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床の断面と自重

本節では、床(スラブ)が持つ断面と、そこから決まる板厚・自重について紹介します。

床は断面を持ちます。 断面には符号・板厚・主材料がそろっており、床の板厚も自重もここから決まります。 柱や大梁と同じく「符号を決めて割り当てる」形へそろえることで、床の諸元を探す先が 断面 1 か所に定まります。

床板の鉛直配置

床板一覧の「床板の鉛直配置(FL基準・上面)」を開き、床板ごとに基準階と鉛直偏心を入力します。 偏心は基準階のFLから床板上面までの差をmmで与え、上向きを正とします。 「0を指定」は上面をFLへ合わせ、「未入力」は配置を未解決に戻します。 新規に個別割当した床板は基準階・偏心とも未入力です。架構生成で作る床板は各生成階を基準とし、偏心0を明示します。 囲まれた床板と取り付く床板に同じ規則を適用します。

\[ z_{s,top}=FL+e_s,\qquad z_{s,bottom}=z_{s,top}-t_s \]

実厚 \(t_s\) は割り当てた床断面から取得します。一枚の上面は水平で、偏心は一つだけです。 板厚を変えると上面を固定して下面が変わります。FLの変更は上面と下面を同量移動します。 SL、支持節点のZ、梁の偏心・梁せいだけを変えても床板上面・下面は動きません。 平面形状は既存支持材のXYと支持区間を使い、支持節点のXY変更には追従します。 梁と床板の間に空きが生じても、明示した支持関係と荷重伝達先は維持します。 鉛直荷重は床の平面長から支持材の実材長あたりへ変換し、支持区間内の同じ無次元位置へ与えて合力と作用位置を保ちます。 解析節点や剛床面は床上面へ移動しません。傾斜床・頂点ごとの高さ指定は扱いません。

FL=0mm、実厚150mmでは、偏心0、+100、−100mmの順に、上面Zは0、100、−100mm、下面Zは−150、−50、−250mmです。

基準階・FL・偏心・床断面・正の実厚・平面位置を解決できない場合や、入力・導出座標が非有限の場合、 床板と項目・理由を表示して準備計算と依存する自動荷重計算を停止します。未入力偏心は0へ補完しません。 「版なし」は床板実体がないため厚さ・偏心を要求しません。「未設定」は版なしと区別して注意を表示します。 基準階を削除するとその床板の基準階は未入力となります。保存・再読込、Undo/Redoでも入力を保持します。 偏心・FL・板厚の変更後は準備計算と解析を再実行してください。

実装参照:実配置は sepika_core::model::Model::resolved_slab_placement(crates/sepika-core/src/model/slab_placement.rs)、入力編集は sepika_app::tables::slabs::slab_placements(crates/sepika-app/src/tables/slabs.rs)が扱います。

板厚と自重は断面から決まる

床の板厚は、割り当てた断面の板厚をそのまま用います。 RC スラブ形状の断面のほか、形状を持たず板厚を数値入力し主材料を割り当てた断面も扱います。 RC 梁・柱の専用型は床板へ割り当てられません(断面用途)。 自重は板厚 \( t \) と断面の主材料の単位体積重量 \( \gamma \) から、 使うたびに算定します。

\[ w_{\text{自重}} = t \times \gamma \]

自重を面荷重として固定値で持たせないのは、そうすると板厚や材料を変えたときに自重が 追随せず、断面と重量が食い違ったモデルを作れてしまうためです。 床の固定荷重(DL)は、この自重に床の面荷重(仕上げ等)を足したものになります。 積載荷重は室の用途から決まるため断面には含みません(積載荷重)。

部材・壁・ダンパーの自重を部材荷重ケースへ展開する範囲には、スラブを含みません。

実装参照:床断面形状は sepika_core::section_shape::SectionShape::RcSlab(crates/sepika-core/src/section_shape/mod.rs)、床の自重算定は sepika_core::model::Model::slab_self_weight_intensity(crates/sepika-core/src/model/slab.rs)、部材荷重ケースへの展開は sepika_load::self_weight::self_weight_case_content(crates/sepika-load/src/self_weight.rs)を参照してください。

鋼床板の設計自重と密度

囲まれた床板と取り付く床板のどちらも、主材料が鋼材で密度が正なら設計自重は 78.5 kN/m³を板厚へ掛けて算定します。ST-Bridgeの床板強度情報がある場合は、 その強度情報から解決した材料を優先し、断面の材料だけで判定しません。

密度の単位と境界判定はカスタム鋼材の密度と計算可否に従います。 物理単位重量が固定設計値を超える鋼床板は、設計DLの生成・分配と、自重同期済みの 地震用重量生成、およびGUIの床板・小梁検定で理由付き拒否します。 直接検定の開始時には既存の検定値を消去し、計算不可の場合は古い検定値を現在結果として残しません。 密度の訂正またはUndo後は、準備・検定を再実行してください。仕上げ荷重が差を上回っていても、自重本体の 過小評価を補償したとは扱いません。板厚を変えても密度の判定境界は変わりません。 未使用の材料、積載荷重だけの分配、独立に与えた物理面荷重の分配には適用しません。

水平な2000×5000 mm、板厚100 mmの床板は体積1 m³です。 標準密度7.85e-9 t/mm³なら、設計自重強度は0.00785 N/mm²、総設計重量は78500 Nです。 物理密度から独立に算定する質量は7.85 t、標準重力による重量は76982.2025 Nです。 85 kN/m³相当の密度では物理重量85000 Nと固定設計重量との差が6500 Nとなり、 設計結果として78500 Nを採用する計算は停止します。

