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1.3 床荷重の分配(スラブ → 梁・柱)

床荷重の分配は、負担面積法と 45° 振り分けによる三角形・台形分布の力学に基づいて算定します(一貫構造計算の標準的な床荷重分配法)。 総和保存(\( \sum \text{梁・小梁・柱荷重} = w \times \text{面積} \))を全経路で満たします。

床領域は、水平な大梁が作る閉路ごとに 1 つです。床領域そのものは版の仕様を持たず、 名前と、床領域内の小梁・床板(スラブ)をまとめる単位です。 床板(スラブ)は、大梁または小梁で囲まれた版、または主架構に取り付く版(片持ち・バルコニー・ 出隅)ごとに 1 つで、断面(板厚・材料)・仕上げ荷重・室用途・分配方法を持ちます。 1 つの床領域は、床領域内が小梁でさらに細かい打設単位に分かれていれば複数の床板を持ちえます。 取り付く床板はどの床領域からも参照されない独立した床板です。

ST-Bridge の取り込み直後と、準備計算が荷重ケースを同期する前に、主架構から大梁の閉路を検出し、 既存の床領域を付け直します。付け直しは、床板の面積重心の XY が床領域の内部に入り、かつレベルが 一致することです。同じレベルとみなす Z の差は 1 mm 以内です。内部判定は辺上 1 mm 以内を 含めません。重心が複数の床領域に入るとき(中庭の内側閉路と、穴を無視した外側多角形など)は、 面積が小さい方へ付けます。面積が同じ場合は、検出順が先の床領域とします。旧床領域と新しい床領域の 面積の相対差が \( 10^{-3} \) 未満なら照合できたものとして数えます。中庭のように床板のない 閉路は、床板を持たない床領域として残します。既存の取り付く床板は消さず、そのまま残します。

どの床領域にも入らない床板は、水平大梁にちょうど 1 辺が全長載り、かつ自由端が 1 点または 2 点の ときに限り、取り付く床板へ変換します。辺の全長を覆う判定のずれは 10 mm 以内です。 張り出し量の正の向きは、取付き線の始点から終点を見て左側です。変換した取付き線の区間は 全長(無次元位置 \( [0, 1] \))です。荷重の出口は取付き線への分布です。 大梁に載る辺が 0 本または 2 本以上のとき、および自由端が 3 点以上のとき(出隅・L 形など)は、 囲まれた床板のまま残します。断面が割り当たった床板がどの床領域にも載らない場合は、 取り込み報告と診断に警告を出します。床板をモデルから落とすことはしません。 取付き線は、無次元位置 \( [t_i, t_j] \)(\( 0.0 \le t_i \lt t_j \le 1.0 \)、既定は全長 \( [0.0, 1.0] \))で表す区間だけを覆うことができます。腰壁の開口、パラペットの 途切れ、バルコニーが梁スパンの途中までしか出ていない、といった形を表すためです。 区間の範囲外は \( 0.0 \le t_i \lt t_j \le 1.0 \) を満たさないため、モデル検証が エラーとして止めます。

取り付く床板の荷重の出口は 2 通りから選びます。

  • 取付き線へ分布(既定): 区間の両端は取付き線上の座標であり、実節点とは限りません。 荷重は、その座標が載る大梁(複数の大梁にまたがっていれば、覆っているすべての大梁)へ、 区間の長さだけの分布荷重として幾何的に割り付けます。
  • 両端の柱へ集中(出隅、および壁を柱で受ける納まり): 総荷重は、区間の中点(無次元位置 \( t_{\text{mid}} = (t_i + t_j)/2 \))に集中したものとみなします。 単純梁の集中荷重の反力公式(始端の柱 \( R_i = W(1-t_{\text{mid}}) \)、 終端の柱 \( R_j = W \cdot t_{\text{mid}} \))で両端の柱へ按分し、 全長(\( t_{\text{mid}} = 0.5 \))なら半分ずつです。

荷重ケース書込時の解決とフォールバック

取付き線の部分区間は、載る大梁へ幾何的に割り付けます。 覆う大梁がない場合、荷重を落とさず両端節点へ単純梁反力として振り分けます(総和は保存します)。 この代替では分布が集中に化けるため、梁のモーメントを過小評価し得る危険側の近似です(位置もわずかにずれます)。 覆いが全長に届かない場合や被覆区間が重なる場合も割り付けず、同様に振り分けます。

