側の最大経験点・未経験時の降伏点は、載荷方向に対応する包絡線から求めます。弾完全塑性リターンマッピング、履歴ばね、ファイバー壁柱との連成のいずれでも、その方向の耐力を使います。モデル化表示には正負両方のQuを表示します。採用runがない場合や入力が一致しない場合は未解決と表示します。表示のために初期耐力を再計算しません。

鋼板耐震壁の終局せん断強度

鋼板耐震壁の面内せん断は、鋼板のせん断降伏で頭打ちとします。降伏せん断応力度には von Mises の降伏条件による純せん断の値 \( \tau_y = F/\sqrt{3} \) を用い、これを全断面 \( t \cdot l_w \) に乗じます。\( F \) には材料の降伏強度を用います。

\[ Q_y = t \cdot l_w \cdot \frac{F}{\sqrt{3}} \]

せん断座屈は考慮していません。 幅厚比が大きく補剛のない鋼板は、せん断降伏に達する前に面外へせん断座屈して耐力が頭打ちになるため、上式では耐力を過大評価し得ます。

増分解析および非線形時刻歴応答解析の開始時には、実際に解析へ組み込まれる鋼板耐震壁の枚数・要素 ID・生成元の壁版 ID とあわせて、上式とせん断座屈未考慮の注意を表示します。同期実行・バックグラウンド実行とも、1 回の起動につき対象をまとめて 1 回通知し、解析は注意付きで継続します。再起動では再通知します。準備計算の注意や計算エラーは、この通知とは別に保持します。

線形時刻歴、対象の鋼板耐震壁がないモデル、RC 壁・SRC 内蔵鋼板、壁エレメントにならない壁版には、この鋼板耐力モデルの注意を表示しません。通知は既知制限の開示であり、座屈耐力・補剛条件・境界条件の検討や断面検定の合格判定ではありません。適用可能な幅厚比の数値しきい値は定めていません。

実装参照:sepika_job::notices::steel_seismic_wall_notice(crates/sepika-job/src/notices.rs)が対象と通知を生成し、sepika_app::app::actions(crates/sepika-app/src/app/actions/)が開始時に表示します。

設定不備による停止

次の設定不備がある耐震壁は、保有水平耐力計算・非線形時刻歴応答解析をエラーで停止します(代替値で補わず、弾性としても扱いません。耐力が定まらない壁は際限なく水平力を負担し保有水平耐力を過大評価するためです。増分解析「解析前の入力チェック」)。

  • 壁エレメントとして構築できない(4 節点の指定がない、節点座標が退化している)
  • 断面が設定されていない、または壁厚が \( \le 0 \)
  • 材料が設定されていない

RC 壁では、これに加えて次を検出します。

  • 材料にコンクリート強度 \( F_c \) が設定されていない、または \( F_c \le 0 \)
  • 付帯柱があるのに、その断面から主筋量を取得できない(断面形状が RC 矩形でない、主筋の本数・径が 0)
  • 明示方向配筋・材料・対応側柱・同じfaceの必要応答が不足する
  • 静的一次参照または正負の初期Quが未解決・不正となる

鋼板耐震壁では、次を検出します。

  • 材料に降伏強度 \( F \) が設定されていない、または \( F \le 0 \)
  • \( Q_y \) の算定結果が \( \le 0 \) となる

壁単体の確定ステップ応答

壁板を代表する4節点要素の応答と、左右の付帯柱・上下梁を含む系全体の応答を区別します。以下の合力は壁要素単体の節点内力であり、側柱や梁の断面力を加算した層切断力ではありません。側柱は各線材自身のN・M・Qを参照します。仮想壁柱は壁板の置換部材であり、側柱とは別です。

正規化した下辺を \(B=(b_a,b_b)\)、上辺を \(T=(t_a,t_b)\)、下辺aからbへ向かう単位ベクトルを \(e_w\) とします。同じ標高の下辺2点を入れ替えると \(e_w\) は反転します。全体座標の物理的な力は変わりませんが、局所の正負符号と正負別耐力の対応は一緒に反転します。

\[ Q_w=\left(\sum_{i\in T}F_i\right)\cdot e_w,\qquad Q_{dir}=\left(\sum_{i\in T}F_i\right)\cdot e_{load} \]

\(Q_w\) は面内せん断力、\(Q_{dir}\) は加力方向への符号付き寄与です。平面内で斜めを向いた矩形壁では両者が異なります。例えば面内力100 kNの壁が全体X軸に45°をなすと、X方向寄与は70.71 kNです。正の負担割合へ用いる絶対値は、上下力・モーメントの釣合いを確認してから採ります。

任意の基準点 \(O\) での合力は、節点の並進力だけでなく節点モーメント \(M_i\) を含めます。位置 \(r_i\) は未変形の全体座標です。

\[ F=\sum_iF_i,\qquad M_O=\sum_i\{M_i+(r_i-O)\times F_i\} \]

\[ M_{O'}=M_O+(O-O')\times F \]

