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床荷重の分配(スラブ → 梁・柱)

床荷重の分配は、負担面積法と 45° 振り分けによる三角形・台形分布の力学に基づいて算定します(一貫構造計算の標準的な床荷重分配法)。 総和保存(\( \sum \text{梁・小梁・柱荷重} = w \times \text{面積} \))を全経路で満たします。

床領域は、水平な大梁が作る閉路ごとに 1 つです。床領域そのものは版の仕様を持たず、 名前と、床領域内の小梁・床板(スラブ)をまとめる単位です。 床板(スラブ)は、大梁または小梁で囲まれた版、または主架構に取り付く版(片持ち・バルコニー・ 出隅)ごとに 1 つで、断面(板厚・材料)・仕上げ荷重・室用途・分配方法を持ちます。 1 つの床領域は、床領域内が小梁でさらに細かい打設単位に分かれていれば複数の床板を持ちえます。 取り付く床板はどの床領域からも参照されない独立した床板です。

囲まれた床板の境界は、床板自身ではなく床板割当領域(FloorPlateAssignmentRegion)が 保持します(ADR 0020)。床板割当領域は、水平な大梁と、両端が支持された小梁とを面走査して レベルごとに分割した閉領域です。囲まれた床板は 1 つの割当領域へ 1 枚だけ割り当て、境界はその 割当領域の境界をそのまま使います。境界の 1 辺は 1 つの支持部材(大梁または小梁)と、その材軸上の 無次元区間に対応します。境界の頂点にモデル節点が無くても(小梁の端が大梁の材軸中間にある場合 など)支持先と荷重を取り落としません。

同じ境界辺の位置に支持部材が重なる場合は、異種(大梁と小梁)なら主架構(大梁)を支持部材と して採用し、同種(大梁どうし、小梁どうし)なら荷重の受け手が一意に決まらないため解析前 チェックのエラーとして止めます(ADR 0021)。平行に並ぶだけ(材軸が一致しない)の部材は、同じ位置に重なったものではないため重なり検出と主架構優先の対象にしません(別の辺の支持部材や、領域を分割する間柱にはなり得ます)。

ST-Bridge の取り込み直後と、準備計算が荷重ケースを同期する前に、二次部材の端を支持部材アンカーへ 解決したうえで、大梁と両端支持の小梁から床板割当領域を再構築します。同じ境界の割当領域は ID と 割当状態を維持し、境界が変わった割当領域だけを新しい ID の未設定領域へ置き換えます。面走査へ 入れる小梁は両端が支持されたものだけで、片持ちの自由端と支持が決まらない端(Detached)は 境界に使いません。あわせて主架構から大梁の閉路を検出し、既存の床領域を作り直します。囲まれた 床板は、割り当てられた床板割当領域の境界多角形の重心の XY が床領域の内部に入り、かつレベルが 一致する床領域へ結び付けます(FloorRegion.slab_ids)。同じレベルとみなす Z の差は 1 mm 以内です。 内部判定は辺上 1 mm 以内を含めません。重心が複数の床領域に入るとき(中庭の内側閉路と、穴を無視 した外側多角形など)は、面積が小さい方へ付けます。面積が同じ場合は、検出順が先の床領域とします。 旧床領域と新しい床領域の面積の相対差が \( 10^{-3} \) 未満なら照合できたものとして数えます。 中庭のように床板のない閉路は、床板を持たない床領域として残します。

どの床領域にも入らない床板は、水平大梁にちょうど 1 辺が全長載り、かつ自由端が 1 点または 2 点の ときに限り、ST-Bridge の取り込みで取り付く床板へ変換します。辺の全長を覆う判定のずれは 10 mm 以内です。張り出し量の正の向きは、取付き線の始点から終点を見て左側です。変換した取付き線の区間は 全長(無次元位置 \( [0, 1] \))です。荷重の出口は取付き線への分布です。 大梁に載る辺が 0 本または 2 本以上のとき、および自由端が 3 点以上のとき(出隅・L 形など)は、 囲まれた床板のまま残します。断面が割り当たった床板がどの床領域にも載らない場合は、 取り込み報告と診断に警告を出します。床板をモデルから落とすことはしません。 既存の取り付く床板は消しません(支持部材の間ごとの分割・統合は後述します)。 取付き線は、無次元位置 \( [t_i, t_j] \)(\( 0.0 \le t_i \lt t_j \le 1.0 \)、既定は全長 \( [0.0, 1.0] \))で表す区間だけを覆うことができます。腰壁の開口、パラペットの 途切れ、バルコニーが梁スパンの途中までしか出ていない、といった形を表すためです。 区間の範囲外は \( 0.0 \le t_i \lt t_j \le 1.0 \) を満たさないため、モデル検証が エラーとして止めます。