取り付く床板への変換では、旧境界のうち取付き線の両端(大梁に載る辺の 2 点)だけを引き継ぎ、 自由端だった 1〜2 点は床板からもう参照されなくなります。付け直しのあと、この自由端だった 節点のうち、部材・床領域・床板・拘束・節点荷重・支点(固定・ばね)・質量・剛床マスターの いずれからも参照されなくなったものだけを削除します。階の節点一覧と通り芯は参照に数えません (構造計算に用いない表示専用のデータのため)。変換以外の理由で参照がなくなった既存節点 (利用者が別の理由で置いた節点など)は、この付け直しでは削除しません。

版があるとは、床板に断面が割り当たっており、かつその断面の板厚が正であることです (未割当や板厚 0 は版なしと同じです)。版がなければ床荷重の分配もスラブ検定も協力幅増大も 生じません。建物一律の剛性計算用スラブ厚(既定 0 mm)は、版がある床板の協力幅算定でその 床板の板厚が取れないときの厚さの控えであり、版なしをスラブありとはみなしません。 取り付く床板の荷重は取付き線(または点)へ渡し、片持ちの協力幅増大は見ません。

分配は、床板の境界の辺に対する三角形・台形(または一方向・負担面積)です。床領域内に複数の 床板があるときは、床板ごとに独立して分配します(境界辺は大梁または小梁のいずれか)。 小梁の辺へ渡った荷重は、後述の逐次伝達(1.4.2)で 主架構へ運びます。 小梁の所属は、中点が床領域の内部にあり(辺上 1 mm 以内は含めない)、 かつレベルが 1 mm 以内で一致することで決めます。中点が 0 領域または 2 領域以上に入る小梁は 所属を付けず、取り込み報告と診断に警告を出します。

算定式(主な経路)

  • 三角形・台形(TriTrapezoid): 45°振り分け。正方形は各辺三角形分布 \( w_0 = w \cdot L/2 \)。 矩形は短辺三角形・長辺台形。
  • 一方向(OneWay): 負担辺へ \( w_{\text{line}} = w \cdot \text{スパン}/2 \) の等分布。
  • 負担面積等分布換算(TributaryArea): 短辺 \( w \cdot \text{short}/4 \)、長辺 \( w \cdot (\text{short} \cdot \text{long}/2 - \text{short}^2/4)/\text{long} \)。
  • 多角形負担面積法: 200×200 格子で各セルを最近接辺へ帰属し辺荷重を算定(凸多角形で誤差 1% 未満)。
  • 片持ち・出隅: 片持ちは辺へ \( w \cdot \text{出し幅} \) の等分布(取付き線が部分区間のときは、その区間の長さ分だけ)、出隅は構造芯〜先端の矩形重量を節点集中荷重で柱へ。
  • 小梁の辺へ渡った荷重: 小梁は解析要素ではないため、単純梁の両端反力に変えて支持相手へ渡します(1.4.2)。

実装squid_n_load::floorfloor/mod.rs)が算定します。床領域単位の入口は distribute_region (床領域内の各床板を distribute_slab_w で分配する)、床板単体の入口は distribute_slab/distribute_slab_w で、形状と手法によって経路を分岐します。

1.4.1 固定端モーメント・せん断力(CMQ)

固定端モーメントとせん断力(CMQ)は、両端固定梁の固定端力の閉形式に基づいて算定し、 V&Vで総和保存と固定端値を検証しています。

算定式

等分布:

\[ C = \pm w \cdot L^2/12 \]

\[ Q = w \cdot L/2 \]

三角形:

\[ C = \pm 5 \cdot w_0 \cdot L^2/96 \]

\[ Q = w_0 \cdot L/4 \]

台形(閉形式評価):

\[ \mathrm{FEM} = \frac{1}{L^2} \int_0^L w(x) \cdot x \cdot (L - x)^2 \ dx \]

