せん断有効断面積 As
せん断有効断面積 As は、初期弾性解析のせん断剛性 \( GA_s \) に用いる面積です。 RC は \( A_s = A/\kappa \)(\( \kappa = 1.2 \))とします。 SRC は RC 部分のせん断有効断面積 \( {}_{rc}A_s = {}_{rc}A/\kappa \) に、材料由来の換算係数 \( n_{gs} \) による鉄骨等価分 \( {}_s A_s \cdot (n_{gs} - 1) \) を累加します。材料由来の値を算定できないときは \( N_S_EQ = 15 \) の既定値を用います(SRC / CFT の等価断面性能)。 S 造の H 形・角形鋼管は、以下の方向別板面積を採用します。カタログ・直接入力で供給された断面性能は、形状算定値と区別して扱います。
形状係数 \( \kappa = A/A_s \) と面積乗算係数 \( k = A_s/A \) は逆数です。 \( GA/\kappa = GkA = GA_s \) であり、As に換算した後で再び κ で除しません。 寸法は mm、As は mm²、G は N/mm²、GAs は N、部材長 L に対するせん断ばね剛性 GAs/L は N/mm です。
算定式(代表例)
H 形:
\[ a_{s,y}\text{(弱軸)} = 2 \cdot B \cdot t_f \]
\[ a_{s,z}\text{(強軸)} = H \cdot t_w \]
異厚組立BOXのせん断性能は採用式・適用条件が未確認で未算定です。異厚BOXの制限に従い、以下の一様厚式への代入は行いません。
一様厚さの角形鋼管:
\[ a_{s,y}\text{(弱軸)} = 2t(B-2t),\qquad a_{s,z}\text{(強軸)} = 2t(H-2t) \]
これらは剛性用の慣用面積で、H のフィレットや角形鋼管の角Rの円弧面積を加算しません。 H を矩形板二枚に置き換えて κ=1.2 を一律適用したり、20%の誤差があると断定したりする根拠にはなりません。
矩形 RC:
\[ a_s = b \cdot d/1.2 \]
円形鋼管:
\[ a_s = A/2 \]
記号・単位
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| \( A_s \) | せん断有効断面積(要素剛性用) | mm² |
| \( A \) | 断面積 | mm² |
| \( {}_{rc}A_s, {}_s A_s \) | RC 部分・内蔵鉄骨部分のせん断有効断面積 | mm² |
| \( n_{gs} \) | せん断弾性係数比を考慮した換算係数 | - |
| \( N_S_EQ \) | 材料から換算係数を算定できないときの SRC 鉄骨の等価ヤング係数比(暫定既定) | - |
| \( \kappa \) | せん断形状係数 | - |
| \( a_{s,y} \) | 断面性能の弱軸側せん断有効断面積 | mm² |
| \( a_{s,z} \) | 断面性能の強軸側せん断有効断面積 | mm² |
| \( B \) | H のフランジ幅、角形鋼管の外幅 | mm |
| \( H \) | 断面せい | mm |
| \( t_f \) | フランジ厚 | mm |
| \( t_w \) | ウェブ厚 | mm |
| \( t \) | 角形鋼管の板厚 | mm |
| \( b, d \) | 矩形断面の幅・せい | mm |
断面検定で用いる有効断面積とは別の量です
本節の \( A_s \) は要素剛性(ティモシェンコ梁のせん断剛性 \( GA_s \))に用いる値です。 鋼構造の許容応力度検定でせん断応力度 \( \tau = |Q|/A_d \) を求めるときの検定用面積 Ad は、これとは別の定義によります(鋼構造 断面検定「せん断の検定」)。 検定側はウェブの内法せいを用い、フランジのせん断応力分布も考慮するためです。
H 形では、本節が \( a_{s,z} = H t_w \)(ウェブ全せい)・\( a_{s,y} = 2 B t_f \) であるのに対し、検定側は \( A_y = t_w(H - 2 t_f) \)・\( A_z = 2 B t_f/1.5 \) となります。