下辺と上辺それぞれの合成点は、その辺の中点を既定とします。上下の釣合い残差は、下辺中点を共通基準点として全4点を合成した値です。上辺高さ3000 mm、X方向力が2点各50 kNなら、下辺中点での上辺合力のY回り力項は +300 kN·m、上辺中点での力項は0です。節点モーメントがある場合はこの力項へ別に加算します。集中モーメントの和だけを転倒モーメントとして読みません。

上下中点の平均並進変位差による弦変形角は次式です。

\[ H=|center(T)-center(B)|,\quad \Delta_w=(u_T-u_B)\cdot e_w,\quad R_{wall}=\Delta_w/H \]

剛体並進では0ですが、剛体回転の寄与を含みます。例えばY回り微小剛体回転0.01 radでは \(R_{wall}=0.01\) になり、材料せん断ひずみ0を意味しません。材料せん断ひずみ \(\gamma_{wall}\) には剛体回転・曲げの除去が必要です。現在はその材料量を復元していないため、値なしと未提供理由を記録します。弦変形角を材料せん断ひずみへ流用しません。

入力・結果対象・単位既定・適用条件
正規化4節点・局所面内軸下a、下b、上a、上b/無次元壁幾何と解析要素の自由度順が一致すること
節点内力24成分全体座標のF [N]、M [N·mm]全成分が有限であること。欠落・不正は値なし
上下合力・合モーメント壁要素単体/N、N·mm各辺中点を基準点とし、その位置 [mm] を併記
釣合い残差全4点/N、N·mm共通基準点は下辺中点。設計消費では力・モーメントの相対許容差 \(10^{-6}\) を確認
\(Q_w,Q_{dir}\)壁単体/N加力方向は全体XまたはY、局所符号を保持
仮想壁柱N・Q・M局所断面力/N、N·mm既存評価位置0〜1と局所x/y/z軸を併記。Nは引張正。付帯柱を含めない
\(H,\Delta_w,R_{wall}\)壁上下辺中点/mm、mm、rad近似矩形鉛直壁。辺の同標高・鉛直対応の幾何許容差は代表長さの \(10^{-8}\)
\(\gamma_{wall}\)材料せん断ひずみ/無次元未提供。剛体回転・曲げを除去した材料量の復元なし
線材用m・axial・Rp、ヒンジ・せん断降伏イベント2節点線材壁へ適用しない。壁内部の塑性化0やイベント0と解釈しない
壁版・生成要素・run・入力世代・step結果の識別各確定stepを保存。最終値を過去stepへ複写しない

壁専用応答の検証範囲は矩形鉛直壁です。平面内の方位は任意ですが、台形、傾斜した側辺、上下辺の標高が曖昧な形状、退化形状には壁専用結果を提供せず理由を示します。この制限は応答の検証範囲を表し、既存の幾何や解析要素の適用条件を変更するものではありません。結果未記録の過去データも0で補完せず、再解析を案内します。

GUIの増分解析結果、CSV帳票、保存結果には、各確定stepの壁専用応答と未提供理由を保持します。MCPでは増分解析ジョブの analysis_status のsummaryから壁応答履歴と実行識別を確認できます。材料せん断ひずみや壁用イベントがないことは、塑性化していないという判定ではありません。頭打ち・曲げ塑性化後の内力も、各stepの要素状態から記録します。

力と変形の根拠

合力・合モーメントと基準点移動は静力学から定めた結果の定義です。Daniel W. Baker(Colorado State University)・William Haynes(Massachusetts Maritime Academy), Engineering Statics: Open and Interactive, 著者公開HTML 2026年9月26日版、§4.4 式4.4.2、§4.7、書誌を参照します。HTMLにはページ番号がありません。

弦変形と材料せん断の区別は、TU Delft / CiTG Computational Modelling 講義、Solving the Timoshenko beam equation: approaches to avoid shear locking の「Problem setting」に示す \(GA(v'-\theta)\) と独立な断面回転によっても確認できます(HTML、ページ番号なし)。これは壁固有の材料せん断ひずみを復元できる保証や実験検証ではありません。

実装参照:sepika_solver::nonlinear::pushover::wall_response(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/wall_response.rs)が壁単体応答を合成し、step_record(crates/sepika-solver/src/nonlinear/pushover/step_record.rs)が確定stepごとに記録します。

質量

壁版から生成する壁エレメントの質量は、壁版の自重配分で定まる解析用負担分を用います。壁エレメントを直接構成する場合も、周辺の梁・ファイバー梁・MSの表現によらず、同じ内法寸法から総量を求めます。壁版と生成要素、周辺架構の物理質量を重ねて加算しません。

壁の質量は、自重と同じ周辺柱梁の内法面積から開口面積を控除し、開口部(サッシ等)の重量を加算した値とします(節点質量からの控除規約と揃えます。地震用重量・層データの生成)。

集中質量ではこの質量を四隅の並進自由度へ均等配分します。整合質量では、壁柱の整合質量を面内ピンの剛性と同じ自由度写像で縮約し、4節点の変換行列へ写します。内法面積・開口重量による質量との差は全体をスカラー補正し、総質量を保存します。