一般(非対称・剛域考慮。点・分布は閉形式、その他は合成シンプソン則):

\[ \mathrm{FEM}_i = \frac{1}{L^2} \int w(\xi) \xi (L - \xi)^2 \ d\xi \]

\[ \mathrm{FEM}_j = \frac{1}{L^2} \int w(\xi) \xi^2 (L - \xi) \ d\xi \]

\[ Q = R_0 \pm (\mathrm{FEM}_i - \mathrm{FEM}_j)/L \]

実装floor::{fem_uniform, fem_triangle, fem_trapezoid, cmq_flexible_span, cmq_with_rigid_zone}floor/mod.rs)が算定し、剛域考慮は 3 モード(剛域外力を CMQ 加算、柱へ伝達、無視)です。

1.4.2 二次部材の反力の逐次伝達

小梁・間柱(二次部材)は解析要素ではないため、受け持った荷重は単純梁の両端反力に変えて 支持相手へ渡し、支持相手が主架構(大梁)ならそこで終端して梁の中間集中荷重になります。 支持相手が別の二次部材のときは、その相手の集中荷重として渡し、主架構へ行き着くまで 同じ操作を繰り返します。 これを二次部材の反力の逐次伝達と呼びます。荷重を受けるのは あくまで大梁の側なので、大梁を交点で分割することはしません。

二次部材が受け持つ荷重は次の 4 つの重ね合わせです。

  1. 床領域分配が二次部材の材軸へ出した辺荷重(本ページ冒頭の三角形・台形などの分配則による)
  2. 解析要素にならない壁版から間柱へ配られた自重(1.6 自重の長期応力解析への接続。 長期の固定荷重にのみ算入し、積載荷重のケースには載せない)
  3. 二次部材自身の自重(\( \rho \cdot A \cdot g \times ) 鉄骨重量割増。長期の固定荷重にのみ算入し、 積載荷重のケースには載せない)
  4. その二次部材に架かる別の二次部材から渡された集中荷重

交点は常にピン受け・架けとして扱い、剛接十字(交点で曲げが連続する接合)は扱いません。 両端ピンであれば各段が静定に決まるため、逐次伝達は近似ではなく厳密解になります。一律に ピンとみなすことは、交点の曲げ連続による低減を無視するぶん架け側のモーメントとたわみを 過大に見ることになるので、安全側の扱いです。

受け側と架け側は幾何から決まります。 二次部材 B の端点が二次部材 A の内法に載っていれば B が架け側・A が受け側で(許容差 10 mm)、どちらを受け側にするかを指定する入力欄はありません。

反力の分配則は、支点まわりのモーメントのつり合いによります。鉛直荷重に対する鉛直反力の てこの腕は水平投影の距離であり、荷重の材軸上の位置は水平投影へ線形に写ります。したがって 水平投影が 0 でない限り、鉛直反力は材軸上の按分(単純梁の反力)と一致します。傾斜した 二次部材でも、部材の向きで場合分けする必要はありません。

例外は水平投影が 0 になる部材、すなわち鉛直な間柱です。このときはモーメントのつり合いが 退化して荷重が軸力として流れるため、両端への配分が不静定になり、仮定を置く必要があります。 ここでは既定で両端へ 1/2 ずつとします(水平投影が 10 mm 以下の部材をこれに当てます)。壁は 上から吊る・下で受ける・上下で分担のいずれもあり得ますが、現状これを選ぶ入力欄はありません。

荷重を流せない形は解析前チェックのエラーになります。端部がどの主架構にも二次部材にも 載っていない二次部材、支持関係が一巡している二次部材、節点を共有せずに交差している二次部材が これに当たります。いずれも荷重の行き先が決まらないため、モデル化を直す必要があります。 ただし端部の行き先が決まらない二次部材のうち、受け持つ荷重が実際に 0 のもの (断面が未割当で自重が出ず、床の分配も載らないもの)はエラーにしません。失う荷重がなく、 形だけ置かれた支持点で解析が止まるのを避けるためです。

実装squid_n_load::cascade が算定し、荷重の同期(squid-n-job::auto_loads)と 小梁の断面検定(6.5)は同じ経路を通ります (面荷重強度は用途ごとに違うため、荷重の値そのものは一致しません)。

床の中の小梁・スラブの断面検定(設計タブの「小梁・床の設計」表)は、ここで述べた荷重の分配とは別の話題です。6.5 小梁・床の断面検定を参照してください。