H400×200×8×13 は、フィレット半径が 0 mm でも 13 mm でも剛性用 \( (a_{s,y},a_{s,z})=(5200,3200) \)、検定用 \( (A_y,A_z)=(2992,3466.6666666667) \) mm²です。 角形鋼管400×300×12の剛性用面積は \( (a_{s,y},a_{s,z})=(6624,9024) \) mm²で、検定用面積の角R依存とは区別します。 H形・角形鋼管・その他の形状の柱/梁の検定では、方向別せん断比の和と、von Misesへの \( \tau_{\mathrm{sum}}=|Q_y|/A_y+|Q_z|/A_z \) の接続を採用します。 実際の部材別の法線応力と合成式は鋼構造 断面検定に示し、本節の剛性用Asへこの検定用の加算規約を流用しません。
力の方向と断面性能の対応
添字は保存断面性能と部材内力で同じ意味ではありません。強軸側・弱軸側は断面形状の基準呼称で、性能の大小から軸を自動的に並べ替える意味ではありません。空間内の取付方向は部材の局所座標で扱います。局所 y はせい方向、局所 z は幅方向であり、せん断力の方向と曲げモーメントの回転軸を区別します。
| 曲げの基準呼称・要素局所曲げ面 | 部材局所内力 | 保存断面二次モーメント | 保存剛性用 As | 検定用 Ad |
|---|---|---|---|---|
| 強軸まわり・xy 面(z 軸まわり) | Mz、Qy | Iy | as_z | Ay |
| 弱軸まわり・xz 面(y 軸まわり) | My、Qz | Iz | as_y | Az |
したがって保存 as_z は、局所 z 方向のせん断面積ではなく、局所 y 方向のせん断面積です。ティモシェンコ梁の記号と対応表では、要素局所の回転軸・せん断方向を添字に用います。
エネルギー等価面積との区別
均質線形弾性断面のエネルギー等価なせん断面積は、断面内の二成分のせん断応力から定義できます。
\[ A_{s,\mathrm{energy}} = \frac{V^2}{\int_A(\tau_1^2+\tau_2^2),dA} \]
Jourawski のせん断応力分布に限定して評価すると、次式になります。
\[ A_{s,J} = \frac{I^2}{\int Q(s)^2/b(s),ds} \]
ここで V はせん断力 [N]、Q(s) は断面一次モーメント [mm³]、I は断面二次モーメント [mm⁴]、b(s) と s は mm です。 この剛性の定義は、許容応力度検定の Ad の定義や、上記慣用面積の物理精度を保証するものではありません。
出典と確認範囲
Favataほか、2010、§2、式(8)(9)、p.5は、せん断応力のエネルギー等価による形状係数を定義しています。上記の慣用面積とは区別します。 せん断検定面積の採用方式と適用範囲は鋼構造 断面検定を参照してください。
As = 0 は入力エラー
線材(梁・柱・ファイバー・マルチスプリング)が参照する断面の \( A_{s,y} \)・\( A_{s,z} \) は正の値でなければならず、0 の断面を用いるモデルは解析前チェックでエラー停止します。\( A_s = 0 \) はティモシェンコ梁の \( \phi = 0 \)(せん断変形なし)となるうえ、せん断降伏の判定閾値も \( Q_y = +\infty \)(せん断では決して降伏しない)となり、入力不足が「せん断について無限に強い部材」として通ってしまうためです。
せん断変形を無視した検討を行う場合は、断面の \( A_s \) を 0 とするのではなく、部材のモデル化として十分大きな \( A_s \) を与えてください(\( \phi \to 0 \) でベルヌーイ梁に一致します)。
実装参照:sepika_core::section_shape::SectionShape::to_section(crates/sepika-core/src/section_shape/builder.rs)が算定します。
断面性能の Section.{iy,iz,as_y,as_z} と梁要素の局所内力の接続は BeamElement::try_new(crates/sepika-element/src/frame/beam/construct.rs)が行い、梁要素の (iy,iz,as_y,as_z) へ断面性能の (iz,iy,as_z,as_y) を渡します。
\( A_s = 0 \) の検出は sepika_solver::statics::analysis::precheck::precheck_model(crates/sepika-solver/src/statics/analysis/precheck.rs)です。