実装参照:sepika_element::wall::wall_element(crates/sepika-element/src/wall/wall_element.rs)が算定します。 側柱の回転接続は sepika_element::wall::side_column と sepika_element::frame::fiber が扱います。弾性接続は side_column/column.rs、材料履歴を持つ接続は frame/fiber によります。 耐震壁の成立判定は sepika_element::wall::misc_wall::wall_is_seismic が担います。一次設計の耐震壁せん断検定(一次設計)でも成立判定は共通です。ただし、材料・断面・応答が不足する壁版も検定表から消さず、未検定理由を表示します。耐震壁として成立しない自重・雑壁のみの壁版は「対象外」として分けます。純鋼板の解析モデルが成立しても、国内検定式が未確定のため壁板・接合の検定合格を意味しません(壁の未検定表示)。モデル化の確認ビューでも同じ判定を用いるため、図に耐震壁として描かれる壁と解析でせん断を負担する壁も一致します。

なお剛性計算用の開口低減率は \( r_1 = 1 - 1.25 \cdot r_0 \)(\( r_0 = \sqrt{h_0 l_0/(h \, l_w)} \) は開口周比)であり、複数開口は建物一律の設定(等価開口/包絡/自動判定)で単一の等価開口に統合してから適用します。開口周比の分母には本モデルと同じ \( l_w \)・\( h \) を用います。

『2025年版 建築物の構造関係技術基準解説書』付録1-3.1(3)②、710–711頁のこの低減式はせん断剛性を対象とし、分母の高さ・長さは上下梁・左右柱の中心間距離です。複数開口の等価化には位置・大きさ・応力伝達機構の確認が必要です。係数形の一致だけでは、側柱なしや任意形状への適用、軸・曲げ断面の開口無控除を認める根拠になりません。

耐震壁として不成立となった壁版は、条件を満たす場合に周辺柱梁へフレーム内雑壁として剛性算入されます。このとき生成された壁要素自体の微小剛性と、雑壁を含む柱梁の抵抗を区別してください。壁要素だけの力を建物内の当該壁版の抵抗全体と解釈したり、雑壁分を柱梁の結果へ重ねて加算したりしないでください。解析が求解できることは、そのモデル切替えの適用性を保証しません。 耐力用の開口低減率 \( r_2 = 1 - \max(r_0,\ l_0/l_w,\ h_0/h) \) とは別式であり混用しません(一次設計・部材終局耐力参照)。

非線形時刻歴の壁柱断面力は現在の要素状態から取得します。ファイバー壁柱ではその状態断面力、弾性壁柱とせん断ばねの組合せでは塑性せん断すべりを除いた変位から復元する断面力を記録します。

4節点壁の面積算定は、剛性算定と同じ上下辺の対応付けを使います。上辺のa・bは下辺a→b軸への符号付き射影の昇順で対応付けます。下辺a・下辺b・上辺b・上辺aの周回順で面積と周辺柱梁の内法控除を求め、入力節点の列挙順によって自重・質量が変わらないようにします。幾何の共通実装は sepika_core::model::wall_element_geometry です。

壁側のせん断断面への側柱算入は、RC・SRC置換壁の採用可能な接続に限ります。純鋼板の境界柱は算入しません。

側柱のせん断断面は実形状と向きを別々に反映し、壁厚方向に並ぶ材料のE・Gを幅に沿って積分します。RC矩形・円形、SRC矩形、CFT角形・円形の幾何を扱います。CFTの鋼管には明示した鋼材のE・G、充填部にはコンクリートの係数を与え、鋼管だけへの置換は行いません。形状を認識できることと、壁接続・耐力の適用性は別に確認します。

側柱の形状・材料が未指定、不正寸法、異なる材料定数の柱断面同士の重なり、積分の未収束はエラーです。側柱軸と壁下辺は直交することを前提とし、壁下辺方向を側柱断面内へ射影した長さと1の差が1e-10を超える場合もエラーです。不正な断面を弾性梁へ置換して計算を続けません。

弾性断面の対応範囲と、非線形RC壁の初期耐力の対応範囲は別です。初期耐力は壁脚内力と初期耐力の限定域へ適用します。SRC・CFT・鋼材側柱、円形柱、側柱なしのRC壁をこの限定域の成功として扱いません。RC壁の弾性解析ではCFT側柱を合成断面として認めます。

実装参照:せん断断面の診断・算定は sepika_element::wall::shear_section::wall_shear_rigidity(crates/sepika-element/src/wall/shear_section.rs)、形状は sepika_core::section_shape::face_geometry::SectionGeometry(crates/sepika-core/src/section_shape/face_geometry.rs)が扱います。剛性用の \( r_1 \) は sepika_element::factory::wall_opening_reduction(crates/sepika-element/src/factory/wall_opening.rs)、耐力用の \( r_2 \) は sepika_element::wall::wall_element::WallElement::opening_strength_reduction(crates/sepika-element/src/wall/wall_element.rs)が算定します。