実装参照:大梁と両端支持の小梁からの床板割当領域の再構築は Model::rebuild_floor_assignment_regions(crates/sepika-core/src/model/assignment_region.rs)が行います。大梁の閉路の再検出による床領域の作り直しと、床板の帰属の付け替え・支持部材の間の床板の分割と統合は sepika_core::region_rebuild::rebuild_floor_regions(crates/sepika-core/src/region_rebuild.rs)が行います。ST-Bridge 取り込みでのスラブの割当領域への分割割当・面積按分と、どの割当領域にも入らない版の取り付く床板への変換は sepika_io::stbridge::import::assemble::assign_imported_slabs(crates/sepika-io/src/stbridge/import/assemble.rs)が行います。

取り付く床板の荷重の出口は 2 通りから選びます。

  • 取付き線へ分布(既定): 区間の両端は取付き線上の座標であり、実節点とは限りません。 荷重は、その座標が載る大梁(複数の大梁にまたがっていれば、覆っているすべての大梁)へ、 区間の長さだけの分布荷重として幾何的に割り付けます。
  • 両端の柱へ集中(出隅、および壁を柱で受ける納まり): 総荷重は、区間の中点(無次元位置 \( t_{\text{mid}} = (t_i + t_j)/2 \))に集中したものとみなします。 単純梁の集中荷重の反力公式(始端の柱 \( R_i = W(1-t_{\text{mid}}) \)、 終端の柱 \( R_j = W \cdot t_{\text{mid}} \))で両端の柱へ按分し、 全長(\( t_{\text{mid}} = 0.5 \))なら半分ずつです。

取り付く床板は、下の支持部材の間ごとに 1 枚です。床領域の付け直しのとき、取付き線に 直交して先端まで届く小梁または実梁の位置で床板を分割し、部材を消したときは同じ版仕様の隣り合う床板を 1 枚に統合します。直交しない部材・先端まで届かない部材は分割境界にせず、その部材には床荷重が 載りません。辺の全長を覆わない実部材も支持辺にせず、その実部材には床荷重が載りません (いずれも診断に警告が出ます。二次部材は「分配が得られない」、実部材は覆われていない辺の件数)。 取付き線へ分布する床板は、側辺・先端辺の支持部材の有無や荷重伝達方向によらず、取付き線 (辺0)の取付き大梁だけへ全荷重を等分布で伝達します。面荷重を q、出し幅を d とすると 線荷重は w_line = q*d です。取付き線が部分区間の場合も、実取付き長さに対して同じ線荷重を載せ、 総荷重 q×床板面積を保存します。側辺・先端辺の小梁や実梁へは分配しません。 点アンカー(出隅)と囲まれた床板はこの規則の対象外です。上記の取付き大梁への等分布が現行仕様であり、 側辺・先端辺への最近接負担面積分配は行いません。

片持ちスラブの先端荷重

線取付きで「取付き線へ分布」を選んだ床板だけ、先端辺の実長あたりの線荷重を複数設定できます。 各設定には既存の荷重ケースと全体座標の ±X・±Y・±Z 方向、強度(入力 kN/m、内部 N/mm)を指定します。 「床」タブの床板一覧の下で、対象となる床板ごとに追加・変更・削除できます。 面荷重とは別に加算され、面荷重強度へ換算して重ねることはありません。 先端辺の実長を (L_{\mathrm{tip}})、取付き区間の実長を (L_{\mathrm{attach}})、先端荷重強度を (p_{\mathrm{tip}}) とすると、 総荷重 (W=p_{\mathrm{tip}}L_{\mathrm{tip}}) を取付き区間へ等分布荷重 (w=W/L_{\mathrm{attach}}) として載せます。たとえば取付き区間 4 m・先端辺 4 m・強度 2 kN/m なら 総荷重 8 kN、取付き区間の線荷重 2 kN/m です。面荷重 5 kN/m²・出し幅 1.5 m の場合、 先端荷重の方向を -Z とすると、同じ取付き梁への下向き荷重は面荷重分 7.5 kN/m と 先端荷重分 2 kN/m の合計 9.5 kN/m になります。

