梁要素内部の変位・断面力の内挿
節点の解(変位)から、梁要素の**両端の間(要素内部)**の変位と断面力(内力)をどう評価するかを示します。 変位は Hermite 3 次多項式による内挿、断面力は断面の力の釣合い(切断法)と部材中間荷重の固定端内力の重ね合わせで求めます。
要素内部の変位(Hermite 3 次内挿)
節点変位は要素端の 6 自由度(並進・回転)として得られます。要素内部の変位場は、要素ローカル系(\( e_x \): i→j 材軸、\( e_y,\,e_z \): 断面主軸)で次のように内挿します。
- 軸方向(局所 \( x \)):線形形状関数 \( (1-\xi,\ \xi) \)
- 曲げ 2 面(局所 \( y,\,z \)):Hermite 3 次形状関数
曲げ面の内挿は、部材荷重の等価節点力(部材荷重(等価節点力・固定端内力))に用いる形状関数と同一であり、要素の定式化と整合します。
Hermite 3 次形状関数(\( \xi = s/L \)、i 端 \( \xi=0 \)・j 端 \( \xi=1 \)、\( L \) は節点間長):
\[ N_1 = 1 - 3\xi^2 + 2\xi^3,\qquad N_2 = L\,(\xi - 2\xi^2 + \xi^3) \]
\[ N_3 = 3\xi^2 - 2\xi^3,\qquad N_4 = L\,(-\xi^2 + \xi^3) \]
要素内部の局所変位場(端部並進 \( u \)・回転 \( r \) から):
\[ u_x(\xi) = (1-\xi)\,u_{x,i} + \xi\,u_{x,j} \]
\[ u_y(\xi) = N_1\,u_{y,i} + N_2\,r_{z,i} + N_3\,u_{y,j} + N_4\,r_{z,j} \]
\[ u_z(\xi) = N_1\,u_{z,i} - N_2\,r_{y,i} + N_3\,u_{z,j} - N_4\,r_{y,j} \]
局所 \( z \) 面では回転 \( r_y \) の向きの規約により回転項の符号が反転します(可撓部の raw 剛性(両端固定・12×12)の \( K_{xz} \) の符号規約、および 部材荷重(等価節点力・固定端内力)の等価節点力と一致)。
\( \xi=0,\,1 \) では \( N_2=N_4=0,\ N_1=1 \) または \( N_3=1 \) となり、要素端は節点変位に厳密に一致します。回転自由度が変位場の傾きを与えるため、両端の回転差に応じて要素内部が曲線状にたわみます。
**変形図(変形形状の可視化)**は、この Hermite 曲線に沿って要素を描きます。節点間を直線で結ぶと梁の曲げたわみが表れないため、要素内部を Hermite 3 次で内挿した折れ線として表示します。要素はせん断変形を含むティモシェンコ梁(ティモシェンコ梁要素(12×12))ですが、内部変位の内挿は Euler–Bernoulli の Hermite 曲線で近似します。
実装参照:sepika_app::viewer(crates/sepika-app/src/viewer/deform.rs の BeamDeflection)が端部 6 自由度から要素内部の Hermite 変位場を求め、変形図の曲線と床・二次部材の追従を描画します。
要素内部の断面力(平衡+固定端内力の重ね合わせ)
要素内部の断面力分布は、形状関数による内挿ではなく、**断面の力の釣合い(切断法)**で求めます。
- 端部節点力:局所剛性と局所変位から \( \boldsymbol{f} = K_{\text{local}}\,\boldsymbol{u} \) を求めます。
- 任意断面への分布:端部の内力から自由体の釣合いで各断面 \( \xi \) の \( [N, Q_y, Q_z, M_x, M_y, M_z] \) を求めます。せん断が一定の区間ではモーメントは材軸方向に線形になります(例:\( M_z(x) = M_{z,i} + Q_y\,x \))。
- 部材中間荷重の重ね合わせ:部材にスパン荷重(分布・集中)がある場合は、両端固定梁の固定端内力(部材荷重(等価節点力・固定端内力)の
fixed_internal_local)を各断面に重ね合わせます。これにより、剛性応答(等価節点力に対する \( K\boldsymbol{u} \))とスパン内力の和として実内力が得られます。
\[ \text{実内力}(\xi) = \underbrace{\text{(}K\boldsymbol{u}\text{ 由来の内力)}}_{\text{端部からの平衡分布}} + \underbrace{\text{(両端固定梁のスパン内力)}}_{\text{固定端内力の重ね合わせ}} \]
この重ね合わせにより、等分布荷重を受ける梁では曲げモーメント \( M \) が放物線、せん断力 \( Q \) が線形の正しい分布になります(中間荷重がなければ手順 2 のとおりモーメントは線形)。荷重組合せでは、各項の部材荷重を組合せ係数で倍したうえで重ね合わせます。
断面力の符号規約は 線形静解析 を参照してください。断面力を評価する位置(危険断面)は、節点芯・柱フェース位置・部材中央に加え、指定があればハンチ端・継手位置を含みます。評価断面の間の分布を画面上でどう描くかは応力図(M 図)の曲線補間を参照してください。
応力図表示用の曲線補間
以下は、評価断面の間を M 図として表示するための補間です。表示用の処理であり、解析結果の断面力の算定や断面検定には用いません。
断面力は材軸に沿って次の関係を満たします。
\[ \frac{dM_z}{dx} = Q_y \]
正規化座標 \( \xi=x/L \) では、モーメントの勾配は次のとおりです。
\[ \frac{dM_z}{d\xi} = Q_y L \]
区間 \( [\xi_k,\ \xi_{k+1}] \) の両端のモーメントと勾配から、\(t=(\xi-\xi_k)/h\)、\(h=\xi_{k+1}-\xi_k\) として、3 次 Hermite 補間を行います。
\[ M(t) = H_{00}M_k + H_{10}\,h\,S_k + H_{01}M_{k+1} + H_{11}\,h\,S_{k+1} \]
\[ H_{00}=2t^3-3t^2+1,\quad H_{10}=t^3-2t^2+t,\quad H_{01}=-2t^3+3t^2,\quad H_{11}=t^3-t^2 \]
ここで \(S\) は \(dM_z/d\xi\) です。弱軸曲げ \(M_y\) は図として表示する値 \(-M_y\) に対して補間し、\(d(-M_y)/d\xi=Q_zL\) とします。N・Q・\(M_x\) は評価断面を直線で結びます。
区間内で M が 3 次以下の多項式になる場合、この補間は厳密解に一致します。したがって、無荷重時の直線、等分布荷重時の放物線、等変分布荷重時の 3 次曲線を正しく表示できます。
中間集中荷重が評価断面上にある場合、Q は不連続となり、M は折れ線になります。右側区間の左端勾配には、評価断面のせん断力から得た値ではなく、必要に応じて次の補正値を用います。
\[ S_k^{*} = 2\,\frac{M_{k+1}-M_k}{h} - S_{k+1} \]
補正により補間は 2 次へ縮退し、集中荷重による折れ線を正しく表示します。補間後も評価断面の値は変わらず、図は断面検定に用いた値を通ります。
この処理は M 図だけを対象とし、解析結果(節点変位・断面力)には影響しません。詳細な表示上の適用範囲と実装参照は応力図(M 図)の曲線補間を参照してください。
実装参照:要素内部変位の内挿は変形図描画(viewer)、断面力の分布は sepika_element::frame::beam::BeamElement::recover_forces と sepika_element::frame::member_load::fixed_internal_local(重ね合わせ)が担います。