床板の物理質量と適用モード

囲まれた床板・取り付く床板とも、床板本体の物理質量は材料密度と実体積から求めます。 板厚と材料は版へ割り当てた断面を正とし、ST-Bridge床板強度情報がある場合はその解決材料を優先します。 内部単位は密度ρ [t/mm³]、面積A [mm²]、板厚t [mm]、体積V=At [mm³]、 質量m=ρV [t]です。物理質量相当重量はm×9806.65 [N]となります。

標準の自重同期済み重力ケースを使う準備計算では、設計地震用重量を維持したまま、 床板本体の設計自重を一度だけ物理質量相当重量へ置換します。 仕上げ・用途別積載荷重・先端荷重は本体の置換に含めず、従来の荷重用途と係数で一度だけ算入します。 両質量方式で床板本体の総動的質量は同じです。上記1 m³の標準鋼床板は、 設計重量78500 Nに対して動的質量7.85 t、物理質量相当重量76982.2025 Nとなり、 層モデルもこの物理量を使用します。

密度・板厚・断面参照変更後は再準備が必要です。材料未解決、不正形状、非有限・非正の板厚、 非有限・負の密度は算定エラーとなり、ゼロや推定材料で補いません。 物理質量の生成ができない場合は、診断を表示して旧動的質量・自動地震力を無効化します。 独立した重力解析を許す準備結果が返る場合も、有効な物理質量が生成されたことを意味せず、動的入口は拒否します。 独立した物理分配では固定設計単位重量を採用しないため高密度でもρVgを求められますが、 設計を必要とする標準準備計算の高密度鋼拒否は維持します。

重力ケース内容だけを使う独立モードでは、自重を含むとは仮定せず床板本体の置換を行いません。 材料自重を直接追加するモードも、自重同期済みケース向けの置換モードとは別です。 床板の支持部材への分配、二次部材の逐次伝達、階への集計は既存の床荷重経路に従います。 T形梁等と床板の形状重複体積の追加控除は行いません。

実装参照:設計密度診断は sepika_core::model::Model::validate_slab_design_self_weight(crates/sepika-core/src/model/slab.rs)、DL入口は sepika_job::auto_loads::compute_dl_beam_loads(crates/sepika-job/src/auto_loads.rs)、物理本体の解決・分配は slab_physical_self_weight_intensity(crates/sepika-core/src/model/slab.rs)と sepika_load::slab_load(crates/sepika-load/src/slab_load.rs)、同期済み階重量入口は sepika_load::story_gen::generate_stories_with_synced_self_weight(crates/sepika-load/src/story_gen/generate.rs)、GUI検定入口は sepika_app::app::App::run_design_check(crates/sepika-app/src/app/actions/design/check.rs)を参照してください。

断面が未割当の床は解析前チェックで止まる

断面が未割当の床、および断面に主材料が割り当てられていない床があるモデルは、準備計算の モデル整合性チェックと解析前チェックがエラーで停止します。 床の自重が算定できないまま解析へ進むと、長期荷重が過小なまま応力が出るためです。

既定の板厚 150 mm やコンクリート Fc21 で補うことはしません。 根拠のない数値で床の重量を作ると、入力し忘れたことに気づけないまま設計が進みます。

実装参照:断面・主材料が未割当の床の診断は sepika_solver::statics::analysis::precheck(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs)を参照してください。

建物一律の「剛性計算用のスラブ厚」(既定 0 mm。部材剛性)とは 別の値なので注意してください。 床の自重・検定・型枠控除に使う厚さは、その床板(スラブ)へ割り当てた断面の板厚です。 梁の型枠接触控除では、 左右別の実際の取付き区間と上下高さから接触面を求めます。剛性計算用の厚さが0でも 実在床の接触は失われません。版なしと未設定は区別し、未設定の数量は算定しません。 矩形RC梁の協力剛性は、全長を覆う床板群の実断面厚を取付長で左右別に加重平均して使います。 重量・数量にはこの剛性用平均厚を使いません。建物一律の剛性計算用スラブ厚で 未割当・不正厚を補いません。版なしの明示と未設定・未解決を区別します。

実装参照:数量積算での床厚参照は sepika_design_jp::quantity(crates/sepika-design-jp/src/quantity/mod.rs)を参照してください。

床の断面を作る

床の断面は、断面作成パネルで形状に「RC スラブ」を選び、板厚を入力して作ります。 断面一覧の断面形状の欄には S-t150 のように表示されます。

床は配筋を持たないため、断面の材料欄で有効なのは主材料(コンクリート)だけで、 主筋・せん断補強筋・内蔵鉄骨の欄は淡色の — になります。 床配筋は板厚とかぶり厚から算定するため、断面には配筋を持たせていません。

作った断面は、床タブの一覧の「断面」欄で床へ割り当てます。 候補に出るのは板厚を持つ断面だけです。 板厚のない断面を割り当てても自重も数量も算定できないため、選べないようにしています。

床を作る設定の架構作成ウィザードは、板厚 150 mm の断面 S15 を 1 枚だけ作り、全階の床へ 割り当てます(架構作成ウィザード)。 符号は板厚を変えても S15 のままなので、必要なら生成後に付け替えてください。 ウィザードで選んだコンクリート(既定は Fc21)も 1 つ作って断面へ割り当てるため、 生成した直後から床の自重が入ります。

実装参照:断面作成は sepika_app::section_editor::section_editor_panel(crates/sepika-app/src/section_editor.rs)、架構作成ウィザードは sepika_core::frame_gen::frame_model(crates/sepika-core/src/frame_gen.rs)を参照してください。

ST-Bridge との対応

床・スラブ断面を含む ST-Bridge の要素別の取り込み・書き出し・往復の対応状況は、ST-Bridge 要素別 変換状況一覧を参照してください。