先端荷重は指定方向の力だけを伝え、先端での偏心モーメントを取付き部へ付加しません。 利用者は各方向について連続するスラブ等がモーメントを負担する条件を確認してください。 成立しなければ取付き部の応力を過小評価し得ます。床板の断面検定には先端荷重を含めません。 取付き区間を実梁で全長覆えない場合は、先端荷重を節点集中荷重で代用せずエラーにします。 解析前の荷重同期がこのエラーに失敗した場合は、以前同期した先端荷重で解析を続けません。 面荷重のフォールバック規則は下記のままです。 各設定はケース ID で追跡し、EX/EY・独自ケースへも既存の水平力や手入力を残したまま同期します。 ケース削除時にはそのケース向けの先端荷重設定も削除されます。床板の分割では設定を引き継ぎ、 設定の異なる床板は統合しません。

実装参照:sepika_job::auto_loads::compute_tip_loads(crates/sepika-job/src/auto_loads.rs)が取付き実梁へのケース別割付を行い、sepika_core::model::SlabTipLoad(crates/sepika-core/src/model/slab.rs)が入力を保持します。

片持ち小梁(基端が支持され、先端が自由な小梁)の荷重は、基端の鉛直反力として主架構へ 伝達します。基端に生じる曲げモーメントは伝達しません。曲げは考慮されないため、適切に 考慮してください。 片持ち小梁の自由端に他の二次部材が載る形(先端リブなど)は、自由端を 支持として扱い、その荷重を基端へ伝えます。

端部支持条件(支持/自由)は「床」タブの小梁一覧、編集コマンド、MCP で設定します。 既定は両端支持です。ST-Bridge の取り込みでは、節点が実部材に接続せず、大梁の材軸上にも 他の二次部材の内法にもない端(許容差 10 mm)を自由端として取り込みます。他の二次部材の端点と 一致する端は、自分の反対側の端が主架構に載り、かつ相手の材軸が連続していないときだけ自由端に します。推定した端の件数と対象は取り込み報告に出ます。 なお、床板の内部を横切る部材は支持辺にも分割境界にもなりません。実部材化済みの小梁 (実 Beam 要素)は二次部材としては扱わず、境界辺の全長を覆う場合は実部材として支持辺に なります。

実装参照:端部支持条件の編集は sepika_edit::SetSecondaryMemberEndSupport(crates/sepika-edit/src/secondary.rs)と「床」タブの小梁一覧(sepika_app::tables::slabs、crates/sepika-app/src/tables/slabs.rs)が担い、MCP の model_edit からも設定できます。取り込みの自由端推定と支持部材アンカーへの解決は sepika_core::model::Model::anchorize_secondary_members(crates/sepika-core/src/model/secondary.rs)が一括して行います。支持端のアンカーを解決できない二次部材は端点座標のまま保持し、重量・材軸長を欠落させず、解析前チェックでエラーにして解析を止めます(片持ちへの読み替えはしません)。

小梁は、3D の「小梁配置モード」または「床」タブの配置フォームで、親の床領域(作業範囲)と両端が取り付く支持部材(大梁または既存の小梁)・材軸位置(0〜1)を指定して追加します。両端が作業範囲の内側または境界上(許容差 10 mm)で支持部材の材軸へ解決できない場合は配置を拒否します(片持ちへの読み替えはしません)。この親領域内判定は配置・端部移動の編集コマンドでも行い、3D の候補表示に頼らずモデルの不変条件として守ります。配置すると床板割当領域を再構築するため、境界が変わって参照先を失った囲まれた床板は取り除かれ、新しい割当領域は未設定(赤)になります。配置・再構築・版の除去は 1 つの Undo 単位です。

荷重ケース書込時の解決とフォールバック

取付き線の部分区間は、載る大梁へ幾何的に割り付けます。 覆う大梁がない場合、荷重を落とさず両端節点へ単純梁反力として振り分けます(総和は保存します)。 この代替では分布が集中に化けるため、梁のモーメントを過小評価し得る危険側の近似です(位置もわずかにずれます)。 覆いが全長に届かない場合や被覆区間が重なる場合も割り付けず、同様に振り分けます。

取り付く床板への変換では、旧境界のうち取付き線の両端(大梁に載る辺の 2 点)を取付き線として 引き継ぎ、残りの自由端は床板の境界から外れます。

版があるとは、床板に断面が割り当たっており、かつその断面の板厚が正であることです (未割当や板厚 0 は版なしと同じです)。版がなければ床荷重の分配もスラブ検定も協力幅増大も 生じません。建物一律の剛性計算用スラブ厚(既定 0 mm)は、版がある床板の協力幅算定でその 床板の板厚が取れないときの厚さの控えであり、版なしをスラブありとはみなしません。 取り付く床板の荷重は支持辺(または点)へ渡し、片持ちの協力幅増大は見ません。

分配は、床板の境界の辺に対する三角形・台形(または一方向・負担面積)です。床領域内に複数の 床板があるときは、床板ごとに独立して分配します(境界辺は大梁または小梁のいずれか)。 小梁の辺へ渡った荷重は、後述の逐次伝達(二次部材の反力の逐次伝達)で 主架構へ運びます。 小梁の所属は、中点が床領域の内部にあり(辺上 1 mm 以内は含めない)、 かつレベルが 1 mm 以内で一致することで決めます。中点が 0 領域または 2 領域以上に入る小梁は 所属を付けず、取り込み報告と診断に警告を出します。

算定式(主な経路)

  • 三角形・台形(TriTrapezoid): 45°振り分け。正方形は各辺三角形分布 \( w_0 = w \cdot L/2 \)。 矩形は短辺三角形・長辺台形。
  • 一方向(OneWay): 負担辺へ \( w_{\text{line}} = w \cdot \text{スパン}/2 \) の等分布。伝達方向は X、Y、短辺から選択できます。短辺指定は矩形床の X・Y スパンを評価時に比較して決め、同寸の正方形では X または Y の明示指定を求めるエラーとします。寸法変更後も短辺指定を保持して再判定します。
  • 負担面積等分布換算(TributaryArea): 短辺 \( w \cdot \text{short}/4 \)、長辺 \( w \cdot (\text{short} \cdot \text{long}/2 - \text{short}^2/4)/\text{long} \)。
  • 多角形負担面積法: バウンディングボックスを 200×200 格子に分割し、各セル中心を最近接辺(線分)へ帰属して辺荷重を算定します。最近接辺が等距離のときは、最小距離に並ぶ辺へセル面積を均等に配分します。凸多角形で誤差 1% 未満です。深い U/C 字形状では固定 200×200 格子の位相により 1〜2% 程度の残差があり得ます。
  • 短辺指定は矩形床に限って対応します。非矩形床で短辺を指定した入力はエラーとし、多角形の負担面積法へフォールバックしません。
  • 片持ち・出隅: 片持ちは、全長を覆う支持部材がある境界辺(取付き線を含む)へ最近接負担面積で分配します。支持辺が取付き線だけのときは辺へ \( w \cdot \text{出し幅} \) の等分布(取付き線が部分区間のときは、その区間の長さ分だけ)、出隅は構造芯〜先端の矩形重量を節点集中荷重で柱へ。
  • 小梁の辺へ渡った荷重: 小梁は解析要素ではないため、単純梁の両端反力に変えて支持相手へ渡します(二次部材の反力の逐次伝達)。

実装参照:線アンカーの取り付く床板の分配は sepika_load::floor::distribute_cantilever(crates/sepika-load/src/floor/cantilever.rs)、短辺指定の入力検証は sepika_load::floor::validate_one_way_directions、床板単体の算定と直接経路の検証は sepika_load::floor::distribute_slab_w_checked (crates/sepika-load/src/floor/mod.rs)が行います。床領域単位の入口は distribute_region (床領域内の各床板を distribute_slab_w で分配する)、床板単体の入口は distribute_slab/distribute_slab_w で、形状と手法によって経路を分岐します。正方形で OneWayDir::Short を指定した場合は ShortDirectionOnSquare を返して停止し、荷重を空結果へ 置き換えません。自動荷重生成・解析前チェックもこのエラーを呼び出し元へ伝播します。

固定端モーメント・せん断力(CMQ)

固定端モーメントとせん断力(CMQ)は、両端固定梁の固定端力の閉形式に基づいて算定し、 V&Vで総和保存と固定端値を検証しています。

算定式

等分布:

\[ C = \pm w \cdot L^2/12 \]

\[ Q = w \cdot L/2 \]

三角形:

\[ C = \pm 5 \cdot w_0 \cdot L^2/96 \]

\[ Q = w_0 \cdot L/4 \]

台形(閉形式評価):

\[ \mathrm{FEM} = \frac{1}{L^2} \int_0^L w(x) \cdot x \cdot (L - x)^2 \ dx \]

一般(非対称・剛域考慮。点・分布は閉形式、その他は合成シンプソン則):

\[ \mathrm{FEM}_i = \frac{1}{L^2} \int w(\xi) \xi (L - \xi)^2 \ d\xi \]

\[ \mathrm{FEM}_j = \frac{1}{L^2} \int w(\xi) \xi^2 (L - \xi) \ d\xi \]

\[ Q = R_0 \pm (\mathrm{FEM}_i - \mathrm{FEM}_j)/L \]

記号・単位

記号意味単位
\( w \)部材に作用する等分布荷重(線荷重)N/mm
\( w_0 \)三角形分布荷重の最大荷重強度N/mm
\( L \)部材長(スパン)mm
\( C \)両端固定梁の固定端モーメントN·mm
\( Q \)両端固定梁の固定端せん断力N
\( \mathrm{FEM} \)分布荷重の固定端モーメントN·mm
\( R_0 \)単純梁の支点反力N
\( \xi \)材軸方向の無次元位置-

実装参照:sepika_load::floor::fixed_end_moments(crates/sepika-load/src/floor/fem.rs)が荷重 1 件の固定端モーメントを閉形式または数値積分で求め、剛域考慮を含む CMQ は sepika_load::floor::cmq_with_rigid_zone(crates/sepika-load/src/floor/rigid_zone.rs)が返します。剛域考慮は 3 モード(剛域外力を CMQ 加算、柱へ伝達、無視)です。

二次部材の反力の逐次伝達

小梁・間柱(二次部材)は解析要素ではないため、受け持った荷重は単純梁の両端反力に変えて 支持相手へ渡し、支持相手が主架構(大梁)ならそこで終端して梁の中間集中荷重になります。 支持相手が別の二次部材のときは、その相手の集中荷重として渡し、主架構へ行き着くまで 同じ操作を繰り返します。 これを二次部材の反力の逐次伝達と呼びます。荷重を受けるのは あくまで大梁の側なので、大梁を交点で分割することはしません。

二次部材が受け持つ荷重は次の 4 つの重ね合わせです。

  1. 床板分配が二次部材の材軸へ出した辺荷重(本ページ冒頭の三角形・台形などの分配則による)
  2. 解析要素にならない壁版から間柱へ配られた自重(自重の長期応力解析への接続。 長期の固定荷重にのみ算入し、積載荷重のケースには載せない)
  3. 二次部材自身の自重(\( \rho \cdot A \cdot g \times \) 鉄骨重量割増。長期の固定荷重にのみ算入し、 積載荷重のケースには載せない)
  4. その二次部材に架かる別の二次部材から渡された集中荷重

交点は常にピン受け・架けとして扱い、剛接十字(交点で曲げが連続する接合)は扱いません。 両端ピンであれば各段が静定に決まるため、逐次伝達は近似ではなく厳密解になります。一律に ピンとみなすことは、交点の曲げ連続による低減を無視するぶん架け側のモーメントとたわみを 過大に見ることになるので、安全側の扱いです。

受け側と架け側は幾何から決まります。 二次部材 B の端点が二次部材 A の内法に載っていれば B が架け側・A が受け側で(許容差 10 mm)、どちらを受け側にするかを指定する入力欄はありません。

反力の分配則は、支点まわりのモーメントのつり合いによります。鉛直荷重に対する鉛直反力の てこの腕は水平投影の距離であり、荷重の材軸上の位置は水平投影へ線形に写ります。したがって 水平投影が 0 でない限り、鉛直反力は材軸上の按分(単純梁の反力)と一致します。傾斜した 二次部材でも、部材の向きで場合分けする必要はありません。

例外は水平投影が 0 になる部材、すなわち鉛直な間柱です。このときはモーメントのつり合いが 退化して荷重が軸力として流れるため、両端への配分が不静定になり、仮定を置く必要があります。 水平投影が 10 mm 以下の二次部材は、SecondaryMember::gravity_end_shares(Option<[f64; 2]>)に両端への負担率を明示します。並びは ends(SecondaryMemberEnds)の端の順で、各値は非負・有限、総和 1(許容差 1e-9)です。既定の None は未指定で、解析前チェックのエラーです。画面は端部の高さから上下端を表示し、下端 100%・上端 100%・上下各 50% または任意の比率を指定できます。間柱自身の自重、壁から受ける荷重、他の二次部材から受ける荷重に同じ比率を適用します。0% の端部には荷重伝達先を要求しません。

この比率は納まり・支持条件に基づく入力で、軸剛性や支持ばねから自動算定するものではありません。実際は下端だけで受ける部材に上下各50%を指定すると、下の梁の負担を過小評価する危険側のモデルになります。水平投影が 10 mm を超える傾斜材は、モーメントの釣合いによる単純梁反力を使い、この比率を使用しません。

片持ち小梁(基端が支持され、先端が自由な小梁)の荷重は、基端の鉛直反力としてのみ 伝達します。基端の曲げが考慮されない点と端部支持条件の設定方法は、本ページ前半の 「取り付く床板の荷重の出口」を参照してください。

荷重を流せない形は解析前チェックのエラーになります。端部がどの主架構にも二次部材にも 載っていない二次部材、支持関係が一巡している二次部材、節点を共有せずに交差している二次部材が これに当たります。いずれも荷重の行き先が決まらないため、モデル化を直す必要があります。 両端が自由端の二次部材も支持がなく不安定なためエラーです。 ただし端部の行き先が決まらない二次部材のうち、受け持つ荷重が実際に 0 のもの (断面が未割当で自重が出ず、床の分配も載らないもの)はエラーにしません。失う荷重がなく、 形だけ置かれた支持点で解析が止まるのを避けるためです。

実装参照:sepika_load::cascade が算定し、荷重の同期(sepika_job::auto_loads)と 小梁の断面検定(小梁・床の断面検定)は同じ経路を通ります (面荷重強度は用途ごとに違うため、荷重の値そのものは一致しません)。

床の中の小梁・スラブの断面検定(設計タブの「小梁・床の設計」表)は、ここで述べた荷重の分配とは別の話題です。小梁・床の断面検定を参照してください。

外周スラブ

標準床荷重を設定した階では、大梁の一方の側だけに床組がある場合に、床組のない側へ外周スラブを 荷重計算上の派生形状として生成します。standard_floor_load が None の階は外周スラブを生成しません (エラーにはしません)。両側に床組がある場合や、外周側に同じ大梁へ取り付く明示床板(片持ち・バルコニー等)が ある場合も生成しません。

始端柱・終端柱の大梁直交方向寸法をそれぞれ (d_{start})、(d_{end}) とすると、外周スラブの出は (e=(d_{start}+d_{end})/4) とします。標準床荷重 (q) [N/mm²] から大梁の等分布線荷重 (w=qe) [N/mm] を生成します。長期固定荷重・大梁用積載荷重・地震用重量は同じ派生形状を共有し、 用途別の標準床荷重強度だけを切り替えます。

この式は両端寸法の算術平均の 1/2 とする明示仕様です。両端寸法が異なる場合、実際の外周面積や荷重の 作用位置を表さず、局所荷重等を過小評価し得る危険側近似です。柱断面は、対象階の床レベルから直下の床レベルへ 鉛直材を下向きに辿り、当該層に属する最上側の柱セグメントから取得します。途中で柱が分岐する、直下床へ到達しない、 必要な柱断面・幾何情報が欠落する場合はエラーとして停止し、別部材や要素順依存の候補へフォールバックしません。

実装参照:sepika_core::model::perimeter_slabs(crates/sepika-core/src/model/perimeter_slab.rs)が 外周スラブの派生形状を算定し、sepika_job::auto_loads(crates/sepika-job/src/auto_loads.rs)が その形状から荷重を生成します。3D 表示も同じ派生形状を参照します。